(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055658
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】車両のエンジンシステムの少なくとも一部を事前調整するための方法
(51)【国際特許分類】
F01N 3/20 20060101AFI20230411BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20230411BHJP
F01N 3/00 20060101ALI20230411BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
F01N3/20 C
F01N3/08 B ZHV
F01N3/20 K
F01N3/00 A
G08G1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022151556
(22)【出願日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】21200766.0
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・ダール
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ウィルヘルムソン
(72)【発明者】
【氏名】オスカー・シェーンベリ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、車両のエンジンシステムの少なくとも一部を事前調整するための方法であって、エンジンシステムは、エンジン及び排気後処理システムEATSを備える、方法に関する。
【解決手段】この方法は、車両運転初期化時及び予測エンジン運転を含む予測車両運転情報を準備することと、予測エンジン運転の冷間始動排出物が閾基準値に至るかどうかを判断することと、閾基準値に至ったことに応じて、エンジンシステムの少なくとも一部が車両運転初期化時において事前調整されるように、エンジンシステムの少なくとも該一部を事前調整することと、を含む。更に、本発明は、車両のための制御装置、車両、及びコンピュータプログラムに関する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)のエンジンシステム(10)の少なくとも一部を事前調整するための方法であって、前記エンジンシステムは、エンジン(15)及び排気後処理システムEATS(20)を備える、方法において、
-車両運転初期化時(105)及び予測エンジン運転(210,220,230)を含む予測車両運転情報(100)を準備すること(S10)と、
-前記予測エンジン運転の冷間始動排出物が閾基準値に至るかどうかを判断すること(S20)と、
-前記閾基準値に至ったことに応じて、前記エンジンシステムの少なくとも一部が前記車両運転初期化時において事前調整されるように、前記エンジンシステムの少なくとも前記一部を事前調整すること(S30)と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記予測車両運転情報(100)は、前記車両運転の履歴データ若しくは統計データ(101)に基づくか、又は予め決められた見込み車両運転(103)に基づく予定車両運転情報である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予測車両運転情報(100)は、少なくとも近づきつつある道路状況(110,120,130)を含む前記車両運転の予見情報(107)を含み、前記予測エンジン運転は、前記近づきつつある道路状況に応じる予測エンジン速度及び/又は予測エンジントルクを含み、前記予測エンジン運転の前記冷間始動排出物は、前記予測エンジン速度及び/又は予測エンジントルクに関連する前記冷間始動排出物に基づく、先行する請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項4】
前記予測エンジン運転の冷間始動排出物が閾基準値に至るかどうかを判断することは、前記エンジンシステムの少なくとも前記一部を事前調整しない場合の予測エンジン運転に関連して評価された冷間始動排出物を前記エンジンシステムの少なくとも前記一部を事前調整した場合の予測エンジン運転に関連して評価された冷間始動排出物と比較することを含む、先行する請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記閾基準値は、前記エンジンシステムの少なくとも前記一部を事前調整することによって低減された前記予測エンジン運転の冷間始動排出物である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記予測エンジン運転の冷間始動排出物は、前記車両運転初期化時から前記エンジンシステムの温度がその作動温度に達する時点までの排出物として評価される、先行する請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記運転初期化時は、前記車両の近くにいる車両オペレータによって決められる、先行する請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
事前調整は、前記エンジンシステムの少なくとも一部を熱的に事前調整すること(S32)を含む、先行する請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記熱的な事前調整は、燃焼によって又は電気加熱要素によって前記エンジンシステムの少なくとも前記一部を加熱すること(S34)を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記エンジンシステムは、排気ガス再循環EGR機構(40)を備え、前記エンジンシステムの少なくとも前記一部を事前調整することは、前記EGR機構の少なくとも一部を熱的に事前調整すること(S36)を含む、請求項8-9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記エンジンシステムは、再充電可能なエネルギー貯蔵システムRESS(12)及び/又は燃料電池システム(14)を備え、前記エンジンシステムの少なくとも前記一部を事前調整することは、前記RESS及び/又は前記燃料電池システムを熱的に事前調整すること(S37)を含む、請求項8-10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記EATSは、アンモニアを貯える選択触媒還元SCR触媒(32)を備え、前記エンジンシステムの少なくとも前記一部を事前調整することは、前記SCR触媒を所定レベルのアンモニアを蓄えるように事前調整すること(S35)及び/又は前記SCR触媒(32)を所定温度に熱的に事前調整すること(S38)を含む、先行する請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
エンジンシステム(10)を備える車両(1)のための制御装置(17)であって、前記エンジンシステムは、エンジン(15)及び排気後処理システムEATS(20)を備える、制御装置(17)において、
-車両運転初期化時(105)及び予測エンジン運転(210,220,230)を含む予測車両運転情報(100)を準備し、
-前記予測エンジン運転の冷間始動排出物が閾基準値に至るかどうかを判断し、
-前記閾基準値に至ったことに応じて、前記エンジンシステムの少なくとも一部が前記車両運転初期化時において事前調整されるように、前記エンジンシステムの少なくとも前記一部を事前調整する、
ように構成される、制御装置(17)。
【請求項14】
エンジンシステム(20)及び請求項13に記載の制御装置(17)を備える車両(1)であって、前記エンジンシステムは、エンジン(15)及び排気後処理システムEATS(20)を備える、車両(1)。
【請求項15】
コンピュータプログラムであって、前記プログラムがコンピュータに実装された時に請求項1-12のいずれか1つに記載の方法を実行するためのプログラムコード手段を備える、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジンシステムの少なくとも一部を事前調整するための方法であって、エンジンシステムは、エンジン及び排気後処理システムを備える、方法に関する。更に、本発明は、車両のための制御装置、車両、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両は、典型的には、車両を推進するためのエンジンを備える。エンジンは、例えば、液体燃料又は気体燃料によって動力供給される内燃エンジンであってもよいし、又は電気によって動力供給される電気機械であってもよい。更に、車両が内燃エンジン及び電気機械の両方によって推進されるハイブリッド解決策も存在する。
【0003】
エンジンがディーゼルエンジンのような燃焼エンジンである場合、エンジンからの排出物を処理するために、車両に排気後処理システム(Exhaust After Treatment System、EATS)を備えるのが一般的である。ディーゼルエンジン用のEATSは、典型的には、1つ又は複数の以下の構成要素:ディーゼル酸化触媒(Diesel Oxidation Catalyst、DOC)と、ディーゼル微粒子捕集フィルター(Diesel Particulate Filter、DPF)と、選択触媒還元(Selective Catalytic Reduction、SCR)触媒とを備える。還元剤、例えば、尿素又はアンモニア含有物質が典型的にはSCR触媒の上流に噴射され、触媒の働きによってNOXとも呼ばれる窒素酸化物を二原子窒素N2、水、及び場合によっては(還元剤の選択に依存して)二酸化炭素CO2に変換するのを助長する。次いで、浄化された又は少なくとも排出物が低減された排気ガスは、EATSを出て、車両の尾管を通って車両から排出される。ディーゼルエンジンと同様の排出物を少なくとも部分的に生じる他の形式のエンジンが、同一又は同様のEATSを利用してもよい。
【0004】
政府規制は、車両の燃費向上に対する絶え間ない要求と共にEATSのより効率的な運用が必要であることを示唆している。例えば、EATSは、排気ガスの温度が低い場合における極低負荷時及びエンジンの冷間始動時においても急速に温められ、高変換効率を有しなければならない。また、厳しいCO2要件を満たすための極めて効率的なエンジンの必要性が排気ガスの温度をより低くし、エンジンから排出されるNOxレベルをより高くし、そのために、SCR触媒の上流に多量の還元剤を噴射する必要がある。更に、還元剤として尿素を用いる時、尿素を蒸発させて加水分解によってアンモニアを生じさせるために尿素を加熱する必要がある。もしその温度が低いなら、例えば、エンジンの冷間始動中にEATSの効果を低下させる結晶化と堆積物を生じる大きなリスクを伴う。
【0005】
車両の運転前に、一般的にエンジンシステムと呼ばれるエンジン及び/又はEATSは、事前調整されるとよい。いくつかの例では、エンジンシステムの構成要素又はサブシステムの温度を車両の運転前にその作動温度近くまで上昇させるために、エンジンシステムの構成要素又はサブシステムを加熱することによって、エンジンシステムの事前調整が行われる。例えば、車両のユーザー、すなわち、車両のオペレータ又は車両のシステムは、事前調整の必要性に関する情報を必要とする。このような事前調整情報は、典型的には、特定の構成要素又はシステムの事前調整状況を要求することによって取得される。事前調整状況に基づき、車両のユーザー又は車両のシステムは、事前調整を開始することができる。
【0006】
事前調整、特に、エンジン及び/又はEATSの事前調整は、このようなシステムが車両の大きな熱緩衝物を構成するので、エネルギーを必要とする。例えば、車両が充電されないか又は車両に燃料が供給されない場合及び/又は車両がコスト又は環境の影響下にある場合、利用可能なエネルギー又は動力が制限されるので、一般的に、車両のエネルギー消費の低減が求められる。従って、車両からの排出物を低減するためのエンジンシステムの事前調整を改良することは、業界において必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、排気後処理システムを備える周知のエンジンシステムに関する前述の欠点を少なくとも部分的に軽減すること、及びエンジンシステムの少なくとも一部の事前調整を改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、車両のエンジンシステムの少なくとも一部を事前調整するための方法であって、エンジンシステムは、エンジン及び排気後処理システムEATSを備える、方法が提供される。この方法は、
-車両運転初期化時及び予測エンジン運転を含む予測車両運転情報を準備することと、
-予測エンジン運転の冷間始動排出物が閾基準値に至るかどうかを判断することと、
-閾基準値に至ったことに応じて、エンジンシステムの少なくとも一部が車両運転初期化時において事前調整されるように、エンジンシステムの少なくとも前記一部を事前調整することと、
を含む。
【0009】
従って、予測車両運転情報を用いることによって、排気後処理システムを改良された方法によって作動させるように、エンジンシステムの運転を改良することができる。冷間始動排出物を予測車両運転情報の予測エンジン運転に関連させることによって、予測エンジン運転の冷間始動排出物が閾基準値に至ったことに基いて、エンジンシステムの少なくとも前記一部の再調整を車両運転情報に応じて行うことができる。従って、エンジンシステムの少なくとも前記一部の事前調整は、予測エンジン運転の冷間始動排出物に基づくこととなる。これによって、エンジンシステムの不必要な事前調整を低減又は回避することができる。
【0010】
冷間始動排出物は、典型的には、エンジンシステムの冷間始動の結果としての排気ガス内の望ましくない化合物(例えば、NOx、微粒子、及びCO又は未燃HC)を含み、エンジンシステムの少なくとも前記一部を事前処理することによって、このような冷間始動排出物を低減することができる。従って、エンジンシステムの少なくとも前記一部を事前調整することによって、冷間始動排出物を低減し、該排出物が低減した排気ガスを車両の尾管を通して排気後処理システムから放出することができる。運転初期化時及び予測エンジン運転を含む予測車両運転情報を用いることによって、車両システムの少なくとも前記一部の事前調整のタイミングを運転初期化時に応じて設定することができ、予測エンジン運転の冷間始動排出物の影響をエンジンシステムの少なくとも前記一部の事前調整による影響と比較し、これによって、エンジンシステムの少なくとも前記一部を閾基準値に至ったことに応じて車両運転初期化時に事前調整することができる。従って、エンジンシステムの運転及びその事前調整を予測エンジン運転の冷間始動排出物に応じて行われる手段として改良することができる。
【0011】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、事前調整は、運転初期化時前の30分以内に行われる。これによって、エンジンシステムの少なくとも前記一部の十分な事前調整を達成することができる。例えば、事前調整は、運転初期化時前の20分以内又は10分以内に行われる。従って、例えば、事前調整は、運転初期化時前の0―30分の間、例えば、0-20分の間、又は0-10分の間に行われる。他の例によれば、事前調整は、運転初期化時前の1―30分の間、例えば、1-20分の間、又は1-10分の間に行われる。少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、事前調整されるエンジンシステムの少なくとも前記一部に応じて、事前調整のタイミング又は開始が設定される。すなわち、より広範な事前調整を必要とするエンジンシステムの一部の場合、事前調整のタイミング又は開始は、それほど広範ではない事前調整を必要とするエンジンシステムの一部と比較して、運転初期化時から比較的長い時間を遡って、例えば、運転初期化時の30分前に設定されるとよい。
【0012】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、この方法は、閾基準値に至ったことに応じて、エンジンシステムの少なくとも一部が車両運転初期化時においてエンジンシステムの予測エンジン運転に従って事前調整されるように、エンジンシステムの少なくとも前記一部を予測車両運転情報に従って事前調整することを含む。
【0013】
これによって、事前調整、例えば、ある水準の事前調整が予測車両運転情報に応じて行われる。すなわち、予測エンジン運転が冷間始動排出物を決定するための入力として用いられる時に、事前調整又はある水準の事前調整が予測エンジン運転に応じて行われる。これによって、予測エンジン運転による冷間始動排出物の影響をエンジンシステムの少なくとも前記一部における事前調整の影響と良好に比較することができる。
【0014】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、閾基準値に至ることは、閾基準値を超えるか又は閾基準値に達することを意味する。従って、例えば、この方法は、
-予測エンジン運転の冷間始動排出物が閾基準値を超えるか又は閾基準値に達するかどうかを判断することと、
-閾基準値を超えたか又は閾基準値に至ったことに応じて、エンジンシステムの少なくとも一部が車両運転初期化時に事前調整されるように、エンジンシステムの少なくとも前記一部を事前調整することと、
を含む。
【0015】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、予測車両運転情報は、車両運転の履歴データ若しくは統計データに基づくか、又は予め決められた見込み車両運転に基づく予定車両運転情報である。
【0016】
これによって、予測車両運転情報を決定するための入力データとして種々の車両情報を用いることができる。すなわち、車両運転の履歴データ若しくは統計データが予測車両運転情報を決定するための入力データとして用いられ、又は予め決められた見込み車両運転が予定車両運転情報を決定するための入力データとして用いられる。換言すれば、予測車両運転情報は、車両運転の履歴データ若しくは統計データに応じて決定されるか又は予め決められた見込み車両運転に応じて決定される予定車両運転情報である。例えば、車両が運転される履歴期間及び/又は例えば、履歴車両経路に関連して車両が運転された履歴週/日が予測車両運転情報の入力データとして統計的に用いられてもよい。追加的又は代替的に、予測車両運転情報のための予測道路条件、予測交通条件及び/又は予測天候条件のような外部パラメータが、例えば、車両運転初期化時及び/又は予測エンジン運転を決定するために用いられてもよい。予定車両運転情報のために、車両の予定初期化時は、車両運転初期化時に対応するとよく、エンジンの予定運転負荷は、予測エンジン運転に対応するとよい。例えば、車両又は運搬計画システムが、予め決められた見込み車両運転及び予定車両運転情報への入力データとして用いられてもよい。追加的又は代替的に、外部パラメータ、例えば、予定車両運転情報のための予測道路条件、予測交通条件及び/又は予測天候条件が、例えば、予定初期化時及び/又はエンジンの予定運転負荷を決定するために用いられてもよい。少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、予定車両運転情報は、車両の予定経路を含み、場合によっては、予定経路の少なくとも一部において作業を行う予定補助挙動を含んでもよい。
【0017】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、予測車両運転情報は、車両の将来の、予想される、又は予定される運転(すなわち、少なくとも将来の、予想される、又は予定される車両初期化時及び将来の、予想される、又は予定されるエンジン運転)を表す。予測車両運転情報は、典型的には、例えば、エンジンシステムの温度が作動温度に達するまでの車両の予測初期運転に対応する。すなわち、予測車両運転情報は、典型的には、どのような冷間始動排出物も車両から放出されなくなる時点まで(すなわち、エンジンシステムのどのような事前調整も行われなくなるまで)の車両の予測運転に対応する。予測車両運転情報は、例えば、車両運転初期化時の近い将来、例えば、0秒又は1秒から30分の期間、0秒又は1秒から20分の期間、又は0秒又は1秒から15分の期間における予測情報であるとよい。従って、予測エンジン運転情報は、例えば、エンジン運転負荷が車両のこのような初期運転中に決定されることによって、車両の初期運転に対して決定されるとよい。従って、及び少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、予測エンジン運転の冷間始動排出物は、後述するように、車両のこのような初期運転中の排出物として予測される。
【0018】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、予測車両運転情報は、少なくとも近づきつつある道路状況を含む車両運転の予見情報を含み、予測エンジン運転は、近づきつつある道路状況に対応する予測エンジン速度及び/又は予測エンジントルクを含み、予測エンジン運転の冷間始動排出物は、予測エンジン速度及び/又は予測エンジントルクに関連する冷間始動排出物に基づく。
【0019】
これによって、予測エンジン運転の冷間始動排出物の予測又は評価を更に正確に行うことができる。従って、予測エンジン運転は、典型的には、近づきつつある道路状況に関連付けられる。予見情報は、前述したように、車両運転又は予め決められた見込み車両運転の少なくとも履歴データ又は統計データに応じて決定されるとよい。更に、前述したような予測道路条件、予測交通条件及び/又は予測天候条件のような任意の外部パラメータが予見情報に含まれてもよい。予測エンジン速度及び/又は予測エンジントルクは、例えば、燃料消費、車両速度、エンジンから放出される排出物及び/又は排気後処理システムから放出される排出物(例えば、冷間始動排出物)に影響を与えるエンジン運転の重要なパラメータである。従って、予見情報及び少なくとも予測エンジン速度及び/又は予測エンジントルクによって、排気後処理システムの運転をこのような予見情報に応じて行うことによって改良することができる。
【0020】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、予見情報は、典型的には、前述したように、近い将来に、典型的には、車両の初期運転にわたって予測される車両の将来の、予想される、又は予定される運転に関連する。車両運転の予見情報は、近づきつつある道路状況、例えば、近づきつつある道路の地形(例えば、下り坂又は上り坂)及び/又は近づきつつある道路カーブ及び/又は近づきつつある道路条件に基づく。近づきつつある道路状況は、追加的又は代替的に、前述の外部パラメータによって少なくとも部分的に決定される近づきつつある駐車場又は近づきつつある信号機又は予想される交通渋滞を含む。このような近づきつつある道路状況の場合、車両の運転は、典型的には、対応するエンジン運転、すなわち、近づきつつある道路状況に対応する将来の、予想される、又は予定されるエンジン運転に関連付けられる。例えば、もし近づきつつある道路状況が、車両が停車する駐車場であるなら、このような近づきつつある駐車場に関連付けられるエンジンの運転は、例えば、車両が駐車場に停車する時の予測エンジン停止であってもよい(このような近づきつつある駐車場に関連する他のエンジン運転は、予測されるエンジン停止の前の予測されるエンジン速度の低減及び予測されるシフトダウンであってもよい)。近づきつつある道路状況の他の例は、近づきつつある上り坂である。このような近づきつつある上り坂に関連するエンジン運転は、例えば、車両が一定の速度又は車両速度と燃費との間の所望のバランスを維持する速度で上り坂を走行する時の予測されるシフトダウン及び/又は予測されるエンジントルクの増大であってもよい。近づきつつある道路状況の第3の例は、典型的には、高速道路の車速に達するまでの急速な加速に続く高速道路上の連続運転である。このような予測車両運転が、予測エンジン速度及び/又は予測エンジントルク、従って、関連する冷間始動排出物を決定するのに用いられてもよい。
【0021】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、予測エンジン運転の冷間始動排出物が閾基準値に至るかどうかを判断することは、エンジンシステムの少なくとも一部を事前調整しない場合の予期エンジン運転に関連して評価された冷間始動排出物をエンジンシステムの少なくとも前記一部を事前調整する場合の予期エンジン運転に関連して評価された冷間始動排出物と比較することを含む。
【0022】
これによって、エンジンシステムのどのような事前調整も行わない場合のエンジン運転の冷間始動排出物の影響をエンジンシステムの少なくとも前記一部の事前調整を行った場合の予測エンジン運転の冷間始動排出物の影響と比較することができる。少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、エンジンシステムの少なくとも前記一部を事前調整した場合の予測エンジン運転の冷間始動排出物の影響は、事前調整に用いられるエネルギーに関連する等価排出物、例えば、エンジンシステムの少なくとも前記一部の事前調整のために用いられた電気に関連するCO2等価排出物を含む。これによって、エンジンシステムの運転及びその事前調整は、前記事前調整を行う場合及び行わない場合の予測エンジン運転の冷間始動排出物に応じて行われる手段として改良することができる。
【0023】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、閾基準値は、エンジンシステムの少なくとも前記一部を事前調整することによって低減された予測エンジン運転の冷間始動排出物である。
【0024】
これによって、エンジンシステムの少なくとも前記一部の事前調整が冷間始動排出物に関してのものであるかどうかを決定する閾基準値を設定するための簡単かつ効率的な方法が提供される。従って、もしエンジンシステムの少なくとも前記一部の事前調整が行なわれる場合の予測エンジン運転に関連する冷間始動排出物がこのようなエンジンシステムの少なくとも前記一部の事前調整が行われない場合の予測エンジン運転に関連する冷間始動排出物よりも低いことが決定されたなら、閾基準値に至ったことになる。前述したように、エンジンシステムの少なくとも前記一部の事前調整が行われた場合の予測エンジン運転の冷間始動排出物の影響は、事前調整に用いられたエネルギーに関する等価排出物を含むとよい。
【0025】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、予測エンジン運転の冷間始動排出物は、車両運転初期化時からエンジンシステムの温度が作動温度に達する時点までの排出物として評価される。
【0026】
これによって、冷間始動排出物を規定するための簡単かつ効率的な方法が提供される。従って、冷間始動排出物を決定する終点は、前述したように、車両の予測初期運転に対応する予測車両運転情報に関連する。従って、冷間始動排出物は、0秒又は1秒から30分の期間、0秒又は1秒から20分の期間、又は0秒又は1秒から15分の期間に応じて決定されるとよい。
【0027】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、運転初期化時は、車両の近くにいる車両オペレータによって決められる。
【0028】
これによって、運転初期化時は、車両オペレータが車両の近くにいることによって確定され、又は運転初期化時に対して追加的な基準値が与えられる。従って、車両運転の履歴データ若しくは統計データ又は予め決められた見込み車両運転に基づく予定車両運転情報は、車両オペレータが少なくとも車両運転開始時に車両の近くにいるという基準によって補充されるとよい。少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、車両オペレータが車両の近くにいるということは、閾基準値内に含まれる。これによって、不必要な事前調整又は少なくともあまりにも速く開始される事前調整を低減又は回避することができる。車両オペレータが車両の近くにいるという条件は、例えば、車両オペレータのスマートフォン又は車両キーが車両の500m又は1000m以内にあること、又は車両オペレータが例えば、前記領域へのアクセスを行うアクセスカードをスワイプすることによって車両が停車する領域に入ることに対応するとよい。
【0029】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、事前調整は、エンジンシステムの少なくとも一部を熱的に事前調整することを含む。
【0030】
すなわち、エンジンシステムの少なくとも前記一部は、閾基準値に至ったことに応じて熱的に事前調整される。熱的に事前調整することによって、エンジンシステム又はエンジンシステムの少なくとも前記一部の温度をその作動温度に近づけ、これによって、冷間始動排出物を低減又は排除することができる。
【0031】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、エンジンは、熱的に事前調整される。これによって、エンジンの温度をその作動温度に近づけることができる。少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、EATS、又はEATSの少なくとも一部、例えば、EATSの特定の構成要素は、熱的に事前調整される。これによって、EATS(又はその一部又は構成要素)の温度をその作動温度に近づけることができる。
【0032】
少なくとも1つの実施形態によれば、熱的な事前調整は、燃焼によって又は電気加熱要素によってエンジンシステムの少なくとも前記一部を加熱することを含む。
【0033】
これによって、エンジンシステムの少なくとも前記一部を熱的に事前調整する簡単かつ効率的な方法が提供される。エンジンシステムは、例えば、燃焼によってエンジンシステムの少なくとも前記一部を熱的に事前調整又は加熱するように構成されたバーナー又はミニバーナを備えるとよい。代替的に、エンジンシステムの少なくとも前記一部を熱的に事前調整又は加熱するための予燃焼をもたらすために、エンジンシステムが用いられてもよい。代替的に、エンジンシステムは、エンジンシステムの少なくとも前記一部を電気加熱によって熱的に事前調整するか又は加熱するようにエンジンシステム内に配置構成される電気加熱要素を備えてもよい。
【0034】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、エンジンシステムは、排気ガス再循環EGR機構を備え、エンジンシステムの少なくとも前記一部を熱的に事前調整することは、EGR機構の少なくとも一部を熱的に事前調整することを含む。
【0035】
これによって、エンジンシステムの少なくとも前記一部を熱的に事前調整する簡単かつ効率的な方法が提供される。EGR機構は、例えば、前述したように、燃焼によって又は電気加熱要素によって熱的に事前調整されるとよい。例えば、再循環排気ガスを加熱するために、電気加熱要素がEGR機構、例えば、EGR機構のEGR流体通路内に配置されるとよい。
【0036】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、エンジンシステムは、再充電可能なエネルギー貯蔵システムRESS、及び/又は燃料電池システムを備え、エンジンシステムの少なくとも前記一部を事前調整することは、RESS及び/又は燃料電池システムを熱的に事前調整することを含む。
【0037】
これによって、RESS及び/又は燃料電池システムをその性能を改良するために熱的に事前調整することができる。従って、RESS及び/又は燃料電池システムを好ましい方法によって作動させることによって、このような事前調整を行わない場合のRESS及び/又は燃料電池システムの作動に関連する冷間始動排出物を低減させることができる。従って、車両は、エンジンに加えて車両を推進するための電気機械を備える電気自動車又はハイブリッド車であってもよい。電気機械は、RESS及び/又は燃料電池システムによって電力供給される。
【0038】
更に、RESS及び/又は燃料電池システムの事前調整は、RESS及び/又は燃料電池システムのエネルギー効率が事前調整によって増大するかどうかに応じて決定することができる。例えば、RESS及び/又は燃料電池システムを事前調整するために用いられるエネルギーは、RESS及び/又は燃料電池システムの事前調整を行ない場合の増大するエネルギー効率と比較されるとよい。これによって、RESS及び/又は燃料電池システムを事前調整するためのこのような基準値は、エンジンシステムが前述したように閾基準値に至ったことに応じて事前調整されることに加えて用いられるとよい。
【0039】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、RESS及び/又は燃料電池システムの事前調整は、エンジンシステムの少なくとも他の部分、例えば、エンジン又はEATSの事前調整と組み合わされる。
【0040】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、EATSは、アンモニアを蓄える選択触媒還元SCR触媒を備え、エンジンシステムの少なくとも前記一部を事前調整することは、SCR触媒を所定レベルのアンモニアを蓄えるように事前調整すること、及び/又はSCR触媒を所定温度に熱的に事前調整することを含む。
【0041】
これによって、SCR触媒を有利に事前調整することができる。例えば、SCR触媒を熱的に事前調整することによって、SCR触媒を車両運転初期化時にその作動温度に近づけることができる。同様に、SCR触媒を所定レベルのアンモニアを蓄えるように事前調整することによって、SCR触媒を車両運転初期化時にその作動条件に近づけることができる。
【0042】
所定レベルのアンモニアを蓄えるようにSCR触媒を事前調整することを含む実施形態に対する少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、エンジンシステムは、少なくともEATS内に流れを誘発するように構成された流れ誘発手段を備える。これによって、エンジンが停止した時に、例えば、尿素のような還元剤の形態にある噴射されたアンモニアを噴射箇所からSCR触媒内に送ることができる。流れ誘発手段は、例えば、ファン又は(例えば、ガス源に連結された)EATSへのガス噴射装置である。少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、SCR触媒内に蓄えられたアンモニアの現在のレベルが決定され、次いで、流れ誘発手段によって閾レベルのアンモニアを蓄えるために、尿素又は他の還元剤が噴射される。少なくとも1つの実施形態によれば、還元剤は、無水アンモニア、アンモニア水、尿素水、又はアンモニアを含むディーゼル排気液である。
【0043】
本発明の第2の態様によれば、エンジンシステムを備える車両の制御装置であって、エンジンシステムがエンジン及び排気後処理システムEATSを備える、制御装置が提供される。制御装置は、
-車両運転初期化時及び予測エンジン運転を含む予測車両運転情報を準備し、
-予測エンジン運転の冷間始動排出物が閾基準値に至るかどうかを判断し、
-閾基準値に至ったことに応じて、エンジンシステムの少なくとも一部が車両運転開始時において事前調整されるように、エンジンシステムの少なくとも前記一部を事前調整する、
ように構成される。
【0044】
本発明の第2の態様の効果及び特徴は、本発明の第1の態様と関連して前述した効果及び特徴とほぼ同様である。本発明の第1の態様に関連して前述した実施形態は、以下にその一部について例示する本発明の第2の態様とほぼ互換性がある。
【0045】
従って、制御装置は、例えば、燃焼又は電気加熱要素によって加熱することによってエンジンシステムの少なくとも前記一部を熱的に事前調整するように構成されるとよい。このように、制御装置は、典型的には、燃焼ユニット及び/又は電気加熱要素を作動させるように構成される。更に、制御装置は、SCR触媒又はエンジンシステムを所定のアンモニアを貯蔵するように事前調整するように、構成されるとよい。従って、制御装置は、典型的には、還元剤をEATSに噴射する噴射装置を作動させるように及び還元剤をSCR触媒内に運ぶための流体流れを誘発するファン又はコンプレッサを作動させるように、構成される。換言すれば、制御装置は、エンジンシステムの少なくとも一部を事前調整するステップを少なくとも行うようにエンジンシステムを指示するように構成されるとよい。
【0046】
制御装置は、例えば、車両の電気制御ユニット(ECU)であってもよいし又は電気制御ユニット(ECU)内に含まれてもよい。
【0047】
少なとも1つの例示的な実施形態によれば、制御装置は、本発明の第1の態様に関連して前述した実施形態のいずれかによる方法ステップを行うように構成される。
【0048】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第2の態様によるエンジンシステム及び制御装置を備える車両が提供される。エンジンシステムは、ディーゼルエンジンのようなエンジン及び排気後処理システムEATSを備える。ディーゼルエンジンと同様の排出物を生じる他の形式のエンジンが同一又は同様のEATSを利用してもよい。
【0049】
少なくとも1つの実施形態によれば、車両は、エンジンに加えて車両を推進するための電気機械を備えるハイブリッド車である。
【0050】
これによって、運転時間又はエンジン(典型的には、ディーゼルエンジン)の動力を低減させることができる。更に、少なくともいくつかの車両運転に対して、エンジンを停止させ、電気機械によってのみ車両を推進させることができる。典型的には、車両は、エネルギー貯蔵装置又はエネルギー変換装置、例えば、電気機械に電力供給するためのバッテリー又は燃料電池を備える。
【0051】
本発明の第4の態様によれば、コンピュータプログラムであって、プログラムがコンピュータに実装された時に本発明の第1の態様による方法を実行するプログラムコード手段を備える、コンピュータプログラムが提供される。従って、プログラムコード手段は、少なくともエンジンシステムの少なくとも一部を事前調整するステップをエンジンシステムに実行させる指令を含む。
【0052】
本発明の第5の態様によれば、コンピュータプログラムを有するコンピュータ可読媒体であって、コンピュータプログラムは、コンピュータに実装された時に本発明の第1の態様による方法を実行するためのプログラムコード手段を備える、コンピュータ可読媒体が提供される。従って、プログラムコード手段は、少なくともエンジンシステムの少なくとも一部を事前調整するステップをエンジンシステムに実行させる指令を含む。
【0053】
本発明の第3,第4、及び第5の態様の効果及び特徴は、本発明の第1及び第2の態様に関連して前述した効果及び特徴とほぼ同様である。本発明の第1の態様に関連して前述した実施形態は、本発明の第3,第4、及び第5の態様とほぼ互換性がある。
【0054】
本発明の第1の態様に記載され、本発明の他の態様のいくつかにおいて実施される方法ステップの順序は、本開示に記載される順序に制約されない。ステップの1つ又はいくつかは、本発明の範囲から逸脱することなく置き換えられてもよいし、又は異なる順序で行われてもよい。しかしながら、少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、方法ステップは、本発明の第1の態様に記載される連続的な順序で実施されるとよい。
【0055】
本発明の第1-5の態様のいずれか1つに適用可能な少なくとも1つの実施形態によれば、エンジンシステムのEATSは、車両、例えば、大型トラックのエンジンからの排気ガス内のNOx排出物を変換するように構成される。EATSは、種々の形式のエンジン、例えば、ディーゼルエンジン又は水素エンジンからの排気ガスを浄化するために用いられるとよい。例えば、このEATSは、CNG(圧縮天然ガス)、LPG(液化加圧ガス)、DME(ジメチルエーテル)、及び/又はH2(水素)に基づく内燃エンジンの排気ガスのNOx排出物を変換することによって、排気ガスを浄化するように用いられるとよい。
【0056】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、エンジンシステムのエンジンは、車両の水素エンジンであり、エンジンシステムのEATSは、水素エンジンからの排気ガス内のNOxを変換するように構成される。このような実施形態のために、EATSは、排気ガス内の粒子を濾過するように構成された微粒子フィルターを更に備えるとよい。このような微粒子フィルターは、有利には、SCR触媒の上流に配置される。
【0057】
本開示の更なる利点及び特徴は、以下の記載及び添付の図面において開示され、かつ検討される。
【0058】
以下、添付の図面を参照して、本発明の例示的な実施形態を更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】本発明の例示的な実施形態によるエンジンシステム及び制御装置を備える車両の略側面図である。
【
図2】本発明の例示的な実施形態に適用可能な車両運転初期化時及び予測エンジン運転を含む予測車両運転情報の概略的な例を示す図である。
【
図3】本発明の例示的な実施形態に適用可能な近づきつつある道路状況が付記された道路に沿って走行する車両の略斜視図である。
【
図4】本発明の例示的な実施形態による車両のエンジンシステムの概略図である。
【
図5】本発明の一つの例示的な実施形態による方法のステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1を参照すると、本開示に開示される種類の制御装置17が有利なエンジンシステム10を備える車両1、ここでは大型トラック1として具体化される車両1が開示される。しかしながら、制御装置17は、同様のエンジンシステムを有する他の形式の車両、例えば、バス、軽トラック、乗用車、海洋用途、等に組み入れられてもよい。
図1の車両1は、エンジン15、具体的には、ディーゼルエンジン15及び電気機械22を備えるハイブリッド車1である。ディーゼルエンジン15は、典型的には燃料タンク(図示せず)内に含まれるディーゼル燃料によって動力供給され、電気機械22は、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置又はエネルギー変換装置、例えば、バッテリー又は燃料電池から供給される電気によって動力供給される。ディーゼルエンジン15及び電気機械22は、典型的には、車両1のパワートレインの互いに異なる部分、例えば、トランスミッション、駆動シャフト、及び車輪(詳細に図示せず)に別々に連結されることによって車両1を個別に推進するように配置構成される。すなわち、車両1は、ディーゼルエンジン15のみによって推進されてもよいし、電気機械22のみによって推進されてもよいし、又はディーゼルエンジン15及び電気機械22によって推進されてもよい。
【0061】
図1では、少なくともディーゼルエンジン15は、エンジンシステム10内に含まれ、エンジンシステム10は、排気後処理システムEATS20を更に備える。EATS20は、少なくともSCR触媒32、DPF31の形態にある粒子フィルター、及びDOC30を有する。DPF31は、SCR触媒32の上流に配置され、ディーゼルエンジン15の排気ガスから粒子、すなわち、ディーゼル粒子状物質又は煤を除去するように配置構成される。SCR触媒32は、触媒の働きによってNOxとも呼ばれる窒素酸化物を二原子窒素N
2及び水H
2O(及び場合によっては二酸化炭素CO
2)に変換するように配置構成される。還元剤、典型的には、無水アンモニア、アンモニア水、又は(本開示において通常尿素と呼ばれる)尿素溶液がエンジン排気ガスに添加され、SCR触媒32内の触媒上に吸収される。DOC30は、DPF31の上流に配置され、一酸化炭素及び炭化水素を二酸化炭素に変換するように配置構成される。エンジンシステム10については、
図4を参照して更に詳細に説明する。
【0062】
車両の初期運転中、例えば、エンジンシステムの温度が作動温度に達する時点までの間、EATSから放出される排出物(例えば、単位走行距離当たりの排出物又は単位運転時間当たりの排出物)は、典型的には、エンジンシステムの温度が作動温度に達した時と比べて多くなる。このような排出物は、冷間始動排出物と呼ばれ、典型的には、エンジンシステムの冷間始動の結果としてEATS20から放出される排気ガス内に望ましくない化合物(例えば、NOx、粒子、及びCO又は未燃HC)を含む。車両の初期運転は、例えば、車両運転初期化時のすぐ後の期間、例えば、0秒又は1秒から30分、0秒又は1秒から20分、又は0秒又は1秒から15分の期間であるとよい。従って、車両の冷間始動排出物は、車両のこのような初期運転中にEATS20から放出される排気ガスに含まれる排出物である。このような冷間始動排出物を回避又は少なくとも軽減するために、エンジンシステム10の少なくとも一部は、事前調整されるとよい。すなわち、エンジンシステム10の少なくとも一部は、車両の初期運転中の排出物が軽減されるように準備されるとよい。
【0063】
車両1の制御装置17は、エンジンシステム10の少なくとも一部、すなわち、ディーゼルエンジン15の少なくとも一部及び/又はEATS20の少なくとも一部の事前調整を制御するように構成される。更に詳細には、
図2に示されるように、制御装置17は、車両運転初期化時105及び予測エンジン運転210,220,230を含む予測車両運転情報100を受信するか又は送信するように構成される。予測車両運転情報100は、車両運転の履歴データ若しくは統計データ101に基づいてもよいし、又は予め決められた見込み車両運転103に基づく予定車両運転情報であってもよい。すなわち、少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、予測車両運転情報100は、予定車両運転情報である。
【0064】
予測車両運転情報100は、少なくとも近づきつつある道路状況110,120,130(例えば、第1の近づきつつある道路状況110、第2の近づきつつある道路状況120、及び第3の近づきつつある道路状況110)を含む車両運転の予見情報107を含むとよい。典型的には、近づきつつある道路状況110,120,130は、予測エンジン運転210,220,230(典型的には、対応する第1の予測エンジン運転210、第2の予測エンジン運転220、及び第3の予測エンジン運転230)に関連付けられる。予測エンジン運転210,220,230は、典型的には、近づきつつある道路状況110,120,130に応じて決定される予測エンジン速度及び/又は予測エンジントルクを含む。予見情報は、少なくとも1つの外部パラメータ108、例えば、近づきつつある道路状況110,120,130の各々に関連付けられるか又は含まれる予測車両運転の予測道路条件、予測交通条件及び/又は予測天候条件を更に含んでもよい。
【0065】
制御装置17は、予測エンジン運転210,220,230の冷間始動排出物が閾基準値に至るどうかを判断するように更に構成される。予測エンジン運転210,220,230の冷間始動排出物は、好ましくは、予測エンジン速度及び/又は予測エンジントルクに関連付けられた冷間始動排出物に基づくとよい。冷間始動排出物は、例えば、車両運転初期化時105からエンジンシステム10の温度が作動温度に達するまでの排出物として決定又は評価される。
【0066】
更に、制御装置17は、閾基準値に至ったことに応じて、エンジンシステム10の少なくとも一部が車両運転初期化時105において予測エンジン運転210,220,230に従って事前調整されるように、エンジンシステム10の少なくとも前記一部を予測車両運転情報100に従って事前調整するように構成される。例えば、閾基準値は、エンジンシステム10の少なくとも前記一部を事前調整しない場合の予測エンジン運転210,220,230に関連して評価された冷間始動排出物とエンジンシステム10の少なくとも前記一部を事前調整する場合の予測エンジン運転210,220,230に関連して評価された冷間始動排出物との比較に基づくとよい。典型的には、閾基準値は、エンジンシステム10の少なくとも前記一部の事前調整によって低減された予測エンジン運転210,220,230の冷間始動排出物である。エンジンシステム10の少なくとも前記一部を事前調整するための種々の代替例については、
図4を参照して更に詳細に説明する。
【0067】
エンジンシステム10の少なくとも一部の事前調整が行われるか否かを判断するためにいかに予測車両運転情報100が用いられるかに関する例示的な実施形態について、
図3及び
図2を参照して説明する。
図3において、車両1、例えば、
図1のハイブリッド車1は、道路50に沿って走行しており、道路カーブ110’及び上り坂120’に接近している。更に、車両1が一時停車可能な駐車場130’が、車両1の右側において道路50の更に先に存在する。道路カーブ110’、上り坂120’、及び駐車場130’は、近づきつつある道路状況110,120,130の例である。近づきつつある道路状況110,120,130は、例えば、車両運転の履歴データ若しくは統計データ101に応じて、又は例えば、車両1の予定経路を含む予め決められた見込み車両運転103に応じて決定されるとよい。車両1及びエンジンシステム10は、典型的には、車両運転を近づきつつある道路状況110,120,130に基いて予測する(及び使用時には適合する)ように構成される。例えば、上り坂120’及び例えば、上り坂120’の長さ及び傾斜を認識することによって、ギアをその状況に適合させる第1の予測エンジン運転210、典型的には、エンジントルクを増大させるためのシフトダウン210’が決定されるとよい。換言すれば、予測車両運転は、第1の予測エンジン運転210(ここでは、ダウンシフト210’)によって少なくとも部分的に規定される。同様に、種々の近づきつつある道路状況が、対応するエンジン運転に関連付けられるとよい。道路カーブ110’(例えば、急道路カーブ110’)は、第2の予測エンジン運転220(ここでは、エンジンの減速220’)に関連付けられるとよく、駐車場130’は、第3の予測エンジン運転230、(ここでは、エンジンの停止230’、例えば、車両運転の停止、すなわち、停車)に関連付けられるとよい。他の近づきつつある道路状況は、例えば、エンジン停止となる予測エンジン運転と関連付けられる下り坂(この場合、電気機械が車両を推進してもよい)であってもよいし、又は定常状態で高速道路を走行する連続運転であってもよい。
【0068】
近づきつつある道路状況110,120,130は、例えば、(地形データを含む)地図データから取得されてもよいし、GPS又は他の車両位置特定手段によって車両1の位置に関連付けられてもよい。予測エンジン運転210,220,230は、典型的には、当業者に知られるモデル及び/又は他の予測される所要のエンジン運転によって、近づきつつある道路状況110,120,130に関連付けられる。
【0069】
以下、エンジンシステム10の少なくとも前記一部の事前調整について、
図4を参照して説明する。
図4は、
図1の車両1のエンジンシステム10を更に詳細に開示するものである。エンジンシステム10は、
図1を参照して既に説明したように、ディーゼルエンジン15と、DOC30、DPF31、及びSCR触媒32を有するEATS20と、エンジンシステム10の少なくとも一部の事前調整を制御するように構成された制御装置17とを備える。しかしながら、制御装置17は、エンジンシステム10の外側に設けられ、車両の他の部分内に含まれてもよいことに留意されたい。EATS20は、SCR触媒32の上流に還元剤(例えば、尿素)を噴射するように構成された噴射装置34を更に備える。還元剤(例えば、尿素)は、窒素酸化物NOxを二原子窒素N
2及び水H
2O(及び場合によっては二酸化炭素CO
2)に変換するためのアンモニアをもたらすものである。エンジンシステム10は、ディーゼルエンジン15の下流の排気ガスをディーゼルエンジン15内に再循環させるための排気ガス再循環EGR機構40を更に備える。
【0070】
前述したように、エンジンシステム10の少なくとも一部は、冷間始動排出物を低減させるために事前調整されるとよい。例えば、事前調整は、エンジンシステム10の少なくとも一部の熱的な事前調整を含むとよい。エンジンシステム10の少なくとも一部のこのような熱的な事前調整は、燃焼によって又は電気加熱要素によって加熱することによって行われるとよい。例えば、
図4に示されるように、加熱装置50,52,54は、エンジンシステム10の種々の位置に配置される。
図4の例示的な実施形態では、3つの加熱装置50,52,54、ここでは第1の加熱装置50、第2の加熱装置52、及び第3の加熱装置54は、エンジンシステム10の互いに異なる位置に配置される。しかしながら、加熱装置50,52,54の1つのみ又は2つのみがエンジンシステム10内に設けられてもよい。簡素化するために、第1,第2,及び第3の加熱装置50,52,54は、ここでは、それぞれ、第1,第2,第3の電気加熱要素50,52,54と呼ばれるが、例えば、HC(炭化水素)を燃焼して熱を生成するように構成された燃焼ユニットであってもよい。電気加熱要素50,52,54は、電気によって加熱されるように構成された加熱要素である。電気加熱要素50,52,54の各々は、例えば、格子、枠組み、コイル、又はプレートを備え、該格子、枠組み、コイル、又はプレートを通して導かれる電気によって加熱するように構成されるとよい。電気加熱要素50,52、54の少なくとも1つは、他の形状、例えば、平坦な又は湾曲した加熱薄板の形状を有してもよいし、又は異なる形式、例えば、抵抗フォームからなる加熱要素であってもよい。電気加熱要素50,52,54の少なくとも1つは、正の温度係数PTCに基づく要素であってもよいし、誘発加熱要素と呼ばれる誘発加熱に基づくものであってもよい。
【0071】
図4では、第1の電気加熱要素50は、主にDOC30のすぐ上流に配置される。従って、第1の電気加熱要素50は、主にDOC30を加熱し、可能であれば、DOC30の比較的近くに配置されたDPF31を加熱してもよい。従って、制御装置17によって、DOC30を第1の電気加熱要素50によって熱的に事前調整し、これによって、車両運転初期化時105にDOC30の温度を作動温度に近づけることができる。従って、冷間始動排出物を低減することができる。例えば、第1の電気加熱要素50は、DOC30の0.1-1.5m以内、0.1-1m以内、又は0.1-0.5m以内に配置される。第2の電気加熱要素52は、SCR触媒32の上流かつ噴射装置34のすぐ上流に配置される。従って、第2の電気加熱要素52は、噴射装置34と噴射装置34及びSCR触媒32と流体連通するように配置された任意の還元剤混合ボックスとを加熱することができる。従って、制御装置17によって、噴射装置34及びSCR触媒32を第2の電気加熱要素52によって熱的に事前調整し、これによって、車両運転初期化時105に噴射装置34及びSCR触媒32の温度を作動温度に近づけることができる。これによって、冷間始動排出物を低減することができる。事前調整によって混合ボックス内の還元剤を加熱することによって、噴射装置34による還元剤の噴射を事前調整が行われない時と比較してより速く行うことができる。代替的又は追加的な実施形態では、第2の電気加熱要素52は、SCR触媒32のすぐ上流、例えば、噴射装置34とSCR触媒32との間に配置される。例えば、第2の電気加熱要素52は、噴射装置34又はSCR触媒32の0.1-1.5m以内、0.1-1m以内、又は0.1-0.5m以内に配置される。第3の電気加熱要素54は、EGR機構40内に配置される。従って、第3の電気加熱要素54は、主にEGR機構40又はEGR機構40の少なくとも一部を加熱することができる。第3の電気加熱要素54は、
図4においてボックスとして略示されるが、EGR機構40に沿って延びる細長の電気加熱要素であってもよいことに留意されたい。従って、制御装置17によって、EGR機構40を第3の電気加熱要素54によって熱的に事前調整し、これによって、車両運転初期化時105にEGR機構40の温度を作動温度に近づけることができる。従って、冷間始動排出物を低減することができる。
【0072】
図4にも示されるように、制御装置17は、ディーゼルエンジン15に通信可能に接続される。従って、ディーゼルエンジン15は、エンジンシステム10の少なくともディーゼルエンジン15を熱的に事前調整するか又は加熱するための予燃焼を行うように、制御装置17によって指示されるとよい。
【0073】
少なくとも1つの例示的な代替的実施形態によれば、エンジンシステム10の少なくとも一部は、前述した熱的な事前調整以外の手段によって事前調整される。このような事前調整は、例えば、熱的な事前調整に代わって又は熱的な事前調整に加えて用いられるとよい。
図4において、エンジンシステム10は、ファン又はコンプレッサを備える。ファン又はコンプレッサは、以下、ファン56と呼ばれる。ファン56は、噴射装置34の上流、
図4の実施形態では、第2の電気加熱要素52の上流に配置される。従って、ファン56を作動させ、これによって、EATS20内に流体流れを誘発することによって、事前調整を行うことができる。従って、事前調整中にも行われる噴射装置34から噴射される還元剤を誘発された流体流れによってSCR触媒32内に運ぶことができる。このようにして、噴射される還元剤によって、SCR触媒32内に蓄えられるアンモニアの量を、典型的には、所定レベルのアンモニア貯蔵量となるように改良することができる。好ましくは、第2の電気加熱要素52も事前調整中に作動させ、これによって、噴射前の還元剤を加熱するとよい。従って、熱及び加熱された還元剤の両方が、事前調整中にファン56によってSCR触媒32内にもたらされる。
【0074】
図1を参照して述べたように、エンジンシステム10は、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置又はエネルギー変換装置、例えば、バッテリー又は燃料電池から供給される電気によって電力供給される電気機械22を備えてもよい。
図4では、電気機械22は、少なくとも1つのバッテリーを備える再充電可能なエネルギー貯蔵システムRESS12及び少なくとも1つの燃料電池を備える燃料電池システム14の両方によって作動可能なものとして示される。しかしながら、典型的には、RESS12及び燃料電池システム14の1つのみが電気機械22に電力供給するのに用いられる。RESS12及び燃料電池システム14の各々は、(詳細に図示されない)統合加熱要素を備えてもよい。従って、制御装置17によって、RESS12及び燃料電池システム14をそれぞれの統合加熱要素によって熱的に事前調整し、これによって、車両運転初期化時105にRESS12及び燃料電池システム14のそれぞれの温度を作動温度に近づけることができる。従って、RESS12及び燃料電池システム14のエネルギー効率を改良し、及び/又は冷間始動排出物を低減することができる。
【0075】
図5のフローチャートを参照すると、車両のエンジンシステム、例えば、
図1,4のエンジンシステム10の少なくとも一部を事前調整するための方法のステップが概略的に示される。従って、エンジンシステム10は、エンジン、例えば、
図1,4のディーゼルエンジン15と排気後処理システムEATS、例えば、
図1,4のEATS20とを備える。
図5のフローチャートでは、予測車両運転情報100及びその実施形態のための
図2,3も参照されたい。
【0076】
ステップS10、例えば、第1のステップ10では、予測車両運転情報100が準備される。予測車両運転情報100は、例えば、
図2に示されるような車両運転初期化時105及び予測エンジン運転210,220,230を含む。予測車両運転情報100は、
図2を参照して前述したように、車両運転の履歴データ若しくは統計データ101に基づくか又は予め決められた見込み車両運転103に基づく予定車両運転情報である。また、
図2を参照して述べたように、予測車両運転情報100は、近づきつつある道路状況110,120,130を少なくとも含む車両運転の予見情報107を含むとよい。近づきつつある道路状況110,120,130は、典型的には、予測エンジン運転210,220,230に関連付けられる。更に、予測エンジン運転210,220,230は、近づきつつある道路状況110,120,130に対応する予測エンジン速度及び/又は予測エンジントルクを含む。更に、運転初期化時105は、車両1の近くにいる車両オペレータによって決められるとよい。
【0077】
ステップS20、例えば、第2のステップS20では、予測エンジン運転210,220,230の冷間始動排出物が閾基準値に至るかどうかが判断される。例えば、
図2-3を参照して述べたように、予測エンジン運転210,220,230の冷間始動排出物は、予測エンジン速度及び/又は予測エンジントルクに関連付けられた冷間始動排出物に基く。予測エンジン運転210,220,230の冷間始動排出物は、例えば、車両運転初期化時105からエンジンシステム10の温度がその作動温度に到達する(又は到達すると予測される)時点までの排出物として評価される。予測エンジン運転210,220,230の冷間始動排出物が閾基準値に至るかどうかを判断するステップS20は、典型的には、エンジンシステム10の少なくとも一部を事前調整しない場合の予測エンジン運転210,220,230に関連して評価された冷間始動排出物をエンジンシステム10の少なくとも前記一部を事前調整する場合の予測エンジン運転210,220,230に関連して評価された冷間始動排出物と比較することを含む。閾基準値は、典型的には、エンジンシステムの少なくとも前記一部を事前調整することによって低減した予測エンジン運転210,220,230の冷間始動排出物に基づく。
【0078】
ステップS20の閾基準値に至るかどうか判断するための実施形態に適用可能なステップS30、例えば、第3のステップS30では、エンジンシステム10の少なくとも一部が、エンジンシステム10の少なくとも前記一部が車両運転初期化時105に事前調整されるように、事前調整される。ステップ40、具体的には、ステップ30に代わって第3のステップS40として行われるステップでは、閾基準値に至らなかったなら、エンジンシステム10の少なくとも前記一部の事前調整を行わない。例えば、もし事前調整が冷間始動排出物を低減させるという結果を生じなかったなら、予測車両運転情報100を検討することとなる。例えば、このようなシナリオは、事前調整に関連する等量の排出物が事前調整の結果としての低減される冷間始動排出物よりも大きい場合に生じることとなる。
【0079】
ステップS32、例えば、ステップS30に続くステップ32では、エンジンシステム10の少なくとも一部が熱的に事前調整される。ステップS32の熱的な事前調整は、
図5におけるステップ32に含まれるステップS34によって示されるように、加熱によって行われるとよい。典型的には、加熱のステップS34は、例えば、
図4を参照して述べたように、燃焼によって又は電気加熱要素によって行われる。例えば、
図4に示されるように、エンジンシステム10は、排気ガス再循環EGR機構40を備える。従って、加熱のステップS34は、加熱によってEGR機構40の少なくとも一部を熱的に事前調整するステップS36を含んでもよい。追加的又は代替的に、エンジンシステム10は、
図4に示されるような再充電可能なエネルギー貯蔵システムRESS12及び/又は燃料電池システム14を備える。従って、加熱のステップS34は、RESS12及び/又は燃料電池システム14を熱的に事前調整するステップS37を含んでもよい。追加的又は代替的に、エネルギーシステム10は、
図4に示されるような選択触媒還元SCR触媒32を備える。従って、加熱のステップS34は、SCR触媒32を熱的に事前調整するステップS38を含んでもよい。また、
図4を参照して述べたように、エンジンシステム10の他の構成部品、例えば、DOC30、DPF31、及び/又は(混合ボックスを伴う)噴射装置34も加熱によって追加的又は代替的に熱的に事前調整されるとよい。
【0080】
SCR触媒32には、典型的には、アンモニアが貯蔵される。従って、例えば、ステップS30に続くステップ35であって、熱的に事前調整するステップS32に対して追加的又は代替的に行われるステップS35において、SCR触媒32は、所定レベルのアンモニアを蓄えるように事前調整される。このような事前調整は、典型的には、
図4を参照して述べたように、噴射装置34によって還元剤を噴射し、噴射された還元剤をファン又はコンプレッサ56によってSCR触媒32内に強制流入させることによって行われる。
【0081】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、ステップS32,35は、同時に行われる。更に、ステップS36,37,38のいずれかは、単独で行われてもよいし、前記ステップS36,37,38の少なくとも他の1つと組合わせて行われてもよい。ステップの命名は、必ずしも必要ではないが、少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、これらのステップが行われる順番に関連することに留意されたい。従って、ステップの順番は、互いに従属すると明記されない限り、本明細書に記載されるものと異なっていてもよい。
【0082】
本発明は、図面を参照して前述した実施形態に制限されないことを理解されたい。むしろ、当業者であれば、多くの変更及び修正が添付の請求項の範囲内においてなされ得ることを認識するだろう。本発明は、ある種のエンジンシステム及び/又はEATSに制限されるものではない。例えば、EATS又は同様のものは、ディーゼルエンジン以外のエンジンの排気ガスを浄化するために用いられてもよい。例えば、EATSは、CNG(圧縮天然ガス)、LPG(液化加圧ガス)、DME(ジメチルエーテル)、及び/又はH2(水素)を燃料として用いる内燃エンジンの排気ガスからのNOx排出物を変換することによって排気ガスを浄化するために用いられてもよい。従って、エンジンシステムは、ディーゼルエンジン以外の他の燃焼エンジン、例えば、水素エンジンを含むことができる。
【0083】
加えて、開示された実施形態の変更例は、図面、開示内容、及び添付の請求項の検討から請求された本発明の概念を具体化する際に、当業者によって理解され、かつ当業者に影響を与えることになるだろう。請求項において、「備える(comprising)」という用語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a, an」は、複数を排除するものではない。いくつかの手段が互いに異なる従属請求項に記載されるが、これは、単なる事実にすぎず、これらの手段の組合せを用いても利点を得ることができないことを示すものではない。
【外国語明細書】