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特開2023-5587雑味が低減された低エキスアルコール飲料およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005587
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】雑味が低減された低エキスアルコール飲料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/04 20190101AFI20230111BHJP
   C12G 3/06 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
C12G3/04
C12G3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107597
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】307027577
【氏名又は名称】麒麟麦酒株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】小川 かおり
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真希
(72)【発明者】
【氏名】増崎 瑠里子
【テーマコード(参考)】
4B115
【Fターム(参考)】
4B115MA03
(57)【要約】
【課題】低エキスでありながら雑味が低減された、酸味料を含有するアルコール飲料の提供。
【解決手段】エキス分の含有量が0.5w/v%以下であるアルコール飲料であって、フィチン酸、乳酸およびリン酸からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含んでなる、アルコール飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エキス分の含有量が0.5w/v%以下であるアルコール飲料であって、フィチン酸、乳酸およびリン酸からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含んでなる、アルコール飲料。
【請求項2】
ナトリウムをさらに含んでなる、請求項1に記載のアルコール飲料。
【請求項3】
ナトリウムの濃度が、ナトリウムとして6~100mg/100mLである、請求項1または2に記載のアルコール飲料。
【請求項4】
フィチン酸の濃度をA(w/v%)、乳酸の濃度をB(w/v%)、リン酸の濃度をC(w/v%)としたときに、A+B+Cが0.001~0.5である、請求項1~3のいずれか一項に記載のアルコール飲料。
【請求項5】
アルコール源として蒸留酒を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のアルコール飲料。
【請求項6】
チューハイ飲料である、請求項1~5のいずれか一項に記載のアルコール飲料。
【請求項7】
エキス分の含有量が0.5w/v%以下であるアルコール飲料を製造する方法であって、フィチン酸、乳酸およびリン酸からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有させる工程を含んでなる、方法。
【請求項8】
エキス分の含有量が0.5w/v%以下であるアルコール飲料における雑味を低減する方法であって、該アルコール飲料にフィチン酸、乳酸およびリン酸からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有させる工程を含んでなる、方法。
【請求項9】
ナトリウムを含有させる工程をさらに含んでなる、請求項7または8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雑味が低減された低エキスアルコール飲料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酒類市場は数多くの商品が毎年上市されており、中でも、いわゆるRTD(レディー・トゥー・ドリンク)では様々なフレーバーが開発されており、そのほとんどが果実(柑橘など)をベースとしたものである。一方、近年、いわゆる「ドライ系チューハイ」が開発されており、果実ベースの味ではないが、食事にあいやすく、キレが良くて飲みやすい新しい香味設計の商品が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、飲みごたえや味のキレに着目した酒類が開示されており、その酒類はリンゴ果実酒であり、エキス分は0.9w/v%以上である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-104349号公報
【発明の概要】
【0005】
発明者らは、爽快なキレをもち、のどごしよく飲める新たなチューハイを開発するにあたり、のどごしを改善するためにエキス分を最小限にした香味設計に思い至った。しかし、のどごしを維持しつつ、チューハイ特有のキレを表現するために酸味料を添加すると、エキス分を多く含む通常のチューハイでは問題にならなかった雑味が際立つという問題を見出した。
【0006】
今般、本発明者らは、エキス分の含有量が少ないアルコール飲料に、酸味料としても働くフィチン酸、乳酸またはリン酸を含有させることにより、雑味が低減されることを見出した。本発明は、この知見に基づくものである。
【0007】
従って、本発明は、低エキスでありながら雑味が低減された、酸味料を含有するアルコール飲料およびその製造方法を提供する。
【0008】
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)エキス分の含有量が0.5w/v%以下であるアルコール飲料であって、フィチン酸、乳酸およびリン酸からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含んでなる、アルコール飲料。
(2)ナトリウムをさらに含んでなる、前記(1)に記載のアルコール飲料。
(3)ナトリウムの濃度が、ナトリウムとして6~100mg/100mLである、前記(1)または(2)に記載のアルコール飲料。
(4)フィチン酸の濃度をA(w/v%)、乳酸の濃度をB(w/v%)、リン酸の濃度をC(w/v%)としたときに、A+B+Cが0.001~0.5である、前記(1)~(3)のいずれかに記載のアルコール飲料。
(5)アルコール源として蒸留酒を含有する、前記(1)~(4)のいずれかに記載のアルコール飲料。
(6)チューハイ飲料である、前記(1)~(5)のいずれかに記載のアルコール飲料。
(7)エキス分の含有量が0.5w/v%以下であるアルコール飲料を製造する方法であって、フィチン酸、乳酸およびリン酸からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有させる工程を含んでなる、方法。
(8)エキス分の含有量が0.5w/v%以下であるアルコール飲料における雑味を低減する方法であって、該アルコール飲料にフィチン酸、乳酸およびリン酸からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有させる工程を含んでなる、方法。
(9)ナトリウムを含有させる工程をさらに含んでなる、前記(7)または(8)に記載の方法。
【0009】
本発明によれば、低エキスのアルコール飲料において、雑味を低減することができる。また、本発明によれば、低エキスのアルコール飲料において、味の厚みを増強することも可能である。さらに、本発明によれば、低エキスのアルコール飲料において、低エキスでありながら雑味が低減され、のどごしとキレを有するアルコール飲料を提供することも可能である。
【発明の具体的説明】
【0010】
本発明において「アルコール飲料」とは、酒税法上アルコール飲料とみなされる、アルコール度数1度以上の飲料を意味する。
【0011】
本発明において「雑味」とは、その飲料が喉を通る際に感じるイガイガした感覚を意味する。本発明において「味の厚み」とは、その飲料を飲用したときに感じるボディ感または飲みごたえを意味する。本発明において「キレ」とは、その飲料を飲用したときに口中で感じる爽快な感覚を意味する。本発明において「のどごし」とは、その飲料を飲み込んだときに喉で感じる感覚であり、飲み込んだ後に余計な後味を感じることなく飲める状態を良しとする評価項目である。
【0012】
本発明のアルコール飲料は、フィチン酸、乳酸およびリン酸からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。このような飲料は、飲料中の前記成分の濃度を調整することにより製造することができる。前記成分の濃度調整は、前記成分を添加することにより行ってもよいし、あるいは、前記成分を含有する原料を配合すること、またはその配合量を増減させることによって行ってもよい。
【0013】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明のアルコール飲料は、フィチン酸および/または乳酸を含有するものとされ、より好ましくはフィチン酸を含有するものとされる。
【0014】
本発明のアルコール飲料中の前記成分の濃度は、そのアルコール飲料が酸性になるように調整すればよく、特に制限されるものではないが、例えばpH4.6未満、より好ましくはpH4.2未満、さらに好ましくはpH4.0未満となるように調整することができる。例えば、フィチン酸の濃度をA(w/v%)、乳酸の濃度をB(w/v%)、リン酸の濃度をC(w/v%)としたときに、A+B+Cが0.001~0.5、好ましくは0.001~0.3、より好ましくは0.005~0.3、さらに好ましくは0.01~0.2とすることができる。
【0015】
本発明の一つの実施態様によれば、本発明のアルコール飲料は、フィチン酸を0.001~0.5w/v%、好ましくは0.001~0.3w/v%、より好ましくは0.005~0.3w/v%、さらに好ましくは0.01~0.2w/v%の濃度で含有するものとされる。
【0016】
本発明の他の一つの実施態様によれば、本発明のアルコール飲料は、乳酸を0.001~0.5w/v%、好ましくは0.001~0.3w/v%、より好ましくは0.005~0.3w/v%、さらに好ましくは0.01~0.2w/v%の濃度で含有するものとされる。
【0017】
本発明の他の一つの実施態様によれば、本発明のアルコール飲料は、リン酸を0.001~0.5w/v%、好ましくは0.001~0.3w/v%、より好ましくは0.005~0.3w/v%、さらに好ましくは0.01~0.2w/v%の濃度で含有するものとされる。
【0018】
本発明のアルコール飲料中のフィチン酸の濃度は、イオンクロマトグラフィーによって測定することができる。本発明のアルコール飲料中のクエン酸、乳酸およびリン酸の濃度は、キャピラリー電気泳動法によって測定することができる。その際に、より正確な濃度測定のためには、既知の濃度を有する幾つかの対照サンプルの測定値に基づいて作成した検量線を用いることが望ましい。
【0019】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明のアルコール飲料はナトリウムを含有する。このような飲料は、飲料中のナトリウムの濃度を調整することにより製造することができる。ナトリウムの濃度調整は、ナトリウムを添加することにより行ってもよいし、あるいは、ナトリウムを含有する原料を配合すること、またはその配合量を増減させることによって行ってもよい。
【0020】
本発明のアルコール飲料中のナトリウムは、ナトリウム、ナトリウム塩、ナトリウムイオン等のいずれの形態であってもよい。本発明のアルコール飲料中のナトリウムの濃度は特に制限されるものではないが、ナトリウムとして(ナトリウムの形態の重量に換算して)、好ましくは6~100mg/100mLとされ、より好ましくは6~50mg/100mLとされ、さらに好ましくは10~30mg/100mLとされる。飲料中のナトリウムの濃度は、当技術分野において公知の方法、例えば、ICP発光分光分析装置(Inductivity coupled plasma optical emission spectrometer; ICP-OES)を用いたナトリウム分析により測定することができる。その際に、より正確な濃度測定のためには、既知の濃度を有する幾つかの対照サンプルの測定値に基づいて作成した検量線を用いることが望ましい。
【0021】
本発明のアルコール飲料の製造に用いられるナトリウムとしては、ナトリウム、ナトリウム塩、ナトリウムイオン等の様々な形態の物質、およびこれらを含有する原材料など、いかなる形態の材料を用いてもよい。前記ナトリウム塩としては、特に制限されるものではないが、例えば、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム(例えば、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム)、酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、および酢酸ナトリウム等を挙げることができ、好ましくは塩化ナトリウムおよび/またはクエン酸ナトリウムを用いることができる。
【0022】
本発明のアルコール飲料は、エキス分の含有量が少ないか、またはエキス分を含有しないアルコール飲料である。ここで、「エキス分」とは、日本国酒税法で定義されている不揮発性成分であり、温度15℃のときにおいて、原容量百立方センチメートル中に含有する不揮発性成分のグラム数をいうと定義される。飲料中のエキス分の含有量は、日本国国税庁所定分析法を用いて測定することができる。本明細書では、エキス分の含有量は、所定容量のアルコール飲料中の重量の百分率(単位:w/v%)として示す。
【0023】
本発明のアルコール飲料におけるエキス分の含有量は、0.5w/v%以下、好ましくは0.4w/v%以下、より好ましくは0.3w/v%以下、さらに好ましくは0.2w/v%以下とすることができる。エキス分の含有量は、アルコール源として蒸留酒を使用することや、果汁や糖などの固形分の多い原料の使用量を減らすことなどによって、低く抑えることができる。ただし、エキス分が上記の含有量以下となる限りにおいて、エキス分を与える原料、例えば、果汁、食物繊維、香料、植物エキス、動物エキス、酸味料、色素、糖、甘味料などの原材料・食品添加物を使用することは可能である。
【0024】
本明細書では、酸味料としてクエン酸を単独で配合した試飲サンプルでは雑味が強くなり、このクエン酸の一部または全部をフィチン酸、乳酸またはリン酸に置き換えた試飲サンプルでは雑味が低減されることが実証されている。従って、低エキスのアルコール飲料においてクエン酸は雑味を与える酸味料であると考えられ、本発明のアルコール飲料においてもその含有量は低い方が望ましい。本発明の好ましい実施態様によれば、本発明のアルコール飲料におけるクエン酸の含有量は0.15w/v%未満とされる。
【0025】
本発明のアルコール飲料のアルコール濃度は特に制限されるものではないが、好ましくは1~20v/v%、より好ましくは3~15v/v%、さらに好ましくは6~12v/v%とされる。アルコール濃度の調整は、食品としての安全性が確認されたエタノール含有材料の添加によって行うことができる。エタノール含有材料としては、蒸留酒、醸造酒、原料用アルコール等を用いることができるが、好ましくは蒸留酒が用いられる。好ましい蒸留酒の例としては、ウオッカ、スピリッツ、ウイスキー、焼酎等が挙げられる。
【0026】
本発明の一つの実施態様によれば、本発明のアルコール飲料は、柑橘抽出物を含有するものとされる。このような柑橘抽出物としては、例えば、特開2019-115264号公報に記載の香味改善組成物が挙げられる。さらに、本発明のアルコール飲料は、穀物発酵エキスを含有していてもよい。
【0027】
本発明のアルコール飲料は、いかなる種類のアルコール飲料であってもよく、例えば、柑橘風味アルコール飲料、ソフトフルーツ(柑橘以外の果実)風味アルコール飲料、ドライタイプ(プレーンタイプ)のアルコール飲料等であってよい。ここで、ドライタイプ(プレーンタイプ)のアルコール飲料は、一般的に、甘味を抑えてすっきりとした味わいのアルコール飲料と理解することができ、例えば、果実の風味を有さないアルコール飲料であってよく、好ましくは果汁、柑橘香料およびソフトフルーツ香料のいずれをも含有しないアルコール飲料であってもよい。このようなドライタイプ(プレーンタイプ)のアルコール飲料の市販品は、食事との相性が良くなるように香味設計されているものが多い。
【0028】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明のアルコール飲料はチューハイ飲料とされる。また、本発明の好ましい実施態様によれば、本発明のアルコール飲料はビールテイスト飲料以外のアルコール飲料とされる。
【0029】
本発明のアルコール飲料は、飲料の製造に用いられる他の成分を含んでもよい。このような他の成分としては、例えば、甘味料(例えば、砂糖、ブドウ糖、果糖、オリゴ糖、異性化液糖、糖アルコール、高甘味度甘味料等)、酸味料(例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、イタコン酸、フマル酸、グルコン酸、アジピン酸、酢酸、またはそれらの塩類等)、色素、食品添加剤(例えば、起泡・泡持ち向上剤、苦味料、保存料、酸化防止剤、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、pH調整剤など)等を適宜添加することができる。
【0030】
本発明のアルコール飲料は、二酸化炭素を圧入したもの、すなわち、炭酸飲料とすることができる。炭酸ガス圧は、好みに応じて適宜調整することができ、例えば、0.05~0.4MPa(20℃におけるガス圧)の範囲で調整することができる。
【0031】
本発明のアルコール飲料は、好ましくは容器詰飲料として提供される。本発明のアルコール飲料に使用される容器は、飲料の充填に通常使用される容器であればよく、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル、カップ)、紙容器、瓶、パウチ容器等が挙げられるが、好ましくは金属缶・樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル)、または瓶とされる。
【0032】
本発明の一つの実施態様によれば、本発明のアルコール飲料は、上記成分の濃度調整以外は、通常のアルコール飲料の製造方法に従って製造することができる。例えば、まず、タンク中において、アルコールを含有した水溶液に、酸味料、香料、および必要に応じて、糖または甘味料を加えて香味を調整する。次いで、香味を整えた水溶液に炭酸ガスを加えて、炭酸ガス含有飲料を製造することができる。本発明のアルコール飲料は、このような製造過程のいずれかの段階で、上記成分または上記成分を含む材料を適宜加えることによって製造することができる。
【0033】
本発明の他の態様によれば、エキス分の含有量が0.5w/v%以下であるアルコール飲料における雑味を低減する方法であって、該アルコール飲料にフィチン酸、乳酸およびリン酸からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有させる工程を含んでなる方法が提供される。
【実施例0034】
以下の実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
試飲サンプル
以下の実施例において、いずれの試飲サンプルも、以下の成分を含有するベース飲料サンプルに基づいて作製した:
・アルコール濃度:9v/v%;
・エキス分:15℃において0.2w/v%;
・香料(焼酎様香料):適量。
【0036】
上記のベース飲料サンプルに対して、以下の表に記載の成分を添加することにより、試飲サンプルを作製した。
【0037】
官能評価
官能評価は、十分に訓練された6名または7名のパネラーによって行った。評価項目は、雑味(その飲料が喉を通る際に感じるイガイガした感覚)、キレ(その飲料を飲用したときに口中で感じる酸味由来の爽快な感覚)、のどごし(その飲料を飲み込んだ後に余計な後味を感じることなく飲める状態)、および味の厚み(その飲料を飲用したときに感じるボディ感または飲みごたえ)とした。
【0038】
「雑味」の官能評価は、1(雑味が強い)、2(雑味がやや強い)、3(雑味がやや弱い)、4(雑味が弱い)、5(雑味がない)、の5段階のスコアで、1刻みで行った。雑味の評価では、表1の試験区1-2(酸味料として0.15w/v%のクエン酸のみを含み、フィチン酸、乳酸およびリン酸をいずれも含まず、ナトリウムも含まない)のスコアを1点に固定し、試験区1-1(酸味料を含まず、ナトリウムも含まない)のスコアを5点に固定した。
【0039】
「キレ」の官能評価は、1(キレがない)、2(キレがほぼない)、3(キレがある)、4(キレがやや強い)、5(キレが強い)、の5段階のスコアで、1刻みで行った。キレの評価では、表1の試験区1-1(酸味料を含まず、ナトリウムも含まない)のスコアを1点に固定し、試験区1-2(酸味料として0.15w/v%のクエン酸のみを含み、フィチン酸、乳酸およびリン酸をいずれも含まず、ナトリウムも含まない)のスコアを5点に固定した。
【0040】
「のどごし」の官能評価は、そのサンプルののどごしが水と同等であるときに「あり」とし、それ以外のときは「なし」とした。
【0041】
「味の厚み」の官能評価は、1(普通)~5(強い)の5段階のスコアで、1刻みで行った。味の厚みの評価では、表2の試験区2-1(酸味料として0.2w/v%のフィチン酸のみを含み、ナトリウムを含まない)のスコアを1点に固定し、試験区2-5(酸味料として0.2w/v%の乳酸のみを含み、19mg/100mLのナトリウムを含む)のスコアを5点に固定した。
【0042】
評価結果は、6名または7名のスコアの平均値および標準偏差として示した。
【0043】
実施例1:フィチン酸、乳酸およびリン酸による効果の確認
酸味料として、フィチン酸、乳酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸を所定の濃度で添加した試飲サンプルを用意し、7名のパネラーにより、雑味、キレおよびのどごしの官能評価を行った。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1から、試験区1-1と試験区1-2の比較から、低エキス分の飲料サンプルでは、クエン酸の添加によりキレが付与されるものの、雑味が強くなることが分かった。次に、試験区1-2と試験区1-3~1-5の比較から、クエン酸がフィチン酸に置き換えられると、フィチン酸の用量に依存して雑味が顕著に低減されることが分かった。また、試験区1-6~1-9の結果から、乳酸およびリン酸もまた、フィチン酸と同様に雑味の低減効果を有することが分かった。さらに、試験区1-10および1-11の結果から、クエン酸をリンゴ酸に置き換えても雑味の低減効果は見られず、よって、この効果は、どの酸味料を使っても奏されるわけではないことが分かった。
【0046】
実施例2:ナトリウムによる効果の確認
酸味料として、フィチン酸、乳酸、リン酸を所定の濃度で添加したサンプルに、所定量のナトリウムを加えた試飲サンプルを用意した。これらの試飲サンプルについて、7名のパネラーにより雑味、キレおよびのどごしの官能評価を行い、さらに、6名のパネラーにより味の厚みの官能評価を行った。結果を表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
表2から、ナトリウムは、フィチン酸、乳酸またはリン酸との組み合わせにより、のどごし、キレおよび雑味についての効果を維持したまま、味の厚みの増強効果を示すことが分かった。