(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055590
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】容器の蓋体
(51)【国際特許分類】
B65D 41/20 20060101AFI20230411BHJP
B65D 51/00 20060101ALI20230411BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20230411BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20230411BHJP
B01L 3/00 20060101ALI20230411BHJP
B65D 41/28 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
B65D41/20
B65D51/00 100
G01N35/02 B
G01N1/00 101K
B01L3/00
B65D41/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165131
(22)【出願日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】517030734
【氏名又は名称】有限会社米田精密金型製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099841
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 恒彦
(72)【発明者】
【氏名】米田 隆治
【テーマコード(参考)】
2G052
2G058
3E084
4G057
【Fターム(参考)】
2G052AD26
2G052CA18
2G052DA12
2G052DA13
2G058EA08
3E084AA02
3E084AA24
3E084AA32
3E084AB05
3E084BA02
3E084CB10
3E084CC10
3E084DB12
3E084DC10
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084HB01
3E084HB10
3E084HC10
3E084KA20
3E084LD30
4G057AB08
4G057AB38
(57)【要約】
【課題】容器の気密性を保ちながら容器に収容された液体を繰り返し取り出せるようにする。
【解決手段】容器10の円筒状の開口12を気密に閉鎖するための蓋体20は、シール部材21と固定部材25とを備えている。シール部材21は、熱可塑性エラストマー等の弾性材料製であり、開口12の内部に嵌入可能でありかつ開口12の内周面に圧接可能な栓部22と、栓部22から突出しかつ開口12の縁部13に当接可能なフランジ部23とを有する。栓部22は厚さ方向に貫通する線状の切込み24を有する。固定部材25は、切込み24を露出させる穴部26を有しており、フランジ部23が開口12の縁部13に気密に圧接するようシール部材21を容器10に対して固定する。蓋体20により開口12が閉鎖された容器10から液体を取り出すときは、シリンジの中空針を切込み24に差し込み、容器10内の液体を吸引する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の開口を有する容器の前記開口を気密に閉鎖するための蓋体であって、
前記開口の内部に嵌入可能でありかつ前記開口の内周面に圧接可能な栓部と、前記栓部から突出しかつ前記開口の縁部に当接可能なフランジ部とを有する、弾性材料からなるシール部材と、
前記フランジ部が前記縁部に気密に圧接するよう前記シール部材を前記容器に固定するための固定部材と、を備え、
前記シール部材は、前記栓部の厚さ方向に貫通する切込みを有する、
容器の蓋体。
【請求項2】
前記栓部は、前記フランジ部側の径が前記開口の内径よりも大きく設定された円錐台状に形成されている、請求項1に記載の容器の蓋体。
【請求項3】
前記栓部は、長軸方向の両端が前記開口の内周面に圧接可能な楕円柱状に形成されておりかつ短軸方向に前記切込みが線状に形成されている、請求項1に記載の容器の蓋体。
【請求項4】
円筒状の開口を有する容器と、
前記開口を気密に閉鎖するための、請求項1から3のいずれかに記載の蓋体と、
を備えた蓋付容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の蓋体、特に、円筒状の開口を有する容器の当該開口を気密に閉鎖するための蓋体に関する。
【背景技術】
【0002】
少量の溶液、例えば、医薬や試薬などの薬液を収容して保存するための容器として、特許文献1および2に記載のような、ガラス製や樹脂製の容器の開口をゴム栓で密栓したバイアルが知られている。バイアルから薬液を取り出すときは、例えば、シリンジに装着した中空針をゴム栓に差し込んで貫通させ、必要量の溶液をシリンジ内に吸引してから中空針をゴム栓から抜きとる。このように、バイアルに収容された薬液は、容器の開口を解放せずにシリンジ内に移動させることができることから、外気と接触することで汚染されたり変質したりするのを防いて所要の目的のために安全に使用することができる。
【0003】
特許文献1および2に記載のバイアルは、高度の安全性が求められる医療用の薬液の保存、収容を目的としたものであることから、薬液の取り出し後に処分されるのが一般的である。しかし、化学分析において使用する各種の試薬や分析試料などの溶液についても、取り出し時の汚染や変質を防ぐ目的でバイアルに保存するのが好ましいことがある。この場合、バイアルは、使い切りにせず、ある程度の量の溶液を収容して必要なときに必要な分量を取り出せるようにするのが便利であり、また、経済的である。
【0004】
しかし、バイアルのゴム栓は、シリンジの中空針を差し込むことで微細な貫通穴が形成されてしまう。よって、バイアル内で引続き保存される溶液は、この貫通穴を通じ、外気と接触して汚染されたり揮散したりする可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平3-38538号公報
【特許文献2】国際公開2012/090328
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、容器の気密性を保ちながら容器の収容物を繰り返し取り出せるようにしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、円筒状の開口を有する容器の当該開口を気密に閉鎖するための蓋体に関するものである。この蓋体は、容器の開口の内部に嵌入可能でありかつ容器の開口の内周面に圧接可能な栓部と、栓部から突出しかつ容器の開口の縁部に当接可能なフランジ部とを有する、弾性材料からなるシール部材と、フランジ部が容器の開口の縁部に気密に圧接するようシール部材を容器に固定するための固定部材とを備えている。シール部材は、栓部の厚さ方向に貫通する切込みを有する。
【0008】
本発明の蓋体を用いて容器の円筒状の開口を閉鎖するときは、開口にシール部材を挿入する。ここでは、開口の縁部にフランジ部が当接するよう開口内にシール部材の栓部を圧入する。そして、開口の縁部に対してフランジ部を圧接した状態でシール部材を固定部材により容器に対して固定し、開口を閉鎖する。このようにして容器に固定されたシール部材の切込みは、それを設けたときの応力が除荷されることで対面部分が密着した状態になり、それによって容器の内外間の通気を阻止することから、容器内の気密性を実質的に維持し得る。
【0009】
本発明の蓋体により開口が閉鎖された容器内から収容物を取り出すときは、例えば、シリンジに装着した中空針をシール部材の切込みを通じて容器内に差し込む。この際、切込みは、シール部材が弾性材料からなることから中空針を差し込むのに従って柔軟に変形して拡幅し、中空針を円滑に貫通させる。そして、この中空針を通じて必要量の収容物をシリンジ内に吸引した後、切込みから中空針を抜きとる。これにより、容器内の収容物は、外気との接触を抑えてシリンジ内に移動し、採取される。
【0010】
中空針を抜きとった後の切込みは、応力が除去されて元の密着状態に回復し、閉鎖する。これにより、切込みは、容器内の気密性を維持する。
【0011】
本発明に係る蓋体の一形態において、栓部は、フランジ部側の径が容器の開口の内径よりも大きく設定された円錐台状に形成されている。
【0012】
本発明に係る蓋体の他の一形態において、栓部は、長軸方向の両端が容器の開口の内周面に圧接可能な楕円柱状に形成されておりかつ短軸方向に切込みが線状に形成されている。
【0013】
他の観点に係る本発明は、蓋付容器に関するものであり、筒状の開口を有する容器と、容器の開口を気密に閉鎖するための本発明に係る蓋体とを備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の蓋体は、容器の気密性を保ちながら容器内の収容物を繰り返し取り出すことができる。
【0015】
本発明の蓋付容器は、蓋体により容器の気密性を保ちながら、蓋体を通じて容器内の収容物を繰り返し取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の一形態に係る蓋付容器の正面一部縦断面分解図。
【
図7】前記蓋付容器の他の変形例の
図3に相当する図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図を参照し、本発明の実施の一形態に係る蓋付容器を説明する。蓋付容器1は、
図1に示すように、医薬、試薬若しくは分析試料などの薬液、インクまたは溶剤などの液体を収容して保存するための容器10と蓋体20とを備えている。
【0018】
容器10は、ガラスや樹脂などの耐溶剤性、耐薬品性を有する材料を用いて形成されたものであり、底部を有しかつ頸部11の径が縮小した円筒状に形成されている(
図2)。頸部11は、開口12を有しており、外周面に螺子溝(図示省略)が形成されている。
【0019】
蓋体20は、弾性材料を用いて形成されたシール部材21と、シール部材21を容器10に対して固定するための固定部材25とを備えている。シール部材21は、容器10の開口12から頸部11内に嵌入可能な円柱状の栓部22と、栓部22の上部から径方向に突出するフランジ部23とを有している。栓部22は、直径が開口12の内径より若干大きく設定されており、開口12内に圧入可能である。フランジ部23の直径は、容器10の頸部11の外径と略一致するよう設定されている。また、シール部材21は、フランジ部23側の上面から厚さ方向に貫通する直線状の切込み24が形成されている(
図3)。
【0020】
シール部材21を形成する弾性材料は、容器10に保存する液体に対する耐性を有するものであれば各種のものを用いることができ、例えば、天然ゴム、ポリブタジエン系ゴム、ニトリル系ゴムおよびクロロプレン系ゴムなどの合成ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムおよびフッ素ゴムなどの樹脂系エラストマー並びにポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系およびポリアミド系などの熱可塑性エラストマーを挙げることができる。なお、蓋体10を後記の二色成形により製造する場合、シール部材21の弾性材料としてフッ素樹脂または熱可塑性エラストマーを用いるのが好ましい。
【0021】
固定部材25は、樹脂材料を用いて形成された縦断面U字状の円筒状部材であって内径が容器10の頸部11の外径と略一致しており、内周面に頸部11の外周面に形成された螺子溝に対応する螺子溝(図示省略)が形成されている。また、固定部材25は、図の上端部の中央に円状の穴部26を有している。
【0022】
固定部材25は、シール部材21と別体として用いられてもよいが、通常は
図1に示すように、上部の内面にフランジ部23を含むシール部材21の上面を密着させることで一体化した状態で用いられるのが好ましい。このように固定部材25とシール部材21とを一体化した蓋体20は、通常、シール部材21の材料を選択の上、固定部材25とシール部材21とを二色成形することで製造することができる。
【0023】
蓋体20は、
図4に示すように、固定部材25の内周面の螺子溝を本体10の頸部11の外周面に形成された螺子溝に対して螺子止めし、それによって固定部材25の穴部26の周辺部と頸部11の開口12の縁部13との間にシール部材21のフランジ部23を挟み込むことで本体10に対して装着することができる。本体10に対して装着された蓋体20は、頸部11の開口12の縁部13にシール部材21のフランジ部23が圧接し、開口11を気密に閉鎖する。また、本体10に対して装着された蓋体20において、シール部材21の切込み24は、固定部材25の穴部26により露出した状態になる(
図3)。穴部26から露出したシール部材21の切込み24は、その形成時に加えた応力を除荷したときの回復力により密着し、開口12の気密性を維持し得る。特に、蓋体20が二色成形品であるとき、シール部材21に残留する成形時の応力が切込み24の閉鎖方向に加わり、開口12の気密性を高める。
【0024】
蓋付容器1に収容、保存された液体を取り出すときは、シリンジの中空針を切込み24内に差し込んでシール部材21に貫通させ、容器10内に挿入する。ここではシール部材21に予め切込み24が設けられていることから、中空針の差し込み時にコアリングが生じにくい。次に、シリンジを操作することで中空針を通じて液体を吸い上げる。これにより、容器10内の液体は、外気との接触が抑えられた状態でシリンジ内に移動し、必要量が取り出される。液体を取り出したシリンジの中空針を切込み24から抜き取ると、切込み24は回復力により密着した状態に戻り、開口12を再度気密に閉鎖する。これにより、容器10内の液体は、一部が取り出された後も外気との接触による変性や揮発が抑えられ、安定に保存される。したがって、蓋付容器1は、液体を安定に保存しながら、必要量を繰り返し取り出すことができる。
【0025】
蓋付容器1から液体を取り出すとき、シリンジに代えてピペットやスポイトなどの吸引具を用いることもできる。この場合、吸引具の吸い口部分を切込み24から容器内に挿入し、必要量の液体を吸引具内に吸い取る。
【0026】
上述の実施の形態ではシール部材21において直線状の切込み24を設けているが、切込み24は、
図5に示すように、円状の穴部26の中心位置から均等間隔で放射状に延びる線状に設けられていてもよい。なお、切込み24は、
図5において三方向の放射状に形成されているが、四方向またはそれ以上の放射状に形成することもできる。
【0027】
上述の実施の形態においてシール部材21の栓部22は、
図6に示すように、下側の外径が縮小する円錐台状に形成されていてもよい。この場合、円錐台状の栓部22は、フランジ部23側の端部の外径が容器10の開口12の内径よりも大きくなるように設定する。この場合、栓部22は、固定部材25を頸部11に対して螺子止めする途上で開口12の内周面に圧接するとともに中心方向に押されて変形することから、本体10に対して蓋体20を装着した状態において、切込み24をより強力に密着させることができ、開口12の気密性をより高めることができる。
【0028】
また、上述の実施の形態ではシール部材21の栓部22が円柱状に形成されているが、栓部22は
図7に示すような楕円柱状に形成することもできる。この場合、栓部22の長径を容器10の開口12の内径よりも若干大きく設定し、切込み24を短軸方向の中央に設ける。このような栓部22を有するシール部材21を備えた蓋体20を容器10に対して固定すると、栓部22の長軸方向の両端部分が開口12の内周面に圧接し、それによる押圧力が長軸の中央方向に加わる。切込み24は、この押圧力により閉鎖方向の回復力がより安定的に作用することから、開口11の気密性をより安定的に高めることができる。
【0029】
さらに、上述の実施の形態では蓋体20の固定部材25が内周面に螺子溝を有しており、それによって蓋体20を容器10に対して螺子止めすることで固定しているが、容器10に対する蓋体20の固定手段として他の手段を用いることもできる。例えば、容器10側の頸部11の外周面に突起を環状に設けるとともに、蓋体20側の固定部材25の内周面に頸部11の突起を乗り越え可能な突起を環状に設ける。この形態では、頸部11の外周面を固定部材25内に圧入したときに固定部材25が撓んでその内周面の突起が頸部11側の突起を乗り越え、固定部材25が頸部11に対して固定される。
【符号の説明】
【0030】
1 蓋付容器
10 容器
12 開口
13 縁部
20 蓋体
21 シール部材
22 栓部
23 フランジ部
24 切込み
25 固定部材