(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055865
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】ルテリアル、並びにその分離および培養方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/07 20100101AFI20230411BHJP
【FI】
C12N5/07 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023014621
(22)【出願日】2023-02-02
(62)【分割の表示】P 2020179573の分割
【原出願日】2014-05-09
(31)【優先権主張番号】10-2014-0004525
(32)【優先日】2014-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】516012232
【氏名又は名称】チョイ ウォンチョル
【氏名又は名称原語表記】CHOI, Won Cheol
(71)【出願人】
【識別番号】516012221
【氏名又は名称】クォン ヨンア
【氏名又は名称原語表記】KWON, Young Ah
(71)【出願人】
【識別番号】516012243
【氏名又は名称】チョイ ソクフン
【氏名又は名称原語表記】CHOI, Suk Hoon
(71)【出願人】
【識別番号】516012254
【氏名又は名称】チョイ チャンフン
【氏名又は名称原語表記】CHOI, Chang Hoon
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】チョイ ウォンチョル
(72)【発明者】
【氏名】クォン ヨンア
(72)【発明者】
【氏名】チョイ ソクフン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ チャンフン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】患者または健常人から既に排出された体液中に存在するミトコンドリア類似ナノサイズ粒子の濃縮方法を提供する。
【解決手段】血小板および血液由来物質を分離させた血液をフィルタに通過させたのち遠心分離して、ミトコンドリア類似ナノサイズ粒子を含む上清を得る。得られた液体から、粒子が、例えば下記に示す性質の一つ以上を有するか否かを評価することで、ミトコンドリア類似ナノサイズ粒子を同定する。(1)免疫蛍光試験で、ヤーヌスグリーンB、アクリジンオレンジ、およびローダミン123に陽性の発色反応を示す(2)健康な状態では、β‐プロテオバクテリアとγ‐プロテオバクテリア由来遺伝子の発現特性を示し800nm未満のサイズを有する(3)疾病状態では、β‐プロテオバクテリアとγ‐プロテオバクテリア由来遺伝子だけでなく、真核細胞であるストレプトファイタ遺伝子を発現し、800nmを超えるサイズを有する
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のステップを含むルテリアルの分離方法:
(a)血液から血小板および血小板以上のサイズを有する血液由来物質を分離する第1の
分離ステップと、
(b)前記血小板および血小板以上のサイズを有する血液由来物質を分離させた血液を遠
心分離する第2の分離ステップと、
(c)前記遠心分離により得られた上清からルテリアルを分離する第3の分離ステップと
、
(d)前記分離されたルテリアルを洗浄するステップ。
【請求項2】
前記血液は哺乳動物由来であることを特徴とする、請求項1に記載のルテリアルの分離
方法。
【請求項3】
前記血液はヒト由来であることを特徴とする、請求項2に記載のルテリアルの分離方法
。
【請求項4】
前記第1の分離ステップは0.8~1.2μmの空隙を有するフィルタに通過させ、濾
過されていない物質は分離するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載
のルテリアルの分離方法。
【請求項5】
200nm、400nm、600nm、800nm、および1000nmのフィルタを
順に用いて、各々50~200nm、200~400nm、400~600nm、600
~800nm及び800~1000nmのサイズのルテリアルに分類することをさらに含
むことを特徴とする、請求項4に記載のルテリアルの分離方法。
【請求項6】
前記第2の分離ステップは1200~5000rpmで5~10分間遠心分離を繰り返
すことにより行うことを特徴とする、請求項1に記載のルテリアルの分離方法。
【請求項7】
前記第2の分離ステップにおいてエキソソーム(exosome)が除去されることを
特徴とする請求項1に記載のルテリアルの分離方法。
【請求項8】
前記第3の分離ステップは遠心分離により得られた上清に可視光線を照射すること、及
び可視光線が照射された位置に集まる運動性を有するルテリアル粒子をピペットを用いて
分離して行うことを特徴とする請求項1に記載のルテリアルの分離方法。
【請求項9】
前記洗浄するステップは前記第3の分離ステップから得られたルテリアルを直径50n
mの空隙を有するフィルタに通過させること、濾過されていない部分のみを洗浄すること
、それによってルテリアルを得ることにより行われることを特徴とする請求項1に記載の
ルテリアルの分離方法。
【請求項10】
次の特性の一つ以上を有する体液由来ルテリアル:
(a)免疫蛍光試験で、ヤーヌスグリーンB(Janus green B)、アクリジ
ンオレンジ(Acridine Orange)、およびローダミン123(Rhoda
mine123)に陽性の発色反応を示す;
(b)最適状態(pH7.2~7.4)において、β‐プロテオバクテリアとγ‐プロテ
オバクテリア由来遺伝子の発現特性を示し、30~800nmのサイズを有する;
(c)酸性化状態では、β‐プロテオバクテリアとγ‐プロテオバクテリア由来遺伝子だ
けでなく、真核細胞であるストレプトファイタ(Streptophyta)遺伝子を発
現し、400nm~2000nmまたはそれ以上までサイズが大きくなる;
(d)正常条件でATP生成に関与する;
(e)ミトコンドリアおよびエキソソームとは全く異なる細胞または細胞類似構造体であ
る;
(f)定常状態では円形または楕円形であり、患者由来の場合は、定常状態に比べてサイ
ズ(長径800nm以上)が大きく、形態が均一ではない変異ルテリアルが発生する;
(g)二重膜構造を有しており、付着性がある;
(h)細胞内または外の両方に存在可能である;
(i)運動性を有し、融合(fusion)および/または分裂(fission)の生
態様式を示す;
(j)特定条件で変異ルテリアルはバースティング(Bursting)し、バースティ
ング(Bursting)後には幹細胞性(stemness)を有する;
(k)p53遺伝子およびテロメアの調節機能を有する。
【請求項11】
前記体液は哺乳動物由来の血液、精液、腸液、唾液、または細胞液であることを特徴と
する請求項10に記載のルテリアル。
【請求項12】
請求項10に記載のルテリアルに水分を添加し、IR光線照射下、18~30℃で培養
することを含むルテリアルの培養方法。
【請求項13】
前記培養前及び後において、ルテリアルのサイズは、各々50~200nm及び300
~800nmであることを特徴とする請求項12に記載のルテリアルの培養方法。
【請求項14】
前記水分は、食塩水またはPBS溶液であることを特徴とする請求項13に記載のルテ
リアルの培養方法。
【請求項15】
次のステップを含むルテリアルの分離方法:
(a)体液を遠心分離して上清を得て、この上清を2~5μmの孔のサイズのフィルタで
濾過するステップ;と、
(b)前記濾過された溶液を2次遠心分離して上清を得て、この上清を0.5~2μmの
孔のサイズのフィルタで濾過するステップ。
【請求項16】
(c)前記(b)ステップにおいて濾過された溶液に可視光線を照射して、そして可視
光線が照射された位置に集まる運動性を有するルテリアル粒子をピペットを用いて分離す
るステップをさらに含むことを特徴とする請求項15に記載のルテリアルの分離方法。
【請求項17】
前記体液は哺乳動物由来の血液、精液、腸液、唾液、または細胞液であることを特徴と
する請求項15に記載のルテリアルの分離方法。
【請求項18】
前記1次遠心分離は2000~4000rpmで5~30分行うことを特徴とする請求
項15に記載のルテリアルの分離方法。
【請求項19】
前記2次遠心分離は3000~7000rpmで5~20分行うことを特徴とする請求
項15に記載のルテリアルの分離方法。
【請求項20】
請求項10に記載のルテリアルを有効成分として含有する抗癌組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液由来のミトコンドリア類似微細物質であるルテリアル、並びにその分離
および培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液中の微小胞などの微細物質は、かつては、特別な機能を持っていない物質として認
識されてきた。しかし、微小胞(microvesicle)も様々な生物活性を有する
ということが、種々の実験データにより明らかになっている。例えば、血小板由来の微小
胞は、小胞状の表面タンパク質を介して特定細胞を刺激する機能をするということが明ら
かになっており(CD154,RANTES and/or PF‐4;Thromb.
Haemost.(1999)82:794;J.Boil.Chem.(1999)2
74:7545)、血小板の微小胞における生理活性脂質(例えば、HTETまたはアラ
キドン酸)が特定の標的細胞に対して特定効果を示すことが報告されている(J.Bio
l.Chem.(2001)276;19672;Cardiovasc.Res.(2
001)49(5):88)。このように、生物学的試料中に存在する小嚢などの物質の
特徴(例えば、サイズ、表面抗原、起源細胞の決定、ペイロッド)は、疾病の診断、予後
または治療診断に関する情報を提供することができるため、疾患を探索して治療するのに
用いられることができる生物学的指標を確認することに対する必要性が求められている。
そこで、小嚢に関わるRNAおよび他の生物学的指標と小嚢の特徴を、診断、予後、また
は治療診断に提供しようとする試みもあった(WO2011/127219参照)。
【0003】
一方、癌(cancer)は、細胞が無限に増殖して正常の細胞の機能を妨害する疾病
であり、肺癌、胃癌(gastric cancer、GC)、乳癌(breast c
ancer、BRC)、大腸癌(colorectal cancer、CRC)などが
代表的であるが、実質には何れの組織でも発生し得る。初期の癌の診断は、癌細胞の成長
による生体組織の外的変化に基づいて行われたが、近年、血液、糖鎖(glyco ch
ain)、DNAなどの生物の組織または細胞に存在する微量の生体分子を用いた診断お
よび検出が試されている。しかし、最も一般的に用いられる癌の診断方法は、生体組織検
査により得られた組織サンプルを用いるか、映像を用いた診断である。このうち生体組織
検査は、患者に大きい苦痛を与え、費用が高いだけでなく、診断まで長時間がかかるとい
う欠点がある。また、患者が実際に癌にかかった場合、生体組織検査の過程中に癌の転移
が誘発される恐れがあり、生体組織検査により組織サンプルが得られない部位の場合、疑
われる組織を外科的な手術により摘出しないと、疾病の診断が不可能であるという欠点が
ある。また、映像を用いた診断では、エックス線(X‐ray)映像、疾病標的物質が付
着された造影剤を用いて得た核磁気共鳴(nuclear magnetic reso
nance、NMR)映像などに基づいて癌を判定していた。しかし、かかる映像による
診断は、臨床医または読影医の熟練度によって誤診の可能性があり、映像を得る機器の精
度に大きく依存するという欠点がある。さらに、最も高精度の機器であるとしても、数m
m以下の腫瘍は検出が不可能であり、発病初期段階では検出が難しいという欠点がある。
また、映像を得るためには、患者または疾病保有可能者が、遺伝子の突然変異が誘発し得
る高エネルギーの電磁気波に露出されるため、さらに他の疾病を引き起こす恐れがあるだ
けでなく、映像を用いた診断の回数が制限されるという欠点がある。
【0004】
すなわち、癌の診断のための生体組織検査は、多くの時間、費用、不便さ、苦痛などが
伴われるため、不要な生体組織検査の対象者数を著しく減少させることができる方法、癌
を早期に診断できる方法が求められている。
【0005】
このような背景下で、本発明者らは、患者から既に排出された体液中に存在する微細物
質の特性を観察することで、疾病を診断および予測することができることを見出し、その
内容を2013年7月12日付けで特許出願している(韓国特許出願第10‐2013‐
0082060号)。本発明者らは、上記の微細物質を「ルテリアル(luterial
)」と命名した。
【0006】
しかし、上記の微細物質を臨床に適用することができるように、ルテリアルを効率的に
分離および培養する技術は未だに知られていない。
【0007】
そこで、本発明者らは、患者または健常人から既に排出された体液中に存在する微細物
質であるルテリアルを効果的に分離することができる方法を開発し、その方法により分離
されたルテリアルの特性を調べることにより本発明を成すに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、患者または健常人から既に排出された体液中に存在するルテリアルの
分離および培養方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、原核細胞(prokaryote)と真核細胞(Eukaryo
te)の中間段階の融合特性を有し、免疫蛍光(Immunofluorescence
)試験でヤーヌスグリーンB(Janus Green B)、ミトトラッカーレッド(
Mito‐tracker Red)、ローダミン123(Rhodamine123)
に陽性の免疫化学蛍光染色反応を示し、運動性を有するとともに、ATP生産などの特徴
を有するルテリアルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、血液から血小板および血小板以上のサイズを
有する血液由来物質を分離する第1の分離ステップと、前記血小板および血小板以上のサ
イズを有する血液由来物質を分離させた血液を遠心分離する第2の分離ステップと、前記
遠心分離により得られた上清からルテリアルを分離する第3の分離ステップと、前記分離
されたルテリアルを洗浄するステップと、を含む、ルテリアルの分離方法を提供する。
【0011】
本発明は、また、体液を1次遠心分離した後、上清を2~5μmのフィルタで濾過する
ステップと、前記濾過された溶液を2次遠心分離した後、上清を0.5~2μmのフィル
タで濾過するステップと、を含む、ルテリアルの分離方法を提供する。
【0012】
本発明は、また、次の特性の一つ以上を有する体液由来ルテリアルを提供する:
(a)免疫蛍光試験で、ヤーヌスグリーンB(Janus green B)、アクリジ
ンオレンジ(Acridine Orange)、およびローダミン123(Rhoda
mine123)に陽性の発色反応を示す;
(b)最適状態(pH7.2~7.4)では、β‐プロテオバクテリアとγ‐プロテオバ
クテリア由来遺伝子の発現特性を示し、30~800nmのサイズを有する;
(c)酸性化状態では、β‐プロテオバクテリアとγ‐プロテオバクテリア由来遺伝子だ
けでなく、真核細胞であるストレプトファイタ(Streptophyta)遺伝子を発
現し、400nm以上から2000nm以上までサイズが大きくなる;
(d)正常条件でATP生成に関与する;
(e)ミトコンドリアおよびエキソソームとは全く異なる細胞または細胞類似体である;
(f)定常状態では円形乃至楕円形であり、患者由来の場合は、定常状態に比べてサイズ
(長径800nm以上)が大きく、形態が均一ではない変異ルテリアルが発生する;
(g)二重膜構造を有しており、付着性がある;
(h)細胞内または外の両方に存在可能である;
(i)運動性を有し、フュージョン(fusion)および/またはフィッション(fi
ssion)の生態様式を示す;
(j)特定条件で変異ルテリアルはバースティング(Bursting)し、バースティ
ング(Bursting)後には幹細胞性(stemness)を有する;
(k)p53遺伝子およびテロメア(telomere)の調節機能を有する。
【0013】
本発明は、また、前記分離された体液由来ルテリアルに水分を添加し、IR光線照射下
、18~30℃で培養することを特徴とするルテリアルの培養方法を提供する。
【0014】
本発明は、また、ルテリアルを有効成分として含有する抗癌組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】血液由来微細物質であるルテリアルを共焦点レーザー走査顕微鏡(Confocal Laser Scanning Microscope、Zeiss)、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope)、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope)、および共焦点スキャナ(Leica TCS‐SP8)で撮影した写真である。
【
図2】ルテリアルのサイズ毎の形状や形態を示した写真である((a):39.6~49.0nm、ミトトラッカーレッド(Mito‐tracker Red)で染色した後の超高解像度顕微鏡(SR‐GSD)写真;(b):50.1~85.1nm、ミトトラッカーレッド(Mito‐tracker Red)で染色した後の超高解像度顕微鏡(SR‐GSD)写真;(c):76.5nm、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope)写真;(d):160nm、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope)写真;(e):170~230nm、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope)写真、二重膜構造;(f):234nm、ヤーヌスグリーンB(Janus green B)で染色した後の写真;(g):250nm、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope)写真;(h):361nm、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope)写真;(i):650.1nm、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope)写真;(j):5μm以上のサイズのルテリアルをDAPI(4´,6‐diamidino‐2‐phenylindole)で染色した後のレーザー走査顕微鏡(Laser Scanning Microscope)写真)。
【
図3】ルテリアルをローダミン123(Rhodamine123)で染色した後、その発色有無を観察した写真である。
【
図4】ルテリアルをミトトラッカー(Mito‐tracker)で染色した後、その発色有無を観察した写真である。
【
図5】ルテリアルをアクリジンオレンジ(Acridine Orange)で染色した後、その発色有無を観察した写真である。
【
図6】ルテリアルをDAPI(4´,6‐diamidino‐2‐phenylindole)で染色した後、その発色有無を観察した写真である。
【
図7】ナノトラッカーを用いてルテリアルの運動性を測定した写真である((a)測定前;(b)1秒後;(c)3秒後)。
【
図8】正常のルテリアルのライフサイクルAと突然変異されたルテリアルのライフサイクルBを示したものである。
【
図9】突然変異ルテリアルのライフサイクルおよび特性を示したものである。
【
図10】癌患者の体液から分離したルテリアルを示したものであって、(a)は長い枝が伸びて形態が変わった癌患者由来ルテリアルを示し、(b)はDAPI(4´,6‐diamidino‐2‐phenylindole)、ミトトラッカー(Mito‐tracker)、およびローダミン123(Rhodamine123)で染色した癌患者由来ルテリアルを示す。
【
図11】ルテリアルのライフサイクルを示したものである。
【
図12】ルテリアル、変異ルテリアルのサイズを確認した写真である。
【
図13】ルテリアルの原子顕微鏡プローブを用いてスクラッチングし、膜を除去した写真である。
【
図14】(a)、(b)は、変異されてフュージョン状態のルテリアルを原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope)で撮影したものであり、(c)、(d)は、変異されたルテリアルの膜をカンチレバーで剥離させた後、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope)で撮影したものである。
【
図15】ルテリアルの原子顕微鏡プローブを用いてスクラッチングした後、DAPI染色写真によりDNAを確認した写真である。
【
図16】(a)は、ルテリアル中にDNAが含有されているか否かを分析した、バイオアナライザの結果であり、(b)は、ルテリアルのサイズによって、DNAのGAPDH遺伝子発現において差が生じることをqRT‐PCRで示したものである。
【
図17】ルテリアル中にRNAが含有されているか否かを分析した、バイオアナライザの結果である。
【
図18】ルテリアル添加を異ならせた培養液において、ルシフェリン‐ルシフェラーゼ(luciferin‐luciferase)反応とルミノメータ(luminometer)を用いてATP含量を測定したものである(SSH:三聖丸、SSF:フィセチン、12h:実験前に予め37℃で12時間活性化)。
【
図19】ルテリアルとエキソソームの違いを観察できる写真であって、20~120nmのサイズのうち、膜の区分が明確でなく、内部色が比較的薄いものがエキソソームであり、50~800nmのサイズのうち、膜の区分が明確であるか、内部が満たされているものがルテリアルである。
【
図20】ルテリアル(luterial)、エキソソーム(exosome)、および微小胞(microvesicle)の形態を比較できるように示した写真である。
【
図21】本発明の一実施例で構築されたルテリアルライブラリの電子顕微鏡(TEM)写真である。
【
図22】ルテリアルの培養によるサイズの変化を示した共焦点レーザー走査顕微鏡写真である。
【
図23】ルテリアルの培養による形態およびサイズの変化を示した写真である。
【
図24】健常人(基準:pH7.2~7.4)の血液由来ルテリアルのサイズ毎の16S rRNA塩基配列を分析して、相同性を示す類似バクテリア構成を示したものである((a):100nm以下;(b):100~200nm;(c):200~400nm;(d):400~800nm)。
【
図25】疲労・疾病状態(pH7.0以下)の血液および精液由来ルテリアルのサイズ毎の16S rRNA塩基配列を分析して、相同性を示す類似バクテリア構成を示したものである((a):100nm以下;(b):100~200nm;(c):200~400nm;(d):400~800nm)。
【
図26】(a)、(b)および(c)は、血液由来ルテリアルの16S rRNA塩基配列に基づいた系統発生図を示したものである。
【
図27】卵巣癌細胞株であるSKOV3およびA2780細胞株に対して、100~800nmのサイズのルテリアルと市販中の抗癌剤cisplatinを濃度毎に処理した後、MTT分析法による細胞生存率を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
他に定義されない限り、この明細書において用いられた全ての技術的および科学的用語
は、本発明が属する技術分野において熟練した当業者により通常的に理解されるものと同
一の意味を有する。通常、この明細書において用いられた命名法及び以下に記載の実験方
法は、本技術分野において公知の、通常的に用いられるものである。
【0017】
本発明で用いる用語「ルテリアル(luterial)」は、動物に存在する生命因子
(living organism)であって、ウイルスに近似な程度から約800nm
まで(正常フィッションステップ50~800nm/非正常フュージョンステップ800
nm以上)のサイズを有する微細物質を本発明者が命名したものである。ルテリアルは、
(1)原核細胞と真核細胞の中間段階の融合特性を有する細胞または細胞類似体であり;
(2)血液、精液、腸液、唾液、細胞液などの体液に存在し;(3)免疫蛍光試験で、ヤ
ーヌスグリーンB(Janus green B)、アクリジンオレンジ(Acridi
ne Orange)、およびローダミン123(Rhodamine123)に陽性の
発色反応を示し;(4)最適状態(pH7.2~7.4)では、β‐プロテオバクテリア
とγ‐プロテオバクテリア由来遺伝子の発現特性を示し、30~800nmのサイズを有
しており;(5)酸性化状態では、β‐プロテオバクテリアとγ‐プロテオバクテリア由
来遺伝子だけでなく、真核細胞由来遺伝子の発現特性を示すが、主にストレプトファイタ
(Streptophyta)遺伝子を発現し、400nm以上から2000nm以上ま
でサイズが大きくなり;(6)正常条件でATP生成に関与し;および(7)ミトコンド
リアとは異なって、エキソソームとは全く異なる細胞または細胞類似体である。ルテリア
ルは、ヒトを含む動物の場合、血液、唾液、リンパ管、精液、膣液、母乳(特に、初乳)
、臍帯血、脳細胞、脊髄、骨髓に存在する。その他に、角を有する動物の場合、角中にも
ルテリアルが存在する。
【0018】
正常のルテリアルのサイズは50~800nmであり、変異ルテリアルは融合して変異
体を形成し、数十マイクロメータのサイズを有する。ルテリアルは、mRNAとmiRN
Aだけでなく、DNAも含む未成熟ミトコンドリア段階のものを指すことができる。ルテ
リアルは、消化液に溶解せず、血液に流入される特徴を有する。
【0019】
ルテリアルは、シグナリング、細胞分化、細胞死滅だけでなく、細胞サイクルおよび細
胞成長の調節にも関連すると予想されるが、本発明者は、中でもルテリアルが癌の診断に
密接に関連することを見出した。
【0020】
正常のルテリアル(normal luterial)は、癌細胞の成長を抑え、細胞
を健康な免疫体系に戻す役割をすると予想されるが、その役割は、遺伝子を正常化させる
可能性を有するRNAi(RNA interference;RNA干渉)により行わ
れる。このように、健康な人や動物の血液中において、ルテリアルは、RNA中における
情報体系が正常軌道を外れて、異常疾患を誘発するタンパク質を生産するように指示する
場合、これを人為的に干渉することで癌などの疾病の発生を抑えるように作用し、サイズ
が200~500nm以上に成熟した時にはエネルギー代謝にも関与し、特定波長を照射
すると、反応発現として光エネルギー増幅機能をし、葉緑体のように反応することが確認
される。そのため、かかるルテリアルが正常の役割を行うことができない場合、恒常性お
よびATP生産において決定的障害を誘発し、呼吸およびエネルギー代謝の両方において
疾病を招く恐れがある。
【0021】
このように、役割を正常に果たすことができない突然変異ルテリアルは、正常のルテリ
アルとは生態および特性が異なって、そのサイズや形態が多様である。具体的に、正常の
ルテリアルは、二重胞子(double‐spore)を形成した後にはそれ以上増殖し
ないが、癌患者や晩成疾病を有する患者の血液中で発見される突然変異ルテリアルは、幹
細胞と類似に無限に増殖する特性を有するため、600~800nm以上のサイズを有し
、200μm(200,000nm)以上のサイズを有するものもある。また、ウイルス
と類似に、赤血球、白血球、血小板などに侵入して生長したり、他のルテリアルと凝集し
たりする特性を示す。
【0022】
したがって、ルテリアルの形態学的特性または生化学的特性を観察することで、疾病の
診断や治療が可能であり、その用途が無限にあると予想される。しかし、ヒトを含む動物
から既に排出された体液から分離されたルテリアルは、生体外では短い時間内に溶解され
て消滅されたり、形態が変わったりする特性があるため観察自体が難しく、異常な環境下
で放置する場合には、24時間以内に正常のルテリアルも突然変異ルテリアルに変異され
、疾病の正確な診断や治療が困難であるという問題点がある。
【0023】
本発明では、患者または健常人から既に排出された体液中に存在する微細物質であるル
テリアルを2つの方法により分離した。
【0024】
したがって、一観点による本発明は、体液からルテリアルを分離する方法に関する。
【0025】
第1の方法は、血液からルテリアルを分離する方法であって、血液から血小板および血
小板以上のサイズを有する血液由来物質を分離する第1の分離ステップと、前記血小板お
よび血小板以上のサイズを有する血液由来物質を分離させた血液を遠心分離する第2の分
離ステップと、前記遠心分離により得られた上清からルテリアルを分離する第3の分離ス
テップと、前記分離されたルテリアルを洗浄するステップと、を含む。
【0026】
前記第1の分離ステップは、血液を0.8~1.2μmの空隙を有するフィルタに通過
させ、濾過されていない物質は分離するステップを含むことができる。前記第2の分離ス
テップは、1200~5000rpmで5~10分間遠心分離を繰り返すことで、エキソ
ソーム(exosome)のような一般微小胞を除去して上清を得るステップを含むこと
ができる。前記第3の分離ステップは、遠心分離により得られた上清に可視光線を照射し
て、運動性を有して集まるルテリアル粒子をピペットを用いて分離するステップを含むこ
とができる。前記第1のステップで用いられた血液は、哺乳動物のうちヒト由来のもので
あることを特徴とする。ルテリアルは、自家蛍光および運動性の特性を有するため、上記
のように可視光線を照射すると、上清からルテリアル粒子を確認することができる。この
際、動くルテリアル粒子を暗視野顕微鏡または共焦点顕微鏡で確認しながら、ピペットを
用いて分離することができる。前記第3のステップで分離されたルテリアルを直径50n
mの空隙を有するフィルタに通過させ、濾過されていない部分のみをPBSで洗浄するこ
とでルテリアルを得ることができる。ルテリアルは、長径50nm以上のサイズを有する
ため、前記過程により、ルテリアル以外の血液由来微細物質は除去することができる。
【0027】
第2の方法は、血液や精液などの体液からルテリアルを分離する方法であって、体液を
1次遠心分離した後、上清を2~5μmのフィルタで濾過するステップと、前記濾過され
た溶液を2次遠心分離した後、上清を0.5~2μmのフィルタで濾過するステップと、
を含む。
【0028】
すなわち、体液を2000~4000rpmで5~30分間1次遠心分離した後、上清
を2~5μmのフィルタで濾過し、濾過された溶液を3000~7000rpmで5~2
0分間2次遠心分離した後、0.5~2μmのフィルタで濾過するステップを含むことが
できる。
【0029】
濾過により得られた溶液に可視光線を照射して、運動性を有して集まるルテリアル粒子
をピペットを用いて分離するステップをさらに含むことができる。ルテリアルは、自家蛍
光および運動性の特性を有するため、上記のように可視光線を照射すると、上清からルテ
リアル粒子を確認することができる。この際、動くルテリアル粒子を暗視野顕微鏡または
共焦点顕微鏡で確認しながらピペットを用いて分離することができる。分離されたルテリ
アルを直径50nmの空隙を有するフィルタに通過させ、濾過されていない部分のみをP
BSで洗浄することでルテリアルを得ることができる。ルテリアルは、長径50nm以上
のサイズを有するため、前記過程によりルテリアル以外の血液由来微細物質を除去するこ
とができる。
【0030】
上記のような2つの方法により分離されたルテリアルは暗視野顕微鏡または共焦点顕微
鏡により観察可能であり、それぞれ200nm、400nm、600nm、800nm、
および1000nmのフィルタを順に用いて、サイズに応じて50~200nm(発生期
)/200~400nm(成熟期)/400~600nm(分裂期)/600~800n
m(過分裂期)に区別することができる。
【0031】
本発明では、前記分離されたルテリアルの特性を調べた。
【0032】
(1)Morphology
正常のルテリアルのサイズは50~800nmであって(
図2および
図12)、フュー
ジョンがない場合には800nmまで成熟する。患者由来ルテリアルの場合、正常由来の
ものに比べてサイズ(長径800nm以上)が大きく、形態が均一ではない変異ルテリア
ルが発生して、フュージョンが発生する場合にはルテリアルのサイズが数千nmまで大き
くなることを確認した。
【0033】
尚、ルテリアルは円形乃至楕円形であって、SEMまたはTEM電子顕微鏡写真でミト
コンドリアと類似した二重膜構造を示すが、内部クリステ(cristae)構造を有し
ていなかった(
図1)。
【0034】
(2)免疫化学蛍光染色
ミトコンドリアは、ヤーヌスグリーンB(Janus green B)、および蛍光
染色薬であるローダミン123(Rhodamine123)、ミトトラッカー(Mit
o‐tracker)、アクリジンオレンジ(Acridine Orange)および
DAPIにより発色されると知られているが、ルテリアルも、ミトコンドリアと同一の染
色薬による発色が確認された。前記ルテリアルがミトコンドリアと類似の免疫化学蛍光染
色反応を示したのに対し、エキソソーム(exsome)とは相反する反応を示し、自家
蛍光(autofluorescence)を示す特徴を蛍光写真から確認した(
図2(
a)、
図2(b)、
図2(f)、
図2(j)、
図3~
図6)。
【0035】
(3)生態様式
ルテリアルは、エキソソーム(exosome)および微小胞(microvesic
le)とは異なって、付着性および運動性を有し、フュージョン(fusion)または
フィッション(fission)の生態様式を示した。特定条件で変異ルテリアルはバー
スティング(Bursting)し、バースティング(Bursting)後には幹細胞
性(stemness)を有することを確認し、細胞内または細胞外に存在可能であるこ
とを確認した(
図8、
図9、
図11)。
【0036】
(4)ATP生産
200~400nmのサイズのルテリアルからATPが生産されることを、ルシフェリ
ン(luciferin)‐ルシフェラーゼ(luciferase)反応とルミノメー
タ(luminometer)を用いて立証した。ルテリアルが添加された群は、ルテリ
アルが添加されていない群に比べてATP濃度が増加した。このことから、ルテリアルが
ATP生産能力を有するという結論を導出することができる。SSHおよびSSFの添加
による差については、SSF添加群がSSH添加群に比べてATP濃度が高かった。この
ことから、ATP含量を効率的に増加させることができる培養液を確認した(
図18)。
【0037】
(5)核酸含有
DAPIおよびアクリジンオレンジ(AO)染色法により、ルテリアル中にRNAだけ
でなくDNAも含有されていることを確認した。具体的に、RNAは、アクリジンオレン
ジ染色薬により、励起460nm、放出650nmのレベル(level)でオレンジで
染色され、DNAは、励起502nm、放出525nmのレベルで緑色で染色されて、D
API染色法により、DNAが含有されていることを確認することができる。前記染色法
を用いて、本発明のルテリアル中にRNAとDNAが含有されていることを確認した(図
5および
図6)。また、ルテリアルのRNAおよびDNAをキット(kit)で分離およ
び精製した後、アガロース(agarose)ゲル電気泳動によりバンドを確認し、qR
T‐PCR技法によりGAPDH発現程度を確認することで、ルテリアルのサイズによっ
て遺伝子発現において差があることを確認した(
図2(h)、
図16および
図17)。
【0038】
(6)16S rRNA配列分析
FastDNA SPIN Kit(MP Biomedicals、Cat 656
0‐200)を用いてルテリアルのgDNAを抽出した後、表1および表2の特定プライ
マー(primer)を用いて16S rRNA遺伝子を増幅させた。
【0039】
尚、前記増幅された1461個の断片遺伝子を対象に、GeneBank datab
ase(NCBI database)を用いて相同性を分析した結果、血液および精液
由来ルテリアルの16S rRNA塩基配列は、β-プロテオバクテリア(β‐Prot
eobacteria)、γ-プロテオバクテリア(γ‐Proteobacteria
)、アシドバクテリア(Acidobacteria)、シアノバクテリア(Cyano
bacteria)、アクチノバクテリア(Actinobacteria)、ファーミ
キューテス(Firmicutes)、および真核細胞(Eukaryote)由来遺伝
子と相同性を示し、原核細胞と真核細胞の中間段階の融合特性を有していた(
図24~図
25)。
【0040】
最適状態(血液のpH:7.2~7.4)で、血液由来ルテリアルは、β-プロテオバ
クテリア(β‐Proteobacteria)、γ-プロテオバクテリア(γ‐Pro
teobacteria)、およびバクテロイデス(Bacteroidetes)由来
遺伝子と相同性を示し(
図24)、50~800nmのサイズで観察される。
【0041】
定常状態で、精液由来ルテリアルは、β‐プロテオバクテリア、γ‐プロテオバクテリ
ア、バクテロイデス、および脊索動物(Chordata)由来遺伝子と相同性を示す。
【0042】
これに対し、酸性化状態では、定常状態と同様にβ‐プロテオバクテリア(β‐pro
teobacteria)およびγ‐プロテオバクテリア(γ‐Proteobacte
ria)由来遺伝子だけでなく、バクテリア由来遺伝子がさらに多様に発現され、真核細
胞(Eukaryote)由来遺伝子も発現される。主にストレプトファイタ(Stre
ptophyta)とプランクトミ(planctomy)の16S rRNA特性を発
現し(
図25)、サイズは400~2000nmまで成長する。
【0043】
【0044】
【0045】
(7)エキソソームおよびミトコンドリアとの違い
表3は、エキソソームおよびミトコンドリアとルテリアルとの違いを整理したものであ
る。
【0046】
【0047】
ルテリアルの平均サイズは200~800nmであって、ミトコンドリア(400~1
,000nm)よりは小さく、エキソソーム(20~120nm)よりは大きい。また、
エキソソームは膜の区分が明確でなく、内部色が比較的薄いのに対し、ルテリアルは、膜
の区分が明確であるか、内部が満たされている形態である(
図19)。尚、ルテリアルは
、エキソソームおよび微小胞(microvesicles)とはその形態が全く異なる
(
図20)。
【0048】
免疫化学蛍光染色時に、ルテリアルはミトコンドリアと類似の反応を示すのに対し、エ
キソソームとは相反する反応を示す。細胞内外に存在するルテリアルと細胞外に存在する
エキソソームは、食品を摂取することで得られる物質でもあるのに対し、ミトコンドリア
は食品摂取によっては得られない細胞内にのみ存在するという違いがある。
【0049】
そして、エキソソームおよびミトコンドリアと異なって、ルテリアルは運動性を有し、
自然成長が可能であって培養により成長を維持することができ、自家蛍光の特徴を示す。
また、ルテリアル、エキソソーム、およびミトコンドリアは何れもフュージョンの生態様
式を有するが、エキソソームではkiss‐and‐runフュージョンが起こらず、A
TP生産も起こらない。また、エキソソームは細胞外に存在し、ミトコンドリアは細胞内
に存在するのに対し、ルテリアルは細胞外または内の両方に存在可能である(
図11)。
【0050】
また、16S rRNA塩基配列分析結果、ミトコンドリアは、α‐プロテオバクテリ
アと相同性を示すのに対し、ルテリアルは、γ‐プロテオバクテリア(γ‐Proteo
bacteria)、β‐プロテオバクテリア(β‐Proteobacteria)、
バクテロイデス(Bacteroidetes)、ファーミキューテス(Firmicu
tes)、および真核細胞(Eukaryote)と相同性を示す。
【0051】
他の観点による本発明は、次の特性の一つ以上を有する体液由来ルテリアルに関する:
(a)免疫蛍光試験で、ヤーヌスグリーンB(Janus green B)、アクリジ
ンオレンジ(Acridine Orange)、およびローダミン123(Rhoda
mine123)に陽性の発色反応を示す;
(b)最適状態(pH7.2~7.4)では、β‐プロテオバクテリアとγ‐プロテオバ
クテリア由来遺伝子の発現特性を示し、30~800nmのサイズを有する;
(c)酸性化状態では、β‐プロテオバクテリアとγ‐プロテオバクテリア由来遺伝子だ
けでなく、真核細胞であるストレプトファイタ(Streptophyta)遺伝子を発
現し、400nm以上から2000nm以上までサイズが大きくなる;
(d)正常条件でATP生成に関与する;
(e)ミトコンドリアおよびエキソソームとは全く異なる細胞または細胞類似体である;
(f)定常状態では円形乃至楕円形であり、患者由来の場合、定常状態に比べてサイズ(
長径800nm以上)が大きく、形態が均一ではない変異ルテリアルが発生する;
(g)二重膜構造を有し、付着性がある;
(h)細胞内または外の両方に存在可能である;
(i)運動性を有し、フュージョン(fusion)および/またはフィッション(fi
ssion)の生態様式を示す;
(j)特定条件で変異ルテリアルがバースティング(Bursting)し、バースティ
ング(Bursting)後には幹細胞性(stemness)を有する;および
(k)p53遺伝子およびテロメアの調節機能を有する。
【0052】
一方、ルテリアルは、個体の疾病有無に応じて、サイズ(直径)、面積、形態、および
ナノトラッキング速度が異なるため、前記特性の1つ以上を用いて、疾病の診断や予後を
予測することができる。これは、疾病のない健常人由来のルテリアルと、疾病のあるヒト
由来のルテリアルのサイズ、形態、ナノトラッキング速度などが異なることから分かる。
【0053】
健常人由来の正常のルテリアルは、単に二重胞子(double‐spore)を形成
(fission)するだけであるが、晩成疾病患者や癌患者由来のルテリアル(突然変
異ルテリアル)は、ルテリアル同士が融合(fussion)または凝集(coagul
ation)したり爆発(Bursting)して、赤血球や癌細胞などの細胞にも付着
し、その形態およびサイズが正常のルテリアルとは異なって異常に大きくなる特徴がある
(
図8~
図10)。突然変異ルテリアルは付着性が高いため、上記のようなサイクル(c
ycle)によって融合(fusion)がさらに加速化してそのサイズが約600~8
00nm以上に大きくなり、200μm(200,000nm)以上のサイズを有するも
のもある。本発明者は、癌の種類や進行程度によって、突然変異されたルテリアルの形態
に一貫性があることを確認し、これについての内容を特許出願している(韓国特許出願第
10‐2013‐0082060号)。
【0054】
したがって、ルテリアルの形態学的特性または生化学的特性を観察することで、疾病の
診断や予後を予測することができ、その用途が無限にある。
【0055】
ルテリアルの形態は、正常形、鞭毛形、マス(Mass)形、ロッド(Rod)形、ま
たは複合形を示す。正常形とは、別の融合やバースティング(Bursting)などの
変形を起こすことなく、長径と短径との比が1:1~3:1の形態であり、円形に近い形
状を示すことができる。顕微鏡で観察時には小さい点として示される。
【0056】
鞭毛形とは、ルテリアルが変形または融合を起こして外部に鞭毛が備えられた形態であ
ることができる。本発明者らは、末期癌に進むに従って鞭毛形が観察される割合が急激に
増加し、4期癌では99.1%と、略大部分の4期癌が診断された患者で鞭毛形のルテリ
アルが観察されることを確認した(韓国特許出願第2013‐0082060号)。ルテ
リアルの形態が鞭毛形の形態と80~100%一致する場合、末期腫瘍が疑われる腫瘍マ
ーカ(Tumor Marker)で表示することができる。前記末期腫瘍が診断された
患者の生存期間は略1~4ヶ月であり、特に、鞭毛形の場合、長期生存が不可能である。
【0057】
マス形(M形)とは、ルテリアルがバースティング(Bursting)または融合を
起こしてサイズおよび形態が正常形から変形されたものであって、長径と短径の差が大き
くない不規則的な体積形態である。好ましくは、長径と短径との比が3:1~5:1であ
り、多様な形態のマス形が観察される。
【0058】
ロッド形(R形)は、ルテリアルがバースティング(Bursting)、変形、また
は融合を起こして棒(Rod)の形態を呈するものである。短径と長径との長さ差がマス
形より大きい。好ましくは、長径と短径との比が5:1~12:1であることができる。
ロッド形は、円形または楕円形の単一鎖からなるロッド1形、および単一鎖が2個以上結
合してなるロッド2形を含む。前記ロッド1形は、単一のルテリアルが棒の形態となった
ものであって、これは、バースティング(Bursting)および/または変形による
ものであることができる。前記ロッド2形は、2個以上のルテリアルが結合して棒の形態
となったものであって、これは、バースティング(Bursting)、変形、および融
合の1つ以上によるものであることができる。一方、鞭毛形は、その形状から、大きい範
疇でロッド形に含まれることができるが、鞭毛が伸びているという点で異なる点がある。
したがって、ロッド形であるかを先に判断した後、鞭毛形であるかを判断することができ
る。
【0059】
前記複合形は、ロッド形とマス形の融合形態であることができる。一体に形成された微
細物質の一部がロッド形であり、一部がマス形である形態を複合形と称えることができる
。
【0060】
前記ロッド(Rod)形は、円形または楕円形の単一鎖からなるロッド1形、および単
一鎖が2個以上結合してなるロッド2形を含む群の一つであることができる。前記複合形
は、ロッド形とマス形の融合形態であることができる。
【0061】
上記のように、疾病の発病と進行によって、生体内のルテリアルの形態が変わるため、
ルテリアルの形態学的特性を観察することで疾病の診断や予後を予測することができる。
また、前記ルテリアルの形態変化は、ルテリアルが含有している核酸の量と配列変化にも
関連するため、ルテリアルの核酸発現パターン(16S rRNA)配列を分析すること
で疾病を診断することができる。
【0062】
例えば、正常のルテリアルの16S rRNA配列と患者のルテリアルの16S rR
NA配列を比較することで、疾病(特に、癌)を診断することができる。特に、ストレプ
トファイタ(Streptophyta)遺伝子発現と真核細胞(Eukaryote)
遺伝子同時発現は、癌の診断予測マーカとして活用可能である。
【0063】
但し、患者または健常人から既に排出された体液から分離されたルテリアルは、生体外
では短い時間内に溶解されて消滅されたり、形態が変わったりする特性があるため観察自
体が難しく、異常な環境下で放置する場合には、24時間以内に正常のルテリアルも突然
変異ルテリアルに変異されて、疾病の正確な診断や治療が困難である。しかし、本発明の
培養方法によると、特定のサイズ(500nm)以上にならないようにルテリアルを培養
することができる。
【0064】
したがって、他の観点による本発明は、ルテリアルに水分を添加し、IR光線照射下、
18~30℃(好ましくは20~25℃)で培養することを特徴とするルテリアルの培養
方法に関する。
【0065】
前記培養時に添加される水分は、食塩水またはPBS溶液であることができるが、これ
に制限されない。培養前の体液由来ルテリアルは本発明の分離方法により得ることができ
、そのサイズが50~200nmのものを用いることができる。本発明の培養方法により
培養された血液由来ルテリアルの培養後のサイズは300~800nmであることができ
る。この際、顕微鏡で観察しながら、ルテリアルのサイズが500nmを超えないように
することができ、培養が終了すると、サイズ毎に分類して零下80℃に冷却して保存した
り、窒素を充填して保存または零度以上で保存することができ、保存時には保存剤を添加
することができる。
【0066】
上記のように培養されたルテリアルは、その特性が変化することなく所定期間保存が可
能であり、ルテリアルを用いた疾病の診断および予後の予測に効果的に活用されることが
できる。本発明において「ルテリアルの特性が変化することなく」とは、ルテリアルの形
態(morphology)やサイズが培地で培養する前の状態と略類似に維持されるこ
とを意味する。また、ナノトラッキング速度のようなルテリアルの運動性などの活性が、
培養する前の状態と類似の値を維持することを意味する。
【0067】
具体的に、本発明の培養方法により培養されたルテリアルは、次の目的のために用いる
ことができる。変異された突然変異ルテリアルは、融合(fussion)または凝集し
て、その形態およびサイズが正常のルテリアルとは異なって異常に大きくなったものであ
り(
図8~
図10)、分離された突然変異ルテリアルの培養時に、ルテリアルの融合また
は凝集を抑えることができる候補物質や手段を処理して、ルテリアルの融合または凝集の
抑制有無を観察することで、ルテリアルの変異を抑制または予防することができる物質を
スクリーニングすることができる。
【0068】
また、分離されたルテリアルの培養時、フィッション(fission)を促進する候
補物質や手段を処理することで、突然変異ルテリアルのフィッション(fission)
を促進する物質をスクリーニングすることができる。突然変異ルテリアルは融合または凝
集する生態様式を有するが(
図8、
図9および
図11)、フィッション(fission
)の生態様式に転換されたり、突然変異されたルテリアルがフィッション(fissio
n)されたりして正常のルテリアルのサイズを有するように、フィッション(fissi
on)を促進する候補物質を処理することで、ルテリアルが変異されることを抑制するか
、変異されたルテリアルが正常のルテリアルの生態様式を有するように転換する物質、窮
極的には、変異されたルテリアルにより誘発され得る疾病の予防物質をスクリーニングす
ることができる。
【0069】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。これら実施例は、本発明を例示す
るためのものにすぎず、本発明の範囲がこれら実施例によって制限されると解釈されない
ことは、当業界において通常の知識を有する者にとって自明である。
【0070】
実施例
実施例1:血液由来ルテリアルの分離
非小細胞性肺癌末期患者から血液を50cc採取して直径0.8μm以上の空隙を有す
るフィルタに通過させ、濾過されていない物質は分離した。濾過された血液を1200~
5000rpmで5~10分間繰り返して遠心分離することで、エキソソーム(exos
ome)のような一般微小胞を除去して上清を得た。前記上清に可視光線を照射して、運
動性を有して集まるルテリアル粒子をピペットを用いて分離した。ルテリアルは自家蛍光
および運動性の特性を有するため、上記のように可視光線を照射するとルテリアル粒子を
確認することができる。この際、動くルテリアル粒子を暗視野顕微鏡または共焦点顕微鏡
で確認しながらピペットを用いて分離した。分離されたルテリアルを直径50nmの空隙
を有するフィルタに通過させて、濾過されていない部分のみをPBSで洗浄することでル
テリアルを得た。前記過程により長径50~800nmのルテリアルが得られ、これは暗
視野顕微鏡または共焦点顕微鏡により観察確認が可能であった。前記得られたルテリアル
は、サイズに応じて、50~200nm(発生期)/200~400nm(成熟期)/4
00~600nm(分裂期)/600~800nm(過分裂期)に区分した。類似の方法
により、
図21のようなルテリアルのサイズ毎のライブラリを構築し、ルテリアルのサイ
ズ毎のmorphologyを
図2に示した。
【0071】
実施例2:精液由来ルテリアルの分離
精液を2000~4000rpmで5~30分間1次遠心分離した後、上清を2~5μ
mのフィルタで濾過し、濾過された溶液を3000~7000rpmで5~20分間2次
遠心分離した後、0.5~2μmのフィルタで濾過した。ルテリアルは自家蛍光および運
動性の特性を有するため、濾過した溶液に可視光線を照射するとルテリアル粒子を確認す
ることができる。この際、動くルテリアル粒子を暗視野顕微鏡または共焦点顕微鏡で確認
しながらピペットを用いて分離した。分離されたルテリアルを直径50nmの空隙を有す
るフィルタに通過させ、濾過されていない部分のみをPBSで洗浄することでルテリアル
を得た。これは暗視野顕微鏡または共焦点顕微鏡により観察確認が可能であった。
【0072】
実施例3:ルテリアルの特性
(1)構造
実施例1で得られたルテリアルのうち約50~400nmのサイズを有するルテリアル
を、共焦点レーザー走査顕微鏡(Confocal Laser Scanning M
icroscope、Zeiss)、透過型電子顕微鏡(Transmission E
lectron Microscope)、走査型電子顕微鏡(Scanning El
ectron Microscope)、原子間力顕微鏡(Atomic Force
Microscope)、および共焦点スキャナ(Leica TCS‐SP8)で撮影
した結果、ルテリアルもミトコンドリアと類似に二重膜を有する膜構造であって、内部ク
リステ(cristae)構造が完成されていない状態の構造を有しており、ミトコンド
リアと同一のレーザー波長範囲で観察されることを確認した。また、その形態は円形乃至
楕円形であることを観察することができた(
図1、図(e)、
図2(h)、
図13および
図14)。
【0073】
(2)染色特性
実施例1で得られたルテリアルのうち約50~800nmのサイズを有するルテリアル
を、ミトトラッカー(Mito‐tracker)、ローダミン123(Rhodami
ne123)、アクリジンオレンジ(Acridine Orange)、およびヤーヌ
スグリーンB(Janus green B)で染色した後、その発色有無を観察した。
その結果、植物由来ルテリアルも、ミトトラッカー、ローダミン123、アクリジンオレ
ンジ、およびヤーヌスグリーンBにより発色されることを確認した(
図2(a)、
図2(
b)、
図2(f)、
図2(j)、
図3~
図6)。
【0074】
(3)自家蛍光
実施例1で得られたルテリアルのうち約50~800nmのサイズを有するルテリアル
が光反応を示すことを蛍光写真から確認した(
図5)。
【0075】
(4)運動性
実施例1で得られたルテリアルの運動性を、米国3i社のナノトラッキングにより測定
した。具体的に、ルテリアルを明視野顕微鏡で観察した後、ルテリアルの中心にトラッキ
ングを設定してナノトラッキングを作動すると、ルテリアルの移動にしたがってリアルタ
イム移動軌跡が表示され、その秒当りの速度を計算した(
図7)。
【0076】
その結果、本実施例によるルテリアルのナノトラッキング速度は、約13~25μm/
secと測定された。
【0077】
(5)ルテリアルにおけるRNAおよびDNAの含有有無の分析
実施例1で分離された200~400nmのルテリアルを原子顕微鏡で撮影した結果、
図2(h)、
図15、
図16および
図17に示されたように、ルテリアルにRNAやDN
Aのような核酸が含有されていると推正することができる。
【0078】
実施例1で分離された200~400nmのルテリアルから全RNAとDNAを分離す
るために、QIAGENキット(RNeasy Micro Kit:Cat 7400
4)を用いて分離した後、Experion RNA(DNA) StdSens(Bi
o‐Rad社)チップを用いて定量した。
【0079】
ルテリアルを遠心分離(8000g、1時間30分)して回収した後、キット内の分解
緩衝液RLT plus(Guanidine isothiocycanate、de
tergents)50μlにβメルカプトエタノール3.5μlを添加し、20ゲージ
の針付きの注射器を用いて5~10回通過させてルテリアルを溶解させた。サンプル分解
緩衝液をAllPrep DNA spinカラムに移した後、遠心分離(≧8000g
、15秒)して、カラムに詰っているDNAとカラムを通過したRNAが含まれたバッフ
ァからそれぞれ分離した。
【0080】
先ず、カラムを通過したバッファに同一体積の350μlの70%エタノールを入れて
均一に混合した後、700μlの混合液をRNease MinElute spinカ
ラムに移して遠心分離(≧8000g、15秒)し、カラムを通過したバッファは除去し
た。それぞれの350μlのRW1,500μlのRPEバッファと500μlの80%
エタノールを用いて、カラム洗浄を段階的に行った。上記で用いられた全ての遠心分離(
≧8000g、15秒)は同一条件で行った。RNAを得るために、14μlのRNea
sy‐free溶液をカラムに入れた後、遠心分離(≧8000g、60秒)してルテリ
アルRNAを分離した。
【0081】
ゲノムDNAの分離のために、FastDNA SPIN Kit(MP Biome
dical)を用いた。チューブに分離されたルテリアルを入れた後、978μlのリン
酸ナトリウム(sodium phosphate)バッファ、122μlのMTバッフ
ァを添加した。40秒間均質化させてから、遠心分離(14,000g、10分)して上
清を得た後、250μlのPPS(Protein Precipitation So
lution)を入れて10分間混合した。遠心分離(14000g、5分)した後、1
5mlのチューブに上清を移す過程を2回繰り返し、DNA結合(DNA bindin
g)のためにロータ(rotor)に2分間載せた後、シリカマトリックス台に3分間入
れて置いた。上清を略600μl程度注意して回収してSPIN Filterに入れ、
遠心分離(14000g、1分)した後、上清を捨て、ペレット(pellet)にSE
WS‐Mを500μl入れて懸濁させた(suspending)。1分間遠心分離した
後、上清を捨て、如何なるバッファも残らないように遠心分離を繰り返した。50μlの
DES(DNase/Pyrogen‐Free Water)を入れて遠心分離(14
000g、1分)した後、ゲノムDNAを得た。
【0082】
Experion RNA(DNA)StdSens(Bio‐Rad社)チップを用
いて定量した結果、
図16および
図17に示されたように、ルテリアルにそれぞれRNA
およびDNAが含有されていることを確認することができた。
【0083】
(6)16S rRNA配列分析
16S rRNA(ribosomal Ribonucleic acid)は、様
々なタンパク質と相互作用してリボソーム(Ribosome)を構成するRNAであっ
て、塩基配列変化率が殆どのゲノムにおける他の遺伝子の塩基配列より著しく小さいため
、16S rRNA塩基配列類似度の程度が生物間の系統学的距離を反映すると認識され
ている。
【0084】
[1]血液由来ルテリアル
実施例1で得られた血液由来ルテリアルからFastDNA SPIN Kit(MP
Biomedicals、Cat 6560‐200)を用いてgDNAを抽出した後
、PCR‐premix(iNtRON Biotechnology、Korea)配
列番号1~23のブライマー(primer)を用いてルテリアルの16S rRNAを
増幅させた。
【0085】
増幅されたPCR産物は、BigDye Terminator Cycle Seq
uencing Ready Reaction kit(applied Biosy
stems、USA)とautomated DNA analyzer system
(PRISM 3730XL DNA analyzer、Applied Biosy
stems)を用いて塩基配列を分析した。増幅されたPCR産物は総1461個の断片
であって、このうち1407個の断片はプロテオバクテリア(proteobacter
ia)由来遺伝子と相同性を示し、20個の断片はアシドバクテリア(Acidobac
teria)由来遺伝子と相同性を示し、11個の断片はアクチノバクテリア(Acti
nobacteria)由来遺伝子と相同性を示した(表4)。
【0086】
分析した塩基配列の断片をSeqMan software(DNASTAR)で組み
合わせて16S rRNAの塩基配列を得た。
【0087】
図24は、健常人(血液のpH:7.2~7.4)の血液由来ルテリアルの16S r
RNAを塩基配列分析して、相同性を示す類似バクテリアの構成を示したものであって、
ルテリアルのサイズ毎に分析した((a):100nm以下、(b):100~200n
m、(c)200~400nm、(d)400~800nm)。サイズ毎に大きい差はな
く、何れもプロテオバクテリア(Proteobacteria)、ファーミキューテス
(Firmicutes)、およびバクテロイデス(Bacteroidetes)由来
遺伝子と相同性を示した。
【0088】
図25(c)は、疲労・疾病状態(血液のpH:7.0以下)の血液由来のルテリアル
(サイズ:200~400nm)の16S rRNAを塩基配列分析して、相同性を示す
類似バクテリアの構成を示したものである。定常状態とは異なって、ストレプトファイタ
(Streptophyta)由来遺伝子と相同性を示す遺伝子がさらに発現された。
【0089】
図26(a)、(b)および(c)は、血液由来ルテリアルの16S rRNA塩基配
列に基づいた系統発生図を示したものである。
【0090】
【0091】
血液由来ルテリアルの16S rRNA断片は、β‐プロテオバクテリア、γ‐プロテ
オバクテリア、バクテロイデス、ファーミキューテス、およびストレプトファイタなどの
様々なバクテリアと相同性を示すことが確認された。
【0092】
一般に、微生物分類体系上、gDNA関連性(relatedness)が70%未満
であると、互いに独立した菌株として認められる。また、16S rRNA塩基配列の相
同性が97%未満であると、gDNA関連性が70%未満であるということが、統計学的
な分析により証明された。したがって、ルテリアルの16S rRNA断片と97.0%
以上の相同性を示す配列を有する細胞を分析した結果、表5~表7に示したように、血液
由来ルテリアルはγ‐プロテオバクテリアと100%の相同性を示し、ファーミキューテ
スとは97.53%、バクテロイデスとは97%以上の相同性を示した。
【0093】
一方、異常状態である酸性条件のルテリアルは、表8に示したように、ストレプトファ
イタ(Streptophyta)と99%以上の相同性を示した。
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
[2]精液由来ルテリアル
実施例2で得られた精液由来ルテリアルに対して、上記のような方法によりgDNA抽
出、PCR増幅、および塩基配列分析を行った。
図25は、疲労・疾病状態(精液のpH
:7.0以下)の精液由来ルテリアルの16S rRNAを塩基配列分析して、相同性を
示す類似バクテリアの構成を示したものであって、ルテリアルのサイズ毎に分析した((
a):100nm以下、(b):100~200nm、(d)400~800nm)。
【0099】
定常状態の精液由来ルテリアルは、血液由来ルテリアルと同様に、プロテオバクテリア
(Proteobacteria)、ファーミキューテス(Firmicutes)、お
よびバクテロイデス(Bacteroidetes)由来遺伝子と相同性を示し、特異な
ことに、脊索動物(Chordata)由来遺伝子と相同性を示した。
【0100】
尚、異常状態である酸性条件では、ストレプトファイタ(Streptophyta)
由来遺伝子と相同性を有する遺伝子が発現された。
【0101】
(7)ATP含量測定
対照群、ルテリアル、ルテリアル(SSH 12h)、およびルテリアル(SSF 1
2h)で構成された4種の培養液10mLをそれぞれチューブに入れ、グルコース(Gl
ucose)(100mg/mL)およびADP(1mM)基質を入れて37℃の水浴で
培養した。培養開始後、30分間隔で試料100μlを採取してチューブに入れ、900
μlの蒸留水を入れて10倍希釈した後、10μlの試料を新しいチューブに移して、A
TP kitに含まれているルシフェラーゼ試薬を100μl添加し、直ちにルミノメー
タで5回繰り返して測定した。
【0102】
その結果、
図18に示されたように、ルテリアルが添加された群では、ルテリアルが添
加されていない群に比べてATP濃度が増加していた。この結果から、ルテリアルがAT
P生産能力を有するということを確認することができた。SSHおよびSSF添加による
差については、SSF添加群がSSH添加群に比べてATP濃度が高かった(
図18)。
【0103】
実施例4:ルテリアルの培養
(1)実施例1で得られたルテリアルのうちサイズが約50~200nmであるルテリ
アルにPBSを添加し、IR光線を照射した後、18~30℃で約3時間培養した。IR
光線を照射した直後から約1時間間隔でルテリアルのサイズを顕微鏡で確認した。約1~
6時間後、培養前のサイズが約200nmであったルテリアルが、約500nmに成長し
たことを確認することができた。これにより、血液由来ルテリアルに水分を添加し、IR
光線照射下で18~30℃で培養する場合、そのサイズを500nm程度まで成長させる
ことができた。勿論、追加培養すると数百μmまで培養されることが確認され、この状態
で追加培養するとバースティング(Bursting)されることも確認された(
図22
)。
【0104】
(2)実施例1で得られたルテリアルのうちサイズが約400~800nmであるルテ
リアルにPBSを添加し、IR光線を照射した後、18~30℃で約3時間培養した。I
R光線を照射した直後から約1時間間隔でルテリアルのサイズと状態を顕微鏡で確認した
。約1~6時間後、培養前のサイズが約400~800nmであったルテリアルが成長せ
ず、フィッション(fission)されることを確認した。
【0105】
尚、800nm以上の変異ルテリアルを追加培養する場合、癌患者の血液で示された変
異ルテリアルの形態に変わることが観察された(
図23)。
【0106】
実施例5:ルテリアルの抗癌効果
卵巣癌細胞株SKOV3およびA2780の2種の増殖抑制効果を測定するために、黄
色テトラゾリウム MTT(3‐(4,5‐ジメチルチアゾリル‐2)‐2,5‐ジフェ
ニルテトラゾリウムブロミド)分析法を実施した。MTT分析法は、生きている細胞の生
育を測定する方法であって、生きている細胞のミトコンドリア中の脱水素酵素が黄色水溶
性物質であるMTTにより紫色ホルマザン(formazan)を生成する原理を利用す
る。紫色ホルマザン(formazan)の生産量は、代謝的活性を有する生きている細
胞数と略比例すると知られており、細胞の生育と分化を測定するにおいて非常に効果的に
用いられることができる。
【0107】
培養されたそれぞれの癌細胞を96ウェルプレートに5×104個/mlになるように
ウェル当たりに100μlずつ添加し、37℃、炭素5%および酸素95%が供給される
湿潤インキュベータで24時間培養した後、サイズ100~800nmのルテリアルを濃
度毎に処理した。48時間培養した後、それぞれのウェルにリン酸塩緩衝溶液(phos
phate buffered saline、PBS)に溶解したMTT(5mg/m
l)溶液を15μlずつ添加して、さらに4時間培養した。ホルマザン(formaza
n)の形成を確認した後、培地を完全に除去し、ウェルの底に形成されたホルマザンを溶
解するために100μlのジメチルスルホキシド(DMSO)を添加した。その後、マイ
クロプレートリーダ(GEMINI、Stratec biomedical)を用いて
560nmで吸光度を測定し、対照群細胞を100%としたときの相対的な細胞増殖抑制
率を算出した。
【0108】
その結果、SKOV3およびA2780細胞株のルテリアルのIC50はそれぞれ30
μg/mlおよび60μg/mlであり、市販中の抗癌剤cisplatinのIC50
は100μMであった(
図27)。ルテリアルは、卵巣癌細胞株2種に対して陽性対照薬
物群よりも強い細胞毒性を示し、卵巣正常細胞に対しては陽性対照薬物群と類似の細胞毒
性を示した。
【0109】
以上、本発明の内容を詳細に記述したが、当業界において通常の知識を有する者におい
て、このような具体的技術は好ましい実施形態にすぎず、これにより本発明の範囲が制限
されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の
特許請求の範囲とそれらの等価物により定義されるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明によると、患者または健常人の体液中に存在する微細物質であるルテリアルを効
果的に分離することができ、前記分離されたルテリアルを所定のサイズに成長するように
培養することができるため、疾病の診断および治療に有用である。特に、ルテリアルは癌
細胞株に対して強い抗癌効果を示すため抗癌剤として有用である。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-02-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のステップを含むミトコンドリア類似ナノサイズ粒子の濃縮方法:
(a)血液から血小板および血小板以上のサイズを有する血液由来物質を除去し、血小板および血液由来物質を分離させた血液を0.8~1.2μmの空隙を有するフィルタに通過させるステップ;
(b)前記フィルタされた溶液を遠心分離し、ペレット中に集められたエキソソームを含む一般微小胞を除去して、上清を提供し、ミトコンドリア類似ナノサイズ粒子を含む上清を提供するステップ;
(c)前記(a)~(b)を実行することにより得られた液体から、粒子が下記の性質の一つ以上を有するか否かを評価することで、ミトコンドリア類似ナノサイズ粒子を同定するステップ:
(i)免疫蛍光試験で、ヤーヌスグリーンB(Janus green B)、アクリジンオレンジ(Acridine Orange)、DAPIまたはローダミン123(Rhodamine123)に陽性の発色反応を示す;
(ii)健康な状態では、β‐プロテオバクテリア由来遺伝子とγ‐プロテオバクテリア由来遺伝子を発現し、800nm未満のサイズを有する;
(iii)疾病状態では、β‐プロテオバクテリア由来遺伝子とγ‐プロテオバクテリア由来遺伝子だけでなく、真核細胞であるストレプトファイタ(Streptophyta)遺伝子を発現し、800nmを超えるサイズを有する;
(iv)正常条件でATP生成を示す;
(v)ミトコンドリアおよびエキソソームとは全く異なる細胞または細胞類似体である;
(vi)健常状態では円形乃至楕円形であり、疾病状態では形態が均一ではない;
(vii)膜構造を有している;
(viii)細胞内または外に存在する;
(ix)運動性を有し、フュージョン(fusion)および/またはフィッション(fission)の生態様式を示す;
(x)特定条件で変異ミトコンドリア類似ナノサイズ粒子はバースティング(Bursting)し、バースティング(Bursting)後には幹細胞性(stemness)を有する;
(xi)p53遺伝子およびテロメア(telomere)の調節機能を有する。
【請求項2】
前記血液は哺乳動物由来であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記血液はヒト由来であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
200nm、400nm、600nm、800nm、および1000nmのフィルタを順に用いて、各々50~200nm、200~400nm、400~600nm、600~800nm及び800~1000nmのサイズのミトコンドリア類似ナノサイズ粒子に分類することをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0110
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0110】
本発明によると、患者または健常人の体液中に存在する微細物質であるルテリアルを効果的に分離することができ、前記分離されたルテリアルを所定のサイズに成長するように培養することができるため、疾病の診断および治療に有用である。特に、ルテリアルは癌細胞株に対して強い抗癌効果を示すため抗癌剤として有用である。
本発明は一態様において、下記を提供する。
[項目1]
次のステップを含むルテリアルの分離方法:
(a)血液から血小板および血小板以上のサイズを有する血液由来物質を分離する第1の分離ステップと、
(b)前記血小板および血小板以上のサイズを有する血液由来物質を分離させた血液を遠心分離する第2の分離ステップと、
(c)前記遠心分離により得られた上清からルテリアルを分離する第3の分離ステップと、
(d)前記分離されたルテリアルを洗浄するステップ。
[項目2]
前記血液は哺乳動物由来であることを特徴とする、項目1に記載のルテリアルの分離方法。
[項目3]
前記血液はヒト由来であることを特徴とする、項目2に記載のルテリアルの分離方法。
[項目4]
前記第1の分離ステップは0.8~1.2μmの空隙を有するフィルタに通過させ、濾過されていない物質は分離するステップをさらに含むことを特徴とする、項目1に記載のルテリアルの分離方法。
[項目5]
200nm、400nm、600nm、800nm、および1000nmのフィルタを順に用いて、各々50~200nm、200~400nm、400~600nm、600~800nm及び800~1000nmのサイズのルテリアルに分類することをさらに含むことを特徴とする、項目4に記載のルテリアルの分離方法。
[項目6]
前記第2の分離ステップは1200~5000rpmで5~10分間遠心分離を繰り返すことにより行うことを特徴とする、項目1に記載のルテリアルの分離方法。
[項目7]
前記第2の分離ステップにおいてエキソソーム(exosome)が除去されることを特徴とする項目1に記載のルテリアルの分離方法。
[項目8]
前記第3の分離ステップは遠心分離により得られた上清に可視光線を照射すること、及び可視光線が照射された位置に集まる運動性を有するルテリアル粒子をピペットを用いて分離して行うことを特徴とする項目1に記載のルテリアルの分離方法。
[項目9]
前記洗浄するステップは前記第3の分離ステップから得られたルテリアルを直径50nmの空隙を有するフィルタに通過させること、濾過されていない部分のみを洗浄すること、それによってルテリアルを得ることにより行われることを特徴とする項目1に記載のルテリアルの分離方法。
[項目10]
次の特性の一つ以上を有する体液由来ルテリアル:
(a)免疫蛍光試験で、ヤーヌスグリーンB(Janus green B)、アクリジンオレンジ(Acridine Orange)、およびローダミン123(Rhodamine123)に陽性の発色反応を示す;
(b)最適状態(pH7.2~7.4)において、β‐プロテオバクテリアとγ‐プロテオバクテリア由来遺伝子の発現特性を示し、30~800nmのサイズを有する;
(c)酸性化状態では、β‐プロテオバクテリアとγ‐プロテオバクテリア由来遺伝子だけでなく、真核細胞であるストレプトファイタ(Streptophyta)遺伝子を発現し、400nm~2000nmまたはそれ以上までサイズが大きくなる;
(d)正常条件でATP生成に関与する;
(e)ミトコンドリアおよびエキソソームとは全く異なる細胞または細胞類似構造体である;
(f)定常状態では円形または楕円形であり、患者由来の場合は、定常状態に比べてサイズ(長径800nm以上)が大きく、形態が均一ではない変異ルテリアルが発生する;
(g)二重膜構造を有しており、付着性がある;
(h)細胞内または外の両方に存在可能である;
(i)運動性を有し、融合(fusion)および/または分裂(fission)の生態様式を示す;
(j)特定条件で変異ルテリアルはバースティング(Bursting)し、バースティング(Bursting)後には幹細胞性(stemness)を有する;
(k)p53遺伝子およびテロメアの調節機能を有する。
[項目11]
前記体液は哺乳動物由来の血液、精液、腸液、唾液、または細胞液であることを特徴とする項目10に記載のルテリアル。
[項目12]
項目10に記載のルテリアルに水分を添加し、IR光線照射下、18~30℃で培養することを含むルテリアルの培養方法。
[項目13]
前記培養前及び後において、ルテリアルのサイズは、各々50~200nm及び300~800nmであることを特徴とする項目12に記載のルテリアルの培養方法。
[項目14]
前記水分は、食塩水またはPBS溶液であることを特徴とする項目13に記載のルテリアルの培養方法。
[項目15]
次のステップを含むルテリアルの分離方法:
(a)体液を遠心分離して上清を得て、この上清を2~5μmの孔のサイズのフィルタで濾過するステップ;と、
(b)前記濾過された溶液を2次遠心分離して上清を得て、この上清を0.5~2μmの孔のサイズのフィルタで濾過するステップ。
[項目16]
(c)前記(b)ステップにおいて濾過された溶液に可視光線を照射して、そして可視光線が照射された位置に集まる運動性を有するルテリアル粒子をピペットを用いて分離するステップをさらに含むことを特徴とする項目15に記載のルテリアルの分離方法。
[項目17]
前記体液は哺乳動物由来の血液、精液、腸液、唾液、または細胞液であることを特徴とする項目15に記載のルテリアルの分離方法。
[項目18]
前記1次遠心分離は2000~4000rpmで5~30分行うことを特徴とする項目15に記載のルテリアルの分離方法。
[項目19]
前記2次遠心分離は3000~7000rpmで5~20分行うことを特徴とする項目15に記載のルテリアルの分離方法。
[項目20]
項目10に記載のルテリアルを有効成分として含有する抗癌組成物。
【外国語明細書】