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特開2023-55731改良されたコーティング、被覆セパレータ、電池、および関連する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055731
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】改良されたコーティング、被覆セパレータ、電池、および関連する方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20230411BHJP
   C09D 7/60 20180101ALI20230411BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20230411BHJP
   C09D 139/04 20060101ALI20230411BHJP
   H01M 50/457 20210101ALI20230411BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20230411BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20230411BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20230411BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20230411BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20230411BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20230411BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20230411BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20230411BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/60
C09D7/65
C09D139/04
H01M50/457
H01M50/403 D
H01M50/414
H01M50/42
H01M50/446
H01M50/443 Z
H01M50/443 E
H01M50/443 C
H01M50/417
H01M50/426
B05D7/00 B
B32B5/18
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003745
(22)【出願日】2023-01-13
(62)【分割の表示】P 2019503311の分割
【原出願日】2017-07-21
(31)【優先権主張番号】62/365,780
(32)【優先日】2016-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】598064680
【氏名又は名称】セルガード エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】レーン,マイケル,ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,インシク
(72)【発明者】
【氏名】クルーガー,エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ユー,シャン
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ロニー,イー.
(72)【発明者】
【氏名】ライナルツ,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】マー,ジュンチン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】機械的特性を維持しながら、より低い温度でより長い期間にわたってより迅速にシャットダウンする能力を有する、リチウムイオン電池におけるセパレータを提供する。
【解決手段】溶媒としての水、水性溶媒、または非水性溶媒を含む高分子結合剤と、耐熱性粒子と、架橋剤、低温シャットダウン剤、接着剤、増粘剤、摩擦低減剤、および高温シャットダウン剤からなる群から選択される少なくとも1つの成分と、を含むコーティング組成物を提供する。前記組成物でコーティングされた電池セパレータ、前記セパレータを含む二次リチウムイオン電池も提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒としての水、水性溶媒、または非水性溶媒を含む高分子結合剤と、
耐熱性粒子と、
架橋剤、低温シャットダウン剤、接着剤、増粘剤、摩擦低減剤、および高温シャットダウン剤からなる群から選択される少なくとも1つの成分と、
を含むコーティング組成物。
【請求項2】
前記高分子結合剤が、ポリラクタムポリマー、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、イソブチレンポリマー、アクリル樹脂、およびラテックスからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記高分子結合剤が、ラクタムに由来するホモポリマー、コポリマー、ブロックポリマーまたはブロックコポリマーである、ポリラクタムポリマーを含む、請求項2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記高分子結合剤が、式(1):
【化1】
式中、R、R、R、およびRはアルキル、または芳香族置換基、およびRはアルキル、アリール、または縮合環;および
式中、前記好ましいポリラクタムが、ホモポリマーまたはコポリマーであることができ、コポリマー基Xが、ビニル、置換または非置換アルキルビニル、ビニルアルコール、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸アルキル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド、スチレン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルバレロラクタム、ポリビニルカプロラクタム(PVCap)、ポリアミド、またはポリイミドに由来することができ、
式中、mは1~10、好ましくは2~4の整数であり得、lとnの比が0≦l:n≦10または0≦l:n≦1となる、
で表されるポリラクタムを含む、請求項3に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記ラクタムに由来するホモポリマーまたはコポリマーが、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルカプロラクタム(PVCap)、およびポリビニルバレロラクタムからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項3に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記ポリマーコーティングが、式(2)によるポリラクタム;
【化2】
式中、R、R、R、およびRはアルキルまたは芳香族置換基;
は、アルキル、アリール、または縮合環;
mは、1~10、好ましくは2~4の整数、
および式中、lとnの比が0≦l:n≦10または0≦l:n≦1となり、
およびXがエポキシドまたはアルキルアミンである、
と触媒を含む、請求項3に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
Xが、エポキシドで、前記触媒が、アルルキアミンまたはエポキシドを含む、請求項6に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記高分子結合剤が、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、イソブチレンポリマー、アクリル樹脂、および/またはラテックスを含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記耐熱性粒子が、有機材料または有機材料と無機材料の混合物、前記有機材料が、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリジビニルベンゼン(PDVB)樹脂、カーボンブラック、およびグラファイトからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
前記コーティング組成物中の前記耐熱性粒子と結合剤の比が、50:50~99:1である、請求項9に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
前記耐熱性粒子の少なくとも1つの表面積の0.01~99.99%が、前記結合剤で被覆されている、請求項9に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
前記架橋剤が、複数の反応性基を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
前記架橋剤が、複数の反応性エポキシ基を含むエポキシ架橋剤である、請求項12に記載のコーティング組成物。
【請求項14】
前記架橋剤が、複数の反応性アクリレート基を含むアクリレート架橋剤である、請求項12に記載のコーティング組成物。
【請求項15】
前記低温シャットダウン剤が、ポリエチレン(PE)およびポリビニルピロリドン(PVP)の少なくとも1つを含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項16】
前記接着剤が熱可塑性フッ素ポリマーを含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項17】
前記摩擦低減剤が、ステアリン酸金属塩、シロキサン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、
ワックスおよび脂肪族アミドから選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項18】
前記高温シャットダウン剤が140~220℃の融点を有する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項19】
前記高温シャットダウン剤がポリビニルピロリドン(PVP)、またはポリビニリデンジフルオライド(PVDF)から選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項20】
前記コーティング層が、さらにその上に形成された別の異なるコーティング層を含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の前記セパレータを含む、二次リチウムイオン電池。
【請求項22】
二次リチウムイオン電池のための電極と直接接触する請求項1~20のいずれか一項に記載の前記セパレータを含む複合材。
【請求項23】
請求項1~20のいずれか一項に記載の前記セパレータ、または請求項21に記載の前記電池を含む、車両または装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願への相互参照
本出願は、2016年7月22日に出願された米国仮特許出願シリアル番号62/365,780の優先権および利益を主張し、参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0002】
本出願は、電池セパレータまたはセパレータ膜を含む多孔質基材、および/または被覆電池セパレータを含む被覆多孔質基材、および/またはそのようなコーティングもしくは被覆セパレータを含む電池またはセルのための新規のおよび/または改良されたコーティング、および/またはその製造方法および/または使用方法を含む関連する方法に関する。少なくとも特定の態様によれば、本出願は、追加の添加剤、材料または成分を含むかまたは含まない、少なくとも高分子結合剤および耐熱性粒子を含む電池セパレータを含む多孔質基材用の新規のまたは改良されたコーティング、および/または電池セパレータを含む新規のまたは改良された被覆多孔質基材で、前記被覆は、追加の添加剤、材料または成分を含むか、または含まない、少なくとも高分子結合剤および耐熱性粒子を含むものに関する。少なくとも特定の態様によれば、本出願は、電池セパレータを含む多孔質基材用の新規のまたは改良されたコーティング、および電池セパレータを含む新規のおよび/または改良された被覆多孔質基材に、より特に、電池セパレータを含む新規のまたは改良された多孔質基材用コーティングで、少なくとも(i)高分子結合剤、(ii)耐熱性粒子、および(iii)架橋剤、低温シャットダウン剤、接着剤、および増粘剤からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含み、および/または電池セパレータを含む新規のおよび/または改良された被覆多孔質基材で、前記被覆が少なくとも(i)高分子結合剤、(ii)耐熱性粒子、および(iii)架橋剤、低温シャットダウン剤、接着剤、増粘剤、摩擦低減剤、高温シャットダウン剤からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含むものに関する。
【背景技術】
【0003】
技術的要求が高まるにつれて、セパレータの性能、品質、および製造に対する要求も高まる。リチウム電池におけるセパレータとして使用される膜または多孔質基材の性能特性を改善するためにさまざまな技術が開発されてきた。
【0004】
ポリマーコーティングおよびセラミック含有ポリマーコーティングの適用は、リチウム電池における微多孔電池セパレータ膜の熱安全性能を改善するための既知の方法である。そのようなコーティングは、高温安定性を促進し、微多孔電池セパレータ膜のセパレータ-カソード界面での酸化を制御し、リチウムイオン充電式(または二次)電池システムなどのさまざまな電池システムにおける微多孔電池セパレータ膜の安全性能を改善するために、微多孔電池セパレータ膜の片面または両面へのコーティングまたは層として適用され得る。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,432,586号は、さまざまなセラミック被覆セパレータを開示している。さらに、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014/0045033号は、安全性、電池サイクル寿命、および高温性能の改善をもたらすことができる、微多孔電池セパレータ膜用のさまざまなセラミック粒子含有ポリマーコーティングを開示する。このようなコーティングは、1つ以上の高分子結合剤、1つ以上の種類の無機セラミック粒子および水性溶媒、非水性溶媒、または水を含み得る。そのようなコーティングは、限定されないが、ディップコーティング、ナイフ、グラビア、カーテン、スプレーなどのさまざまな技術を使用して適用することができる。さらに、さまざまな既知のセラミック粒子含有ポリマーコーティングは、微多孔電池セパレータ膜の片面または両面に、例えば2~6ミクロンの厚さなどさまざまな厚さで適用することができる。
【0005】
性能基準、安全基準、製造上の要求、および/または環境への関心が高まるにつれて、電池セパレータ用の新規のおよび/または改良されたコーティング組成物の開発が望まれている。
【0006】
リチウムイオン電池の1つの主要な安全上の問題は熱暴走である。例えば、過充電、過放電、および内部短絡などの悪用条件は、電池製造業者が彼らの電池の使用を意図した温度よりはるかに高い電池温度につながる可能性がある。熱暴走の場合には、例えばアノードとカソードとの間などのセパレータを横切るイオン流の停止などの電池のシャットダウンは、熱暴走を防止するために使用される安全機構である。
【0007】
リチウムイオン電池のもう1つの安全上の問題は、電極同士が接触したときに起こるショート(ハードまたはソフト)である。電極が互いに直接接触するとハードショートが起こる可能性があり、またアノードから成長する多数(おそらく100個)または非常に大きなリチウム樹枝状結晶がカソードと接触すると起こる可能性もある。結果は、熱暴走であり得る。アノードから成長する小さいまたは単一の(または5などの少数の)リチウム樹枝状結晶がカソードと接触すると、ソフトショートが発生する可能性がある。ソフトショートは電池のサイクル効率を低下させる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
リチウムイオン電池におけるセパレータは、機械的特性を維持しながら、上記熱暴走が発生する温度より少なくともわずかに低い温度でシャットダウンする能力を提供する必要がある。例えばユーザーまたは装置がシステムをオフにするのにより長い時間を持てるように、より低い温度でより長い期間にわたってより迅速なシャットダウンが大いに望まれる。
過去のセラミック被覆セパレータは、ハードおよびソフトショートを防止するのに優れているが、セパレータのこの機能を改良することが常に望まれている。例えば、ますます薄いコーティングでこの機能を維持することが望ましい。したがって、過去のコーティング組成物および被覆された電池セパレータの少なくとも性能、安全性、製造などにおける改善の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
少なくとも選択された態様によれば、本明細書または本明細書によってカバーされる本出願、開示または発明は、以前の問題、必要性もしくは問題に対処し、および/または提供し、または電池セパレータまたはセパレータ膜を含む多孔質基材、および/または被覆電池セパレータを含む被覆多孔質基材、および/またはそのようなコーティングもしくは被覆セパレータを含む電池またはセルのための新規のおよび/または改良されたコーティング、および/またはその製造方法および/または使用方法を含む関連する方法に関する。少なくとも特定の態様によれば、本明細書または本明細書によってカバーされる本出願、開示または発明は、追加の添加剤、材料または成分を含むかまたは含まない、少なくとも高分子結合剤および耐熱性粒子を含む電池セパレータを含む多孔質基材用の新規のまたは改良されたコーティング、および/または電池セパレータを含む新規のまたは改良された被覆多孔質基材で、前記被覆は、追加の添加剤、材料または成分を含むか、または含まない、少なくとも高分子結合剤および耐熱性粒子を含むものに関する。少なくとも特定の態様によれば、本出願は、電池セパレータを含む多孔質基材用の新規のまたは改良されたコーティング、および電池セパレータを含む新規のおよび/または改良された被覆多孔質基材に、より特に、電池セパレータを含む新規のまたは改良された多孔質基材用コーティングで、少なくとも(i)高分子結合剤、(ii)耐熱性粒子、および(iii)架橋剤、低温シャットダウン剤、接着剤、および増粘剤からなる群から選択される少なくとも1
つの成分を含み、および/または電池セパレータを含む新規のおよび/または改良された被覆多孔質基材で、前記被覆が少なくとも(i)高分子結合剤、(ii)耐熱性粒子、および(iii)架橋剤、低温シャットダウン剤、接着剤、増粘剤、摩擦低減剤、高温シャットダウン剤からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含むものに関する。
【0010】
一側面において、コーティング組成物、例えば電池セパレータなどの多孔質基材の少なくとも片面に使用するためのコーティング組成物が本明細書に記載されている。コーティングはまた、電池セパレータへのその適用に関して以下でさらに詳細に議論されるその特性がそれを適切なコーティングの選択肢にする他の目的にも適しているかもしれない。コーティング組成物は、(i)高分子結合剤、(ii)耐熱性粒子、および(iii)(a)架橋剤、(b)低温シャットダウン剤、(c)接着剤、(d)増粘剤、(e)摩擦低減剤、および(f)高温シャットダウン剤からなる群から選択される少なくとも1つの追加の成分を含む。いくつかの態様において、結合剤は、唯一の溶媒としての水、水性溶媒、または非水性溶媒をさらに含む。いくつかの態様において、コーティング組成物はまた、界面活性剤、酸化防止剤、充填剤、着色剤、安定化剤、消泡剤、脱泡剤、増粘剤、乳化剤、pH緩衝剤、乳化剤、界面活性剤、沈降防止剤、レベリング剤、レオロジー調整剤、および湿潤剤からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0011】
別の側面において、多孔質基材と少なくともその1つの面上に形成された被覆層とを含む、例えばリチウム電池、二次リチウム電池、リチウムイオン電池、二次リチウムイオン電池などの電池用セパレータが記載される。コーティング組成物は、本明細書に記載のコーティング組成物を含む。いくつかの態様において、前記被覆層は最外被覆層であり、他の態様において、異なる被覆層が前記被覆層を覆ってまたはその上に形成され、この場合、前記異なる被覆層は最外層であるか、またはそれを覆ってまたはその上に形成された別の異なる被覆層あってもよい。いくつかの態様において、本明細書に記載のコーティング組成物を含む前記被覆層は、多孔質基材の例えば2つの対向する表面の2つの表面に被覆される。
【0012】
さらなる側面において、リチウムイオン電池用電極と直接接触する本明細書に記載のセパレータを含む複合材、本明細書に記載のセパレータを含む二次リチウムイオン電池、および/または本明細書に記載のセパレータを含む装置もしくは車両、または本明細書に記載のセパレータを含む二次リチウムイオン電池が記載される。二次リチウムイオン電池は、少なくとも改善された安全性および性能を示す。
【発明の効果】
【0013】
いくつかの好ましい態様において、高分子結合剤は、ラクタムに由来するホモポリマー、コポリマー、ブロックポリマー、またはブロックコポリマーであるポリラクタムポリマーを含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなる。ラクタムに由来するコポリマーまたはブロックコポリマーの使用は、得られる被覆層の熱安定性を高め、電解質安定性を高め、湿潤性およびCV性能を高めることができる。
別の好ましい態様において、高分子結合剤はポリビニルアルコール(PVA)を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。PVAの使用は、それが適用される基材が安定で平らに保たれるのを助ける、例えば基材がカールするのを防ぐのを助ける、低カールコーティング層をもたらし得る。
本発明に記載のコーティング組成物に架橋剤を添加すると、より低いMDおよびTD方向の収縮、より高い熱安定性を有するコーティングがもたらされる。
本明細書に記載のコーティング組成物の改善された安全性は、本明細書でさらに論じられるシャットダウン・ウインドウを拡大することによってもたらされ、そのためシャットダウンはより低い温度で始まる。
本明細書に記載のコーティング組成物に接着剤を添加すると電池電極、例えばリチウム
電池電極に対してより高い接着性を有するコーティングが得られる。
本明細書に記載のコーティング組成物への摩擦低減剤の添加はピン除去力の低下および/または摩擦係数の低下をもたらし得る。
安全性の観点から、本明細書に記載の高温シャットダウン剤を含むコーティング組成物を使用して電池セパレータを被覆すると、より優れたセパレータが得られる。
新規のおよび/または改良された被覆多孔質基材(またはセパレータ)は、拡大されたシャットダウン・ウインドウを示すことによって安全性も向上し得る。
サーマルシャットダウン・ウインドウを広くすると、熱暴走の可能性や火災や爆発の可能性を減らすことによって電池の安全性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、コポリマーまたはブロックコポリマーの構造説明図であり、ここでXは、少なくとも2つのコポリマーまたはブロックコポリマー鎖の間に架橋を作り出すことができる基、例えば、エポキシドまたはアルキルアミン含有基であり、コポリマーブロックコポリマーの一態様はラクタムに由来する。
図2図2は、図1のラクタムに由来するコポリマーブロックコポリマーによって生成された少なくとも2つのコポリマーまたはブロックコポリマー鎖の間の架橋の例の概略図であり、ポリマー鎖は、図1のR、R、R、R、およびRが水素でありYは2であるPVP鎖である。
図3図3は、高分子結合剤による耐熱性粒子の選択された被覆率の模式図である。例えば、高分子結合剤に対する耐熱性粒子の比率が低い場合(例えば図3の右側に示すように)、結合剤による耐熱性粒子の被覆率が高くなり、高分子結合剤に対する耐熱性粒子の比率が高い場合(図3の左図に示すように)、耐熱性粒子の被覆率は低くなる。
図4図4は、本発明の被覆基材または被覆セパレータのそれぞれ片面被覆(OSC)および両面被覆(TSC)の態様の概略断面図である。
図5図5は、一方の軸に抵抗、他方の軸に温度を有するシャットダウン性能の一例のグラフ図である。
図6図6は、それぞれ被覆されていない基材および片面被覆された基材のシャットダウン・ウインドウの概略図である。被覆基材は、拡大されたシャットダウン・ウインドウを有する。
図7図7は、リチウム電池の概略図である。
図8図8はそれぞれ比較例および発明例のシャットダウン性能のグラフ図である。
図9図9は、比較例と比較した発明例の拡大されたシャットダウン性能のグラフ図である。
図10図10Aは非被覆基材のシャットダウン性能のグラフ図である。図10Bは非被覆基材のシャットダウン性能のグラフ図である。図10Cは被覆PP/PE/PP基材のシャットダウン性能、被覆PE/PP/PE基材のシャットダウン性能のグラフ図である。
図11図11は、コーティング組成物への接着剤の添加による、電極、例えばアノードへの被覆層の接着性の増大を示す写真画像である。
図12図12は、ホットチップホール伝播研究の結果を示す写真画像である。ホットチップ試験は、点加熱条件下でのセパレータの寸法安定性を測定する。試験は、セパレータを熱はんだごての先端部と接触させ、結果として生じる穴を測定することを含む。より小さな穴がより望ましい。
図13図13は、例示のセラミック被覆セパレータの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
組成物
一側面において、本明細書に記載のコーティング組成物は、以下のものを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる:(1)任意に唯一の溶媒としての水、水性溶媒、または非水性溶媒を含む高分子結合剤、(2)耐熱性粒子、(3)(a)架橋剤、(b)低温シャットダウン剤、(c)接着剤、(d)増粘剤、(e)摩擦低減剤、および(f)高温シャットダウン剤からなる群から選択される少なくとも1つの追加の成分。
【0016】
いくつかの態様において、コーティング組成物は、これらの追加の成分のうちの少なくとも2つ、例えば(a)と(d)、(b)と(c)、(c)と(e)、または(d)と(f)を含み、いくつかの態様において、コーティング組成物は、これらの追加の成分の少なくとも3つ、例えば、(a)、(b)、および(d)、(a)、(c)、および(d)、または(c)、(e)、および(f)を含み、他の態様において、コーティング組成物は、これらの追加の成分、例えば、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、および(f)のうちの各々の1つを含む。いくつかの態様において、コーティング組成物は、2つの成分(a)、例えば2つの架橋剤、および成分(b)のうちの1つを含むことができる。あるいは、コーティング組成物は、3つの成分(c)、例えば3つの接着剤、および成分(d)のうちの1つを含むことができる。いくつかのコーティング組成物において、単一の添加成分は、例えば、接着剤および低温シャットダウン剤として作用することができ、そして他の態様において、接着剤および低温シャットダウン剤は異なる化合物である。コーティング組成物は、追加の成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、および(f)の任意の可能な組み合わせを含むことができる。
【0017】
(1)高分子結合剤
高分子結合剤は、高分子材料、オリゴマー材料、またはエラストマー材料のうちの少なくとも1つを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるものであり、それらはそのように限定されない。本開示と矛盾しない任意のポリマー材料、オリゴマー材料、またはエラストマー材料を使用することができる。結合剤は、イオン伝導性、半伝導性、または非伝導性であり得る。リチウムポリマー電池または固体電解質電池に使用することが示唆されている任意のゲル形成ポリマーを使用することができる。例えば、高分子結合剤は、ポリラクタムポリマー、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、イソブチレンポリマー、アクリル樹脂、ラテックス、アラミドから選択される少なくとも1つ、2つ、3つなど、またはこれらの材料の任意の組み合わせを含み得る。
【0018】
いくつかの好ましい態様において、高分子結合剤は、ラクタムに由来するホモポリマー、コポリマー、ブロックポリマー、またはブロックコポリマーであるポリラクタムポリマーを含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなる。いくつかの態様において、ポリマー材料は、以下によるホモポリマー、コポリマー、ブロックポリマー、またはブロックコポリマーを含む:
【0019】
【化1】
【0020】
式中、R、R、R、およびRはアルキル、芳香族置換基およびRは、アルキ
ル置換基、アリール置換基、縮合環を含む置換基;および式中、前記好ましいポリラクタムが、ホモポリマーまたはコポリマーであることができ、コポリマー基Xが、ビニル、置換または非置換アルキルビニル、ビニルアルコール、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸アルキル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド、スチレン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルバレロラクタム、ポリビニルカプロラクタム(PVCap)、ポリアミド、またはポリイミドに由来することができ、式中、mは1~10、好ましくは2~4の整数であり得、lとnの比が0≦l:n≦10または0≦l:n≦1となる。いくつかの好ましい態様において、ラクタム由来のホモポリマー、コポリマー、ブロックポリマー、またはブロックコポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルカプロラクタム(PVCap)、およびポリビニル-バレロラクタムからなる群から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または少なくとも3つである。
【0021】
好ましい態様において、ラクタムに由来するコポリマーブロックコポリマーは、その主鎖に、少なくとも2つのコポリマー間またはブロックコポリマー鎖間に架橋を生じさせることができる基を含む。例えば、この基はエポキシド基またはアルキルアミンであり得る。少なくとも2つのコポリマー鎖またはブロックコポリマー鎖の間に架橋を生じさせることができる基がエポキシドである場合、エポキシドはエポキシ化反応を受けて架橋を生じさせる。いくつかの態様において、触媒の添加が必要とされる。例えば、少なくとも2つのコポリマー鎖またはブロックコポリマー鎖の間に架橋を生じさせることができる基がエポキシドである場合、アルキルアミン基を含む触媒を添加することができ、そしてその基がアルキルアミンである場合、エポキシド基を含む触媒を添加することができる。この段落に記載されたコポリマーまたはブロックコポリマーは図(1)に示されるような構造を有することができ、ここでXは少なくとも2つのコポリマーまたはブロックコポリマー鎖の間に架橋を作り出すことができる基、例えば、エポキシドまたはアルキルアミン含有基である。この段落に記載のラクタムに由来するコポリマーブロックコポリマーの一態様を以下の図1に示す。
【0022】
図1のラクタムに由来するコポリマーブロックコポリマーによって作り出された少なくとも2つのコポリマー鎖またはブロックコポリマー鎖の間の架橋の例を図2に示す。
図2では、ポリマー鎖はPVP鎖であるので、図1のR、R、R、R、およびRは水素であり、Yは2である。その主鎖において、少なくとも2つのコポリマー間またはブロックコポリマー鎖間に架橋を作り出すことができる基を含む、ラクタムに由来するコポリマーまたはブロックコポリマーの使用は、得られる被覆層の熱安定性を高め、電解質安定性を高め、湿潤性およびCV性能を高めることができる。
【0023】
別の好ましい態様において、高分子結合剤はポリビニルアルコール(PVA)を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。PVAの使用は、それが適用される基材が安定で平らに保たれるのを助ける、例えば基材がカールするのを防ぐのを助ける、低カールコーティング層をもたらし得る。特に低カールが望まれる場合、PVAは、本明細書に記載される他の任意のポリマー、オリゴマー、またはエラストマー材料と組み合わせて添加されてもよい。
他の好ましい態様において、高分子結合剤は、アクリル樹脂を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなることができる。アクリル樹脂の種類は特に限定されず、本明細書に記載の目的に反しない、例えば、改良された 安全性を有する電池セパレータを
製造するために使用することができる、新規の改良されたコーティング組成物を提供するアクリル樹脂であり得る。例えば、アクリル樹脂は、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)からなる群から選択される少なくとも1つ、2つ、3つまたは4つであり得る。
【0024】
他の好ましい態様において、高分子結合剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、イソブチレンポリマー、ラテックス、またはこれらの任意の組み合わせを含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなることができる。これらは、単独でまたは他の任意の適切なオリゴマー材料、ポリマー材料もしくはエラストマー材料と一緒に添加され得る。
【0025】
いくつかの態様において、高分子結合剤は、水のみである溶媒、水性または水系溶媒、および/または非水性溶媒を含み得る。溶媒が水の場合、いくつかの態様において、他の溶媒は存在しない。水性または水系溶媒は、大部分(50%超)の水、60%超の水、70%超の水、80%超の水、90%超の水、95%超の水、または99%超で、100%未満の水を含む。水性または水系溶媒は、水に加えて、極性または非極性有機溶媒を含んでもよい。非水性溶媒は限定されず、そして本出願において表される目的に適合する任意の極性または非極性有機溶媒であり得る。いくつかの態様において、高分子結合剤は微量の溶媒のみを含み、他の態様において、それは50%以上、時には60%以上、時には70%以上、時には80%以上などの溶媒を含む。
【0026】
コーティング組成物中の耐熱性粒子と高分子結合剤との比は、いくつかの態様において50:50~99:1であり、他の態様では70:30~99:1または90:1~98:2であり、さらなる態様において、それは90:10~99:1である。この比率は、高分子結合剤による耐熱性粒子の被覆率に影響を与える。例えば、高分子結合剤に対する耐熱性粒子の比率が低い場合(例えば図3の右側に示すように)、結合剤による耐熱性粒子の被覆量は多くなる。高分子結合剤に対する耐熱性粒子の方が高いほど、例えば図3の左に示すように耐熱性粒子の被覆量が少なくなる。
【0027】
好ましい態様において、上記耐熱性粒子の少なくとも1つが高分子結合剤によって被覆または部分被覆されている。例えば、いくつかの態様において、少なくとも1つの耐熱性粒子の表面積(またはすべての耐熱性粒子の表面積)の0.01~99.99%が結合剤で被覆されている。いくつかの態様において、組成物中の耐熱性粒子の全表面積の0.01~99.99%が高分子結合剤で被覆されている。
【0028】
(2)耐熱性粒子
別の側面において、耐熱性粒子を本明細書に記載のコーティング組成物に添加する。これら耐熱性粒子の大きさ、形状、化学組成等は、特に限定されない。耐熱性粒子は、有機材料、無機材料、例えばセラミック材料、または無機材料と有機材料の両方を含む複合材料、2つ以上の有機材料、および/または2つ以上の無機材料を含むことができる。
【0029】
いくつかの態様において、耐熱性とは、粒子を構成する材料、2つ以上の異なる材料からなる複合材料を含み得る、が200℃の温度で実質的な物理的変化、例えば変形を受けないことを意味する。例示的な材料としては、酸化アルミニウム(Al)、二酸化ケイ素(SiO)、グラファイトなどが挙げられる。
【0030】
本明細書に開示される耐熱性粒子を形成するために使用され得る無機材料の非限定的な例は以下の通りである:酸化鉄、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、ベーマイト(Al(O)OH)、二酸化ジルコニウム (ZrO)、二酸化チ
タン(TiO)、硫酸バリウム(BaSO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、かんらん石、雲母、二酸化錫(SnO)、酸化インジウム錫、遷移金属の酸化物、グラファイト、炭素、金属、およびそれらの任意の組み合わせ。
【0031】
本明細書に開示される耐熱性粒子を形成するために使用され得る有機材料の非限定的な例は以下の通りである:ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリジビニルベンゼン(PDVB)樹脂、カーボンブラック、グラファイト、およびそれらの任意の組み合わせ。
【0032】
耐熱性粒子は、円形、不規則な形状、フレークなどであり得る。耐熱性材料の平均粒径は、0.01から5ミクロン、0.03から3ミクロン、0.01から2ミクロンなどの範囲である。
【0033】
上述のように、好ましい態様において、本明細書に記載のコーティング組成物に添加される耐熱性粒子の少なくとも1つは、高分子結合剤によって被覆されているかまたは部分的に被覆されている。他の態様において、耐熱性粒子は、(高分子結合剤によって被覆または部分被覆されることに加えてまたはその代わりとして)相溶化剤、例えば粒子を高分子結合剤とより混和性にする材料によって被覆または部分被覆されてもよい。一般に、耐熱性粒子は、本明細書に記載の目的と矛盾しないであろう任意の方法で被覆されていても被覆されていなくてもよい。
【0034】
理論に縛られることを望まないが、酸化または還元反応は、リチウムイオン電池の形成段階中またはリチウムイオン電池の充電中または放電中に起こり得、これらの反応は電池システムに害を及ぼし得る副生成物を生じ得る。本明細書に記載のコーティング組成物は、被覆されていないポリプロピレン(PP)またはポリエチレン(PE)の多孔質基材、例えば電池セパレータについて起こり得る酸化反応を減速させるかまたは防止することができる。耐熱性粒子、例えば、酸化アルミニウム(Al)を含む粒子は化学的に不活性であり、電解質による酸化を受けない。酸化安定性の向上は、本明細書に記載されているセパレータの被覆面をカソードまたは正極に面してまたは反対に配置することによって得ることができる。
【0035】
(3)添加成分
コーティング組成物は、(a)架橋剤、(b)低温シャットダウ剤、(c)接着剤、(d)増粘剤、(e)摩擦低減剤、および(f)高温シャットダウン剤のうちの少なくとも1つ、または2つ、または3つなどを含む。
【0036】
(a)架橋剤
別の側面において、少なくとも1つの架橋剤をコーティング組成物に添加することができる。架橋剤はそれほど限定されず、化合物が本明細書に記載の目的と他の点で矛盾しない限り、コーティング組成物中の2つ以上のポリマー鎖の間に結合を形成することができる任意の化合物を含む。例えば、架橋剤は、複数の反応性基、例えば、エポキシ基、アクリレート基などを有する化合物であり得る。例えば、架橋剤は、2、3、4、5個などの反応性基を含み得る。いくつかの態様において、複数エポキシ基含有架橋剤が好ましい。
【0037】
好ましい一態様において、架橋剤は、例えば高分子結合剤中の高分子材料、オリゴマー材料、またはエラストマー材料の主鎖の一部であり得る。例えば、架橋剤は、図1に示されるようにラクタムに由来するコポリマーまたはブロックコポリマーのエポキシド基であり得る。
【0038】
架橋剤は、本明細書に記載された目的と矛盾しない任意の量で添加することができる。いくつかの好ましい態様において、架橋剤の量は、全コーティング組成物に対してppmレベル、例えば、50,000ppmまで、10,000ppmまで、5,000ppmまでなどで添加することができる。
【0039】
架橋剤を添加するとき、いくつかの態様において、架橋剤または触媒を添加することができ、これは、添加された架橋剤を介して、例えば2つのポリマー鎖の架橋を開始または触媒することができる。架橋剤は、熱、光、または化学的環境(例えば、pH)に敏感であり得、例えば、架橋剤(cross-linking agent)または架橋剤(cross-limker)は、加
熱、光の照射、またはpHの変化に反応して、コーティング組成物中の1つ以上のポリマー鎖の架橋を開始または触媒し得る。
【0040】
本明細書に記載のコーティング組成物に架橋剤を添加すると、本出願の発明者らは、得られるコーティングおよび前記コーティングを(その片面または両面に)含む電池セパレータが多くの有益な特性を示すことを見出した。これらの特性は、より高い温度、例えば180℃の温度でさえもより低いMDおよびTD方向の収縮を含む。本明細書に記載のコーティング組成物に架橋剤を添加すると、より高い熱安定性を有するコーティングがもたらされる。
【0041】
収縮は、試験サンプル、例えば、被覆された多孔質基材を2枚の紙の間に置き、次にそれらを一緒に挟んでサンプルを紙の間に保持し、そしてオーブン中に吊り下げることによって測定される。「150℃で1時間」の試験では、サンプルを150℃のオーブンに1時間入れる。指定されたオーブンでの加熱時間の後、各サンプルを取り出し、両面粘着テープを使用して平らな対向面にテープで固定して、正確な長さと幅を測定するために、平らにおよび滑らかにした。収縮は、縦方向(MD)および横方向(TD)(MD方向に垂直)の両方向で測定され、%MD収縮率および%TD収縮率として表される。「180℃で10分間」の試験については、試料を180℃のオーブンに10分間入れ、次いで「150℃で1時間」の試験について上述したように試験する。「180℃で20分間」の試験については、試料を180℃で20分間オーブンに入れ、次いで「150℃で1時間」の試験について上述したように試験する。収縮率は、片面被覆多孔質基材または両面被覆質基材について測定することができる。
【0042】
(b)低温シャットダウン剤
別の側面において、低温シャットダウン剤が本明細書に記載のコーティング組成物に添加される。使用される低温剤の種類は、それが本明細書に記載の目的、例えばより安全なリチウムイオン電池を製造するために使用することができるコーティング組成物を提供することなど、と矛盾しない限り、それほど限定されない。いくつかの態様において、低温シャットダウン剤は、コーティング組成物が適用される(または適用されることを意味する)多孔質フィルムの融解温度より低い融解温度を有する。例えば、多孔質フィルムが約135℃で融解する場合、低温シャットダウン剤は135℃より低い融解温度を有する。
【0043】
いくつかの態様では、低温シャットダウン剤は、80℃~130℃の範囲、時には90℃~120℃の範囲、時には100℃~120℃の範囲などの融点を有する。
低温シャットダウン剤は、0.1~5.0ミクロン、0.2~3.0ミクロン、0.3~1.0ミクロンなどの範囲の平均粒径を有する微粒子であり得る。これらの粒子は、被覆されていても、被覆されていなくても、部分的に被覆されていてもよい。
【0044】
いくつかの好ましい態様において、低温シャットダウン剤は、ワックス、オリゴマー、ポリエチレン(PE)、例えば、低密度PEなどを含む粒子であり得る。これらの粒子は、被覆されていても、被覆されていなくても、または部分的に被覆されていてもよい。例えば、それらは、ラテックスおよび/または本明細書に開示されるように高分子結合剤で被覆されてもよい。いくつかの態様において、これらの被覆された低温シャットダウン剤は、以下により詳細に記載される高温シャットダウン剤で被覆され得る。
【0045】
本願の発明者らは、特に安全性の観点から、本明細書に記載の低温シャットダウン剤を
含むコーティング組成物を使用して電池セパレータを被覆すると、より優れたセパレータが得られることを見出した。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないで、この改善された安全性は、本明細書でさらに論じられるシャットダウン・ウインドウを拡大することによってもたらされ、そのためシャットダウンは、被覆されていないセパレータ、または被覆層が低温シャットダウン剤を含まない被覆セパレータのシャットダウン・ウインドウと比較してより低い温度で始まる。
【0046】
(c)接着剤
別の側面において、接着剤を本明細書のコーティング組成物に添加することができる。接着剤として使用される化合物は、それが本明細書に記載の目的と矛盾しない限り、それほど限定されない。いくつかの態様では、本明細書に記載のコーティング組成物に接着剤を添加すると、接着剤が添加されていない類似のコーティング組成物から形成されるコーティングと比較して、電池電極、例えばリチウム電池電極に対してより高い接着性を有するコーティングが得られる。接着剤は、本明細書に記載のコーティング組成物から形成されたコーティングの「粘着性(stickiness)」および/または粘着度(tack)を増大させる。コーティング中の耐熱性粒子間の接着および本明細書に記載のコーティング組成物から形成されるコーティング層の本明細書に記載の多孔質基材への接着もまた改善され得る。
【0047】
例えば、コーティングの多孔質基材に対する接着強度は、10N/m超、12N/m超、14N/m超、16N/m超、18N/m超、または20N/m超であり得る。多孔質基材がコーティング層の接着性を改善するために前処理されていない態様においても同様である。そのような前処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、延伸、界面活性剤処理/コーティング、およびコーティング層に対する基材の接着性を向上させることを目的とした任意の他の表面処理および/またはコーティングを包含し得る。しかしながら、そのような前処理の使用は、多孔質基材とコーティング層との間の優れた接着強度を達成するために必要ではないが、排除されない。いくつかの態様において、接着剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)またはポリビニリデンジフルオリド(PVdF)などの熱可塑性フルオロポリマーであり得る。
【0048】
被覆層の電池電極への1回接着は、以下のように測定される:本明細書に記載の被覆電池セパレータを電極間に配置し、電解質を電極間の空間に注入し、そして電極被覆セパレータ複合体を90℃で12時間熱圧着する。これに続いて、複合体を分解する、例えばセパレータを電極から分離し、セパレータを観察する。電極材料である多くの黒色材料がセパレータ上で観察される場合、これはセパレータと電極との間のより高い接着を示す。より少量の黒色材料、または電極材料は、より低い接着性を示す。
【0049】
(d)増粘剤
別の側面において、増粘剤を本明細書に記載のコーティング組成物に添加することができる。使用される増粘剤はそれ程限定されず、そして本明細書中に記載される目的と矛盾しない任意の増粘剤であり得る。増粘剤は、いくつかの態様において、本明細書に記載のコーティング組成物の粘度を調整するために添加される。例示的な増粘剤は、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)である。
【0050】
(e)摩擦低減剤
別の側面において、摩擦低減剤を本明細書に記載のコーティング組成物に添加することができる。摩擦低減剤はそれ程限定されず、本明細書中に記載される目的と矛盾しない任意の摩擦低減剤であり得る。例えば、いくつかの態様において、摩擦低減剤を含むコーティング組成物から形成されたフィルムを摩擦低減剤を含まないコーティング組成物から形成されたフィルムと比較すると、摩擦低減剤の添加はピン除去力の低下および/または摩
擦係数の低下をもたらし得る。いくつかの態様において、本明細書に記載のコーティング組成物から形成されるコーティングは、「粘着性」であるか、または湿潤時、例えば電解質で湿潤時に電極によく接着し、乾燥時に良好なピン除去を有する。例えば、いくつかの態様において、摩擦低減剤を含有するコーティング組成物から形成されたフィルムのピン除去力は7100g以下、いくつかの態様において6500g未満、いくつかの態様において6000g未満である。いくつかの態様において、前記係数(静的)は0.2~0.8、時には0.3~0.7、時には0.4~0.6、そして時には0.3~0.5の範囲である。
【0051】
ピン除去特性はピン除去力(g)を測定する以下の手順を使用して定量化される。
【0052】
電池巻線機を使用してセパレータ(その少なくとも1つの表面上に適用された被覆層を有する多孔質基材を含む、それからなる、または本質的にそれからなる)をピン(またはコアまたはマンドレル)の周りに巻き付ける。ピンは、直径0.16インチで滑らかな外面を有する2片円筒形マンドレルである。各片は半円形の断面を有する。後述するセパレータはピンに巻き取られている。セパレータに対する初期力(接線方向)は0.5kgfであり、その後セパレータは24秒で10インチの速度で巻き取られる。巻き取り中、テンションローラがマンドレルに巻き取られたセパレータと係合する。テンションローラは、セパレータフィードとは反対側に位置する直径5/8インチのローラ、1バールの空気圧が加えられる(係合時)3/4インチの空気圧シリンダ、およびローラとシリンダとを相互接続する1/4インチのロッドを備える。
【0053】
セパレータは、試験される2つの30mm(幅)×10”片の膜からなる。これらのセパレータのうち5つを試験し、結果を平均し、そして平均値を報告する。各片は、1”の重なりで巻き取り機のセパレータフィードロールに接合される。セパレータの自由端、すなわち接合端の遠位から、1/2”および7”にインクマークが付けられる。1/2”のマークはピンの向こう側(すなわちテンションローラに隣接する側)と位置合わせされ、セパレータはピンの片の間に係合され、テンションローラが係合された状態で巻き取りが開始される。7”のマークがゼリーロール(ピンに巻かれたセパレータ)から約1/2”であるとき、セパレータはそのマークで切断され、そしてセパレータの自由端は粘着テープの1片(1”幅、1/2”の重なり)でゼリーロールに固定される。ゼリーロール(すなわちセパレータをその上に巻いたピン)を巻き取り機から取り外す。許容されるゼリーロールは、しわや伸縮がない。ゼリーロールをロードセル(50ポンド×0.02ポンド; Chatillon DFGS 50)と共に引張強さ試験機(すなわち、Chatillon Inc.,Greensboro,N.C.からのChatillon Model TCD 500-MS)に入れる。歪み速度は毎分2.5インチであり、ロードセルからのデータは毎秒100ポイントの速度で記録される。ピーク力はピン除去力として報告される。
【0054】
COF(摩擦係数)静的は、JIS P 8147「紙および板の摩擦係数を決定する方法」と題された方法に従って測定される。
いくつかの好ましい態様において、摩擦低減剤は脂肪酸塩である。例えば、摩擦低減剤は、ステアリン酸Li、ステアリン酸Caなどのステアリン酸金属塩などであり得る。他の可能な摩擦低減剤としては、シロキサン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ワックス(例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、低分子量ポリエチレン、その他の炭化水素ワックス)、脂肪酸エステル(例えば、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸モノグリセリド)、脂肪族アミド(例えば、ステアラミド、パルミタミド、メチレンビスステアラミド)、および前述の摩擦低減剤のいずれかの組み合わせであり得る。
【0055】
(f)高温シャットダウン剤
別の側面によれば、高温シャットダウン剤が本明細書に記載のコーティング組成物に添加される。使用される高温剤の種類は、本明細書に記載された目的、例えばより安全なリチウムイオン電池を製造するのに使用することができるコーティング組成物を提供することと矛盾しない限り、それほど限定されない。いくつかの態様において、高温シャットダウン剤は、コーティング組成物が適用される(または適用されることを意味する)多孔質フィルムの融解温度よりも高い融解温度を有する。例えば、多孔質フィルムが約135℃で融解する場合、高温シャットダウン剤は135℃より高い融解温度を有する。
【0056】
いくつかの態様において、高温シャットダウン剤は、140℃~220℃の範囲、時には150℃~200℃の範囲、時には160℃~190℃の範囲、時には170℃~180℃の範囲などの融点を有する。
【0057】
高温シャットダウン剤は、0.1~5.0ミクロン、0.2~3.0ミクロン、0.3~1.0ミクロンなどの範囲の平均粒径を有する微粒子であり得る。これらの粒子は、被覆されていても、被覆されていなくても、部分的に被覆されていてもよい。
【0058】
いくつかの好ましい態様において、高温シャットダウン剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)またはポリビニリデンジフルオリド(PVdF)を含む粒子であり得る。これらの粒子は、被覆されていても、被覆されていなくても、または部分的に被覆されていてもよい。例えば、それらは、本明細書に開示されるようにラテックスおよび/または高分子結合剤で被覆されてもよい。いくつかの態様において、これらの被覆粒子は、上記のように低温シャットダウン剤で被覆されている。
【0059】
本出願の発明者らは、特に安全性の観点から、本明細書に記載の高温シャットダウン剤を含むコーティング組成物を使用して電池セパレータを被覆すると、より優れたセパレータが得られることを見出した。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、この改善された安全性は、本明細書においてさらに議論されるシャットダウン・ウインドウを、被覆されていないセパレータ、または被覆層が高温シャットダウン剤を含まない被覆セパレータと比較して高温に拡大することからもたらされると考えられる。
【0060】
(4)任意の添加成分
別の側面において、以下の追加成分のうちの1つ以上が任意選択で添加される:界面活性剤、酸化防止剤、充填剤、着色剤、安定化剤、消泡剤、脱泡剤、増粘剤、乳化剤、pH緩衝剤、乳化剤、界面活性剤、沈降防止剤、レベリング剤、レオロジー調整剤、および湿潤剤からなる。これらの任意選択される追加成分のうちの2つ以上、3つ以上、4つ以上などもまた、本明細書に記載のコーティング組成物に添加することができる。
【0061】
セパレータ
別の側面において、多孔質基材および多孔質基材の少なくとも片面上に形成された被覆層を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなるセパレータが本明細書に記載される。本明細書のいくつかの態様による片面被覆セパレータおよび両面被覆セパレータを図4に示す。
【0062】
被覆層は、上記のコーティング組成物のうちのいずれか1つを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になるか、および/またはそれから形成され得る。被覆層は、湿式、乾式、架橋された、架橋されていない等であってもよい。被覆はPVD層の上に適用されてもよく、またはPVD層は被覆の上に適用されてもよい。被覆は接着剤層の上に適用されてもよく、または接着剤層は被覆の上に適用されてもよい。
【0063】
本明細書に記載の新規のおよび/または改良されたセパレータは、以下の特徴または改
良のうちの1つまたは複数を有するかまたは示すことができる。(1)SEMによって観察され測定される望ましいレベルの多孔度;(2)透過性を示すのに望ましいガーレー数;(3)望ましい厚さ;(4)コーティングが既知のコーティングと比較して改良されるような、高分子結合剤の所望のレベルの合体;(4)コーティングがどのように混合されるか、コーティングが基材にどのように適用されるか、およびコーティングが基材上でどのように乾燥されるかを含むがこれらに限定されない、被覆セパレータの加工に起因する所望の特性;(5)例えば、ホットチップホール伝播研究における望ましい挙動によって示されるような改善された熱安定性;(6)リチウムイオン電池などのリチウム電池に使用するときの減少された収縮率;(7)コーティング中の耐熱性粒子間の接着性の向上;(8)コーティングと基材との間の接着力の向上;(9)被覆セパレータと電池の一方または両方の電極との間の改善された接着性、および/または(10)改良されたピン除去力および/または摩擦係数。改良された被覆セパレータのこれらの目的および他の関連する属性は、本出願の他の部分においてより詳細に記載される。
【0064】
新規のおよび/または改良された被覆セパレータは、優れた品質および均一性を有し得、したがって良好な製造歩留まりを提供する。新規のおよび/または改良された被覆セパレータは、改良された容量および改良されたサイクル性能を有する電池を提供することができる。それは他の既知の被覆セパレータよりも少ない欠陥、例えばより少ないゲル欠陥、および/またはより少ないクレーター欠陥を有し得る。改良されたおよび/または被覆されたセパレータは、多孔質基材への接着に対して改良された被覆を有し得る。接着強度は、10N/m超、12N/m超、14N/m超、16N/m超、18N/m超、または20N/m超であり得る。
【0065】
新規のおよび/または改良された被覆多孔質基材(またはセパレータ)は、特に多孔質基材自体(例えば、被覆されていない多孔質基材またはセパレータ)のシャットダウン・ウインドウと比較して、拡大されたシャットダウン・ウインドウを示すことによって安全性も向上し得る。本明細書に開示されている新規のおよび/または改良されたセパレータの拡大されたシャットダウン・ウインドウは、基材自体に対する約130℃から175℃のウインドウと比較して、約80℃から約200℃の間に拡大する。新規のおよび/または改良された基材の拡大されたシャットダウン・ウインドウもまた安定しており、例えば、ウインドウ全体にわたってセパレータの両端間に一定または比較的一定の抵抗が測定される。例えば、いくつかの態様において、セパレータの両端間で測定された抵抗は、ウインドウ全体にわたって10,000オーム/cm超のままである。
【0066】
これは安定していると考えられる。時には、セパレータの両端間の測定された抵抗は、本明細書に開示されている新規のおよび/または改良されたセパレータの拡大されたシャットダウン・ウインドウにわたって100,000オーム/cmにも達する。本明細書に開示されている新規のおよび/または改良されたセパレータの初期シャットダウンもまた迅速である。時には、初期シャットダウン時に、温度が1~5℃上昇するにつれて、セパレータの両端間で測定された抵抗が10Ω/cm未満から10,000Ω/cmを超えるまで上昇する。例えば、抵抗値は120℃で5オーム/cmから125℃で10,000オーム/cmを超えるまでになる。抵抗のこの増加が起こるためには、わずか4、3、2、または1度の温度上昇が必要な場合がある。
【0067】
好ましいサーマルシャットダウン特性は、より低いオンセット温度または開始温度、より速いまたはより迅速なシャットダウン速度、および持続的な、一貫した、より長い、またはより拡大したサーマルシャットダウン・ウインドウである。好ましい態様において、シャットダウン速度は、最低でも2000オーム(Ω)・cm2/秒または2000オーム(Ω)・cm2/度であり、セパレータの両端間の抵抗は、シャットダウン時に最低2桁増加する。シャットダウン性能の一例を図5に示す。
【0068】
本明細書に記載されるようなシャットダウン・ウインドウは、一般に、シャットダウンの開始またはオンセットから、例えば、セパレータがその孔を閉鎖するのに十分なほど融解し始め、例えば、アノードとカソードとの間のイオン流の停止または減速をもたらし、および/またはセパレータの両端間の抵抗が増加し、セパレータが分解し始める時間/温度まで、例えば、分解してイオン流を再開させ、および/またはセパレータ両端間の抵抗を減少させる時間/温度まで広がる時間/温度のウインドウを指す。本明細書に記載の拡大シャットダウン・ウインドウの一例を図6に示す。
【0069】
図6は、本明細書に記載の態様による被覆多孔質基材のシャットダウン・ウインドウが、例えば本明細書に記載のコーティング組成物の1つで被覆する前に多孔質基材自体のシャットダウン・ウインドウと比較して広がることを示す。シャットダウンの開始またはオンセットは、被覆されていない多孔質基材については約135℃で起こり、被覆後、より早く起こる。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、これは、本明細書に記載の低温シャットダウン剤を本明細書に記載のコーティング組成物および/またはコーティングに添加することから生じ得る。低温シャットダウン剤は、多孔質基材の前に融解し、その孔を充填するかまたは部分的に充填し、早期(低温)のシャットダウン開始を引き起こし得る。
【0070】
図6はまた、シャットダウンの期間が、被覆されていない多孔質基材における170℃から被覆後の約190℃まで拡大されることを示す。特定の理論に縛られることを望むものではないが、これは、本明細書に記載の高温シャットダウン剤を本明細書に記載のコーティングおよびコーティング組成物に添加することから生じ得る。高温シャットダウン剤は、多孔質基材自体よりも高い温度で劣化する可能性がある。本明細書に記載のある態様において、シャットダウン開始温度のみを下げ(ウインドウを広げる)、他の態様においては、シャットダウン・ウインドウの高温終点だけを上げ(ウインドウを広げる)、いくつかの態様において、例えば、図6に示されるように、シャットダウン・ウインドウの上部および下部が拡大される。
【0071】
シャットダウンは、温度の関数としてセパレータ膜の電気抵抗を測定する電気抵抗試験を使用して測定することができる。電気抵抗(ER)は、電解質を充填したセパレータの抵抗値(Ω・cm2)として定義される。電気抵抗(ER)試験中の温度は、毎分1~10℃の割合で上昇させる。サーマルシャットダウンが電池セパレータ膜で起こると、ERは約1,000から10,000オーム・cmのオーダーの高レベルの抵抗に達する。サーマルシャットダウンの開始温度が低いこととシャットダウン温度の持続時間が長くなることとの組み合わせによって、持続的なシャットダウン・ウインドウが増大する。サーマルシャットダウン・ウインドウを広くすると、熱暴走の可能性や火災や爆発の可能性を減らすことによって電池の安全性を改善することができる。
【0072】
セパレータのシャットダウン性能を測定するための1つの例示的な方法は以下の通りである:1)それを飽和させるために数滴の電解液をセパレータの上に置き、そしてセパレータを試験セルの中に入れる。2)加熱プレスが50℃以下であることを確認し、もしそうであれば、試験セルをプラテンの間に置き、試験セルに軽い圧力だけがかかるようにプラテンをわずかに圧縮する(Carver「C」圧縮の場合は<50ポンド)。;3)試験セルをRLCブリッジに接続し、温度と抵抗の記録を始める。安定したベースラインが達成されたら、温度コントローラを使用して10℃/分で加熱プレスの温度を上昇させ始める。4)最高温度に達したとき、またはセパレータのインピーダンスが低い値に低下したときに、加熱プラテンをオフにする。5)プラテンを開けて試験セルを取り出す。試験セルを冷ます。セパレータを取り外して処分する。
【0073】
(1)多孔質基材
本明細書に記載のセパレータに使用される多孔質基材はそれほど限定されず、本明細書に記載の目的と矛盾しない任意の多孔質基材であり得る。例えば、多孔質基材は、電池セパレータとして使用することができる任意の多孔質基材であり得る。多孔質基材は、マクロ多孔質基材、メソ多孔質基材、ミクロ多孔質(微多孔)基材、またはナノ多孔質基材であり得る。いくつかの好ましい態様において、多孔質基材の多孔度は、20から90%、40から80%、50から70%などである。多孔度は、ASTM D-2873を用いて測定され、基材の縦方向(MD)および横方向(TD)で測定された、多孔質基材の領域内の空隙、例えば細孔の割合として定義される。いくつかの態様において、多孔質基材は、0.5~1000秒のJISガーレー、いくつかの態様では100~800秒のJISガーレー、他の態様では200~700秒のJISガーレー、他の態様ではそれは300~600秒である。ガーレーは、本明細書では日本工業規格(JIS Gurley)
として定義され、本明細書ではOHKEN透過性試験機を使用して測定される。JIS
Gurleyは、100ccの空気が4.9インチの水の一定圧で1平方インチのフィルムを通過するのに必要な時間(秒)として定義される。いくつかの態様において、細孔は円形、例えば0.25~8.0の球形度係数、長円形、または楕円形などである。
【0074】
多孔質基材の材質は、特に限定されない。多孔質基材に使用されるポリマーは熱可塑性ポリマーとして特徴付けることができる。これらのポリマーは半結晶性ポリマーとしてさらに特徴付けることができる。一態様において、半結晶性ポリマーは、20~80%の範囲の結晶化度を有するポリマーであり得る。そのようなポリマーは、以下の群から選択することができる:ポリオレフィン、フルオロカーボン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール(またはポリオキシメチレン)、ポリスルフィド、ポリビニルアルコール、それらのコポリマー、およびそれらの組み合わせ。
【0075】
ポリオレフィンは、ポリエチレン(LDPE、LLDPE、HDPE、UHMWPE)、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、それらのコポリマー、およびそれらのブレンドを含み得る。フルオロカーボンは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、パーフルオロアルコキシ(PFA)樹脂、それらのコポリマー、およびそれらのブレンドを含み得る。ポリアミドは、ポリアミド6、ポリアミド6/6、ナイロン10/10、ポリフタルアミド(PPA)、それらのコポリマー、およびそれらのブレンドを含み得るが、これらに限定されない。ポリエステルは、ポリエステルテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ-1-4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、および液晶ポリマー(LCP)を含む。ポリスルフィドとしては、ポリフェニルスルフィド、ポリエチレンスルフィド、それらのコポリマー、およびそれらのブレンドを含むが、これらに限定されない。ポリビニルアルコールとしては、エチレンビニルアルコール、それらのコポリマー、およびそれらのブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、多孔質基材は、ポリオレフィン(PO)、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アラミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリマーブレンド、ポリマー、コポリマー、およびそれらのブロックポリマーを含むポリマー複合材料(無機充填剤Al、SiOなどとの)、およびそれらのブレンド、混合物またはそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0076】
多孔質基材は他の成分を含んでもよい。例えば、これらの成分は、充填剤(多孔質基材のコストを下げるために使用されるが、そうでなければ多孔質基材の製造またはその物理
的性質に大きな影響を及ぼさない不活性粒子)、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、潤滑剤(製造を容易にするため)などを含み得る。
【0077】
多孔質基材の特性を変性または増強させるために、ポリマーにさまざまな材料を添加することができる。そのような材料には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる。(1)130℃未満の融解温度を有するポリオレフィンまたはポリオレフィンオリゴマー。(2)鉱物充填剤としては、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、珪藻土、タルク、カオリン、合成シリカ、マイカ、粘土、窒化ホウ素、二酸化ケイ素、二酸化チタン、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなど、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。(3)エラストマーとしては、エチレン-プロピレン(EPR)、エチレン-プロピレン-ジエン(EPDM)、スチレン-ブタジエン(SBR)、スチレンイソプレン(SIR)、エチリデンノルボルネン(ENB)、エポキシ、およびポリウレタンおよびそれらのブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。(4)湿潤剤としては、エトキシル化アルコール、第一級ポリマーカルボン酸、グリコール(例えば、ポリプロピレングリコールおよびポリエチレングリコール)、官能化ポリオレフィンなどが挙げられるが、これらに限定されない。(5)潤滑剤、例えば、シリコーン、フルオロポリマー、オレアミド、ステアラミド、エルカミド、ステアリン酸カルシウム、または他のステアリン酸金属塩。(6)難燃剤、例えば臭素系難燃剤、リン酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、アルミナ三水和物、リン酸エステル。(7)架橋剤またはカップリング剤。(8)ポリマー加工助剤。(9)ポリプロピレン用のβ核剤を含むあらゆる種類の核剤。β造核ポリプロピレンは、米国特許第6,602,593号に開示されている。ポリプロピレン用のベータ造核剤は、ポリプロピレン中にベータ結晶を生成させる物質である。
【0078】
いくつかの態様において、多孔質基材は、1つ以上のプライを含む単層、各層が1つ以上のプライを含むことができる2層、または各層が1つ以上のプライを含むことができる多層多孔質基材である。多孔質基材が多層多孔質基材である場合、それは3~10層、4~9、5~8、または6~7層を含み得る。いくつかの多層態様において、多孔質基材は、大部分(50%を超えるポリマー成分)のPPを含むポリプロピレン(PP)層、大部分のPEを含むポリエチレン層(PE)、および大部分のPPを含む別のPP層をその順序で含む。他の態様では、多層多孔質基材は、大部分のPEを含むPE層、大部分のPPを含むPP、および大部分のPEを含む別のPE層をこの順序で含む。PPまたはPEの大部分を含む層は、ポリマー成分の50%を超え100%までの量のそれぞれPPまたはPEを含むことができる。
【0079】
多孔質基材は、湿式製造法、乾式製造法、粒子延伸製造法、およびβ造核二軸配向(BN-BOPP)製造法のいずれか1つによって製造することができる。多孔質基材は、例えば、ノースカロライナ州シャーロットのCelgard LLCの乾式延伸プロセス(Celgard(登録商標)乾式延伸プロセスとして知られる)によって製造し得る。多孔質基材は、ノースカロライナ州シャーロットのCelgard LLCから入手可能な任意のポリオレフィン微多孔セパレータ膜であり得る。あるいは、他の態様において、多孔質基材は湿式法によって製造することができ、これは時々相分離または抽出法として知られる、韓国のCelgard Korea社、日本の旭化成、および/または日本の東燃の溶媒および/または油の使用を含み得る。あるいは、他の態様において、多孔質基材は不織タイプの膜であり得る。
【0080】
おそらく好ましい多孔質基材は、乾式延伸法によって製造することができ、2μm未満の細孔を有する。微多孔基材は、例えば、それを貫通する複数の細孔を有する、薄くて柔軟なポリマーシート、ホイル、またはフィルムである。このような多孔質基材は、これらに限定されないが、物質移動膜、圧力調整器、濾過膜、医療機器、電気化学的貯蔵装置用
のセパレータ、燃料電池で使用するための膜などを含む多種多様な応用に使用できる。本明細書における多孔質基材は、おそらく好ましくは乾式延伸法(CELGARD法としても知られる)によって製造される。乾式延伸法は、孔形成が無孔性前駆体の延伸から生じる方法を言う。参照により本明細書に組み込まれる、Kesting, R., Synthetic Polymeric
Membranes, A structural perspective, Second Edition, John Wiley & Sons, New York, NY, (1985), pages 290-297を参照されたい。乾式延伸法は、上述のように湿式法および粒子延伸法とは区別される。
【0081】
一態様において、多孔質は、1)実質的にスリット、台形、または円形の孔を有し、2)横方向の引張強度に対する縦方向の引張強度の比が0.1~20、好ましくは0.5~10の範囲である乾式延伸多孔質基材であり得る。孔の形状に関しては、図1~5を参照のこと。図1~3の丸形の孔は、図4~5およびKestingの同書のスリット形状の孔とは
異なる。さらに、本多孔質基材の孔形状は、アスペクト比、すなわち孔の長さ対幅の比によって特徴付けることができる。本発明の多孔質基材の一態様において、円形の孔のアスペクト比は0.75から1.25の範囲である。これは、5.0より大きいスリット状の孔の乾式延伸膜のアスペクト比とは対照的である。横方向引張強度に対する縦方向引張強度の比に関して、1つの円形の孔の態様では、この比は0.5から5.0である。この比は、10.0より大きいスリット状細孔膜の対応する比とは異なる。
【0082】
機械方向(MD)および横方向(TD)の引張強度は、ASTM -882手順に従っ
てInstron Model 4201を用いて測定される。本多孔質基材はさらに以下のように特徴付けることができる。平均孔径が0.03~0.30ミクロン(μm)の範囲;20~80%の範囲の多孔度;および/または横方向引張強度が50より大きい、好ましくは100、より好ましくは250Kg/cmである。前述の値は例示的な値であり、限定することを意図するものではなく、したがって本多孔質基材を単に代表するものと見なすべきである。孔径は、Porous Materials,Inc.(PMI)から入手可能なAquaporeを使用して測定される。孔径はμmで表される。
【0083】
本発明の多孔質基材は、前駆体がMD延伸、TD延伸、二軸延伸(すなわち、MDだけでなくTD方向にも延伸)される乾式延伸法によって好ましくは製造される。このプロセスについては、以下でさらに詳しく説明します。
【0084】
一般に、前述の多孔質基材を製造するための方法は、非多孔質前駆体を押出し、次いで非多孔質前駆体をMD、TDまたは二軸延伸する工程を含む。任意選択で、無孔前駆体を延伸前にアニールしてもよい。一態様では、二軸延伸は、縦方向延伸と横方向延伸とを含み、同時に制御された縦方向緩和が行われる。縦方向延伸および横方向延伸は、同時または逐次であり得る。一態様において、縦方向延伸の後に横方向延伸が続き、同時に縦方向緩和が行われる。この逐次プロセスは、以下でさらに詳細に説明される。
【0085】
押出は一般的に慣用的である(慣用的とは乾式延伸法に対して慣用的なことをいう)。押出機はスロットダイ(平坦な前駆体用)または環状ダイ(パリソン前駆体用)を有することができる。後者の場合、膨張パリソン技術(例えばブローアップ比(BUR))を使用することができる。しかしながら、非多孔質前駆体の複屈折は、従来の乾式延伸法の場合ほど高くある必要はない。例えば、ポリプロピレン樹脂から>35%の多孔度を有する多孔質基材を製造するための従来の乾式延伸法では、前駆体の複屈折は>0.0130であるが、本発明の方法では、PP前駆体の複屈折は0.0100程度に低くなり得る。別の例では、ポリエチレン樹脂からの>35%の多孔率を有する多孔質基材、前駆体の複屈折は、>0.0280であり得るが、本発明の方法では、PE前駆体の複屈折は0.0240程度に低くなり得る。
【0086】
一態様では、アニーリング(任意選択)は、Tm-80℃~Tm-10℃(Tmはポリマーの融解温度である)の間の温度で実施することができる。他の態様では、Tm-50℃~Tm-15℃の間の温度である。ポリブテンのようないくつかの材料、例えば押出し後に高い結晶化度を有する材料は、アニーリングを必要としないかもしれない。
【0087】
縦方向延伸は、低温延伸または高温延伸またはその両方として、ならびに単一工程または複数工程として実施することができる。一態様において、冷延伸は<Tm-50℃で実施することができ、別の態様では<Tm-80℃で実施することができる。一態様において、熱延伸は<Tm-10℃で実施することができる。一態様において、全機械方向延伸は50~500%の範囲内であり得、別の態様では100~300%の範囲内であり得る。縦方向延伸中に、前駆体は横方向に収縮することがある(従来)。MD延伸に続く横方向延伸は、好ましくは同時制御縦方向緩和を含む。これは、前駆体が横方向に延伸されると同時に、前駆体が縦方向に制御された方法で収縮(すなわち緩和)することを可能にすることを意味する。
【0088】
横方向延伸は、低温工程、高温工程、または両方の組み合わせとして実施することができる。一態様において、全横方向延伸は100~1200%の範囲内であり得、別の態様では200~900%の範囲内であり得る。一態様において、制御された縦方向緩和は、5~80%の範囲であり得、別の態様では、15~65%の範囲であり得る。一態様では、横方向延伸は多段階で実施することができる。横方向の延伸中、前駆体は縦方向に収縮してもしなくてもよい。多段横方向延伸の一態様では、第1横方向工程は、制御された縦方向緩和を伴う横方向延伸、続いて横方向および縦方向同時延伸、続いて横方向緩和および無縦方向延伸または緩和を含み得る。任意選択で、縦方向および横方向の延伸後の前駆体は、ヒートセット、追加のMDまたはTD延伸などに付されてもよい。
【0089】
いくつかの態様において、横方向(TD)引張強度に対する縦方向(MD)引張強度の比は、0.5~10.0、いくつかの態様において0.5~7.5、いくつかの態様において0.5~5.0である。機械方向(MD)および横方向(TD)の引張強度は、ASTM-882手順に従ってInstron Model 4201を使用して測定される。
【0090】
いくつかの態様において、多孔質フィルムは、400g/ミル以上の突刺強度を有する。穿刺強度は、ASTM D3763に基づくInstron Model 4442を用いて測定される。測定は、微多孔膜(例えば、多孔質基材またはフィルム)の幅の両端で行われ、および穿刺強度は、試験サンプルを穿刺するのに必要な力として定義される。
【0091】
(2)コーティング層
一側面において、被覆層はセパレータの最外被覆層であってもよく、例えば、その上に他の異なる被覆層が形成されていなくてもよく、または被覆層はその上に形成された少なくとも1つの他の異なる被覆層を有してもよい。例えば、いくつかの態様では、多孔質基材の少なくとも1つの表面上に形成されたコーティング層にわたるまたはその上に異なるポリマーコーティング層をコーティングすることができる。いくつかの態様では、その異なるポリマーコーティング層は、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)またはポリカーボネート(PC)のうちの少なくとも1つを含むか、それからなるか、または本質的にそれからなることができる。
【0092】
いくつかの態様において、コーティング層は、多孔質基材の少なくとも一方の面に既に適用されている1つ以上の他のコーティング層を覆って適用される。例えば、いくつかの態様では、多孔質基材に既に適用されているこれらの層は、無機材料、有機材料、導電性材料、半導電性材料、非導電性材料、反応性材料、またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つの薄い、非常に薄い、または超薄層である。いくつかの態様では、これらの層は
金属または金属酸化物含有層である。いくつかの好ましい態様において、金属含有層および金属酸化物含有層、例えば金属含有層に使用される金属の金属酸化物は、本明細書に記載のコーティング組成物を含むコーティング層が形成される前に多孔質基材上に形成される。時には、これらの既に適用された1つまたは複数の層の合計厚さは、5ミクロン未満、時には4ミクロン未満、時には3ミクロン未満、時には2ミクロン未満、時には1ミクロン未満、時には0.5ミクロン未満、時には0.1ミクロン未満、時には0.05ミクロン未満である。
【0093】
いくつかの態様において、上記のコーティング組成物から形成されるコーティング層の厚さは、約12μm未満、時には10μm未満、時には9μm未満、時には8μm未満、時には7μm未満であり、そして時には5μm未満である。少なくとも特定の選択された態様において、コーティング層は4μm未満、2μm未満、または1μm未満である。
【0094】
コーティング方法はそれほど限定されず、本明細書に記載のコーティング層は、例えば本明細書に記載のように、以下の少なくとも1つによって多孔質基材上にコーティングされ得る:押出コーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、印刷、ナイフコーティング、エアナイフコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、またはカーテンコーティング。コーティング工程は室温または高温で実施することができる。
【0095】
被覆層は、非多孔質、ナノ多孔質、微多孔質、メソ多孔質またはマクロ多孔質のいずれでもよい。コーティング層は、10,000以下、1,000以下、700以下、時には600以下、500以下、400以下、300以下、200以下、または100以下のJIS Gurleyを有することができる。無孔性コーティング層の場合、JIS Gu
rleyは800以上、1,000以上、5,000以上、または10,000以上(すなわち、「無限ガーレー」)であり得る。無孔性コーティング層の場合、乾燥時にコーティングは無孔性であるが、特に電解質で濡れたときに、優れたイオン伝導体である。
【0096】
複合体、車両または装置
複合体は、上記の任意のセパレータと、それと直接接触して設けられた1つ以上の電極、例えば、アノード、カソード、またはアノードとカソードとを含む。電極の種類はそれほど限定されない。例えば、電極は、リチウムイオン二次電池における使用に適したものであり得る。
本明細書のいくつかの態様によるリチウムイオン電池を図7に示す。
【0097】
適切なアノードは、372mAh/g以上、好ましくは700mAh/g以上、最も好ましくは1000mAh/g以上のエネルギー容量を有することができる。アノードは、リチウム金属箔またはリチウム合金箔(例えば、リチウムアルミニウム合金)、またはリチウム金属および/またはリチウム合金と、炭素(例えば、コークス、グラファイト)、ニッケル、銅などの材料との混合物から構成される。アノードは、リチウムを含有する層間化合物またはリチウムを含有する挿入化合物のみから製造されるものではない。
【0098】
適切なカソードは、アノードと適合性のある任意のカソードであり得、そして層間(intercalation)化合物、挿入化合物、または電気化学的に活性なポリマーを含み得る。適
切な層間材料は、例えば、MoS、FeS、MnO、TiS、NbSe、LiCoO、LiNiO、LiMn、V13、V、およびCuClを含む。適切なポリマーとしては、例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、およびポリチオフェンを含む。
【0099】
上記の任意のセパレータは、完全にまたは部分的に電池式である任意の車両、例えば、
電気自動車、または装置、例えば、携帯電話またはラップトップに組み込むことができる。本発明のさまざまな目的を達成するために、本発明のさまざまな態様を説明した。これらの態様は本発明の原理の単なる例示であることを認識すべきである。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者には多数の変形および適応が容易に明らかとなろう。
【実施例0100】
(1)少なくとも以下のコーティング組成物が想定される
【0101】
表1
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
CJ:耐熱性粒子、ラクタムに由来するポリマーを、任意選択的に溶媒としての水、水性溶媒、または非水性溶媒と一緒に含むポリマー。
CM:耐熱性粒子およびPVAバインダー、任意選択的に溶媒としての水、水性溶媒、または非水性溶媒。
CS:アクリルバインダーを含む耐熱性粒子、任意選択的に溶媒としての水、水性溶媒、または非水性溶媒を含む
a:本明細書に記載の任意の架橋剤
b:本明細書に記載の任意の低温シャットダウン剤
c:本明細書に記載の任意の接着剤
d:本明細書に記載の任意の増粘剤
e:本明細書に記載の任意の摩擦低減剤
f:本明細書に記載の任意の高温シャットダウン剤
【0105】
(1)例示の改良されたシャットダウン態様
上述したように、低温シャットダウン剤および/または高温シャットダウン剤を添加することは、その被覆されていない対応物またはコーティングが低温シャットダウン剤および/または高温シャットダウン剤を含まない被覆された対応物と比較して、被覆セパレータのシャットダウン・ウインドウを拡大することができる。
【0106】
(a)例示的な一態様において、本明細書に記載のいくつかの態様による被覆電池セパレータ(本発明の実施例)を調製した。コーティング組成物は、CJおよび低温シャットダウン剤(b)としてポリエチレンビーズを含み、ポリプロピレン(PP)層、ポリエチレン(PE)層、およびポリプロピレン(PP)層を含む三層多孔質基材上に被覆された。この被覆電池セパレータのシャットダウン特性を本明細書に記載の電気抵抗試験に従って評価し、三層多孔質基材自体(すなわち、被覆されていない比較例)と比較した。結果を図8に示す。図8は、比較例のシャットダウン・ウインドウが約125℃から約175℃であることを示している。コーティングが適用されると、シャットダウン・ウインドウの下端点は約125℃から約95℃にシフトし、すなわち約30℃シフトする。発明の実施例と比較例のシャットダウン・ウインドウの上限はほぼ同じである。したがって、全体として、本発明の実施例のシャットダウン・ウインドウはほぼ30℃拡大され、その結果、より安全な電池セパレータが得られる。
【0107】
(b)別の例示的な態様において、そのコーティングが、CJおよび高温シャットダウン剤(f)としてPVDFを含むコーティングされたセパレータ(本発明の実施例)が調製
される。本実施例の多孔質基材は、上記実施例2(a)に記載のものと同じである。このコーティングされたセパレータ(本発明の実施例)のシャットダウン・ウインドウを、本明細書に記載の電気抵抗試験に従って評価し、コーティングされていない三層多孔質基材またはセパレータ(比較例)と比較した。結果を図9に示す。この態様において、本発明の実施例のシャットダウン・ウインドウは約5℃低下し、シャットダウン・ウインドウの上限点は>180℃に拡大され、例えば、>180℃の温度で10,000Ω・cm2を超える抵抗が得られ、非常に安全な電池をもたらす。
【0108】
(c)別の例示的な態様において、PP-PE-PPおよびPE-PP-PEを含む多層(3層)多孔質基材に、CJおよびポリビニルピロリドン(PVP)を含むコーティング、例えば高温シャットダウン剤を多孔質基材の片面にコーティングすることによって2つの被覆セパレータを調製した。コーティングは3ミクロンの厚さであった。これらは本発明の実施例である。これらの被覆セパレータ(図10Bに示す本発明の実施例)のシャットダウン・ウインドウを、本明細書に記載の電気抵抗試験に従って評価し、それぞれPP-PE-PPおよびPE-PP-PEを含む非被覆多層(3層)多孔質基材と比較した(図10Aおよび図10Cに示す比較例)。片面コーティングされたPP-PE-PP多孔質基材および片面コーティングされたPE-PP-PE基材の両方について、190℃を超える拡大シャットダウン特性が観察された。
【0109】
(3)例示の改良された収縮態様
(a)本明細書に記載のコーティング組成物への少なくとも増粘剤および/または架橋剤の添加は、高温にてを含む、これらのコーティング組成物から作製されたコーティング層を含むセパレータの収縮率を減少させる。下記の表2において、CSのみ、CSおよびd(増粘剤)、ならびにCS、dおよびa(架橋剤)を含むコーティング組成物を調製した。これらの組成物において、CSおよび増粘剤はこれらの組成物において同一である。CSと増粘剤
【0110】
収縮率は縦方向(MD)および横方向(TD)の両方向で測定され、%MD収縮率および%TD収縮率として表される。「180℃で10分間」の試験については、サンプルを180℃のオーブンに10分間入れ、次いで「150℃で1時間」の試験について上述したように試験する。「180℃で20分間」の試験については、サンプルを180℃で20分間オーブンに入れ、次いで「150℃で1時間」の試験について上述したように試験する。収縮率は、片面コート多孔質基材または両面コート多孔質基材について測定することができる。
【0111】
厚さは、Emveco Microgage 210-Aマイクロメートル厚さテスターおよび試験手順ASTM D374を使用して、マイクロメートル(μm)で測定される。
【0112】
表2
【表4】
【0113】
(4)例示の改良コーティング層の電極への接着態様
上述したように、本明細書に記載のコーティング組成物に接着剤を添加すると、電極、例えばアノードへのコーティング層の接着性が増大する。
(a)上記セクション2(b)で調製したものと同一の本発明の実施例を調製した。この実施例のコーティング層のアノードへの接着を本明細書に記載のように評価した。結果を図11に示す。図11は、多くの電極材料、すなわちアノードからのものがセパレータに転写されたことを示し、コーティング層とアノードとの間の良好な接着を示している。
【0114】
(5)多孔質基板への改良されたコーティング層の接着の例示の態様
上述したように、本明細書に記載のコーティング組成物に接着剤を添加すると、多孔質基材を前処理することなく、コーティング層の多孔質基材への接着が増大する。
【0115】
(6)改良されたピン除去力の例示の態様
上述したように、例えば、本明細書に記載のコーティング組成物への摩擦低減剤の添加は、コーティング層(およびそのようなコーティング層を含むセパレータ)のピン除去力を改良し得る。
上記セクション2(c)からの発明実施例(発明実施例、すなわち片面被覆PP-PE-PP多孔質基材および片面被覆PE-PP-PE多孔質基材)を非被覆PP-PE-PP多孔質基材(対照)と比較した。本明細書に記載のピン除去試験を3回行い、3つのデータ点を収集し、データを以下の表3に報告する。
【0116】
表3
【表5】
【0117】
(7)改良されたホットチップ試験の例示の態様
上述したように、本明細書に開示されたセパレータは、例えばホットチップホール伝播研究における望ましい挙動によって示されるように、改善された熱安定性を有する。ホットチップ試験は、点加熱条件下でのセパレータの寸法安定性を測定する。試験は、セパレータを熱はんだごての先端部と接触させ、結果として生じる穴を測定することを含む。より小さな穴がより望ましい。
【0118】
(a)上記のセクション2(c)からの態様についてホットチップ試験を行った。結果を以下の表4および図12に報告する。片面被覆PE-PP-PEおよびPP-PE-PP基材(発明の実施例)は、非被覆PP-PE-PP多孔質基材である非被覆対照(対照)よりも良好に(より小さい孔)性能を発揮することが分かった。
【0119】
表4
【表6】
【0120】
セパレータ上の選択された酸化アルミニウムコーティングは、物理的蒸着(PVD)プロセスによって製造することができる。他の従来のコーティング技術に対するPVDプロセスの主な利点は以下の通りである:
・ロールツーロール製造;数百メートル/分の製造が可能
・完全被覆を伴う均質な、均一コーティング
・欠陥が少ないかない無結合剤コーティング
・数ナノメートルからミクロン厚さの厚さ調節が可能
【0121】
図13を参照すると、本発明のセパレータ20の一例が示されている。セパレータ20は、セラミック複合層またはコーティング22およびポリマー微多孔層24を含む。セラミック複合層は、少なくとも、収縮、酸化、電子的短絡(例えば、アノードとカソードの直接または物理的接触)を防ぐか、および/または樹状突起成長の阻止に適している。ポリマー微多孔層は、通常条件下でアノードとカソードとの直接または物理的接触を少なくとも防止し、および/または所望の電池性能を支持し、および/または高温でのアノードとカソードの間のイオン伝導度(または流れ)を遮断するのに適し得るか、好ましくは適し、熱暴走を防止または停止する。
【0122】
典型的な操作条件下でセパレータ20のセラミック複合体層22は、アノードとカソードとの間にイオン流を可能にするのに十分なほど導電性でなければならず、その結果、所望の量の電流がセルによって発生し得る。層22と24は互いによく接着するべきであり、すなわち意図しない分離は起こらないはずである。層22および24は、ラミネーション、共押出、PVD、またはコーティングプロセスによって形成することができる。セラミック複合体層22は、0.001ミクロン~50ミクロンの範囲、好ましくは0.01ミクロン~25ミクロンの範囲、より好ましくは0.50ミクロン~10ミクロンの範囲の厚さを有するコーティングまたは別個の層であってもよい(セパレータは両面コーティングされている場合、おそらく好ましくは各面に0.25ミクロン~5ミクロンの範囲である)。ポリマー微多孔層24は、1ミクロン~50ミクロンの範囲、好ましくは2ミクロン~25ミクロンの範囲、より好ましくは3ミクロン~12ミクロンの厚さを有する好ましくは別個の膜である。セパレータ20の全体の厚さは、1ミクロン~100ミクロンの範囲、好ましくは2ミクロン~50ミクロンの範囲、より好ましくは3ミクロン~25ミクロンの範囲である。
【0123】
セラミック複合体層22は、無機粒子またはセラミック粒子などの粒子28がそこを通して分散しているマトリックス材料または結合剤26を含む。セラミック複合体層22は多孔質または非多孔質である(いくつかのマトリックスまたは結合剤材料は電解質中で膨潤およびゲル化し、乾式セパレータが湿潤または湿潤前に高いガーレーを有する場合でも(1,000または10,000ガーレーでさえ)イオンを輸送することができ、そして層22のイオン伝導度は、主に、多孔度、電解質、マトリクス材料26、および粒子28の選択に依存する。層22のマトリクス材料26または粒子28はそれぞれ、樹状突起の成長を防止し、電極を高温で離間させておくことによって電子短絡をある程度防止するセパレータの一成分であることができる。マトリクス材料26は、さらに、ゲル電解質またはポリマー電解質としても作用し得る(例えば、電解質塩を担持する)。マトリクス材料26は、好ましくは約0.5~95重量%のセラミック複合体層22を含み、無機粒子28は好ましくは約5~95.5重量%の当該層22を形成する。好ましくは、複合体層22は、10重量%~99重量%の無機粒子を含有する。最も好ましくは、複合体層22は、20重量%~98重量%の無機粒子を含有する。
【0124】
マトリクス材料26は、溶媒またはPVDF、アクリル、ポリアミド、および/またはリチウムポリマー電池または固体電解質電池での使用が提案されている任意のゲル形成ポ
リマー、それらのコポリマー、およびそれらの組み合わせ、コポリマー、ブレンド、またはそれらの混合物などの水性系ポリマーまたは結合剤など、イオン伝導性または非伝導性であり得る。マトリクス材料26は、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリテトラエチレングリコールジアクリレート、それらのコポリマー、および混合物から選択し得る。好ましいマトリクス材料はPVDFおよび/またはPEOおよびそれらのコポリマーである。PVDF共重合体としては、PVDF:HFP(ポリフッ化ビニリデン:ヘキサフルオロプロピレン)、およびPVDF:CTFE(ポリフッ化ビニリデン:クロロトリフルオロエチレン)が含まれる。最も好ましいマトリクス材料としては、23重量%未満のCTFEを有するPVDF:CTFE、28重量%未満のHFPを有するPVDH:HFP、任意の種類のPEO、およびそれらの組み合わせ、ブレンド、混合物またはコポリマーが含まれる。
【0125】
無機粒子28は、通常、非導電性であると考えられるが、これらの粒子は、電解質と接触すると、セパレータ20の導電性を改善する(抵抗を減少させる)導電性または超導電性表面を発達させる。無機粒子は、例えば、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、ベーマイト、カオリン、粘土、硫酸バリウム、炭酸カルシウム(CaCO)、二酸化チタン(TiO)、SiS、SiPOなど、またはそれらの組み合わせ、ブレンドまたは混合物から選択される。好ましい無機粒子は、ベーマイト、カオリン、SiO、Al、硫酸バリウム、および/またはCaCOであり得る。粒子は、0.001ミクロン~25ミクロンの範囲、好ましくは0.01ミクロン~2ミクロンの範囲、最も好ましくは0.05ミクロン~0.5ミクロンの範囲の平均粒径を有し得る。
【0126】
微多孔ポリマー層24は、数種類の微多孔膜(例えば単層または多層)、シート、フィルムまたは層のいずれでもよく、例えばノースカロライナ州シャーロットのCelgard LLC
、日本、東京の旭化成などによって製造されている微多孔性ポリオレフィン製品である。層24は、10~90%の範囲、好ましくは20~80%の範囲の多孔度を有することができる。層24は、0.001~2ミクロンの範囲、好ましくは0.05~0.5ミクロンの範囲の平均孔径を有し得る。層24は、5~150秒、好ましくは10~80秒の範囲のガーレー数を有することができる。(ガーレー数は、12.2インチの水で10ccの空気が1平方インチの膜を通過するのにかかる時間を言う。)層24は、好ましくはポリオレフィン系である。好ましいポリオレフィンとしては、ポリエチレンおよびポリプロピレン、あるいはそれらの組み合わせ、ブレンド、コポリマー、ブロックコポリマー、または混合物が含まれる。
【0127】
本発明のさまざまな態様を、本発明の様々な目的を達成するために記載した。これらの態様は本発明の原理の単なる例示であることを認識すべきである。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者には多数の変形および適応が容易に明らかとなるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2023-02-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子結合剤と、耐熱性粒子と、添加剤とを含むコーティング組成物であって、
前記高分子結合剤は、ポリビニルピロリドンを含み、
前記耐熱性粒子は、ポリイミド樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、フェノール樹脂粒子、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリジビニルベンゼン(PDVB)樹脂粒子、カーボンブラック粒子およびグラファイト粒子からなる群より選ばれる少なくとも1つを含み、
前記添加剤は、架橋剤、低温シャットダウ剤、接着剤、増粘剤、摩擦低減剤、および高温シャットダウン剤からなる群より選らばれる少なくとも1つを含む、コーティング組成物。
【請求項2】
前記高分子結合剤は、さらに、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、イソブチレンポリマー、アクリル樹脂およびラテックスからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコーティング組成物の層を有するセパレータを備える、二次リチウムイオン電池。
【請求項4】
請求項3に記載の二次リチウムイオン電池を備える、車両。