(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055787
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】発酵分解卵殻膜製造方法
(51)【国際特許分類】
C12P 21/00 20060101AFI20230411BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20230411BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20230411BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20230411BHJP
A61K 8/99 20170101ALI20230411BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230411BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20230411BHJP
A61K 35/57 20150101ALI20230411BHJP
C12P 1/00 20060101ALI20230411BHJP
C07K 1/14 20060101ALI20230411BHJP
C12N 1/14 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C12P21/00 A
A61Q19/08
A61Q7/00
A61K8/98
A61K8/99
A61P17/00
A61P17/14
A61K35/57
C12P1/00 A
C07K1/14
C12N1/14 G
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009967
(22)【出願日】2023-01-26
(62)【分割の表示】P 2022159868の分割
【原出願日】2022-10-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2021164382
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521435802
【氏名又は名称】バイオサイエンステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100195752
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 一正
(72)【発明者】
【氏名】酒井 有紀
(72)【発明者】
【氏名】中村 弘一
(72)【発明者】
【氏名】片岸 梨香
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C083
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA07
4B064CA21
4B064CB01
4B064CD21
4B064CE20
4B064DA01
4B064DA20
4B065AA63X
4B065AC14
4B065BB28
4B065BD14
4B065CA24
4B065CA33
4B065CA44
4B065CA50
4B065CA60
4C083AA031
4C083AA032
4C083AA071
4C083AA072
4C083CC02
4C083EE12
4C083FF01
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB61
4C087CA03
4C087NA20
4C087ZA89
4C087ZA92
4H045AA20
4H045CA40
4H045EA15
4H045EA20
4H045FA70
4H045FA71
(57)【要約】
【課題】低コストで、ムコ多糖類を含む発酵分解卵殻膜を製造することを課題とする。
【解決手段】発酵により麹が生成した分解酵素により卵殻膜を分解して分解卵殻膜を製造する発酵分解卵殻膜製造方法であって、麹と卵殻膜とを混ぜることで発酵させて発酵分解卵殻膜液を生成する卵殻膜発酵工程を備えたことを特徴とする発酵分解卵殻膜製造方法とした。これにより、発酵により低コストで美容効果が高い成分を含む分解卵殻膜を製造することができるとともに、肌の真皮線維芽細胞によるコラーゲンやヒアルロン酸の産出能力を活性化してこれら抗老化成分を多く産出させるという大きな効果を奏している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵により麹が生成した分解酵素により卵殻膜を分解して分解卵殻膜を製造する発酵分解卵殻膜製造方法であって、麹と卵殻膜とを混ぜることで発酵させて発酵分解卵殻膜液を生成する卵殻膜発酵工程を備えたことを特徴とする発酵分解卵殻膜製造方法。
【請求項2】
前記卵殻膜発酵工程では、前記麹及び卵殻膜に酒粕を混ぜて発酵させることを特徴とする請求項1に記載の発酵分解卵殻膜製造方法。
【請求項3】
前記卵殻膜発酵工程の前に、種麹から前記麹を生成する麹生成工程を備えたことを特徴とする請求項1に記載の発酵分解卵殻膜製造方法。
【請求項4】
前記卵殻膜発酵工程の前に、種麹から前記麹を生成する麹生成工程を備えたことを特徴とする請求項2に記載の発酵分解卵殻膜製造方法。
【請求項5】
前記卵殻膜発酵工程の後に、前記発酵分解卵殻膜液における殺菌及び酵素を不活性にする不活性化工程を備えたことを特徴とする請求項1―4のいずれかに記載の発酵分解卵殻膜製造方法。
【請求項6】
前記不活性化工程の後に、前記発酵分解卵殻膜液から固形分を除去する固形分除去工程を備えたことを特徴とする請求項5に記載の発酵分解卵殻膜製造方法。
【請求項7】
前記固形分除去工程により固形分が除去された後の前記発酵分解卵殻膜液を乾燥させる乾燥工程を備えたことを特徴とする請求項6に記載の発酵分解卵殻膜製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵により卵殻膜を分解して発酵分解卵殻膜を製造する発酵分解卵殻膜製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鶏卵などの卵の卵殻の内側にある卵殻膜を分解して得られる分解卵殻膜は育毛や健康増進などに有効であるとされている。
【0003】
特許文献1には、卵殻膜粉末をアルカリ水溶液中で加水分解して、加水分解性卵殻膜を製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1:特許第6410229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、製造工程が複雑で高コストであるという問題がある。また、特許文献1に記載のもののようなアルカリ水による分解では、卵殻膜に高濃度で含まれ美容成分として効果が高いコラーゲンやヒアルロン酸、グルコサミンといったものまで分解してしまうという問題があった。保水性が高いヒアルロン酸やコンドロイチンは、肌の保湿性を高め、乾燥によるしわの改善効果が期待される成分であるが、これらが分解されてしまうと化粧品やサプリの原料として用いたときの効果が低下してしまう。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決して、低コストで美容効果が高い成分を含む分解卵殻膜を製造することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、発酵により麹が生成した分解酵素により卵殻膜を分解して分解卵殻膜を製造する発酵分解卵殻膜製造方法であって、麹と卵殻膜とを混ぜることで発酵させて発酵分解卵殻膜液を生成する卵殻膜発酵工程を備えたことを特徴とする発酵分解卵殻膜製造方法を提供するものである。
【0008】
この構成により、発酵により低コストで美容に効果が高い成分を多く含む分解卵殻膜を製造することができる。特に、保水性が高いヒアルロン酸やコンドロイチンは、肌の保湿性を高め、乾燥によるしわの改善効果が期待される成分であるが、これらが分解されずに化粧品やサプリの原料として用いられる。
【0009】
発酵分解卵殻膜製造方法であって、前記卵殻膜発酵工程では、卵殻膜に加えて酒粕を発酵させる構成としてもよい。
【0010】
この構成により、α-GG、アミノ酸、フェルラ酸といった日本酒の中に含まれる美容成分が溶け出し、美容に対する効果が期待できる。なお、日本酒の酒粕に替えて蜂蜜や穀物類を用いることができる。
【0011】
発酵分解卵殻膜製造方法であって、前記卵殻膜発酵工程の前に、種麹から前記麹を生成する麹生成工程を備えた構成としてもよい。
【0012】
この構成により、種麹から麹菌を培養することにより、麹菌がプロテアーゼ等のタンパク分解酵素や、アミラーゼ等糖分解酵素を産出することができる。
【0013】
発酵分解卵殻膜製造方法であって、前記卵殻膜発酵工程の後に、前記発酵分解卵殻膜液における殺菌及び酵素を不活性にする不活性化工程を備えた構成としてもよい。
【0014】
この構成により、濾過された分解液に含まれるプロテアーゼやアミラーゼによるタンパク質や糖の分解を止め、麹菌の増殖を停止させることができる。
【0015】
発酵分解卵殻膜製造方法であって、前記不活性化工程の後に、前記発酵分解卵殻膜液から固形分を除去する固形分除去工程を備えた構成としてもよい。
【0016】
この構成により、化粧品原料として不要な固形分である未分解の卵殻膜と麹菌の菌体を除去することができる。
【0017】
発酵分解卵殻膜製造方法であって、前記固形分除去工程により固形分が除去された後の前記発酵分解卵殻膜液を乾燥させる乾燥工程を備えた構成としてもよい。
【0018】
この構成により、使い勝手のよい粉状の発酵分解卵殻膜を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の発酵分解卵殻膜製造方法により、低コストで美容効果が高い成分を含む分解卵殻膜を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】比較例における対照に対する比較対象のアルカリ処理による加水分解卵殻膜による細胞あたりのコラーゲン産出率を示すグラフである。
【
図2】比較例における対照に対する比較対象のアルカリ処理による加水分解卵殻膜による細胞あたりのヒアルロン酸産出率を示すグラフである。
【
図3】本発明の実施例1における対照に対する本発明の発酵分解卵殻膜による細胞あたりのコラーゲン産出率を示すグラフである。
【
図4】本発明の実施例1における対照に対する本発明の発酵分解卵殻膜による細胞あたりのヒアルロン酸産出率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【実施例0021】
本発明の実施例1における発酵分解卵殻膜製造方法について説明する。実施例1における発酵分解卵殻膜製造方法は、麹から産出されるプロテアーゼなどのタンパク分解酵素により卵殻膜をペプチドの状態まで分解させる卵殻膜発酵工程を備えている。
【0022】
実施例1においては、卵殻膜発酵工程を実施して発酵分解卵殻膜液を生成する。卵殻膜発酵工程は、粗粉砕された卵殻膜と酒粕(アルコール分を除去している)をタンクに投入し麹を混ぜる。実施例1における麹は醤油麹、米麹や豆麹等の任意の麹を用いることができる。そして、卵殻膜10~100gに対して酒粕10g~100g(乾燥重量)を混ぜて麹を投入すると、およそ45℃で酵素分解がおきる。この状態で0.5~7日間熟成させると、麹が分泌するプロテアーゼ酵素、ペプチダーゼ酵素、及びアミラーゼによりタンパク質や糖を分解する。そして、発酵が終わると発酵分解卵殻膜を含む混濁液(以下「発酵分解卵殻膜液」ともいう。)となる。
【0023】
発酵によるタンパク質の分解は、アミノ酸まで分解されることなく、タンパク質の一部がペプチドに分解された状態で終了する。ペプチドは肌のターンオーバーを促進すると言われている。また、液状となった発酵分解卵殻膜液は、コンドロイチン、ヒアルロン酸といったアミノ酸を含むムコ多糖類やコラーゲン等が含まれている。
【0024】
上述のペプチド、ムコ多糖類、及びコラーゲンが含まれていることで、サプリメントや化粧品に加工することで美容や健康を保つ上で重要な成分を保持した分解卵殻膜とすることができる。
【0025】
なお、実施例1においては、卵殻膜と酒粕を1:1で加えて発酵させるように構成したが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、酒粕を加えずに、卵殻膜のみで発酵させてもよく、卵殻膜と酒粕を1:1ではなく任意の割合で混ぜてもよい。また、酒粕に替えて、豆乳や蜂蜜を用いてもよい。
【0026】
このように、実施例1においては、タンパク分解酵素を分泌する麹を用いた発酵により卵殻膜を分解して分解卵殻膜を製造する発酵分解卵殻膜製造方法であって、
前記麹が分泌したタンパク分解酵素により卵殻膜を発酵させる卵殻膜発酵工程を備えたことを特徴とする発酵分解卵殻膜製造方法により、低コストで美容効果が高い成分を含む分解卵殻膜を製造することができる。
実施例2における麹生成工程では、種麹から麹を生成する。滅菌水5lに同じく滅菌処理した卵殻膜10~100g(乾燥重量)、ブドウ糖10~100gを入れ、麹菌液10mlを加えて25℃~45℃で1日~1週間曝気しながら攪拌する。この間、麹菌はプロテアーゼやペプチダーゼといったタンパク分解酵素や糖分解酵素のアミラーゼを産出する。そして、それら酵素を液中に溶出させる。
次に、麹生成工程で生成した麹を使って、卵殻膜発酵工程を実施して発酵卵殻膜液を生成する。卵殻膜発酵工程は、粗粉砕された卵殻膜と酒粕をタンクに投入し、麹生成工程で生成された麹を混ぜる。実施例2における麹は醤油麹、米麹や豆麹等の任意の麹を用いることができる。そして、卵殻膜10~100gに対して酒粕10g~100g(乾燥重量)を混ぜて麹を投入すると、およそ45℃で酵素分解がおきる。この状態で0.5~7日間熟成させると、麹が分泌するプロテアーゼ酵素、ペプチダーゼ酵素、及びアミラーゼによりタンパク質や糖を分解する。そして、発酵が終わると発酵分解卵殻膜を含む混濁液(以下「発酵分解卵殻膜液」ともいう。)となる。
発酵によるタンパク質の分解は、アミノ酸まで分解されることなく、タンパク質の一部がペプチドに分解された状態で終了する。液状となった発酵分解卵殻膜液は、コンドロイチン、ヒアルロン酸といったアミノ酸を含むムコ多糖類やコラーゲン等が含まれている。
なお、実施例2においては、卵殻膜1に対して酒粕1を加えて発酵させるように構成したが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、酒粕を加えずに、卵殻膜のみで発酵させてもよく、卵殻膜と酒粕を1:1ではなく任意の割合で混ぜてもよい。また、酒粕に替えて、豆乳や蜂蜜を用いてもよい。
このように、実施例2においては、卵殻膜発酵工程の前に、種麹から麹を生成する麹生成工程を備えたことで、種麹から麹菌を培養することにより、麹菌がプロテアーゼ等のタンパク分解酵素や、アミラーゼ等糖分解酵素を産出することができる。