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特開2023-55687後方集中の発熱発生を有するASC/DEC
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055687
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】後方集中の発熱発生を有するASC/DEC
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/80 20060101AFI20230411BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20230411BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20230411BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
B01J29/80 A ZAB
B01D53/94 228
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01D53/94 222
F01N3/10 A
F01N3/28 301F
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022195397
(22)【出願日】2022-12-07
(62)【分割の表示】P 2019553837の分割
【原出願日】2018-03-29
(31)【優先権主張番号】62/478,806
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ハイ-イン
(72)【発明者】
【氏名】フェデイコ, ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ルー, ジン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車両の走行サイクルにおいてアンモニア変換が広範囲の温度で起こり、最小限の窒素酸化物および亜酸化窒素副産物が形成される、SCRによるNOx除去および窒素への選択的アンモニア変換をどちらも提供する触媒、ならびに排気流からの放出を減らす方法を提供する。
【解決手段】入口側および出口側、第1ゾーンおよび第2ゾーンを有する基材を含む触媒物品であって、第1ゾーンは、担体上の白金族金属および第1のSCR触媒を含むアンモニアスリップ触媒(ASC)を含み、第2ゾーンは、ディーゼル酸化触媒(DOC)およびディーゼル発熱触媒(DEC)からなる群から選択される触媒を含み、第1ゾーンは、第2ゾーンの上流に位置する触媒物品を提供する。第1ゾーンは、(1)担体上の白金族金属および(2)第1のSCR触媒のブレンドを有する底層、および底層の上方に位置する、第2のSCR触媒を含む上層を含んでいてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口側および出口側、第1ゾーンおよび第2ゾーンを含む基材を含む触媒物品であって、
第1ゾーンが、担体上の白金族金属および第1のSCR触媒を含むアンモニアスリップ触媒(ASC)を含み、
第2ゾーンが、ディーゼル酸化触媒(DOC)およびディーゼル発熱触媒(DEC)からなる群から選択される触媒を含み、
第1ゾーンが、第2ゾーンの上流に位置する、触媒物品。
【請求項2】
第1ゾーンが、
a.(1)担体上の白金族金属および(2)第1のSCR触媒のブレンドを含む底層、および
b.底層の上方に位置する、第2のSCR触媒を含む上層
を含む、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項3】
担体がケイ質物質を含む、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項4】
ケイ質物質が、(1)シリカ、(2)200より高いシリカ対アルミナ比を有するゼオライト、および(3)SiO2含有量≧40%を有する、非晶質シリカをドープしたアルミナからなる群から選択される物質を含む、請求項3に記載の触媒物品。
【請求項5】
白金族金属が、白金族金属および担体の全重量の約0.5重量%から約10重量%の量で担体上に存在する、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項6】
白金族金属が、白金族金属および担体の全重量の約1重量%から約6重量%の量で担体上に存在する、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項7】
白金族金属が、白金族金属および担体の全重量の約1.5重量%から約4重量%の量で担体上に存在する、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項8】
白金族金属が、白金、パラジウム、または白金とパラジウムの組合せを含む、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項9】
白金族金属が白金を含む、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項10】
ブレンド内で、第1のSCR触媒対担体上の白金族金属の重量比が、約3:1から約300:1である、請求項2に記載の触媒物品。
【請求項11】
ブレンド内で、第1のSCR触媒対担体上の白金族金属の重量比が、約5:1から約100:1である、請求項2に記載の触媒物品。
【請求項12】
ブレンド内で、第1のSCR触媒対担体上の白金族金属の重量比が、約10:1から約50:1である、請求項2に記載の触媒物品。
【請求項13】
第1のSCR触媒が、卑金属、卑金属の酸化物、モレキュラーシーブ、金属交換されたモレキュラーシーブ、またはその混合物である、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項14】
第1のSCR触媒が銅を含む、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項15】
第1ゾーンおよび第2ゾーンが、単一の基材上に位置し、第1ゾーンが、基材の入口側に位置し、第2ゾーンが、基材の出口側に位置する、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項16】
基材が第1基材および第2基材を含み、第1ゾーンが、第1基材上に位置し、第2ゾーンが、第2基材上に位置し、第1基材が第2基材の上流に位置する、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項17】
第2のSCR触媒が、卑金属、卑金属の酸化物、モレキュラーシーブ、金属交換されたモレキュラーシーブ、またはその混合物である、請求項2に記載の触媒物品。
【請求項18】
第1ゾーンが、
a.担体上の白金族金属を含む底層、
b.底層の上方に位置する、第1のSCR触媒を含む上層
を含む、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項19】
排気流を、入口側および出口側、第1ゾーンおよび第2ゾーンを含む基材を含む触媒物品と接触させることを含む、排気流からの放出を減らす方法であって、
第1ゾーンが、担体上の白金族金属および第1のSCR触媒を含むアンモニアスリップ触媒(ASC)を含み、
第2ゾーンが、ディーゼル酸化触媒(DOC)およびディーゼル発熱触媒(DEC)からなる群から選択される触媒を含み、
第1ゾーンが、第2ゾーンの上流に位置する、方法。
【請求項20】
第1ゾーンが、
a.(1)担体上の白金族金属および(2)第1のSCR触媒のブレンドを含む底層、および
b.底層の上方に位置する、第2のSCR触媒を含む上層
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
第1ゾーンが、
a.担体上の白金族金属を含む底層、
b.底層の上方に位置する、第1のSCR触媒を含む上層
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
担体がケイ質物質を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
ケイ質物質が、(1)シリカ、(2)200より高いシリカ対アルミナ比を有するゼオライト、および(3)SiO2含有量≧40%を有する、非晶質シリカをドープしたアルミナからなる群から選択される物質を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
白金族金属が、白金族金属および担体の全重量の約0.5重量%から約10重量%の量で担体上に存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
白金族金属が、白金族金属および担体の全重量の約1重量%から約6重量%の量で担体上に存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
白金族金属が、白金族金属および担体の全重量の約1.5重量%から約4重量%の量で担体上に存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
白金族金属が、白金、パラジウム、または白金とパラジウムの組合せを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
白金族金属が白金を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
ブレンド内で、第1のSCR触媒対担体上の白金族金属の重量比が、約3:1から約300:1である、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
ブレンド内で、第1のSCR触媒対担体上の白金族金属の重量比が、約5:1から約100:1である、請求項20に記載の方法。
【請求項31】
ブレンド内で、第1のSCR触媒対担体上の白金族金属の重量比が、約10:1から約50:1である、請求項20に記載の方法。
【請求項32】
第1のSCR触媒が、卑金属、卑金属の酸化物、モレキュラーシーブ、金属交換されたモレキュラーシーブ、またはその混合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項33】
第1のSCR触媒が銅を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項34】
第1ゾーンおよび第2ゾーンが、単一の基材上に位置し、第1ゾーンが、基材の入口側に位置し、第2ゾーンが、基材の出口側に位置する、請求項19に記載の方法。
【請求項35】
基材が第1基材および第2基材を含み、第1ゾーンが、第1基材上に位置し、第2ゾーンが、第2基材上に位置し、第1基材が第2基材の上流に位置する、請求項19に記載の方法。
【請求項36】
第2のSCR触媒が、卑金属、卑金属の酸化物、モレキュラーシーブ、金属交換されたモレキュラーシーブ、またはその混合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項37】
入口端および出口端、第1ゾーン、第2ゾーン、および第3ゾーンを含む基材を含む触媒物品であって、
第1ゾーンが、第2のSCR触媒を含み、
第2ゾーンが、(1)担体上の白金族金属および(2)第1のSCR触媒のブレンドを含むアンモニアスリップ触媒(ASC)を含み、
第3ゾーンが、ディーゼル酸化触媒(DOC)およびディーゼル発熱触媒(DEC)からなる群から選択される触媒(「第3ゾーン触媒」)を含み、
第1ゾーンが、第2ゾーンの上流に位置し、第2ゾーンが、第3ゾーンの上流に位置する、触媒物品。
【請求項38】
ASCが、第1層に含まれ、
第3ゾーン触媒が、第1層の上に位置するとともに第1層よりも長さが短い、出口端から基材の全長未満に広がる第2層に含まれ、
第2のSCR触媒が、入口端から基材の全長未満に広がり、第1層と少なくとも部分的に重複する層に含まれる、請求項37に記載の触媒物品。
【請求項39】
第1層が、出口端から基材の全長未満に広がる、請求項38に記載の触媒物品。
【請求項40】
担体がケイ質物質を含む、請求項37に記載の触媒物品。
【請求項41】
ケイ質物質が、(1)シリカ、(2)200より高いシリカ対アルミナ比を有するゼオライト、および(3)SiO2含有量≧40%を有する、非晶質シリカをドープしたアルミナからなる群から選択される物質を含む、請求項40に記載の触媒物品。
【請求項42】
白金族金属が、白金族金属および担体の全重量の約0.5重量%から約10重量%の量で担体上に存在する、請求項37に記載の触媒物品。
【請求項43】
白金族金属が、白金族金属および担体の全重量の約1重量%から約6重量%の量で担体上に存在する、請求項37に記載の触媒物品。
【請求項44】
白金族金属が、白金族金属および担体の全重量の約1.5重量%から約4重量%の量で担体上に存在する、請求項37に記載の触媒物品。
【請求項45】
白金族金属が、白金、パラジウム、または白金とパラジウムの組合せを含む、請求項37に記載の触媒物品。
【請求項46】
白金族金属が白金を含む、請求項37に記載の触媒物品。
【請求項47】
ブレンド内で、第1のSCR触媒対担体上の白金族金属の重量比が、約3:1から約300:1である、請求項37に記載の触媒物品。
【請求項48】
ブレンド内で、第1のSCR触媒対担体上の白金族金属の重量比が、約5:1から約100:1である、請求項37に記載の触媒物品。
【請求項49】
ブレンド内で、第1のSCR触媒対担体上の白金族金属の重量比が、約10:1から約50:1である、請求項37に記載の触媒物品。
【請求項50】
第1のSCR触媒が、卑金属、卑金属の酸化物、モレキュラーシーブ、金属交換されたモレキュラーシーブ、またはその混合物である、請求項37に記載の触媒物品。
【請求項51】
第1のSCR触媒が銅を含む、請求項37に記載の触媒物品。
【請求項52】
第1ゾーン、第2ゾーン、および第3ゾーンが、単一の基材上に位置し、第1ゾーンが、基材の入口側に位置し、第3ゾーンが、基材の出口側に位置する、請求項37に記載の触媒物品。
【請求項53】
基材が第1基材および第2基材を含み、第1ゾーンおよび第2ゾーンが、第1基材上に位置し、第3ゾーンが、第2基材上に位置し、第1基材が第2基材の上流に位置する、請求項37に記載の触媒物品。
【請求項54】
基材が第1基材、第2基材、および第3基材を含み、第1ゾーンが、第1基材上に位置し、第2ゾーンが、第2基材上に位置し、第3ゾーンが、第3基材上に位置し、第1基材が第2基材の上流に位置し、第2基材が第3基材の上流に位置する、請求項37に記載の触媒物品。
【請求項55】
第2のSCR触媒が、卑金属、卑金属の酸化物、モレキュラーシーブ、金属交換されたモレキュラーシーブ、またはその混合物である、請求項37に記載の触媒物品。
【請求項56】
排気流を、入口端および出口端、第1ゾーン、第2ゾーン、および第3ゾーンを含む基材を含む触媒物品と接触させることを含む、排気流からの放出を減らす方法であって、
第1ゾーンが、第2のSCR触媒を含み、
第2ゾーンが、(1)担体上の白金族金属および(2)第1のSCR触媒のブレンドを含むアンモニアスリップ触媒(ASC)を含み、
第3ゾーンが、ディーゼル酸化触媒(DOC)およびディーゼル発熱触媒(DEC)からなる群から選択される触媒(「第3ゾーン触媒」)を含み、
第1ゾーンが、第2ゾーンの上流に位置し、第2ゾーンが、第3ゾーンの上流に位置する、方法。
【請求項57】
ASCが第1層を形成し、
第3ゾーン触媒が、第1層よりも長さが短い第2層を形成し、出口端から基材の全長未満に広がり、
第2のSCR触媒が、入口端から基材の全長未満に広がる、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
第1層が、出口端から基材の全長未満に広がる、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
担体がケイ質物質を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
ケイ質物質が、(1)シリカ、(2)200より高いシリカ対アルミナ比を有するゼオライト、および(3)SiO2含有量≧40%を有する、非晶質シリカをドープしたアルミナからなる群から選択される物質を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
白金族金属が、白金族金属および担体の全重量の約0.5重量%から約10重量%の量で担体上に存在する、請求項56に記載の方法。
【請求項62】
白金族金属が、白金族金属および担体の全重量の約1重量%から約6重量%の量で担体上に存在する、請求項56に記載の方法。
【請求項63】
白金族金属が、白金族金属および担体の全重量の約1.5重量%から約4重量%の量で担体上に存在する、請求項56に記載の方法。
【請求項64】
白金族金属が、白金、パラジウム、または白金とパラジウムの組合せを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項65】
白金族金属が白金を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項66】
ブレンド内で、第1のSCR触媒対担体上の白金族金属の重量比が、約3:1から約300:1である、請求項56に記載の方法。
【請求項67】
ブレンド内で、第1のSCR触媒対担体上の白金族金属の重量比が、約5:1から約100:1である、請求項56に記載の方法。
【請求項68】
ブレンド内で、第1のSCR触媒対担体上の白金族金属の重量比が、約10:1から約50:1である、請求項56に記載の方法。
【請求項69】
第1のSCR触媒が、卑金属、卑金属の酸化物、モレキュラーシーブ、金属交換されたモレキュラーシーブ、またはその混合物である、請求項56に記載の方法。
【請求項70】
第1のSCR触媒が銅を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項71】
第1ゾーン、第2ゾーン、および第3ゾーンが、単一の基材上に位置し、第1ゾーンが、基材の入口側に位置し、第3ゾーンが、基材の出口側に位置する、請求項56に記載の方法。
【請求項72】
基材が第1基材および第2基材を含み、第1ゾーンおよび第2ゾーンが、第1基材上に位置し、第3ゾーンが、第2基材上に位置し、第1基材が第2基材の上流に位置する、請求項56に記載の方法。
【請求項73】
基材が第1基材、第2基材、および第3基材を含み、第1ゾーンが、第1基材上に位置し、第2ゾーンが、第2基材上に位置し、第3ゾーンが、第3基材上に位置し、第1基材が第2基材の上流に位置し、第2基材が第3基材の上流に位置する、請求項56に記載の方法。
【請求項74】
第2のSCR触媒が、卑金属、卑金属の酸化物、モレキュラーシーブ、金属交換されたモレキュラーシーブ、またはその混合物である、請求項56に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
ディーゼルエンジン、定置ガスタービン、および他の系における炭化水素の燃焼は、NO(一酸化窒素)およびNO(二酸化窒素)を含む窒素酸化物(NOx)を除去するために処理しなければならない排気ガスを生じ、形成されるNOxの大部分はNOである。NOxは、人におけるいくつかの健康問題を引き起こし、スモッグの形成や酸性雨を含めたいくつかの有害な環境影響も引き起こすことが知られている。排気ガス中のNOからの人々や環境の影響をどちらも軽減させるために、これらの望ましくない成分を、好ましくは他の侵害性または毒性の物質を生じない方法によって排除することが望ましい。
【0002】
希薄燃焼エンジンおよびディーゼルエンジンで生じる排気ガスは一般に酸化的である。NOxは、NOxを窒素元素(N)および水へと変換する選択的触媒還元(SCR)として知られる方法において、触媒および還元剤を用いて選択的に還元する必要がある。SCR方法では、ガス状の還元剤、典型的には無水アンモニア、アンモニア水、または尿素を、排気ガスが触媒と接触する前に排気ガス流に加える。還元剤が触媒上に吸収され、ガスが触媒添加基材を通過または通り越す際にNOが還元される。NOxの変換を最大限にするために、多くの場合、理論量より多くのアンモニアをガス流に加える必要がある。しかし、過剰なアンモニアの大気への放出は人々の健康や環境に有害となるであろう。さらに、アンモニアは、特にその水性形態では腐食性である。排気触媒の下流となる排気流領域におけるアンモニアと水の凝縮は、排気系を損傷させる可能性がある腐食性の混合物をもたらす場合がある。したがって、排気ガス中のアンモニアの放出は排除するべきである。多くの慣用の排気系では、アンモニアを窒素に変換することによってそれを排気ガスから除去するために、アンモニア酸化触媒(アンモニアスリップ触媒または「ASC」としても知られる)をSCR触媒の下流に設置する。アンモニアスリップ触媒の使用は、典型的なディーゼル走行サイクルと比較して90%を超えるNO変換を可能にすることができる。
【0003】
車両の走行サイクルにおいてアンモニア変換が広範囲の温度で起こり、最小限の窒素酸化物および亜酸化窒素副産物が形成される、SCRによるNOx除去および窒素への選択的アンモニア変換をどちらも提供する触媒が望ましいであろう。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一部の実施形態によれば、触媒物品は、入口側および出口側、第1ゾーンおよび第2ゾーンを有する基材を含み、第1ゾーンが、担体上の白金族金属および第1のSCR触媒を含むアンモニアスリップ触媒(ASC)を含み、第2ゾーンが、ディーゼル酸化触媒(DOC)およびディーゼル発熱触媒(DEC)からなる群から選択される触媒を含み、第1ゾーンが、第2ゾーンの上流に位置する。第1ゾーンは、(1)担体上の白金族金属および(2)第1のSCR触媒のブレンドを含む底層を含んでいてもよく、上層は第2のSCR触媒を含み、上層は底層の上方に位置する。一部の実施形態では、第1ゾーンは、担体上の白金族金属を含む底層を含み、上層は第1のSCR触媒を含み、上層は底層の上方に位置する。
【0005】
一部の実施形態では、担体はケイ質物質を含む。ケイ質物質は、(1)シリカ、(2)200より高いシリカ対アルミナ比を有するゼオライト、および(3)SiO2含有量≧40%を有する、非晶質シリカをドープしたアルミナからなる群から選択される物質を含む。一部の実施形態では、白金族金属は、白金族金属および担体の全重量の約0.5重量%から約10重量%、白金族金属および担体の全重量の約1重量%から約6重量%、または白金族金属および担体の全重量の約1.5重量%から約4重量%の量で担体上に存在する。一部の実施形態では、白金族金属は、白金、パラジウム、または白金とパラジウムの組合せを含み得る。特定の実施形態では、白金族金属は白金を含む。
【0006】
ブレンド内で、第1のSCR触媒対担体上の白金族金属の重量比は、約3:1から約300:1、約5:1から約100:1、または約10:1から約50:1であり得る。
【0007】
一部の実施形態では、第1のSCR触媒は、卑金属、卑金属の酸化物、モレキュラーシーブ、金属交換されたモレキュラーシーブ、またはその混合物である。一部の実施形態では、第1のSCR触媒は銅を含む。一部の実施形態では、第2のSCR触媒は、卑金属、卑金属の酸化物、モレキュラーシーブ、金属交換されたモレキュラーシーブ、またはその混合物である。
【0008】
第1ゾーンおよび第2ゾーンは、単一の基材上に位置していてよく、第1ゾーンは、基材の入口側に位置し、第2ゾーンは、基材の出口側に位置する。一部の実施形態では、基材は第1基材および第2基材を含み、第1ゾーンは、第1基材上に位置し、第2ゾーンは、第2基材上に位置し、第1基材は第2基材の上流に位置する。
【0009】
本発明の一部の実施形態によれば、排気流からの放出を減らす方法は、排気流を、入口側および出口側、第1ゾーンおよび第2ゾーンを有する基材を有する触媒物品であって、第1ゾーンが、担体上の白金族金属および第1のSCR触媒を含むアンモニアスリップ触媒(ASC)を含み、第2ゾーンが、ディーゼル酸化触媒(DOC)およびディーゼル発熱触媒(DEC)からなる群から選択される触媒を含み、第1ゾーンが、第2ゾーンの上流に位置する、触媒物品と接触させることを含む。第1ゾーンは、(1)担体上の白金族金属および(2)第1のSCR触媒のブレンドを含む底層を含んでいてもよく、上層は第2のSCR触媒を含み、上層は底層の上方に位置する。一部の実施形態では、第1ゾーンは、担体上の白金族金属を含む底層を含み、上層は第1のSCR触媒を含み、上層は底層の上方に位置する。
【0010】
本発明の一部の実施形態によれば、触媒物品は、入口端および出口端、第1ゾーン、第2ゾーン、および第3ゾーンを有する基材を含み、第1ゾーンは、第2のSCR触媒を含み、第2ゾーンは、(1)担体上の白金族金属および(2)第1のSCR触媒のブレンドを含むアンモニアスリップ触媒(ASC)を含み、第3ゾーンは、ディーゼル酸化触媒(DOC)およびディーゼル発熱触媒(DEC)からなる群から選択される触媒(「第3ゾーン触媒」)を含み、第1ゾーンは、第2ゾーンの上流に位置し、第2ゾーンは、第3ゾーンの上流に位置する。一部の実施形態では、ASCは、第1層に含まれ、第3ゾーン触媒は、第1層の上に位置するとともに第1層よりも長さが短い、出口端から基材の全長未満に広がる第2層に含まれ、第2のSCR触媒は、入口端から基材の全長未満に広がり、第1層と少なくとも部分的に重複する層に含まれる。一部の実施形態では、第1層は、出口端から基材の全長未満に広がる。
【0011】
一部の実施形態では、担体はケイ質物質を含む。ケイ質物質は、(1)シリカ、(2)200より高いシリカ対アルミナ比を有するゼオライト、および(3)SiO2含有量≧40%を有する、非晶質シリカをドープしたアルミナからなる群から選択される物質を含む。一部の実施形態では、白金族金属は、白金族金属および担体の全重量の約0.5重量%から約10重量%、白金族金属および担体の全重量の約1重量%から約6重量%、または白金族金属および担体の全重量の約1.5重量%から約4重量%の量で担体上に存在する。一部の実施形態では、白金族金属は、白金、パラジウム、または白金とパラジウムの組合せを含み得る。特定の実施形態では、白金族金属は白金を含む。
【0012】
ブレンド内で、第1のSCR触媒対担体上の白金族金属の重量比は、約3:1から約300:1、約5:1から約100:1、または約10:1から約50:1であり得る。
【0013】
一部の実施形態では、第1のSCR触媒は、卑金属、卑金属の酸化物、モレキュラーシーブ、金属交換されたモレキュラーシーブ、またはその混合物である。一部の実施形態では、第1のSCR触媒は銅を含む。一部の実施形態では、第2のSCR触媒は、卑金属、卑金属の酸化物、モレキュラーシーブ、金属交換されたモレキュラーシーブ、またはその混合物である。
【0014】
一部の実施形態では、第1ゾーン、第2ゾーン、および第3ゾーンは、単一の基材上に位置し、第1ゾーンは、基材の入口側に位置し、第3ゾーンは、基材の出口側に位置する。一部の実施形態では、基材は第1基材および第2基材を含み、第1ゾーンおよび第2ゾーンは、第1基材上に位置し、第3ゾーンは、第2基材上に位置し、第1基材は第2基材の上流に位置する。一部の実施形態では、基材は第1基材、第2基材、および第3基材を含み、第1ゾーンは、第1基材上に位置し、第2ゾーンは、第2基材上に位置し、第3ゾーンは、第3基材上に位置し、第1基材は第2基材の上流に位置し、第2基材は第3基材の上流に位置する。
【0015】
本発明の一部の実施形態によれば、排気流からの放出を減らす方法は、排気流を、入口端および出口端、第1ゾーン、第2ゾーン、および第3ゾーンを含む基材を含む触媒物品であって、第1ゾーンは、第2のSCR触媒を含み、第2ゾーンは、(1)担体上の白金族金属および(2)第1のSCR触媒のブレンドを含むアンモニアスリップ触媒(ASC)を含み、第3ゾーンは、ディーゼル酸化触媒(DOC)およびディーゼル発熱触媒(DEC)からなる群から選択される触媒(「第3ゾーン触媒」)を含み、第1ゾーンが、第2ゾーンの上流に位置し、第2ゾーンが、第3ゾーンの上流に位置する、触媒物品と接触させることを含む。一部の実施形態では、ASCが第1層を形成し、第3ゾーン触媒が、第1層よりも長さが短い第2層を形成し、出口端から基材の全長未満に広がり、第2のSCR触媒が、入口端から基材の全長未満に広がる。一部の実施形態では、第1層は、出口端から基材の全長未満に広がる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1ゾーンにSCRおよびASC/SCRブレンド、第2ゾーンにDOCまたはDECを有する触媒の立体配置を示す図である。
図2】第1ゾーンにSCR、第2ゾーンにASC/SCRブレンド、第3ゾーンにDOCまたはDECを有する触媒の立体配置を示す図である。
図3】第1ゾーンにSCR、第2ゾーンにASC/SCRブレンド、第3ゾーンに含浸DOCまたはDECを有する触媒の立体配置を示す図である。
図4】第1ゾーンにSCRおよびASC層、第2ゾーンにDOCまたはDECを有する参照用触媒の立体配置を示す図である。
図5】本発明の触媒および参照用触媒のNH変換を示す図である。
図6】本発明の触媒および参照用触媒のNO変換を示す図である。
図7】本発明の触媒および参照用触媒のCO変換を示す図である。
図8】本発明の触媒および参照用触媒のHC変換を示す図である。
図9】本発明の触媒および参照用触媒のNO形成を示す図である。
図10】本発明の触媒および参照用触媒のN収率を示す図である。
図11】本発明の触媒および参照用触媒の出口温度を示す図である。
図12】発熱発生試験中の温度の読取り値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の触媒は、様々な立体配置のSCR触媒、ASC、およびDOCまたはDECを含む触媒物品に関する。触媒および具体的な立体配置を以下にさらに詳述する。
【0018】
2つのゾーンの立体配置
本発明の実施形態は、第1ゾーンおよび第2ゾーンを有する触媒物品に関し、第1ゾーンは、担体上の白金族金属および第1のSCR触媒を含むアンモニアスリップ触媒(ASC)を含み、第2ゾーンは、ディーゼル酸化触媒(DOC)またはディーゼル発熱触媒(DEC)を含む。第1ゾーンは、(1)担体上の白金族金属および(2)第1のSCR触媒のブレンドを含む底層と、第2のSCR触媒を含む上層とを含み、上層が底層の上方に位置するように構成し得る。一部の実施形態では、第1ゾーンは、担体上の白金族金属を含む底層と、第1のSCR触媒を含む上層とを含み、上層が底層の上方に位置するように構成し得る。一部の実施形態では、第1および第2のゾーンは、単一の基材上に位置し、第1ゾーンは、基材の入口側に位置し、第2ゾーンは、基材の出口側に位置する。別の実施形態では、第1ゾーンは、第1基材上に位置し、第2ゾーンは、第2基材上に位置し、第1基材は第2基材の上流に位置する。第1および第2の基材は密結合していてもよい。第1および第2の基材が密結合している場合、第2基材は、第1基材の近くにおよび/または直接下流に配置してもよい。
【0019】
図2は、本発明の実施形態の2つのゾーンの立体配置を例示しており、第1ゾーンは、担体上の白金族金属およびSCR触媒のブレンドを有する底層、ならびにSCR触媒を含む上層を有する。第2ゾーンは、DOCを含む。
【0020】
排気流からの放出を減らす方法は、排気流を本明細書中に記載の触媒物品と接触させることを含んでいてもよい。
【0021】
3つのゾーンの立体配置
本発明の実施形態は、第1ゾーン、第2ゾーン、および第3ゾーンを有する触媒物品に関する。第1ゾーンは、SCR触媒を含んでいてもよい。第2ゾーンは、担体上の白金族金属と第1のSCR触媒とのブレンドを有するASCを含んでいてもよい。第3ゾーンは、DOCまたはDECなどの触媒(「第3ゾーン触媒」)を含んでいてもよい。第1ゾーンは、第2ゾーンの上流に位置し、第2ゾーンは、第3ゾーンの上流に位置する。
【0022】
一部の実施形態では、ASCは、第1層に含まれる。第3ゾーン触媒は、第1層の上に位置するとともに第1層よりも長さが短い、出口端から基材の全長未満に広がる第2層に位置していてもよい。第2のSCR触媒は、入口端から基材の全長未満に広がり、第1層と少なくとも部分的に重複する層に含まれていてもよい。一部の実施形態では、第1層は、出口端から基材の全長未満に広がる。一部の実施形態では、第1層は入口端から基材の全長未満に広がる。
【0023】
一部の実施形態では、第1ゾーン、第2ゾーン、および第3ゾーンは、単一の基材上に位置し、第1ゾーンは、基材の入口側に位置し、第3ゾーンは、基材の出口側に位置する。一部の実施形態では、第1ゾーンおよび第2ゾーンは、第1基材上に位置し、第3ゾーンは、第2基材上に位置し、第1基材は第2基材の上流に位置する。第1および第2の基材は密結合していてもよい。第1および第2の基材が密結合している場合、第2基材は、第1基材の近くにおよび/または直接下流に配置してもよい。
【0024】
一部の実施形態では、第1ゾーンは、第1基材上に位置し、第2ゾーンは、第2基材上に位置し、第3ゾーンは、第3基材上に位置し、第1基材は第2基材の上流に位置し、第2基材は第3基材の上流に位置する。第1、第2、および/または第3の基材は密結合していてもよい。第1、第2、および/または第3の基材が密結合している場合、第2基材は、第1基材の近くにおよび/または直接下流に配置してもよく、第3基材は、第2基材の近くにおよび/または直接下流に配置してもよい。
【0025】
図2は、本発明の実施形態の3つのゾーンの立体配置を例示しており、第1ゾーンは、SCR触媒を含み、第2ゾーンは、担体上の白金族金属とSCR触媒とのブレンドを有するASCを含んでいてもよく、第3ゾーンは、DOCを含む。第1ゾーンは、第2ゾーンの上流に位置し、第2ゾーンは、第3ゾーンの上流に位置する。図2の立体配置では、ブレンドは、基材の出口端から入口端方向に広がり基材の全長未満を覆う底層に含まれる。DOCは底層の上に位置する上層に含まれ、基材の出口端から広がり、底層の長さ未満に広がる。第1ゾーンSCR触媒は、基材の入口端から広がり、出口端方向に広がり基材の全長未満を覆っており、ブレンドを含む底層と重複する層に含まれる。
【0026】
図3は、本発明の実施形態の3つのゾーンの立体配置を例示しており、第1ゾーンは、SCR触媒を含み、第2ゾーンは、担体上の白金族金属とSCR触媒とのブレンドを有するASCを含んでいてもよく、第3ゾーンは、DOCを含む。第1ゾーンは、第2ゾーンの上流に位置し、第2ゾーンは、第3ゾーンの上流に位置する。図2の立体配置では、ブレンドは、基材の出口端から入口端方向に広がり基材の全長未満を覆う底層に含まれる。DOCゾーンは、硝酸白金または硝酸パラジウムまたは硝酸白金および硝酸パラジウムの混合物の溶液を含浸させる。第1ゾーンSCR触媒は、基材の入口端から広がり、出口端方向に広がり基材の全長未満を覆っており、ブレンドを含む底層と重複する層に含まれる。
【0027】
排気流からの放出を減らす方法は、排気流を本明細書中に記載の触媒物品と接触させることを含んでいてもよい。
【0028】
アンモニア酸化触媒
本発明の触媒物品は、アンモニアスリップ触媒(「ASC」)とも呼ばれる1つまたは複数のアンモニア酸化触媒を含んでいてもよい。過剰なアンモニアを酸化し、それが大気へと放出されることを防止するために、1つまたは複数のASCが、SCR触媒と共に、またはその下流に含まれていてもよい。一部の実施形態では、ASCは、SCR触媒と同じ基材に含まれていてもよい、またはSCR触媒とブレンドし得る。特定の実施形態では、NOまたはNOの形成の代わりにアンモニアの酸化を有利にするためにアンモニア酸化触媒材料を選択し得る。好ましい触媒材料としては、白金、パラジウム、またはその組合せが挙げられる。アンモニア酸化触媒は、金属酸化物上に担持される白金および/またはパラジウムを含み得る。一部の実施形態では、触媒は、それだけには限定されないがアルミナを含めた高表面積担体上に配置する。
【0029】
一部の実施形態では、アンモニア酸化触媒はケイ質担体上の白金族金属を含む。ケイ質物質は、(1)シリカ、(2)シリカ対アルミナ比が少なくとも200であるゼオライト、および(3)SiO2含有量≧40%を有する、非晶質シリカをドープしたアルミナなどの材料を含んでいてもよい。一部の実施形態では、ケイ質物質は、シリカ対アルミナ比が少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも750、少なくとも800、または少なくとも1000であるゼオライトなどの材料を含んでいてもよい。一部の実施形態では、白金族金属は、白金族金属および担体の全重量の約0.5重量%から約10重量%、白金族金属および担体の全重量の約1重量%から約6重量%、白金族金属および担体の全重量の約1.5重量%から約4重量%、白金族金属および担体の全重量の約10重量%、白金族金属および担体の全重量の約0.5重量%、白金族金属および担体の全重量の約1重量%、白金族金属および担体の全重量の約2重量%、白金族金属および担体の全重量の約3重量%、白金族金属および担体の全重量の約4重量%、白金族金属および担体の全重量の約5重量%、白金族金属および担体の全重量の約6重量%、白金族金属および担体の全重量の約7重量%、白金族金属および担体の全重量の約8重量%、白金族金属および担体の全重量の約9重量%、または白金族金属および担体の全重量の約10重量%の量で担体上に存在する。
【0030】
一部の実施形態では、ケイ質担体は、BEA、CDO、CON、FAU、MEL、MFI、またはMWW骨格型を有するモレキュラーシーブを含むことができる。
【0031】
SCR触媒
本発明の系は、1つまたは複数のSCR触媒を含んでいてもよい。一部の実施形態では、触媒物品は、第1のSCR触媒および第2のSCR触媒を含んでいてもよい。一部の実施形態では、第1のSCR触媒および第2のSCR触媒は互いに同じ製剤を含み得る。一部の実施形態では、第1のSCR触媒および第2のSCR触媒は互いに異なる製剤を含み得る。
【0032】
本発明の排気系は、アンモニアまたはアンモニアへと分解可能な化合物を排気ガス中に導入するための注入器の下流に配置されているSCR触媒を含んでいてもよい。SCR触媒は、アンモニアまたはアンモニアへと分解可能な化合物を注入するための注入器の直接下流に配置し得る(たとえば、注入器とSCR触媒との間に介在する触媒が存在しない)。
【0033】
SCR触媒は、基材および触媒組成物を含む。基材はフロースルー基材またはフィルター基材であり得る。SCR触媒がフロースルー基材を有する場合、基材はSCR触媒組成物を含み得る(すなわち、SCR触媒は押し出しによって得られる)、またはSCR触媒組成物は基材上に配置もしくは担持され得る(すなわち、SCR触媒組成物は薄め塗膜方法によって基材上に塗布される)。
【0034】
SCR触媒がフィルター基材を有する場合、これは、本明細書中「SCRF」の略記で言及する選択的触媒還元フィルター触媒である。SCRFはフィルター基材および選択的触媒還元(SCR)組成物を含む。本出願全体にわたって、SCR触媒の使用への言及は、必要に応じてSCRF触媒の使用も含むと理解される。
【0035】
選択的触媒還元組成物は、金属酸化物に基づくSCR触媒製剤、モレキュラーシーブに基づくSCR触媒製剤、またはその混合物を含み得る、またはそれから本質的になり得る。そのようなSCR触媒製剤は当該技術分野で周知である。
【0036】
選択的触媒還元組成物は、金属酸化物に基づくSCR触媒製剤を含み得る、またはそれから本質的になり得る。金属酸化物に基づくSCR触媒製剤は、耐火性酸化物上に担持されるバナジウムもしくはタングステンまたはその混合物を含む。耐火性酸化物は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、およびその組合せからなる群から選択され得る。
【0037】
金属酸化物に基づくSCR触媒製剤は、チタニア(たとえばTiO)、セリア(たとえばCeO)、およびセリウムとジルコニウムの混合酸化物または複合酸化物(たとえばCeZr(1-x)、式中、x=0.1から0.9、好ましくはx=0.2から0.5である)からなる群から選択される耐火性酸化物上に担持される、バナジウム酸化物(たとえばV)および/またはタングステン酸化物(たとえばWO)を含み得る、またはそれから本質的になり得る。
【0038】
耐火性酸化物がチタニア(たとえばTiO)である場合、好ましくは、バナジウム酸化物の濃度は(たとえば金属酸化物に基づくSCR製剤の)0.5から6重量%である、および/またはタングステン酸化物(たとえばWO)の濃度は5から20重量%である。より好ましくは、バナジウム酸化物(たとえばV)およびタングステン酸化物(たとえばWO)は、チタニア(たとえばTiO)上に担持される。
【0039】
耐火性酸化物がセリア(たとえばCeO)である場合、好ましくは、バナジウム酸化物の濃度は(たとえば金属酸化物に基づくSCR製剤の)0.1から9重量%である、および/またはタングステン酸化物(たとえばWO)の濃度は0.1から9重量%である。
【0040】
金属酸化物に基づくSCR触媒製剤は、チタニア(たとえばTiO)上に担持されるバナジウム酸化物(たとえばV)および任意選択でタングステン酸化物(たとえばWO)を含み得る、またはそれから本質的になり得る。
【0041】
選択的触媒還元組成物は、モレキュラーシーブに基づくSCR触媒製剤を含み得る、またはそれから本質的になり得る。モレキュラーシーブに基づくSCR触媒製剤はモレキュラーシーブを含み、これは任意選択で遷移金属交換されたモレキュラーシーブである。好ましくは、SCR触媒製剤は遷移金属交換されたモレキュラーシーブを含む。
【0042】
一般に、モレキュラーシーブに基づくSCR触媒製剤は、アルミノシリケート骨格(たとえばゼオライト)、アルミノホスフェート骨格(たとえばAlPO)、シリコアルミノホスフェート骨格(たとえばSAPO)、ヘテロ原子含有アルミノシリケート骨格、ヘテロ原子含有アルミノホスフェート骨格(たとえばMeAlPO、式中Meは金属である)、またはヘテロ原子含有シリコアルミノホスフェート骨格(たとえばMeAPSO、式中Meは金属である)を有するモレキュラーシーブを含み得る。ヘテロ原子(すなわち、ヘテロ原子含有骨格中のもの)は、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、およびその任意の2つ以上の組合せからなる群から選択され得る。ヘテロ原子は金属であることが好ましい(たとえば、上記ヘテロ原子含有骨格のそれぞれが金属含有骨格であり得る)。
【0043】
モレキュラーシーブに基づくSCR触媒製剤は、アルミノシリケート骨格(たとえばゼオライト)またはシリコアルミノホスフェート骨格(たとえばSAPO)を有するモレキュラーシーブを含む、またはそれから本質的になることが好ましい。
【0044】
モレキュラーシーブがアルミノシリケート骨格を有する(たとえばモレキュラーシーブがゼオライトである)場合、典型的には、モレキュラーシーブは、5から200(たとえば10から200)、10から100(たとえば10から30もしくは20から80)、たとえば12から40、または15から30のシリカ対アルミナのモル比(SAR)を有する。一部の実施形態では、適切なモレキュラーシーブは>200、>600、または>1200のSARを有する。一部の実施形態では、モレキュラーシーブは約1500から約2100のSARを有する。
【0045】
典型的には、モレキュラーシーブは微孔質である。微孔質のモレキュラーシーブは直径2nm未満の孔を有する(たとえば、「微孔質」のIUPACの定義に従う[Pure & Appl.Chem.、66(8)、(1994年)、1739~1758頁)を参照])。
【0046】
モレキュラーシーブに基づくSCR触媒製剤は、小孔のモレキュラーシーブ(たとえば、最大環サイズが8個の四面体原子であるモレキュラーシーブ)、中孔のモレキュラーシーブ(たとえば、最大環サイズが10個の四面体原子であるモレキュラーシーブ)、もしくは大孔のモレキュラーシーブ(たとえば、最大環サイズが12個の四面体原子であるモレキュラーシーブ)、またはその2つ以上の組合せを含み得る。
【0047】
モレキュラーシーブが小孔のモレキュラーシーブである場合、小孔のモレキュラーシーブは、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、LTA、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SFW、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUGおよびZON、またはその2つ以上の混合物および/もしくは連晶からなる群から選択される骨格型コード(FTC)によって表される骨格構造を有し得る。好ましくは、小孔のモレキュラーシーブは、CHA、LEV、AEI、AFX、ERI、LTA、SFW、KFI、DDR、およびITEからなる群から選択されるFTCによって表される骨格構造を有する。より好ましくは、小孔のモレキュラーシーブは、CHAおよびAEIからなる群から選択されるFTCによって表される骨格構造を有する。小孔のモレキュラーシーブは、FTC CHAによって表される骨格構造を有し得る。小孔のモレキュラーシーブは、FTC AEIによって表される骨格構造を有し得る。小孔のモレキュラーシーブがゼオライトであり、FTC CHAによって表される骨格を有する場合、ゼオライトは菱沸石であり得る。
【0048】
モレキュラーシーブが中孔のモレキュラーシーブである場合、中孔のモレキュラーシーブは、AEL、AFO、AHT、BOF、BOZ、CGF、CGS、CHI、DAC、EUO、FER、HEU、IMF、ITH、ITR、JRY、JSR、JST、LAU、LOV、MEL、MFI、MFS、MRE、MTT、MVY、MWW、NAB、NAT、NES、OBW、-PAR、PCR、PON、PUN、RRO、RSN、SFF、SFG、STF、STI、STT、STW、-SVR、SZR、TER、TON、TUN、UOS、VSV、WEIおよびWEN、またはその2つ以上の混合物および/もしくは連晶からなる群から選択される骨格型コード(FTC)によって表される骨格構造を有し得る。好ましくは、中孔のモレキュラーシーブは、FER、MEL、MFI、およびSTTからなる群から選択されるFTCによって表される骨格構造を有する。より好ましくは、中孔のモレキュラーシーブは、FERおよびMFIからなる群から選択されるFTC、特にMFIによって表される骨格構造を有する。中孔のモレキュラーシーブがゼオライトであり、FTC FERまたはMFIによって表される骨格を有する場合、ゼオライトはフェリエ沸石、シリカライト、またはZSM-5であり得る。
【0049】
モレキュラーシーブが大孔のモレキュラーシーブである場合、大孔のモレキュラーシーブは、AFI、AFR、AFS、AFY、ASV、ATO、ATS、BEA、BEC、BOG、BPH、BSV、CAN、CON、CZP、DFO、EMT、EON、EZT、FAU、GME、GON、IFR、ISV、ITG、IWR、IWS、IWV、IWW、JSR、LTF、LTL、MAZ、MEI、MOR、MOZ、MSE、MTW、NPO、OFF、OKO、OSI、-RON、RWY、SAF、SAO、SBE、SBS、SBT、SEW、SFE、SFO、SFS、SFV、SOF、SOS、STO、SSF、SSY、USI、UWY、およびVET、またはその2つ以上の混合物および/もしくは連晶からなる群から選択される骨格型コード(FTC)によって表される骨格構造を有し得る。好ましくは、大孔のモレキュラーシーブは、AFI、BEA、MAZ、MOR、およびOFFからなる群から選択されるFTCによって表される骨格構造を有する。より好ましくは、大孔のモレキュラーシーブは、BEA、MOR、およびMFIからなる群から選択されるFTCによって表される骨格構造を有する。大孔のモレキュラーシーブがゼオライトであり、FTC BEA、FAU、またはMORによって表される骨格を有する場合、ゼオライトはベータゼオライト、フォージャス沸石、ゼオライトY、ゼオライトX、またはモルデン沸石であり得る。
【0050】
一般に、モレキュラーシーブは小孔のモレキュラーシーブであることが好ましい。
【0051】
モレキュラーシーブに基づくSCR触媒製剤は、好ましくは遷移金属交換されたモレキュラーシーブを含む。遷移金属は、コバルト、銅、鉄、マンガン、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、およびレニウムからなる群から選択され得る。
【0052】
遷移金属は銅であり得る。銅交換したモレキュラーシーブを含有するSCR触媒製剤の一利点は、そのような製剤が優れた低温NO還元活性を有することである(たとえば、これは鉄交換したモレキュラーシーブの低温NO還元活性よりも優位であり得る)。本発明の系および方法には任意の種類のSCR触媒を含め得るが、銅を含むSCR触媒(「Cu-SCR触媒」)は、硫酸化の効果に対して特に脆弱であるため、本発明の系からより素晴らしい利点を経験し得る。Cu-SCR触媒製剤は、たとえば、Cu交換したSAPO-34、Cu交換したCHAゼオライト、Cu交換したAEIゼオライト、またはその組合せを含んでいてもよい。
【0053】
遷移金属は、モレキュラーシーブの外部表面上のエキストラ骨格部位上、またはモレキュラーシーブのチャネル、空洞、もしくはケージ内に存在し得る。
【0054】
典型的には、遷移金属交換されたモレキュラーシーブは、遷移金属交換された分子の0.10から10重量%の量、好ましくは0.2から5重量%の量を含む。
【0055】
一般に、選択的触媒還元触媒は、選択的触媒還元組成物を0.5から4.0g/in、好ましくは1.0から3.0 4.0g/inの合計濃度で含む。
【0056】
SCR触媒組成物は、金属酸化物に基づくSCR触媒製剤およびモレキュラーシーブに基づくSCR触媒製剤の混合物を含み得る。(a)金属酸化物に基づくSCR触媒製剤は、チタニア(たとえばTiO)上に担持されるバナジウム酸化物(たとえばV)および任意選択でタングステン酸化物(たとえばWO)を含み得る、またはそれから本質的になり得る。(b)モレキュラーシーブに基づくSCR触媒製剤は遷移金属交換されたモレキュラーシーブを含み得る。
【0057】
SCR触媒がSCRFである場合、フィルター基材は好ましくはウォールフローフィルター基材モノリスであり得る。ウォールフローフィルター基材モノリス(たとえばSCR-DPFのもの)は、典型的には1平方インチあたり60から400個の細胞(cpsi)の細胞密度を有する。ウォールフローフィルター基材モノリスは100から350cpsi、より好ましくは200から300cpsiの細胞密度を有することが好ましい。
【0058】
ウォールフローフィルター基材モノリスは、0.20から0.50mm、好ましくは0.25から0.35mm(たとえば約0.30mm)の壁厚(たとえば平均内部壁厚)を有し得る。
【0059】
一般に、未コーティングのウォールフローフィルター基材モノリスは、50から80%、好ましくは55から75%、より好ましくは60から70%の空隙率を有する。
【0060】
未コーティングのウォールフローフィルター基材モノリスは、典型的には少なくとも5μmの平均孔径を有する。平均孔径は10から40μm、たとえば15から35μm、より好ましくは20から30μmであることが好ましい。
【0061】
ウォールフローフィルター基材は対称的な細胞設計または非対称的な細胞設計を有し得る。
【0062】
一般に、SCRFでは、選択的触媒還元組成物はウォールフローフィルター基材モノリスの壁内に配置される。さらに、選択的触媒還元組成物は、入口チャネルの壁上および/または出口チャネルの壁上に配置され得る。
【0063】
ブレンド
本発明の実施形態には、(1)担体上の白金族金属および(2)SCR触媒のブレンドが含まれ得る。一部の実施形態では、ブレンド内で、SCR触媒対担体上の白金族金属の重量比は、約3:1から約300:1、約3:1から約250:1、約3:1から約200:1、約4:1から約150:1、約5:1から約100:1、約6:1から約90:1、約7:1から約80:1、約8:1から約70:1、約9:1から約60:1、約10:1から約50:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約15:1、約20:1、約25:1、約30:1、約40:1、約50:1、約75:1、約100:1、約125:1、約150:1、約175:1、約200:1、約225:1、約250:1、約275:1、または約300:1である。
【0064】
DOC
本発明の触媒物品および系は、1つまたは複数のディーゼル酸化触媒を含んでいてもよい。酸化触媒、特にディーゼル酸化触媒(DOC)は当該技術分野で周知である。酸化触媒は、COをCOおよび気相炭化水素(HC)へ、およびディーゼル粒子の有機画分(可溶型有機画分)をCOおよびHOへと酸化するように設計されている。典型的な酸化触媒は、白金を含み、任意選択でアルミナ、シリカ-アルミナ、およびゼオライトなどの高表面積無機酸化物担体上のパラジウムも含む。
【0065】
基材
本発明の触媒は、それぞれフロースルー基材またはフィルター基材をさらに含み得る。一実施形態では、触媒はフロースルーまたはフィルター基材上にコーティングされていてよく、好ましくは薄め塗膜手順を使用してフロースルー基材またはフィルター基材上に配置されている。
【0066】
SCR触媒およびフィルターの組合せは選択的触媒還元フィルター(SCRF触媒)として知られている。SCRF触媒とは、SCRおよび粒子状フィルターの機能性を合わせた単一の基材装置であり、所望に応じて本発明の実施形態に適している。本出願全体にわたって、SCR触媒の説明およびそれへの言及は、必要に応じてSCRF触媒も含むことが理解されよう。
【0067】
フロースルー基材またはフィルター基材は、触媒/吸着剤成分を含有することができる基材である。基材は、好ましくはセラミック基材または金属基材である。セラミック基材は、任意の適切な耐火性材料、たとえば、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノシリケート、メタロアルミノシリケート(菫青石および黝輝石(spudomene)など)、またはその任意の2つ以上の混合物もしくは混合酸化物から作製され得る。菫青石、マグネシウムアルミノシリケート、および炭化ケイ素が特に好ましい。
【0068】
金属基材は、任意の適切な金属、特に、耐熱金属およびチタンやステンレス鋼などの金属合金、ならびに鉄、ニッケル、クロム、および/またはアルミニウムに加えて他の微量金属を含有するフェライト合金から作られていてよい。
【0069】
フロースルー基材は、好ましくは、基材を通って軸方向に走っており、基材の入口または出口から至るところに広がる、多数の小さな平行した薄壁チャネルを有する蜂巣構造を有するフロースルーモノリスである。基材のチャネル横断面は任意の形状であってよいが、好ましくは、正方形、正弦曲線、三角形、長方形、六角形、台形、円形、または楕円形である。また、フロースルー基材は、触媒が基材壁内へ透過することを可能にする高空隙率のものであってもよい。
【0070】
フィルター基材は好ましくはウォールフローモノリスフィルターである。ウォールフローフィルターのチャネルは交互にブロックされており、これにより、排気ガス流が入口からチャネルに入り、その後、チャネル壁を通って流れ、出口に通じる異なるチャネルからフィルターを出ることが可能となる。したがって、排気ガス流中の粒子はフィルターに捕捉される。
【0071】
触媒/吸着剤は、薄め塗膜手順などの任意の知られている手段によってフロースルー基材またはフィルター基材に加え得る。
【0072】
還元剤/尿素注入器
系は、窒素性還元剤を排気系内のSCRおよび/またはSCRF触媒の上流に導入するための手段を含んでいてもよい。窒素性還元剤を排気系内に導入するための手段は、SCRまたはSCRF触媒の直接上流にあることが好ましい場合がある(たとえば、窒素性還元剤を導入するための手段とSCRまたはSCRF触媒との間に介在する触媒が存在しない)。
【0073】
還元剤を排気ガスへと導入するための任意の適切な手段によって、還元剤を流動排気ガスに加える。適切な手段としては、注入器、噴霧器、またはフィーダーが挙げられる。そのような手段は当該技術分野で周知である。
【0074】
系において使用するための窒素性還元剤は、アンモニア自体、ヒドラジン、または尿素、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、およびギ酸アンモニウムからなる群から選択されるアンモニア前駆体であることができる。尿素が特に好ましい。
【0075】
また、排気系は、それ内のNOxを還元するための、還元剤の排気ガス内への導入をコントロールするための手段も含み得る。好ましいコントロール手段としては、電子コントロールユニット、任意選択でエンジンコントロールユニットを挙げることができ、NO還元触媒の下流に位置するNOxセンサーをさらに含んでいてもよい。
【0076】
利点
本発明の触媒物品は、より高い触媒活性および選択性を提供し得る。さらに、一部の実施形態では、HC酸化および発熱発生は後方ゾーンに集中していてもよく、したがって前方のASCゾーンを熱水分解から保護している。
【0077】
一部の実施形態では、本発明の触媒物品は、第1のSCR触媒を含まず、ケイ酸非含有担体を有する以外は等価である触媒物品と比較して、NH変換に関して等価または亢進された活性を有し得る。一部の実施形態では、本発明の触媒物品は、第1のSCR触媒を含まず、ケイ酸非含有担体を有する以外は等価である触媒物品と比較して、NH変換に関して亢進された活性を有していてよく、本発明の触媒物品は、約200℃から約300℃の温度で、約20%まで、約15%まで、約10%まで、約1%から約20%、約2%から約18%、約3%から約16%、約4%から約14%、約5%から約12%、約5%から約10%、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約8%、約10%、約12%、約15%、約17%、または約20%のNH変換の改善を示す。
【0078】
一部の実施形態では、本発明の触媒物品は、第1のSCR触媒を含まず、ケイ酸非含有担体を有する以外は等価である触媒物品と比較して、等価または亢進されたNOx変換を有し得る。一部の実施形態では、本発明の触媒物品は、第1のSCR触媒を含まず、ケイ酸非含有担体を有する以外は等価である触媒物品と比較して、NOx変換が亢進された活性を有していてよく、本発明の触媒物品は、約300℃を超える温度で、約75%まで、約60%まで、約50%まで、約40%まで、約1%から約70%、約5%から約60%、約10%から約50%、約15%から約45%、約20%から約40%、約25%から約35%、約1%、約2%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、または約75%のNOx変換の改善を示す。
【0079】
一部の実施形態では、本発明の触媒物品は、第1のSCR触媒を含まず、ケイ酸非含有担体を有する以外は等価である触媒物品と比較して、200℃から500℃の温度でNO形成が低下した活性を有し得る。一部の実施形態では、本発明の触媒物品は、第1のSCR触媒を含まず、ケイ酸非含有担体を有する以外は等価である触媒物品と比較して、NO形成が低下した活性を有していてよく、本発明の触媒物品は、200℃から500℃の温度で、約75%まで、約60%まで、約50%まで、約40%まで、約1%から約70%、約5%から約65%、約10%から約60%、約15%から約55%、約20%から約50%、約25%から約45%、約30%から約40%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、または約70%のNO形成の低下を示す。
【0080】
一部の実施形態では、本発明の触媒物品は、第1のSCR触媒を含まず、ケイ酸非含有担体を有する以外は等価である触媒物品と比較して、≧250℃の温度で炭化水素変換が低下した活性を有する第1ゾーンを含む。一部の実施形態では、本発明の触媒物品には、第1のSCR触媒を含まず、ケイ酸非含有担体を有する以外は等価である触媒物品と比較して、炭化水素変換が低下した活性を有する第1ゾーンを含んでいてもよく、第1ゾーンは、≧250℃の温度で、約95%まで、約90%まで、約80%まで、約70%まで、約60%まで、約50%まで、約40%まで、約1%から約95%、約5%から約90%、約10%から約90%、約15%から約90%、約20%から約90%、約20%から約70%、約20%から約65%、約20%から約60%、約20%から約55%、約20%から約50%、約25%から約45%、約30%から約40%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%の炭化水素変換の活性の低下を示す。
【0081】
一部の実施形態では、本発明の触媒物品は、第1のSCR触媒を含まず、ケイ酸非含有担体を有する以外は等価である触媒物品と比較して、≧250℃の温度で低下した発熱発生を有する第1ゾーンを含む。一部の実施形態では、本発明の触媒物品は、第1のSCR触媒を含まず、ケイ酸非含有担体を有する以外は等価である触媒物品と比較して、低下した発熱発生を有する第1ゾーンを含んでいてもよく、第1ゾーンは、≧250℃の温度で、約95%まで、約90%まで、約80%まで、約70%まで、約60%まで、約50%まで、約40%まで、約1%から約95%、約5%から約90%、約10%から約90%、約15%から約90%、約20%から約90%、約20%から約70%、約20%から約65%、約20%から約60%、約20%から約55%、約20%から約50%、約25%から約45%、約30%から約40%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%の発熱発生の低下を示す。
【0082】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」には、内容により明らかにそうでないと示されない限りは、複数形の指示対象を含む。したがって、たとえば、「触媒(a catalyst)」への言及は、2つ以上の触媒の混合物などを含む。
【0083】
用語「アンモニアスリップ」とは、SCR触媒を通過する未反応のアンモニアの量を意味する。
【0084】
用語「担体」とは、触媒が固定されている材料を意味する。
【0085】
用語「か焼する」または「か焼」とは、材料を空気または酸素中で加熱することを意味する。この定義はか焼のIUPAC定義と一貫している。(IUPAC.Compendium of Chemical Terminology、第2版(「Gold Book」)。A.D.McNaughtおよびA.Wilkinson編集。Blackwell Scientific Publications、Oxford(1997)。XMLオンライン補正バージョン:http://goldbook.iupac.org(2006年~)、M.Nic、J.Jirat、B.Kosata作成、A.Jenkins更新編集。ISBN0-9678550-9-8.doi:10.1351/goldbook)。か焼は、金属塩を分解させて触媒内の金属イオンの交換を促進するため、また、触媒を基材へと接着させるために行う。か焼で使用する温度はか焼する材料中の成分に依存し、一般に、約400℃から約900℃で約1から8時間である。一部の事例では、か焼は約1200℃までの温度で行うことができる。本明細書中に記載の方法に関与する応用では、か焼は一般に約400℃から約700℃の温度で約1から8時間、好ましくは約400℃から約650℃の温度で約1から4時間行う。
【0086】
様々な数値的要素の範囲または複数の範囲を提供した場合、その範囲または複数の範囲には、別段に指定しない限りは値を含めることができる。
【0087】
用語「N選択性」とは、アンモニアから窒素へのパーセント変換を意味する。
【0088】
用語「ディーゼル酸化触媒」(DOC)、「ディーゼル発熱触媒」(DEC)、「NOx吸収材」、「SCR/PNA」(選択的触媒還元/受動的NOx吸着剤)、「コールドスタート触媒」(CSC)、および「三方向触媒」(TWC)は、排気ガスを燃焼方法から処理するために使用する様々な種類の触媒を説明するために使用される、当該技術分野で周知の用語である。
【0089】
用語「白金族金属」または「PGM」とは、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、およびイリジウムをいう。白金族金属は、好ましくは白金、パラジウム、ルテニウム、またはロジウムである。
【0090】
用語「下流」および「上流」は、触媒または基材の配向を説明しており、排気ガスの流れは基材または物品の入口端から出口端である。
【0091】
以下の実施例は本発明を単に例示しているものである。当業者には、多くの変形が本発明の精神および特許請求項の範囲の範囲内にあることが理解されるであろう。
【実施例0092】
例1
本発明の実施形態による触媒、および参照用触媒を調製した。2つのゾーンのASC+DOC触媒を調製した。ゼオライト上のCuのSCR触媒上層および(1)ゼオライト上の白金と(2)ゼオライト上のCuとのブレンドを有する底層を有する第1ゾーン、ならびにDOCを有する第2ゾーンを有するブレンドASC触媒を調製した(図1に示す立体配置など)。ゼオライト上のCuのSCR触媒上層およびゼオライト上の白金(SCR触媒なし)を有する底層を有する第1ゾーンを有する従来のASC触媒を調製した(図4に示す立体配置など)。どちらの触媒も、ASCゾーン中に3g/ftのPtローディングを用いて、同一のDOCゾーンを用いて調製した。触媒を、SCR、ASC、およびDOCの機能性に同時にストレスを与える条件下で試験した。具体的には、触媒を以下の条件下で試験した:1000ppmのNO、1200ppmのNH、200ppmのCO、5000ppmの(C1に基づく)C1022、10%のO、10%のCO、10%のHO、バランスN、ASCゾーンのみでSV=80,000h-1、ASC+DOCゾーンでSV=40,000h-1。さらに、それぞれのゾーンによる全体的な性能における個々の貢献を理解するために、2つのASC触媒(ブレンドASCおよび従来のASC)も、後方DOCゾーンなしに単独で試験した。
【0093】
図5~11に、NO変換、HC変換、NO形成、出口温度、NH変換、CO変換、およびN収率の結果を記載する。
【0094】
図5に示すようにNH変換を比較すると、どちらのASCも、下流DOCありまたはなしのどちらでも等価な性能を示した。他方で、ブレンドASCのより高いN選択性が原因で、これは従来のASCと比較してはるかに高いNO変換(図6)および低いNO形成(図9)を実証した。これらの結果は、ブレンドASCが、これらの条件下でNOx還元およびNHスリップコントロールのどちらについても優れた触媒であることを示唆している。
【0095】
驚くべきことに、ブレンドASCは、従来のASCと比較して、HC変換(図8)および発熱発生(図11)について有意により低い活性を示す(たとえば、350℃で約30%までのHC変換対約80%の変換)。しかし、ブレンドASC上でのより低いHC変換は、ASC+DOC系からの発熱発生に影響を与えない。図8および11に示すように、系全体(ASC+DOC)は、上流ASCの種類にかかわらず等価なHC変換および発熱発生を達成する。これらの結果は、従来のASC+DOC系と比較して、ブレンドASC+DOCでは、HC変換の大部分が後方末端DOCゾーンで起こっており、わずかなHC変換および発熱発生が前方のASCゾーンで起こっていることを示唆している。熱水熟成はN選択性の減少(SCR成分の分解から)および潜在的には活性の減少(Ptの遊走/揮発から)を引き起こすことが知られている。したがって、本発明の触媒では、ASC成分/機能性がHC/燃料注入イベント中の熱水曝露から有効に保護されていることが見いだされた。
【0096】
例2
ゾーン化されていないDOC触媒を、エンジン上のDOC入口での燃料注入を用いた発熱発生を測定するための参照用として調製した。ゼオライト上のCuのSCR触媒上層および(1)ゼオライト上の白金と(2)ゼオライト上のCuとのブレンドを有する底層を有する第1ゾーン、ならびにDOCを有する第2ゾーンを有するブレンドASC触媒を調製した(図1に示す立体配置など)。第2ゾーンは、ゾーン化されていない参照DOCと同一のDOC触媒を含有していたが、同じ総DOC PGMローディング(g)を達成するためにこのゾーン内にPGMを集中させた(g/ftでより高いPGM密度)。ASCゾーンは、3g/ftのPtローディングを含有していた。
【0097】
発熱発生試験を、入口温度320℃およびSV70,000h-1を対象とするエンジンにおいて、ASC+DOCゾーンを用いて実行した。入口温度の安定化後、DOC入口での燃料注入を可能にして、出口温度580℃を達成した。触媒床を横断して熱電対を挿入して、ゾーン化されていない参照DOCおよびゾーンありASC+DOCにおいて前方から1インチおよび後方から1インチでの発熱発生を監視および識別した。発熱発生試験中のこれらの温度の比較は図12に示される。燃料注入中に同じ入口および出口温度を対象とすると、前方から1インチの床での温度の読取り値は、試験の定常状態部分にて、ゾーン化されていないDOC(515℃)よりも、ゾーン化されたASC+DOC(約330℃まで)ではるかに低いことが明らかである。本実施例は、このゾーンにおいて発熱発生中に高温曝露を欠くことによって、前方のASCゾーンを熱水分解から保護することにおける、前述の利点を支持している。また、ゾーン化されていないDOCと比較して、ASC+ゾーン化されたDOCにおける後方から1インチでの試験での初期部分中に観察されるより速い温度上昇も注目に値し、DOCゾーンを後方に配置することによって発熱発生が後方ゾーンに集中していることを強調している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-01-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載された一発明。
【外国語明細書】