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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005578
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 9/04 20060101AFI20230111BHJP
   H01Q 1/42 20060101ALI20230111BHJP
   H01Q 1/24 20060101ALI20230111BHJP
   H01Q 1/48 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
H01Q9/04
H01Q1/42
H01Q1/24 Z
H01Q1/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107581
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000113665
【氏名又は名称】マスプロ電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】福島 滉希
【テーマコード(参考)】
5J046
5J047
【Fターム(参考)】
5J046AA02
5J046AA03
5J046AA07
5J046AB06
5J046AB13
5J046TA04
5J047AA02
5J047AA03
5J047AA07
5J047AB06
5J047AB13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】周辺環境の影響によるアンテナ特性の劣化を抑制する技術及び無線通信装置を提供する。
【解決手段】自動点滅器において、制御基板22は、第1の面にアンテナ221及び制御IC222が設けられ、第2の面にグランドパターン223が設けられる。グランドパターン223の最大幅は、アンテナ221で送受信される電波である対象電波の波長の1/2より短く構成される。補助グランド部を構成するスペーサ28、29及びアースリング24は、グランドパターン223上に設けられた2つ以上の接続点C1~C3に接続される。補助グランド部は、補助グランド部を介した接続点C1~C3間の導通経路がグランドパターンの最大幅以上の長さとなる構造を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面にアンテナ及び前記アンテナを介して無線通信を行う回路が設けられ、第2の面にグランドパターンが設けられ、前記グランドパターンの最大幅が前記アンテナで送受信される電波である対象電波の波長の1/2より短く構成された誘電体基板と、
前記グランドパターン上に設けられた2つ以上の接続点に接続され、前記接続点間の導通経路が前記グランドパターンの最大幅以上の長さとなる構造を有する補助グランド部と、
を備える無線通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信装置であって、
前記アンテナは、モノポールアンテナであり、
前記補助グランド部の導通経路の最大長が、前記対象電波の波長の1/2以上に設定された、
無線通信装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の無線通信装置であって、
前記補助グランド部は、
前記誘電体基板の前記第2の面から突出する複数の柱部と、
前記複数の柱部の先端部を互いに導通させる梁部と、
を備える、
無線通信装置。
【請求項4】
請求項3に記載の無線通信装置であって、
前記誘電体基板及び前記補助グランド部を収納する筐体を更に備え、
前記梁部は、前記筐体の内壁に沿って配置された、
無線通信装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の無線通信装置であって、
前記梁部は、リング状に設けられた
無線通信装置。
【請求項6】
請求項3から請求項5までのいずれか1項に記載の無線通信装置であって、
前記梁部は、棒状または帯状の金属により構成された
無線通信装置。
【請求項7】
請求項6に記載の無線通信装置であって、
前記梁部は、蛇腹状に屈曲させた形状を有する
無線通信装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の無線通信装置であって、
前記梁部は、部分的にくり抜かれた構造を有する
無線通信装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の無線通信装置であって、
前記複数の接続点のうちの2つは、前記グランドパターンが最大幅を有する部位の両端に設けられる
無線通信装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の無線通信装置であって、
前記複数の接続点のうちの1つは、前記アンテナへの給電点までの距離が最短となる基板端部に設けられる
無線通信装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の無線通信装置であって、
前記補助グランド部は、前記誘電体基板における前記第2の面に対向する位置に配置される金属構造体と、前記誘電体基板との間に配置された
無線通信装置。
【請求項12】
請求項11に記載の無線通信装置であって、
給電を受けるために設けられた電源プラグを更に備え、
前記金属構造体は、前記電源プラグが接続され、前記誘電体基板への給電を行う電源ソケットを備えた電源台に属する構造物である
無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機器に内蔵される無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、街灯等の照明を周囲の明るさに応じて自動的に「入」「切」する自動点滅器に無線通信装置を組み込んで、自動点滅器を遠隔管理する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-177866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように機器に内蔵される無線通信装置では、機器の小型化に伴って、アンテナを搭載する基板のサイズも小さくなり、アンテナの大きさに対して十分なグランドを確保できないという課題があった。
【0005】
アンテナのグランドを十分に確保できない場合、アンテナ特性が周辺環境の影響を受けやすくなる。特に、機器を固定するための金具や、機器に電力を供給するために接続される電源台に内蔵された金具等の金属構造体、更には、電源台から延びる給電ケーブル等の影響を受けて指向性が歪む。その結果、機器単体では、アンテナ特性の要求値を満たしているにも関わらず、ソケットや金具を取り付けた実際の使用状態では、要求値を満たすことができなくなる場合があった。
【0006】
本開示では、周辺環境の影響によるアンテナ特性の劣化を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、無線通信装置であって、誘電体基板と、補助グランド部と、を備える。誘電体基板は、第1の面にアンテナ及びアンテナを介して無線通信を行う回路が設けられ、第2の面にグランドパターンが設けられ、グランドパターンの最大幅がアンテナで送受信される電波である対象電波の波長の1/2より短く構成される。補助グランド部は、グランドパターン上に設けられた2つ以上の接続点に接続され、接続点間の導通経路がグランドパターンの最大幅以上の長さとなる構造を有する。
【0008】
このような構成によれば、アンテナのグランドが不足することによるアンテナの性能劣化を抑制できる。
本開示の一態様では、アンテナは、モノポールアンテナであってもよい。補助グランド部の導通経路の最大長が、対象電波の波長の1/2以上に設定されてもよい。
【0009】
このような構成によれば、モノポールアンテナの性能を十分に引き出すことができる。
本開示の一態様では、補助グランド部は、複数の柱部と、梁部と、を備えてもよい。柱部は、誘電体基板の第2の面から突出するように構成され、梁部は、複数の柱部の先端部を互いに導通させるように構成されてもよい。
【0010】
本開示の一態様は、誘電体基板及び補助グランド部を収納する筐体を更に備えてもよい。梁部は、筐体の内壁に沿って配置されてもよい。
このような構成によれば、筐体内の限られたスペースに、補助グランド部を設けることができる。
【0011】
本開示の一態様では、梁部は、リング状に設けられてもよい。
このような構成によれば、誘電体基板に対して補助グランド部がバランスよく配置されるため、アンテナ特性を安定させることができる。
【0012】
本開示の一態様では、梁部は、棒状または帯状の金属により構成されてもよい。
このような構成によれば、補助グランド部を簡易に製造できる。
本開示の一態様では、梁部は、蛇腹状に屈曲させた形状を有してもよい。
【0013】
このような構成によれば、限られたスペースにおいて、補助グランド部によって実現されるグランドの長さを効率よく増大させることができる。
本開示の一態様では、複数の接続点のうちの1つは、アンテナへの給電点までの距離が最短となる基板端部に設けられてもよい。
【0014】
このような構成によれば、補助グランド部を効率よく機能させることができる。
本開示の一態様では、複数の接続点のうちの2つは、グランドパターンが最大幅を有する部位の両端に設けられてもよい。
【0015】
このような構成によれば、補助グランド部によって実現されるグランド長を最大限に確保できる。
本開示の一態様では、補助グランド部は、誘電体基板における第2の面に対向する位置に配置される金属構造体と、誘電体基板との間に配置されてもよい。
【0016】
このような構成によれば、金属構造体によるアンテナ特性への影響を抑制できる。
本開示の一態様は、給電を受けるために設けられた電源プラグを更に備えてもよい。金属構造体は、電源プラグが接続され、誘電体基板への給電を行う電源ソケットを備えた電源台に属する構造物であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の自動点滅器が街路灯の支柱に取り付けられた状態を示す説明図である。
図2】自動点滅器の本体の構成を示す斜視図である。
図3】自動点滅器の本体を、ケース部を取り除いて、図2とは異なる角度から見た斜視図である。
図4】アースリングの構造を示す正面図である。
図5】アースリングの構造を示す平面図である。
図6】本体の底壁部の構成と、底壁部に対するアースリングの配置を示す説明図である。
図7】自動点滅器に内蔵されたアンテナの特性の測定方法を示す説明図である。
図8】アースリングを備える実施例、及びアースリングを備えない比較例のアンテナ特性を測定した結果を示すグラフである。
図9】アースリングの他の構成例を示す説明図である。
図10図9に示すアースリングを適用した場合、及び帯状部の一部除去したアースリングを適用した場合についてアンテナ特性を測定した結果を示すグラフである。
図11】アースリングの他の構成例を示す説明図である。
図12】アースリングの他の構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本開示の実施形態を図面と共に説明する。
[1.構成]
本実施形態の無線通信装置が組み込まれた自動点滅器1は、図1に示すように、街路灯101の支柱102等に取り付けられ、周囲の明るさに応じて自動的に街路灯101を点灯及び消灯する。また、街路灯101が点灯したときの明るさ等、街路灯101の状態を検出して、無線通信によって、監視用のサーバに送信する機能を有する。なお、本実施例では街路灯101の明るさを監視したが、これに換えて例えば、街路灯101の消費電流・消費電力値を監視してもよい。また、電圧を監視してもよい。
【0019】
自動点滅器1は、本体2と、電源台3と、取付金具4とを備える。
電源台3は、円柱状に形成された樹脂製の筐体を有する。円柱状の筐体の第1の底面である上面は、本体2に設けられた電源プラグ2a(図2及び図3参照)を着脱自在な電源ソケットを構成する。円柱状の筐体の第2の底面である下面は、商用電源に到る第1の電源ケーブル、及び制御対象となる街路灯101に到る第2の電源ケーブルを含むケーブル群5が取り付けられる。
【0020】
電源台3は、筐体の内部に、ケーブル端子、及びソケット金具等の金属構造物を備える。ケーブル端子は、ケーブル群5の芯線を固定するための端子である。ソケット金具は、ケーブル端子と導通し、かつ、本体2が電源台3に接続されたときに電源プラグ2aを構成するプラグ金具と接触する金具である。
【0021】
取付金具4は、直角に交わる二つの平板部4a,4bを有したL字型の金具である。第1の平板部4aは電源台3の下面に固定される。第2の平板部4bは、支柱102等の固定対象へのねじ止めに用いる長孔を有する。
【0022】
本体2は、図2及び図3に示すように、センサ基板21と、制御基板22と、電源基板23と、アースリング24と、筐体25と、を備える。筐体25は、中空の円筒形状に構成され、内部に各基板21~23を収納する。筐体25は、カバー部26と、底板部27とを備える。
【0023】
図2及び図3では、見やすくするために、基板間を接続する配線等の図示を省略する。また、アースリング24は、他の部位との位置関係をわかりやすくするために、背後の構成を透過して示す。
【0024】
センサ基板21は、自動点滅器1の周囲の明るさを検出するセンサ、及び自動点滅器1によって点灯された照明の明るさを検出するセンサを備える。センサ基板21は、コネクタを介して制御基板22に、電気的に接続されると共に、物理的に固定される。
【0025】
制御基板22は、第1の面にグランドパターン223が形成され、第2の面に、アンテナ221、制御IC222等が実装される。ICは集積回路の略である。グランドパターン223は、アンテナ221の設置位置を境界として、2分される制御基板22の領域のうち、広い側の領域の全面に渡って形成される。但し、グランドパターン223中には、部品を差し込むためのランドや、ランド間を接続するパターン等、グランドパターン223とは非導通となる部位が部分的に設けられている。なお、無線通信に用いる電波である対象電波の波長をλ、グランドパターン223の最大径をLとして、グランドパターン223の大きさは、L<λ/2に設定されている。
【0026】
アンテナ221は、二共振型のモノポールアンテナ、ここでは逆L型アンテナが用いられ、しかも、放射器となる部位を2つ折りに折り畳んだ構造を有する。アンテナ221は、2つの周波数帯の電波、具体的には、GNSS衛星からの送信電波(例えば、1575MHz)、及び無線通信に用いる電波(例えば、925MHz)を受信する。なお、アンテナ221は、逆L型アンテナに限定されるものではなく、逆F型アンテナ等、グランド面を必要とする任意のモノポールアンテナを用いることができる。
【0027】
アンテナ221は、制御基板22の中心を通って基板面を2分する線を基準線として、この基準線に沿って、且つ、基準線に対して直交する方向の基板端に向けて、基板端までの幅の1/2程度、基準線からシフトした位置に配置される。
【0028】
制御IC222には、制御回路、GNSS回路、監視回路等が含まれる。GNSSは、全地球航法衛星システムの略である。
制御回路は、センサ基板21での検出結果に従って、自動点滅器1の周囲の明るさが点等閾値以上になった場合に、照明の点灯を指示する点灯信号を出力し、周囲の明るさが消灯閾値以下になった場合に、照明の消灯を支持する消灯信号を出力する。
【0029】
GNSS回路は、アンテナ221にて受信されるGNSS衛星からの送信信号に基づいて、自動点滅器1の設置位置等の情報を生成する。
監視回路は、センサ基板21での検出結果に基づき、点灯した照明の明るさ等、照明の状態を表す状態情報を生成し、この状態情報に、GNSS衛星からの電波に基づいて算出される位置情報を付加した送信情報を生成する。監視回路は、更に、生成された送信情報を、決められた通信プロトコルに従い、アンテナ221を介して、監視サーバに送信する。
【0030】
電源基板23は、リレー回路及び制御電源回路を備える。リレー回路は、制御IC222の制御回路にて生成された点灯信号及び消灯信号に従って、照明点灯用のAC電源経路、すなわち第1の電源ケーブルと第2の電源ケーブルとの間を、接続、遮断する回路である。制御電源回路は、第1の電源ケーブルから供給される交流電力を直流電力に変換して、制御基板22に供給する制御電源を生成する回路である。
【0031】
カバー部26は、制御基板22に搭載されたアンテナ221にて送受信される電波、及び、センサ基板21に搭載された各センサが検知する波長の光を透過する樹脂製の部材である。
【0032】
底板部27は、図2及び図3図6に示すように、円板状に形成された樹脂製の部材である。底板部27は、電源台3との対向面(以下、底板下面)に、電源プラグ2aを構成する3つのプラグ金具が突設される。底板部27は、底板下面とは反対側の面(以下、底板上面)に、縁壁271と、2つのカバー固定用ボス272と、3つのスペーサ固定用ボス273とが突設される。
【0033】
縁壁271は、底板上面の周縁に沿って設けられる。2つのカバー固定用ボス272は、底板部27の直径となる線の両端に、縁壁271と一体に設けられる。各カバー固定用ボス272には、カバー部26の固定に用いるねじを挿通させるためのねじ孔が形成される。3つのスペーサ固定用ボス273は、いずれも、縁壁271から見てカバー固定用ボス272より内側であって、かつ、縁壁271から離れた位置に設けられる。各スペーサ固定用ボス273には、制御基板22及び電源基板23を位置決めするスペーサ28,29の固定に用いるねじを挿通させるためのねじ孔が形成される。
【0034】
3つのスペーサ固定用ボス273は、制御基板22及び電源基板23に、3個ずつ設けられるスペーサ固定用孔と対応する位置に設けられる。スペーサ固定用孔の位置については後述する。
【0035】
電源基板23は、リレー回路及び制御電源回路の実装面とは反対側の面が底板部27と対向するように、3個のスペーサ(以下、下側スペーサ)28を介して底板部27に固定される。制御基板22は、グランドパターン223が形成された面(以下、グランド面)が、電源基板23の実装面と対向するように、3個のスペーサ(以下、上側スペーサ)29を介して電源基板23に固定される。
【0036】
3対の下側スペーサ28と上側スペーサ29とは、それぞれ各対毎に一直線上に配置される。制御基板22及び電源基板23は、制御基板22のスペーサ固定用孔、上側スペーサ29、電源基板23のスペーサ固定用孔、下側スペーサ28、底板部27のスペーサ固定用ボス273のねじ孔を、全て挿通するねじによって、底板部27と一体に固定される。
【0037】
上側スペーサ29及び下側スペーサ28はいずれも金属製である。制御基板22上のグランドパターン223は、上側スペーサ29と一体に固定されたときに、上側スペーサ29と接触して導通した状態となるように構成される。電源基板23上のパターンは、上側スペーサ29及び下側スペーサ28と一体に固定されたときに、上側スペーサ29及び下側スペーサ28のいずれとも接触せず絶縁した状態となるように構成される。但し、上側スペーサ29と下側スペーサ28とは、固定用のねじを介して互いに導通する。
【0038】
つまり、制御基板22及び電源基板23が上側スペーサ29及び下側スペーサ28を介して底板部27と一体に固定されると、制御基板22のグランド面から3本の柱状のグランドが立設された状態となる。
【0039】
制御基板22において、3つのスペーサ固定用ねじ孔が形成される位置を、ここでは接続点C1~C3という。接続点C1~C3は、いずれも、アンテナ221によって仕切られる制御基板22上の2つの領域のうち広い側に設けられる。
【0040】
接続点C1は、アンテナ221の給電点Sから基準線に沿って見た制御基板22の両縁部のうち、より近い方の縁部に設けられる。接続点C2は、給電点Sを挟んで接続点C1とは反対側の縁部に設けられる。接続点C3は、接続点C2から、制御基板22の縁部に沿って、アンテナ221が位置する側とは反対側に移動した位置に設けられる。つまり、接続点C1~C3は、制御基板22の周縁部に、不均等な間隔で配置される。但し、接続点C1から接続点C2に至る直線距離、及び接続点C1から接続点C3に到る直線距離は、いずれも、できるだけ長くなるように、制御基板22の直径に近い長さに設定される。接続点C2から接続点C3に至る直線距離は、先の二つの直線距離の1/4~1/5程度となるように配置される。
アースリング24は、図4及び図5図6に示すように、底板部27の縁壁271の内周壁に沿って配置される帯状部241と、下側スペーサ28との導通の確保に用いる複数の爪部242とを備える。
【0041】
アースリング24は、金属薄板を加工することで構成される。帯状部241は、長手方向の両端を半田等によって接続することでリング状に形成される。
帯状部241は、当該アースリング24を底板部27に配置した時に、カバー固定用ボス272を迂回するために設けられた2つの屈曲部241aを有する。
【0042】
爪部242は、当該アースリング24を底板部27に配置した時に、3つのスペーサ固定用ボス273と対向する位置にそれぞれ設けられる。爪部242は、帯状部241の短手方向に突設され、その先端が、底板部27の中央方向に向けて屈曲したL字型の断面形状を有する。爪部242の幅は、スペーサ固定用ボス273の直径より大きく設定される。爪部242において、帯状部241の短手方向への突出量は、下側スペーサ28の長さと同程度に設定され、先端部の底板部27の中央方向への突出量は、スペーサ固定用ボス273の略全体を覆う大きさに設定される。また、爪部242は、その先端をU字状に切り欠いた切欠部242aを有する。爪部242は、底板部27を上面側から見たときに、スペーサ固定用ボス273に形成されたねじ孔が切欠部242a内に位置するように構成される。
【0043】
アースリング24は、爪部242の先端を下側スペーサ28と電源基板23との間に挟持させ、上側スペーサ29及び下側スペーサ28を挿通するねじが切欠部242aを通過するようにした状態でねじ止めすることで固定される。固定されたアースリング24は、下側スペーサ28と密着することで、制御基板22のグランドパターン223と導通する。これにより、アースリング24は、上側スペーサ29及び下側スペーサ28と共に、制御基板22(ひいてはアンテナ221)のグランドを拡張する。
【0044】
制御基板22のグランドパターン223と同電位となる上側スペーサ29、下側スペーサ28、及びアースリング24を総称して、補助グランド部という。補助グランド部は、制御基板22のグランド面から突設された3つの柱部(すなわち、上側スペーサ29及び下側スペーサ28)と、3つの柱部の先端部を互いに導通させる梁部(すなわち、アースリング24)とで構成される。
【0045】
補助グランド部は、接続点C1から接続点C2又は接続点C3に至る導電経路の経路長が、λ/2より大きく、すなわち、制御基板22のグランドパターン223の最大幅Lより大きくなるように設定される。
また、補助グランド部は、アンテナ221と、電源台3内部のケーブル端子及びソケット金具(更には、ケーブル群5)、並びに取付金具4等の金属構造体と間に位置するように配置される。
【0046】
[1-2.測定]
自動点滅器1に内蔵されたアンテナ221の特性を測定した結果について説明する。
図7に示すように、自動点滅器1と、自動点滅器1に内蔵されたアンテナ221から送信される通信用電波を受信する受信アンテナAとを所定距離をあけて対向配置する。自動点滅器1及び受信アンテナAをいずれもネットワークアナライザMに接続し、自動点滅器1(すなわちアンテナ221)の向きを360度回転させながら、垂直偏波の水平面及び垂直面での指向性を測定した。なお、制御基板22の基板面に沿った面が水平面であり、基板面に直交する方向と、アンテナ221の配置の説明で用いた基準線に沿った方向で決まる面が垂直面である。
【0047】
図8の中段及び下段に示すように、補助グランド部を有さない比較例では、本体2のみ(電池で駆動)の特性と比較して、電源台3及び取付金具4を装着した状態(以下、使用状態)の特性は、金属構造物の影響を受けて、垂直面での指向性の傾きが大きくなる。その結果、水平面が、垂直面指向性のヌルポイントに位置し、水平面での利得が著しく低下する。具体的には、利得が-3dBから-13dB程度に低下する。図8において、グラフの左上隅に示す数字が最大利得である。
【0048】
図8の上段に示すように、本実施形態の自動点滅器1では、使用状態であっても、垂直面での指向性の傾きが増大することなく、水平面での利得の低下も生じない。また、グランドが強化されたことにより、利得が-3dBから-1.6dBに向上した。
【0049】
なお、図8のグラフは、指向性を表すものであり、利得については、その絶対値を表すものではなく、最大値によって正規化された値が示されている。
[3.用語の対応]
本実施形態において、制御基板22(特に、アンテナ221、制御IC222の監視回路)、補助アンテナ部(すなわち、アースリング24、下側スペーサ28、上側スペーサ29)が無線通信装置に相当する。制御基板22が誘電体基板に相当し、制御基板22の実装面が誘電体基板の第1の面に相当し、制御基板22のグランド面が誘電体基板の第2の面に相当する。下側スペーサ28及び上側スペーサ29が補助アンテナ部の柱部に相当し、アースリング24が補助アンテナ部の梁部に相当する。
【0050】
[4.効果]
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(4a)自動点滅器1では、制御基板22のグランドパターン223を拡張する補助グランド部を備え、補助グランド部を経由した導通経路の経路長がλ/2より大きくなるように設定されている。従って、アンテナ221を内蔵する機器の構造的な制約によって、アンテナ221のグランドが不足することによるアンテナ221の性能劣化を抑制できる。
【0051】
(4b)自動点滅器1では、制御基板22及び電源基板23の固定に用いる上側スペーサ29及び下側スペーサ28が、補助グランド部の一部として利用される。しかも、補助グランド部を構成するアースリング24が、底板部27の縁壁271の内周壁に沿ってリング状に配置される。従って、自動点滅器1の筐体25内の限られたスペースに、補助グランド部を設けることができる。また、制御基板22に対して補助グランド部がバランスよく配置されるため、アンテナ特性を安定させることができる。
【0052】
(4c)自動点滅器1では、アースリング24が薄い金属板によって構成されているため、アースリング24を容易に製造できる。
(4d)自動点滅器1では、制御基板22における補助グランド部の接続点C1,C2が、制御基板22おいてグランドパターン223が最大幅を有する部位の両端に設けられる。従って、補助グランド部の導通経路の経路長、即ち、グランド長を最大限に確保できる。
【0053】
(4e)自動点滅器1では、接続点C1が制御基板22において給電点Sまでの距離が最短となる基板端に設けられている。接続点C1の一つをできるだけ給電点Sに近づけることで、補助グランド部をより効果的に機能させることができる。
【0054】
(4f)自動点滅器1では、補助グランド部は、制御基板22のグランド面に対向する位置に存在する金属構造体(すなわち、電源台3内の端子,取付金具4等)との間に配置されている。従って、これらの金属構造体によるアンテナ特性への影響を抑制できる。
【0055】
[5.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内にて種々の態様をとることができる。
【0056】
(5a)上記実施形態では、アースリング24の帯状部241が、底板部27の縁壁271の内周壁に沿って配置されているが、図9に示すアースリング61のように、帯状部611は、縁壁271の上面を覆うように設けられてもよい。この場合、カバー固定用ボス272が帯状部611によって覆われることがないように、帯状部611を複数に分割し、分割された帯状部611を、板状の接続片613を用いて互いに導通させてもよい。また、爪部612は、帯状部611と同一面に形成して、下側スペーサ28と底板部27のスペーサ固定用ボス273との間に、爪部612が挟持されるように構成してもよい。
【0057】
アースリング61を適用した場合、図10の上段に示すように、垂直面での指向性の傾きが抑制されるだけでなく、グランドが強化されたことにより、アースリング61がない場合と比較して、利得が-3dBから-2.9dBに向上する。
【0058】
(5b)上記実施形態では、アースリング24の帯状部241がリング状に接続されているが、帯状部241は、必ずしもリング状としなくてもよい。例えば、接続点C1、C3に設けられた柱部(すなわち、下側スペーサ28)間を接続する部位の帯状部241を除いてもよい。この場合でも、図9の下段に示すように、垂直面での指向性の傾きが抑制され、水平面での利得も、上記実施形態と比較すれば-1.6dB~-1.8dBに若干低下するものの、アースリング24を有さない従来品に利得(-3dB)からは大幅に向上する。
【0059】
(5c)上記実施形態では、アースリング24の爪部242の先端部が、電源基板23と下側スペーサ28との間に挟み込まれているが、挟み込まれる位置はこれに限定されない。例えば、下側スペーサ28と底板部27との間、又は上側スペーサ29と電源基板23との間、上側スペーサ29と制御基板22との間等に挟み込まれてもよい。
【0060】
(5d)上記実施形態では、3つの接続点C1~C3に接続される3本の柱部(すなわち、上側スペーサ29及び下側スペーサ28)のそれぞれに、アースリング24の爪部242を接続しているが、いずれか2か所、又はいずれか1か所で導通を確保してもよい。但し、爪部242を接続する柱部には、少なくとも給電点Sに最も近い接続点C1に接続される柱部を含めるようにしてもよい。
【0061】
(5e)補助グランド部の接続点の数は、3つに限るものではなく、1~2個でも、4個以上であってもよい。また、アースリング24が有する爪部242の数は、補助グランド部の接続点の数と一致している必要はなく、接続点の数より少なくてもよい。
【0062】
(5f)上記実施形態にて示したアースリング24の代わりに、図11に示すアースリング62を用いてもよい。アースリング62は、パンチングメタルやメッシュ等、孔の空いたシート状の金属材料を加工することで構成され、帯状部621及び爪部622が部分的にくり抜かれた構造を有する。この場合、補助グランド部の導通経路の経路長(すなわち、グランド長)が様々に異なることにより、広い周波数帯に対処できる。なお、アースリング62の孔の形状や大きさは、図示されたものに限定されず、任意の形状、任意の大きさとすることができる。
【0063】
(5g)上記実施形態にて示したアースリング24の代わりに、図12に示すアースリング63を用いてもよい。アースリング63は、帯状部631が、蛇腹状に屈曲した形状を有する。爪部632は、爪部242と同様である。この場合、アースリング63を配置するスペースが限られていても、長いグランド長を確保できる。
【符号の説明】
【0064】
1…自動点滅器、2…本体、2a…電源プラグ、3…電源台、4…取付金具、5…ケーブル群、21…センサ基板、22…制御基板、23…電源基板、24,61~63…アースリング、25…筐体、26…カバー部、27…底板部、28…下側スペーサ、29…上側スペーサ、221…アンテナ、222…制御IC、223…グランドパターン、241,611,621,631…帯状部、241a…屈曲部、242,612,622,632…爪部、242a…切欠部、271…縁壁、272…カバー固定用ボス、273…スペーサ固定用ボス、613…接続片、C1~C3…接続点、S…給電点。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12