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特開2023-55601ラクトバチルス・パラカセイLM-141分離株及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055601
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】ラクトバチルス・パラカセイLM-141分離株及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20230411BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20230411BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C12N1/20 A
A61K35/747
A61P3/00
A61P3/04
A61P3/10
A61P3/06
A61P1/16
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001515
(22)【出願日】2022-01-07
(31)【優先権主張番号】110137219
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (その1) 開催日 2021年1月8日 開催場所 高雄醫學大學研究所 (その2) ウェブサイトの掲載日 2021年1月25日 ウェブサイトのアドレス https://hdl.handle.net/11296/e2bqfa
(71)【出願人】
【識別番号】522010303
【氏名又は名称】樂牧生技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】謝豐欽
(72)【発明者】
【氏名】呉慶軒
(72)【発明者】
【氏名】林志傑
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA30X
4B065CA41
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC56
4C087CA08
4C087MA52
4C087MA55
4C087NA14
4C087ZA70
4C087ZA75
4C087ZC21
4C087ZC33
4C087ZC35
(57)【要約】
【課題】メタボリック代謝症候群関連疾患の予防や治療に有効な微生物を提供する。
【解決手段】台湾の財団法人食品工業發展研究所のバイオソース収集・研究センターに寄託番号BCRC911037で寄託されているラクトバチルス・パラカセイLM-141。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台湾の財団法人食品工業發展研究所のバイオソース収集・研究センターに寄託番号BCRC911037で寄託されているラクトバチルス・パラカセイLM-141。
【請求項2】
請求項1に記載のラクトバチルス・パラカセイLM-141を有効成分として含み、メタボリック代謝症候群関連疾患の予防や治療に使用されることを特徴とする組成物。
【請求項3】
前記メタボリック代謝症候群関連疾患は、肥満、高血糖症、糖尿病、脂質異常症、高脂血症、脂肪肝及びそれらの組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
食品組成物であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
医薬品組成物であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記医薬品組成物は、薬学的に許容可能な担体を更に含むことを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記医薬品組成物は、非経腸投与、経口投与または局所投与の剤形になっていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台湾の微生物寄託機関である財団法人食品工業發展研究所(Food Industry Research and Development Institute、FIRDI)のバイオソース収集・研究センター(Biosource Collection and Research Center、BCRC)に寄託番号BCRC911037で寄託されているラクトバチルス・パラカセイ(Lactobacillus paracasei)LM-141分離株に関し、該ラクトバチルス・パラカセイLM-141分離株は、メタボリック代謝症候群関連疾患(metabolic syndrome-related disorders)の予防や治療に使用されることができる。
【背景技術】
【0002】
人体が過量の高脂質食品を摂取する上、充分な運動をしていないと、余分のカロリー(食物から得られる栄養学的熱量)が、脂肪の形で脂肪組織(adipose tissue)に蓄積されて、体脂肪(body fat)になる。
【0003】
人の体内の体脂肪の蓄積が正常ではない場合、または脂肪代謝(fat metabolism)に異常がある場合、例えば肥満(obesity)、高トリグリセリド血症(hypertriglyceridemia)、糖尿病(diabetes mellitus)、高血圧(hypertension)、心臓血管疾患(cardiovascular disease、CVDs)などのメタボリック代謝症候群関連疾患に罹る可能性がある。
【0004】
現在、臨床でメタボリック代謝症候群関連疾患の予防や治療に使用される方法は、食事制限と運動以外、抗肥満薬(anti-obesity medication)、血糖降下薬(hypoglycemic agents)または脂質低下薬(hypolipidemic agents)の服用を含む。しかし、上記の薬の長期服用は、希望の効果が得られないだけでなく更には患者に厳重な副作用(side effects)をもたらす可能性がある。従って、この技術分野に関連する研究者は、メタボリック代謝症候群関連疾患の有効な予防や治療が可能であり且つ望まない副作用が生じない薬物の開発に取り組んでいる。
【0005】
乳酸菌(lactic acid bacteria、LAB)は、一般に安全と認められ(generally recognized as safe、GRAS)、且つ、広く知られて使用されているプロバイオティクス(probiotics)である。
【0006】
そのような乳酸菌は、ラクトバシラス属(Lactobacillus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、バシラス属(Bacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ストレプトコッカス属(レンサ球菌属)(Streptococcus)などを含む。
【0007】
従来の研究により、ラクトバチルス・パラカセイ(またはラクチカゼイバチルス・パラカセイ(Lacticaseibacillus paracasei)と称する)は、抗肥満、及び、血中や体内の脂質を低下させるなどの効果がある。例えば、非特許文献1では、高脂肪飼料誘発された肥満[high fat diet(HFD)-induced obesity]のラットに対して、ラクトバチルス・パラカセイST11を投与することにより、ラクトバチルス・パラカセイST11に、ラットの体重を低減し且つ腹部の脂肪重量を減らす効果があることを発見したと示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Tanida M. et al. (2008), Obes. Res. Clin. Pract., doi: 10.1016/j.orcp.2008.04.003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、業界においては、非特許文献1に記載されている微生物以外にも、メタボリック代謝症候群関連疾患の予防や治療に有効な微生物が尚も求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は1種のラクトバチルス分離株の分離に成功し、該分離株は特徴鑑定によりラクトバチルス・パラカセイに属するので、本願出願人によりラクトバチルス・パラカセイLM-141と命名され、台湾の財団法人食品工業發展研究所のバイオソース収集・研究センターに寄託番号BCRC911037で寄託されている。
【0011】
そこで本発明は、台湾の財団法人食品工業發展研究所のバイオソース収集・研究センターに寄託番号BCRC911037で寄託されているラクトバチルス・パラカセイLM-141を提供する。
【0012】
また、本発明は、上記のラクトバチルス・パラカセイLM-141を有効成分として含んでいて、メタボリック代謝症候群関連疾患の予防や治療に使用されることを特徴とする組成物を提供する。
【発明の効果】
【0013】
ラクトバチルス・パラカセイLM-141は、生体内の(in vivo)の実験により、高脂肪飼料(HFD)誘発された肥満のラットに対して、体重、体脂肪、血糖を低減する効果と、耐糖能性(glucose tolerance)とインスリン抵抗性(insulin resistance)とを改善する効果と、脂質異常症(dyslipidemia)及び肝臓の脂肪の蓄積を遅らせる効果とを有するので、本願発明者は、ラクトバチルス・パラカセイLM-141においてメタボリック代謝症候群関連疾患を予防や治療する薬などに発展する潜在能力が高いと考えている。
【0014】
すなわち、本発明のラクトバチルス・パラカセイLM-141は、メタボリック代謝症候群関連疾患の予防や治療に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】各群のラットで経口ブドウ糖負荷試験(oral glucose tolerance test)を行って得られた血糖濃度-時間曲線(blood glucose concentration-time curve)を示す図である。一般対照群は特に処理されていないラットであり、病態対照群は高脂肪飼料が与えられたラットであり、実験群1はラクトバチルス・パラカセイLM-141の実験菌液1が投与され且つHFDが与えられたラットであり、実験群2はラクトバチルス・パラカセイLM-141の実験菌液2が投与され且つHFDが与えられたラットであり、“*”は一般対照群と比べてp<0.05であることを示し、“#” は病態対照群と比べてp<0.05であることを示す。
図2】投与開始から4週、9週、14週が経過した時の、上記各群のラットの空腹時血糖値を示す図である。“*”または“***”は一般対照群と比べてp<0.05またはp<0.001であることを示し、“##” は病態対照群と比べてp<0.01であることを示す。
図3】投与開始から14週が経過した時の、上記各群のラットの恒常性モデル評価のインスリン抵抗性(HOMA-IR)指数を示す図である。“*”は一般対照群と比べてp<0.05であることを示し、“#” は病態対照群と比べてp<0.05であることを示す。
図4】投与開始から14週が経過した時の、上記各群のラットの血清中の総コレステロール濃度を示す図である。“*”は一般対照群と比べてp<0.05であることを示し、“#” は病態対照群と比べてp<0.05であることを示す。
図5】投与開始から14週が経過した時の、上記各群のラットの血清中のトリグリセリド濃度を示す図である。“*”は一般対照群と比べてp<0.05であることを示し、“#”または“##”は病態対照群と比べてp<0.05またはp<0.01であることを示す。
図6】投与開始から14週が経過した時の、上記各群のラットの血清中の低密度リポタンパク質/高密度リポタンパク質(LDL/HDL)比率を示す図である。“*”は一般対照群と比べてp<0.05であることを示し、“#” は病態対照群と比べてp<0.05であることを示す。
図7】投与開始から14週が経過した時の、上記各群のラットの血清中のアスパラギン酸アミノ基転移酵素/アラニンアミノ基転移酵素(AST/ALT)比率を示す図である。“*”は一般対照群と比べてp<0.05であることを示し、“#” は病態対照群と比べてp<0.05であることを示す。
図8】投与開始から14週が経過した時の、上記各群のラットの肝臓組織がオイルレッドO(Oil Red O)により染色された後観察された結果を示す図である。矢印は脂肪滴(lipid droplets)の蓄積を指す。
図9】投与開始から14週が経過した時の、上記各群のラットの肝臓組織がヘマトキシリン-エオシン(hematoxylin-eosin)染色により染色された後観察された結果を示す図である。矢印は脂肪空胞(fat vacuoles)の蓄積を指す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、何らかの先行技術文献が本明細書において引用されても、台湾またはいかなる国においても、該先行技術文献の内容が本発明の属する分野における一般知識であることを示すものではないことを理解されたい。
【0017】
また、「含む」という用語は「含むが、これに限定されない」ことを意味し、「有する」という用語もこれに対応する意味を有することも理解されたい。
【0018】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。当業者であれば、本開示の実施において、本明細書に記載のものと類似又は同等の多くの方法及び材料を認識し、利用することができる。実際、本開示は記載された方法及び材料に決して限定されない。
【0019】
本発明は、台湾の財団法人食品工業發展研究所のバイオソース収集・研究センター(BCRC of FIRDI)に寄託番号BCRC911037で寄託されているラクトバチルス・パラカセイLM-141分離株を提供する。
【0020】
本発明は、また、ラクトバチルス・パラカセイLM-141を有効成分として含み、メタボリック代謝症候群関連疾患の予防や治療に使用される組成物を提供する。
【0021】
本明細書で使用する場合、「メタボリック代謝症候群(metabolic syndrome)」という用語は、個体において慢性の代謝異常により1つ以上の関連疾患が(多数の場合には同時に)発生することを指す。
【0022】
ここでいうメタボリック代謝症候群関連疾患は、具体的には例えば、これらに限らないが、メタボリック代謝症候群、肥満、高血糖症(hyperglycemia)、高インスリン血症(hyperinsulinemia)、糖尿病[2型真性糖尿病(type 2 diabetes mellitus、T2DM)を含む]及びそれによる合併症(complications) [例えば、糖尿病性網膜症(diabetic retinopathy)、糖尿病性白内障(diabetic cataract)、糖尿病性神経障害(diabetic neuropathy)、糖尿病性ネフロパシー腎症(diabetic nephropathy)及び糖尿病性心筋症(diabetic cardiomyopathy)など]、脂質異常症(dyslipidemia)[高脂血症(hyperlipidemia)、高トリグリセリド血症(hypertriglyceridemia)、高コレステロール血症(hypercholesterolemia)及び高リポタンパク血症(hyperlipoproteinemia)を含む]、高血圧、心臓血管疾患[例えば、冠動脈疾患(coronary artery diseases、CADs)、心筋梗塞(myocardial infarction)、脳卒中(stroke)、心不全(heart failure)、狭心症(angina pectoris)及び心不整脈(cardiac arrhythmias)など]、脂肪肝(fatty liver) [また肝脂肪変性(hepatic steatosis)と称し、急性脂肪肝 (acute fatty liver)、慢性脂肪肝(chronic fatty liver)、大滴性の脂肪肝(macrovesicular fatty liver)、小滴性脂肪肝(microvesicular fatty liver)及び非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease、NAFLD)を含む]、肝線維症(hepatic fibrosis)、肝硬変(cirrhosis)を含むことができる。
【0023】
好ましくは、メタボリック代謝症候群関連疾患は、肥満である。
【0024】
好ましくは、メタボリック代謝症候群関連疾患は、2型真性糖尿病(T2DM)である。
【0025】
本明細書で使用する場合、メタボリック代謝症候群関連疾患に対する用語「治療する(treating)」又は「治療(treatment)」は、該疾患の重症度(severity)または該疾患の症状(symptom)が低減される(reduced)、あるいは、該疾患が部分的に(partially)または完全に(entirely)取り除かれる(eliminated)ようにすることを指す。
【0026】
本明細書で使用する場合、メタボリック代謝症候群関連疾患に対する用語「予防する(preventing)」又は「予防(prevention)」は、個体が診査により該疾患を罹患していない時に、該疾患の発生率(incidence)を削減(eliminate)または低減し(reduce)、及び、該疾患の可能性(likelihood)または確率(probability)を遅らせ(slow)、遅延(delay)、制御(control)または減らす(decrease)ことを指す。
【0027】
本発明において、ラクトバチルス・パラカセイLM-141は、生菌、死菌、濃縮された(concentrated)、未濃縮(non-concentrated)、液体(liquid)、ペースト(paste)、半固形(semi-solid)、固形(solid) [例えば、ペレット(pellet)、顆粒(granule)または粉末(powder)]、加熱不活性化した(heat-inactivated)、冷凍(frozen)、乾燥した(dried)、凍結乾燥した(freeze-dried)[例えば、凍結乾燥またはスプレー/流動床乾燥 (spray/fluid bed dried)] の形態であり得る。本発明の好ましい具体例において、ラクトバチルス・パラカセイLM-141は生菌の形態である。
【0028】
本発明において、前記組成物は、食品組成物(food composition)とすることができ、例えば食品添加物(food additive)の形態で、食用材料(edible material)に添加されて、人や動物が食用するための食品製品に作成することができる。本発明において、該食品製品の例として、これらに限らないが、牛乳(milk)や濃縮乳(concentrated milk)などの液状乳製品(fluid milk products)、ヨーグルト(yogurt)やサワーミルク(sour milk)やフローズンヨーグルト(frozen yogurt)などの発酵乳(fermented milk)、粉ミルク(milk powder)、アイスクリーム(ice cream)、クリームチーズ(cream cheeses)、ドライチーズ(dry cheeses)、豆乳(soybean milk)、発酵豆乳(fermented soybean milk)などの乳酸菌発酵飲料(lactic acid bacteria fermented beverages)、野菜・フルーツジュース(vegetable-fruit juices)、フルーツジュース(fruit juices)、スポーツドリンク(sports drinks)、菓子(confectionery)、ゼリー(jelly)、キャンディー(candies)、乳児用調製粉乳(infant formula)などの乳児用食品(infant food)、漢方薬(Chinese herbal medicine)などの健康食品(health foods)、動物用飼料(animal feeds)、栄養補助食品(dietary supplements)を含むことができる。
【0029】
本発明において、前記組成物は、医薬品組成物(pharmaceutical composition)とすることができる。
【0030】
本発明において、該医薬品組成物は、非経口投与、非経腸投与(parenteral administration)、経口投与(oral administration)または局所投与(topical administration)の剤形(dosage form)にすることができる。該医薬品組成物は、経口投与の剤形にすることが好ましい。
【0031】
本発明において、該医薬品組成物は、薬物の製造技術に広く使用されている薬学的に許容可能な担体(pharmaceutically acceptable carrier)を更に含むことができる。該薬学的に許容可能な担体は、以下に挙げられているもの及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるものを含むことができ、例えば、溶剤(solvent)、緩衝剤(buffer)、乳化剤(emulsifier)、懸濁剤(suspending agent)、分解剤(decomposer)、崩壊剤(disintegrating agent)、分散剤(dispersing agent)、結合剤(binding agent)、賦形剤(excipient)、安定化剤(stabilizing agent)、キレート剤(chelating agent)、希釈剤(diluent)、ゲル化剤(gelling agent)、防腐剤(preservative)、湿潤剤(wetting agent)、潤滑剤(lubricant)、吸収遅延剤(absorption delaying agent)、リポソーム(liposome)及びそれらと類似するものが挙げられる。前述の薬学的に許容可能な担体の選択及び量は、当業者の専門知識及び通常の技術の範囲内である。
【0032】
本発明において、該医薬品組成物は、当業者の専門的な知識技術により非経腸投与に適する剤形[注射品(injection)、例えば、滅菌水溶液(sterile aqueous solution)または分散液(dispersion)を含む]に作成することができ、且つ、腹腔内注射(intraperitoneal injection)、胸腔内注射(intrapleural injection)、筋肉内注射(intramuscular injection)、静脈内注射(intravenous injection)、動脈内注射(intraarterial injection)、関節内注射(intraarticular injection)、滑液嚢内注射(intrasynovial injection)、髄腔内注射(intrathecal injection)、頭蓋内注射(intracranial injection)、表皮内注射(intraepidermal injection)、皮下注射(subcutaneous injection)、皮内注射(intradermal injection)、病巣内注射(intralesional injection)及び舌下投与(sublingual administration)からなる方法の群より選択されて投与する。
【0033】
本発明において、該医薬品組成物は、当業者の専門的な知識技術により経口投与に適する剤形に作成することができ、例えば、これらに限らないが、無菌粉末、タブレット(tablet)、トローチ(troche)、ロゼンジ(lozenge)、ペレット(pellet)、カプセル(capsule)、分散性粉末(dispersible powder)、顆粒(granule)、溶液、懸濁液(suspension)、エマルジョン(emulsion)、シロップ(syrup)、エリキシル剤(elixir)、スラリー(slurry)及びそれらと類似するものを含む。
【0034】
本発明において、該医薬品組成物は、当業者の専門的な技術知識により局所的に皮膚上に使用する外用剤(external preparation)に作成することができ、例えば、これらに限らないが、エマルジョン(emulsion)、ゲル(gel)、軟膏(ointment)、クリーム(cream)、パッチ(patch)、塗布薬(liniment)、パウダー(powder)、エアロゾル(aerosol)、スプレー(spray)、ローション(lotion)、セラム(serum)、ペースト(paste)、泡(foam)、ドロップ(drop)、懸濁液(suspension)、膏薬(salve)、包帯(bandage)を含む。
【0035】
本発明はまた、メタボリック代謝症候群関連疾患の予防や治療に使用する方法を提供し、それは個体に上記のラクトバチルス・パラカセイLM-141を投与することを含む。
【0036】
また、メタボリック代謝症候群関連疾患を罹患する個体または罹患する疑いがある個体を、上記のラクトバチルス・パラカセイLM-141を投与することにより治療する方法を提供する。
【0037】
本明細書で使用する場合、用語「投与すること(administering)」及び「投与(administration)」は、互換的に使用することができ、且つ、任意の適切なルートで個体に予定の活性成分を導入(introducing)、提供(providing)または供給(delivering)し、予定の効果を奏することを指す。
【0038】
本明細書で使用する場合、用語「個体(subject)」は、関心対象の哺乳類を指し、例えば、ヒト(humans)、サル(monkeys)、牛(cows)、羊(sheep)、馬(horses)、豚(pigs)、ヤギ(goats)、イヌ(dogs)、猫(cats)、マウス(mice)、ラット(rats)が挙げられる。
【0039】
本発明により、ラクトバチルス・パラカセイLM-141の投与量及び投与回数は、治療する疾患の重症度、投与ルート、治療する個体の年齢、身体状況及び反応といった要因により変化する。一般的に、ラクトバチルス・パラカセイLM-141は、1回の投与量または複数回の投与量で非経腸投与、経口投与または局所投与により投与されることができる。
【0040】
以下、本発明の実施例について説明する。これらの実施例は、例示的かつ説明的なものであり、且つ、本発明を限定するものと解釈されるべきではないことを理解されたい。
実施例
一般実験材料
1.実験動物
以下の実施例に使用するオスのSprague-Dawley(SD)ラット(5週齢)は、台湾BioLasco Taiwan Co., Ltd社から購入したものである。
【0041】
すべての実験動物は、明期が12時間及び暗期が12時間の明暗周期で、室温を25±1℃に維持する独立の空気調節システムがある動物ルームで飼養されていて、充分の水分及び飼料が提供されている。
【0042】
実験動物の飼養環境、処理及びすべての実験手順について、アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health、NIH)の実験動物の管理と使用に関する指針(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)に合致する。
【0043】
2.以下の実施例に使用された一般飼料(normal diet)と高脂肪飼料(high fat diet、HFD)は表1に示される成分を有する。
【0044】
【表1】
【0045】
一般実験方法
1. 統計分析(statistical analysis)
以下の実施例において、各群の実験データは、「平均値(mean)±標準誤差(standard error of the mean、SEM)」で示される。すべてのデータは、統計ソフトSigma Plot(version 10.0、Systat Software Inc.)で統計分析を行い、且つ、スチューデントのt検定(Student‘s t-test)で分析し、各群の間の差異を評価した。得られた結果はp<0.05であれば、統計的有意性(statistical significance)があることを意味する。
【0046】
実施例1:ラクトバチルス分離株LM-141の選別と特徴鑑定
A. ラクトバチルス分離株LM-141の取得元及び分離:
出願者は、台湾泡菜(台湾風の野菜の漬物、台湾の伝統的な市場から購入)をサンプルの取得元として、ラクトバシラスMRS寒天培地(Lactobacilli MRS Agar)(米Becton、Dickinson and Company社製、BD Difco)を用いて、ラクトバチルスの分離及び選別を行い、ラクトバチルス分離株LM-141を得た。
【0047】
ラクトバチルス分離株LM-141が所属する菌種を特定するため、ラクトバチルス分離株LM-141に対して以下Bに記載の解析を行った。
【0048】
B.16S rDNA解析(16S rDNA sequence analysis)
16S rDNA解析は、台湾の国立嘉義大学の食品科学科及び研究所(Department of Food Science at National Chiayi University)の呂英震(Leu Ying Chen)教授の研究室に依頼して行われた。簡単に説明すると、ラクトバチルス分離株LM-141のゲノム(genome)DNAをテンプレート(template)として、細菌の16S rDNA遺伝子により設計され以下に示されるヌクレオチド配列(nucleotide sequence)を有するプライマー対(primer pair)のフォワードプライマー(forward primer)F1及びリバースプライマー(reverse primer)R1を使用して、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction、PCR)を行って、ラクトバチルス分離株LM-141の16S rDNA断片(fragment)を増幅した。PCRの反応条件は以下の表2に示される。
【0049】
フォワードプライマーF1
5’-agagtttgatcctggctcag-3’(配列識別番号:1)
リバースプライマーR1
5’-gtattaccgcggctgctg-3’(配列識別番号:2)
【0050】
【表2】
【0051】
PCRが完了した後、1.5%のアガロースゲル電気泳動(agarose gel electrophoresis)により、大きさが約550bpのPCR増幅生成物を得たかを確認し、ゲルから確認されたPCR生成物を回収純化した。
【0052】
そして、ターゲティング分析(Targeting Sequencing)によりラクトバチルス分離株LM-141の16SrDNA配列(配列識別番号:3)を得た。更に、米国NCBI(National Center for Biotechnology Information)のウェブサイトにおける遺伝子データベースと照会したところ、ラクトバチルス分離株LM-141の16SrDNA配列は、ラクトバチルス・パラカセイの16SrDNA配列[Genbank登録番号(accession number):NC_014334.2]と97%の類似性を有するという結果が得られた。
【0053】
上記の実験結果により、発明者は、本発明のラクトバチルス分離株LM-141が1種のラクトバチルス・パラカセイ分離株であることが判明したので、ラクトバチルス・パラカセイLM-141と命名し、2021年1月29日付で台湾財団法人食品工業發展研究所のバイオソース収集・研究センター(住所:No. 331, Shipin Rd., East Dist., Hsinchu City 300193, Taiwan)に寄託番号BCRC911037で寄託した。
【0054】
実施例2. ラクトバチルス・パラカセイLM-141が肥満関連メタボリック代謝症候群(obesity-related metabolic syndrome)を改善する効果の評価
実験材料:
1. ラクトバチルス・パラカセイLM-141の実験菌液の作成
上記実施例1で得られたラクトバチルス・パラカセイLM-141をMRS培地(MRS Broth)(米Becton、Dickinson and Company社製、BD Difco)に接種し、37℃で12時間培養した。そして、得られた培養物を4℃で4000rpmで10分間遠心分離し、上清液を除いて、適量のPBS(Phosphate-buffered saline)で沈殿物(pellets)を洗って、適量の殺菌された水で分散させて、2×10CFU/mL及び2×10CFU/mLの細菌濃度に調整して、細菌濃度が2×10CFU/mLであるラクトバチルス・パラカセイLM-141の実験菌液1及び細菌濃度が2×10CFU/mLであるラクトバチルス・パラカセイLM-141の実験菌液2を得られた。なお、細菌濃度は、寒天平板計数法(agar plate count)で細菌数を計算して得た。
【0055】
実験方法
A.肥満の誘発及びラクトバチルス・パラカセイLM-141の投与
先ず、オスのSDラットを、1つの一般対照群(n=6)、1つの病態対照群(n=6)、2つの実験群(各群n=8)(即ち実験群1と実験群2)との4群にランダムに分けた。そして、経口胃管栄養法(oral gavage)で、実験群1と実験群2とのラットのそれぞれに1mLの、上記の実験材料の第1項で得られたラクトバチルス・パラカセイLM-141の実験菌液1とラクトバチルス・パラカセイLM-141の実験菌液2とを投与した。一般対照群及び病態対照群のラットには1mLの逆浸透水を投与した。各群のラットは、毎日一回投与され、投与時間合計14週である。
【0056】
投与から2週経過した後、病態対照群、実験群1及び実験群2のラットに高脂肪飼料を与え、一般対照群のラットに一般飼料を与え、合計12週与えた。
【0057】
投与前及び投与開始から14週経過後に、各群のラットの体重を測定した。
【0058】
B.生物サンプルの作成
投与開始から4週及び9週経過した時、及び14週経過した後の体重測定の後に、各群のラットを16時間断食させて(fasting)、そして静脈穿刺からの採血(venipuncture bleeding)により、各群のラットの尾静脈(caudal vein)から血液を収集し、得られた血液サンプルを以下の第F項の実験に使用した。また、第14週の血液サンプルの一部を、4℃で4000rpmで10分間遠心分離して、得られた血清サンプルを以下の第G項~第J項の実験に使用した。
【0059】
第14週後の血液サンプルを収集した後、経口胃管栄養法により各群のラットにブドウ糖溶液(ハネウェル・リーデルデハーン社から購入、商品番号(article number)16325)(用量:2g/kg)を投与し、且つ、ブドウ糖溶液の投与前(即ち第0分)及び投与開始から第15分、第30分に、静脈穿刺からの採血により、各群のラットの尾静脈から血液を収集し、得られた血液サンプルを以下の第E項の実験に使用した。
【0060】
その後、二酸化炭素でラットを屠殺して、各群のラットの脂肪組織(adipose tissue)[即ち、副睾丸脂肪(epididymal fat)及び腎周囲脂肪(perirenal fat)]及び肝組織(liver tissue)を取り出して、それぞれを以下の第D項及び第K項の実験に使用した。
【0061】
C.体重増加比率(body weight gain ratio)の測定
体重増加比率は、各群のラットの投与前及び投与開始から14週経過後の体重を以下の数式(1)に代入して計算された。
数式(1):A=(B-C)/C
A=体重増加比率
B=投与開始から14週経過後の体重(g)
C=投与前の体重(g)
【0062】
そして、一般実験方法の第1項の統計分析により、得られた実験データを分析した。
【0063】
D.体脂肪率(body fat percentage)の測定
上記第B項で得られた各群のラットの脂肪組織の重量を測定して、各群のラットの体脂肪の重量を得た。
【0064】
体脂肪率は、各群のラットの体脂肪の重量及び投与開始から14週経過後の体重を以下の数式(2)に代入して計算された。
数式(2):D=(E/F)×100
D=体脂肪率(%)
E=体脂肪の重量(g)
F=投与開始から14週経過後の体重(g)
【0065】
そして、一般実験方法の第1項の統計分析により、得られた実験データを分析した。
【0066】
E.経口ブドウ糖負荷試験
上記第B項で得られた各群のラットのブドウ糖溶液の投与前(即ち第0分)及び投与開始から第15分、第30分に収集した3種の血液サンプルのそれぞれを、Rightest GM550血糖値測定システム(Rightest GM550 blood glucose monitoring system)(台湾Bionime社製)で血液ブドウ糖濃度(mg/dL)を測定し、そして、得られた血液ブドウ糖濃度を時間に対してグラフを作成し、血糖濃度―時間曲線を得た。
【0067】
そして、一般実験方法の第1項の統計分析により、得られた実験データを分析した。
【0068】
F.空腹時血糖値(fasting blood sugar level)の測定
上記第B項で得られた各群のラットの投与開始から4週、9週及び14週経過した後に収集した血液サンプルを上記Rightest GM550血糖値測定システムで空腹時血糖値(mg/dL)を測定した。
【0069】
そして、一般実験方法の第1項の統計分析により、得られた実験データを分析した。
【0070】
G.恒常性モデル評価のインスリン抵抗性(HOMA-IR)[homeostatic model assessment insulin resistance(HOMA-IR) index]指数の測定
上記第B項で得られた各群のラットの血清サンプルは、製造元の操作マニュアルに基づいてラットインスリンELISAキット(Rat Insulin ELISA kit)(Mercodia AB社製)を使用してインシュリン値(Insulin level)(mIU/L)を測定した。HOMA-IR指数は、得られた各群のラットのインシュリン値及び上記第F項で得られた空腹時血糖値を以下の数式(3)に代入して計算された。
数式(3):G=(H×I)/405
G=HOMA-IR指數
H=空腹時血糖値(mg/dL)
I=インシュリン値(mIU/L)
【0071】
そして、一般実験方法の第1項の統計分析により、得られた実験データを分析した。
【0072】
H.血清総コレステロール(total cholesterol、TC)及びトリグリセリド(triglyceride、TG)濃度の測定
上記第B項で得られた各群のラットの血清サンプルは、台湾の財団法人国家実験研究院国家実験動物センター(National Laboratory Animal Center, R.O.C.)に依頼して、製造元の操作マニュアルに基づいてHITACHI7080生化学自動分析装置(HITACHI 7080 automatic biochemical analyzer)を使用して血清総コレステロール及びトリグリセリド濃度(mg/dL)を測定した。
【0073】
そして、一般実験方法の第1項の統計分析により、得られた実験データを分析した。
【0074】
I.低密度リポタンパク質/高密度リポタンパク質(LDL/HDL)比率[low-density lipoprotein/high-density lipoprotein (LDL/HDL) ratio]の測定
上記第B項で得られた各群のラットの血清サンプルは、台湾の財団法人国家実験研究院国家実験動物センターに依頼して、製造元の操作マニュアルに基づいて上記HITACHI 7080生化学自動分析装置を使用して血清低密度リポタンパク質及び高密度リポタンパク質(mg/dL)を測定した。
【0075】
低密度リポタンパク質/高密度リポタンパク質比率(LDL/HDL ratio)は、得られた各群のラットの血清低密度リポタンパク質及び高密度リポタンパク質を以下の数式(4)に代入して計算された。
数式(4):J=K/L
J=LDL/HDL比率
K=血清低密度リポタンパク質(mg/dL)
L=血清高密度リポタンパク質(mg/dL)
【0076】
そして、一般実験方法の第1項の統計分析により、得られた実験データを分析した。
【0077】
J. アスパラギン酸アミノ基転移酵素/アラニンアミノ基転移酵素(AST/ALT)比率[aspartate aminotransferase / alanine aminotransferase(AST/ALT) ratio]の測定
上記第B項で得られた各群のラットの血清サンプルは、台湾の財団法人国家実験研究院国家実験動物センターに依頼して、製造元の操作マニュアルに基づいて上記HITACHI 7080生化学自動分析装置を使用して血清アスパラギン酸アミノ基転移酵素及びアラニンアミノ基転移酵素濃度(mg/dL)を測定した。
【0078】
アスパラギン酸アミノ基転移酵素/アラニンアミノ基転移酵素比率(LDL/HDL ratio)は、得られた各群のラットの血清中のアスパラギン酸アミノ基転移酵素及びアラニンアミノ基転移酵素濃度を以下の数式(5)に代入して計算された。
数式(5):M=N/O
M=AST/ALT比率
N=血清アスパラギン酸アミノ基転移酵素濃度(mg/dL)
O=血清アラニンアミノ基転移酵素濃度(mg/dL)
【0079】
そして、一般実験方法の第1項の統計分析により、得られた実験データを分析した。
【0080】
K. 肝臓組織の組織病理学検査(histopathological examination)
先ず、4℃で10%のホルマリン(formalin)で、上記第B項で得られた各群のラットの肝臓組織に対して48時間の固定処理(fixation)を行い、そして、一部の固定された組織サンプルを20%のスクロース水溶液に48時間浸漬した。そして、組織サンプルをティシュー・テック(登録商標)O.C.T.コンパウンド(サクラファインテック社製Tissue-Tek(登録商標)O.C.T. Compound)で包埋(embedding)し、そして、切片にして厚さ8μmの組織切片(tissue sections)を得た。得られた組織切片をイソプロパノール(isopropanol)で洗い、Oil Red O染色剤[0.5gのOilRedOを100mLのイソプロパノールに添加し、そして蒸留水と3:2(v/v)の比で混合して得た]で組織内に蓄積された脂肪滴を染色した。光学顕微鏡(オリンパス社製)を用いて、200倍の放大倍率で染色された組織切片を観察し且つ写真を撮った。
【0081】
そして、他の固定された組織サンプルをパラフィン(paraffin)で包埋し、そして、切片にして厚さ3μmの組織切片を得た。得られた組織切片を、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者が知っている常用の技術でヘマトキシリン-エオシンを使用して染色した。光学顕微鏡(オリンパス社製)を用いて、200倍の放大倍率で染色された組織切片を観察し且つ写真を撮った。
【0082】
結果
A.本実験で測定した結果は以下の表3に示される。
【0083】
【表3】
“*”は一般対照群と比べてp<0.05であることを示す。
“#” は病態対照群と比べてp<0.01であることを示す。
【0084】
表3からみると、一般対照群と比較した結果、病態対照群のラットの体重増加比率は、顕著に増加したので、HFDはラットの肥満を誘発することに成功したことが示された。
【0085】
病態対照群と比較した結果、各実験群のラットの体重増加比率は、顕著に低下した、特に実験群2のラットの体重増加比率は、一般対照群の体重増加比率に近い。この実験結果により、本発明のラクトバチルス・パラカセイLM-141は、体重を低減する効果があることが示された。
【0086】
B.体脂肪率の測定
本実験で測定した結果は以下の表4に示される。
【0087】
【表4】
“***”は一般対照群と比べてp<0.001であることを示す。
“##” は病態対照群と比べてp<0.01であることを示す。
【0088】
表4からみると、一般対照群と比較した結果、病態対照群のラットの体脂肪率は、顕著に増加したので、HFDはラットの体脂肪の蓄積(body fat accumulation)を誘発することに成功したことが示された。
【0089】
病態対照群と比較した結果、各実験群のラットの体脂肪率は、顕著に低下した。この実験結果により、本発明のラクトバチルス・パラカセイLM-141は、体脂肪を低減する効果があることが示された。
【0090】
上記の第A項及び第B項の実験結果により、本発明のラクトバチルス・パラカセイLM-141は、体重及び体脂肪を低減する効果があるので、抗肥満に使用できることが明らかになった。
【0091】
C. 経口ブドウ糖負荷試験
図1は、各群のラットが経口ブドウ糖負荷試験により得られた血糖濃度-時間曲線を示す。
【0092】
図1からみると、ブドウ糖溶液を投与した後第0分~第30分において、各群のラットの血糖濃度は時間の経過と伴って上昇した。病態対照群の血糖濃度の上昇程度は、一般対照群の血糖濃度の上昇程度より顕著に高いので、HFDはラットの耐糖能異常(impaired glucose tolerance)を誘発することに成功したことが示された。
【0093】
各実験群のラットの血糖濃度-時間曲線は、一般対照群の血糖濃度-時間曲線に近く、特に実験群2の結果は一般対照群に近い。この実験結果により、本発明のラクトバチルス・パラカセイLM-141は、耐糖能異常を改善する効果があることが示された。
【0094】
D. 空腹時血糖値の測定
図2は、投与開始から、4週、9週、14週が経過した時の、各群のラットの空腹時血糖値を示す。
【0095】
図2からみると、投与開始から、第4週~第14週において、病態対照群のラットの空腹時血糖値は時間の経過と伴って顕著に上昇した。それに対して、一般対照群は顕著な変化がないので、HFDはラットの空腹時血糖値の異常上昇を誘発することに成功したことが示された。
【0096】
病態対照群と比較した結果、各実験群のラットの空腹時血糖値は、顕著に低下して一般対照群の空腹時血糖値に近い。この実験結果により、本発明のラクトバチルス・パラカセイLM-141は、空腹時血糖値を低減する効果があることが示された。
【0097】
E. 恒常性モデル評価のインスリン抵抗性(HOMA-IR)指数の測定
図3は、投与開始から14週が経過した時の、各群のラットの恒常性モデル評価のインスリン抵抗性(HOMA-IR)指数を示す。
【0098】
図3からみると、一般対照群と比較した結果、病態対照群のラットのHOMA-IR指数は顕著に増加したので、HFDはラットのインスリン抵抗性を誘発することに成功したことが示された。
【0099】
病態対照群と比較した結果、各実験群のラットのHOMA-IR指数は、顕著に低下し、特に実験群1のラットで顕著に低下した。この実験結果により、本発明のラクトバチルス・パラカセイLM-141は、インスリン抵抗性を改善する効果があることが示された。
【0100】
上記の第C項~第E項の実験結果により、本発明のラクトバチルス・パラカセイLM-141は、血糖を有効に低減する効果及び耐糖能異常とインスリン抵抗性とを有効に改善する効果があるので、高血糖症及び糖尿病の遅らせに使用できることが明らかになった。
【0101】
F. 血清総コレステロール(TC)及びトリグリセリド濃度(TG)の測定
図4は投与開始から14週が経過した時の、各群のラットの血清中の総コレステロール濃度(TC)を示す。図5は投与開始から14週が経過した時の、各群のラットの血清中のトリグリセリド濃度(TG)を示す。
【0102】
図4及び図5からみると、一般対照群と比較した結果、病態対照群のラットの血清中のTC及びTG濃度は顕著に増加したので、HFDはラットの脂質異常症を誘発することに成功したことが示された。
【0103】
病態対照群と比較した結果、各実験群のラットの血清中のTC及びTG濃度は、顕著に低下して一般対照群の血清中のTC及びTG濃度に近く、特に実験群2のラットの血清中のTG濃度は一般対照群の血清中のTG濃度より低い。この実験結果により、本発明のラクトバチルス・パラカセイLM-141は、脂質異常症を改善する効果があることが示された。
【0104】
G. 低密度リポタンパク質/高密度リポタンパク質(LDL/HDL)比率の測定
図6は投与開始から14週が経過した時の、各群のラットの血清中の低密度リポタンパク質/高密度リポタンパク質(LDL/HDL)比率を示す。
【0105】
図6からみると、一般対照群と比較した結果、病態対照群のラットの血清中のLDL/HDL比率は顕著に増加したので、HFDはラットのリポタンパク質代謝の異常を誘発することに成功したことが示された。
【0106】
病態対照群と比較した結果、各実験群のラットの血清中のLDL/HDL比率は、顕著に低下しただけではなく、更に一般対照群の血清中のLDL/HDL比率より低い。この実験結果により、本発明のラクトバチルス・パラカセイLM-141は、リポタンパク質代謝の異常を改善する効果があることが示された。
【0107】
上記の第F項~第G項の実験結果により、本発明のラクトバチルス・パラカセイLM-141は、脂質及びリポタンパク質代謝の異常を有効に改善する効果があるので、脂質異常症及び高脂血症の遅らせに使用できることが明らかになった。
【0108】
H. アスパラギン酸アミノ基転移酵素/アラニンアミノ基転移酵素(AST/ALT)比率の測定
図7は投与開始から14週が経過した時の、各群のラットの血清中のアスパラギン酸アミノ基転移酵素/アラニンアミノ基転移酵素(AST/ALT)比率を示す。
【0109】
図7からみると、一般対照群と比較した結果、病態対照群のラットの血清中のAST/ALT比率は顕著に増加したので、HFDはラットの肝臓損傷(liver injury)を誘発することに成功したことが示された。
【0110】
病態対照群と比較した結果、各実験群のラットの血清中のAST/ALT比率は、顕著に低下した。この実験結果により、本発明のラクトバチルス・パラカセイLM-141は、肝臓損傷を改善する効果があることが示された。
【0111】
I. 肝臓組織の組織病理学検査
図8は投与開始から14週が経過した時の、各群のラットの肝臓組織がOil Red Oにより染色された後観察された結果を示す。図中、矢印は脂肪滴の蓄積を指す。
【0112】
図8からみると、一般対照群と比較した結果、病態対照群のラットの肝臓組織切片には大量な脂肪滴が現れたので、HFDはラットの肝臓組織内の脂肪滴の蓄積をもたらすことが示された。
【0113】
病態対照群と比較した結果、各実験群のラットの肝臓組織切片に現れた脂肪滴は、顕著に減少した。
【0114】
図9は投与開始から14週が経過した時の、各群のラットの肝臓組織がヘマトキシリン-エオシン染色により染色された後観察された結果を示す。図中、矢印は脂肪空胞の蓄積を指す。
【0115】
図9からみると、一般対照群と比較した結果、病態対照群のラットの肝臓組織切片には大量な脂肪空胞が現れたので、HFDはラットの肝臓組織内の脂肪空胞の蓄積をもたらすことが示された。
【0116】
病態対照群と比較した結果、各実験群のラットの肝臓組織切片に現れた脂肪空胞は、顕著に減少した。
【0117】
これら実験結果により、本発明のラクトバチルス・パラカセイLM-141は、肝臓組織内の脂肪の蓄積を改善する効果があることが示された。
【0118】
上記の第H項~第I項の実験結果により、本発明のラクトバチルス・パラカセイLM-141は、肝臓の損傷及び脂肪の蓄積を有効に改善する効果があるので、脂肪肝の遅延に使用できることが明らかになった。
【0119】
上記の実験結果によれば、本発明のラクトバチルス・パラカセイLM-141は、メタボリック代謝症候群関連疾患の予防や治療に使用できる。
【0120】
本明細書で引用されているすべての特許及び文献の参考文献、ならびにそこに記載されている参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。矛盾する場合は、定義を含み本説明が優先される。
【0121】
上記実施形態は例示的に本発明の原理及び効果を説明するものであり、本発明を制限するものではない。本技術を熟知する当業者であれば本発明の精神及び範囲から離れないという前提の下、上記の実施形態に対して若干の変更や修飾が可能である。従って、当業者が本発明の主旨から離れないという前提の下、行った全ての変更や修飾も本発明の保護範囲に含まれるものとされるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明のラクトバチルス・パラカセイLM-141は、メタボリック代謝症候群関連疾患の予防や治療に使用できる。
【受託番号】
【0123】
寄託機関:台湾財団法人食品工業發展研究所のバイオソース収集・研究センター。寄託日:2021年1月29日、寄託番号:BCRC911037
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9