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特開2023-55820摩耗を低減させた触媒を製造するための方法
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  • 特開-摩耗を低減させた触媒を製造するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055820
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】摩耗を低減させた触媒を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/88 20060101AFI20230411BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20230411BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20230411BHJP
   C07C 31/26 20060101ALI20230411BHJP
   C07C 29/141 20060101ALI20230411BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230411BHJP
【FI】
B01J23/88 Z
B01J35/10 301A
B01J35/04 331A
C07C31/26
C07C29/141
C07B61/00 300
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023012446
(22)【出願日】2023-01-31
(62)【分割の表示】P 2019547584の分割
【原出願日】2017-11-20
(31)【優先権主張番号】62/425,262
(32)【優先日】2016-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】590001706
【氏名又は名称】ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー-コーン
【氏名又は名称原語表記】W R GRACE & CO-CONN
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,スティーヴン・アール
(57)【要約】      (修正有)
【課題】摩耗を低減したニッケル及びアルミニウムを含む水素化触媒を提供する。
【解決手段】水素化触媒であって、触媒中のニッケル含量が57~75重量%であり、そして触媒が5.0%未満の摩耗値を有し、触媒中のアルミニウム含量が28.8~32.5重量%であり、そして触媒が、53重量%のニッケルと47重量%のアルミニウムを含むニッケル-アルミニウム合金から、アルミニウムの44~53重量%が浸出したことによる細孔を有する、水素化触媒である。また、前記水素化触媒を含む、固定床スポンジ金属触媒、及び水素化触媒を使用した水素化のためのプロセスも提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化触媒であって、前記触媒中のニッケル含量が57重量%~75重量%であり、そして前記触媒が5.0%未満の摩耗値を有し、
前記触媒中のアルミニウム含量が28.8~32.5重量%であり、そして前記触媒が、53重量%のニッケルと47重量%のアルミニウムを含むニッケル-アルミニウム合金から、アルミニウムの44~53重量%が浸出したことによる細孔を有する、
水素化触媒。
【請求項2】
請求項1に記載の水素化触媒を含む、固定床スポンジ金属触媒。
【請求項3】
請求項1に記載の水素化触媒を使用した水素化のためのプロセス。
【請求項4】
請求項1に記載の水素化触媒を使用した水素化により1,4ブタンジオールを生成するためのプロセス。
【請求項5】
請求項1に記載の水素化触媒を使用した水素化によりソルビトールを生成するためのプロセス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]
本出願は、「METHOD FOR MANUFACTURING CATALYSTS WITH REDUCED ATTRITION」と題する、2016年11月22日出願の米国特許仮出願第62/425,262号の出願日の利益を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
[0002]
本発明は、触媒に関し、より具体的には、摩耗を低減させた触媒を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]
高多孔質ニッケル材料に基づく水素化触媒がよく知られている。このような材料は、W.R.Grace&Co.-Connにより商品名「RANEY(登録商標)」で販売されている金属合金由来製品のファミリーの一部である。これらの多孔質材料は、顕微鏡で見たとき、ニッケル金属粒子全体に蛇行した細孔チャネルを有するスポンジ状の外観をとっている。したがって、このような材料は、概して多孔質又はスポンジ金属合金製品として見られる。
【0004】
[0004]
多孔質触媒は、従来の冶金技術を使用して、ニッケル及びアルミニウムの前駆体合金を最初に形成することによって形成され得る。次いで、形成された合金を粉砕及び/又は研削し、ふるいに通過させて、所望のサイズを有する材料を提供することによって選り分ける。粉砕又は研削機構を退出したより大きな粒子は、更なるサイズ減少のために再利用することができる。
【0005】
[0005]
次いで、形成された合金を、アルカリ水溶液(例えば、水酸化ナトリウム)溶液に供して、合金からアルミニウム金属を部分的に抽出する。多孔質触媒は、米国特許第1,628,190号、同第1,915,473号、同第2,139,602号、同第2,461,396号、及び同第2,977,327号に記載されているプロセスに従って形成することができる。これらの特許の教示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0006】
[0006]
大顆粒合金の部分的なAl除去(「浸出」)の従来の手段によって、浸出の程度に相関する活性を有する固定床触媒を作製してもよい。全ての他のものが等しく、浸出(Al除去)の程度が増加したときに、これらの触媒は概して、より大きな摩耗を有する。これは、過剰な摩耗の不利益なしに達成可能な活性に制限があることを意味する。固定床触媒はまた、比較的大きなサイズに起因して高い摩耗値を有する傾向がある。
【0007】
[0007]
通常、より高いAl含有量(より低いNi)を有する合金は、これらの合金のコストが低いことから、固定床触媒を作製するために使用されることが好まれる。Kelleyら
(米国特許第4,247,722号)はまた、アルカリ活性された、42%ニッケル-58%アルミニウムの合金を含む触媒を利用しており、そこでは、合金中のニッケルの少なくとも98重量%が、ブタジエン過酸化物を1,2-及び1,4-ブタンジオールに水素化するためのNiAlとして存在する。
【0008】
[0008]
水素化のための固定床触媒は、有機化合物のより高い値への転化を促進する主機能に役立つことに加えて、使用中の機械的力への取り扱い及び曝露に耐えなければならない。摩耗の割合、すなわち、より小さいものに分解される際の大きな粒子の一部の損失は、ユーザにとって重要である。より高い摩耗は、反応物質/生成物のストリームの流動(圧力低下)の低減、並びに反応器から流出する微粒子によって下流に生じる問題に起因して、より低い値の触媒につながり得る。これらの触媒の商的な使用者は、水素化プロセスの大きなカラム反応器の装填中のこの破損を回避することを好むが、その理由は、これがひいては、触媒床寿命を短くする恐れ、又は正味生産性が悪化する恐れがあるという流動制限(「圧力低下」)及び微粒子損失の問題を防止するからである。
【発明の概要】
【0009】
[0009]
したがって、本発明の一例は、より高いNi含有合金、すなわち、従来の42%Niと比較して著しくNiに富む合金を使用して触媒を製造するための発明の方法である。本発明の方法は、アルミニウム及びニッケルを含む合金顆粒を提供することと、合金顆粒をアルカリ溶液で処理して触媒を形成することと、を含む。合金顆粒中のニッケルの含有量は、約43重量%~約60重量%の範囲内であってもよい。合金顆粒は、約1mm~約10mmの範囲内の有効直径を有してもよい。
【0010】
[0010]
本発明の別の例は、摩耗を低減したニッケル及びアルミニウムを含む触媒である。触媒中のニッケルの含有量は、約57重量%~約75重量%の範囲内であってもよい。触媒は、約1mm~約10mmの範囲内の有効直径、及び約7.0%未満の摩耗値を有してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
[0011]
本発明とみなされる主題は、本明細書の結論において、特許請求の範囲において特に指摘され、明確に特許請求されている。本発明の前述及び他の目的、特徴、及び利点は、以下の添付図面と併せてなされた以下の詳細な説明から明らかとなる。
【0012】
図1】[0012] (a)約3.3~約7mm、(b)約2.4~約3.3mm、及び(c)約1.7~約2.4mmの異なる範囲の有効直径を有する合金顆粒を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0013]
本発明は、本発明の実施形態に関して記載される。
[0014]
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される以下の用語は、以下の定義を有する。
【0014】
[0015]
用語「固定床」とは、反応混合物と共に反応器内で常に移動する撹拌床又は流動床(「スラリー」系)とは対照的に、触媒反応器内に拘束された静的な床に充填されかつ反応混合物がそれを通って連続的に移動する触媒の質量を指す。
【0015】
[0016]
本発明の一例は、より高いNi含有合金、すなわち、従来の42%Niと比較して著しくNiに富む合金を使用して触媒を製造するための方法である。一実施形態では、方法は、アルミニウム及びニッケルを含む合金顆粒を提供することを含む。合金顆粒中のニッケルの含有量は、約43重量%~約60重量%、好ましくは約45重量%~約58重量%、より好ましくは約50重量%~約56重量%、最も好ましくは約50重量%~約53重量%の範囲内であってもよい。
【0016】
[0017]
一実施形態では、これらの合金顆粒は、粉砕及び/又は研削することによってより大きな合金顆粒のサイズを小さくし、次いで、所望のサイズを有する合金顆粒を提供するために分類することによって得てもよい。合金を粉砕することは、典型的には、粒径の広い分布をもたらし、この分布は、過度に大きい又は過度に小さい顆粒を除去することによって、通常はふるい分けによって、分類工程において狭くなる。粉砕又は研削機構を退出したより大きな粒子は、更なるサイズ減少のために再利用することができる。これらの合金顆粒は、不規則な形状を有してもよい。粉砕及び/又は研削方法によって形成される顆粒の「有効直径」という用語は、顆粒が通過することができる最大メッシュ数を有する標準ふるい(米国又はタイラー表記)における正方形の開口のサイズを指す。顆粒は有効直径の分布を有し、その範囲はふるい分け工程を通して分類することによって決定される。具体的には、まず、顆粒をふるい分けし、より低いメッシュ数の標準ふるいに通す。次いで、通過した顆粒をふるい分けする一方で、より高いメッシュ数の標準ふるいによって保持する。保持された顆粒の有効直径の範囲を、その高い方のメッシュ数の標準ふるいのサイズからその低い方のメッシュ数の標準ふるいのサイズまでのものとして決定する。
【0017】
[0018]
別の実施形態では、所望のサイズの合金顆粒は、溶融合金を金型に鋳造すること、ペレット化すること、又は冷却媒体(気体又は液体)中の溶融合金から直接液滴を形成することによって得てもよい。鋳造及びペレット化の方法は、円筒形状を有する均一な合金顆粒を製造することができる。円筒形状を有する顆粒の「有効直径」という用語は、円筒の断面(円形)の直径を指す。一実施形態では、球状合金顆粒は、急速冷却を通して溶融合金の「ショット」によって形成されてもよい。球形を有する顆粒の「有効直径」という用語は、球体の直径を指す。
【0018】
[0019]
一実施形態では、合金顆粒は、約1mm~約10mm、好ましくは約2mm~約6mm、より好ましくは約2.5mm~約5mmの範囲内の有効直径を有し得る。別の実施形態では、顆粒サイズの全体範囲は、利用される顆粒の全てを通過できるようにする約「4」(約4.75mmの開口)のふるい表記の上限から、利用される顆粒を実質的に通過させない約「12」(約1.7mmの開口)の下限まで拡大してもよい。換言すれば、合金顆粒は、約1.7mm~約4.75mmの範囲内の有効直径を有する。別の実施形態では、利用される顆粒は、この最も広い全範囲のサブセットである有効直径の一範囲内に存在してもよく、例えば、8メッシュ(約2.4mm)の正方形の開口よりも小さくかつ12メッシュ(約1.7mm)の開口よりも大きい粒子の全てを実質的に有する「8~12メッシュ」範囲として指定される合金に由来してもよい。換言すれば、合金顆粒は、約1.7mm~約2.4mmの範囲内の有効直径を有する。別の実施形態では、利用される顆粒は、4メッシュ(約4.75mm)の正方形の開口よりも小さくかつ8メッシュ(約2.4mm)の開口より大きい粒子の全てを実質的に有する「4~8メッシュ」範囲として指定される合金顆粒に由来してもよい。換言すれば、合金顆粒は、約2.4mm~約4.75mmの範囲内の有効直径を有する。
【0019】
[0020]
次いで、合金顆粒をアルカリ溶液で処理又は活性化して、触媒を形成してもよい。活性化中、アルミニウムを、アルカリ溶液によって合金顆粒から、当初存在していたアルミニウム(Al)の少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%を浸出する程度まで、部分的に浸出してもよい。Al浸出範囲の上限は、触媒の特定の使用のために変化し、相反する目標、すなわち、より高い活性(より高い浸出を必要とする)対最小化された摩耗のバランスに依存する。アルカリ溶液は、無機又は有機化合物のいずれかに由来するものであってもよい。一実施形態では、アルカリ溶液は水酸化ナトリウムを含む。アルカリ溶液中の水酸化ナトリウムの濃度は、1重量%~20重量%、好ましくは1重量%~15重量%、より好ましくは1重量%~10重量%の範囲内であってもよい。合金顆粒は、約20℃~約110℃、好ましくは約30℃~約90℃、より好ましくは約40℃~約70℃の範囲内の温度でアルカリ溶液で処理されてもよい。
【0020】
[0021]
アルカリ溶液による合金顆粒の処理プロセスは、限定されない。一実施形態では、固定床触媒用に処理されている合金顆粒は、アルカリ溶液が送り込まれ及び/又は再循環される容器内に存在してもよい。合金に含まれるアルミニウムは、溶解して、水素の激しい発生を伴ってアルカリ金属アルミン酸塩(例えば、アルミン酸ナトリウム)を形成する。顆粒及びアルカリ溶液は、通常、アルミニウム含有量が所望のレベルまで低下するまで、高温(例えば、40℃~60℃)で、最大で数時間、互いに接触したままである。
【0021】
[0022]
アルカリ溶液を、単一の溶液として、経時的に強度を増加させる一連の溶液として、又はその代わりに元の最も弱い溶液を収容していた既存のリザーバに余剰のNaOHを添加することによって経時的に強度が連続的に変化する溶液として導入してもよい。一実施形態では、合金顆粒を、40~60℃の温度を維持しながら、合金顆粒の床を通して連続的に循環される3~10重量%の余剰のNaOH溶液によって処理してもよい。
【0022】
[0023]
別の実施形態では、合金顆粒を、最初に、約10~20分間、3~4重量%のNaOH溶液などの低濃度で処理する。次いで、追加の水酸化ナトリウムを溶液にゆっくりと添加して、NaOH溶液の濃度を、例えば、20~30分の期間中6~8重量%まで増加させることができる。最後に、合金顆粒を、増加した濃度のNaOH溶液によって更に約20~30分間処理する。
【0023】
[0024]
指定された時間の後、活性化プロセスを中断する。活性化後の触媒を、反応液から分離し、その後、洗浄水がわずかにアルカリ性の約8~9のpH値を有するまで水で洗浄してもよい。触媒の細孔容積、孔径、及び表面積は、初期合金中のアルミニウムの量及び浸出の程度に依存する。
【0024】
[0025]
触媒を製造する方法は、触媒を促進する工程を更に含んでもよい。触媒は、特定のプロモーター金属に応じて、約0.1重量%~約15重量%のプロモーター遷移金属により促進され得る。このような遷移金属としては、ニッケル触媒の水素化性能、例えば、選択性、転化率、及び不活性化に対する安定性を促進することができるものを挙げることができる。一実施形態では、触媒は、好ましくは、約0.1~約10重量%、好ましくは約0.5~約5.0重量%の範囲のプロモーター遷移金属含有量を有する。
【0025】
[0026]
プロモーター遷移金属は、ニッケル及びアルミニウムのベース合金中の成分として触媒に添加されてもよいが、ニッケルアルミニウム合金からアルミニウムを除去するために使用される浸出溶液内に、又は活性化後の含浸若しくはコーティング浴中に添加することもできる。一実施形態では、浸出溶液を介して添加される場合、その中に、約0.2~2重量%、好ましくは0.5~1.5%重量%の金属:触媒比で、ある量のプロモーター前駆体、例えば塩化クロム又は他のCr化合物を含めることができる。一実施形態では、Mo、Cr、W、Cu、及びFe、又はこれらの混合物からなる群から選択される金属の可溶性塩を含む溶液でその触媒を処理することによって触媒を促進してもよい。一実施形態では、アルキルヘプタモリブデン酸四水和物(NHMo24~420)などの可溶性Mo塩を使用して触媒をMoにより促進し、触媒床を通して循環させた後、水で更に洗浄してもよい。別の実施形態では、合金顆粒を形成する際にMo、Cr、W、Fe又はこれらの混合物から選択される成分を添加することによって触媒を促進してもよい。
【0026】
[0027]
活性化後に触媒の表面にプロモーターを適用する選択肢を採用する場合、表面堆積を、活性化後の洗浄段階中に実施してもよく、そこでは、触媒は、(通常、アルカリ性pH)塩溶液と接触させて、上述のプロモーターの同じ近似範囲を達成する。この表面堆積は、選択されたpH、例えば、8~12の範囲、好ましくは9~11で実施することができる。触媒を、通常9~11のアルカリ性pHで水中に保存する。別の浸出後プロセスでは、金属は、米国特許第7,375,053号に記載されたコーティング又はめっき技術を利用して、触媒上にめっきすることができ、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
[0028]
一実施形態では、触媒中のニッケルの含有量は、約57重量%~約75重量%、好ましくは約60重量%~約70重量%の範囲内であってもよい。別の実施形態では、触媒は、約7.0%未満、好ましくは約5.0%未満、より好ましくは約3.0%未満の摩耗値を有してもよい。
【0028】
[0029]
より高いNi含有Ni-Ai合金、すなわち、従来の42%Niよりも著しくNiに富むものを使用することにより、形成された触媒は、摩耗、すなわち、取り扱い及び使用中により大きな粒子がより小さい粒子に破砕することを受ける傾向を著しく低減し得る。特定の理論に束縛されるものではないが、従来の低Ni合金を浸出して触媒を作製することと比較して、より多くNiに富む合金からの浸出は、合金粒子の元の構造の崩壊がより少なくかつ内部再構成がより少なくし、これにより衝撃に対する内在する弱さを小さく、すなわち、摩耗抵抗の改善をもたらし得ると考えられる。
【0029】
[0030]
本発明の別の例は、高いニッケル含有量を有する顆粒合金をアルカリ溶液で処理することを含む、本発明の方法によって形成される触媒である。触媒を、水素化プロセスのための固定床スポンジ金属触媒として部分的又は全体的に使用してもよい。また触媒を、水素化のためのプロセス、例えば具体的に、水素化によって1,4ブタンジオールを生成するプロセス、又はグルコースの水素化によってソルビトールを生成するためのプロセスにおいて使用してもよい。
【0030】
[0031]
上記触媒を、固定触媒床を使用するものを含む連続プロセスにおいてより効率的に利用
してもよい。トリクル床プロセスを、固定触媒床と共に使用することができる。従来の固定床プロセスで利用される触媒は、顆粒、球体、プレスシリンダ、タブレット、ロゼンジ、ワゴンホイール、リング、スター、又は固体押出品、多葉押出品、中空押出品、及びハニカム体などの押出品が挙げられるが、これらに限定されない様々な形態とすることができる。
【0031】
[0032]
以下、本発明について、実施例を参照してより詳細に述べる。但し、本発明の範囲は以下の実施例に限定されない。
【実施例0032】
[0033]
合金形成及びサイズ決定、触媒摩耗試験、並びに触媒活性試験のための方法を、最初に説明し、後続の全ての実施例に均一に適用する。
【0033】
合金粒子の形成及びサイズ決定
[0034]
ニッケルアルミニウム合金スラブを、前述の従来の溶融及び鋳造方法によって形成した。この後、鋳造合金のスラブをより小さい顆粒に破砕した(約1/4ジョー開口設定を有するBico-Braun Intl.のジョークラッシャーを使用した)。この段階での顆粒(粒子)は、過度に広い分布を有する。次に続くふるい分け工程において、まず、顆粒をふるい分けし、より低いメッシュ数の標準ふるいに通す。次いで、通過した顆粒をふるい分けする一方で、より高いメッシュ数の標準ふるいによって保持する。保持された顆粒の有効直径の範囲を、その高い方のメッシュ数の標準ふるいのサイズからその低い方のメッシュ数の標準ふるいのサイズまでのものとして決定する。図1は、(a)約3.3~約7mm、(b)約2.4~約3.3mm、及び(c)約1.7~約2.4mmの有効直径の異なる範囲を有する合金顆粒を示している。これらの合金顆粒を、(a)3~6メッシュ、(b)6~8メッシュ、及び(c)8~12メッシュの標準ふるいによってそれぞれ分類した。
【0034】
[0035]
その後の実施例及び比較例において、合金顆粒(c)を使用した。これらの合金顆粒は、8メッシュの標準ふるいを通過したが、ふるい振盪機(Rotap(登録商標))中で1分間処理して8メッシュふるいの真下の12メッシュふるいによって保持した(通過しなかった)。
【0035】
[0036]
ふるい表記と公称ふるい開口との関係を以下の表1に示し、これはAldrich 2003-2004カタログ/Handbook of Fine Chemicalsから入手される。
【0036】
[0037]
【0037】
【表1】
【0038】
活性化触媒の摩耗試験
[0038]
機械的応力下で、触媒がより小さい粒子へと破砕する傾向を、ボールミルとして典型的に使用される機械である、Paul O.Abbe,Inc.の「Model JRM」のローラー対上で100RPMで回転させた円筒形金属「mill jar」スリーブ(Advanced Ceramics Manufacturing製の部品000-264)の内部で、キャップされたポリエチレンボトル(Fisher Scientificから入手可能な、「バッフル付き16オンスポリ広口瓶、FAB」)からなる単純なローラーミル装置で測定した。100gの触媒試料を、各試験において、キャップされたボトル内の水に浸漬した。この摩耗試験における滞留時間は、20分であった。触媒試料中の微粒子の量を、20分間のローラーミル工程の前後の両方で行われる秤量によって決定した。微粒子の破片を、Rotap(登録商標)振盪機上で機械的に2分間振盪した標準的な12メッシュふるいを使用して、主試料から分離した。ローラーミル試験及び第2のふるい分けを継続する前に、摩耗試験前にふるい分けで分離された微粉を、主試料と再混合した。各試験の摩耗量を、秤量された微粒子含有量の前後の差、元の試料重量の百分率として表される12メッシュふるい(約1.7mmの開口)を通過する触媒の部分として定義した。
【0039】
摩耗%= [試験後12メッシュ下の%]- [試験前12メッシュ下の%]
触媒活性試験
[0039]
性能基準としてのソルビトールへのデキストロース(グルコース)溶液の転化を使用して、固定床水素化反応器中で触媒活性を測定した。
【0040】
[0040]
内径1/2インチ及び作業床長6インチの垂直カラム固定床反応器を使用し、中心1/8インチ直径の熱電対ウェルを使用した。触媒床の作業体積は、18cc(mL)であった。触媒を水中でこのカラム反応器に充填し、モジュール式触媒床部を主反応器配管システムに接続した後に、続いて、窒素及び次いで水素を流すことによって触媒床領域から押し出した。
【0041】
[0041]
水中の結晶質デキストロースの40%水溶液を、外部供給タンクから120℃に維持された固定床反応器にポンプ注入した。同時に、水素ガスを、500mL/分の流量及び1000psig圧力(68atm)で触媒床を通して送達した。液体流量を、0.20、0.23、及び0.25mL/分の3回の異なるレベルでの複数の実験の実施で連続的に維持した。これは、取り得る最高の流量で製品への供給物の転化を高めるための能力に基づいて、同様の活性物質の触媒間を区別する手段である。
【0042】
[0042]
各4時間の実施時間にわたって製品試料を回収した。残留デキストロース(未転化供給物)を、Fisher Scientificから入手可能な「Hemocue Glucose 201 Analyzer」による分析によって決定した。製品試料を水で希釈して、提供された比色スライドの最適な器具反応範囲での検出を可能にした。これにより、製品試料中のデキストロースの重量パーセントを得る。
【0043】
[0043]
デキストロースの転化パーセントを、以下のように定義した。
100%-2.5(デキストロース重量%)
式中、デキストロース重量%は、上記で決定した製品中の残留量であり、2.5の因子は、40%の供給濃度を説明する。上記で得られた転化値を、所定の液体供給流量でそれぞれ4時間の3つのセグメントについて平均化した。
【0044】
[0044]
製品試料のHPLC分析を別々に行い、デキストロース含有量用のHemocue器具の精度を確認した。HPLCに使用した条件は、寸法300×7.8mmのRezex RCM単糖類Ca+2カラム(シリアル番号735463-1)、寸法50×7.8mmのRezex RCM単糖類Ca+2カラムガード(シリアル番号728606-3)、流量0.7mL/分、流出用の脱イオン水、勾配:イソクラチック、10μL注入、RI検出器、運転時間35分とした。
【0045】
[0045]
主な副産物であるマンニトールは、全ての後続の実験触媒に対して0.4~0.7重量%の範囲であることがわかった。
【0046】
比較例1
[0046]
触媒活性化
[0047]
従来の溶融及び混合技術によって作製された42%Ni-58%Al合金を破砕し、8-12メッシュサイズ範囲(約2~3mmの粒径)にふるい分けした。この合金をAl浸出によって触媒に活性化するために、この8-12メッシュ合金680gを4リットルのビーカーに入れ、次いで、8.1リットルの3%NaOH水溶液を、ビーカーと余剰のNaOH溶液を保持する外部リザーバとの間のポンプを使用して再利用した。この第1の条件(段階1)を10分間継続し、ビーカー内の冷却コイルを使用することにより、45℃で浸出ビーカー内の温度を維持した。次の20分間(段階2)、追加の288gの(純粋な固体)NaOHと462gの水とを含有する溶液をリザーバに着実かつ連続的に添加して、最終的に初期の3%濃度から初期の6%NaOHの当量へのNaOH入力を増加させた(すなわち、Al浸出反応によって消費された量を無視した)。このNaOHの添加後、その系を同じ温度及び液体流量条件で20分間保持した(段階3)。
【0047】
[0048]
次いで、触媒を2%NaOH溶液の5リットルで10分間洗浄した後、流出洗浄水が暫定的なpH10に達するまで45℃の水で洗浄した。モリブデンプロモーターを、70gの水中で、20.5gのアンモニウムヘプタモリブデン酸アンモニウム(NH4)6Mo7O24-4H2Oを用いて触媒に添加した。次いで、MO含有溶液を撹拌して、触媒床を通して60分間分散させた。次いで、触媒を水で更に洗浄し、pHを9にした。
【0048】
[0049]
ICP化学分析により測定した触媒の最終組成は、合金中の初期アルミニウムの43%の浸出(除去)に相当する54.9%Ni、43.3%Al及び1.6%Moであった。
【0049】
[0050]
比較例1の触媒は、従来の触媒の破砕のベースライン範囲を表す10.2%の摩耗を有していた。この触媒の3つのプログラムされた供給流量におけるデキストロースの転化%は、
0.20mL/分の流量での99.9%転化、
0.23mL/分の流量での99.9%転化、
0.25mL/分の流量での99.3%転化であった。
【0050】
[0051]
高活性ではあるが余剰の破損(約10%)もあるという組み合わせは、既存の触媒において改善される状態を表す。
【0051】
比較例2
[0052]
上記比較例1の方法と同様に、58%Al、42%Ni合金から触媒を調製し、以下のこれらの違いを有していた。
【0052】
a)段階2中の添加されたNaOHを、285gの水に溶解した465gの固体NaOHの量とした。これにより、NaOHの合計入力は、8%の開始濃度の当量まで増加した(比較例1の6%に対して)。
【0053】
b)段階2の20分の添加時間後、混合物を、比較例1の20分よりも短い持続時間で、液体を10分間循環させた状態で保持した。
[0053]
ICPによって得られた触媒分析は、49.8%Ni、49.0%Al、及び1.1%Moを示し、これは、比較例1の45%に対して、初期Alの29%のみの浸出に対応する。上述の方法からの摩耗レベルは、10.2%ベースラインに対してわずか8.6%の改善であった。
【0054】
[0054]
比較例2の触媒に対するデキストロース転化%は、
0.20mL/分の流量での99.5%転化、
0.23mL/分の流量での96.5%転化、
0.25mL/分の流量での96.3%転化であった。
【0055】
[0055]
比較例1のベースラインと比較して、より低いレベルのAlの浸出の結果として活性及び摩耗の両方が減少したが、このトレードオフは、活性が顕著な摩耗を著しく改善することなく顕著な影響を受けた点で依然として望ましくない。
【0056】
実施例1
[0056]
触媒を、比較例1と同様のプロセスによって調製したが、以下に記載されるように変更及び詳細を伴った。
【0057】
a)53%Ni及び47%Alを有する合金を由来する。用いた合金重量は500gであった。
b)初期の3%浸出溶液は、約6リットルの容積を有していた。
【0058】
c)段階1、2、及び3のタイミングは、それぞれ、比較例1と同様に10分、20分、及び20分とした。温度を、比較例1及び2と同様に45℃とした。
d)段階2における約6%の当量への入力濃度の増加に使用するNaOHの量を、340gの水に溶解した212gの固体NaOHとした。
【0059】
e)モリブデン酸塩添加:15.1gのヘプタモリブデン酸アンモニウム。
[0057]
得られた触媒は、ICP分析によるこの定量:68.5%Ni、28.8%Al、及び1.6%Moを有し、これは、53%のAl除去に対応する。摩耗試験は、ベースライン比較例1の約4分の1の2.7%というはるかに低い結果を示した。
【0060】
[0058]
実施例1の触媒の活性試験により、
0.20mL/分の流量での96.4%転化、
0.23mL/分の流量での93.6%転化、
0.25mL/分の流量での95.4%転化をもたらした。
【0061】
実施例2
[0059]
実施例1と比較して、この触媒調製においてなされた変更は、以下のとおりであった。
【0062】
a)活性化温度を45℃から上昇させて60℃に維持した。
b)段階2において、342gの固体NaOHと209gの水との混合物を添加することにより、初期の3%~8%までNaOHの入力%を上げた。
【0063】
c)段階1、2、及び3の持続時間をそれぞれ10分、12分、及び17分とした。
d)段階3の終わりに、使用した浸出溶液を反応器+リザーバから取り出し、6.5リットルの10%NaOH溶液で置換し、これを60℃の触媒床を通して更に12分間再循環させた。
【0064】
[0060]
ICPによって得られた触媒分析は、65.4%Ni、32.5%Al、及び1.5%Moという結果となった。これは、元のAlの44%の浸出となる。摩耗試験は、比較例1と比較して、2.6%の改善された結果を示した。
【0065】
[0061]
実施例2の触媒の活性試験により、
0.20mL/分の流量での99.4%転化、
0.23mL/分の流量での99.0%転化、
0.25mL/分の流量での98.8%転化をもたらした。
【0066】
実施例3
[0062]
この触媒調製は、実施例2からの1つの変更のみ、すなわち、53%Ni、47%Al合金に対する50%Ni、50%Al合金の置換を含めた。
【0067】
[0063]
ICPによって得られた触媒分析は、61.1%Ni、37.2%Al、及び1.4%Moという結果となった。これは、元のAlの39%の浸出となる。
【0068】
[0064]
元のアルミニウムの39%の選択的除去は、合金の重量を全体的に0.391×50%又は19.56%(すなわち、例えばそれぞれ100gのうち19.56g)だけ減少させる。Moプロモーターの添加は、元の合金100g当たり1.15gだけ重量を増加させる。触媒の定量を正規化することは、各成分の重量を、1.15+(100-19.44)、又は81.71の新たな総触媒重量で割ることに等しい。
【0069】
したがって、最終Al%は、(100%)(50-19.44)/81.71=37.3%である。
最終Ni%は、(100%)50/81.71=61.2%である。及び
最終Mo%は(100%)1.15/81.71=1.4%である。
【0070】
[0065]
摩耗試験は、比較例1の先行技術のベースラインの5.4%又は約1/2という結果を示した。
【0071】
[0066]
実施例3の触媒の活性試験により、
0.20mL/分の流量での99.8%転化、
0.23mL/分の流量での99.5%転化、
0.25mL/分の流量での99.6%転化をもたらした。
【0072】
[0067]
実施例2及び3は、高活性(デキストロースの転化)と低摩耗との最良のバランスを達成した。
【0073】
[0068] その完全な結果を以下の表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
[発明の態様]
[1]
触媒を製造する方法であって、
アルミニウム及びニッケルを含む合金顆粒を提供することと、
前記合金顆粒をアルカリ溶液で処理して、前記触媒を形成することと、を含み、
前記合金顆粒中の前記ニッケルの含有量は、43重量%~60重量%の範囲内であ
る、方法。
[2]
前記合金顆粒が、1mm~10mmの範囲内の有効直径を有する、1に記載
の方法。
[3]
前記合金顆粒中の前記ニッケルの含有量が、45重量%~58重量%の範囲内であ
る、1に記載の方法。
[4]
前記合金顆粒中の前記ニッケルの含有量が、50重量%~56重量%の範囲内であ
る、1に記載の方法。
[5]
前記合金顆粒中の前記ニッケルの含有量が、50重量%~53重量%の範囲内であ
る、1に記載の方法。
[6]
前記合金顆粒が、2mm~6mmの範囲内の有効直径を有する、1に記載の
方法。
[7]
前記アルカリ溶液が、水酸化ナトリウムを含む、1に記載の方法。
[8]
前記アルカリ溶液中の前記水酸化ナトリウムの濃度が、1重量%~20重量%の範囲内
である、7に記載の方法。
[9]
前記アルカリ溶液中の前記水酸化ナトリウムの濃度が、1重量%~15重量%の範囲内
である、7に記載の方法。
[10]
前記アルカリ溶液中の前記水酸化ナトリウムの濃度が、1重量%~10重量%の範囲内
である、7に記載の方法。
[11]
前記合金顆粒が、20℃~110℃の範囲内の温度で前記アルカリ溶液で処理され
る、1に記載の方法。
[12]
a.Mo、Cr、W、Cu、及びFe、若しくはこれらの混合物からなる群から選択さ
れる金属の可溶性塩を含む溶液で触媒を処理すること、又は
b.Mo、Cr、W、Cu、及びFe、若しくはこれらの混合物から選択される成分を
添加して、前記合金顆粒を形成すること、から選択される追加のプロセス工程を用いて、
前記触媒を促進することを更に含む、1に記載の方法。
[13]
前記触媒中の前記ニッケルの含有量が、57重量%~75重量%の範囲内である、
1に記載の方法。
[14]
前記触媒中の前記ニッケルの含有量が、60重量%~70重量%の範囲内である、
1に記載の方法。
[15]
前記触媒が、7.0%未満の摩耗値を有する、1に記載の方法。
[16]
前記触媒が、5.0%未満の摩耗値を有する、1に記載の方法。
[17]
前記触媒が、3.0%未満の摩耗値を有する、1に記載の方法。
[18]
1に記載の方法によって形成された触媒。
[19]
2に記載の方法によって形成された触媒。
[20]
水素化プロセスのための、18に記載の触媒を含む、固定床スポンジ金属触媒。
[21]
水素化プロセスのための、19に記載の触媒を含む、固定床スポンジ金属触媒。
[22]
19に記載の触媒を使用した水素化のためのプロセス。
[23]
19に記載の触媒を使用した水素化により1,4ブタンジオールを生成するため
のプロセス。
[24]
19に記載の触媒を使用した水素化によりソルビトールを生成するためのプロセ
ス。
図1
【外国語明細書】