(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055702
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】浸透による香料濃縮物の製造
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20230411BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20230411BHJP
A23L 2/02 20060101ALI20230411BHJP
A23F 3/22 20060101ALI20230411BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20230411BHJP
A23C 9/142 20060101ALI20230411BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20230411BHJP
A23F 5/28 20060101ALI20230411BHJP
A23L 5/30 20160101ALI20230411BHJP
A23L 5/20 20160101ALI20230411BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20230411BHJP
A23L 2/08 20060101ALI20230411BHJP
A23L 2/74 20060101ALI20230411BHJP
A23L 2/385 20060101ALI20230411BHJP
C12H 3/04 20190101ALI20230411BHJP
A23L 27/10 20160101ALI20230411BHJP
A61K 8/97 20170101ALI20230411BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20230411BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20230411BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230411BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20230411BHJP
B01D 61/00 20060101ALI20230411BHJP
B01D 71/74 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
A23L5/00 Z
A23L19/00 A
A23L19/00 Z
A23L2/02 A
A23F3/22
A23L2/02 E
A23L27/00 C
A23C9/142
A23L13/00 Z
A23F5/28
A23L13/00 A
A23L5/30
A23L5/20
A23L2/00 B
A23L19/00 B
A23L2/08
A23L2/74
A23L2/385
C12H3/04
A23L2/02 C
A23L2/02 B
A23L2/02 F
A23L27/10 A
A61K8/97
A61Q11/00
A61Q13/00 101
A61Q19/00
A61K47/46
B01D61/00 500
B01D71/74
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000824
(22)【出願日】2023-01-06
(62)【分割の表示】P 2020525905の分割
【原出願日】2017-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】511008850
【氏名又は名称】シムライズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114904
【弁理士】
【氏名又は名称】小磯 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100134636
【弁理士】
【氏名又は名称】金高 寿裕
(72)【発明者】
【氏名】キーフル,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ウターメーレ,クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】ブレンネッケ,シュテファン
【テーマコード(参考)】
4B001
4B016
4B027
4B035
4B042
4B047
4B117
4C076
4C083
4D006
【Fターム(参考)】
4B001BC04
4B001BC99
4B001EC01
4B001EC02
4B001EC99
4B016LC01
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4B016LT08
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4B035LT20
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4D006GA03
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4D006PC11
4D006PC14
4D006PC17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、食材に由来する出発水溶液が半透性生体模倣膜による浸透によって濃縮される濃縮食品を調製するプロセスに関する。加えて、本発明は、本発明に係るプロセスによって製造することができる濃縮食品、≧1のOAV(臭気活性値)を持つ憂慮すべき芳香成分を含まない、且つどんな溶媒添加物も含有しない濃縮食品に関する。さらに、本発明は、本発明に係る濃縮食品の使用及び濃縮食品を含む製品に関する。
【解決手段】以下の工程:
・食品からの出発水溶液の調製と
・半透性生体模倣膜を使った浸透作用による当初の水溶液の濃縮と
・残余分としての濃縮食品の形成とを含む、前記プロセス。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃縮食品を調製するプロセスであって、
以下の工程:
・食品からの出発水溶液の調製と
・半透性生体模倣膜を使った浸透作用による当初の水溶液の濃縮と
・残余分としての濃縮食品の形成とを含む、前記プロセス。
【請求項2】
前記出発水溶液が果実、野菜、ハーブ、香辛料、茶、コーヒー、肉、乳、ビールまたは
ワインから得られる請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記半透性生体模倣膜が
・それぞれが、中に組み込まれた少なくとも1つのアクアポリンタンパク質を有する、リ
ポソームまたはポリマーソームの小胞と;
・前記小胞が埋め込まれる薄膜複合マトリックスと;
・キャリア層とを含む、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記リポソームが、DPhPC、DOPC、混合ダイズ脂質、アゾレクチンまたは大腸
菌質のような脂質を含み;前記ポリマーソームが、親水性-疎水性-親水性型のトリブロ
ックコポリマー(AがPMOXAであり、BがPDMSであり、CがPEOであるA-B
-A、A-B-C、C-B-A)、親水性-疎水性型のジブロックコポリマー(AがPB
であり、BがPEOであるA-B)、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~3の
いずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記アクアポリンタンパク質が、AQP0、AqpZ、SoPIP2、AQP10及び
それらの異性体から成る群から選択され、好ましくは前記アクアポリンタンパク質はAQ
P0である、請求項3または4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記薄膜複合マトリックスが、有機溶媒における酸塩化物の溶液と共にアミンの水溶液
を重合させることによって調製される、請求項3~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記出発水溶液が20~1000倍、好ましくは少なくとも100倍濃縮される、請求
項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセスによって入手できる濃縮食品。
【請求項9】
前記濃縮食品が芳香物質濃縮物である、請求項8に記載の濃縮食品。
【請求項10】
異臭を有さない請求項8または9に記載の濃縮食品。
【請求項11】
前記半透性生体模倣膜による浸透由来の再希釈した濃縮物の芳香プロファイルが従来の
パネルプロファイルの6つの味覚軸における0~10点の尺度にて最大合計1点で出発水
溶液の芳香プロファイルと異なり、DIN 10967-1-1999に係る試験パネル
または本発明に係るプロトコールを介して前記芳香プロファイルが測定される、請求項8
~10のいずれか1項に記載の濃縮食品。
【請求項12】
前記出発水溶液にて、≧1のOAV(臭気活性値)を有する前記芳香物質の回収率が、
前記出発水溶液に対して残余分にて>90%、好ましくは>98%、特に>99%である
請求項8~11のいずれか1項に記載の濃縮食品。
【請求項13】
W>-3である前記芳香物質の対数-感覚回復係数Wが前記出発水溶液に対して≧50
%、好ましくは≧90%の回収率を有する、請求項8~12のいずれか1項に記載の濃縮
食品。
【請求項14】
エタノール含量が、前記出発水溶液と比べて少なくとも50%低下する、請求項8~1
3のいずれか1項に記載の濃縮食品。
【請求項15】
憂慮すべき香料成分を含まない、特に≧1のOAV(臭気活性値)を持つ憂慮すべき芳
香成分を含まない、請求項8~14のいずれか1項に記載の濃縮食品。
【請求項16】
前記出発溶液に応じて
パイナップルについては:メチオナール、2,4-(E,E)-デカジエナール
リンゴについては:2,3-メチルブチルアルデヒド、フルフラール、1,3-ペンタナ
ール、3,5-オクタジエナール、リナロオロキシド、8-p-シメロール
ビールについては:トランス-2-ノネナール、硫化ジメチル
柑橘類については:α-テルピネオール、p-ジメチルスチレン、リモネンエポキシド、
カルベオール、カルボン、4-ビニルグアイアコール
イチゴについては:β-ダマセノン、2,4-(E,E)-デカジエナール、フルフラー
ル、グアイアコール
コーヒーについては:ビス-(2-フルフリル)ジスルフィド、2-(2-フリル)メチ
ルチオ-ヒドロキシ-1,4-ジヒドロ-ピラジン
乳については:硫化ジメチル、二硫化ジメチル、2-ヘキサノン、2-ヘプタノン、2,
3-メチルブタナール
パッションフルーツについては:ベンズアルデヒド、α-テルピネオール、フルフラール
、酢酸、アセトフェノン、β-イオノン、リナロオロキシド
茶については:β-ダマセノン、2,4-(E,E)-デカジエナール、3-ヒドロキシ
-4,5-ジメチル-2(5H)-フラノン、4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-3(
2H)-フラノン
トマトについては:二硫化ジメチル、メチオナール、4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル
-3(2H)-フラノン
タマネギジュースについては:三硫化ジメチル、三硫化ジプロピル、四硫化ジメチル、3
,5-ジエチル-1,2,4-トリチオラン、チオフェンを含有する群から選択される憂
慮すべき成分を含まない、請求項8~15のいずれか1項に記載の濃縮食品。
【請求項17】
≧1のOAV(臭気活性値)を持つ憂慮すべき芳香成分を含まない及び/またはどんな
溶媒添加物も含まない濃縮食品。
【請求項18】
少なくとも100倍、特に200~1000倍である、請求項8~17のいずれか1項
に記載の濃縮食品。
【請求項19】
以下の食品:パイナップルジュース、リンゴジュース、アロニアジュース、柑橘果実ジ
ュース、イチゴジュース、パッションフルーツジュース、ナシジュース、キュウリジュー
ス、ニンジンジュース、アスパラガスジュース、トマトジュース、タマネギジュース;バ
ジル、キウイ、マンゴー、パセリ、セロリ、ホウレンソウの圧搾ジュース;ハイビスカス
、エルダーベリー、コーヒー、ミント、茶、香辛料及びハーブの水性抽出物、動物系食品
、またはアルコール含有食品の1以上の濃縮物である、請求項8~18のいずれか1項に
記載の濃縮食品。
【請求項20】
食品、飲料製品、半完成品、口腔衛生製品、化粧品及び医薬品に芳香を付けるまたはそ
の芳香を再構成するための請求項8~19のいずれか1項に記載の濃縮食品の使用。
【請求項21】
食品または飲料であって、好ましくは0.1~1重量%の量で請求項8~20のいずれ
か1項に記載の濃縮食品を含み、及び/または前記食品が飲料、乳製品、スイーツ、食品
サプリメント、ダイエット食品及び食品代替物から成る群から選択される、前記食品また
は飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃縮食品の製造のためのプロセス、本発明に係るプロセスによって調製する
ことができる濃縮食品と、≧1のOAV(臭気活性値)を持つ憂慮すべき芳香成分を含ま
ない、且つどんな溶媒添加物も含有しない濃縮食品と、濃縮食品と同様に本発明に係る濃
縮食品を含む製品の使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
芳香物質は多数の工業プロセスにて主要な役割を担っている。一方では、これらは、果
実、野菜、香辛料、花等からの香油の形態での芳香物質の抽出を単に目的とするプロセス
であり、他方では、たとえば、芳香剤や香料のような天然の芳香物質の保存がそれぞれ、
製品の質を決定する、またはこれらの製品を食用にする食材及び高級食料の製造または改
良のためのプロセスである。
【0003】
特定の供給源、たとえば、果実を起源とする芳香は化学的に均一な物質ではないが、そ
の全体でのみ食材の天然の芳香の感覚的な効果が得られる多数の様々な化学成分で構成さ
れる。芳香物質を含有する溶剤を取り扱う場合、または食品を処理する場合、天然混合物
の一部が失われるまたは分解されるので、天然の内容物が減るまたはさらに破壊され、い
わゆる「異臭」を生じるリスクがあることが経験によって示されている。これは特に芳香
物質を含有する溶液が濃縮される場合である。
【0004】
食品の抽出と同様に野菜ジュース及び果実ジュースの製造では、濃縮され、濃縮物とし
て添加されると、同じ食品を再芳香化するまたは他の食品を芳香化する工業的に有意な量
の臭気強化及び味覚強化の水溶液が製造される。たとえば、果実ジュースまたは野菜ジュ
ースの濃縮物が得られる場合、芳香性の蒸気凝縮液が得られる。それによって、柑橘類及
び熱帯果実由来のジュースと同様に核果、ナシ状果及びソフトフルーツから新鮮に圧搾さ
れた果実ジュースが蒸発により濃縮され、こうして貯蔵される。蒸発過程の間、揮発性の
芳香物質が蒸気凝縮液の形態で薄いジュースから抽出され、次いでそれが濃縮される。瓶
詰の前に、濃縮果実ジュースまたは濃縮野菜ジュースを再び希釈し、以前分離した芳香濃
縮物を果実または野菜のジュースに加えて芳香を再構成する。元々の体積の6分の1から
8分の1までに過ぎない果実または野菜の濃縮ジュースは貯蔵及び輸送のコストを節約す
る。ジュース産業における蒸発技術についてのもう1つの重要な応用は多種多様な出発材
料由来の抽出物の濃縮である。たとえば、ジュース残渣及びジュース油は柑橘果実の果肉
及び皮から抽出され、蒸発によって濃縮され、次いで分離され、それによってさらに加工
される。蒸発プラントは飲料産業の他の領域、たとえば、麦芽抽出物、醸造用酵母、酵母
抽出物及びホップ抽出物を濃縮するために醸造業でも使用される。
【0005】
再希釈された果実ジュースまたは野菜ジュースは新鮮に搾られたジュースの味覚に対し
て評価されなければならない。本物の味覚経験及び健康志向の栄養摂取における消費者の
関心の増加に起因して、水溶液を濃縮するための既存のプロセスは限定的にしか使用する
ことができない。
【0006】
数十年間、臭気活性物質及び味覚活性物質を有する食品に由来する水溶液は蒸留プロセ
スによって濃縮されてきた。揮発性成分の蒸気圧を下げるための真空の使用のような穏や
かなプロセスパラメーターの使用にもかかわらず、30℃の温度でさえ、憂慮すべき香料
成分が形成され、所望の香料成分が分解され得る。蒸留は、たとえば、水性製品の熱負荷
に起因する調理香調を生じることができ、それは本物の味覚経験と見なすことができない
。イチゴの蒸気凝縮液の濃縮の際、消費者にジャムを思い出させ、新鮮なイチゴの摂取を
思い出させない調理香調が作り出される。
【0007】
さらに最近のプロセスは、たとえば、EP2075320A1に記載されているように
固相物質における香料物質の吸着による芳香濃縮物の製造に関係する。水溶液の吸着濃縮
では、たとえば、EP0082284A1に記載されているように、有機残基で表面修飾
されている多孔質吸着剤の容器一杯分に水溶液を通し、次いで水溶液に比べて少量の有機
溶媒で容器一杯分を溶出する。しかしながら、このプロセスは、毒物学上疑問の余地があ
ると見なされる、たとえば、メタノールのような脱離用の溶媒の使用を必要とする。これ
ら技術水準のプロセスの別の短所は、溶出/脱離のための吸着剤及び溶媒の選択性が芳香
プロファイルを変え得ることである。
【0008】
従って、臭気強化及び味覚強化の水溶液の溶媒を含まない且つ非熱性の濃縮は長い間、
食品産業に関わってきた。特に、膜を支持体とするプロセスは溶媒を使用せずに水を分離
し、有益な成分を濃縮するために開発されている。たとえば、限外濾過と逆浸透の組み合
わせは柑橘類の加工において水溶液から水を取り除くために使用されている(Bradd
ock,R.J.“Ultrafiltration and Reverse Osm
osis Recovery of Limonene from Citrus Pr
ocessing Waste Streams”,Journal of Food
Science,1982,47(3),946-948)。それについて、たとえば、
セルロースアセテート、ポリスルホン及びポリテトラフルオロエチレンのような古典的な
材料から成る中空繊維の平膜が使用された。しかしながら、逆浸透では、10バールから
100バールを超えるまでの圧力が普通使用され、それは分解反応の加速を引き起こすこ
とが一般に知られ、得られる濃縮物の感覚プロファイルに対して負の効果を有する。
【0009】
WO2017080852A1は、従来の蒸発、噴霧乾燥または凍結乾燥によって得ら
れるインスタントコーヒーよりも新しく入れたコーヒーをさらに感覚的に思い出させる水
性コーヒー抽出物を濃縮するための膜プロセスを記載している。それに関して、水に加え
て、小さな感覚活性物質のような低分子量の、すなわち、1kDa未満の他の物質は膜に
浸透するので、失われる。10~20バールでの8.3L/m2/時間の高い浸透流量、
従って迅速な脱水を達成するために、普通、100~300Daの分子量を有する芳香物
質の大きな喪失は許容される。実施例は、たとえば、セルロースアセテート、ポリスルホ
ン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン等のような従来の物質で出来た膜は、芳香
プロファイルを変えずに安定で且つ費用効率の高いプロセスにて水溶液を濃縮するには不
適当であることを示している。低い浸透性に起因して流量が少なすぎてプロセスを経済的
に操作することができない、または膜差圧が高すぎるので芳香が分解される、または良好
な浸透性は不十分な選択性を生じ、それは芳香物質を水と共に失わせる。
【0010】
最近、アクアポリンがちりばめられている生体模倣膜が市販されている。アクアポリン
は、生きている生物で広く広がる細胞膜結合タンパク質であり、特定の条件下では、それ
らは水分子が通過し、溶解された無機物質及び有機物質を保持できるようにする水チャネ
ルを形成する。
【0011】
Tang,et al.“Desalination by biomimetic
aquaporin membranes: Review of status an
d prospects”,Desalination,308,2013によって記載
されているように、アクアポリンは自然界では、たとえば、水、グリセロールまたは塩に
向かって選択的な浸透性を示すのに対して選択性の機能は多くの点で未だに不明瞭である
。これは、AQPの組換え製造及び膜ポリマーにおける埋め込みのような膜への工業的な
加工がプロセスの負安定性と同様に膜の性能を低下させるという事実によってさらに悪化
する。従って、有機香料及び臭気物質を伴う水溶液の濾過性に関する教示はない。
【0012】
WO2014108827A1では、たとえば、アクアポリン膜は血液の透析、特に、
たとえば、尿素、硫酸p-クレシル及び692Daの分子量までのペプチドのようなヒト
代謝産物の分離に使用することができる。しかしながら、香料または芳香生成調製物を作
り出すための有機香料及び臭気物質の特定の選択的な濃縮または枯渇に関する原則はない
。
【0013】
本発明の目的は、これら有益な香料及び臭気物質を喪失することなく、食材の臭気活性
及び味覚活性がある水溶液から、それによって濃縮食品を製造することができ、且つ当初
試料の感覚プロファイルを維持するプロセスを開発することであった。
【発明の概要】
【0014】
本課題は独立クレームの主題によって解決される。好ましい処方は従属クレームの実施
及び以下の説明によって生じる。
【0015】
本発明の第1の主題は以下の工程:
・食品からの出発水溶液の調製と、
・半透性の生体模倣膜を使った浸透による出発水溶液の濃縮と、
・残余分としての濃縮食品の形成とを含む、
濃縮食品を調製するプロセスに関係する。
【0016】
本発明の別の目的は上記発明に係る製造プロセスによって入手できるまたは入手される
濃縮食品に関係する。
【0017】
さらに、本発明の目的は≧1のOAV(臭気活性値)を持つ憂慮すべき芳香成分を含ま
ない、及び/またはどんな溶媒添加物も含有しない濃縮食品に関係する。
【0018】
本発明の別の態様は食品、飲料製品、半完成品、口腔衛生製品、化粧品または医薬品に
芳香を付けるまたはその芳香を再構成するための本発明に係る濃縮食品の使用に関係する
。
【0019】
結局のところ、本発明は本発明に係る濃縮食品を含む食品、飲料製品、半完成品、口腔
衛生製品、化粧品または医薬品に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に従って使用されるアクアポリン膜の構造の模式図である。
【
図3】コーヒー抽出物の例を用いた本発明に係るプロセスの模式図である。
【
図4】(4a、4b)茶抽出物(水相)と同じ茶抽出物の再希釈した濃縮物とのクロマト図の比較を示す図である。
【
図5】黄桃の水相とアクアポリン膜濾過由来の再希釈した濃縮物の感覚プロファイリングを示す図である。
【
図6】イチゴの水相とアクアポリン膜濾過由来の再希釈した濃縮物の感覚プロファイリングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る濃縮食品の製造のためのプロセスでは、第1の工程にて食材から出発水溶
液が提供される。
【0022】
食品は、加工されていようと、部分的に加工されていようと、または加工されていまい
と、ヒトによって摂取されるように意図されている任意の物質または製品である。食品に
はまた、その製造または処理または加工の間に食品に意図的に添加される飲料、及び水を
含む任意の物質も含まれる。高級食料もまた食品に指定される。高級食料は狭義では、主
として栄養価のために且つ満腹まで摂取されるのではないが、むしろその刺激的効果のた
めまたはその味覚のために摂取される食品である。高級食料の例には、コーヒー、茶、コ
コア及び香辛料が挙げられる。本発明の目的では、直接摂取には好適ではないが、芳香調
製物の製造には好適であり、且つ一般に使用される植物及び真菌の原材料も食品と見なさ
れる。
【0023】
食品の出発水溶液は、乳のような天然に水性形態である食品、水を食品に加えることに
よって得られる食品の水溶液、水を食品に加えることによって得られる食品の水性抽出物
、たとえば、食用植物、たとえば、茶もしくはコーヒー、または果実もしくは野菜からの
ダイレクトジュースのいずれかである。食品の出発水溶液には、食品の処理または加工の
間に得られる典型的な水溶液、たとえば、ジュースの蒸発による果実または野菜からの濃
縮ジュースの製造の間に得られる芳香性の蒸気凝縮液も含まれる。
【0024】
ダイレクトジュースを製造するために、熟した果実または野菜を先ず洗浄し、選択し、
ミル装置または製粉機でいわゆるマッシュに粉砕する。さらに良好なジュースの収量を達
成するためにさらに加工する前に、必要に応じて、たとえば、ペクチナーゼ、セルラーゼ
及びヘミセルラーゼのような特定の酵素によってマッシュを脱ペクチン化する。次いで、
5~20バールの圧力での圧搾にてまたは遠心分離によってジュース化が起きる。この方
法で得られた生ジュースを濃縮物にさらに加工する前に脱ペクチン化し、清澄化し、濾過
する。この場合、得られるジュースが出発水溶液であり、それは芳香物質及び香料物質を
含み、本発明に係るプロセスで使用される。
【0025】
あるいは、生ジュースを濃縮物に加工することができる。さらに濃縮物に加工する前に
、ジュースを脱ペクチン化し、清澄化し、濾過しなければならない。凍結濃縮に加えて、
蒸発のプロセスを用いて濃縮ジュースを製造する。蒸発による濃縮は、出発生産物の芳香
物質及び香料物質を含有し、且つ本発明に係るプロセスにて出発水溶液として使用される
蒸気凝縮液を生成する。
【0026】
出発水溶液は好ましくは果実、野菜、ハーブ、香辛料、茶、コーヒー、動物系食品、た
とえば、肉もしくは乳、またはビールもしくはワインのようなアルコール性食品から得ら
れる。出発水溶液としての果実または野菜の蒸気凝縮液は本発明に係るプロセスにて一層
さらに好ましい。
【0027】
本発明に係るプロセスの第2の工程では、食品由来の上述の出発水溶液を半透性生体模
倣膜による浸透によって濃縮する。
【0028】
自然科学では、浸透は選択性のまたは半透性の分離層または分離膜を介した分子の粒子
の有向流である。特に、浸透は、溶媒に対して浸透性であるが、それに溶解した物質に対
して浸透性ではない半透膜を介した水または別の溶媒の自然発生する通過として記載され
る。
【0029】
本発明に係るプロセスにおける浸透は正浸透として、または低圧での逆浸透として実行
することができる。本発明に係るプロセスでは正浸透が好ましい。
【0030】
逆浸透は、天然の浸透プロセスが圧力によって反転する、液体に溶解した物質の濃縮に
ついての物理的なプロセスである。作用の原理は、特定の物質の濃度を低下させるべきで
ある媒質が濃度を高めるべきである媒質から半透膜によって分離されることである。これ
は、濃度を平衡させる浸透要求が原因で生じる圧力よりも高くなければならない圧力を条
件とする。これによって、伝播の「自然な」浸透方向に対して溶媒の分子が移動できるよ
うにする。プロセスは、溶解された物質があまり濃縮されない区画にそれらを押し込む。
【0031】
飲料水は、2バール未満の浸透圧を有し、飲料水の逆浸透に適用される圧力は使用され
る膜及びプラント構成に応じて3~30バールである。キャリア液体(溶媒)が通過し、
溶解した物質(溶質)を保持できるようにするにすぎない浸透膜はそれらの高い圧力に耐
えることができなければならない。圧力の差異が浸透圧勾配を補うものより大きければ、
溶媒分子はフィルターのような膜を通過する一方で、「不純物分子」は保持される。古典
的な膜フィルターとは異なって、浸透膜は連続する通り抜けの孔を有さない。代わりに、
膜物質を介して拡散することによってイオン及び分子が膜を通って移動する。
【0032】
浸透圧は濃度差の上昇に伴って上昇する。浸透圧が適用される圧力と等しければ、プロ
セスは停止する。その時、浸透平衡が存在する。濃縮物の定常排出はこれを阻止すること
ができる。
【0033】
正浸透は溶解した物質を含有する溶液からの水の分離を達成するために半透膜を使用す
る浸透プロセスである。この分離の駆動力は、「駆動溶液」と呼ばれることが多い高濃度
の溶液(駆動溶液)と「対象溶液」と呼ばれる低濃度の溶液との間での浸透圧勾配である
。浸透圧勾配を用いて膜を介した高濃度の溶液への水の流れを誘導するので低濃度の溶液
を効果的に濃縮する。
【0034】
逆浸透及び正浸透の双方では、本発明に係るプロセスにて以下でさらに詳細に記載され
ている生体模倣膜によって食品の出発水溶液から水が抽出されるので、出発水溶液の濃縮
が結果として起きる。
【0035】
好ましくは、本発明に係るプロセスでは、正浸透として生体模倣膜を用いて出発水溶液
の濃縮が実行される。
【0036】
一層さらに好ましくは、浸透溶液に対して正浸透として生体模倣膜を用いて出発水溶液
の濃縮が実行される。この目的で、浸透性に活性がある溶液(駆動溶液)が食品の出発水
溶液に対して対向流で流され、それによって水が出発水溶液から取り出される。
【0037】
通常、本発明に係るプロセスにおける正浸透には、以下の群:アンモニウム、ナトリウ
ム、カリウム、カルシウム及びマグネシウムから成る群から選択されるカチオンと、酢酸
塩、塩化物、クエン酸塩、炭酸水素塩、ギ酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、プロピオン酸塩、
硫酸塩、コハク酸塩及び酒石酸塩から成る群から選択されるアニオンとから成る塩に由来
する1以上の化学成分を含む浸透溶液の使用が関与する。加えて、アミノ酸の塩及びたと
えば、グルコース、フルクトースのような単糖及びスクロースが使用される。
【0038】
NaCl、MgCl2、KCl、K-乳酸、NH4CO3またはスクロースを含む溶液
は好ましくは浸透性に活性がある溶液として使用される。本発明に係るプロセスでは、N
aCl、K-乳酸またはスクロースを含む浸透溶液が最も好ましい。NaClを含む浸透
溶液は特に好ましい。
【0039】
本発明に係るプロセスにて使用される浸透溶液は0.05~4Mの範囲での、好ましく
は0.5~3Mの範囲での化学成分の初期濃度を有する。
【0040】
本発明に係る方法は、上記に記載されている浸透プロセスの1つによって食品由来の出
発水溶液を濃縮する工程にて半透性の生体模倣膜を使用する点を特徴とする。これらの生
体模倣膜は好ましくは、Joachim Habel et al.in“Membra
nes”Aquaporin-based biomimetic polymeric
membranes:approaches and challenges”;20
15,5,307-351;ISSM2077-0375”,特に312-319ページ
によって記載されたそれらの膜である。その中に記載されたアクアポリン系の生体模倣ポ
リマー膜の開示はその中で開示された膜への特定の参照によって本出願に完全に組み込ま
れる。
【0041】
アクアポリンがちりばめられているそのような生体模倣膜はすでに市販されている。そ
れらは会社Aquaporin A/S,Denmarkによって製造され、Aquap
orin Inside Rの商標のもとで販売されている。そのようなアクアポリン膜
は、たとえば、血液の透析または海水の脱塩に使用されている。
【0042】
本発明に係るプロセスにて使用される半透性の生体模倣アクアポリン膜は、それらが
・そのそれぞれがそれに組み込まれた少なくとも1つのアクアポリンタンパク質を有する
リポソームまたはポリマーソームの小胞と;
・小胞が埋め込まれる薄膜複合マトリックスと;
・キャリア層とを含む点を特徴とする。
【0043】
上記に記載されている半透性の生体模倣アクアポリン膜の構造を
図1に示す。
【0044】
図1で分かるように、活性層におけるアクアポリン膜はアクアポリンが組み込まれる小
胞を含む。アクアポリンは、生きている生物に広く存在し、特定の条件下で、水分子が通
過でき、溶解している有機物質と同様に無機物質が細胞にとどまれるようにする水チャネ
ルを形成する細胞膜結合タンパク質である。従って、それらは水チャネルとも呼ばれる。
アクアポリン膜では、アクアポリンは、水分子が優先的に通過できるようにする一方で、
そのサイズ、分子量及び化学構造にかかわらず、他の分子の通過を理想的に阻止する水チ
ャネルを形成する。
【0045】
小胞マトリックスは少なくとも1つのリポソームまたは少なくとも1つのポリマーソー
ムから成る。リポソームは、たとえば、DPhPC、DOPC、混合ダイズ脂質、アゾレ
クチンまたは大腸菌の混合脂質のような脂質を含む。ポリマーソームは、親水性-疎水性
-親水性型のトリブロックコポリマー(AがPMOXAであり、BがPDMSであり、C
がPEOであるA-B-A、A-B-C、C-B-A)、親水性-疎水性型のジブロック
コポリマー(AがPBであり、BがPEOであるA-B)、またはそれらの組み合わせを
含む。
【0046】
アクアポリンは好ましくは本発明によれば、AQP0、AqpZ、SoPIP2、AQ
P10及びそれらの異性体から成る群から選択される少なくとも1つのタンパク質を含む
。AQP0が特に好ましい。
【0047】
図1からさらに分かるように、アクアポリンを含有する小胞は薄膜複合マトリックスの
上部で組み込まれる。薄膜複合マトリックスはアミンの水溶液を有機溶媒中の酸塩化物の
溶液と共に重合することによって調製される。アクアポリン・水シャネル・小胞はこの水
溶液に組み込まれる。
【0048】
薄膜複合マトリックスは次に多孔性キャリア層に適用される。キャリア層は好ましくは
ポリエーテルスルホンである。
【0049】
これらの半透性生体模倣膜の製造、さらなる組成及び物理的な及び化学的な特性は、た
とえば、その開示が参照によって全体として本出願に組み込まれるWO20141088
27A1、特に6~33ページに記載されている。
【0050】
以下の表1はそのようなアクアポリン膜の例となる組成をリストにする。
【0051】
【0052】
本発明に係る正浸透による半透性の生体模倣アクアポリン膜による食品由来の出発水溶
液の濃縮の機能性が今や
図2を参照してさらに詳細に記載されている。正浸透では、たと
えば、有益な芳香物質及び香料物質を含有する出発水溶液は半透性の生体模倣アクアポリ
ン膜によって浸透溶液から空間的に分離される。浸透溶液の濃度は出発溶液の濃度より高
い。濃度勾配及び半透性生体模倣アクアポリン膜に起因して、圧力を適用することなく、
水分子はアクアポリン膜を介して出発溶液から浸透溶液に優先的に移動する。有益な芳香
物質及び香料物質は半透性生体模倣アクアポリン膜を通過できないので、そのサイズ、分
子量及び化学構造にかかわりなく残余分に残る。水分子の移動は出発溶液から水を取り除
き、すなわち、残余分として濃縮食品が作られ、その中で有益な芳香物質及び香料物質が
濃縮される。その一方では、浸透溶液は水の移動に起因して希釈され;浸透生成物が形成
される。浸透システムを平衡に保つには、一方で濃縮食品が連続的にシステムから取り除
かれ、他方で新鮮な浸透溶液が連続的にシステムに供給される。
【0053】
図3は本発明のプロセスに係るコーヒー抽出物の濃縮を例示的に示す。出発生産物は水
性コーヒー抽出物である。高い浸透ポテンシャルを持つ糖溶液に対する正浸透によってこ
のコーヒー抽出物から水が取り出される。浸透プロセスの間、コーヒー抽出物の水含量は
減らされ、濃縮されたコーヒー抽出物が残余分として得られ、それはシステムから取り出
され、その後の工程で、たとえば、凍結乾燥によってさらに処理される。水に対するアク
アポリン膜の選択性に起因して、水分子だけがアクアポリン膜を介して糖溶液に向かって
拡散する。有益な芳香物質及び香料物質はコーヒー抽出物に残り、濃縮される。糖溶液は
水の流入によって希釈される。
【0054】
使用される生体模倣膜は、水の標的分離を確保する一方で同時に有益な芳香化合物及び
香料化合物を保持する高い選択性を特徴とする。それによって有益な芳香物質及び香料物
質が水相(残余分)に完全に残り、生体模倣膜を横切って浸透溶液に移動しない。加えて
、使用される生体模倣膜は高い流量を可能にするので、敏感な芳香物質及び香料物質を伴
った出発溶液のプラントにおける短い滞留時間を可能にし、それは、たとえば、酸化を介
した芳香物質及び香料物質の分解を防ぐ。
【0055】
本発明に係るプロセスで使用される半透性の生体模倣アクアポリン膜は扁平中空繊維モ
ジュールとしてまたはらせんモジュールとして使用される。らせんモジュールでは、アク
アポリン膜がらせん状に巻かれ、それは膜の表面積が増えるようにし、浸透プロセスの効
率を改善する。好ましくは、本発明に係るプロセスでは中空繊維モジュールが使用される
。
【0056】
本発明に係る浸透プロセスは2~10のpH値で実行される。加えて、本発明に係る浸
透プロセスは、出発水溶液の成分、たとえば、芳香物質及び香料物質に対して負の効果を
有さない温度で実行される。好ましくは、プロセスは10~40℃の範囲の温度で、一層
さらに好ましくは約25℃の温度で実行される。
【0057】
好ましくは、正浸透は流量、すなわち、4~30L/m2/時間、好ましくは10~2
0L/m2/時間の膜を通る水流の量で実施される。正浸透は特に好ましくは少なくとも
12L/m2/時間の流量で実行される。これは好ましくは加圧せずに実行される。
【0058】
本発明に係るプロセスが逆浸透として実行されるのであれば、2~15バールの圧力が
出発水溶液に適用する。
【0059】
さらに好ましい実施形態では、本発明に係る浸透プロセスは連続的に実行される。この
目的で、膜濾過によって得られる残余分、すなわち、濃縮食品はシステムから排出され、
引き換えに浸透生成物も排出され、新しい浸透溶液に置き換えられる。
【0060】
本発明に係るプロセスによって20~1000倍、好ましくは100倍での出発水溶液
の濃縮が達成される。
【0061】
プロセスの第1の工程で提供される出発水溶液は従来のプロセス工程、たとえば、蒸留
、吸着、凍結乾燥、膜濾過によって、または膜を使った逆浸透もしくは正浸透によって上
流工程にて濃縮することができる。
【0062】
同様に、浸透プロセスによって得られる残余分または濃縮食品は従来のプロセス工程、
たとえば、蒸留、吸着、凍結乾燥、膜濾過によって、または膜を使った逆浸透もしくは正
浸透によって下流工程にてさらに濃縮することができる。
【0063】
驚くべきことに、上述の生体模倣膜を用いた浸透によって食品由来の出発水溶液を濃縮
するための本発明に係るプロセスは感覚プロファイルが出発生産物の感覚プロファイルと
同一である濃縮食品をもたらす、すなわち、本物の感覚プロファイルを有する濃縮食品が
得られることが見いだされた。
【0064】
感覚的な有益成分の分析は、揮発性臭気物質及び非揮発性香料物質の双方が、それらが
出発溶液に存在したのと同じ定量比で濃縮物にて見いだされることを示した。
【0065】
図4は、半透性アクアポリン膜を用いた浸透によって得られた水性茶抽出物と水性茶抽
出物の濃縮物との非揮発性香料物質の液体クロマトグラフィーの比較を示す。この目的で
、600gの紅茶をその重量の20倍の水で2時間抽出した。こうして得られた抽出物を
濾過して出発溶液を得た。浸透溶液(駆動溶液)に対する対向流における0.6m
2のア
クアポリン膜上での正浸透によって出発溶液を流した。1.3°ブリックスから3.3°
ブリックスまで当初13.5L/m
2/時間の流量で抽出物を濃縮した。
図3における比
較は、たとえば、単糖、キナ酸及び没食子酸のような香料小分子は残余分に残り、吸着プ
ロセスで失われず、または蒸留プロセスで分解されないことを示している。個々の付加価
値のある成分の面積比はほぼ同一である。カフェインは濃縮物にて>99%で完全に回収
された。
【0066】
たとえば、柑橘果実、ベリー類、ナシ状果実、核果のような果実の加工に由来する水相
は蒸留濃縮の間に感覚プロファイルで変化を受け、それは「調理香調」、「あまり新鮮で
ない」、「ジャガイモ」、「脂っぽい」及び「金属的」のように記載されることが多い。
驚くべきことに、たとえば、黄桃及びイチゴの水相は生体模倣膜による濃縮の後、プロフ
ァイルにてそのような変化を経験しないことが見いだされた。
【0067】
図5のようなDIN10967-1-1999に係る感覚プロファイルに基づく感覚の
比較は、桃の水相及び当初の濃度に希釈し戻した濃縮物はほぼ同一の匂いがすることを示
している。軽くあまりはっきりしない果実のようなエステル様で且つ熟した香調のみが認
知された。イオウ含有成分によって本質的に引き起こされ、吸着プロセスと同様に熱プロ
セスで変化する桃のような且つ新鮮な味覚の香調は水相で見られるように濃縮物にて強力
に顕著である。
【0068】
感覚プロファイルを作り出すために、記述用語(記述子)を先ずパネルで集め、それに
よって用語のリストを構造化し、類似の用語を組み合わせ、快楽の限定詞を排除する。1
~10の尺度での記述子の強度の評価は少なくとも10人の訓練された試験人によって実
施される。それによって、試料をコード化し、無作為な順で感覚室にて味わい、たとえば
、色、ノイズ及び異臭のような憂慮すべき影響を排除する。個々の結果を合計し、次いで
算術平均を形成することによって最終結果を判定し、ネットワーク図の形成でグラフにて
表す。
【0069】
【0070】
表2は黄桃の水相及び対応する濃縮物における有益な芳香物質の含量を示す。出発水溶
液/水相は芳香物質がすでに濃縮されているように蒸気凝縮液から蒸留するによって得た
。さらなる濃縮は、生体模倣アクアポリン膜によって実施したが、14L/m2/時間の
高い水流では非常に小さな分子が高い収率で回収されることを示している。芳香物質の回
収率は90~>99%の間の範囲だった。有益な成分の熱分解産物は検出することができ
なかった。代わりに、得られる濃縮食品にとって役に立つエタノールが取り除かれること
が見いだされた。エタノールの回収率は約50%だった。
【0071】
イチゴは、熱及び圧力駆動の影響が消費者に「調理したジャム」を思い出させる調理香
調を作り出すので、加工プロセスの感覚プロファイルに対する負の影響を調べるのに特に
好適な系である。生体模倣アクアポリン膜を用いた濃縮は驚くべきことに、香料成分のほ
ぼ完全な回収及び膜での早い流速と共に、感覚プロファイルに対する負の影響がない状態
で香料成分の濃縮が可能であることを示している。
【0072】
【0073】
表3はイチゴの水相及び対応する濃縮物における香料成分の含量を示す。高い水流にて
短時間で19の濃縮係数が達成された。芳香物質の回収率は95~>99%の間の範囲だ
った。
【0074】
図6における感覚の比較は、出発水溶液/水相及び当初の濃度に希釈して戻した濃縮物
はほぼ同一の匂いがすることを示している。バターのような香調のやや増えた印象と共に
単にさほど強くない果実のようなエステル様の香調が認知された。
【0075】
トマト、キュウリ、ニンジン、セロリ、ビートの根及びタマネギのような野菜ジュース
の濃縮も技術水準から知られる従来のプロセスを用いて感覚プロファイルに望ましくない
変化をもたらす。驚くべきことに、本発明に係るプロセスは前述の負の影響がない状態で
濃縮につながる。たとえば、20kgのキュウリジュースは、デカントし、遠心分離し、
100μmのメッシュサイズで濾過した後、且つそれぞれ、逆浸透または本発明に係る浸
透プロセスによって濃縮された75本の皮を剥き、裏ごししたキュウリから得られた。こ
の目的で、10kgのキュウリ水を先ず、General Electricの従来の0
.37m2の逆浸透膜モジュールによって室温及び10バールで2.5時間、及び30バ
ールの圧力にて4L/m2/時間の初期流量で1640gの残量までさらに3.5時間、
脱水した。10kgのキュウリ水の残りの半分を60°ブリックスの濃度での駆動溶液と
しての2kgの乳酸カリウム溶液に対して0.6m2のアクアポリン膜モジュールにて3
00mL/分で5時間流した。プロセスにて1.091gの産物を量り分けた。膜の流量
は当初12L/m2/時間だった。生体模倣アクアポリン膜による本発明に係る浸透プロ
セスは、3倍多い初期膜流量を示し、同時に、適用された従来の逆浸透よりも有意に多い
キュウリ水を濃縮した。
【0076】
【0077】
逆浸透は、使用されたジュース/出発水溶液を脱水することによる非熱性なので穏やか
な濃縮のための標準的なプロセスであると工業的に見なされている。
【0078】
しかしながら、表4に提示した比較は、キュウリにおける価値を提供するアルデヒド、
たとえば、2,6-(E,Z)-ノナジエナール及び2-(E)-ヘキセナールは逆浸透
によって分解され、アルコールが形成される一方で、生体模倣アクアポリン膜による本発
明に係る浸透ではアルデヒドは量という点で優位なので保持されることを示している。実
験は驚くべきことに、本発明に係るプロセス由来の濃縮物は新鮮に切断したキュウリの強
い匂いを有し、逆浸透由来のすでに茶色っぽい色の濃縮物は調理したキュウリのような青
臭いバルサムのような匂いがしたことを示している。加えて、生体模倣アクアポリン膜に
よる浸透の駆動溶液は無臭であった一方で、逆浸透の浸透生成物はやや青臭い香調を有し
た。技術水準技術から知られる古典的な膜によるさらなる浸透実験は逆浸透と同様に、古
典的な膜によって味覚成分の喪失が発生することを示した。従って、本発明に係るプロセ
スに従って使用される生体模倣膜は、同時に高流量なので敏感な香料成分のプラントにお
ける短い滞留時間で有益な香料成分を保持しながら水の標的分離を可能にする高い選択性
を示す。
【0079】
驚くべきことに、記載されている実験では有益な成分の分解産物または憂慮すべき分解
産物は検出されず、憂慮すべき感覚成分はいずれも検出されなかった。憂慮すべき成分は
特に、たとえば、熱分解、pHシフト、酸化反応または化学転位反応に起因して最先端の
蒸留濃縮プロセスで形成される、及び濃縮食品の感覚プロファイルに影響を及ぼす化合物
である。
【0080】
食材及び濃度に応じて芳香プロファイルに対して負の影響を有する、ならびにプロセス
に関連する物理的な及び化学的な分解の結果である芳香物質を以下の表5でリストにする
。
【0081】
【0082】
本発明に係る記載されているプロセスを用いた表5でリストにした食品の濃縮は、技術
水準から知られる従来の蒸留、吸着及び膜のプロセスによるよりも有意に本物の感覚プロ
ファイルを生じる。特に、芳香物質のプロセスに関連する喪失は発生しないし、感覚プロ
ファイルを変化させる憂慮すべき成分は形成されない。
【0083】
本発明に係るプロセスのさらなる利点は、従来の熱プロセス、たとえば、蒸留プロセス
に比べて、それが低温、好ましくは25℃で実行できるので香料及び芳香が熱によって影
響を受けない濃縮食品を得ることができるので、それが熱不安定性の食品または熱不安定
性成分を伴う食品を濃縮するのに特に好適であることである。
【0084】
本発明に係るプロセスによって得られる濃縮物は、それらがどんな溶媒添加物も含有し
ないという点も特徴とする。食品由来の出発水溶液の濃縮についての技術水準から知られ
る従来の吸着プロセスとは対照的に、本発明に係るプロセスでは溶媒は使用されない;従
って、得られる濃縮食品では溶媒残留物は見いだされない。それによって、同時に、溶媒
関連の沈殿反応及び変色が回避されるので、透明な曇りのない濃縮食品が得られる。食品
から芳香濃縮物を得るためにそのような吸着プロセスで通常使用される溶媒は、アセトン
、ブタン、ブタン-1-オール、ブタン-2-オール、シクロヘキサン、一酸化二窒素、
ジエチルエーテル、酢酸エチル、エタノール、エチルメチルケトン、ヘキサン、メタノー
ル、酢酸メチル、プロパン、プロパン-1-オール及びプロパン-2-オールであり、食
品を起源としない。
【0085】
従って、本発明は上記に記載されている方法によって入手できる濃縮食品にも言及する
。
【0086】
一層さらに好ましい実施形態では、濃縮食品は芳香物質濃縮物である。
【0087】
上記に詳細に記載されているように、本発明に係る濃縮食品はどんな異臭も有さない。
異臭は芳香不良について認識される且つ使用される技術用語である。芳香不良は、影響を
受けた食品におけるさもなければ存在しない芳香成分の追加の存在、1以上の特徴的な化
合物(複数可)(影響化合物)の喪失または個々の芳香成分間の濃度でのシフトに起因し
て引き起こされる。
【0088】
上記の詳細な説明から分かるように、本発明はまた、半透性生体模倣膜による本発明に
係る浸透由来の再希釈した濃縮物の感覚プロファイルが、従来のパネルプロファイルの6
つの味覚軸における0~10点の尺度にて最大合計1点で出発水溶液の感覚プロファイル
と異なる濃縮食品にも言及し、それによって、DIN 10967-1-1999に係る
試験パネルを介して、または以下に記載されている本発明に係るプロトコールに従って感
覚プロファイルが測定される。
【0089】
感覚プロファイルを作り出すために、記述用語(記述子)を先ずパネルで集め、それに
よって用語のリストを構造化し、類似の用語を組み合わせ、快楽の限定詞を排除する。1
~10の尺度での記述子の強度の評価は少なくとも10人の訓練された試験人によって実
施される。それによって、試料をコード化された感覚室にて無作為な順で味わい、たとえ
ば、色、ノイズ及び異臭のような憂慮すべき影響を排除する。個々の結果を合計し、次い
で算術平均を形成することによって最終結果を判定し、ネットワーク図の形成でグラフに
て表す。
【0090】
図5及び
図6から分かるように、本発明に係るプロセスに従って得られた、再希釈後の
濃縮物の感覚プロファイルは、対応する6つの味覚軸にて各1点の最大値で黄桃及びイチ
ゴの出発水溶液(水相)の感覚プロファイルとは異なる。
【0091】
上記の分析からさらに分かるように、本発明に係る濃縮食品では、出発水溶液にて≧1
のOAV(臭気活性値)を有する芳香物質の回収率は出発水溶液に比べて残余分にて>9
0%、好ましくは>98%、特に>99%である。表2及び5にて明瞭に示すように、本
発明に係る各出発水溶液の濃縮は感覚プロファイルに対する負の影響がない状態で香料成
分のほぼ完全な回収と共に香料成分の濃縮をもたらし、それによって本物の感覚プロファ
イルが得られる。
【0092】
OAVの値は試料、たとえば、食材の臭気における特定成分の有意性の評価基準として
定義される。OAVの値は、食品における特定の物質の濃度(mg/kg)を食品におけ
るこの物質の濃度閾値(mg/kg)で割ることによって算出される。OAVが>1であ
るならば、物質の濃度は臭気閾値濃度を超え、そのとき物質はプロファイル全体に感覚的
に寄与する。従って、OAVが<1の物質は感覚プロファイルに寄与しない。
【0093】
本発明に係るプロセスを用いて卓越する濃縮物を提供することもできる。これらは、臭
気活性物質がプロセスにて保存されるので味覚及び臭気におけるさらに高い本物性を特徴
とする。濃縮食品は以下の関係によって表すことができ:本発明に係る濃縮食品は、出発
水溶液に比べて好ましくは>-3、一層さらに好ましくは->5であるパラメーターW(
感覚回復係数の対数)を持つ濃縮食品における芳香物質、すなわち、臭気活性物質が≧5
0%、好ましくは≧70%の回収率を有するという点でこうして特徴付けられる。それに
ついて、≧90%または≧95%の回収率が特に好まれ、最も好ましいのは≧98%また
は≧99%の回収率である。
【0094】
芳香物質の感覚回復係数(SWF)は芳香物質のlogP及び芳香物質の臭気閾値濃度
(水にてmg/kg)で構成され、以下のように定義される:
感覚回復係数SWF=10^logP/臭気閾値濃度(mg/kg)
次にlogP値は以下のように定義される:
logP=logK(n-オクタノール/水)=(Cn-オクタノール)/(C水)
式中、C(n-オクタノール)はn-オクタノール相における芳香物質の濃度であり、C
(水)は水相における芳香物質の濃度である。
logK(n-オクタノール/水)はn-オクタノールと水の2つの相システムにおけ
る芳香物質の濃度の比率を示す無次元分配係数である。従って、それは芳香物質の極性ま
たは水/脂肪への溶解性のモデル評価基準である。
logPは共通する物理的パラメーターであり、親油性芳香物質については正であり、
親水性芳香物質については負である。
従って、Wパラメーターは以下のように定義される。
W=log10(SWF)
【0095】
従って、Wパラメーターは、物質の感覚活性を考慮に入れて本発明に従って識別を可能
にする各物質の絶対的な値である。
【0096】
芳香物質のlogP、臭気閾値、及び感覚回復係数は以下の表6にて与えられる。
【0097】
【0098】
芳香物質の感覚回復係数Wの対数が>-3である臭気活性物質はそのサイズ、分子量及
び化学構造にかかわりなく、生体模倣膜による残余分によく保持され、それは得られる濃
縮物が出発水溶液に対してまさに本物の且つほぼ一致する感覚プロファイルを有する理由
である。メタノール及びエタノールはその極性構造に起因してアクアポリン水チャネルを
介して部分的に移動する;しかしながら、これらの物質はその高い閾値に起因して感覚プ
ロファイルに対して軽微な関連性のものでしかない。
【0099】
本発明によれば、出発水溶液と比べてエタノール含量が少なくとも50%低下している
濃縮食品が特に好ましい。従って、本発明に係るプロセスの利点は、特徴的な芳香物質の
強力な保持と同時にエタノールの強力な低下である。これによって、エタノールについて
文化に関連した限定を有する国でさえ濃縮物が販売されるようにすることができる。一層
さらに好ましくは、本プロセスに係るエタノールの回収率は<90%、一層さらに好まし
くは<99%なので、エタノール含量は出発溶液の特徴的な味覚を失わずに有意に低下さ
せることができる。
【0100】
好ましくは、40~300Da、好ましくは86~170Daの分子量を持つ芳香物質
及び香料物質の残余分における回収率は、出発水溶液に対して>90%であり、一層さら
に好ましくは、98~200Daの分子量を持つ芳香物質の回収率は>98%である。
【0101】
本発明に係る濃縮食品の別の特定の利点は、それが溶媒添加物を含まないこと、特に、
アセトン、ブタン、ブタン-1-オール、ブタン-2-オール、シクロヘキサン、一酸化
二窒素、ジエチルエーテル、酢酸エチル、エタノール、エチルメチルケトン、ヘキサン、
メタノール、酢酸メチル、プロパン、プロパン-1-オール及びプロパン-2-オールか
ら成る群から選択される溶媒添加物を含まないことである。上述した溶媒添加物は、有益
な芳香物質及び香料物質の溶出/脱離のための、従って芳香濃縮物を得るための従来の吸
着プロセスで使用され、且つ自然食品を起源としないような溶媒である。これらの溶媒は
芳香濃縮物にて残留物として残り、部分的には毒性学上問題がある。
【0102】
本発明に係る濃縮食品のさらなる有利な特性は、それが憂慮すべき芳香成分を含まない
こと、好ましくは、濃縮食品が感覚プロファイルを変化させる≧1のOAV(臭気活性値
)を持つ憂慮すべき芳香成分を含まないことである。
【0103】
憂慮すべき成分は特に、たとえば、熱分解、pHシフト、酸化反応または化学転位反応
によって芳香濃縮物を得るための既知の膜による従来の浸透プロセスまたは蒸留プロセス
にて形成されるので、濃縮食品の感覚プロファイルに影響を及ぼす化合物である。たとえ
ば、芳香濃縮物を得るための従来の蒸留プロセスにて食品成分の熱分解によって形成され
るそのような憂慮すべき成分は得られる濃縮食品の感覚プロファイルを否定的に変化させ
てもよい。
【0104】
そのような憂慮すべき成分が選ばれている:
パイナップルについては:メチオナール、2,4-(E,E)-デカジエナール
リンゴについては:2,3-メチルブチルアルデヒド、フルフラール、1,3-ペンタナ
ール、3,5-オクタジエナール、リナロオロキシド、8-p-シメロール
ビールについては:トランス-2-ノネナール、硫化ジメチル
柑橘類については:α-テルピネオール、p-ジメチルスチレン、リモネンエポキシド、
カルベオール、カルボン、4-ビニルグアイアコール
イチゴについては:β-ダマセノン、2,4-(E,E)-デカジエナール、フルフラー
ル、グアイアコール
コーヒーについては:ビス-(2-フルフリル)ジスルフィド、2-(2-フリル)メチ
ルチオ-ヒドロキシ-1,4-ジヒドロ-ピラジン
乳については:硫化ジメチル、二硫化ジメチル、2-ヘキサノン、2-ヘプタノン、2,
3-メチルブタナール
パッションフルーツについては:ベンズアルデヒド、α-テルピネオール、フルフラール
、酢酸、アセトフェノン、β-イオノン、リナロオロキシド
茶については:β-ダマセノン、2,4-(E,E)-デカジエナール、3-ヒドロキシ
-4,5-ジメチル-2(5H)-フラノン、4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-3(
2H)-フラノン
トマトについては:二硫化ジメチル、メチオナール、4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル
-3(2H)-フラノン
タマネギジュースについては:三硫化ジメチル、三硫化ジプロピル、四硫化ジメチル、3
,5-ジエチル-1,2,4-トリチオラン、チオフェン
【0105】
さらに好ましい実施形態では、本発明に係る濃縮食品は≧1のOAV(臭気活性値)を
持つ憂慮すべき芳香成分を含まない、及び/またはどんな溶媒添加物も含有しない。少な
くとも100倍、特に200~1,000倍の濃度でさえ、本発明に係る濃縮食品は≧1
のOAV(臭気活性値)を持つ憂慮すべき芳香成分を含まない、及び/またはどんな溶媒
添加物も含有しない。従って、本発明に係る濃縮食品は少なくとも100倍、特に200
~1,000倍である。
【0106】
この濃縮食品では、憂慮すべき成分は好ましくは上記で定義されたとおりであり、出発
溶液に応じて、上記で定義された憂慮すべき成分のいずれも臭気活性があるような量では
各食品出発溶液に含有されない。さらに、吸着濃縮プロセスにて溶離液として普通使用さ
れる溶媒添加物は含有されない。従って、この濃縮食品は、たとえば、1000~100
00ppmの芳香物質の濃度にてこれらの濃度比で味覚及び組成において独特である。こ
れらの濃縮食品は一般にあまり褐変せず、わずかな沈殿反応を有する。
【0107】
本発明に係る濃縮食品は好ましくは、以下の食品:果実ジュース、たとえば、パイナッ
プルジュース、リンゴジュース、アロニアジュース、柑橘果実ジュース、イチゴジュース
、パッションフルーツジュース及びナシジュース;野菜ジュース、たとえば、キュウリジ
ュース、ニンジンジュース、アスパラガスジュース、トマトジュース、タマネギジュース
;バジル、キウイ、マンゴー、パセリ、セロリ、ホウレンソウの圧搾ジュース;ハイビス
カス、エルダーベリー、コーヒー、ミント、茶、ショウガのような香辛料及びディルのよ
うなハーブの水性抽出物;乳のような動物系食品、またはビール及びワインのようなアル
コール含有食品の1以上から調製される濃縮物である。
【0108】
本発明に係る濃縮食品は、食品、飲料製品、半完成品、口腔衛生製品、化粧品及び医薬
品に芳香を付けるまたはその芳香を再構成するのに使用することができる。
【0109】
従って、本発明のさらなる態様は、有利には0.1~1重量%の量で本発明に係る濃縮
食品を含む食品または飲料でもある。本発明に係る濃縮食品が好ましくは添加される食品
は飲料、乳製品、スイーツ、食品サプリメント、ダイエット食品及び食品代替物から成る
群から選択される。
【実施例0110】
本発明のプロセス及びこのプロセスによって得られる濃縮食品は今や個々の実施例を参
照してさらに詳細に記載される。
一般に実施例では、明白に述べられない限り、以下の実施パラメーターが使用される。
アクアポリン膜モジュールの操作についての手順の詳細
・モジュールの設計:中空繊維がちりばめられた長さ23cm及び直径5cmのポリカー
ボネート管(いわゆる中空繊維モジュール)
・流量:少なくとも>12L/m2/時間
・温度:最高50℃
・0.6m2のモジュールについて水相の最大18L/時間の及び浸透溶液の最大18L
/時間の流速にて加圧されない
・浸透溶液としての4MのNaCl
【0111】
実施例1:キュウリジュース濃縮物の調製
生産物:新鮮でジュースにしたキュウリジュース
出発材料:10000gのキュウリジュース、水相;2000gの浸透溶液、60°ブリ
ックスの乳酸カリウム
20倍の芳香物質の濃縮
装置:Sartoriusの10リットルのタンク+Ismatecのポンプを組み合わ
せたアクアポリンLHF033の正浸透モジュール
膜:FOモジュールアクアポリンLHF033、0.6m
2の活性膜面積
実験手順:
含有される固形物及び浮遊物が原因で100μmのバッグフィルターを介して駆動溶液
と同様にキュウリジュースを事前濾過した。供給タンクを10kgのキュウリジュースで
満たし、2.0kgの駆動溶液(浸透溶液)を小型容器に加えた。次いで供給ポンプ及び
駆動溶液ポンプをそれぞれ300mL/分の流速で開始した。9kgが取り出された後、
実験を停止した。供給タンクを2kgの蒸留水ですすいだ。分析のためにすすぎ水も順に
送った。
検量
作業量:10000g
浸透生成物:8835g
残余分:1091g
すすぎ水(作業量重量):2004g
駆動溶液、開始:60°ブリックス
駆動溶液、終了:12.4°ブリックス
温度:25℃
データの記録
【0112】
実施例2:黄桃濃縮物の調製
生産物:黄桃、純粋抽出物
出発材料:10000gの黄桃、水相;2000gの浸透溶液、60°ブリックスの乳酸
カリウム
20倍の芳香物質の濃縮
装置:Sartoriusの10リットルのタンク+Ismatecのポンプを組み合わ
せたアクアポリンLHF033の正浸透モジュール
膜:FOモジュールアクアポリンLHF033、0.6m
2の活性膜面積
実験手順:
供給タンクを10,000gの水相で満たし、2.0kgの駆動溶液(60°ブリック
ス)を小型容器に加えた。次いで供給ポンプ及び駆動溶液ポンプをそれぞれ300mL/
分の流速で開始した。
検量
作業量:10000g
残余分:413.5g
浸透生成物:9500g
駆動溶液、開始:60°ブリックス
駆動溶液、終了:12.6°ブリックス
温度:25℃
データの記録
感覚プロファイルは以下のとおりである:
強度:1~10
感覚プロファイルを
図5に示す。
【0113】
実施例3:イチゴ濃縮物の調製
生産物:イチゴジュース濃縮物に由来する水相
出発材料:10000gのイチゴの水相;2000gの浸透溶液、60°ブリックスの乳
酸カリウム
20倍の芳香物質の濃縮
装置:Sartoriusの10リットルのタンク+Ismatecのポンプと組み合わ
せたアクアポリンLHF033の正浸透モジュール
膜:FOモジュールアクアポリンLHF033、0.6m
2の活性膜面積
実験手順:
供給タンクを10,000gの水相で満たし、2.0kgの駆動溶液(60°ブリック
ス)を小型容器に加えた。次いで供給ポンプ及び駆動溶液ポンプをそれぞれ300mL/
分の流速で開始した。
検量
作業量:10000g
残余分:510.0g
浸透生成物:9500g
駆動溶液、開始:60°ブリックス
駆動溶液、終了:12.4°ブリックス
温度:25℃
データの記録
感覚プロファイルは以下のとおりである:
強度:1~10
感覚プロファイルは
図6に示す。
【0114】
実施例4:セイロン紅茶の濃縮物の調製
生産物:セイロンの紅茶
出発材料:600gの茶;12000gの水;2000gの浸透溶液、60°ブリックス
の乳酸カリウム
20倍の芳香物質の濃縮
装置:Sartoriusの10リットルのタンク+2つのIsmatecのポンプを組
み合わせたアクアポリンLHF033の正浸透モジュール
膜:FOモジュールアクアポリンLHF033、0.6m
2の活性膜面積
実験的調製
12kgの水にて600gの茶を室温で2時間抽出し、次いで篩及び折り畳み濾紙を介
して浮遊固形物を取り除いた。10kgの水相を正浸透に使用した。
実験手順
供給タンクを10,000gの水相で満たし、2.0kgの駆動溶液(60°ブリック
ス)を小型容器に加えた。次いで供給ポンプ及び駆動溶液ポンプをそれぞれ300mL/
分の流速で開始した。
検量
作業量:10000g、1.3°ブリックス
残余分:278.1g、33.1°ブリックス
浸透生成物:9602g
駆動溶液I、開始:60°ブリックス
駆動溶液II、開始:60°ブリックス
駆動溶液I、終了:18.4°ブリックス
駆動溶液II、終了:21.9°ブリックス
データの記録