(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055857
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】BTN2に特異性を有する抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230411BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230411BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230411BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230411BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230411BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230411BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230411BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230411BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230411BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230411BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230411BHJP
A61P 5/50 20060101ALI20230411BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20230411BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20230411BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20230411BHJP
A61P 15/08 20060101ALI20230411BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230411BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230411BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230411BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230411BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20230411BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230411BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230411BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61P1/04
A61P1/16
A61P3/10
A61P5/50
A61P7/00
A61P7/04
A61P7/06
A61P15/08
A61P17/00
A61P17/02
A61P19/02
A61P21/00
A61P25/08
A61P25/28
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P37/06
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023014437
(22)【出願日】2023-02-02
(62)【分割の表示】P 2020537866の分割
【原出願日】2018-09-21
(31)【優先権主張番号】17306238.1
(32)【優先日】2017-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17306563.2
(32)【優先日】2017-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.SPAN
(71)【出願人】
【識別番号】520098187
【氏名又は名称】イムチェック セラピューティクス エスエーエス
【氏名又は名称原語表記】IMCHECK THERAPEUTICS SAS
(71)【出願人】
【識別番号】511074305
【氏名又は名称】インセルム(インスティチュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ リシェルシェ メディカル)
(71)【出願人】
【識別番号】520098202
【氏名又は名称】インスティテュート ジャン パオリ アンド イレーヌ カルメット
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT JEAN PAOLI & IRENE CALMETTES
(71)【出願人】
【識別番号】515267792
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ エクス-マルセイユ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE AIX-MARSEILLE
【住所又は居所原語表記】58 Boulevard Charles Livon F-13284 Marseille Cedex 07 France
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】オリーヴ, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】パセロ, クリスティーン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】自己免疫性疾患の治療及び移植片対宿主病(GVHD)における移植拒絶反応の予防に用いることができる新しい免疫抑制剤を提供する。
【解決手段】ヒトブチロフィリン-2(BTN2)に特異性を有する抗体であって、以下の機能:
i.抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞のIFN-γ及びTNF-αの生成を阻害する、
ii.抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を阻害する、
iii.抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の増殖を阻害する、
の少なくとも1つを有することを特徴とする抗体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトブチロフィリン-2(BTN2)に特異性を有する抗体であって、以下の機能:
i.抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞のIFN-γ及びTNF-αの生成を阻害する、
ii.抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を阻害する、
iii.抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の増殖を阻害する、
の少なくとも1つを有することを特徴とする抗体。
【請求項2】
ヒトブチロフィリン-2A1(BTN2A1)及びヒトブチロフィリン-2A2(BTN2A2)の両方に特異性を有する、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
BTN2A2への結合に関して以下の参照マウス抗体:
i.CNCMに寄託番号CNCM I-5231の下で寄託されているハイブリドーマによって得ることができるmAb4.15;
ii.CNCMに寄託番号CNCM I-5232の下で寄託されているハイブリドーマによって得ることができるmAb 5.28;
iii.CNCMに寄託番号CNCM I-5233の下で寄託されているハイブリドーマによって得ることができるmAb 7.28;
iv.CNCMに寄託番号CNCM I-5234の下で寄託されているハイブリドーマによって得ることができるmAb 7.48;
v.CNCMに寄託番号CNCM I-5235の下で寄託されているハイブリドーマによって得ることができるmAb 8.15;又は、
vi.CNCMに寄託番号CNCM I-5236の下で寄託されているハイブリドーマによって得ることができるmAb 8.16、
の少なくとも1つと競合する、請求項1に記載の抗BTN2抗体。
【請求項4】
i.配列番号3~8それぞれのmAb 4.15のH-CDR1、H-CDR2、HCDR3、L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3;
ii.配列番号11~16それぞれのmAb 5.28のH-CDR1、H-CDR2、HCDR3、L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3;
iii.配列番号19~24それぞれのmAb 7.28のH-CDR1、H-CDR2、HCDR3、L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3;
iv.配列番号27~32それぞれのmAb 7.48のH-CDR1、H-CDR2、HCDR3、L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3;
v.配列番号35~40それぞれのmAb 8.15のH-CDR1、H-CDR2、HCDR3、L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3;又は
vi.配列番号43~48それぞれのmAb 8.16のH-CDR1、H-CDR2、HCDR3、L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3、
のいずれかを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗BTN2A2抗体。
【請求項5】
i.VH領域が配列番号9と少なくとも95%の同一性を有する重鎖及びVL領域が配列番号10と少なくとも95%の同一性を有する軽鎖;
ii.VH領域が配列番号17と少なくとも95%の同一性を有する重鎖及びVL領域が配列番号18と少なくとも95%の同一性を有する軽鎖;
iii.VH領域が配列番号25と少なくとも95%の同一性を有する重鎖及びVL領域が配列番号26と少なくとも95%の同一性を有する軽鎖;
iv.VH領域が配列番号33と少なくとも95%の同一性を有する重鎖及びVL領域が配列番号34と少なくとも95%の同一性を有する軽鎖;
v.VH領域が配列番号41と少なくとも95%の同一性を有する重鎖及びVL領域が配列番号42と少なくとも95%の同一性を有する軽鎖;又は、
vi.VH領域が配列番号49と少なくとも95%の同一性を有する重鎖及びVL領域が配列番号50と少なくとも95%の同一性を有する軽鎖、
のいずれかを含む抗体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗BTN2抗体。
【請求項6】
ヒトCD277と交差反応しないことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗BTN2抗体。
【請求項7】
アゴニスト抗CD277抗体mAb 20.1の存在下でVγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を阻害する、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗BTN2抗体。
【請求項8】
ヒト、キメラ又はヒト化抗体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗BTN2抗体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の抗BTN2抗体の重鎖及び/又は軽鎖をコードする核酸分子。
【請求項10】
請求項9に記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項11】
療法で使用するための、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗BTN2抗体。
【請求項12】
関節リウマチ(RA)、インスリン依存型糖尿病(1型糖尿病)、多発性硬化症(MS)、クローン病、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、シェーグレン症候群、尋常天疱瘡、類天疱瘡、アジソン病、強直性脊椎炎、無形成性貧血、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、セリアック病、皮膚筋炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギランバレー症候群、橋本病、特発性の白血球減少、特発性血小板減少性紫斑病、雄不妊症、混合結合組織疾患、重症筋無力症、悪性貧血、水晶体起因性ブドウ膜炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性粘液水腫、ライター症候群、強直人間症候群、甲状腺中毒症、潰瘍性大腸炎及びヴェーゲナー肉芽腫症からなる群の間で選択される障害の治療で使用するための、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗BTN2抗体。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載の抗BTN2抗体及び少なくとも薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BTN2に特異性を有する抗体及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
白血球は、体を病原体から守ることに関与する免疫系の細胞である。従来のMHCクラスI制限CD8+CTL及びNK細胞に加えて、他の非従来型のT細胞、特に、γδT細胞は、NK及びT細胞と同じ感度及び細胞溶解力を提示する。Vγ9/Vδ2 T細胞は循環γδT細胞の主なサブセットであり、ヒト末梢T細胞の1~10%を占める。
【0003】
Vγ9/Vδ2 T細胞は、免疫防御の重要なエフェクターである。それらは、病原体に感染したか又は異常な細胞を直接的に溶解する。さらに、それらは、樹状細胞(DC)成熟並びにアイソタイプスイッチング及び免疫グロブリン生成を誘導することによって免疫応答を調節する。免疫系のこの重要な細胞プラットホームは、表面受容体、ケモカイン及びサイトカインによって厳密に調節される。Vγ9/Vδ2 T細胞は、ホスホアゴニスト(PAg)と呼ばれる非ペプチド性リン酸化イソプレノイド経路代謝産物によって活性化される。
【0004】
T細胞の初回刺激は、専門細胞の関与及び走化性サイトカインの分泌によってモジュレートされる。今日では、我々は、T細胞活性化は2つの相乗事象の結果であることを知っている。最初は、T細胞の受容体(TCR)と、抗原提示細胞(APC)の表面の処理された抗原にコンジュゲートした主要組織適合性複合体(MHC)の間の相互作用である。第2の事象は、B7分子を含む同時刺激抗原非依存性シグナルである。同時刺激シグナルの欠如は、アネルギー、すなわちT細胞増殖、サイトカイン分泌及び細胞傷害性活性の阻害を誘導する。これらの経路の研究は、自己免疫性又はリンパ組織増殖性障害などの病理学的事象の誘発に関する識見を提供することができる。
【0005】
ブチロフィリンは、ブチロフィリン(BTN)、BTN様(BTNL)を含む膜貫通タンパク質のファミリー、並びに上皮内T細胞(SKINT)タンパク質の選択及び維持を構成する(Arnett及びViney、2014年)。それらの細胞外部分は、B7共刺激分子の対応するドメインに相同性を示すIgV及びIgC2ドメインを含有し(Arnett及びViney、2014年)、したがって、ブチロフィリンは拡張されたB7又はIgスーパーファミリーのメンバーであると考えられる。
【0006】
同定された最初のブチロフィリンであるBTN1A1は、乳脂小球の形成、分泌及び安定化のために必要とされる(oggら、2004年)。次に、B7遺伝子並びにMHCクラスI及びII遺伝子は、共通する先祖遺伝子を有する可能性があり、T細胞活性化などの類似の機能に関与するタンパク質をコードしているかもしれないことが提案された(Rhodesら、2001年)
【0007】
その後、ブチロフィリンが免疫系において多様な役割を演ずることをますます多くの証拠が示唆した。保存されたファミリーメンバーに含まれないマウスSKINT1及びヒトBTN3A1に関して、最も良く機能が解明されている。SKINT1は、マウスVγ5+Vδ1+T細胞の胸腺分化を促進する(Boydenら、2008年)。
【0008】
BTN2サブファミリーは、ヒトにおいてBTN2A1、BTN2A2及び偽遺伝子、BTN2A3を含む。BTN2A1及びBTN2A2タンパク質アイソフォームは、IgV及びIgC細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、並びにBTN3A1及びBTN3A3に関して特徴的な細胞内ドメインB30.2を提示するが、BTN3A2はそうでない。マウスでは、BTN2A2はヒトBTN2A2遺伝子の単一コピー遺伝子及びオルソログである。組換えヒトBTN2A1-Fcタンパク質は、BTN2A1の特定の糖型が樹状細胞(DC)の上で見出されるレクチン分子、DC-SIGNに結合することを明らかにした。腫瘍細胞によって発現されるとき、DC-SIGNへのBTN2A1の結合はタンパク質の高いマンノースグリコシル化に依存する(Malcherekら、2007年)。しかし、今日まで、ヒトBTN2A1/A2に関して明確な機能は同定されていないが、組換えFcタンパク質を使用してマウスにおいて多少の実験が実行されている。
【0009】
Smithら、2010年は、組換えマウスのBTN2A2-Fc及びBTN1A1-Fcが活性化T細胞に結合することを示し、これらの細胞の上での1つ又は複数の受容体の存在を示唆した。MOG-Fcタンパク質でなく、固定化BTN2A2-Fc又はBTN2A1-Fcタンパク質は、抗CD3によって活性化されるCD4及びCD8T細胞の増殖を阻害した。マウスのBTN1A1及びBTN2A2は、T細胞代謝、IL-2及びIFN-g分泌も阻害した。
【0010】
Ammanら、2013年は、抗CD3及び抗CD28で刺激されるCD3+一次マウスT細胞へのマウスBTN2A2-Fcの結合は、増殖する細胞の数及び細胞周期への細胞の進入を低減することを見出した。抗CD3刺激T細胞へのBTN2A2-Fcの結合は、CD3ε、Zap70及び以降のErk1/2活性化を阻害した。マウスのBTN2A2-Fcは、in vitroでFoxp3発現及びTreg分化も誘導する。
【0011】
Sarterら、2016年は、Btn2a2-/-マウスが強化されたエフェクターCD4+及びCD8+T細胞応答示し、CD4+調節T細胞誘導を害し、抗腫瘍応答を強化し、実験的な自己免疫性脳脊髄炎を悪化させることを示した。
【0012】
今日まで、自己免疫性疾患の治療及び移植片対宿主病(GVHD)における移植拒絶反応の予防は、重大な副作用を有するか又は必ずしも有効でない免疫抑制剤に依存する。したがって、新しい免疫抑制剤が所望される。
【0013】
今日まで、自己免疫性疾患の治療及び移植片対宿主病(GvHD)における移植拒絶反応の予防は、単に免疫抑制剤に依存する。しかし、そのような免疫抑制剤は、必ずしも有効であるとは限らず、及び/又は重大な副作用を有する可能性がある。
【0014】
したがって、それを必要とする患者における免疫応答を阻害する新しい抑制剤及び/又は方法を同定する必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示は、BTN2に特異性を有する抗体及びその使用に関する。
特に、BTN2(例えば、ヒトBTN2A1及びBTN2A2ポリペプチド)に結合して、以下の特性:
抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞によるIFN-γ及び/又はTNF-αの生成を阻害する、及び/又は
抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を阻害する、及び/又は
抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の増殖を阻害する
の少なくとも1つを示す抗体が本明細書に開示される。
【0016】
具体的な実施形態では、本開示による抗BTN2抗体は、ヒトブチロフィリン-2A1(BTN2A1)及びヒトブチロフィリン-2A2(BTN2A2)の両方に特異性を有する。
【0017】
具体的な実施形態では、本開示による抗BTN2抗体は、以下の参照マウス抗体の少なくとも1つとBTN2A2への結合に関して競合する:
i.CNCMに寄託番号CNCM I-5231の下で寄託されているハイブリドーマによって得ることができるmAb 4.15;
ii.CNCMに寄託番号CNCM I-5232の下で寄託されているハイブリドーマによって得ることができるmAb 5.28;
iii.CNCMに寄託番号CNCM I-5233の下で寄託されているハイブリドーマによって得ることができるmAb 7.28;
iv.CNCMに寄託番号CNCM I-5234の下で寄託されているハイブリドーマによって得ることができるmAb 7.48;
v.CNCMに寄託番号CNCM I-5235の下で寄託されているハイブリドーマによって得ることができるmAb 8.15;又は、
vi.CNCMに寄託番号CNCM I-5236の下で寄託されているハイブリドーマによって得ることができるmAb 8.16.
【0018】
具体的な実施形態では、本開示による抗BTN2抗体は、以下のいずれかを含む:
i.抗体mAb 4.15の6つのCDRを含む重鎖及び軽鎖であって、前記mAb 4.15はCNCMに寄託番号CNCM I-5231の下で寄託されているハイブリドーマによって得ることができる、重鎖及び軽鎖;
ii.抗体mAb 5.28の6つのCDRを含む重鎖及び軽鎖であって、前記mAb 5.28はCNCMに寄託番号CNCM I-5232の下で寄託されているハイブリドーマによって得ることができる、重鎖及び軽鎖;
iii.抗体mAb 7.28の6つのCDRを含む重鎖及び軽鎖であって、前記mAb 7.28はCNCMに寄託番号CNCM I-5233の下で寄託されているハイブリドーマによって得ることができる、重鎖及び軽鎖;
iv.抗体mAb 7.48の6つのCDRを含む重鎖及び軽鎖であって、前記mAb 7.48はCNCMに寄託番号CNCM I-5234の下で寄託されているハイブリドーマによって得ることができる、重鎖及び軽鎖;
v.抗体mAb 8.15の6つのCDRを含む重鎖及び軽鎖であって、前記mAb 8.15はCNCMに寄託番号CNCM I-5235の下で寄託されているハイブリドーマによって得ることができる、重鎖及び軽鎖;又は、
vi.抗体mAb 8.16の6つのCDRを含む重鎖及び軽鎖であって、前記mAb 8.16はCNCMに寄託番号CNCM I-5236の下で寄託されているハイブリドーマによって得ることができる、重鎖及び軽鎖。
【0019】
他の具体的な実施形態では、本開示の抗BTN2抗体は、
(i)配列番号3~8それぞれのmAb 4.15のH-CDR1、H-CDR2、HCDR3、L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3;
(ii)配列番号11~16それぞれのmAb 5.28のH-CDR1、H-CDR2、HCDR3、L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3;
(iii)配列番号19~24それぞれのmAb 7.28のH-CDR1、H-CDR2、HCDR3、L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3;
(iv)配列番号27~32それぞれのmAb 7.48のH-CDR1、H-CDR2、HCDR3、L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3;又は、
(v)配列番号35~40それぞれのmAb 8.15のH-CDR1、H-CDR2、HCDR3、L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3;
(vi)配列番号43~48それぞれのmAb 8.16のH-CDR1、H-CDR2、HCDR3、L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3
のいずれかを含む。
【0020】
以前の実施形態と組み合わせることができる他の具体的な実施形態では、本開示の抗BTN2抗体は、
(i)VH領域が配列番号9と少なくとも95%の同一性を有する重鎖及びVL領域が配列番号10と少なくとも95%の同一性を有する軽鎖;
(ii)VH領域が配列番号17と少なくとも95%の同一性を有する重鎖及びVL領域が配列番号18と少なくとも95%の同一性を有する軽鎖;
(iii)VH領域が配列番号25と少なくとも95%の同一性を有する重鎖及びVL領域が配列番号26と少なくとも95%の同一性を有する軽鎖;
(iv)VH領域が配列番号33と少なくとも95%の同一性を有する重鎖及びVL領域が配列番号34と少なくとも95%の同一性を有する軽鎖;
(v)VH領域が配列番号41と少なくとも95%の同一性を有する重鎖及びVL領域が配列番号42と少なくとも95%の同一性を有する軽鎖;又は、
(vi)VH領域が配列番号49と少なくとも95%の同一性を有する重鎖及びVL領域が配列番号50と少なくとも95%の同一性を有する軽鎖
のいずれかを含む抗体である。
【0021】
具体的な実施形態では、本開示による抗BTN2抗体はヒトCD277と交差反応をしない、特に、抗BTN2抗体はヒトBTN3A1、BTN3A2及びBTN3A3のいずれか1つと交差反応をしない。
【0022】
具体的な実施形態では、本開示による抗BTN2抗体は、アゴニスト抗CD277抗体mAb20.1の存在下で活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解性機能を阻害する。
【0023】
具体的な実施形態では、本開示による抗BTN2抗体は、例えば、標的細胞株(すなわち、Daudi細胞株)との共培養、及び/又はホスホアゴニスト(PAg)、及び/又はホスホアゴニスト(PAg)の生成を誘導する薬剤によって活性化される、活性化Vγ9/Vδ2T細胞の細胞溶解性機能を阻害する。
【0024】
具体的な実施形態では、前記抗BTN2抗体は、ヒト、キメラ又はヒト化抗体である。
【0025】
本開示の別の態様は、上記の抗BTN2抗体のいずれかの重鎖及び/又は軽鎖をコードする核酸分子に関する。
【0026】
本開示は、特に上記の抗BTN2抗体のいずれか1つの製造で使用するための、そのような核酸を含む宿主細胞にも関係する。
【0027】
本開示の別の態様は、療法で、例えば自己免疫性及び炎症性障害並びに移植拒絶反応を治療するための方法で使用するための、上で規定される抗BTN2抗体に関する。
【0028】
本開示の別の態様は、それを必要とする対象において自己免疫性及び炎症性障害並びに移植拒絶反応を治療する方法であって、対象に上で規定される抗BTN2抗体の治療的有効量を投与することを含む方法に関する。
【0029】
一般的に、前記自己免疫性及び炎症性障害は、以下からなる群から選択される:関節リウマチ(RA)、インスリン依存型糖尿病(1型糖尿病)、多発性硬化症(MS)、クローン病、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、シェーグレン症候群、尋常天疱瘡、類天疱瘡、アジソン病、強直性脊椎炎、無形成性貧血、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、セリアック病、皮膚筋炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギランバレー症候群、橋本病、特発性の白血球減少、特発性血小板減少性紫斑病、雄不妊症、混合結合組織疾患、重症筋無力症、悪性貧血、水晶体起因性ブドウ膜炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性粘液水腫、ライター症候群、強直人間症候群、甲状腺中毒症、潰瘍性大腸炎及びヴェーゲナー肉芽腫症。
【0030】
本開示は、上で規定される抗BTN2抗体を含む医薬組成物にも関する。
【0031】
本開示は、対象において免疫応答を阻害する方法であって、本明細書に開示される抗BTN2抗体の有効量を対象に投与することを含む方法もさらに提供する。
【発明の詳細な説明】
【0032】
定義
本明細書で使用されるように、用語「BTN2」は、当技術分野での一般的な意味を有し、配列番号1のBTN2A1又は配列番号2のBTN2A2のいずれかを含むヒトBTN2ポリペプチドを指す。
配列番号1:BTN2Aアイソフォーム1前駆体(ヒト(Homo sapiens)):
MESAAALHFSRPASLLLLLLSLCALVSAQFIVVGPTDPILATVGENTTLRCHLSPEKNAEDMEVRWFRSQFSPAVFVYKGGRERTEEQMEEYRGRTTFVSKDISRGSVALVIHNITAQENGTYRCYFQEGRSYDEAILHLVVAGLGSKPLISMRGHEDGGIRLECISRGWYPKPLTVWRDPYGGVAPALKEVSMPDADGLFMVTTAVIIRDKSVRNMSCSINNTLLGQKKESVIFIPESFMPSVSPCAVALPIIVVILMIPIAVCIYWINKLQKEKKILSGEKEFERETREIALKELEKERVQKEEELQVKEKLQEELRWRRTFLHAVDVVLDPDTAHPDLFLSEDRRSVRRCPFRHLGESVPDNPERFDSQPCVLGRESFASGKHYWEVEVENVIEWTVGVCRDSVERKGEVLLIPQNGFWTLEMHKGQYRAVSSPDRILPLKESLCRVGVFLDYEAGDVSFYNMRDRSHIYTCPRSAFSVPVRPFFRLGCEDSPIFICPALTGANGVTVPEEGLTLHRVGTHQSL
【0033】
配列番号2:BTN2Aアイソフォーム2前駆体(ヒト):
MEPAAALHFSLPASLLLLLLLLLLSLCALVSAQFTVVGPANPILAMVGENTTLRCHLSPEKNAEDMEVRWFRSQFSPAVFVYKGGRERTEEQMEEYRGRITFVSKDINRGSVALVIHNVTAQENGIYRCYFQEGRSYDEAILRLVVAGLGSKPLIEIKAQEDGSIWLECISGGWYPEPLTVWRDPYGEVVPALKEVSIADADGLFMVTTAVIIRDKYVRNVSCSVNNTLLGQEKETVIFIPESFMPSASPWMVALAVILTASPWMVSMTVILAVFIIFMAVSICCIKKLQREKKILSGEKKVEQEEKEIAQQLQEELRWRRTFLHAADVVLDPDTAHPELFLSEDRRSVRRGPYRQRVPDNPERFDSQPCVLGWESFASGKHYWEVEVENVMVWTVGVCRHSVERKGEVLLIPQNGFWTLEMFGNQYRALSSPERILPLKESLCRVGVFLDYEAGDVSFYNMRDRSHIYTCPRSAFTVPVRPFFRLGSDDSPIFICPALTGASGVMVPEEGLKLHRVGTHQSL
【0034】
本明細書で使用されるように、用語「抗体」又は「免疫グロブリン」は同じ意味を有し、本発明では同等に使用される。
【0035】
本明細書で使用される用語「抗体」は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原に免疫特異的に結合する抗原結合性部位を含有する分子を指す。このように、用語抗体は、完全な抗体分子だけでなく、抗体断片並びに抗体及び抗体断片のバリアント(誘導体を含む)も包含する。
【0036】
自然抗体では、2本の重鎖はジスルフィド結合によって互いに連結し、各重鎖はジスルフィド結合によって軽鎖に連結する。2種類の軽鎖、ラムダ(l)及びカッパ(k)がある。抗体分子の機能的活性を決定する5つの主要な重鎖クラス(又は、アイソタイプ)がある:IgM、IgD、IgG、IgA及びIgE。各鎖は、異なった配列ドメインを含有する。軽鎖は、2つのドメイン、可変ドメイン(VL)及び定常ドメイン(CL)を含む。重鎖は、4つのドメイン、可変ドメイン(VH)及び3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3、CHと総称される)を含む。軽鎖(VL)及び重鎖(VH)の可変領域は、抗原への結合性認識及び特異性を決定する。軽鎖(CL)及び重鎖(CH)の定常領域ドメインは、抗体鎖会合、分泌、経胎盤移動度、補体結合及びFc受容体(FcR)への結合などの重要な生物学的特性を付与する。
【0037】
Fv断片は免疫グロブリンのFab断片のN末端部分であり、1本の軽鎖及び1本の重鎖の可変部分からなる。抗体の特異性は、抗体結合部位と抗原決定基の間の構造的相補性に存在する。抗体結合部位は、主に超可変性又は相補性決定領域(CDR)からのものである残基で構成される。時折、非超可変性又はフレームワーク領域(FR)からの残基は、抗体結合部位に参加することができるか、又は全体のドメイン構造に、したがって結合部位に影響することができる。相補性決定領域又はCDRは、天然の免疫グロブリン結合部位の天然のFv領域の結合親和性及び特異性を一緒に規定するアミノ酸配列を指す。免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖は、L-CDR1、L-CDR2、L-CDR3及びH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3とそれぞれ指定される3つのCDRを各々有する。したがって、抗原結合部位は、重鎖及び軽鎖のV領域の各々からのCDRセットを含む、6つのCDRを一般的に含む。フレームワーク領域(FR)は、CDRの間に挿入されるアミノ酸配列を指す。したがって、軽鎖及び重鎖の可変領域は、以下の順序の4つのフレームワーク領域及び3つのCDRを一般的に含む:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。
【0038】
抗体可変ドメイン中の残基は、従来通りにKabatらによって考案されたシステムに従って番号付けされる。このシステムは、Kabatら、1987年、Sequences of Proteins of Immunological Interest、US Department of Health and Human Services、NIH、USA(以降、「Kabatら」)に示される。この番号付けシステムが、本明細書で使用される。Kabatの残基呼称は、SEQ ID配列におけるアミノ酸残基の直線的番号付けと必ずしも直接的に対応しない。実際の直線的アミノ酸配列は、基本的可変ドメイン構造のフレームワークであるか又は相補性決定領域(CDR)であるかにかかわらず、構造成分の短縮又はそれへの挿入に対応する厳密なKabat番号付けより少ないか又は追加のアミノ酸を含有することができる。所与の抗体のための残基の正しいKabat番号付けは、「標準」のKabat番号付け配列との抗体配列中の相同性残基の整列によって決定することができる。重鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムによる残基31~35(H-CDR1)、残基50~65(H-CDR2)及び残基95~102(H-CDR3)に位置する。軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムによる残基24~34(L-CDR1)、残基50~56(L-CDR2)及び残基89~97(L-CDR3)に位置する。
【0039】
具体的な実施形態では、本明細書で提供される抗体は、抗体断片、より詳細には本明細書に開示される抗体の抗原結合性ドメインを含む任意のタンパク質である。抗体断片には、限定されずに、Fv、Fab、F(ab’)2、Fab’、dsFv、scFv、sc(Fv)2及びダイアボディが含まれる。
【0040】
本明細書で使用されるように、用語「特異性」は、BTN2などの抗原の上に提示されるエピトープに検出可能的に結合する抗体の能力を指す。一部の実施形態では、それは、細胞株、例えば例に記載されるHEK293F細胞株において発現されるヒトBTN2A2に、実施例及び
図1において決定される通り、好ましくは50μg/ml未満、より好ましくは10μg/ml未満、さらにより好ましくは1μg/ml未満のEC50で結合する抗体又はタンパク質を指すものである。一部の実施形態では、それは、例に記載されるBTN3及びBTN2の全てのアイソフォームがノックアウトされた細胞株、例えばHEK293F細胞株において発現されるヒトBTN2A1に、好ましくは1μg/ml未満、例えば0.1μg/ml未満のEC50で結合する抗体又はタンパク質を指すものである;及び/又は、それは、例に記載されるBTN3及びBTN2の全てのアイソフォームがノックアウトされた細胞株、例えばHEK293F細胞株において発現されるヒトBTN2A2に、好ましくは50μg/ml未満、例えば1μg/ml未満又は0.02μg/ml未満のEC50で結合する抗体又はタンパク質を指すものである。他の実施形態では、それは、抗原組換えポリペプチドに、100nM以下、10nM以下、1nM以下、100pM以下又は10pM以下のK
Dで結合する。
【0041】
「BTN2以外の抗原と交差反応する」抗体は、10nM以下、1nM以下又は100pM以下のKDでその抗原に結合する抗体を指すものである。「特定の抗原と交差反応しない」抗体は、100nM以上のKD、又は1μM以上のKD、又は10μM以上のKDでその抗原に結合する抗体を指すものである。ある特定の実施形態では、抗原と交差反応しないそのような抗体は、標準の結合アッセイにおいてこれらのタンパク質に対して事実上検出不能な結合を示す。
【0042】
本明細書で使用されるように、「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体が実質的に存在しない抗体を指す(例えば、BTN2に特異的に結合する単離された抗体には、BTN2以外の抗原に特異的に結合する抗体が実質的に存在しない)。しかし、BTN2に特異的に結合する単離された抗体は、他の種からの関連BTN2分子などの他の抗原との交差反応性を有することがある。さらに、単離された抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まないかもしれない。
【0043】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性及び親和性を提示する。
【0044】
語句「抗原を認識する抗体」及び「抗原に特異性を有する抗体」は、本明細書において用語「抗原に特異的に結合する抗体」と互換的に使用される。
【0045】
本明細書で使用されるように、用語「Kassoc」又は「Ka」は、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を指すものであり、用語「Kdis」又は「Kd」は、本明細書で使用するように特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指すものである。
【0046】
本明細書で使用されるように、用語「KD」は、Kd対Kaの比(すなわち、Kd/Ka)から得られ、モル濃度(M)で表される解離定数を指すものである。抗体のKD値は、当技術分野で十分に確立されている方法を使用して決定することができる。mAbのKD値を決定するための好ましい方法は、Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1988年)、Coliganら編、Current Protocols in Immunology、Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience、N.Y.(1992、1993)、及びMuller、Meth.Enzymol.92:589~601(1983)に見出すことができ、これらの参考文献は参照により本明細書に完全に組み込まれる。抗体のKDを決定する方法は、表面プラズモン共鳴を使用すること、又はバイアコア(Biacore)(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用することによる。
【0047】
特異性は、例えば、他の無関係な分子への非特異的結合に対する特異抗原への結合における、親和性/結合力の約10:1、約20:1、約50:1、約100:1、10,000:1又はそれ以上の比によってさらに示すことができる(この場合、特異抗原はBTN2ポリペプチドである)。本明細書で使用される用語「親和性」は、抗体のエピトープへの結合の強度を意味する。
【0048】
一態様では、本開示は、以下の特性:
i.抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞によるIFN-γ及びTNF-αの生成を阻害する、及び/又は
ii.抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を阻害する、及び/又は
iii.抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の増殖を阻害する
の少なくとも1つを有することを特徴とするBTN2に特異性を有する抗体に関する。
【0049】
そのような有利な特性を有する本開示の抗BTN2抗体は、実施例に記載の細胞アッセイ、特にDaudi細胞株でのCD107脱顆粒アッセイを使用して抗BTN2抗体の間でスクリーニングすることができる。
【0050】
本明細書で使用されるように、「IFNγ又はTNFαの生成を阻害する」は、対照の活性化Vγ9/Vδ2 T細胞(対照としてIgG1又はIgG2aを有する)と比較したとき、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞による少なくともIFNγ又はTNFαの生成のかなりの減少が観察されることを意味し、前記Vγ9/Vδ2 T細胞は、標的細胞株(Daudi細胞株)との共培養又はホスホアゴニスト(pAg)のいずれかによって活性化される。一般的に、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞によるIFNγ又はTNFαの生成の阻害は、IFNγ又はTNFαに対する抗体による細胞内標識による細胞アッセイ及びフローサイトメトリーで測定することができる。そのようなアッセイは、下の例においてより詳細に記載される。
【0051】
本明細書で使用されるように、「活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を阻害する」は、対照の活性化ヒトVγ9/Vδ2 T細胞(対照としてIgG1又はIgG2aを有する)と比較したとき、活性化ヒトVγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能のかなりの低下が観察されることを意味し、前記ヒトVγ9/Vδ2 T細胞は、標的細胞株(Daudi細胞株)との共培養又はホスホアゴニスト(pAg)のいずれかによって活性化される。一般的に、例えばアゴニスト抗体mAb20.1の存在下での活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能の阻害は、標準の細胞株に対するγδ T細胞脱顆粒の誘導の阻害、及び陽性の脱顆粒γδ T細胞を検出するための脱顆粒マーカーとしてのCD107の測定によって測定することができる。そのようなアッセイは、下の例においてより詳細に記載される。
【0052】
本明細書で使用されるように、「活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の増殖を阻害する」は、対照としてIgG1又はIgG2aによって活性化されたVγ9/Vδ2 T細胞による増殖と比較したとき、活性化されたVγ9/Vδ2 T細胞の増殖のかなりの低下が観察されることを意味し、前記Vγ9/Vδ2 T細胞は、標的細胞株(Daudi細胞株)との共培養又はホスホアゴニスト(pAg)のいずれかによって活性化される。一般的に、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の増殖は、CFSE又はセルトレースバイオレット染色による細胞アッセイ及びフローサイトメトリーで測定することができる。
【0053】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を以下の参照抗体の少なくとも1つと実質的に同等以上のレベルに阻害する:下に記載されるmAb 4.15、mAb 5.28、mAb 7.28、mAb 7.48、mAb 8.15及びmAb 8.16。他の具体的な実施形態では、抗BTN2抗体は、活性化Vγ9/Vδ T細胞の細胞溶解機能をmAb 103.2と少なくとも同等以上のレベルに阻害し、前記mAb 103.2は国際公開第2012/080351に開示される。
【0054】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞による少なくともIFNγ又はTNFαの生成を以下の参照抗体の少なくとも1つと実質的に同等以上のレベルに阻害する:以下に記載されるmAb 4.15、mAb 5.28、mAb 7.28、mAb 7.48、mAb 8.15及びmAb 8.16。他の具体的な実施形態では、抗BTN2抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能をmAb 103.2と少なくとも同等以上のレベルに阻害し、前記mAb 103.2は国際公開第2012/080351に開示される。
【0055】
具体的な実施形態では、本開示による抗BTN2抗体は、それらがアゴニスト抗CD277抗体mAb20.1の存在下でさえも活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を阻害することをさらに特徴とする。
【0056】
抗CD277抗体mAb 20.1は国際公開第2012/080351に開示され、この抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を増加させる。一般的に、mAb20.1の存在下での活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能の阻害は、例えばDaudi細胞株を標準の細胞株として、及びCD107を陽性の脱顆粒γδ T細胞を検出するための脱顆粒マーカーとして使用し、並びにmAb20.1を例えば10μg/mlの濃度で使用した、標準の細胞株に対するγδ T細胞脱顆粒の誘導の阻害の測定によって測定することができる。そのようなアッセイも、下の例においてより詳細に記載される。
【0057】
参照抗体mAb 1~6
本発明の抗体には、Budapest条約の条項に従って2017年9月14日に下の表1に記載のそれぞれの寄託番号の下でCollection Nationale de Cultures des Microorganismes(CNCM、Institut Pasteur、25 rue du Docteur Roux、75724 Paris Cedex 15、France)に寄託されたハイブリドーマによって生成される、参照マウスモノクローナル抗体mAb1~mAb6が含まれる:
【0058】
【0059】
本発明は、上記の参照抗体のいずれか1つのそれぞれのVH及びVL領域を含む任意の抗体にさらに関する。
【0060】
本発明は、寄託番号CNCM I-5231、CNCM I-5232、CNCM I-5233、CNCM I-5234、CNCM I-5235又はCNCM I-5236の下でCNCMにおいてアクセス可能なハイブリドーマにさらに関する。
【0061】
本発明の他の抗体には、アミノ酸の欠失、挿入又は置換によって突然変異しているが、上記の参照抗体のいずれか1つのCDR領域と少なくとも60、70、80、90、95又は100パーセントの同一性をCDR領域に有するアミノ酸を有するものが含まれる。
【0062】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、参照mAb1~mAb6のうちの1つに対応する6つのCDR領域と100%同一である6つのCDR領域を有する、mAb1~mAb6のいずれか1つの突然変異体であり、ここで、前記突然変異体抗体は、対応する参照抗体の対応するフレームワーク領域と比較したとき、FR1、FR2、FR3及びFR4領域で1、2、3、4又は5個以下のアミノ酸がアミノ酸の欠失、挿入又は置換によって突然変異している変異体アミノ酸配列を含む。
【0063】
特定の実施形態では、本発明の抗BTN2抗体、好ましくはヒト化抗BTN2は、
i.抗体mAb 4.15の6つのCDRを含む重鎖及び軽鎖であって、前記mAb 4.15はCNCMに寄託番号CNCM I-5231の下で寄託されているハイブリドーマによって得ることができる、重鎖及び軽鎖;
ii.抗体mAb 5.28の6つのCDRを含む重鎖及び軽鎖であって、前記mAb 5.28はCNCMに寄託番号CNCM I-5232の下で寄託されているハイブリドーマによって得ることができる、重鎖及び軽鎖;
iii.抗体mAb 7.28の6つのCDRを含む重鎖及び軽鎖であって、前記mAb 7.28はCNCMに寄託番号CNCM I-5233の下で寄託されているハイブリドーマによって得ることができる、重鎖及び軽鎖;
iv.抗体mAb 7.48の6つのCDRを含む重鎖及び軽鎖であって、前記mAb 7.48はCNCMに寄託番号CNCM I-5234の下で寄託されているハイブリドーマによって得ることができる、重鎖及び軽鎖;
v.抗体mAb 8.15の6つのCDRを含む重鎖及び軽鎖であって、前記mAb 8.15はCNCMに寄託番号CNCM I-5235の下で寄託されているハイブリドーマによって得ることができる、重鎖及び軽鎖;又は、
vi.抗体mAb 8.16の6つのCDRを含む重鎖及び軽鎖であって、前記mAb 8.16はCNCMに寄託番号CNCM I-5236の下で寄託されているハイブリドーマによって得ることができる、重鎖及び軽鎖、
のいずれかを含む。
【0064】
したがって、本開示の抗体は、単離され、下の表2に記載されるそれらの可変重鎖及び軽鎖アミノ酸配列によって構造的に特徴付けられるマウス抗BTN2抗体も含む:
【0065】
【0066】
IgG4、IgG1及びそれらの変異体バージョンの定常アイソタイプ領域の対応するアミノ酸及びヌクレオチドコード配列は、当技術分野で周知である。
【0067】
本開示による一部の抗体のVH CDR1(HCDR1とも呼ばれる)、VH CDR2(HCDR2とも呼ばれる)、VH CDR3(HCDR3とも呼ばれる)、VL CDR1(LCDR1とも呼ばれる)、VL CDR2(LCDR2とも呼ばれる)、VL CDR3(HCDR3とも呼ばれる)のアミノ酸配列の例を、表3に示す。
【0068】
表3では、本開示の一部の抗体のCDR領域は、Chothiaシステム(Chothia C、Lesk AM.1987年、J Mol Biol 196、901~917)を使用して表される。
【0069】
読取りの容易さのために、CDR領域は、以下、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3とそれぞれ呼ばれる。
【0070】
【0071】
具体的な実施形態では、本開示による単離された抗BTN2抗体は:
(a)配列番号3のHCDR1、配列番号4のHCDR2、配列番号5のHCDR3を含む可変重鎖ポリペプチド、及び配列番号6のLCDR1、配列番号7のLCDR2、配列番号8のLCDR3を含む可変軽鎖ポリペプチド;
(b)配列番号11のHCDR1、配列番号12のHCDR2、配列番号13のHCDR3を含む可変重鎖ポリペプチド、及び配列番号14のLCDR1、配列番号15のLCDR2、配列番号16のLCDR3を含む可変軽鎖ポリペプチド;
(c)配列番号19のHCDR1、配列番号20のHCDR2、配列番号21のHCDR3を含む可変重鎖ポリペプチド、及び配列番号22のLCDR1、配列番号23のLCDR2、配列番号24のLCDR3を含む可変軽鎖ポリペプチド;
(d)配列番号27のHCDR1、配列番号28のHCDR2、配列番号29のHCDR3を含む可変重鎖ポリペプチド、及び配列番号30のLCDR1、配列番号31のLCDR2、配列番号32のLCDR3を含む可変軽鎖ポリペプチド;
(e)配列番号35のHCDR1、配列番号36のHCDR2、配列番号37のHCDR3を含む可変重鎖ポリペプチド、及び配列番号38のLCDR1、配列番号39のLCDR2、配列番号40のLCDR3を含む可変軽鎖ポリペプチド;又は、
(f)配列番号43のHCDR1、配列番号44のHCDR2、配列番号45のHCDR3を含む可変重鎖ポリペプチド、及び配列番号46のLCDR1、配列番号47のLCDR2、配列番号48のLCDR3を含む可変軽鎖ポリペプチド、
のいずれかを含み、ここで、前記抗BTN2抗体はBTN2に特異性を有する。
【0072】
他の具体的な実施形態では、本開示による単離された抗BTN2抗体は、
(a)配列番号9のVHを含む可変重鎖ポリペプチド及び配列番号10のVLを含む可変軽鎖ポリペプチド;
(b)配列番号17のVHを含む可変重鎖ポリペプチド及び配列番号18のVLを含む可変軽鎖ポリペプチド;
(c)配列番号25のVHを含む可変重鎖ポリペプチド及び配列番号26のVLを含む可変軽鎖ポリペプチド;
(d)配列番号33のVHを含む可変重鎖ポリペプチド及び配列番号34のVLを含む可変軽鎖ポリペプチド;
(e)配列番号41のVHを含む可変重鎖ポリペプチド及び配列番号42のVLを含む可変軽鎖ポリペプチド;又は
(f)配列番号49のVHを含む可変重鎖ポリペプチド及び配列番号50のVLを含む可変軽鎖ポリペプチド;
のいずれかを含み、ここで、前記抗BTN2抗体はBTN2に特異性を有する。
【0073】
機能的バリアント抗体
さらに別の実施形態では、本発明の機能的バリアント抗体は、上に、特に表1、2及び3に記載の抗体mAb1~mAb6の対応するアミノ酸配列に相同又は好ましくは同一である、完全長重鎖及び軽鎖アミノ酸配列;又は可変領域重鎖及び軽鎖アミノ酸配列、又は6つ全てのCDR領域アミノ酸配列を有し、ここで、そのような機能的バリアント抗体は、元のmAb1~mAb6抗体の所望の機能的特性を保持する。
【0074】
本発明のモノクローナル抗体との関連で使用されるVL、VH又はCDRの機能的バリアントは、抗体が、親抗体(すなわち、mAb1~mAb6抗体のいずれか1つ)の親和性/結合力及び/又は特異性/選択性の少なくとも実質的な割合(少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%)を保持することをなお可能にし、一部の場合には、本発明のそのようなモノクローナル抗体は、親抗体より大きな親和性、選択性及び/又は特異性で会合することができる。
【0075】
元のmAb1~mAb6抗体の所望の機能的特性は、以下からなる群から選択することができる:
i.抗体はBTN2に特異性を有し、特に抗体は、例に記載の通りに、細胞株、例えばヒトBTN2A2を発現するHEK293F細胞株において発現されるヒトBTN2に、実施例及び
図1で決定される通り、好ましくは50μg/ml未満、より好ましくは10μg/ml未満、さらにより好ましくは1μg/ml未満のEC
50で結合する、
ii.抗体は、例に記載されるBTN3及びBTN2の全てのアイソフォームがノックアウトされた細胞株、例えばHEK293F細胞株において発現されるヒトBTN2A1に、好ましくは1μg/ml未満、例えば0.1μg/ml未満のEC50で結合する;
iii.抗体は、例に記載されるBTN3及びBTN2の全てのアイソフォームがノックアウトされた細胞株、例えばHEK293F細胞株において発現されるヒトBTN2A2に、好ましくは50μg/ml未満、例えば1μg/ml未満又は0.02μg/ml未満のEC50で結合する;
iv.抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞のIFNγ又はTNFαの生成を阻害する、
v.抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を阻害する、及び/又は
vi.抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の増殖を阻害する。
【0076】
例えば、本発明は、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)配列を含む、mAb1~mAb6の機能的バリアント抗体であって、CDR配列、すなわち6つのCDR領域;HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3は、mAb1~mAb6の少なくとも1つの抗体の対応するCDR配列と少なくとも60、70、90、95又は100パーセントの配列同一性を共有し、前記機能的バリアント抗体はBTN2に特異的に結合し、抗体は以下の機能的特性:
i.抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞のIFNγ又はTNFαの生成を阻害する、
ii.抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を阻害する、及び/又は
iii.抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の増殖を阻害する
の少なくとも1つを示す、機能的バリアント抗体に関する。
【0077】
本発明は、表2に特に示すように、mAb1~mAb6抗体のいずれか1つの対応する重鎖及び軽鎖可変領域と少なくとも80%、90%、又は少なくとも95%又は100%同一である重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、mAb1~mAb6の機能的バリアント抗体であって、この機能的バリアント抗体はBTN2に特異的に結合し、以下の機能的特性:
i.抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞のIFNγ又はTNFαの生成を阻害する、
ii.抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を阻害する、及び/又は
iii.抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の増殖を阻害する
の少なくとも1つを示す、機能的バリアント抗体にさらに関する。
【0078】
様々な実施形態では、抗体は、上記の所望の機能的特性のうちの1つ又は2つを提示することができる。抗体は、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体であってもよい。好ましくは、抗体又はタンパク質はヒト化ヒト抗体、より好ましくはヒト化サイレント抗体である。
【0079】
本明細書で使用されるように、用語「サイレント」抗体は、標的細胞の細胞溶解を測定するin vitro ADCC活性アッセイで測定されるADCC活性を全く又は少ししか示さない抗体を指す。
【0080】
一実施形態では、用語「ADCC活性を全く又は少ししか」は、サイレント抗体が、対応する野生型(サイレントでない)抗体で、例えば野生型ヒトIgG1抗体で観察されるADCC活性の50%未満、例えば10%未満であるADCC活性を示すことを意味する。好ましくは、対照Fab抗体と比較して、サイレント抗体によるin vitro ADCC活性アッセイでは検出可能なADCC活性は観察されない。
【0081】
サイレントなエフェクター機能は、抗体のFc定常部分における突然変異によって得ることができ、当技術分野で記載されている:Strohl 2009年(LALA & N297A);Baudino 2008年、D265A(Baudinoら、J.Immunol.181(2008):6664~69、Strohl、CO Biotechnology20(2009):685~91)。サイレントIgG1抗体の例は、IgG1 Fcアミノ酸配列の位置234、235及び/又は331(EU番号付け)でADCCを低減する突然変異を含む。別のサイレントIgG1抗体はN297A突然変異を含み、これは、無グリコシル化又は非グリコシル化抗体をもたらす。
【0082】
CDRバリアントの配列は、ほとんど保存的な置換を通して親抗体配列のCDR配列から異なることがある(例えば、表3に示すように);例えば、バリアントの中の置換のうちの少なくとも10個、例えば少なくとも9、8、7、6、5、4、3、2又は1つは、保存的アミノ酸残基の置き換えである。本発明との関連で、保存的置換は、以下の通りに考えられるアミノ酸のクラスの中での置換と規定することができる:
脂肪族残基I、L、V及びM
シクロアルケニル関連の残基F、H、W及びY
疎水性の残基A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、W及びY
負電荷の残基D及びE
極性の残基C、D、E、H、K、N、Q、R、S及びT
正電荷の残基H、K及びR
小さい残基A、C、D、G、N、P、S、T及びV
非常に小さい残基A、G及びS
ターンに関与する残基A、C、D、E、G、H、K、N、Q、R、S、P及びフォーメーションに関与する残基T
フレキシブル残基Q、T、K、S、G、P、D、E及びR
【0083】
より保存的な置換グループ分けには、以下のものが含まれる:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリン及びアスパラギン-グルタミン。疎水性親水性/親水性特性及び残基重量/サイズに関する保存も、mAb1~6のいずれか1つのCDRと比較して、バリアントCDRにおいて実質的に保持されている。タンパク質にインタラクティブ生物学的機能を付与する際の疎水性親水性アミノ酸指数の重要性は、当技術分野で一般に理解されている。アミノ酸の相対的な疎水性親水性特性が、結果として生じるタンパク質の二次構造に寄与し、それが次に他の分子、例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などとのタンパク質の相互作用を規定することが認められている。各アミノ酸は、その疎水性及び電荷特性に基づいて疎水性親水性指数が割り当てられており、これらは以下の通りである:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);トレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リシン(-3.9);及びアルギニン(-4.5)。類似の残基の保持は、さらに、又は代わりに、BLASTプログラム(例えば、標準の設定BLOSUM62、オープンギャップ=11及び伸長ギャップ=1を使用するNCBIを通して利用可能なBLAST2.2.8)の使用によって決定される、類似性スコアによって測定することもできる。適するバリアントは、親ペプチドと少なくとも約70%の同一性を一般的に示す。本発明により、第2のアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有する第1のアミノ酸配列とは、第1の配列が第2のアミノ酸配列と70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;99;又は100%の同一性を有することを意味する。本発明により、第2のアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性を有する第1のアミノ酸配列とは、第1の配列が第2のアミノ酸配列と50;51;52;53;54;55;56;57;58;59;60;61;62;63;64;65;66;67;68;69;70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;99;又は100%の同一性を有することを意味する。
【0084】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、キメラ抗体、一般的にキメラマウス/ヒト抗体である。用語「キメラ抗体」は、非ヒト動物に由来する抗体のVHドメイン及びVLドメイン、ヒト抗体のCHドメイン及びCLドメインを含むモノクローナル抗体を指す。
【0085】
非ヒト動物として、マウス、ラット、ハムスター、ウサギなどの任意の動物を使用することができる。特に、前記マウス/ヒトキメラ抗体は、mAb1~mAb6参照抗体のいずれか1つのVH及びVLドメインを含むことができる。
【0086】
一部の実施形態では、本発明の抗体はヒト化抗体である。具体的な実施形態では、例えば表3に示すように、本発明の抗体は、mAb1~mAb6参照抗体のいずれか1つの6つのCDRを含むヒト化抗体である。本明細書で使用されるように、用語「ヒト化抗体」は、フレームワーク領域(FR)が、親免疫グロブリンのそれ(例えばマウスのCDR)と比較して異なる種(例えばヒト種)のドナー免疫グロブリンからのFRを含むように改変された抗体を指す。
【0087】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、Fab、F(ab’)2、Fab’及びscFvからなる群から選択される。本明細書で使用されるように、用語「Fab」は、約50,000の分子量及び抗原結合活性を有する抗体断片を表し、ここでは、プロテアーゼ、パパインでIgGを処理することによって得られる断片の中で、H鎖のN末端側の半分及びL鎖全体がジスルフィド結合を通して一緒に結合している。用語「F(ab’)2」は、約100,000の分子量及び抗原結合活性を有する抗体断片を指し、これは、プロテアーゼ、ペプシンでIgGを処理することによって得られる断片の中で、ヒンジ領域のジスルフィド結合を通して結合しているFabよりわずかに大きい。用語「Fab’」は、約50,000の分子量及び抗原結合活性を有する抗体断片を表し、これは、F(ab’)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することによって得られる。単鎖Fv(「scFv」)ポリペプチドは、共有結合したVH::VLヘテロダイマーであり、これは、ペプチドコードリンカーによって連結されるVH及びVLコード遺伝子を含む遺伝子融合から通常発現される。本発明のヒトscFv断片は、好ましくは遺伝子組換え技術を使用して適当な高次構造に保持されるCDRを含む。
【0088】
変異体アミノ酸配列を有する機能的バリアント抗体は、コード核酸分子の突然変異誘発(例えば、部位特異的又はPCR媒介突然変異誘発)によって、その後、本明細書に記載される機能アッセイを使用して、保持される機能(すなわち、上に示す機能)についてコードされる改変抗体を試験することによって得ることができる。
【0089】
mAb1~mAb6のいずれか1つを交差ブロックする及び/又はmAb1~mAb6と同じエピトープに結合する抗体
本明細書に開示される参照抗体mAb1~mAb6の類似の有利な特性を有するさらなる抗体は、標準のBTN2結合アッセイにおいて、上記の参照抗体mAb1~mAb6のいずれか1つと統計的に有意な様式で交差競合する(例えば、その結合を競合的に阻害する)それらの能力に基づいて同定することができる。
【0090】
試験抗体は、例えば、ファージディスプレイ技術を例えば使用してヒト組換え抗体ライブラリーから、又はBTN2抗原で免疫化されたヒト可変領域抗体を発現するトランスジェニックマウスから、BTN2へのそれらの結合親和性について先ずスクリーニングすることができる。
【0091】
ヒトBTN2への本発明の抗体の結合と交差競合するか又はそれを阻害する試験抗体の能力は、その試験抗体がヒトBTN2への結合についてその抗体と競合することができることを実証する;そのような抗体は、非限定的な理論により、ヒトBTN2(例えば、BTN2A2及び/又はBTN2A1)の上の、それが競合する抗体と同じであるか又は関連した(例えば、構造的に類似の、又は空間的に近位の)エピトープに結合することができる。
【0092】
mAb1~mAb6参照抗体のうちの1つと同じエピトープに結合するその能力について抗BTN2抗体をスクリーニングするために、例えば、ヒトBTN2A2でトランスフェクトしたHEK293細胞、又はBTN2若しくはBTN3の全てのアイソフォームがノックアウトされ、ヒトBTN2A2若しくはヒトBTN2A1を発現する(例に記載の通りに)HEK293細胞を、4℃で30分間、参照抗体mAb1~mAb6のうちの1つの飽和濃度(10μg/ml)で染色する。2回の洗浄の後、試験抗BTN2 mAbの異なる用量を、mAb1~mAb6参照抗体のいずれか1つとのそれらの競合能力について試験する(4℃で30分)。参照抗体と同じ結合部位について競合するmAbは、そのような参照抗体の存在下でBTN2を認識することができない。データは、平均蛍光強度で表すことができる。
【0093】
選択された抗体は、特に活性化Vγ9Vδ2 T細胞に対する阻害特性に関して、mAb1~mAb6の有利な特性についてさらに試験することができる。
【0094】
したがって、一実施形態では、本発明は、mAb1~mAb6の少なくとも1つの抗体をBTN2に結合することから交差ブロックするか又はそれによって交差ブロックされる、単離された抗体であって、前記抗体は:
i.BTN2に特異性を有し、特に抗体は、例に記載の通りに、細胞株、例えばヒトBTN2A2を発現するHEK293F細胞株において発現されるヒトBTN2に、実施例及び
図1で決定される通り、好ましくは50μg/ml未満、より好ましくは10μg/ml未満、さらにより好ましくは1μg/ml未満のEC
50で結合する、
ii.抗体は、例に記載されるBTN3及びBTN2の全てのアイソフォームがノックアウトされた細胞株、例えばHEK293F細胞株において発現されるヒトBTN2A1に、好ましくは1μg/ml未満、例えば0.1μg/ml未満のEC50で結合する;
iii.抗体は、例に記載されるBTN3及びBTN2の全てのアイソフォームがノックアウトされた細胞株、例えばHEK293F細胞株において発現されるヒトBTN2A2に、好ましくは50μg/ml未満、例えば1μg/ml未満又は0.02μg/ml未満のEC50で結合する;
iv.抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞によるIFNγ及び/又はTNFαの生成を阻害する、
v.抗体は、活性化Vγ9 Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を阻害する、及び/又は
vi.抗体は、活性化Vγ9/Vδ2 T細胞の増殖を阻害する、
単離された抗体を提供する。
【0095】
別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載される抗BTN2抗体mAb1~mAb6の少なくとも1つと同じエピトープに結合する抗体を提供する。
【0096】
ある特定の実施形態では、mAb1~mAb6のいずれか1つと同じであるヒトBTN2上のエピトープに結合する単複の交差ブロック抗体は、キメラ、ヒト化又はヒトの組換え抗体である。
【0097】
モノクローナル抗体を生成するトランスフェクトーマの生成
本発明の抗体は、単独の又は組み合わせた、当技術分野で公知の任意の技術、例えば、限定されずに、任意の化学的、生物学的、遺伝子的又は酵素的技術によって生成される。一般的に、所望の配列のアミノ酸配列を知ることによって、当業者は、ポリペプチドの生成のための標準の技術によって前記抗体を容易に生成することができる。例えば、それらは、周知の固相法を使用して、好ましくは市販されているペプチド合成装置(Applied Biosystems、Foster City、California、によって製造されたものなど)を製造業者の説明書に従って使用して合成することができる。或いは、本発明の抗体は、当技術分野で周知の組換えDNA技術によって合成することができる。例えば、抗体は、抗体をコードするDNA配列の発現ベクターへの組込み、及びそのようなベクターの、所望の抗体を発現し、周知の技術を使用してそこからそれらを後に単離することができる好適な真核生物又は原核生物の宿主への導入の後に、DNA発現生成物として得ることができる。
【0098】
したがって、本発明のさらなる目的は、本発明による抗体をコードする核酸分子に関する。より詳細には、核酸分子は、本発明の抗体の重鎖又は軽鎖をコードする。より詳細には、核酸分子は、参照抗体mAb1~mAb6のいずれか1つの重鎖可変領域(VH領域)又は軽鎖可変領域(VL)をコードする対応する核酸と少なくとも70%、80%、90%、95%又は100%の同一性を有するVH又はVLコード領域を含む。
【0099】
一般的に、前記核酸はDNA又はRNA分子であり、それらは、プラスミド、コスミド、エピソーム、人工染色体、ファージ又はウイルスベクターなどの任意の適するベクターに含まれてもよい。本明細書で使用されるように、用語「ベクター」、「クローニングベクター」及び「発現ベクター」は、宿主を形質転換させ、導入される配列の発現(例えば、転写及び翻訳)を促進するように、それによってDNA又はRNA配列(例えば、外来遺伝子)を宿主細胞に導入することができるビヒクルを意味する。したがって、本発明のさらなる目的は、本発明の核酸を含むベクターに関する。そのようなベクターは、対象への投与の後の前記抗体の発現を引き起こすか又は誘導するために、調節エレメント、例えばプロモーター、エンハンサー、ターミネーターなどを含むことができる。動物細胞のための発現ベクターで使用されるプロモーター及びエンハンサーの例には、SV40の初期プロモーター及びエンハンサー、モロニーマウス白血病ウイルスのLTRプロモーター及びエンハンサー、免疫グロブリンH鎖のプロモーター及びエンハンサーなどが含まれる。ヒト抗体C領域をコードする遺伝子を挿入して発現させることができる限り、動物細胞のために任意の発現ベクターを使用することができる。適するベクターの例には、pAGE107、pAGE103、pHSG274、pKCR、pSG1ベータd2-4などが含まれる。プラスミドの他の例には、複製開始点を含む複製プラスミド、又は組込みプラスミド、例えば、pUC、pcDNA、pBRなどが含まれる。ウイルスベクターの他の例には、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス及びAAVベクターが含まれる。そのような組換えウイルスは、当技術分野で公知の技術によって、例えば、トランスフェクションパッケージング細胞によって、又はヘルパープラスミド若しくはウイルスによる一時的なトランスフェクションによって生成することができる。ウイルスパッケージング細胞の一般的な例には、PA317細胞、PsiCRIP細胞、GPenv+細胞、293細胞等が含まれる。そのような複製欠損組換えウイルスを生成するための詳細なプロトコールは、例えば、国際公開第95/14785号、国際公開第96/22378号、米国特許第5,882,877号、米国特許第6,013,516号、米国特許第4,861,719号、米国特許第5,278,056号及び国際公開第94/19478号に見出すことができる。
【0100】
本発明のさらなる目的は、上記の核酸及び/又はベクターによってトランスフェクトされたか、感染したか、又は形質転換された宿主細胞に関する。本明細書で使用されるように、用語「形質転換」は、宿主細胞が導入される遺伝子又は配列を発現して、所望の物質、一般的に導入される遺伝子又は配列によってコードされるタンパク質又は酵素を生成するように、宿主細胞への「外来の」(すなわち、外因性又は細胞外の)遺伝子、DNA又はRNA配列の導入を意味する。導入されるDNA又はRNAを受けて発現する宿主細胞は、「形質転換」されている。
【0101】
本発明の核酸は、適する発現系で本発明の抗体を生成するために使用することができる。用語「発現系」は、例えばベクターによって運ばれ、宿主細胞に導入される外来DNAをコードするタンパク質の発現のための、適する条件下の宿主細胞及び適合するベクターを意味する。一般的な発現系は、大腸菌(E.coli)宿主細胞及びプラスミドベクター、昆虫宿主細胞及びバキュロウイルスベクター、並びに哺乳類宿主細胞及びベクターを含む。宿主細胞の他の例には、限定されずに、原核生物の細胞(例えば細菌)及び真核生物の細胞(例えば酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等)が含まれる。具体例には、大腸菌、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)又はサッカロミセス属(Saccharomyces)の酵母、哺乳動物細胞株(例えば、ベロ細胞、CHO細胞、3T3細胞、COS細胞等)、並びに一次の又は確立された哺乳動物細胞培養(例えば、リンパ芽球、線維芽細胞、胚性細胞、上皮細胞、神経細胞、脂肪細胞等から生成される)が含まれる。例には、マウスSP2/0-Ag14細胞(ATCC CRL1581)、マウスP3X63-Ag8.653細胞(ATCC CRL1580)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子(以下「DHFR遺伝子」と呼ぶ)が欠損しているCHO細胞(Urlaub Gら;1980年)、ラットYB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞(ATCC CRL1662、以下「YB2/0細胞」と呼ぶ)なども含まれる。
【0102】
本発明は、本発明による抗体を発現する組換え宿主細胞を生成する方法にも関し、前記方法は以下のステップを含む:(i)上記の組換え核酸又はベクターをin vitro又はex vivoでコンピテント宿主細胞に導入するステップ、(ii)得られた組換え宿主細胞をin vitro又はex vivoで培養するステップ、及び(iii)任意選択で、前記抗体を発現及び/又は分泌する細胞を選択するステップ。そのような組換え宿主細胞は、本発明の抗体の生成のために使用することができる。
【0103】
本発明の抗体は、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又は親和性クロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製手順によって培地から適切に分離される。
【0104】
一部の実施形態では、本発明のヒトキメラ抗体は、前述の通りVL及びVHドメインをコードする核配列を得、ヒト抗体CH及びヒト抗体CLをコードする遺伝子を有する動物細胞のための発現ベクターにそれらを挿入することによってヒトキメラ抗体発現ベクターを構築し、発現ベクターを動物細胞に導入することによってコード配列を発現させることによって生成することができる。ヒトキメラ抗体のCHドメインとして、それはヒト免疫グロブリンに属する任意の領域であってもよいが、IgGクラスのそれらが好適であり、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4などのIgGクラスに属しているサブクラスのいずれか1つを使用することもできる。さらに、ヒトキメラ抗体のCLとして、それは、Igに属する任意の領域であってもよく、カッパクラス又はラムダクラスのそれらを使用することができる。キメラ抗体の生成方法は、当技術分野で周知である従来の組換えDNA及び遺伝子トランスフェクション技術を含む(Morrison SL.ら(1984)並びに特許文書米国特許第5,202,238号;及び米国特許第5,204,244号を参照)。
【0105】
本発明のヒト化抗体は、前述の通りCDRドメインをコードする核酸配列を得、それらを、(i)ヒト抗体のそれと同一の重鎖定常領域及び重鎖可変フレームワーク領域、並びに(ii)ヒト抗体のそれと同一の軽鎖定常領域及び軽鎖可変フレームワーク領域、をコードする遺伝子を有する発現ベクターに挿入することによってヒト化抗体発現ベクターを構築し、発現ベクターを適する細胞株に導入することによって遺伝子を発現させることによって生成することができる。ヒト化抗体発現ベクターは、抗体重鎖をコードする遺伝子及び抗体軽鎖をコードする遺伝子が別々のベクターに存在するタイプ、又は両遺伝子が同じベクターに存在するタイプ(タンデムタイプ)であってもよい。ヒト化抗体発現ベクターの構築の容易さ、細胞株への導入の容易さ、及び細胞株における抗体H及びL鎖の発現レベルの間の平衡に関しては、タンデムタイプのヒト化抗体発現ベクターが好ましい。タンデムタイプのヒト化抗体発現ベクターの例には、pKANTEX93(国際公開第97/10354号)、pEE18などが含まれる。
【0106】
従来の組換えDNA及び遺伝子トランスフェクション技術に基づいて抗体をヒト化する方法は、当技術分野で周知である(例えば、Riechmann L.ら1988年;Neuberger MS.ら1985年を参照)。抗体は、当技術分野で公知の様々な技術、例えば、CDR移植(欧州特許第239,400号;国際公開第91/09967号;米国特許第5,225,539号;第5,530,101号;及び第5,585,089号)、ベニヤリング又はリサーフェイシング(欧州特許第592,106号;欧州特許第519,596号;Padlan EA(1991);Studnicka GMら(1994);Roguska MA.ら(1994))、及び鎖シャッフリング(米国特許第5,565,332号)を使用してヒト化することができる。そのような抗体の調製のための一般的な組換えDNA技術も公知である(欧州特許出願EP125023及び国際公開第96/02576号を参照)。
【0107】
本発明のFabは、AMHと特異的に反応する抗体をプロテアーゼ、パパインによって処理することによって得ることができる。さらに、Fabは、原核生物の発現系又は真核生物の発現系のためのベクターの中に抗体のFabをコードするDNAを挿入し、ベクターを原核生物又は真核生物(適宜)に導入してFabを発現させることによって生成することができる。
【0108】
本発明のF(ab’)2は、AMHと特異的に反応する抗体をプロテアーゼ、ペプシンによって処理して得ることができる。さらに、F(ab’)2は、下記のFab’を結合チオエーテル結合又はジスルフィド結合を通して結合することによって生成することができる。
【0109】
本発明のFab’は、AMHと特異的に反応するF(ab’)2を還元剤ジチオスレイトールによって処理して得ることができる。さらに、Fab’は、原核生物のための発現ベクター又は真核生物のための発現ベクターの中に抗体のFab’断片をコードするDNAを挿入し、ベクターを原核生物又は真核生物(適宜)に導入してその発現を実行することによって生成することができる。
【0110】
本発明のscFvは、前述の通りVH及びVLドメインをコードするcDNAを得、scFvをコードするDNAを構築し、原核生物のための発現ベクター又は真核生物のための発現ベクターの中にDNAを挿入し、次に発現ベクターを原核生物又は真核生物(適宜)に導入してscFvを発現させることによって生成することができる。
【0111】
ヒト化scFv断片を作製するために、CDR移植と呼ばれる周知の技術を使用することができ、周知の技術は、ドナーscFv断片から相補性決定領域(CDR)を選択すること、及び公知の三次元構造のヒトscFv断片フレームワークの上へそれらを接ぐことを含む(例えば、国際公開第98/45322号;国際公開第87/02671号;米国特許第5,859,205号;米国特許第5,585,089号;米国特許第4,816,567号;欧州特許第0173494号を参照)。
【0112】
本発明の工学操作抗体には、例えば抗体の特性を改善するために、VH及び/又はVLの中のフレームワーク残基に改変が加えられたものがさらに含まれる。一般的に、そのようなフレームワーク改変は、抗体の免疫原性を減少させるために加えられる。例えば、1つのアプローチは、1つ又は複数のフレームワーク残基を対応する生殖細胞株配列に「復帰突然変異」させることである。より具体的には、体細胞突然変異を経た抗体は、その抗体が由来する生殖細胞株配列と異なるフレームワーク残基を含有することができる。抗体のフレームワーク配列を抗体が由来する生殖細胞株配列と比較することによって、そのような残基を同定することができる。それらの生殖細胞株構成にフレームワーク領域配列を戻すために、体細胞突然変異を、例えば部位特異的突然変異誘発又はPCR媒介突然変異誘発によって生殖細胞株配列に「復帰突然変異」させることができる。そのような「復帰突然変異」した抗体も、本発明に包含されるものである。フレームワーク改変の別のタイプは、T細胞エピトープを除去し、それによって抗体の潜在的な免疫原性を低減するために、フレームワーク領域中の、又は1つ若しくは複数のCDR領域の中の1つ又は複数の残基さえも突然変異させることを含む。このアプローチは「脱免疫化」とも呼ばれ、Carrらによる米国特許出願公開第20030153043号にさらに詳細に記載されている。
【0113】
Fc工学操作
本発明の抗体は、上記の態様の機能的若しくは構造的フィーチャーのうちの1つ若しくは複数によって、又は選択される機能的及び構造的フィーチャーの任意の組合せによって特徴付けることができる。
【0114】
本発明の抗体は、任意のアイソタイプであってもよい。アイソタイプの選択は、ADCCサイレンシングなどの所望のエフェクター機能によって一般的に導かれる。例示的なアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4である。ヒト軽鎖定常領域、カッパ又はラムダ、のいずれも使用することができる。所望により、本発明の抗体のクラスは、公知の方法によってスイッチすることができる。一般的なクラススイッチング技術は、1つのIgGサブクラスを別のものに、例えばIgG1からIgG2に変換するために使用することができる。したがって、本発明の抗体のエフェクター機能は、様々な治療的使用のために、例えば、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE又はIgM抗体へのアイソタイプスイッチングによって変更することができる。一部の実施形態では、本発明の抗体は完全長抗体である。一部の実施形態では、完全長抗体は、IgG1抗体である。一部の実施形態では、完全長抗体は、IgG4抗体である。一部の実施形態では、BTN2特異的IgG4抗体は、安定化されたIgG4抗体である。好適な安定化されたIgG4抗体の例は、ヒトIgG4の重鎖定常領域の中の、上記のKabatらにおけるようにEUインデックスで示される409位のアルギニンが、リシン、トレオニン、メチオニン又はロイシン、好ましくはリシンによって置換される(国際公開第2006033386に記載される)、及び/又はヒンジ領域がCys-Pro-Pro-Cys配列を含む抗体である。他の好適な安定化されたIgG4抗体は、国際公開第2008145142に開示される。
【0115】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、抗体依存性細胞毒性(ADCC)を誘導するFc部分を含まない。用語「Fcドメイン」、「Fc部分」及び「Fc領域」は、抗体重鎖の、例えば、ヒトガンマ重鎖のアミノ酸(aa)約230からaa約450のC末端断片、又は他のタイプの抗体重鎖(例えば、ヒト抗体の場合α、δ、ε及びμ)におけるその対応物配列、又はその天然に存在するアロタイプを指す。特に明記しない限り、免疫グロブリンのための一般的に容認されたKabatアミノ酸番号付けが、この開示全体で使用される(Kabatら(1991)Sequences of Protein of Immunological Interest、第5版、United States Public Health Service、National Institute of Health、Bethesda、MDを参照)。一部の実施形態では、本発明の抗体は、FcgRIIIA(CD16)ポリペプチドに実質的に結合することが可能なFcドメインを含まない。一部の実施形態では、本発明の抗体は、Fcドメインを欠いている(例えば、CH2及び/又はCH3ドメインを欠いている)か、又はIgG2若しくはIgG4アイソタイプのFcドメインを含む。一部の実施形態では、本発明の抗体は、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、ダイアボディ、単鎖抗体断片又は複数の異なる抗体断片を含む多重特異的抗体からなるか又はそれを含む。一部の実施形態では、本発明の抗体は、毒性部分に連結していない。一部の実施形態では、抗体が変化したC2q結合及び/又は低減若しくは消滅した補体依存細胞毒性(CDC)を有するように、アミノ酸残基から選択される1つ又は複数のアミノ酸を異なるアミノ酸残基で置き換えることができる。このアプローチは、米国特許第6,194,551号にさらに詳細に記載される。
【0116】
本発明によって企図される、本明細書の抗体の別の改変は、ペグ化である。抗体は、例えば抗体の生物学的(例えば、血清)半減期を増加させるために、ペグ化することができる。抗体をペグ化するには、1つ又は複数のPEG基が抗体又は抗体断片に付着する条件下で、抗体又はその断片をポリエチレングリコール(PEG)、例えばPEGの反応性エステル又はアルデヒド誘導体と一般的に反応させる。ペグ化は、反応性PEG分子(又は類似した反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応又はアルキル化反応によって実行することができる。本明細書で使用されるように、用語「ポリエチレングリコール」は、他のタンパク質を誘導体化するために使用されているPEGの形態のいずれも、例えばモノ(C1~C10)アルコキシ-若しくはアリールオキシ-ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール-マレイミドを包含するものである。一部の実施形態では、ペグ化される抗体は、無グリコシル化抗体である。タンパク質をペグ化するための方法は当技術分野で公知であり、本発明の抗体に適用することができる。例えば、Nishimuraらによる欧州特許第0154316号及びIshikawaらによる欧州特許第0401384号を参照。
【0117】
本発明によって企図される抗体の別の改変は、生じる分子の半減期を増加させるための、本発明の抗体の少なくとも抗原結合領域の血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン又はその断片とのコンジュゲート又はタンパク質融合である。
【0118】
一部の実施形態では、本発明は、多重特異的抗体も提供する。本発明の多重特異的抗体分子のための例示的なフォーマットには、限定されずに、(i)化学的ヘテロコンジュゲーションによって架橋された2つの抗体、1つはBTN2に特異性を有し、もう1つは第2の抗原に特異性を有する;(ii)2つの異なる抗原結合領域を含む単一の抗体;(iii)2つの異なる抗原結合領域、例えば、余分のペプチドリンカーによって縦に連結される2つのscFvを含む単鎖抗体;(iv)各軽鎖及び重鎖が短いペプチド連結を通して縦に並んでいる2つの可変ドメインを含有する二重可変ドメイン抗体(DVD-Ig)(Wuら、Generation and Characterization of a Dual Variable Domain Immunoglobulin(DVD-Ig(商標))Molecule、典拠:Antibody Engineering、Springer Berlin Heidelberg(2010));(v)化学的に連結された二重特異的(Fab’)2断片;(vi)標的抗原の各々のための2つの結合部位を有する四価の二重特異的抗体をもたらす、2つの単鎖ダイアボディの融合であるTandab;(vii)多価分子をもたらすダイアボディとのscFvの組合せであるフレキシボディ;(viii)プロテインキナーゼAの「二量体化及びドッキングドメイン」に基づくいわゆる「ドック及びロック」分子であって、Fabに適用したとき、異なるFab断片に連結される2つの同一のFab断片からなる三価二重特異的結合タンパク質を与えることができる、分子;(ix)例えばヒトFab腕の両末端に融合している2つのscFvを含む、いわゆるScorpion分子;及び(x)ダイアボディが含まれる。二重特異的抗体のための別の例示的なフォーマットは、ヘテロ二量体化を促進する相補的CH3ドメインを有するIgG様分子である。そのような分子は、公知の技術、例えば、Triomab/Quadroma(Trion Pharma/Fresenius Biotech)、Knob-into-Hole(Genentech)、CrossMAb(Roche)及び静電気的にマッチさせた(Amgen)、LUZ-Y(Genentech)、Strand Exchange Engineered Domainボディ(SEEDbody)(EMD Serono)、Biclonic(Merus)及びDuoBody(Genmab A/S)技術として知られるものを使用して調製することができる。一部の実施形態では、二重特異的抗体は、一般的にDuoBody技術を使用して制御されたFab腕交換を通して得られるか又は得ることができる、重鎖及び軽鎖。制御されたFab腕交換により二重特異的抗体を生成するためのin vitro方法は、国際公開第2008119353及び国際公開第2011131746(両方ともGenmab A/Sによる)に記載されている。国際公開第2008119353に記載される、1つの例示的な方法では、二重特異的抗体は、還元条件下のインキュベーションの後に、両方ともIgG4様CH3領域を含む2つの単一特異的抗体の間での「Fab腕」又は「半分子」交換(重鎖及び付着軽鎖のスワッピング)によって形成される。結果として生じる生成物は、異なる配列を含むことができる2つのFab腕を有する、二重特異的抗体である。国際公開第2011131746に記載される、別の例示的な方法では、本発明の二重特異的抗体は、第1及び第2抗体の少なくとも1つが本発明の抗体である、以下のステップを含む方法によって調製される:a)免疫グロブリンのFc領域を含む第1の抗体を提供するステップであって、前記Fc領域は第1のCH3領域を含むステップ;b)免疫グロブリンのFc領域を含む第2の抗体を提供するステップであって、前記Fc領域は第2のCH3領域を含み;前記第1及び第2のCH3領域の配列は異なり、前記第1及び第2のCH3領域の間のヘテロダイマー相互作用が前記第1及び第2のCH3領域のホモダイマー相互作用の各々より強力であるようなものであるステップ;c)前記第1の抗体を前記第2の抗体と一緒に還元条件下でインキュベートするステップ;並びに、d)前記二重特異的抗体を得るステップであって、第1の抗体は本発明の抗体であり、第2の抗体は異なる結合特異性を有するか又はその逆であるステップ。還元条件は、例えば2-メルカプトエチルアミン、ジチオスレイトール及びトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンから選択される還元剤を例えば加えることによって提供することができる。ステップd)は、例えば脱塩することによる例えば還元剤の除去によって、条件を非還元性に又はより低い還元性になるように回復することをさらに含むことができる。好ましくは、第1及び第2のCH3領域の配列は異なり、少数のかなり保存的な非対称の突然変異だけを含み、そのため、前記第1及び第2のCH3領域の間のヘテロダイマー相互作用は前記第1及び第2のCH3領域のホモダイマー相互作用の各々より強力である。これらの相互作用及びそれらをどのように達成することができるかに関するさらなる詳細は、ここに参照により完全に組み込まれる、国際公開第2011131746に提供される。以下のものは、任意選択で片方又は両方のFc領域がIgGlアイソタイプである、そのような非対称の突然変異の組合せの例示的な実施形態である。
【0119】
発明の使用及び方法
本発明の抗体又はタンパク質は、in vitro及びin vivoでの診断的及び治療的有用性を有する。例えば、これらの分子は、様々な障害を治療、予防又は診断するために、培養、例えばin vitro若しくはin vivoにおける、又は対象、例えばin vivoにおける細胞に投与することができる。
【0120】
本方法は、BTN2関連の障害及び/又は自己免疫性、炎症性障害、及び移植拒絶反応を治療、予防又は診断するために特に好適である。
【0121】
本開示は、炎症性状態、自己免疫性疾患及び臓器又は組織移植拒絶反応の治療で使用するための医薬を製造する方法にも関係し、前記医薬は、以前のセクションに記載の通りに、本開示の抗BTN2抗体を含む。
【0122】
本明細書で使用されるように、「BTN2関連の障害」は、異常なBTN2A1若しくはBTN2A2レベルに関連するか若しくはそれによって特徴付けられる状態、及び/又はヒト血液細胞におけるBTN2A1及び/若しくはBTN2A2によって誘導されるシグナル伝達活性を、例えば、活性化Vγ9Vδ2 T細胞のIFNγ若しくはTNFαの生成及び/又は活性化Vγ9Vδ2 T細胞の細胞溶解性機能を阻害することによってモジュレートすることによって治療することができる疾患若しくは状態を含む。これらには、炎症性状態、自己免疫性疾患及び臓器又は組織移植拒絶反応が含まれる。
【0123】
治療することができる自己免疫性疾患の例には、限定されずに、関節リウマチ(RA)、インスリン依存型糖尿病(1型糖尿病)、多発性硬化症(MS)、クローン病、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、シェーグレン症候群、尋常天疱瘡、類天疱瘡、アジソン病、強直性脊椎炎、無形成性貧血、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、セリアック病、皮膚筋炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギランバレー症候群、橋本病、特発性の白血球減少、特発性血小板減少性紫斑病、雄不妊症、混合結合組織疾患、重症筋無力症、悪性貧血、水晶体起因性ブドウ膜炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性粘液水腫、ライター症候群、強直人間症候群、甲状腺中毒症、潰瘍性大腸炎及びヴェーゲナー肉芽腫症が含まれる。
【0124】
本発明の抗体は、唯一の有効成分として、又は、他の薬物、例えば上で指摘した疾患の治療又は予防のための、例えば免疫抑制若しくは免疫調節剤又は他の抗炎症剤と併用して、例えばアジュバントとして、又は組合せにより投与することができる。
【0125】
本発明の目的は、対象において免疫応答を阻害する、特にそれを必要とする対象においてVγ9Vδ2T細胞の細胞溶解特性を阻害する方法であって、本発明の抗体の治療的有効量を対象に投与することを含む方法に関する。
【0126】
本明細書で使用されるように、用語「処置」又は「処置する」は、疾患になる危険があるか又は疾患になったことが疑われる対象、並びに病気であるか又は疾患若しくは医学的状態を患っていると診断された対象の処置を含む、予防的又は予防上の処置並びに治療的又は疾患改変処置の両方を指し、臨床上の再発の抑制を含む。処置は、障害若しくは再発障害の1つ又は複数の症状の予防、治癒、その発症の遅延、重症度の軽減若しくは改善のために、又はそのような処置の不在下で予想されるものを越える対象の生存期間の延長のために、医学的障害を有するか又は最終的に障害を得るかもしれない対象に投与することができる。「治療レジメン」は、病気の処置パターン、例えば、療法の間に使用される投与パターンを意味する。治療レジメンは、導入レジメン及び維持レジメンを含むことができる。語句「導入レジメン」又は「導入期間」は、疾患の初期処置のために使用される治療レジメン(又は治療レジメンの一部)を指す。導入レジメンの一般的な目標は、処置レジメンの初期期間中に対象に高レベルの薬物を提供することである。導入レジメンは(一部又は完全に)「負荷レジメン」を用いることができ、負荷レジメンは、維持レジメンの間に医師が用いるより大きな用量の薬物を投与すること、維持レジメンの間に医師が薬物を投与するより頻繁に薬物を投与すること、又はその両方を含むことができる。語句「維持レジメン」又は「維持期間」は、例えば対象を長期間(数カ月又は数年)寛解状態に保つために、病気の処置の間に対象の維持のために使用される治療レジメン(又は治療レジメンの一部)を指す。維持レジメンでは、連続療法(例えば、定期的間隔、例えば毎週、毎月、毎年等に薬物を投与する)又は間欠療法(例えば、断続処置、間欠処置、再発時の処置、又は特定の所定基準[例えば、疾患徴候等]の達成後の処置)を用いることができる。
【0127】
本明細書で使用されるように、用語「治療的有効量」は、所望の治療結果を達成するために必要な、投薬量及び期間における有効な量を指す。本発明の抗体の治療的有効量は、個体の疾患の状態、年齢、性別及び体重、並びに個体で所望の応答を導き出す本発明の抗体の能力などの因子によって異なってもよい。さらに、治療的有効量は、抗体又は抗体部分のいかなる毒性又は有害効果よりも治療的に有益な効果が上回るものである。本発明の抗体のための効率的な投薬量及び投薬レジメンは、処置すべき疾患又は状態に依存し、当業者が決定することができる。当技術分野の医師は、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師は、医薬組成物で用いられる本発明の抗体の投与を、所望の治療効果を達成するのに必要とされるものより低いレベルから開始し、所望の効果が達成されるまで投薬量を徐々に増加させることができる。一般に、本発明の組成物の適する用量は、特定の投薬レジメンにより治療効果をもたらすのに有効な最低用量である化合物の量になる。そのような有効用量は、上記の因子に一般的に依存する。例えば、治療的使用のための治療的有効量は、疾患の進行を安定化させるその能力によって測定することができる。一般的に、自己免疫性障害を治療する化合物の能力は、例えば、自己免疫性障害の治療における効能を予測する動物モデル系において評価することができる。或いは、組成物のこの特性は、当業者に公知であるin vitroアッセイによって免疫応答の誘導を阻害する化合物の能力を調べることによって評価することができる。治療的化合物の治療的有効量は、対象において免疫又は炎症性応答を低下させることができるか、さもなければ症状を改善することができる。当業者は、対象のサイズ、対象の症状の重症度及び選択される特定の組成物又は投与経路などの因子に基づいてそのような量を決定することができるだろう。本発明の抗体の治療的有効量の例示的で非限定的な範囲は、約0.1~100mg/kg、例えば約0.1~50mg/kg、例えば約0.1~20mg/kg、例えば約0.1~10mg/kg、例えば約0.5、例えば約0.3、約1、約3mg/kg、約5mg/kg又は約8mg/kgである。本発明の抗体の治療的有効量の例示的で非限定的な範囲は、0.02~100mg/kg、例えば約0.02~30mg/kg、例えば約0.05~10mg/kg又は0.1~3mg/kg、例えば約0.5~2mg/kgである。投与は、例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内又は皮下であってもよく、例えば、標的部位の近位に投与されてもよい。治療及び使用の上の方法における投薬レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するように構成される。例えば、単一のボーラスを投与することができるか、いくつかの分割用量を経時的に投与することができるか、又は治療状況の緊急性によって指示される通りに用量をそれ相応に低減若しくは増加させることができる。一部の実施形態では、治療の効能は、療法の間、例えば予め規定された時点でモニタリングされる。一部の実施形態では、効能は、疾患領域の可視化によって、又は本明細書にさらに記載される他の診断方法により、例えば本発明の標識抗体、本発明の抗体から誘導される断片若しくはミニ抗体を使用して、例えば1つ又は複数のPET-CTスキャンを実行することによってモニタリングすることができる。所望により、医薬組成物の有効日用量を、任意選択で単位剤形により、1日を通して適当な間隔で別々に投与される、2、3、4、5、6又はそれより多くの下位用量として投与してもよい。一部の実施形態では、いかなる望ましくない副作用も最小にするために、本発明のヒトモノクローナル抗体は、長期にわたる、例えば24時間を超える遅い連続注入によって投与される。本発明の抗体の有効用量は、週ごと、隔週又は3週ごとの投与期間を使用して投与することもできる。投与期間は、例えば、8週、12週に、又は臨床上の進行が確立されるまで制限することができる。非限定的な例として、本発明による治療は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39若しくは40日目のうちの少なくとも1日に、或いは、治療開始後の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20週目のうちの少なくとも1つの週に、本発明の抗体の1日につき約0.1~100mg/kg、例えば、0.2、0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90又は100mg/kgの量の日投薬量で、又は、単一用量若しくは24、12、8、6、4若しくは2時間おきの分割用量を使用したその任意の組合せで、又はその任意の組合せで提供することができる。
【0128】
一般的に、本発明の抗体は、薬学的に許容される担体を含む医薬組成物の形で対象に投与される。これらの組成物において使用することができる薬学的に許容される担体には、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三珪酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール及びラノリンが限定されずに含まれる。患者への投与で使用するために、組成物は患者への投与のために製剤化される。本発明の組成物は、経口的、非経口的、吸入噴霧剤により、局所的、直腸、経鼻的、口腔内、経膣的、又は植え込まれたレザバーを通して投与することができる。本明細書で使用されるものには、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、関節滑液嚢内、胸骨内、クモ膜下、肝内、病巣内及び頭蓋内注射又は注入技術が含まれる。本発明の組成物の無菌の注射可能な形態は、水性又は油性の懸濁液であってもよい。これらの懸濁液は、適する分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して公知の技術によって製剤化することができる。無菌の注射可能な調製物は、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液のように、無毒の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の無菌の注射可能な溶液又は懸濁液であってもよい。用いることができる許容されるビヒクル及び溶媒には、水、リンガー液及び等張性の塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の不揮発性油が、溶媒又は懸濁媒として従来用いられている。この目的のために、合成のモノ-又はジグリセリドを含む、任意の刺激の少ない不揮発性油を用いることができる。オレイン酸及びそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、特にそれらのポリオキシエチル化バージョンで、天然の薬学的に許容される油、例えばオリーブ油又はヒマシ油のように、注射剤の調製において有益である。これらの油溶液又は懸濁液は、長鎖アルコール希釈剤又は分散剤、例えばカルボキシメチルセルロース又は乳剤及び懸濁液を含む薬学的に許容される剤形の製剤において一般的に使用される類似の分散剤を含有することもできる。他の一般的に使用される界面活性剤、例えば薬学的に許容される固体、液体又は他の剤形の製造において一般的に使用されるTween、Span及び他の乳化剤又は生物学的利用能エンハンサーを、製剤目的のために使用することもできる。本発明の組成物は、カプセル剤、錠剤、水性懸濁液又は溶液を限定されずに含む任意の経口的に許容される剤形で経口投与することができる。経口使用のための錠剤の場合、一般的に使用される担体には、ラクトース及びコーンスターチが含まれる。ステアリン酸マグネシウムなどの滑剤も一般的に添加される。カプセル剤形での経口投与のために、有益な希釈剤には、例えばラクトースが含まれる。水性懸濁液が経口使用のために要求される場合、有効成分は乳化剤及び懸濁剤と組み合わされる。所望により、ある特定の甘味料、香料又は着色剤を添加することもできる。或いは、本発明の組成物は、直腸投与のために坐薬の形で投与することができる。これらは、室温で固体であるが直腸温度で液体であり、したがって直腸の中で融解して薬物を放出する好適な非刺激性賦形剤と薬剤を混合することによって調製することができる。そのような材料には、カカオバター、蜜蝋及びポリエチレングリコールが含まれる。本発明の組成物は、特に治療の標的が、目、皮膚又は下部腸管の疾患を含め、局所適用によって容易にアクセス可能な領域又は臓器を含む場合、局所的に投与することもできる。これらの領域又は臓器の各々のために、好適な局所製剤が容易に調製される。局所適用のために、組成物は、1つ又は複数の担体に懸濁又は溶解される活性構成成分を含有する好適な軟膏に製剤化することができる。本発明の化合物の局所投与のための担体には、限定されずに、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化蝋及び水が含まれる。或いは、組成物は、1つ又は複数の薬学的に許容される担体に懸濁又は溶解される活性構成成分を含有する、好適なローション又はクリームに製剤化することができる。好適な担体には、限定されずに、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水が含まれる。下部腸管のための局所適用は、直腸座薬製剤(上を参照)又は好適な浣腸製剤で実行することができる。パッチを使用することもできる。本発明の組成物は、経鼻エアゾール又は吸入によって投与することもできる。そのような組成物は医薬製剤分野で周知の技術により調製され、ベンジルアルコール又は他の好適な保存剤、生物学的利用能を強化する吸収促進剤、フルオロカーボン及び/又は他の従来の可溶化若しくは分散剤を用いる生理食塩水中の溶液として調製することができる。
【0129】
例えば、本発明の医薬組成物に存在する抗体は、100mg(10mL)又は500mg(50mL)の使い捨てバイアル中に10mg/mLの濃度で供給することができる。生産品は、IV投与のために、9.0mg/mL塩化ナトリウム、7.35mg/mLクエン酸ナトリウム二水和物、0.7mg/mLポリソルベート80、及び無菌注射用水で製剤化される。pHは、6.5に調整される。本発明の医薬組成物中の抗体のための例示的な好適な投薬量範囲は、約1mg/m2~500mg/m2であってもよい。しかし、これらのスケジュールは例示的であり、臨床治験において決定されなければならない医薬組成物中の特定の抗体の親和性及び耐容性を考慮して最適なスケジュール及びレジメンを構成することができることが理解される。注射(例えば、筋肉内、i.v.)のための本発明の医薬組成物は、無菌の緩衝水(例えば、筋肉内の場合1ml)、及び約1ng~約100mg、例えば約50ng~約30mg、より好ましくは約5mg~約25mgの本発明の抗BTN2抗体を含有するように調製することができるかもしれない。
【0130】
本発明は、以下の図面及び実施例でさらに例示される。しかし、これらの実施例及び図面は、本発明の範囲を限定するものと決して解釈されるべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【
図1】HEK293F細胞の上のBTN2 mAbの結合を示す図。HEK293F細胞を、BTN2A2-Flagプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの1日後に、BTN2A2でトランスフェクトしたHEK293F細胞(A)及びトランスフェクトしなかったHEK293F細胞(B)を、4℃で20分間、精製されたマウス抗ヒトBTN2 mAbで染色した。モノクローナル抗Flag抗体は、トランスフェクションのための陽性対照の役目をする。2回の洗浄の後、細胞を4℃で20分間、二次ヤギ抗マウスIgG PEと、及び細胞生存度のためのマーカーとインキュベートした。細胞をLSRFortessa(BD)の上で得、FlowJo(TreeStar)で分析した。
【
図2】BTN2は、がん細胞株の上で発現されることを示す図。固形腫瘍(A)又は造血悪性腫瘍(B)から導かれたがん細胞株を、4℃で20分間、精製されたBTN2(8.16)mAb(10μg/ml)で染色した。2回の洗浄の後、細胞を4℃で20分間、二次ヤギ抗マウスIgG PEと、及び細胞生存度のためのマーカーとインキュベートした。細胞をLSRFortessa(BD)の上で得、FlowJo(TreeStar)で分析した。細胞株を、以下から誘導した:前立腺がん(PC3、DU145LNCaP)、メラノーマ(Gerlach)、膵臓がん(L-IPC、Panc-1、Mia-PACA-2)、結腸直腸がん(Caco-2)、Hela(子宮頸がん)、腎臓がん(A498)、肺がん(A549)、乳がん(MDA-MB-134、MDA-MB-231、SKBR3)、バーキットリンパ腫(Daudi、Raji)、非ホジキンリンパ腫(RL)、慢性骨髄性白血病(K562)、急性骨髄性白血病(U937)。
【
図3】BTN2 mAbは、Vγ9Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を阻害することを示す図。6人の健康なドナーのPBMCから、γδ-T細胞を増大させた(材料及び方法を参照)。精製されたγδ-T細胞を、IL-2(200UI/ml)の中で一晩刺激した。次に、γδ-T細胞を、抗BTN2(4.15、5.28、7.28、7.48、8.15、8.16、8.33)mAb(10μg/ml)の有る無しで、抗CD107a及び抗CD1072抗体及びGolgistopと一緒に、Daudi標的細胞株と37℃で共培養した(1:1のエフェクター:標的(E:T)比)。4時間後、細胞を収集し、固定し、透過性にし、次に細胞内mAb(IFN-γ、TNF-α)で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。図は、(A)γδ-T細胞の脱顆粒、及び炎症性サイトカイン(B)TNF-α、(C)IFN-γの生成を示す。下の破線は、Daudi細胞株に対するγδ-T細胞の基礎的細胞溶解機能を表す。
【
図4】BTN2 mAbは、Vγ9Vδ2 T細胞の細胞溶解機能に及ぼす抗CD277(20.1)mAbのアゴニスト効果を阻害することを示す図。精製されたγδ-T細胞を、IL-2(200UI/ml)の中で一晩刺激した。次に、γδ-T細胞を、抗CD277 20.1mAbと組み合わせて又は組み合わせずに、抗BTN2(4.15、5.28、7.28、7.48、8.15、8.16、8.33)mAbの有る無しで、抗CD107a及び抗CD1072抗体及びGolgistopと一緒に、Daudi標的細胞株と37℃で共培養した(1:1のエフェクター:標的(E:T)比)。4時間後、細胞を収集し、フローサイトメトリーによって分析した。図は、γδ-T細胞の間でのCD107(脱顆粒マーカー)陽性細胞の百分率を示す。下の破線は、Daudi細胞株に対するγδ-T細胞の基礎的脱顆粒を表す。上の破線は、抗CD277 20.1抗体で観察された中間の脱顆粒を表す。
【
図5】BTN2 mAbは、CD277アイソフォーム(BTN3A1、BTN3A2又はBTN3A3)でトランスフェクトしたHEK293F細胞と交差反応しないことを示す図。BTN3A1、BTN3A2、BTN3A3でトランスフェクトしたHEK293F細胞及びトランスフェクトしなかったHEK293F細胞を、精製されたマウス抗ヒトBTN2 mAbによって、又はマウス抗ヒトCD277 20.1mAbによって、又はアイソタイプ対照IgG1によって、4℃で20分間染色した。抗Flagは、トランスフェクションのための陽性対照の役目をする。2回の洗浄の後、細胞を4℃で20分間、二次ヤギ抗マウスIgG PEと、及び細胞生存度のためのマーカーとインキュベートした。細胞をLSRFortessa(BD)の上で得、FlowJo(TreeStar)で分析した。
【実施例0132】
材料及び方法
細胞培養
地元の血液銀行(EFS-Marseille-France)によって提供された健康なボランティアドナー(HV)から末梢血単核細胞(PBMC)を得、密度勾配(Eurobio)によって単離した。
【0133】
バーキットリンパ腫細胞株Daudiをアメリカ基準株保存機構から得、10%FCSを含有するRPMI 1640培地で培養した(0.5×106/mL)。
【0134】
γδ-T細胞の増大
エフェクターγδ-T細胞を、前述の通り確立した。0日目に、HVからのPBMCを、Zoledronate(Sigma、1μM)及びrhIL-2(Proleukin、200IU/mL)で刺激した。5日目からrhIL-2を2日ごとに更新し、細胞を15日間1.15×106/mLに保った。最終日に、γδT細胞の純度をフローサイトメトリーによって評価した。80%を超えるγδT細胞に到達した細胞培養だけを、機能試験において使用するために選択した。精製されたγδ-T細胞は、使用時までに解凍した。
【0135】
モノクローナル抗体(mAb)の生成
マウス抗ヒトBTN2抗体(IgG1アイソタイプによるクローン4.15、5.28、7.28、7.48、8.15、8.16、8.33)及びマウス抗ヒトCD277(別名BTN3A;IgG1アイソタイプによるクローン20.1)を、細胞培養上清から精製した。
【0136】
フローサイトメトリー
DIVAソフトウェア(BD bioscience)を使用したLSRFortessa(Becton Dickinson)での分析の前に、PBMC、精製されたγδ-T細胞又は腫瘍細胞株を指定されたmAbとインキュベートした。γδ-T細胞脱顆粒アッセイのために使用した抗体は、以下の通りであった:抗CD107a-FITC(BD Biosciences)、抗CD107b-FITC(BD Biosciences)、抗CD3-PeVio700(Miltenyi)、抗Tgd-PE(Miltenyi)、生/死 近IR(Thermofisher)。腫瘍細胞株の上でのBTN2発現のスクリーニングのために使用した抗体は、以下の通りであった:精製された抗BTN2(クローン8.16、10μg/ml)、FcRブロック試薬(Miltenyi)、ヤギ抗マウス-PE(Jackson immunoresearch)、生/死 近IR(Thermofisher)。
【0137】
γδ-T細胞での機能的アッセイ
HVからの精製されたγδ-T細胞を、IL-2(200UI/ml)の中で一晩培養した。次に、γδ-T細胞をDaudi標的細胞株と37℃で共培養し(1:1のエフェクター:標的(E:T)比)、抗BTN2(4.15、5.28、7.28、7.48、8.15、8.16、8.33)mAb及び/又は抗CD277 20.1mAb(10μg/ml)の有る無しで、ホスホアゴニスト(Pag)による活性化の有る無しで、GolgiStop及び可溶性抗CD107(a&b)-FITCの存在下で細胞傷害試験を4時間アッセイで実行した。4時間後、細胞を収集し、固定し、透過性にし、次に細胞内mAb(IFN-γ、TNF-α)で染色した。最後に、細胞をPBS2%パラホルムアルデヒドに再懸濁させ、BD LSRFortessa(BD Biosciences、San Jose、CA)で即座に分析した。γδ-T細胞の細胞溶解性機能の程度は、CD107a及びCD107b(脱顆粒)に陽性の細胞の百分率及び/又は炎症性サイトカイン(IFN-γ、TNF-α)の生成に基づいて測定した。
【0138】
BTN2A1及びBTN2A2発現細胞での抗BTN2 mAbの結合試験
BTN3及びBTN2の全てのアイソフォームのCRISPR-Cas9媒介欠失を有するHEK-293F細胞(293F BTN3/BTN2 KO)を作製し(データ示さず)、DMEM(Life Technologies)10%ウシ胎児血清(FBS、Gibco)1mMピルビン酸ナトリウム(Thermofisher scientific)に培養し、Lipofectamine 2000試薬(Thermofisher scientific)を製造業者の説明書に従って使用して、BTN2A1及びBTN2A2 CFP(Nter)融合タンパク質をコードするpcDNA3-Zeo-BTN2A1-CFP又はpcDNA3-Zeo-BTN2A2-CFPで独立してトランスフェクトした。
【0139】
フローサイトメトリー
トランスフェクションの24時間後に、細胞(5×104/試料)を収集し、4℃で30分間、50μLの染色緩衝液(DPBS1X(Thermofisher scientific)1%FBS、1mM EDTA(Thermofisher scientific))の中の全ての7つの精製された抗ヒトBTN2 mAbの示された濃度(20μg/mLから64pg/mLまで2倍希釈)により2反復で染色した。染色のためのアイソタイプ対照として、マウスIgG1抗体(Miltenyi)の等濃度を使用した。次に、200μLの染色緩衝液で細胞を2回洗浄し、暗所において4℃で30分間、染色緩衝液中の1:200希釈のヤギ抗マウスIg-PEコンジュゲート(Jackson Immunoresearch)とインキュベートした。最後に、細胞を染色緩衝液で2回洗浄し、その後製造業者の説明書に従ってBD Cytofix試薬(BD Bioscience)を使用して固定した。各試料のためにCFP陽性の集団内のPEチャネルでの平均蛍光強度(MFI)をCytoflex LX(Beckman Coulter)で調査し、FlowJo V10.4.2ソフトウェア(FlowJo、LLC 2006-2018)で分析した。
【0140】
統計
BTN2A1及びBTN2A2でトランスフェクトした293F BTN3/BTN2 KO細胞での精製された抗ヒトBTN2 mAbのEC50は、可変勾配モデルに従う非線形回帰の後のlog(用量)応答曲線に基づいて決定した。これらの分析は、GraphPad Prism 7.04ソフトウェア(GraphPad)を使用して実行した。
【0141】
γδ-T細胞の増殖
抗TCRγδミクロビーズキット(Miltenyi Biotec)を使用して、健康なドナーのPBMCからγδ-T細胞を単離した。フローサイトメトリーによって調査したγδ-T細胞の純度は、80%より高かった。37℃で20分間、γδ-T細胞をCellTraceバイオレットで標識した。次に、Pagの有る無しで、及び抗BTN2抗体(10μg/ml)の有る無しで、5.105のCellTrace標識細胞を200UI/mlのIL-2の存在下で96ウェル丸底プレートの中で培養した。培養の5日後に、CellTrace希釈を、BD LSRFortessa(BD Biosciences、San Jose、CA)でのフローサイトメトリーによって評価した。
【0142】
統計
結果は、中央値±SEMで表す。統計分析は、スピアマン相関、ウィルコクソン検定及びマン-ホイットニーt検定を使用して実行した。p値<0.05は、有意であると考えた。分析は、GraphPad Prismプログラムを使用して実行した。
【0143】
結果
参照抗体mAb1~mAb7の同定
参照抗体mAb1~mAb7は、以下の通りに得られた:
マウスを、BTN2A1-Fc抗原で免疫化した。マウスの脾細胞を収集し、骨髄腫と融合してハイブリドーマを得た。BTN2と最も高い親和性を有する抗体を生成するハイブリドーマをスクリーニング及び単離し、mAb1~mAb7をそれぞれ生成することができる、CNCM I-5231、CNCM I-5232、CNCM I-5233、CNCM I-5234、CNCM I-5235、CNCM I-5236及びCNCM I-5237の下で寄託されたハイブリドーマを与えた。
【0144】
本開示による抗体のための比較対照の役目をするmAb7(mAb8.33)を生成するハイブリドーマは、2017年9月14日に、ブダペスト条約の条項に従ってCollection Nationale de Cultures des Microorganismes(CNCM、Institut Pasteur、25 rue du Docteur Roux、75724 Paris Cedex 15、France)に寄託された。
【0145】
mAb 8.33のための寄託されたハイブリドーマは、CNCM寄託番号CNCM I-5237を有する。
【0146】
HEK293F細胞の上のmAb1~6の結合
図1のグラフは、ヒトBTN2A2(
図1A)でトランスフェクトしたHEK293F細胞又はトランスフェクトしなかったHEK293F細胞(
図1B)の上での、マウス抗ヒトBTN2 mAbの親和性の滴定曲線を示す。
【0147】
各抗体のEC50を、下の表に示す。試験した全ての抗体は、フローサイトメトリーにより、BTN2A2に結合しないmAb 8.33(mAb7)以外は、HEK細胞の上のBTN2A2を認識して結合することができた。
【0148】
【0149】
BTN2ポリペプチドは、がん細胞株の上で発現される。
【0150】
腫瘍細胞株をmAb6(マウス抗ヒトBTN2 mAb8.16)と、次に二次ヤギ抗マウス-PEとインキュベートした。
図Aに示すように、Vγ9Vδ2 T細胞脱顆粒アッセイで使用された標準細胞株であるDaudi細胞株(バーキットリンパ腫)を含めて、固形腫瘍又は造血悪性腫瘍から導かれた一団の腫瘍細胞株の上でBTN2タンパク質の広い発現が観察された。
【0151】
mAb1~6は、Vγ9Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を阻害する。
【0152】
健康なドナーのPBMCから、精製されたVγ9Vδ2 T細胞を増大させた。Vγ9Vδ2 T細胞を、Daudi標的細胞と共培養した。
図3に示すように、抗BTN2 mAb1~6の添加は、CD107脱顆粒として測定したときにVγ9Vδ2 T細胞の細胞溶解機能の阻害、及びDaudi標的細胞株に対する炎症性サイトカイン(TNF-α、IFN-γ)の生成につながる。
【0153】
フローサイトメトリーによりBTN2A2に結合しない対照抗体mAb7(mAb8.33)は、Vγ9Vδ2 T細胞脱顆粒(細胞溶解機能)にも炎症性サイトカインの生成にも効果を及ぼさない。
【0154】
抗CD277 20.1アゴニスト抗体はVγ9Vδ2 T細胞脱顆粒の活性化抗体の対照例の役目をし、抗CD277 103.2アンタゴニスト抗体はVγ9Vδ2 T細胞脱顆粒の阻害抗体の対照例の役目をする。
【0155】
mAb1~6は、Vγ9Vδ2 T細胞の細胞溶解機能に及ぼす抗CD277(20.1)mAbのアゴニスト効果を阻害する。
【0156】
我々は、(国際公開第2012/080351に開示されるように)及びVγ9Vδ2 T細胞の脱顆粒を増加させることが知られている、アゴニスト抗CD277 20.1mAbの存在下での抗BTN2 mAb1~6の組合せの効果も試験した。
【0157】
図4に示すように、mAb 1、2及び4(それぞれ、抗BTN2 mAb 4.15、5.28、7.48)は、驚くべきことに、Daudi標的細胞株に対するVγ9Vδ2 T細胞の細胞溶解機能に及ぼす抗CD277 20.1抗体のアゴニスト効果を阻害する。
【0158】
mAb 5及び6(それぞれ、抗BTN2 8.15、8.16)は、Daudi標的細胞株に対するVγ9Vδ2 T細胞の細胞溶解機能に及ぼす抗CD277 20.1抗体のアゴニスト効果を部分的に阻害する。
【0159】
mAb3(抗BTN2 7.28)及びmAb7(抗BTN2 8.33)は、Daudi標的細胞株に対するVγ9Vδ2 T細胞の細胞溶解機能に及ぼす抗CD277 20.1抗体のアゴニスト効果の有意な阻害を示さない。
【0160】
アンタゴニスト103.2及びアゴニスト20.1抗CD277の組合せは対照の役目をする:上述のように、アンタゴニスト103.2抗体は、Daudi標的細胞株に対するVγ9Vδ2 T細胞の細胞溶解機能に及ぼす20.1抗体のアゴニスト効果を阻害する。
【0161】
mAb 1~6(及び、対照mAb 7)の特徴付けの結果は、以下要約される:
【0162】
【表5】
mAb1~6は、CD277アイソフォーム(BTN3A1、BTN3A2又はBTN3A3)でトランスフェクトしたHEK293F細胞と交差反応しない。
【0163】
CD277のアイソフォーム(BTN3A1、BTN3A2又はBTN3A3)のいずれか1つでトランスフェクトしたHEK293F細胞の上のBTN2 mAbの結合は、トランスフェクトしなかったHEK293F細胞で観察されたものと類似している(
図5を参照)。抗BTN2mAbは、CD277のアイソフォームの1つと交差反応しないと結論付けることができる。
【0164】
mAb1~6は、ヒトBTN2A1及びBTN2A2アイソフォームと結合特異性を有する。
【0165】
BTN3/BTN2 KO HEK293F細胞の上でのmAb 1~6の結合。
【0166】
BTN2A1及びBTN2A2の上の各抗体のEC50は、下の表に示す。フローサイトメトリーで染色を示さないmAb8.33(mAb7)を除いて、試験した全ての抗BTN2抗体は、両アイソフォームに結合することができた。
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
【0186】
【0187】
参考文献:
本出願全体で、様々な参考文献が本発明が関係する分野の最新技術を記載する。これらの参考文献の開示は、これにより参照により本開示に組み込まれる。