(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055696
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】繊維製品系材料の処理方法
(51)【国際特許分類】
C08B 9/00 20060101AFI20230411BHJP
C08B 16/00 20060101ALI20230411BHJP
C08B 15/02 20060101ALI20230411BHJP
D06M 11/00 20060101ALI20230411BHJP
D06M 11/34 20060101ALI20230411BHJP
B29B 17/02 20060101ALI20230411BHJP
C08J 11/06 20060101ALI20230411BHJP
C08J 11/10 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C08B9/00
C08B16/00 ZAB
C08B15/02
D06M11/00 110
D06M11/00 120
D06M11/00 130
D06M11/34
B29B17/02
C08J11/06
C08J11/10
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212361
(22)【出願日】2022-12-28
(62)【分割の表示】P 2020510155の分割
【原出願日】2018-04-27
(31)【優先権主張番号】20175376
(32)【優先日】2017-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(71)【出願人】
【識別番号】519383902
【氏名又は名称】インフィニティッド ファイバー カンパニー オイ
【氏名又は名称原語表記】INFINITED FIBER COMPANY OY
【住所又は居所原語表記】Ruukinkuja 2 Espoo Finland
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】ハルリン,アリ
(72)【発明者】
【氏名】マーッタネン,マルヨ
(72)【発明者】
【氏名】シヴォネン,エイノ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェハヴィライネン,マリアンナ
(72)【発明者】
【氏名】アシカイネン,サリ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルタ,キョスティ
(72)【発明者】
【氏名】サルキラハティ,アイリ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】セルロース系材料、典型的には繊維製品系廃棄物を処理して、さらなる使用のために調製する方法を提供する。
【解決手段】綿系繊維製品廃棄物の前処理によって得られる繊維製品材料の精製方法であって、前記前処理は、たとえば衣料品の金属またはプラスチックなどの付属品を除去し、除去後の繊維製品材料の粉砕を行う機械的処理を含み、前記繊維製品材料に2つ以上の化学処理が施され、化学処理の1つがアルカリ抽出であり、さらに前記繊維製品材料は、酸処理、オゾン処理、および過酸化物処理からなる処理の群から選ばれる1つ以上の化学処理が施されることを特徴とする、繊維製品材料の精製方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
綿系繊維製品廃棄物の前処理によって得られる繊維製品材料の精製方法であって、前記前処理は、たとえば衣料品の金属またはプラスチックなどの付属品を除去し、除去後の繊維製品材料の粉砕を行う機械的処理を含み、
前記繊維製品材料に2つ以上の化学処理が施され、
化学処理の1つがアルカリ抽出であり、さらに前記繊維製品材料は、酸処理、オゾン処理、および過酸化物処理からなる処理の群から選ばれる1つ以上の化学処理が施されることを特徴とする、繊維製品材料の精製方法。
【請求項2】
アルカリ抽出した繊維製品材料を酸で処理すること、を特徴とする請求項1記載の繊維製品材料の精製方法。
【請求項3】
前記アルカリ抽出が、室温でのアルカリ抽出または熱アルカリ抽出であることを特徴とする、請求項1または2記載の繊維製品材料の精製方法。
【請求項4】
前記アルカリ抽出を実施し、続いてオゾン処理、または過酸化物処理、またはその両方を実施することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維製品材料の精製方法。
【請求項5】
前記アルカリ抽出の前に、40重量%を超える固形分で、繊維製品材料を提供することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の繊維製品材料の精製方法。
【請求項6】
繊維紡糸における、もしくはビスコースの置換における、または、ビスコースもしくはBiocelsol繊維の製造のための出発物質としての、請求項1~5のいずれか1項に記載の繊維製品材料の精製方法を使用して処理された繊維製品材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース系材料、典型的には繊維製品系廃棄物を処理して、さらなる使用のために調整する方法に関する。この処理には、少なくとも部分的な溶解をもたらす化学処理が含まれる。
【0002】
特に、本方法は、綿系廃棄物の処理に使用される。
【背景技術】
【0003】
現在、繊維製品の95%がリサイクル可能であるにもかかわらず、ほとんど全ての消費後繊維製品廃棄物は焼却場または埋立地に送られている。一部の消費前廃棄物のみが機械的にリサイクルされる。しかしながら、EUでは、2016年の初めから使用済み繊維製品の埋め立てが禁止されている。これによって、そのように再利用することができない繊維製品とその原材料とは、エネルギー生産において焼却せねばならない。
【0004】
当然、リサイクルの方が好ましい。たとえば、分散および沈殿によるセルロース含有材料の再生について記載しているWO2013/124265A1から、再使用可能な繊維を得るために繊維製品材料を処理することが知られている。
【0005】
リサイクルに利用される別の既知の技術は、繊維の加水分解である。典型的には、金属および硬質ポリマー片、たとえばボタンおよびジッパーの機械的除去が先に行われる。たとえば、WO2010/124944A1は、セルロースの加水分解法を開示している。
【0006】
リヨセル(Lyocell)、たとえばIoncell-Fは、溶媒としてイオン液体を使用した出発物質の溶解を含む同様の再生方法である(WO2014/162062A1)。次に、BioCelSol法は、出発物質の酵素処理を利用する。しかしながら、これらの方法は両方とも、木材から繊維製品を製造することを中心に扱っている。
【0007】
再生繊維は、続いて、紡績またはカルバメーションなどの様々な目的に使用することができる。
【0008】
米国特許第7,662,953号明細書から、高品質のセルロース溶液からカルバメートセルロースを製造する方法が知られている。カルバメートセルロースの多相溶解技術は、米国特許第8,066,903号明細書で紹介されており、低温をどのようにして溶液に施すか、およびどのようにして、最初に低希釈アルカリにおいて、次に高濃縮され強く冷却されたアルカリにおいて、湿らせることによって溶液を調製するかについて教示されている。
【0009】
カルバメーションでは、溶解グレードのパルプを使用するのが一般的である。典型的には、このパルプのセルロース含有量は90%を超え、リグニン含有量は1%未満である。溶解グレードパルプのための可能な出発物質の1つは、綿(またはリンター)である。
【0010】
純粋な綿または綿混合品の使用はあまり合理的ではない。なぜなら、これらの純粋な材料には多くの他の用途があるからである。さらに、綿もいくつかの問題をもたらす。これまで、綿リンターのカルバメーションは、綿の密な繊維構造を開くことが困難であるので、超臨界二酸化炭素環境で実施されてきた(Yin C et al)。
【0011】
しかしながら、既存の方法を変更して廃棄綿材料を使用することができるようにすると、綿および綿混合品のさらなる使用がさらに合理的になる。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、独立請求項の特徴によって定義されている。いくつかの特定の実施形態は、従属請求項に定義されている。
【0013】
本発明の第1態様に従えば、綿系繊維製品廃棄物を処理して綿材料を再生させる方法が提供される。
【0014】
本発明の第2態様に従えば、綿系繊維製品廃棄物を化学的に処理して綿材料を溶解させる方法が提供される。
【0015】
現在、特に、化学的方法を使用することによって、リサイクルに適していない綿系繊維製品廃棄物を再生することが注目されている。綿系繊維製品廃棄物の再生は、セルロースの溶解、および繊維製品の調製という2つの主要な工程を含む。
【0016】
セルロースの溶解には、再生セルロースおよび繊維製品繊維の品質および特性を改善および/または改良するために、繊維製品廃棄物の様々な前処理が必要である。目的は、表面積を増やし、繊維の重合および活性化の程度を調整し、不純物を除去してセルロースの溶解度/溶解性を改善することによって、綿の反応性を向上することである。廃棄物の前処理は、再生材料の品質にとって非常に重要であるので、定常的に研究されている。
【0017】
溶解生成物の用途は、多様である。綿系繊維製品廃棄物の場合、目的は通常、セルロース繊維に変換することができるカルバメートセルロースを生成することである。他の主な応用分野は、様々なコーティング用途、再生セルロースフィルム、セルローススポンジ、発泡体、凝固セルロースビーズおよび凝固セルロース粒子である。
【0018】
したがって、本発明は、木材パルプが一般的に使用されている方法において繊維製品廃棄物を利用するための低コストの方法を提供する。本方法では、セルロース繊維の製造に非木材原料を使用している。また、本方法は、従来法と比べてCO2フットプリントが削減される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
本明細書において、「繊維」という用語は、繊維特性をもたらすために十分な量の繊維を含む材料を表す。セルロース系材料は、そのような繊維状材料の典型的な例である。
「綿系」材料という用語、または「綿混合品」という用語には、40%以上の綿を含む全ての材料が含まれる。しかしながら、少なくとも70%の綿を含む材料を使用することが好ましい。一部の原料には「純粋な」綿または「100%綿」と表示されているが、通常は最大10%のその他の材料が含まれている。したがって、本明細書において、全ての「綿繊維製品」は、最大10%のその他の材料を含むと想定されている。
【0020】
本発明は、繊維製品系材料、典型的には廃棄物を処理して、さらなる用途のためにそれらを調製する方法に関する。処理は、繊維製品材料の少なくとも部分的な溶解をもたらす化学処理の2つ以上の工程を含む。
【0021】
化学処理工程の少なくとも1つは、アルカリを用いて実施される。上述の工程は、典型的にはアルカリ抽出として実施され、表面積の増加、原料の脱色、および不純物、たとえばシリカの除去をもたらす。高温で実施すると(熱アルカリ抽出)、ポリエステル繊維(PES)も除去することができる。湿潤剤の使用は、効果を高める。
【0022】
不純物の除去は、機械処理工程を使用して実施することもできる。しかしながら、アルカリ抽出は、汎用性が高く、方法全体にとってさらに有益である。
【0023】
アルカリ処理は、膨潤およびいくらかの分解または一部の分離をもたらすことも目的としている。上述の画分の分離は、たとえば、 染料除去または繊維製品サイジング剤の分離を含んでもよい。したがって、このアルカリ処理の生成物は、繊維スラリーである。
【0024】
アルカリ処理は、必要に応じて、たとえば、酵素、酸および/または漂白化学物質を用いることによって、1つ以上の他の化学処理と組み合わせることができる。
【0025】
上述の酸処理は、原料の重合度(DP)を調整し、その金属イオン含有量を減少させる。
【0026】
金属イオンは、好ましくない。なぜなら、特に、金属イオンは、色を損ない、カルバメーション段階でDP調整を妨げ、ろ過性および紡績性を損ない、濾紙を塞ぎ、繊維強度を低下させ、スピナーの目詰まりをもたらし、繊維力価の均一性を低下させ、エージング中に遅延剤として作用し、過酸化水素の存在下で光誘起黄変と有害な反応とを引き起こすからである。
【0027】
漂白は、酸化段階およびアルカリ段階を含んでもよい。特に酵素は、漂白に使用される(たとえば、アミラーゼ、キシラナーゼ)か、または繊維材料の重合度(DP)もしくは溶解段階(たとえばエンドグルカナーゼ)での繊維反応性を調整するために使用される。漂白の酸化段階は典型的には、過酸化水素、過酢酸、またはオゾンを用いて実施される。これらの薬剤は、処理された材料の重合度を調整し、漂白することによって機能する。
【0028】
精製は、化学的処理として使用するためのさらなる選択肢であり、利用可能な表面積を増加させる。
【0029】
特に好ましい実施形態に従えば、化学処理工程の組み合わせは、適切と考えられる任意の順序で以下の選択肢から選択される。
A.湿潤剤による熱アルカリ抽出
B.アルカリ抽出および精製
C.アルカリ抽出、オゾン処理、および過酸化物処理
D.アルカリ抽出、オゾン処理、精製、および過酸化物処理
E.アルカリ抽出および過酸化物処理
F.アルカリ抽出、酵素処理、および過酸化物処理
【0030】
典型的には、精製は、実施される場合、アルカリ抽出の前後に、またはオゾン処理の前後に実施され、1つ以上のさらなる処理と任意に組み合わされる。
【0031】
1つの好ましい選択肢に従えば、しかしながら、代替案B.~F.のアルカリ抽出は、最初の化学処理として実施される。
【0032】
代替案B.~F.では、アルカリ抽出は、熱アルカリ抽出として、または室温で実施することができる。
【0033】
上述の全ての代替案は、酸処理または酸洗浄を追加して、特に、処理された材料の金属含有量をさらに減少させることができる。たとえば、カルシウム(Ca)、鉄(Fe(II))イオン、銅(Cu)、およびマンガン(Mn)の含有量は、酸処理によって減少させることができる。
【0034】
典型的には、上述の化学処理工程の後に、少なくとも1つの乾燥工程が続く。しかしながら、水分を完全に除去する必要はない。
【0035】
本発明の一実施形態に従えば、繊維製品廃棄物は、特に、衣料品、たとえば、ボタンおよびジッパー、または他の金属もしくはプラスチックの付属品を除去するために、化学的処理の前に1つ以上の機械的前処理を受ける。好ましくは、得られた塊は、続いて粗く粉砕される。
【0036】
任意の機械処理および酵素処理の組み合わせは、重合度の調整を改善し、BioCelSol繊維の前駆体(pre-version)が提供される。
【0037】
「BioCelSol」材料は、酵素処理と、それに続くアルカリ溶液への溶解によって生成される。BioCelSol繊維を得るために、上述の処理工程の後、当然に沈殿が続く。
【0038】
本発明の別の実施形態に従えば、上述の実施形態の1つ以上に従って処理された材料は、カルバメート法で使用され、セルロースカルバメートが生成される。
【0039】
典型的には、カルバメーションは尿素および過酸化水素を用いて実施され、後者は材料の重合度(DP)を低下させ、たとえば、圧縮、摩擦および/または伸張によって反応混合物を機械処理にさらしながら反応を起こすことができる。
【0040】
好ましくは、得られた固体カルバメートは、典型的には、任意に亜鉛(たとえば亜鉛酸ナトリウム)を含むアルカリ溶液を用いて溶解工程に運ばれる。この溶解は、冷たい亜鉛溶液中で実施することができるか、または室温で亜鉛溶液にカルバメートを加え、続いて混合物を凍結(-40℃まで)し融解することによって実施することができる。次に、得られた溶液をろ過して、たとえば紡績に使用することができる。
【0041】
さらなる実施形態に従えば、上述のように処理された材料は、繊維紡糸、またはビスコースを置換するための他の用途、たとえばソーセージケーシングに使用される。
【0042】
また、本発明に従って処理された材料は、ビスコース、N-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)、またはイオン液体、またはBiocelsolの製造のための出発物質とし
て使用することができる。
【0043】
開示された本発明の実施形態は、本明細書に開示された、特定の構造、処理工程、または材料に限定されず、関連分野の当業者に理解されるように、それらの等価物まで拡張されることが理解される。また、本明細書で採用された用語は、特定の実施形態を説明する目的でのみ使用され、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0044】
本明細書全体を通して、1つの実施形態または一実施形態への言及は、当該実施形態に関連して記載された、特定の特徴、構造または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な場所における「1つの実施形態」または「一実施形態」の用語は、必ずしも全て同じ実施形態を表しているわけではない。「たとえば」、「約」または「実質的に」などの用語を使用して数値に言及される場合、正確な数値も開示される。
【0045】
本明細書で使用されるように、複数の、物品、構造要素、構成要素、および/または材料は、便宜上共通のリストで示されてもよい。しかしながら、これらのリストは、リストの各部材が個々の唯一の部材として個別に識別されるように解釈されるべきである。したがって、そのようなリストの個々の部材は、反対の指示がなしに共通のグループでのそれらの表示にのみ基づいて、同じリストの任意の他の部材の事実上の同等物として解釈されるべきではない。また、本発明の様々な実施形態および実施例は、その様々な構成要素の代替案とともに本明細書に示されてもよい。そのような実施形態、実施例、および代替案は、互いの事実上の同等物として解釈されるのではなく、本発明の別個の独立した表現と見なされることが理解される。
【0046】
さらに、上述された特徴、構造、または特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わされてもよい。本明細書では、本発明の実施形態の完全な理解をもたらすために、たとえば、長さ、幅、形状などの多くの特定の詳細が提供される。しかしながら、関連分野の当業者は、本発明が1つ以上の具体的な説明なしに、または他の方法、成分、材料などで実施することができることを認識するであろう。
【0047】
上述の実施例は、1つ以上の特定の用途における本発明の原理を例示しているが、発明能力を発揮することなく、本発明の原理および概念から逸脱することなく、形態、使用および実装の詳細において多くの修正を行うことができることは、当該技術分野の当業者にとって明らかであろう。したがって、以下に記載される特許請求の範囲による場合を除いて、本発明を限定することは意図されていない。
【0048】
以下の非限定的な実施例は、本発明の実施形態で得られる利点を例示することのみを意図している。
実施例
実施例1 -綿系材料の化学処理
【0049】
市販の綿混合品を、表1に示すように様々な化学処理にさらし、得られた処理済み材料の、粘度、反応性および明度を測定した(結果も表1に示す)。比較として、市販のビスコースグレードの溶解パルプのFock反応性は60%を超え、その粘度は450~500ml/gであるということができる。
【表1】
【0050】
様々な未処理綿混合品および化学処理綿混合品の金属含有量も測定した(表2を参照)。
【表2】
【0051】
(湿潤剤による)熱アルカリ抽出に続いて酸処理を用いて処理した材料の特性を表3に示す。
【表3】
【0052】
これらの結果が示すように、アルカリ処理は、特に、(湿潤剤による)熱アルカリ抽出として実施され、後に酸処理が実施されるとき、最も効果的な溶解をもたらす。このアルカリ処理は、オゾン処理もしくは過酸化水素処理、またはその両方と組み合わせることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本材料は、セルロース再生のための原料として使用することができ、ならびに様々なコーティング用途、再生セルロースフィルム、セルローススポンジ、凝固セルロースビーズおよび凝固セルロース粒子、および一般的に従来の前処理セルロースの置換に使用することができる。
【0054】
特に、本材料は、廃棄繊維製品から高品質のセルロース繊維の再生を可能にすることによって、消費前および消費後の両方の繊維製品のリサイクルに有用である。
先行技術文献
特許文献
US7,662,953
US8,066,903
WO2010/124944A1
WO2013/124265A1
WO2014/162062A1
非特許文献
Yin C, Li J, Xu Q, Peng Q, Liu Y, Shen X (2007) Chemical modification of cotton cellulose in supercritical carbon dioxide: synthesis and characterization of cellulose carbamate. Carbohydr Polym 67(2):147-154
【0055】
本発明は、以下の構成(1)~(7)の態様で実施可能である。
(1)繊維製品材料に、2つ以上の、化学処理工程および/または酵素処理工程が施される繊維製品材料の精製方法であって、化学処理工程として、アルカリ抽出を実施することを特徴とする繊維製品材料の精製方法。
(2)化学処理工程で酸を利用すること、好ましくはアルカリ処理された材料を酸で処理すること、を特徴とする上記(1)に記載の方法。
(3)室温でのアルカリ抽出、熱アルカリ抽出、酸処理、オゾン処理、過酸化物処理および酵素処理から、化学処理工程を選択することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の方法。
(4)アルカリ抽出を実施し、続いてオゾン処理、または過酸化物処理、またはその両方を実施することを特徴とする上記(1)~(3)のいずれか1項に記載の方法。
(5)前記処理工程の前に、40重量%を超える、好ましくは41~70重量%の固形分で、繊維製品材料を提供することを特徴とする上記(1)~(4)のいずれか1項に記載の方法。
(6)化学的に処理された繊維製品材料にカルバメート化工程を、好ましくは固形分が約70重量%の材料を用いて、実施することを特徴とする上記(1)~(5)のいずれか1項に記載の方法。
(7)セルロースカルバメートの製造における、繊維紡糸における、またはビスコースの置換における、またはビスコース、N-メチル-モルホリン-N-酸化物(NMMO)、もしくはイオン液体、もしくはBiocelsolの製造のための出発物質としての、上記(1)~(6)のいずれか1項に記載の方法を使用して処理された材料の使用。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
綿系繊維製品廃棄物の前処理によって得られる繊維製品材料の精製方法であって、前記前処理は、たとえば衣料品の金属またはプラスチックなどの付属品を除去し、除去後の繊維製品材料の粉砕を行う機械的処理を含み、
前記繊維製品材料に2つ以上の化学処理が施され、
化学処理の1つがアルカリ抽出であり、さらに前記繊維製品材料は、酸処理、オゾン処理、および過酸化物処理からなる処理の群から選ばれる1つ以上の化学処理が施されることを特徴とする、繊維製品材料の精製方法。
【請求項2】
アルカリ抽出を施した繊維製品材料を1つ以上の他の化学処理工程において、酸、酵素、または漂白化学物質を用いて処理することを特徴とする、請求項1記載の繊維製品材料の精製方法。
【請求項3】
前記漂白化学物質は、漂白酵素、たとえばアミラーゼもしくはキシラナーゼである漂白酵素、または、酸化剤、過酸化水素、過酢酸もしくはオゾンであることを特徴とする、請求項2に記載の繊維製品材料の精製方法。
【請求項4】
前記アルカリ抽出が、室温でのアルカリ抽出または熱アルカリ抽出であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維製品材料の精製方法。
【請求項5】
効果を高めるために湿潤剤を用いて、前記アルカリ抽出を実施することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の繊維製品材料の精製方法。
【請求項6】
最初の化学処理として前記アルカリ抽出を実施し、続いてオゾン処理、または過酸化物処理、またはその両方を実施することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の繊維製品材料の精製方法。
【請求項7】
前記処理を酸処理または酸洗浄で補い、前記酸処理は、原料の重合度(DP)を調整するように実施されることを特徴とする、請求項6記載の繊維製品材料の精製方法。
【請求項8】
前記アルカリ抽出の前に、40重量%を超える固形分で、繊維製品材料を提供することを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の繊維製品材料の精製方法。
【請求項9】
繊維紡糸における、もしくはビスコースの置換における、または、ビスコースもしくはBiocelsol繊維の製造のための出発物質としての、請求項1~8のいずれか1項に記載の繊維製品材料の精製方法を使用して処理された繊維製品材料の使用。
【請求項10】
固形分が少なくとも70重量%での、繊維製品材料のカルバメート工程の実施における、請求項1~8のいずれか1項に記載の繊維製品材料の精製方法を使用して処理された繊維製品材料の使用。