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特開2023-55549情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055549
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B61L 25/02 20060101AFI20230411BHJP
   G01M 17/08 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
B61L25/02 Z
G01M17/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165026
(22)【出願日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(71)【出願人】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(71)【出願人】
【識別番号】317005022
【氏名又は名称】独立行政法人自動車技術総合機構
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】綱島 均
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】荻野 誠之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 安弘
(72)【発明者】
【氏名】緒方 正剛
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161BB17
5H161DD50
5H161FF07
5H161GG11
5H161GG23
(57)【要約】
【課題】精度の高い軌道変位の推定を容易に行わせることができる情報処理装置を提供すること。
【解決手段】情報処理装置は、鉄道車両が走行する第1軌道の始点から第1軌道の終点に至るまでの軌道変位の変化を示す波の波形を軌道変位波形とし、互いに異なる複数の軌道変位波形を生成する第1生成部と、第1生成部により生成された複数の軌道変位波形毎に、始点から終点に至るまでの第1軌道の軌道変位を示す波の波形が、軌道変位波形が示す波形と一致している場合における第1軌道を仮想的に走行する鉄道車両において、始点から終点に至るまでの間に発生すると推定される振動の変化を示す波の波形である振動波形を生成する第2生成部と、第1生成部により生成された複数の軌道変位波形と、第2生成部により複数の軌道変位毎に生成された振動波形とに基づいて、軌道変位の大きさと、振動の大きさとの相関関係を示す対応情報を生成する第3生成部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両が走行する第1軌道の始点から前記第1軌道の終点に至るまでの軌道変位の変化を示す波の波形を軌道変位波形とし、互いに異なる複数の軌道変位波形を生成する第1生成部と、
前記第1生成部により生成された前記複数の軌道変位波形毎に、前記始点から前記終点に至るまでの前記第1軌道の軌道変位を示す波の波形が、軌道変位波形が示す波形と一致している場合における前記第1軌道を仮想的に走行する鉄道車両において、前記始点から前記終点に至るまでの間に発生すると推定される振動の変化を示す波の波形である振動波形を生成する第2生成部と、
前記第1生成部により生成された前記複数の軌道変位波形と、前記第2生成部により前記複数の軌道変位毎に生成された前記振動波形とに基づいて、軌道変位の大きさと、振動の大きさとの相関関係を示す対応情報を生成する第3生成部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記始点から前記終点までの間は、複数の区間に分割されており、
前記第1生成部は、生成した前記複数の軌道変位波形毎に、前記複数の区間毎の軌道変位を示す軌道変位情報を生成し、
前記第2生成部は、前記複数の軌道変位波形毎に生成した前記振動波形毎に、前記複数の区間毎の振動の大きさを示す振動情報を生成し、
前記第3生成部は、前記第1生成部により生成された前記複数の区間毎の軌道変位情報と、前記第2生成部により生成された前記複数の区間毎の振動情報とに基づいて、前記対応情報を生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第1生成部は、前記複数の区間毎の軌道変位の最大値を、前記複数の区間毎の軌道変位として特定し、
前記第2生成部は、前記複数の区間毎の振動の大きさの最大値を、前記複数の区間毎の振動の大きさとして特定する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第3生成部は、前記第1生成部により生成された前記複数の区間毎の軌道変位情報と、前記第2生成部により生成された前記複数の区間毎の振動情報との散布図に基づく回帰分析により、応答曲面を示す情報を前記対応情報として生成する、
請求項2又は3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第3生成部は、前記回帰分析として、ガウス過程回帰を用いる、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記対応情報が記憶される記憶部と、
第1鉄道車両の前記第1軌道の走行において、前記始点から前記終点に至るまでの間に発生すると推定される振動の変化を示す波の波形を示す対象振動波形情報と、前記記憶部に記憶された前記対応情報とに基づいて、前記複数の区間毎の軌道変位を推定する推定部と、
を備える請求項2から5のうちいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記第1生成部は、前記第1軌道を走行する鉄道車両の互いに異なる複数の速度毎に、複数の軌道変位波形を生成し、
前記第2生成部は、前記複数の速度のそれぞれに応じた前記複数の軌道変位波形毎に、前記振動波形を生成し、
前記第3生成部は、前記複数の速度のそれぞれに応じた前記対応情報を生成する、
請求項1から6のうちいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
鉄道車両が走行する第1軌道の始点から前記第1軌道の終点に至るまでの軌道変位の変化を示す波の波形を軌道変位波形とし、互いに異なる複数の軌道変位波形を生成する第1生成ステップと、
前記第1生成ステップにより生成された前記複数の軌道変位波形毎に、前記始点から前記終点に至るまでの前記第1軌道の軌道変位を示す波の波形が、軌道変位波形が示す波形と一致している場合における前記第1軌道を仮想的に走行する鉄道車両において、前記始点から前記終点に至るまでの間に発生すると推定される振動の変化を示す波の波形である振動波形を生成する第2生成ステップと、
前記第1生成ステップにより生成された前記複数の軌道変位波形と、前記第2生成ステップにより前記複数の軌道変位毎に生成された前記振動波形とに基づいて、軌道変位の大きさと、振動の大きさとの相関関係を示す対応情報を生成する第3生成ステップと、
を有する情報処理方法。
【請求項9】
コンピュータに、
鉄道車両が走行する第1軌道の始点から前記第1軌道の終点に至るまでの軌道変位の変化を示す波の波形を軌道変位波形とし、互いに異なる複数の軌道変位波形を生成する第1生成ステップと、
前記第1生成ステップにより生成された前記複数の軌道変位波形毎に、前記始点から前記終点に至るまでの前記第1軌道の軌道変位を示す波の波形が、軌道変位波形が示す波形と一致している場合における前記第1軌道を仮想的に走行する鉄道車両において、前記始点から前記終点に至るまでの間に発生すると推定される振動の変化を示す波の波形である振動波形を生成する第2生成ステップと、
前記第1生成ステップにより生成された前記複数の軌道変位波形と、前記第2生成ステップにより前記複数の軌道変位毎に生成された前記振動波形とに基づいて、軌道変位の大きさと、振動の大きさとの相関関係を示す対応情報を生成する第3生成ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電車等の鉄道車両が走行する軌道の保守点検作業を補助する技術についての研究、開発が行われている。
【0003】
これに関し、鉄道車両の状態を示す情報として、鉄道車両の振動、速度、加速度、音、反射光、画像、温度、湿度、車輪径の少なくとも1つを示す情報を取得し、取得した当該情報に基づいて鉄道車両が走行する軌道の軌道変位の推定を行い、その推定結果を提供する鉄道用状態監視装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-046191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に記載された鉄道用状態監視装置では、機械学習のモデルによって軌道変位の推定が行われる。これは、従来、ある軌道を走行する鉄道車両の状態を示す情報のうち、鉄道車両の振動、速度、加速度、音、反射光、画像、温度、湿度、車輪径のいずれが、当該軌道の軌道変位と強く相関しているのかが明確に分からなかったためである。このため、当該鉄道用状態監視装置では、これら鉄道車両の状態を示す情報の扱いが煩雑になり、軌道変位の推定を容易に行わせることが困難な場合があった。
【0006】
そこで本発明は、上記従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、精度の高い軌道変位の推定を容易に行わせることができる情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、鉄道車両が走行する第1軌道の始点から前記第1軌道の終点に至るまでの軌道変位の変化を示す波の波形を軌道変位波形とし、互いに異なる複数の軌道変位波形を生成する第1生成部と、前記第1生成部により生成された前記複数の軌道変位波形毎に、前記始点から前記終点に至るまでの前記第1軌道の軌道変位を示す波の波形が、軌道変位波形が示す波形と一致している場合における前記第1軌道を仮想的に走行する鉄道車両において、前記始点から前記終点に至るまでの間に発生すると推定される振動の変化を示す波の波形である振動波形を生成する第2生成部と、前記第1生成部により生成された前記複数の軌道変位波形と、前記第2生成部により前記複数の軌道変位毎に生成された前記振動波形とに基づいて、軌道変位の大きさと、振動の大きさとの相関関係を示す対応情報を生成する第3生成部と、を備える情報処理装置である。
【0008】
また、本発明の他の態様は、情報処理装置において、前記始点から前記終点までの間は、複数の区間に分割されており、前記第1生成部は、生成した前記複数の軌道変位波形毎に、前記複数の区間毎の軌道変位を示す軌道変位情報を生成し、前記第2生成部は、前記複数の軌道変位波形毎に生成した前記振動波形毎に、前記複数の区間毎の振動の大きさを示す振動情報を生成し、前記第3生成部は、前記第1生成部により生成された前記複数の区間毎の軌道変位情報と、前記第2生成部により生成された前記複数の区間毎の振動情報とに基づいて、前記対応情報を生成する、構成が用いられてもよい。
【0009】
また、本発明の他の態様は、情報処理装置において、前記第1生成部は、前記複数の区間毎の軌道変位の最大値を、前記複数の区間毎の軌道変位として特定し、前記第2生成部は、前記複数の区間毎の振動の大きさの最大値を、前記複数の区間毎の振動の大きさとして特定する、構成が用いられてもよい。
【0010】
また、本発明の他の態様は、情報処理装置において、前記第3生成部は、前記第1生成部により生成された前記複数の区間毎の軌道変位情報と、前記第2生成部により生成された前記複数の区間毎の振動情報との散布図に基づく回帰分析により、応答曲面を示す情報を前記対応情報として生成する、構成が用いられてもよい。
【0011】
また、本発明の他の態様は、情報処理装置において、前記第3生成部は、前記回帰分析として、ガウス過程回帰を用いる、構成が用いられてもよい。
【0012】
また、本発明の他の態様は、情報処理装置において、前記対応情報が記憶される記憶部と、第1鉄道車両の前記第1軌道の走行において、前記始点から前記終点に至るまでの間に発生すると推定される振動の変化を示す波の波形を示す対象振動波形情報と、前記記憶部に記憶された前記対応情報とに基づいて、前記複数の区間毎の軌道変位を推定する推定部と、を備える、構成が用いられてもよい。
【0013】
また、本発明の他の態様は、情報処理装置において、前記第1生成部は、前記第1軌道を走行する鉄道車両の互いに異なる複数の速度毎に、複数の軌道変位波形を生成し、前記第2生成部は、前記複数の速度のそれぞれに応じた前記複数の軌道変位波形毎に、前記振動波形を生成し、前記第3生成部は、前記複数の速度のそれぞれに応じた前記対応情報を生成する、構成が用いられてもよい。
【0014】
また、本発明の他の態様は、鉄道車両が走行する第1軌道の始点から前記第1軌道の終点に至るまでの軌道変位の変化を示す波の波形を軌道変位波形とし、互いに異なる複数の軌道変位波形を生成する第1生成ステップと、前記第1生成ステップにより生成された前記複数の軌道変位波形毎に、前記始点から前記終点に至るまでの前記第1軌道の軌道変位を示す波の波形が、軌道変位波形が示す波形と一致している場合における前記第1軌道を仮想的に走行する鉄道車両において、前記始点から前記終点に至るまでの間に発生すると推定される振動の変化を示す波の波形である振動波形を生成する第2生成ステップと、前記第1生成ステップにより生成された前記複数の軌道変位波形と、前記第2生成ステップにより前記複数の軌道変位毎に生成された前記振動波形とに基づいて、軌道変位の大きさと、振動の大きさとの相関関係を示す対応情報を生成する第3生成ステップと、を有する情報処理方法である。
【0015】
また、本発明の他の態様は、コンピュータに、鉄道車両が走行する第1軌道の始点から前記第1軌道の終点に至るまでの軌道変位の変化を示す波の波形を軌道変位波形とし、互いに異なる複数の軌道変位波形を生成する第1生成ステップと、前記第1生成ステップにより生成された前記複数の軌道変位波形毎に、前記始点から前記終点に至るまでの前記第1軌道の軌道変位を示す波の波形が、軌道変位波形が示す波形と一致している場合における前記第1軌道を仮想的に走行する鉄道車両において、前記始点から前記終点に至るまでの間に発生すると推定される振動の変化を示す波の波形である振動波形を生成する第2生成ステップと、前記第1生成ステップにより生成された前記複数の軌道変位波形と、前記第2生成ステップにより前記複数の軌道変位毎に生成された前記振動波形とに基づいて、軌道変位の大きさと、振動の大きさとの相関関係を示す対応情報を生成する第3生成ステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、精度の高い軌道変位の推定を容易に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】情報処理システム1の構成の一例を示す図である。
図2】情報処理装置30のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】情報処理装置30の機能構成の一例を示す図である。
図4】情報処理装置30が対応情報を生成する処理の流れの一例を示す図である。
図5】始点から終点に至るまでの軌道Rの軌道変位の変化の統計的性質を示す3つの統計的性質値のそれぞれに基づいて生成されたパワースペクトル密度関数の一例を示す図である。
図6】パワースペクトル密度関数に基づいて生成された軌道変位波形を例示する図である。
図7】軌道変位波形から振動波形を生成する流れを説明するための図である。
図8】振動波形の一部の一例を示す図である。
図9】振動情報が示す絶対値によって振動波形をプロットし直したグラフの一例を示す図である。
図10】ステップS230において第3生成部364が生成する散布図の一例を示す図である。
図11】ステップS230において第3生成部364が生成する散布図の他の例を示す図である。
図12】情報処理装置30が対応情報に基づいて軌道変位を推定する処理の流れの一例を示す図である。
図13】鉄道車両Tの走行情報に基づいて特定された軌道Rの各区間における軌道変位を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
<情報処理装置の概要>
まず、本実施形態に係る情報処理装置の概要について説明する。
【0020】
実施形態に係る情報処理装置は、第1生成部と、第2生成部と、第3生成部を備える。第1生成部は、鉄道車両が走行する第1軌道の始点から第1軌道の終点に至るまでの軌道変位の変化を示す波の波形を軌道変位波形とし、互いに異なる複数の軌道変位波形を生成する。第2生成部は、第1生成部により生成された複数の軌道変位波形毎に、当該始点から当該終点に至るまでの第1軌道の軌道変位を示す波の波形が、軌道変位波形が示す波形と一致している場合における第1軌道を仮想的に走行する鉄道車両において、当該始点から当該終点に至るまでの間に発生すると推定される振動の変化を示す波の波形である振動波形を生成する。第3生成部は、第1生成部により生成された複数の軌道変位波形と、第2生成部により複数の軌道変位毎に生成された振動波形とに基づいて、軌道変位の大きさと、振動の大きさとの相関関係を示す対応情報を生成する。これにより、情報処理装置は、第1軌道の軌道変位について、対応情報に基づく推定を行わせることができる。その結果、情報処理装置は、精度の高い軌道変位の推定を容易に行わせることができる。
【0021】
以下では、実施形態に係る情報処理装置の構成と、当該情報処理装置が行う処理のうち対応情報を生成する処理と、当該情報処理装置が行う処理のうち対応情報に基づいて軌道変位を推定する処理とのそれぞれについて詳しく説明する。
【0022】
<情報処理システムの構成>
以下、実施形態に係る情報処理装置を備える情報処理システムの一例として情報処理システム1を例に挙げて、当該情報処理システムの構成について説明する。図1は、情報処理システム1の構成の一例を示す図である。
【0023】
情報処理システム1は、例えば、測定装置10と、サーバ20と、情報処理装置30を備える。なお、情報処理システム1において、測定装置10と、サーバ20と、情報処理装置30とのうちの一部又は全部は、一体に構成されてもよい。また、情報処理システム1は、測定装置10と、サーバ20と、情報処理装置30とに加えて、他の装置を備える構成であってもよい。
【0024】
情報処理システム1は、測定装置10が設置された鉄道車両が走行する軌道の始点から当該軌道の終点までの間を複数の区間に仮想的に分割し、分割した複数の区間毎の軌道変位を推定する。これら複数の区間のうちの一部又は全部は、互いに同じ距離の区間であってもよく、互いに異なる距離の区間であってもよい。以下では、一例として、これら複数の区間が、互いに同じ距離の区間であり、10[m]の区間である場合について説明する。なお、これら複数の区間のそれぞれは、10[m]より短い距離の区間であってもよく、10[m]より長い距離の区間であってもよい。
【0025】
情報処理システム1が推定する軌道変位は、高低変位、通り変位、水準変位、軌間変位、平面性変位のうちのいずれであってもよく、高低変位、通り変位、水準変位、軌間変位、平面性変位のうちの一部又は全部の組み合わせであってもよい。以下では、一例として、情報処理システム1が推定する軌道変位が、高低変位である場合について説明する。
【0026】
ここで、以下では、一例として、図1に示した鉄道車両Tに測定装置10が設置されている場合について説明する。鉄道車両Tは、電車である。鉄道車両Tは、電車に代えて、気動車、新交通システム、モノレール等の軌道(例えば、レール等)を走行する車両であれば、如何なる車両であってもよい。また、以下では、一例として、鉄道車両Tが走行する軌道が、図1に示した軌道Rである場合について説明する。軌道Rは、鉄道車両Tが走行可能な軌道であれば、如何なる軌道であってもよい。すなわち、情報処理システム1は、軌道Rの始点から軌道Rの終点までの間を複数の区間に仮想的に分割し、分割した複数の区間毎の軌道変位を推定する。また、以下では、説明の便宜上、軌道Rの始点を、単に始点と称して説明する。また、以下では、説明の便宜上、軌道Rの終点を、単に終点と称して説明する。なお、始点は、軌道R上の経路のうち、情報処理システム1が軌道変位の推定を行う対象となる経路の始点のことである。この経路は、前述の軌道Rの複数の区間により構成される。また、終点は、軌道R上の経路のうち、情報処理システム1が軌道変位の推定を行う対象となる経路の終点のことである。
【0027】
また、情報処理システム1は、鉄道車両Tの走行情報に基づいて、始点から終点までの各区間の軌道変位を推定する。以下では、説明の便宜上、鉄道車両Tの走行情報を、単に走行情報と称して説明する。
【0028】
走行情報は、鉄道車両Tの走行時において、鉄道車両Tに設置された測定装置10により測定された各種の測定値を示す測定値情報を含む情報である。当該各種の測定値には、予め決められた方向における鉄道車両Tの走行時の振動を示す測定値として、予め決められた方向における鉄道車両Tの各時刻における加速度が含まれている。なお、当該各種の測定値には、鉄道車両Tの走行時の各時刻における速度、角速度等が含まれている構成であってもよい。また、予め決められた方向における鉄道車両Tの走行時の振動を示す測定値は、加速度に代えて、当該振動を示すことが可能な他の物理量であってもよい。以下では、説明を簡略化するため、一例として、当該各種の測定値として、予め決められた方向における鉄道車両Tの各時刻における加速度と、鉄道車両Tの走行時の各時刻における速度とが含まれている場合について説明する。ここで、予め決められた方向は、情報処理システム1が推定する軌道変位の種類に応じて決まる方向であり、1方向のみであってもよく、2以上の方向であってもよい。この一例では、情報処理システム1が推定する軌道変位の種類は、高低変位である。このため、この一例における予め決められた方向は、上下方向(鉛直方向)のみである。また、以下では、一例として、走行情報に、当該加速度を示す測定値情報と、当該速度を示す測定値情報とに加えて、始点から終点までの走行を1回の走行とする1回毎の鉄道車両Tの走行を識別する走行識別情報と、軌道R上の位置のうち当該加速度及び当該速度が測定された位置を示す位置情報とが含まれている場合について説明する。また、以下では、一例として、当該加速度を示す測定値情報に、当該加速度が測定された時刻を示す時刻情報が含まれている場合について説明する。また、以下では、一例として、当該速度を示す測定値情報に、当該速度が測定された時刻を示す時刻情報が含まれている場合について説明する。また、以下では、説明の便宜上、当該加速度を示す測定値情報を加速度情報と称し、当該速度を示す測定値情報を速度情報と称して説明する。
【0029】
情報処理システム1では、このような走行情報は、サーバ20により記憶される。また、情報処理システム1では、サーバ20に記憶された走行情報を情報処理装置30がサーバ20から読み出す。そして、情報処理システム1では、サーバ20から読み出した走行情報に基づいて、情報処理装置30が軌道変位を推定する。
【0030】
測定装置10は、前述の各種の測定値を測定可能な装置(この一例では、加速度、速度、軌道R上の位置、現在時刻を測定可能な装置)であれば、如何なる装置であってもよい。測定装置10は、例えば、多機能携帯電話(スマートフォン)、タブレットPC(Personal Computer)等のモバイル端末であってもよく、各種の測定値を測定可能なセンサを搭載したノートPC等の情報処理装置であってもよく、各種の測定値の測定を行う専用装置であってもよく、各種の測定値を測定可能な他の装置であってもよい。
【0031】
測定装置10は、例えば、Wi-Fi(登録商標)等の無線LAN、移動体通信網等を介した無線通信により、サーバ20と通信可能に接続される。すなわち、測定装置10は、サーバ20と無線通信を行うことが可能な通信装置でもある。
【0032】
測定装置10には、例えば、ユーザから受け付けた操作により、走行識別情報が予め登録される。そして、測定装置10は、鉄道車両Tの走行時において、予め決められた方向における時刻毎の鉄道車両Tの加速度と、鉄道車両Tの時刻毎の速度と、軌道R上の時刻毎の位置とのそれぞれを所定のサンプリング周期で測定する。測定装置10は、加速度及び速度を測定する毎に、測定した加速度と、測定した速度と、現在の時刻と、測定した軌道R上の位置と、予め登録されている走行識別情報とに基づいて、走行情報を生成する。この一例では、測定装置10は、走行情報を生成する際、軌道R上の距離のうち始点から現在位置までの距離を算出し、算出した距離を軌道R上の位置として特定し直す。当該距離を軌道R上の位置として特定し直す処理は、測定装置10に代えて、サーバ20、情報処理装置30等が行う構成であってもよい。測定装置10は、走行情報を生成する毎に、生成した走行情報をサーバ20に送信し、サーバ20に走行情報を記憶させる。ここで、前述の始点は、軌道R上の位置のうち、軌道Rを走行中の鉄道車両Tにおいて各種の測定値の測定を測定装置10が開始する位置のことでもある。また、終点は、軌道R上の位置のうち、軌道Rを走行中の鉄道車両において各種の測定値の測定を測定装置10が終了する位置のことでもある。
【0033】
サーバ20は、サーバとして機能させることが可能な情報処理装置であれば、如何なる装置であってもよい。例えば、サーバ20は、ワークステーション、デスクトップPC等であるが、これらに限られるわけではない。
【0034】
サーバ20は、例えば、Wi-Fi(登録商標)等の無線LAN、移動体通信網等を介した無線通信により、測定装置10と通信可能に接続される。すなわち、サーバ20は、測定装置10と無線通信を行うことが可能な通信装置でもある。また、サーバ20は、無線通信又は有線通信により、情報処理装置30と通信可能に接続される。すなわち、サーバ20は、情報処理装置30と無線通信又は有線通信を行うことが可能な通信装置でもある。
【0035】
サーバ20は、測定装置10から送信される走行情報を受信した場合、受信した走行情報を記憶する。この際、サーバ20は、当該走行情報に含まれる走行識別情報毎に、当該走行情報をまとめて記憶する。また、サーバ20は、走行情報の取得の要求として、情報処理装置30から走行識別情報を取得した場合、取得した走行識別情報を含む複数の走行情報を情報処理装置30に送信する。
【0036】
情報処理装置30は、例えば、ワークステーション、デスクトップPC、ノートPC、タブレットPC、多機能携帯電話端末、携帯電話端末、PDA(Personal Digital Assistant)等であるが、これらに限られるわけではない。
【0037】
情報処理装置30は、無線通信又は有線通信により、サーバ20と通信可能に接続される。すなわち、情報処理装置30は、サーバ20と無線通信又は有線通信を行うことが可能な通信装置でもある。
【0038】
情報処理装置30は、ユーザから受け付けた操作に応じて、走行情報の取得の要求として、走行識別情報をサーバ20に送信する。情報処理装置30は、サーバ20に送信した当該要求に対する応答として、当該要求として送信した走行識別情報を含む複数の走行情報をサーバ20から受信する。情報処理装置30は、これら複数の走行情報を受信した場合、受信した複数の走行情報と、予め記憶されている対応情報とに基づいて、軌道R上の各区間における軌道変位を推定する。
【0039】
ここで、対応情報は、シミュレーションによって得られる情報であり、軌道変位の大きさと、振動の大きさとの相関関係を示す情報のことである。より具体的には、対応情報は、仮想的な軌道Rの各区間における軌道変位と、それらの軌道変位によって仮想的な軌道Rを走行する仮想的な鉄道車両において各区間で予め決められた方向に生じると推定される振動を示す加速度とが対応付けられた情報である。なお、対応情報は、シミュレーションによって得られた情報に代えて、実際の軌道Rの各区間における軌道変位と、それらの軌道変位によって軌道Rを走行する鉄道車両において予め決められた方向に生じると推定される振動を示す加速度とが対応付けられた情報であってもよい。また、これらの仮想的な鉄道車両又は実際の鉄道車両は、鉄道車両Tであってもよく、軌道Rを走行可能な鉄道車両であれば、鉄道車両Tと異なる鉄道車両であってもよい。例えば、対応情報は、軌道R上のある区間での鉄道車両Tの加速度を入力すると、入力した加速度に対応付けられた軌道変位を、当該区間の軌道変位として出力する関数、ルックアップテーブル等である。
【0040】
情報処理装置30は、ユーザから受け付けた操作に応じて、このような対応情報を生成する。より具体的には、情報処理装置30は、始点から終点に至るまでの軌道変位の変化を示す波の波形を軌道変位波形とし、互いに異なる複数の軌道変位波形を仮想的に生成する。換言すると、情報処理装置30は、シミュレーションによってこれら複数の軌道変位波形を生成する。これら複数の軌道変位波形同士は、各波形が示す軌道変位の変化の統計的性質の違いによって区別される。複数の軌道変位波形を生成した後、情報処理装置30は、生成した複数の軌道変位波形毎に、軌道変位波形に応じた振動波形を生成する。ある軌道変位波形に応じた振動波形は、始点から終点に至るまでの軌道変位の変化を示す波の波形が、当該軌道変位波形が示す波形と一致している場合における軌道Rを仮想的に走行する鉄道車両において、始点から終点に至るまでの間に予め決められた方向に発生すると推定される加速度(すなわち、振動)の変化を示す波の波形のことである。情報処理装置30は、このような振動波形の生成を、車両モデルを用いて行う。車両モデルは、鉄道車両についての数理モデル(物理モデル)であり、例えば、SIMPACK(登録商標)等であるが、これに限られるわけではない。例えば、情報処理装置30は、ある軌道変位波形に応じた振動波形を生成した場合、軌道R上の区間毎に、区間における軌道変位の最大値と、区間における加速度の絶対値の最大値とを対応付けた仮対応情報を生成する。情報処理装置30は、このような仮対応情報の生成を、すべての軌道変位波形毎に行う。そして、情報処理装置30は、すべての軌道変位波形毎に生成した複数の仮対応情報に基づいて、軌道変位の最大値と加速度の絶対値の最大値との散布図を生成し、生成した散布図に基づく回帰分析を行う。この回帰分析の結果として、情報処理装置30は、応答曲面を得る。情報処理装置30は、この応答曲面を示す情報を、前述の対応情報として生成する。これにより、情報処理装置30は、生成した対応情報により、精度の高い軌道変位の推定を容易に行わせることができる。
【0041】
<情報処理装置のハードウェア構成>
以下、図2を参照し、情報処理装置30のハードウェア構成について説明する。図2は、情報処理装置30のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0042】
情報処理装置30は、例えば、プロセッサ31と、記憶部32と、入力受付部33と、通信部34と、表示部35を備える。また、情報処理装置30は、通信部34を介してサーバ20と通信を行う。これらの構成要素は、バスを介して相互に通信可能に接続されている。
【0043】
プロセッサ31は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。なお、プロセッサ31は、CPUに代えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の他のプロセッサであってもよい。プロセッサ31は、記憶部32に格納された各種のプログラムを実行する。
【0044】
記憶部32は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含む。なお、記憶部32は、情報処理装置30に内蔵されるものに代えて、USB(Universal Serial Bus)等のデジタル入出力ポート等によって接続された外付け型の記憶装置であってもよい。記憶部32は、情報処理装置30が処理する各種の情報、各種の画像、動作プログラム等を格納する。
【0045】
入力受付部33は、例えば、キーボード、マウス、タッチパッド等を含む入力装置であり、ユーザからの入力(操作)を受け付ける。
【0046】
通信部34は、例えば、USB等のデジタル入出力ポートやイーサネット(登録商標)ポート等を含んで構成される。
【0047】
表示部35は、例えば、ディスプレイを含む表示装置である。
【0048】
<情報処理装置の機能構成>
以下、図3を参照し、情報処理装置30の機能構成について説明する。図3は、情報処理装置30の機能構成の一例を示す図である。
【0049】
情報処理装置30は、記憶部32と、入力受付部33と、通信部34と、表示部35と、制御部36を備える。
【0050】
制御部36は、情報処理装置30の全体を制御する。制御部36は、受信部361と、第1生成部362と、第2生成部363と、第3生成部364と、推定部365と、表示制御部366を備える。制御部36が備えるこれらの機能部は、例えば、プロセッサ31が、記憶部32に記憶された各種のプログラムを実行することにより実現される。また、当該機能部のうちの一部又は全部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア機能部であってもよい。
【0051】
受信部361は、ユーザから受け付けた操作に応じて、鉄道車両Tの走行情報の取得の要求として、走行識別情報をサーバ20に送信し、当該要求に対する応答として、送信した走行識別情報を含む当該走行情報を受信する。
【0052】
第1生成部362は、始点から終点に至るまでの軌道変位の変化を示す波の波形を軌道変位波形とし、互いに異なる波形を示す複数の軌道変位波形を生成する。また、第1生成部362は、生成した複数の軌道変位波形毎に、軌道R上の複数の区間毎の軌道変位を示す軌道変位情報を生成する。
【0053】
第2生成部363は、第1生成部362により生成された複数の軌道変位波形毎に、始点から終点に至るまでの軌道Rの軌道変位を示す波の波形が、軌道変位波形が示す波形と一致している場合における軌道Rを仮想的に走行する鉄道車両において、始点から終点に至るまでの間に発生すると推定される振動の変化を示す波の波形である振動波形を生成する。また、第2生成部363は、複数の軌道変位波形毎に生成した振動波形毎に、複数の区間毎の振動の大きさを示す振動情報を生成する。
【0054】
第3生成部364は、第1生成部362により生成された複数の軌道変位波形と、第2生成部363により複数の軌道変位毎に生成された振動波形とに基づいて、軌道変位の大きさと、振動の大きさとの相関関係を示す対応情報を生成する。より具体的には、第3生成部364は、第1生成部362により生成された複数の区間毎の軌道変位情報と、第2生成部363により生成された複数の区間毎の振動情報とに基づいて、対応情報を生成する。
【0055】
推定部365は、受信部361により受信された走行情報と、記憶部32に記憶された対応情報(すなわち、第3生成部364により生成された対応情報)とに基づいて、軌道R上の各区間の軌道変位を推定する。
【0056】
表示制御部366は、ユーザから受け付けた操作に応じて、各種の画像を生成する。表示制御部366は、生成した画像を表示部35に表示させる。例えば、表示制御部366は、ユーザから受け付けた操作に応じて、推定部365による推定結果を示す情報を含む画像を生成し、生成した当該画像を表示部35に表示させる。
【0057】
<対応情報を生成する処理>
以下、図4を参照し、情報処理装置30が対応情報を生成する処理について説明する。図4は、情報処理装置30が対応情報を生成する処理の流れの一例を示す図である。以下では、一例として、図4に示したステップS110の処理が開始されるよりも前のタイミングにおいて、対応情報を生成する処理を開始する操作を情報処理装置30が受け付けている場合について説明する。
【0058】
対応情報を生成する処理を開始する操作を情報処理装置30が受け付けた後、第1生成部362は、始点から終点に至るまでの軌道Rの軌道変位の変化の統計的性質を示す互いに異なる複数の統計的性質値毎に、ステップS120~ステップS200の処理を繰り返し行う(ステップS110)。図4では、ステップS110の処理が、「性質毎」によって示されている。ここで、複数の統計的性質値のそれぞれは、軌道Rの凹凸の大きさを示す量のことである。ステップS110において、第1生成部362は、例えば、複数の統計的性質値を、ランダムに予め決められた数だけ生成する構成であってもよく、記憶部32に予め記憶された複数の統計的性質値のそれぞれを示す情報を記憶部32から読み出す構成であってもよく、他の方法により複数の統計的性質値を特定する構成であってもよい。以下では、一例として、複数の統計的性質値が、0.3×10-5(最も良い軌道状態)、3×10-5(標準軌道状態)、30×10-5(最も悪い軌道状態)の3つの軌道状態である場合について説明する。また、以下では、説明の便宜上、ステップS110において第1生成部362により選択された統計的性質値を、対象統計的性質値と称して説明する。
【0059】
ステップS110において対象統計的性質値を選択した後、第1生成部362は、選択した軌道状態に対応したパワースペクトル密度関数に基づいて、軌道Rの凹凸を算出する。そして、第1生成部362は、算出した軌道Rの凹凸に基づいて、始点から終点に至るまでの軌道Rの軌道変位の変化を表す波形を、軌道変位波形として生成する(ステップS120)。
【0060】
ここで、図5は、始点から終点に至るまでの軌道Rの軌道変位の変化の統計的性質を示す3つの統計的性質値のそれぞれに基づいて生成されたパワースペクトル密度関数の一例を示す図である。図5に示したグラフの縦軸は、パワースペクトル密度関数の値を示す。当該グラフの横軸は、空間周波数を示す。そして、図6は、パワースペクトル密度関数に基づいて生成された軌道変位波形を例示する図である。図6には、図が煩雑になるのを防ぐため、始点から終点に至るまでの軌道Rの軌道変位の変化の統計的性質を示す統計的性質値を0.3×10-5[m-1]として算出されたパワースペクトル密度関数に基づく軌道変位波形と、当該統計的性質値を3×10-5[m-1]として算出されたパワースペクトル密度関数に基づく軌道変位波形と、当該統計的性質値を30×10-5[m-1]として算出されたパワースペクトル密度関数に基づく軌道変位波形との3つの軌道変位波形を示している。図6に示したグラフの縦軸は、軌道変位を示す。当該グラフの横軸は、始点からの距離によって軌道R上の位置を示している。すなわち、この一例における軌道変位波形は、始点からの距離に応じた軌道変位の変化を示す波形である。なお、始点から終点に至るまでの軌道Rの軌道変位の変化の統計的性質を示す統計的性質値に基づいてパワースペクトル密度関数を算出する方法は、既知の方法であってもよく、これから開発される方法であってもよい。また、パワースペクトル密度関数に基づいて軌道変位波形を生成する方法は、既知の方法であってもよく、これから開発される方法であってもよい。このため、本実施形態では、これら2つの方法については、説明を省略する。
【0061】
ステップS120の処理を行った後、第1生成部362は、始点から終点までの範囲を、前述の複数の区間に区切り、区切った区間毎に、ステップS140の処理を繰り返し行う(ステップS130)。なお、以下では、説明の便宜上、ステップS130において第1生成部362により選択された区間を、対象区間と称して説明する。ステップS130において、第1生成部362は、例えば、これら複数の区間を始点側から順に1つずつ対象区間として選択する。なお、第1生成部362は、これら複数の空間を、ランダムに1つずつ対象区間として選択する構成であってもよく、他の方法により1つずつ対象区間として選択する構成であってもよい。また、第1生成部362は、ステップS130~ステップS140において繰り返される繰り返し処理のうちの一部又は全部を、並列に行う構成であってもよい。
【0062】
ステップS130において対象区間を選択した後、第1生成部362は、ステップS120において生成した軌道変位波形と、10m弦正矢法とに基づいて、対象区間における軌道変位の最大値を特定し、特定した最大値を示す情報を、対象区間の軌道変位情報として生成する(ステップS140)。ここで、10m弦正矢法を簡単に説明すると、10mの糸の少なくとも一部が対象区間内に位置するように軌道R上に当該10mの糸を撓まないように伸ばした状態で当て、糸の中間の位置から軌道Rまで鉛直下方に延びる直線の距離を変位として測定する方法である。そして、10m弦正矢法では、この糸を伸ばした状態のままずらしながら、この変位が最大となる位置を特定し、特定した位置における当該変位を、対象区間における軌道変位の最大値として特定する。なお、10m弦正矢法については、よく知られた方法であるため、本実施形態では、これ以上の詳細な説明を省略する。また、ステップS140において、第1生成部362は、10m弦正矢法に代えて、他の方法により対象区間における軌道変位の最大値を特定する構成であってもよい。例えば、第1生成部362は、10mよりも短い距離の弦を用いた弦正矢法により、当該最大値を特定する構成であってもよく、10mよりも長い距離の弦を用いた弦正矢法により、当該最大値を特定する構成であってもよい。
【0063】
ステップS140の処理を行った後、第1生成部362は、ステップS130に遷移し、次の区間を対象区間として選択する。なお、ステップS140の処理を行った後、第1生成部362は、次の対象区間として選択可能な区間が残っていない場合、ステップS130~ステップS140の繰り返し処理を終了し、ステップS150に遷移する。
【0064】
ステップS130~ステップS140の繰り返し処理を第1生成部362が終了させた後、第2生成部363は、軌道Rを仮想的に走行する鉄道車両の速度として予め決められた複数の速度毎に、ステップS160~ステップS200の処理を繰り返し行う(ステップS150)。以下では、一例として、これら複数の速度が、30km/h、40km/h、50km/h、60km/h、70km/h、80km/hのそれぞれである場合について説明する。なお、以下では、説明の便宜上、ステップS150において第2生成部363により選択された速度を、対象速度と称して説明する。
【0065】
ステップS150において対象速度を選択した後、第2生成部363は、選択した対象速度と、ステップS120において生成された軌道変位波形と、車両モデルとに基づいて、車両モデルにより表される仮想的な鉄道車両に始点から終点まで軌道Rを対象速度で仮想的に走行させた場合における振動波形を生成する(ステップS160)。ここで、この振動波形は、当該場合、且つ、始点から終点に至るまでの軌道Rの軌道変位を示す波の波形が、当該軌道変位波形が示す波形と一致している場合において、始点から終点に至るまでの間に対象速度の当該鉄道車両に発生すると推定される振動の変化を示す波の波形である。また、この振動は、前述の予め決められた方向における振動である。すなわち、ステップS160において、第2生成部363は、当該軌道変位波形が示す波形の軌道変位を有する仮想的な軌道Rに対象速度で当該鉄道車両を仮想的に走行させることにより、当該鉄道車両に振動を発生させ、その振動の始点から終点に至るまでの変化を示す振動波形を生成する。なお、この一例において、予め決められた方向の当該鉄道車両の振動は、当該方向における当該鉄道車両の加速度によって表される。すなわち、この一例において、振動波形は、予め決められた方向についての当該鉄道車両の加速度の波形のことである。
【0066】
図7は、軌道変位波形から振動波形を生成する流れを説明するための図である。図7に示したように、第2生成部363は、軌道変位波形を車両モデルに入力する。これにより、第2生成部363は、軌道変位波形が示す波形の軌道変位を有する仮想的な軌道Rに対象速度で当該鉄道車両を仮想的に走行させる。その結果、車両モデルは、その振動の始点から終点に至るまでの変化を示す振動波形を出力する。このようにして、ステップS160において第2生成部363は、ステップS120において生成された軌道変位波形に対応する振動波形を生成する。
【0067】
ステップS160の処理を行った後、第2生成部363は、ステップS130において第1生成部362が区切った複数の区間毎に、ステップS180~ステップS200の処理を繰り返し行う(ステップS170)。なお、以下では、説明の便宜上、ステップS170において第2生成部363により選択された区間を、対象区間と称して説明する。ステップS170において、第2生成部363は、例えば、これら複数の区間を始点側から順に1つずつ対象区間として選択する。また、第2生成部363は、これら複数の空間を、ランダムに1つずつ対象区間として選択する構成であってもよく、他の方法により1つずつ対象区間として選択する構成であってもよい。また、第2生成部363は、ステップS170~ステップS200において繰り返される繰り返し処理のうちの一部又は全部を、並列に行う構成であってもよい。
【0068】
ステップS170において対象区間を選択した後、第2生成部363は、ステップS160において生成した振動波形と、ステップS170において選択した対象区間に基づいて、振動情報を生成する(ステップS180)。より具体的には、ステップS180において、第2生成部363は、当該振動波形の中から対象区間内の各位置における加速度(振動)を示す波形を抽出し、抽出した波形に基づいて、対象区間内における加速度の絶対値(すなわち、振動の大きさ)の最大値を特定する。そして、第2生成部363は、特定した絶対値を示す情報を、振動情報として生成する。図8は、振動波形の一例を示す図である。図8に示したグラフの縦軸は、加速度、すなわち、振動を示す。当該グラフの横軸は、始点からの距離によって軌道R上の位置を示している。図8に示した矢印は、図8に示した各区間において加速度の絶対値が最大となる位置を示している。ステップS180において、第2生成部363は、対象区間において加速度の絶対値が最大となる位置を特定する。そして、第2生成部363は、特定した位置における加速度の絶対値を示す情報を、対象区間の振動情報として生成する。図9は、振動情報が示す絶対値によって振動波形をプロットし直したグラフの一例を示す図である。図9に示したグラフの縦軸は、加速度の絶対値、すなわち、振動の大きさを示す。当該グラフの横軸は、始点からの距離によって軌道R上の位置を示している。当該グラフでは、各区間の中点において、その区間における加速度の絶対値の最大値がプロットされている。このため、当該グラフでは、各区間での振動の激しさを比較することができる。
【0069】
次に、第2生成部363は、ステップS130~ステップS140の繰り返し処理において生成された軌道変位情報のうち、ステップS170において選択された対象区間の軌道変位情報を特定する。そして、第2生成部363は、特定した軌道変位情報と、ステップS180において生成した振動情報とを対応付けた情報を、仮対応情報として生成する(ステップS190)。
【0070】
次に、第2生成部363は、ステップS190において生成した仮対応情報を、記憶部32に記憶させる(ステップS200)。この際、第2生成部363は、ステップS150において選択された対象速度を示す速度情報を仮対応情報に対応付けて、仮対応情報を記憶部32に記憶させる。
【0071】
ステップS200の処理を行った後、第2生成部363は、ステップS170に遷移し、次の区間を対象区間として選択する。なお、ステップS200の処理を行った後、第2生成部363は、次の対象区間として選択可能な区間が残っていない場合、ステップS170~ステップS200の繰り返し処理を終了してからステップS150に遷移し、次の速度を対象速度として選択する。なお、ステップS170~ステップS200の繰り返し処理を終了した後、第1生成部362は、次の対象速度として選択可能な速度が残っていない場合、ステップS150~ステップS200の繰り返し処理を第2生成部363が終了させてからステップS110に遷移し、次の統計的性質値を対象統計的性質値として選択する。なお、ステップS150~ステップS200の繰り返し処理を第2生成部363が終了させた後、第1生成部362は、次の対象統計的性質値として選択可能な統計的性質値が残っていない場合、ステップS110~ステップS200の繰り返し処理を終了する。
【0072】
ステップS110~ステップS200の繰り返し処理を第1生成部362が終了させた後、第3生成部364は、軌道Rを仮想的に走行する鉄道車両の速度として予め決められた複数の速度毎に、ステップS220~ステップS240の処理を繰り返し行う(ステップS210)。ここで、これら複数の速度は、ステップS150において第2生成部363が対象速度として選択する対象としていた複数の速度と同じ複数の速度である。なお、以下では、説明の便宜上、ステップS210において第3生成部364により選択された速度を、対象速度と称して説明する。
【0073】
ステップS210において対象速度を選択した後、第3生成部364は、選択した対象速度を示す速度情報に対応付けられた複数の仮対応情報をすべて、記憶部32から読み出す(ステップS220)。
【0074】
次に、第3生成部364は、ステップS220において読み出した複数の仮対応情報のそれぞれを、軌道Rの軌道変位を示す縦軸と、加速度の絶対値を示す横軸とを有するグラフ上にプロットした散布図を生成する。そして、第3生成部364は、生成した散布図に基づく回帰分析を行い、応答曲面を算出し、算出した応答曲面を示す情報を対応情報として生成する(ステップS230)。ここで、第3生成部364は、例えば、回帰分析としてガウス過程回帰を用いて応答曲面を算出する。なお、第3生成部364は、直線回帰等の他の回帰分析を用いて応答曲面を算出する構成であってもよい。また、ガウス過程回帰については、既によく知られている回帰分析であるため、本実施形態において詳細な説明を省略する。
【0075】
ここで、図10は、ステップS230において第3生成部364が生成する散布図の一例を示す図である。図10に示したグラフの縦軸は、軌道Rの軌道変位を示す。当該グラフの横軸は、加速度の絶対値を示す。当該グラフ上の複数の丸は、当該グラフ上にプロットされた個々の仮対応情報を示す。当該グラフは、軌道Rの軌道変位と、軌道Rを走行する鉄道車両において予め決められた方向に生じる加速度の絶対値(振動の大きさ)との間に相関関係があることを示している。従来においてこの相関関係が存在しているのか否かがはっきりしていなかったのは、この散布図における各プロットの分散が大きいためであると考えられる。そして、当該グラフ上の点線F1は、この散布図に基づくガウス過程回帰の結果として得られた応答曲面を示す。ハッチングされた領域R1は、点線F1が示す応答曲面の誤差範囲であり、標準偏差をσとして応答曲面の値を中心値とする±1σの誤差範囲を示す。なお、散布図上のプロットの分布と応答曲面の形状とは、ステップS210において対象速度として選択される速度に応じて変わる。図10に示した散布図上のプロットの分布と応答曲面の形状とは、対象速度が[60km/h]である場合の分布及び形状である。
【0076】
なお、散布図上のプロットの数が増えると、回帰分析に要する時間が長くなる。そこで、第3生成部364は、回帰分析に要する時間を短くするため、散布図の横軸を所定間隔のビンに区切り、各ビンの範囲内に含まれる複数のプロットそれぞれに対応する軌道変位の平均値を、各ビンのプロットとして1つにまとめる構成であってもよい。この場合、図10に示した散布図は、図11に示した散布図のようになる。図11は、ステップS230において第3生成部364が生成する散布図の他の例を示す図である。ただし、図11に示した例では、所定間隔は、0.1[m/s]である。これにより、第3生成部364は、回帰分析に要する時間を短くすることができる。なお、図11に示したグラフの縦軸は、軌道Rの軌道変位を示す。当該グラフの横軸は、加速度の絶対値を示す。当該グラフ上の複数の丸は、平均化されてから当該グラフ上にプロットされた個々の仮対応情報を示す。そして、当該グラフ上の点線F2は、この散布図に基づくガウス過程回帰の結果として得られた応答曲面を示す。ハッチングされた領域R2は、点線F2が示す応答曲面の誤差範囲であり、標準偏差をσとして応答曲面の値を中心値とする±1σの誤差範囲を示す。
【0077】
以上のようにして得られた応答曲面を示す対応情報は、軌道変位の大きさと、振動の大きさとの相関関係を示す情報である。換言すると、当該対応情報は、予め決められた方向における鉄道車両の加速度毎に、加速度と、その加速度を生じさせたと推定される軌道Rの軌道変位とが対応付けられた情報である。そして、当該対応情報は、前述した通り、例えば、予め決められた方向における鉄道車両の加速度を入力すると、入力した加速度に対応付けられた軌道Rの軌道変位を出力する関数、ルックアップテーブル等である。
【0078】
ステップS230の処理を行った後、第3生成部364は、ステップS230において生成した対応情報を記憶部32に記憶させる(ステップS240)。この際、第3生成部364は、ステップS210において選択した対象速度を示す速度情報を当該対応情報に対応付けて、当該対応情報を記憶部32に記憶させる。その後、第3生成部364は、ステップS210に遷移し、次の速度を対象速度として選択する。なお、ステップS240の処理を行った後、第3生成部364は、次の対象速度として選択可能な速度が残っていない場合、ステップS210~ステップS240の繰り返し処理を終了し、図4に示したフローチャートの処理を終了する。
【0079】
以上のように、情報処理装置30は、始点から終点に至るまでの軌道変位の変化を示す波の波形を軌道変位波形とし、互いに異なる複数の軌道変位波形を生成し、生成した複数の軌道変位波形毎に、始点から終点に至るまでの軌道Rの軌道変位を示す波の波形が、軌道変位波形が示す波形と一致している場合における軌道Rを仮想的に走行する鉄道車両において、始点から終点に至るまでの間に発生すると推定される振動の変化を示す波の波形である振動波形を生成し、生成した複数の軌道変位波形と、複数の軌道変位毎に生成した振動波形とに基づいて、軌道変位の大きさと、振動の大きさとの相関関係を示す対応情報を生成する。これにより、情報処理装置30は、生成した対応情報に基づいて、精度の高い軌道変位の推定を容易に行わせることができる。
【0080】
なお、情報処理装置30は、軌道検測車により測定された情報として、軌道R上の複数の区間毎に、軌道変位と、軌道検測車の振動の大きさとを対応付ける情報(すなわち、軌道検測車によって実測された仮対応情報)を、ステップS110の処理が行われるよりも前のタイミングにおいて取得していた場合、ステップS230において、前述の散布図に当該情報を付加的にプロットする構成であってもよい。この場合も、情報処理装置30は、前述したステップS230の処理と同様の処理により、ガウス過程回帰に基づく応答曲面を算出することができる。そして、この場合、当該情報がない場合と比較して、算出される応答曲面が示す相関関係の推定精度が高くなる。すなわち、情報処理装置30は、当該情報を用いることにより、より高い精度の軌道変位の推定を行わせることが可能な対応情報を生成することができる。
【0081】
また、情報処理装置30は、始点から終点に至るまでの鉄道車両Tの速度が一定(又はほぼ一定)、且つ、既知である場合、ステップS150~ステップS200の繰り返し処理を行わず、代わりにステップS160~ステップS200の処理を1回行う構成であってもよい。この場合、ステップS160~ステップS200の処理において用いる速度は、鉄道車両Tの速度である。また、この場合、情報処理装置30は、ステップS210~ステップS240の繰り返し処理を行わず、代わりにステップS220~ステップS240の処理を1回行う。そして、この場合、情報処理装置30は、ステップS240において、鉄道車両Tの速度が一定、且つ、既知であるため、対応情報に速度情報を対応付ける構成であってもよく、対応情報に速度情報を対応付けない構成であってもよい。
【0082】
<対応情報に基づいて軌道変位を推定する処理>
以下、図12を参照し、情報処理装置30が対応情報に基づいて軌道変位を推定する処理について説明する。図12は、情報処理装置30が対応情報に基づいて軌道変位を推定する処理の流れの一例を示す図である。以下では、一例として、図12に示したステップS310の処理が開始されるよりも前のタイミングにおいて、鉄道車両Tの走行情報に基づく軌道Rの軌道変位の推定を開始する操作を情報処理装置30が受け付けている場合について説明する。また、以下では、一例として、当該タイミングにおいて、情報処理装置30が、当該操作に応じて、当該走行情報の取得の要求をサーバ20に送信している場合について説明する。また、以下では、当該タイミングにおいて、図4に示したフローチャートの処理によって対応情報が記憶部32に記憶されている場合について説明する。
【0083】
サーバ20に走行情報の取得の要求を送信した後、受信部361は、当該要求に対する応答として、当該要求として送信した走行識別情報を含む複数の走行情報を受信する(ステップS310)。
【0084】
次に、推定部365は、ステップS310において受信部361により受信された複数の走行情報に基づいて、記憶部32から対応情報を読み出す(ステップS320)。より具体的には、推定部365は、当該複数の走行情報のそれぞれに含まれる情報のうちの速度情報が示す速度を特定する。そして、推定部365は、例えば、特定した複数の速度が互いに同じ速度である場合、それらの速度と最も近い速度を示す速度情報に対応付けられた対応情報を記憶部32から読み出す。一方、推定部365は、例えば、特定した複数の速度が互いに異なる速度である場合、それらの速度の平均値を算出する。そして、推定部365は、算出した平均値と最も近い速度を示す速度情報に対応付けられた対応情報を記憶部32から読み出す。
【0085】
次に、推定部365は、始点から終点までの範囲を、互いに同じ距離の複数の区間に区切り、区切った区間毎に、ステップS340~ステップS350の処理を繰り返し行う(ステップS330)。ここで、これら複数の区間それぞれの距離は、図4に示したステップS130のように10[m]であってもよく、10[m]より短い距離であってもよく、10[m]より長い距離であってもよい。なお、以下では、説明の便宜上、ステップS330において推定部365により選択された区間を、対象区間と称して説明する。ステップS330において、推定部365は、例えば、これら複数の区間を始点側から順に1つずつ対象区間として選択する。なお、推定部365は、これら複数の空間を、ランダムに1つずつ対象区間として選択する構成であってもよく、他の方法により1つずつ対象区間として選択する構成であってもよい。また、推定部365は、ステップS330~ステップS350において繰り返される繰り返し処理のうちの一部又は全部を、並列に行う構成であってもよい。
【0086】
ステップS330において対象区間を選択した後、推定部365は、ステップS310において受信した走行情報に基づいて、選択した対象区間における予め決められた方向の鉄道車両Tの加速度の絶対値の最大値を特定する。そして、推定部365は、特定した最大値を、対象区間の加速度の絶対値の最大値(すなわち、対象区間において鉄道車両Tの予め決められた方向に発生した振動の大きさの最大値)として特定する(ステップS340)。
【0087】
次に、推定部365は、ステップS320において読み出した対応情報と、ステップS340において特定した加速度の絶対値の最大値とに基づいて、対象区間における軌道Rの軌道変位を特定(推定)する(ステップS350)。すなわち、ステップS350において、推定部365は、当該対応情報に基づいて、当該加速度の絶対値の最大値に対応付けられた当該軌道変位を特定する。
【0088】
ステップS350の処理を行った後、推定部365は、ステップS330に遷移し、次の区間を対象区間として選択する。なお、ステップS350の処理を行った後、推定部365は、次の対象区間として選択可能な区間が残っていない場合、ステップS330~ステップS350の繰り返し処理を終了し、ステップS360に遷移する。
【0089】
このように、推定部365は、ステップS330~ステップS350の繰り返し処理により、始点から終点までの各区間における軌道変位を特定(推定)することができる。図13は、鉄道車両Tの走行情報に基づいて特定された軌道Rの各区間における軌道変位を例示する図である。図13には、2021年2月2日、2021年2月3日、2021年2月4日、2021年2月8日、2021年2月10日、2021年2月24日、2021年2月25日、2021年2月26日のそれぞれにおいて鉄道車両Tの走行情報に基づいて特定された軌道Rの各区間における軌道変位を示すグラフが示されている。当該グラフの横軸は、始点からの距離によって軌道R上の位置を示している。そして、当該グラフ上においてハッチングされている各領域は、始点から終点までの各区間に対応している。ハッチングH1は、0[m]以上3×10-3[m]未満の範囲内に軌道変位が含まれる区間を示している。ハッチングH2は、3×10-3[m]以上10×10-3[m]未満の範囲内に軌道変位が含まれる区間を示している。ハッチングH3は、10×10-3[m]以上15×10-3[m]未満の範囲内に軌道変位が含まれる区間を示している。ハッチングH4は、15×10-3[m]以上20×10-3[m]未満の範囲内に軌道変位が含まれる区間を示している。ハッチングH5は、20×10-3[m]以上25×10-3[m]未満の範囲内に軌道変位が含まれる区間を示している。ハッチングH6は、軌道変位が25×10-3[m]以上である区間を示している。図13を見ると、軌道R上の位置のうち始点から25.7[km]の位置と、軌道R上の位置のうち始点から25.8[km]の位置との間、及び、軌道R上の位置のうち始点から25.8[km]の位置と、軌道R上の位置のうち始点から25.9[km]の位置との間に、軌道変位が大きくなっている区間が存在していることが分かる。これにより、情報処理装置30のユーザは、周囲と比較して軌道変位が大きい箇所を、軌道Rにおいて異常が生じる可能性の高い箇所として容易に特定することができる。そして、この特定は、軌道変位と、振動の大きさとの間の相関関係を示す対応情報に基づいて行われているため、推定結果の導出過程がブラックボックス化されている機械学習のモデルを用いた場合と比較して、信頼性が高い。なお、軌道変位が大きくなっている区間がある範囲に含まれるように現れている理由は、鉄道車両Tの位置の特定に用いられているGPSの精度が高くないためであると考えられる。このため、情報処理装置30は、測定装置10が用いるGPS(Global Positioning System)等の位置特定の精度の向上に応じて、軌道変位が高い区間を更に精度よく特定することができるようになる。
【0090】
ステップS330~ステップS350の繰り返し処理を推定部365が終了させた後、表示制御部366は、ステップS330~ステップS350の繰り返し処理によって推定部365が特定した各区間の軌道変位に基づいて、始点から終点に至るまでの間における軌道Rの軌道変位の変化を示す波形を示す画像を含む軌道変位波形画像を生成する(ステップS360)。軌道変位波形画像は、当該画像を含む画像であれば、如何なる画像であってもよい。例えば、軌道変位波形画像は、図13に示したグラフを含む画像であってもよい。
【0091】
表示制御部366は、ステップS360において生成した軌道変位波形画像を表示部35に表示させ、図12に示したフローチャートの処理を終了する。
【0092】
以上のように、情報処理装置30は、記憶部32に予め記憶された対応情報と、サーバ20から受信した鉄道車両Tの走行情報とに基づいて、軌道R上の各区間の軌道変位を推定する。これにより、情報処理装置30は、推定した軌道R上の各区間の軌道変位に基づいて、軌道Rの保守作業を効率化させることができる。
【0093】
以上説明したように、本実施形態に係る情報処理装置(上記において説明した例では、情報処理装置30)は、鉄道車両(上記において説明した例では、車両モデルが表す鉄道車両)が走行する第1軌道(上記において説明した例では、軌道R)の始点から第1軌道の終点に至るまでの軌道変位の変化を示す波の波形を軌道変位波形とし、互いに異なる複数の軌道変位波形を生成する第1生成部(上記において説明した例では、第1生成部362)と、第1生成部により生成された複数の軌道変位波形毎に、始点から終点に至るまでの第1軌道の軌道変位を示す波の波形が、軌道変位波形が示す波形と一致している場合における第1軌道を仮想的に走行する鉄道車両において、始点から終点に至るまでの間に発生すると推定される振動の変化を示す波の波形である振動波形を生成する第2生成部(第2生成部363)と、第1生成部により生成された複数の軌道変位波形と、第2生成部により複数の軌道変位毎に生成された振動波形とに基づいて、軌道変位の大きさと、振動の大きさとの相関関係を示す対応情報を生成する第3生成部(上記において説明した例では、第3生成部364)と、を備える。これにより、情報処理装置は、精度の高い軌道変位の推定を容易に行わせることができる。
【0094】
また、情報処理装置では、始点から終点までの間は、複数の区間に分割されており、第1生成部は、生成した複数の軌道変位波形毎に、複数の区間毎の軌道変位を示す軌道変位情報を生成し、第2生成部は、複数の軌道変位波形毎に生成した振動波形毎に、複数の区間毎の振動の大きさを示す振動情報を生成し、第3生成部は、第1生成部により生成された複数の区間毎の軌道変位情報と、第2生成部により生成された複数の区間毎の振動情報とに基づいて、対応情報を生成する、構成が用いられてもよい。これにより、情報処理装置は、複数の区間それぞれの距離を調整することにより、対応情報の生成に要する時間を短くすること、対応情報が示す相関関係の信頼性を向上させること等ができる。
【0095】
また、情報処理装置では、第1生成部は、複数の区間毎の軌道変位の最大値を、複数の区間毎の軌道変位として特定し、第2生成部は、複数の区間毎の振動の大きさの最大値を、複数の区間毎の振動の大きさとして特定する、構成が用いられてもよい。これにより、情報処理装置は、対応情報に基づいて推定される軌道変位が過小評価されてしまうことを抑制することができる。
【0096】
また、情報処理装置では、第3生成部は、第1生成部により生成された複数の区間毎の軌道変位情報と、第2生成部により生成された複数の区間毎の振動情報との散布図に基づく回帰分析により、応答曲面を示す情報を対応情報として生成する、構成が用いられてもよい。これにより、情報処理装置は、軌道変位と振動の大きさとの相関関係を明示的に示すことができるとともに、鉄道車両の振動の大きさによって第1軌道上の各区間の軌道変位の推定を行わせることができる。これは、軌道変位の推定を簡易なものにすることに繋がるため、望ましいことである。
【0097】
また、情報処理装置では、第3生成部は、回帰分析として、ガウス過程回帰を用いる、構成が用いられてもよい。これにより、情報処理装置は、直線回帰を用いる場合と比較して、軌道変位についてより高い精度の推定を実現させる対応情報を生成することができる。
【0098】
また、情報処理装置では、対応情報が記憶される記憶部(上記において説明した例では、記憶部32)と、第1鉄道車両(上記において説明した例では、鉄道車両T)の第1軌道の走行において、始点から終点に至るまでの間に発生すると推定される振動の変化を示す波の波形を示す対象振動波形情報と、記憶部に記憶された対応情報とに基づいて、複数の区間毎の軌道変位を推定する推定部(上記において説明した例では、推定部365)と、を備える、構成が用いられてもよい。これにより、情報処理装置は、推定した第1軌道上の各区間の軌道変位に基づいて、第1軌道の保守作業を効率化させることができる。
【0099】
また、情報処理装置では、第1生成部は、第1軌道を走行する鉄道車両の互いに異なる複数の速度毎に、複数の軌道変位波形を生成し、第2生成部は、複数の速度のそれぞれに応じた複数の軌道変位波形毎に、振動波形を生成し、第3生成部は、複数の速度のそれぞれに応じた対応情報を生成する、構成が用いられてもよい。これにより、情報処理装置は、対応情報に基づく軌道変位の推定について、第1軌道を走行する第1鉄道車両の速度による不定性を小さくすることができる。
【0100】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない限り、変更、置換、削除等されてもよい。
【0101】
また、以上に説明した装置(例えば、測定装置10、サーバ20、情報処理装置30等)における任意の構成部の機能を実現するためのプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピュータシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD(Compact Disk)-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリー(RAM:Random Access Memory)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0102】
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0103】
1…情報処理システム、10…測定装置、20…サーバ、30…情報処理装置、31…プロセッサ、32…記憶部、33…入力受付部、34…通信部、35…表示部、36…制御部、361…受信部、362…第1生成部、363…第2生成部、364…第3生成部、365…推定部、366…表示制御部、R…軌道、T…鉄道車両
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