(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055657
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】差圧センサ交換の検出
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20230411BHJP
F01N 3/021 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
F02D45/00 345
F01N3/021
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022151548
(22)【出願日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】21200645.6
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ウィルヘルムソン
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ヨハンソン
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ストレンベリ
(72)【発明者】
【氏名】カール・フレドリク・マナーフェルト
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、車両における後処理システムのフィルタの両端での差圧を測定するように配置された差圧センサの交換を検出する方法に関する。
【解決手段】本方法は、差圧センサによって測定されたセンサ値のオフセットであるセンサオフセット値を求めることと、測定された該センサ値に適応値を加えて該オフセット値を補償し、センサ値を所定のレベル付近に合わせることと、後に測定されるセンサ値と適応値との和が限界値を超えると、差圧センサが交換されたことを確定することとを含む。本発明はまた、排気後処理システム、そのようなシステムを備える車両、コンピュータプログラム、コンピュータ可読媒体、および本方法のステップを実行するように構成された制御ユニットに関する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)における後処理システム(3)のフィルタ(11)の両端での差圧を測定するために配置された差圧センサ(13)の交換を検出する方法であって、
前記差圧センサ(13)によって測定されたセンサ値のオフセットであるセンサオフセット値を求めること(S102)と、
前記オフセット値を補償して前記センサ値を所定のレベル付近に合わせるように適合された適応値を、測定された前記センサ値に加えること(S104)と、
後に測定されるセンサ値と前記適応値との和が限界値を超えると、前記差圧センサ(13)が交換されたことを確定すること(S106)と
を含む方法。
【請求項2】
前記方法は、前記車両の予め定められた条件が満たされると実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予め定められた条件は、前記車両のエンジンが停止していること、前記車両のエンジンがアイドル状態であること、前記フィルタの温度が所定の範囲内にあること、および周囲温度が所定の範囲内にあることのうち少なくとも1つを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記差圧センサが交換されたことが確定されると、前記差圧センサによって測定される圧力値の影響を受ける少なくとも1つのソフトウェア機能のリセットを実行すること(S108)を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのソフトウェア機能は、前記車両のセンサ値のオフセット補償を実行するように構成されたセンサ適応機能、パティキュレートフィルタのすすモデルまたは灰モデル、または車載診断監視機能のうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記差圧センサが交換されたことが確定されると、前記少なくとも1つのソフトウェア機能のリセットが完了するまで、前記車両のパティキュレートフィルタのすすモデルまたは灰モデルおよび前記車載診断監視機能のうちの少なくとも1つの動作を一時停止させること(S110)を含む、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記後に検出されるセンサ値と前記適応値との前記和が前記限界値を超えたことを検出すると、差圧センサ交換が検出されたことを示す信号をユーザインターフェース(18)に提供すること(S112)と、差圧センサ交換の確認要求を発することとを含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
差圧センサ交換の確認を受信すると、前記差圧センサによって測定される圧力値の影響を受ける少なくとも1つのソフトウェア機能のリセットを実行すること(S108)を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記適応値をメモリ(20)に格納すること(S114)を含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記所定のレベルがゼロまたはゼロに近い、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
車両(1)の排気後処理システム(3)であって、
車両エンジンからの燃焼ガス流中の粒子を捕捉するように構成されたパティキュレートフィルタ(11)と、
前記パティキュレートフィルタの両端における圧力降下量を測定するように構成された差圧センサ(13)と、
オフセットセンサ値を補償して測定されたセンサ値を所定のレベル付近に合わせるように適合された適応値と測定されたセンサ値との和を求めることによって、前記差圧センサの交換を検出するように構成された制御ユニット(16)と
を備え、
前記制御ユニットは、前記和が限界値を超えると、前記差圧センサが交換されたことを確定するように構成されている、排気後処理システム。
【請求項12】
請求項11に記載の排気後処理システムを備える車両(1)。
【請求項13】
コンピュータ上で実行されるときに、請求項1から10のいずれか1項に記載のステップを実行するためのプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム。
【請求項14】
プログラム製品がコンピュータ上で実行されるときに、請求項1から10のいずれか1項に記載のステップを実行するためのプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムを担持するコンピュータ可読媒体。
【請求項15】
差圧センサ(13)の交換を検出するための制御ユニット(16)であって、
請求項1から10のいずれか1項に記載の方法のステップを実行するように構成された制御ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両における後処理システムのフィルタの両端での差圧を測定するために配置された差圧センサの交換を検出する方法に関する。本開示はまた、対応する排気後処理システム、制御ユニットおよびコンピュータプログラムに関する。本方法および本システムは、トラックの形態の車両に関して説明されるが、バスや建設機械などの他の種類の車両にも効率的に組み込むことができる。
【背景技術】
【0002】
全ての最新の排気後処理システムには、エンジン燃焼により発生するすすや灰などの粒子を捕捉するパティキュレートフィルタが装備されている。
【0003】
パティキュレートフィルタ内のすすと灰の量を監視するため、一般的には圧力センサを使用してパティキュレートフィルタにおける差圧が測定される。差圧が或るしきい値よりも高くなると、多くの場合、フィルタのすす再生処理が実行される。測定された差圧は、パティキュレートフィルタのOBD(On-Board-Diagnostics)を実行する際にも使用される。
【0004】
パティキュレートフィルタの現在の状態を確認するには、圧力センサを正しく診断することが重要である。例えば、圧力センサからの信号に一定のオフセットがある場合、該オフセットを制御システムによって処理する必要がある。可能性のあるオフセットを処理する1つの方法は、エンジンがオフであり、かつ車両が「キーオン」位置にあるときの信号値を監視することである。その時点での信号がゼロでないとき、センサ信号は補償されてゼロ付近に合わせられる。
【0005】
しかし、直近に大きな補償値がセンサ信号に加えられ、オフセットが補償された後に、該センサが交換される場合には、補償されたセンサ信号に依存する全ての機能をリセットしなければならない。このようなリセットは、センサが交換されると、工場で行われる。しかしこのリセットが行われないと、その車両において、加算されたオフセットを含む信号値がセンサからの実際の値として誤って解釈されるリスクがある。これにより、パティキュレートフィルタのOBDモニタや圧力センサ自体のOBDモニタなどの1つまたは複数のOBDモニタにおいてOBD障害が引き起こされる可能性がある。そこで、圧力センサが交換されたことを検出できる方法が有用となる。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、車両における後処理システムのフィルタの両端での差圧を測定するために配置された差圧センサの交換を検出し、先行技術の欠点を少なくとも部分的に軽減する方法を提供することである。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、この目的は、請求項1にかかる方法によって達成される。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、車両における後処理システムのフィルタの両端での差圧を測定するために配置された差圧センサの交換を検出する方法であって、差圧センサによって測定されたセンサ値のオフセットであるセンサオフセット値を求めることと、該オフセット値を補償してセンサ値を所定のレベル付近に合わせるように適合された適応値を、測定されたセンサ値に加えることと、後に測定されるセンサ値と該適応値との和が限界値を超えたとき、差圧センサが交換されたことを確定することとを含む方法が提供される。
【0009】
本発明は、以下の認識に基づく。その認識とは、第1の差圧センサが新しい差圧センサと交換され、オフセット補償をリセットするソフトウェアリセットが工場などで行われないとき、第1の差圧センサに用いられた適応値が、新しい差圧センサの所定のレベルにある意図した中心値からのオフセットを引き起こすであろうというものである。つまり、第1の差圧センサのセンサオフセットを補償するために用いられた適応値を使用しても、センサ値を所定のレベルに合わせられない。したがって、後に測定されるセンサ値と適応値の和が、正または負に大きく限界値を超えるとき、第1の差圧センサに代わって新しい差圧センサが取り付けられたと確定される。
【0010】
適応値の符号はセンサ値のオフセットの符号と反対である。このように、適応値がセンサ値に加えられると、補償されたセンサ値は所定のレベル、好ましくはゼロまたはゼロ付近の値となる。例えば、センサオフセットが所定のレベルに対して正のとき、適応値は所定のレベルに対して負となり、正のセンサ値と負の適応値の和が導かれる。センサオフセットが所定のレベルに対して負のとき、適応値は所定のレベルに対して正となり、負のセンサ値と正の適応値の和が導かれる。
【0011】
新しい差圧センサにおいては通常、ゼロからのオフセットはないか、あるいはごく小さい。したがって、所定のレベルは、好ましくはゼロまたはゼロに近い。このように、以前の差圧センサが大きいオフセットを有し、適応値の加算により該オフセットが補償された場合は、ゼロからのオフセットがない、またはオフセットが小さい新しい差圧センサに交換されると、新しいセンサ値と以前の適応値との和は、もはやゼロまたはゼロ付近の値にはならない。この和が正の値または負の値いずれかである限界値を超えるとき、センサ交換が確定される。
【0012】
したがって、本明細書で提案される方法を提供することで、センサ値の測定によりセンサ交換を確定し、ソフトウェアリセットを適時に実行することができる。これにより、車両を工場に戻さなければならないリスクが低減されるので、車両のダウンタイムを短縮することができる。さらに、正確な差圧センサ値に基づくオンボード機能の信頼性が向上する。
【0013】
後処理システムは、好ましくは内燃機関であるエンジンから燃焼ガスを受け入れるようになっている。内燃機関は、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジンまたは任意の他のタイプの内燃機関であってよい。内燃機関は、部分的にバッテリで駆動されるハイブリッド動力伝達装置の一部であってもよい。
【0014】
限界値は、車両の特定のタイプと後処理システムに適合させることができる。後に測定されるセンサ値と適応値の和が限界値を超えないということは通常、その和が所定のレベルから許容範囲以上に逸脱していないことを示す。具体的には、後に測定されるセンサ値と適応値の和が限界値を超えないときは、センサ値に依存する機能が適切に動作するように、限界値を適応させるべきである。
【0015】
限界値は、特定のアプリケーションおよびその動作パラメータに適合させることができる。例えば、限界値は、すすモデル及び灰モデルの特定の較正や、後処理システムの診断監視機能に依存するものであってよい。限界値はまた、差圧センサの特定のタイプとその特性に依存するものであってよい。限界値は通常、フィルタにおけるすすの過剰な蓄積と、高頻度でのフォルトコード受信のリスクとの間のトレードオフとなり得る。
【0016】
フィルタは、エンジン燃焼により生じるすすや灰などの粒子を捕捉するように構成された後処理システムのパティキュレートフィルタであってよい。ディーゼルエンジンの場合、フィルタはディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)である。
【0017】
例示的な実施形態によれば、本方法は、車両の予め定められた条件が満たされる場合にのみ実行できる。それにより、センサ交換の誤検出を引き起こし得る要因によってセンサ値が影響されないような状態に、車両の条件を確実に置くことができる。例えば、センサ値オフセットと、後に測定されるセンサ値と適応値の和が十分に正確に求められるように、同様の車両条件においてセンサ値は測定されるべきである。
【0018】
車両の予め定められた条件は様々考えられるが、いくつかの実施形態では、車両のエンジンが停止していること、車両のエンジンがアイドル状態であること、フィルタの温度が所定の範囲内にあること、および周囲温度が所定の範囲内にあることのうち少なくとも1つが含まれる。エンジンが停止していることは、後処理システム内に質量流量がないという有利な条件を提供し、これにより、センサ値はフィルタ両端における圧力のレベル変化に影響されなくなる。好ましくは、予め定められた条件は、パティキュレートフィルタが温かいこと、例えば、周囲温度より温かいこと、および差圧センサが水にさらされていないことである。つまり、エンジンが停止しているとき、該エンジンは最近まで作動していた可能性があるため、フィルタは比較的温かくなる。フィルタの所定の温度範囲は、フィルタ内または圧力センサ上の水を確実に防ぐことができる温度より高くあるべきだが、フィルタの再生温度より低いことが好ましい。圧力センサが正確な測定値を提供できるように、周囲温度は氷点以上の温度であることが好ましい。
【0019】
例示的な実施形態によれば、本方法は、差圧センサが交換されたことが確定されると、差圧センサにより測定される圧力値の影響を受ける少なくとも1つのソフトウェア機能のリセットを実行することを含み得る。このようなリセットには、後に測定されるセンサ値を所定のレベルに合わせるための適応値をリセットすることが含まれ得る。有利には、このリセットは、新しい差圧センサの検出時に自動的に実行されてよい。それにより、工場においてソフトウェアリセットがし忘れられる、もしくは他の理由によりなされないといったリスクが軽減、さらには排除される。
【0020】
リセットは、モデルや機能を、それらの予め定義されたパラメータを使用して、予め定められた起動時の状態に戻すこととみなす。
【0021】
例示的な実施形態によれば、少なくとも1つのソフトウェア機能は、車両のセンサ値のオフセット補償を実行するように構成されるセンサ適応機能、パティキュレートフィルタのすすモデルまたは灰モデル、または車載診断監視機能のうちの少なくとも1つを含んでもよい。例えば、機能やモデルのうちいずれかに使用される履歴データは、新しい差圧センサにより適合するようリセットされる。センサ適応機能は、差圧センサによって提供されるセンサ値に適応値を加えるように構成される。
【0022】
例示的な実施形態によれば、本方法は、差圧センサが交換されたことが確定されると、少なくとも1つのソフトウェア機能のリセットが完了するまで、該車両のパティキュレートフィルタのすすモデルまたは灰モデルおよび車載診断監視機能のうちの少なくとも1つの動作を一時停止させることを含み得る。これにより、差圧センサ値を利用する機能の誤動作が回避される。
【0023】
例示的な実施形態によれば、本方法は、後に検出されるセンサ値と適応値との和が限界値を超えたことが検出されると、差圧センサの交換が検出されたことを示す信号をユーザインターフェースに提供することと、差圧センサ交換の確認要求を発することを含み得る。言い換えれば、工場にあるコンピュータ装置、あるいはユーザや技術者の携帯電子機器などのユーザインターフェースに、新しいセンサが検出されたことを示す情報を送信することができる。これに応答して、ユーザまたは技術者は、車両制御ユニット対して、ユーザインターフェースを介して、センサが交換されたことの確認を提供できる。そして、この確認に応じて、ソフトウェアリセットが、車両制御ユニットによって自動的に開始されるか、あるいはユーザまたは技術者によって手動で開始される。
【0024】
例示的な実施形態によれば、本方法は、差圧センサ交換の確認が受信されると、差圧センサにより測定される圧力値の影響を受ける少なくとも1つのソフトウェア機能のリセットを実行することを含み得る。ソフトウェアリセットは、該確認に応じて、車両制御ユニットによって自動的に開始されるか、あるいはユーザまたは技術者によって手動で開始される。
【0025】
例示的な実施形態によれば、本方法は、適応値をメモリに格納することを含み得る。これにより、ソフトウェアリセット後に計算された新しい適応値が、誤った入力データに基づいて決定されたものであるとき、以前の適応値を適用できるようになる。
【0026】
好ましくは、所定のレベルはゼロもしくはゼロ付近であるが、これは、ほとんどの新しい差圧センサのオフセットがゼロもしくはゼロに近いことを有利に反映したものである。
【0027】
本発明の第2の態様によれば、上記目的は、請求項11によるシステムによって達成される。
【0028】
本発明の第2の態様によれば、車両の排気後処理システムであって、車両エンジンからの燃焼ガス流中の粒子を捕捉するように構成されたパティキュレートフィルタと、該パティキュレートフィルタ両端における圧力降下量を測定するように配置された差圧センサと、オフセットセンサ値を補償して測定されたセンサ値を所定のレベル付近に合わせるように適合された適応値と測定されたセンサ値との和を求めることによって該差圧センサの交換を検出するように構成された制御ユニットであって、該和が限界値を超えると、差圧センサが交換されたことを確定するように構成された制御ユニットとを備える排気後処理システムが提供される。
【0029】
本発明の第2の態様の効果および特徴は、第1の態様に関して上述したものとほぼ類似している。
【0030】
本発明の第3の態様によれば、第2の態様に係る排気後処理システムを備える車両が提供される。
【0031】
本発明の第4の態様によれば、コンピュータ上で実行されるとき、第1の態様のステップを実行するためのプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムが提供される。
【0032】
本発明の第5の態様によれば、プログラム製品がコンピュータ上で実行されるとき、第1の態様のステップを実行するプログラムコード手段を含んだコンピュータプログラムを担持するコンピュータ可読媒体が提供される。
【0033】
本発明の第6の態様によれば、差圧センサの交換を検出し、第1の態様に係る方法のステップを実行するように構成された制御ユニットが提供される。
【0034】
第3、第4、第5、および第6の態様の効果および特徴は、第1の態様に関して上述したものとほぼ類似している。
【0035】
さらなる特徴、および利点は、添付の特許請求の範囲および以下の説明を検討すれば明らかになろう。当業者には、本開示の範囲から逸脱することなく、異なる特徴を組み合わせて、以下に記載されたもの以外の実施形態を作成できることが理解されよう。
【0036】
添付の図面を参照して、以下に、例として言及される本発明の実施形態をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の例示的な実施形態に係るトラックの形態の車両である。
【
図2】本発明の例示的な実施形態に係る排気後処理システムの概略図である。
【
図3】本発明の例示的な実施形態に係る方法論を概念的に示すグラフ一式である。
【
図4】本発明の例示的な実施形態に係る方法のステップのフローチャートである。
【
図5】本発明の例示的な実施形態に係る方法のステップのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の例示的な態様が示されている添付の図面を参照して、本発明をさらに十分に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は徹底性及び完全性のために提供されている。当業者は、多くの変更および改変が添付の請求項の範囲内で行われ得ることを認識するであろう。説明の全体を通して、同じ参照符号は同じ要素を指している。
【0039】
図1は、例えば内燃機関であるエンジン2を備えるトラック1の形態の車両を示す。内燃機関は、例えば、ディーゼルエンジン、水素エンジン、ガソリンエンジンまたは任意の他のタイプの内燃機関であってよい。トラック1は、ハイブリッド電気車両であってもよい。トラック1は、例えばパティキュレートフィルタ、触媒装置、尿素噴射装置、および窒素酸化物センサなどを含む排気ガス後処理システム3をさらに備える。後処理システム3の具体的な構成は、車両のタイプおよびその実装の詳細に依存する。トラック1は、後続の図面を参照して説明される制御ユニット16をさらに備える。
【0040】
図2は、本発明の実施形態に係る排気後処理システム3を概念的に示す。排気後処理システム3は、排気ガス出口7へ排気ガス51を送る排気管区域5を備える。排気管区域5は、エンジン2から排気ガス出口7に排気ガスを移送するためのより大きな移送システムの一部である。一般に、後処理システム3は、触媒ユニット(例えば、選択的触媒還元装置)、尿素噴射装置、アンモニアスリップ触媒、ディーゼル酸化触媒、パティキュレートフィルタ、排気ガス温度センサ、および当業者に公知の他の構成要素(本明細書では詳細に説明しない)を含んでいてもよい。
【0041】
排気後処理システム3は、燃焼ガス51の気流中の粒子を捕捉するために排気管区域5に配置されたパティキュレートフィルタ11を含む。さらに、パティキュレートフィルタ11の両端における圧力降下量を測定するために差圧センサ13が配置される。差圧センサ13は、排気流中のパティキュレートフィルタ11の上流に1つの測定点14aを有し、下流に1つの測定点14bを有する構成として示される。差圧測定は、2つの別々の絶対圧測定センサを用いても同様に行うことができ、そのうち1つはフィルタ11の上流の位置14aに配置され、もう1つはフィルタ11の下流の位置14bに配置される。これら2つの絶対圧測定センサにより得られるセンサ値間の差が差圧センサ値を提供する。
【0042】
さらに、差圧センサ13からセンサデータを受信するように構成された制御ユニット16が概念的に示される。制御ユニット16はさらに、ユーザインターフェース18およびメモリ20に接続されており、これについては本明細書でさらに説明する。
【0043】
図3は本発明の実施形態による方法論を概念的に示し、
図4は本発明の実施形態による方法ステップのフローチャートを示す。
【0044】
図3のグラフ302aは、差圧センサ値を時間の関数として示し、グラフ302bは、適応値を時間の関数として示している。ここでは、センサ値と適応値は、電圧またはパスカルの単位で例示される。
図2を参照して説明したように、差圧センサ13は、フィルタ11の両端における圧力降下量を測定するように配置される。適応値は、センサオフセットを補償し、センサ値を所定のレベル、好ましくはゼロまたはゼロ付近に合わせるために使用される。つまり、センサ値を所定のレベルに戻すために、例えば、センサ値をゼロにするために、グラフ302bに示される適応値が加えられる。このことは、補償されたセンサオフセットを示すグラフ302cに反映されている。換言すると、グラフ302cに示される補償されたセンサオフセットは、グラフ302bの適応値とグラフ302aのセンサ値との和である。
【0045】
時間t1において、グラフ302aのセンサ値は、より高い値にドリフトし始める。つまり、センサオフセットが現れる。その結果、グラフ302cの補償されたセンサオフセットがゼロに維持されるように、グラフ302bにおける適応値は、同じレートで負の方に大きくなる。
【0046】
ここで
図4を参照すると、ステップS102では、差圧センサ13によって測定されたセンサ値のオフセットであるセンサオフセット値が決定される。グラフ302aにセンサ値の例が示されるが、ゼロからのずれ分がセンサ値オフセットである。
【0047】
ステップS104では、測定されたセンサ値に適応値を加え、オフセット値を補償しセンサ値を所定のレベル付近に合わせる。つまり、測定されたセンサ値に適応値を加えることで、センサオフセットを補償する。適応値は、
図3のグラフ302bに概念的に示される。時間t2までは、グラフ302aにおけるセンサ値のセンサオフセットは適応値によって適切に補償される。換言すれば、グラフ302cにおける補償されたセンサオフセット値はゼロに合わせられる。本明細書に記載される所定のレベルは、好ましくはゼロまたはゼロに近い。
【0048】
時間t2までは、測定されたセンサ値と適応値の和が、ゼロまたはゼロ付近にある所定のレベルに比較的近い。該所定のレベルとは、測定されたセンサ値が適応値により合わせられるべきレベルである。
【0049】
図4のフローチャートのステップS106では、後に測定されるセンサ値と適応値の和が限界値を超えると、差圧センサ13が交換されたことが確定される。
【0050】
時間t2で、センサ交換が行われた。ここで、グラフ302aに示されるように、時間t2以降の新しいセンサオフセットはゼロである。これにより、時間t2において、グラフ302cに示される補償されたセンサオフセットに急激なジャンプが生じる。したがって、時間t2の時点、またはその直後には、後に測定されるセンサ値と適応値の和は時間t2より以前における和からずれてくる。なぜなら、該適応値はt1よりも前に測定されたセンサ値に適合したものであるからである。ここで、時間t2の後、測定されたセンサ値と適応値の和は、負の値で絶対値が比較的に大きくなる。この和が限界値を超えるとき、差圧センサが交換されたと確定される。この場合は和が負の値になるので、センサ交換の有無を確定するにあたり、限界値の大きさ又は絶対値と比較されるのは、和の大きさ又は絶対値であり得る。あるいは、和が負の値のときに負の限界値と比較し、その和が、負の限界値よりも大きい絶対値を有する、つまり、より負であることが、センサ交換を示す。
【0051】
図2に示される制御ユニット16は、差圧センサ13からセンサデータを受信するように構成される。制御ユニット16は、フィルタ11の両端における現在の差圧を示す受信したセンサ値と、センサオフセットを補償するように適合された適応値との和を連続的に求めることができる。該和が限界値を超えたと制御ユニット16が判断したとき、制御ユニットは、差圧センサが交換されたと確定する。つまり、差圧センサ交換を示す信号を生成する。
【0052】
好ましくは、本明細書で提案する方法は、車両1の予め定められた条件が満たされたときにのみ実行される。該予め定められた条件には、車両エンジン2が停止していること、車両エンジン2がアイドル状態であること、フィルタの温度が所定の範囲内にあること、及び周囲温度が所定の範囲内にあることのうち少なくとも1つが含まれる。これにより、その後の測定中の条件が再現可能であることと、測定間で車両条件が異なることによる、測定されるセンサオフセットへの影響はないことが保証される。
【0053】
次に
図5を参照すると、本方法は、差圧センサが交換されたと確定されると、差圧センサによって測定される圧力値の影響を受ける少なくとも1つのソフトウェア機能のリセットを実行することを含むステップS108をさらに含み得る。つまり、制御ユニット16によって、車両1の1つまたは複数の車両電気制御ユニット上で動作可能な1つまたは複数のソフトウェア機能のリセットがなされ得る。このリセットは、例えば、適応値をリセットまたは「ゼロ」にすることを含み得る。
図3のグラフ302bを参照すると、センサ交換が検出された時間t2の直後に適応値はゼロに戻る。したがって、適応値がリセットされると、補償されたセンサオフセットもゼロに戻る。このことは、センサ値オフセットを補償する機能の一部である車両の適応値機能がリセットされたことを反映している。
【0054】
制御ユニット16によってリセットされ得る他の例示的な機能には、車両のパティキュレートフィルタのすすモデルまたは灰モデル、または車載診断監視機能が含まれる。リセットは、モデルの機能の履歴データの削除に関連してもよい。例えば、パティキュレートフィルタのすすモデルまたは灰モデルを構築するために使用された履歴データを削除することで、新しい差圧センサを利用して新しいモデルを構築することができる。別の例では、古いセンサに関する診断データも削除されてよい。リセットとは通常、機能またはモデルのパラメータを予め定義された初期値に設定することである。
【0055】
さらに、ステップS106で差圧センサが交換されたと確定されると、ステップS110においては、少なくとも1つのソフトウェア機能のリセットが完了するまで、車両のパティキュレートフィルタのすすモデル機能および車載診断監視機能のうちの少なくとも1つの動作を一時停止させる。センサが交換されたかどうかを確定する方法を実行する制御ユニット16は、センサ交換が完了するまで、差圧センサ13の測定値の影響を受ける機能を一時停止するように構成されてもよい。
【0056】
さらに、後に検出されるセンサ値と適応値との和が限界値を超えたことが検出されると、ステップS112において、差圧センサの交換が検出されたことを示す信号がユーザインターフェース18に提供され、差圧センサ交換の確認要求が発せられる。つまり、制御ユニット16は、新しい差圧センサが検出されたことをユーザまたは技術者に知らせる信号をユーザインターフェース18に提供できる。同時に、制御ユニット16は、そのような交換が行われたことをユーザが確認することを要求する信号を提供するように構成される。ユーザは、ユーザインターフェース18を介してこの確認を提供できる。該センサ交換の確認を示す信号が、ユーザインターフェース18を介して制御ユニット16に提供される。ユーザインターフェース18は、例えば、携帯型電子デバイス、コンピュータ、ラップトップ、タブレットなどであってよい。様々なそのようなインターフェースはそれ自体公知であり、本明細書では詳細に説明しない。
【0057】
ステップS112における差圧センサ交換の確認を受信すると、ステップS108において、差圧センサによって測定される圧力値の影響を受ける少なくとも1つのソフトウェア機能のリセットが実行される。確認は制御ユニット16によって受信され、ソフトウェア機能のそれぞれをリセットするための制御信号が制御ユニット16によって送信される。
【0058】
さらに、ステップS114において、制御ユニット16は、メモリ20、例えば、非一時的メモリ20に適応値を格納してもよい。こうして、新しい適応値が誤ったデータに基づいている場合に、以前の適応値を再利用できる。これにより、適応機能は以前の適応値に戻ることができる。
【0059】
制御ユニットは、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラム可能なデジタル信号プロセッサ、または別のプログラム可能なデバイスを含み得る。つまり、制御ユニットは、少なくとも部分的にトラックを操作するために、ブレーキ、サスペンション、駆動系、特に電気エンジン、電気機械、クラッチ、およびギアボックスなどのトラックの異なる部分と通信できるように、電子回路および電子接続部(図示せず)ならびに処理回路(図示せず)を備える。制御ユニットは、ハードウェアまたはソフトウェアであるモジュール、または部分的にハードウェアまたは部分的にソフトウェアであるモジュールを備えていてよく、CANバスおよび/または無線通信機能などの既知の伝送バスを使用して通信してもよい。処理回路は、汎用プロセッサまたは特定のプロセッサであってよい。制御ユニットは、コンピュータプログラムコードおよびデータを格納するための非一時的メモリを備える。したがって、当業者であれば、該制御ユニットが多くの異なる構造によって具現化できることを理解する。
【0060】
本開示の制御機能を、既存のコンピュータプロセッサを用いて、又は、適切なシステム用の特殊用途コンピュータプロセッサであって、この目的若しくは他の目的のため組み込まれた特殊用途コンピュータプロセッサによって、又は、ハードワイヤード(hardwired)システムによって実装することができる。本開示の範囲内の実施形態は、記憶された機械実行可能命令やデータ構造を担持又は有する機械可読媒体を含むプログラム製品を含む。そのような機械可読媒体は、汎用若しくは特殊用途コンピュータ、又は、プロセッサを備えた他の機械によってアクセス可能な任意の利用可能媒体であってよい。一例として、そのような機械可読媒体には、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、CD-ROM若しくは他の光ディスクス記憶装置、磁気ディスク記憶装置若しくは他の磁気記憶デバイス、又は、機械実行可能命令若しくはデータ構造の形態で所望のプログラムコードを担持若しくは記憶するために使用可能であると共に汎用若しくは特殊用途コンピュータ又はプロセッサを備えた他の機械によってアクセス可能な他の任意の媒体が含まれ得る。ネットワーク又は別の通信接続(ハードワイヤード、無線又はハードワイヤード若しくは無線の組み合わせ)を介して情報が機械に転送又は提供される場合、この機械は、当然、接続を機械可読媒体とみなす。したがって、そのような任意の接続は、当然、機械可読媒体と称される。上述のものの組み合わせは、また、機械可読媒体の範囲内に含まれる。機械により実行可能な指令は、例えば、汎用コンピュータ、特殊用途コンピュータ又は特殊用途処理機械に特定の機能又は機能群を実行させる指令及びデータを含む。
【0061】
図面は、あるシーケンスを示すが、ステップの順序は、図示するものとは異なってもよい。また、2以上のステップが同時に又は部分的に同時に実行されてもよい。そのような変形は、選択されたソフトウェア並びにハードウェアシステム及び設計者の選択に依存する。そのような変形は全て本開示の範囲内にある。同様に、ソフトウェアの実装は、ルールベースの論理及び他の論理を用いた標準的なプログラミング手法を用いて行われ、様々な接続ステップ、処理ステップ、比較ステップ、及び決定ステップを実行することができる。更に、本発明をその特定の例示的な実施形態を参照して説明したが、当業者にとっては、多くの異なる代替、変更などが明らかであろう。
【0062】
本発明は、上記で説明され図面に示されている実施形態に限定されないことを理解されたい。むしろ、当業者は、添付の特許請求の範囲内で多くの変更および修正が行われる可能性があることを認識するであろう。
【外国語明細書】