IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒルの特許一覧

特開2023-55732生物工学による組織のための組成物及び方法
<>
  • 特開-生物工学による組織のための組成物及び方法 図1
  • 特開-生物工学による組織のための組成物及び方法 図2
  • 特開-生物工学による組織のための組成物及び方法 図3
  • 特開-生物工学による組織のための組成物及び方法 図4
  • 特開-生物工学による組織のための組成物及び方法 図5
  • 特開-生物工学による組織のための組成物及び方法 図6
  • 特開-生物工学による組織のための組成物及び方法 図7
  • 特開-生物工学による組織のための組成物及び方法 図8
  • 特開-生物工学による組織のための組成物及び方法 図9
  • 特開-生物工学による組織のための組成物及び方法 図10
  • 特開-生物工学による組織のための組成物及び方法 図11
  • 特開-生物工学による組織のための組成物及び方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055732
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】生物工学による組織のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20230411BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20230411BHJP
   C12N 5/077 20100101ALI20230411BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20230411BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C12N5/071
C12N5/077
C12N5/0775
C12Q1/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023003763
(22)【出願日】2023-01-13
(62)【分割の表示】P 2018557094の分割
【原出願日】2017-05-05
(31)【優先権主張番号】62/335,013
(32)【優先日】2016-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/586,061
(32)【優先日】2017-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501345323
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF NORTH CAROLINA AT CHAPEL HILL
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ハンソン、アリエル ドーン
(72)【発明者】
【氏名】ヤマウチ、ミツオ
(72)【発明者】
【氏名】ウォティエ、エリアーヌ リュシー
(72)【発明者】
【氏名】ディン、ティモシー アン-ヒエウ
(72)【発明者】
【氏名】セスーパティ、プラビーン
(72)【発明者】
【氏名】リード、ローラ エム.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】生物工学による組織又はマイクロ臓器を作製及び使用するための組成物、キット及び方法並びにその産生のために構成された容器を提供する。
【解決手段】生物工学による組織を生成するための容器であって、前記生成は、上皮細胞及び間葉細胞をバイオマトリクス足場に導入することを含み、前記バイオマトリクス足場はコラーゲンを含む、容器である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物工学による組織を生成するための容器であって、前記生成は、上皮細胞及び間葉細胞をバイオマトリクス足場に導入することを含み、前記バイオマトリクス足場はコラーゲンを含む、容器。
【請求項2】
前記上皮細胞及び前記間葉細胞が成熟系譜のパートナーである、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記上皮細胞及び前記間葉細胞は播種培地中にあり、前記播種培地は初期培養期間後に分化培地と置き換えられる、請求項1に記載の容器。
【請求項4】
前記分化培地は、
a.基本培地、
b.脂質、インスリン、トランスフェリン、抗酸化剤、
c.銅、
d.カルシウム、
e.上皮細胞の増殖又は維持のための1つ以上のシグナル、及び/又は
f.間葉細胞の増殖又は維持のための1つ以上のシグナル
を含む、請求項3に記載の容器。
【請求項5】
前記播種培地は、血清を含まないか、又は場合により数時間にわたって約2%~10%の胎児血清が補給される、請求項3に記載の容器。
【請求項6】
前記播種培地は、
a.基本培地、
b.脂質、
c.インスリン、
d.トランスフェリン、
e.抗酸化剤
を含む、請求項3に記載の容器。
【請求項7】
前記播種培地中の前記上皮細胞及び前記間葉細胞は、前記バイオマトリクス足場に導入される前に前記播種培地中で4℃において4~6時間培養される、請求項3に記載の容器。
【請求項8】
前記バイオマトリクス足場が3次元である、請求項1に記載の容器。
【請求項9】
前記バイオマトリクス足場中の前記コラーゲンは、(i)新生コラーゲン、(ii)凝集しているが架橋されていないコラーゲン分子、(iii)架橋コラーゲンを含む、請求項1に記載の容器。
【請求項10】
前記播種培地中の前記上皮細胞及び前記間葉細胞は複数回のインターバルで導入され、各インターバルの後に静止時間が続く、請求項10に記載の容器。
【請求項11】
前記インターバルが約10分であり、また、前記静止時間が約10分である、請求項10に記載の容器。
【請求項12】
播種密度は、バイオマトリクス足場の湿式重量1グラム当たり細胞が最高で約1200万個であり、1回以上のインターバルで導入される、請求項10に記載の容器。
【請求項13】
前記播種培地中の前記上皮細胞及び前記間葉細胞すなわち非実質細胞は、1回以上のインターバルで約15ml/分の速度で導入される、請求項10に記載の容器。
【請求項14】
前記播種培地中の前記上皮細胞及び前記間葉細胞は10分のインターバルで導入され、その後にそれぞれ10分の静止時間が続く、請求項10に記載の容器。
【請求項15】
前記播種培地中の前記上皮細胞及び前記間葉細胞は、3回のインターバルの後、1.3ml/分の速度で導入される、請求項10に記載の容器。
【請求項16】
前記上皮細胞及び前記間葉細胞は、胎児又は新生児の臓器から単離された細胞を含む、請求項1に記載の容器。
【請求項17】
前記上皮細胞及び前記間葉細胞は、成体又は幼児のドナーから単離された細胞を含む、請求項1に記載の容器。
【請求項18】
前記上皮細胞及び前記間葉細胞は、
a.幹細胞、委任前駆細胞、2倍体成体細胞、倍数体成体細胞、及び/又は最終分化細胞のうちの1つ以上を含む上皮細胞、及び/又は
b.血管芽細胞、内皮細胞前駆体、成熟内皮細胞、星細胞前駆体、成熟星細胞、間質細胞前駆体、成熟間質細胞、平滑筋細胞、造血細胞前駆体、及び/又は成熟造血細胞のうちの1つ以上を含む間葉細胞
を含む、請求項1に記載の容器。
【請求項19】
前記上皮細胞及び前記間葉細胞は、
a.胆管幹細胞、胆のう由来幹細胞、肝幹細胞、肝芽細胞、委任肝細胞及び胆汁前駆細胞、axin2+前駆細胞(例えば、axin2+肝前駆細胞)、成熟実質細胞(例えば、肝細胞、胆管細胞)、膵幹細胞、及び膵委任前駆細胞、島細胞、及び/又は腺房細胞のうちの1つ以上を含む上皮細胞、及び/又は
b.血管芽細胞、星細胞前駆体、星細胞、間葉幹細胞、周皮細胞、平滑筋細胞、間質細胞、内皮細胞前駆体、内皮細胞、造血細胞前駆体、及び/又は造血細胞のうちの1つ以上を含む間葉細胞
を含む、請求項1に記載の容器。
【請求項20】
前記上皮細胞は、胆管、肝臓、すい臓、肝-膵共通管、及び/又は胆のう由来の幹細胞及びその子孫のうちの1つ以上を含み、かつ/あるいは、前記間葉細胞は、血管芽細胞、内皮細胞及び星細胞の前駆体、間葉幹細胞、星細胞、間質細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、骨髄由来幹細胞、造血細胞前駆体、及び/又は造血細胞のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の容器。
【請求項21】
前記上皮細胞及び前記間葉細胞は、それぞれ約80%の上皮細胞と約20%の間葉細胞とからなる、請求項1に記載の容器。
【請求項22】
前記上皮細胞及び前記間葉細胞は、少なくとも50%の幹細胞及び/又は前駆体細胞を含む、請求項1に記載の容器。
【請求項23】
前記上皮細胞及び前記間葉細胞は、最終分化肝細胞及び/又は膵細胞を全く含まない、請求項1に記載の容器。
【請求項24】
前記バイオマトリクス足場は、1つ以上のコラーゲン関連マトリクス構成成分を含み、コラーゲン関連マトリクス構成成分には、ラミニン、ナイドジェン、エラスチン、プロテオグリカン、ヒアルロナン、非硫酸化グリコサミノグリカン、硫酸化グリコサミノグリカン、前記マトリクス構成成分に関連した成長因子及び/又はサイトカインのうちの1つ以上が含まれる、請求項1に記載の容器。
【請求項25】
前記バイオマトリクス足場は、in vivoで見られるマトリクス結合シグナル伝達分子を20~50%超含む、請求項1に記載の容器。
【請求項26】
前記バイオマトリクス足場は、前記組織の血管樹のマトリクス残部を含み、かつ/あるいは、前記マトリクス残部は、前記生物工学による組織中の細胞の血管サポートを提供する、請求項1に記載の容器。
【請求項27】
細胞外マトリクスを含んだ3次元足場であって、さらに、(i)臓器で見られる天然コラーゲン及び/又は(ii)臓器で見られる血管樹のマトリクス残部を含む3次元足場。
【請求項28】
請求項1に記載の容器内で生成される3次元マイクロ臓器。
【請求項29】
天然肝臓に特有の帯状分布に依存した表現型形質を備え、前記表現型形質は、(a)幹細胞/前駆細胞、2倍体成体細胞、及び/又は関連する間葉前駆細胞の形質を有する門脈周囲領域、(b)成熟実質細胞及び成熟間葉細胞の類洞板の形質を有する細胞を含んだ中央腺房領域、及び/又は(c)最終分化上皮細胞の形質と、中心静脈の内皮につながった有窓内皮前駆細胞及び/又はaxin2+肝前駆細胞に関連したアポトーシス細胞の形質とを有する中心体周辺領域を包含する、生物工学による組織。
【請求項30】
前記表現型形質はさらに、前記門脈周囲領域の二倍体上皮細胞及び/又は間葉細胞に関連した形質を包含する、請求項29に記載の生物工学による組織。
【請求項31】
前記表現型形質はさらに、天然肝臓の前記中央腺房領域で見られる成熟上皮細胞及び/又は間葉細胞の形質を包含する、請求項29に記載の生物工学による組織。
【請求項32】
前記表現型形質はさらに、前記中心体周辺領域の上皮細胞若しくは実質細胞及び/又は間葉細胞の形質を包含する、請求項29に記載の生物工学による組織。
【請求項33】
さらに、(i)有窓内皮細胞と関連する倍数体肝細胞、及び/又は(ii)中心静脈の内皮につながった二倍体肝前駆細胞(例えば、axin2+細胞)を含む、請求項29に記載の生物工学による組織。
【請求項34】
前記門脈周囲領域には、肝幹細胞、肝芽細胞、委任前駆細胞、及び/又は二倍体成体肝細胞を含む幹細胞/前駆細胞ニッチの形質が豊富である、請求項29に記載の生物工学による組織。
【請求項35】
前記上皮細胞及び前記間葉細胞は、肝細胞及び/又は胆管細胞の前駆体及び/又は成熟形態から構成される上皮細胞をさらに含む、請求項29に記載の生物工学による組織。
【請求項36】
前記上皮細胞及び前記間葉細胞は、星細胞、周皮細胞、平滑筋細胞、間質細胞、内皮細胞、及び/又は造血細胞の前駆体及び/又は成熟形態から構成される間葉細胞をさらに含む、請求項29に記載の生物工学による組織。
【請求項37】
請求項29に記載の生物工学による組織から構成される3次元マイクロ臓器。
【請求項38】
請求項1に記載の容器内で生成される、請求項37に記載の3次元マイクロ臓器。
【請求項39】
添付使用説明書を含む、請求項1に記載の容器内でマイクロ臓器を培養するためのキット。
【請求項40】
請求項29に記載の生物工学による組織又は3次元マイクロ臓器に処置を施すことを含む、臓器の治療を評価する方法。
【請求項41】
上皮細胞及び間葉細胞の両者のための分化培地であって、
a.脂質、インスリン、トランスフェリン、抗酸化剤を含む基本培地、
b.銅、
c.カルシウム、
d.上皮細胞の増殖及び/又は維持のための1つ以上のシグナル、及び/又は
e.間葉細胞の増殖及び/又は維持のための1つ以上のシグナル
を含む、分化培地。
【請求項42】
前記基本培地がクボタ培地である、請求項41に記載の分化培地。
【請求項43】
1つ以上の脂質結合タンパク質をさらに含む、請求項41に記載の分化培地。
【請求項44】
前記1つ以上の脂質結合タンパク質が高密度リポタンパク質(HDL)である、請求項43に記載の分化培地。
【請求項45】
1つ以上の純脂肪酸をさらに含む、請求項41に記載の分化培地。
【請求項46】
前記1つ以上の純脂肪酸が、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、及び/又はリノレン酸を含む、請求項45に記載の分化培地。
【請求項47】
1つ以上の糖類をさらに含む、請求項41に記載の分化培地。
【請求項48】
前記1つ以上の糖類が、ガラクトース、グルコース、及び/又はフルクトースを含む、請求項47のいずれか1項に記載の分化培地。
【請求項49】
1つ以上のグルココルチコイドをさらに含む、請求項41に記載の分化培地。
【請求項50】
前記1つ以上のグルココルチコイドがデキサメタゾン及び/又はヒドロコルチゾンを含む、請求項49に記載の分化培地。
【請求項51】
天然すい臓に特有の帯状分布に依存した表現型形質を備え、かつ/あるいは、すい臓頭部の膵細胞に関連する帯状分布及び/又はすい臓尾部の膵細胞に関連する帯状分布を有する、生物工学による組織。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
生物工学による組織のための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づいて2016年5月11日出願の米国特許出願第62/335,013号及び2017年5月3日出願の米国特許出願第15/586,061号に係る優先権を主張するものであり、また、両出願の全体を参照として本明細書に組み込む。
【0003】
背景
発明の背景の以降の考察は、単に読み手が発明を理解するのを助けるために提示されたものであり、本発明に関する先行技術を説明又は構成することを認めるものではない。
【0004】
スフェロイド及びオルガノイド培養系並びに他の臓器モデル化手法は、天然組織で見られるものにより近い細胞の構成及び極性の形成を促進する。クローン細胞集団に完全に由来する培養は特定の利点を有するが、再生医療では、細胞極性と、上皮間葉相互作用と、細胞及びその機能を安定化するのに役立つ上皮間葉関係からのパラ分泌シグナルとからなる3次元構成の重要性に関する認識が高まっている。
【0005】
臓器及びオルガノイド組織を成長させる以前の方法は、血管サポート及び組織がないと多数の細胞を維持できないために最小規模のモデルに制限されるが、これはモデル臓器の血管組織学上の帯状分布を模倣しない。そのため、生物工学による組織を生成する拡張可能で安定した方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示の態様は、生物工学による組織又はマイクロ臓器を作製及び使用するための組成物、キット及び方法並びにその産生のために構成された容器に関する。
本開示の態様は、生物工学による組織を生成するための容器に関する。いくつかの実施形態において、前記生成は、上皮細胞及び/又は間葉細胞をバイオマトリクス足場の中又はその上に導入することを含む。いくつかの実施形態において、前記生成は、実質細胞及び/又は非実質細胞を導入することを含む。いくつかの実施形態において、前記細胞は互いの系譜段階のパートナー(lineage stage partners)である。本開示の態様は、細胞外マトリクスを含む3次元足場に関し、3次元足場はまた、(i)臓器で見られる天然コラーゲン及び/又は(ii)臓器で見られる血管樹のマトリクス残部を含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、バイオマトリクス足場はコラーゲンを含む。いくつかの実施形態において、バイオマトリクス足場は、(1)(i)新生コラーゲン、(ii)凝集しているが架橋していないコラーゲン分子、(iii)架橋コラーゲン、そして(iv)前記の様々な形態のコラーゲンに結合した因子(マトリクス構成成分、シグナル伝達分子、他の因子)、及び/又は(2)前記コラーゲンに結合したマトリクス分子及びシグナル伝達分子に加えて、組織で見られる架橋天然コラーゲン及び非架橋天然コラーゲンの両者の大部分を含む。いくつかの実施形態において、バイオマトリクス足場は3次元である。いくつかの実施形態において、バイオマトリクス足場は、1つ以上のコラーゲン関連マトリクス構成成分、例えば、ラミニン、ナイドジェン、エラスチン、プロテオグリカン、ヒアルロナン、非硫酸化グリコサミノグリカン、及び硫酸化グリコサミノグリカン、並びにマトリクス構成成分に関連した成長因子及びサイトカインを含む。いくつかの実施形態において、バイオマトリクス足場は、in vivoで見られるマトリクス結合シグナル伝達分子を50%超含む。いくつかの実施形態において、マトリクス結合シグナル伝達分子は、表皮成長因子(EGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、神経成長因子(NGF)、神経栄養因子、インターロイキン、白血病抑制因子(LIF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、幹細胞因子(SCF)、コロニー刺激細胞(CSF)、GM-CSF、エリスロポエチン、トロンボポエチン、ヘパリン結合性成長因子、IGF結合タンパク質、胎盤増殖因子、及びwntシグナルであってもよい。いくつかの実施形態において、バイオマトリクス足場は、組織の血管樹のマトリクス残部を含む。さらなる実施形態において、マトリクス残部は、生物工学による組織内で細胞の血管サポートを提供し得る。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記細胞が播種培地中にある場合、前記生成は、場合により、初期培養期間後に播種培地を分化培地と置換することを含んでもよい。いくつかの実施形態において、前記細胞が播種培地中にある場合、前記細胞は複数回のインターバルで導入され、各インターバルの後に静止時間が続く。いくつかの実施形態において、前記インターバルは約10分であり、また、静止時間は約10分である。いくつかの実施形態において、播種密度は、バイオマトリクス足場の湿式重量1グラム当たり細胞が約1200万個以下であり、1回以上のインターバルで導入される。いくつかの実施形態において、播種培地中の細胞は、約15ml/分の速度で1回以上のインターバルで導入される。いくつかの実施形態において、播種培地中の細胞は、10分のインターバルで導入され、各インターバルの後に10分の静止時間が続く。いくつかの実施形態において、播種培地中の細胞は、3回のインターバルの後、1.3ml/分の速度で導入される。
【0009】
いくつかの実施形態において、播種培地は、血清を含まない播種培地からなる。いくつかの実施形態において、播種培地には、血清、場合によりウシ胎児血清(FBS)などの約2%~10%の胎児血清が補給される。いくつかの実施形態において、(例えば、細胞懸濁液を調製するのに使用される酵素を不活性化するために)培地への血清補給が必要な場合がある。いくつかの実施形態において、この補給は数時間かけて行う。
【0010】
いくつかの実施形態において、播種培地は、基本培地、脂質、インスリン、トランスフェリン、及び/又は抗酸化剤を含む。いくつかの実施形態において、播種培地は、次の成分のうちの1つ以上を含んでもよい。基本培地、低カルシウム(0.3~0.5mM)、銅を含まない、亜鉛及びセレン、インスリン、トランスフェリン/fe、並びに1つ以上の純遊離脂肪酸(例えば、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸)であって、場合により純アルブミンと錯体を形成するもの、並びに高密度リポタンパク質(HDL)などの1つ以上の脂質結合タンパク質。いくつかの実施形態において、播種培地は、低酸素濃度レベル(1~2%)を使用しても、含んでも、又は維持していてもよい。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記細胞は、導入工程の前に播種培地中で4℃において4~6時間培養される。いくつかの実施形態において、前記細胞は、胎児又は新生児の臓器から単離されてもよい。いくつかの実施形態において、間葉細胞は、間質細胞、内皮細胞又は造血細胞である。いくつかの実施形態において、前記細胞は、成体又は幼児のドナーから単離され得る。いくつかの実施形態において、上皮細胞すなわち実質細胞は、胆管幹細胞、胆のう由来幹細胞、肝幹細胞、肝芽細胞、委任肝前駆細胞及び胆汁前駆細胞、axin2+前駆細胞(例えば、axin2+肝前駆細胞)、成熟実質細胞すなわち成熟上皮細胞、成熟肝細胞、成熟した胆管細胞、膵幹細胞、すい臓委任前駆細胞、島細胞のうちの任意の1つ以上であってもよく、かつ/あるいは、腺房細胞及び/又は間葉細胞すなわち非実質細胞は、血管芽細胞、星細胞前駆体、星細胞、間葉幹細胞、周皮細胞、平滑筋細胞、間質細胞、神経細胞前駆体、神経細胞、内皮細胞前駆体、内皮細胞、造血細胞前駆体、及び/又は造血細胞のうちのいずれか1つであってもよい。いくつかの実施形態において、上皮細胞すなわち実質細胞は、胆管、肝臓、胆のう、肝-膵共通管からの幹細胞及び/又はその子孫であってもよく、かつ/あるいは、間葉細胞すなわち非実質細胞は、血管芽細胞、内皮細胞前駆体及び/若しくは星細胞前駆体、間葉幹細胞、星細胞、間質細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、骨髄由来幹細胞、造血細胞前駆体、及び/又は造血細胞であってもよい。いくつかの実施形態において、上皮細胞すなわち実質細胞としては、分化した実質細胞、例えば、限定されないが、axin2+前駆細胞(例えば、axin2+肝細胞又は肝前駆細胞)、成熟細胞(例えば、成熟肝細胞、成熟胆管細胞)、倍数体細胞(例えば、媒数体肝細胞)及びアポトーシス細胞などを挙げることができる。いくつかの実施形態において、成熟細胞は、類洞内皮細胞と関連している可能性があり、そのうちのいくつかは、有窓間葉細胞(例えば、内皮細胞)であってもよい。いくつかの実施形態において、axin2+前駆細胞(例えば、axin2+肝前駆細胞)は、内皮細胞に繋留され得る。いくつかの実施形態において、上皮細胞又は実質細胞は、成熟島であって、場合により成熟内皮細胞と関連したもの、及び/又は成熟腺房細胞、並びに/あるいは場合により成熟間質細胞と関連したものである。いくつかの実施形態において、細胞の割合、つまり、上皮細胞対間葉細胞すなわち実質細胞対非実質細胞は、80%対20%である。いくつかの実施形態において、細胞は少なくとも50%が幹細胞及び/又は前駆細胞である。いくつかの実施形態において、細胞は、最終分化した肝細胞及び/又はすい臓細胞を含まない。いくつかの実施形態において、上皮細胞すなわち実質細胞は、幹細胞、委任前駆細胞、二倍体成体細胞、倍数体成体細胞、及び/又は最終分化細胞のうちの1つ以上であってもよく、かつ/あるいは、間葉細胞すなわち非実質細胞は、血管芽細胞、内皮細胞前駆体、成熟内皮細胞、間質細胞前駆体、成熟間質細胞、神経細胞前駆体及び成熟神経細胞、造血細胞前駆体、及び/又は成熟造血細胞のうちの1つ以上であってもよい。
【0012】
いくつかの実施形態において、細胞の組成物は、所望とする組織に応じて調整されてもよく、例えば、肝細胞は、生物工学による肝組織用に特定の割合で使用されてもよく、あるいは、すい臓細胞は、生物工学によるすい臓組織用に特定の割合で使用されてもよい。例えば、肝臓の場合、上皮細胞は、胆管、肝臓、肝-膵共通管、及び/若しくは胆のうからの幹細胞(例えば、胆管幹細胞)及びそれらの子孫、胆管幹細胞、胆のう由来幹細胞、肝幹細胞、肝芽細胞、委任肝細胞及び胆汁前駆細胞、axin2+前駆細胞(例えば、axin2+肝前駆細胞)、成熟肝細胞、及び/又は成熟胆管細胞のうちの1つ以上であってもよく、かつ/あるいは、間葉細胞すなわち非実質細胞は、血管芽細胞、星細胞前駆体、星細胞、間葉幹細胞、平滑筋細胞、間質細胞、内皮細胞前駆体、内皮細胞、造血細胞前駆体、及び/又は造血細胞のうちの1つ以上であってもよい。同様に、これらの同じ間葉細胞すなわち非実質細胞は、すい臓に使用されてもよく、かつ/あるいは、すい臓用の上皮細胞としては、胆管幹細胞(例えば、肝-膵共通管由来のもの)、すい臓幹細胞、すい臓委任駆細胞、島細胞や、胆管、肝-膵共通管由来の幹細胞及びその子孫、又はすい臓細胞及び/又は腺房細胞を挙げることもできる。さらなる実施形態において、肝臓の場合、最終分化した肝細胞は除外することができ、またすい臓の場合、最終分化したすい臓細胞は除外することができる。
【0013】
いくつかの実施形態において、分化培地を使用する場合、分化培地は、基本培地、脂質、インスリン、トランスフェリン、抗酸化剤、銅、カルシウム、並びに/あるいは使用される細胞に応じて、上皮細胞、間葉細胞、実質細胞及び/又は非実質細胞のうちの1つ以上の増殖及び/又は維持のための1つ以上のシグナルを含む。本開示の態様は、分化培地自体に関する。いくつかの実施形態において、分化培地としては、クボタ培地、1つ以上の脂質結合タンパク質(例えば、HDL)、1つ以上の純脂肪酸(例えば、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸)、1つ以上の糖類(ガラクトース、グルコース、フルクトース)、1つ以上のグルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン又はヒドロコルチゾン)、銅(例えば、およそ若しくは約10-10~およそ若しくは約10-12Mの濃度で)、カルシウム(例えば、0.6mMの濃度で)、プロラクチン、成長ホルモン、グルココルチコイド、グルカゴン、甲状腺ホルモン(例えば、トリヨードチロニン若しくはT3)、表皮成長因子(EGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、インスリン様成長因子(IGF)、白血病抑制因子(LIF)、IL6及びIL-11などのインターロイキン(IL)、wntリガンド、骨形成タンパク質(BMP)、及び/又は環状アデノシン一リン酸塩から選択される上皮細胞すなわち実質細胞の増殖及び/又は維持のための1つ以上のホルモン及び/又はアンジオポエチン、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、インターロイキン(IL)、幹細胞因子(SCF)、白血病抑制因子(LIF)、コロニー刺激因子(CSF)、トロンボポエチン、血小板由来成長因子(PDGF)、エリスロポエチン、インスリン様成長因子(IGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、表皮成長因子(EGF)から選択される間葉細胞すなわち非実質細胞の増殖及び/又は維持のための1つ以上のホルモン及び/又は成長因子を挙げることができる。いくつかの実施形態において、分化培地は、約5%の酸素濃度で使用されても、含まれても、又は維持されてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態において、容器は、細胞の血管サポートを模倣するように設計された流体用流路を与えるように設計される。
本開示の態様は、天然肝臓に特有の帯状分布(zonation)に依存した表現型形質を備えた生物工学による組織に関し、前記表現型形質は、(a)幹細胞/前駆細胞、二倍体成体細胞、及び/又は関連する間葉前駆細胞すなわち非実質前駆細胞の形質を有する門脈周囲領域、(b)成熟胆管上皮(例えば、胆管細胞)及び/又は関連する成熟星細胞及び成熟間質細胞、成熟実質細胞(例えば、肝細胞)及び/又は関連する間葉細胞の類洞板、例えば限定されないが、類洞内皮細胞及び/若しくは周皮細胞(すなわち、平滑筋細胞)の形質を有する細胞を含んだ中央腺房領域、(c)最終分化実質細胞(例えば、限定されないが、媒数体肝細胞及びアポトーシス肝細胞を含む肝細胞)、及び/又は関連する間葉細胞(例えば、限定されないが、有窓内皮及び/若しくは内皮に繋留された二倍体axin2+肝前駆細胞)の形質を有する中心体周辺領域が挙げられる。いくつかの実施形態において、組織の表現型形質は、門脈周囲領域の二倍体実質細胞及び/又は間葉細胞と関連した形質を包含する。いくつかの実施形態において、組織の表現型形質は、天然肝臓の中央腺房領域で見られる成熟実質細胞(例えば、成熟肝実質細胞)及び/又は間葉細胞(例えば、類洞内皮細胞)の形質を包含する。いくつかの実施形態において、組織の表現型形質は、中心体周辺領域の実質細胞(例えば、肝実質細胞)及び/又は間葉細胞の形質を包含する。いくつかの実施形態において、組織は、(i)有窓内皮細胞と関連する倍数体肝細胞、並びに/又は(ii)中心静脈の内皮につながっている門脈周辺の二倍体肝前駆細胞及び/若しくはaxin2+肝前駆細胞のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態において、組織の門脈周囲領域には、肝幹細胞、肝芽細胞及び/若しくは委任前駆細胞、並びに/又は二倍体成体肝細胞を含む幹細胞/前駆細胞ニッチ形質が豊富にある。いくつかの実施形態において、組織の実質細胞はさらに、肝細胞及び/又は胆管細胞の前駆体及び/又は成熟形態をも含む。いくつかの実施形態において、組織の間葉細胞はさらに、星細胞、周皮細胞、平滑筋細胞及び/又は内皮細胞の前駆体及び/又は成熟形態をも含む。同様に、本開示の態様は、天然すい臓に特有の帯状分布に依存した表現型形質を備え、かつ/あるいは、すい臓頭部の膵細胞に関連する帯状分布及び/又はすい臓尾部の膵細胞に関連する帯状分布を有する、生物工学による組織に関する。いくつかの実施形態において、間葉細胞としては、間質細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、及び造血細胞が挙げられ、さらなる実施形態では、これら間葉細胞は、帯状分布に応じた形質を示す場合もある。
【0015】
さらなる態様は、3次元マイクロ臓器に関する。非限定例としては、本開示の容器内で産生するか又は本開示の生物工学による組織から構成される3次元マイクロ臓器が挙げられる。前記マイクロ臓器の産生及び培養のためのキットもまた、本明細書において検討される。
【0016】
さらに、生物工学による組織又は3次元マイクロ臓器に処置を施すことを含む、臓器の治療を評価する方法も本明細書に提示される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】脱細胞化後のバイオマトリクス足場の特徴を示している。A)新鮮組織と比較した、バイオマトリクス足場中の多種多様な成長因子の保持百分率。B~E)走査電子顕微鏡法で撮像されたバイオマトリクス足場の超微細構造。B)門脈(PV)と肝臓動脈(HA)と胆管(矢印)とを備えた、門脈三つ組。C)細胞を含まない、バイオマトリクス足場中の腺房の類洞領域。D~E)コラーゲンの繊維束(*)及びコラーゲンに結合した接着分子(矢印)。F~O)肝腺房内のその特有の帯状配置においてマトリクス分子を特定する免疫組織化学的検査。P)新鮮組織と比較した、足場中のコラーゲン含有量の定量分析。
図2】3つの胎児肝臓組織から得られた細胞とバイオリアクターで使用される細胞との間の相対的遺伝子発現のRNAシークエンシングデータを表している。
図3】培養14日後のヒト胎児肝幹細胞/前駆細胞の組織診断を示している。A~D)門脈周囲領域に位置する細胞のマーカー。G)グリコーゲン貯蔵を証明する、肝細胞の過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色。H)Cyp3A4陽性肝細胞、P450代謝酵素。I)血管を覆う内皮細胞のSEM画像。挿入画像は、CD31陽性内皮細胞の画像であり、血小板内皮細胞接着分子(PECAM)とも称される。
図4】胎児肝臓試料、バイオリアクター組織試料(Bio_T14)及び成体肝臓試料に関するRNAシークエンシングの相対発現を表す。A)マトリクスメタロペプチダーゼ(MMP)、例えばMMP-2及びMMP-9は、マトリクスのリモデリングに関わる酵素である。B~E)細胞外マトリクス分子の発現。バイオリアクター内で成長した細胞は、他の試料に比べて有意に高いECM分子濃度を表している。(Bio_T14=バイオリアクター番号T14)
図5】門脈周囲領域で見られる細胞の特性を明らかにする、マーカーのRNAシークエンシング相対的遺伝子発現を表している。バイオリアクター中で培養した細胞は、幹細胞及び肝芽細胞マーカーの遺伝子発現が大幅に減少したが、胆管細胞マーカーは増加した(p<0.05)。このことは、より多くの成熟した表現型への変化を意味している(p<0.05)。
図6】中心体周囲領域で見られる細胞の特性を明らかにする、マーカーのRNAシークエンシングの相対的遺伝子発現を表している。幹細胞マーカー及び前駆細胞マーカーの減少と同時に、バイオリアクター中で培養した細胞は成熟した肝表現型へと分化し続けたが、これは成熟した代謝的形質と関連した遺伝子発現の増加から明らかであった。
図7】発現アッセイ結果を示している。A)フィードバックループと、臓器サイズを規定しかつHippo(カバ様の)キナーゼ及びYAP(Yes associated protein)を含むSalvador/Warts/Hippo(SWH)経路と呼ばれる信号変換経路とに関するRNAシークエンシング遺伝子発現。バイオリアクター中で培養された細胞は、胎児肝臓及び成体肝臓に比べて、Hippoキナーゼの減少とYAP及び関連する標的遺伝子の上昇を示し、再生プロセス進行中を意味している。B)バイオマトリクス足場内で血管を覆う培養14日後の胎児肝内皮細胞の血管新生マーカーの遺伝子発現及びSEM画像。C)内皮細胞転写因子GATA-2、幹細胞因子受容体(SCR)及びインターロイキン7R(IL7R)などの造血幹細胞マーカー及び内皮幹細胞マーカーと、組み換え型活性化遺伝子1(Rag1)、CD3(T細胞共受容体)及びコロニー刺激因子(CSF)などの成熟造血性遺伝子との相対的遺伝子発現。バイオリアクター試料は、成体肝臓で見られるものと同様でかつRag1発現の上昇を含むCD3の遺伝子発現量を有しており、いずれもT細胞と関連している。骨髄性細胞によって発現した遺伝子CSFは、胎児及び成体の両肝臓に比べて有意に高い。
図8】様々なアッセイ結果を示している。A)乳酸脱水素酵素(LDH)で示された細胞生存率、壊死の指標である完全長ケラチン18(FL-K18)、及びアポトーシスの指標である分割サイトケラチン18(ccK18)、及びB)培養14日間にわたる、α-フェトプロテイン(AFP)及びアルブミンの細胞産生と尿素の分泌。アルブミン濃度が上がったり下がったりするのは、アポトーシスデータを補足していると考えられ、細胞周期現象と再正反応を意味している。
図9】バイオリアクター中で培養された細胞、並びにグルコース新生又は解糖の進行を示している。グルコースの産生又は消費のいずれかの変化はまた、組織工学によって作製された肝臓の発達の変化にも相当し得る。グルコース新生は、前駆体及び門脈周囲細胞内で生じるが、解糖は、中心体周辺領域内の細胞と関連している。B)バイオリアクターの代謝特性が、同様の傾向を示しながらもいまだに異なる代謝機能段階にあることを示す、多変量解析。C)投影における変数重要性(VIP)プロットは、分離の一因となる代謝を示している。VIP>1.0が、重要と考えられる。
図10】培養14日後の組織工学で作製された肝臓内の細胞の透過電子顕微鏡法(TEM)画像である。A~C)毛細胆管(BC)を形成するいくつかの肝細胞様細胞と、それらの間の類洞腔(矢印)。B)予想される分泌小胞が毛細胆管の周囲に認められる(矢印)。D)バイオマトリクス足場に付着している細胞。E、F)デスモソーム、接着結合及びギャップ結合(矢印)を包含する、細胞間の接合部複合体。
図11】ラット肝臓における脱細胞化プロセスの画像であり、これによってバイオリアクター実験で使用するバイオマトリクス足場を得た。
図12】バイオリアクターに応じて設計された血清を含まないホルモン限定培地(BIO-LIV-HDM)又は市販の肝細胞維持培地(HMM)で培養した場合の、肝細胞によるアルブミン及び尿素の分泌を表している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示による実施形態を以降により完全に説明する。とはいえ、本開示の態様は、様々な形態で具現化されており、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これら実施形態は、本開示が完璧かつ完全となるように提供されるものであって、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるものである。本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明することを目的としており、限定を目的とするものではない。
【0019】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される用語(科学技術用語を含む)はいずれも、本発明の属する当業者に一般に理解されているものと同じ意味を有する。さらに、一般に使用されている辞書で定義されているような用語が、本出願の文脈及び関連技術分野での意味と矛盾しない意味を有するものと解釈されるべきであり、また、そのように本明細書で明白に定義されていないのであれば、観念的又は過度に形式的な判断で解釈するべきではないことも分かるであろう。例として、記述子は、例えば、肝臓由来組織又は肝臓様オルガノイドを説明するための「肝臓の(hepatic)」の使用のように、特定の臓器の特徴を表す生物由来物質(例えば、組織、オルガノイド、試料)を指すために使用され得る。以降明示はしないが、かかる用語は、それらの一般的な意味によって解釈されるべきである。
【0020】
本明細書中で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明することを目的としており、本発明の限定を意図するものではない。本明細書に記載の刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献をいずれも、参照として本明細書に組み込む。
【0021】
本発明の技術の実施は、特に指示がない限り、当該技術分野の技術の範囲内に存する組織培養、免疫学、分子生物学、微生物学、細胞生物学及び組み換えDNAに関する従来技術を利用するものである。例えば、Sambrook and Russell eds.(2001) Molecular Cloning: A LaboratoryManual, 3rd edition; the series Ausubel et al.eds.(2007) Current Protocols in Molecular Biology; the series Methods inEnzymology (Academic Press, Inc., N.Y.); MacPherson et al.(1991) PCR 1: APractical Approach (IRL Press at Oxford University Press); MacPherson etal.(1995) PCR 2: A Practical Approach; Harlow and Lane eds.(1999) Antibodies, ALaboratory Manual; Freshney (2005) Culture of AnimalCells: A Manual of Basic Technique, 5th edition; Gait ed. (1984)Oligonucleotide Synthesis; U.S. Patent No. 4,683,195; Hames and Higginseds.(1984) Nucleic Acid Hybrsidization; Anderson(1999) Nucleic Acid Hybridization; Hames and Higgins eds.(1984) Transcriptionand Translation; Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press (1986)); Perbal (1984) A Practical Guide to Molecular Cloning;Miller and Calos eds.(1987) Gene Transfer Vectors forMammalian Cells (Cold Spring Harbor Laboratory); Makridesed. (2003) Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells; Mayer and Walkereds.(1987) Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (AcademicPress, London); and Herzenberg et al. eds (1996) Weir’sHandbook of Experimental Immunologyを参照のこと。
【0022】
文脈上別の意味を示している場合を除いて、厳密には、本明細書に記載の本発明の様々な特徴は任意に組み合わせて使用し得ることを意図している。また、本開示は、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の任意の特徴又は特徴の組み合わせを除外又は省略し得ることもある。説明のために、複合物が構成成分A、B及びCを含むと本明細書に規定している場合、厳密には、A、B又はCあるいはそれらの組み合わせのいずれかを単独で又は任意に組み合わせて省略及び放棄し得ることを意図している。
【0023】
数字表示、例えばpH、温度、時間、濃度及び分子量(範囲を含む)はいずれも概算であって、必要に応じて1.0ずつ又は0.1ずつ変化(+)又は(-)するか、あるいは±15%、±10%、±5%、又は±2%の変分で変化(+)又は(-)する。必ずしも明記されてはいないが、すべての数字表示には「約」という用語が先行するものと解されるべきである。必ずしも明記されていないが、本明細書に記載の試薬は単に例示であって、その同等物は当該技術分野では既知であると解されるべきである。
【0024】
I.定義
本発明の説明及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、単数形「一つの(a, an)」及び「前記(the)」は、文脈上別の意味を明らかに示していない限り、同様に複数形を包含するものとする。
【0025】
用語「約」は、本発明で使用するときに量又は濃度(例えば、バイオマトリクス足場内の総タンパク質中のコラーゲンの割合)などのような測定値を指す場合、特定量の20%、10%、5%、1%、0.5%、あるいは0.1%といった変量を包含するように意図される。
【0026】
用語「許容可能な」、「有効な」又は「十分な」は、任意の構成成分、範囲、投与形態などの選択肢を説明するのに使用するとき、構成成分、範囲、投与形態などが開示目的に好適であることを意味する。
【0027】
さらに本明細書で使用するとき、「及び/又は」は、1つ以上の関連する記載項目の任意の及びすべての予想される組み合わせを指してそれらを包含し、並びに選択肢(「又は」)を説明するときには組み合わせを含まない。
【0028】
「生物工学による(bioengineered)」という用語は、本明細書では、天然起源の臓器又は組織と同様又は同一の生物学的特性を有するように設計された人工臓器又は組織を説明するために使用される。いくつかの態様において、これは、工学上特別な装置の使用を必要とする可能性があり、別の態様では、これは、様々な生物学的因子の使用を必要とする可能性がある。
【0029】
用語「バイオマトリクス足場(biomatrix scaffold)」は、細胞外マトリクスに多く含まれている分離組織抽出物を指し、また、本明細書で説明されるときには、いくつか、場合によりさらに多くの生物組織で自然に見られるコラーゲン及び/又はコラーゲン結合因子を保持する。いくつかの実施形態において、バイオマトリクス足場は、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ナイドジェン/エンタクチン、インテグリン、エラスチン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン(硫酸化されたもの及び非硫酸化されたものであって、ヒアルロナンを含む)、及びそれらの任意の組み合わせを含むか、それらからなるか、又はそれらから本質的になり、いずれもバイオマトリクス足場の一部である(例えば、バイオマトリクス足場という用語に包含される)。
【0030】
いくつかの実施形態において、バイオマトリクス足場は、検出可能な量の特定のコラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ナイドジェン/エンタクチン、エラスチン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン及び/又はそれらの任意の組み合わせを含まない。いくつかの実施形態において、本質的にすべてのコラーゲン及びコラーゲン結合因子が保持されており、また、他の実施形態では、バイオマトリクス足場は、組織中に存在することが知られているコラーゲンをすべて含む。
【0031】
バイオマトリクス足場は、天然の生物組織中で見られるコラーゲン、コラーゲン関連マトリクス成分、並びに/又はマトリクス結合性成長因子、ホルモン及び/若しくはサイトカインを任意の組み合わせで少なくとも約50%、約60%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%、約98%、約99%、約99.5%又は約100%含んでよい。いくつかの実施形態において、バイオマトリクス足場は、生物組織のコラーゲン及び大部分のコラーゲン関連マトリクス構成成分並びにマトリクス結合性成長因子、ホルモン及び/又はサイトカインを少なくとも約95%含む。本明細書に記載のコラーゲンは、新生(新たに生成)された非架橋コラーゲンであってもよい。本明細書で開示するとき、コラーゲンは、三つ編みの毛髪のように編まれた3本のアミノ酸鎖(3つのアミノ酸で占められた領域[グリシン-プロリン-X](Xは、多数の様々なアミノ酸のうちのいずれかであり得る))からなり、コラーゲンの繊維様ドメインを形成して、分子両末端には様々な型のコラーゲンに特有のアミノ酸構造を有する結果、球状のドメインをもたらす。コラーゲン分子は分泌され、コラーゲン原線維(凝集コラーゲン分子)を生成するように自己組織化され、非コラーゲンマトリクス構成成分とシグナル伝達分子(サイトカイン、成長因子)と共に自己組織化され、しかも架橋されると細胞外マトリクスを生成する可能性がある。典型的なコラーゲン及びその抽出方法を以降に詳細に説明する。
【0032】
特定のコラーゲン分子は、29個の既知のコラーゲンタイプ毎に特有のアミノ酸構造を有する。コラーゲンは、細胞から分泌された後、その分子の一方の端又は両端が特定のペプチダーゼによって取り除かれ、次いで、複数のコラーゲン分子が凝集することでコラーゲン線維又はコラーゲン原繊維を生成する。例外は「コラーゲンネットワーク」であり、それは、球状ドメインを保持し、しかも末端同士が凝集してコラーゲン分子のネットワーク(すなわち、金網様の構造のもの)を形成する。線維又はネットワークへ凝集した後、コラーゲンは、コラーゲン分子間に(さらにはエラスチン分子間でも)共有結合をもたらす細胞外銅依存酵素であるリシルオキシダーゼによって架橋されて架橋形態を作製して、コラーゲン及びコラーゲンに結合したあらゆるものの極めて安定な凝集物を構成する。繊維状コラーゲン中の原繊維当たりのコラーゲン分子の数及びコラーゲンネットワーク内での結合パターンは、特定のコラーゲン型の正確なアミノ酸構造によって決まる。
【0033】
不溶性状態の非架橋コラーゲン並びに架橋コラーゲンを単離するための組織の抽出は、中性pHでかつ1M以上の塩濃度の緩衝液を用いて達成することができ、非架橋コラーゲンを不溶性として保存するのに必要な塩の正確な濃度は、コラーゲンの型によって決まる。例えば、I型及びIII型コラーゲンは、皮膚に豊富に含まれており、約1Mの塩を必要とし、一方、羊膜中のコラーゲン(例えば、V型コラーゲン)は、3.5~4.5Mの塩を必要とし、肝臓内の非架橋並びに架橋コラーゲンは、少なくとも3.4Mの塩を必要とする。そのため、細胞外マトリクスに多く含まれている抽出物を調製する最も良い方法は、コラーゲン、特に架橋されていないものを全く残さない。その上、いくつかの方法は、a)マトリクス構成成分を分解する酵素、及び/又はb)低塩濃度緩衝液又は塩を含まない緩衝液(例えば、蒸留水)を使用することで、非架橋コラーゲン及びそれに結合した任意の因子を溶解する。したがって、マトリクス足場には複数の抽出物形態が存在しており、前記マトリクス足場は、架橋コラーゲン及びそれに結合した任意の因子を含有しているが、非架橋コラーゲン及びその関連因子が含まれないか又は最小限度の量有している。主として又は専ら架橋コラーゲンを単離する抽出物は、接着分子及びシグナル伝達分子も有しているが、これらは、その配向性と架橋マトリクス内での位置のために細胞との相互作用には容易に利用できない。それに対し、非架橋コラーゲンは、他のマトリクス構成成分及びシグナル伝達分子と自己組織化するので、いずれも細胞との相互作用に利用可能である。いくつかの実施形態において、本明細書に開示のバイオマトリクス足場は、低イオン強度緩衝液を避けて調製することで、架橋コラーゲンと非架橋コラーゲンの両者を保存する。
【0034】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示のバイオマトリクス足場は、新生(新たに生成された)コラーゲン及び架橋前に凝集されたコラーゲン分子に加えて架橋コラーゲンをも含む、コラーゲン全てを本質的に含有する。その上、バイオマトリクス足場は場合により、他のマトリクス構成成分に加えて、前記コラーゲン又はマトリクス構成成分に結合したシグナル伝達分子をも含む。いくつかの実施形態において、バイオマトリクス足場中のコラーゲンの割合は、バイオマトリクス足場を派生する組織中での割合と同様か又は同一である。オリジナルの組織を模倣するのに好適な新生コラーゲンの割合の非限定例としては、限定されないが、少なくとも約0.05%、0.1%、0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%が挙げられる。
【0035】
本明細書で説明されるとき、「コラーゲン関連マトリクス構成成分及びマトリクス結合性成長因子、生物組織のホルモン及び/又はサイトカインの大部分」とは、コラーゲン関連マトリクス構成成分及びマトリクス結合性成長因子、天然の(例えば、未加工の)生物組織で見られるホルモン及び/又はサイトカインの約50%、約60%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%、約98%、約99%、約99.5%、約又は100%を保持するバイオマトリクス足場を指す。用語「粉末状」又は「微粉砕状」は、粉末まで粉砕されたバイオマトリクス足場を説明するために本明細書において互換的に使用される。用語「3次元バイオマトリクス足場」とは、その天然の3次元構造を保持する脱細胞化足場を指す。かかる3次元足場は、足場全体であってもよく、又はその凍結切片であってもよい。
【0036】
用語「緩衝液」及び/又は「リンス液」は、本明細書では、バイオマトリクス足場の調製に使用される試薬を指すのに使用される。
本明細書で使用するとき、用語「細胞」とは、真核細胞を指す。いくつかの実施形態において、この細胞は、動物起源のものであり、また、幹細胞であっても体細胞であってもよい。用語「細胞集団」とは、同一又は異なる起源の同一又は異なる細胞種の細胞1つ以上からなる群を指す。いくつかの実施形態において、この細胞集団は細胞株から派生する可能性があり、いくつかの実施形態において、この細胞集団は臓器試料又は組織試料から派生する可能性がある。
【0037】
本明細書で使用とき、用語「前駆細胞」又は「前駆体」は、幹細胞及びその子孫の両者を包含するように広く定義され、また、本開示のいくつかの態様において、用語「肝/前駆細胞」は、本明細書では「前駆細胞(progenitor, progenitor cell)」又は「前駆体」と互換的に使用される。「子孫」には、1つ以上の成熟細胞種をもたらす特定の系譜へと分化し得る多能性幹細胞又は単能性委任細胞が包含され得る。前駆細胞の非限定例としては、限定されないが、任意の組織種の、胚性幹(ES)細胞、人工多能性幹(iPS)細胞、胚葉幹細胞、確定幹細胞、周産期幹細胞、羊水由来幹細胞、間葉幹細胞、TA細胞又は委任前駆細胞が挙げられる。「単能性」、「多能性」及び「委任」などの記述と共に使用するとき、1つ以上の成体運命への細胞の分化能が示される。例えば、胚性幹細胞は多能性であって、3つの胚葉(外胚葉、中胚葉、内胚葉)の成体運命すべてを生じさせる可能性があり、確定幹細胞は多能性であって、2つ以上の成体運命を生じさせる可能性がある。また、星細胞前駆体又は内皮前駆細胞は単能性前駆細胞の例であって、特定の細胞系譜をもたらす。
【0038】
本明細書で使用するとき、「実質細胞」は、主に臓器の、上皮細胞である。肝臓において、実質細胞は胆管細胞と腺房細胞を含んでいてもよく、すい臓において、実質細胞は腺房細胞と島を含んでいてもよく、また、肝臓、すい臓及び他の内胚葉臓器(例えば、甲状腺、腸、肺)において、実質細胞は内胚葉幹細胞由来であってもよい。前記表現型形質は、肝腺房の帯域1内では細胞で見られる最初期の形質に応じた系譜であり、中央腺房領域(肝臓の帯域2)内で形質へ移行して、中心体周辺領域(肝臓の帯域3)内で最終分化細胞になる。さらに、中心静脈を形成する内皮に結合した二倍体実質細胞集団が単能性前駆細胞の特性を有することが新たに見出された。非限定例となる実質細胞は、胆管肝細胞、肝幹細胞、肝芽細胞、委任肝前駆細胞及び胆管前駆細胞、axin2+前駆細胞(例えば、axin2+肝前駆細胞)、成熟実質細胞(肝細胞、胆管細胞、及びそれらの幹細胞亜種の多能性又は単能性誘導体)である。さらなる非限定例としては、胆管幹細胞、特に肝-膵共通管由来のもの、膵幹細胞、肝-膵共通管由来の膵委任前駆細胞及び膵管腺由来の膵委任前駆細胞、島並びに腺房細胞が挙げられる。これら実施形態例は、例えば、肝臓及びすい臓それぞれに有用であり得る。
【0039】
本明細書で使用するとき、「非実質細胞」は、中胚葉幹細胞及び外胚葉幹細胞に由来するもの、並びに成熟中胚葉及び成熟外胚葉細胞種を包含するそれらの系譜子孫に由来するものである。中胚葉幹細胞由来の子孫としては、血管芽細胞、内皮細胞及び星細胞の前駆体集団、成熟内皮細胞、成熟星細胞、間質細胞、平滑筋細胞、周皮細胞、造血幹細胞及び前駆細胞並びにクッパー細胞、ナチュラルキラー細胞(ピット細胞)、骨髄性細胞、リンパ球、及びそのほか様々な造血細胞を包含するそれらの子孫が挙げられる。外胚葉幹細胞前駆細胞には、神経前駆細胞及び成熟神経細胞が包含される。
【0040】
「上皮細胞」は、当該技術分野では上皮由来のものであることが知られている。本明細書で使用するとき、「間葉細胞」とは、本来は中胚葉性の非実質細胞を指す。組織の相関的な中心的存在を構成する上皮-間葉関係があり、つまり、上皮幹細胞が間葉幹細胞及び座標上の成熟したその子孫とパートナーを組んでいる。前記関係は、水溶性シグナルと、動的かつ相乗的に作用する細胞外マトリクス構成成分とから構成されるシグナル(パラ分泌シグナル)のクロストークによって維持されることで、上皮細胞及び間葉細胞の生物学的反応を調整する。例えば、血管芽細胞(間葉幹細胞集団の一種)は肝幹細胞とパートナーを組んでいる。前記血管芽細胞は、幹細胞の系譜とパートナーを組んでいる内皮細胞前駆体及びその子孫を生じさせると同時に、胆管細胞の系譜とパートナーを組んでいる星細胞前駆体及びその子孫をも生じさせる。星細胞及び内皮細胞集団は同時に成熟過程も生じさせて、結合している上皮細胞と適合する。そのため、前記細胞の表現型特性は、系譜に依存し、また、細胞が系譜の初期段階にあるか、中間段階にあるか、又は後期段階にあるかに明白に左右される。このことは、細胞が帯域1(初期)に由来するか、帯域2(中間)に由来するか、又は帯域3(後期)に由来するかにおおむねつながる。非限定例となる非実質細胞は、血管芽細胞、間葉幹細胞、星細胞前駆体、星細胞、周皮幹細胞、間質細胞、平滑筋細胞、神経細胞前駆体、神経細胞、内皮細胞前駆体、内皮細胞、造血細胞前駆体、及び造血細胞である。
【0041】
用語「胆管幹細胞」(BTSC)とは、胆のう内に含まれる胆管全体に含まれる幹細胞を指し、肝幹細胞及び/又は膵幹細胞並びにそれらの子孫前駆細胞へ移行能力を有する。これらは、胆管の表面に繋留している壁外胆管周囲付属腺(PBG)と胆管壁内の壁内PBGの両方で見られる。PBG関連BTSCの子孫は、胆のうに含まれており、腸陰窩に沿った微小環境内の胆のう壁又はその底部に存する。複数のBTSC亜種があるが、これは、大きな肝内胆管のPBGに含まれる肝幹細胞(HpSC)へ移行する系譜を形成しており、胆管板(胎児及び新生児組織)につながって、ヘーリング管(小児及び成体組織)に転換する。HpSCは、ヘーリング管と隣接しているか又はその近辺にある肝芽細胞を生み出しかつ委任肝前駆細胞及び胆管前駆細胞への移行をも生じさせ、それらが成熟して幹細胞及び胆管細胞となる。さらに胆管全体、主に肝-膵共通管のPBG内に含まれる膵幹細胞を生み出BTSCの子孫も存在し、これらはその後、すい臓内の膵管腺に含まれる委任膵前駆細胞への移行を生じさせる。BTSC亜種すべてのバイオマーカーとしては、内胚葉転写因子(SOX9、SOX17、FOXL1、HNF4-α、ONECUT2、PDX1)、多能性遺伝子(例えば、OCT4、SOX2、NANOG、SALL4、KLF4、KLF5、BMI-1)、1つ以上のイソ型CD44(CD44sとCD44vの両者)、ヒアルロナンイソ型受容体、CXCR4、ITGB1(CD29)、ITGA6(CD49f)、ITGB4、並びにサイトケラチン8及び18が挙げられる。イソ型CD44、例えばCD44Sは、幹細胞と成熟細胞の両者によってより多く発現されることが分かっているが、イソ型CD44多種変異体(CD44V)は主に幹細胞亜種に含まれている。さらに、これまでに3段階のBTSC亜種が同定されている。つまり、第1段階のBTSCは、ナトリウム・ヨウ素共輸送体(NIS)、幹細胞にも含まれている特定のイソ型CD44v、及びCXCR4を発現するが、LGR5又はEpCAMは発現しない。第2段階のBTSCは、LGR5の発現以外に、幹細胞に含まれているがNISにはほとんど含まれない特別なイソ型CD44変異体を発現するが、EpCAMは発現しない。第3段階のBTSC(胆のうに含まれており、しかも胆管全体にも含まれているBTSCのみ)は、さらに成熟した細胞に含まれているLGR5及びEpCAM、そしてCD44とCD44sの混合物をも発現する。第3段階のBTSCは、肝幹細胞の前駆細胞の前駆体でありかつ膵幹細胞の前駆体である。
【0042】
用語「肝幹細胞」(HpSC)とは、胆管のうち大きな肝内胆管のPBGの両端と肝細胞板とをつなぐヘーリング管で見られる幹細胞を指す。HpSCは、自己増殖能力を保持しており、しかも多能性である。これら細胞のバイオマーカーとしては、上皮細胞接着分子(EpCAM、細胞質的に細胞膜に含まれている)、神経細胞接着分子(NCAM),及び(あったとしても)極低濃度のアルブミンが挙げられる。これらは、SOX9、SOX17、CD29(ITBG1)、HNF4-α、ONECUT2、低濃度~中濃度の1つ以上の多能性遺伝子(OCT4、SOX2、NANOG、KLF5、SALL4)を発現し、また、サイトケラチン8、18及び19を発現する。これらは、PDX1、α-フェトプロテイン(AFP)、P450-A7そしてセクレチン受容体を発現しない。
【0043】
用語「肝芽細胞」とは、肝細胞と胆管細胞を生じさせ得る二分化能肝幹細胞を指す。これらは、BTSC及びHpSCの自己増殖に寛容な条件下で最小限度の自己増殖能を有する。さらにそれらは、追加のサイトカインと成長因子での処理によって大きく分裂するが、分裂はある程度の分化も包含し得る。前記細胞は、HpSCと重複するがHpSCとは異なりかつBTSCとも異なるバイオマーカープロファイルで特徴づけられる。これには、HNF4-α、CPS1、APOB、EpCAM(主に細胞膜において)、P450-A7、サイトケラチン7、サイトケラチン19、サイトケラチン8及びサイトケラチン18、セクレチン受容体、アルブミン、高濃度AFP、NCAM以外の細胞内接着分子(ICAM-1)、DLK1、並びに(あったとしても)最小限度の多能性遺伝子の発現が挙げられる。
【0044】
本明細書で使用するとき、用語「委任前駆細胞(committed progenitor)」とは単能性前駆細胞であって、単一細胞種、例えば、委任肝前駆細胞(アルブミン、AFP、グリコーゲン及びICAM-1の発現、そしてグリコーゲン合成に関与する様々な酵素の発現によって通常認識されるもの)を生じさせかつ肝細胞を生じさせるものを指す。委任胆管(又は胆管)前駆細胞(通常は、EpCAM、サイトケラチン7及びサイトケラチン19、アクアポリン、CFTR、胆汁輸送の産生に関連する膜ポンプ(胆汁塩は肝細胞で合成される)の発現で認識されるもの)は、胆管細胞を生じさせる。
【0045】
細胞を説明するのに使用するとき、記述子「成熟」とは、分化細胞を指す。例えば、「成熟肝細胞」とは、肝臓内で優性の実質細胞を指し、これは門脈周囲領域では二倍体であり、中央腺房領域では二倍体と倍数体の混合物であり、そして中心体周辺領域では大部分が倍数体である。遺伝子発現プロファイルは、帯状系譜依存性であり得、また、帯域1の遺伝子(典型的なものは、トランスフェリンmRNA(タンパク質への翻訳を生じさせる能力を持たない)、コネキシン28、及びグリコーゲン合成に関わる酵素である)と、帯域2の遺伝子(典型的なものは、チロシンアミノトランスフェラーゼ、タンパク質への翻訳が可能なトランスフェリンmRNA、及び最高濃度のアルブミン発現である)と、帯域3の遺伝子(典型的なものは、P450-3A4などのP450sと、アポトーシスに関連する遺伝子である)を包含する。例えば、Turner et al Human Hepatic Stem Cell and Liver Lineage Biology.Hepatology, 2011; 53: 1035-1045(a more detailed listing of genes expressed inpatterns associated with liver acinar zones)を参照し、それを参照により本発明に組み込む。帯域3内の最終実施細胞層は、二倍体、axin2+、単能性肝前駆細胞からなり、これらは中心静脈の内皮につながっている。
【0046】
用語「血管芽細胞」は、内皮細胞、星細胞、及び間葉幹細胞と関連する周皮細胞を生じさせる多能性前駆体を説明するのに使用される。前記細胞は、CD117、VEGF受容体、フォンビルブランド因子、CD133などの1つ以上のバイオマーカーを発現し得る。例えば、Geevarghese A. andHerman I.,Transl Res.2014; 163(4):296-306(discussingoverlap in biomarkers between mesenchymal lineages)を参照し、これを参照により本明細書に組み込む。血管芽細胞はさらに、間葉幹細胞(MSC)も生じさせ、そこから周皮細胞をも生じさせて、内皮の周囲に巻き付いて、それらが収縮した際に帯域1から帯域3を通じて中心静脈へ血液を移動させるのに役立つ平滑筋細胞形態を形成することもある。血管芽細胞は、脈管形成に関わる多数の因子であって、肝細胞増殖因子(HGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、エンドセリン、IGF-II、上皮細胞成長因子(EGF)、酸性線維芽細胞成長因子(a-FGF)、及びニューロトロフィンを包含する因子を生み出す。Geevarghese (2014)の図13を参照のこと。
【0047】
用語「星細胞前駆体」とは、星細胞の単能性前駆体であって、肝芽細胞の間葉細胞パートナー及び委任胆管前駆細胞の間葉細胞パートナーのうちの一方を指す。前記細胞のバイオマーカーとしては、CD146(Mel-CAMとも称される)、α平滑筋アクチン及びデスミンが挙げられる。星細胞前駆体は、肝芽細胞及び委任前駆細胞に必要とされる大量のパラ分泌シグナルを生成することが知られており、パラ分泌シグナルとしては、肝細胞増殖因子(HGF)及び間質細胞由来成長因子(SDGF)などの肝細胞成長因子、並びにラミニン及びIV型コラーゲンなどの初期系譜段階のマトリクス構成成分が挙げられる。
【0048】
用語「内皮細胞前駆体」とは、内皮細胞の単能性前駆体であって、肝芽細胞の他方の間葉細胞パートナー、さらには委任肝細胞前駆細胞の間葉細胞パートナーも指す。前記細胞のバイオマーカーとしては、VEGF受容体、フォンビルブランド因子、CD133、及びCD31(PECAMとも称される)が挙げられる。前記細胞は、パラ分泌シグナルを生成することが知られており、パラ分泌シグナルとしては、成長因子(例えば、VEGF、アンジオポエチン)及びマトリクス構成成分(例えば、IV型コラーゲン、ラミニン、及びへパラン硫酸プロテオグリカン)が挙げられる。
【0049】
用語「成熟星細胞」は、胆管細胞の間葉細胞パートナーを指すのに使用される。これら細胞のバイオマーカーとしては、α平滑筋アクチン及びデスミンが挙げられる。成熟星細胞は、前駆体ではないが、レチノイド(ビタミンA誘導体)、グリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)、I型及びIII型コラーゲン、及び他の成熟マトリクス構成成分、並びに以降の図に示すような成熟星細胞のその他のマーカーを有意な濃度で発現する。
【0050】
用語「内皮細胞」は、肝細胞の間葉細胞パートナーを説明するのに使用される。前記表現型形質は、門脈三分岐炎付近で肝細胞によって完全な基底膜を形成するものから、細胞間にギャップを有する有窓(「間隙」)内皮細胞及び中心静脈に近接したマトリクスをもたらすものへと移行する。バイオマーカーとしては、高濃度のCD31及びVEGF受容体が挙げられる。
【0051】
用語「造血細胞(hematopoietic cells)」(これはイギリス英語であって、アメリカ英語ではhemopoieticである)は、胎児肝臓及び周産期肝臓で産生される細胞並びにその後の骨髄で産生される細胞を包含する専門用語であって、限定されないが造血幹細胞、リンパ球、顆粒球、単球、マクロファージ、血小板、ナチュラルキラー細胞(肝臓内ピット細胞と称される)、及び赤血球が挙げられる。
【0052】
本明細書で使用するとき、用語「含む(comprising)」は、組成物及び方法が記載の要素を包含するが、それ以外を排除しないことを意味するものである。本明細書で使用するとき、移行句「から本質的になる(consisting essentially of、及び文法上の異形)」は、記載の材料又は工程を包含しかつ記載の実施形態の「基本的特徴及び新規特徴には実質上影響を及ぼさないもの」をも包含するものとする。In re Herz, 537 F.2d 549, 551-52, 190U.S.P.Q. 461, 463 (CCPA 1976)(は原本重視)を参照し、さらにMPEP §2111.03を参照のこと。したがって、本明細書で使用するとき、用語「から本質的になる」は、「含む」と同等ではないと解釈すべきである。「からなる(consisting of)」は、微量元素を上回る他の成分と、本明細書に開示の組成物を投与するための実質的な方法工程とを排除することを意味する。前記移行用語でそれぞれ定義される態様は、本開示の範疇にある。
【0053】
本明細書で使用するとき、用語「容器」とは、細胞及び/又は組織を収納するように特別に構成された装置を指す。いくつかの実施形態において、かかる容器は、バイオマトリクス足場に適合するように設計されたバイオリアクターであってもよい。さらなる実施形態において、容器は、前記足場の脱細胞化加工用及び/又は再細胞化加工用に構成されてもよい。
【0054】
用語「培養」又は「細胞培養」とは、付着細胞(例えば、単層培養)又はスフェロイド若しくはオルガノイドの凝集浮遊培養のようないくつかの実施形態では、人工構造物中での、すなわちin vitro環境での細胞の維持を表す。用語「スフェロイド」は、すべてが同一の細胞種(例えば、細胞株からの凝集物)である凝集細胞懸濁液を示し、また、「オルガノイド」は、複数の細胞種から構成される凝集細胞懸濁液である。いくつかの実施形態において、これは、上皮細胞及びその間葉細胞パートナー細胞、典型的には内皮細胞及び/又は間質細胞である。前記細胞は、この分類の細胞の幹/前駆細胞であっても、成熟細胞であってもよい。「細胞培養系」は、本明細書では、細胞集団が成長し得る培養条件を指すのに使用される。
【0055】
「培地」は、本明細書では、細胞を培養、成長又は増殖させるための栄養溶液を指すのに使用される。培地は、限定されないが、特定状態(例えば、多能性状態、静止状態)における細胞の維持能力、細胞の成熟能力であって、場合により、具体的には、特定の系譜の細胞への前駆細胞の分化を促進する能力などの機能特性で特徴づけることができる。培地の非限定例は、クボタ培地及び肝臓用ホルモン限定培地であり、以降でさらに詳細に定義する。いくつかの実施形態において、培地は、細胞をある環境に存在させる又は導入するのに使用される「播種培地」であってもよい。その他の実施形態において、培地は、細胞の分化を促進するのに使用される「分化培地」であってもよい。かかる培地は、「基本培地」、又は栄養素と鉱物とアミノ酸と糖類と微量元素の混合物から構成されてもよく、また、ex vivoでの細胞の維持に用いることもできる。
【0056】
すなわち、「基本培地」は、組成中にアミノ酸、糖類、脂質、ビタミン類、鉱物、塩及び様々な栄養素から構成された緩衝液であって、細胞周囲の間質液の化学成分を模倣するものである。かかる培地は、場合により、血清を補給することで、生体内作用(例えば、増殖、分化)を働かすのに必要な必須シグナル伝達分子(ホルモン、成長因子)を提供することもできる。血清は、培養に使用される細胞種に自己移植されてもよいが、もっとも一般的には、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマなどからの血清のように農業用又は食品用に通常屠殺された動物由来の血清である。血清が補給された培地は、場合により、血清添加培地(SSM)と称されることもある。
【0057】
多くの市販形態の基本培地は、上皮幹細胞/前駆細胞に有用であるが、細胞の幹細胞形質を保持するように改変する必要がある。内胚葉上皮細胞を未分化状態(すなわち、幹細胞)で保存するための研究(Kubota et al, PNAS, 2000; 97(22): 12132-12137)が示されており、血清を含まず、低酸素濃度(1~2%)で、銅を有さず、サイトカイン及び成長因子を含まず、カルシウム濃度が0.5mM未満であり、インスリンとトランスフェリン/feが補強されており、アルブミンなどの関連キャリア分子と錯体を形成する純遊離脂肪酸混合物と場合により(厳密に必要ではないが)高密度リポタンパク質などのリポタンパク質とを併せ持つ、培地を使用し得る。幹細胞用に最適化されたかかる培地は、内胚葉幹細胞用に開発されており、「クボタ培地」と呼ばれ、以降に定義する。内胚葉幹細胞は、何か月かかけて自己増殖型へ拡張することも可能である(Kubota and Reid PNAS 2000; 97(22): 12132-12137)。幹細胞としての上皮細胞の安定性は、細胞をクボタ培地のヒアルロナン基質上で、又はヒアルロナンヒドロゲルで、又はヒアルロナンが補給された培地で培養すれば、場合により向上する可能性がある。Y. Wang, H.L. Yao, C.B. Cui et al. Hepatology. 2010; 52(4): 1443-54、US 8,802,081、これらを参照により本明細書に
組み込む。
【0058】
前駆体、例えば肝芽細胞及び委任前駆細胞などの後期成熟系譜段階は、自己増殖性を限定していたが、自己増殖性を拡張する能力も相当有しており、前記拡張条件は、クボタ培地に様々な成長因子及びサイトカイン、例えばHGF、EGF、FGF型、IL-6、IL-11などを補給して、III型及び/又はIV型コラーゲンとラミニンを包含するマトリクス基質を使用することからなる。(例えば、Kubota and Reid PNAS 2000; 97(22): 12132-12137; Turner et al;Journal of Biomedical Biomaterials. 2000; 82(1): pp. 156-168; Y. Wang, H.L.Yao, C.B. Cui et al. Hepatology. 2010 Oct 52(4):1443-54を参照し、これらを参照により本明細書に組み込む。)
本明細書で使用するとき、「分化」とは、特定条件により細胞が、成体特異遺伝子産物を産生する成体細胞種へと成熟することを表す。
【0059】
用語「同等」又は「生物学上同等」は、特定分子、生物由来物質又は細胞物質に言及しかつ所望の構造又は機能性をなお維持しながら必要最低限の一致を示すものを表すときに互換的に使用される。
【0060】
本明細書で使用するとき、用語「発現」とは、ポリヌクレオチドがmRNAに転写される過程及び/又は転写mRNAがその後、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質に翻訳される過程を指す。ポリヌクレオチドがゲノムDNA由来である場合、発現は、真核細胞内のmRNAのスプライシングを包含することもある。遺伝子の発現量は、細胞又は組織試料中のmRNA又はタンパク質の量を測定することにより求めることができ、さらに、複数の遺伝子の発現量を求めることで、特定試料における発現プロファイルを立証することも可能である。
【0061】
本明細書で使用するとき、用語「細胞外マトリクス」又は「ECM」とは、1つ以上の細胞表面に隣接した細胞によって分泌される様々な生物活性分子から構成されかつ細胞及び組織又はそれらから構成された臓器の構造上及び/又は機能上のサポートに関わる、複合的な足場を指す。具体的なマトリクス構成成分及びその濃度は、具体的な組織種、組織学的構造、臓器及びその他のスーパー細胞組織と関連している可能性がある。本開示と関連する細胞外マトリクスの構成成分としては、限定されないが、コラーゲン、コラーゲン関連マトリクス構成成分及び成長因子が挙げられる。
【0062】
典型的なコラーゲンとしては、任意の及びすべての種類のコラーゲン、例えば、限定されないが、I型コラーゲンからXXIX型コラーゲンまでが挙げられる。バイオマトリクス足場は、天然の生物組織中に含まれている1つ以上のコラーゲンを少なくとも約50%、約60%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%、約98%、約99%、約99.5%又はそれより多く含んでもよい。いくつかの実施形態において、コラーゲンは架橋及び/又は非架橋である。バイオマトリクス足場中のコラーゲンの量は、当該技術分野において既知でかつ本明細書に記載の様々な方法、例えば、限定されないが、ヒドロキシプロリン含有量を求める方法により求めることができる。コラーゲンの架橋特徴又は非架橋特徴を求める典型的な方法、例えば、その溶解特性を観察することによるものも存在する。例えば、D. R. Eyre,* M. Weis, and J. Wuを参照のこと。Advances in collagen cross-link analysis Methods, 2009; 45 (1):65-74(describing analysis of cross-linking by standard methods in the field ofcollagen chemistry)。例えば、コラーゲンは、緩衝液中に1M以下の塩濃度で溶解するか否かに基づいて架橋していることを求めることができる。
【0063】
典型的なコラーゲン関連マトリクス構成成分としては、限定されないが、接着分子、付着タンパク質、L-及びP-セレクチン、ヘパリン結合性成長関連分子(HB-GAM)、トロンボスポンジンI型受容体(TSR)、アミロイドP(AP)、ラミニン、ナイドジェン/エンタクチン、フィブロネクチン、エラスチン、ビタミン類、プロテオグリカン(PG)、コンドロイチン硫酸PG(CS-PG)、デルマタン硫酸-PG(DS-PG)、多数の小型ロイシンリッチプロテオグリカン(SLRP)ファミリー、例えば、バイグリカン及びデコリン、ヘパリン-PG(HP-PG)、グリピカン、シンデカン及びパールカンなどのヘパラン硫酸-PG(HS-PG)、並びにヒアルロナン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラチン硫酸及びヘパリンなどのグリコサミノグリカン(GAG)が挙げられる。
【0064】
いくつかの実施形態において、バイオマトリクス足場は、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ナイドジェン/エンタクチン、エラスチン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン(GAG)、成長因子、ホルモン、及び様々なマトリクス構成成分に結合したサイトカイン(任意の組み合わせで)を含むか、からなるか、又はから本質的になる。バイオマトリクス足場は、天然の生物組織で見られるコラーゲン関連マトリクス構成成分、ホルモン及び/又はサイトカインのうち1つ以上を少なくとも約50%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%、約98%、約99%、約99.5%又はそれより多く含んでもよく、かつ/あるいは、少なくとも約50%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%、約98%、約99%、約99.5%又はそれより多くの濃度で存在する天然の生物組織で見られる前記構成成分のうちの1つ以上を有してもよい。
【0065】
いくつかの実施形態において、バイオマトリクス足場は、組織中にあることが知られているコラーゲン関連マトリクス構成成分、ホルモン及び/又はサイトカインのすべて又は大部分を含む。その他の実施形態において、バイオマトリクス足場は、コラーゲン関連マトリクス構成成分、ホルモン及び/又はサイトカインを、天然の生物組織で見られるのに近い濃度(例えば、天然の生物組織に含まれている約50%、約60%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約98%又は100%の濃度)で含むか、からなるか、又はから本質的になる。
【0066】
典型的なマトリクス結合シグナル伝達分子としては、限定されないが、表皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、神経成長因子(NGF)、神経栄養因子、インターロイキン、白血病抑制因子(LIF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、骨形成因子、幹細胞因子(SCD)、コロニー刺激因子(CSF)GM-CSF、エリスロポエチン、トロンボポエチン、ヘパリン結合性成長因子、IGF結合タンパク質、胎盤増殖因子、及びWntシグナルが挙げられる。
【0067】
典型的なサイトカインとしては、限定されないが、インターロイキン、リンホカイン、モノカイン、コロニー刺激因子、ケモカイン、インターフェロン及び腫瘍壊死因子(TNF)が挙げられる。バイオマトリクス足場は、天然の生物組織で見られるマトリクス結合性成長因子及び/又はサイトカインのうちの1つ以上を少なくとも約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%、約98%、約99%、約99.5%、100%又はそれより多く含んでもよく、かつ/あるいは、少なくとも約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%、約98%、約99%、約99.5%、100%又はそれより多くの濃度で存在している、天然の生物組織で見られる前記成長因子及び/又はサイトカイン(任意の組み合わせで)のうちの1つ以上を有してもよい。
【0068】
いくつかの実施形態において、バイオマトリクス足場は、生理的濃度又は近生理的濃度の、天然組織中にあることが知られている及び/又は組織中で検出されるマトリクス結合性成長因子、ホルモン及び/又はサイトカインの多く又は大部分を含み、また、その他の実施形態において、バイオマトリクス足場は、マトリクス結合性成長因子、ホルモン及び/又はサイトカインのうちの1つ以上を、天然の生物組織中で見られる前記生理的濃度と同様の又はそれに近い濃度(例えば、比較すると、わずか約50%、約40%、約30%、約25%、約20%、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%、約0.5%の差)で含む。バイオマトリクス足場中に存在する成長因子又はサイトカインの量又は濃度は、当該技術分野において既知の及び本明細書に記載の様々な方法、例えば、限定されないが、様々な抗体解析及び成長因子アッセイなどにより求めることができる。
【0069】
本明細書で使用するとき、用語「機能性」は、任意の分子、生物由来物質又は細胞物質を改変して特有の特異的効果を達成しようとするのに使用され得る。
本明細書で使用するとき、用語「遺伝子」は、RNAが翻訳領域(例えば、mRNA)であるか非翻訳領域(例えば、ncRNA)であるかにかかわらず、mRNA分子に転写される任意の核酸配列を幅広く包含するように意図される。
【0070】
本明細書で使用するとき、用語「産生」及びその均等物(例えば、産生する、産生されたなど)は、本開示のマイクロ臓器又は生物工学による組織を実存させる方法工程を指すときに、「生成」及びその均等物と互換的に使用される。
【0071】
「肝臓用ホルモン限定培地」又は「HDM-L」は、本明細書で使用するとき、幹細胞から成熟細胞への分化に定番の因子を含んでおり、かかる培地は、ホルモン、成長因子及びさまざまな栄養素の混合物が補給された基本培地から一般に構成されており、また、特異的細胞種、例えば実質細胞の発現又は分化には、血清が含まれていないものを利用する。いくつかの実施形態において、前記培地は、幹細胞用に定義されたクボタ培地に、細胞の分化に必要なホルモン及び因子をさらに補給することによって調製されてもよい。かかる分化培地に使用される典型的な成長因子は、Y. Wang, H.L. Yao, C.B. Cui et al. Hepatology. 2010 Oct52(4):1443-54及び米国特許第8,404,483号に開示されており、これらの全体を参照により本明細書に組み込む。本開示の態様は、実質系譜及び非実質系譜の両者並びに/又は上皮系譜及び間葉系譜の幹細胞及び前駆細胞を分化して成熟肝組織を得るように設計された実験全体で特異的HDM-1指定「BIO-LIV-HDM」に関する。さらに、BIO-LIV-HDM-Lには、実質細胞(星細胞、周皮細胞、内皮細胞)であって前駆体及び成熟型の両者、神経細胞であって前駆体及び成熟型の両者、並びに造血細胞であって前駆体及び成熟型の両者を包含する様々な非実質細胞種に必要とされる成長因子とホルモンも補給した。
【0072】
本明細書で使用するとき、「ヒアルロナン」又は「ヒアルロン酸」とは、ウロン酸と、グルコサミンの二糖単位及びβ1-4、β1-3結合でつながったグルロン酸並びにそれらの塩から構成されるアミノ糖[1-3]とのポリマーを指す。そのため、ヒアルロナンという用語は、天然ヒアルロナンと合成ヒアルロナンの両者を指す。
【0073】
本明細書で使用される「ヒドロゲル」は、3次元ネットワーク内の水性培地のかなりの割合を、前記水性培地に溶解することなく保持しているポリマー鎖によって形成された3次元ネットワークを表すものである。
【0074】
本明細書で使用するとき、用語「単離された」とは、他の物質を実質上含まない分子又は生物由来物質又は細胞物質を指す。
本明細書で使用するとき、「クボタ培地」とは、内胚葉幹細胞用に設計された血清を含まないホルモン限定培地であって、前記内胚葉幹細胞を自己増殖区画モードで(例えば、ヒアルロナン基層上で又はヒアルロナンを含む緩衝液中で)細胞増殖的に拡張することができる培地を指す。クボタ培地は、銅を含まず、低カルシウム(<0.5mM)で、インスリン、トランスフェリン/Fe、純アルブミンに結合した純遊離脂肪酸混合物、そして場合により高密度リポタンパク質をさらに含む、任意の基本培地を指すことがある。クボタ培地又はそれと同等のものは、血清は含まず、ホルモンと成長因子と栄養素との純粋な規定混合物のみを含有する。ある実施形態において、前記培地は、銅を含まず、低カルシウム(<0.5mM)で、インスリン(5μg/mL)、トランスフェリン/Fe(5μg/mL)、高密度リポタンパク質(10μg/mL)、セレン(10-10M)、亜鉛(1012M)、ニコチンアミド(5μg/mL)、及び純アルブミン形態に結合した純遊離脂肪酸混合物が補給された、血清を含まない基本培地(例えば、RPMI1640又はDME/F12)から構成される。前記培地の非限定的な調製方法例は、他所に、例えば、Kubota H, Reid LM, Proceedings of the National Academy of Sciences(USA) 2000; 97:12132-12137, Y. Wang, H.L. Yao, C.B. Cui et al. Hepatology.2010; 52(4):1443-54, Turner et al; Journal of Biomedical Biomaterials. 2000;82(1): pp. 156-168; Y. Wang, H.L. Yao, C.B. Cui et al. Hepatology. 2010 Oct52(4):1443-54に発表されており、これらの開示内容を参照として本明細書に組み込む。クボタ培地は、特異的因子及び栄養補助剤を供給して血清を含まない条件下で特異的な拡散を可能にすることによって特異的細胞種用に設計されてもよい。例えば、肝芽細胞と共に使用するように改変されたクボタ培地は、肝芽細胞及びその子孫、委任前駆細胞のために設計されて、血清を含まない条件下でそれらの拡張を促進する。拡張は、自己増殖を併発するが、通常は(あったとしても)最小限の自己増殖を併発する。培地は、細胞がIV型コラーゲン及びラミニンの基質上にあれば、特に有効である。
【0075】
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」は互換的に使用され、任意の鎖長のヌクレオチドの高分子形、すなわちデオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチドのいずれか又はそれらの類似物を指す。ポリヌクレオチドは、任意の3次元構造を有している可能性があり、既知の又は未知の任意の機能性を発揮し得る。ポリヌクレオチドの非限定例を以下に挙げる。遺伝子又は遺伝子フラグメント(例えば、プローブ、プライマー、EST又はSAGEタグ)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、RNAi、リボザイム、cDNA、組み換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ及びプライマー。
【0076】
ポリヌクレオチドは、変性ヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチド及びヌクレオチド類似物を含んでもよい。もしあれば、ヌクレオチド構造への変性は、ポリヌクレオチドの会合前に付与しても会合後に付与してもよい。ヌクレオチドのシークエンスは、非ヌクレオチド構成成分で中断してもよい。ポリヌクレオチドは、重合後に、例えば、標識成分との結合によってさらに変性することも可能である。前記用語はさらに、二本鎖分子と一本鎖分子の両方を指す。別段の定め又は要求がない限り、この技術の任意の態様、すなわちポリヌクレオチドは、二本鎖形と、二本鎖形を作り上げることが知られている又は予測される2つの各相補的一本鎖形の両方を包含する。
【0077】
本明細書で使用するとき、用語「臓器」は、個体の特定部位の構造物であり、その場合、個体の特定の機能(1つ又は複数)は局所的に実行されるものであり、形態学上は別個のものである。臓器の非限定例としては、皮膚、血管、隔膜、胸腺、腎臓、心臓、肝臓、臍帯、腸、神経、肺、胎盤、すい臓、甲状腺及び脳が挙げられる。臓器は、組織の起源として使用されてもよく、例えば、胎児臓器、新生児臓器、小児臓器、幼児臓器又は成体臓器を使用して、本明細書に開示した使用にとって重要な細胞集団を得てもよい。
【0078】
用語「タンパク質」、「ペプチド」及び「ポリペプチド」は、アミノ酸、アミノ酸類似物又はペプチド模倣薬のうちの2つ以上のサブユニットの化合物を指すために互換的にかつ広義に使用される。前記サブユニットは、ペプチド結合によって結合され得る。別の態様において、前記サブユニットは、他の結合、例えば、エステル、エーテルなどによって結合されてもよい。タンパク質又はペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含む必要があり、タンパク質のシークエンス又はペプチドシークエンスを構成し得るアミノ酸の最大数に制限は設けない。本明細書で使用するとき、用語「アミノ酸」とは、天然及び/若しくは非天然又は合成のアミノ酸のいずれかを指し、グリシンとそのD-及びL-光学異性体の両者、アミノ酸類似物並びにペプチド模倣薬が挙げられる。
【0079】
本明細書で使用するとき、用語「対象」は、任意の動物を意味するものとする。いくつかの実施形態において、対象は哺乳動物であってもよく、さらなる実施形態において、対象はヒト、マウス又はラットであってもよい。
【0080】
用語「組織」は、本明細書では、生存している若しくは死亡した生物の組織、又は生存している若しくは死亡した生物由来の任意の組織、又は生存している若しくは死亡した生物を模倣するように設計された任意の組織を指すのに使用される。前記組織は、健康であっても、病気であってもよく、及び/又は遺伝子変異していてもよい。本明細書で使用するとき、用語「天然組織」又は「生物組織」及びそれらの変異体とは、生物から派生したときからその自然な状態又は非変性の状態で存在しているような生物組織を指す。「マイクロ臓器(micro-organ)」とは、「天然組織」を模倣する「生物工学による組織」の断片を指す。
【0081】
生物組織としては、生物の臓器又は身体の一部若しくは部位を作り上げる任意の単一組織(例えば、相互接続可能な細胞群)あるいはその組織群を挙げることができる。組織は、胸部を包含する身体の部位で見られるような、均質な細胞物質を含んでいても複合構造物であってもよく、例えば、肺組織、骨格組織及び/又は筋肉組織を挙げることができる。典型的な組織としては、限定されないが、肝臓、肺、甲状腺、皮膚、すい臓、血管、膀胱、腎臓、脳、胆管、十二指腸、腹部大動脈、腸骨静脈、心臓及び腸に由来するものが挙げられ、これらの任意の組み合わせも包含する。
【0082】
本明細書で使用するとき、患者の疾患を「処置すること」又はその「処置」とは、(1)疾病にかかりやすいか若しくはその症状をまだ表していない対象が症状若しくは疾病を発症するのを予防すること、(2)疾病を抑制すること若しくはその発達を停止すること、又は(3)疾病若しくはその症状を改善させるか若しくはその退行を生じさせることを指す。当該技術分野で理解されているように、「処置」は、臨床結果を包含する利益又は所望の結果を得るための手法である。本方法の目的において、利益又は所望の結果は、限定されないが、1つ以上の症状の軽減若しくは改善、病気(疾病を包含する)の程度の軽減、病気(疾病を包含する)の容態の安定化(すなわち、悪化しないこと)、病気(疾病を包含する)の遅延若しくは緩徐化、病気(疾病を包含する)の進行、改善もしく寛解、容態及び鎮静(部分的か全身かにかかわらず)、検出可能か若しくは検出不可能かのうち1つ以上を包含し得る。
【0083】
II.略語
本開示の一部は、特定の用語を指す頭字語を利用する。細胞集団に関する頭字語は、本明細書中では、種属を示すために小文字で表すことができる。つまり、r=ラット、m=マウス、h=ヒト。分子に関する頭字語がイタリック体で印字されている場合、それは遺伝子を指し、標準フォントの場合は、遺伝子でコードされたタンパク質を指す。
【0084】
以降は、本明細書で使用される略語の非限定的なリストである。ACOX(アシルコエンザイムAオキシダーゼ)、APOL6(アポリポタンパク質L6)、AFP(αフェトプロテインであって、肝芽細胞によって発現される遺伝子特徴)、ASMA(α平滑筋アクチン)、ALB(アルブミン)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、ccK18(分割カスパーゼK18であって、分泌されたときは細胞壊死の指示剤)、C/EBP(CCAAT/エンハンサー結合タンパク質α)、CD(一般的な決定因子)、CD31(血小板内皮細胞抗原、すなわちPECAMであって、内皮細胞の表面マーカー)、CD34(造血幹/前駆細胞抗原)、CD45(大部分の造血細胞亜集団に含まれている一般的な白血球抗原)、CD133(プロミニンであって、内皮細胞前駆体及び実質細胞前駆体に含まれている表面マーカー)、CSF(コロニー刺激因子)、CYP[薬剤代謝並びに/又はコレステロール、ステロイド及び脂質の合成に関連する多くの反応に触媒作用するシトクロムP450モノオキシゲナーゼであって、実質細胞の初期系譜段階で発現した形態(CYP3A7、及び場合によりCYP1B1)及びその他の後期系譜段階(例えば、CYP1A1、CYP2C8、CYP3A4)が存する]、CK(サイトケラチン)、CK7(胆汁性細胞に関連するサイトケラチン)、CK8及びCK18(全上皮細胞に関連するサイトケラチン)、EGF(表皮細胞成長因子)、EpCAM(上皮細胞接着分子)、FBS(ウシ胎児血清)、FGF(繊維芽細胞増殖因子)、bFGF(塩基性線維芽細胞成長)、GAG[グリコサミノグリカンであって、その大部分が特異的硫酸化パターンを有する二量体ポリマー(ウロン酸及びアミノ糖)でありかつシグナル変換過程でタンパク質と協調的に多種多様な役割を果たす炭化水素鎖]、GATA(DNA配列との亜鉛結合性DNA結合ドメインを有する転写因子、GATA)、GATA-2(GATA結合タンパク質2であって、造血細胞遺伝子発現の制御因子)、HB(胚芽細胞)、HDL(高密度リポタンパク質)、hGH(ヒト成長ホルモン)、HGF(肝細胞増殖因子)、HpSC(肝幹細胞)、HDM(ホルモン限定培地)、H&E(ヘマトキシリン及びエオシン)、HNF(幹細胞核因子)、HNF1α(すべての肝実質細胞前駆体で発現した幹細胞核因子ホメオボックスA)、HNF1b(幹細胞核因子ホメオボックスBであって、肝-膵特異化で発生的に関与したことが分かった)、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、IGF(インスリン様成長因子であって、インスリンと相同性をもちかつ関連する特異的GAGに応じてマイトジェン又は分化シグナルのいずれかの機能を果たすもの)、IGF-I(インスリン様成長因子Iであって、成体肝細胞において主要制御因子として周知のもの)、IGF-II(インスリン様成長因子Iであって、胎児肝臓細胞における主要制御因子)、IL(インターロイキン)、IL7-R(インターロイキン7受容体であって、リンパ球の発達に重要なもの)、JAG1(ジャギド1であって、CD339とも称され、運命決定に関与するNotchシグナル伝達経路における鍵遺伝子)、K18(全サイトカイン18であって、細胞から放出された場合には細胞死又は壊死を示すもの)、KM(クボタ培地)、LGR5(ロイシン豊富リピート含有Gタンパク質共役型受容体5であって、腸、肝臓及びすい臓において重要な幹細胞マーカー)、LDH(乳酸脱水素酵素)、LDLR[低密度リポタンパク質(LDL)受容体]、LYVE-1(リンパ球内皮ヒアルロナン細胞受容体)、MST1(マクロファージ刺激剤1)、MMP[マトリクスメタロプロテアーゼ(又はペプチダーゼ)]、MMP2[マトリクスメタロプロテアーゼ2であって、72kDaのIV型コラーゲン又はゼラチナーゼA(GELA)]、MMP9(マトリクスメタロプロテアーゼ9であって、92kDaのIV型コラーゲン又はゼラチナーゼB(GELB)としても知られ、細胞外マトリクスの分解に関与する亜鉛-メタロプロテナーゼファミリーの酵素の1種であるマトリキシン)、MRP2(多剤耐性関連タンパク質2)、NMR(核磁気共鳴)、PAR(プロテアーゼ活性化受容体)、PAS(過ヨウ素酸シッフ試薬)、PDGF(血小板由来成長因子)、RAG1(組み換え活性化遺伝子1)、SEM(走査電子顕微鏡)、SCF(幹細胞因子)、SCTR(セクレチン受容体)、SLC4A2[溶質キャリアファミリー4(アニオン交換体)、メンバー2]、TGF(トランスフォーミング増殖因子)、TEM(透過電子顕微鏡)、VEGF(血管内皮細胞増殖因子)。
【0085】
III.本開示を実施するための形態
本開示の態様は、生物工学による組織を生成するための組成物及び方法、並びにその産生のために構成された容器に関する。
【0086】
特定の実施形態は、(a)播種培地中の細胞懸濁液をバイオマトリクス足場中に又はその上に導入することと、(b)初期培養期間後に播種培地を分化培地と置き換えることとを含む、生物工学による組織を生成する方法に関する。いくつかの実施形態において、本方法は、かかる過程を実行するために特別に設計された容器内で行われる。本開示の態様は、容器に関する。いくつかの実施形態において、本容器は、細胞の血管サポートを模倣するように設計された流路を伴って構成されている。さらなる実施形態において、このことは、血管樹のマトリクス残部を備える3次元マトリクス足場を用いることにより達成され得る。
【0087】
いくつかの実施形態において、播種は複数回のインターバルで行われ、次いで静止時間が続く。このインターバルと静止時間は、約1~約15分までの期間、例えば、約1分、約2分、約3分、約4分、約5分、約6分、約7分、約8分、約9分、約10分、約11分、約12分、約13分、約14分、及び/又は約15分で変えてもよい。導入される細胞の数及びその濃度も同様に変えてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、足場の湿式重量1グラム当たり約1000万~1200万個の細胞を一定のインターバルで導入することができる。いくつかの実施形態において、導入速度は、一定の数のインターバル、つまり1回のインターバル、2回のインターバル、3回のインターバル、4回のインターバル、又はより多くのインターバルで15mL/分とし、一定の数のインターバルの後、速度を例えば1.3mL/分まで下げてもよい。
【0088】
いくつかの実施形態において、細胞及び播種培地は、導入前に、例えば4℃で4~6時間プレインキュベートしてもよい。
いくつかの実施形態において、バイオマトリクス足場は、特定生物から導かれてもよいが、前駆細胞を派生する生物と同一又は異なっていてもよい。
【0089】
いくつかの実施形態において、バイオマトリクス足場は、生物組織試料を複数の緩衝液及びリンス液で灌流して組織を脱細胞化して、細胞外マトリクス構成成分のみ又は主に細胞外マトリクス構成成分を保持することで生物組織からマトリクス足場を得ることにより生物組織から調製されてもよく、そして組織の組織像の内部構造を維持する。別の考えられる実施形態において、完全な形のバイオマトリクス足場は、市販の供給源から得てもよい。
【0090】
生物工学による組織を生成することができる培地は、組織の所望の特徴に基づいて選択され得る。例えば、培養は、Y. Wang, H.L. Yao, C.B. Cui et al. Hepatology. 2010 Oct52(4):1443-54に記載されているように、前駆細胞集団を特定臓器の細胞又は特定組織種へ分化及び/又は成長させるのを促す特殊因子の存在に基づいて選択されてもよく、前記文献の全体を本明細書に参照として組み込む。さらに、生物工学による組織を生成する過程の様々な生成段階では、様々な培地、例えば、播種培地又は分化培地が関連している可能性もある。
【0091】
因子及びその他の培地構成成分を使用して特異的結果を達成することに関するさらなる開示は、米国特許出願第12/213,100号、及び米国特許第8,404,483号に開示されており、これらの全体を本明細書に参照として組み込む。ある実施形態において、培地は、細胞分化を促進する培地である。
【0092】
いくつかの実施形態において、培地はさらに、1つ以上の細胞成長因子又は細胞分化因子、例えば、本明細書に前述のものも含む。
いくつかの実施形態において、播種培地は、約0.3mMから0.5mMの濃度のカルシウム、微量元素(例えば、銅以外の、セレン及び亜鉛)、純遊離脂肪酸混合物(例えば、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸)、1つ以上の脂質結合タンパク質(例えば、HDL)、インスリン、及びトランスフェリン/feを1つ以上含む。いくつかの実施形態において、播種培地は血清を含んでおり、血清は場合により、細胞懸濁液を調製するのに使用される酵素を不活性化するのに使用される。かかる血清の非限定例は、ウシ胎児血清(FBS)である。いくつかの実施形態において、血清を添加する場合、それを、典型的には約6時間~24時間以内に及び/又はできるだけ早く、血清を含まない培地(例えば、血清を含まないHDM)と置き換える。
【0093】
いくつかの実施形態において、分化培地は、少なくとも約0.5mMの濃度のカルシウム、微量元素、エタノールアミン、グルタチオン、アスコルビン酸、鉱物、アミノ酸、及びピルビン酸ナトリウム、純遊離脂肪酸混合物、1つ以上の脂質結合タンパク質(例えば、HDL)、1つ以上の糖類、1つ以上のグルココルチコイド、インスリン、トランスフェリンf/e、1つ以上のホルモン並びに/成長因子を1つ以上含み、成長因子は、例えば、実質細胞[プロラクチン、成長ホルモン、グルカゴン、及び甲状腺ホルモン(例えば、トリヨードチロニン又はT3)、上皮成長因子(EGF)、肝細胞成長因子(HGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、インスリン様成長因子(IGF)、骨形成タンパク質、wntリガント、及び環状アデノシン一リン酸塩]を増殖及び/若しくは維持するためのもの、並びに/又は非実質細胞[アンジオポエチン、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、神経成長因子、幹細胞因子、白血病抑制因子(LIF)、コロニー刺激因子(CSF)、トロンボポエチン、血小板由来成長因子(PDGF)、エリスロポエチン、インスリン様成長因子(IGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、及び内皮成長因子(EGF)]を増殖及び/若しくは維持するためのものであるが、これらに限定されない。
【0094】
いくつかの実施形態において、細胞懸濁液は、特定生物由来であってもよく、バイオマトリクス足場を派生する生物と同一又は異なっていてもよい。幹細胞又は前駆細胞は、限定されないが、America Type Culture Collection(ATCC,http://www.atcc.org/)などの直接小売業者又は商業上のリポジトリを包含する市販の供給源から入手可能である。あるいは、幹細胞又は前駆細胞を試料から生成及び/又は単離する方法が当該技術分野に開示されている。典型的な方法としては、米国特許出願第12/926161号に開示されており、その全体を参照として本明細書に組み込む。細胞の非限定的供給源としては、肝臓、胆管、胆のう、肝-膵共通管、すい臓、十二指腸、骨髄、及び内皮(例えば、胆管若しくは胆のうからの肝幹細胞若しくは胆管幹細胞、骨髄幹細胞、及び内皮幹細胞)が挙げられる。さらなる例としては、任意の供給源からの胚性幹(ES)細胞又は人工多能性幹(iPS)細胞が挙げられる。
【0095】
いくつかの実施形態において、細胞懸濁液集団は、同一種の細胞のみを含む均質な細胞集団であってもよく、又は種々のタイプの細胞を含む不均一な細胞集団であってもよい。細胞懸濁液集団中の細胞の数及び濃度は、細胞懸濁液、培地、培養寸法、所望の臓器/組織の特性、及びその他の関連因子に基づいて決定されてもよい。いくつかの実施形態において、前駆細胞集団中の細胞の数は、幹/前駆細胞の成長速度及び分化条件によって決定される。いくつかの実施形態において、幹/前駆細胞集団中の細胞の数は、培地に含まれる成長因子及びその他の構成成分によって決定される。
【0096】
いくつかの実施形態において、細胞懸濁液は、実質細胞(例えば、BTSC、HpSC、肝芽細胞、膵幹細胞、肝又は膵委任前駆細胞、肝細胞、胆管細胞、島、腺房細胞)及び非実質細胞を含み、ここで、非実質細胞としては、間葉細胞(例えば、血管芽細胞、又は星細胞若しくは内皮細胞の前駆体、成熟星細胞又は成熟内皮細胞)の亜種、神経前駆細胞及び成熟神経細胞、並びに造血細胞前駆体及び成熟造血細胞(例えば、リンパ球前駆体、骨髄性細胞、ナチュラルキラー細胞、血小板、赤血球細胞又はそれらの成熟した対応物)が挙げられる。いくつかの実施形態において、前記細胞は、約10%/90%、20%/80%、30%/70%、40%/60%、50%/50%、60%/40%、70%/30%、80%/20%、及び10%/90%の割合である。いくつかの実施形態において、細胞懸濁液は、少なくとも約50%の前駆体及び/又は幹細胞を含んでよい。いくつかの実施形態において、細胞懸濁液は、最終分化肝細胞を含まない。
【0097】
いくつかの実施形態において、培養の遺伝子又はタンパク質の発現は、生物工学による組織を生成するのに十分な時間にわたってモニターすることができる。ある実施形態において、前駆細胞の培養集団の特定の時間における遺伝子又はタンパク質の発現プロファイルは、(i)早期又はその後における前駆細胞の培養集団、(ii)対照試料である前駆細胞集団、(iii)臓器又は組織由来の分化細胞集団から選択される細胞集団の遺伝子又はタンパク質の発現プロファイルと比較することができる。同様に、組織診断は、所望の目標組織の初期又は後期の発達段階と比較することができる。
【0098】
理論に縛られないが、生物工学による組織を生成するのに十分な時間にわたって、培養細胞の遺伝子又はタンパク質の発現プロファイル及び/若しくは組織診断は、臓器若しくは組織由来の分化細胞集団又はそのほとんど分化していない前駆体集団と類似したものへと移行する。
【0099】
本開示の態様は、3次元バイオマトリクス足場であって、前記足場を派生する臓器の血管樹のマトリクス残部を含むものに関する。いくつかの実施形態において、前記足場はさらに、前記足場を派生する臓器に含まれている天然コラーゲンも含む。
【0100】
本開示のさらなる態様は、本明細書に開示の組成物及び方法を用いて作製される生物工学による組織及び/又はマイクロ臓器に関する。いくつかの実施形態において、結果として得られる組織は、天然肝臓の成熟系譜依存又は帯状分布依存の表現型特徴であって、例えば、限定されないが、(a)門脈周囲領域、(b)実質細胞及び間葉細胞の類洞板を有する領域を示す。表現型形質としてはさらに、二倍体細胞に関する門脈周辺の形質、天然肝臓の中央腺房領域で見られる成熟実質細胞及び成熟間葉細胞の形質、中心体周辺領域の実質細胞及び間葉細胞の形質も挙げられる。生物工学による組織及び/又はマイクロ臓器はさらに、(i)有窓内皮細胞と関連する倍数体肝細胞、及び/又は(ii)中心静脈の内皮につながった二倍体肝細胞、及び/若しくは星細胞に関連する胆管細胞も含む。生物工学による組織及び/又はマイクロ臓器がすい臓用に設計されている場合、それはさらに腺房及び島細胞も含み得る。
【0101】
いくつかの実施形態において、生物工学による組織及び/又はマイクロ臓器の門脈周囲領域には、肝幹細胞、肝芽細胞及び委任前駆細胞を含む幹細胞/前駆細胞ニッチの形質が豊富にある。いくつかの実施形態において、生物工学による組織及び/又はマイクロ臓器の実質細胞はさらに、幼若(二倍体)肝細胞及び胆管細胞も含む。いくつかの実施形態において、門脈周囲領域の生物工学による組織及び/又はマイクロ臓器の間葉細胞は、星細胞、周皮細胞、平滑筋細胞及び内皮細胞の前駆体も含む。いくつかの実施形態において、生物工学による組織及び/又はマイクロ臓器の中央腺房領域には、成熟肝細胞及び/又は胆管細胞を含む成熟実質細胞の形質が豊富にある。いくつかの実施形態において、生物工学による組織及び/又はマイクロ臓器の実質細胞はさらに、肝細胞及び胆管細胞も含む。いくつかの実施形態において、門脈周囲領域の生物工学による組織及び/又はマイクロ臓器の間葉細胞は、星細胞、周皮細胞、平滑筋細胞、神経細胞及び内皮細胞も含む。いくつかの実施形態において、生物工学による組織及び/又はマイクロ臓器の中心体周辺領域は、成熟実質細胞、肝細胞、P450s(例えば、P450-3A)のように後期遺伝子を発現するものの形質が豊富にあり、これらのうちのいくつかは倍数体であり、また、いくつかはアポトーシスを生じる。いくつかの実施形態において、生物工学による組織及び/又はマイクロ臓器の中心体周辺領域の実質細胞はさらに、有窓内皮も含む。
【0102】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示の生物工学による組織及び/又は3次元マイクロ臓器は、in vivo又はex vivoでの使用に有用であり得る。可能性のある用途の非限定例としては、組織の形態形成、細胞移動、クローン系譜、細胞の運命予測、異種間の発育タイミング、及び細胞種特異性ゲノム発現を研究するための調査用途、特定臓器における高スループット薬物スクリーニング、細胞補充療法、又はその他のタイプの臓器特異的処置のためのモデルとしてのオルガノイドの使用、並びに移植が挙げられる。
【0103】
本開示の態様はまた、好適な容器及び/又は生物工学による組織又はマイクロ臓器の産生用培地を備えたキットも提供する。さらなる実施形態において、キットはさらに、生物工学による組織又はマイクロ臓器をどのようにして作り上げるかについての使用説明書を含んでいてもよい。
【0104】
IV.実施例
以降の実施例は、非限定的であり、また、本開示を実行に移す際に様々な例において使用可能な手順の例示である。さらに、本明細書において以降に開示の参考文献はすべて、その全体を参照として本明細書に組み込む。
【0105】
本明細書において以降に開示の調査用の試薬及び供給品は、次の企業から入手した。Abcam, Cambridge, MA; ACD Labs, Toronto, CA; Acris Antibodies, Inc.,San Diego, CA; Advanced Bioscience Resources Inc. (ABR), Rockville, MD; AgilentTechnologies, Santa Clara, CA; Alpco Diagnostics,Salem, NH; BD Pharmingen, San Jose, CA; Becton Dickenson, Franklin Lakes, NJ; Bethyl Laboratories, Montgomery, TX; BioAssaySystems, Hayward, CA; Cambridge; Isotope Laboratories, Tewksbury, MA; CarlZeiss Microscopy, Thornwood, NY; Carolina Liquid Chemistries, Corp.,Winston-Salem, NC; Charles River Laboratories International, Inc., Wilmington,MA; Chenomx, Alberta, Canada; Cole-Parmer, Court;Vernon Hills, IL; DiaPharma, West Chester Township,OH; Fisher Scientific, Pittsburgh, PA; Gatan, Inc.,Pleasanton, CA; Illumina, San Diego, CA; Ingenuity, Redwood City, CA; LifeTechnologies Corp., Grand Island, NY; LifeSpanBiosciences, Inc., Seattle, WA; Molecular Devices, Sunnyvale, CA; OlympusScientific Solutions Americas Corp., Waltham, MA; Polysciences,Inc., Warrington, PA; Research Triangle Labs (TRL), Research Triangle Park, NC;R&D Systems, Minneapolis, MN; RayBiotech,Norcross, GA; Santa Cruz Biotechnology, Inc., Dallas, TX; Sigma Aldrich, St.Louis, MO; Tousimis Research Corp., Rockville, MD;Qiagen, Germantown, MD; Umetrics, Umea, Sweden。
【0106】
実施例1-ヒト肝細胞の出所及び加工
ヒト胎児肝臓は、妊娠の選択的中絶によって入手し、認定代理人ABRによって提供された。実験で使用される組織は、17~19週までの胎児由来であった。研究プロトコルを再調査して、ノールカロライナ大学(Chapel Hill)のInstitutional ReviewBoard(IRB) for Human Research Studiesから承認を受けた。ヒト胎児肝細胞懸濁液の調製方法は、先行参考文献に記載されていた。詳しくは、肝臓を先ず、機械的に均質化した後、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)と、セレン1nMと、IV型コラーゲン300U/mlと、デオキシリボヌクレアーゼ0.3mg/mlと、抗生物質とが補給されたRPMI-1640細胞懸濁液に酵素的分散させた。高頻度に攪拌しながら32℃において30~60分間消化を行った。大部分の組織は2回の消化後に4℃において1100rpmでの遠心分離を要する。細胞ペレットを組み合わせて、細胞洗浄液(BSA0.1%と、セレン1nMと抗生物質を含むRPMI-1640)に再懸濁させた。細胞懸濁液は4℃において300rpmで5分間遠心分離することで赤血球を除去する。細胞ペレットを再び細胞洗浄液に再懸濁して、70μmナイロンセルストレーナー(Becton Dickenson)によってろ過した。1×106個の細胞アリコートを単離してRNA用に加工し、そしてqRT-PCR(t=0)を用いるアッセイ用対照として使用した。
【0107】
ヒト成体組織(n=3)はTriangle Research Laboratories(TRL)から急速冷凍組織として入手して、RNAシークエンシングによるmRNA発現用対照として使用した。細胞は、メーカーの使用説明書によってQiagen RNeasy Mini Kit(Qiagen)を使用してRNA用に加工した。3つのドナーからの結果は、胎児肝幹/前駆細胞(t=0)とバイオリアクター(t=14日)を比較するために平均を求めた。新たに単離したヒト成体肝細胞懸濁液は、典型的に使用される定肝細胞培地を、バイオリアクター実験での肝細胞分化用に設計された血清を含まないホルモン限定培地(HDM)と比較するためにTRIから入手した(BIO-LIV-HDM)。3枚の6ウェルサンドイッチ培養プレート(ヒトドナー当たり1枚)を2つの別個の培地条件で7日間培養した。各ドナーからは、各条件で3回ずつの培養を用意した。
【0108】
実施例2-バイオマトリクス足場の調製及び解析
ラット肝臓の脱細胞化
Wistar系ラット(体重250~300g)は、Charles River Laboratoriesから入手して、UNCDivision of Laboratory Animal Managementによって処理された動物施設に収容した。ラットには、実験に使用するまで無制限に給餌した。実験作業はいずれも、UNC Institutional Animal Use and Care Committeeガイドラインにより承認を受けかつそれに従って実行した。
【0109】
肝臓を脱細胞化してバイオマトリクス足場を作製するプロトコルは、これまでに記載されている。Wang Y., et al. (2011) Hepatology 53:293-305; Gessner, R.C. et al.(2013) Biomaterials 34:9341-9351。雄ラットは、ケタミン-キシラジンで麻酔してそれらの腹腔を開いた。門脈を20ゲージカテーテルでカニューレ処置することで肝臓の血管に灌流入口を設け、また、大動脈と肝臓動脈を切開して灌流出口を設けた。肝臓は腹腔から取り出して、灌流バイオリアクターに入れた。血清を含まないDMEM/F12(Gibco)300mlで肝臓を洗浄することによって血液を除去した。この後、高塩濃度緩衝液(NaCl)による90分間の灌流が続いた。肝臓内の既知の型のコラーゲンの溶解度は3.4M NaClであり、これは、それらすべてを不溶状態で保持するには十分であり、それに加えて、任意のマトリクス構成成分及びコラーゲンに結合したサイトカイン/成長因子又はコラーゲン結合マトリクス構成成分と同様である。肝臓は、血清を含まないDMEM/F12で15分間すすぎ洗いして脱脂緩衝液を除去した後、DNase100ml(100ml当たり1mg、Fisher)及びRNase(100mlにつき5mg、Sigma)を用いて灌流することで、あらゆる残留核酸異物を取り除いた。最終工程は、血清を含まないDMEM/F12で足場を1時間すすぎ洗いすることであらゆる残留塩又はヌクレアーゼを除去した。図11に画像を提示する。バイオマトリクス足場は、10%ウシ胎児血清(FBS)が補給されたクボタ培地を用いてMasterflex蠕動ポンプ(Cole-Parmer)によって1.3ml/分で2時間灌流して細胞播種用足場を刺激した。直ぐに胎児肝臓細胞を播種し、次いで刺激した。細胞懸濁液を適切に処置して、細胞懸濁液の調製に使用した酵素を除去するのであれば、足場刺激用SSMを用いるこの工程は除外することができる。
【0110】
コラーゲン解析
バイオマトリクス足場中のコラーゲンの量は、ヒドロキシプロリン(hyp)含有量に基づいて評価した。新鮮肝臓(n=5)試料とバイオマトリクス足場(n=6)試料を急速冷凍して粉末状に粉砕した。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて総タンパク質当たりのコラーゲン含有量を定量し、残渣300個/コラーゲンのヒドロキシプロリン値に基づいて総コラーゲンを推定した。アッセイはそれぞれ、Cytofluor Spectramax 250マルチウェルプレートリーダー(MolecularDevices)で測定した。ヒドロキシプロリン含有量を使用してコラーゲン保持率、次いで脱細胞化を評価した。これら分析はHPLCを使用して実行することで、新鮮組織からのコラーゲン量をバイオマトリクス足場(脱細胞化組織)と比較した。結果は、ヒドロキシプロリン(コラーゲンタンパク質に特異的なアミノ酸)の質量として示される。全コラーゲンの約99%が、以下のラット肝臓の脱細胞化を示すことが分かった(図1P)。
【0111】
バイオマトリクスの免疫組織化学的検査
バイオマトリクス足場は、OCTに組み込まれており、凍結切片用に凍結急速冷凍された。凍結切片を室温で1時間解凍した後、10%緩衝ホルムアルデヒドに固定した。固定後、切片を1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄し、次いで3%H2O2により室温で15分間内在性ペルオキシダーゼをブロックした。1×PBSで洗浄後、切片を2.5%PBS中ウマ血清により室温で1時間再度ブロックした。2.5%ウマ血清PBS液で希釈した一次抗体を添加して、4℃で一晩培養した。次の朝、切片をPBSで3回すすぎ洗いして、二次抗体を室温で30分間培養した。Nova Red基質(Vector)は展開剤として使用し、メーカーの使用説明書に従って調製した。Olympus IX70顕微鏡(Olympus)を使用して画像を撮影した。バイオマトリクス足場のヘマトキシリン及びエオシン染色により、脱細胞化後に細胞が残留していないことが示された(データは示さず)。脱細胞化後のバイオマトリクス足場のDNA/RNA含有量をさらに解析することで、DNA/RNA濃度がわずかであることが分かった。
【0112】
組織診断からは、あるべきI型、III型、IV型、V型及びVI型コラーゲンの存在が、アクチン全域のそれらの典型的な位置に示された(図1F図1J)。脱細胞過程中に維持される高オスモル濃度がコラーゲンを不溶化し続けたため、コラーゲンはバイオマトリクス足場に含まれている。アクチンブルー染色からも、細胞外マトリクスの主要構成成分であるプロテオグリカンの存在が定性的に示された(図1K図1I)。それらは、成長因子及びサイトカインに関する化学足場として知られており、これら因子の有効性及び活性に影響を及ぼす。基底膜細胞接着分子(エラスチン、フィブロネクチン及びラミニン)は、脱細胞化後に適切な帯状位置で示された(図1M図1O)。エラスチンとラミニンはいずれも、hHpSC及びその他の肝臓前駆体が残留する門脈周囲領域に含まれていた。フィブロネクチンは、マトリクス全体、すなわち全帯域にわたって示された。
【0113】
成長因子
ラット肝臓(新鮮組織)試料及びラット肝臓バイオマトリクス足場(脱細胞化組織)試料の、マトリクス結合生成長因子及びサイトカインの存在及び濃度について解析した。試料は、液体窒素で急速冷凍し、液体窒素温度で粉末状に粉砕して、解析のためにRayBiotechへ送った。半定量的成長因子解析は、RayBiotech(登録商標)HumanGrowth Factor Arrays G1 Series(RayBiotech)を用いて行い、結果は蛍光強度単位(FIU)で報告された。FIUは、非特異性結合に関する陰性対照からの知見により減少し、タンパク質濃度について標準化した。新鮮な脱細胞化されていないラット肝臓組織(n=3)において40個の成長因子を分析し、バイオマトリクス肝臓足場(n=3)と比較した。複数回行ったデータを平均した。ヒト成長因子に関するアッセイも開発されたが、ラット成長因子との交差反応で十分重複していることからラット組織への使用も可能である。新鮮組織及びバイオマトリクス足場それぞれ3つの試料を、40個の成長因子について解析した(図1A)。解析から、組織中にin vivoで見られる成長因子はすべてバイオマトリクス足場抽出物に残留していることが分かり、その大部分はin vivoよりも低濃度であったが、まだ十分に生理学上適切な濃度であった。特に重要なのは、FGF、PDGF及びVEGFといった複数の形態などの血管形成に関連する成長因子の存在と、EGF、ヘパリン結合性EGF、HGF、IGF I及びII並びにそれらの結合タンパク質、及びTGFなどの胞増殖及び分化にとって重要なものの存在とであった。これら成長因子の有効性は、多くの様々な生物学的機能性(有糸分裂並びに組織得的遺伝子発現)にとっても重要である。
【0114】
走査電子顕微鏡法(SEM)
脱細胞化肝臓バイオマトリクス足場の画像からは、門脈三分岐炎を含む天然肝臓の血管構造が維持されているが分かった(図1B)。図1Bには、胆管図1C、肝臓動脈及び門脈がいずれも明白に示されている。その上、通常は肝臓実質細胞が収容できるハニカム構造は無傷なままであるが、細胞はなかった(図1C)。エラスチン並びにI型及びIII型コラーゲンなどのマトリクス分子も、SEMで確認できた(図1D図1E)。
【0115】
実施例3-培地
培地はすべて除菌濾過されており(0.22μmフィルター)、使用前に4℃において暗所で保存した。基本培地及びウシ胎児血清(FBS)は、GIBCO/Invitrogenから入手した。成長因子はすべてR&D Systemsから入手した。前記以外の他の試薬はすべてSigmaから得た。培地比較実験で用いられる既存の肝細胞維持培地(HMM)は、Triangle Research Laboratories(TRL)から入手し、HEPES、GlutaMax、ITS+(インスリン、トランスフェリン及び)が補給されたウィリアム培地Eを含有していた。
【0116】
播種培地
クボタ培地は、内胚葉幹細胞/前駆細胞のクローン原性の自己増殖性拡張用として設計された、血清を含まない完全限定培地である。胎児肝臓細胞の単層培養又はオルガノイド培養のために血清を含まないものを使用する。クボタ培地は、マウス、げっ歯類及びヒト肝幹/前駆細胞の選択培養に有効であることが分かっている。前記培地は、銅を含まず、低カルシウム(0.3mM)で、1nMセレン、0.1%ウシ血清アルブミン(純粋かつ脂肪酸を含まないもの、フラクションV)、4.5mMニコチンアミド、0.1nM硫酸亜鉛七水和物、トランスフェリン/fe 5μg/ml、インスリン5μg/ml、高密度リポタンパク質10μg/ml及び純遊離脂肪酸混合物を含むRPMI-1640からなる。その調整法は、方法の説明欄に詳細に示されている。Wauthier, E. etal. Hepatic stem cells and hepatoblasts:identification, isolation and ex vivo maintenance Methods for Cell Biology(Methods for Stem Cells) 86, 137-225 (2008)。生物工学による肝臓の確立に使用されるとき、クボタ培地は、一次的に10%FBSを補給することで幹細胞懸濁液の調製に使用される酵素に打ち勝ち、その上、実質細胞と非実質細胞両者の最適な分化に適応した血清を含まないホルモン限定培地に切替わってBIO-LIV-HDMとも称される。
【0117】
ヒト肝組織を産生するための分化培地(BIO-LIV-HDM)
細胞はバイオリアクター内で14日間培養したが、最初の36時間は播種培地で培養した後、デキサメタゾン(0.04mg/L)、プロラクチン(10IU/L)、グルカゴン(1mg/L)、ニコチンアミド(10mM)、トリヨードチロニン(T3,67ng/L)、表皮成長因子(EGF、20ng/ml)、高密度リポタンパク質(HDL、10mg/L)、肝細胞増殖因子(HGF、20ng/ml)、ヒト成長ホルモン(hGH、3.33ng/ml)、血管内皮成長因子(VFG-F、20ng/ml)、インスリン様成長因子(IGF、20ng/ml)、環状アデノシン一リン酸塩(2.45mg/L)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF、20ng/ml)、ガラクトース(0.16グラム)、アンジオポエチン(0.2mg/ml)、純遊離脂肪酸混合物、L-グルタミン及び抗生物質が補給されたクボタ培地を含有するHDMで培養した。HDMは、播種3日後から開始し、それ以降、2日おきに交換した。試薬はすべてR&D Systemsから得た。BIO-LIV-HDMは、2mMアンモニアの添加に反応したアルブミン産生と尿素分泌のいずれでも既存の肝細胞維持培地(HMM)よりもうまく機能することが分かった(図12)。しかし、アルブミンの結果は、他の2つのドナーに比べて極高濃度のアルブミンを発現するヒトドナー試料に起因してほとんど差がなく、その結果、標準偏差が高かった。統計的有意性は、成体肝ドナーをさらに調製しながら今後解明されて、本明細書に報告された標準偏差を最小限に抑えるであろう。3つのドナーはすべて、尿素分泌では同等に機能した。BIO-LIV-HDM中の試料は、1日、4日、6日及び7日に顕著に高かった(p<0.05)。
【0118】
実施例4-生物工学による肝組織の生成
ヒト肝幹/前駆細胞は、単離して、播種までクボタ培地中で4℃において4時間貯蔵した。前記細胞は、蠕動ポンプによる門脈のマトリクス残部からの灌流によって導入され、10%FBSが補給されたクボタ培地(播種培地)に播種した。約90×106個の全細胞を、足場に20分間隔で灌流させた。各間隔中、30×106個の細胞を15ml/分で10分間灌流させた後、10分間(0ml/分)の静止時間が続いた。これを3回繰り返した。全細胞をマトリクス足場へ導入した直後、流量を1.3ml/分ま低下させて、足場は播種培地で36時間灌流させた。播種後、播種培地を回収して、培地中に残留しているあらゆる細胞を血球計で計数した。次に、培地を分化培地(BIO-LIV-HDM)に変更し、以後、2日おきに交換した。再播種したマトリクス足場は、バイオリアクター内で最長14日間培養した。14日後、再播種したマトリクス足場のローブを組織診断及び免疫組織化学的検査用にそれぞれ凍結させた。走査電子顕微鏡法(SEM)及び透過電子顕微鏡法(TEM)用に固定するか、又はRNAシークエンシング用に急速冷凍した(t=14日)。前記バイオリアクターの分析は、Bio_FL724、Bio_FL728、又はBio_FL732として表され、前記各細胞を播種したバイオリアクターを表す。播種の36時間後に、約99%の細胞がマトリクスに付着し、回収された播種培地に細胞が含まれていないことで証明され、血球計で計数した(データは示さず)。ヘマトキシリン及びエオシンで染色すると(H&E)、多数の細胞は容器の周囲と実質細胞全体とに含まれていた(データは示さず)。培養14日後に撮像したSEM画像からは、内皮細胞が脈管構造を覆っていることが示された(図3I及び図7B)。
【0119】
組織診断(図3)は、免疫組織化学的検査及び免疫蛍光検査によって同定されたタンパク質の位置及び発現を示している。成熟マーカーの発現は、培養14日後の胎児肝臓細胞の分化及び再組織化を示す。帯域1、すなわち門脈周囲領域では、細胞はEpCAM及びCK19、すなわち肝幹細胞及び肝芽細胞中で同時発現したバイオマーカーを発現し、胆管の周囲で見つかった。この帯域には、AFPを発現した細胞、すなわち肝芽細胞のバイオマーカーも含まれている。発達し始めた肝細胞コードに加えて、肝細胞極性のマーカーである上皮型カドヘリンの発現がこの図に示されており、肝細胞が細胞-細胞結合を形成する部位に位置している。胆汁輸送マーカーMRP2は、幹細胞の腔側で同定され、細胞極性を同定するのに役立つ。前記細胞は胆管を包囲しており、胆汁の分泌などの潜在的な胆汁機能を示すと考えられる。グリコーゲン貯蔵は、過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色で同定され、実質細胞内の細胞にも表れる。グリコーゲンは、腺房全体の幹細胞に含まれ得るが、門脈周囲領域内では、高濃度のグリコーゲン貯蔵も含有し得る。帯域傾斜をたどると、細胞は、Cyp3A4などの中心体周辺帯(帯域3)の典型的なマーカーを発現する実質細胞内とアルブミン(全体域に含まれている)中とで見つかった。一般に、細胞の大半は、通常は中心体周辺領域に含まれている細胞及び中央腺房及び中心体周辺領域に含まれている成熟細胞に一致する分化状態を呈していた。
【0120】
肝実質細胞系譜の細胞に加えて、デスミンの発現で同定される星細胞、及び類洞内皮細胞であるlyve-1+細胞も、それらのin vivoに相当する足場内の位置にあることが分かった。星細胞は、典型的に上皮細胞パートナーと共存しており、有糸分裂と特殊細胞機能とに関与するパラ分泌シグナル伝達に不可欠である。組織診断像における前記細胞の形状は細い。なぜなら、細胞が、細胞を巻き付ける過程で圧迫されたためである(陽性対照像が参考文献に示されている)。α平滑筋アクチン(αSMA)を発現する細胞が血管構造周囲で見つかった。αSMA陽性細胞は周皮細胞である可能性もあるが、活性化して内皮細胞であるCD31+細胞に沿って増殖することがあり、血管を覆っているのが見つかった。それらは、免疫組織化学的検査及びSEMで実証された(図3I)。増殖は、Ki67染色(データは示さず)で実証されており、大部分は、血管周囲にある細胞で見つかった。より大きな細胞はKi67で陽性染色を示さなかったので、非増殖性の完全成熟状態であると考えられる。
【0121】
RNAシークエンシング
3つの異なるバイオリアクターからの試料上でペアエンド高スループットRNAシークエンシングを行って、1試料当たり平均約2億個のペアエンドが得られたが、平均約87%はヒトゲノムに一意的にマッピングされた。機能性及び分化段階のファセット数は、RNAシークエンシングデータを解析することで同定されている。先ず、バイオリアクター内の細胞がマトリクスを改造することは明白であり、MMP-2及びMMP-9発現の増加(マトリクス分解酵素、図4A)とコラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン及びパールカンの発現の増加(図4B図4E)とによって確認できる。これら遺伝子のmRNA発現量はいずれも、パールカンを除いて、胎児肝細胞及び成体肝細胞の両方と比べてバイオリアクター内では顕著に高かったが(p<0.05)、バイオリアクターは、成体肝細胞よりも顕著に大きかっただけで、また、ラミニン10及び11は試料間でほぼ差がなかった。また、バイオリアクター内の胎児肝由来幹/前駆細胞は、すべての成熟実質細胞系譜段階を表すように分化したことも示され、胎児遺伝子の発現減少とより多くの成熟遺伝子の発現上昇とで示された(図5及び6)。LGR5及びEpCAMなどの胎児遺伝子は、既知の肝幹細胞マーカーであり、バイオリアクター試料中での発現量が胎児細胞に比べて大幅に低く、それぞれ3.4倍及び1.2倍変化した(図5)。同様に、肝芽細胞を特定することが知られている遺伝子AFPは、バイオリアクター試料及び成体肝組織に比べて胎児組織中で11倍超多かったが、バイオリアクターと成体肝組織では発現量にほぼ違いがなかった。
【0122】
一方、成熟肝マーカーに関する遺伝子発現量は、胎児組織に比べてバイオリアクター試料中では1週間未満で安定に上昇して、肝実質細胞系譜の成熟発達を示した。帯域1では、成熟胆汁マーカーCK7、SLC4A2、JAG1、HNF1B及びSCTR(図6)はいずれも、胎児及び成体肝試料に比べて発現上昇した。胎児肝細胞に比べて最も大幅に上昇したのは、CK7、JAG1及びSCTRであり、それぞれ98倍、1.75倍及び1.85倍超多かった。バイオリアクター試料中で発現上昇した代謝機能に関する帯域3マーカーの発現量は、P450遺伝子の成熟型(CYP1A1、CYP-1B1及びCYP-2C8)を包含し、遺伝子はいずれも、胎児細胞に対して少なくともa>3倍増加し、UDP-グルクロニルトランスフェラーゼ(UTG1A1)は、胎児細胞に比べて約10倍増加し、また、脂質及びコレステロール代謝に関与した遺伝子(ACOX3、APOL6、LDLR)は、LDLRでのみ顕著に高かった。この成熟はさらに、胎児肝試料に比べてバイオリアクター中でP450の胎児型であるCYP3A7が4倍超発現減少したことでも示唆された(データは示さず)。成熟肝細胞に関するマーカーC/EBPもバイオリアクター中で増加したが、顕著ではなく、胎児肝臓に比べてHNF4a発現に変化は見られなかった。
【0123】
バイオリアクター中で測定された遺伝子発現量は、主に胎児肝臓を上回る成熟を示唆する量だが、大抵の場合、成体組織中とも異なっていた。これは、さらなる成熟には、培養追加時間又は培養条件の変更(例えば、血清の使用をさらに減らすこと、酸素化をもっと制御すること)が必要である。その点を考慮すると、関連標的遺伝子Yapの遺伝子発現量とHippoはいずれも、再生過程が活性であることを示す。MSTIの遺伝子発現量(Hippoキナーゼ)は、胎児及び成体の肝臓に比べてバイオリアクター中では大幅に低下し、同時に、Yapシグナル伝達遺伝子はいずれも、胎児及び成体肝臓に比べてバイオリアクター中では大幅に増加した(図7A)。血管新生マーカーの遺伝子発現は、バイオリアクター組織が血管形成及び脈管形成を行うことを示していた(図7B)。VEGF、VEGF-B及びCD133の発現量はいずれも、胎児肝細胞に比べてバイオリアクター試料中では上昇し、特にVEGF及びCD133(p<0.05)では有意差を示した。
【0124】
RNAシークエンシングデータに基づいて造血分化が示唆される(図7C)。初期の造血幹細胞マーカー(Gata-2、SCF及びIL-7R)をバイオリアクター試料中で下方修正し、胎児組織で見られる量から成体肝臓内に匹敵する量へと移行した。同様に、リンパ球系譜及び骨髄系譜における成熟造血細胞の遺伝子プロファイルもまた、胎児肝臓とバイオリアクター及び成体肝臓とで異なる。バイオリアクター試料は、成体肝臓で見られる量と同様のCD3遺伝子発現量を示すが、Rag1発現(Rag1及びCD3遺伝子はともにT細胞と関連している)は上昇し、また、CSF発現(骨髄性細胞による発現)は胎児肝臓及び成体肝臓の両者に比べて著しく高い。これらマーカーは、予想される造血発生を示しているが、正確な解釈にはより広範な解析が必要である。
【0125】
細胞生存率
ALT及びAST、すなわち肝細胞の健康を調べるのに使用されるアミノトランスフェラーゼ酵素は、2日目、4日目、6日目、8日目、12日目及び14日目に評価した。この実験の進行中、ALTの量は検出下限を決して下回らなかった(データは示さず)。したがって、このex vivoモデル系に影響を受けるバイオマーカーではないことが分かった。Bio_FL724は、全培養時間にわたって検出下限(4U/L)を上回って測定可能なAST量を有する唯一のバイオリアクターであった(データは示さず)。各バイオリアクターのLDH量(図8A)は、最初は高かったが、時間と共に減少した。また一方、培養1日目以降、各時点でのLDH測定値は、初期測定値よりも著しく低かった(p<0.05)。このデータから解釈すると、最初の数日は、細胞は、単離手順及び/又は播種過程からのストレスが原因でより大きな代謝回転を示した。この回復期間後、細胞は、迅速な肝臓器官形成を示す表現型形質を生成した。
【0126】
培地中の完全長K18(FL-K18、したがって、細胞から分泌又は放出されたもの)の量は、壊死に特異的であり、その値は、全バイオリアクター中でベースライン(25.3U/L)を上回っていた。FL-K18量の傾向は、3つのバイオリアクターすべてにおいて同様であった。量は、2日目が顕著に高く(図8A)、単離手順からの細胞のストレス又は損傷が原因であると考えられる。2日目以降、量は大幅に減少し、その上、4日目及び6日目には、2日目の最初値よりも大幅に減少した(p<0.05)。FL-K18の最初の減少は、培養中の壊死細胞を示し、細胞完全死に応答したものであり、特にBio_FL728及びBio_FL732の場合は、残留細胞によって健康細胞の選択が示された。しかし、FL-K18には8日目~12日目に上昇し、その後、量は再度減少した。
【0127】
ccK18の量(図8A)は、FL-K18の量と同様の傾向をたどることが検出されており、量は、6日目周辺で増加して8日目周辺でピークとなり、その後、減少した。データは高アポトーシス状態を意味する可能性もあるが、全培養時間にわたって量にほとんど差はなく、経時的なアポトーシス上昇はほぼないことが示唆された。
【0128】
全体的にみて、細胞生存率と健康を説明するデータからは、単離及び播種過程で損傷を受けた細胞を排除すると細胞は2、3日の過渡期間を経た後、残留細胞の安定化とその後の分化が続くことを意味している。
【0129】
FL-K18及びccK18の上昇は、3つのバイオリアクター中の細胞によってアルブミンの分泌を高めることにも相当していた。最終分化した倍数体肝細胞に由来するこの上昇は、通常の細胞周期過程の一環としてアポトーシスを生じさせるものと仮定される。このアポトーシスのピークの直後にccK18量は低下するが、これは、前駆体細胞が成熟して、失われた中心周囲肝細胞と置き換わることを示唆している。
【0130】
AFP(図8B
バイオリアクターはそれぞれ、2日目、すなわち試料回収第1日目に異なるAFP開始量を示すが、これはt=0における胎児肝細胞間での遺伝子発現の差に相当する。AFP初期値にかかわらず、産生は経時的に劇的に低下した。
【0131】
アルブミン(図8B
3つのバイオリアクターすべてにおいてアルブミン産生量は最初低かったが、時間と共に着実に上昇して、6日目~10日目の間にかなり高い量となった(p<0.05)。バイオリアクターで産生されたアルブミンの実際量はそれぞれ異なっていたが、産生上昇の一般的な傾向はすべてのバイオリアクターで一致していた。量は、8日目にピークとなり、10日目に減少した。増減は、後期系譜段階の、アルブミンの高生産で示される肝細胞への細胞分化に相当すると仮定される。それらはその後、アポトーシスを生じ、前駆体細胞が再生過程を継続するとアルブミン産生の低下につながる。このデータの解釈は、各時点で測定されたccK18量によっても立証される。
【0132】
尿素(図8B
AFP及びアルブミンの産生とは異なり、尿素の量は14日間あまり変化しなかった。3つのバイオリアクターはすべて、2日目に最大量の尿素を分泌し、その後わずかに減少した。10日目までに、尿素の量は2日目の初期値よりも著しく低下したが(p<0.05)、全体的にみて、分泌は経時的に一定に保たれていたと考えられる。
【0133】
細胞メタボロミクス
細胞の機能性は代謝活性によって評価され、また、核磁気共鳴(NMR)分光法によって測定される(図9)。主成分分析(PCA、図9B)を行い、2つのバイオリアクターBio_FL724及びBio_FL732は、3つ目Bio_FL732に比べると培養中により同様に反応したことが示された。すべてのバイオリアクターにおいて、細胞は、培地に提供されたグルコース、グルタミン、ピルビン酸塩及び酢酸塩を消費して代謝して、乳酸塩の産生に転換した(図9A)。この作用から、細胞が解糖を生じてクレブス回路に入ること明白である。Bio_FL724は2日目までに速やかに作用し、また、Bio_FL728は6日目までに同様の傾向を示した。3つ目のバイオリアクターであるBio_FL732は、8日目までに代謝的に活性となったが、他の2つのバイオリアクターよりも大幅に少ない量であった。これは、2つのバイオリアクターBio_FL728及びBio_FL732にはタイムラグがあり、播種過程からの予想されるストレスから回復するのに必要とされたか、又は単離時に細胞がBio_FL724ほど健康ではなく、代謝的に活性になるのに時間を要したことを意味する。VIPプロット(図9C)は、分離に寄与する代謝を示している。VIP≧1.0は重要だと考えられる。
【0134】
透過電子顕微鏡法(TEM)
各バイオリアクター中での細胞の組織化をさらにTEMで評価した。機能的であるためには、上皮細胞は、細胞-細胞結合を形成する必要があり、前記結合は細胞極性、隣接細胞との細胞シグナル伝達及びマトリクスとの相互作用に役立つ。接合複合体の構成(図10E図10F)は、肝細胞が集合して、それらの間に毛細胆管(図10A図10C)を有するシート又はプレートを形成したときにTEM画像撮影して、分泌された胆汁を輸送するのに必須の配置によって評価した。前記肝細胞様細胞の間に類洞腔が観察され(図10A)、毛細胆管予腔の周囲に、予想される分泌小胞が見られた(図10B)。肝細胞に加えて、分化の過程で内皮細胞、星(Ito)細胞、及び幹細胞を示唆する物理的特性を含む細胞がいくつかあり、TEMで同定された(データは図示せず)。細胞の播種はバイオマトリクス足場全体で均質ではなく、その結果、TEM画像で示された器官形成過程研究結果の範囲内で細胞の段階が変わる部位が得られた。細胞と関連しない画像には脂肪滴が見られた(データは図示せず)が、それは、壊死データ及びアポトーシスデータで表示されたものと同様に、撮像用試料の調製中に細胞分解を示し得るか、又は培養中の細胞のエージング過程中に生じ得る。
【0135】
実施例5:足場内のコラーゲンの特性評価
組織は、血液及び間質液の量を最小限に抑えるためにすすぎ洗いする。大部分の繊維性コラーゲンは、一般に使用される典型的な初期リンスであるリン酸干渉生理食塩水(PBS)では抽出することができない。また一方、非架橋コラーゲン及び関連するマトリクス構成成分、例えばプロコーラ源、コラーゲンモノマー(原繊維が形成される前)及び非繊維性コラーゲン型(例えば、IV型、VI型)を包含するものは、PBSで抽出され得る。したがって、初期リンスは、基本培地(アミノ酸と、栄養素と、脂質と、ビタミン類と、微量元素などとの混合物)によって、コラーゲンを溶液にしないイオン強度で行われる。
【0136】
脱脂工程は以前、組織を脱脂するのに長時間(時には何時間も何日も(!!))使用されていた。SDSはマトリクスと極めて密に結合して、マトリクスを毒性にする。トリトンX及びそれ以外の刺激の強い洗剤は様々なマトリクス構成成分を溶解する。ある手順は、SDSに続いてトリトンXを使用することで、「非常にきれいな」足場が得られるが、非常にたくさんのものが失われているため、実際は「透明に」見える。そのため、低濃度の胆汁塩であるデオキシコール酸ナトリウムをホスホリパーゼと組み合わせることで、迅速で極めて穏やかな脱脂が生じる。脱脂は20~30分で行われる。
【0137】
抽出は、低イオン強度緩衝液(NaClが1M未満のもの)を使用して行い、非架橋コラーゲンを大幅に減少させる。1M NaClの前記緩衝液は多少のコラーゲンを保存する(大部分はI型コラーゲン)が、すべてとは限らない(ネットワークコラーゲンは保存されない)。そのため、本方法は、コラーゲン(線維性又はネットワーク、架橋又は非架橋のもの)を全く含まないがそれらに結合したものはすべて保存する。一方、蒸留水を使用する方法は、高架橋コラーゲン以外は全く含まないばかりか、それに結合した、水に溶解している構成成分も含まない可能性がある。
【0138】
核酸は、当該技術分野において標準的な方法に従って除去する。
バイオマトリクス足場を単離することによって得られる特徴は、上清を回収し、それを透析し、凍結乾燥して、その中のコラーゲン含有量をアミノ酸解析、架橋解析、ウエスタンブロット法解析及び成長因子解析により測定することによって特性評価される。これにより、本方法で保存されるコラーゲンを求める。同様の抽出は、a)PBSを用いて、b)低イオン強度緩衝液を用いて、c)それらの様々な脱脂方法の後で、d)蒸留水を用いて行う。前記工程それぞれから得られる上清を回収し、アミノ酸解析を行うことで、コラーゲンの損失及び損失程度を評価する。コラーゲン量かなりあることを確かめる場合、上清中のコラーゲンを[3H]-NaBH4で処理し、加水分解して架橋解析を行う。その上、抗体を使用するウエスタンブロット法を行って、架橋程度及び含まれているコラーゲンの型を同定する。さらに、成長因子解析も行って、結果として得られる足場の特徴づけを行う。
【0139】
代表的な実施形態
非限定的な実施形態例を以降に提示する。
[1]生物工学による組織を生成するための容器であって、前記生成は、上皮細胞及び間葉細胞をバイオマトリクス足場に導入することを含み、前記バイオマトリクス足場はコラーゲンを含む、容器。
【0140】
[2]前記上皮細胞及び前記間葉細胞が成熟系譜のパートナーである、[1]の容器。
[3]前記上皮細胞及び前駆間葉細胞は播種培地中にあり、前記播種培地は初期培養期間後に分化培地と置き換えられる、[1]又は[2]の容器。
【0141】
[4]前記分化培地は、
a.基本培地、
b.脂質、インスリン、トランスフェリン、抗酸化剤、
c.銅、
d.カルシウム、
e.上皮細胞の増殖又は維持のための1つ以上のシグナル、及び/又は
f.間葉細胞の増殖又は維持のための1つ以上のシグナル
を含む、[3]の容器。
【0142】
[5]前記播種培地は、血清を含まないか、又は場合により数時間にわたって約2%~10%の胎児血清が補給される、[3]又は[4]の容器。
[6]前記播種培地は、
a.基本培地、
b.脂質、
c.インスリン、
d.トランスフェリン、
e.抗酸化剤
を含む、[3]~[5]の容器。
【0143】
[7]前記播種培地中の前記上皮細胞及び前記間葉細胞は、前記バイオマトリクス足場に導入される前に前記播種培地中で4℃において4~6時間培養される、[3]~[6]のいずれか1つの容器。
【0144】
[8]前記バイオマトリクス足場が3次元である、[1]~[7]のいずれか1つの容器。
[9]前記バイオマトリクス足場中の前記コラーゲンは、(i)新生コラーゲン、(ii)凝集しているが架橋されていないコラーゲン分子、(iii)架橋コラーゲンを含む、[1]~[8]のいずれか1つの容器。
【0145】
[10]前記播種培地中の前記上皮細胞及び前記間葉細胞は、複数回のインターバルで導入され、各インターバルの後に静止時間が続く、[1]~[9]のいずれか1つの容器。
【0146】
[11]前記インターバルが約10分であり、また、前記静止時間が約10分である、[10]の容器。
[12]播種密度は、バイオマトリクス足場の湿式重量1グラム当たり細胞が最高で約1200万個であり、1回以上のインターバルで導入される、[10]又は[11]の容器。
【0147】
[13]前記播種培地中の前記上皮細胞及び前記間葉細胞すなわち非実質細胞は、1回以上のインターバルで約15ml/分の速度で導入される、[10]~[12]のいずれか1つの容器。
【0148】
[14]前記播種培地中の前記上皮細胞及び前記間葉細胞は、10分のインターバルで導入され、その後にそれぞれ10分の静止時間が続く、[10]~[13]のいずれか1つの容器。
【0149】
[15]前記播種培地中の前記上皮細胞及び前記間葉細胞は、3回のインターバル後、1.3ml/分の速度で導入される、[10]~[14]のいずれか1つの容器。
[16]前記上皮細胞及び前記間葉細胞は、胎児又は新生児の臓器から単離された細胞を含む、[1]~[15]のいずれか1つの容器。
【0150】
[17]前記上皮細胞及び前記間葉細胞は、成体又は幼児のドナーから単離された細胞を含む、[1]~[15]のいずれか1つの容器
[18]前記上皮細胞及び前記間葉細胞は、
a.幹細胞、委任前駆細胞、2倍体成体細胞、倍数体成体細胞、及び/又は最終分化細胞のうちの1つ以上を含む上皮細胞、及び/又は
b.血管芽細胞、内皮細胞前駆体、成熟内皮細胞、星細胞前駆体、成熟星細胞、間質細胞前駆体、成熟間質細胞、平滑筋細胞、造血細胞前駆体、及び/又は成熟造血細胞のうちの1つ以上を含む間葉細胞
を含む、[1]~[17]のいずれか1つの容器。
【0151】
[19]前記上皮細胞及び前記間葉細胞は、
a.胆管幹細胞、胆のう由来幹細胞、肝幹細胞、肝芽細胞、委任肝細胞及び胆汁前駆細胞、axin2+前駆細胞(例えば、axin2+肝前駆細胞)、成熟実質細胞(例えば、肝細胞、胆管細胞)、膵幹細胞、及び膵委任前駆細胞、島細胞、及び/又は腺房細胞のうちの1つ以上を含む上皮細胞、及び/又は
b.血管芽細胞、星細胞前駆体、星細胞、間葉幹細胞、周皮細胞、平滑筋細胞、間質細胞、内皮細胞前駆体、内皮細胞、造血細胞前駆体、及び/又は造血細胞のうちの1つ以上を含む間葉細胞
を含む、[1]~[18]のいずれか1つの容器。
【0152】
[20]前記上皮細胞は、胆管、肝臓、すい臓、肝-膵共通管、及び/又は胆のう由来の幹細胞及びその子孫のうちの1つ以上を含み、かつ/あるいは、前記間葉細胞は、血管芽細胞、内皮細胞及び星細胞の前駆体、間葉幹細胞、星細胞、間質細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、骨髄由来幹細胞、造血細胞前駆体、及び/又は造血細胞のうちの1つ以上を含む、[1]~[19]のいずれか1つの容器。
【0153】
[21]前記上皮細胞及び前記間葉細胞は、それぞれ約80%の上皮細胞と約20%の間葉細胞とからなる、[1]~[20]のいずれか1つの容器
[22]前記上皮細胞及び前記間葉細胞は、少なくとも50%の幹細胞及び/又は前駆体細胞を含む、[1]~[21]のいずれか1つの容器。
【0154】
[23]前記上皮細胞及び前記間葉細胞は、最終分化肝細胞及び/又は膵細胞を全く含まない、[1]~[22]のいずれか1つの容器。
[24]前記バイオマトリクス足場は、1つ以上のコラーゲン関連マトリクス構成成分を含み、コラーゲン関連マトリクス構成成分には、ラミニン、ナイドジェン、エラスチン、プロテオグリカン、ヒアルロナン、非硫酸化グリコサミノグリカン、硫酸化グリコサミノグリカン、前記マトリクス構成成分に関連した成長因子及び/又はサイトカインのうちの1つ以上が含まれる、[1]~[23]のいずれか1つの容器。
【0155】
[25]前記バイオマトリクス足場は、in vivoで見られるマトリクス結合シグナル伝達分子を20~50%超含む、[1]~[24]のいずれか1つの容器。
[26]前記バイオマトリクス足場は、前記組織の血管樹のマトリクス残部を含み、かつ/あるいは、前記マトリクス残部は、生物工学による組織中の細胞の血管サポートを提供する、[1]~[25]のいずれか1つの容器。
【0156】
[27]細胞外マトリクスを含んだ3次元足場であって、さらに、(i)臓器で見られる天然コラーゲン、及び/又は(ii)臓器で見られる血管樹のマトリクス残部を含む3次元足場。
【0157】
[28][1]~[26]のいずれか1つの容器内で生成される3次元マイクロ臓器。
[29]天然肝臓に特有の帯状分布に依存した表現型形質を備え、前記表現型形質は、(a)幹細胞/前駆細胞、2倍体成体細胞、及び/又は関連する間葉前駆細胞の形質を有する門脈周囲領域、(b)成熟実質細胞及び成熟間葉細胞の類洞板の形質を有する細胞を含んだ中央腺房領域、及び/又は(c)最終分化上皮細胞の形質と、中心静脈の内皮につながった有窓内皮前駆細胞及び/又はaxin2+肝前駆細胞に関連したアポトーシス細胞の形質とを有する中心体周辺領域を包含する、生物工学による組織。
【0158】
[30]前記表現型形質はさらに、前記門脈周囲領域の二倍体上皮細胞及び/又は間葉細胞に関連した形質を包含する、[29]の生物工学による組織。
[31]前記表現型形質はさらに、天然肝臓の前記中央腺房領域で見られる成熟上皮細胞及び/又は間葉細胞の形質を包含する、[29]又は[30]の生物工学による組織。
【0159】
[32]前記表現型形質はさらに、前記中心体周辺領域の上皮細胞若しくは実質細胞及び/又は間葉細胞の形質を包含する、[29]~[31]のいずれか1つの生物工学による組織。
【0160】
[33](i)有窓内皮細胞と関連する倍数体肝細胞、及び/又は(ii)中心静脈の内皮につながった二倍体肝前駆細胞(例えば、axin2+細胞)をさらに含む、[29]~[32]のいずれか1つの生物工学による組織。
【0161】
[34]前記門脈周囲領域には、肝幹細胞、肝芽細胞、委任前駆細胞、及び/又は二倍体成体肝細胞を含む幹細胞/前駆細胞ニッチの形質が豊富である、[29]~[33]のいずれか1つの生物工学による組織。
【0162】
[35]前記上皮細胞及び前記間葉細胞は、肝細胞及び/又は胆管細胞の前駆体及び/又は成熟形態から構成される上皮細胞をさらに含む、[29]~[34]のいずれか1つの生物工学による組織。
【0163】
[36]前記上皮細胞及び前記間葉細胞は、星細胞、周皮細胞、平滑筋細胞、間質細胞、内皮細胞、及び/又は造血細胞の前駆体及び/又は成熟形態から構成される間葉細胞をさらに含む、[29]~[35]のいずれか1つの生物工学による組織
[37][29]~[36]のいずれか1つの生物工学による組織から構成される3次元マイクロ臓器。
【0164】
[38][1]~[26]のいずれか1つの容器内で生成される、[37]の3次元マイクロ臓器。
[39]添付使用説明書を含む、[1]~[26]のいずれか1つの容器内でマイクロ臓器を培養するためのキット。
【0165】
[40][29]~[38]のいずれか1つの生物工学による組織又は3次元マイクロ臓器に処置を施すことを含む、臓器の治療を評価する方法。
[41]上皮細胞及び間葉細胞の両者のための分化培地であって、
a.脂質、インスリン、トランスフェリン、抗酸化剤を含む基本培地、
b.銅、
c.カルシウム、
d.上皮細胞の増殖及び/又は維持のための1つ以上のシグナル、及び/又は
e.間葉細胞の増殖及び/又は維持のための1つ以上のシグナル
を含む、分化培地。
【0166】
[42]前記基本培地がクボタ培地である、[41]の分化培地。
[43]1つ以上の脂質結合タンパク質をさらに含む、[41]又は[42]の分化培地。
【0167】
[44]前記1つ以上の脂質結合タンパク質が高密度リポタンパク質(HDL)である、[43]の分化培地。
[45]1つ以上の純脂肪酸をさらに含む、[41]~[44]のいずれか1つの分化培地。
【0168】
[46]前記1つ以上の純脂肪酸が、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、及び/又はリノレン酸を含む、[45]の分化培地。
[47]1つ以上の糖類をさらに含む、[41]~[46]のいずれか1つの分化培地。
【0169】
[48]前記1つ以上の糖類が、ガラクトース、グルコース及び/又はフルクトースを含む、[47]のいずれか1つの分化培地。
[49]1つ以上のグルココルチコイドをさらに含む、[41]~[48]のいずれか1つの分化培地。
【0170】
[50]前記1つ以上のグルココルチコイドが、デキサメタゾン及び/又はヒドロコルチゾンを含む、[49]の分化培地。
[51]天然すい臓に特有の帯状分布に依存した表現型形質を備え、かつ/あるいは、すい臓頭部の膵細胞に関連する帯状分布及び/又はすい臓尾部の膵細胞に関連する帯状分布を有する、生物工学による組織。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-02-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書及び図面に記載の発明。
【外国語明細書】