(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055774
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】銅合金の使用
(51)【国際特許分類】
C22F 1/08 20060101AFI20230411BHJP
C22C 9/00 20060101ALI20230411BHJP
B22D 11/059 20060101ALI20230411BHJP
B22D 11/06 20060101ALI20230411BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20230411BHJP
【FI】
C22F1/08 Q
C22C9/00
B22D11/059 120
B22D11/06 330
C22F1/00 602
C22F1/00 623
C22F1/00 626
C22F1/00 630A
C22F1/00 630C
C22F1/00 630G
C22F1/00 631A
C22F1/00 631B
C22F1/00 650A
C22F1/00 650F
C22F1/00 661A
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 684B
C22F1/00 684C
C22F1/00 685Z
C22F1/00 691B
C22F1/00 692A
C22F1/00 694A
C22F1/00 694B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023008780
(22)【出願日】2023-01-24
(62)【分割の表示】P 2021513422の分割
【原出願日】2019-09-13
(31)【優先権主張番号】102018122574.1
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】522212088
【氏名又は名称】ケイエムイー・スペシャル・プロダクツ・アンド・ソリューションズ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ベールケ・ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ヴォブカー・ハンス-ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】シュルツェ・ハルク
(57)【要約】 (修正有)
【課題】銅合金の使用方法を提供する。
【解決手段】質量%(溶融分析の質量に対する割合)で、Ag0.020~0.50、Zr0.050~0.50、P0.0015~0.025、Cr0.005以下、残りがCuおよび避けられない不純物を含む他の合金化元素で構成される銅合金の使用方法であって、銅合金が、鋳造後、600~1000℃の範囲の温度で熱間成形後、成形温度から50~2000K/分で急冷され、その後10~50%だけで冷間成形され、最終的に350~500℃の温度で硬化され、硬化後に材料が再び冷間成形され、他の合金化元素の割合が0.50以下であり、銅合金が50~54MS/mの範囲の電気伝導率を有する、鋳型板、鋳型管、鋳造ホイール、鋳造ドラム、鋳造ローラー、溶融るつぼからなる群から選択される鋳造用鋳型または鋳造用鋳型部品の材料としての前記使用方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の質量%(溶融分析の質量に対する割合)で、
銀(Ag) 0.020~0.50
ジルコニウム(Zr) 0.050~0.50
リン(P) 0.060以下
クロム(Cr) 0.005以下
残りが銅(Cu)および、避けられない不純物を含む他の合金化元素から成る銅合金の使用であって、
他の合金化元素の割合が(≦)0.50以下であり、鋳型板、鋳型管、鋳造ホイール、鋳造ドラム、鋳造ローラー、溶融るつぼからなる群から選択される鋳造用鋳型または鋳造用鋳型部品の材料としての前記使用。
【請求項2】
銅合金が、
銀(Ag) 0.080~0.120
ジルコニウム 0.070~0.200
リン 0.0015~0.025
クロム(Cr) 0.005以下
残りが銅(Cu)および、避けられない不純物を含む他の合金化元素から成り、
他の合金化元素の割合が(≦)0.10以下である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
銅合金が50~54MS/mの範囲の電気伝導率を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
鋳型または鋳型部品が、鋳造操作中に高温側の領域における金属溶融物の熱影響を受けて、鋳造材料に対向する高温側で軟化および/または再結晶し、
ここで、鋳型または鋳型部品が、冷却された低温側を有し、その上では、鋳造操作中に銅合金が軟化および再結晶せず、金属溶融物に対向する側よりも高い強度を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一つに記載の使用。
【請求項5】
銅合金が、鋳造後、600~1000℃の範囲の温度で熱間成形され、その後、成形温度から50~2000K/分で急冷され、その後10~50%だけで冷間成形され、最終的に350~500℃の温度で硬化されるか、または、600~1000℃の範囲の温度で溶液熱処理され、10~50%だけで冷間成形され、最終的に350~500℃の温度で硬化されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一つに記載の銅合金の使用。
【請求項6】
硬化後に材料が再び冷間成形されることを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の特徴を有する銅合金の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
銅は、熱および電気に対して極めて伝導率が高く、耐食性に優れ、中強度であり、形成性も良好な材料である。合金元素を加えることにより、特定の用途に合わせて調整される。
【0003】
高強度の銅-クロム-ジルコニウムまたは延性のある銅-銀からなる銅合金は、最近では、特定の用途に応じて、連続鋳造用の鋳型(金型)を製造するために一般的に使用されている。鋳造プラントの処理能力がますます向上しているため、材料が満たすべき要求は着実に厳しくなってきている。これは特に、非常に高速な鋳造速度を持つ高スループットの鋳造プラント、例えば薄いスラブ鋳造プラントに該当する。
【0004】
鋳造鋳型のための銅合金およびその使用は、WO2004/074526A2またはUS2015/0376755A1に開示されている。そこに開示されている銅合金は、それぞれ0.40質量%までのクロム含有量と0.6質量%までのクロム含有量を有する。
【0005】
鋳造鋳型の精巧な構造設計にもかかわらず、使用中に発生する非常に高い熱応力および大きな温度変化は、鋳型材料に非常に大きな応力を生じさせる。CuCrZrのような比較的高強度の材料の場合には、熱疲労と機械的疲労の組み合わせによる初期の亀裂(クラック)形成が頻繁に発生する。これは一般的に、最大の熱応力が存在する浴表面領域で発生する。一方、銅-銀などの軟質でより延性のある材料の場合には、クラック形成は一般的には発生しないが、その代わりにバルジングとして知られている鋳造鋳型の望ましくない永久塑性変形が発生する。これは、鋳型内の異なる熱膨張に起因する高い機械的応力によって引き起こされる。永久変形は、材料の強度、すなわち降伏点がこれらの応力を超えたときに発生する。
【0006】
上記のような影響のために、動作寿命の要件を満たすことができない場合や、鋳造プラントの処理能力をさらに向上させることができない場合が多い。同様に不利な効果は、溶接技術において、熱的および機械的に高い応力を受けた電力伝導部品、例えば溶接電極、溶接キャップ、溶接ローラー、電極ホルダ、または溶接ノズルなどのために銅合金を使用する場合にも生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2004/074526A2
【特許文献2】US2015/0376755A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
先行技術に鑑み、本発明の課題は、鋳造鋳型または鋳造鋳型部品に使用された場合に、高い処理能力と改善された動作寿命を達成する銅合金を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1に記載の請求項1に記載の銅合金によって達成される。
【0010】
本発明によれば、銅合金は、質量%(溶融分析の質量に対する割合)で、020~0.50の銀(Ag)、0.050~0.50ジルコニウム(Zr)、最大0.060のリン(P)、最大の0.005クロム(Cr)を含み、残りの銅(Cu)および避けられない不純物を含む他の合金元素を含み、他の合金元素の割合は(≦)0.50以下である。
【0011】
本発明に従って提案される銅材料は、高い熱伝導率を有し、十分に高い強度を有し、かつ亀裂の発生および成長を遅らせることができる銅合金である。電気伝導率は50~54MS/mの範囲である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
銅合金の特に有利な実施形態は、質量%(溶融分析の質量に対する割合)で、0.080~0.120の銀(Ag)、0.070~0.200のジルコニウム(Zr)、0.0015~0.025のリン(P)、最大0.005のクロム(Cr)から成り、残りは銅(Cu)および避けられない不純物を含む他の合金元素であり、他の合金元素の割合は0.10以下である。
【0013】
本発明の一態様においては、クロム含有量が0.005質量%以下であることを提供する。本発明の銅合金のクロム含有量は、銅合金系のクロムが脆く、銅合金の疲労強度に悪影響を及ぼす可能性のある二次相として析出するため、0.005質量%以下に維持される。本発明に従って提供される低合金銅-ジルコニウム-銀(CuZrAg)材料は、驚くべきことに、鋳造鋳型または鋳造鋳型部品、特に型板に対して非常に有利な特性を示す。銀の含有量は、銅合金からなる鋳造鋳型または鋳造鋳型部品のクリープ強度を増加させる。システム中のジルコニウム含有量は、低い合金元素含有量を有する銅材料には珍しい強度値と高い導電性とを兼ね備えている。強度の向上は、混合結晶強化(Agによる)、10から50%、特に10から40%の範囲の冷間成形、および析出硬化(沈殿硬化)(CuZrおよび/またはZrP析出物の形でのZrによる)のメカニズムの組み合わせによって達成される。ここで、特にジルコニウムは非常に効果的である。本発明による量のジルコニウムの合金化は、延性および熱伝導率および電気伝導率のわずかな低下をもたらすが、その結果、強度、熱安定性およびトライボロジー抵抗の有用な増加をもたらす。
【0014】
さらに、本発明による銅材料は、DIN ISO 5182に従って測定される高い軟化温度530℃を有する。
【0015】
有利な銅合金としては、ジルコニウム含量(Zr)0.130質量%、銀含量(Ag)0.1質量%、リン含量(P)0.0045質量%である。このような銅合金について、硬度97HBW 2.5/62.5、導電率53.7MS/mを測定した。
【0016】
銀およびジルコニウムの含有量が最大0.50質量%の低合金銅材料は、鋳造鋳型または鋳造鋳型部品に使用するのに特に適した特性を示す。これには、強度の向上と、ほぼ一定の熱伝導性を有する高レベルの熱軟化抵抗が含まれる。銅材料はまた、銅‐クロム‐ジルコニウム鉄(CuCrZr)と比較して耐疲労性の改善を示す。
【0017】
鋳型の材料または鋳型部品の材料は、使用中に鋳造側で非常に高い熱負荷を受ける。CuAgのような比較的軟らかい材料の場合には、このような負荷が頻繁に発生し、この領域で材料の塑性流動(バルジング)が発生する。本発明の銅合金は、CuAgに比べて強度が高いため、このような変形は発生しないか、あるいは発生する程度はCuAgの場合よりもかなり小さい。また、CuCrZr合金と比較して熱伝導率が向上しているため、鋳造側の温度レベルが低下し、そこに存在する応力が減少する。CuCrZrの場合のように、応力ピークによるクラックの発生はより遅れることになる。
【0018】
合金組成、冷間成形、適切な硬化パラメータにより、強度と耐軟化性を目的に応じて設定することができる。これにより、鋳造用鋳型または鋳造用鋳型部品、例えば鋳型板を製造することが可能となり、これは、第一に、使用中に金属融液と接触する高温側においてある程度の再結晶化を許容し、それによって良好な疲労特性を達成し、第二に、強度が向上しているために冷却媒体と接触する低温側では塑性変形を示さない。鋳造用鋳型または鋳造用鋳型部品、例えば鋳型板を製造することが可能となる。
【0019】
本発明の目的のためには、中程度の硬度範囲の銅合金が有利であると考えられるが、それは、ここでは、亀裂の開始が遅くなりおよび亀裂の成長が遅れることが予想されるからである。110HBWの領域の硬度値が達成される。このように、これらの値は、鋳造鋳型用および鋳型鋳型部品用の銅合金、または鋳造用鋳型部品用の銅合金の典型的な値の間にある。最大95%IACSの本発明の銅合金の導電率は、CuCrZrの導電率よりも高く、ほぼCuAg材料の範囲内である。しかしながら、>500℃の軟化抵抗は、一方で、驚くべきことに、CuCrZr材料の範囲にある。このような組み合わせは、本発明の銅合金を鋳造鋳型または鋳造鋳型部品の材料、特にチル鋳型(鋳型)の材料として使用するために非常に有益である。
【0020】
銅合金は、鋳造後に熱間成形および/または冷間成形することができる。粒度を小さく設定するためには、成形温度から急冷することが好ましい。別の溶体化熱処理を行うと、組織が粗くなり、二次再結晶が起こる可能性がある。適度な(中強度の)強度を確保するためには、冷間成形は硬化前に、または任意で硬化後に行うことが望ましい。硬化は350~500℃で行われる。
【0021】
銅材料の伝導率は熱処理によって設定され、ここでは370W/m・Kまでの伝導率または50~54MS/mまでの伝導率が設定されている。
【0022】
本発明で提案される銅合金は、鋳造用鋳型または鋳造用鋳型部品を製造するための材料として特に好適である。鋳造用鋳型部品の例としては、鋳型板が挙げられる。本発明に従った鋳造鋳型は、ブロック、ビレット、スラブ、特に薄いスラブの連続鋳造に使用することができる。さらに、鋳造ホイール、鋳造ドラムおよび鋳造ローラー、または他の溶融るつぼなどの他の鋳造鋳型または鋳造鋳型部品もまた、この材料から製造することができる。
【0023】
溶接技術の部品、例えば溶接電極、溶接キャップ、溶接ローラーまたは溶接ノズルのための使用は、材料の有利な特性のために同様に考えられる。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の質量%(溶融分析の質量に対する割合)で、
銀(Ag) 0.020~0.50
ジルコニウム(Zr) 0.050~0.50
リン(P) 0.0015~0.025
クロム(Cr) 0.005以下
残りが銅(Cu)および、避けられない不純物を含む他の合金化元素から成る銅合金の使用方法であって、
銅合金が、鋳造後、600~1000℃の範囲の温度で熱間成形され、その後、成形温度から50~2000K/分で急冷され、その後10~50%だけで冷間成形され、最終的に350~500℃の温度で硬化され、
硬化後に材料が再び冷間成形され、
他の合金化元素の割合が(≦)0.50以下であり、
銅合金が50~54MS/mの範囲の電気伝導率を有する、
鋳型板、鋳型管、鋳造ホイール、鋳造ドラム、鋳造ローラー、溶融るつぼからなる群から選択される鋳造用鋳型または鋳造用鋳型部品の材料としての前記使用方法。
【請求項2】
以下の質量%(溶融分析の質量に対する割合)で、
銀(Ag) 0.020~0.50
ジルコニウム(Zr) 0.050~0.50
リン(P) 0.0015~0.025
クロム(Cr) 0.005以下
残りが銅(Cu)および、避けられない不純物を含む他の合金化元素から成る銅合金の使用方法であって、
銅合金が、鋳造後、600~1000℃の範囲の温度で溶体化熱処理され、10~50%だけで冷間成形され、最終的に350~500℃の温度で硬化され、
硬化後に材料が再び冷間成形され、
他の合金化元素の割合が(≦)0.50以下であり、
銅合金が50~54MS/mの範囲の電気伝導率を有する、
鋳型板、鋳型管、鋳造ホイール、鋳造ドラム、鋳造ローラー、溶融るつぼからなる群から選択される鋳造用鋳型または鋳造用鋳型部品の材料としての前記使用方法。
【請求項3】
銅合金が、
銀(Ag) 0.080~0.120
ジルコニウム 0.070~0.200
リン 0.0015~0.025
クロム(Cr) 0.005以下
残りが銅(Cu)および、避けられない不純物を含む他の合金化元素から成り、
他の合金化元素の割合が(≦)0.10以下である、請求項1または2に記載の使用方法。
【請求項4】
銅合金が、中程度の硬度範囲の硬度(110HBWの領域)を有する、請求項1~3の何れか一つに記載の使用方法。
【請求項5】
銅合金が、97HBWの硬度を有する、請求項1~3の何れか一つに記載の使用方法。
【請求項6】
銅合金が、中程度の硬度範囲(97HBW~110HBW)の硬度を有する、請求項1~3の何れか一つに記載の使用方法。
【外国語明細書】