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特開2023-55668オンライン診察システム、患者側装置、および医師側装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055668
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】オンライン診察システム、患者側装置、および医師側装置
(51)【国際特許分類】
   G16H 80/00 20180101AFI20230411BHJP
【FI】
G16H80/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157745
(22)【出願日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2021164652
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】511168291
【氏名又は名称】ユウロピウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】藍 杏林
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA01
(57)【要約】
【課題】医師側からの制御で患者側の機器を遠隔操作することができるオンライン診察システムを提供する。
【解決手段】本発明にかかるオンライン診察システム1は、医師側装置2と患者側装置3がインターネット回線を介して接続される構成とした。また、患者側装置3は、医師側装置2からの制御に従い周辺機器を操作する患者側制御装置を備えることとし、医師側装置2は、インターネット回線を介して患者側制御装置を制御することにより患者側制御装置に周辺機器の操作を行わせる医師側制御装置を備えることとした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医師側装置と当該医師側装置の設置場所から離れた場所に設置された患者側装置とを備え、当該医師側装置と当該患者側装置がインターネット回線を介して接続されるオンライン診察システムにおいて、
前記患者側装置は、
患者用のコンピュータとして動作し、前記医師側装置からの制御に従い周辺機器を操作する患者側制御装置を備え、
さらに、前記患者側制御装置の周辺機器として、
患者の画像を撮影し、その画像データを出力する患者側カメラと、
自然光に近い演色性を有し被写体である患者を照射する照明と、
医師との対話用に設けられたマイクおよびスピーカーと、
医師の画像を表示する患者側モニターと、
患者のバイタルデータを計測し、当該バイタルデータを出力する計測装置と、
を備え、
前記医師側装置は、
医師用のコンピュータとして動作し、前記インターネット回線を介して前記患者側制御装置を制御することにより、当該患者側制御装置に前記周辺機器の操作を行わせる医師側制御装置と、
患者の画像を表示する診察用モニターと、
医師の画像を撮影し、その画像データを出力する医師側カメラと、
を備え、
前記患者側制御装置と前記医師側制御装置との間では、所定の画像通信機能およびデータ通信機能を利用して画像データおよびバイタルデータの送受信が行われ、
前記医師側制御装置は、自装置のディスプレイである表示部にバイタルデータを表示させ、前記診察用モニターに患者の画像を表示させ、
前記患者側制御装置は、前記患者側モニターに医師の画像を表示させる、
ことを特徴とするオンライン診察システム。
【請求項2】
前記医師側制御装置は、前記インターネット回線を介して前記患者側制御装置を制御することにより、当該患者側制御装置に前記患者側カメラの向きを変える操作を行わせる、
ことを特徴とする請求項1に記載のオンライン診察システム。
【請求項3】
前記患者側カメラの底面に着脱自在に取り付けられ、たとえば、当該患者側カメラを左右方向および上下方向に回動自在に支持する電動雲台、を備え、
前記患者側制御装置は、前記医師側制御装置からの制御により前記電動雲台を操作し、前記患者側カメラの向きを変える、
ことを特徴とする請求項2に記載のオンライン診察システム。
【請求項4】
前記医師側制御装置は、前記インターネット回線を介して前記患者側制御装置を制御することにより、当該患者側制御装置に前記患者側カメラの撮影画像を拡大または縮小する操作を行わせる、
ことを特徴とする請求項1に記載のオンライン診察システム。
【請求項5】
前記医師側制御装置は、前記インターネット回線を介して前記患者側制御装置を制御することにより、当該患者側制御装置に前記照明の向きを変える操作を行わせる、
ことを特徴とする請求項1に記載のオンライン診察システム。
【請求項6】
前記患者側カメラの解像度をフルHD以上とする、
ことを特徴とする請求項1に記載のオンライン診察システム。
【請求項7】
前記照明の演色評価数Raを85以上とする、
ことを特徴とする請求項1に記載のオンライン診察システム。
【請求項8】
前記スピーカーとして曲面スピーカーを使用する、
ことを特徴とする請求項1に記載のオンライン診察システム。
【請求項9】
前記診察用モニターとして有機ELモニターを使用する、
ことを特徴とする請求項1に記載のオンライン診察システム。
【請求項10】
前記患者側制御装置に接続され、マイナンバーカード内のICチップの情報を読み取り可能なICカードリーダー、を備え、
前記患者側制御装置は、ICカードリーダーにより読み取られたICチップの情報を前記医師側制御装置に送信し、
前記医師側制御装置は、前記ICチップの情報に関連付けられた情報として、受診中の医療機関のサーバに登録された患者の診察情報を読み出し、さらに、前記ICチップの情報に関連付けられたその他の情報として、行政側で保有している患者の医療情報を受け取る、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1つに記載のオンライン診察システム。
【請求項11】
医療機関同士が連携し、マイナンバーカードのICチップの情報に紐付いた患者の診察情報が各医療機関で共有されている場合、
前記医師側制御装置は、さらに、前記ICチップの情報に基づいて、各医療機関の間で共有されている診察情報を読み出す、
ことを特徴とする請求項10に記載のオンライン診察システム。
【請求項12】
医師の画像を撮影可能な医師側装置とともにオンライン診察システムを構成する患者側装置において、
患者用のコンピュータとして動作し、前記医師側装置からの制御に従い周辺機器を操作する患者側制御装置を備え、
さらに、前記患者側制御装置の周辺機器として、
患者の画像を撮影し、その画像データを出力する患者側カメラと、
自然光に近い演色性を有し被写体である患者を照射する照明と、
医師との対話用に設けられたマイクおよびスピーカーと、
医師の画像を表示する患者側モニターと、
患者のバイタルデータを計測し、当該バイタルデータを出力する計測装置と、
を備え、
前記患者側制御装置と前記医師側装置との間では、所定の画像通信機能およびデータ通信機能を利用して画像データおよびバイタルデータの送受信が行われ、
前記患者側制御装置は、受信した画像データに基づいて前記患者側モニターに医師の画像を表示させる、
ことを特徴とする患者側装置。
【請求項13】
前記患者側カメラの解像度をフルHD以上とする、
ことを特徴とする請求項12に記載の患者側装置。
【請求項14】
前記照明の演色評価数Raを85以上とする、
ことを特徴とする請求項12に記載の患者側装置。
【請求項15】
前記スピーカーとして曲面スピーカーを使用する、
ことを特徴とする請求項12に記載の患者側装置。
【請求項16】
請求項12~15のいずれか1つに記載の患者側装置とともにオンライン診察システムを構成する医師側装置において、
医師用のコンピュータとして動作し、インターネット回線を介して前記患者側装置内の患者側制御装置を制御することにより、当該患者側制御装置に周辺機器の操作を行わせる医師側制御装置と、
患者の画像を表示する診察用モニターと、
医師の画像を撮影し、その画像データを出力する医師側カメラと、
を備え、
前記患者側制御装置と前記医師側制御装置との間では、所定の画像通信機能およびデータ通信機能を利用して画像データおよびバイタルデータの送受信が行われ、
前記医師側制御装置は、自装置のディスプレイである表示部にバイタルデータを表示させ、前記診察用モニターに患者の画像を表示させる、
ことを特徴とする医師側装置。
【請求項17】
前記診察用モニターとして有機ELモニターを使用する、
ことを特徴とする請求項16に記載の医師側装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医師がインターネット回線を介して患者を診察するオンライン診察システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、患者(病人やけが人など)は医療機関において症状に合った医療を受けることができるが、医療機関から遠く離れたところにいる患者は、医療機関に行くにも時間がかかり、通院が困難である。また、身動きの困難な患者(老人など)については、医療機関が自宅から近くても通院が難しい場合がある。
【0003】
そのため、通院が困難な患者に対して医師がインターネットを介して行う診療行為が注目されており、従来から、インターネットを介して診療を支援する様々な仕組みが提案されている。
【0004】
たとえば、下記特許文献1には、患者の希望に応じた医療機関の情報を提供し得るネットワーク医療システムが開示されている。このネットワーク医療システムは、医療機関側PCと管理サーバと患者側PCとを備え、医療機関側PCを操作している医師による操作指示を、管理サーバを介して患者側PC(患者等)に伝え、この操作指示に基づいて患者等が撮像、集音した診察データを医療機関側PCで再生する。
【0005】
具体的には、患者側のリモート診察画面には、医師から伝えられたCCDカメラまたはマイクロフォンの操作指示(マイクロフォンを胸に当てて心音を聴診する、CCDカメラで患部を撮影して視診する、等)が表示される。その後、患者側PCは、CCDカメラで撮像された画像データおよびマイクロフォンで集音された音声データを所定の圧縮方法で圧縮して診察データを生成し、この診察データを管理サーバに送信する。また、管理サーバは、患者側PCから診察データを受信すると、これを医療機関側PCに転送する。さらに、医療機関側PCは、管理サーバから受信した診察データを解凍し、画像データおよび音声データを再生する。これにより、医師は、患者が遠隔地にいる場合であっても、患者が目の前にいるかのように診察を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-24406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示されているように、患者自身や患者の周囲にいる人による機器操作で患者の画像データやバイタルデータを医師側へ送信するシステムは従来から存在する。しかしながら、現状、患者側で行う機器操作によらず、医師側からの制御で患者側の機器を操作して必要なデータを得ることはできなかった。具体的には、医療機関側PCから、患者側PC、カメラ、照明等の機器を制御することはできなかった。
【0008】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、通院の困難な患者に対して医師がインターネットを介して診察を行うオンライン診察システムにおいて、医師側からの制御で患者側の機器を遠隔操作可能なオンライン診察システム、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかるオンライン診察システムは、医師側装置とこの医師側装置の設置場所から離れた場所に設置された患者側装置とを備え、医師側装置と患者側装置がインターネット回線を介して接続されるオンライン診察システムである。また、患者側装置は、患者用のコンピュータとして動作し、医師側装置からの制御に従い周辺機器を操作する患者側制御装置を備え、さらに、患者側制御装置の周辺機器として、患者の画像を撮影しその画像データを出力する患者側カメラと、自然光に近い演色性を有し被写体である患者を照射する照明と、医師との対話用に設けられたマイクおよびスピーカーと、医師の画像を表示する患者側モニターと、患者のバイタルデータを計測し当該バイタルデータを出力する計測装置と、を備えることを特徴とする。また、医師側装置は、医師用のコンピュータとして動作し、インターネット回線を介して患者側制御装置を制御することにより患者側制御装置に周辺機器の操作を行わせる医師側制御装置と、患者の画像を表示する診察用モニターと、医師の画像を撮影しその画像データを出力する医師側カメラと、を備えることを特徴とする。そして、患者側制御装置と医師側制御装置との間では、所定の画像通信機能およびデータ通信機能を利用して画像データおよびバイタルデータの送受信が行われ、医師側制御装置は、自装置のディスプレイである表示部にバイタルデータを表示させ、診察用モニターに患者の画像を表示させ、患者側制御装置は、患者側モニターに医師の画像を表示させることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、医師は、診察用モニターに表示された患者の画像および医師側制御装置の表示部に表示されたバイタルデータを参照しながら、音声通信機能を利用して患者と対話しつつ、患者に対して視診および問診を実施することができる。また、本発明によれば、医師側からの制御で患者側の機器を遠隔操作可能なオンライン診察システムを提供することができる。
【0011】
本発明にかかるオンライン診察システムにおいて、医師側制御装置は、インターネット回線を介して患者側制御装置を制御することにより、患者側制御装置に患者側カメラの向きを変える操作を行わせることとした。
【0012】
本発明にかかるオンライン診察システムにおいて、医師側制御装置は、インターネット回線を介して患者側制御装置を制御することにより、患者側制御装置に患者側カメラの撮影画像を拡大または縮小する操作を行わせることとした。
【0013】
本発明にかかるオンライン診察システムにおいて、医師側制御装置は、インターネット回線を介して患者側制御装置を制御することにより、患者側制御装置に照明の向きを変える操作を行わせることとした。
【0014】
また、本発明にかかるオンライン診察システムにおいては、患者側カメラの解像度をフルHD以上とすること、照明の演色評価数Raを85以上とすること、スピーカーとして曲面スピーカーを使用すること、診察用モニターとして有機ELモニターを使用することが望ましい。
【0015】
また、本発明にかかる患者側装置は、医師の画像を撮影可能な医師側装置とともにオンライン診察システムを構成する患者側装置において、患者用のコンピュータとして動作し、医師側装置からの制御に従い周辺機器を操作する患者側制御装置を備え、さらに、患者側制御装置の周辺機器として、患者の画像を撮影しその画像データを出力する患者側カメラと、自然光に近い演色性を有し被写体である患者を照射する照明と、医師との対話用に設けられたマイクおよびスピーカーと、医師の画像を表示する患者側モニターと、患者のバイタルデータを計測し当該バイタルデータを出力する計測装置と、を備え、患者側制御装置と医師側装置との間では、所定の画像通信機能およびデータ通信機能を利用して画像データおよびバイタルデータの送受信が行われ、患者側制御装置は、受信した画像データに基づいて患者側モニターに医師の画像を表示させることを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかる患者側装置においては、患者側カメラの解像度をフルHD以上とすること、照明の演色評価数Raを85以上とすること、スピーカーとして曲面スピーカーを使用することが望ましい。
【0017】
また、本発明にかかる医師側装置は、上記患者側装置とともにオンライン診察システムを構成する医師側装置において、医師用のコンピュータとして動作し、インターネット回線を介して患者側装置内の患者側制御装置を制御することにより、患者側制御装置に周辺機器の操作を行わせる医師側制御装置と、患者の画像を表示する診察用モニターと、医師の画像を撮影しその画像データを出力する医師側カメラと、を備え、患者側制御装置と医師側制御装置との間では、所定の画像通信機能およびデータ通信機能を利用して画像データおよびバイタルデータの送受信が行われ、医師側制御装置は、自装置のディスプレイである表示部にバイタルデータを表示させ、診察用モニターに患者の画像を表示させることを特徴とする。
【0018】
また、本発明にかかる医師側装置においては、診察用モニターとして有機ELモニターを使用することが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、医師側からの制御で患者側の機器を遠隔操作可能なオンライン診察システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明にかかるオンライン診察システムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、本発明にかかる医師側装置の構成の一例を示す図である。
図3図3は、本発明にかかる患者側装置の構成の一例を示す図である。
図4図4は、患者側装置のイメージの一例を示す模式図である。
図5図5は、制御装置として動作するコンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
図6図6は、図4に示す患者側装置に備えられたカメラのイメージを示す拡大模式図である。
図7図7は、カメラの方向制御およびズーム制御を行うためのカメラ操作画面の一例を示す図である。
図8図8は、本発明にかかる患者側装置の構成の一例を示す図である。
図9図9は、本発明にかかる患者側装置のイメージの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明にかかるオンライン診察システム、患者側装置、および医師側装置の実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0022】
<第1の実施形態>
本発明にかかるオンライン診察システムの第1の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
<構成>
図1は、本発明にかかるオンライン診察システムの構成の一例を示す図である。本実施形態のオンライン診察システム1は、医療機関に設置された医師側装置2と、患者の部屋や医療機関の病室等、医師側装置2の設置場所から離れた場所に設置された患者側装置3とを有し、医師側装置2と患者側装置3がインターネット回線を介して接続されている。
【0024】
図2は、本実施形態の医師側装置2の構成の一例を示す図である。本実施形態の医師側装置2は、インターネット回線を介して遠隔の患者側装置3を制御するとともに、インターネット回線を介して患者側装置3から送られてくる診察用データ(患者の画像データおよびバイタルデータ)を受信し所定の画面に表示させるための制御を行う医師側制御装置21(単に制御装置21と呼ぶ場合もある)と、患者側装置3から受信した画像データを表示するための診察用モニター22と、医師を撮影可能なカメラ23とを備える。なお、このカメラ23は、医師側制御装置21に内蔵されたものであってもよい。また、医師側制御装置21は、起動と同時にカメラ23を制御して医師を撮影し、その撮影画像のデータ(画像データ)を患者側装置3に対して送信する。また、診察用モニター22は、患者の顔色や表情、肌の色、および患部の色や状態等を映像として正確に再現できるように、高画質かつ滑らかで自然な映像表現が可能な有機EL(Electro Luminescence)モニターであることが望ましい。
【0025】
図3は、本実施形態の患者側装置3の構成の一例を示す図であり、図4は、本実施形態の患者側装置3のイメージの一例を示す模式図である。本実施形態の患者側装置3は、インターネット回線を介して医師側装置2から送られてくる制御信号(命令)に従って各種機器(後述するカメラ、照明に相当)を操作するとともに、各種機器(後述する各種センサーやカメラに相当)から得られる情報である診察用データ(患者の画像データおよびバイタルデータ)を医師側装置2へ送信するための制御を行う患者側制御装置31(単に制御装置31と呼ぶ場合もある)と、患者を撮影可能なカメラ32と、より鮮明な画像を撮影可能とするために患者に対して光を照射する照明33と、医師との対話用に設けられたマイク34およびスピーカー35と、患者のバイタルデータを計測する計測装置36と、医師側装置2から受信した画像データを表示するためのモニター37とを備える。ここで、上記カメラ32、照明33、マイク34、スピーカー35、計測装置36およびモニター37は、上記患者側制御装置31の周辺機器として動作する。なお、カメラ32は、遠隔操作によって各機能(撮影機能、ズーム機能等)を制御することにより動画および静止画を撮影可能なカメラであり、撮影画像を正確に再現できるように、たとえば、フルHD(High Definition)以上の解像度を有する高解像度カメラであることが望ましい。また、照明33は、自然な色を再現できるように、たとえば、Ra85以上の高演色照明であることが望ましい。また、スピーカー35は、医師との対話が可能なものであればよく、特に制限はないが、たとえば、高齢者や難聴者が聴こえにくい高音域の音を広範囲に伝達可能な既知の曲面スピーカーであることが望ましい。
【0026】
また、上記計測装置36としては、たとえば、無線通信機能を搭載する既知のベッドセンサーが使用可能である。このベッドセンサーは、たとえば、ベッド上に敷かれたマットの下に敷設し患者がベッド上に横臥するだけで、バイタルデータ(呼吸数、心拍数、睡眠の深さ(睡眠状態))を計測できる帯状シートに形成されたセンサーであり、このセンサーが計測したバイタルデータは、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)を利用して患者側制御装置31に送信される。
【0027】
なお、本実施形態においては、計測装置36の一例として既知のベッドセンサーを使用することとしたが、これに限るものではなく、バイタルデータ(体温、脈拍、血圧、睡眠状態、心電位等)を測定可能な機器でかつそのデータを患者側制御装置31に通知可能であれば、どのようなセンサーを使用することとしてもよい。たとえば、腕に巻き付けるタイプのベルト状のセンサーであってもよいし、頭部に装着するタイプのセンサーであってもよく、さらには、これらのセンサーを併用することとしてもよい。また、本実施形態においては、計測装置36から患者側制御装置31へのバイタルデータの送信を近距離無線通信により行うこととしたが、これに限るものではなく、たとえば、配線接続による有線通信により行うこととしてもよい。
【0028】
また、本実施形態においては、計測装置36の具体例として、たとえば、上記ベッドセンサーの他、既知の各種バイタルセンサー、パルスオキシメーター、体動センサー、血糖値センサー、内視鏡装置、超音波検査装置、指尖脈波測定装置、聴診装置、心電図計測装置、X線カメラ、簡易採血装置、血液検査装置、X線コンピュータ断層装置(CT)、磁気共鳴画像診断装置(MRI)、等を備えることとしてもよく、さらには、これらの装置を併用することとしてもよい。このような計測装置36を備えることにより、たとえば、患者の体温、脈拍数、心音、心拍数、呼吸音、呼吸動、血圧値、心電図データ、酸素飽和度(SpO2)、体動、歩数、睡眠時間、睡眠の深さ、体重、肥満度指数、視力、血糖値、等を得ることができ、これらの測定結果をオンライン診察に反映することができる。なお、バイタルデータを測定するものではないが、本実施形態においては、たとえば、患者がいる場所の温度、湿度、照度等の環境データを収集可能な測定装置36をさらに備えることとしてもよい。
【0029】
上記図1図4に示すように構成される本実施形態のオンライン診察システム1において、医師と患者は、互いの顔がそれぞれのモニターに表示された状態(対面状態)で向き合う。すなわち、医師側装置2の診察用モニター22および患者側装置3のモニター37には、それぞれ通信相手の顔画像が表示されている。そして、制御装置(21、31)が有する画像通信機能、音声通信機能、データ通信機能等を活用し、インターネット回線を介して診察用データの送受信をリアルタイムで行うことにより、医師によるオンライン診察を実施する。
【0030】
また、医師側装置2と患者側装置3の間で送受信される情報としては、図1に示すように、たとえば、画像データ、音声データ、バイタルデータ、各種周辺機器の制御信号等がある。画像データには、患者の顔色や表情、肌の色、および患部の色や状態等を示す情報が含まれる。また、音声データには、医師による問診、問診に対する患者の応答等の会話データが含まれる。また、バイタルデータには、患者の呼吸数、心拍数、睡眠状態、体温、脈拍、血圧、睡眠状態、心電位等が含まれる。また、制御信号には、各種周辺機器(カメラ32、照明33、マイク34、スピーカー35、計測装置36、モニター37等)を操作するための制御信号や、患者側制御装置31を制御するための制御信号等が含まれる。なお、医師側装置2と患者側装置3の間で送受信される情報は、これらに限定されるものではない。上記情報については、たとえば、本実施形態のオンライン診察にかかわる情報(オンライン診察に必要な情報)を列挙したものである。
【0031】
図5は、本実施形態にかかる制御装置(21,31)として動作するコンピュータのハードウェア構成例を示す図である。図5において、制御装置(21,31)は、CPU(Central Processing Unit)およびFPGA(Field Programmable Gate Array)等で構成される制御部51と、ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)等の各種メモリを含む記憶部52と、キーボードおよびマウス等のユーザインタフェースを含む入力部53と、印刷やスキャンのための信号および周辺機器として接続された機器との間の信号(画像データおよびバイタルデータ等)等の信号入出力処理を行うインタフェース(I/F)部54と、ディスプレイである表示部55と、所定のネットワーク(インターネット)を介して外部と通信を行う通信部56とを備える。なお、図5では、キーボードおよびマウス等のユーザインタフェースを含む入力部53を備えることとしたが、本実施形態の制御装置(21,31)は、これに限るものではなく、表示部55にタッチパネルの機能を持たせることによって、入力部53を設けない構成、または入力部53と併用する構成としてもよい。
【0032】
また、図5において、医師側制御装置21の制御部51は、本実施形態のオンライン診察を実現するために、たとえば、患者側装置3を制御し、患者側装置3から受信する診察用データを表示させるための診察制御プログラムを実行する。医師側制御装置21の記憶部52は、オンライン診察にかかるプログラム(診察制御プログラム)および各種情報(バイタルデータ、画像データ等)や、処理の過程で得られた各種データ等を記憶する。医師側制御装置21の制御部51では、上記記憶部52に記憶されている各種プログラムを読み出すことにより、患者側装置3を制御し、患者側装置3から受信する診察用データを表示部55および診察用モニター22に表示させるための制御を実行する。
【0033】
また、図5において、患者側制御装置31の制御部51は、本実施形態のオンライン診察を実現するために、たとえば、診察用データを得るための機器操作プログラムを実行する。患者側制御装置31の記憶部52は、オンライン診察にかかるプログラム(機器操作プログラム)および各種情報(バイタルデータ、画像データ等)や、処理の過程で得られた各種データ等を記憶する。患者側制御装置31の制御部51では、上記記憶部52に記憶されている各種プログラムを読み出すことにより、カメラ32等の各種周辺機器を操作し、診察用データを得るための制御を実行する。
【0034】
なお、上記制御装置(21,31)の記憶部52は、内部メモリに限るものではなく、たとえば、DVD(Digital Versatile Disc)やSDメモリ等の外部記憶媒体であってもよいし、また、内部メモリおよび外部記憶媒体(DVDやSDメモリ等)の両方で構成されることとしてもよい。また、本実施形態の制御装置(21,31)のハードウェア構成は、説明の便宜上、本実施形態のオンライン診察にかかわる構成を列挙したものであり、制御装置(21,31)を構成するコンピュータのすべての機能を表現したものではない。
【0035】
また、本実施形態の制御装置(21,31)は、デスクトップパソコン、ノートパソコン等の汎用PCを想定しているが、これらに限るものではなく、たとえば、スマートフォン、タブレット端末等の携帯端末であってもよい。
【0036】
また、本実施形態の患者側装置3の一例として図4のイメージを示したが、たとえば、ベッドから起き上がることができない患者等に対応するために、携帯型の患者側装置を構成することとしてもよい。この場合、モニター、照明、マイク、スピーカーは小型化または一体化して構成する。
【0037】
<オンライン診察システムの動作>
つづいて、本実施形態のオンライン診察システム1の動作について説明する。
【0038】
本実施形態においては、医師が医師側装置2内の医師側制御装置21を起動し、これに連動して、医師側制御装置21が自律的に診察用モニター22およびカメラ23を起動する。また、本実施形態においては、患者(または患者の周囲の人)が患者側装置3内の患者側制御装置31を起動し、これに連動して、患者側制御装置31が各種周辺機器(カメラ32、照明33、マイク34、スピーカー35、計測装置36、モニター37)を起動する。この状態で、医師側制御装置21の制御部51は、通信部56に対し、カメラ23により撮影された医師の顔画像の画像データを、インターネット回線を介して患者側装置3へ送信させるための制御を実行する。また、患者側制御装置31の制御部51は、通信部56に対し、カメラ32により撮影された患者の顔画像の画像データを、インターネット回線を介して医師側装置2へ送信させるための制御を実行する。そして、上記画像データを通信部56経由で受信した制御装置(21,31)の制御部51が、それぞれ顔画像を表示させるための制御を実行する。これにより、医師側の診察用モニター22および患者側のモニター37には、それぞれ通信相手の顔画像が表示される。
【0039】
また、上記計測装置36の起動が完了すると、患者側制御装置31の制御部51は、計測装置36から常時送られてくるバイタルデータをI/F部54経由で受信する。そして、通信部56に対し、常時得られるバイタルデータを、インターネット回線を介して医師側装置2に転送させるための制御を実行する。医師側装置2では、医師側制御装置21の制御部51が、通信部56を介して受信したバイタルデータを表示部55に表示させるための制御を実行する。これにより、医師側制御回路21の表示部55には、患者のバイタルデータが表示され、以降、常に更新された最新のバイタルデータが表示される。
【0040】
この状態で、医師は、診察用モニター22に表示された患者の顔画像および医師側制御装置21の表示部55に表示されたバイタルデータを参照しながら、音声通信機能を利用して患者と対話しつつ、患者に対して視診および問診を実施する。
【0041】
また、本実施形態のオンライン診察システム1においては、医師側装置2側からの制御で、患者側装置3内の機器であるカメラ32および照明33を操作することが可能である。
【0042】
たとえば、カメラ32の向きを変えて患者の患部の色や状態を確認するような場合、医師は、医師側制御装置21の表示部55上でカメラ32のレンズを患部の方に向けるための画面操作(たとえばマウスによる画面操作)を行う。この操作に連動して、医師側制御装置21の制御部51は、カメラ32のレンズを患部の方に向けるための方向制御信号を生成し、この方向制御信号を、通信部56およびインターネット回線を介して患者側装置3へ送信する。患者側装置3では、患者側制御装置31の制御部51が、インターネット回線を介して通信部56経由で受信した方向制御信号に従い、カメラ32のレンズを患部の方に向けるための制御を実施する。
【0043】
また、患部の色や状態をより詳細に確認するために、ズーム機能を利用する場合には、医師は、医師側制御装置21の表示部55上で患部の映像を拡大または縮小するための画面操作(たとえばマウスによる画面操作)を行う。この操作に連動して、医師側制御装置21の制御部51は、患部の映像を拡大または縮小するためのズーム制御信号を生成し、このズーム制御信号を、通信部56およびインターネット回線を介して患者側装置3へ送信する。患者側装置3では、患者側制御装置31の制御部51が、インターネット回線を介して通信部56経由で受信したズーム制御信号に従い、患部の映像を拡大または縮小させるための制御を実施する。
【0044】
さらに、患部の色や状態をさらに詳細に確認するために、光が患部に正確に照射されるように照明33の向きを変える場合には、医師は、医師側制御装置21の表示部55上で照明33の向きを変えるための画面操作(たとえばマウスによる画面操作)を行う。このとき、医師側制御装置21の表示部55上の画面操作で、照明33の明るさを調整(調光)することとしてもよい。これらの操作に連動して、医師側制御装置21の制御部51は、照明33の向きを変えるための照明制御信号(調光制御の情報を含むこととしてもよい)を生成し、この照明制御信号を、通信部56およびインターネット回線を介して患者側装置3へ送信する。患者側装置3では、患者側制御装置31の制御部51が、インターネット回線を介して通信部56経由で受信した照明制御信号に従い、所望の向きに照明33の向きを変えるための制御を実施する。
【0045】
上記のようにカメラ32および照明33の操作が完了すると、患者側制御装置31の制御部51は、カメラ32により撮影された患部の画像の画像データを、通信部56およびインターネット回線を介して医師側装置2へ送信する。そして、上記患部の画像データをインターネット回線および通信部56を介して受信した医師側制御装置21の制御部51が、診察用モニター22に患部の画像を表示させるための制御を実行する。
【0046】
なお、上記では、一例として、患者側装置3内の機器であるカメラ32および照明33の両方を制御する場合について説明したが、これに限るものではなく、たとえば、いずれか1つの制御(上記方向制御信号による制御、上記ズーム制御信号による制御、または上記照明制御信号による制御)を実施することとしてもよい。
【0047】
また、本実施形態では、一例として、患者側装置3内の機器であるカメラ32および照明33を医師側から操作する場合について説明したが、たとえば、その他の機能(カメラ32、照明33、マイク34、スピーカー35、計測装置36、モニター37が有する機能)を医師側から制御することとしてもよい。
【0048】
<カメラ32の方向制御およびズーム制御>
つづいて、医師側装置2側からの制御で患者側装置3内の機器であるカメラ32の方向制御およびズーム制御を行う場合の、医師側装置2および患者側装置3の動作について説明する。
【0049】
図6は、図4に示す患者側装置3に備えられたカメラ32のイメージを示す拡大模式図である。本実施形態においては、雲台38がカメラ32の底面に着脱自在に取り付けられており、たとえば、この雲台38が、カメラ32を左右(パン)方向および上下(チルト)方向に回動自在に支持する。また、雲台38は、無線制御(たとえば、患者側制御装置31からの無線制御)が可能な電動雲台であり、市販の一般的なものを使用する。
【0050】
なお、本実施形態の雲台38は、カメラ32を左右方向および上下方向の2軸で操作することとしたが、これに限るものではなく、これらの2軸に加えて、ロール(カメラ32の回転)方向の操作ができる3軸操作の電動雲台であってもよい。また、患者側制御装置31からの無線制御により雲台38を操作することとしたが、これに限るものではなく、雲台38と患者側制御装置31とを配線接続し、雲台38を有線制御により操作することとしてもよい。
【0051】
また、患者側制御装置31は、雲台38を操作するためのソフトウェアを搭載するコントローラとして動作し、医師側制御装置21から送られてくる方向制御信号に基づいて雲台38の向き(方向)を操作する。なお、雲台38を操作するコントローラは、患者側制御装置31に限らず、たとえば、雲台38の周辺に用意されたパソコンやスマートフォン等を利用することも可能である。
【0052】
また、患者側制御装置31は、上記方向制御に加え、カメラ32のズーム機能を操作するためのソフトウェアを搭載するコントローラとしても動作し、医師側制御装置21から送られてくるズーム制御信号に基づいてカメラ32のズーム機能(拡大(ズームイン)、縮小(ズームアウト))を操作する。なお、患者側制御装置31は、カメラ23のその他の機能(撮影ON/OFF、フォーカス、フラッシュ等)を制御することとしてもよい。
【0053】
図7は、カメラ32の方向制御およびズーム制御を行うためのカメラ操作画面の一例を示す図である。本実施形態では、医師が医師側制御装置21の表示部55に表示されたカメラ操作画面を操作し、医師側制御装置21の制御部51がカメラ制御用のソフトウェア(専用アプリケーション)を実行することによって、カメラ32の方向制御およびズーム制御を実施する。
【0054】
たとえば、医師がカーソル操作により初期位置キーをクリックすると、医師側制御装置21の制御部51は、カメラ32を初期位置に向けるための(カメラ32のレンズが正面を向くように)方向制御信号を生成し、この方向制御信号を、通信部56およびインターネット回線を介して患者側装置3へ送信する。患者側装置3では、患者側制御装置31の制御部51が、インターネット回線を介して通信部56経由で受信した方向制御信号に従い、雲台38を操作し、カメラ32のレンズを初期位置に向けるための制御を実施する。
【0055】
また、たとえば、医師が患者の患部を診るためにカーソル操作により方向キー(右、左、上、下)をクリックすると、医師側制御装置21の制御部51は、カメラ32を患部に向けるための方向制御信号を生成し、この方向制御信号を、通信部56およびインターネット回線を介して患者側装置3へ送信する。患者側装置3では、患者側制御装置31の制御部51が、インターネット回線を介して通信部56経由で受信した方向制御信号に従い、雲台38を操作し、カメラ32のレンズを患部に向けるための制御を実施する。
【0056】
また、たとえば、医師が患部の映像を拡大(ズームイン)するためにカーソル操作によりズームキーをクリックしたまま右方向に移動させると(倍率:×1→×2→×3)、医師側制御装置21の制御部51は、ズームキーの位置(倍率)に応じたズーム制御信号を生成し、このズーム制御信号を、通信部56およびインターネット回線を介して患者側装置3へ送信する。患者側装置3では、患者側制御装置31の制御部51が、インターネット回線を介して通信部56経由で受信したズーム制御信号に従い、カメラ32のズーム機能を操作し、指定された倍率に応じたズーム制御を実施する。また、映像を縮小(ズームアウト)する場合、医師は、カーソル操作によりズームキーをクリックしたまま左方向に移動させる(倍率:×3→×2→×1)動作を行う。
【0057】
なお、医師側制御装置21の表示部55がタッチパネル機能を備える場合には、上記カーソル操作に代えて、たとえば、表示部55に表示されたカメラ操作画面をスワイプしたり、ピンチインおよびピンチアウトしたりすることによって、方向性制御およびズーム制御を実施する。
【0058】
本実施形態においては、上記のように医師側からの操作でカメラ32の方向制御およびズーム制御を実施することによって、所望の映像を診察用モニター22に表示することができ、医師は、診察用モニター22に表示された所望の映像、すなわち、自然な色で正確に再現された撮影画像に基づいてオンライン診察を実施することができる。
【0059】
<効果>
このように、本実施形態のオンライン診察システム1において、患者側装置3は、医師側装置2からの制御に従い周辺機器を操作する患者側制御装置31を備える。また、患者側制御装置31の周辺機器として、患者の画像を撮影しその画像データを出力するカメラ32と、自然光に近い演色性を有し被写体である患者を照射する照明33と、医師との対話用に設けられたマイク34およびスピーカー35と、医師の画像を表示するモニター37と、患者のバイタルデータを計測し出力する計測装置36と、を備える。
【0060】
また、本実施形態のオンライン診察システム1において、医師側装置2は、インターネット回線を介して患者側制御装置31を制御することにより、患者側制御装置31に上記周辺機器の操作を行わせる医師側制御装置21と、患者の画像を表示する診察用モニター22と、医師の画像を撮影しその画像データを出力するカメラ23と、を備える。
【0061】
そして、患者側制御装置31と医師側制御装置21との間では、所定の画像通信機能およびデータ通信機能を利用して画像データおよびバイタルデータの送受信が行われる。また、医師側制御装置21は、自装置のディスプレイである表示部55にバイタルデータを表示させ、診察用モニター22に患者の画像を表示させ、さらに、患者側制御装置31は、モニター37に医師の画像を表示させる。この状態で、医師は、診察用モニター22に表示された患者の画像および医師側制御装置21の表示部55に表示されたバイタルデータを参照しながら、音声通信機能を利用して患者と対話しつつ、患者に対して視診および問診を実施することができる。また、本実施形態によれば、医師側からの制御で患者側の機器を遠隔操作可能なオンライン診察システムを提供することができる。
【0062】
なお、本実施形態においては、説明の便宜上、計測装置36を患者側制御装置31の起動時に連動して起動する構成としたが、これに限るものではなく、計測装置36については、オンライン診察時以外のときも常時起動した状態(ON状態)としておくことが望ましい。これにより、診察の時間帯以外でもバイタルデータを患者側制御装置31の記憶部52に蓄積することができ、たとえば、必要に応じて、医師側装置2側からオンライン診察時以外の期間のバイタルデータを読み出すことが可能となる。
【0063】
また、本実施形態においては、画面表示された患者の画像データおよびバイタルデータに基づいて医師がオンライン診察を行っているが、これに限るものではない。たとえば、画像データおよびバイタルデータの組み合わせであるデータセットを入力とし、病気やけがの名称、その治療方法および治療薬等を出力とするAI診断モデルを、機械学習により生成し、学習済みのAI診断モデルを用いて入力データ(画像データ、バイタルデータ)から病気やけがの名称、その治療方法および治療薬を予測することとしてもよい。
【0064】
<第2の実施形態>
つづいて、本発明にかかるオンライン診察システムの第2の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、前述した第1の実施形態と同様に説明することが可能な要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する。以下、前述した第1の実施形態と異なる部分について説明する。
【0065】
図8は、第2の実施形態の患者側装置の構成の一例を示す図であり、図9は、第2の実施形態の患者側装置のイメージの一例を示す模式図である。本実施形態の患者側装置3aは、前述した第1の実施形態における患者側装置3の構成に加え、患者側制御装置31に配線(たとえば、USB)接続され、マイナンバーカード内の情報(ICチップの情報)を読み取り可能なICカードリーダー38、を備える。このICカードリーダー38は、カードを差し込んで読み取る接触型、または、かざすことで読み取れる非接触型、のいずれであってもよい。
【0066】
本実施形態においては、マイナンバーカードを、たとえば、健康保険証として使用することを想定する。なお、オンライン診察システムおよび医師側装置の構成については、前述した第1の実施形態の図1および図2と同様である。
【0067】
以下、第2の実施形態のオンライン診察システムの動作について説明する。
【0068】
まず、患者が患者側装置3aに取り付けられたICカードリーダー38に自身のマイナンバーカードを差し込むと、ICカードリーダー38は、マイナンバーカードからICチップの情報(たとえば、電子証明書の情報)を読み出し、その情報を患者側制御装置31に通知する。
【0069】
つぎに、患者側制御装置31の制御部51は、通信部56を介してICチップの情報を医療機関(病院内の管理装置(図示せず)や、医師側装置2等)に送信する。
【0070】
つぎに、医療機関側による一般的なオンライン手続き(電子証明書の送信)によって、患者の被保険者資格について確認がとれた後、医師による医師側制御装置21の操作により、医師側制御装置21が、ICチップの情報に関連付けられた情報として、たとえば、医療機関のサーバ(管理装置や記憶装置等:図示せず)に登録された患者の診察情報(過去の画像データおよびバイタルデータや、MRI検査およびCT検査等の検査結果を含むカルテ情報や、処方箋の情報等)を、医療機関内ネットワーク(LAN等)経由で読み出す。さらに、医師による医師側制御装置21の操作によって、医師側制御装置21が、ICチップの情報に関連付けられたその他の情報として、たとえば、行政側で保有している患者の住民検診やワクチン接種に関する情報(患者の医療情報)をインターネット経由で受け取る。
【0071】
そして、医師は、第1の実施形態の処理によって、診察用モニター22に表示された患者の顔画像、医師側制御装置21の表示部55に表示されたバイタルデータに加え、上記患者の診察情報および医療情報を参照しながら、音声通信機能を利用して患者と対話しつつ、患者に対して視診および問診を実施する。すなわち、制御装置(21、31)が有する通信機能を活用し、診察用データ(患者の画像データおよびバイタルデータ)の送受信をリアルタイムで行いつつ、マイナンバーカード(健康保険証としての使用)を利用して上記診察情報および上記医療情報を入手することにより、医師によるオンライン診察を実施する。
【0072】
なお、たとえば、医療機関(病院、診療所、介護事業者、薬局等)同士が連携して医療に関する情報を共有する医療情報ネットワークが構築されている場合には、医師は、医師側制御装置21が有する通信機能を活用し、他の医療機関から、マイナンバーカード(健康保険証利用)のICチップの情報に紐付いた患者の診察情報(画像データおよびバイタルデータや、MRI検査にCT検査の検査結果を含むカルテ等の情報や、処方箋の情報等)を入手する。具体的には、医師による医師側制御装置21の操作により、制御部51が、ICチップの情報に基づいて、通信部56およびインターネットを介して他の医療機関から患者の診察情報を読み出す。なお、各医療機関が連携して診察情報を共有する場合、各医療機関の診察情報については、それぞれの医療機関のサーバで個別に管理されている診察情報であってもよいし、クラウド化によって共有された診察情報であってもよい。
【0073】
これにより、第2の実施形態においては、診察用モニター22に表示された患者の顔画像、医師側制御装置21の表示部55に表示されたバイタルデータ、受診中の医療機関のサーバに登録された患者の診察情報、および上記医療情報に加え、他の医療機関から入手した患者の診察情報を参照しながら、医師によるオンライン診察を実施することができる。
【0074】
以上のように、第2の実施形態によれば、患者の医療情報(行政側が保有する検診履歴、ワクチン接種履歴)や診察情報(医療機関同士の連携を含む)が蓄積され、医師側の操作でこれらの情報を入手することができるため、より多くの情報から正確な診察が可能となり、適切な治療が行うことができる。また、全国的な医療情報ネットワークが構築されれば、たとえば、情報共有により、同じ検査を何度も受ける必要がなくなる等、患者にとって最適な医療サービスを提供することができる。
【0075】
また、患者側装置3aにICカードリーダー38を取り付け、マイナンバーカードを健康保険証利用することによって、たとえば、情報連携した指定口座やクレジットカード等から医療費を引き落とすことが可能となり、遠隔で診察を受ける患者が、病院等の医療機関に行くことなく、治療費、薬代等の支払いを簡単に完了することができる。
【0076】
なお、患者の医療情報や診察情報には個人情報が含まれているため、医師によるこれらの情報の取得には患者の同意が必要となる。
【符号の説明】
【0077】
1 オンライン診察システム
2 医師側装置
3,3a 患者側装置
21 医師側制御装置(制御装置)
22 診察用モニター
23 カメラ
31 患者側制御装置(制御装置)
32 カメラ
33 照明
34 マイク
35 スピーカー
36 計測装置
37 モニター
38 ICカードリーダー
51 制御部
52 記憶部
53 入力部
54 インタフェース(I/F)部
55 表示部
56 通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9