(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055758
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】同種異系腫瘍細胞ワクチン
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20230411BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230411BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230411BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20230411BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230411BHJP
【FI】
A61K39/00 H ZNA
A61P35/00
A61P37/04
C12N5/10
C12N15/12
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023006527
(22)【出願日】2023-01-19
(62)【分割の表示】P 2019547602の分割
【原出願日】2017-11-22
(31)【優先権主張番号】62/425,424
(32)【優先日】2016-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519183575
【氏名又は名称】アロプレックス バイオセラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ボリエッロ フランク
(57)【要約】
【課題】本発明は、2つ以上の免疫調整因子を安定的に発現する、特定の腫瘍タイプの遺伝的改変腫瘍細胞株を含む腫瘍細胞ワクチンの提供を課題とする。
【解決手段】2つ以上の免疫調整因子ペプチドを発現するようにトランスフェクトされた同種異系腫瘍細胞株変種ワクチンを下記方法により提供する。
(1)同種異系親腫瘍細胞株を提供する工程;
(2)IgG1、CD40L、TNF-アルファ、GM-CSF、およびFlt-3Lから選択される免疫調整因子ペプチドの2つ以上をコードする組換えDNA配列をトランスフェクトまたは形質導入する工程、
(3)IgG1、CD40L、TNF-アルファ、GM-CSF、およびFlt-3Lから選択される2つ以上の免疫調整因子ペプチドの免疫原量を安定的に発現する腫瘍細胞クローンを選別することによって当該腫瘍細胞株変種を作製する工程、
(4)混合リンパ球腫瘍細胞反応で、細胞の分裂増殖、細胞サブセットの分化、サイトカイン放出プロフィール、および腫瘍細胞溶解から選択されるパラメーターの1つ以上によって、クローン由来細胞株変種を選別し、ここで当該選別クローン由来細胞株変種がT細胞、B細胞、および樹状細胞の1つ以上の活性化を刺激するために有効である工程。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)2つ以上の免疫調整因子ペプチドを発現するようにトランスフェクトされた同種異系腫瘍細胞株変種を調製する工程および(b)癌を有する患者に当該腫瘍細胞株変種ワクチンの免疫刺激量(当該免疫刺激量は臨床成果を改善するために有効な量である)を投与する工程を含む患者で癌を治療する方法であって、
前記(a)の工程が、
(1)同種異系親腫瘍細胞株を提供する工程;
(2)IgG1、CD40L、TNF-アルファ、GM-CSF、およびFlt-3Lから選択される免疫調整因子ペプチドの2つ以上をコードする組換えDNA配列をトランスフェクトまたは形質導入する工程、
(3)IgG1、CD40L、TNF-アルファ、GM-CSF、およびFlt-3Lから選択される2つ以上の免疫調整因子ペプチドの免疫原量を安定的に発現する腫瘍細胞クローンを選別することによって当該腫瘍細胞株変種を作製する工程、
(4)混合リンパ球腫瘍細胞反応で、細胞の分裂増殖、細胞サブセットの分化、サイトカイン放出プロフィール、および腫瘍細胞溶解から選択されるパラメーターの1つ以上によって、クローン由来細胞株変種を選別し、ここで当該選別クロー由来細胞株変種がT細胞、B細胞、および樹状細胞の1つ以上の活性化を刺激するために有効である工程によって実施される、前記方法。
【請求項2】
当該腫瘍細胞株変種ワクチンが、プラセボコントロールと対比して癌患者の全生存を改善するために有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
当該親腫瘍細胞株が、メラノーマ、前立腺癌、および乳癌から成る群から選択される癌に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
当該IgG1免疫調整因子ペプチドの配列が、配列番号:45と少なくとも60%同一性である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
当該CD40L免疫調整因子ペプチドの配列が、配列番号:7と少なくとも60%同一性である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
当該TNF-アルファ免疫調整因子ペプチドの配列が、配列番号:11と少なくとも60%同一性である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
当該GM-CSF免疫調整因子ペプチドの配列が、配列番号:13または配列番号:5と少なくとも60%同一性である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
当該Flt-3L免疫調整因子ペプチドの配列が、配列番号:14または配列番号:44と少なくとも60%同一性である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
(1)腫瘍細胞株変種および(2)医薬的に許容できる担体を含む同種異系腫瘍細胞ワクチンであって、
前記(1)腫瘍細胞株変種が、
(a)IgG1、CD40L、TNF-アルファ、およびFlt-3Lペプチドから選択される、2つ以上の安定的に発現される組換え膜結合免疫調整因子ペプチド、および
(b)安定的に発現される組換え可溶性GM-CSFペプチドを含み、
ここで当該腫瘍細胞株変種の免疫刺激量が、プラセボコントロールと対比して無増悪生存、全生存または両方を改善する免疫応答を引き出すために有効である、前記ワクチン。
【請求項10】
当該腫瘍細胞株変種が以下の2つ以上を発現する、請求項9に記載の同種異系腫瘍細胞ワクチン:
(a)配列番号:45と少なくとも60%同一性を有する膜結合IgG1ペプチド、
(b)配列番号:7と少なくとも60%同一性を有する膜結合CD40Lペプチド、
(c)配列番号:11と少なくとも60%同一性を有するTNF-アルファペプチドの膜結合型、
(d)配列番号:14と少なくとも60%同一性を有するFlt-3Lペプチドの膜結合型、および(e)配列番号:13と少なくとも60%同一性を有する可溶性GM-CSFペプチド。
【請求項11】
当該腫瘍細胞株変種がCD40LペプチドおよびTNF-アルファペプチドの膜結合融合タンパク質を含む、請求項9に記載の同種異系腫瘍細胞ワクチン。
【請求項12】
当該CD40Lペプチドが配列番号:9と少なくとも60%同一性であり、当該TNF-アルファペプチドが配列番号:10と少なくとも60%同一性である、請求項11に記載の同種異系腫瘍細胞ワクチン。
【請求項13】
当該腫瘍細胞株変種が膜結合TNF-アルファペプチドを含む、請求項9に記載の同種異系腫瘍細胞ワクチン。
【請求項14】
当該TNF-アルファペプチドが配列番号:11と少なくとも60%同一性である、請求項13に記載の同種異系腫瘍細胞ワクチン。
【請求項15】
当該腫瘍細胞株変種が、可溶性GM-CSF並びに膜結合IgG1、CD40L、TNF-アルファ、およびFlt-3Lを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
当該腫瘍細胞株変種がCD40LおよびTNFaペプチドの融合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
当該腫瘍細胞株変種が、配列番号:31と少なくとも60%同一性の免疫調整因子ペプチド配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
当該腫瘍細胞株変種が、GM-CSFの膜型および可溶型並びにFlt-3Lの膜型および可溶型を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
当該腫瘍細胞株変種が、IgG、CD40L、およびTNF-アルファの膜結合型を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、米国仮特許出願62/425,424(2016年11月22日出願)(その全内容は参照によってその全体が本明細書に含まれる)に関し優先権を主張する。
(技術分野)
当該記載発明は、概して癌治療の免疫学的アプローチ、より具体的には改変腫瘍細胞を含む癌ワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
免疫応答
おおざっぱに言えば、免疫応答は個体と外来抗原物質(例えば感染性微生物)との遭遇によって開始する。感染個体は液性免疫応答および細胞媒介性免疫応答の両方により迅速に応答し、前者は当該免疫原の抗原決定基/エピトープに特異的な抗体分子の産生により、後者は抗原特異的な調節Tリンパ球およびエフェクターTリンパ球(サイトカインおよびキラーT細胞を産生する両方の細胞を含み感染細胞を溶解することができる)の拡張および分化による。ある微生物による一次免疫は、当該微生物で見出される抗原決定基/エピトープに対しては特異的であるが、無関係の微生物によって発現される抗原決定基は通常認識できないかまたはほんのわずかしか認識しない抗体およびT細胞を喚起する(Paul, W. E., “Chapter 1: The immune system: an introduction,” Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed. Paul, W. E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia, 1999(102ページ))。
【0003】
この初期応答の結果として、免疫個体は免疫学的記憶状態を発達させる。同じまたは近縁微生物と再び遭遇する場合には二次応答が生じる。この二次応答は、概して抗体応答(より迅速でより大きな規模であり、さらにより強い親和性で抗原と結合する抗体で構成され、身体の微生物除去においてより有効である)および同様に強化されしばしばより有効なT細胞応答から成る。しかしながら、感染性因子に対する免疫応答が常に当該病原体の排除をもたらすとは限らない(Paul, W. E., “Chapter 1: The immune system: an introduction,” Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed. Paul, W. E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia, 1999(102ページ))。
【0004】
癌の免疫耐性
癌は該当細胞の遺伝的不安定性によって特徴付けられるが、さらにまた、外来物として認識されるはずである明らかに非自己表現型を有する癌性細胞に対して免疫系が最適に応答できないという事実により免疫系の異常として記載されてきた。この観察の根拠を説明するものとしていくつかの理由が先んじている。例えば、第一に、癌細胞は感染性生物の状況とは極めて対照的に主として自己抗原から成る。癌抗原として分類されるいくつかの抗原は実際には、過剰発現される正常な抗原であるか、またはポリペプチド鎖でほんの1つまたは2つのアミノ酸に変異を有する正常な抗原である。第二に、癌細胞は、主要組織適合複合体(MHC)をダウンレギュレートし、したがってMHCの手段では腫瘍細胞由来ペプチドは多くは提示されない。第三に、癌細胞および随伴する腫瘍関連マクロファージは免疫応答を鈍化させるサイトカインを発現する(例えば以下を参照されたい:Yu et al (2007) Nature Rev. Immunol. 7:41 -51)。この鈍化は、例えば癌細胞または随伴マクロファージによるインターロイキン10(IL-10)の分泌によって引き起こされる。第四に、感染に関する状況とは異なり、癌細胞は免疫アジュバントを全く提供しない。病原体は天然に存在する多様な免疫アジュバントを発現する(前記アジュバントはトル様受容体(TLR)アゴニストおよびNODアゴニストの形態を採る)(例えば以下を参照されたい: Kleinnijenhuis et al (2011) Clin. Dev. Immunol. 405310(12ページ))。概して、樹状細胞の最適な活性化には、免疫アジュバントと樹状細胞によって発現される1つ以上のトル様受容体(TLR)との接触が要求される。樹状細胞の活性化がなければ、樹状細胞とT細胞との間の接触(免疫シナプス)はT細胞の最適な活性化をもたらすことができない。
【0005】
免疫監視および免疫編集
腫瘍免疫編集は排除相、平衡相および逃避相の3相に分けられる。排除相(免疫監視としても知られている)は、免疫系が癌性または前癌性細胞を識別しそれらが制御を脱して増殖する前にそれらを排除するプロセスである。この相は全ての癌性または前癌性細胞が排除されるときに完璧であり得る。いくつかの腫瘍細胞が排除されない場合、免疫系と腫瘍細胞増殖との間で一時的な平衡状態が達成され得る。この平衡相で、腫瘍細胞は休止状態を維持するか、または当該腫瘍細胞が提示する抗原を改変できる更なる変化をゲノムDNAに蓄積することによって発達を継続することができる。このプロセスの間に、免疫系は進化中の細胞に選択圧を発揮し、それによって認識されることがより少ない腫瘍細胞が生存に有利となる。最終的に免疫応答は腫瘍細胞を認識できず、逃避相への移行を生じ、腫瘍細胞は制御を脱して次第に増殖する。
【0006】
腫瘍ミクロ環境
腫瘍は連続的な種々の戦術およびメカニズムにより抗腫瘍免疫応答の全ての相を活発にダウンレギュレートするので、腫瘍ミクロ環境は免疫細胞機能に対して一貫して有効な障壁をもたらす。腫瘍のミクロ環境で免疫細胞の機能不全を引き起こす多くの分子メカニズムが識別されている。前記メカニズムには腫瘍によって産生される因子によって直接媒介されるもの、および癌の存在下における正常組織の恒常性の変化から生じるその他のものが含まれる。大半のヒトの腫瘍は、免疫細胞の発達、分化、遊走、細胞傷害性およびその他のエフェクター機能の1つ以上のステージにより干渉され得るように思われる(T L Whiteside, The tumor microenvironment and its role in promoting tumor growth, Oncogene (2008) 27, 5904-5912)。
【0007】
そのようなメカニズムの1つは、Treg(CD4+CD25bright Foxp3+ T細胞)および骨髄系由来細胞(CD34+CD33+CD13+CD11b+CD15-)の腫瘍における蓄積を必要とする。前記細胞はヒト腫瘍の共通の特色であり、癌患者の予後不良と連関している(T L Whiteside, The tumor microenvironment and its role in promoting tumor growth, Oncogene (2008) 27, 5904-5912)。正常な状態では、Treg細胞は自己免疫の予防という重要な役割に関与するが、癌ではそれらは拡張し腫瘍へと遊走し、自己エフェクターT細胞の分裂増殖をダウンレギュレートし、CD4+CD25-およびCD8+CD25- T細胞の両方の抗腫瘍応答を別個の分子経路により抑制する。腫瘍のTreg細胞は調節CD3+CD4+ T細胞の不均質集団であり、天然のTreg、抗原特異的Tr1細胞、およびその他の十分に定義されていないサプレッサー細胞のサブセットを含む。Tr1細胞は腫瘍のミクロ環境に含まれる。前記環境はIL-10、TGF-βおよびプロスタグランジンE2(PGE2)に富み、前記因子はいずれもTr1産生を促進することが示された(T L Whiteside, The tumor microenvironment and its role in promoting tumor growth, Oncogene (2008) 27, 5904-5912)。
【0008】
骨髄性サプレッサー細胞(MSC)はまた腫瘍のミクロ環境でT細胞応答を抑制する(当該ミクロ環境で前記細胞はTGF-βを分泌するかまたはTGF-β分泌を誘発する)。免疫抑制CD34+細胞由来骨髄性細胞は癌患者の末梢血で識別された。担癌マウスでは、MSCは脾臓および末梢循環に非常に大量に蓄積し、強い免疫抑制を発揮し腫瘍増殖に有利に働く。MSCはまた、必須アミノ酸(例えばL-アルギニン)の利用性を制御し、さらに高レベルの反応性酸素種を産生する。腫瘍で見出されるMSCはまた、iNOSおよびアルギナーゼ1(L-アルギニンの代謝に関与する)を構成的に発現し、アルギナーゼ1はまたiNOSと相乗的に働いて超酸化物およびNO生成を増加させる。超酸化物およびNO生成の増加はリンパ球応答に干渉することが見いだされている。GM-CSF(前記もまた腫瘍細胞によってしばしば分泌される)は、MSCを補充して用量依存性in vivo免疫抑制および腫瘍促進を誘発するが、同時にGM-CSFは抗腫瘍ワクチンで免疫アジュバントとして用いられている。GM-CSFは、転移メラノーマの患者の循環中でTGF-β産生MSCサブセットを増加させることが観察された。同時に発生するこの促進性および抑制性役割は、GM-CSFおよびMSCは正常組織では免疫恒常性の維持に関与するが、腫瘍ミクロ環境では腫瘍細胞の逃避を促進することを示唆する(T L Whiteside, The tumor microenvironment and its role in promoting tumor growth, Oncogene (2008) 27, 5904-5912)。
【0009】
腫瘍の免疫療法
癌療法は新しい分子標的が発見されつつあるので急速に進展中である。特異的経路を標的とする生物製剤(例えばハーセプチン(Herceptin(商標))、エルビタックス(Erbitux(商標)))および特異的標的に向けて設計された小分子(タモキシフェン、GLEEVECTM)の出現にもかかわらず、非特異的様式(例えば化学療法および放射線照射)依然として標準処置である。
【0010】
抗癌免疫療法は、多年にわたる目標であり多様なアプローチが試験されてきた。この免疫療法の開発における1つの困難は、標的抗原がしばしば癌細胞および正常細胞の両方で見出される組織特異的分子であり、どちらも免疫を引き出さないかまたは細胞殺滅に関して特異性を示さないということである(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。さらにまた、腫瘍細胞は、免疫認識を困難にさせる特色(例えば免疫応答を引き出す抗原の発現低下、主要組織適合(MHC)クラスIIの欠如、およびMHCクラスI発現のダウンレギュレーション)を有する。これらの特色は、CD4+およびCD8+ T細胞による腫瘍細胞の非認識をもたらし得る(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。腫瘍はまた、能動的メカニズム(例えば免疫抑制サイトカインの産生)を介して検出を回避することができる(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。
【0011】
サイトカインと組合わせて造血前駆細胞を培養することによってex vivoで産生されたDCが、治療ワクチンとして10年間以上にわたって癌患者で試験されてきた(Ueno H, et al., Immunol. Rev. (2010) 234: 199-212)。例えば、シプリューセルT(APC8015としてもまた知られている)による転移前立腺癌の治療は、フェースIII試験で生存中央値を約4か月延長させた(Higano C S, et al., Cancer (2009) 115: 3670-3679;Kantoff P W, et al., N. Engl. J. Med. (2010) 363: 411-422)。(シプリューセルTは前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)と顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)の融合タンパク質とともに短時間培養された濃縮血液APCを基剤とする細胞生成物である)。この研究では、DC系ワクチンは安全であり、腫瘍抗原に特異的な循環CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞の拡張を誘発することができると結論された。前記の研究及び同様な研究の結果として、シプリューセルTは、転移前立腺癌の治療として米国食品医薬品局(FDA)に承認され、それによって次世代免疫療法細胞生成物のための臨床開発及び制御方法への道が開かれた(Palucka K and Banchereau J, Nature Reviews Cancer (April 2012) 12: 265-276)。
【0012】
腫瘍塊を特異的に減少させ、さらに免疫学的記憶を誘発して腫瘍の再発を制御することができる腫瘍特異的エフェクターT細胞を誘発するために、DCが関与するワクチン免疫戦術が開発されてきた。例えば、ex vivoでDCをアジュバントおよび腫瘍特異抗原とともに培養し、続いてこれらの細胞を患者に戻し注射することによって、DCは腫瘍特異抗原を提供できる。摘出腫瘍、針生検、コア生検、真空補助生検または腹腔洗浄から入手した腫瘍細胞を用いて、腫瘍特異抗原提示樹状細胞を含む免疫原性組成物が作製されている。
【0013】
癌治療戦術
抗体療法(例えばハーセプチンおよびエルビタックス)は受動免疫療法であるが、例えば再発率、無増悪生存および全生存によって測定される臨床成果において顕著な改善が得られている。より最近では、PD-1およびCTLA4阻害剤は、内因性抗癌免疫応答の持続を可能にする能動的宿主免疫応答で別々のチェックポイントを妨害することが報告された。“免疫チェックポイント”という用語は、自己寛容を維持し免疫応答の持続期間および範囲を調整して正常組織への損傷を最小限にするために必要な阻害性経路のアレーを指す。免疫チェックポイント分子(例えばPD-1、PD-L1、CTLA-4)は細胞表面シグナリング受容体であり、それらは、腫瘍のミクロ環境でT細胞応答の調整に重要な役割を果たす。腫瘍細胞は、これらのチェックポイントの発現および活性をアップレギュレートすることによって当該腫瘍細胞を利するためにそれらチェックポイントを利用することが示された。免疫耐性のメカニズムとして腫瘍細胞がいくつかの免疫チェックポイント経路を乗っ取る能力に関しては、免疫細胞分子と結合して免疫細胞を活性化または不活性化させる免疫阻害因子が免疫応答阻害を緩和できるという仮説が提示されている。最近の発見では、免疫回避に必要なタンパク質として、免疫チェックポイントまたは標的、例えばPD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA4、TIM3、LAG3、CCR4、OX40、OX40L、IDOおよびA2ARが識別された。特異的な免疫チェックポイント阻害因子(CTLA-4、PD-1受容体またはそのリガンドPD-L1を含む)がある癌域の臨床施設で目覚ましい結果をもたらし、それによりYERVOYTM(イピリムマブ(Ipilimumab);CTLA-4アンタゴニスト)、OPDIVOTM(ニボルマブ(Nivolumab);PD-1アンタゴニスト)およびKEYTRUDATM(ペムブロリズマブ(Pembrolizumab);PD-1アンタゴニスト)が複数の腫瘍適応症に関してFDAの承認につながり、さらに多くの適応症に関して治験が進行している。しかしながら、この治療方法は、既存の抗腫瘍免疫応答が患者に存在する場合にのみ有効であり得る(Pardoll, D., The blockade of immune checkpoints in cancer immunotherapy, Nature Reviews: Cancer, Vol. 12, April 2012, 253)。最近の細胞療法(例えばキメラ抗原受容体T細胞療法(CAR-T))は、T細胞を特異的な細胞表面腫瘍抗原に再度向かわせるために合成生物学の利用を試みる。T細胞の遺伝的改変を利用し、キメラ抗原受容体(CAR)のトランスジェニック発現により腫瘍抗原認識が付与される。CARは、腫瘍抗原を標的とすることができるように操作されたT細胞導入可能分子である(Frey, N.V., Porter, D.L., The Promise of Chimeric Antigen Receptor T-Cell Therapy, Oncology (2016); 30(1)) pii 219281)。CAR T細胞は、血液学的悪性疾患に対していくつかの効能を有し固形腫瘍に対してはその程度は減少することが示されている。しかしながら、CAR T療法は、いくつかのタイプの毒性を生じることが示され、前記にはサイトカイン放出症候群、神経学的毒性、非腫瘍認識、およびアナフィラキシーが含まれる(Bonifant CL, et al., Toxicity and management in CAR T cell therapy, Molecular Therapy, Oncolytics (2016) 3, 16011)。
【0014】
細胞ワクチンもまた癌治療として用いられてきた。GVAXTM(プロトタイプ例)は、自己腫瘍細胞または同種異系腫瘍細胞集団にGM-CSFを形質導入した腫瘍ワクチンである。遺伝的に改変された腫瘍細胞のGM-CSF分泌はワクチン部位でサイトカイン放出を刺激し、抗原提示細胞を活性化させて腫瘍特異的細胞性免疫応答を誘発すると考えられる(Eager, R. & Nemunaitis, J., GM-CSF Gene-Transduced Tumor Vaccines, Molecular Therapy, Vol. 12, No. 1, 18; July 2005)。しかしながらGVAXTMは限定的な臨床応答しか生じなかった。
【0015】
樹状細胞(DC)-腫瘍細胞融合物が開発され、親細胞由来の対応する腫瘍関連抗原を発現し、さらにそのような抗原を処理して免疫系の適切な細胞に提示する能力を有するハイブリッド細胞が作製された。DC-腫瘍細胞融合物はきわめて多様な腫瘍抗原を提供するが、人間の試験では成果は限定され、これは、おそらく要求される自己成分、DC細胞の成熟によって生じる製品の不均質性、および抗原ローディングの変動のためであろう(Browning, M., Antigen presenting cell/tumor cell fusion vaccines for cancer, Human Vaccines & Immunotherapeutics 9:7, 1545-1548; July 2013;Butterfield, L., Dendritic Cells in Cancer Immunotherapy Clinical Trials: Are We Making Progress?, Frontiers of Immunology, 2013 4: 454)。
【0016】
免疫系の細胞
免疫系を構成する非常に多くの細胞相互作用が存在する。これらの相互作用は双方向にシグナルを送る特異的な受容体-リガンド対を介して生じ、したがって各細胞はそれらシグナルの時間的および空間的分布に基づいて指示を受容する。
【0017】
ネズミモデルは免疫調整経路の発見に非常に有用であったが、これらの経路の臨床実用性は同系交配マウス株から異系交配ヒト集団へと常に置き換えられるとは限らない。なぜならば、異系交配ヒト集団は、個々の免疫調整経路に様々な程度で依存する個体を含み得るからである。
【0018】
免疫系の細胞には、リンパ球、単球/マクロファージ、樹状細胞、近縁ランゲルハンス細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、肥満細胞、好塩基球、および骨髄系細胞系統の他のメンバーが含まれる。加えて、一連の特殊化された上皮性および間質性細胞は解剖学的環境を提供し、当該環境では免疫はしばしば決定的因子の分泌によって生じ、前記因子は、免疫系の細胞の増殖および/または遺伝子活性化を調節し、さらにまた当該応答の誘発およびエフェクター相で直接的役割を果たす(Paul, W. E., “Chapter 1: The immune system: an introduction,” Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed. Paul, W. E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia, 1999(102ページ))。
【0019】
免疫系の細胞は、末梢の組織化された組織(例えば脾臓、リンパ節、腸および扁桃腺のパイエル板)で見出される。リンパ球はまた中枢リンパ系器官、胸腺および骨髄で見出され、前記の場所でそれらは発達工程を経て、成熟免疫系の無数の応答を媒介できるように装備される。リンパ球およびマクロファージの実質的部分は血液およびリンパで見出される細胞の再循環プールを含み、免疫担当細胞が必要とされる部位へ当該細胞をデリバリーし、局所的に発生した免疫を全身化させる手段を提供する(Paul, W. E., “Chapter 1: The immune system: an introduction,” Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed. Paul, W. E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia, 1999(102ページ))。
【0020】
“リンパ球”という用語は、体中のリンパ組織で形成され、正常な成人では循環白血球総数の約22-28%を構成する小さな白血球を指し、前記は疾病に対する身体の防御で大きな役割を果たす。個々のリンパ球は、それらの遺伝物質の組換えを介して構造的に関連する限定的抗原セットに応答するように付託されているという点で特殊化されている(例えばT細胞受容体またはB細胞受容体を作出する)。この付託(免疫系とある抗原との最初の接触前に存在する)は、リンパ球の表面膜上の抗原の決定基(エピトープ)に特異的な受容体の存在によって表現される。各リンパ球は固有の受容体集団を有する(前記受容体はいずれも同一の結合部位を有する)。リンパ球の一セット(または一クローン)は、その受容体の結合領域の構造が別のクローンと相違し、したがって認識できるエピトープが異なる。リンパ球は、それらの受容体の特異性だけでなくそれらの機能でも互いに相違する(Paul, W. E., “Chapter 1: The immune system: an introduction,” Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed. Paul, W. E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia, 1999(102ページ))。
【0021】
2つの大きなリンパ球クラスが認識されている:Bリンパ球(B細胞)(抗体分泌細胞の前駆細胞である)およびTリンパ球(T細胞)。
【0022】
Bリンパ球
Bリンパ球は骨髄の造血細胞に由来する。成熟B細胞は、当該細胞表面によって認識されるエピトープを発現する抗原により活性化され得る。活性化プロセスは、直接的であるか(膜IgG分子の抗原による架橋に依存する(架橋依存B細胞活性化))、または間接的であり得る(同族ヘルプと称されるプロセスでヘルパーT細胞との相互作用を介する)。多くの生理学的状況で、受容体架橋刺激および同族ヘルプは相乗的に働いてより激甚なB細胞応答を生じる(Paul, W. E., “Chapter 1: The immune system: an introduction,” Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed. Paul, W. E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia, 1999)。
【0023】
架橋依存B細胞活性化は、細胞表面受容体の結合部位に対して相補的なエピトープの複数コピーを抗原が発現することを要求する。なぜならば、各B細胞は同一の可変領域を有する複数のIg分子を発現するからである。そのような要求は、反復エピトープを有する他の抗原、例えば微生物の莢膜多糖類またはウイルスエンベロープタンパク質によって満たされる。架橋依存B細胞活性化は、これらの微生物に対して備えられた主要な防御免疫応答である(Paul, W. E., “Chapter 1: The immune system: an introduction”, Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed. Paul, W. E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia, 1999)。
【0024】
同族ヘルプは、受容体と架橋できない抗原に対してB細胞が応答を増大させることを可能にし、同時に、B細胞が弱い架橋事象によって刺激されるときにそれらB細胞を不活性化からレスキューする共同刺激シグナルを提供する。同族ヘルプは、B細胞膜免疫グロブリン(Ig)による抗原の結合、当該抗原のエンドサイトーシス、および当該細胞のエンドソーム/リソソーム区画内での当該抗原の断片化に依存する。生じたペプチドのいくつかは、クラスII主要組織適合複合体(MHC)分子として知られる細胞表面タンパク質の特殊化セットの溝にローディングされる。生じたクラスII/ペプチド複合体は細胞表面で発現され、CD4+ T細胞と称されるT細胞セットの抗原特異的受容体のためのリガンドとして機能する。このCD4+ T細胞は、B細胞のクラスII/ペプチド複合体に特異的な受容体をそれらの表面に保持する。B細胞活性化はそのT細胞受容体(TCR)によるT細胞の結合に依存するだけでなく、この相互作用はまた、T細胞上の活性化リガンド(CD40リガンド)とB細胞上のその受容体(CD40)との結合を可能にしB細胞活性化シグナルを伝達する。加えて、Tヘルパー細胞はいくつかのサイトカインを分泌し、それらサイトカインは、B細胞上のサイトカイン受容体と結合することによって刺激B細胞の増殖および分化を調節する(Paul, W.E., “Chapter 1: The immune system: an introduction, “Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed.Paul, W.E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia, 1999)。
【0025】
抗体産生のための同族ヘルプの最中に、CD40リガンドが活性化CD4+ Tヘルパー細胞上で一過性に発現され、前記リガンドは抗原特異的B細胞のCD40と結合し、それによって第二の共同刺激シグナルを伝達する。後者のシグナルは、抗原と遭遇した胚中心B細胞のアポトーシスを妨げることによって、B細胞の増殖および分化並びにメモリーB細胞の発生のために必須である。BおよびT両細胞のCD40リガンドの過剰発現は、ヒトSLE患者における病的自己抗体産生と関係がある(Desai-Mehta, A.et al., “Hyperexpression of CD40 ligand by B and T cells in human lupus and its role in pathogenic autoantibody production,” J.Clin.Invest.Vol.97(9), 2063-2073, 1996)。
【0026】
Tリンパ球
造血組織の前駆細胞に由来するTリンパ球は胸腺で分化し、続いて末梢のリンパ系組織および再循環リンパ球プールに播種される。Tリンパ球またはT細胞は広範囲の免疫学的機能を媒介する。これらには、B細胞を抗体産生細胞へと発達させる能力、単球/マクロファージの微生物殺滅作用を増加させる能力、ある種のタイプの免疫応答の阻害、標的細胞の直接殺滅、および炎症応答の動員が含まれる。これらの作用は、特異的な細胞表面分子のT細胞発現およびサイトカインの分泌に左右される(Paul, W.E., “Chapter 1: The immune system: an introduction”, Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed.Paul, W.E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia, 1999)。
【0027】
T細胞はそれらの抗原認識メカニズムにおいてB細胞と相違する。免疫グロブリン(B細胞の受容体)は可溶性分子上または粒子表面上の個々のエピトープと結合する。B細胞受容体はネイティブ分子の表面で発現されるエピトープを見つける。細胞外液中の微生物と結合しそれらに対して防御するために抗体およびB細胞受容体が進化している間に、T細胞は他の細胞の表面の抗原を認識し、さらにこれら抗原提示細胞(APC)と相互作用しAPCの行動を変化させることによってそれらT細胞の機能を媒介する。T細胞を活性化することができる、3つの主要なタイプのAPCが末梢リンパ系器官に存在する。樹状細胞、マクロファージおよびB細胞である。これらのうちでもっとも強力なものは樹状細胞であり、前記の唯一の機能は外来抗原をT細胞に提示することである。未熟な樹状細胞は、全身の組織(皮膚、腸管、および気道を含む)に位置する。それらがこれらの部位で侵入微生物と遭遇するとき、それらは当該病原体およびそれらの生成物を貪食し、それらをリンパを介して局所のリンパ節または腸管付随リンパ系器官に運ぶ。病原体との遭遇は、樹状細胞の抗原捕捉細胞からAPC(T細胞を活性化できる)への成熟を誘発する。APCは、T細胞を活性化してエェクター細胞にするために役割を果たす以下の3つのタイプのタンパク質分子をそれらの表面に表示する:(1)MHCタンパク質(外来抗原をT細胞受容体に提示する);(2)共同刺激タンパク質(T細胞表面の相補性受容体と結合する);および(3)細胞-細胞粘着分子(活性化されるために十分に長い間T細胞がAPCと結合することを可能にする)(“Chapter 24: The adaptive immune system,” Molecular Biology of the Cell, Alberts, B.et al., Garland Science, NY, 2002)。
【0028】
T細胞は、それらが発現する細胞表面受容体を基準にしてさらに2つの別個のクラスに細分割される。大半のT細胞はαおよびβ鎖から成るT細胞受容体(TCR)を発現する。小さいグループのT細胞はγおよびδ鎖から構成される受容体を発現する。α/βT細胞では、2つの下位系統が存在し、それらは共同受容体分子CD4を発現するもの(CD4+ T細胞)、およびCD8を発現するもの(CD8+ T細胞)である。これらの細胞は、それらがどのように抗原を認識するかという点並びにそれらのエフェクター機能および調節機能で相違する。
【0029】
CD4+ T細胞は免疫系の主要な調節細胞である。それらの調節機能は、それらの細胞表面分子(例えばCD40リガンドでその発現はT細胞活性化時に誘発される)の発現および活性化時にそれらが分泌する多数のサイトカインの両方に左右される。
T細胞はまた重要なエフェクター機能を媒介し、当該機能のいくつかはそれらが分泌するサイトカインのパターンによって決定される。サイトカインは標的細胞に直接的に有害であり、さらに強力な炎症メカニズムを動員することができる。
加えて、T細胞(特にCD8+ T細胞)は細胞傷害性Tリンパ球(CTL)に発達することができ、CTLによって認識される抗原を発現する標的細胞を効率的に溶解することができる(Paul, W.E., “Chapter 1: The immune system: an introduction,” Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed.Paul, W.E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia, 1999)。
【0030】
T細胞受容体は、クラスIIまたはクラスI MHCタンパク質の特殊化溝と結合した抗原のタンパク質分解に由来するペプチドから成る複合体を認識する。CD4+ T細胞はペプチド/クラスII複合体のみを認識し、一方、CD8+ T細胞はペプチド/クラスI複合体を認識する(Paul, W.E., “Chapter 1: The immune system: an introduction,” Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed.Paul, W.E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia, 1999)。
【0031】
TCRのリガンド(すなわちペプチド/MHCタンパク質複合体)はAPC内で生成される。概して、クラスIIMHC分子は、エンドサイトーシス過程でAPCによって摂取されたタンパク質に由来するペプチドと結合する。続いてこれらのペプチドがローディングされたクラスII分子は細胞表面で発現され、当該表面でそれらは、CD4+ T細胞と発現された細胞表面複合体を認識できるTCRとの結合のために利用され得る。したがって、CD4+ T細胞は、細胞外供給源に由来する抗原との反応のために特殊化される(Paul, W.E., “Chapter 1: The immune system: an introduction,” Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed.Paul, W.E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia, 1999)。
【0032】
対照的に、クラスI MHC分子は、主として内部合成タンパク質(例えばウイルスタンパク質)に由来するペプチドをローディングされる。これらのペプチドはプロテオソームでのタンパク質分解によって細胞ゾルタンパク質から生成され、粗面小胞体へ移される。そのようなペプチド(おおむね長さが9アミノ酸により構成される)はクラスI MHC分子に結合し、細胞表面にもたらされ、当該表面でそれらは適切な受容体を発現するCD8+ T細胞によって認識され得る。これによってT細胞系(特にCD8+ T細胞)は、当該生物の残余の細胞のタンパク質(例えばウイルス抗原)と異なるかまたははるかに大量に生成されるタンパク質または変異抗原(例えば活動性オンコジーン生成物)を発現する細胞を、たとえこれらのタンパク質がそれらの完全な形態で細胞表面で発現されなくてもまたは分泌されなくても検出する能力を与えられる(Paul, W.E., “Chapter 1: The immune system: an introduction,” Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed.Paul, W.E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia, 1999)。
【0033】
T細胞はまた、ヘルパーT細胞としてのそれらの機能に基づいて、細胞性免疫の誘発に必要とされるT細胞、サプレッサーT細胞、および細胞傷害性T細胞に分類できる。
【0034】
ヘルパーT細胞
ヘルパーT細胞は、B細胞を刺激してタンパク質および他のT細胞依存抗原に対して抗体応答を生じさせるT細胞である。T細胞依存抗原は、個々のエピトープが1回だけまたは限定回数で出現し、したがってそれらはB細胞の膜免疫グロブリン(Ig)と架橋することができないかまたは非効率的に架橋する免疫原である。B細胞はそれらの膜Igを介して抗原と結合し、複合体はエンドサイトーシスを受ける。エンドソームおよびリソソーム区画内で、抗原はタンパク質分解酵素によってペプチドに断片化され、当該生成ペプチドの1つ以上はクラスII MHC分子(この小胞区画中を動き回る)にローディングされる。生成されたペプチド/クラスII MHC複合体は続いてB細胞表面膜へ搬出される。ペプチド/クラスII分子複合体に特異的な受容体を有するT細胞はB細胞表面のこの複合体を認識する(Paul, W.E., “Chapter 1: The immune system: an introduction,” Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed.Paul, W.E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia, 1999)。
【0035】
B細胞活性化は、T細胞とそのTCRによる結合およびT細胞CD40リガンド(CD40L)とB細胞上のCD40との相互作用の両方に左右される。T細胞は構成的にはCD40Lを発現しない。むしろCD40L発現は、T細胞のTCRによって認識される同族抗原とCD80またはCD86の両方を発現するAPCとの相互作用の結果として誘発される。CD80/CD86は概して活性化(休止状態ではない)B細胞によって発現され、したがって活性化B細胞およびT細胞が関与するヘルパー相互作用は効率的な抗体産生をもたらすことができる。しかしながら、多くの事例で、T細胞上でのCD40Lの最初の誘発は、構成的にCD80/86を発現するAPC(例えば樹状細胞)の表面の抗原のそれらT細胞による認識に左右される。そのようなヘルパーT細胞は続いてB細胞と効率的に相互作用しそれらをヘルプする。B細胞上の膜Igの架橋は、たとえ効率が悪くても、CD40L/CD40と相乗的に働いて激甚なB細胞活性化を生じることができる。B細胞応答における後続事象(分裂増殖、Ig分泌、および発現されるIgクラスのクラス切り替えを含む)は、T細胞由来サイトカインの作用に依存するかまたは当該作用によって強化される(Paul, W.E., “Chapter 1: The immune system: an introduction,” Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed.Paul, W.E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia, 1999)。
【0036】
CD4+ T細胞は、サイトカインIL-4、IL-5、IL-6およびIL-10を第一に分泌する細胞(TH2細胞)に、またはIL-2、IFN-γおよびリンホトキシンを主として産生する細胞(TH1細胞)に分化する傾向がある。TH2細胞はB細胞の抗体産生細胞への発達の介助に非常に有効であり、一方、TH1細胞は細胞性免疫応答の効率的なインデューサーである(前記細胞性免疫応答は、単球およびマクロファージの微生物殺滅活性の強化および結果として生じる細胞内小胞区画での微生物溶解の効率性増加に関与する)。TH2細胞の表現型を有するCD4+ T細胞(すなわちIL-4、IL-5、IL-6およびIL-10)は効率的なヘルパーT細胞であるが、TH1細胞もまたヘルパーとしての能力を有する(Paul, W.E., “Chapter 1: The immune system: an introduction, “Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed.Paul, W.E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia, 1999)。
【0037】
細胞性免疫誘発におけるT細胞の関与
T細胞はまた、単球およびマクロファージの能力を強化して細胞内微生物を破壊するために機能する。特に、ヘルパーT細胞によって産生されるインターフェロンγ(IFN-γ)は、単核食細胞が細胞内細菌および寄生生物を破壊するいくつかのメカニズム(酸化窒素の生成および腫瘍壊死因子(TNF)産生の誘発を含む)を強化する。TH1細胞はIFN-γを産生するので微生物殺滅作用の強化に有効である。対照的に、TH2細胞によって産生される主要なサイトカインのうちの2つ(IL-4およびIL-10)はこれらの活性を妨害する(Paul, W.E., “Chapter 1: The immune system: an introduction,” Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed.Paul, W.E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia, 1999)。
【0038】
調節T(Treg)細胞
免疫の恒常性は、免疫応答の開始およびダウンレギュレーションの間のバランスの制御によって維持される。アポトーシスおよびT細胞アネルギー(T細胞が抗原遭遇後に機能的に不活性化される本来備わっている寛容メカニズム(Scwartz, R.H., “T cell anergy”, Annu.Rev.Immunol., Vol.21: 305-334, 2003))の両メカニズムが免疫応答のダウンレギュレーションに寄与する。第三のメカニズムは、活性化T細胞のサプレッサーまたは調節CD4+ T(Treg)細胞による能動的な抑制によって提供される(以下で概説される:Kronenberg, M.et al., “Regulation of immunity by self-reactive T cells”, Nature, Vol.435: 598-604, 2005)。構成的にIL-2受容体アルファ(IL-2Rα)鎖を発現するCD4+ Treg(CD4+ CD25+)は、アネルギー性および抑制性である天然に存在するT細胞サブセットである(Taams, L.S.et al., “Human anergic/suppressive CD4+CD25+ T cells: a highly differentiated and apoptosis-prone population”, Eur.J.Immunol.Vol.31: 1122-1131, 2001)。CD4+CD25+ Tregの枯渇はマウスで全身性自己免疫疾患を生じる。さらにまた、これらのTregの移入は自己免疫疾患の進行を予防する。ヒトCD4+CD25+ Tregはそれらのネズミ対応物と同様に胸腺で生じ、さらに細胞間接触依存メカニズムによるレスポンダーT細胞の分裂増殖抑制能力、IL-2産生不能、およびin vitroでのアネルギー表現型を特徴とする。ヒトCD4+CD25+ T細胞は、CD25発現レベルにしたがって、抑制性細胞(CD25high)および非抑制性細胞(CD25low)に分けることができる。転写因子のフォークヘッドファミリーのメンバー(FOXP3)はネズミおよびヒトCD4+CD25+ Tregで発現されることが示され、CD4+CD25+ Treg発達を制御するマスター遺伝子であるように思われる(Battaglia, M.et al., “Rapamycin promotes expansion of functional CD4+CD25+Foxp3+ regulator T cells of both healthy subjects and type 1 diabetic patients”, J.Immunol., Vol.177: 8338-8347, 2006)。
【0039】
細胞傷害性Tリンパ球
標的細胞内で産生されたタンパク質に由来するペプチドを認識するCD8+ T細胞は、標的細胞の溶解をもたらすという点で細胞傷害特性を有する。CTL誘発溶解のメカニズムは、CTLによるパーフォリンの産生を必要とする(パーフォリンは標的細胞の膜に入り込み当該細胞の溶解を促進することができる分子である)。パーフォリン媒介溶解はグランザイム(活性化CTLによって産生される一連の酵素)によって強化される。多くの活性CTLはまたそれらの表面に大量のfasリガンドを発現する。CTL表面のfasリガンドと標的細胞表面のfasとの相互作用は標的細胞のアポトーシスを開始させ、これら細胞の死をもたらす。CTL媒介溶解はウイルス感染細胞の破壊の主要メカニズムであるように思われる。
【0040】
プライミング
本明細書で用いられる“非プライミング細胞”(処女細胞、ナイーブ細胞または未経験細胞とも称される)という用語は、個別の特異性を有する抗原受容体(T細胞のTCR、B細胞のBCR)を既に生成するが当該抗原に遭遇したことがないT細胞およびB細胞を指す。本明細書で用いられる“プライミング”という用語は、T細胞およびB細胞の前駆細胞がそれら細胞に特異的な抗原に遭遇するプロセスを指す。
【0041】
例えば、ヘルパーT細胞およびB細胞が相互作用して特異抗体を産生する前に、抗原特異的T細胞の前駆細胞はプライミングされる必要がある。プライミングはいくつかの工程を必要とする:抗原取り込み、プロセッシング、抗原提示細胞によりクラスII MHC分子と結合した細胞表面での発現、再循環およびリンパ系組織でのヘルパーT細胞前駆細胞の抗原特異的トラッピング、並びにT細胞分裂増殖および分化(Janeway, CA, Jr., “The priming of helper T cells”, Semin.Immunol., Vol.1(1): 13-20, 1989)。ヘルパーT細胞はCD4を発現するが、全てのCD4 T細胞がヘルパー細胞というわけではない(前掲書)。ヘルパーT細胞のクローン拡張に要求されるシグナルは他のCD4 T細胞によって要求されるシグナルと異なる。ヘルパーT細胞のプライミングのために決定的な抗原提示細胞はマクロファージであるように思われ、ヘルパーT細胞増殖のために決定的な第二のシグナルはマクロファージ生成物インターロイキン1(IL-1)である(前掲書)。プライミングされたT細胞および/またはB細胞が第二の共同刺激シグナルを受容すると、それらは活性化T細胞またはB細胞になる。
【0042】
リンパ球活性化
“活性化”または“リンパ球活性化”という用語は、特異的抗原、非特異的有糸分裂促進因子または同種異系細胞によるリンパ球の刺激を指し、RNA、タンパク質およびDNAの合成並びにリンホカインの産生を生じる。前記活性化の後に多様なエフェクターおよびメモリー細胞の分裂増殖および分化が続く。例えば、成熟B細胞は、その細胞表面免疫グロブリン(Ig)によって認識されるエピトープを発現する抗原と遭遇することによって活性化され得る。活性化プロセスは、直接的なもの(膜Ig分子の抗原による架橋に依存する、架橋依存B細胞活性化)または間接的なもの(ヘルパーT細胞との親密な相互作用の状況下(“同族ヘルププロセス”)で最も効率的に生じる)であり得る。T細胞活性化は、TCR/CD3複合体とその同族リガンド(クラスIまたはクラスII MHC分子の溝に結合されるペプチド)との相互作用に依存する。受容体係合によって発動される分子事象は複雑である。もっとも初期の工程の中では、いくつかのシグナリング経路を制御する一組の物質のチロシンリン酸化をもたらすチロシンキナーゼ活性化があるように思われる。これらには、TCRをras経路(ホスホリパーゼCγ1)に連関する一組のアダプタータンパク質が含まれ、前記のチロシンリン酸化はその触媒活性を増加させイノシトールリン脂質代謝経路を係合して、細胞内遊離カルシウム濃度の上昇並びにタンパク質キナーゼCおよび一連の他の酵素(細胞増殖および分化を制御する)の活性化をもたらす。T細胞の完全な応答性には、受容体係合に加えて、付属細胞に由来する共同刺激(例えばT細胞のCD28のCD80による係合および/またはAPCのCD86)が要求される。活性化Bリンパ球の可溶性生成物は免疫グロブリン(抗体)である。活性化Tリンパ球の可溶性生成物はリンホカインである。
【0043】
ケモカインは走化性サイトカインであり、前記は、多様な免疫機能および神経機能を有する構造的に関連する低分子量(8-11kDa)タンパク質の一ファミリーを構成する(Mackay C.R., “Chemokines: immunology’s high impact factors”, Nat Immunol., Vol.2: 95-101, 2001;Youn B.et al., “Chemokines, chemokine receptors and hematopoiesis”, Immunol Rev, Vol.177: 150-174, 2000)。前記は、保存システイン残基の相対的な位置に基づいて4つのサブファミリー(C、CC、CXCおよびCX3C)に分類できる(Rossi D.et al., “The biology of chemokines and their receptors”, Annu Rev Immunol,, Vol.18: 217-242, 2000)。ケモカインは、血液、リンパ節および組織の間でのリンパ球遊走の方向付けに必須の分子である。それらは常に1つのタイプの受容体に拘束されるとは限らないので、ケモカインは複雑なシグナリングネットワークを構成する(Loetscher P.et al., “The ligands of CXC chemokine receptor 3, I-TAC, Mig, and IP10, are natural antagonists for CCR3”, J.Biol.Chem., Vol.276: 2986-2991, 2001)。ケモカインは、7トランスメンブレンドメインGタンパク質連結受容体である表面受容体を活性化することによって細胞に影響を与える。個別のケモカインに対する白血球応答はそれらにおけるケモカインの発現によって決定される。ケモカインと受容体の結合は、生物学的応答の活性化で頂点に達するサイトカインの作用と同様に、多様なシグナリングカスケードを活性化する。CCR5受容体のリガンド(正常T細胞の活性化に際して調節され発現され分泌される(RANTES))、マクロファージ炎症タンパク質(MIP)-1α/およびMIP-1β(Schrum S.et al., “Synthesis of the CC-chemokines MIP-1alpha, MIP-1beta, and RANTES is associated with a type 1 immune response”, J Immunol, Vol.157: 3598-3604, 1996)、並びにCXCケモカイン受容体3のリガンド、誘発タンパク質(IP)-10(Taub D.D.et al., “Recombinant human interferon-inducible protein 10 is a chemoattractant for human monocytes and T lymphocytes and promotes T cell adhesion to endothelial cells”, J Exp Med., Vol.177:1809-1814, 1993))の分泌は望ましくないTH1応答増大と関係している。さらにまた、IL-2およびIFN-γの傷害性炎症促進サイトカインのレベル上昇は、1型糖尿病(T1D)と相関性を有する(Rabinovitch A.et al., “Roles of cytokines in the pathogenesis and therapy of type 1 diabetes”, Cell Biochem Biophys, Vol.48(2-3): 159-63, 2007)。サイトカインは、TH1膵臓浸潤物および他の炎症性病巣(T細胞浸潤を特徴とする)で観察されている(Bradley L.M.et al., “Islet-specific Th1, but not Th2, cells secrete multiple chemokines and promote rapid induction of autoimmune diabetes”, J Immunol, Vol.162:2511-2520, 1999)。
【0044】
炎症促進サイトカイン(例えば血漿中のIL-1β、IL-6およびTNF-α)はT2Dで最初に検出され、T2Dのインスリン耐性および進行に関与している。前記サイトカインは、抗炎症性免疫抑制サイトカインTGF-β1およびIL-10の監視下にありそれらによって調整される(Alexandraki K.et al., “Inflammatory process in type 2 diabetes: The role of cytokines”, Annals of the New York Academy of Sciences, 1084: 89-117, (2006); Kumar N.P.et al.2015.Eur J Immunol.doi: 10.1002/eji.201545973 ahead of print)。IL-17Aは、いくつかの自己免疫疾患に関与する周知の炎症促進サイトカインである。
【0045】
免疫寛容
免疫系は自己抗原に関して耐性である。すなわち、免疫系は、外来物質で発現される抗原決定基と宿主の組織によって発現される抗原決定基を区別することができる。宿主抗原を無視するこの系の能力(免疫寛容または免疫学的耐性と称される)は能動的プロセスであり、免疫学的耐性を介して自己抗原を認識し得る細胞の排除または不活性化を必要とする(Fundamental immunology, 4th Edn, William E.Paul, Ed.Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, 1999(2ページ))。
【0046】
免疫寛容は、当該状態が最初に誘発される場所(すなわち胸腺および骨髄(中枢性)であるか、または他の組織およびリンパ節(末梢性)であるか)にしたがって1)中枢性寛容または2)末梢性寛容に分類される。これらの寛容形態が確立される生物学的メカニズムは異なるが、もたらされる作用は同様である(Raker V.K.et al., “Tolerogenic Dendritic Cells for Regulatory T Cell Induction in Man”, Front Immunol, Vol., 6(569): 1-11, 2015)。
【0047】
中枢性寛容(免疫系が学習して自己分子を非自己分子から区別する主要な方法)は、自己反応性リンパ球クローンが完全に免疫適格細胞に成熟する前にある地点でそれらを抹消することによって確立される。前記は、胸腺および骨髄でそれぞれTおよびBリンパ球へリンパ球が発達している間に生じる(Sprent J.et al., “The thymus and central tolerance”, Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci, Vol.356(1409): 609-616, 2001)。これらの組織では、成熟しつつあるリンパ球は胸腺上皮細胞および胸腺樹状細胞または骨髄細胞によって提示される自己抗原に暴露される。自己抗原は、内因性発現、循環血液による末梢部位からの抗原の移入、および胸腺間質細胞の場合には転写因子AIREの作用による他の非胸腺組織のタンパク質の発現により存在する(Murphy, Kenneth.Janeway’s Immunobiology: 8th ed.Chapter 15: Garland Science.(2012), pp.611-668;Klein L., “Aire gets company for immune tolerance”, Cell, Vol.163(4):794-795, 2015)。自己抗原と強力に結合する受容体を有するリンパ球は自己反応性細胞のアポトーシスという手段によってまたはアネルギーの誘発によって除去される(前掲書(275-334ページ))。弱い自己反応性を有するB細胞もまた免疫学的不活性状態で存続することがあるが、この場合、それらはそれらのB細胞受容体の刺激に応答しない。いくつかの弱く自己認識するT細胞はまた別にナチュラル調節T細胞(nTreg細胞)に分化し、前記はT細胞の自己反応性の潜在的事例を減少させるために抹消で見張りとして機能する(前掲書(611-668ページ))。
【0048】
抹消閾値はB細胞の場合よりもT細胞でより厳しい。なぜならば、T細胞は直接的な組織損傷を引き起こすことができる主要な細胞集団だからである。さらにまた、多種多様な抗原をそのB細胞に認識させて、それらB細胞がはるかに多様な病原体に対して抗体を誘引できることは、生物にとってより有益である。B細胞は、同じ抗原を認識する自己拘束性がより強いT細胞による確認後にのみ完全に活性化できるので、自己反応性は強く抑制される(Murphy, Kenneth.Janeway’s Immunobiology: 8th ed.Chapter 8: Garland Sciences. pp.275-334)。
【0049】
この負の選別過程は、個体自身の組織に対して強い免疫応答を潜在的に開始させるTおよびB細胞を破壊し、一方、外来抗原を識別する能力の保存を担保する。リンパ球学習ではこの工程は自己免疫の防止に有害である。リンパ球の発達および学習は胎児発育時にもっとも活発であるが、しかしながら未熟なリンパ球が生成されるので生涯にわたって持続する。ただし成人期では胸腺は退化し骨髄は縮小するので速度は遅くなる(Murphy, Kenneth.Janeway’s Immunobiology: 8th ed.Chapter 8: Garland Sciences.(2012), pp.275-334;Jiang T.T., “Regulatory T cells: new keys for further unlocking the enigma of fetal tolerance and pregnancy complications”, J Immunol., Vol.192(11): 4949-4956, 2014)。
【0050】
末梢性寛容は、TおよびB細胞が成熟し末梢組織およびリンパ節に進入後に発達する(Murphy, Kenneth.Janeway’s Immunobiology: 8th ed.Chapter 8: Garland Sciences.pp.275-334)。前記は、もっぱらT細胞(特にCD4+ヘルパーT細胞)レベルでの制御に関与する多数のオーバーラップするメカニズムによって説明される(前記T細胞は免疫応答を統合し、抗体産生を進行させるためにB細胞が必要とする確証的シグナルをB細胞に与える)。胸腺で排除されなかった正常な自己抗原に対する不適切な反応性は発生し得る。なぜならば、胸腺を出たT細胞は相対的に(ただし完全にではない)安全だからである。いくつかは、T細胞が胸腺では遭遇しなかった自己抗原に応答し得る受容体を有するであろう(Murphy, Kenneth.Janeway’s Immunobiology: 8th ed.Chapter 8: Garland Sciences.(2012), pp.275-334)。胸腺で負の胸腺内選別を免れたそれらの自己反応性T細胞は、主にnTreg細胞によって末梢組織で抹消されないかぎり細胞損傷を与え得る。
【0051】
自己免疫調節因子(Aire)(通常は胸腺髄質上皮細胞で発現される)は、末梢の自己抗原の異所性発現の媒介および自己反応性T細胞の抹消の媒介によって免疫寛容で役割を果たす(Metzger T.C.et al., “Control of central and peripheral tolerance by Aire”, Immunol.Rev.2011, Vol.241: 89-103, 2011)。
【0052】
ある種の抗原に対する適切な反応性はまた、反復暴露後に耐性の誘発によって抑制され得る。ナイーブCD4+ヘルパーT細胞は、末梢組織で、またはそれにしたがって近隣のリンパ系組織(リンパ節、粘膜関連リンパ系組織など)で誘導Treg細胞(iTreg細胞)に分化する。この分化は、T細胞活性化時に産生されるIL-2、および多様な供給源(寛容化樹状細胞(DC)または他の抗原提示細胞を含む)のいずれかに由来するTGF-βによって媒介される(Curotto de Lafaille et al., “Effective recruitment and retention of older adults in physical activity research: PALS study”, Immunity, Vol.30(6): 626-635, 2009)。
【0053】
Tメモリー細胞
適応免疫応答による病原体の認識および根絶に続いて、T細胞の大多数(90-95%)は、メモリーT細胞プールを形成する残留細胞(中枢メモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリーT細胞(TEM)、および在留メモリーT細胞(TRM)と称される)によりアポトーシスを受ける(Clark, R.A., “Resident memory T cells in human health and disease”, Sci.Transl.Med., 7, 269rv1, 2015)。
【0054】
標準的T細胞と比較して、メモリーT細胞は長く生存し、他と明確に異なる表現型(例えば特異的な表面マーカーの発現、迅速な種々のサイトカイン生成プロフィール、直接的なエフェクター細胞機能能力および固有の帰巣分布パターン(homing distribution patterns))を有する。メモリーT細胞は、それらの対応する抗原との再暴露時に迅速な反応を示して攻撃体の再感染を排除し、それによって免疫系のバランスを迅速に回復させる。増大する証拠は、自己免疫メモリーT細胞は自己免疫疾患の治療または治癒のほとんどの試みを妨害することを実証している(Clark, R.A., “Resident memory T cells in human health and disease”, Sci.Transl.Med., Vol.7, 269rv1, 2015)。
【0055】
補体系
補体系は血漿中を循環する30を超える種々のタンパク質を含む。感染がないとき、補体タンパク質は不活性型で循環する。病原体が存在するとき、補体タンパク質は活性化され、直接的にまたは食作用を促進することによって病原体を殺滅する。補体系の活性化には3つの方法が存在する。
【0056】
抗体依存細胞媒介細胞傷害(ADCC)は、免疫系のエフェクター細胞(例えばナチュラルキラー細胞)が抗体結合標的細胞を能動的に溶解するメカニズムである。細胞傷害性エフェクター細胞による抗体被覆標的細胞のADCC殺滅メカニズムは、非食作用性プロセスを介する。このプロセスは、細胞傷害性細粒の内容物の放出または細胞死誘発分子の発現を必要とする。ADCCは、標的結合抗体(IgGまたはIgAまたはIgEクラスに属する)とエフェクター細胞表面に存在する一定のFc受容体糖タンパク質(免疫グロブリン(Ig)のFc領域と結合する)との相互作用を引き金として誘発される。ADCCを媒介するエフェクター細胞にはナチュラルキラー(NK)細胞、単球、マクロファージ、好中球、好酸球および樹状細胞が含まれる。ADCCは多数のパラメーター(例えば標的細胞表面の抗原の密度および安定性、抗体の親和性、並びにFcR-結合親和性)に左右される。
【0057】
ADCCと対比して、補体依存細胞傷害性(CDCC)は、抗体の関与なしに標的細胞膜を損傷することによって病原体を殺滅する免疫系のプロセスである。この代替経路は、偶発的加水分解および補体成分C3の活性化によって開始し、前記補体成分は微生物の表面に直接結合する。また別には、レクチン経路が、可溶性炭水化物結合タンパク質(微生物表面の特異的な炭水化物分子と結合する)によって開始する。
【0058】
ADCCおよびCDCCメカニズムの各々はC3コンバターゼを生成し、C3を切断してC3bを生じ、前記は病原体の表面と結合しC3aを遊離する。これは、感染部位への食細胞の補充、免疫細胞による病原体の食作用、および/または膜攻撃複合体(MAC)(病原体の細胞膜を破壊し細胞溶解を引き起こす)の形成をもたらす。
【0059】
共同刺激分子
共同刺激分子は高度に活性な免疫調整タンパク質で、前記は免疫応答の発達および維持に決定的な役割を果たす(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。T細胞応答の二シグナル仮説は、MHC分子と結合した抗原とT細胞受容体(TCR)との間の相互作用、および共同刺激分子とそのリガンドとの相互作用を必要とする。特殊化APC(共同刺激性の第二のシグナルの担体である)は、MHC分子とTCRとの結合に続いてT細胞応答を活性化することができる。対照的に、体細胞組織はこの第二のシグナルを発現できず、したがってT細胞不応答性を引き起こす(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。この二シグナルモデルは、自己抗原に対する末梢寛容および癌細胞が免疫検出を回避できる理由を説明する。腫瘍細胞は共同刺激分子をほとんど発現せず、したがってT細胞活性化に決定的なこの第二のシグナルを欠いている。
【0060】
さらにまた、にシグナルモデルで必要とされる共同刺激の多くは、正常組織および癌細胞によって発現される共同阻害性分子によって妨害され得る(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。実際、多種多様な組織で発現される相互作用性免疫調整分子の多くのタイプが、免疫学的状況に応じて刺激性および阻害性機能の両機能を示すことができる(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。
【0061】
2つの5’プリン(例えばGpA)および2つの3’ピリミジン(例えばTpCまたはTpT)によってフランキングされる非メチル化CpGジヌクレオチドから成るDNAモチーフは、細菌DNAを模倣することによって先天性免疫応答を刺激することができる。CpGオリゴヌクレオチドを免疫アジュバントとして用い、プロフェッショナル抗原提示細胞の機能を改善し、ワクチン特異的液性および細胞性免疫応答の発生を高めることができる。CpG DNAは樹状細胞およびB細胞を直接的に活性化でき、先天性および適応性免疫応答の両方の誘発をもたらす(Bode, C., CpG DNA as a vaccine adjuvant, Expert Rev Vaccines.2011 Apr; 10(4): 499-511)。
【0062】
細胞表面免疫調整分子は構造にしたがって受容体/リガンドの2つの大きなファミリーに分類できる:B7/CD28免疫グロブリンファミリーおよび腫瘍壊死因子(TNF)関連ファミリー(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。これらファミリーの多くのメンバーの特徴が明らかにされ、癌の免疫療法のために評価されている。
【0063】
CD28/TCLA-4/B7-1/B7-2ファミリー
B7-1(CD80)およびB7-2(CD86)は活性化APCで発現されT細胞のCD28と結合して、ナイーブT細胞活性化に必要な共同刺激を提供し、IL-2産生、細胞分裂および活性化誘発細胞死(AICD)の阻害を誘発する(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。CD28とのホモローグ、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4、CD152)は、B7-1およびB7-2の両方と結合し、CD28とは対照的にT細胞分裂増殖を阻害する。したがってB7分子は2つのリガンドCD28およびCTLA-4を有し、前記はT細胞に対して反対の作用をもつ(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。
【0064】
孤立状態でのCTLA-4の連結はT細胞のアポトーシスを引き起こし得るが、TCRおよびCD28によるシグナリングと一緒にCTLA-4を連結するとT細胞活性化を阻害する。したがって、CTLA-4 -/-マウスは、致死的なリンパ系増殖疾患を発症する(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。
【0065】
細胞表面での時間的および位置的に適切なCD28およびCTLA-4の弁別的発現は、免疫応答の発生におけるそれらの対応する役割を示唆する。CD28は膜全体に均一に分布し、T細胞活性化とともに迅速に免疫学的シナプスへと凝集するが、CTLA-4は細胞内小胞に存在し、後に細胞表面に動員される(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。CTLA-4の動員は、APCでのB7.1発現およびTCR刺激の強さによって厳密に調節される。結果として、CTLA-4はT細胞応答を減弱するために機能し、高親和性T細胞クローンの活性を制限することができる(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。
【0066】
CTLA-4は免疫調節の多くの局面で関係を示唆されている。例えば、それは、T細胞アネルギーの惹起、メモリーT細胞応答の調整、多クローン性T細胞応答の多様性の形成、並びに阻害性サイトカインTGF-ベータおよびIL10のレベル上昇に必要とされるかもしれない(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。CTLA-4はまた、樹状細胞活性化マーカーをダウンレギュレートするためにB7を介する“バックシグナル”であるかもしれない(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。CTLA-4はまた、調節T細胞(Treg)機能で役割を有するかもしれない。なぜならば、CTLA-4はTregおよび皮膚のT細胞リンパ腫(Tregから生じる可能性がある)で発現されるからである(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。
【0067】
CD28/B7/CTLA-4共同刺激メカニズムは、例えば腫瘍へのB7分子のトランスフェクションおよび抗CTLA-4抗体の使用による癌免疫療法のために研究されてきた。
【0068】
B7.1の低免疫原性メラノーマ細胞株へのトランスフェクションを必要とする初期の実験では、腫瘍は増殖したが続いてCD8+ T細胞依存プロセスで旧態に復帰した。さらにまた、B7.1メラノーマ細胞で処置された動物は更なる腫瘍チャレンジに対して免疫されて免疫学的記憶の誘発を示し、B7発現腫瘍細胞の接種は小さな既存のB7陰性腫瘍の後退を引き起こした。概して、より大きな腫瘍(2-3mmより大きい)は影響を受けず、同様な結果はB7.2発現腫瘍で観察された。同様な結果がリンパ腫および前立腺癌を含む他の腫瘍モデルで示されている。B7表面分子はT細胞と直接接触してT細胞を活性化するようであり、B7をトランスフェクトされた腫瘍細胞はAPCとして機能するように思われる。これらの有望な結果にもかかわらず、B7含有ワクチンの人間での臨床試験は免疫応答の増加を示すが限定的な臨床的利益しか生じない(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。
【0069】
抗CTLA抗体は、ネズミの結腸癌および線維肉腫とともに前立腺癌、乳癌およびメラノーマのネズミモデルで有効であるが、低免疫原性腫瘍のいくつかのモデルでは有効ではないことが示されている。抗CTLA-4抗体はまた、マウスモデルで他の免疫療法および通常療法(例えば外科手術、化学療法)と併用された。マウスモデルおよび人間の試験の結果は、CTLA-4妨害が抗腫瘍免疫を強化するメカニズムは調節T細胞媒介抑制によるのではなく、むしろCTLA-4媒介阻害のダウンレギュレーションによるエフェクターT細胞の分裂増殖の強化のためであることを提唱している(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。抗CTLA-4抗体の人間での臨床試験は免疫療法としての潜在的能力を示しているが、CTLA-4はT細胞応答の制御で役割を有するので、その活性を妨害することは自己免疫に至る可能性がある。
【0070】
PD-1/PD-L1(B7-H1)、PD-L2(B7-DC)
プログラムデス(death)-1(PD-1)は活性化T細胞によって発現され、主に阻害性調整因子であると考えられる。ネズミモデルの証拠は、PD-L1の発現は免疫系から腫瘍を防御できることを提唱する。腫瘍のPD-L1は腫瘍反応性T細胞でアポトーシスを引き起こし、PD-L1を発現するミエローマ細胞株はPD-1ノックアウトマウスで増殖できない。あるモデルでは、PD-L1妨害抗体は扁平上皮癌マウスを治癒させた。別のモデルでは、PD-L1妨害抗体は、4-1BB(CD137)を用いる免疫学療法に対する応答性を回復させた。さらにまた、PD-1 -/- T細胞は強化された抗腫瘍特性を有することが示された。PD-L1はまた、“サプレッサー”骨髄性細胞の機能で重要な役割を果たすことができる。妨害抗体の存在下での樹状細胞の培養は卵巣癌に対するT細胞応答の発達を強化することが報告された。PD-L1が免疫抑制を媒介できるメカニズムはインターロイキン10(IL-10)産生による。対照的に、他のPD-1リガンド(PD-L2)は低免疫原性B16メラノーマに対する免疫をマウスで刺激した(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。
【0071】
多くのヒト癌(乳房、子宮頸、肺臓、卵巣、結腸の腫瘍とともにメラノーマ、神経膠芽腫および原発性T細胞リンパ腫を含む)はPD-L1を発現することが見出され、このことは腫瘍免疫回避におけるPD-L1経路の役割と一致する。さらにまた、食道癌および腎細胞癌の予後不良はPD-L1の発現と関連し得る。同様に、PD-L2はホジキンリンパ腫細胞株で高度に発現され、診断マーカーとしても機能し得る(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。
【0072】
CD27/CD70
T細胞活性化に際して、CD27は一過性にアップレギュレートされ、前記はまたB細胞およびNK細胞で発現される。CD27(CD70)のリガンドは活性化リンパ球および成熟樹状細胞で発現される。中枢メモリーからエフェクターメモリー表現型への移行はCD8+ T細胞のCD27発現の低下と関連し、CD27 -/-マウスは、ウイルス感染時にメモリーT細胞機能障害を末梢組織での蓄積低下とともに示す。対照的に、構成的CD27発現を有するマウスはT細胞集団増加の蓄積を示し、最終的にはB細胞の欠乏を生じついには致死的なT細胞免疫不全に陥る。これは、おそらく最終分化、非再生メモリー表現型へとT細胞集団が過剰にシフトしたことによるのであろう(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。
【0073】
OX40/OX40L
OX40(CD134)は、活性化T細胞でのみおよびもっぱらCD4+ T細胞で発現される。そのリガンド(OX40L)は、多種多様な免疫細胞(活性化B細胞、T細胞、樹状細胞および血管内皮細胞を含む)で見出される。T細胞のOX40の結合は生存、拡張およびサイトカイン産生を促進し、ノックアウト動物の実験は、OX40はCD4にとって決定的であるがCD8応答ではそうではないことを示す。OX40はまたTregの恒常性および発達にとって重要である。免疫療法の関係では、OX40の結合はT細胞アネルギーを逆転させ、サイレントエピトープを免疫原性にする(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。
【0074】
抗腫瘍T細胞でOX40シグナリングを増大させる種々の戦術は、腫瘍免疫療法の開発の有望性をマウスモデルで示した。OX40結合は、癌(例えばメラノーマ、肉腫、結腸癌、乳癌および神経膠腫)の動物モデルで無腫瘍生存を増加させ、いくらかのマウスを治癒させることが見出された。さらにまた、転移性疾患の動物モデルで治療が有効であり、この場合、マウスは強い抗腫瘍T細胞応答を特にメモリーCD4+ T細胞で発達させ、前記応答は同じ腫瘍による更なるチャレンジからマウスを防御した。さらにまた、OX40LおよびGMCSFをトランスフェクトされた細胞を含むワクチンは、ネズミ結腸癌モデルで結腸癌を治癒させる。OX40結合はまた、4-1BB結合およびインターロイキン12(IL-12)の併用で相乗作用を示した。総合すれば、ネズミの実験による証拠は、OX40の結合は他の免疫療法と併用すればヒトの癌の治療で有望であることを示していると思われる(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。
【0075】
4-1BB/4-1BBL
4-1BB(CD137)は活性化T細胞、NK細胞および樹状細胞で発現され、一方、4-1BBLは活性化抗原提示細胞(APC)で発現される。4-1BB結合は特にCD8+ T細胞を刺激し、エフェクター細胞へのそれらの分化を促進することが実験で見出された。4-1BBシグナリングは可溶性抗原によって誘発されるアネルギーを逆転させCD28-/- CD8+ T細胞をレスキューできることが報告された。そのようなT細胞の蓄積は年配者で慢性炎症および癌に際して生じる。対照的に、4-1BB結合は、CD4+ T細胞およびB細胞を抑制することが示された。アゴニスト抗4-1BB抗体は、マウスの自己免疫を回復させ得ることが確認された(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。
【0076】
抗4-1BB抗体は樹立された腫瘍の根絶をマウスモデルで達成することができ、さらに、全身投与抗体による4-1BBの結合は、4-1BBL発現腫瘍細胞によるワクチン免疫とともに腫瘍拒絶を引き起こすことが示された。さらにまた、4-1BBに特異的な単鎖Fvフラグメントをトランスフェクトされた腫瘍細胞は有効な抗腫瘍抗原であることもまた見出された。CD8+ T細胞は4-1BBマウスモデルでは主としてエフェクターであると考えられるが、腫瘍拒絶はまた、CD4+ T細胞、NK細胞および骨髄性細胞に依存すると確認された。しかしながら、CD28が存在し未熟な免疫応答が既に存在するときは、4-1BBの結合は有効ではない。したがって、両経路を一緒に標的とするために、CD28刺激と組合わせて4-1BB結合が用いられた(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。
【0077】
HVEM-LIGHT
ヘルペスウイルス侵入媒介因子(HVEM)は、共同刺激性または共同阻害性態様でT細胞活性化を調節する生化学的スイッチである。刺激性または阻害性結末は係合される特異的リガンドに左右される(Cai, G., The CD160, BTLA, LIGHT/HVEM pathway: a bidirectional switch regulating T-cell activation, Immunol.Rev., May; 229(1):244-58, 2009)。HVEMは少なくとも3つのリガンドに結合する:リンホトキシン様(誘導性発現を示し、HVEMに対して単純疱疹ウイルス糖タンパク質Dと競合する)Tリンパ球発現受容体(LIGHT)、リンホトキシンアルファ3(Ltα3)、並びにBリンパ球およびTリンパ球弱毒因子(BTLA)。LIGHT、Ltα3およびBTLAはHVEMリガンドである。LIGHTまたはLTα3のHVEMとの結合は共同刺激シグナルをデリバリーし、一方、BTLAとHVEMとの結合は共同阻害シグナルをデリバリーする。LIGHT受容体はHVEMの他に2つの受容体、LTβRおよびCdR3/TR6と結合する。HVEMは休止T細胞、単球および未熟な樹状細胞で見出される。LIGHTは活性化T細胞、単球およびNK細胞で、さらに未熟な樹状細胞でもまた見出され得る。LIGHTシグナリングは、CD3またはCD3/CD28で刺激されたT細胞の分裂増殖を引き起こしDC成熟を誘発することができる。一方、LIGHTの過剰発現は、増加T細胞集団および粘膜組織の炎症により自己免疫を引き起こすことができる。LIGHT欠乏はCD8+ T細胞の機能不全を引き起こす。BTLAは活性化T細胞、B細胞および樹状細胞で発現され、そのシグナルはT細胞応答を抑制することができる(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。
【0078】
LIGHTは、アポトーシス誘発および免疫活性化により抗腫瘍作用を示すと考えられ、前記はデス(death)ドメイン経路によりHVEM発現腫瘍を殺滅できる。さらにまた、LIGHTの腫瘍細胞へのトランスフェクションはT細胞依存腫瘍拒絶を引き起こすことができ、前記は、いくつかの事例では、T細胞の腫瘍への侵入を促進する変化を腫瘍細胞で誘発することによって達成される(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。
【0079】
CpG
2つの5’プリン(例えばGpA)および2つの3’ピリミジン(例えばTpCまたはTpT)によってフランキングされる非メチル化CpGジヌクレオチドから成るDNAモチーフは、細菌DNAを模倣することによって先天性免疫応答を刺激することができる。CpGオリゴヌクレオチドを免疫アジュバントとして用い、プロフェッショナル抗原提示細胞の機能を改善し、ワクチン特異的液性および細胞性免疫応答の発生を高めることができる。CpG DNAは樹状細胞およびB細胞を直接的に活性化でき、先天性および適応性免疫応答の両方の誘発をもたらす(Bode, C., CpG DNA as a vaccine adjuvant, Expert Rev Vaccines.2011 Apr; 10(4): 499-511)。非メチル化CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドの免疫療法アジュバントとしての有効性は、CpGと抗原との間の空間的および時間的近接性に左右される。CpGオリゴヌクレオチドの抗原への物理的付着は、分散的に抗原が混合されたCpGオリゴヌクレオチドと比較して当該抗原に対する免疫を100倍以上増加させることが実験で示された。さらにまた、複合化CpGは細胞系ワクチンの樹状細胞の取り込みを高め、共同刺激分子の発現を増加させ、免疫刺激性サイトカインの産生を増加させ、さらに細胞傷害性T細胞の拡張を引き起こす(Shirota, H., CpG-conjugated apoptotic tumor cells elicit potent tumor-specific immunity, Cancer Immunol Immunother (2011) 60:659-669(前記は参照によってその全体が本明細書に含まれる))。
【0080】
ワクチンの免疫原性潜在能力
感染性因子に対するワクチンは、感染を予防または軽減する治療目標のために免疫応答の形成に用いられる、特異的な受容体-リガンド相互作用の主要な例である(例えば流感ワクチン)。概して、抗原はアジュバント(例えば合成小分子免疫調整剤)の状況下で免疫系に提示される。
【0081】
本発明の同系異種腫瘍ワクチンは、そのようなワクチンとはいくつかの重要な特色においてはっきりと相違する。第一に、それらは、既存の腫瘍を治療できるように設計されるが、ただし腫瘍形成の予防もまた理論的に可能である。第二に、それらの有効性は、腫瘍は個体にとって外来性であり新規である新抗原(すなわち新規で非自己成分)を発現するが、それらはまた疑いもなくヒト腫瘍細胞でありしたがって当該個体によって外来性(すなわち非自己)として常に認識されるとは限らないという事実によって制限される傾向がある。
【0082】
上述の困難さにもかかわらず、今や以下の証拠が浮かび上がってきた:1)内因性抗腫瘍応答が存在すること、2)これらの免疫応答は調整できること、および3)この調整は標準的な臨床試験で全生存の関係で測定できること。
【0083】
本発明の特徴にしたがえば、癌患者に由来する腫瘍細胞株または多様な遺伝的改変同種異系腫瘍細胞株で共同発現され得る一連の免疫調整因子は、腫瘍ワクチンとして用いられるとき、以下のために役立てることができる:1)多様な腫瘍抗原を内因性抗原提示細胞に効率的にローディングする、2)免疫応答中に受容した正常なシグナルを強化することによっていくつかの細胞タイプを効率的に刺激する、3)T調節細胞が免疫応答を抑制するメカニズムを妨げる、4)免疫応答を全般的に消散させるシグナルを妨げる、および5)そのような処方物をワクチン接種された癌患者の全生存の強化をもたらす。ある種の実施態様では、改変腫瘍細胞株は当該ワクチンを投与される患者に由来し得るが、同種異系腫瘍細胞株ワクチンアプローチは個別化療法アプローチとは明確に異なる。なぜならば、改変された腫瘍細胞は、最終的に当該ワクチンを投与される個体に必ずしも由来するとは限らないからである。むしろ、同種異系腫瘍細胞ワクチンのねらいは、同じ腫瘍タイプの個々の腫瘍が共通して有する多くの成分に対して免疫応答を集中させることである。
【0084】
癌の個々のタイプの各々について多数の潜在的腫瘍抗原を利用する1つの戦術は、潜在的に関係する抗原を偶然除外しないように全腫瘍細胞でワクチン免疫することである。本明細書に記載する発明は、とりわけ、数々の抗原を保持し、さらに2つ以上の免疫調整因子を発現するために改変された全腫瘍細胞を用いたワクチンを提供する。
【発明の概要】
【0085】
いくつかの特徴にしたがえば、患者で癌を治療する方法は、(a)2つ以上の免疫調整因子ペプチドを発現するためにトランスフェクトされた同種異系腫瘍細胞株変種を調製する工程および(b)癌を有する患者に腫瘍細胞株変種ワクチンの免疫刺激量を投与する工程を含み、ここで当該免疫刺激量は臨床成果を改善するために有効であり、前記(a)の工程は、以下の工程によって実施される:(1)同種異系親腫瘍細胞株を提供する工程;(2)IgG1、CD40L、TNF-アルファ、GM-CSF、およびFlt-3Lから選択される免疫調整因子ペプチドの2つ以上をコードする組換えDNA配列をトランスフェクトまたは形質導入する工程、(3)IgG1、CD40L、TNF-アルファ、GM-CSF、およびFlt-3Lから選択される2つ以上の免疫調整因子ペプチドの免疫原量を安定的に発現する腫瘍細胞クローンを選別することによって当該腫瘍細胞株変種を作製する工程、(4)混合リンパ球腫瘍細胞反応で、細胞の分裂増殖、細胞サブセットの分化、サイトカイン放出プロフィール、および腫瘍細胞溶解から選択されるパラメーターの1つ以上によって、クローン由来細胞株変種を選別し、ここで当該クロー由来選別細胞株変種がT細胞、B細胞、および樹状細胞の1つ以上の活性化を刺激するために有効である工程。
【0086】
いくつかの実施態様にしたがえば、免疫調整因子ペプチドは、膜発現IgG1、CD40L、TNF-アルファとともに、GM-CSF並びにFlt-3Lの膜および可溶型から選択される。
【0087】
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種ワクチンは、プラセボコントロールと比較して癌患者の全生存を改善するために有効である。いくつかの実施態様にしたがえば、親腫瘍細胞株はメラノーマに由来する。いくつかの実施態様にしたがえば、親腫瘍細胞株は前立腺癌に由来する。いくつかの実施態様にしたがえば、親腫瘍細胞株は乳癌に由来する。
【0088】
いくつかの実施態様にしたがえば、IgG1免疫調整因子ペプチドの配列は配列番号:45と少なくとも60%同一性である。いくつかの実施態様にしたがえば、CD40L免疫調整因子ペプチドの配列は配列番号:7と少なくとも60%同一性である。いくつかの実施態様にしたがえば、TNF-アルファ免疫調整因子ペプチドの配列は配列番号:11と少なくとも60%同一性である。いくつかの実施態様にしたがえば、GM-CSF免疫調整因子ペプチドの配列は配列番号:13または配列番号:5と少なくとも60%同一性である。いくつかの実施態様にしたがえば、Flt-3L免疫調整因子ペプチドの配列は配列番号:14または配列番号:44と少なくとも60%同一性である。
【0089】
いくつかの実施態様にしたがえば、同種異系腫瘍細胞ワクチンは、(1)腫瘍細胞株変種および(2)医薬的に許容できる担体を含み、前記(1)は(a)IgG1、CD40L、TNF-アルファ、およびFlt-3Lペプチドから選択される、2つ以上の安定的に発現される組換え膜結合免疫調整因子ペプチド、および安定的に発現される組換え可溶性GM-CSFペプチドを含み、ここで当該腫瘍細胞株変種の免疫刺激量は、無増悪生存、全生存または両方をプラセボコントロールと比較して改善する免疫応答を引き出すために有効である。
【0090】
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は以下の2つ以上を発現する:(a)配列番号:45と少なくとも60%同一性を有する膜結合IgG1ペプチド、(b)配列番号:7と少なくとも60%同一性を有する膜結合CD40Lペプチド、(c)配列番号:11と少なくとも60%同一性を有するTNF-アルファペプチドの膜結合型、(d)配列番号:14と少なくとも60%同一性を有するFlt-3Lペプチドの膜結合型、および(e)配列番号:13と少なくとも60%同一性を有する可溶性GM-CSFペプチド。
【0091】
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種はCD40LペプチドおよびTNF-アルファペプチドの膜結合融合タンパク質を含む。いくつかの実施態様にしたがえば、CD40Lペプチドは配列番号:9と少なくとも60%同一性でありTNF-アルファペプチドは配列番号:10と少なくとも60%同一性である。いくつかの実施態様にしたがえば、TNF-アルファペプチドは配列番号:11と少なくとも60%同一性である。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、可溶性GM-CSF並びに膜結合IgG1、CD40L、TNF-アルファ、およびFlt-3Lを含む。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種はCD40LおよびTNFaペプチドの融合物を含む。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:31と少なくとも60%同一性の免疫調整因子ペプチド配列を含む。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、GM-CSFの膜型および可溶型並びにFlt-3Lの膜型および可溶型を含む。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、IgG1、CD40L、およびTNF-アルファの膜結合型を含む。
【0092】
本発明のこれらの利点および他の利点は、下記の詳細な説明を参照することによって当業者には明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【
図1】ある腫瘍細胞株にとってネイティブなペプチドと免疫療法を受ける患者の腫瘍細胞にとってネイティブなペプチドとの間のヘテロクリティックな酵素反応の1つの実施態様を示す。
【
図2B】ベクター2-6によってコードされるタンパク質の模式図を示す。
【
図3A】scFv-抗ビオチン-G3ヒンジ-mIgG1ベクターの編成の模式図を示す。
【
図3B】ベクター1のヌクレオチド配列を示す(配列番号:47)。
【
図4A】完全な抗ビオチン-G3ヒンジ-mIgG1ベクターの編成の模式図を示す。
【
図4B】ベクター2のヌクレオチド配列を示す(配列番号:48)。
【
図5A】sGM-CSF/ires/mFLT3Lベクターの編成の模式図を示す。
【
図5B】ベクター3のヌクレオチド配列を示す(配列番号:49)。
【
図6A】sFLT3L/ires/(FLT3 signal-GM-CSF-Tm)ベクターの編成の模式図を示す。
【
図6B】ベクター4のヌクレオチド配列を示す(配列番号:50)。
【
図7A】mCD40Lベクターの編成の模式図を示す。
【
図7B】ベクター5のヌクレオチド配列を示す(配列番号:51)。
【
図8A】mTNFaベクターの編成の模式図を示す。
【
図8B】ベクター6のヌクレオチド配列を示す(配列番号:52)。
【
図9A】mRANKL/ires/FLT3シグナル-V5-scFV抗ビオチン-Tmベクターの編成の模式図を示す。
【
図9B】ベクター7のヌクレオチド配列を示す(配列番号:53)。
【
図11】フローサイトメトリー実験の結果を示すグラフのパネルである。サイズおよび粒度についての前方散乱(FSC)および側方散乱(SSC)プロット。SK株は数字コードによって表される;SK、非改変親株;3、分泌GM-CSFおよび膜発現FLT-3L;4、分泌FLT3Lおよび膜発現GM-CSF;5、CD40Lの非切断型;6、TNF-aの非切断型;3-4は3および4の組合せ;3-4-5は3、4および5の組合せ;3-4-6は3、4および6の組合せ。細胞株6、3-4-5および3-4-6はより大きいより粒状表現型を示し、おそらく上皮起源の細胞上にTNF-aおよびCD40Lに対する受容体が存在しているためであろう。
【
図12】表示の免疫調整因子を有する表示の操作細胞株に応答するhPBMCのCD4細胞の代表的なフローサイトメトリー染色を示すグラフのパネルである。SK細胞株は以下のコードによって表される:SK、非改変親株;2、膜発現IgG1;3、分泌GM-CSFおよび膜発現FLT-3L;4、ぶんぴつFLT3Lおよび膜発現GM-CSF;5、CD40Lの非切断型;6、TNFの非切断型。
【
図13】表示の操作表面マーカー(GM-CSF、FLT3L、TNF-aおよびCD40L)についての代表的フローサイトメトリー染色を示すグラフのパネルである。SK株は数字コードによって表される:SK、非改変親株;3、分泌GM-CSFおよび膜発現FLT-3L;4、分泌FLT3Lおよび膜発現GM-CSF;5、CD40Lの非切断型;6、TNF-aの非切断型;3-4は3および4の組合せ;3-4-5は3、4および5の組合せ;3-4-6は3、4および6の組合せ。
【
図14A-14B】免疫調整因子の発現によって改変されたSKメラノーマ細胞に対するhPBMC応答のCyTOFマスサイトメトリー単一細胞表現型分析の結果を示す。
図14Aは、免疫細胞サブセットの多さおよび表現型における相対的変化を示すCyTOF染色データのviSNE密度等高線プロットを示す。
図14Bは単一細胞表現型分析を示す。SK株は数字コードによって表される:SK、非改変親株;3、分泌GM-CSFおよび膜発現FLT-3L;4、分泌FLT3Lおよび膜発現GM-CSF;5、CD40Lの非切断型;6、TNF-aの非切断型;3-4は3および4の組合せ;3-4-5は3、4および5の組合せ;3-4-6は3、4および6の組合せ。
【
図15A-15F】hPBMCのCyTOF単球クラスター分析を示す。前記分析は、表示の遺伝的改変SK株(1:5細胞比)を用いて1日刺激した後の活性化マーカー(CD40(
図15A)、CD86(
図15B)、CD69(
図15C)およびCD25(
図15D))の変化を示す。SK株は数字コードによって表される:SK、非改変親株;3、分泌GM-CSFおよび膜発現FLT-3L;4、分泌FLT3Lおよび膜発現GM-CSF;5、CD40Lの非切断型;6、TNF-aの非切断型;3-4は3および4の組合せ;3-4-5は3、4および5の組合せ;3-4-6は3、4および6の組合せ。
図15Eは、単球マーカーCD40およびCD86の相対的中央値発現レベルを示すhPBMCのCyTOF単球クラスター分析を示す。
図15Eは、CD4 T細胞マーカーCD69およびCD25の相対的中央値発現レベルを示すhPBMCのCyTOF単球クラスター分析を示す。
【
図16】SK親細胞株および遺伝的改変SK株に対するヒトPBMC応答のルミネックス多重化サイトカインプロファイリングの結果を示すグラフである。コントロール培養は、SK細胞単独、hPBMC単独、並びに抗CD3および抗CD28抗体(最終濃度1μg/mL)の混合物で刺激されたhPBMCを含んでいた。記号は、組換えサイトカインを用いた標準曲線から概算したサイトカインレベル(pg/mL)を示す。無記号はサイトカインが検出されなかったことを示す。SK株は数字コードによって表される:SK、非改変親株;3、分泌GM-CSFおよび膜発現FLT-3L;4、分泌FLT3Lおよび膜発現GM-CSF;5、CD40Lの非切断型;6、TNF-aの非切断型;3-4は3および4の組合せ;3-4-5は3、4および5の組合せ;3-4-6は3、4および6の組合せ。
【発明を実施するための形態】
【0094】
定義
“活性化”または“リンパ球活性化”という用語は、特異的抗原、非特異的有糸分裂促進因子または同種異系細胞によるリンパ球の刺激を指し、RNA、タンパク質およびDNAの合成並びにリンホカインの産生を生じる。前記活性化の後に多様なエフェクターおよびメモリー細胞の分裂増殖および分化が続く。例えば、成熟B細胞は、その細胞表面免疫グロブリン(Ig)によって認識されるエピトープを発現する抗原と遭遇することによって活性化され得る。活性化プロセスは、直接的なもの(膜Ig分子の抗原による架橋に依存する、架橋依存B細胞活性化)または間接的なもの(ヘルパーT細胞との親密な相互作用の状況下(“同族ヘルププロセス”)で最も効率的に生じる)であり得る。T細胞活性化は、TCR/CD3複合体とその同族リガンド(クラスIまたはクラスII MHC分子の溝に結合されるペプチド)との相互作用に依存する。受容体係合によって発動される分子事象は複雑である。もっとも初期の工程の中では、いくつかのシグナリング経路を制御する一組の物質のチロシンリン酸化をもたらすチロシンキナーゼ活性化があるように思われる。これらには、TCRをras経路(ホスホリパーゼCγ1)に連関する一組のアダプタータンパク質が含まれ、前記のチロシンリン酸化はその触媒活性を増加させイノシトールリン脂質代謝経路を係合して、細胞内遊離カルシウム濃度の上昇並びにタンパク質キナーゼCおよび一連の他の酵素(細胞増殖および分化を制御する)の活性化をもたらす。T細胞の完全な応答性には、受容体係合に加えて、付属細胞に由来する共同刺激(例えばT細胞のCD28のCD80による係合および/または抗原提示細胞(APC)のCD86)が要求される。活性化Bリンパ球の可溶性生成物は免疫グロブリン(抗体)である。活性化Tリンパ球の可溶性生成物はリンホカインである。
【0095】
本明細書で用いられるように、“投与”という用語およびその多様な文法形式は、哺乳動物、細胞、組織、器官または生物学的液体に適用されるとき、外因性リガンド、試薬、プラセボ、小分子、医薬物質、治療薬、診断薬、または組成物(前記に限定されない)の当該対象動物、細胞、組織、器官、または生物学的液体などとの接触を指す。“投与”は例えば治療、薬物動態、診断、研究、プラセボおよび実験方法に関係し得る。“投与”はまた、試薬、診断薬、結合組成物によるまたは別の細胞による細胞のin vitroおよびex vivo治療を包含する。
【0096】
本明細書で用いられる“同種異系”という用語は、ドナーおよびレシピエント(宿主)が異なる遺伝的構成を有するが同じ種であることを意味する。本明細書で用いられるように、“同種異系細胞”は、当該細胞が投与される個体に由来しない細胞を指す。すなわち、当該細胞は当該個体とは異なる遺伝的構成を有する。同種異系細胞は一般的に、当該細胞が投与される個体と同じ種から入手される。例えば、同種異系細胞は、本明細書に開示されるように人間の患者(例えば癌患者)への投与のためにヒトの細胞であり得る。本明細書で用いられるように、“同種異系細胞”は、当該同種異系細胞が投与される個体に由来しない腫瘍細胞を指す。概して、同種異系腫瘍細胞は1つ以上の腫瘍抗原を発現し、当該腫瘍抗原は当該細胞が投与される個体の腫瘍に対して免疫応答を刺激することができる。本明細書で用いられるように、“同種異系癌細胞” (例えば肺癌細胞)は、当該同種異系細胞が投与される個体に由来しない癌細胞を指す。
【0097】
“アミノ酸残基”または“アミノ酸”または“残基”という用語は、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドに取り込まれるアミノ酸を指し、天然に存在するアミノ酸および天然に存在するアミノ酸と同様な態様で機能することができる天然のアミノ酸の公知のアナローグが含まれる(ただしそれらに限定されない)。アミノ酸はL-またはD-アミノ酸であり得る。アミノ酸は合成アミノ酸によって置き替えることができ、前記は、ペプチドの半減期を延長するために、ペプチドの効力を高めるために、またはペプチドの生物学的利用性を高めるために変更される。アミノ酸の一文字指定が本明細書ではもっぱら用いられる。そのような一文字指定は以下のとおりである:Aはアラニン、Cはシステイン、Dはアスパラギン酸、Eはグルタミン酸、Fはフェニルアラニン、Gはグリシン、Hはヒスチジン、Iはイソロイシン、Kはリジン、Lはロイシン、Mはメチオニン、Nはアスパラギン、Pはプロリン、Qはグルタミン、Rはアルギニン、Sはセリン、Tはスレオニン、Vはバリン、Wはトリプトファン、Yはチロシンである。以下は互いに保存的置換であるアミノ酸のグループを表す:1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0098】
本明細書で用いられる“自己”という用語は同じ個体に由来することを意味する。
【0099】
本明細書で用いられる“癌”という用語は、異常な細胞が無制御で分裂し他の組織を侵襲することができる疾患を指す。100を超えるタイプの癌が存在する。ほとんどの癌はそれらが開始する器官または細胞タイプに関して命名される。例えば結腸で始まる癌は結腸癌と呼ばれる。皮膚のメラノサイトで始まる癌はメラノーマと呼ばれる。癌のタイプはより広いカテゴリーに分けることができる。癌の主要なカテゴリーには以下が含まれる:癌腫(皮膚でまたは内部器官に沿って並ぶ若しくは内部器官を覆う組織で始まる癌およびそのサブタイプを意味し、腺癌、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、および移行細胞癌を含む);肉腫(骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管または他の結合組織もしくは支持組織で始まる癌を意味する);白血病(造血組織(例えば骨髄)で始まり、多数の異常な血液細胞の産生および血液への侵入を引き起こす癌を意味する);リンパ腫およびミエローマ(免疫系の細胞で始まる癌を意味する);および中枢神経の癌(脳および脊髄の組織で始まる癌を意味する)。“骨髄異形成症候群”という用語は癌の一タイプを指し、前記では骨髄は十分な健康な血液細胞(白血球、赤血球、および血小板)を形成せず、血液および/または骨髄に異常な細胞が存在する。骨髄異形成症候群は急性骨髄性白血病(AML)になり得る。
【0100】
本明細書で用いられる“接触”という用語及びその多様な文法形式は、触れるという事態若しくは状態または直接的若しくは局部的近接を指す。組成物と標的先との接触は当業者に公知の任意の投与手段によって生じ得る。
【0101】
本明細書で用いられる“共同刺激分子”という用語は、エフェクター細胞になるようにT細胞の活性化に役割を有する、細胞表面で表示される2つ以上の分子の一つを指す。例えばMHCタンパク質(T細胞受容体に外来抗原を提示する)はまた、T細胞の活性化をもたらすために、T細胞表面で相補性受容体と結合する共同刺激タンパク質を必要とする。
【0102】
本明細書で用いられる“サイトカイン”という用語は、細胞によって分泌される、他の細胞に対して多様な作用を有する小さな可溶性タンパク質物質を指す。サイトカインは多くの重要な生理学的機能(増殖、発育、創傷治癒、および免疫応答を含む)を媒介する。サイトカインは、細胞膜に位置するそれらの細胞特異的受容体と結合することによって機能し、別個のシグナル変換カスケードを細胞で開始させ、最終的に標的細胞の生化学的および表現型的変化に至るであろう。サイトカインは放出部位のその場所および離れた場所の両方で機能することができる。サイトカインは以下を含む:I型サイトカイン(多くのインターロイキンとともにいくつかの造血成長因子を包含する)、II型サイトカイン(インターフェロンおよびインターロイキン10を含む)、腫瘍壊死因子(“TNF”)関連分子(TNFαおよびリンホトキシンを含む)、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバー(インターロイキン1(“IL-1”)を含む)、およびケモカイン(多種多様な免疫機能および炎症機能で決定的な役割を果たす分子ファミリー)。同じサイトカインが、細胞の状況に応じて当該細胞に対し異なる作用を有することができる。サイトカインはしばしば他のサイトカインの発現を調節し、それらのカスケードの引き金となる。サイトカインの非限定的な例には例えば以下が含まれる:IL-1α、IL-β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12/IL-23 P40、IL13、IL-15、IL-17、IL-18、IL-21、IL-23、TGF-β、IFN-γ、GM-CSF、Gro.アルファ、MCP-1およびTNF-α。
【0103】
本明細書で用いられる“~に由来する”という用語は、ある供給源から何かを受け取る、入手する、または改変するための任意の方法を包含する。
【0104】
本明細書で用いられる、ペプチドまたはDNA配列(例えば免疫調整因子ペプチド配列)に関して“誘導体”または“変種”という用語は、その元の配列から改変された非同一ペプチドまたはDNA配列を指す。本明細書で用いられる、細胞に関して“誘導体”または“変種”という用語は、その起源細胞株から改変されてある(例えば組換えDNA配列を発現するために改変された)細胞株を指す。
【0105】
“検出可能マーカー”という用語は選別可能マーカーおよびアッセイマーカーの両方を包含する。“選別可能マーカー”という用語は、多様な遺伝子生成物であって、前記生成物に対してある発現構築物で形質転換された細胞を選別またはスクリーニングできるものを指す。前記マーカーには、薬剤耐性マーカー、蛍光活性化細胞分類に有用な抗原性マーカー、粘着マーカー(例えば選択性粘着を可能にする粘着リガンドのための受容体)などが含まれる。
【0106】
“検出可能応答”という用語は、アッセイで検出できる任意のシグナルまたは応答を指す(前記アッセイは検出試薬を用いてまたは用いないで実施できる)。検出可能応答には、放射性崩壊およびエネルギー(例えば蛍光、紫外線、赤外線、可視エネルギー)放射、吸収、極性化、蛍光、燐光、伝導、反射または共鳴伝達が含まれるが、ただし前記に限定されない。検出可能応答にはまた、クロマトグラフィー移動度、濁度、電気泳動移動度、質量分析スペクトル、紫外線スペクトル、赤外線スペクトル、核磁気共鳴スペクトルおよびx線回折が含まれる。また別に、検出可能応答は、生物学的材料の1つ以上の特性を測定するアッセイの結果(例えば融点、密度、電導度、表面弾性波、触媒活性または元素組成)でもよい。“検出可能試薬”は、問題の物質の有無を示す検出可能応答を生じる任意の分子である。検出試薬には多様な分子、例えば抗体、核酸配列および酵素が含まれる。検出を促進するために、検出試薬はマーカーを含むことができる。
【0107】
本明細書で用いられる“用量”という用語は、一度に服用されるために処方される治療物質の量を指す。
【0108】
本明細書で用いられる“濃縮する”という用語は、例えば、ある細胞サブタイプの相対的頻度を細胞集団におけるその天然の頻度と比較して増加させるために、所望の物質の割合を増加させることを指す。正の選別、負の選別または両方の選別が、いずれの濃縮スキームにとっても一般的に必要であると考えられる。選別方法には磁性分離およびFACSが含まれるが、ただし前記に限定されない。濃縮に用いられる具体的技術に関係なく、選別過程で用いられる具体的マーカーが重要である。なぜならば発達段階および活性化特異的応答が細胞の抗原プロフィールを変化させることができるからである。
【0109】
本明細書で用いられるように、“発現”という用語は、mRNAの生合成、ポリペプチド生合成、ポリペプチド活性化(例えば翻訳後改変、または細胞内存在場所の変更若しくはクロマチンへの動員による発現の活性化に拠る)を包含する。
【0110】
“発現ベクター”という用語は、宿主細胞で発現される遺伝子を含むDNA分子を指す。典型的には、遺伝子発現は、一定の調節エレメント(プロモーター、組織特異的調節エレメントおよびエンハンサーが含まれるが、ただし前記に限定されない)の制御下に置かれる。そのような遺伝子は、調節エレメントに“作動できるように連結される”と称される。
【0111】
本明細書で用いられる“フローサイトメトリー”という用語は、細胞の表現型および特徴を問いただすためのツールを指す。前記ツールは、細胞または粒子が液流中を移動するときに探知領域を通過するレーザー(放射線の誘導放射による光の増幅)/光線によりそれらを計測する。顕微鏡的粒子の相対的光散乱および色識別蛍光が測定される。細胞のフロー分析および弁別は、サイズ、粒度、および細胞が抗体または染料の形で蛍光分子を保持しているか否かを基準にする。細胞はレーザービーム中を通過するので、光が全方向に散乱し、軸から低角度(0.5-10°)で前進方向に散乱する光は球体の半径の二乗(したがって細胞または粒子のサイズ)に比例する。光は細胞に入ることができ、したがって、90°光(直角、側面)散乱は蛍光色素連結抗体で標識されるか、または蛍光性膜、細胞質若しくは核染料で染色される。したがって、細胞タイプの弁別、膜受容体および抗原の存在、膜電位、pH、酵素活性、およびDNA含有量の測定を容易にすることができる。それゆえ、不均質集団内で均質な部分集団を識別することが可能である(Marion G. Macey, Flow cytometry: principles and applications, Humana Press, 2007)。蛍光活性化細胞分類(FACS)(サイズまたは密度によって分離するには物理的特徴が非常に類似する別個の細胞集団の単離を可能にする)は、蛍光タグを用いて弁別的に発現される表面タンパク質を検出し、物理的に均質な細胞集団で精密な区別を可能にする。
【0112】
“機能的等価物”または“機能的に等価である”という用語は本明細書では互換的に用いられ、類似の若しくは同一の作用または有用性を有する物質、分子、ポリヌクレオチド、タンパク質、ペプチドまたはポリペプチドを指す。
【0113】
“ヘテロクリティック”という用語は、本明細書では元のペプチドよりも高い生物学的効力を有するペプチドを指すために用いられる。“ヘテロクリティックな免疫原”は、元の低免疫原性抗原と交差反応する免疫応答を引き出す免疫原である。
【0114】
“免疫応答”または“免疫媒介”という用語は本明細書では互換的に用いられ、外来抗原または自己抗原に対する対象動物の免疫系の任意の機能的発現を指し、これらの反応の結果が当該対象動物にとって有利であるかまたは有害であるかを問わない。
【0115】
“免疫調整性”、“免疫調整因子”および“免疫調整”という用語は本明細書では互換的に用いられ、直接的にまたは間接的に(ケモカイン、サイトカインおよび他の免疫応答媒介因子の発現による)免疫応答を増大または低下させることができる物質、薬剤または細胞指す。
【0116】
本明細書で用いられるように、開示組成物の“免疫刺激量”は、免疫応答の刺激に有効な免疫原性組成物の量を指す。前記は、例えばELISPOアッセイ(細胞免疫応答)、ICS(細胞内サイトカイン染色アッセイ)および主要組織適合複合体(MHC)テトラマーアッセイ(抗原特異的T細胞の検出および定量)、抗原特異的CD4+ T細胞の血中集団の定量、または抗原特異的CD8+ T細胞の血中集団の定量によって測定され、後者の定量は、測定可能な量によるか、または適切なコントロール(例えば、樹状細胞が腫瘍特異細胞をローディングされていないか、または腫瘍特異細胞由来ペプチドをローディングされていないコントロール組成物)と比較して、増加が少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも100%である場合による。
【0117】
本明細書で用いられる“ゲノムに組み込む”という用語は、宿主細胞ゲノムを構成するゲノムDNAに共存的に結合された組換えDNA配列を指す。
【0118】
本明細書で用いられる“カプランマイヤープロット”または“カプランマイヤー生存曲線”という用語は、多くの短い間隔で時間を考慮しつつある期間生存する臨床試験対象者の確率プロットを指す。カプランマイヤープロットは以下のように仮定する:(i)打ち切られた(すなわち失われた)対象者は追跡され続けている対象者といつでも同じ生存見込みを有する;(ii)生存確率は試験の初期および後期に補充された対象者について同じである;および(iii)イベント(例えば死亡)は明記された時期に発生する。イベントの発生確率は、最終的な概算を得るために、より初期の任意の計算済み確率を掛けた連続的確率を用いて一定の時点で計算される。任意の特定時点における生存確率は、リスクを有する対象者の数で割った生存対象者の数として算出される。死亡した、外された、または試験を打ち切られた対象者はリスクを有する者として勘定されない。
【0119】
本明細書で用いられる“標識する”という用語は、追跡可能な構成要素を導入することによって、化合物、構造、タンパク質、ペプチド、抗体、細胞または細胞成分を識別するプロセスを指す。一般的な追跡可能構成要素には、蛍光抗体、蛍光体、色素または蛍光色素、染色または蛍光染色、マーカーまたは蛍光マーカー、化学染色、弁別染色、弁別標識、および放射性同位元素が含まれるが、ただし前記に限定されない。
【0120】
“マーカー”または“細胞表面マーカー”という用語は本明細書では互換的に用いられ、特異的な細胞タイプの表面で見出される抗原決定基またはエピトープを指す。細胞表面マーカーは、細胞タイプの特徴付け、その識別、および最終的にはその単離を容易にすることができる。細胞分類技術は細胞のバイオマーカーに基づき、その場合、細胞表面マーカーは正の選別または負の選別のどちらかについて用いられ得る(すなわち細胞集団に包含されるかまたは細胞集団から除外される)。
【0121】
“混合リンパ球腫瘍反応”または“MLTR”という用語は本明細書では互換的に用いられ、前記は、混合リンパ球反応と類似するが、応答を刺激するために同種異系リンパ球を用いるのではなく、その代わりに同種異系腫瘍細胞が用いられる反応を指す。MLTR方法は、免疫原性能力について試験される腫瘍細胞を末梢血単核細胞由来混合リンパ球と接触させ、続いてリンパ球の細胞分裂増殖、リンパ球の細胞サブセット弁別、リンパ球のサイトカイン放出プロフィール、および腫瘍細胞死の1つ以上を測定する工程を含む。
【0122】
腫瘍細胞に対する免疫応答に関して本明細書で用いられる“改変される”または“調整される”という用語は、1つ以上の組換えDNA技術を介して腫瘍細胞に対する免疫応答の形態または特徴が変化し、免疫細胞が腫瘍細胞を認識および殺滅できることを指す。
【0123】
本明細書で用いられる“骨髄性サプレッサー細胞”または“骨髄系由来サプレッサー細胞”は、骨髄系起原、未熟状態、および強力にT細胞応答を抑制する能力を特徴とする不均質細胞集団を指す。これらの細胞は健康な個体で免疫応答および組織修復を調節し、当該集団は炎症時に迅速に拡張する。
【0124】
本明細書で用いられる“オープンリーディングフレーム”という用語は、ペプチドまたはタンパク質をコードする潜在能力を有するDNA分子中のヌクレオチド配列を指す。前記は、開始トリプレット(ATG)で始まり、その後にトリプレット鎖が続き(トリプレットの各々はアミノ酸をコードする)、終止トリプレット(TAA、TAGまたはTGA)で終わる。
【0125】
“作動できるように連結される”という語句は、(1)第一の配列またはドメインが第二の配列またはドメインに十分に近接して配置され、当該第一の配列またはドメインが当該第二の配列若しくはドメインまたは当該第二の配列若しくはドメインの制御下にある領域に対して影響を及ぼすことができる、第一の配列またはドメイン、および(2)プロモーターと第二の配列間の機能的連結を指し、この場合、プロモーター配列は第二の配列に対応するDNA配列の転写を開始および媒介する。一般的に、作動できるように連結されるとは、連結された核酸配列が連続的であることを意味し、さらに2つのタンパク質の結合が必要な場合には、コード領域は同じリーディングフレーム内に存在する。いくつかの実施態様にしたがえば、“作動できるように連結される”という語句は、2つ以上のタンパク質ドメインまたはポリペプチドが組換えDNA技術または化学反応により連結または結合され、生じた融合タンパク質の各タンパク質ドメインまたはポリペプチドがその元の機能を維持する結合を指す。
【0126】
本明細書で用いられる“全生存”(OS)は、診断日または疾患(例えば癌)に対する治療開始から当該疾患を有すると診断された患者がなお生存している期間を指す。
【0127】
本明細書で用いられる“非経口”という用語または前記用語の他の文法形式は、口または消化管以外によって身体で起きる物質の投与を指す。例えば、本明細書で用いられる“非経口”という用語は注射の方法による身体への導入(すなわち注射投与)を指す。注射投与には、例えば皮下(すなわち皮膚の下への注射)、筋肉内(すなわち筋肉内への注射)、静脈内(すなわち静脈内への注射)、髄腔内(すなわち脊髄周囲間隙または脳のクモ膜下への注射)、胸骨内注射、または輸液技術が含まれる。
【0128】
“末梢血単核細胞”または“PBMC”という用語は本明細書では互換的に用いられ、ただ1つの丸い核を有する血液細胞、例えばリンパ球または単球を指す。
【0129】
本明細書で用いられる“医薬組成物”という用語は、標的症状、症候群、異常または疾患の予防、重度の軽減、治癒或いは治療のために用いられる組成物を指す。
【0130】
本明細書で用いられる“医薬的に許容できる担体”という用語は、任意の実質的に非毒性で医薬の投与に通常的に用いられる担体を指す(当該医薬中で本発明の単離ポリペプチドは安定性及び生物学的利用性を維持する)。医薬的に許容できる担体は、治療される哺乳物への投与に適切とされるために純度が十分に高く毒性が十分に低くなければならない。さらにまた、担体は活性薬剤の安定性および生物学的利用性を維持しなければならない。医薬的に許容できる担体は液体または固体であることができ、想定される投与態様により選択されて、活性薬剤および与えられた組成物の他の成分と結合されるとき所望の容積、粘度などを提供する。
【0131】
本明細書で用いられる“医薬的に許容できる塩”という用語は、健全な医学的判断の範囲内で人間または下等動物の組織との接触に使用するために適切であり、過度な毒性、刺激、アレルギー応答などを持たず、利益/リスク比が合理的に釣り合う塩を指す。医薬で用いられるとき、塩は医薬的に許容できるべきであるが、医薬的に許容できない塩も都合よく用いてその医薬的に許容できる塩を調製することができる。そのような塩には以下の酸から調製できるものが含まれる(ただしそれらに限定されない):塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン-2-スルホン酸、および安息香酸。さらにまた、そのような塩はアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、例えばカルボン酸基のナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩として調製できる。“医薬的に許容できる塩”とは、健全な医学的判断の範囲内で、人間または下等動物の組織との接触に使用するために適切であり、過度な毒性、刺激、アレルギー応答などを持たず、利益/リスク比が合理的に釣り合う塩を意味する。医薬的に許容できる塩は当業界で周知である。例えば、P. H. Stahlらは医薬的に許容できる塩を以下で詳細に記載している:P.H.Stahl, et al., "Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use"(Wiley VCH, Zurich, Switzerland: 2002)。塩は、本発明に記載する化合物の最終的単離および精製時にin situで調製するか、または遊離塩基基を適切な有機酸と反応させることによって別々に調製することができる。代表的な酸付加塩には以下が含まれる(ただしそれらに限定されない):酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、ジグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イセチオン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピルビン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、重炭酸塩、p-トルエンスルホン酸塩およびウンデカン酸塩。さらにまた、塩基性窒素含有基を例えば以下のような物質で四級化することができる:低級アルキルハロゲン化物、例えばメチル、エチル、プロピル、およびブチル塩化物、臭化物、およびヨウ化物;ジアルキル硫酸塩、例えばジメチル、ジエチル、ジブチル、およびジアミル硫酸塩;長鎖ハロゲン化物、例えばデシル、ラウリル、ミリスチル、およびステアリル塩化物、臭化物、およびヨウ化物;アリールアルキルハロゲン化物、例えばベンジルおよびフェネチル臭化物、および他のもの。前記によって水溶性若しくは油溶性、または分散性生成物が入手される。医薬的に許容できる酸付加塩の形成に利用できる酸の例には、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸およびリン酸のような無機酸、並びに例えばシュウ酸、マレイン酸、コハク酸およびクエン酸のような有機酸が含まれる。塩基付加塩は、本発明に記載する化合物の最終的単離および精製時にin situで、カルボン酸含有部分を適切な塩基、例えば医薬的に許容できる金属陽イオンの水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩と、或いはアンモニアまたは有機第一、第二若しくは第三アミンと反応させることによって調製できる。医薬的に許容できる塩には以下が含まれる(ただしそれらに限定されない):アルカリ金属またはアルカリ土類金属系陽イオン、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウム塩など、並びに非毒性四級アンモニアおよびアミン陽イオン(アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミンなどを含む)。塩基付加塩の形成に有用な他の代表的な有機アミンには、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジンなどが含まれる。医薬的に許容できる塩はまた、当業界で周知の標準的手順を用いて、例えば、十分に塩基性の化合物(例えばアミン)を生理学的に許容できる陰イオンを与え得る適切な酸と反応させることによって入手できる。カルボン酸のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウムまたはリチウム)塩またはアルカリ土類金属(例えばカルシウムまたはマグネシウム)塩もまた生成できる。
【0132】
“ポリペプチド”、“ペプチド”および“タンパク質”という用語は、本明細書では互換的に用いられ、アミノ酸残基のポリマーを指す。当該用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工の化学的なアナローグであるアミノ酸ポリマーとともに天然に存在するアミノ酸ポリマーに適用される。天然に存在するアミノ酸のそのようなアナローグの必須の性質は、タンパク質に取り込まれたときに、当該タンパク質が、同じであるが完全に天然に存在するアミノ酸から成るタンパク質に対して生じた抗体と特異的に反応するということである。
【0133】
“ポリペプチド”、“ペプチド”および“タンパク質”という用語はまた改変を包含し、前記改変にはグリコシル化、脂質添加、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマカルボキシル化、ヒドロキシル化、およびADP-リボシル化が含まれるが、ただし前記に限定されない。周知であり上記にも記したように、ポリペプチドは完全な直鎖状でなくてもよいことは理解されるであろう。例えば、ポリペプチドはユビキチン化の結果として分枝され得る。さらにポリペプチドは、分枝してまたは分枝せずに環状であってもよく、前記は概して翻訳後事象(天然のプロセッシング事象および天然には生じない人間の操作によりもたらされる事象を含む)の結果である。環状、分枝および分枝環状ポリペプチドは、非翻訳天然プロセスによっておよび完全に合成方法によっても同様に合成され得る。いくつかの実施態様にしたがえば、ペプチドは任意の長さまたはサイズである。
【0134】
“タンパク質ドメイン”および“ドメイン”という語は互換的に用いられ、それ自身の三次元構造を有するタンパク質部分を指す。大きなタンパク質は概していくつかのドメインで構成され、それらはポリペプチド鎖の可撓性領域を介して互いに連結される。
【0135】
以下の用語は、2つ以上の核酸またはポリヌクレオチド間で配列の関係を示すために本明細書で用いられる:(a)“参照配列”、(b)“比較ウインドウ”、(c)“配列同一性”、(d)“配列同一性パーセンテージ”、および(e)“実質的同一性”。(a)“参照配列”という用語は配列比較のための基準として用いられる配列を指す。参照配列は、指定配列のサブセットまたは全体(例えば、完全長cDNA若しくは遺伝子配列のセグメントまたは完全なcDNA若しくは遺伝子)であり得る。(b)“比較ウインドウ”という用語はポリヌクレオチド配列の連続する指定されたセグメントを指し、ここで当該ポリヌクレオチド配列は参照配列と比較され、比較ウインドウ内のポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適なアラインメントのために、参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して付加または欠失(すなわちギャップ)を含む。概ね、比較ウインドウは連続する少なくとも20ヌクレオチドの長さであることができ、場合によって連続する少なくとも30ヌクレオチドの長さ、連続する少なくとも40ヌクレオチドの長さ、連続する少なくとも50ヌクレオチドの長さ、連続する少なくとも100ヌクレオチドの長さ、またはそれより長くてもよい。当業者は、ポリヌクレオチド配列にギャップを加えることによる参照配列に対する高類似性を回避するために、ギャップペナルティを導入し一致数から差し引くことを理解している。比較のために配列をアラインメントする方法は当業界では周知である。比較のための最適な配列アラインメントは以下によって実施できる:局所相同性アルゴリズム(Smith and Waterman, Adv.Appl.Math.2:482, 1981)、相同性アラインメントアルゴリズム(Needleman and Wunsch, J.Mol.Biol.48:443, 1970)、類似性検索方法(Pearson and Lipman, Proc.Natl.Acad.Sci.85:2444, 1988)、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実施。後者には以下が含まれるが、ただしそれらに限定されない: CLUSTAL(PC/Gene program by Intelligenetics, Mountain View, Calif.)、GAP、BESTFIT、BLAST、FASTAおよびTFASTA(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group (GCG), 575 Science Dr., Madison, Wis., USA)。CLUSTALプログラムは以下に詳しく記載されている:Higgins and Sharp, Gene 73:237-244, 1988;Higgins and Sharp, CABIOS 5:151-153, 1989;Corpet, et al., Nucleic Acids Research 16:10881-90, 1988;Huang, et al., Computer Applications in the Biosciences, 8:155-65, 1992;およびPearson, et al., Methods in Molecular Biology, 24:307-331, 1994。BLASTファミリープログラム(データベース類似性検索に用いることができる)には以下が含まれる:ヌクレオチドデータベース配列に対するヌクレオチド審問配列のためのBLASTN、タンパク質データベース配列に対するタンパク質審問配列のためのBLASTP、ヌクレオチドデータベース配列に対するタンパク質審問配列のためのTBLASTN、およびヌクレオチドデータベース配列に対するヌクレオチド審問配列のためのTBLASTX。以下を参照されたい:Current Protocols in Molecular Biology, Chapter 19, Ausubel, et al., Eds., Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York, 1995。特段の記載がなければ、本明細書で提供される配列同一性/類似性値は、BLAST 2.0一式プログラムにより複数の規定値パラメーターを用いて得られた値を指す(Altschul et al., Nucleic Acids Res.25:3389-3402, 1997)。BLAST分析を実施するソフトウェアは、例えば以下(the National Center for Biotechnology-Information)により公開されている。
【0136】
このアルゴリズムは、まず初めに審問配列中で長さがWの短いワードを識別することによって高スコア配列ペア(HSP)を識別する工程を必要とする。HSPは、データベースの配列で同じ長さのワードとアラインメントさせたとき何らかの正の値を有する閾スコアTに適合するか満足させる。Tは近隣ワードスコア閾と称される(Altschul et al., 前掲書)。これらの最初の近隣ワードヒットは、それらワードを含むより長いHSPを見つけるために検索を開始するタネとして機能する。続いてワードヒットを各配列に沿って両方向に、累積アラインメントスコアが増加する限り伸長させる。累積スコアは、例えばヌクレオチド配列についてはパラメーターM(一致残基のペアのための褒賞スコア、常に>0)およびN(不一致残基のためのペナルティスコア、常に<0)を用いて算出される。アミノ酸配列については、スコアリングマトリックスを用いて累積スコアを算出する。各方向におけるワードヒットの伸長は、累積アラインメントスコアがその最大達成値からXだけ落ちるとき、その累積スコアが負のスコアを生じる1つ以上の残基アラインメントのために0以下に至るとき、またはどちらかの配列の最後に達するときに停止する。BLASTアルゴリズムパラメーターW、TおよびXはアラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド用)は、規定値として11のワード長(W)、10の期待(E)、100のカットオフ、M=5、N=4、および両鎖の比較を用いる。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは規定値として3のワード長(W)、10の期待(E)、およびBLOSUM62スコアリングマトリックスを用いる(Henikoff & Henikoff (1989) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915)。パーセント配列同一性の算出に加えて、BLASTアルゴリズムはまた2つの配列間の類似性の統計分析も実施する(例えば以下を参照されたい:Karlin & Altschul, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5787, 1993)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの測定は最小和確率(P(N))であり、前記は、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の一致が偶然生じる確率の目安を提供する。BLAST検索は、ランダム配列としてタンパク質をモデル化できると仮定する。しかしながら、多くの現実のタンパク質は非ランダム配列の領域を含む。前記はホモポリマー鎖、短周期リピート、または1つ以上のアミノ酸に富む領域であり得る。そのような低複雑性領域は、無関係のタンパク質との間で、たとえ当該タンパク質の他の領域が完全に非類似であったとしてもアラインメントされ得る。多数の低複雑性フィルタープログラムを利用して、そのような低複雑性アラインメントを減少させることができる。例えば、SEG(Wooten and Federhen, Comput.Chem., 17:149-163, 1993)およびXNU(Claverie and States, Comput.Chem., 17:191-201, 1993)低複雑性フィルターを単独でまたは組合わせて利用することができる。(c)2つの核酸またはポリペプチド配列に関して“配列同一性”または“同一性”という用語は、本明細書では、2つの配列の残基が指定比較ウインドウにわたって最大一致するようにアラインメントされたとき同じであるものを指す。配列同一性パーセンテージがタンパク質について用いられるとき、同一でない残基の位置は保存的アミノ酸置換によってしばしば相違することは認識されている。すなわち、アミノ酸残基が類似の化学的特性(例えば荷電または疎水性)を有する他のアミノ酸残基で置換され、したがって当該分子の機能的特性を変化させない場合である。配列が保存的置換で相違する場合、パーセント配列同一性を上方調整して置換の保存的性質のために修正することができる。そのような保存的置換によって相違する配列は、“配列類似性”または“類似性”を有すると称される。この調整を実施する手段は当業者には周知である。典型的には、前記は、保存的置換を完全不一致ではなく部分不一致として分類し、それによってパーセンテージ配列同一性を増加させることを必要とする。したがって、例えば、同一アミノ酸がスコア1を与えられ非保存的置換がスコア0を与えられる場合、保存的置換は0と1の間のスコアを与えられる。保存的置換のスコアは、例えばMeyers and Millerのアルゴリズム(Meyers and Miller, Computer Applic.Biol.Sci., 4:11-17, 1988)にしたがって算出される。前記アルゴリズムは、例えばPC/GENEプログラム(Intelligenetics, Mountain View, Calif., USA)で実行される。(d)本明細書で用いられる“配列同一性のパーセンテージ”という用語は、2つの最適にアラインメントされた配列を比較ウインドウにわたって比較することによって決定された値を意味し、この場合、比較ウインドウのポリヌクレオチド配列部分は、参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して、当該2つの配列の最適なアラインメントのために付加または欠失(すなわちギャップ)を含むことができる。パーセンテージは以下によって算出される:同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両配列で生じる位置の数を決定して一致位置数を入手し、一致位置数を比較ウインドウ内の総位置数で割り、結果に100を乗じて配列同一性パーセンテージを入手する。(e)ポリヌクレオチド配列の“実質的同一性”という用語は、記載のアラインメントプログラムの1つを標準的パラメーターにより用いて参照配列と比較したとき、ポリヌクレオチドが、少なくとも70%配列同一性、少なくとも80%配列同一性、少なくとも90%配列同一性および少なくとも95%配列同一性を有する配列を含むことを意味する。当業者は、これらの値を適切に調整して、2つのヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質の対応する同一性を、コドン縮退、アミノ酸類似性、リーディングフレーム配置などを考慮することにより決定できることを理解するであろう。これらの目的のためには、アミノ酸配列の実質的同一性は、通常少なくとも60%、または少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の配列同一性を意味する。ヌクレオチド配列が実質的に同一であるという別の指標は、2つの分子がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズするか否かである。しかしながら、ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸は、それらがコードするポリペプチドが実質的に同一であるならばなお実質的に同一である。前記は、例えば核酸のコピーが、遺伝暗号によって許容される最大のコドン縮退を用いて作製されるときに生じ得る。2つの核酸配列が実質的に同一であるという1つの指標は、第一の核酸がコードするポリペプチドが、第二の核酸によってコードされるポリペプチドと免疫学的に交差反応性であることである。変異はまた、遺伝暗号に委ねることによって(コドン縮退を考慮することを含む)本タンパク質のヌクレオチド配列に対して実施し得る。
【0137】
本明細書で用いられる“プライムする”(または“プライミングする”)という用語は感度を高めるプロセスを指す。免疫学的な意味で用いられるとき、前記用語は、特異的抗原がナイーブリンパ球に提示されそれらを分化させるプロセスを指す。
【0138】
本明細書で用いられる“無増悪生存”または“PFS”という用語は、疾患(例えば癌)の治療中または治療後に疾患は存在するがそれが悪化しないで患者が生存する期間を指す。臨床試験では、無増悪生存の測定は新規な治療作業がいかに良好であるかを決定する1つの方法である。
【0139】
癌に関して本明細書で用いられる“再発”という用語は、再発した(戻ってきた)癌を指し、通常は癌を検出できなかった期間後である。癌は最初の(原発)腫瘍と同じ場所に、または当該身体の別の場所に再発し得る。
【0140】
本明細書で用いられる“無再発生存(RFS)”という用語は、癌の最初の治療後に患者が当該癌の徴候または症状を全く示さないで生存する期間を指す。前記用語はまた無疾患生存(DFS)および無増悪生存(PES)と称される。
【0141】
本明細書で用いられる“応答率”という用語は、治療後に癌が退縮または消失する患者のパーセンテージを指す。
【0142】
本明細書で用いられる“耐性癌”という用語は、そのような治療の開始時にまたは時にそのような治療の間に応答しない癌を指す。
【0143】
“レポーター遺伝子”(“レポーター”)または“アッセイマーカー”という用語は、検出することができるか、または容易に識別および測定できる遺伝子および/またはペプチドを指す。レポーターの発現はRNAレベルまたはタンパク質レベルで測定できる。実験的アッセイプロトコルで検出できる遺伝子生成物には、マーカー酵素、抗原、アミノ酸配列マーカー、細胞表現型マーカー、核酸配列マーカーなどが含まれるが、ただし前記に限定されない。研究者は、レポーター遺伝子を関心のある別の遺伝子に細胞培養、細菌、動物または植物で結合させることができる。例えば、いくつかのレポーターは検出できるマーカーであるか、またはそれらを発現する生物の容易な同定およびアッセイを可能にする特徴を付与する。レポーター遺伝子を生物に導入するために、研究者は、レポーター遺伝子および関心のある遺伝子を細胞または生物に挿入される同じDNA構築物に配置することができる。細菌または真核細胞培養のためは、前記はプラスミドの形であることができる。一般的に用いられるレポーター遺伝子には蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、および選別可能マーカー(例えばクロラムフェニコールおよびカナマイシン)が含まれ得る(ただし前記に限定されない)。
【0144】
本明細書で用いられる“刺激する”という用語の任意の文法形式は、活性化または活性の増加を誘発することを指す。
【0145】
本明細書で用いられるように、“対象動物”または“個体”または“患者”という用語は互換的に用いられ、人間を含む哺乳動物起源の多数の動物種を指す。
本明細書で用いられる“その必要がある対象動物”という語句は、(i)当該記載発明の免疫原性組成物を将来投与される患者、(ii)当該記載発明の組成物を現在受容している患者、または(iii)当該記載発明の免疫原性組成物を既に受容した患者を指すが、ただし文脈および当該語句の使用が他の態様を示していない場合に限られる。
【0146】
本明細書で用いられる“治療薬剤”という用語は、治療効果を提供する薬、分子、核酸、タンパク質、代謝物、組成物または他の物質を指す。本明細書で用いられる“活性な”という用語は、意図される治療効果のために必要である当該記載発明の組成物の内容物、成分または構成要素を指す。“治療薬剤”および“活性薬剤”という用語は本明細書では互換的に用いられる。本明細書で用いられる“治療成分”という用語は、集団のあるパーセンテージで個別の疾患発現を除去し、軽減しまたはその進行を予防する治療的に有効な投薬量(すなわち投与用量および頻度)を指す。一般的に用いられる治療成分の例は、個別の疾患徴候に対して集団の50%で治療的に有効である特定の投薬量における用量を示すED50である。
【0147】
活性薬剤の“治療量”、“治療的有効量”、“有効量”または“医薬的有効量”という用語は互換的に用いられ、意図される治療利益を提供するために十分な量を指す。しかしながら、投薬量のレベルは多様な因子(損傷のタイプ、年齢、体重、性別、患者の医学的状態、症状の重篤度、投与経路、および用いられる個別の活性薬剤を含む)を基準とする。したがって投薬計画は広く変動し得るが、標準的な方法を用いて医師が日常的に決定することができる。さらにまた、“治療量”、“治療的有効量”、“有効量”および“医薬的有効量”という用語は、当該記載発明の組成物の予防的または防止的な量を含む。当該記載発明の予防的または防止的適用では、医薬組成物または医薬は、疾患、異常もしくは症状に感受性を有する患者に、そうでなければそのリスクがある患者に、当該リスクを除去若しくは軽減するために、重篤度を緩和するするために、または当該疾患、異常もしくは症状(当該疾患、異常または症状の生化学的、組織学的症状および/または行動に関する症状を含む)、その合併症および当該疾患、異常もしくは症状の進行時に提示される介在的な病理学的表現型の開始を遅らせるために十分な量で投与される。最大用量(すなわち何らかの医学的判断にしたがって最高の安全用量)を用いることが概ね好ましい。“用量”および“投薬量”という用語は本明細書では互換的に用いられる。
【0148】
本明細書で用いられる“治療効果”という用語は治療の成り行きを指し、前記用語の結果は所望され有益であると判断される。治療効果は、疾患発現の直接的または間接的な停止、軽減または除去を含むことができる。治療効果はまた、疾患発現の進行の直接的または間接的な停止、軽減または除去を含むことができる。
【0149】
本明細書に記載するいずれの治療薬剤についても、治療有効量は、予備的なin vitro試験及び動物モデルから最初に決定することができる。治療有効用量ははまた人間のデータから決定できる。適用される用量は、投与される化合物の相対的な生物学的利用性および効力に基づいて調整できる。上記記載の方法および他の周知の方法に基づいて用量を調整して最大有効性を達成することは当業者の能力の範囲内である。
【0150】
治療有効性を決定するための一般的原則(以下の文献の第一章で見出すことができる:Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, (2001) 10th Edition, McGraw-Hill, New York(参照により本明細書に含まれる))は、下記に要約される。
【0151】
薬理動態学の原則は、許容不能の有害な作用を最小限にしながら所望の治療有効度を得るために投薬計画を修正する基礎を提供する。薬剤の血中濃度を測定して治療ウインドウを関連させることができる状況では、投薬修正のための追加のガイダンスを得ることができる。
【0152】
製剤は、それらが同じ活性成分を含み、強度または濃度、剤型および投与経路が同一ならば医薬的な等価物であると考えられる。2つの医薬的に等価な製剤は、当該2つの製品中の活性成分の生物学的利用性の速度および程度が適切な試験条件下で顕著に相違しないとき生物学的に等価であると考えられる。
【0153】
“治療ウインドウ”という用語は、許容不能な毒性を伴わずに治療有効性を提供する濃度範囲を指す。薬剤の一用量の投与の後、通常その効果は特徴的な一過性パターンを示す。遅滞期は、薬剤濃度が所望の効果について最少有効濃度(“MEC”)を超える前に存在する。応答の開始後、当該効果の強度は薬剤が吸収および分布され続けるにつれて増加する。強度はピークに達し、その後薬剤の除去は効果の強度の下降をもたらし、薬剤濃度がMEC未満に戻るときに効果は消失する。したがって、薬剤作用の持続時間は、濃度がMECを超える時間によって決定される。治療の目標は、最少の毒性で所望の応答について治療ウインドウ内の濃度を獲得し維持することである。所望の効果についてMEC未満での薬剤応答は治療的に不十分であるが、一方、有害作用については毒性の見込みはMECより上で増加するであろう。薬剤の投薬量の増減は、応答曲線を強度スケールの上方または下方にシフトさせ、薬剤の効果を調整するために用いられる。用量の増加は薬剤の作用持続時間を延長するが、有害作用の蓋然性増加のリスクが存在する。したがって、薬剤が非毒性でないかぎり、用量の増加は薬剤の作用持続時間を延長するために有用な戦術ではない。
【0154】
それよりむしろ、別の用量で薬剤を投与し治療ウインドウ内の濃度を維持するべきである。概して、ある薬剤の治療範囲の下方限界は、最大治療効果の約半分を生じる薬剤濃度とほぼ等しいようであり、治療範囲の上方限界は約5%から約10%を超えない患者が毒性作用を受ける濃度である。これらの数字は非常に変動性であり、いくらかの患者は治療範囲を超える薬剤濃度で大いに利益を受けることができるが、一方、他の患者ははるかに低い値で顕著な毒性を示すことがある。治療の目標は、治療ウインドウ内で定常状態の薬剤レベルを維持することである。ほとんどの薬剤について、この所望される範囲に密接に結びつく実際の濃度は未知でありさらに必ずしも公知である必要はない。有効性と毒性は概ね濃度依存性であること、および薬剤の投薬量と投与頻度が薬剤レベルにどのように影響するかを理解するだけで足りる。小さな(2倍から3倍)濃度の相違が有効性と毒性をもたらす少数の薬剤については、有効な治療に密接に結びつく血中濃度は規定されている。
【0155】
この事例では標的レベル戦術が合理的であり、この場合、有効性と最少毒性に密接に結びつく所望の定常状態の薬剤濃度(通常は血中濃度)が選択され、この値を達成するために予想される投薬量が計算される。続いて薬剤濃度を測定し、必要な場合には投薬量を調整して標的にさらに近似させる。
【0156】
ほとんどの臨床状況では、薬剤は一連の反復用量でまたは連続輸液として投与され、治療ウインドウに密接に結びつく定常状態の薬剤濃度が維持される。選択した定常状態の濃度または標的濃度を維持するために(“維持用量”)、インプット速度が消失速度と等しくなるように薬剤投与速度が調整される。臨床医が所望の血中薬剤濃度を選択し、さらに個別の患者における当該薬剤のクリアランスおよび生物学的利用性を認識している場合、適切な用量及び投与間隔を算出することができる。
【0157】
本明細書で用いられるように、“治療する”という用語は、症状の進行を終わらせる、実質的に阻害する、遅らせる若しくは逆転させる、症状の臨床徴候を実質的に緩和する、または症状の臨床徴候の出現を実質的に予防することを含む。さらにまた、治療は以下の1つ以上の達成を指す:(a)異常における重篤度の軽減、(b)治療される異常に特徴的な徴候の発達の制限、(c)治療される異常に特徴的な徴候の悪化の制限、(d)以前に異常を有した患者で当該異常の再発の制限、(e)異常について以前は無症状であった患者で徴候の再発の制限。
【0158】
本明細書で用いられる“ワクチンを接種される”という用語はワクチンで治療されることを指す。
本明細書で用いられる“ワクチン接種”という用語はワクチンによる治療を指す。
本明細書で用いられる“ワクチン”という用語は、腫瘍若しくは微生物に対して免疫系に応答させること、または癌細胞若しくは微生物を身体に認識させ破壊させることを意図された物質または物質群を指す。ワクチンという用語はまた人工的刺激を指し、当該刺激は当該暴露(例えば感染性因子、癌細胞)に対して激甚な免疫応答を刺激する。
本明細書で用いられる“ワクチン療法”という用語は、免疫系を刺激して腫瘍または感染性微生物を破壊する物質または物質群を用いる治療タイプを指す。
【0159】
同種異系ワクチン
ワクチンタンパク質は、当該記載発明で有用な免疫応答を誘発することができる。1つの特徴にしたがえば、当該記載発明は、癌を治療する腫瘍タイプ特異的同種異系腫瘍ワクチンを含む。いくつかの実施態様にしたがえば、癌は前立腺癌である。いくつかの実施態様にしたがえば、ワクチンは同種異系癌細胞株を含み、前記は2つ以上の免疫調整分子によって遺伝的に改変される。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞は、多岐にわたる腫瘍特異抗原(それらの大半は未知の性質を有する)を提供する。いくつかの実施態様にしたがえば、遺伝的に操作されるかまたは細胞に付加される免疫調整分子は、抗腫瘍免疫応答を開始若しくは持続させるそれらの能力のために、また別には癌患者に特徴的に存在する既存の免疫抑制を廃止する能力のために、または3つ全ての組合せのために1つの群から選択される。いくつかの実施態様にしたがえば、免疫調整分子の組合せは、ヒト混合リンパ球腫瘍細胞反応によって選択される。
【0160】
いくつかの実施態様にしたがえば、同種異系ワクチン組成物は、癌を有すると診断された患者に、腫瘍細胞によって生成される免疫抑制分子を阻害する薬剤と組み合わせて投与される。
【0161】
いくつかの実施態様にしたがえば、同種異系ワクチンはさらにまた、いったん有効な免疫応答が開始したらそのような免疫応答の未熟な終了を予防するために十分である、1つ以上のチェックポイント阻害因子を含む。
【0162】
いくつかの実施態様にしたがえば、対象動物(すなわち癌を有すると診断された対象動物)は、同種異系ワクチン組成物の投与前にまたは投与と同時にチェックポイント阻害因子療法によって治療される。ある種の実施態様では、癌はメラノーマである。
【0163】
チェックポイント妨害/腫瘍免疫抑制の封鎖
いくつかのヒト腫瘍は患者の免疫系によって除去される。例えば、免疫“チェックポイント”分子を標的とするモノクローナル抗体の投与は完全応答および腫瘍緩解をもたらすことができる。そのような抗体の作用態様は、腫瘍が抗腫瘍免疫応答から防御として勝手に利用した免疫調節分子を阻害することによる。これらの“チェックポイント”分子を(例えばアンタゴニスト抗体により)阻害することによって、患者のCD8+ T細胞は分裂増殖することが可能になり、腫瘍細胞を破壊することができる。
【0164】
例えば、CTLA-4またはPD-1(例示であり前記に限定されない)を標的とするモノクローナル抗体の投与は、完全応答および腫瘍緩解をもたらすことができる。そのような抗体の作用態様は、腫瘍が抗腫瘍免疫応答から防御として勝手に利用したCTLA-4またはPD-1を阻害することによる。これらの“チェックポイント”分子を(例えばアンタゴニスト抗体により)阻害することによって、患者のCD8+ T細胞は分裂増殖することが可能になり、腫瘍細胞を破壊することができる。
【0165】
したがって、本明細書で提供する同種異系ワクチン組成物は、免疫“チェックポイント”分子を標的とする1つ以上の妨害抗体と組み合わせて用いることができる。例えば、いくつかの実施態様では、本明細書で提供する同種異系ワクチン組成物は、例えばCTLA-4またはPD-1のような分子を標的とする1つ以上の妨害抗体と組合わせて用いることができる。例えば、本明細書で提供する同種異系ワクチン組成物は、PD-1およびPD-L1またはPD-L2および/またはPD-1とPD-L1またはPD-L2との結合を妨害し、低下させおよび/または阻害する薬剤と組み合わせて用いることができる。前記薬剤は非限定的に例示すれば以下の1つ以上である:ニボルマブ(ONO-4538/BMS-936558、MDX1106、OPDIVO(BRISTOL MYERS SQUIBB))、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(Merck))、ピジリズマブ(CT-011(CURE TECH))、MK-3475(MERCK)、BMS936559(BRISTOL MYERS SQUIBB)、MPDL328OA(ROCHE)。ある実施態様では、本明細書で提供する同種異系ワクチンは、CTLA-4の活性および/またはCTLA-4と1つ以上の受容体(例えばCD80、CD86、AP2M1、SHP-2、およびPPP2R5A)との結合を妨害し、低下させ、および/または阻害する薬剤と組み合わせて用いることができる。例えば、いくつかの実施態様では、免疫調整因子は抗体である。前記は、非限定的に例示すれば、例えばイピリムマブ(MDX-010、MDX-101、Yervoy(BMS))および/またはトレメリムマブ(Pfizer)である。これらの分子に対する妨害抗体は、例えば以下の業者から入手できる(Bristol Myers Squibb(New York, N.Y.)、Merck(Kenilworth, N.J.)、Medlmmune(Gaithersburg, Md.)、およびPfizer(New York, N.Y.))。
【0166】
さらにまた、本明細書で提供する同種異系ワクチンは、例えば以下の免疫“チェックポイント”分子を標的とする1つ以上の妨害抗体と組み合わせて用いることができる:BTLA、HVEM、TIM3、GALS、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160(BY55とも称される)、CGEN-15049)、CHK 1およびCHK2キナーゼ、A2aR、CEACAM(例えばCEACAM-1、CEACAM-3および/またはCEACAM-5)、GITR、GITRL、ガレクチン-9、CD244、CD160、TIGIT、SIRPα、ICOS、CD172a、およびTMIGD2並びに多様なB-7ファミリーリガンド(B7-1、B7-2、B7-DC、B7-H1、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H5、B7-H6およびB7-H7が含まれるが、ただし前記に限定されない)。
【0167】
いくつかの実施態様にしたがえば、同種異系ワクチンは、迅速in vitro評価に適合する。前記評価は健康な対象動物および癌患者由来のヒト末梢血単核細胞を用い、個体間の変動性とともに正常者と患者との相違を試験し、したがって動物実験を回避する。
【0168】
いくつかの実施態様にしたがえば、当該記載の発明は、能動的免疫療法のために同種異系腫瘍細胞ワクチンを含み、前記は個別タイプの癌を有する全ての患者に普遍的に投与することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、同種異系ワクチンは、遺伝的に改変された同種異系腫瘍タイプ特異的細胞、または改変同種異系腫瘍タイプ特異的細胞に由来する膜溶解物を含み、前記は医薬的に許容できる担体中で処方される。いくつかの実施態様にしたがえば、改変同種異系腫瘍タイプ特異的細胞は以前に樹立された細胞株に由来する。
【0169】
いくつかの実施態様にしたがえば、同種異系ワクチンは、最小限の残留疾患および機能的免疫系を有する患者の治療に適合する。例えば、いくつかの実施態様にしたがえば、同種異系ワクチンは、原発病巣の外科的除去から間がない最小限の残留疾患を有する患者の治療に適合する。いくつかの実施態様にしたがえば、同種異系ワクチンは当該ワクチンの皮下投与に適合する。いくつかの実施態様にしたがえば、同種異系ワクチン投与のための用量およびスケジュールは、全生存の最終的強化のためのガイドとして当該ワクチンに対する免疫応答を用いることによって決定される。
【0170】
いくつかの実施態様にしたがえば、同種異系ワクチンは、強力な抗同種異系ワクチン応答の誘発による短期の臨床的利益の提供、内因性非改変宿主腫瘍に対する長期存続交差反応応答の提供に適合する。いくつかの実施態様にしたがえば、同種異系腫瘍細胞ワクチンに対する免疫応答は、腫瘍細胞株にとってネイティブなペプチドとワクチンを受容する患者の腫瘍細胞にとってネイティブなペプチドとの間のヘテロクリティックな交差反応を含む(例えば
図1参照)。いくつかの実施態様にしたがえば、ヘテロクリティックな交差反応は、T細胞受容体と腫瘍細胞ペプチド-MHC複合体(通常は非免疫原性表面を提供する)との強化された結合を介して免疫原性を強化する。いくつかの実施態様にしたがえば、同種異系腫瘍細胞ワクチンは、癌を有する対象動物の腫瘍細胞と比較して改造(altered)ペプチドを含み、この場合、改造ペプチドは、癌を有する対象動物の腫瘍細胞の非免疫原性ペプチドに対してヘテロクリティックな交差反応を生じる免疫原性表面を提供する。腫瘍細胞ワクチンのヘテロクリティック認識およびアロ反応性抗原認識は、ワクチンを受容する患者の腫瘍細胞に対して免疫応答を引き出すために有用な多岐にわたる抗原を提供する。いくつかの実施態様にしたがえば、同種異系ワクチンは、臨床的利益(例えば無増悪生存、無再発生存、または全生存として)の提供に適合する。いくつかの実施態様にしたがえば、同種異系ワクチンは、ヘテロクリティック免疫を誘発する腫瘍免疫の提供に有効である(Dyall R., et al., Heteroclitic Immunization Induces Tumor Immunity, J.Exp.Med., Vol.188, No.9, November 2, 1998(参照によってその全体が本明細書に含まれる))。
【0171】
いくつかの実施態様にしたがえば、同種異系ワクチンは、治療量で発現される組換え免疫調整シグナルを含むように遺伝的に改変された腫瘍細胞株に由来する。いくつかの実施態様にしたがえば、同種異系ワクチンは、均一な出発材料(例えば腫瘍細胞株)に由来し、当該出発材料では、多数の別個の生物製剤が可溶形または膜結合形で発現される。いくつかの実施態様にしたがえば、可溶形および膜結合形の発現および活性は、フローサイトメトリーおよび混合リンパ球腫瘍アッセイ(それぞれ末梢血単核細胞を用いる)によってin vitroで確認される。いくつかの実施態様にしたがえば、可溶形および膜結合形の発現および活性は、フローサイトメトリーおよび混合リンパ球腫瘍アッセイ(ワクチン接種癌患者から得られる、免疫に用いた同種異系腫瘍細胞に対抗する末梢血単核細胞を用いる)によってin vitroで確認される。
【0172】
いくつかの実施態様にしたがえば、同種異系ワクチンは遺伝的に改変された免疫調整分子を含み、当該分子の各々は膜結合または分泌シグナリング分子をコードする。いくつかの実施態様にしたがえば、各膜結合免疫調整分子は、薬理学的用量より低い治療用量のデリバリーに適合し、前記治療用量は、空間的および時間的に制限された態様で活性であり、もっぱら抗原提示時および提示場所でシグナリングを提供する。いくつかの実施態様にしたがえば、膜結合免疫調整分子は全身性副作用の可能性の減少に適合する。いくつかの実施態様にしたがえば、分泌免疫調整分子は局所性(全身性ではない)シグナルのデリバリーに適合する。
【0173】
いくつかの特徴にしたがえば、同種異系ワクチンは遺伝的材料を含み、前記材料は1つ以上の免疫調整分子を腫瘍細胞株に遺伝的に導入するために有効である。いくつかの実施態様にしたがえば、遺伝的材料はウイルス性形質導入技術によって導入され、当該遺伝的導入免疫調整分子について正の選別によって単離することができる。例えば、いくつかの実施態様にしたがえば、遺伝的導入免疫調整分子の正の選別は抗体を用いる選別を含む。いくつかの実施態様にしたがえば、免疫調整分子は多様であり、カギとなる免疫細胞サブセット(例えば樹状細胞、リンパ球部分集団(例えばT細胞、ナチュラルキラー細胞、およびT調節細胞))への影響に関して補完性を有する。いくつかの実施態様にしたがえば、同種異系ワクチンは、多様な免疫細胞サブセットの多様な免疫調整経路へ向かう多様な免疫調整分子を含み、この場合、全ての経路が個々の癌患者の免疫原性応答に等しく寄与するとは限らない。いくつかの実施態様にしたがえば、遺伝的に腫瘍細胞株に導入された免疫調整分子は安定的に発現される。
【0174】
腫瘍抗原特異性
免疫学的抗原特異性は、当該抗原の1つ以上のアミノ酸配列、当該腫瘍による当該抗原の発現の程度、当該抗原の翻訳後修飾などに基づき生じ得る。
【0175】
一定のタイプの癌細胞に対する免疫学的抗原特異性はまた、複数の腫瘍抗原の特定のフィンガープリントの1つ以上、特定の抗原(多岐にわたる腫瘍細胞で発現されるが)が少数の腫瘍タイプに対する免疫療法で特定の有用性を有するという事実、MHCクラスI提示性およびMHCクラスII提示性エピトープの特定の集合物が特定のポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントに存在するという事実に基づき、および免疫耐性を惹起し得る1つ以上のペプチドを除外することによって生じ得る。当業者は、関連する核酸およびポリペプチド配列を、例えば米国政府のウエブサイト(ncbi.nlm.nih)で見つけることができる。
【0176】
いくつかの実施態様にしたがえば、本発明の腫瘍抗原特異性は、免疫調整因子による改変のために選択される親腫瘍細胞株によって決定できる。
【0177】
親細胞株
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、公的供給原(例えばチャールズリバー研究所(Charles River Laboratories Inc.)によって運営されるNIH腫瘍委託施設(DCTD Tumor Repository))または市場の供給原(例えばATCC、Sigma Alrich、Thermo Fischer Scientific、Genescript、DSM2)から得られる樹立胞株から誘導することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、新しい細胞株は癌患者の腫瘍から採取した腫瘍細胞からde novoに樹立できる。
【0178】
いくつかの実施態様にしたがえば、癌組織、癌細胞、発癌性因子感染細胞、他の前腫瘍性細胞、およびヒト起源の細胞株を用いることができる。いくつかの実施態様にしたがえば、癌細胞は樹立された腫瘍細胞株に由来し得る。前記細胞株には例えば以下が含まれる(ただしそれらに限定されない):樹立された非小細胞肺癌(NSCLC)、膀胱癌、メラノーマ、卵巣癌、腎細胞癌腫、前立腺癌腫、肉腫、乳癌、扁平上皮細胞癌、頭頸部癌腫、肝細胞性癌腫、膵臓の癌腫、または結腸癌腫細胞株。
【0179】
いくつかの実施態様にしたがえば、樹立細胞株はLNCaPクローンFGC(ATCC CRL-1740)を含み、前記自体はリンパ節に移動した転移性前立腺癌に由来する。いくつかの実施態様にしたがえば、樹立細胞株はPC-3(ATCC CRL-1435)細胞株を含み、前記自体は骨に移動した転移性前立腺癌に由来する。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は以下のATCC細胞株の1つ以上に由来する:VCaP(ATCC CRL-2876);MDA PCa 2b(ATCC CRL-2422);またはDU 145(ATCC HTB-81)。
【0180】
いくつかの実施態様にしたがえば、樹立細胞株はSK-MEL-2クローン(ATCC HTB-68)を含み、前記自体は大腿の皮膚への転移に由来する。
【0181】
いくつかの実施態様にしたがえば、樹立細胞株は、COO-G、DU4475、ELL-G、HIG-G、MCF/7、MDA-MB-436、MX-1、SW-613およびVAN-Gと称される乳房癌腫細胞株の1つ以上を含む。いくつかの実施態様にしたがえば、樹立細胞株は、ASPSおよびASPS-1と称される肺胞軟部の肉腫細胞株の1つ以上を含む。いくつかの実施態様にしたがえば、樹立細胞株は、LX-1、COS-G、H-MESO-1、H-MESO-1A、NCI-H23およびNCI-H460と称される1つ以上の肺細胞株を含む。いくつかの実施態様にしたがえば、樹立細胞株は、CX-5、GOB-G、HCC-2998、HCT-15、KLO-G、KM20L2、MRI-H-194、LOVO I、LOVO IIおよびMRI-H-250と称される1つ以上の結腸癌細胞株を含む。いくつかの実施態様にしたがえば、樹立細胞株は、NIS-G、TRI-G、WIL-G、MRI-H-121B、MRI-H-187、MRI-H-221およびMRI-H-255と称される1つ以上のメラノーマ細胞株を含む。いくつかの実施態様にしたがえば、樹立細胞株は、MRI-H-177、MRI-H-186、MRI-H-196およびMRI-H-215と称される1つ以上の子宮頸癌細胞株を含む。いくつかの実施態様にしたがえば、樹立細胞株は、MRI-H-121およびMRI-H-166と称される1つ以上の腎臓癌細胞株を含む。いくつかの実施態様にしたがえば、樹立細胞株は、MRI-H-147およびMRI-H-220と称される1つ以上の子宮内膜癌細胞株を含む。いくつかの実施態様にしたがえば、樹立細胞株は、MRI-H-258、MRI-H-273、MRI-H-1834およびSWA-Gと称される1つ以上の卵巣癌細胞株を含む。いくつかの実施態様にしたがえば、樹立細胞株は、HS-1、OGL-GおよびDEL-Gと称される1つ以上の肉腫細胞株を含む。いくつかの実施態様にしたがえば、樹立細胞株はDEAC-1と称される上皮様細胞株を含む。いくつかの実施態様にしたがえば、樹立細胞株はSF295と称される神経膠芽腫細胞株を含む。いくつかの実施態様にしたがえば、樹立細胞株はCWR-22と称される前立腺癌細胞株を含む。いくつかの実施態様にしたがえば、樹立細胞株はDAUと称されるバーキットリンパ腫細胞株を含む。
【0182】
いくつかの実施態様にしたがえば、例示的な樹立細胞株は以下の細胞株の1つ以上を含む:
【0183】
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種を誘導することができる親細胞株の選択は同種異系ワクチンの特異性に影響を及ぼす。例えば、患者の骨へ移動した転移性前立腺癌に由来する腫瘍細胞株変種の使用は、患者の骨の転移性前立腺癌に特異的な免疫応答を引き出す同種異系ワクチンをもたらすことができる。
【0184】
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、普遍的な癌特異抗原を含む親細胞から誘導できる。例えば、患者の骨に移動した転移性前立腺癌に由来する親腫瘍細胞株は、全ての前立腺癌細胞に対して免疫応答を引き出す同種異系ワクチンをもたらすことができる。
【0185】
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、多様な癌に由来する患者由来細胞から誘導される。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍から外科的に除去した新鮮な組織をIV型コラゲナーゼによって酵素的に消化し、続いて脱凝集細胞を収集する。いくつかの実施態様にしたがえば、続いて脱凝集細胞を、付着促進のために細胞外マトリックス基材(例えばコラーゲンまたはフィブロネクチン)上で、10%ウシ胎児血清を含む増殖培養液中でin vitroで増殖させることができる。いくつかの実施態様にしたがえば、続いて付着細胞を、不死性癌細胞が非癌性線維芽細胞を超えて増殖するまで継代することができる。
【0186】
例えば、いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、腫瘍細胞(癌幹細胞を含む)を含む固形腫瘍、転移性腫瘍細胞(癌幹細胞を含む)を含む転移性癌、または非転移性癌から誘導することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、癌は、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、十二指腸、小腸、大腸、結腸、直腸、肛門、歯茎、頭部、腎臓、肝臓、肺臓、鼻咽頭、頸部、卵巣、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、または子宮に原発することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、癌は例えば以下の組織学的タイプであり得る:皮膚または一列に並ぶ若しくは内臓を覆う組織で始まる癌(癌腫)、骨または身体の軟組織(軟骨、脂肪、筋肉、血管および線維性組織を含む)で始まる癌(肉腫)、造血組織で始まる癌(白血病)、免疫系の細胞で始まる癌(リンパ腫)、形質細胞で始まる癌(ミエローマ)、または脳/脊髄の癌。
【0187】
癌腫の例には以下が含まれる(ただしそれらに限定されない):巨細胞および紡錘細胞癌、小細胞癌、乳頭状癌腫、扁平上皮細胞癌、リンパ上皮癌、基底細胞癌、毛質癌、移行細胞癌、乳頭状移行細胞癌、腺癌、ガストリノーマ、胆管癌、肝細胞性癌腫、肝細胞性癌腫胆管癌結合型、索状腺癌、腺様嚢胞癌、腺腫様ポリープ腺癌、家族性多発性大腸ポリープ腺癌、カルチノイド腫瘍、細気管支-肺胞性癌腫、乳頭状腺癌、色素嫌性癌腫、好酸球癌腫、好酸性腺癌、好塩基球癌腫、明細胞腺癌、顆粒細胞癌腫、濾胞性腺癌、非被包性硬化性癌腫、副腎皮質癌、子宮内膜様癌腫、皮膚付属器癌腫、アポクリン腺癌、皮脂腺腺癌、耳道腺腺癌、粘表皮癌、嚢胞腺癌、乳頭状嚢胞腺癌、乳頭状漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞性腺癌、粘液性腺癌、印環細胞癌、浸潤性導管癌、髄様癌、小葉癌、炎症性癌腫、パジェット病、乳房腺房細胞癌、腺扁平上皮癌、扁平上皮化生を伴う腺癌、セルトリ細胞癌、胎生期癌、絨毛癌。
【0188】
肉腫の例には以下が含まれる(ただしそれらに限定されない):グロムス血管肉腫、肉腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、胎生期横紋筋肉腫、肺胞横紋筋肉腫、間質性肉腫、癌肉腫、滑膜肉腫、血管肉腫、カポジ肉腫、リンパ管肉腫、骨肉腫、傍皮質肉腫、軟骨肉腫、間葉系軟骨肉腫、骨の巨細胞腫、ユーイング肉腫、悪性歯原性腫瘍、エナメル芽細胞性歯原性肉腫、悪性エナメル芽細胞腫、エナメル芽細胞性線維肉腫、肥満細胞肉腫。
【0189】
白血病の例には以下が含まれる(ただしそれらに限定されない):白血病、リンパ性白血病、形質細胞白血病、赤白血病、リンパ肉腫細胞白血病、骨髄性白血病、好塩基球白血病、好酸球白血病、単球白血病、肥満細胞白血病、巨核芽細胞白血病、および有毛細胞白血病。
【0190】
リンパ腫およびミエローマの例には以下が含まれる(ただしそれらに限定されない):悪性リンパ腫、ホジキン病、ホジキン側肉腫、小リンパ球性悪性リンパ腫、大細胞びまん性悪性リンパ腫、濾胞性悪性リンパ腫、菌状息肉症、他の特殊化非ホジキンリンパ腫、悪性メラノーマ、メラニン欠乏性メラノーマ、表在拡大型メラノーマ,巨大色素性母斑型悪性メラノーマ、上皮様細胞メラノーマ、多発性メラノーマ。
【0191】
脳/脊髄の癌の例には以下が含まれる(ただしそれらに限定されない):悪性松果体腫、脊索腫、悪性神経膠腫、上衣腫、星状細胞腫、原形質性星状細胞腫、線維性星状細胞腫、星状芽細胞腫、希突起神経膠腫、希突起神経膠芽腫、原始神経外胚葉性、小脳肉腫、神経節芽腫、神経芽腫、網膜芽腫、嗅神経原性腫瘍、悪性髄膜腫、神経線維肉腫、悪性神経鞘腫。
【0192】
他の癌の例には以下が含まれる(ただしそれらに限定されない):胸腺腫、卵巣間質腫瘍、莢膜腫、顆粒膜細胞腫、男性胚腫、ライディッヒ細胞腫、脂質細胞腫、旁神経節腫、乳房外旁神経節腫、褐色細胞腫、悪性青色母斑、悪性線維性組織球腫、悪性混合腫瘍、ミューラー管混合腫瘍、腎芽腫、肝芽腫、悪性間葉腫、悪性ブレンナー腫瘍、悪性葉状腫瘍、悪性中皮腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫、悪性卵巣甲状腺腫、悪性中腎腫、悪性血管内皮腫、悪性血管周皮細胞腫、悪性軟骨芽細胞腫、悪性顆粒球腫瘍、悪性組織球症、免疫増殖性小腸疾患。
与えられた任意の腫瘍タイプに関して、いくつかの腫瘍細胞株を市場で入手できる。いくつかの実施態様にしたがえば、これらの細胞のいくつかをプールすることによって(全細胞の混合物としてまたは全細胞の混合物から膜調製物を作製して)、当該腫瘍タイプについて多数の細胞表面抗原が提供され得る
【0193】
免疫調整因子の選択
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、2つ以上の組換えDNA配列およびタンパク質を発現するように操作することができ、前記タンパク質は続いて腫瘍細胞で提示され機能する。
【0194】
IgG重鎖定常および可変領域
免疫グロブリン(Ig)は免疫細胞によって産生される糖タンパク質である。抗体は血清タンパク質であり、抗体分子は、それらの標的上の小さな化学基に相補性である小さな領域をそれらの表面に有する。抗体のこれらの相補性領域(相補性決定領域(CDR)または抗体結合部位または抗原結合部位と称される)は、抗体1分子につき少なくとも2つ存在し、抗体分子のいくつかのタイプでは10、8領域、またはいくつかの種では12もの領域が抗原上の対応する相補性領域(抗原決定基またはエピトープ)と反応し、多価抗原のいくつかの分子を一緒に連結して格子を形成できる。免疫グロブリンは粒子状抗原(例えば細菌またはウイルスによって提示されるもの)と結合することによって免疫応答で決定的な役割を果たす。いくつかの実施態様にしたがえば、免疫グロブリンと抗原との結合は、当該抗原を対象動物の免疫細胞による破壊の標的にすることができる。
【0195】
全抗体分子の基本的構造単位は4つのポリペプチド鎖から成る。4つのポリペプチド鎖の2つは同一軽(L)鎖(各々は約220アミノ酸を含む)であり2つは同一重(H)鎖(各々は通常約440アミノ酸を含む)である。2つの重鎖および2つの軽鎖は、非共有結合および共有結合(ジスルフィド結合)の組合せによって一緒に保持される。当該分子は2つの同一である1/2分子で構成され、各々は同一の抗原結合部位を有し、前記抗原結合部位は軽鎖のN-末端領域および重鎖のN-末端領域で構成される。軽鎖および重鎖の両方が通常協同して抗原結合表面を形成する。
【0196】
哺乳動物では、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMの5クラスの抗体があり、各々はそれ自体の重鎖クラス、α(IgA)、δ(IgD)、ε(IgE)、γ(IgG)およびμ(IgM)を有する。加えて、IgG免疫グロブリンには4つのサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)があり、それぞれγ1、γ2、γ3およびγ4重鎖を有する。その分泌型で、IgMは5つの4鎖ユニットで構成されるペンタマーであり、IgMに合計10個の抗原結合部位を与える。各ペンタマーは1コピーのJ鎖を含み、前記は2つの隣接するテール領域の間に共有結合で挿入される。
【0197】
末梢血リンパ球に由来する免疫グロブリン重鎖(VH)および軽鎖(VκおよびVλ)可変遺伝子の多様なライブラリーはまたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅によって増幅させることができる。重鎖および軽鎖V遺伝子をPCRによりランダムに組み合わせることによって、単一ポリペプチド鎖(重鎖および軽鎖可変ドメインがポリペプチドスペーサーによって連結されている)をコードする遺伝子を作製することができる。
【0198】
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種はIgG1重鎖定常領域を発現するように操作され得る。本来、Igガンマ-1(IgG1)鎖C領域はヒトではIGHG1遺伝子によってコードされるタンパク質である。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:1の膜結合型IgG-1鎖Cタンパク質を発現することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:2のIgG-1鎖Cの分泌型を発現することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:3のIgG-1鎖Cの分泌型を発現することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:1、配列番号:2および配列番号:3のアミノ酸配列を有する1つ以上のタンパク質に対して少なくとも60%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:1、配列番号:2および配列番号:3のアミノ酸配列を有する1つ以上のタンパク質に対して少なくとも70%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:1、配列番号:2および配列番号:3のアミノ酸配列を有する1つ以上のタンパク質に対して少なくとも80%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:1、配列番号:2および配列番号:3のアミノ酸配列を有する1つ以上のタンパク質に対して少なくとも90%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:1、配列番号:2および配列番号:3のアミノ酸配列を有する1つ以上のタンパク質に対して少なくとも95%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:1、配列番号:2および配列番号:3のアミノ酸配列を有する1つ以上のタンパク質に対して少なくとも96%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:1、配列番号:2および配列番号:3のアミノ酸配列を有する1つ以上のタンパク質に対して少なくとも97%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:1、配列番号:2および配列番号:3のアミノ酸配列を有する1つ以上のタンパク質に対して少なくとも98%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:1、配列番号:2および配列番号:3のアミノ酸配列を有する1つ以上のタンパク質に対して少なくとも99%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。
【0199】
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:12、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39、配列番号:40、配列番号:45および配列番号:46のアミノ酸配列を有する1つ以上のタンパク質に対して少なくとも60%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:12、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39、配列番号:40、配列番号:45および配列番号:46のアミノ酸配列を有する1つ以上のタンパク質に対して少なくとも70%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:12、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39、配列番号:40、配列番号:45および配列番号:46のアミノ酸配列を有する1つ以上のタンパク質に対して少なくとも80%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:12、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39、配列番号:40、配列番号:45および配列番号:46のアミノ酸配列を有する1つ以上のタンパク質に対して少なくとも90%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:12、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39、配列番号:40、配列番号:45および配列番号:46のアミノ酸配列を有する1つ以上のタンパク質に対して少なくとも95%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:12、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39、配列番号:40、配列番号:45および配列番号:46のアミノ酸配列を有する1つ以上のタンパク質に対して少なくとも96%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:12、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39、配列番号:40、配列番号:45および配列番号:46のアミノ酸配列を有する1つ以上のタンパク質に対して少なくとも97%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:12、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39、配列番号:40、配列番号:45および配列番号:46のアミノ酸配列を有する1つ以上のタンパク質に対して少なくとも98%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:12、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39、配列番号:40、配列番号:45および配列番号:46のアミノ酸配列を有する1つ以上のタンパク質に対して少なくとも99%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。
【0200】
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、腫瘍細胞特異的抗原と結合することができるIgGタンパク質を発現するように操作され得る。例えば、腫瘍細胞株変種は、前立腺癌特異的抗原、例えば前立腺特異的膜抗原(PSMA)の細胞外領域と結合することができるIgGタンパク質を発現するように操作され得る(以下を参照されたい:Chang, S., Overview of Prostate-Specific Membrane Antigen, Reviews in Urology, Vol.6 Suppl.10, S13, 2004)。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、免疫細胞特異的抗原と結合することができるIgGタンパク質を発現するように操作され得る。例えば、腫瘍細胞株変種は、T細胞マーカー、例えばCD3、CD4、またはCD8と結合することができるIgGタンパク質を発現するように操作され得る。別の例にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、樹状細胞マーカー、例えばCD11cまたはCD123と結合することができるIgGタンパク質を発現するように操作され得る。
【0201】
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、IgG3重鎖定常領域を発現するように操作され得る。本来、IgG3重鎖定常領域はCH-1-ヒンジ-CH2-CH3ドメインを含み、ヒトではIGHG3遺伝子によってコードされる。IGHG3遺伝子は種々のヒンジ長を含む構造的多型を含む。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は配列番号:4のIgG-3重鎖定常領域を発現することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、アミノ酸1-76が失われた配列番号:4の誘導体を発現することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、アミノ酸1-76が失われた配列番号:4の誘導体を発現することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、アミノ酸QMQGVNCTVSS(配列番号:101)で置き替えられたアミノ酸77-98を有する配列番号:4の誘導体を発現することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、E213Q変種を含む配列番号:4の誘導体(配列番号:16)を発現することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、P221L変種を含む配列番号:4の誘導体(配列番号:17)を発現することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、E224Q変種を含む配列番号:4の誘導体(配列番号:18)を発現することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、Y226F変種を含む配列番号:4の誘導体(配列番号:19)を発現することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、D242N変種を含む配列番号:4の誘導体(配列番号:20)を発現することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、N245D変種を含む配列番号:4の誘導体(配列番号:21)を発現することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、T269A変種を含む配列番号:4の誘導体(配列番号:22)を発現することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、S314N変種を含む配列番号:4の誘導体(配列番号:23)を発現することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、S314欠失を含む配列番号:4の誘導体(配列番号:24)を発現することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、F366Y変種を含む配列番号:4の誘導体(配列番号:25)を発現することができる。
【0202】
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:4のタンパク質に対して少なくとも60%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:4のタンパク質に対して少なくとも70%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:4のタンパク質に対して少なくとも80%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:4のタンパク質に対して少なくとも90%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:4のタンパク質に対して少なくとも95%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:4のタンパク質に対して少なくとも96%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:4のタンパク質に対して少なくとも97%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:4のタンパク質に対して少なくとも98%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:4のタンパク質に対して少なくとも99%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。
【0203】
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、1つ以上のIgG重鎖可変領域を発現するように操作され得る。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、ラムダ/カッパ軽鎖定常および/または軽鎖可変領域を発現するように操作され得る。いくつかの実施態様にしたがえば、IgGのヒンジ領域は免疫細胞のFcyR受容体と結合する。いくつかの実施態様にしたがえば、IgGは、FcyRの活性化および抗原提示の強化に有効である(例えば前立腺癌細胞関連PSA)。
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、無傷のモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を腫瘍細胞の細胞表面で発現するように操作され得る。いくつかの実施態様にしたがえば、無傷のモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体は、免疫原性応答を引き出す分子をデリバリーするように設計され得る。例えば、いくつかの実施態様にしたがえば、無傷のモノクローナル抗体は、DNAと結合してCpGモチーフを免疫細胞にデリバリーするように設計され得る。
【0204】
いくつかの実施態様にしたがえば、細菌DNAの免疫刺激活性は、非メチル化CpGモチーフを免疫細胞にデリバリーするように免疫調整因子を操作することによって模倣され得る。例えば、いくつかの実施態様にしたがえば、IgGはビオチンと結合するように操作され得る。前記はその後ビオチニル化CpGを免疫系の細胞にデリバリーすることができる。いくつかの実施態様にしたがえば、CpGモチーフは、腫瘍細胞ワクチンの腫瘍細胞の表面に直接的または間接的に結合して全身的作用を防ぐことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、CpGモチーフは、腫瘍細胞株変種の腫瘍細胞の表面に提示される1つ以上の抗原と複合化され得る。いくつかの実施態様にしたがえば、CpGはクラスA CpGである。いくつかの実施態様にしたがえば、CpGはクラスB CpGである。いくつかの実施態様にしたがえば、CpGはクラスC CpGである。いくつかの実施態様にしたがえば、CpGは、配列5’ EEAACCGTATCGGCGATATCGGTTEEEEEG 3’ (配列番号:102)のCpG 30-merである。CpGモチーフに関して本明細書で用いられるように、“E”はG-ホスホロチオエートであり、この結合はヌクレオチドの3'末端を指す(すなわち、ホスホロチオエート結合は、ヌクレオチド支柱の非架橋酸素のために硫黄原子を代用する)。いくつかの実施態様にしたがえば、CpGは、配列5’-ビオチン-EEAACCGTATCGGCGATATCGGTTEEEEEG-3’ (配列番号:102)のビオチニル化30-merである。いくつかの実施態様にしたがえば、CpGは、配列5’ EEAACCGTATGCGGCATATCGGTTEEEEEG 3’ (配列番号:103)のCpG 30-merである。いくつかの実施態様にしたがえば、CpGは、配列5’-ビオチン-EEAACCGTATGCGGCATATCGGTTEEEEEG-3’ (配列番号:103)のビオチニル化CpG 30-merである。
【0205】
いくつかの実施態様にしたがえば、IgGは、1つ以上のIgGサブクラスのハイブリッドとして操作され得る。例えば、いくつかの実施態様にしたがえば、IgGはIgG1およびIgG3由来の配列を含む。いくつかの実施態様にしたがえば、IgGは、ビオチンに対する親和性を有するように操作され得る。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:45のタンパク質に対して少なくとも60%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:45のタンパク質に対して少なくとも70%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:45のタンパク質に対して少なくとも80%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:45のタンパク質に対して少なくとも90%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:45のタンパク質に対して少なくとも95%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:45のタンパク質に対して少なくとも96%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:45のタンパク質に対して少なくとも97%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:45のタンパク質に対して少なくとも98%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:45のタンパク質に対して少なくとも99%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。
【0206】
いくつかの実施態様にしたがえば、IgGは、野生型IgGと比較してFcyRに対する親和性を強化する1つ以上の変異を含む。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、変異T323AおよびE325Aの1つ以上を有する配列番号:45の1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:41、配列番号:30、および配列番号:43の1つ以上のタンパク質に対して少なくとも60%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:41、配列番号:30、および配列番号:43の1つ以上のタンパク質に対して少なくとも70%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:41、配列番号:30、および配列番号:43の1つ以上のタンパク質に対して少なくとも80%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:41、配列番号:30、および配列番号:43の1つ以上のタンパク質に対して少なくとも90%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:41、配列番号:30、および配列番号:43の1つ以上のタンパク質に対して少なくとも95%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:41、配列番号:30、および配列番号:43の1つ以上のタンパク質に対して少なくとも96%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:41、配列番号:30、および配列番号:43の1つ以上のタンパク質に対して少なくとも97%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:41、配列番号:30、および配列番号:43の1つ以上のタンパク質に対して少なくとも98%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:41、配列番号:30、および配列番号:43の1つ以上のタンパク質に対して少なくとも99%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。
【0207】
CD40L
CD40のリガンド(CD154またはCD40Lとして知られている)はII型トランスメンブレンタンパク質であり、前記は翻訳後修飾のために32から39kDaの間の変動し得る分子量を有する(Elgueta R et al., Molecular mechanism and function of CD40/CD40L engagement in the immune system.Immunological reviews.2009; 229(1):10.1111/j.1600-065X.2009.00782.x.doi:10.1111/j.1600-065X.2009.00782.x, (以下の論文(van Kooten C et al., J.Leukoc Biol.2000 Jan; 67(1):2-17)が引用されている)。トランスメンブレン型と類似する活性を有するCD40Lの純粋型が報告されている(前掲書、以下の論文(Graf D et al., Eur J Immunol.1995 Jun; 25(6):1749-54;Mazzei GJ et al., J Biol Chem.1995 Mar 31; 270(13):7025-8)が引用されている)。
【0208】
本来、CD40LはTNFスーパーファミリーのメンバーであり、β-シート、α-ヘリックスおよびβ-シートで構成されるサンドイッチ細胞外構造を特徴とする(前記構造はCD40Lのトリマー化を可能にする)(前掲書、以下の論文(Karpusas M et al., Structure.1995 Oct 15; 3(10):1031-9)が引用されている)。CD40Lは、主として活性化T細胞とともに活性化B細胞および血小板によって炎症条件下で発現される。CD40Lはまた単球性細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞および好塩基球上で誘発される(前掲書、以下の論文(Carbone E et al., J Exp Med.1997 Jun 16; 185(12):2053-60)が引用されている)。CD40LおよびCD40の共同刺激性ペアの広範囲に広がる発現は、それらが種々の細胞性免疫応答で果たす中枢的役割を示している。
【0209】
CD40Lは3つの結合パートナー、CD40、α5β1インテグリンおよびαIIbβ3インテグリンを有する。CD40Lは共同刺激性分子として機能し、T濾胞性ヘルパー細胞(TFH細胞)と呼ばれるT細胞サブセットで特に重要であり、この場合CD40Lは、B細胞表面でCD40を係合して細胞間情報伝達を容易にすることによってB細胞成熟および機能を促進する。CD40L遺伝子の欠陥は、免疫グロブリンクラススイッチを受ける能力を失わせ、さらに高IgM症候群と関係する。CD40Lの消失はまた胚中心の形成を停止させ、それによって抗体親和性成熟(適応免疫系における重要なプロセス)を阻害する。
【0210】
CD40はAPC上で発現されることが見出され、一方、そのリガンド(CD40L)は活性化T細胞で見出されている。CD40は、液性免疫応答で決定的な役割を果たすことが見出され、APCはT細胞を活性化することができると確認されている。いくつかの疾患の発生(狼瘡を含む)がCD40/CD40L経路に関与するが、抗CD40L抗体は、活性化血小板でのCD40発現に由来する血栓性合併症では限定的な臨床適用を示した(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。
【0211】
CD40はまたいくつかのタイプの癌(固形腫瘍および血液学的悪性疾患を含む)で見出されている。血液学的な癌でCD40を介するシグナリングは増殖または後退を媒介し得るが、一方、固形腫瘍におけるCD40シグナリングは殺腫瘍性のみである、これらの特徴はSCIDマウスモデルでも見出され、したがって、当該特徴はおそらくTNFデスドメインシグナリングに起因する。さらにまた、免疫調整の証拠が存在し、例えばCD40/CD40L経路の妨害は、GM-CSF分泌メラノーマワクチンの防御効果を抑える(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。
【0212】
CD40Lを発現する腫瘍細胞ワクチンは癌モデルで有用であることを証明した。例えば、CD40とCD40Lまたは抗CD40抗体との連結は、GM-CSF、IFN-ガンマ、IL-2およびCTLA-4妨害との相乗作用を示した。さらにまた、抗CD40抗体は、前臨床マウスモデルで抗腫瘍活性を有すると報告されている(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。
【0213】
当該開示発明のいくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:6の切断可能なCD40Lペプチドを発現するように操作され得る。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:6のタンパク質に対して少なくとも60%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:6のタンパク質に対して少なくとも70%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:6のタンパク質に対して少なくとも80%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:6のタンパク質に対して少なくとも90%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:6のタンパク質に対して少なくとも95%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:6のタンパク質に対して少なくとも96%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:6のタンパク質に対して少なくとも97%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:6のタンパク質に対して少なくとも98%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:6のタンパク質に対して少なくとも99%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。
【0214】
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、腫瘍細胞の膜表面に配列番号:7の切断可能な膜結合CD40Lペプチドを発現するように操作され得る。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:7のタンパク質に対して少なくとも60%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:7のタンパク質に対して少なくとも70%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:7のタンパク質に対して少なくとも80%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:7のタンパク質に対して少なくとも90%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:7のタンパク質に対して少なくとも95%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:7のタンパク質に対して少なくとも96%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:7のタンパク質に対して少なくとも97%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:7のタンパク質に対して少なくとも98%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:7のタンパク質に対して少なくとも99%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。
【0215】
腫瘍壊死因子アルファ
腫瘍壊死因子(TNF;腫瘍壊死因子アルファ(TNFα);カケキシン、カケクチン)はサイトカイン(主として活性化マクロファージおよびリンパ球によって産生される)であり、全身性炎症に関与する。前記はまた、免疫原性応答の急性期に必要とされるサイトカインの1つである。TNFは、他の細胞タイプ(例えばCD4+リンパ球、NK細胞、好中球、肥満細胞、好酸球、およびニューロン)によって産生され得る。
【0216】
免疫細胞の調節因子としてのその主要な役割において、TNFは、発熱、アポトーシス細胞死、悪液質、炎症、および腫瘍形成の阻害を誘発することができ;ウイルス複製を阻害することができ;さらにIL-1およびIL-6産生細胞を介して敗血症に対する応答を開始することができる。TNF産生の脱調節は人間の多種多様な疾患と密接に関係している(アルツハイマー病、大うつ病、乾癬、および炎症性腸疾患(IBD)を含む)。TNFは悪性疾患の設定では異所性に産生されることがあり、さらに二次性高カルシウム血症の惹起および過剰産生を伴う癌の両方で副甲状腺ホルモンと一致する。
【0217】
TNFは26kDaの膜結合型および17kDaの可溶性サイトカイン型を含む。TNFの可溶型は、TNF-アルファ変換酵素(TACE)による膜結合型のタンパク質切断から派生する(Grell M.et al., The Transmembrane Form of Tumor Necrosis Factor Is the Prime Activating Ligand of the 80 kDa Tumor Necrosis Factor Receptor, Cell, Vol.83, 793-802)。TACEはマトリックスメタロプロテアーゼであり、前記は完全長TNFの細胞外ドメインの切断部位を認識する(Rieger, R., Chimeric form of tumor necrosis factor-alpha has enhanced surface expression and antitumor activity, Cancer Gene Therapy, 2009, 16, 53-64)。TNFの切断部位の欠失はTNFの膜安定性の強化をもたらす(前掲書)。
【0218】
TNFは細胞に対して抗分裂増殖性および細胞傷害性作用を有し、腫瘍血流および腫瘍血管損傷を減少させることが知られており、さらにマクロファージおよびNK細胞活性を刺激することによって免疫応答を調整できる。しかしながら治療薬そのものとしてのTNFの使用は、用量依存低血圧および毛細管漏出(敗血症様症候群を引き起こし得る)によって制限されている。そのような理由のために、TNFは全身性作用を制限する態様でデリバリーされなばならない。TNFは標準的化学療法剤に添加され応答率を改善してきた。TNF投与のための他のアプローチには、胃腸管の悪性疾患でTNFを発現するように改変されたアデノウイルスの注射が含まれる。腫瘍血管を標的とするTNF化合物もまた開発されている(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。組換えTNFがタソネルミンという名称で免疫刺激剤として用いられ、一方、HUMIRA(商標)はTNFに対する抗体であり、炎症性疾患(例えば乾癬および関節リウマチ)の治療に有用である。この役割を認識して、分子(例えば抗体)は、TNF活性を妨害するために設計された。しかしながら、そのような治療法は、サイトカインの不適切な全身性放出によって引き起こされるサイトカインの嵐を開始させるリスクを持ち込み、白血球活性化/サイトカイン放出の正のフィードバックループ(潜在的に致死性であり得る)を生じる。
【0219】
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、腫瘍細胞の膜にTNFの膜結合型を発現することができる。例えば、いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は配列番号:8のペプチドを含む。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:8のタンパク質に対して少なくとも60%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:8のタンパク質に対して少なくとも70%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:8のタンパク質に対して少なくとも80%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:8のタンパク質に対して少なくとも90%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:8のタンパク質に対して少なくとも95%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:8のタンパク質に対して少なくとも96%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:8のタンパク質に対して少なくとも97%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:8のタンパク質に対して少なくとも98%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:8のタンパク質に対して少なくとも99%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。
【0220】
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、TNFの非切断性膜結合型を発現することができる。例えば、いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、アミノ酸VRSSSRTPSDKP(配列番号:104)の1つ以上が欠失した配列番号:8(例えば配列番号:26参照)のTNFタンパク質を含むことができる。
【0221】
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種はTNFの可溶型を発現することができる。例えば、いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、トランスメンブレン領域が部分的にまたは完全に除去された配列番号:8のTNFタンパク質を発現することができる。例えば、いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、アミノ酸F、S、F、L、I、V、A、G、A、T、T、L、F、C、L、L、H、F、G、V、Iの1つ以上が欠失した配列番号:8(例えば配列番号:27参照)の誘導TNFタンパク質を含むことができる。
【0222】
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、CD40LおよびTNFの非切断性膜結合キメラ型を発現することができる。例えば、いくつかの実施態様にしたがえば、TNF分子のリガンド結合部分はCD40Lのトランスメンブレンドメインおよび近位の細胞外ドメインと融合されて、TNFは規定のTNFアルファ切断酵素(TACE)部位を欠くことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、CD40Lの細胞内部分、トランスメンブレン部分、および部分的細胞外部分は、TACE切断部位にとって遠位のTNF細胞外領域と融合され得る。いくつかの実施態様にしたがえば、CD40L/TNFのキメラ型は、配列番号:9のCD40L配列および配列番号:10のTNF配列を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、CD40L/TNF配列は、長さが1から30のアミノ酸の連結ペプチドにより作動できるように連結される。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:9および配列番号:10のタンパク質に対して少なくとも60%の配列同一性を有する融合タンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:9および配列番号:10のタンパク質に対して少なくとも70%の配列同一性を有する融合タンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:9および配列番号:10のタンパク質に対して少なくとも80%の配列同一性を有する融合タンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:9および配列番号:10のタンパク質に対して少なくとも90%の配列同一性を有する融合タンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:9および配列番号:10のタンパク質に対して少なくとも95%の配列同一性を有する融合タンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:9および配列番号:10のタンパク質に対して少なくとも96%の配列同一性を有する融合タンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:9および配列番号:10のタンパク質に対して少なくとも97%の配列同一性を有する融合タンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:9および配列番号:10のタンパク質に対して少なくとも98%の配列同一性を有する融合タンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:9および配列番号:10のタンパク質に対して少なくとも99%の配列同一性を有する融合タンパク質を含むことができる。
【0223】
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:11のタンパク質と少なくとも60%の配列同一性を有するTNFの非切断性膜結合型を発現することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:11のタンパク質と少なくとも70%の配列同一性を有するTNFの非切断性膜結合型を発現することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:11のタンパク質と少なくとも80%の配列同一性を有するTNFの非切断性膜結合型を発現することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:11のタンパク質と少なくとも90%の配列同一性を有するTNFの非切断性膜結合型を発現することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:11のタンパク質と少なくとも95%の配列同一性を有するTNFの非切断性膜結合型を発現することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:11のタンパク質と少なくとも96%の配列同一性を有するTNFの非切断性膜結合型を発現することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:11のタンパク質と少なくとも97%の配列同一性を有するTNFの非切断性膜結合型を発現することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:11のタンパク質と少なくとも98%の配列同一性を有するTNFの非切断性膜結合型を発現することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:11のタンパク質と少なくとも99%の配列同一性を有するTNFの非切断性膜結合型を発現することができる。
【0224】
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、CD40LおよびTNFの非切断性膜結合キメラ型を発現することができる。例えば、いくつかの実施態様にしたがえば、TNF分子のリガンド部分はCD40Lの細胞外部分と融合され得る。この場合、CD40Lは非切断性である細胞外部分を含み、TNFは既定のTACE部位(例えばアミノ酸76および77の間の切断部位)を欠く。いくつかの実施態様にしたがえば、CD40Lペプチド配列のいくらかまたは全部が、TACE切断部位に対して遠位であるTNFペプチド配列の細胞外領域と融合される。いくつかの実施態様にしたがえば、CD40L/TNFのキメラ型は配列番号:31の配列を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:31のタンパク質に対して少なくとも60%の配列同一性を有する融合タンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:31のタンパク質に対して少なくとも70%の配列同一性を有する融合タンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:31のタンパク質に対して少なくとも80%の配列同一性を有する融合タンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:31のタンパク質に対して少なくとも90%の配列同一性を有する融合タンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:31のタンパク質に対して少なくとも95%の配列同一性を有する融合タンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:31のタンパク質に対して少なくとも96%の配列同一性を有する融合タンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:31のタンパク質に対して少なくとも97%の配列同一性を有する融合タンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:31のタンパク質に対して少なくとも98%の配列同一性を有する融合タンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:31のタンパク質に対して少なくとも99%の配列同一性を有する融合タンパク質を含むことができる。
【0225】
顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)
顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF;コロニー刺激因子2;CSF-2)は、単球/マクロファージおよび活性化T細胞で見出され、増殖因子として機能して樹状細胞を刺激および補充する。GM-CSFはモノマー性糖タンパク質であり、免疫系の細胞とともに内皮細胞および線維芽細胞によって分泌される。ヒトGM-CSFは144アミノ酸のタンパク質で17アミノ酸のシグナルペプチドを含む。前記シグナルペプチドは切断されて127アミノ酸の成熟タンパク質を生じる。GM-CSFの生物学的活性は、単球、マクロファージ、顆粒球、リンパ球、内皮細胞、および肺胞上皮細胞上で発現されるヘテロマー性細胞表面受容体との結合を介して生じる。GM-CSF受容体(GM-CSFR)の発現は典型的には低いが(例えば20-200/細胞)、高い親和性を有する(Shi Y et al., Granulocyte-macrophage colony-stimulating factor (GM-CSF) and T-cell responses: what we do and don't know, Cell Research (2006) 16: 126-133)。
【0226】
いくつかのマウスモデルでは、GM-CSFを分泌する同系マウスメラノーマ細胞を用いたワクチン接種は、他のサイトカインによって生成されたワクチンよりも強力で長期持続性の抗腫瘍免疫を刺激する。アジュバント療法として可溶性GM-CSFで処置されたメラノーマ患者は、コントロールと比較して無疾患生存の延長を示した。GM-CSFは多様な態様で免疫アジュバントとして用いられてきた。前記には以下が含まれる(ただしそれらに限定されない):可溶性GM-CSF、GM-CSF融合タンパク質の全身および局所適用;腫瘍細胞へのGM-CSFのトランスフェクション;およびGM-CSF DNAの注射。組換えGM-CSFは、多様なペプチド、タンパク質およびウイルスワクチンのためにアジュバントとして用いられ、メラノーマ、乳癌および卵巣癌の患者で有効なアジュバントであることが示されている。GM-CSFを含む融合タンパク質もまた抗原の免疫原性を強化することが示された。GM-CSFは遺伝子療法アプローチでの使用について試験された(前記では同種異系および自己のGM-CSF発現細胞がワクチンとして用いられる)(Kaufman and Wolchok eds., General Principles of Tumor Immunotherapy, Chpt 5, 67-121, 2007)。そのようなワクチンは、いくつかの異なる癌タイプで変動する有効性の程度を示した。
【0227】
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は配列番号:13のGM-CSFペプチドを発現することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:13のタンパク質に対して少なくとも60%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:13のタンパク質に対して少なくとも70%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:13のタンパク質に対して少なくとも80%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:13のタンパク質に対して少なくとも90%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:13のタンパク質に対して少なくとも95%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:13のタンパク質に対して少なくとも96%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:13のタンパク質に対して少なくとも97%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:13のタンパク質に対して少なくとも98%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:13のタンパク質に対して少なくとも99%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。
【0228】
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、膜発現を可能にするためにGM-CSFとHLA-Iとの間に融合物を含む1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:42または配列番号:5のタンパク質に対して少なくとも60%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:42または配列番号:5のタンパク質に対して少なくとも70%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:42または配列番号:5のタンパク質に対して少なくとも80%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:42または配列番号:5のタンパク質に対して少なくとも90%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:42または配列番号:5のタンパク質に対して少なくとも95%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:42または配列番号:5のタンパク質に対して少なくとも96%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:42または配列番号:5のタンパク質に対して少なくとも97%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:42または配列番号:5のタンパク質に対して少なくとも98%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:42または配列番号:5のタンパク質に対して少なくとも99%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。
【0229】
Fms様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt-3L)
ヒトFlt3Lタンパク質は、FLT3LG遺伝子によってコードされる膜結合造血性4ヘリックス束サイトカインである。Flt3Lは、多様な血液細胞の前駆細胞の分裂増殖および分化を刺激する増殖因子として機能し、樹状細胞の産生および発達に極めて重要である。Flt3Lを欠くマウスは低レベルの樹状細胞を有し、一方、マウスまたは人間へのFlt3Lの投与は高レベルの樹状細胞を生じる(Shortman et al., Steady-state and inflammatory dendritic-cell development, Nature Reviews Immunology, Vol.7.19-30, 2007)。
【0230】
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は配列番号:14のFlt3Lペプチドを発現する。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:14のタンパク質に対して少なくとも60%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:14のタンパク質に対して少なくとも70%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:14のタンパク質に対して少なくとも80%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:14のタンパク質に対して少なくとも90%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:14のタンパク質に対して少なくとも95%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:14のタンパク質に対して少なくとも96%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:14のタンパク質に対して少なくとも97%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:14のタンパク質に対して少なくとも98%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:14のタンパク質に対して少なくとも99%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。
【0231】
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種はFlt3Lの可溶型を含む。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:44のタンパク質に対して少なくとも60%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:44のタンパク質に対して少なくとも70%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:44のタンパク質に対して少なくとも80%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:44のタンパク質に対して少なくとも90%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:44のタンパク質に対して少なくとも95%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:44のタンパク質に対して少なくとも96%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:44のタンパク質に対して少なくとも97%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:44のタンパク質に対して少なくとも98%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は、配列番号:44のタンパク質に対して少なくとも99%の配列同一性を有する1つ以上のタンパク質を含むことができる。
【0232】
ベクターおよび宿主細胞
当該記載の発明は、原核細胞および真核細胞で発現され得る2つ以上の免疫調整因子をコードする核酸構築物を提供する。例えば、当該記載の発明は、2つ以上の免疫調整因子をコードするヌクレオチド配列を含む、発現ベクター(例えばDNAまたはRNA系ベクター)を提供する。加えて、当該記載の発明は、本明細書に記載のベクターを作製する方法とともに、当該コードポリペプチドの発現のために当該ベクターを適切な宿主細胞に導入する方法を提供する。概して、本明細書で提供する方法は、2つ以上の免疫調整因子をコードする核酸配列を構築する工程、および発現ベクターで当該配列をクローニングする工程を含む。発現ベクターは宿主細胞に導入されるか、またはウイルス粒子に取り込まれ、前記のどちらかを例えば癌の治療のために対象動物に投与することができる。
【0233】
2つ以上の免疫調整因子をコードするcDNAまたはDNA配列は、通常的なDNAクローニングおよび変異誘導方法、DNA増幅方法、および/または合成方法を用いて入手(および所望の場合は改変)することができる。概して、2つ以上の免疫調整因子をコードする配列は、発現の前に遺伝的改変および複製目的でクローニングベクターに挿入できる。各コード配列は、in vitroおよびin vivoでコードタンパク質を適切な宿主細胞で発現させるために、調節エレメント(例えばプロモーター)に作動できるように連結され得る。
【0234】
発現ベクターは、分泌免疫調整因子生成のために宿主細胞に導入することができる。生細胞への核酸導入のために利用可能な種々の技術が存在する。哺乳動物細胞に核酸をin vitroで移すために適切な技術には、リポソームの使用、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、ポリマーに基づく系、DEAE-デキストラン、ウイルストランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿法などが含まれる。遺伝子in vivo移転のためには、多数の技術および試薬がまた使用可能であり(リポソーム、天然ポリマーに基づくデリバリーベヒクル(例えばキトサンおよびゼラチン)が含まれる)、ウイルスベクターもまたin vivo形質導入のために適切である。いくつかの状況では、標的誘導薬剤(例えば細胞表面膜タンパク質に特異的な抗体またはリガンド)の提供が所望される。リポソームが利用される場合は、エンドサイトーシス関連の細胞表面膜タンパク質と結合するタンパク質を標的誘導および/または取り込み促進のために用いることができる。前記タンパク質は例えば以下である:特定の細胞タイプに向かうキャプシドタンパク質またはそのフラグメント、循環中に内在化を受けるタンパク質に対する抗体、細胞内局在を標的とし細胞内寿命を強化するタンパク質。受容体媒介エンドサイトーシスの技術は例えばWuらによって記載されている:Wu et al., J.Biol.Chem.262, 4429-4432 (1987); and Wagner et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87, 3410-3414, 1990。
【0235】
適切な場合には、遺伝子デリバリー薬剤(例えば組込み配列)もまた用いることができる。多数の組込み配列が当業界で知られている(例えば以下を参照されたい:Nunes-Duby et al., Nucleic Acids Res.26:391-406, 1998;Sadwoski, J.Bacteriol., 165:341-357, 1986;Bestor, Cell, 122(3):322-325, 2005;Plasterk et al., TIG 15:326-332, 1999;Kootstra et al., Ann.Rev.Pharm.Toxicol., 43:413-439, 2003)。前記にはリコンビナーゼおよびトランスポザーゼが含まれる。例には以下が含まれる:Cre(Sternberg and Hamilton, J.Mol.Biol., 150:467-486, 1981)、ラムダ(Nash, Nature, 247, 543-545, 1974)、FIp(Broach, et al., Cell, 29:227-234, 1982)、R(Matsuzaki, et al., J.Bacteriology, 172:610-618, 1990)、cpC31(例えば以下を参照されたい:Groth et al., J.Mol.Biol.335:667-678, 2004)、スリーピングビューティー(マリナーファミリーのトランスポザーゼ)(Plasterk et al., 前掲書)、並びにウイルス(例えばAAV(レトロウイルス))を組み込むための成分、およびウイルス組込みを提供する成分を有するアンチウイルス、例えばレトロウイルスまたはレンチウイルスのLTR配列およびAAVのITR配列(Kootstra et al., Ann.Rev.Pharm.Toxicol., 43:413-439, 2003)。
【0236】
細胞は例えばin vitroで培養されるか、または遺伝的に操作され得る。宿主細胞は正常対象動物または罹患対象動物(健康な人間、癌患者を含む)、私的研究機関のデポジット、公的培養集積所(例えば米国培養細胞系統保存機関)、または市場の供給業者から入手できる。
【0237】
2つ以上の免疫調整因子のin vivoでの生成および分泌に用いることができる細胞には以下が含まれる(ただしそれらに限定されない):上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、筋肉細胞、肝細胞;血液細胞、例えばTリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核細胞、または顆粒球、多様な幹細胞若しくは前駆細胞、例えば造血幹細胞若しくは前駆細胞(例えば骨髄、臍帯血、末梢血、胎児肝臓などから得られる)、および腫瘍細胞(例えばヒト腫瘍細胞)。細胞タイプの選択は治療または予防される腫瘍または感染性疾患のタイプに左右され、当業者が決定することができる。
【0238】
種々の宿主細胞が、翻訳後プロセッシングおよびタンパク質改変のための特徴的および特異的メカニズムを有する。レシピエントがその熱ショックタンパク質(hsp)をプロセッシングする仕方に類似する特異的態様で発現遺伝子生成物を改変しプロセッシングする宿主細胞を選択することができる。
【0239】
いくつかの実施態様では、本明細書で提供する発現構築物は抗原性細胞に導入することができる。本明細書で用いられるように、抗原性細胞は、発癌性感染性因子(例えばウイルス)に感染するがまだ腫瘍性ではない前腫瘍性細胞、または、例えば変異原または発癌性因子(例えばDNA損傷因子または放射線)に暴露された抗原性細胞を含むことができる。用いることができる他の細胞は、形態学または生理学的若しくは生化学的機能によって特徴づけられる正常から腫瘍性形態への移行期にある前腫瘍性細胞である。
【0240】
本明細書で提供する方法で用いられる癌細胞及び前腫瘍性細胞は典型的には哺乳動物起原である。いくつかの実施態様では、癌細胞(例えばヒト腫瘍細胞)を本明細書に記載する方法で用いることができる。前腫瘍性病巣、癌組織または癌細胞に由来する細胞株もまた用いることができる。癌組織、癌細胞、発癌性因子感染細胞、他の前腫瘍性細胞、およびヒト起源の細胞株を用いることができる。いくつかの実施態様では、癌細胞は樹立された腫瘍細胞株に由来することができる。前記は例えば、樹立された非小細胞肺癌(NSCLC)、膀胱癌、メラノーマ、卵巣癌、腎細胞癌、前立腺癌、肉腫、乳癌、扁平上皮細胞癌、頭頸部癌腫、肝細胞癌腫、膵臓癌腫、または結腸癌の細胞株であるが、ただしこれらに限定されない。
親細胞株は上記に記載されている。
【0241】
さらにまた、いくつかの実施態様では、同種異系腫瘍細胞ワクチンは、本明細書に記載する多様な方法で用いられるとき、問題の疾患に対してさらにまた患者の免疫系を活性化させるアジュバント効果を提供する。
【0242】
原核細胞ベクターおよび真核細胞ベクターの両方を、2つ以上の免疫調整因子の発現のために本明細書で提供する方法で用いることができる。原核細胞ベクターには大腸菌(E.coli)配列に基づく構築物が含まれる(例えば以下を参照されたい:Makrides, Microbiol Rev 1996, 60:512-538)。大腸菌での発現で用いることができる調節領域の非限定的な例にはlac、trp、1pp、phoA、recA、tac、T3、T7およびlamda PLが含まれる。原核細胞発現ベクターの非限定的な例には、Agtベクターシリーズ(例えばラムダgt11)(Huynh et al., in "DNA Cloning Techniques, Vol.I: A Practical Approach," 1984, (D.Glover, ed.), pp.49-78, IRL Press, Oxford)およびpETベクターシリーズ(Studier et al., Methods Enzymol 1990, 185:60-89)が含まれ得る。
【0243】
同種異系腫瘍ワクチンの哺乳動物宿主細胞での発現のために多様な調節領域を用いることができる。例えば、SV40初期および後期プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、並びにラウス肉腫ウイルスの長末端リピート(RSV-LTR)プロモーターを用いることができる。哺乳動物細胞で有用であり得る誘導性プロモーターには、メタロチオネインII遺伝子、マウス乳房腫瘍ウイルスグルココルチコイド応答性長末端リピート(MMTV-LTR)、n-インターフェロン遺伝子、およびhsp70遺伝子に関連するプロモーターが含まれるが、ただしこれらに限定されない(以下を参照されたい:Williams et al., Cancer Res 1989, 49:2735-42;およびTaylor et al., Mol Cell Biol 1990, 10:165-75)。熱ショックプロモーターまたはストレスプロモーターもまた、組換え宿主細胞で融合タンパク質の発現を駆動するために有利であり得る。
【0244】
組織特異性を示し、トランスジェニック動物で利用されている動物調節領域もまた特定の組織タイプの腫瘍細胞で用いることができる。エラスターゼI遺伝子制御領域は膵腺房細胞で活性である(Swift et al., Cell 1984, 38:639-646; Ornitz et al., Cold Spring Harbor Symp Quant Biol 1986, 50:399-409;およびMacDonald, Hepatology 1987, 7:425-515)。インスリン遺伝子制御領域は膵ベータ細胞で活性である(Hanahan, Nature 1985, 315:115-122)。免疫グロブリン遺伝子制御領域はリンパ系細胞で活性である(Grosschedl et al., Cell 1984, 38:647-658;Adames et al., Nature 1985, 318:533-538;Alexander et al., Mol Cell Biol 1987, 7:1436-1444)。マウス乳房腫瘍ウイルス制御領域は精巣、乳房、リンパ系および肥満細胞で活性である(Leder et al., Cell 1986, 45:485-495)。アルブミン遺伝子制御領域は肝臓で活性である(Pinkert et al., Genes Devel, 1987, 1:268-276)。アルファ-フェトプロテイン遺伝子制御領域は肝臓で活性である(Krumlauf et al., Mol Cell Biol 1985, 5:1639-1648;およびHammer et al., Science 1987, 235:53-58)。アルファ1-アンチトリプシン遺伝子制御領域は肝臓で活性である(Kelsey et al., Genes Devel 1987, 1:161-171)。ベータ-グロビン遺伝子制御領域は骨髄系細胞で活性である(Mogram et al., Nature 1985, 315:338-340;およびKollias et al., Cell 1986, 46:89-94)。ミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域は脳の希突起膠細胞で活性である(Readhead et al., Cell 1987, 48:703-712)。ミオシン軽鎖-2遺伝子制御領域は骨格筋で活性である(Sani, Nature 1985, 314:283-286)。性腺刺激放出性ホルモン遺伝子制御領域は視床下部で活性である(Mason et al., Science 1986, 234:1372-1378)。
【0245】
発現ベクターはまた転写エンハンサーエレメントを含むことができ、前記エレメントは、例えばSV40ウイルス、肝炎Bウイルス、サイトメガロウイルス、免疫グロブリン遺伝子、メタロチオネイン、およびベータ-アクチンで見出されるものである(以下を参照されたい:Bittner et al., Meth Enzymol 1987, 153:516-544;およびGorman, Curr Op Biotechnol 1990, 1:36-47)。加えて、発現ベクターは、宿主細胞の1つ以上のタイプで当該ベクターの維持および複製を可能にする、または宿主染色体への当該ベクターの組込みを可能にする配列を含むことができる。そのような配列には、複製起点、自律複製配列(ARS)、セントロメアDNA、およびテロメアDNAが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0246】
加えて、発現ベクターは、本明細書に記載の免疫原性タンパク質をコードするDNAを含む宿主細胞をまず初めに単離、確認、または追跡するために、1つ以上の選別可能なまたはスクリーニング可能なマーカーを含むことができる。長期にわたる、哺乳動物細胞のgp96-IgおよびT細胞共同刺激性融合タンパク質の高収量産生、安定な発現は有用であり得る。多数の選別系を哺乳動物細胞のために用いることができる。例えば、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler et al., Cell 1977, 11:223)、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalski and Szybalski, Proc Natl Acad Sci USA 1962, 48:2026)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al., Cell 1980, 22:817)遺伝子をtk-、hgprf-、またはaprf-細胞でそれぞれ利用することができる。加えて、代謝拮抗剤耐性を以下のための選別の基礎として用いることができる:メトトレキセート耐性を付与するジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)(Wigler et al., Proc Natl Acad Sci USA 1980, 77:3567;O'Hare et al., Proc Natl Acad Sci USA 1981, 78:1527);ミコフェノール酸耐性を付与するgpt(Mulligan and Berg, Proc Natl Acad Sci USA 1981, 78:2072);アミノグリコシドG-148耐性を付与するネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)(Colberre-Garapin et al., J Mol Biol 1981, 150:1);およびヒグロマイシン耐性を付与するヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(hyg)(Santerre et al., Gene 1984, 30:147)。他の選別可能マーカー(例えばヒスチジノールおよびZeocinTM)もまた用いることができる。
【0247】
同種異系腫瘍細胞ワクチンを作製するために、多数のウイルス性発現系がまた哺乳動物細胞とともに用いられ得る。DNAウイルス支柱を用いるベクターが、シミアンウイルス40(SV40)(Hamer et al., Cell 1979, 17:725)、アデノウイルス(Van Doren et al., Mol Cell Biol 1984, 4:1653)、アデノ関連ウイルス(McLaughlin et al., J Virol 1988, 62:1963)、およびウシパピローマウイルス(Zinn et al., Proc Natl Acad Sci USA 1982, 79:4897)から誘導されている。アデノウイルスを発現ベクターとして用いるとき、ドナーDNA配列は、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体(例えば後期プロモーターおよび三者間リーダー配列)に連結することができる。続いて、この融合遺伝子をin vitroまたはin vivo組換えによってアデノウイルスゲノムに挿入することができる。ウイルスゲノムの非必須領域(例えばE1またはE3領域)への挿入は、感染細胞で生存能力を有し異種生成物を発現できる組換えウイルスを生じることができる(例えば以下を参照されたい:Logan and Shenk, Proc Natl Acad Sci USA 1984, 81:3655-3659)。
【0248】
ウシパピローマウイルス(BPV)は多くの高等脊椎動物(ヒトを含む)に感染することができ、そのDNAはエピソームとして複製する。多数のシャトルベクターが組換え遺伝子発現のために開発されてきた。前記ベクターは、哺乳動物細胞で安定なマルチコピー(20-300コピー/細胞)染色体外エレメントとして存在する。典型的には、これらのベクターは、BPV DNAのセグメント(完全なゲノムまたは69%形質転換フラグメント)、広い宿主域を有するプロモーター、ポリアデニル化シグナル、スプライスシグナル、選別可能マーカー、および大腸菌でのベクターの増殖を可能にする“無害な”プラスミド配列を含む。構築および細菌での増殖に続いて、発現遺伝子構築物を、例えばリン酸カルシウム沈殿によって哺乳動物細胞培養にトランスフェクトする。形質転換表現型を示さない宿主細胞のために、優性選別マーカー(例えばヒスチジノールおよびG418耐性)の使用によって形質転換体の選別を達成する。
【0249】
また別に、ワクシニア7.5Kプロモーターを用いることができる(例えば以下を参照されたい:Mackett et al., Proc Natl Acad Sci USA 1982, 79:7415-7419;Mackett et al., J Virol 1984, 49:857-864;およびPanicali et al., Proc Natl Acad Sci USA 1982, 79:4927-4931)。ヒトの宿主細胞を用いる事例では、エプスタイン-バーウイルス(EBV)起点(OriP)およびEBV核抗原1(EBNA-1;トランス作動性複性因子)を用いることができる。そのようなベクターは、広域ヒト宿主細胞、例えばEBO-pCD(Spickofsky et al., DNA Prot Eng Tech 1990, 2:14-18)、pDR2およびラムダDR2(クロンテック社(Clontech Laboratories)から入手できる)とともに用いることができる。
【0250】
同種異系腫瘍細胞ワクチンはまた、レトロウイルス性発現系を用いて作製することができる。レトロウイルス(例えばモロニーネズミ白血病ウイルス)が、そのウイルス遺伝子配列の大半を除去して外因性コード配列で置き替え、一方、消失ウイルス機能をトランス状態で供給できるという理由で用いられ得る。トランスフェクションとは対照的に、レトロウイルスは効率的に広域な細胞タイプ(例えば初期造血細胞)に感染して遺伝子を移転させることができる。さらにまた、レトロウイルスベクターによる感染宿主域は、ベクターパッケージに用いられるエンベロープを選択することによって操作することができる。
【0251】
例えばレトロウイルスベクターは、5’長末端リピート(LTR)および3’LTR、パッケージングシグナル、細菌の複製起点、および選別可能マーカーを含むことができる。例えば、gp96-Ig融合タンパク質コード配列を5’LTRと3’LTRとの間の位置に挿入して、5’LTRプロモーターからクローン化DNAを転写できるようにする。5’LTRは、プロモーター(例えばLTRプロモーター)、R領域、U5領域、およびプライマー結合部位を当該順序で含む。これらのLTRエレメントのヌクレオチド配列は当業界では周知である。異種プロモーターを多剤選別マーカーとともに発現ベクターに加えて、感染細胞の選別を容易にすることができる。以下を参照されたい:McLauchlin et al., Prog Nucleic Acid Res Mol Biol 1990, 38:91-135;Morgenstern et al., Nucleic Acid Res 1990, 18:3587-3596;Choulika et al., J Virol 1996, 70:1792-1798;Boesen et al., Biotherapy 1994, 6:291-302;Salmons and Gunzberg, Human Gene Ther 1993, 4:129-141;およびGrossman and Wilson, Curr Opin Genet Devel 1993, 3:110-114。
【0252】
本明細書に記載するクローニングおよび発現ベクターのいずれも、当業界で公知の技術を用いて公知のDNA配列から合成し組み立てることができる。調節領域およびエンハンサーエレメントは多様な起原(天然および合成の両方)であり得る。いくつかのベクターおよび宿主細胞は市場で入手できる。有用なベクターの非限定的な例は以下に記載されている:Appendix 5 of Current Protocols in Molecular Biology, 1988, ed.Ausubel et al., Greene Publish.Assoc.& Wiley Interscience(前記は参照によってその全体が本明細書に含まれる)および市場の供給業者(例えばクロンテック社(Clontech Laboratories)、ストラタジーン社(Stratagene Inc.)およびインビトロゲン社(Invitrogen, Inc.))のカタログ。
【0253】
組換え免疫調整因子
いくつかの実施態様にしたがえば、2つ以上の免疫調整因子をプラスミド構築物でクローニングすることができる。前記プラスミドは、腫瘍細胞株の細胞のトランスフェクションのために(例えば脂質、リン酸カルシウム、陽イオンポリマー、DEAE-デキストラン、活性化デンドリマー、磁性ビーズ、エレクトロポレーション、バイオリスティック技術、マイクロインジェクション、レーザーフェクション/オプトインジェクションによる)、または形質導入のために(例えばレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルスによる)用いられる。いくつかの実施態様にしたがえば、各免疫調整因子タンパク質をコードする組換えDNAはレンチウイルスベクタープラスミドでクローニングすることができ、前記プラスミドは腫瘍細胞株の細胞のゲノムに組み込まれる。いくつかの実施態様にしたがえば、免疫調整因子タンパク質をコードする組換えDNAは、選別可能な形質(例えば抗生物質耐性遺伝子)をコードするプラスミドDNA構築物でクローニングすることができる。いくつかの実施態様にしたがえば、免疫調整因子タンパク質をコードする組換えDNAは、各組換えタンパク質を腫瘍細胞株の細胞で安定的に発現するために適切なプラスミド構築物でクローニングすることができる。いくつかの実施態様にしたがえば、トランスフェクトされたまたは形質導入された腫瘍細胞はクローンとして拡張され、腫瘍細胞株の細胞のゲノムへの各免疫調整因子タンパク質コード組換えDNAの均質な組込み部位を有する細胞株変種が得られる。
【0254】
レンチウイルス構築物
いくつかの実施態様にしたがえば、免疫調整因子タンパク質をコードするDNA配列を、哺乳動物細胞の形質導入のためにレンチウイルスベクターでクローニングすることができる。いくつかの実施態様にしたがえば、レンチウイルス系は、2つ以上の免疫調整因子配列をコードするレンチウイルストランスファープラスミド、GAG、POL、TATおよびREV配列をコードするパッケージングプラスミド、およびENV配列をコードするエンベローププラスミドを含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、レンチウイルストランスファープラスミドは、遺伝子発現のためにウイルスLTRプロモーターを用いる。いくつかの実施態様にしたがえば、レンチウイルストランスファープラスミドは、ハイブリッドプロモーターまたは他の特殊化プロモーターを用いる。いくつかの実施態様にしたがえば、レンチウイルストランスファープラスミドのプロモーターは、2つ以上の免疫調整因子配列を他の免疫調整因子配列と比較して所望のレベルで発現するために選択される。いくつかの実施態様にしたがえば、相対的レベルはmRNA転写物として転写レベルで測定される。いくつかの実施態様にしたがえば、相対的レベルはタンパク質発現として翻訳レベルで測定される。
【0255】
マルチシストロン性プラスミド構築物
いくつかの実施態様にしたがえば、1つ以上の免疫調整因子配列は、1つの免疫調整因子と第二の免疫調整因子または他の組換え配列との共同発現のためにマルチシストロンベクターでクローニングすることができる。いくつかの実施態様にしたがえば、免疫調整因子配列をIRESエレメントを含むプラスミドでクローニングして、単一転写物から2つ以上のタンパク質の翻訳を容易にすることができる。いくつかの実施態様にしたがえば、1つ以上の免疫調整因子配列を自己切断2Aペプチドのための配列を含むマルチシストロン性ベクターでクローニングして、単一転写物から2つ以上の免疫調整因子タンパク質を生成する。
【0256】
免疫調整因子の遺伝的導入
いくつかの実施態様にしたがえば、組換え免疫調整因子配列を含むプラスミド構築物は腫瘍細胞にトランスフェクトまたは形質導入することができる。
【0257】
レンチウイルス系
いくつかの実施態様にしたがえば、レンチウイルス系を利用することができ、この場合、免疫調整因子配列を含むトランスファーベクター、エンベロープベクターおよびパッケージングベクターがウイルス生成のために各々宿主細胞にトランスフェクトされる。いくつかの実施態様にしたがえば、レンチウイルスベクターを、リン酸カルシウム沈殿トランスフェクション、脂質系トランスフェクション、またはエレクトロポレーションのいずれかによって293T細胞にトランスフェクトし、一晩インキュベートすることがる。免疫調整因子配列が蛍光レポーターを伴い得る実施態様では、一晩インキュベートした後で293T細胞を蛍光で精査してチェックすることができる。ウイルス粒子を含む293T細胞の培養液を8-12時間毎に2または3回採集し、遠心分離して剥離細胞およびデブリを沈殿させることができる。
【0258】
腫瘍細胞株は、標準的な組織培養条件下で約70%のコンフルエンシーに増殖させることができる。続いて細胞を臭化ヘキサジメトリンで処理し(細胞の形質導入を強化するため)、組換え構築物を含むレンチウイルスを新しい培地に置き、18-20時間インキュベートし、その後培地交換を実施することができる。
【0259】
脂質系トランスフェクション
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株の細胞に、脂質系トランスフェクションの方法を用いて免疫調整因子配列をトランスフェクトすることができる。いくつかの実施態様にしたがえば、確立された脂質系トランスフェクション試薬(例えばLIPOFECTAMINE)を用いることができる。腫瘍細胞株を組織培養容器で70-90%コンフルエンスまで増殖させることができる。適切な量のリポフェクタミン(商標)(Lipofectamine(商標))および免疫調整因子配列を含むプラスミド構築物を別々に組織培養培地で希釈し、室温で短時間インキュベートすることができる。希釈リポフェクタミン(商標)および培地中のプラスミド構築物を一緒に混合し、室温で短時間インキュベートすることができる。続いて、プラスミドLIPOFECTAMINE混合物を腫瘍細胞株の細胞に組織培養容器中で添加し、標準的な組織培養条件下で1-3日間インキュベートすることができる。
【0260】
発現クローンの選別
いくつかの実施態様にしたがえば、免疫調整因子配列をトランスフェクトした腫瘍細胞株の腫瘍細胞を種々の発現レベルについて選別することができる。
【0261】
いくつかの実施態様にしたがえば、免疫調整因子配列は抗生物質耐性遺伝子を伴うことができる。前記耐性遺伝子を用いて、免疫調整因子配列をコードする組換えDNAが安定的に組み込まれたクローンを選別することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、免疫調整因子配列は、抗生物質耐性遺伝子(例えばネオマイシン/カナマイシン耐性遺伝子)を含むプラスミド構築物でクローニングすることができる。トランスフェクトした細胞を、製造業者のプロトコルにしたがって抗生物質で1-2週間以上毎日培地を変えながら処理する。抗生物質処理中の数時点で、抗生物質耐性遺伝子が安定的に組み込まれていない全ての細胞で大量の腫瘍細胞死があり、安定的発現クローンの小さなコロニーが残る。安定的発現クローンの各々を採取し、別々の組織培養容器で培養し、任意の確立方法によって(例えばウェスタンブロット、フローサイトメトリーおよび蛍光顕微鏡法)、免疫調整因子配列の発現レベルについて試験することができる。
【0262】
いくつかの実施態様にしたがえば、トランスフェクトした腫瘍細胞を蛍光活性化細胞分類(FACS)によって免疫調整因子の高発現について選別することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、免疫調整因子配列は1つ以上の蛍光タンパク質(例えばGFP)を伴うことができる。前記タンパク質を用いて免疫調整因子の発現を定量することができる。例えば、GFP配列にIRES配列を介して連結された免疫調整因子を含む二シストロン性プラスミドは、同じ転写物から免疫調整因子およびGFPタンパク質の両方を生じよう。したがってGFP発現レベルは、免疫調整因子の発現レベルの代用として機能しよう。免疫調整因子/GFPトランスフェクト腫瘍細胞の単独細胞懸濁物を、蛍光強度を基準にして所望のFACS発現レベルについて選別することができよう。これに関して任意の蛍光タンパク質を用いることができる。例えば、以下の組換え蛍光タンパク質のいずれかを用いることができる:EBFP、ECFP、EGFP、YFP、mHoneydew、mBanana、mOrange、tdTomato、mTangerine、mStrawberry、mCherry、mGrape、mRasberry、mGrape2、mPlum。
【0263】
また別には、組換え免疫調整因子の発現は、各免疫調整因子に特異的な、または各免疫調整因子上の操作タグに特異的な蛍光抗体によって直接観察してもよい。例えば、いくつかの実施態様にしたがえば、免疫調整因子配列の細胞外領域をFLAGタグまたはHAタグに融合させることができる。抗FLAGまたは抗HA抗体を一次抗体または二次抗体に結合させた蛍光色素と一緒に用いて、トランスフェクトした腫瘍細胞の表面で免疫調整因子の発現を検出することができる。所望のレベルの免疫調整因子を発現する腫瘍細胞をFACS分類によって選別し、別々に培養することができる。
【0264】
免疫原性潜在能力のためのクローンの試験
混合リンパ球腫瘍細胞反応性
いくつかの実施態様にしたがえば、遺伝的に導入された免疫調整因子は、それらの免疫原性潜在能力について、混合リンパ球腫瘍細胞反応(MLTR)によって査定され得る。MLTRアッセイは、混合リンパ球を腫瘍細胞株変種(またはコントロール)と数日インキュベートし、腫瘍細胞株変種の腫瘍細胞が混合リンパ球からin vitroで免疫応答を引き出すことを可能にする工程を含む。この方法は、腫瘍細胞または溶解物に対する混合リンパ球応答を査定する迅速なin vitro方法を提供することができる(前記混合リンパ球応答は、例えばリンパ球の細胞分裂増殖、リンパ球の細胞サブセット分化、リンパ球のサイトカイン放出プロフィール、および腫瘍細胞死である)。このアプローチは、ヒト末梢血単核細胞を用いて、表現型が改変されたトランスフェクト腫瘍細胞に対する細胞性、液性または両方の免疫応答の包括的モニタリングを可能にする。MLTRはまたネズミの腫瘍生存試験のためのまた別の選択肢を提供することができ、抗腫瘍応答のために最適な腫瘍細胞株変種の選別をもたらすことができる。同様なアッセイが以下に記載されている:Hunter TB et al., (2007) Scandanavian J.Immunology 65, 479-486(前記は参照によってその全体が本明細書に含まれる)。
【0265】
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は以下の工程によって免疫原性潜在能力について試験することができる:トランスフェクトした腫瘍細胞を末梢血単核細胞由来混合リンパ球と接触させる工程、続いて細胞の分裂増殖、細胞サブセットの分化、サイトカイン放出プロフィール、および腫瘍細胞溶解を測定する工程。
【0266】
いくつかの実施態様にしたがえば、混合リンパ球はフィコール-パーク(Ficoll-Paque)グラジエントによって単離した末梢血単核細胞から入手できる。簡単に記せば、抗凝固剤処理血液をPBS/EDTAで1:2から1:4の範囲で希釈し、赤血球の凝集を低下させることができる。続いて、希釈血液を遠心分離管中でフィコール-パーク溶液上に混合することなく重層することができる。重層した血液/フィコール-パークを400xgで40分間18℃から30℃で遠心分離し、遠心分離ブレーキを使用しないで最上部から底まで以下を含む血液分画を形成することができる:血漿を含む第一の分画;単核細胞を含む第二の分画;フィコール-パーク媒体を含む第三の分画;および顆粒球および赤血球を含む第四の分画。
【0267】
前記分画をさらにプロセッシングして特定の分画成分を単離することができる。例えば、単核細胞をさらにプロセッシングするために、フィコール-パークグラジエントから単核細胞を含む第二の分画をパスツールピペットを用いて注意深く取り出すことができる。また別には、針を用いてチューブを穿刺し第二の分画を直接引き出すことによって、第二の分画を直接取り出すことができる。続いて、300xg(18℃から20℃)で3回、PBS/EDTAを用い各ラウンドの後で上清を廃棄して、第二の分画を洗浄し遠心分離することができる。
【0268】
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種をリンパ球を含むPBMCとともに7日間共培養し、腫瘍細胞株変種の免疫調整因子の存在下での抗腫瘍応答の活性化の直接評価を可能にすることができる。
【0269】
いくつかの実施態様にしたがえば、リンパ球活性化を測定するために用いられる1つのパラメーターは細胞の分裂増殖であり得る。いくつかの実施態様にしたがえば、分裂増殖は3H-チミジン取り込みによって検出できる。簡単に記せば、約5x103の腫瘍細胞株変種細胞を約1x106の混合リンパ球とともに96ウェルの丸底プレートで共培養することができる。3日間の培養後に、細胞を1μCiの3H-チミジンで18時間パルスすることができる。続いて、細胞をフィルターマット上に採集し、3H-チミジン取り込みをシンチレーションカウンターを用いて測定することができる。トランスフェクトされていない腫瘍細胞コントロールと比較して腫瘍細胞株変種の分裂増殖を測定することができる。コントロールと比較して分裂増殖の増加、減少または無変化が可能な結果である。
【0270】
いくつかの実施態様にしたがえば、リンパ球活性化の測定のための別のパラメーターはサイトカイン放出プロフィールであり得る。例えば、混合リンパ球集団中の応答性T細胞の数を、PBMCによるIFN-ガンマおよび/またはIL-2産生の酵素結合免疫スポット(ELISpot)分析によって定量することができる。簡単に記せば、混合リンパ球を含むPBMCおよび腫瘍細胞株変種を3から7日間共培養することができる。続いて、共培養細胞を採集し、抗IFN-ガンマおよび/または抗IL-2抗体を予め被覆したELISpotプレートでインキュベートすることができる。20時間後、細胞を蒸留水で2回さらに洗浄緩衝液で2回洗浄することによって細胞を除去することができる。続いて、ELISpotプレートをビオチニル化抗IFN-γおよび/または抗IL-2抗体およびストレプトアビジンアルカリホスファターゼと封鎖緩衝液中で1-2時間接触させることができる。洗浄後、プレートをアルカリホスファターゼ基質と暗色スポットが出現するまで接触させることができる。続いて、プレートを水道水で洗浄し風乾することができる。続いて、スポットを手動でまたはプレートリーダーで定量し、トランスフェクトされていない腫瘍細胞株コントロールグループと比較する。
【0271】
いくつかの実施態様にしたがえば、リンパ球活性化を測定するための別のパラメーターは細胞サブセット分化の定量であり得る。例えば、CD45+/CD3+ Tリンパ球のCD45+/CD3+/CD4+ヘルパーTリンパ球、CD45+/CD3+/CD8+細胞傷害性Tリンパ球、およびCD45+/CD3+/CD25+活性化Tリンパ球への分化をフローサイトメトリー分析によって定量することができる。
【0272】
いくつかの実施態様にしたがえば、リンパ球活性化を測定するための別のパラメーターは腫瘍細胞細胞傷害性の定量であり得る。腫瘍細胞の細胞傷害性は多くの確立された方法のいずれかによって測定することができる。例えば、いくつかの実施態様にしたがえば、LDH-細胞傷害性比色アッセイキット(BioVision Cat.# K311-400)を用い、増殖培地に損傷細胞から放出される乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)について試験することによって腫瘍細胞の細胞傷害性を測定することができる。簡単に記せば、コントロールグループ(トランスフェクトされていない腫瘍細胞を含む)、実験グループ(免疫調整因子をトランスフェクトされた腫瘍細胞を含む)および培地単独から、それぞれの培地100μLを96ウェルプレートのウェルにピペットで添加することができる。続いて、100μLのLDH反応混合物(色素溶液および触媒溶液を含む)を96ウェルプレートのウェルに添加し、室温で30分間インキュベートすることができる。続いて、マイクロタイタープレートリーダーを用い、490-500nm光の吸収についてサンプルを測定することができる。
【0273】
新規構築物のクローンへの連続添加
いくつかの実施態様にしたがえば、1つ以上の免疫調整因子配列を発現する腫瘍細胞株変種に、追加の免疫調整因子を安定的発現のために連続的態様でトランスフェクトする。連続的態様で組換え免疫調整因子を次々と添加することによって、いくつかの免疫調整因子を同時に発現する腫瘍細胞株変種の細胞を作製することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、2つの免疫調整因子を同時に発現する腫瘍細胞株変種を作製することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、3つの免疫調整因子を同時に発現する腫瘍細胞株変種を作製することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、4つの免疫調整因子を同時に発現する腫瘍細胞株変種を作製することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、5つの免疫調整因子を同時に発現する腫瘍細胞株変種を作製することができる。
【0274】
可変的発現クローン
当該開示発明の1つの特徴にしたがえば、複数の組換え免疫調整因子ペプチドが、単一クローン由来の腫瘍細胞株変種で発現され得る。いくつかの実施態様にしたがえば、各細胞で発現される個々の免疫調整因子の各々の量(またはレベル)は、他の全ての免疫調整因子ペプチドの発現レベルと同じである。しかしながら、いくつかの実施態様にしたがえば、各細胞で発現される個々の免疫調整因子の各々のレベルは、当該細胞で発現される他の免疫調整因子の発現レベルと異なる。いくつかの実施態様にしたがえば、免疫調整因子の同じ片割れを発現するクローン由来腫瘍細胞株変種は、それら免疫調整因子を互いに対して様々な量で安定的に発現する。
【0275】
各クローン由来腫瘍細胞株変種内および腫瘍細胞株変種間における、発現される組換え免疫調整因子の相対量は、転写または翻訳レベルで測定できる。例えば、組換え免疫調整因子の相対量は、とりわけウェスタンブロット、RT-PCR、フローサイトメトリー、免疫蛍光、およびノザンブロットによって定量できる。
【0276】
いくつかの実施態様にしたがえば、発現される免疫調整因子量の互いに対する相違は、腫瘍細胞株変種のゲノムで多かれ少なかれ転写活性を有する領域へのランダムな組込みの結果であり得る。いくつかの実施態様にしたがえば、発現される免疫調整因子の量における相対的相違は、腫瘍細胞株変種を作製するために用いられるトランスフェクトまたは形質導入されるDNAの操作に用いられるエレメントによって達成され得る。
【0277】
例えば、いくつかの実施態様にしたがえば、免疫調整因子タンパク質の発現レベルは、より強いまたは弱い遺伝子プロモーター配列を操作して免疫調整因子遺伝子の発現を制御することによって転写レベルで達成することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、1つ以上の以下のプロモーターを用いて免疫調整因子の発現を制御することができる:シミアンウイルス40初期プロモーター(SV40)、サイトメガロウイルス最初期プロモーター(CMV)、ヒトユビキチンCプロモーター(UBC)、ヒト伸長因子1αプロモーター(EF1A)、マウスホスホグリセリン酸キナーゼ1プロモーター(PGK)、およびCMV初期エンハンサーと結合させたニワトリβ-アクチンプロモーター(CAGG)。
【0278】
いくつかの実施態様にしたがえば、免疫調整因子タンパク質の発現レベルは、免疫調整因子転写物の開始コドン周囲でより強いまたは弱いKozakコンセンサス配列を操作することによって翻訳レベルで達成できる。いくつかの実施態様にしたがえば、以下のヌクレオチド配列を提供して免疫調整因子の翻訳を制御できる:GCCGCC(A/G)CCAUGG(配列番号:15)。いくつかの実施態様にしたがえば、配列番号:15に対して少なくとも60%同一性である配列を提供して免疫調整因子の翻訳を制御できる。いくつかの実施態様にしたがえば、配列番号:15に対して少なくとも70%同一性である配列を提供して免疫調整因子の翻訳を制御できる。いくつかの実施態様にしたがえば、配列番号:15に対して少なくとも80%同一性である配列を提供して免疫調整因子の翻訳を制御できる。いくつかの実施態様にしたがえば、配列番号:15に対して少なくとも90%同一性である配列を提供して免疫調整因子の翻訳を制御できる。いくつかの実施態様にしたがえば、配列番号:15に対して少なくとも95%同一性である配列を提供して免疫調整因子の翻訳を制御できる。いくつかの実施態様にしたがえば、配列番号:15に対して少なくとも96%同一性である配列を提供して免疫調整因子の翻訳を制御できる。いくつかの実施態様にしたがえば、配列番号:15に対して少なくとも97%同一性である配列を提供して免疫調整因子の翻訳を制御できる。いくつかの実施態様にしたがえば、配列番号:15に対して少なくとも98%同一性である配列を提供して免疫調整因子の翻訳を制御できる。いくつかの実施態様にしたがえば、配列番号:15に対して少なくとも99%同一性である配列を提供して免疫調整因子の翻訳を制御できる。
【0279】
治療組成物
当該開示発明の別の特徴にしたがえば、免疫原性組成物は、ヒト免疫調整因子をコードする2つ以上の遺伝子を含む腫瘍細胞株変種のある量を含む。いくつかの実施態様にしたがえば、ヒト免疫調整因子を最大限に発現する腫瘍細胞株変種のクローンが識別および選別される。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種集団によるヒト免疫調整因子の発現はフローサイトメトリーによって決定される。いくつかの実施態様にしたがえば、フローサイトメトリーを用いて腫瘍細胞株変種の最大発現集団がゲート分類される。
【0280】
いくつかの実施態様にしたがえば、免疫原量は、1つ以上の腫瘍特異抗原に対する抗腫瘍免疫応答の刺激に有効であり得る。いくつかの実施態様にしたがえば、免疫原量を滴定して、安全性および有効性の両方を提供できる。
いくつかの実施態様にしたがえば、免疫原性組成物は医薬的に許容できる担体を含む。
いくつかの実施態様にしたがえば、免疫原性組成物はさらにまたアジュバントを含む。
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は樹立された細胞株に由来する腫瘍細胞を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は癌を有する患者に由来する腫瘍細胞を含み、ここで当該腫瘍細胞は固形腫瘍に由来する。
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は破壊された腫瘍細胞株変種の免疫原量を含む。物理的な破壊方法の例には以下が含まれる(ただしそれらに限定されない):音波破砕、キャビテーション、脱水、イオン喪失、または1つ以上の塩への暴露による毒性。
【0281】
いくつかの実施態様にしたがえば、免疫原性組成物の免疫原量は、少なくとも1x103の全または破壊腫瘍細胞株細胞を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、免疫原性組成物の当該量は、少なくとも1x104の全または破壊腫瘍細胞株細胞を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、免疫原性組成物の当該量は、少なくとも1x105の全または破壊腫瘍細胞株細胞を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、免疫原性組成物の当該量は、少なくとも1x106の全または破壊腫瘍細胞株細胞を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、免疫原性組成物の当該量は、少なくとも1x107の全または破壊腫瘍細胞株細胞を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、免疫原性組成物の当該量は、少なくとも1x108の全または破壊腫瘍細胞株細胞を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、免疫原性組成物の当該量は、少なくとも1x109の全または破壊腫瘍細胞株細胞を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、当該免疫原量は治療量であり得る。
【0282】
いくつかの実施態様にしたがえば、免疫原量は以下のために有効であり得る:(1)細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラー細胞、抗体、APC、T細胞、B細胞、および樹状細胞の1つ以上を含む有効な免疫応答を刺激する;および(2)適切なコントロールと比較したとき、対象動物における無増悪生存、無疾患生存、進行までの期間、離れた部位への転移までの期間、および全生存の1つ以上から選択される臨床的成果パラメーターを改善する。
【0283】
いくつかの実施態様にしたがえば、免疫原性組成物は、1週間に1回、1週間に2回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、1ヶ月に1回、2ヶ月毎に1回、3ヶ月毎に1回、4ヶ月毎に1回、5ヶ月毎に1回、6ヶ月毎に1回、7か月毎に1回、8ヶ月毎に1回、9か月毎に1回、10ヶ月毎に1回、11ヶ月毎に1回、または1年に1回投与することができる。いくつかの実施態様にしたがえば、投与は1日または、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、16日、17日、18日、19日、20日またはそれより長い間にわたって行われ得る。いくつかの実施態様にしたがえば、投与は同じ日に2回以上の投与を含むことができる。
【0284】
併用療法
いくつかの実施態様にしたがえば、当該開示は、さらにまた追加の薬剤を対象動物に投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施態様では、当該発明は共同投与および/または共同処方に関する。
【0285】
いくつかの実施態様では、当該免疫原性組成物の投与は、別の薬剤と共同投与されるとき相乗的に機能し、さらにそのような薬剤が単独療法として用いられるときに一般的に用いられる用量よりも低い用量で投与される。
【0286】
いくつかの実施態様では、癌への適用(ただし前記に限定されない)を含めて、本発明は追加の薬剤としての化学療法剤に関連する。化学療法剤の例には以下が含まれる(ただしそれらに限定されない):アルキル化剤(例えばチオテパおよびCYTOXANシクロホスファミド);スルホン酸アルキル(例えばブスファン、インプロスルファンおよびピポスルファン);アジリジン(例えばベンゾドパ、カルボコン、メツレドパおよびウレドパ);エチレンイミンおよびメチルアメラミン(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホロアミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチルオロメラミンを含む);アセトゲニン(例えばブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(合成アナローグトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成アナローグを含む);クリプトフィシン(例えばクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルミシン(合成アナローグ、KW-2189およびCB 1-TM1を含む);エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イフォサミド、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えばカリムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン;およびラミムスチン;抗生物質、例えばエネジイン抗生物質(例えばカリケアミシン、特にカリケアミシンガンマ1Iおよびカリケアミシンオメガ1I;ダイネミシン(ダイネミシンAを含む);ビスホスホネート、例えばクロドロネート;エスペラミシン;その他にネオカルジノスタチンクロモフォアおよび関連するクロモプロテインエネジイン抗生物質クロモフォア)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アウトラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニス、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRINAMYCINドキソルビシン(モルフォリノ-ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン(例えばマイトマイシンC)、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗剤、例えばメトトレキセートおよび5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナローグ、例えばデノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトトレキセート;プリンアナローグ、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナローグ、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジン;アンドロゲン、例えばカルステロン、ドロモスタノロンプロピオネート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎薬、例えばミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補給剤、例えばフォリン酸(frolinic acid);アセグラトーン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デメコルシン;ジアジクオン;エルフォルミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシノイド、例えばメイタンシンおよびアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメト;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖類複合体;ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(例えばT-2トキシン、ベルラクリンA、ロリジンAおよびアングジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(“Ara-C”);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばTAXOLパクリタキセル(Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N.J.)、ABRAXANEクレモファフリー、パクリタキセルのアルブミン-操作ナノ粒子処方物、およびTAXOTEREドキセタキセル;クロランブシル;GEMZARゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;白金アナローグ、例えばシスプラチン、オキサリプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イフォスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE.ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(カンプトサール、CPT-11)(5-FUおよびロイコボリンとのイリノテカンの治療レジメンを含む);トポイソメラーゼ阻害剤RES2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えばレチノイン酸;カペシタビン;コンブレタスタチン;ロイコボリン(LV);オキサリプラチン(オキサリプラチン治療レジメン(FOLFOX)を含む);ラパチニブ(TYKERB);PKC-アルファ、Raf、H-Ras、EGFRの阻害剤(例えばエルロチニブ(Tarceva))および細胞分裂増殖を減少させるVEGF-A、並びに上記のいずれかの医薬的に許容できる塩、酸または誘導体。加えて、治療方法はさらにまた放射線の使用を含むことができる。
【0287】
他の追加の薬剤(免疫“チェックポイント”分子を標的とする封鎖抗体を含む)、は本明細書の別の場所に記載される。
【0288】
いくつかの実施態様にしたがえば、治療レジメンは、標準的抗腫瘍療法(例えば外科手術、放射線療法、正確に癌細胞を識別し攻撃する標的誘導療法、ホルモン療法、または前記の組合せ)を含むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、標準的抗腫瘍療法は腫瘍の治療に有効であり、一方、一切の既存の抗腫瘍免疫応答を維持する。いくつかの実施態様にしたがえば、免疫原性組成物は化学療法後に適用されない。いくつかの実施態様にしたがえば、免疫原性組成物は低用量化学療法後に適用される。
【0289】
いくつかの実施態様にしたがえば、免疫原性組成物は2つ以上のクローン由来腫瘍細胞株変種を含む。いくつかの実施態様にしたがえば、2つ以上の腫瘍細胞株変種は、組換え免疫調整因子の同じ片割れを含む。いくつかの実施態様にしたがえば、2つ以上の腫瘍細胞株変種は異なる組換え免疫調整因子一覧を含む。
【0290】
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は対象動物への投与前に細胞分裂を妨げる薬剤で処理される。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は放射線照射される。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は分裂増殖を妨げる化学薬剤で処理される。
【0291】
いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は非経口的に投与できる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は外科的切開空洞に局所的に投与できる。いくつかの実施態様にしたがえば、腫瘍細胞株変種は皮内注射によって投与できる。いくつかの実施態様にしたがえば腫瘍細胞株変種は皮下注射によって投与できる。いくつかの実施態様にしたがえば腫瘍細胞株変種は筋肉内注射によって投与できる。
【0292】
治療方法
本明細書で提供する腫瘍細胞株変種は、対象動物(例えば、研究動物または臨床症状(例えば癌または感染)を有する哺乳動物(例えば人間))への投与のために組成物に取り込まれ得る。例えば、腫瘍細胞株変種および医薬的に許容できる担体を含む同種異系腫瘍細胞ワクチンは、癌の治療のために対象動物に投与することができ、前記腫瘍細胞株変種は、IgG1、CD40L、TNF-アルファおよびFlt-3Lペプチドから選択される2つ以上の安定的に発現される組換え膜結合免疫調整因子分子、並びに安定的に発現される組換え可溶性GM-CSFペプチドを含む。別の例では、腫瘍タイプ特異的細胞株変種を含む同種異系腫瘍細胞ワクチンを用いて、プラセボコントロールと比較して無増悪生存、全生存または両生存の改善として反映される強力な抗腫瘍応答を引き出すために十分な免疫調整シグナルの環境下で多岐にわたる腫瘍抗原をデリバリーする。ここで前記免疫調整シグナルは、膜発現IgG1、CD40L、TNF-アルファから選択される2つ以上の安定的に発現される組換え膜結合免疫調整分子とともにGM-CSFおよびFlt-3Lの膜型および可溶型で構成される。
【0293】
したがって、当該記載の発明は、本明細書で提供する同種異系腫瘍ワクチンを用いて臨床症状(例えば癌)を治療する方法を提供する。
【0294】
多様な実施態様で、当該記載の発明は、癌および/または腫瘍、例えば癌および/または腫瘍の治療または予防に関する。“癌または腫瘍”という語句は、細胞の無制御増殖および/または異常な細胞生存増加および/または身体の器官および系の正常な機能を妨害するアポトーシス阻害を指す。良性および悪性の癌、ポリープ、過形成とともに休止腫瘍または微小転移が含まれる。さらにまた、免疫系によって妨害されない異常な分裂増殖を有する細胞(例えばウイルス感染細胞)も含まれる。癌は原発癌または転移癌でもよい。原発癌は臨床的に検出できるようになる初発部位の癌細胞領域であり、前記は原発腫瘍でもよい。対照的に、転移癌は1つの器官または部分から別の非隣接器官または部分への疾患の拡散であり得る。転移癌は、局所領域の正常組織周辺に入り込み浸潤して新しい腫瘍を形成する能力を獲得した癌細胞によって引き起こされ得る(前記は局所転移であり得る)。癌はまた、リンパ管および/または血管の壁に入り込む能力を獲得した癌細胞によって引き起こされ得る。癌細胞はその後血流を介して身体の他の部位および組織へ循環することができる(したがって循環腫瘍細胞である)。癌は、例えばリンパ性または血行性拡散のプロセスに起因することができる。癌はまた、別の部位にたどり着き残留し、血管または壁を通って再度侵入して増幅し続け、最終的に臨床的に検出できる別の腫瘍を形成する腫瘍細胞によって引き起こされ得る。癌はこの新しい腫瘍であってもよい(前記は転移腫瘍(または二次)腫瘍である)。
【0295】
癌は転移腫瘍細胞によって引き起こされ得る(前記は二次または転移腫瘍である)。腫瘍細胞は初発腫瘍の細胞と同様であり得る。例として、乳癌または結腸癌が肝臓に転移した場合、二次腫瘍(肝臓に存在する)は、異常な肝臓細胞ではなく異常な乳房細胞または結腸細胞で形成される。当該肝臓の腫瘍は、したがって肝臓癌ではなく転移乳癌または転移結腸癌であり得る。
【0296】
治療することができる例示的な癌には以下が含まれる(ただしそれらに限定されない):癌腫、例えば多様なサブタイプ(例えば腺癌、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、および移行細胞癌)、肉腫(例えば骨および軟組織を含む)、白血病(例えば急性骨髄性、急性リンパ芽球性、慢性骨髄性、慢性リンパ芽球性、および有毛細胞白血病を含む)、リンパ腫およびミエローマ(例えばホジキンおよび非ホジキンリンパ腫、軽鎖、非分泌性MGUS、および形質細胞腫を含む)、および中枢神経系の癌(例えば脳(例えば神経膠腫(例えば星状細胞腫、希突起神経膠細胞腫および上衣腫)、髄膜腫、下垂体腺腫、および神経腫を含む)、および脊髄腫瘍(例えば髄膜腫および神経線維腫)。
【0297】
ある種の実施態様では、治療できる癌/腫瘍は、標準的治療がもはや化学療法ではないものである。なぜならば、化学療法は免疫応答を妨害することが知られており、免疫応答はワクチン免疫プロトコルが成功しているときに生じると期待されるからである。例示的な腫瘍タイプには以下が含まれる:ホルモン療法で治療される腫瘍タイプ(例えば前立腺癌および乳癌)(例えば、前立腺癌のためのアビラテロン(商標)および乳癌のためのタモキシフェン(商標))、標的誘導療法(例えば抗体)で治療されるタイプ(例えばB細胞悪性疾患のためのリツキサン(商標)、乳癌のためのハーセプチン(商標))、キナーゼ阻害剤で治療される腫瘍タイプ(例えば慢性骨髄性白血病のためのGLEEVECTM)、および他の免疫系の補助または強化様式で治療される腫瘍タイプ(例えばチェックポイント阻害剤、腫瘍溶解ウイルスおよびCAR-T細胞)。
【0298】
本発明の代表的な癌および/または腫瘍は本明細書に記載される。当該記載の発明はまた、腫瘍細胞株変種および本明細書に記載の医薬的に許容できる担体を、生理学的および医薬的に許容できる担体と組み合わせて含む同種異系腫瘍細胞ワクチン含む組成物を提供し、前記腫瘍細胞株変種は、IgG1、CD40L、TNF-アルファおよびFlt-3Lペプチドから選択される2つ以上の安定的に発現される組換え膜結合免疫調整分子、並びに安定的に発現される組換え可溶性GM-CSFペプチドを含む。生理学的および医薬的に許容できる担体には、免疫のために有用な周知の成分のいずれも含まれ得る。当該担体は、ワクチンとして投与される抗原に対する免疫応答を促進または強化することができる。当該細胞処方物は、好ましいpH範囲を維持する緩衝剤、塩、または他の成分(抗原に対する免疫応答を刺激する組成物で個体に抗原を提示する)を含むことができる。生理学的に許容できる担体はまた、抗原に対する免疫応答を強化する1つ以上のアジュバントを含むことができる。医薬的に許容できる担体には例えば、医薬的に許容できる溶媒、分散剤、または対象動物に化合物をデリバリーするための薬理学的に不活性なベヒクルが含まれる。医薬的に許容できる担体は液体または固体であることができ、意図される投与態様にしたがって選択して、所定の医薬組成物の1つ以上の治療化合物および任意の他の成分と一緒にしたときに所望の大きさ、堅さ、並びに他の適切な輸送特性および化学的特性を提供することができる。典型的な医薬的に許容できる担体には以下が含まれる(ただしそれらに限定されない):水、食塩水、結合剤(例えばポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えばラクトースまたはデキストロースおよび他の糖類、ゼラチン、または硫酸カルシウム)、滑沢剤(例えばデンプン、ポリエチレングリコール、または酢酸ナトリウム)、崩壊剤(例えばデンプングリコール酸ナトリウム)、および湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)。組成物は、皮下、筋肉内、または皮内投与のために、または免疫のために許容できる任意の態様で処方することができる。
【0299】
“アジュバント”は、免疫原性薬剤(例えば分泌ワクチンタンパク質を発現する腫瘍細胞)に添加したとき、レシピエント宿主で当該混合物への暴露時に当該薬剤に対する免疫応答を非特異的に強化または増強する物質を指す。アジュバントには、例えば水中油エマルジョン、油中水エマルジョン、ミョウバン(アルミニウム塩)、リポソームおよび微小粒子、例えばポリスチレン、デンプン、ポリホスファゼンおよびポリラクチド/ポリグリコシドが含まれ得る。
【0300】
アジュバントにはまた例えば以下が含まれ得る:スクワレン混合物(SAF-I)、ムラミルペプチド、サポニン誘導体、ミコバクテリウム細胞壁調製物、モノホスホリル脂質A、ミコール酸誘導体、非イオン性ブロックコポリマー界面活性剤、Quil A、コレラ毒素Bサブユニット、ポリホスファゼンおよび誘導体、並びに免疫刺激複合体(ISCOM)(例えば文献(Takahashi et al., Nature 1990, 344:873-875)記載のもの)。獣医使用または動物での抗体の製造のためには、フロイントアジュバント(完全および不完全アジュバントの両方)の有糸分裂促進成分を用いることができる。人間では、不完全フロイントアジュバント(IFA)が有用なアジュバントである。種々の適切なアジュバントが当業界では周知である(例えば以下を参照されたい:Warren and Chedid, CRC Critical Reviews in Immunology 1988, 8:83;Allison and Byars, in Vaccines: New Approaches to Immunological Problems, 1992, Ellis, ed., Butterworth-Heinemann, Boston)。付け加えられるアジュバントには例えば以下が含まれる:カルメット-ゲラン桿菌(BCG)、DETOX(ミコバクテリウム・フレイ(Mycobacterium phlei)の細胞壁骨格(CWS)およびサルモネラ・ミニソタ(Salmonella minnesota)のモノホスホリル脂質A(MPL)を含む)など(例えば以下を参照されたい:Hoover et al., J Clin Oncol 1993, 11:390; and Woodlock et al., J Immunother 1999, 22:251-259)。
【0301】
いくつかの実施態様では、同種異系腫瘍細胞ワクチンは対象動物に1回以上投与することができる(例えば1回、2回、2から4回、3から5回、5から8回、6から10回、8から12回、または12回を超える)。本明細書で提供する同種異系腫瘍細胞ワクチンは、1日に1回以上、1週間に1回以上、1週間おきに、1ヶ月に1回以上、2から3ヶ月毎に1回、3から6ヵ月毎に1回、または6から12ヶ月毎に1回投与することができる。同種異系腫瘍細胞ワクチンは、任意の適切な期間(例えば約1日から約12ヶ月)にわたって投与することができる。いくつかの実施態様では、例えば、投与期間は約1日から90日、約1日から60日、約1日から30日、約1日から20日、約1日から10日、約1日から7日であり得る。いくつかの実施態様では、投与期間は、約1週間から50週間、約1週間から50週間、約1週間から40週間、約1週間から30週間、約1週間から24週間、約1週間から20週間、約1週間から16週間、約1週間から12週間、約1週間から8週間、約1週間から4週間、約1週間から3週間、約1週間から2週間、約2週間から3週間、約2週間から4週間、約2週間から6週間、約2週間から8週間、約3週間から8週間、約3週間から12週間、または約4週間から20週間であり得る。
【0302】
いくつかの実施態様では、同種異系腫瘍細胞ワクチンの最初の用量(時に“プライミング”用量と称される)が投与され、最大の抗原特異的免疫応答が達成された後で、1回以上のブースター用量を投与することができる。例えば、ブースター用量は、プライミング用量の後、約10から30日、約15から35日、約20から40日、約25から45日、または約30から50日で投与され得る。
【0303】
いくつかの実施態様では、本明細書で提供する方法を固形腫瘍の増殖および/または転移の制御に用いることができる。前記方法は、本明細書に記載する同種異系腫瘍細胞ワクチンの有効量をその必要がある対象動物に投与する工程を含むことができる。
【0304】
本明細書で提供するベクターおよび方法は、腫瘍に対する免疫応答を刺激するために有用であり得る。そのような免疫応答は、当該腫瘍に関連する徴候または症状の治療または緩和に有用である。医師は、本明細書に記載の方法は、熟練医師(内科医または獣医師)による継続的な臨床評価と一緒に用いられてその後の治療方法が決定されるべきであることを理解するであろう。そのような評価は、特定の治療用量を増加、減少または継続するか否か、投与態様などの評価で役立ちかつ情報を提供するであろう。
【0305】
本明細書で提供する方法は、したがって腫瘍(例えば癌を含む)の治療に用いることができる。それら方法を用いて、例えば腫瘍の増殖を更なる腫瘍増殖の予防によって、腫瘍増殖を減速することによって、または腫瘍後退を引き起こすことによって阻害することができる。したがって、それら方法を用いて、例えば癌を治療することができる。化合物が投与される対象動物が特定の外傷的状態にある必要はないことは理解されるであろう。実際、本明細書に記載する同種異系腫瘍細胞ワクチンは、症状が発達する前に(例えば癌緩解患者)予防的に投与することができる。
【0306】
抗腫瘍および抗癌作用には以下が含まれる(ただしそれらに限定されない):腫瘍増殖(例えば腫瘍増殖遅延)、腫瘍サイズ、または転移の調節;特定の抗癌剤に関連する毒性および副作用の軽減;癌の臨床的な障害または症状の緩和若しくは最小限化;そのような処置がなかった場合に予想される生存を超える対象動物の生存;および投与前に腫瘍形成がない動物における腫瘍増殖の予防(すなわち予防的投与)。
【0307】
治療的に有効な量は、例えば相対的に低い量で開始し、有益な作用を同時評価することにより段階的増加を実施することによって決定できる。したがって本明細書で提供する方法は単独で用いるか、または他の周知の腫瘍療法と併用することができる。当業者は、例えば癌患者の余命の延長および/または癌患者(例えば肺癌患者)の生活の質の改善で、本明細書で提供する同種異系腫瘍細胞ワクチンおよび方法の有利な使用を容易に理解するであろう。
【0308】
対象動物
本明細書に記載する方法は、これらの方法の利益を享受し得る任意の対象動物での使用が意図される。したがって、“対象”、“患者”および“個体”(互換的に用いられる)には人間とともに非ヒト対象動物(特に家畜化動物)が含まれる。
【0309】
いくつかの実施態様では、対象および/または動物は、哺乳動物(例えば人間、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、ウマ、乳牛、ブタ、ウサギ、ヒツジ、または非ヒト霊長動物、例えばサル、チンパンジー、またはヒヒ)である。他の実施態様では、対象および/または動物は非哺乳動物(例えばゼブラフィッシュ)である。いくつかの実施態様では、対象および/または動物は蛍光タグ付加細胞(例えばGFP付加)を含むことができる。いくつかの実施態様では、対象および/または動物は蛍光細胞を含むトランスジェニック動物である。
【0310】
いくつかの実施態様では、対象および/または動物は人間である。いくつかの実施態様では、当該人間は小児である。他の実施態様では、当該人間は成人である。他の実施態様では、当該人間は老人である。他の実施態様では、当該人間は患者を指すことができる。
【0311】
ある種の実施態様では、人間は、約0ヶ月から約6ヶ月齢、約0から約12ヶ月齢、約6から約18ヶ月齢、約18から約36ヶ月齢、約1から約5歳齢、約5から約10歳齢、約10から約15歳齢、約15から約20歳齢、約20から約25歳齢、約25から約30歳齢、約30から約35歳齢、約35から約40歳齢、約40から約45歳齢、約45から約50歳齢、約50から約55歳齢、約55から約60歳齢、約60から約65歳齢、約65から約70歳齢、約70から約75歳齢、約75から約80歳齢、約80から約85歳齢、約85から約90歳齢、約90から約95歳齢、または約95から約100歳齢の範囲の年齢である。
【0312】
他の実施態様では、対象動物は非ヒト動物であり、したがって当該発明は獣医の使用に関する。具体的な実施態様では、非ヒト動物は家庭のペットである。別の具体的な実施態様では、非ヒト動物は家畜動物である。ある種の実施態様では、対象動物は、化学療法を受けることができない人間の癌患者である。例えば、当該患者は化学療法に応答しないかまたは不健全な状態であり化学療法のための適切な治療ウインドウを設定することができない(あまりにも多くの用量制限またはレジメン制限副作用を示している)。ある種の実施態様では、対象動物は、進行および/または転移疾患を有する人間の癌患者である。
【0313】
ある範囲の値が提供される場合、当該範囲の上限と下限の間に介在する各値(文脈が明瞭にそうでないことを示していないかぎり下限のユニットの1/10まで)および当該記載された範囲内の任意の他の記載値または介在値は本発明に包含される。これらのより小さな範囲の上限および下限(前記はそれぞれ別個により小さな範囲に含まれ得る)もまた本発明に包含されるが、ただし当該記載された範囲内の具体的に排除される任意の限界にしたがう。記載の範囲が限界の一方または両方を含む場合、それら包含される限界のどちらかまたは両方を排除する範囲もまた本発明に含まれる。
【0314】
特段の規定が無ければ、本明細書で用いられる全ての技術用語および学術用語は、本発明が属する分野の業者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。本明細書に記載する方法および材料と同様または等価な方法および材料もまた本発明の実施または試験に用いることができるが、好ましい方法および材料をこれから述べる。本明細書に記載する全ての刊行物は参照によってその全体が本明細書に含まれ、当該刊行物の引用に関係する方法および/または材料を開示する。
【0315】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられるように、単数形“a”、“an”、および“the”は、文脈が明らかに他の状態を示していないかぎり複数の対応語を含む。本明細書で用いられる全ての技術用語及び学術用語は同じ意味を有する。
【0316】
本明細書で考察する刊行物は単に本出願の出願日以前のそれらの開示のために提供され、各刊行物は参照によってその全体が本明細書に含まれる。本明細書ではいずれも、先行発明という理由で本発明がそのような刊行物に先行する資格がないということを容認するものと解されるべきではない。さらにまた、提供する刊行の日付は実際の刊行日とは異なることがあり、当該日付は別個に確認することを必要とし得る。
【0317】
実施例
以下の実施例は、本発明の実施及び使用の仕方の完全な開示および記述を当業者に提供するために示され、本発明者らが彼らの発明とみなす範囲を限定しようとするものではなく、かつ下記の実験が実施した全て或いは唯一のものであることを表明しようとするものでもない。使用の数値(例えば量、温度など)に関しては正確さを担保する努力が払われたが、いくらかの実験誤差および偏差が報告されるべきである。特段の指示がなければ、割合は重量による割合であり、分子量は量平均分子量であり、温度は摂氏度数であり、圧は大気または大気近辺である。
【実施例0318】
実施例2-5は下記に記載の方法(ただしこれらに限定されない)を利用する。
ウェスタンブロッティング:
簡単に記せば、細胞を冷溶解緩衝液で溶解し、遠心分離して細胞デブリを沈殿させる。上清のタンパク質濃度をタンパク質定量アッセイ(例えばブラッドフォードタンパク質アッセイ(Bio-Rad Laboratories))によって決定する。続いて、溶解物上清を等体積の2X SDSサンプル緩衝液と混合し、100℃で5分間煮沸する。サンプル緩衝液中の等量のタンパク質をSDS-PAGEゲルに分子量マーカーとともにローディングし、1-2時間100Vで電気泳動する。続いて、タンパク質をニトロセルロースまたはPVDF膜に移す。続いて、TBST封鎖緩衝液中の5%脱脂粉乳を用いて膜を室温で1時間封鎖する。続いて、TBST封鎖緩衝液中の5%脱脂粉乳で1:500に希釈した一次抗体とともに膜をインキュベートし、その後TBST(20Mn トリス(pH7.5);150mM NaCl、0.1% Tween 20)で5分間3回洗浄する。続いて、TBST封鎖緩衝液中の5%脱脂粉乳で1:2000に希釈した複合化二次抗体とともに膜を室温で1時間インキュベートし、その後TBSTで3回、各々5分間洗浄する。ブロットの画像は、化学発光検出のための暗室現像技術を用いるか、または比色若しくは蛍光検出のための画像スキャンニング技術を用いて入手する。
【0319】
リアルタイムPCR:
リアルタイムPCR技術は、記載されたように実施してmRNAの発現レベルを分析することができる(Zhao Y.et al., Biochemical and Biophysical Research Communications 360, 2007, 205-211)。簡単に記せば、全RNAを細胞からキアゲンキット(Quiagen kit, Valencia CA)を用いて抽出し、続いてランダムヘキサマープライマー(Fermentas, Hanover MD)を用いて第一鎖cDNAを合成する。リアルタイムPCRは、Mx3000p 定量PCR系(Stratagene, La Jolla, CA)を用い各サンプルについて実施される。関心のある各遺伝子について検証済み遺伝子特異的RT-PCRプライマーセットを用いて40サイクル実施される。各転写物の相対的発現レベルは、内部コントロールのハウスキーピング遺伝子ベータ-アクチンの相対的発現レベルに対して修正される。
【0320】
免疫蛍光:
簡単に記せば、付着した腫瘍細胞株変種細胞を温かいPBSで希釈した4%ホルムアルデヒドで15分間室温で固定する。固定液を吸引し、細胞をPBSで3回それぞれ5分間洗浄する。細胞を5%BSA封鎖緩衝液で60分間室温で封鎖する。続いて、封鎖緩衝液を吸引し、一次抗体の溶液(例えば1:100希釈)を細胞とともに一晩4℃でインキュベートする。続いて細胞をPBSで3回(各回5分間)水洗し、その後、蛍光色素結合二次抗体の溶液(例えば1:1000希釈)とともに1-2時間室温でインキュベートする。続いて、細胞をPBSで3回(各回5分間)洗浄し、蛍光顕微鏡法によって可視化する。
【0321】
フローサイトメトリー:
フローサイトメトリーは記載されたように実施することができる(Zhao Y.et al., Exp.Cell Res., 312, 2454, 2006)。簡単に記せば、トリプシン/EDTAで処理するかまたは無処理のままの腫瘍細胞株変種細胞を遠心分離によって収集し、PBSに再懸濁する。細胞を4%ホルムアルデヒドで10分間37℃で固定する。抗体による細胞外染色のためには、細胞に透過性を付与しない。細胞内染色のためには、前もって冷却した細胞に氷冷100%メタノールを最終濃度90%メタノールで添加し、氷上で30分間インキュベートすることによって、細胞に透過性を付与する。まず初めに細胞をインキュベーション緩衝液に再懸濁し、一次抗体の希釈物を添加することによって、細胞を免疫染色する。細胞を一次抗体とともに室温で1時間インキュベートし、その後インキュベーション緩衝液で3回洗浄する。続いて、細胞を複合化二次抗体の希釈物とともに室温で30分間インキュベーション緩衝液中に再懸濁し、その後インキュベーション緩衝液で3回洗浄する。続いて染色細胞をフローサイトメトリーで分析する。
【0322】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA):
簡単に記せば、関心のあるタンパク質に特異的な捕捉抗体でマイクロプレートのウェルを被覆する。サンプル(関心のあるタンパク質を含む標準物、コントロール標本、および未知のものを含む)をマイクロプレートウェルにピペットで加える(タンパク質抗原は当該捕捉抗体と結合する)。4回洗浄後、検出抗体をウェルに1時間添加し、最初のインキュベーション時に捕捉された固定タンパク質と結合させる。過剰な検出抗体を除去し4回洗浄した後、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)複合化物(二次抗体またはストレプトアビジン)を30分間添加して、検出抗体と結合させる。さらに4回洗浄して過剰なHRP複合化物を除去した後、基質溶液を暗所で30分間添加し、酵素によって検出可能な形態(色シグナル)に変換させる。停止溶液をマイクロプレートの各ウェルに添加し、反応停止の30分以内に評価する。着色生成物の強度は最初の標本中に存在する抗原の濃度に正比例し得る。
【0323】
ヒト混合リンパ球腫瘍反応(MLTR)試験:
混合リンパ球腫瘍反応(MLTR)は、リード化合物の最適化のために設計される全てヒトのin vitroアッセイでありる。MLTRでは、最適化は、操作した同種異系腫瘍細胞に対するヒト末梢血単核細胞(PBMC)応答の定性的および定量的査定により達成される。MLTRアッセイは、フローサイトメトリーおよびマスサイトメトリー(CyTOF)による分裂増殖および分化の査定を可能にする。細胞傷害性は乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出アッセイによって測定でき、サイトカインプロフィールはルミネックス多重アッセイによって測定できる。ある種の実施態様では、ただ1つの免疫調整タンパク質を発現する同種異系細胞プールをMLTRに用いる。他の実施態様では、複数の免疫調整タンパク質を発現する同種異系細胞プールをMLTRに用いる。
【0324】
基本的な単日MLTR工程は以下のように実施される:
凍結ヒトPBMCを解凍する。続いて細胞をdPBSで洗浄する。PBMC細胞を2.5x106細胞/mLストックでX-VIVO無血清培地(Invitrogen)に再懸濁する。細胞をフローサイトメトリーで特徴付けし、当該細胞集団の表現型特性を立証および確認する。
【0325】
MLTRは以下のようにセットアップする:
-2.5x105細胞のPBMC(100μLのストック)
-0.5x105同種異系細胞(100μLのストック)(使用時)
-陽性コントロール、50μLの6xストック(抗CD28/CD3)
-96ウェル平底では全体積は300μL、96ウェルの全体積は300μL
-1日インキュベーション
-ルミネックス多重アッセイによるサイトカイン分析では100μL除去
-CyTOFは細胞成分で実施
CyTOFは、例えばBendallら(Bendall et al., Science, Vol.332, 6 May 2011)およびBendall and Nolan(Bendall and Nolan, Nature Biotechnology, Vol.30 No.7, July 2012)によって以前に記載されている(両文献は参照によってその全体が本明細書に含まれる)。CyTOF染色で用いられたヒトマーカーは下記の表1に示される。
【0326】
【0327】
ルミネックス多重アッセイ:
ルミネックスxMAP技術(以前はLabMAP(FlowMetrix))は、異なる比率の赤色および近赤外蛍光体で染色されたポリスチレンビーズ(微小球)を分類することができるデジタルシグナルプロセッシングを利用する。これらの比率は、各ビーズ集団のための‘スペクトルアドレス’を明示する。結果として、非常に小さなサンプル体積中の多様なビーズ集団で100までの種々の検出反応を同時に実施することができる(Earley et al.Report from a Workshop on Multianalyte Microsphere Arrays.Cytometry 2002;50:239-242;Oliver et al.Clin Chem 1998;44(9):2057-2060;Eishal and McCoy, Methods 38(4): 317-323, April 2006(前記文献はいずれも参照によってその全体が本明細書に含まれる))。ルミネックス多重アッセイは市場で入手でき、さらに下記のウエブサイトに記載されている(その内容は参照によってその全体が本明細書に含まれる):thermofisher.com/us/en/home/life-science/protein-biology/protein-assays-analysis/luminex-multiplex-assays.html。
【0328】
1日を超える期間のMLTRアッセイのための同種異系細胞のマイトマイシンC調製物:
マイトマイシンCは乾燥粉末から400μLのDMSOを用いて調製される(500Xストック=5mg/mL、2mg/バイアル)。粉末を完全に溶解し、25μLの体積に小分けし、-80℃で保存する。単一アリコットの20μLを10mLの温かいC5で用い、10μg/mLの最終的な作業溶液を得る。前記溶液をろ過滅菌する。
細胞を37℃で30分間暗所でインキュベートし、続いて温C5細胞培養液(非必須アミノ酸、グルタミン、抗生物質および5%ウシ胎児血清を補充したRPMI)で3回洗浄する。細胞を1mLのX-VIVOに再懸濁して計測し、X-VIVO(無血清、Lonza)で最終濃度を1x106/mLストック溶液に調整する。
当該記載の発明は、例えば癌の治療において、免疫学的バランスをただ1つの細胞性プラットフォームを用いて複数の免疫調整因子を標的とすることによって回復させるアプローチを提供する。このアプローチは、複数のシグナルの同時調整を可能にし、さらに、時間的および空間的に制限される免疫応答の調整方法に余裕を与える。これは生物学的薬剤の全身的投与を用いて一度にただ1つの免疫調整経路で作用させる伝統的なアプローチと本方法を弁別する重要な特色である。
当該開示の方法のある特徴にしたがえば、5つ以上の組換えペプチドを発現する腫瘍タイプ特異的細胞株変種を、当該癌タイプの治療に腫瘍細胞ワクチンとして使用するために作製することができる。例えば、ある腫瘍細胞株を改変のために選択し、組換え免疫調整因子配列のレンチウイルストランスフェクションを用いて当該細胞に免疫調整因子を安定的に組み込むことができる。下記の実施例3は7つのレンチウイルスベクター(ベクター1、ベクター2、ベクター3、ベクター4、ベクター5、ベクター6、およびベクター7)を記載し、これらを用いて免疫調整因子を細胞ゲノムに安定的に組み込むことができる。
いくつかの実施態様にしたがえば、2つの組換え免疫調整因子タンパク質が同時にトランスフェクトされ、その後もう2つの組換え免疫調整因子タンパク質が同時にトランスフェクトされ、その後ただ1つの組換え免疫調整因子タンパク質がトランスフェクトされて、腫瘍細胞ワクチンとして使用される合計5つの組換えペプチドが達成される。いくつかの実施態様にしたがえば、2つの組換えペプチドが同時にトランスフェクトされ、その後ただ1つの組換えペプチドがトランスフェクトされ、その後ただ1つの組換えペプチドがトランスフェクトされ、その後ただ1つの組換えペプチドがトランスフェクトされて、腫瘍細胞ワクチンとして使用される合計5つの組換えペプチドが達成される。いくつかの実施態様にしたがえば、ただ1つの組換えペプチドがトランスフェクトされ、その後2つのの組換えペプチドが同時にトランスフェクトされ、その後2つの組換えペプチドが同時にトランスフェクトされて、腫瘍細胞ワクチンとして使用される合計5つの組換えペプチドが達成される。
当該開示発明のある実施態様にしたがえば、同種異系細胞プールの組合せ物(各々はただ1つの免疫調整タンパク質を発現する)を用いて、複数の免疫調整タンパク質を発現する単一細胞がとり得る行動(例えば累積性、相乗性、干渉)のモデルとする。
当該開示発明のある特徴にしたがえば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つ以上の組換えペプチドを発現する腫瘍細胞株変種を、皮膚癌治療に腫瘍細胞ワクチンとして使用するために作製することができる。例えば、SK-MEL2ヒトメラノーマ細胞株(ATCC HTB-68)を改変のために選択し、組換え免疫調整因子配列のレンチウイルストランスフェクションを用いて、当該細胞ゲノムに免疫調整因子を安定的に組み込むことができる。
当該開示発明のある特徴にしたがえば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つ以上の組換えペプチドを発現する腫瘍細胞株変種を、前立腺癌治療に腫瘍細胞ワクチンとして使用するために作製することができる。例えば、DU-145ヒト前立腺癌細胞株を改変のために選択し、組換え免疫調整因子配列のレンチウイルストランスフェクションを用いて、当該細胞ゲノムに免疫調整因子を安定的に組み込むことができる。いくつかの実施態様にしたがえば、2つの組換え免疫調整因子タンパク質が同時にトランスフェクトされ、その後もう2つの組換え免疫調整因子タンパク質が同時にトランスフェクトされ、その後ただ1つの組換え免疫調整因子タンパク質がトランスフェクトされて、腫瘍細胞ワクチンとして使用される合計5つの組換えペプチドが達成される。いくつかの実施態様にしたがえば、2つの組換えペプチドが同時にトランスフェクトされ、その後ただ1つの組換えペプチドがトランスフェクトされ、その後ただ1つの組換えペプチドがトランスフェクトされ、その後ただ1つの組換えペプチドがトランスフェクトされて、腫瘍細胞ワクチンとして使用される合計5つの組換えペプチドが達成される。いくつかの実施態様にしたがえば、ただ1つの組換えペプチドがトランスフェクトされ、その後2つのの組換えペプチドが同時にトランスフェクトされ、その後2つの組換えペプチドが同時にトランスフェクトされて、腫瘍細胞ワクチンとして使用される合計5つの組換えペプチドが達成される。
本発明の別の特徴にしたがえば、1つ以上の組換えペプチドを発現する2つ以上の腫瘍細胞株変種を、前立腺癌治療に腫瘍細胞ワクチンとして使用するために作製することができる。例えば、DU-145およびPC-3ヒト前立腺癌細胞株を改変のために選択し、組換え免疫調整因子配列のレンチウイルストランスフェクションを用いて、当該細胞ゲノムに免疫調整因子を安定的に組み込むことができる。
ウイルス粒子を含む293T細胞培養液を8-12時間毎に3回採集し、遠心分離して剥離細胞およびデブリを沈殿させる。ウイルス粒子を含む培養液を直接用いてDU-145細胞株に感染させる。
DU-145細胞株を、10%ウシ胎児血清を含むイーグル必須培地(Eagle's Minimum Essential Medium(EMEM))で約70%コンフルエンシーまで培養する。続いて、臭化ヘキサジメトリン(Sigma-Aldrich Cat No.H9268)をウイルス粒子を含む培養液に加え、臭化ヘキサジメトリンの最終濃度を8μg/mLにする。DU-145細胞の培養液を吸引し、ウイルス粒子および8μg/mL臭化ヘキサジメトリンを含む培養液で置き替える。DU-145細胞を18-20時間培養し、その後培養液を変える。
続いて、感染DU-145細胞を1μg/mLのピューロマイシン(ThermoFisher Cat.No.A1113802)を含む培養液で、約1週間後に細胞死滅が開始するまで増殖させる。トランスフェクト細胞の複数の生存コロニーを拡張のために採取し、ウェスタンブロットによってCD40L発現について試験する。ウェスタンブロットは、マウスモノクローナル抗HA一次抗体(Abcam Cat.No.ab18181)およびヤギ抗マウスHRP(Abcam Cat.No.ab205719)二次抗体を用いてプローブし、各クローン株で発現される組換えCD40Lの相対量を定量する。最高安定発現DU-145株をDU145-Gen1と名付け更なる操作のために選択する。
レンチウイルストランスファープラスミド、パッケージングプラスミド、およびエンベローププラスミドの各々をlog期増殖293T細胞にリポフェクタミン2000(ThermoFisher Cat.No.11668027)を用いてトランスフェクトする。簡単に記せば、細胞を70%から90%コンフルエンシーで播種する。トランスフェクションの日に、12μLのリポフェクタミン試薬を150μLの無血清細胞培養液で希釈する。5μgのトランスフェクション用DNAもまた150μLの無血清培養液で希釈する。続いて、希釈DNAを希釈リポフェクタミンに添加し、5分間室温でインキュベートする。続いて、播種293T細胞の培養液に回しながら混合物の全体積を滴加する。続いて、細胞を1日から3日間37℃でインキュベートする。
ウイルス粒子を含む293T細胞培養液を8-12時間毎に3回採集し、遠心分離して剥離細胞およびデブリを沈殿させる。ウイルス粒子を含む培養液を直接用いてDU145-Gen1細胞株に感染させる。
DU145-Gen1細胞株を約70%コンフルエンシーまで培養する。続いて、臭化ヘキサジメトリン(Sigma-Aldrich Cat No.H9268)をウイルス粒子を含む培養液に加え、臭化ヘキサジメトリンの最終濃度を8μg/mLにする。DU145-Gen1細胞の培養液を吸引し、ウイルス粒子および8μg/mL臭化ヘキサジメトリンを含む培養液で置き替える。DU145-Gen1細胞を18-20時間培養し、その後培養液を変える。
続いて、組換え免疫調整因子を安定的に発現するクローンについて形質導入DU145-Gen1細胞を選別する。選別プロセスは、免疫調整因子を組み込んだ細胞を識別するために、TNF-アルファ上のFLAGタグを利用する蛍光活性化細胞分類によって実施される。生細胞は、マウスモノクローナル抗FLAG抗体(Sigma Aldrich F3040)およびウサギ抗マウスFITC結合二次抗体(Sigma Aldrich ASB3701170)を用い封鎖緩衝液を含むPBS中でプローブされる。最高発現細胞を分類し単離して更なるプロセッシングのために培養する。FLAGタグの存在を基準にして分類した後、可溶性GM-CSFの発現をウェスタンブロットによって確認する。分類した培養細胞の濃縮培養液をSDS-PAGEによって分解し、マウス抗GM-CSF抗体(ThermoFisher Cat.No.3092)およびヤギ抗マウスHRP結合二次抗体を用いてウェスタンブロットによってプローブする。細胞溶解物もまたSDS-PAGEによって分解し、FLAGタグについてプローブし、TNFの存在を立証する。高レベルの組換えGM-CSFおよびTNF-アルファを発現する細胞培養をDU145-Gen2と呼び、更なるプロセッシングのために選択する。
レンチウイルストランスファープラスミド、パッケージングプラスミド、およびエンベローププラスミドの各々をlog期増殖293T細胞にリポフェクタミン2000(ThermoFisher Cat.No.11668027)を用いてトランスフェクトする。簡単に記せば、細胞を70%から90%コンフルエンシーで播種する。トランスフェクションの日に、12μLのリポフェクタミン試薬を150μLの無血清細胞培養液で希釈する。5μgのトランスフェクション用DNAもまた150μLの無血清培養液で希釈する。続いて、希釈DNAを希釈リポフェクタミンに添加し、5分間室温でインキュベートする。続いて、播種293T細胞の培養液に回しながら混合物の全体積を滴加する。続いて、細胞を1日から3日間37℃でインキュベートする。
ウイルス粒子を含む293T細胞培養液を8-12時間毎に3回採集し、遠心分離して剥離細胞およびデブリを沈殿させる。ウイルス粒子を含む培養液を直接用いてDU145-Gen2細胞株に感染させる。
DU145-Gen2細胞株を約70%コンフルエンシーまで培養する。続いて、臭化ヘキサジメトリン(Sigma-Aldrich Cat No.H9268)をウイルス粒子を含む培養液に加え、臭化ヘキサジメトリンの最終濃度を8μg/mLにする。DU145-Gen1細胞の培養液を吸引し、ウイルス粒子および8μg/mL臭化ヘキサジメトリンを含む培養液で置き替える。DU145-Gen2細胞を18-20時間培養し、その後培養液を変える。
続いて、GFPマーカーを用いてFlt-3Lを安定的に発現する細胞についてDU145-Gen2細胞を選別する。選別プロセスは、免疫調整因子を組み込んだ細胞を識別するために、GFPマーカーを利用して蛍光活性化細胞分類(FACS)によって実施される。最高発現細胞を分類し単離して更なるプロセッシングのために培養する。GFPマーカーの存在を基準にして分類した後、Flt-3Lの発現をウェスタンブロットによって確認する。培養細胞溶解物をSDS-PAGEによって分解し、ウサギポリクローナル抗Flt-3L抗体(AbCam Cat.No.ab9688)およびヤギ抗ウサギHRP結合二次抗体(AbCam Cat.No.ab205718)を用いてウェスタンブロットによってプローブする。高レベルの組換えFlt-3Lを発現する細胞培養をDU145-Gen3と呼び、更なるプロセッシングのために選択する。
レンチウイルストランスファープラスミド、パッケージングプラスミド、およびエンベローププラスミドの各々をlog期増殖293T細胞にリポフェクタミン2000(ThermoFisher Cat.No.11668027)を用いてトランスフェクトする。簡単に記せば、細胞を70%から90%コンフルエンシーで播種する。トランスフェクションの日に、12μLのリポフェクタミン試薬を150μLの無血清細胞培養液で希釈する。5μgのトランスフェクション用DNAもまた150μLの無血清培養液で希釈する。続いて、希釈DNAを希釈リポフェクタミンに添加し、5分間室温でインキュベートする。続いて、播種293T細胞の培養液に回しながら混合物の全体積を滴加する。続いて、細胞を1日から3日間37℃でインキュベートする。
ウイルス粒子を含む293T細胞培養液を8-12時間毎に3回採集し、遠心分離して剥離細胞およびデブリを沈殿させる。ウイルス粒子を含む培養液を直接用いてDU145-Gen3細胞株に感染させる。
DU145-Gen3細胞株を約70%コンフルエンシーまで培養する。続いて、臭化ヘキサジメトリン(Sigma-Aldrich Cat No.H9268)をウイルス粒子を含む培養液に加え、臭化ヘキサジメトリンの最終濃度を8μg/mLにする。DU145-Gen2細胞の培養液を吸引し、ウイルス粒子および8μg/mL臭化ヘキサジメトリンを含む培養液で置き替える。DU145-Gen3細胞を18-20時間培養し、その後培養液を変える。
続いて、RFPマーカーを用いて、IgG1重鎖配列を安定的に発現するクローンについてDU145-Gen3細胞を選別する。選別プロセスは、免疫調整因子を組み込んだ細胞を識別するために、RFPマーカーを用いて蛍光活性化細胞分類(FACS)によって実施される。最高発現細胞を分類し単離して更なるプロセッシングのために培養する。RFPマーカーの存在を基準にして分類した後、IgG1重鎖の発現をウェスタンブロットによって確認する。高レベルの組換えIgG1重鎖を発現する細胞培養をDU145-Gen4と呼び、更なるプロセッシングのために選択する。
トランスフェクトされてCD40L、GM-CSF、TNF、Flt-3L、およびIgG1重鎖を発現するDU145-Gen4細胞を、RT-PCR、免疫蛍光、およびウェスタンブロッティングによって特徴付け、全ての組換え免疫調整因子が細胞によって発現され、さらにそれらが正しい場所に存在することを確認する。
トランスフェクト腫瘍細胞株変種および親腫瘍細胞株DU-145(コントロール)の細胞の各々を標準的な組織培養条件下で7日間PBMCと共培養し、続いて、免疫細胞の分裂増殖、免疫細胞の分化(フローサイトメトリーおよびCyTOFで測定)、サイトカイン放出プロフィールおよび細胞傷害性(LDH放出アッセイによって測定)について評価する。