(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055797
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】非イオン性造影剤の調製に有用な中間体の調製プロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 231/12 20060101AFI20230411BHJP
C07C 237/46 20060101ALI20230411BHJP
C07C 231/02 20060101ALI20230411BHJP
A61K 49/10 20060101ALN20230411BHJP
【FI】
C07C231/12
C07C237/46
C07C231/02
A61K49/10
【審査請求】有
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010216
(22)【出願日】2023-01-26
(62)【分割の表示】P 2021042987の分割
【原出願日】2016-06-02
(31)【優先権主張番号】108524
(32)【優先日】2015-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
(71)【出願人】
【識別番号】315015195
【氏名又は名称】ホビオネ サイエンティア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】ヘッギエ,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ネイバー,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】バジネット,パトリック アール
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,フィリペ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】非イオン性造影剤の調製に有用な1以上の中間体化合物の調製プロセスを提供する。
【解決手段】i-a)アミド化、i-b)水素化によるニトロ基の還元、i-c)ヨウ素化、i-d)アシル化及びi-e)選択的な加水分解を1以上の連続フロー反応器中で実行する、非イオン性造影剤の調製に有用な、例えば下記に示す中間体化合物の調製プロセスである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非イオン性造影剤の調製に有用な1以上の中間体化合物の調製プロセスであって、2以上の逐次化学反応を含む多段階化学合成の実行を含み、前記各逐次化学反応は2以上の前記中間体化合物の少なくとも1つの前記調製につながり、2以上の前記逐次化学反応が1以上の連続フロー反応器中で実行され、2以上の前記逐次化学反応の少なくとも2つが中断なく連続的に実行され、2以上の前記逐次化学反応は以下の連続フロー(i)または連続フロー(ii)から選択されたいずれかであって、
連続フロー(i)
i-a) アミド化、
i-b) 水素化によるニトロ基の還元、
i-c) ヨウ素化、
i-d) アシル化及び
i-e) 選択的な加水分解、または
連続フロー(ii)
ii-a) 水素化によるニトロ基の還元、
ii-b) ヨウ素化、
ii-c) 求核アシル基置換及び
ii-d) アシル化
前記非イオン性造影剤は、1以上のイオヘキソールおよびイオジキサノールであり、
前記非イオン性造影剤の調整に有用な前記中間体化合物は、化学式II、III、IV、VおよびVIに示される1以上の化合物であるか、
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
または
前記非イオン性造影剤は、イオパミドールであり、
前記非イオン性造影剤の調整に有用な前記中間体化合物は、化学式VIII、IX、X、XIおよびXIIに示される1以上の化合物である、
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
ことを特徴とする中間体化合物の調整プロセス。
【請求項2】
前記1以上の連続フロー反応器は、パイプ形反応器、プラグ流反応器、管形反応器、ピストン流れ反応器または2以上の反応器の組合せを含む請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項3】
各反応は、1以上の前記連続フロー反応器の個別の前記連続フロー反応器内で実行される請求項1または2に記載の調製プロセス。
【請求項4】
前記調製プロセスより生ずる中間体化合物は非イオン性造影剤の調製に使用される請求項1乃至3のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項5】
前記連続フロー(i)において、
前記化学反応ステップi-a)の前記生成物は、第2の中間体化合物を製造するための前記化学反応ステップi-b)の反応物として使用される第1の中間体化合物であり、
このフローは、
前記第2の中間体化合物が、第3の中間体化合物を製造するための前記化学反応ステップi-c)の反応物として使用される反応ステップ、
前記第3の中間体化合物が、第4の中間体化合物を製造するための前記化学反応ステップi-d)の反応物として使用される反応ステップ、および
前記第4の中間体化合物が、第5の中間体化合物を製造するための前記化学反応ステップi-e)の反応物として使用される反応ステップ
でも同じように繰り返される請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項6】
前記調製プロセスの最終中間体化合物が所望された場合を除き、前記調製プロセスはいずれの中間体化合物の単離または精製をすることなく実行される請求項1乃至5のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項7】
中断は単離または精製のステップを含む請求項1乃至6のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項8】
前記調製プロセスは、以下の
(i)1以上の洗浄ステップ
(ii)1以上の精製ステップ
(iii)1以上の単離ステップ
(iv)1以上の溶媒の使用、任意に1以上の溶媒変性ステップ及び/または溶媒切替ステップ
の1以上を含む請求項1乃至7のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項9】
前記1以上の連続フロー反応器中で、さらに条件を制御する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の調整プロセス。
【請求項10】
条件の制御は、以下に示す1以上の条件の調整または変更を含む請求項1乃至9のいずれか1項に記載の調整プロセス。
(i)1以上の連続フロー反応器内の温度、
(ii)1以上の連続フロー反応器内の圧力、
(iii)1以上の連続フロー反応器内の溶媒または溶媒系の使用、
(iv)1以上の連続フロー反応器内の流動速度、
(v)1以上の連続フロー反応器に入る供給物中の反応物の濃度
【請求項11】
前記1以上の連続フロー反応器を通る試剤の流動速度は、実行される前記化学反応に応じて、制御、変更または調整される請求項1乃至10のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項12】
前記試剤の流動速度は、前記1以上の連続フロー反応器の1以上の選択された距離に従って異なっており、任意の前記1以上の選択された距離は重複していない請求項1乃至11のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項13】
化学反応ステッ10プに関連する前記試剤の流動速度は、次の化学反応ステップに関連する前記流動速度に影響する請求項1乃至12のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項14】
試剤は前記1以上の連続フロー反応器の選択された距離に従って異なる移動速度で移行する請求項1乃至13のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項15】
前記1以上の連続フロー反応器を通る前記試剤の流動速度は、ポンプ、隣接する流速計及び制御弁を利用して制御、調整または変更される請求項1乃至14のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項16】
ステップii-c)の求核アシル基置換は以下の
(a)ハロゲン化物のアルコール官能基への置換、
(b)アミン官能基のハロゲン化物への置換、または
(c)アミド化
の1以上を含む請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項17】
ステップii-c)の前記求核アシル基置換反応の収率は、アミド化反応の収率が少なくとも95%であるアミド化反応の形態である請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項18】
ステップi-c)またはステップii-b)のいずれかにおいて、前記ヨウ素化反応の前記収率は、少なくとも85%である請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項19】
ステップi-d)またはステップii-d)のいずれかにおいて、前記アシル化反応の前記収率は、少なくとも74%である請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項20】
ステップi-e)の前記選択された加水分解反応の前記収率は、少なくとも97%である請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項21】
前記1以上の非イオン性造影剤の前記調製に有用な前記中間体化合物は、前記化学式VIの化合物または前記化学式XIIの化合物である請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項22】
前記1以の連続フロー反応器は、1以上の静的混合装置を含む請求項1乃至21のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項23】
前記1以上の連続フロー反応器は、ガラス、炭化ケイ素、ステンレス鋼及び/または1以上の高性能合金を含む請求項1乃至22のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項24】
撹拌タンク反応器(CSTRs)または保留タンクの前記使用を含まない請求項1乃至23のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項25】
前記中間体化合物は、化学式VIの化合物である請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項26】
前記中間体化合物は、化学式XIIの化合物である請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項27】
各反応は、不均一または均一の環境内で実行される請求項1乃至26のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項28】
前記連続フロー(ii)において、
前記化学反応ステップii-a)の前記生成物は、第2の中間体化合物を製造するための前記化学反応ステップii-b)の反応物として使用される第1の中間体化合物であり、
このフローは、
前記第2の中間体化合物が、第3の中間体化合物を製造するための前記化学反応ステップii-c)の反応物として使用される反応ステップ、および
前記第3の中間体化合物が、第4の中間体化合物を製造するための前記化学反応ステップii-d)の反応物として使用される反応ステップ
でも同じように繰り返される請求項1に記載の調製プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、非イオン性造影剤(non-ionic contrast agents)の調製に使用することができる中間体化合物(intermediate chemical compounds)の生産に関する。特に、本発明は、非イオン性造影剤の生産に有用な前記中間体化合物の合成を、1以上の連続フロー反応器(continuous flow reactors)中で連続的に実行することを可能にするプロセスに関するものである。これらは、従来の撹拌タンク反応器(conventional stirred tank reactors)[CSTRs]に比較して規模が小さくなり、中間過程で生成されるいずれの化合物の単離も精製も必要としない。
【背景技術】
【0002】
非イオン性造影剤は、製薬産業により、数トン単位の量で(in multi-ton quntities)生産される。典型的な非イオン性造影剤は、イオビトリドール(Iobitridol)[EP437144,US5043152]、イオジキサノール(Iodixanol)[EP108638]、イオヘキソール(Iohexol)[(DE2726196,US4250113]、イオメプロール(Iomeprol)[(EP026281,US4352788]、イオパミドール(Iopamidol)[DE2547789,US4001323]、イオペントール(Iopentol)[EP105752]、イオプロミド(Iopromide)[DE2909439,US4364921]、イオトロラン(Iotrolan)[EP33426,US4341756]、イオベルソール(Ioversol)[EP83964,US4396598]、イオキシラン(Ioxilan)[WO8700757,US5035877]を含む。これらは2,4,6に三配位されたフェニル環(2, 4, 6-triodinated phenyl ring)をいずれも有しており、これらの調製に有用な中間体は、本発明による連続するプロセス(continuous processes)によって生産することができる。本発明によると、連続するプロセスを通じて非イオン性造影剤の完全な生産も可能である。これらの非イオン性造影剤は、臨床では一般に高用量で使用され、患者には一度に100g以上が投薬される。それ故、本発明者らは、非常に高い品質の材料を生産でき、次に各処置の間に患者に与える不純物の量を最小限化する、非常に効率的なプロセスを得る必要がある、ということを認識している。最終製品のコストを削減するためには、全ての合成工程を最適化することが重要である。反応設計(reaction design)についての小さな改良でさえ、大規模生産においては大幅な節約に繋がる可能性がある。本発明は、非イオン性造影剤の調製に有用な中間体化合物を製造する、多段階化学合成(multi-step chemical synthesis)にわたって使用する連続するプロセスを開示する。
【0003】
欧州公開第2281804号は、CSTRsを用いた、5-アミノ-N(5-amino-N)、N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2[N'-bis(2,3-dihydroxypropyl)-2]、4,6-トリヨードイソフタルアミド(4,6-triiodoisophthalamide)[
図1の化合物IV]を製造する、5-アミノ-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-イソフタルアミド(N'-bis[2,3-dihydroxypropyl]-isophthalamide)[ABA-
図1の式IIIの化合物]、またはABA-塩酸のヨウ素化のプロセスを説明する。このプロセスは、各CSTRs中での終了時(at which this is done)または滞留時間(retention time)における速度(velocity)の表示を伴わない、カスケードシーケンス(cascade sequence)における一つの容器から他の容器への反応物の逐次移送を含む。さらに、CSTRsにおいても実行されるが、精製過程に先立ってクエンチ剤(quenching reagent)の量を確定するために、過剰量のヨウ素化剤(iodinating agent)の分析が必要になる、ということが理解されるだろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
我々はここに、特に、1以上のフロー手順(flow procedures)を用いて、非イオン性造影剤の調製に有用な中間体化合物を合成する連続するプロセスを実行することが可能であることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、非イオン性造影剤の調製に有用な1以上の中間体化合物の調製プロセスを提供する。この方法は、1以上のフロー手順を連続的に使用して実行される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】イオヘキソールの調製のための合成順序(synthesis sequence)の図である。
【
図2】イオパミドールの調製のための合成順序の図である。
【
図3】アミド化及び水素化のための(例えば実施例1のパートAのための)実験装置の図である。
【
図4】ヨウ素化のための(例えば実施例1のパートBのための)実験装置の図である。
【
図5】アシル化のための(例えば実施例1のパートCのための)実験装置の図である。
【
図6】加水分解のための(例えば実施例1のパートDのための)実験装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
明細書中で使用される用語「非イオン性造影剤の調製に有用な中間体化合物」は、さらに合成反応させて、限定するものではないが、イオビトリドール、イオジキサノール、イオヘキソール、イオメプロール、イオパミドール、イオプロミド、イオトロラン、イオベルソール及びイオキシラン(Iobitridol, Iodixanol, Iohexol, Iomeprol, Iopamidol, Iopentol, Iopromide, Iotrolan, Ioversol and Ioxilan)を含む非イオン性造影剤を生産する化合物を指す。用語「非イオン性造影剤の調製に有用な中間体化合物」は、非イオン性造影剤を調製する合成過程で役立つ反応をさらに起こすことがない試薬や、非イオン性造影剤の生産に繋がることのない反応を起こす試薬を含むことを意図するものではない。具体的には、この用語は副反応に加わる試薬をカバーすることを意図するものではない。非イオン性造影剤の調製に有用な中間体化合物は、例えば、非イオン性造影剤の調製のための多段階化学合成手順の中間体化合物(chemical intermadiate compounds)を含む。好ましくは、非イオン性造影剤の調製に有用な中間体化合物は、
図1(Fig1)に示す化学式I、II、III、IV、V及び/またはVIのいずれかの化合物から成る。より好ましくは、非イオン性造影剤の調製に有用な中間体化合物は、
図1(Fig1)に示す化学式III、IV、V及び/またはVIのいずれかの化合物から成る。また、好ましくは、非イオン性造影剤の調製に有用な中間体化合物は、
図2(Fig2)に示す化学式VII、VIII、IX、X、XI及び/またはXIIのいずれかの化合物から成る。より好ましくは、非イオン性造影剤の調製に有用な中間体化合物は、
図2(Fig2)に示す化学式IX、X、XI及び/またはXIIのいずれかの化合物から成る。
【0009】
本発明による非イオン性造影剤の調製に有用な中間体化合物の調製プロセスは、連続するプロセスを実行する1以上のフロー手順(flow procedure)を使用することを含む。
【0010】
本明細書中で使用される用語「フロー手順」は、例えば、特定の装置及び/または特定の条件を用いた、化学合成を連続的に運転可能にするために必要な手順に対応する。フロー手順は、本明細書中では、従来のバッチ処理(batch process)を包含するものではない。好ましくは、連続反応装置は、当業者により理解されるように、流動路(flowing stream)として使用されて、材料を移送する。
【0011】
プロセスは、生成物流の連続的な形成および排出を伴って反応器に反応物を連続的に供給することにより特徴付けられて、連続的であると定義される。ここで開示した連続するプロセスは、以下にさらに説明される。
【0012】
本発明による連続するプロセスは、限定するものではないが、製品の純度及び収量の向上と廃液の削減を含む多数の理由による有利な点があり、これにより、このプロセスはより環境に優しいものとなる。
【0013】
用語「連続フロー反応器」は、連続する流れの中で化学反応を起こすことのできる反応器を指すために使用される。連続フロー反応器は、連続する管形反応器(tubular reactors)としても知られている。連続フロー反応器は、パイプ形反応器(pipe reactor)、プラグ流反応器(plug flow reactor)、管形反応器、またはその他の市販の連続フロー反応器、あるいはこれらの反応器の2以上の組み合わせにより構成することができる。連続フロー反応器は、CSTRsよりも占める容積がかなり小さい。連続フロー反応器は、例えば、ガラス、Hastalloy(登録商標)、炭化ケイ素、ステンレス鋼及び/または1以上の高性能合金を含む、いずれかの適合する材料により作ることができる。市販のフロー反応器であれば、特に流動方向に沿った乱流を生じさせ得るように製作されたものは、いずれもこのプロセスに使用できる。連続フロー反応器は、静的混合装置(static mixing apparatus)を含むことができる。連続フロー反応器はスラリーを扱うことができ、特定の温度または温度範囲下におかれる、及び/または特定の圧力または圧力範囲下におかれる。上記した反応器の組み合わせからなる1以上の連続フロー反応器または単一の連続フロー反応器を使用する場合、連続フロー反応器/反応器(continuous flow reactors/reactors)は流体連通が可能なように相互に連結される(be connected)。用語「連結される(connected)」に関しては、本明細書においては、連続フロー反応器/反応器は、直接相互に取り付けられている必要はないが、複数の連続フロー反応器/反応器は相互に流体連通できなければならないことが理解されるべきである。所望ならば、複数の反応器は直接連結されてもよい。すなわち、流体連通が複数の反応器のボア(bores)の間で可能なように、複数の反応器は相互に直接連結されていてもよい。
【0014】
非イオン性造影剤の調製に有用な中間体化合物を調製する連続するプロセスは、2以上の逐次反応を含む多段階化学合成を含んでいてもよい。各反応は非イオン性造影剤の調製に有用な中間体化合物の製造に繋がるものである。本明細書中で用語「多段階化学合成(multi-step chemical synthesis)」は、一般に複数の化学反応(multiple chemical reactions)を含む合成プロセスを表す。この用語は、単に一つの化学反応が多段のステップを通じて行われるような合成をカバーすることを意図するものではない。このプロセスの1以上の反応は、1以上の連続フロー反応器内で実行されてもよい。全ての反応が1以上の連続フロー反応器内で実行されてもよい。各反応は個別の連続フロー反応器内で実行されてもよい。このプロセスにより生ずるいずれの中間体化合物も、非イオン性造影剤の調製に使用できる。
【0015】
このプロセスは、非イオン性造影剤の調製に有用な少なくとも2つの中間体化合物を順に調製することを含む。このプロセスは連続して相次いで実行される少なくとも2つの化学反応ステップを含むことができる。さらに、1番目の化学反応ステップの生成物は、2番目の中間体化合物(intermadiate compound)を生産する2番目の化学反応ステップの反応物として使用される1番目の中間体であり、いずれの次反応ステップでも同様のことが繰り返される。このプロセスは、所望により1以上の中間体化合物の単離及び/または精製が可能だとしても、好ましくはいずれの中間体化合物も単離または精製することなく実行される。特に、このプロセスにより生じた中間体化合物(すなわちこのプロセスの最終生成物)が非イオン性造影剤の調製に有用な、所望の最終的な中間体化合物だったとしても、この化合物は所望により単離されうる。あるいは、(合成化学の観点から)可能ならば、連続するプロセスは非イオン性造影剤そのものが製造される直前まで連続的に行われてもよい。
【0016】
このプロセスは中断なく連続的に実行される少なくとも2つの化学反応を含み、このような中断は単離または精製のステップを含む。所望に応じて、このプロセスは1以上の付加的なステップを包含することができる。付加的なステップは、例えば1以上の洗浄ステップ、1以上の精製ステップ、1以上の単離ステップ、1以上の溶媒変性(solvent modification)ステップ、1以上の溶媒切替(solvent switching)ステップまたはこれらの組み合わせを含む。
【0017】
1以上の連続フロー反応器内の条件は制御することができる。これは、例えば特定の化学的・物理的反応を生じさせ、または所望の反応速度を得ることによりなされる。1以上の連続フロー反応器の条件の制御は、1以上の流動、1以上の連続フロー反応器内の温度、1以上の連続フロー反応器内の圧力、1以上の連続フロー反応器内の溶媒または溶媒系(solvents or solvent systems)、1以上の連続フロー反応器内の流動速度(flow rates)及び1以上の連続フロー反応器に入る供給物中の反応物の濃度の調整または変更を含む。前述の特性またはパラメータのいずれの組み合わせも、1以上の連続フロー反応器内で制御することができる。前述の特性またはパラメータのいずれの組み合わせも、全ての連続フロー反応器内で制御することができる。
【0018】
1以上の連続フロー反応器を通る試剤の流動速度は、実行される化学反応に応じて、制御、変更または調整することができる。試剤の流動速度は1以上の連続フロー反応器の1以上の選択された距離(selected distance)に従って異なっていてもよく、任意の1以上の選択された距離は重複していなくてもよい。すなわち、試剤の流動速度は1以上の連続フロー反応器の区分内で異なっていてもよい。反応ステップに関連する試剤の流動速度は、次の反応ステップに関連する流動速度に影響する。試剤は連続フロー反応器の選択された距離に従って異なる流動速度で移行する。1以上の連続フロー反応器を通る試剤の流動速度は、ポンプ、隣接する流量計及び制御弁を利用して制御、調整または変更することができる。流動速度の変化は1以上の保留タンク(holding tank)を使用することにより実行できる。説明のための例として、流動速度10mL/minの第1の反応(実験室規模)と流動速度5mL/minの第2の反応とを考えると、保留タンクを反応ステップ(あるいはより具体的には連続フロー反応器または反応器)の間に据えつけて、反応1(reaction one)は流動速度10mL/minで保留タンクに供給を行う一方で、反応1から供給された生成物(resulting)を保留タンクからより遅い流動速度5mL/minで第2ポンプが送り出すようにしてもよい。このような状況においては保留タンクは連続するプロセスを停止させることがなく、2つの反応(あるいはより具体的には連続フロー反応器または反応器)の間で流動速度を調節するバッファとして役立つ、ということが理解されるだろう。
【0019】
ここで述べた流動速度の値及び流動速度の範囲は特定の装置セットアップ(apparatus set-up)に妥当なものであり、従って、いずれのサイズ/容積の装置にも試剤の流れが一般化される代わりに、対応する流束値/範囲(flux values/ranges)(面積当たり時間当たりのリットル(in litres per area per hour))が使用されてもよい。このように用語「流束」と「流動速度」はここではほとんど同じ意味で使用される。
【0020】
連続フロー反応器の選択された距離に従った試剤の流束、またはアミド化反応に関する流束は、1,039-1,906のような、例えば約1,000-2,000時間当たり平方メートル当たりリットル(Litres/m2/hour)である。アミド化反応の収率は、好ましくは約(範囲)95%以上である。連続フロー反応器の選択された距離に従ったある試剤(すなわち水素)の流束、または水素化反応に関連する(試剤の)流束は、81,803-105,863のような、例えば約80,000-110,000時間当たり平方メートル当たりリットル(Litres/m2/hour)である。連続フロー反応器の選択された距離に従った試剤の流束、またはヨウ素化反応に関連する(試剤の)流束は、3,056-18,335のような、例えば約3,000-19,000時間当たり平方メートル当たりリットル(Litres/m2/hour)である。ヨウ素化反応の収率は、例えば少なくとも約85%である。連続フロー反応器の選択された距離に従った試剤の流束、またはアシル化反応に関連する(試剤の)流束は、3,056-18,335のような、例えば約3,000-19,000時間当たり平方メートル当たりリットル(Litres/m2/hour)である。アシル化反応の収量は例えば少なくとも約74%である。連続フロー反応器の選択された距離に従った試剤の流束、または加水分解反応に関連する(試剤の)流束は、3,056-6,112のような、例えば約3,000-7,000時間当たり平方メートル当たりリットル(Litres/m2/hour)である。加水分解反応の収量は例えば少なくとも約97%である。
【0021】
このプロセスは、1以上の以下の化学反応を含む。すなわち(i)求核アシル基置換、(ii)ニトロ基の還元、(iii)ハロゲン化、(iv)アシル化、(v)エステル化及び(vi)加水分解[(i) nucleophilic acyl substitution, (ii) reduction of a nitro group, (iii) Halogenation, (iv) acylation, (v) esterification and (vi) hydrolysis]である。
【0022】
また求核アシル基置換は1以上の(a)ハロゲン化物のアルコール官能基への置換、(b)アミン官能基のハロゲン化物への置換、(c)アミド化[(a) substitution of an alcohol functional group for a halide; (b) substitution of a halide for an amine functional group; and (c) amidation]を含むことができる。ニトロ基の還元はニトロ基の水素化を含むことができる。ハロゲン化はヨウ素化を含むことができる。加水分解は選択的な加水分解(selective hydrolysis)を含むことができる。このような選択的な加水分解は、反応化合物(reactant compound)の特定の官能基の加水分解のみを含むことができる。このような選択的な加水分解は、ある反応条件の間に、ある官能基の他のものに対する固有の反応性に起因して、保護基の使用に起因して、官能基の活性化に起因して、もしくは他の適当な手段により生じ得る。
【0023】
各反応は、不均一または均一の環境(heterogeneous or homogeneous environment)内で実行されうる。1以上の連続フロー反応器は不均一及び/または均一の環境内での反応を実行するように構成されている。特に、1以上の連続フロー反応器は不均一及び/または均一反応を実行するように構成されている。例えば、連続フロー反応器はその中に(例えば反応器のボアの中に)1以上の触媒を含んでいてもよい。触媒は、反応物、試剤及び/または溶媒に関して、不均一でも均一でもよい。
【0024】
このプロセスは、
(i)
図1に表現された化学式III、IV、V及び/またはVIのいずれかの化合物を生産する、または
(ii)
図2に表現された化学式IX、X、XI、XII及び/またはイオパミドールのいずれかの化合物を生産する、または
(iii)イオジキサノールを生産する
といった多段階化学合成を含むことができる。
【0025】
このプロセスは、以下の一連の化学反応を含む。
(i)アミド化、水素化によるニトロ基の還元、ヨウ素化、アシル化及び選択的な加水分解、または
(ii)水素化によるニトロ基の還元、ヨウ素化、求核アシル基置換及びアシル化。
【0026】
中間体化合物は、最も好ましくは5-アセトアミド-N1(5-acetamido-N1)、N3-ビス(1,3ジヒドロキシプロパン-2-イル)[1,3-dihydroxypropan-2-yl]-2、4,6-トリヨードイソフタルアミド(4,6-triiodoisophthalamide)[化学式VIの化合物]、または化学式XIIの化合物である。非イオン性造影剤の調製に有用な中間体化合物は、さらに反応させてイオヘキソール、イオジキサノールまたはイオパミドールのいずれかの非イオン性造影剤を調製することができる。好ましい非イオン性造影剤はイオヘキソール、イオジキサノールまたはイオパミドールである。
【0027】
好ましくは、非イオン性造影剤はイオヘキソールまたはイオジキサノールであり、非イオン性造影剤の調製に有用な中間体化合物は
図1に表現された化学式II、III、IV、V及び/またはVIの化合物である。最も好ましくは、非イオン性造影剤の調製に有用な中間体化合物は
図1に表現された化学式VIの化合物である。好ましくは、非イオン性造影剤はイオパミドールであり、非イオン性造影剤の調製に有用な中間体化合物は
図2に表現された化学式VIII、IX、X、XI及び/またはXIIの化合物である。より好ましくは、非イオン性造影剤の調製に有用な中間体化合物は
図2に表現された化学式XIIの化合物である。
【0028】
このプロセスは、上述のように用いられる、従来の撹拌タンク反応器(CSTRs)や、他の保留タンクの使用を必要としてもよいし、しなくてもよい。
【0029】
加えて、各反応器の出口において、関連する化合物に関し、各中間体の純度が高いこと、すなわち80%より高く、好ましくは90%を超え、最も好ましくはほとんど100%に達することが見出された。これにより、次反応に害を及ぼす不純物の蓄積を回避することができる。
【0030】
我々は、例えば、化学式Iの化合物(
図1に表現)から出発して、化学式II、III、IV及び/またはVの中間体化合物のいずれの単離または精製も必要とすることなく、化学式VIの化合物(
図1に表現)を生産するのに必要な一連の合成反応の全ての実行が可能であるということを見出した。また、化学式VIIの化合物(
図2に表現)から出発して、化学式VIII、IX、X及び/またはXIの中間体化合物のいずれの単離または精製も必要とすることなく、化学式XIIの化合物(
図2に表現)を生産するのに必要な一連の合成反応の全ての実行も可能である。
【0031】
図1を参照すると、イオヘキソールが非イオン性造影剤の実施例である。これは
図1に示した合成順序により生産できる。イオヘキソールの生産に有用な最も重要な中間反応物は、5-アセトアミド-N1,N3-ビス(1,3ジヒドロキシプロパン-2-イル)-2,4,6-トリヨードイソフタルアミド(
図1中の化学式VIの化合物)である。イオヘキソールは化学式VIの化合物のアルキル化によって(例えば、クロロプロパン-1,2-ジオール[chloropropan-1,2-diol]によって)調製されうる。この請求に係るプロセスは、化学式VIの化合物の調製に適合している。このプロセスは多段階化学合成に渡って連続している。このプロセスは
図1の合成順序に表示された中間体を生産する多段階化学合成を含む。このプロセスは化学式Iの化合物である5ニトロ-イソフタル酸ジメチルエステル(5 nitro-isophthalic acid dimethyl ester)に始まり、イソセリノール(isoserinol)によるアミド化を経て、化学式IIの化合物を生産する。これに続いて化学式IIの化合物のニトロ基を芳香族アミノ基に還元することにより化学式IIIの化合物を生産する。これに続いて化学式IIIの化合物をヨウ素化することにより化学式IVの三ヨウ化化合物(triiodinated compound)を生産する。化学式IVの化合物は、次に、化学式Vの化合物により表現されるように、アシル化を受けてアセトアミド及び/またはテトラアセテートエステル(tetra-acetate ester)が得られ、最後に、化学式Vの化合物は(例えば4つのアセテートエステル基の)選択的な加水分解を受けて化合物VIの中間体が得られる。これは、イオヘキソールのような、非イオン性造影剤の調製に有用である。中間体VIは、二量体の非イオン性造影剤(dimeric non-ionic contrast agent)であるイオジキサノールの調製にも有用である。前記多段階化学合成は、イオパミドールのような他の非イオン性造影剤の調製に有用な中間体化合物の調製にも適している。このような請求に係るプロセスは、イオパミドールのような、他の非イオン性造影剤の調製に有用な中間体化合物の調製に適している。本発明による(本明細書中で説明した)反応を実行するための典型的なセットアップ(set-ups)を表す模式図を、
図3から
図6に示す。
【0032】
本発明によれば、CSTRsを使用することなく、及び/または中間化合物II、III、IV及び/またはVのいずれの単離または精製も必要とすることなく、
図1に表現した、化合物Iから化合物VIまでの、全ての合成順序を実行することができる。もちろん便宜上、このプロセスは、前記多段階化学合成の反応前後や反応中に実行される付加的なステップを含んでいてもよい。これらの付加的なステップは、本明細書中に定義したプロセスが、本明細書中にも説明したように連続的であり続けることを担保するために実行される。すなわちこのプロセスは、多段階化学合成全体を通じて連続的であり続ける。付加的なステップには精製または単離のステップを含んでもよい。
【0033】
図2の化学式XIIの化合物のような、非イオン性造影剤の調製に有用な他の中間体化合物も、請求に係るプロセスにより調製できる。化学式XIIの化合物は、他の非イオン性造影剤、イオパミドールの製造に中間体として使用される。化学式XIIの化合物は、上記したものとは別の多段階化学合成を通じて生産される。
【0034】
化学式XIIの化合物の調製のための化学合成は、請求に係る発明に適合している。かかるプロセスは、
図2の順序に表示された中間体を生産する多段階化学合成を含む。このプロセスは化学式VIIの化合物のニトロ基を還元して化学式VIIIの化合物の芳香族アミンを形成することに始まる。これに続いて化学式VIIIの化合物のヨウ素化により化学式IXの化合物を形成する。化学式IXの化合物はジカルボン酸(dicarboxylic acids)の活性化を受け、求核アシル基置換(nucleophilic acyl substitution)を経て、化学式Xの化合物を生産する。化学式Xの化合物はアミド化または2つの逐次アミド化反応を受けて化学式XIの化合物または化学式XIIの中間反応物化合物がそれぞれ得られる。あるいは、上述の化学式VIの化合物の調製のための同様の順序が、化学式XIIの化合物又はイオパミドールの調製に利用可能である。
【0035】
もちろん、本発明によれば、CSTRsを使用することなく、及び/または中間体化合物VIII、IX、X、XI及び/またはXIIのいずれの単離または精製も必要とすることなく、化学式VIIの化合物から化学式XIIの化合物までの、全ての合成順序を実行することが可能である。工業的応用のためには、CSTRsにおける投資は多大であり、またこのような設備を収容するプラントの特徴(plant fingerprint)も極めて大規模なので、これは特に関連がある。もちろん便宜上、フロー手順は多段階化学合成の反応前後や反応中に実行されるいくつかの付加的なステップを含んでいてもよい。これらの付加的なステップは、本明細書中に定義したプロセスが、本明細書中にも定義したように連続的であり続けることを担保するために実行される。すなわちこのプロセスは多段階化学合成全体に渡って連続的であり続ける。付加的なステップには精製または単離のステップを含んでいてもよい。
【0036】
上述のように、パイプ形反応器のような連続フロー反応器中でこの連続するプロセスを実施することの有利点は、溶媒の量が、CSTRs中で使用されるものと比較して、著しく節減されることにある。そのためこれは廃液の削減につながり、これによりこのプロセスはより環境に優しいものとなる。
【0037】
このプロセスにおいて使用される溶媒は、通常の有機溶媒、水性溶媒、水性基剤溶媒(aqueous based solvent)、水またはこれらの混合液である。いずれの適合する溶媒又は溶媒系も使用できる。使用される溶媒系はコロイド懸濁液(colloidal suspension)またはエマルジョン(emulsion)を含んでいてもよい。使用される溶媒系はメタノール、水または両方の混合液を含んでいてもよい。溶媒系は水混和性(water-miscible)有機溶媒と水との混合液を含んでいてもよい。これらは水と接触する、または水と接触しない水不混和性(water immiscible)有機溶媒を含んでいてもよい。上に挙げた溶媒の組み合わせのいずれか特定のものが使用される。任意に、全ての反応は同じ溶媒または溶媒系中で実行されなくてもよい。これは、必要に応じ、例えば中間体の単離または精製の必要ないような、溶媒/溶媒組成の調整または溶媒の切替が連続な方法で実行される場合である。
【0038】
多段階化学合成方法全体を通る流れが中間過程で保留タンクを使用する必要がないように、個別の反応ステップごとの反応速度、パイプ形反応器それぞれを通る流束/流動速度、及び溶媒変更の速度、温度及び圧力が調整される。とはいえ、前に説明したように、特定の状況の下では、保留タンクが利用することができるが、しかし、例えば前述したように、それらの使用がプロセス全体の能率にあまり強く影響を与えないような仕方のみである。1以上の連続フロー反応器の出力は、中間体、反応物、不純物及び溶媒等に関する組成物が次段階に供給されて最適反応条件を可能にするのに適合するような方法に慎重に制御される。
【0039】
加えて、各反応器の出力において、関連する化合物に関し、各中間体の純度が高いこと、すなわち80%より高く、好ましくは90%を超え、最も好ましくはほとんど100%に達することが見出された。これにより、次反応に害を及ぼす不純物の蓄積を回避することができる。
【0040】
連続フロー反応器における条件は、広範囲で変化しうる。特に、条件は均一反応から不均一反応まで変化しうる。例えば、不均一反応はニトロ基の還元反応に利用することができる。ニトロ基が還元される反応(例えば化学式IIの化合物からの化学式IIIの芳香族アミンの生産)の場合、連続フロー反応器は、これはパイプ形反応器であるが、不均一触媒(catalyst)が充填される。不均一触媒は例えば反応がニトロ基の水素化の場合、炭素上のパラジウム(palladium on carbon)であってもよい。
【0041】
多段階化学合成のうちの反応のいくつかは、2つの溶媒系中で実行される。例えば、化学式V及びVIの化合物を生産するために実行するアシル化及び加水分解の行程は、それぞれ2つの溶媒系中で実行されてもよい。連続する溶媒抽出/洗浄ステップも、次化学反応や最終製品の純度に害を及ぼす不純物、過剰な試剤またはその他の望ましくない物質を除去するために適用される。各反応器中の圧力は大気圧か、または大気圧より高く、温度は室温から約100℃まで変化する。もちろん、特定の環境においては、温度を室温より低く、または0℃未満に調整することが必要になる。
【0042】
最終生成物の精製、単離及び乾燥も、それが所望される場合に、連続的な結晶化、ろ過及び乾燥処理を使用して、連続的な方法で実行することができる。
【0043】
以下に説明する実施例は、実験室/試験規模の実験から得られたものである。従って、説明された値及び範囲は商業目的のためにはスケールアップされることは理解されるだろう。
【0044】
以下に定めた流動速度は、連続フロー反応器の選択された距離に従った試剤の流れ、または本明細書中に説明した特定の反応(すなわちアミド化、水素化、ヨウ素化、アシル化または加水分解)に関係する(試剤の)流動速度に関連する。
【0045】
<実施例1>
パートA:連続的なアミド化及び水素化(装置セットアップの実施例として
図3参照)。
【0046】
化合物Iと1-アミノプロパンジオール(1-aminopropanediol)をメタノール中で溶解した(モル比1:2.6:34)。溶液を、プラグ流反応器(直径2.1cm、長さ50cm、120℃及び7.5barに設定)に、9mL min-1の流動速度で、ポンプで注入した。ラインでのHPLC(高速液体クロマトグラフィー)は、約95%の収率を表示した。その後、溶液は、不活性担持体(inert support)上に0.5%Pd(パラジウム)を充填したチューブインチューブ固定床カラム反応器(tube-in-tube fixed bed column)反応器(ステンレス鋼、内径(int. diameter)1.026cm、長さ80cm、120℃で10barに設定)に入る前に、183mL min-1で流れる水素流と混合されるtユニット(t-unit)を通過させた。パイプ形反応器の出口において、気液分離器により過剰な水素は液流から除去された。
【0047】
以下に挙げるのは、実験室/試験規模におけるパートA(連続的なアミド化及び水素化)の実行に適合するパラメータ/変数の範囲である。この範囲は、もちろん、商業目的のためには、必要に応じスケールアップされる。
・化合物Iの1-アミノプロパンジオールに対するモル比: 1:2から1:3
・化合物Iのメタノールに対するモル比: 1:30から1:50
・アミド化温度: 100から130℃
・アミド化圧力: 2から10bar
・アミド化の流動速度: 6から11mL min-1
・水素の流動速度: 170から220mL min-1
・水素化温度: 100から130℃
・水素化圧力: 5から20bar。
【0048】
パートB:連続的なヨウ素化(装置セットアップの実施例として
図4参照)。
【0049】
パートaからの流れを水で希釈し(比1:3)、供給物Aを得た。
【0050】
ヨウ素をメタノールに溶解することにより(モル比1:45)供給物Bが製造され、ヨウ素酸カリウム(potassium iodate)と硫酸(sulfuric acid)を水に溶解することにより(モル比1:0.25:45)供給物Cが製造された。供給物A、B及びCはそれぞれ、1:1.5:0.6の比で連続的に混合され、流動速度3mL min-1で、超音波浴中のパイプ形反応器(内径0.5cm、長さ150cm、80℃で8barに設定)の中をポンプで注入した。ラインでのHPLCはパイプ形反応器の終端で85%の収率を表示した。
【0051】
以下に挙げるのは、実験室/試験規模におけるパートB(連続的なヨウ素化)の実行に適合するパラメータ/変数の範囲である。この範囲は、もちろん、商業目的のためには、必要に応じスケールアップされる。
・ヨウ素のメタノールに対するモル比: 1:30から1:50
・ヨウ素酸カリウムの硫酸に対するモル比: 1:0.1から1:1
・ヨウ素酸カリウムの水に対するモル比: 1:30から1:50
・供給物Aの供給物Bに対する供給比: 1:1.1から1:10
・供給物Aの供給物Cに対する供給比: 1:0.5から1:1.5
・温度: 60から140℃
・圧力: 5から15bar
・流速: 1から6mL min-1。
【0052】
パートC:連続的なアシル化(装置セットアップの実施例として
図5参照)。
【0053】
パートbからの流れに溶媒交換を実行し、化合物IVの無水酢酸(acetic anhydride)、酢酸(acetic acid)及び硫酸中の溶液(モル比1:20:62:0.1)を得た。この混合物は、流速2.95mL min-1で、管形反応器(内径0.05cm、長さ150cm、100℃で1.4barに設定)内をポンプで注入した。ラインでのHPLCは74%の収率をもたらした。
【0054】
以下に挙げるのは、実験室/試験規模におけるパートC(連続的なアシル化)の実行に適合するパラメータ/変数の範囲である。この範囲は、もちろん、商業目的のためには、必要に応じスケールアップされる。
・化合物IVの無水酢酸に対するモル比: 1:6から1:25
・化合物IVの酢酸に対するモル比: 1:50から1:80
・化合物IVの硫酸に対するモル比: 1:0.05から1:1
・温度: 80から130℃
・圧力: 2から10bar
・流動速度: 0.01から0.06mL min-1。
【0055】
パートD:連続的な加水分解(装置セットアップの実施例として
図6参照)。
【0056】
パートcからの流れに溶媒交換を実行し、化合物Vのメタノール溶液(モル比1:125)として供給物Dを得た。水酸化ナトリウム(dissolving sodium)を水に溶解して(モル比1:27)供給物Eを製造した。供給物D及びEはtユニット中で連続的に混合され(比1:1)、流動速度0.05mL min-1でパイプ形反応器(内径0.05cm、長さ100cm、室温で室圧に設定)内をポンプで注入した。ラインでのHPLCは、パイプ形反応器の終端において97%の収率を表示した。
【0057】
以下に挙げるのは、実験室/試験規模におけるパートD(連続的な加水分解)の実行に適合するパラメータ/変数の範囲である。この範囲は、もちろん、商業目的のためには、必要に応じスケールアップされる。
・化合物Vのメタノールに対するモル比: 1:100から1:150
・水酸化ナトリウムの水に対するモル比: 1:25から1:50
・供給物Dの供給物Eに対する供給比: 1:0.5から1:2
・温度: 22から75℃
・圧力: 1から10bar
・流動速度: 0.01から0.2mL min-1
【手続補正書】
【提出日】2023-02-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非イオン性造影剤の調製に有用な
中間体化合物の調製プロセスであって、
連続した化学反応
からなる多段階化学合成
を実行
し、
前記中間体化合物
を生成する各連続化学反応を実施し、
前記連続化学反応
は、1つまたは複数の連続フロー反応器中で
実施され、
前記連続化学反応の少なくとも2つが中断なく連続的に実行され、
前記連続化学反応は
、以下の
ように、連続
する複数のステップのセット(i)または連続
する複数のステップのセット(ii)
のいずれかであって、
連続
する複数のステップのセット(i)
i-a) アミド化、
i-b) 水素化によるニトロ基の還元、
i-c) ヨウ素化、
i-d) アシル化
、及び
i-e) 選択的な加水分解、
からなる前記連続するステップのセット、または
連続
する複数のステップのセット(ii)
ii-a) 水素化によるニトロ基の還元、
ii-b) ヨウ素化、
ii-c) 求核アシル基置換
、及び
ii-d) アシル化
、からなる前記連続するステップのセット、から選択され、
前記非イオン性造影剤は、1以上のイオヘキソールおよびイオジキサノール
を含み、
且つ前記非イオン性造影剤の調整に有用な前記中間体化合物は、化学式II、III、IV、V
またはVI
の化合物であるか、
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
または
前記非イオン性造影剤は、イオパミドールであり、
前記非イオン性造影剤の調整に有用な前記中間体化合物は、化学式VIII、IX、X、XI
またはXII
の化合物である
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
ことを特徴とする中間体化合物の調整プロセス。
【請求項2】
前記1以上の連続フロー反応器は、パイプ形反応器、プラグ流反応器、管形反応器、ピストン流れ反応器または2以上の反応器の組合せを含む請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項3】
各反応は、1以上の前記連続フロー反応器の個別の前記連続フロー反応器内で実行される請求項1または2に記載の調製プロセス。
【請求項4】
前記調製プロセスより生ずる中間体化合物は非イオン性造影剤の調製に使用される請求項1乃至3のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項5】
前記連続フロー(i)において、
前記化学反応ステップi-a)の前記生成物は、第2の中間体化合物を製造するための前記化学反応ステップi-b)の反応物として使用される第1の中間体化合物であり、
このフローは、
前記第2の中間体化合物が、第3の中間体化合物を製造するための前記化学反応ステップi-c)の反応物として使用される反応ステップ、
前記第3の中間体化合物が、第4の中間体化合物を製造するための前記化学反応ステップi-d)の反応物として使用される反応ステップ、および
前記第4の中間体化合物が、第5の中間体化合物を製造するための前記化学反応ステップi-e)の反応物として使用される反応ステップ
でも同じように繰り返される請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項6】
前記調製プロセスの最終中間体化合物が所望された場合を除き、前記調製プロセスはいずれの中間体化合物の単離または精製をすることなく実行される請求項1乃至5のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項7】
中断は単離または精製のステップを含む請求項1乃至6のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項8】
前記調製プロセスは、以下の
(i)1以上の洗浄ステップ
(ii)1以上の精製ステップ
(iii)1以上の単離ステップ
(iv)1以上の溶媒の使用、任意に1以上の溶媒変性ステップ及び/または溶媒切替ステップ
の1以上を含む請求項1乃至7のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項9】
前記1以上の連続フロー反応器中で、さらに条件を制御する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の調整プロセス。
【請求項10】
条件の制御は、以下に示す1以上の条件の調整または変更を含む請求項1乃至9のいずれか1項に記載の調整プロセス。
(i)1以上の連続フロー反応器内の温度、
(ii)1以上の連続フロー反応器内の圧力、
(iii)1以上の連続フロー反応器内の溶媒または溶媒系の使用、
(iv)1以上の連続フロー反応器内の流動速度、
(v)1以上の連続フロー反応器に入る供給物中の反応物の濃度
【請求項11】
前記1以上の連続フロー反応器を通る試剤の流動速度は、実行される前記化学反応に応じて、制御、変更または調整される請求項1乃至10のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項12】
前記試剤の流動速度は、前記1以上の連続フロー反応器の1以上の選択された距離に従って異なっており、任意の前記1以上の選択された距離は重複していない請求項1乃至11のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項13】
化学反応ステッ10プに関連する前記試剤の流動速度は、次の化学反応ステップに関連する前記流動速度に影響する請求項1乃至12のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項14】
試剤は前記1以上の連続フロー反応器の選択された距離に従って異なる移動速度で移行する請求項1乃至13のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項15】
前記1以上の連続フロー反応器を通る前記試剤の流動速度は、ポンプ、隣接する流速計及び制御弁を利用して制御、調整または変更される請求項1乃至14のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項16】
ステップii-c)の求核アシル基置換は以下の
(a)ハロゲン化物のアルコール官能基への置換、
(b)アミン官能基のハロゲン化物への置換、または
(c)アミド化
の1以上を含む請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項17】
ステップii-c)の前記求核アシル基置換反応の収率は、アミド化反応の収率が少なくとも95%であるアミド化反応の形態である請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項18】
ステップi-c)またはステップii-b)のいずれかにおいて、前記ヨウ素化反応の前記収率は、少なくとも85%である請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項19】
ステップi-d)またはステップii-d)のいずれかにおいて、前記アシル化反応の前記収率は、少なくとも74%である請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項20】
ステップi-e)の前記選択された加水分解反応の前記収率は、少なくとも97%である請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項21】
前記1以上の非イオン性造影剤の前記調製に有用な前記中間体化合物は、前記化学式VIの化合物または前記化学式XIIの化合物である請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項22】
前記1以の連続フロー反応器は、1以上の静的混合装置を含む請求項1乃至21のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項23】
前記1以上の連続フロー反応器は、ガラス、炭化ケイ素、ステンレス鋼及び/または1以上の高性能合金を含む請求項1乃至22のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項24】
撹拌タンク反応器(CSTRs)または保留タンクの前記使用を含まない請求項1乃至23のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項25】
前記中間体化合物は、化学式VIの化合物である請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項26】
前記中間体化合物は、化学式XIIの化合物である請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項27】
各反応は、不均一または均一の環境内で実行される請求項1乃至26のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項28】
前記連続フロー(ii)において、
前記化学反応ステップii-a)の前記生成物は、第2の中間体化合物を製造するための前記化学反応ステップii-b)の反応物として使用される第1の中間体化合物であり、
このフローは、
前記第2の中間体化合物が、第3の中間体化合物を製造するための前記化学反応ステップii-c)の反応物として使用される反応ステップ、および
前記第3の中間体化合物が、第4の中間体化合物を製造するための前記化学反応ステップii-d)の反応物として使用される反応ステップ
でも同じように繰り返される請求項1に記載の調製プロセス。