(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055568
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】ドリップバッグ
(51)【国際特許分類】
B65D 77/00 20060101AFI20230411BHJP
A47J 31/06 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
B65D77/00 E
A47J31/06 160
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165063
(22)【出願日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】396015057
【氏名又は名称】大紀商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】速水 亮佑
【テーマコード(参考)】
3E067
4B104
【Fターム(参考)】
3E067AA05
3E067AB24
3E067BA12A
3E067BB01A
3E067BB06A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BC04A
3E067CA08
3E067EB03
3E067EE17
3E067FB17
4B104AA07
4B104BA43
4B104BA50
4B104EA20
(57)【要約】
【課題】ドリップバッグの袋本体の開封を容易とし、かつ、袋本体の開封の容易さを享受できる掛止部材のデザイン上の制約を低減させる。
【解決手段】ドリップバッグ1Aが、通水濾過性シート10で形成された袋本体11、薄板状材料で形成され袋本体の外表面に設けられた掛止部材20、及び袋本体11に充填されている抽出材料Mを有する。袋本体11は、該袋本体の上辺11aを共有する表面11xと背面11yを有し、表面11xと背面11yの少なくとも一方に袋本体11の上辺11aに沿った易開裂線12を有し、該易開裂線12により表面11xと背面11yの開裂のし易さが異なる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通水濾過性シートで形成された袋本体、薄板状材料で形成され袋本体の外表面に設けられた掛止部材、及び袋本体に充填されている抽出材料を有するドリップバッグであって、
袋本体は、該袋本体の上辺を共有する表面と背面を有し、表面と背面の少なくとも一方に袋本体の上辺に沿った易開裂線を有し、該易開裂線により表面と背面の開裂のし易さが異なるドリップバッグ。
【請求項2】
袋本体の表面と背面の一方のみの上部に袋本体の上辺に沿った易開裂線が形成されている請求項1記載のドリップバッグ。
【請求項3】
袋本体の表面と背面の双方の上部に袋本体の上辺に沿った易開裂線が形成されており、双方の易開裂線の開裂のし易さが異なる請求項1記載のドリップバッグ。
【請求項4】
袋本体の上辺が袋本体の表面と背面とのシール辺である請求項1~3のいずれかに記載のドリップバッグ。
【請求項5】
袋本体の上辺に沿った易開裂線がミシン目であり、該ミシン目のカット長Lcとアンカット長Luの比率Lc/Luが、袋本体の幅方向の中央部でその両側の領域よりも大きい請求項1~4のいずれかに記載のドリップバッグ。
【請求項6】
掛止部材の上辺近傍において、袋本体幅方向の中央部における掛止部材と袋本体との貼着領域が、その両側の貼着領域に比して掛止部材の上辺方向に突出している請求項1~5のいずれかに記載のドリップバッグ。
【請求項7】
袋本体の表面側及び背面側において、掛止部材は袋本体幅方向の中央部に、袋本体に固定された中央固定部、中央固定部の左右両側辺を引き起こしの軸として袋本体から引き起こし可能な掛止部を有する請求項1~6のいずれかに記載のドリップバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ等の容器に掛止することにより、容易にドリップ式でコーヒー、紅茶、緑茶、漢方薬等の抽出液を得られるようにするドリップバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
一杯分のコーヒーの抽出を手軽に行えるようにすることを目的として、コーヒー粉を充填した袋本体と、その袋本体をカップに掛けられるようにする掛止部材とを備えた使い捨てのドリップバッグが種々の製品形態で市場に出回っている。
【0003】
例えば、コーヒー粉が充填された袋本体とその袋本体に貼着されている掛止部材とを備え、袋本体の上辺に沿ってミシン目が形成されたドリップバッグであって、そのミシン目を破って袋本体を開封した後に片手で袋本体を開口できるように、掛止部材に特定の折れ線を形成したドリップバッグがある(特許文献1)。このドリップバッグによれば、ミシン目で袋本体を開封し、袋本体の上端部を除去するには両手を使うことが必要となるが、袋本体を広く開口させるには、片手でドリップバッグの両側辺を把持し、その両側辺を押し潰すように力をかけるだけでよく、開口操作に続けてドリップバッグをカップに掛止させることも可能となる。
【0004】
また、袋本体の上辺の全幅に弱シール部を有し、下辺の全幅に強シール部を有することで、ドリップバッグの袋本体の開封、開口、カップへの掛止という一連の流れを片手で行えるようにしたドリップバッグが提案されている。このドリップバッグは、工業的には袋本体の上辺の弱シール部と下辺の強シール部とを同時に形成する特定の超音波溶着溶断装置を備えた充填包装機を用いて製造される(特許文献2)。しかしながら、弱シール部が不用意に開封せず、かつ弱シール部を意図的に開封するときには容易に開封できるように弱シール部のシール強度を超音波溶着溶断装置で微調整することが難しい。
【0005】
一方、袋本体の開封時に、袋本体の表裏を掛止部材で互いに反対方向に引っ張るにあたり、開封に必要とされる力を著しく低減させ、開封時の内容物の飛び散りをなくすドリップバッグとして、掛止部材の幅方向の中央部に掛止部材の上端から下方へ伸びた折れ線を設け、かつ掛止部材の引き起こしの固定端を掛止部材の幅方向の中央部に設けることが提案されている(特許文献3)。このドリップバッグによれば開封は容易となるが、掛止部材のデザイン上の制約が多くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5326366号公報
【特許文献2】特許第6657624号公報
【特許文献3】特開2021-69479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来技術に対し、本発明は、例えば、ドリップバッグの袋本体の表裏面を互いに反対方向に引っ張るだけで内容物の飛び散り無く袋本体が開封するように、袋本体の開封を容易とし、かつ、この袋本体の開封の容易さを享受できる掛止部材のデザイン上の制約を低減し、またドリップバッグの製造は、既存の汎用的な充填包装機又は超音波溶着溶断装置の使用で足りるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、ドリップバッグの袋本体が、該袋本体の上辺を共有する表面と背面を有する場合に、表面及び背面の一方のみに上辺に沿った易開裂線を形成するなどにより、袋本体の表面の上部と背面の上部とで開裂のし易さを異ならせると、袋本体の表面と背面が互いに反対方向に引っ張られるようにして袋本体を開裂させるときに、袋本体を開裂させる力が、表面と背面のうち開裂し易い方の易開裂線に集中し、袋本体が容易に開裂することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は、通水濾過性シートで形成された袋本体、薄板状材料で形成され袋本体の外表面に設けられた掛止部材、及び袋本体に充填されている抽出材料を有するドリップバッグであって、
袋本体は、該袋本体の上辺を共有する表面と背面を有し、表面と背面の少なくとも一方に袋本体の上辺に沿った易開裂線を有し、該易開裂線により表面と背面の開裂のし易さが異なるドリップバッグを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、袋本体の表面と背面の少なくとも一方に易開裂線を有し、かつ表面の上部と背面の上部は易開裂線による開裂のし易さが異なるので、袋本体の上部を開裂させるために袋本体の表面と背面が互いに反対方向に引っ張られるようにすると、その引張力は、開裂し易い方の面を形成している易開裂線に集中するので、その易開裂線は容易に開裂する。
【0011】
この開裂の作用機序は種々の形態のドリップバッグに適用することができ、また、ドリップバッグの製造に使用する充填包装機や超音波溶着溶断装置も既存のものを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施例のドリップバッグ1Aの展開図である。
【
図2】
図2は、実施例のドリップバッグ1Aの平面図である。
【
図3】
図3は、カップに掛止させた実施例のドリップバッグ1Aの斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、実施例のドリップバッグ1Aの製造に使用するドリップバッグ製造用シートのロールの説明図である。
【
図4B】
図4Bは、実施例のドリップバッグ1Aの製造に使用するドリップバッグ製造用シートのロールの説明図である。
【
図5】
図5は、実施例のドリップバッグ1Bの平面図である。
【
図6】
図6は、実施例のドリップバッグ1Bの製造に使用するドリップバッグ製造用シートのロールの説明図である。
【
図7】
図7は、実施例のドリップバッグ1Cの平面図である。
【
図8】
図8は、実施例のドリップバッグ1Dの平面図である。
【
図9】
図9は、実施例のドリップバッグ1Eの展開図である。
【
図10】
図10は、実施例のドリップバッグ1Eの平面図である。
【
図11】
図11は、実施例のドリップバッグ1Fの平面図である。
【
図12】
図12は、実施例のドリップバッグ1Gの平面図である。
【
図14】
図14は、実施例1の引張距離と引張応力の特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一又は同等の構成要素を表している。
【0014】
(ドリップバッグの概要)
図2は、本発明一実施例のドリップバッグ1Aの未開封状態の平面図であり、
図1はこのドリップバッグ1Aの展開図である。また
図3は、開口したドリップバッグ1Aをカップ100に掛止した状態の斜視図である。
図2において、細かい斜めハッチングを付した部分は袋本体と掛止部材との貼着領域を表し、粗い斜めハッチングを付した部分は袋本体の表面11xと背面11yとの貼着領域を表している。以降の図の細かい斜めハッチングと粗い斜めハッチングも同様の意味を有する。なお、貼着領域は図示した態様に限られない。また、貼着領域は、薄板状材料の不透明性により、通常は外観上視認することができない。
【0015】
このドリップバッグ1Aは、通水濾過性シート10で形成された袋本体11、ドリップバッグ1Aをカップ100に掛止できるようにするために袋本体11の外表面に設けられた掛止部材20、及び袋本体11に充填されている抽出材料を有する。掛止部材20は薄板状材料で形成されている。また、袋本体の表面11x上の掛止部材と背面11y上の掛止部材20は、袋本体の一方の側辺11b1で連続しており、該側辺11b1に対して対称に形成されている。
【0016】
袋本体11は、該袋本体11の上辺11aを共有する表面11xと背面11yとを有する。本発明においては、この表面11xと背面11yの少なくとも一方に袋本体11の上辺11aに沿った易開裂線12が形成されており、本実施例のドリップバッグ1Aでは袋本体11の上辺11aに沿った易開裂線12が表面11xのみの上部に形成されている。
【0017】
易開裂線12としては、ミシン目等を形成することができる。ミシン目としては、開封を容易にする点からマイクロミシン目を設けることができる。また、本実施例ではミシン目のカット長Lcとアンカット長Luの比率Lc/Luが表面11xの全幅にわたって一定であるが、本発明はこれに限られない。例えば、後述するようにこの比率Lc/Luを、袋本体幅方向の中央部において、その両側よりも大きくすることができる。
【0018】
袋本体11の表面11xと背面11yの双方にミシン目を設ける場合には、表面11xのミシン目における比率Lc/Luと背面11yのミシン目における比率Lc/Luとを異ならせることで、表面11xにおけるミシン目の開裂のし易さと、背面11yにおけるミシン目の開裂のし易さを異ならせてもよい。
【0019】
袋本体11の上辺11aと易開裂線12との距離d1は、好ましくは1.0~4.5mm、より好ましくは1.5~3.5mmである。この距離が小さすぎると、袋本体11の上辺11aが、表面11xと背面11yとが貼着したシール辺である場合に、シール領域と易開裂線12が重なり、易開裂線12の機能が損なわれる虞がある。一方、例えば、表面11xの易開裂線が開裂し、袋本体11が開口すると、表面11xの易開裂線から上辺11aまでの表面11xの切除部分は背面11y側に残存することになる。そのため、袋本体11の上辺11aと易開裂線12との距離d1が大きすぎると、背面11yに残存する表面11xの切除部分が多くなるので背面11yの上端部が袋本体11の開口部内に垂れ、外観が損なわれるので好ましくない。また、この距離d1がさらに大きくなると易開裂線の開裂に要する引張力が大きくなるので好ましくない。
【0020】
掛止部材20の上端部における該掛止部材20と袋本体11との貼着領域Rと易開裂線12との距離d2は、袋本体11の上辺11aと易開裂線12との距離d1より大きいことが好ましく、かつ距離d1と距離d2の合計は4~8mmが好ましい。また、距離d2は1.5~5.0mmが好ましい。距離d2が小さすぎると、掛止部材20の上端部における該掛止部材20と袋本体11との貼着領域Rが袋本体11の易開裂線12と重なって易開裂線12の機能が損なわれる虞があり、反対に大きすぎると、易開裂線12の開裂に要する引張力が大きくなるので好ましくない。なお、掛止部材20と袋本体11との貼着領域Rが易開裂線12と重ならない限り、易開裂線12と掛止部材20とは重なっても良い。
【0021】
(袋本体)
袋本体11は通水濾過性シートから形成される。
袋本体11内には、コーヒー粉、茶葉、又は漢方薬等の抽出材料が充填されている。
【0022】
袋本体11を形成する通水濾過性シート10としては、例えば所定量のコーヒー粉、茶葉、漢方薬等の抽出材料を充填し、注湯した場合に抽出材料の浸出が可能であるものを種々使用することができる。一般に、浸出用シートとしては、例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ビニロン等の合成繊維、レーヨン等の半合成繊維、コウゾ、ミツマタ等の天然繊維の単独又は複合繊維からなる織布あるいは不織布、マニラ麻、木材パルプ、ポリプロピレン繊維等からなる混抄紙等、ティーバッグ原紙等の紙類が知られており、本発明においてもこれらを使用することができるが、ドリップバッグの使用後の廃棄性の点から、通水濾過性シート材料には生分解性繊維を含有させることが好ましい。生分解性繊維としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート等をあげることができる。また、ドリップ時にコーヒー粉に適度な蒸らし効果も付与できるようにするため、これらの繊維材料から通水濾過性シートを製造するに際しては、繊維層の空隙率を調整することによりコーヒー粉に直接接することとなる層を「疎」とし、直接には接しない層を「密」とする疎密の複層構造とし、かつコーヒー粉に直接接することとなる層では疎水性繊維の含有率を高め、コーヒー粉に直接接しない層では疎水性繊維の含有率を下げることが好ましい(特許第3674486号)。
【0023】
本実施例の袋本体11は、平面視が矩形の3方シール袋であり、一方の側辺11b1が通水濾過性シート10の折山となり、もう一方の側辺11b2と上辺11aと底辺11cとが表面11xと背面11yのシール辺になっている。本発明においては袋本体11の上辺11aが通水濾過性シートの折山になっていてもよい。シール辺におけるシール幅は適宜設定することができ、例えば超音波によるシールであれば、0.3~0.6mmとすることができる。
【0024】
また、袋本体11の平面寸法はドリップバッグを掛止するカップ又は容器の大きさに応じて適宜設定することができる。例えば、市販のコーヒーカップで使用できる大きさにすればよい。袋本体11の底部や側部には、必要に応じてマチを設けても良い。
【0025】
(掛止部材)
掛止部材20は、板紙、プラスチックシート等の薄板状材料で形成される。薄板状材料としても、ドリップバッグ1Aの使用後の廃棄性の点から、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート等の生分解性材料を使用することが好ましい。
【0026】
本発明において掛止部材20は種々の形態をとることができるが、本実施例のドリップバッグ1Aでは、
図1の展開図に示すように、袋本体11の表面11xと背面11yに設けられる掛止部材20が、一枚の矩形の薄板状材料の打ち抜きにより形成されており、表面11x上の掛止部材と背面11y上の掛止部材とは連続している。
【0027】
袋本体11の表面11xと背面11yの各面において、掛止部材20は袋本体幅方向の中央部に、袋本体11に固定された中央固定部21、中央固定部21の左右の側辺を引き起こしの軸22として袋本体11から引き起こし可能な掛止部23を有する。
【0028】
より具体的には、中央固定部21は袋本体11の幅の中心線A1上に形成されている。中央固定部21では、その左右の側辺が掛止部23の引き起こしの軸22として袋本体11の表面に固定されればよい。本実施例では、中央固定部21内に掛止部材20と袋本体11との貼着領域が設けられている。中央固定部21の左右の掛止部23を、袋本体11の表面側と背面側とで互いに反対方向に引っ張った場合の掛止部23の安定性を向上させる点から、中央固定部21内の上半分以上の領域を掛止部材20と袋本体11との貼着領域とすることが好ましい。一方、引き起こしの軸22を袋本体11の表面に固定するために、掛止部材20と袋本体11との貼着領域を中央固定部21内に設けることは必ずしも必要ではない。
【0029】
中央固定部21の左右の掛止部23は、前記中心線A1に対して対称に形成されている。掛止部23の下辺には、
図3に示したように、掛止部23をカップ100の開口部壁に安定に載置させるための凹部24が形成されている。
【0030】
掛止部材20において、左右の掛止部23の外側は、袋本体11の開口形状を四角柱状に維持するための補強部25となっている。袋本体11の表面11xにおいて、補強部25の上辺は掛止部材20の上辺20aとなっており、補強部25の上辺と袋本体11の上辺11aとの間には易開裂線12としてミシン目12が形成されている。
【0031】
図2に示すように、袋本体11の表面11x及び背面11yの双方において補強部25の周縁部は袋本体11と貼着している。
【0032】
また表面11x上と背面11y上の掛止部材20には、前記中心線A1上に、掛止部材20の上辺20aから下方へ(即ち、袋本体底辺側へ)折れ線L1が形成され、この折れ線L1の下端から、中央固定部21の左右の掛止部23を画する切れ込みの上部端点へ折れ線L2が形成されている。折れ線L1、L2は、切れ込み、ミシン目、ハーフカット、筋押し等によって形成される。
【0033】
この折れ線L1により、袋本体11の開封時に袋本体11の表面11xと背面11yとを互いに反対方向に引っ張ると、掛止部材20の上辺20aが折れ易くなり、折れ線L1の延長線上の易開裂線12に引張力が集中する。また、折れ線L2によりこの引張力の集中がさらに起こりやすくなる。したがって、袋本体11の表面11xのみに易開裂線12が形成されていることに加えて、折れ線L1、L2によっても易開裂線12が開裂し易くなる。
【0034】
中心線A1上には、掛止部材20の下辺から上方へ伸びた折れ線L1’も折れ線L1と同様に形成され、折れ線L1’の上端から、中央固定部21の左右の掛止部23を画する切れ込みの下部端点へ折れ線L2’が形成されている。これにより、袋本体11の開口形状が
図3に示すように角柱形状で安定する。
【0035】
(使用方法)
このドリップバッグ1Aの使用方法としては、まず、袋本体11の表面11x側と背面11y側の双方において、中央固定部21の両側の掛止部23を袋本体11から引き起こし、それらを摘まみ、表面11x側の掛止部23と背面11y側の掛止部23とを互いに反対方向に引っ張る。袋本体11の上辺11a近傍には、袋本体11の表面11xのみに易開裂線12が形成されているので、この易開裂線12に引張力が集中する。そのため、まず、略中心線A1上の易開裂線12が速やかに開裂することで袋本体11が開封され、その開裂が易開裂線12全体に広がり、袋本体11が容易に広く開口する。
【0036】
また、中心線A1上の掛止部材20の上端部には折れ線L1が形成されていることから、表面11x側の掛止部23と背面11y側の掛止部23とが互いに反対方向に引っ張られることにより掛止部材20の上端部が折れ線L1で折れやすくなり、折れ線L1の延長線上にある易開裂線12に引張力が集中する。この引張力の集中は、折れ線L1の下端と、掛止部23を画する切れ込みの上部端点とを結ぶ折れ線L2によっても起こりやすくなる。したがって、易開裂線12はより一層容易に開裂し、袋本体11が開口する。
【0037】
この開口状態において袋本体11は四角柱状となる。次に、
図3に示すように、掛止部23の凹部24をカップ100の開口部壁に合わせてドリップバッグ1Aをカップ100上に載置する。そして、袋本体11の開口部11mに注湯することによりカップ100内に抽出液を得る。なお、
図3において符号Mは抽出材料を表している。
【0038】
(製造方法)
本実施例のドリップバッグ1Aを、充填包装機を用いて製造するためには、
図4Aに示すドリップバッグ製造用シート15Aのロールを用意することが好ましい。
【0039】
ドリップバッグ製造用シート15Aは、通水濾過性シート10にドリップバッグ1個分の掛止部材20を所定間隔で連続的に配置したものである。図中、二点鎖線で区切った間がドリップバッグ1Aの1個分の領域となる。
【0040】
ドリップバッグ製造用シート15Aを充填包装機にかけ、常法によりドリップバッグ製造用シート15Aの両側辺を合わせてシール(縦シール)することによりドリップバッグ製造用シート15Aを筒状とし、これに対して抽出物の充填と水平方向のシール(横シール)とを交互に行うことにより容易にドリップバッグ1Aを製造することができる。
【0041】
図4Aに示したドリップバッグ製造用シート15Aでは易開裂線12をドリップバッグ製造用シート15Aの一方の側辺寄りのみに形成しているが、
図4Bに示すドリップバッグ製造用シート15A’のように易開裂線12を一方の側辺寄りと他方の側辺寄りの交互に形成してもよい。これにより、ロールからドリップバッグ製造用シートを引き出していく際に該シートの一方の側辺がわが伸びてしまい、ドリップバッグ製造用シートを充填包装機にかけてドリップバッグを連続的に製造していく際にドリップバッグ製造用シートがよれたり、破損したりするというリスクを解消することができるので好ましい。
【0042】
(変形態様)
本発明のドリップバッグは種々の態様をとることができる。例えば、
図6に示したドリップバッグ製造用シート15Bを用いて、
図5に示す表面11x側の平面図のドリップバッグ1Bを得ることができる。このドリップバッグ1Bの背面図は、
図5に示した平面図に対して易開裂線12が形成されていない以外は同一である。
【0043】
ドリップバッグ1Bの掛止部材20は、上述したドリップバッグ1Aと同様の中央固定部21と掛止部23を有し、掛止部23の外側に補強部25を有する。袋本体11も3方シール袋である点で前述のドリップバッグ1Aと共通するが、このドリップバッグ1Bでは袋本体11の上辺11aが通水濾過性シート10の折れ山になっている。また、袋本体11の表面11x側の掛止部材20と背面11y側の掛止部材20とが連続していない。このように本発明は、袋本体の上辺11aがシール辺であることに限定されない。
【0044】
図7に示すドリップバッグ1Cは、上述のドリップバッグ1Aにおいて易開裂線12を構成するミシン目のカット長Lcとアンカット長Luの比率Lc/Luを、袋本体の幅の中心線A1と重なる袋本体幅方向の中央部12aで、その左右の領域12bよりも大きくしたものである。例えば、ミシン目の中央部12aの幅W1を4~12mm、中央部12aにおけるミシン目のカット長Lcとアンカット長Luの比率Lc/Luを4~10とし、中央部12aの左右の領域12bで2~4とする。これにより、易開裂線12の開裂に必要な引張強度を、領域12bと同様の比率Lc/Luでミシン目全体を形成した場合に比して1/3程度にすることができる。
【0045】
図8に示すドリップバッグ1Dは、上述のドリップバッグ1Aにおいて、掛止部材20の上端部において、掛止部材20と袋本体11との貼着領域の形状を変更したものである。即ち、このドリップバッグ1Dでは掛止部材20の上辺20a近傍において、前記中心線A1と重なる袋本体幅方向の中央部における掛止部材20と袋本体11との貼着領域R1が、その左右の貼着領域R2に比して掛止部材20の上辺20a方向に突出している。この中央部の貼着領域R1の突出は、袋本体11の表面11x側と背面11y側の双方で行うことが好ましい。
【0046】
中央部の貼着領域R1の突出形状は、例えば、中央部の貼着領域R1の幅W2を3~8mm、貼着領域R1と掛止部材20の上辺20aとの距離を0~3mm、貼着領域R1の左右の貼着領域R2と掛止部材20の上辺20aと距離を4~10mmとすることが好ましい。これにより、袋本体の表面11x側の掛止部23と背面11y側の掛止部23とを摘まみ、互いに反対方向に引っ張ったときの易開裂線12にかかる力が、易開裂線12の袋本体幅方向の中央部により一層集中し易くなり、易開裂線12の開裂に要する引張力を低下させることができる。
【0047】
本発明を適用できる掛止部材の形状は、袋本体11の表面11x上の掛止部23と背面11y上の掛止部23とを互いに反対方向に引っ張ることにより易開裂線12を開裂させる態様に限られない。特許文献1に記載のドリップバッグのように、袋本体の両側辺を把持し、それを押し潰すように力をかけることで袋本体の表面11x側の掛止部材の中央部と背面11y側の掛止部材の中央部との間隔が広がるように力がかかるものでもよい。
【0048】
例えば、
図9の展開図を有する、
図10に示したドリップバッグ1Eは、特許文献1に記載のドリップバッグにおいて、開封用ミシン目12を、袋本体の表面11xで掛止部材20と袋本体11の上辺との間に形成したもので、袋本体の背面11yには開封用ミシン目12が形成されていない。図中、符号L3は特許文献1に記載のドリップバッグに特徴的なく字形折れ線であり、符号L4はく字形折れ線L3の屈曲部から、袋本体が折り山になっている側辺11b方向へ伸びた折れ線であり、符号L5は掛止部材20の上辺20aから下辺方向に伸びた折れ線である。また、符号27、28は、それぞれ掛止部材20の下部において袋本体11から引き起こし可能に形成された係止部である。掛止部材20の幅の中心線A2上には、掛止部材20の上辺20aから下辺方向へ伸びた短尺の折れ線L1が形成されている。
【0049】
このドリップバッグ1Eによれば、片手でドリップバッグ1Eの両側辺を把持し、それを押し潰すように力かけることで開封用ミシン目12を開裂させて袋本体を開封し、さらに袋本体11を広く開口させ、ドリップバッグ1Eを把持し直すことなくそのままの状態でカップに係止することができるので、ドリップバッグの開封からカップへ係止するまでの操作が極めて簡便になる。
【0050】
図11に示したドリップバッグ1Fは、
図10に示したドリップバッグ1Eに対し、袋本体の表面11x側及び背面11y側の双方において、掛止部材20の上端部における該掛止部材20と袋本体11との貼着領域を、掛止部材20の幅方向の中央部で掛止部材20の上辺20a方向に突出させたものである。この突出した貼着領域R1は、掛止部材20の幅の中心線A2と重なっている。この貼着領域R1の形成により、
図8に示したドリップバッグ1Dと同様に、袋本体11の開封時に易開裂線12の開裂に要する引張力を低下させることができる。
【0051】
図12に示したドリップバッグ1Gは、
図11に示したドリップバッグ1Fにおいて、袋本体の表面11x側と背面側の双方で、掛止部材20の上辺20aの幅方向の中央部に袋本体の上辺11a方向に突出させた突出片29を形成し、突出片29内の一部に貼着領域R1を形成し、掛止部材20の上辺20aから下辺方向へ伸びた短尺の折れ線L1を省略したものである。これにより、袋本体の表面11x側と背面側の突出片29を摘まみ、互いに反対方向に引っ張ることで袋本体を開封することができ、かつ貼着領域R1により開封に要する引張力を低下させることができる。
【0052】
上述した変形態様は適宜組み合わせることができる。また、本発明は種々の形状の掛止部材を有するドリップバッグに適用することができる。
【実施例0053】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
【0054】
実施例1
図1に示した展開図を有するドリップバッグ1Aを製造した。この場合、通水濾過性シートとして湿式不織布にメルトブロー不織布を積層したものを使用し、易開裂線12としてミシン目を形成した。
袋本体の上辺11aとミシン目12の距離d1を2.0mmとした。また、掛止部材20の上端縁に沿って該掛止部材20と袋本体11との貼着領域Rを形成し、貼着領域Rとミシン目12との距離d2を2.5mmとした。ミシン目12はカット長(Lc)1.16mm、アンカット長(Lu)0.16mm、Lc/Lu=7.25で一定とした。
【0055】
開封強度試験
電動計測スタンド(イマダ社製MX2-500N-FA-L)とデジタルフォースゲージ(イマダ社製ZTA-50N)を組み合わせた引張試験機を使用し、
図13に示したように、ドリップバッグの表面側の掛止部23と背面側の掛止部23をそれぞれ引張試験機のクランプ30で摘まみ、互いに反対方向に引っ張る。この場合の引張速度を100mm/minに固定し、引張応力を計測し、最初にミシン目が開裂するときの応力(開封強度)を求める(n=3)。
【0056】
この場合の引張距離と引張応力との一般的な関係を
図14に示す。引張当初は引張距離が大きくなるにしたがって引張応力が高くなるが、ミシン目が開裂すると引張応力が非連続的に低下するので、開封強度を求めることができる。
【0057】
上記の開封強度試験で求めた実施例1のドリップバッグの開封強度を表1に示す。
【0058】
実施例2
ミシン目を、カット長(Lc)1.05mm、アンカット長(Lu)0.44mm、Lc/Lu=2.38で一定とする以外は実施例1と同様にドリップバッグを製造し、開封強度を求めた。結果を表1に示す。
【0059】
実施例3
ミシン目を、袋本体幅方向の中央部の長さ5mmの範囲でカット長(Lc)1.16mm、アンカット長(Lu)0.16mm、Lc/Lu=7.25とし、その両側をカット長(Lc)1.05mm、アンカット長(Lu)0.44mm、Lc/Lu=2.38とする以外は実施例1と同様にドリップバッグを製造し、開封強度を求めた。結果を表1に示す。
【0060】
実施例4
掛止部材の上端部のシール形状を、袋本体幅方向の中央部において袋本体幅方向の長さ6mmの範囲で、掛止部材の上辺に至るまで突出させ、その両側を掛止部材の上辺との距離が5mmの帯状のシールとする以外は実施例1と同様にしてドリップバッグを製造し、開封強度を求めた。結果を表1に示す。
【0061】
実施例5
ミシン目を実施例2と同様にカット長(Lc)1.05mm、アンカット長(Lu)0.44mm、Lc/Lu=2.38で一定とし、掛止部材の上端部のシール形状を実施例4と同様に突出させた以外は実施例1と同様にしてドリップバッグを製造し、開封強度を求めた。結果を表1に示す。
【0062】
実施例6
袋本体の上辺11aとミシン目12の距離d1を1.0mmとする以外は実施例1と同様にしてドリップバッグを製造し、開封強度を求めた。結果を表1に示す。
【0063】
実施例7
袋本体の上辺11aとミシン目12の距離d1を5.0mmとする以外は実施例1と同様にしてドリップバッグを製造し、開封強度を求めた。結果を表1に示す。
【0064】
比較例1
ミシン目12を袋本体の表面11xと背面11yの双方に形成する以外は実施例1と同様にしてドリップバッグを製造し、開封強度を求めた。結果を表1に示す。
【0065】
【0066】
袋本体の表面と背面の双方にミシン目が形成されている比較例1のドリップバッグは袋本体の表面のみにミシン目が形成されている実施例のドリップバッグに比して開封強度が大きく、かつ開封強度のばらつきが大きかった。
【0067】
また、実施例1、2の対比や、実施例4、5の対比から、ミシン目のカット長(Lc)とアンカット長(Lu)との比率Lc/Luを大きくすると開封強度が低下することがわかる。
【0068】
また、実施例1と実施例3からミシン目のカット長(Lc)とアンカット長(Lu)との袋本体幅方向の中央部での比率Lc/Luをその両側の領域よりも大きくすると、この比率Lc/Luを袋本体幅方向の全体で大きくした場合よりも開封強度が低下することがわかる。この比率Lc/Luを袋本体幅方向の全体で大きくするとドリップバッグの製造過程でミシン目の破断のリスクが生じることから、袋本体幅方向の全体で比率Lc/Luが大きい実施例1よりも、中央部でのみ比率Lc/Luが大きくかつ開封強度が低い実施例3のミシン目が有利であることがわかる。
【0069】
実施例1、4の対比や、実施例2、5の対比からは、掛止部材の上端部のシール形状を袋本体幅方向の中央部で掛止部材の上辺方向に突出させると開封強度が低下することがわかる。また、実施例6、7からミシン目と袋本体上辺との距離を小さくすると開封強度が低下すること、この距離が大きすぎると袋本体の背面側の上端部が袋本体の開口部側へ垂れ込み、外観が損なわれることがわかる。