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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055895
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】抗PAR2抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230411BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230411BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230411BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230411BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230411BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230411BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230411BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230411BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230411BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61P25/04
A61P25/06
A61P35/00
A61P31/12
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P29/00
A61P1/04
A61P1/16
A61P37/02
A61P9/00
A61P13/12
A61P1/02
A61P11/06
A61P11/00
A61P21/00
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023015469
(22)【出願日】2023-02-03
(62)【分割の表示】P 2019549512の分割
【原出願日】2018-03-16
(31)【優先権主張番号】62/472,462
(32)【優先日】2017-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/637,766
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】508098350
【氏名又は名称】メドイミューン・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MedImmune Limited
【住所又は居所原語表記】1 Francis Crick Avenue, Cambridge Biomedical Campus, Cambridge CB2 0AA, UNITED KINGDOM
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】クレア・ドブソン
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ウィリアムズ
(72)【発明者】
【氏名】イアン・グレル
(72)【発明者】
【氏名】サダナ・ポディチェッティ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・フェアマン
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ソーントン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ニュートン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新規の抗炎症疼痛治療薬を提供する。
【解決手段】PAR2に結合することが可能な抗体及び抗原結合断片を提供する。いくつかの実施形態では、抗PAR2抗体又はその抗原結合断片は、pH依存的にPAR2に結合する。本開示はさらに、抗体及び抗原結合断片を作製し、且つ使用するための方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体又はその抗原結合断片であって、前記VHが:
i)配列番号3のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号3の配列中に任意選択的に存在するVH-CDR1;
ii)配列番号4のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号4の配列中に任意選択的に存在するVH-CDR2;及び
iii)配列番号5のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号5の配列中に任意選択的に存在するVH-CDR3を含み;
且つ前記VLが:
i)配列番号8のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号8の配列中に任意選択的に存在するVL-CDR1;
ii)配列番号9のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号9の配列中に任意選択的に存在するVL-CDR2;及び
iii)配列番号10のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号10の配列中に任意選択的に存在するVL-CDR3を含み;
前記アミノ酸置換、欠失又は挿入が、PAR2結合アッセイにおいて7.4のpHで試験する場合、配列番号2のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号7のアミノ酸配列を有するVLを有する抗体又は抗原結合断片と比較して、ヒトPAR2に対する前記抗体又はその抗原結合断片の結合親和性を1000、800、700、500、400、300、200、100、50又は10倍以下低減する、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
前記アミノ酸置換、欠失又は挿入が相同置換を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体又はその抗原結合断片であって、前記VHが:
i)配列番号3のアミノ酸配列を有するVH-CDR1;
ii)配列番号4のアミノ酸配列を有するが、ヒスチジンが、配列番号4の1~17位に相当するアミノ酸位置のいずれか1つ以上で任意選択的に存在するVH-CDR2;及び
iii)配列番号5のアミノ酸配列を有するが、ヒスチジンが、配列番号5の1~8位に相当するアミノ酸位置のいずれか1つ以上で任意選択的に存在するVH-CDR3を含み;
且つ前記VLが:
i)配列番号8のアミノ酸配列を有するVL-CDR1;
ii)配列番号9のアミノ酸配列を有するVL-CDR2;及び
iii)配列番号10のアミノ酸配列を有するが、ヒスチジンが、配列番号10の1~14位に相当するアミノ酸位置のいずれか1つ以上で任意選択的に存在するVL-CDR3を含む、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
前記VHが:
i)配列番号3のアミノ酸配列を有するVH-CDR1、
ii)配列番号4のアミノ酸配列を有するVH-CDR2、
iii)配列番号5のアミノ酸配列を有するVH-CDR3を含み、
且つ前記VLが:
i)配列番号8のアミノ酸配列を有するVL-CDR1、
ii)配列番号9のアミノ酸配列を有するVL-CDR2、
iii)配列番号10のアミノ酸配列を有するVL-CDR3を含む、
請求項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
前記VHが:
i)配列番号13のアミノ酸配列を有するVH-CDR1、
ii)配列番号14のアミノ酸配列を有するVH-CDR2、
iii)配列番号15のアミノ酸配列を有するVH-CDR3を含み、
且つ前記VLが:
i)配列番号18のアミノ酸配列を有するVL-CDR1、
ii)配列番号19のアミノ酸配列を有するVL-CDR2、
iii)配列番号20のアミノ酸配列を有するVL-CDR3を含む、
請求項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
ヒスチジンが、配列番号4の5位、8位、12位、16位、及び17位に相当するアミノ酸位置に存在し;且つヒスチジンが、配列番号5の2位及び3位に相当するアミノ酸位置に存在する、請求項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
ヒスチジンが、配列番号4の5位に相当するアミノ酸位置に存在する、請求項3又は5~6のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
ヒスチジンが、配列番号4の7位に相当するアミノ酸位置に存在する、請求項3又は5~7のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
ヒスチジンが、配列番号4の8位に相当するアミノ酸位置に存在する、請求項3又は5~7のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
ヒスチジンが、配列番号4の12位に相当するアミノ酸位置に存在する、請求項1又は5~7のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
ヒスチジンが、配列番号4の15位に相当するアミノ酸位置に存在する、請求項3又は5~10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項12】
ヒスチジンが、配列番号4の16位に相当するアミノ酸位置に存在する、請求項3又は5~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項13】
ヒスチジンが、配列番号4の17位に相当するアミノ酸位置に存在する、請求項1又は5~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項14】
ヒスチジンが、配列番号4の5位及び8位に相当するアミノ酸位置に存在する、請求項3又は5~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項15】
ヒスチジンが、配列番号4の5位、8位、12位、及び16位に相当するアミノ酸位置に存在する、請求項3又は5~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項16】
ヒスチジンが、配列番号4の5位、8位、12位、16及び17位に相当するアミノ酸位置に存在する、請求項3又は5~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項17】
ヒスチジンが、配列番号5の2位に相当するアミノ酸位置に存在する、請求項3又は5~16のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項18】
ヒスチジンが、配列番号5の3位に相当するアミノ酸位置に存在する、請求項3又は5~17のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項19】
ヒスチジンが、配列番号5の2位及び3位に相当するアミノ酸位置に存在する、請求項3又は5~18のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項20】
ヒスチジンが、配列番号10の1位に相当するアミノ酸位置に存在する、請求項3又は5~19のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項21】
ヒスチジンが、配列番号10の5位に相当するアミノ酸位置に存在する、請求項3又は5~20のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項22】
ヒスチジンが、配列番号10の6位に相当するアミノ酸位置に存在する、請求項3又は5~21のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項23】
ヒスチジンが、配列番号10の14位に相当するアミノ酸位置に存在する、請求項3又は5~22のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項24】
前記VH-CDR2が、配列番号4、14、24、34、44、54、64、74、84、94、104、114、124、134、144、154、164、174、184、194、204、214、224、234、244、254、264、274、284、294、304、314、324、334、344、354、364、374、384、394、404、414、424、434、444、454、464、474、484、494、504、514、524、534、544、554、564、574、584、594、604、614、624、634、644、654、664、674、684、694、704、714、724、734、744、754、764、774、784、794、及び811~818からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項25】
前記VH-CDR3が、配列番号5、15、25、35、45、55、65、75、85、95、105、115、125、135、145、155、165、175、185、195、205、215、225、235、245、255、265、275、285、295、305、315、325、335、345、355、365、375、385、395、405、415、425、435、445、455、465、475、485、495、505、515、525、535、545、555、565、575、585、595、605、615、625、635、645、655、665、675、685、695、705、715、725、735、745、755、765、775、785、795、及び819~820からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項3又は24に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項26】
前記VL-CDR3が、配列番号10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790及び800からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項3、24又は25のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項27】
前記VH-CDR2が、配列番号14に相当するアミノ酸配列を含み;前記VH-CDR3が、配列番号15に相当するアミノ酸配列を含み、且つ前記VL-CDR3が、配列番号20に相当するアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項28】
前記VH-CDR2が、配列番号811に相当するアミノ酸配列を含み;前記VH-CDR3が、配列番号819に相当するアミノ酸配列を含み、且つ前記VL-CDR3が、配列番号10又は20に相当するアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項29】
前記VH-CDR2が、配列番号814に相当するアミノ酸配列を含み;前記VH-CDR3が、配列番号820に相当するアミノ酸配列を含み、且つ前記VL-CDR3が、配列番号10又は20に相当するアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項30】
前記VH-CDR2が、配列番号816に相当するアミノ酸配列を含み;前記VH-CDR3が、配列番号15に相当するアミノ酸配列を含み、且つ前記VL-CDR3が、配列番号10又は20に相当するアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項31】
前記VH-CDR2が、配列番号818に相当するアミノ酸配列を含み;前記VH-CDR3が、配列番号15に相当するアミノ酸配列を含み、且つ前記VL-CDR3が、配列番号10又は20に相当するアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項32】
前記VHが、配列番号803~806の各々と少なくとも90%同一であるフレームワーク領域を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項33】
前記VHが、配列番号803~806の各々と少なくとも95%同一であるフレームワーク領域を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項34】
前記VHが、配列番号803~806に相当するフレームワーク領域を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項35】
前記VLが、配列番号807~810の各々と少なくとも90%同一であるフレームワーク領域を含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項36】
前記VLが、配列番号807~810の各々と少なくとも95%同一であるフレームワーク領域を含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項37】
前記VLが、配列番号807~810に相当するフレームワーク領域を含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項38】
前記VHが、配列番号2、12、22、32、42、52、62、72、82、92、102、112、122、132、142、152、162、172、182、192、202、212、222、232、242、252、262、272、282、292、302、312、322、332、342、352、362、372、382、392、402、412、422、432、442、452、462、472、482、492、502、512、522、532、542、552、562、572、582、592、602、612、622、632、642、652、662、672、682、692、702、712、722、732、742、752、762、772、782、792及び821~831からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、95%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項39】
前記VLが、配列番号7、17、27、37、47、57、67、77、87、97、107、117、127、137、147、157、167、177、187、197、207、217、227、237、247、257、267、277、287、297、307、317、327、337、347、357、367、377、387、397、407、417、427、437、447、457、467、477、487、497、507、517、527、537、547、557、567、577、587、597、607、617、627、637、647、657、667、677、687、697、707、717、727、737、747、757、767、777、787、及び797からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、95%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項40】
前記VHが、配列番号821に相当するアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが、配列番号7又は17に相当するアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項41】
前記VHが、配列番号824に相当するアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが、配列番号7又は17に相当するアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項42】
前記VHが、配列番号827に相当するアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが、配列番号7又は17に相当するアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項43】
前記VHが、配列番号831に相当するアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが、配列番号7又は17に相当するアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項44】
前記VHが、配列番号12と少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、95%、97%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが、配列番号17と少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、95%、97%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項3~39のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項45】
前記抗体又は抗原結合断片が抗原結合断片である、請求項1~44のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項46】
前記抗原結合断片がscFvである、請求項45に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項47】
前記抗原結合断片がFab’である、請求項45に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項48】
前記抗体又は抗原結合断片が抗体である、請求項1~44のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項49】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項48に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項50】
前記抗体がIgG抗体である、請求項48又は49に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項51】
前記抗体又は抗原結合断片がヒト化されている、請求項1~50のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項52】
前記抗体又は抗原結合断片がヒトのものである、請求項1~50のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項53】
前記VHが、配列番号1、11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131、141、151、161、171、181、191、201、211、221、231、241、251、261、271、281、291、301、311、321、331、341、351、361、371、381、391、401、411、421、431、441、451、461、471、481、491、501、511、521、531、541、551、561、571、581、591、601、611、621、631、641、651、661、671、681、691、701、711、721、731、741、751、761、771、781、791、及び833~841のいずれか1つと少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、請求項1~52のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項54】
前記VHが、配列番号1、11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131、141、151、161、171、181、191、201、211、221、231、241、251、261、271、281、291、301、311、321、331、341、351、361、371、381、391、401、411、421、431、441、451、461、471、481、491、501、511、521、531、541、551、561、571、581、591、601、611、621、631、641、651、661、671、681、691、701、711、721、731、741、751、761、771、781、791、及び833~841のいずれか1つと少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、請求項53に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項55】
前記VHが、配列番号1、11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131、141、151、161、171、181、191、201、211、221、231、241、251、261、271、281、291、301、311、321、331、341、351、361、371、381、391、401、411、421、431、441、451、461、471、481、491、501、511、521、531、541、551、561、571、581、591、601、611、621、631、641、651、661、671、681、691、701、711、721、731、741、751、761、771、781、791、及び833~841のいずれか1つの前記ヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、請求項53に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項56】
前記VLが、配列番号6、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、126、136、146、156、166、176、186、196、206、216、226、236、246、256、266、276、286、296、306、316、326、336、346、356、366、376、386、396、406、416、426、436、446、456、466、476、486、496、506、516、526、536、546、556、566、576、586、596、606、616、626、636、646、656、666、676、686、696、706、716、726、736、746、756、766、776、786、及び796のいずれか1つと少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、請求項1~55のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項57】
前記VLが、配列番号6、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、126、136、146、156、166、176、186、196、206、216、226、236、246、256、266、276、286、296、306、316、326、336、346、356、366、376、386、396、406、416、426、436、446、456、466、476、486、496、506、516、526、536、546、556、566、576、586、596、606、616、626、636、646、656、666、676、686、696、706、716、726、736、746、756、766、776、786、及び796のいずれか1つと少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、請求項56に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項58】
前記VLが、配列番号6、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、126、136、146、156、166、176、186、196、206、216、226、236、246、256、266、276、286、296、306、316、326、336、346、356、366、376、386、396、406、416、426、436、446、456、466、476、486、496、506、516、526、536、546、556、566、576、586、596、606、616、626、636、646、656、666、676、686、696、706、716、726、736、746、756、766、776、786、及び796のいずれか1つの前記ヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、請求項56に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項59】
前記VHが、配列番号11と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、請求項1~58のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項60】
前記VHが、配列番号11と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、請求項59に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項61】
前記VHが、配列番号11の前記ヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、請求項59に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項62】
前記VLが、配列番号16と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、請求項1~61のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項63】
前記VLが、配列番号16と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、請求項62に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項64】
前記VLが、配列番号16の前記ヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、請求項62に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項65】
前記抗体又は抗原結合断片がPAR2に結合する、請求項1~64のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項66】
前記抗体又は抗原結合断片が、トリプシン、トリプターゼ及び/又はマトリプターゼのPAR2との相互作用を妨げる、請求項1~65のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項67】
前記抗体又は抗原結合断片が、トリプシン、トリプターゼ及び/又はマトリプターゼによるPAR2の切断を妨げる、請求項1~66のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項68】
前記抗体又は抗原結合断片が、PAR2の細胞外ドメインの切断を妨げる、請求項1~67のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項69】
前記抗体又は抗原結合断片が、テザーリガンドの露出を阻害する、請求項1~68のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項70】
前記抗体又は抗原結合断片が、前記テザーリガンドのPAR2の第2の膜貫通ループとの相互作用を妨げる、請求項1~69のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項71】
前記抗体又は抗原結合断片が、pH6.0よりpH7.4でより高い親和性を有してPAR2に結合する、請求項1~70のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項72】
前記抗体又は抗原結合断片が、約5nM、1nM、900pM、800pM、700pM、650pM、600pM、500pM、200pM、100pM又は50pM未満のKを有してpH7.4でPAR2に結合する、請求項1~70のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項73】
前記抗体又は抗原結合断片が、約700pM未満のKを有してpH7.4でPAR2に結合する、請求項72に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項74】
前記抗体又は抗原結合断片が、約1nM、5nM、10nM、15nM、20nM、25nM、30nM、40nM、50nM、60nM、80nM、又は100nMより大きいKを有してpH6.0でPAR2に結合する、請求項1~70のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項75】
前記抗体又は抗原結合断片が、約30nMより大きいKを有してpH6.0でPAR2に結合する、請求項1~70のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項76】
前記抗体又は抗原結合断片が、PAR2結合アッセイにおいて、pH7.4で配列番号3~5及び8~10の前記CDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、100nM未満のIC50を有する、請求項1~75のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項77】
前記抗体又は抗原結合断片が、PAR2結合アッセイにおいて、pH7.4で配列番号3~5及び8~10の前記CDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、50nM未満のIC50を有する、請求項1~76のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項78】
前記抗体又は抗原結合断片が、PAR2結合アッセイにおいて、pH7.4で配列番号3~5及び8~10の前記CDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、40nM未満のIC50を有する、請求項1~77のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項79】
前記抗体又は抗原結合断片が、PAR2結合アッセイにおいて、pH6.0で配列番号3~5及び8~10の前記CDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、500nMより大きいIC50を有する、請求項1~78のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項80】
前記抗体又は抗原結合断片が、PAR2結合アッセイにおいて、pH6.0で配列番号3~5及び8~10の前記CDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、1000nMより大きいIC50を有する、請求項1~79のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項81】
前記抗体又は抗原結合断片が、PAR2結合アッセイにおいて、pH6.0で配列番号3~5及び8~10の前記CDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、1100nMより大きいIC50を有する、請求項1~80のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項82】
前記抗体又は抗原結合断片が、PAR2結合アッセイにおいて、配列番号3~5及び8~10の前記CDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、pH6.0よりpH7.4で20倍を超えて低いIC50を有する、請求項1~81のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項83】
前記抗体又は抗原結合断片が、PAR2結合アッセイにおいて、配列番号3~5及び8~10の前記CDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、pH6.0よりpH7.4で25倍を超えて低いIC50を有する、請求項1~82のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項84】
前記抗体又は抗原結合断片が、PAR2結合アッセイにおいて、配列番号3~5及び8~10の前記CDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、pH6.0よりpH7.4で30倍を超えて低いIC50を有する、請求項1~83のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項85】
前記抗体又は抗原結合断片が、ヒトA549細胞におけるカルシウム流入アッセイにおいて3.0×10-10M未満のIC50を有する、請求項1~84のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項86】
前記抗体又は抗原結合断片が、ヒトA549細胞におけるカルシウム流入アッセイにおいて1.5×10-10M未満のIC50を有する、請求項1~85のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項87】
前記抗体又は抗原結合断片が、ラットKNRK細胞におけるカルシウム流入アッセイにおいて7.0×10-10M未満のIC50を有する、請求項1~86のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項88】
前記抗体又は抗原結合断片が、ラットKNRK細胞におけるカルシウム流入アッセイにおいて5.5×10-10M未満のIC50を有する、請求項1~87のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項89】
前記抗体又は抗原結合断片が、カニクイザルCYNOM-K1細胞におけるカルシウム流入アッセイにおいて7.0×10-11M未満のIC50を有する、請求項1~88のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項90】
前記抗体又は抗原結合断片が、カニクイザルCYNOM-K1細胞におけるカルシウム流入アッセイにおいて5.0×10-11M未満のIC50を有する、請求項1~89のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項91】
前記抗体又は抗原結合断片が、マウスLL/2細胞におけるカルシウム流入アッセイにおいて6.0×10-11M未満のIC50を有する、請求項1~90のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項92】
前記抗体又は抗原結合断片が、マウスLL/2細胞におけるカルシウム流入アッセイにおいて4.0×10-11M未満のIC50を有する、請求項1~91のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項93】
前記抗体又は抗原結合断片が、ヒスチジン改変を欠く抗体又は抗原結合断片より遅く、治療された患者の血清からなくなる、請求項92のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項94】
任意選択的に存在する前記ヒスチジン又はヒスチジン(複数)が、PAR2結合アッセイにおいて7.4のpHで試験する場合、配列番号2のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号7のアミノ酸配列を有するVLを有する抗体又は抗原結合断片と比較して、ヒトPAR2に対する前記抗体又はその抗原結合断片の結合親和性を1000、800、700、500、400、300、200、100、50又は10倍以下低減する、請求項3又は5~93のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項95】
請求項1~94のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片を発現することが可能な核酸。
【請求項96】
配列番号1、11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131、141、151、161、171、181、191、201、211、221、231、241、251、261、271、281、291、301、311、321、331、341、351、361、371、381、391、401、411、421、431、441、451、461、471、481、491、501、511、521、531、541、551、561、571、581、591、601、611、621、631、641、651、661、671、681、691、701、711、721、731、741、751、761、771、781、791、及び833~841のいずれか1つと少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸。
【請求項97】
前記核酸が、配列番号1、11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131、141、151、161、171、181、191、201、211、221、231、241、251、261、271、281、291、301、311、321、331、341、351、361、371、381、391、401、411、421、431、441、451、461、471、481、491、501、511、521、531、541、551、561、571、581、591、601、611、621、631、641、651、661、671、681、691、701、711、721、731、741、751、761、771、781、791、及び833~841のいずれか1つと少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む、請求項96に記載の核酸。
【請求項98】
前記核酸が、配列番号1、11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131、141、151、161、171、181、191、201、211、221、231、241、251、261、271、281、291、301、311、321、331、341、351、361、371、381、391、401、411、421、431、441、451、461、471、481、491、501、511、521、531、541、551、561、571、581、591、601、611、621、631、641、651、661、671、681、691、701、711、721、731、741、751、761、771、781、791、及び833~841のいずれか1つの前記ヌクレオチド配列を含む、請求項96に記載の核酸。
【請求項99】
配列番号6、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、126、136、146、156、166、176、186、196、206、216、226、236、246、256、266、276、286、296、306、316、326、336、346、356、366、376、386、396、406、416、426、436、446、456、466、476、486、496、506、516、526、536、546、556、566、576、586、596、606、616、626、636、646、656、666、676、686、696、706、716、726、736、746、756、766、776、786、及び796のいずれか1つと少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸。
【請求項100】
前記核酸が、配列番号6、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、126、136、146、156、166、176、186、196、206、216、226、236、246、256、266、276、286、296、306、316、326、336、346、356、366、376、386、396、406、416、426、436、446、456、466、476、486、496、506、516、526、536、546、556、566、576、586、596、606、616、626、636、646、656、666、676、686、696、706、716、726、736、746、756、766、776、786、及び796のいずれか1つと少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む、請求項99に記載の核酸。
【請求項101】
前記核酸が、配列番号6、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、126、136、146、156、166、176、186、196、206、216、226、236、246、256、266、276、286、296、306、316、326、336、346、356、366、376、386、396、406、416、426、436、446、456、466、476、486、496、506、516、526、536、546、556、566、576、586、596、606、616、626、636、646、656、666、676、686、696、706、716、726、736、746、756、766、776、786、及び796のいずれか1つの前記ヌクレオチド配列を含む、請求項99に記載の核酸。
【請求項102】
配列番号11と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸。
【請求項103】
前記核酸が、配列番号11と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む、請求項102に記載の核酸。
【請求項104】
前記核酸が、配列番号11の前記ヌクレオチド配列を含む、請求項102に記載の核酸。
【請求項105】
配列番号16と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸。
【請求項106】
前記核酸が、配列番号16と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む、請求項105に記載の核酸。
【請求項107】
前記核酸が、配列番号16の前記ヌクレオチド配列を含む、請求項105に記載の核酸。
【請求項108】
請求項95~107のいずれか一項に記載の核酸を含むベクター。
【請求項109】
a)請求項96~98又は102~104のいずれか一項に記載の核酸;及びb)請求項99~101及び105~107のいずれか一項に記載の核酸を含む、ベクターのセット。
【請求項110】
請求項108又は109に記載のベクターのうちの1つ以上を含む宿主細胞。
【請求項111】
薬学的に許容される担体及び請求項1~94のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片を含む組成物。
【請求項112】
請求項1~94のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含む凍結乾燥組成物。
【請求項113】
請求項1~94のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含む、再構成された凍結乾燥組成物。
【請求項114】
前記組成物が、舐剤、噴霧剤、経口投与、遅延放出又は持続放出、経粘膜投与、シロップ剤、粘膜付着性、バッカル製剤、粘膜付着性錠剤、局所投与、非経口投与、注射、皮下投与、経口溶液、直腸投与、バッカル投与又は経皮投与による投与のために製剤化される、請求項111~113のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項115】
請求項1~94のいずれか一項に記載の抗体若しくは抗原結合断片又は請求項111~114のいずれか一項に記載の組成物を含むキット。
【請求項116】
必要とする対象において疼痛を治療するための方法であって、治療有効量の請求項1~94のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項117】
必要とする対象において疼痛を治療するための方法であって、治療有効量の請求項111~114のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項118】
前記疼痛が、侵害受容性疼痛、神経因性疼痛、及び混合型疼痛からなる群から選択される、請求項116又は117に記載の方法。
【請求項119】
前記疼痛が、頭痛、慢性頭痛、片頭痛、癌、ウイルス感染、関節リウマチ、変形性関節症、クローン病、肝疾患、多発性硬化症、脊髄損傷、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性ニューロパシー、腰痛、炎症性心疾患、腎疾患、胃炎、歯肉炎、歯周疾患、喘息、慢性閉塞性肺疾患、自己免疫疾患、過敏性腸症候群、線維筋痛症、下肢痛、脚不穏症候群、糖尿病性ニューロパシー、アレルギー病態、外科手技、急性若しくは慢性の身体的傷害、骨折若しくは圧挫、脊髄損傷、炎症性疾患、非炎症性の神経因性疼痛病態若しくは機能傷害性疼痛病態、又はこれらの組み合わせと関連する、請求項116又は117のいずれか一項に記載の方法。
【請求項120】
前記疼痛が変形性関節症疼痛である、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
前記対象がヒトである、請求項116~120のいずれか一項に記載の方法。
【請求項122】
培養細胞中で請求項95~106のいずれか一項に記載の核酸を発現させる工程と、前記抗体又は抗原結合断片を精製する工程とを含む、請求項1~94のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片を作製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年3月16日に出願された米国仮特許出願第62/472,462号及び2018年3月2日に出願された米国仮特許出願第62/637,766号の優先権の利益を主張する。前出の出願は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本願は、ASCII形式で電子的手段により提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2018年3月8日に作成された前記ASCIIの複製は、1848081-0002-093-WO1_SL.txtと命名され、サイズは351,668バイトである。
【背景技術】
【0003】
慢性疼痛は、誰しもが発症する可能性があり、且つ患者、保健医療システム、及び経済に負担を課す病態である。米国では約1億人が慢性疼痛に罹患し、医療費並びに損失時間及び損失賃金の経済的コストを含む疼痛による保健医療のコストの毎年の増分は、5600億ドルと6350億ドルの間であると推定される(Institute of Medicine of The National Academies,2011)。さらに、慢性疼痛患者の調査では、半数以上が自身の疼痛に関してほとんど又はまったく制御できていなかった(非特許文献1)。疼痛は、癌から糖尿病、関節炎まで様々な病態及び疾患によって引き起こされる可能性があり、侵害受容性、神経因性、及び混合型疼痛のカテゴリーに分類することができる。侵害受容性疼痛は、神経繊維の刺激(例えば、熱的、力学的、又は化学的刺激による)によって定義されるが、神経因性疼痛は、神経損傷、神経疾患、及び重要なこととして炎症などの多様な原因によって引き起こされる疼痛である。したがって、生物体が免疫細胞を動員し、傷害又は感染の部位に免疫性因子を放出するプロセスである炎症は、損傷修復及び疼痛の原因の両方の助けになるプロセスであり得る。
【0004】
疼痛のための多くの治療は、炎症を阻害する。抗炎症性疼痛治療薬の2つの一般的な分類は、ステロイド性抗炎症剤及び非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)である。ステロイド性抗炎症剤は通常、炎症の産物であるプロスタグランジン及びロイコトリエンを抑制する。このような薬剤は信頼性があり且つ強力であるが、例えば、骨密度の低下、体重変動、免疫系抑制、及び成長/思春期異常を含む重篤な副作用のリスクを保有する(非特許文献2;非特許文献3)。NSAIDは、アラキドン酸からプロスタグランジンへの反応を触媒するシクロオキシゲナーゼ-1及び/又は2(COX-1及び/又はCOX-2)を阻害する。慢性疼痛及び炎症は長期の治療を必要とし、COX酵素の長期の阻害は、胃出血及び潰瘍などの胃腸管の問題を引き起こす場合がある。このような抗炎症疼痛治療に関連するリスクを考慮して、疼痛を治療するための代替のアプローチが必要とされている。
【0005】
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、N末端細胞外ドメインとC末端細胞内ドメインが連結している7回膜貫通ドメインの共通の構造モチーフを共有する膜タンパク質のファミリーである(非特許文献4)。GPCRは、光子、ホルモン、ケモカインなどの細胞外シグナルを感知し、細胞内Gタンパク質を活性化する。フリズルド、ロドプシン、セクレチン、アドヒージョン、及びプロテアーゼ活性化受容体(PAR)ファミリーなどのGPCRの多くのファミリーが存在する(非特許文献5;非特許文献6)。様々なGPCRファミリーが全体の構造的特徴を共有するが、それらは、異なる機能を呈し、様々なリガンドに結合し、且つ異なる機序によって活性化される。GPCRのPARファミリーの活性化は、炎症及び侵害受容と関連している(非特許文献7)。
【0006】
4種のPAR受容体が同定されている:PAR1、PAR2、PAR3、及びPAR4(非特許文献8;非特許文献7)。PAR2活性化は炎症及び侵害受容を増強することが示されており、その阻害を抗炎症性疼痛治療のための魅力的な標的にしている。他のGPCRとは異なり、PARは、繋ぎ止められた活性化リガンドとして機能するN末端配列を現わす細胞外ドメインのタンパク質切断によって活性化される。PAR2は特に、トリプシン及びトリプターゼによって切断され、活性化される。
【0007】
PAR2発現は、血管付き組織、気道、骨芽細胞、心血管組織、角化細胞、外分泌腺、白血球、マスト細胞、腸管上皮、腎臓、神経細胞、膵臓、及び種々の平滑筋種において検出されている(上掲の非特許文献8)。PAR2はまた、神経性炎症、侵害受容及び疼痛の伝達と関連する種々の疾患又は病態と関係づけられている。PAR2は、いくつかの宿主及び病原体由来のセリンプロテアーゼ(例えば、トリプシン、マスト細胞トリプターゼ、組織カリクレイン、又は血液凝固カスケードTF-FVIIa及びFVa-FXaのメンバー)によって活性化され得る。
【0008】
モノクローナル抗体は、種々の治療的適用に有用であることが示されており、現在では多くの抗体治療薬が上市されている(非特許文献9;非特許文献10)。血流の循環における抗体の最も一般的な種類は免疫グロブリンG(IgG)である。治療目的のIgG抗体の有用性は、その標的に対する抗体の特異性、標的へのその結合の強度、並びに抗体を生成できる効率性の程度及び抗体が血清からなくなる速さ(抗体の血清半減期)を含むいくつかの要因に依存する。抗体の血清半減期は、一般的に、免疫グロブリンG(IgG)のFcドメインに結合するFcRn(新生児型Fc受容体)によって調節される。インビボでは、IgGは液相ピノサイトーシスによって非特異的に取り入れられると考えられる(非特許文献11)。エンドソーム内でIgGがFcRnに結合すると、IgGをリサイクリングエンドソームへと識別し、リソソーム及び分解から離れて細胞表面へと戻る。IgGのリサイクリング率は、44%のわずかな異化率になると推定され、抗体治療薬は依然として、投与後ほんの数日で枯渇し得る(非特許文献12)。
【0009】
炎症に関連する疼痛は慢性病態である場合が多い。治療用分子の投与量及び投与頻度を最小限にすることが望ましい。したがって、新規の抗炎症疼痛治療薬が必要とされている。標準的なモノクローナル抗体は魅力的な候補であるが、場合によっては、それらの血清半減期によって制限され得る。そのため、代替の治療が望ましい場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】2006 Voices of Chronic Pain Survey、American Pain Foundation
【非特許文献2】Irving,P.M.et al.(2007)Aliment Pharmacol Ther.26(3):313-329;
【非特許文献3】Goodman et al.J Am Acad Orthop Surg.2007 Aug;15(8):450-60
【非特許文献4】Granier et al,Nat Chem Biol.2012 Aug;8(8):670-673
【非特許文献5】Zhang et al.Nature.2012 Dec 20;492(7429):387-392;
【非特許文献6】Zhang et al.Mol Cells.2015 Oct;38(10):836-42
【非特許文献7】Gieseler et al Cell Commun Signal.2013;11:86
【非特許文献8】Macfarlane et al.Pharmacol Rev.2001 Jun;53(2):245-82;
【非特許文献9】Maggon,Curr Med Chem.2007;14(18):1978-87;
【非特許文献10】Brekke and Sandlie,Nat Rev Drug Discov 2:52-62,2003
【非特許文献11】Pyzik et al,J Immunol.2015 May 15;194(10):4595-603
【非特許文献12】Kim,Jonghan,et al.Clin.Immunol.122.2(2007):146-155
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、PAR2に結合する抗体を提供する。本開示の抗体は、とりわけ、PAR2媒介性シグナル伝達の阻害、並びにPAR2活性及び/若しくはPAR2シグナル伝達によるか又はそれに関連する疾患並びに障害の治療に有用である。
【0012】
いくつかの実施形態では、本開示は、pH6.0よりpH7.4でより高い親和性を有する、PAR2に結合する抗体又はその抗原結合断片を提供する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、pH6.0よりpH7.4で少なくとも5、10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100倍高い親和性を有してPAR2に結合する。いくつかの実施形態では、本開示は、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体又はその抗原結合断片を提供し、ここで、VHは:i)配列番号3のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号3の配列中に任意選択的に存在するVH-CDR1;ii)配列番号4のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号4の配列中に任意選択的に存在するVH-CDR2;及びiii)配列番号5のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号5の配列中に任意選択的に存在するVH-CDR3を含み;且つVLは:i)配列番号8のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号8の配列中に任意選択的に存在するVL-CDR1;ii)配列番号9のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号9の配列中に任意選択的に存在するVL-CDR2;及びiii)配列番号10のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号10の配列中に任意選択的に存在するVL-CDR3を含み;アミノ酸置換、欠失又は挿入は、PAR2結合アッセイにおいて7.4のpHで試験する場合、配列番号2のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号7のアミノ酸配列を有するVLを有する抗体又は抗原結合断片と比較して、ヒトPAR2に対する抗体又はその抗原結合断片の結合親和性を1000、800、700、500、400、300、200、100、50又は10倍以下低減する。いくつかの実施形態では、アミノ酸置換、欠失又は挿入は、相同置換を含む。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号2の配列に存在するCDRアミノ酸配列と比較して、VH CDR中において1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個以下のアミノ酸置換、挿入又は欠失を有する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号7の配列に存在するCDRアミノ酸配列と比較して、VL CDR中において1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個以下のアミノ酸置換、挿入又は欠失を有する。いくつかの実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸置換、挿入又は欠失は、ヒスチジンによる1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の置換である。
【0013】
いくつかの実施形態では、本開示は、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体又はその抗原結合断片を提供し、ここで、VHは:i)配列番号3のアミノ酸配列を有するVH-CDR1;ii)配列番号4のアミノ酸配列を有するが、ヒスチジンが、配列番号4の1~17位(例えば、4位、5位、及び7~17位)に相当するアミノ酸位置のいずれか1つ以上で任意選択的に存在するVH-CDR2;及びiii)配列番号5のアミノ酸配列を有するが、ヒスチジンが、配列番号5の1~8位に相当するアミノ酸位置のいずれか1つ以上で任意選択的に存在するVH-CDR3を含み;且つVLは:i)配列番号8のアミノ酸配列を有するVL-CDR1;ii)配列番号9のアミノ酸配列を有するVL-CDR2;及びiii)配列番号10のアミノ酸配列を有するが、ヒスチジンが、配列番号10の1~14位に相当するアミノ酸位置のいずれか1つ以上で任意選択的に存在するVL-CDR3を含む。いくつかの実施形態では、VHは:i)配列番号3のアミノ酸配列を有するVH-CDR1、ii)配列番号4のアミノ酸配列を有するVH-CDR2、iii)配列番号5のアミノ酸配列を有するVH-CDR3を含み、且つVLは:i)配列番号8のアミノ酸配列を有するVL-CDR1、ii)配列番号9のアミノ酸配列を有するVL-CDR2、iii)配列番号10のアミノ酸配列を有するVL-CDR3を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体又はその抗原結合断片を提供し、ここで、VHは:i)配列番号13のアミノ酸配列を有するVH-CDR1、ii)配列番号14のアミノ酸配列を有するVH-CDR2、iii)配列番号15のアミノ酸配列を有するVH-CDR3を含み、且つVLは:i)配列番号18のアミノ酸配列を有するVL-CDR1、ii)配列番号19のアミノ酸配列を有するVL-CDR2、iii)配列番号20のアミノ酸配列を有するVL-CDR3を含む。いくつかの実施形態では、ヒスチジンは、配列番号4の5位、8位、12位、16位、及び17位に相当するアミノ酸位置に存在し;且つヒスチジンは、配列番号5の2位及び3位に相当するアミノ酸位置に存在する。いくつかの実施形態では、ヒスチジンは、配列番号4の5位に相当するアミノ酸位置に存在する。いくつかの実施形態では、ヒスチジンは、配列番号4の7位に相当するアミノ酸位置に存在する。いくつかの実施形態では、ヒスチジンは、配列番号4の8位に相当するアミノ酸位置に存在する。いくつかの実施形態では、ヒスチジンは、配列番号4の12位に相当するアミノ酸位置に存在する。いくつかの実施形態では、ヒスチジンは、配列番号4の15位に相当するアミノ酸位置に存在する。いくつかの実施形態では、ヒスチジンは、配列番号4の16位に相当するアミノ酸位置に存在する。いくつかの実施形態では、ヒスチジンは、配列番号4の17位に相当するアミノ酸位置に存在する。いくつかの実施形態では、ヒスチジンは、配列番号4の5位及び8位に相当するアミノ酸位置に存在する。いくつかの実施形態では、ヒスチジンは、配列番号4の5位、8位、12位及び16位に相当するアミノ酸位置に存在する。いくつかの実施形態では、ヒスチジンは、配列番号4の5位、8位、12位、16位及び17位に相当するアミノ酸位置に存在する。いくつかの実施形態では、ヒスチジンは、配列番号5の2位に相当するアミノ酸位置に存在する。いくつかの実施形態では、ヒスチジンは、配列番号5の3位に相当するアミノ酸位置に存在する。いくつかの実施形態では、ヒスチジンは、配列番号5の2位及び3位に相当するアミノ酸位置に存在する。いくつかの実施形態では、ヒスチジンは、配列番号10の1位に相当するアミノ酸位置に存在する。いくつかの実施形態では、ヒスチジンは、配列番号10の5位に相当するアミノ酸位置に存在する。いくつかの実施形態では、ヒスチジンは、配列番号10の6位に相当するアミノ酸位置に存在する。いくつかの実施形態では、ヒスチジンは、配列番号10の14位に相当するアミノ酸位置に存在する。いくつかの実施形態では、VH-CDR2は、配列番号4、14、24、34、44、54、64、74、84、94、104、114、124、134、144、154、164、174、184、194、204、214、224、234、244、254、264、274、284、294、304、314、324、334、344、354、364、374、384、394、404、414、424、434、444、454、464、474、484、494、504、514、524、534、544、554、564、574、584、594、604、614、624、634、644、654、664、674、684、694、704、714、724、734、744、754、764、774、784、794、及び811~818からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VH-CDR3は、配列番号5、15、25、35、45、55、65、75、85、95、105、115、125、135、145、155、165、175、185、195、205、215、225、235、245、255、265、275、285、295、305、315、325、335、345、355、365、375、385、395、405、415、425、435、445、455、465、475、485、495、505、515、525、535、545、555、565、575、585、595、605、615、625、635、645、655、665、675、685、695、705、715、725、735、745、755、765、775、785、795、及び819~820からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VL-CDR3は、配列番号10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790及び800からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VH-CDR2は、配列番号14に相当するアミノ酸配列を含み;VH-CDR3は、配列番号15に相当するアミノ酸配列を含み;且つVL-CDR3は、配列番号20に相当するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VH-CDR2は、配列番号811に相当するアミノ酸配列を含み;VH-CDR3は、配列番号819に相当するアミノ酸配列を含み、且つVL-CDR3は、配列番号10又は20に相当するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VH-CDR2は、配列番号814に相当するアミノ酸配列を含み;VH-CDR3は、配列番号820に相当するアミノ酸配列を含み、且つVL-CDR3は、配列番号10又は20に相当するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VH-CDR2は、配列番号816に相当するアミノ酸配列を含み;VH-CDR3は、配列番号15に相当するアミノ酸配列を含み、且つVL-CDR3は、配列番号10又は20に相当するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VH-CDR2は、配列番号818に相当するアミノ酸配列を含み;VH-CDR3は、配列番号15に相当するアミノ酸配列を含み、且つVL-CDR3は、配列番号10又は20に相当するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号803~806の各々と少なくとも90%同一であるフレームワーク領域を含む。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号803~806の各々と少なくとも95%同一であるフレームワーク領域を含む。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号803~806に相当するフレームワーク領域を含む。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号807~810の各々と少なくとも90%同一であるフレームワーク領域を含む。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号807~810の各々と少なくとも95%同一であるフレームワーク領域を含む。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号807~810に相当するフレームワーク領域を含む。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号2、12、22、32、42、52、62、72、82、92、102、112、122、132、142、152、162、172、182、192、202、212、222、232、242、252、262、272、282、292、302、312、322、332、342、352、362、372、382、392、402、412、422、432、442、452、462、472、482、492、502、512、522、532、542、552、562、572、582、592、602、612、622、632、642、652、662、672、682、692、702、712、722、732、742、752、762、772、782、及び792からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、95%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号7、17、27、37、47、57、67、77、87、97、107、117、127、137、147、157、167、177、187、197、207、217、227、237、247、257、267、277、287、297、307、317、327、337、347、357、367、377、387、397、407、417、427、437、447、457、467、477、487、497、507、517、527、537、547、557、567、577、587、597、607、617、627、637、647、657、667、677、687、697、707、717、727、737、747、757、767、777、787、及び797からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、95%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号12と少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、95%、97%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号17と少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、95%、97%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号12に相当するアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号17に相当するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号821に相当するアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号7又は17に相当するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号824に相当するアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号7又は17に相当するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号827に相当するアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号7又は17に相当するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号831に相当するアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号7又は17に相当するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗原結合断片はscFvである。いくつかの実施形態では、抗原結合断片はFab’である。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は
モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体はIgG抗体である。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片はヒト化されている。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片はヒトのものである。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号1、11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131、141、151、161、171、181、191、201、211、221、231、241、251、261、271、281、291、301、311、321、331、341、351、361、371、381、391、401、411、421、431、441、451、461、471、481、491、501、511、521、531、541、551、561、571、581、591、601、611、621、631、641、651、661、671、681、691、701、711、721、731、741、751、761、771、781、791、及び833~841のいずれか1つと少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号1、11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131、141、151、161、171、181、191、201、211、221、231、241、251、261、271、281、291、301、311、321、331、341、351、361、371、381、391、401、411、421、431、441、451、461、471、481、491、501、511、521、531、541、551、561、571、581、591、601、611、621、631、641、651、661、671、681、691、701、711、721、731、741、751、761、771、781、791、及び833~841のいずれか1つと少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号1、11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131、141、151、161、171、181、191、201、211、221、231、241、251、261、271、281、291、301、311、321、331、341、351、361、371、381、391、401、411、421、431、441、451、461、471、481、491、501、511、521、531、541、551、561、571、581、591、601、611、621、631、641、651、661、671、681、691、701、711、721、731、741、751、761、771、781、791、及び833~841のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号6、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、126、136、146、156、166、176、186、196、206、216、226、236、246、256、266、276、286、296、306、316、326、336、346、356、366、376、386、396、406、416、426、436、446、456、466、476、486、496、506、516、526、536、546、556、566、576、586、596、606、616、626、636、646、656、666、676、686、696、706、716、726、736、746、756、766、776、786、及び796のいずれか1つと少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号6、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、126、136、146、156、166、176、186、196、206、216、226、236、246、256、266、276、286、296、306、316、326、336、346、356、366、376、386、396、406、416、426、436、446、456、466、476、486、496、506、516、526、536、546、556、566、576、586、596、606、616、626、636、646、656、666、676、686、696、706、716、726、736、746、756、766、776、786、及び796のいずれか1つと少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号6、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、126、136、146、156、166、176、186、196、206、216、226、236、246、256、266、276、286、296、306、316、326、336、346、356、366、376、386、396、406、416、426、436、446、456、466、476、486、496、506、516、526、536、546、556、566、576、586、596、606、616、626、636、646、656、666、676、686、696、706、716、726、736、746、756、766、776、786、及び796のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号11と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号11と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号11のヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号16と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号16と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号16のヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片はPAR2に結合する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、トリプシン、トリプターゼ及び/又はマトリプターゼのPAR2との相互作用を妨げる。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、トリプシン、トリプターゼ及び/又はマトリプターゼによるPAR2の切断を妨げる。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、PAR2の細胞外ドメインの切断を妨げる。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、テザーリガンドの露出を阻害する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、テザーリガンドのPAR2の第2の膜貫通ループとの相互作用を妨げる。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、pH6.0よりpH7.4でより高い親和性を有してPAR2に結合する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、PAR2結合アッセイにおいて、pH7.4で配列番号3~5及び8~10のCDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、100nM未満のIC50を有する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、PAR2結合アッセイにおいて、pH7.4で配列番号3~5及び8~10のCDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、50nM未満のIC50を有する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、PAR2結合アッセイにおいて、pH7.4で配列番号3~5及び8~10のCDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、40nM未満のIC50を有する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、PAR2結合アッセイにおいて、pH6.0で配列番号3~5及び8~10のCDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、500nMより大きいIC50を有する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、PAR2結合アッセイにおいて、pH6.0で配列番号3~5及び8~10のCDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、1000nMより大きいIC50を有する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、PAR2結合アッセイにおいて、pH6.0で配列番号3~5及び8~10のCDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、1100nMより大きいIC50を有する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、PAR2結合アッセイにおいて、配列番号3~5及び8~10のCDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、pH6.0よりpH7.4で20倍を超えて低いIC50を有する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、PAR2結合アッセイにおいて、配列番号3~5及び8~10のCDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、pH6.0よりpH7.4で25倍を超えて低いIC50を有する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、PAR2結合アッセイにおいて、配列番号3~5及び8~10のCDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、pH6.0よりpH7.4で30倍を超えて低いIC50を有する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、ヒトA549細胞におけるカルシウム流入アッセイにおいて3.0×10-10M未満のIC50を有する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、ヒトA549細胞におけるカルシウム流入アッセイにおいて1.5×10-10M未満のIC50を有する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、ラットKNRK細胞におけるカルシウム流入アッセイにおいて7.0×10-10M未満のIC50を有する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、ラットKNRK細胞におけるカルシウム流入アッセイにおいて5.5×10-10M未満のIC50を有する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、カニクイザルCYNOM-K1細胞におけるカルシウム流入アッセイにおいて7.0×10-11M未満のIC50を有する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、カニクイザルCYNOM-K1細胞におけるカルシウム流入アッセイにおいて5.0×10-11M未満のIC50を有する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、マウスLL/2細胞におけるカルシウム流入アッセイにおいて6.0×10-11M未満のIC50を有する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、マウスLL/2細胞におけるカルシウム流入アッセイにおいて4.0×10-11M未満のIC50を有する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、ヒスチジン改変を欠く抗体又は抗原結合断片より遅く、治療された患者の血清からなくなる。いくつかの実施形態では、任意選択的に存在するヒスチジン又はヒスチジン(複数)は、PAR2結合アッセイにおいて7.4のpHで試験する場合、配列番号2のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号7のアミノ酸配列を有するVLを有する抗体又は抗原結合断片と比較して、ヒトPAR2に対する抗体又はその抗原結合断片の結合親和性を1000、800、700、500、400、300、200、100、50又は10倍以下低減する。
【0014】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書で開示される抗体又は抗原結合断片のいずれかを発現することが可能な核酸を提供する。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号1、11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131、141、151、161、171、181、191、201、211、221、231、241、251、261、271、281、291、301、311、321、331、341、351、361、371、381、391、401、411、421、431、441、451、461、471、481、491、501、511、521、531、541、551、561、571、581、591、601、611、621、631、641、651、661、671、681、691、701、711、721、731、741、751、761、771、781、791、及び833~841のいずれか1つと少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号1、11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131、141、151、161、171、181、191、201、211、221、231、241、251、261、271、281、291、301、311、321、331、341、351、361、371、381、391、401、411、421、431、441、451、461、471、481、491、501、511、521、531、541、551、561、571、581、591、601、611、621、631、641、651、661、671、681、691、701、711、721、731、741、751、761、771、781、791、及び833~841のいずれか1つと少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号1、11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131、141、151、161、171、181、191、201、211、221、231、241、251、261、271、281、291、301、311、321、331、341、351、361、371、381、391、401、411、421、431、441、451、461、471、481、491、501、511、521、531、541、551、561、571、581、591、601、611、621、631、641、651、661、671、681、691、701、711、721、731、741、751、761、771、781、791、及び833~841のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号6、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、126、136、146、156、166、176、186、196、206、216、226、236、246、256、266、276、286、296、306、316、326、336、346、356、366、376、386、396、406、416、426、436、446、456、466、476、486、496、506、516、526、536、546、556、566、576、586、596、606、616、626、636、646、656、666、676、686、696、706、716、726、736、746、756、766、776、786、及び796のいずれか1つと少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号6、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、126、136、146、156、166、176、186、196、206、216、226、236、246、256、266、276、286、296、306、316、326、336、346、356、366、376、386、396、406、416、426、436、446、456、466、476、486、496、506、516、526、536、546、556、566、576、586、596、606、616、626、636、646、656、666、676、686、696、706、716、726、736、746、756、766、776、786、及び796のいずれか1つと少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号6、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、126、136、146、156、166、176、186、196、206、216、226、236、246、256、266、276、286、296、306、316、326、336、346、356、366、376、386、396、406、416、426、436、446、456、466、476、486、496、506、516、526、536、546、556、566、576、586、596、606、616、626、636、646、656、666、676、686、696、706、716、726、736、746、756、766、776、786、及び796のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号11と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号11と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号11のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号16と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号16と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号16のヌクレオチド配列を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書で開示される核酸のいずれかを含むベクターを提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書で開示される核酸のいずれか1つ以上を含むベクターのセットを提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書で開示されるベクターのいずれか1つ以上を含む宿主細胞を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態では、本開示は、薬学的に許容される担体及び本明細書で開示される抗体又は抗原結合断片のいずれかを含む組成物を提供する。
【0018】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書で開示される抗体又はその抗原結合断片のいずれかを含む凍結乾燥組成物を提供する。
【0019】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書で開示される抗体又はその抗原結合断片のいずれかを含む再構成された凍結乾燥組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、舐剤、噴霧剤、経口投与、遅延放出又は持続放出、経粘膜投与、シロップ剤、粘膜付着性、バッカル製剤、粘膜付着性錠剤、局所投与、非経口投与、注射、皮下投与、経口溶液、直腸投与、バッカル投与又は経皮投与による投与のために製剤化される。
【0020】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書で開示される抗体若しくはその抗原結合断片のいずれか又は本明細書で開示される組成物のいずれかを含むキットを提供する。
【0021】
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とする対象において疼痛を治療するための方法であって、治療有効量の本明細書で開示される抗体又は抗原結合断片のいずれかを対象に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、必要とする対象において疼痛を治療するための方法であって、治療有効量の本明細書で開示される組成物のいずれかを対象に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、疼痛は、侵害受容性疼痛、神経因性疼痛、及び混合型疼痛からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、疼痛は、頭痛、慢性頭痛、片頭痛、癌、ウイルス感染、関節リウマチ、変形性関節症、クローン病、肝疾患、多発性硬化症、脊髄損傷、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性ニューロパシー、腰痛、炎症性心疾患、腎疾患、胃炎、歯肉炎、歯周疾患、喘息、慢性閉塞性肺疾患、自己免疫疾患、過敏性腸症候群、線維筋痛症、下肢痛、脚不穏症候群、糖尿病性ニューロパシー、アレルギー病態、外科手技、急性若しくは慢性の身体的傷害、骨折若しくは圧挫、脊髄損傷、炎症性疾患、非炎症性の神経因性疼痛病態若しくは機能傷害性疼痛病態、又はこれらの組み合わせと関連する。いくつかの実施形態では、疼痛は変形性関節症疼痛である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0022】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書で開示される抗体又は抗原結合断片のいずれかを作製する方法であって、培養細胞において本明細書で開示される核酸のいずれかを発現する工程、抗体又は抗原結合断片を精製する工程を含む方法を提供する。
【0023】
提出された本特許又は特許出願は、有色で作成された少なくとも1つの図面を含有する。有色の図面を有する本特許又は特許出願公報のコピーは、入手を要請し、必要な手数料を支払えば、当該特許庁により提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A-1B】Par0067の同じCDRと比較した様々なクローンのVH VH CDR2(それぞれ掲載順に配列番号4、14、24、34、44、54、64、74、84、94、104、114、124、134、144、154、164、174、184、194、204、214、224、234、244、254、264、274、284、294、304、314、324、334、344、354、364、374、384、394、404、414、424、434、444、454、464、474、484、494、504、514、524、534、544、554、564、574、584、594、604、614、624、634、644、654、664、674、684、694、704、714、724、734、744、754、764、774、784、及び794)並びにCDR3(それぞれ掲載順に配列番号5、15、25、35、45、55、65、75、85、95、105、115、125、135、145、155、165、175、185、195、205、215、225、235、245、255、265、275、285、295、305、315、325、335、345、355、365、375、385、395、405、415、425、435、445、455、465、475、485、495、505、515、525、535、545、555、565、575、585、595、605、615、625、635、645、655、665、675、685、695、705、715、725、735、745、755、765、775、785、及び795)における配列の相違を示す表である。CDR1及びフレームワーク領域は、Par0067及び示されるクローンの全てについて同じである(すなわち、Par0067及び当該クローンの各々は、配列番号3及び803~806の配列を含んだ)。
図2A-2B】Par0067の同じCDRと比較した様々なクローンのVL CDR3(それぞれ掲載順に配列番号10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、及び800)における配列の相違を示す表である。CDR1、CDR2及びフレームワーク領域は、Par0067及び示されるクローンの全てについて同じである(すなわち、当該クローンは、配列番号8、9、及び807~810の配列を含んだ)。
図3】様々なIgG型抗体を用いた細胞力価アッセイからのIC50データを提供する。細胞アッセイの各々で使用される細胞の種類が示される。NI=非阻害性。
図4A】当該当量濃度での抗体へのアゴニスト反応と比較した、A549細胞におけるトリプシンに対するPaB670129に関するIC50曲線を提供する。
図4B】異なるPAR2プロテアーゼ活性体に対するPaB670129に関するIC50曲線を提供する。
図5A-5F】ラット脊髄後根神経節(DRG)感覚神経又は非神経細胞をPaB670129(本明細書においてはPaB670129としてもまた参照される)の存在下又は非存在下でマトリプターゼ(matripase)により処理した実験の結果を示す。アイソタイプ対照(20nM)で前処理されたラットDRG感覚神経は、マトリプターゼ誘導性カルシウムトランジェントを示す(5A)。PaB670129 IgG1TM(20nM)で前処理された感覚神経は、マトリプターゼに対して応答しない(5B);(5C)において定量化されたマトリプターゼに対して応答する神経の%。アイソタイプ対照(20nM)で前処理されたDRGの非神経細胞もまた、マトリプターゼ誘導性カルシウムトランジェントを示す(8D)が、PaB670129 IgG1TM(20nM)で前処理された非神経細胞は示さなかった(5E);(5F)において定量化されたマトリプターゼに対して応答する非神経細胞の%。図5A~5Eは、配列番号832として「LIGRLO」を開示する。
図6】ヒトA549細胞におけるトロンビン誘導性PAR1活性化に対するPaB670129(対 抗PAR1抗体又はボラパクサール)の効果を示す。
図7A】ラットにおいてモノ-ヨード酢酸(MIA)により誘導される同側/対側過感受性のパーセントに対する異なる治療(PAR2抗体、Par0067を含む)の効果を示すグラフを表す。
図7B】ラットにおいてMIAにより誘導される同側/対側過感受性のパーセントに対する異なる用量のPaB670129又はアイソタイプ対照抗体の効果を示すグラフを表す。「i.v.」は静脈内を意味し、「p.o.」はper os(経口)を意味する。
図8】マウスにおいて末梢神経の部分結紮により誘導される同側/対側過感受性のパーセントに対する異なる用量のPaB670129又はアイソタイプ対照抗体の効果を示すグラフを表す。「s.c.」は、皮下を意味する。N=1群当たり9~10。データを、依存因子として時間及び治療を用いる二元配置ANOVAを使用して解析した。その結果生じた統計的有意性を、テューキーの事後検定を用いて得た。個々の比較は、*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001 対 手術+アイソタイプ対照 10mg/kgで示される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示を説明する前に、この開示は、記載される特定の方法及び実験条件に限定されず、そのため、このような方法及び条件は変更される場合があることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載するためだけのものであり、限定を意図しないことも理解されたい。
【0026】
特に他で定義されない限り、本明細書に使用される全ての技術的用語及び科学的用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味と同様の意味を有する。
【0027】
本明細書に記載されるものと同様又は等価の任意の方法及び材料を本開示の実施及び試験において使用できるが、好ましい方法及び材料はここで記載される。
【0028】
A.定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、別途文脈が明白に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0029】
本明細書では、アミノ酸は、一般に知られる3文字記号又はIUPAC-IUB生化学命名法委員会(Biochemical Nomenclature Commission)により推奨される1文字記号のいずれかによって参照され得る。ヌクレオチドは、同様に、一般に受け入れられている1文字コードで参照され得る。
【0030】
本明細書で使用する場合、「及び/又は」は、2つの指定される特徴又は構成要素の各々の、他方を伴うか又は伴わない特定の開示と解釈されるべきであることをここで指摘すると都合がよい。例えば「A及び/又はB」は、ちょうど本明細書中に各々が個別に記載されているように、(i)A、(ii)B並びに(iii)A及びBの各々の特定の開示であると解釈されるものとする。
【0031】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書で互換的に使用されて、アミノ酸残基のポリマーを指す。本用語は、天然に存在するアミノ酸の重合体及び天然に存在しないアミノ酸の重合体のみならず、1個以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学的模倣物であるアミノ酸重合体に適用される。
【0032】
本明細書で使用する場合、語句「プロテアーゼ活性化受容体2」、「PAR2」などは、配列番号801のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を有するヒトPAR2タンパク質、又はその生物学的に活性な断片を指す。
【0033】
用語「テザーリガンド」は、PAR2受容体それ自体に結合し、且つそれを活性化するPAR2のN末端部分の領域を指す。いくつかの実施形態では、PAR2のテザーリガンド部分は、プロテアーゼ(例えば、トロンビン又はトリプシン)がPAR2酵素の一部をタンパク分解性に切断するまで露出されない。いくつかの実施形態では、テザーリガンドは、配列番号802のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるポリペプチドに相当する。
【0034】
本明細書で使用する場合、「PAR2に結合する抗体」、「抗PAR2抗体」などは、膜結合型PAR2又はその断片に結合する抗体、及びその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、抗PAR2抗体又はその抗原結合断片は、PAR2のテザーリガンド部分に結合する。
【0035】
B.抗体及びその抗原結合断片
本明細書で使用する場合、「本開示の抗体又は抗原結合断片」は、本明細書で提供される抗体及び抗原結合断片のいずれか1つ以上を指す。本開示の抗体及び抗原結合断片は、重鎖可変ドメインを含む重鎖(VH)及び軽鎖可変ドメインを含む軽鎖(VL)を含む。VHドメインは、本明細書で提供され、且つChotia、Kabat若しくはIMGTシステムによって定義又は同定されるCDRのいずれかなどの、3つのCDRを含む。これらのCDRは通常、フレームワーク領域(FR)とともに点在し、且つ合わせてVHドメインを含む。同様に、VLは、本明細書で提供され、且つChotia、Kabat若しくはIMGTシステムによって定義されるCDRのいずれかなどの、3つのCDRを含む。これらのCDRは通常、フレームワーク領域(FR)とともに点在し、且つ合わせてVLドメインを含む。FR1、FR2、FR3、及び/又はFR4などのFR領域は、同様に、Chotia、Kabat若しくはIMGTシステムによって定義又は同定することができる。本出願を通して、CDRが存在し、Chothia、Kabat若しくはIMGTシステムによって同定又は定義される場合、CDRがこれらのシステム(例えば、Chothia CDR、Kabat CDR又はIMGT CDR)に従うことを意味する。Chothia CDR、Kabat CDR又はIMGT CDRが参照されているかどうかを示すために、これらの用語のいずれかが使用され得る。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「抗体」はまた、全長抗体分子の抗原結合断片を含む。本明細書で使用する場合、抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」などの用語は、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、天然に存在する、酵素的に得られる、合成の、若しくは遺伝子改変された任意のポリペプチド又は糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合断片は、例えば、タンパク質消化又は抗体の可変ドメイン及び任意選択的に定常ドメインをコードするDNAの操作並びに発現を含む組換え遺伝子工学技術などの任意の好適な標準的技術を用いて全長抗体分子から得てもよい。このようなDNAは知られており且つ/若しくは例えば民間の供給元、DNAライブラリー(例えばファージ-抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であるか、又は合成することができる。当該DNAを配列決定してもよく、且つ化学的に又は分子生物学の技術を用いることによって操作して、例えば、1つ以上の可変及び/又は定常ドメインを好適な構成に配置するか、又はコドンを導入するか、システイン残基を作り出すか、アミノ酸を修飾するか、付加するか若しくは欠失させるなどしてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、本開示は、pH6.0よりpH7.4でより高い親和性を有する、PAR2に結合する抗体又はその抗原結合断片を提供する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、pH6.0よりpH7.4で少なくとも5、10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100倍高い親和性を有してPAR2に結合する。いくつかの実施形態では、本開示は、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体又はその抗原結合断片を提供し、VHは:i)配列番号3のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号3の配列中に任意選択的に存在するVH-CDR1;ii)配列番号4のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号4の配列中に任意選択的に存在するVH-CDR2;及びiii)配列番号5のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号5の配列中に任意選択的に存在するVH-CDR3を含み;且つVLは:i)配列番号8のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号8の配列中に任意選択的に存在するVL-CDR1;ii)配列番号9のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号9の配列中に任意選択的に存在するVL-CDR2;及びiii)配列番号10のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号10の配列中に任意選択的に存在するVL-CDR3を含み;アミノ酸置換、欠失又は挿入は、PAR2結合アッセイにおいて7.4のpHで試験する場合、配列番号2のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号7のアミノ酸配列を有するVLを有する抗体又は抗原結合断片と比較して、ヒトPAR2に対する抗体又はその抗原結合断片の結合親和性を1000、800、700、500、400、300、200、100、50、10又は5倍以下低減する。いくつかの実施形態では、アミノ酸置換、欠失又は挿入は、相同置換を含む。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号2の配列に存在するCDRアミノ酸配列と比較して、VH CDR中において1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個以下のアミノ酸置換、挿入又は欠失を有する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号7の配列に存在するCDRアミノ酸配列と比較して、VL CDR中において1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個以下のアミノ酸置換、挿入又は欠失を有する。いくつかの実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸置換、挿入又は欠失は、ヒスチジンによる1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の置換である。
【0038】
いくつかの実施形態では、本開示は、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体又はその抗原結合断片を提供し、ここで、VHは:i)配列番号13のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号13の配列中に任意選択的に存在するVH-CDR1;ii)配列番号14のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号14の配列中に任意選択的に存在するVH-CDR2;及びiii)配列番号15のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は15個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号15の配列中に任意選択的に存在するVH-CDR3を含み;且つVLは:i)配列番号18のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号18の配列中に任意選択的に存在するVL-CDR1;ii)配列番号19のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号19の配列中に任意選択的に存在するVL-CDR2;及びiii)配列番号20のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号20の配列中に任意選択的に存在するVL-CDR3を含み;アミノ酸置換、欠失又は挿入は、PAR2結合アッセイにおいて7.4のpHで試験する場合、配列番号12のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号17のアミノ酸配列を有するVLを有する抗体又は抗原結合断片と比較して、ヒトPAR2に対する抗体又はその抗原結合断片の結合親和性を1000、800、700、500、400、300、200、100、50、10又は5倍以下低減する。いくつかの実施形態では、アミノ酸置換、欠失又は挿入は、相同置換を含む。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号12の配列に存在するCDRアミノ酸配列と比較して、VH CDR中において1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個以下のアミノ酸置換、挿入又は欠失を有する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号17の配列に存在するCDRアミノ酸配列と比較して、VL CDR中において1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個以下のアミノ酸置換、挿入又は欠失を有する。いくつかの実施形態では、本開示は、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体又はその抗原結合断片を提供し、ここで、VHは:i)配列番号13のアミノ酸配列を有するVH-CDR1、ii)配列番号14のアミノ酸配列を有するVH-CDR2、iii)配列番号15のアミノ酸配列を有するVH-CDR3を含み、且つVLは:i)配列番号18のアミノ酸配列を有するVL-CDR1、ii)配列番号19のアミノ酸配列を有するVL-CDR2、iii)配列番号20のアミノ酸配列を有するVL-CDR3を含む。いくつかの実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸置換、挿入又は欠失は、ヒスチジンによる1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の置換である。
【0039】
いくつかの実施形態では、本開示は、抗体又は抗原結合断片を提供し、ここで、抗体又は抗原結合断片は、軽鎖可変(VL)ドメイン及び重鎖可変(VH)ドメインを含み;VHドメインは、配列番号2、12、22、32、42、52、62、72、82、92、102、112、122、132、142、152、162、172、182、192、202、212、222、232、242、252、262、272、282、292、302、312、322、332、342、352、362、372、382、392、402、412、422、432、442、452、462、472、482、492、502、512、522、532、542、552、562、572、582、592、602、612、622、632、642、652、662、672、682、692、702、712、722、732、742、752、762、772、782、及び792のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列のCDRのうち少なくとも1つ、2つ又は3つ全て(例えば、Chothia、IMGT又はKabatシステムのいずれかを用いて測定する場合)を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、抗体又は抗原結合断片を提供し、ここで、抗体又は抗原結合断片は、軽鎖可変(VL)ドメイン及び重鎖可変(VH)ドメインを含み;VHドメインは、配列番号2、12、22、32、42、52、62、72、82、92、102、112、122、132、142、152、162、172、182、192、202、212、222、232、242、252、262、272、282、292、302、312、322、332、342、352、362、372、382、392、402、412、422、432、442、452、462、472、482、492、502、512、522、532、542、552、562、572、582、592、602、612、622、632、642、652、662、672、682、692、702、712、722、732、742、752、762、772、782、及び792のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列のCDR1、CDR2及びCDR3(例えば、Chothia、IMGT又はKabatシステムのいずれかを用いて測定する場合)を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、抗体又は抗原結合断片を提供し、ここで、抗体又は抗原結合断片は、軽鎖可変(VL)ドメイン及び重鎖可変(VH)ドメインを含み;VHドメインは、配列番号2又は12に記載されるアミノ酸配列のCDRのうち少なくとも1つ、2つ又は3つ全て(例えば、Chothia、IMGT又はKabatシステムのいずれかを用いて測定する場合)を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、抗体又は抗原結合断片を提供し、ここで、抗体又は抗原結合断片は、軽鎖可変(VL)ドメイン及び重鎖可変(VH)ドメインを含み;VLドメインは、配列番号7、17、27、37、47、57、67、77、87、97、107、117、127、137、147、157、167、177、187、197、207、217、227、237、247、257、267、277、287、297、307、317、327、337、347、357、367、377、387、397、407、417、427、437、447、457、467、477、487、497、507、517、527、537、547、557、567、577、587、597、607、617、627、637、647、657、667、677、687、697、707、717、727、737、747、757、767、777、787、及び797のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列のCDRのうち少なくとも1つ、2つ又は3つ全て(例えば、Chothia、IMGT又はKabatシステムのいずれかを用いて測定する場合)を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、抗体又は抗原結合断片を提供し、ここで、抗体又は抗原結合断片は、軽鎖可変(VL)ドメイン及び重鎖可変(VH)ドメインを含み;VLドメインは、配列番号7、17、27、37、47、57、67、77、87、97、107、117、127、137、147、157、167、177、187、197、207、217、227、237、247、257、267、277、287、297、307、317、327、337、347、357、367、377、387、397、407、417、427、437、447、457、467、477、487、497、507、517、527、537、547、557、567、577、587、597、607、617、627、637、647、657、667、677、687、697、707、717、727、737、747、757、767、777、787、及び797のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列のCDR1、CDR2及びCDR3(例えば、Chothia、IMGT又はKabatシステムのいずれかを用いて測定する場合)を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、抗体又は抗原結合断片を提供し、ここで、抗体又は抗原結合断片は、軽鎖可変(VL)ドメイン及び重鎖可変(VH)ドメインを含み;VLドメインは、配列番号7又は17に記載されるアミノ酸配列のCDRのうち少なくとも1つ、2つ又は3つ全て(例えば、Chothia、IMGT又はKabatシステムのいずれかを用いて測定する場合)を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、抗体又は抗原結合断片を提供し、ここで、抗体又は抗原結合断片は、軽鎖可変(VL)ドメイン及び重鎖可変(VH)ドメインを含み;VHドメインは、配列番号2、12、22、32、42、52、62、72、82、92、102、112、122、132、142、152、162、172、182、192、202、212、222、232、242、252、262、272、282、292、302、312、322、332、342、352、362、372、382、392、402、412、422、432、442、452、462、472、482、492、502、512、522、532、542、552、562、572、582、592、602、612、622、632、642、652、662、672、682、692、702、712、722、732、742、752、762、772、782、及び792のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列のCDR1、CDR2及びCDR3(例えば、Chothia、IMGT又はKabatシステムのいずれかを用いて測定する場合)を含み、且つVLドメインは、配列番号7、17、27、37、47、57、67、77、87、97、107、117、127、137、147、157、167、177、187、197、207、217、227、237、247、257、267、277、287、297、307、317、327、337、347、357、367、377、387、397、407、417、427、437、447、457、467、477、487、497、507、517、527、537、547、557、567、577、587、597、607、617、627、637、647、657、667、677、687、697、707、717、727、737、747、757、767、777、787、及び797のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列のCDR1、CDR2及びCDR3(例えば、Chothia、IMGT又はKabatシステムのいずれかを用いて測定する場合)を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、抗体又は抗原結合断片を提供し、ここで、抗体又は抗原結合断片は、軽鎖可変(VL)ドメイン及び重鎖可変(VH)ドメインを含み;VHドメインは、配列番号2又は12に記載されるアミノ酸配列のCDR1、CDR2及びCDR3(例えば、Chothia、IMGT又はKabatシステムのいずれかを用いて測定する場合)を含み、且つVLドメインは、配列番号7又は17に記載されるアミノ酸配列のCDR1、CDR2及びCDR3(例えば、Chothia、IMGT又はKabatシステムのいずれかを用いて測定する場合)を含む。
【0040】
このような抗体をコードするヌクレオチド配列が決定されると、キメラ抗体又はヒト化抗体が組換え法により作製され得る。当該抗体をコードする核酸は、当技術分野で一般に知られ、且つ本明細書で記載される材料及び手順を用いて宿主細胞に導入され、発現される。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号1、11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131、141、151、161、171、181、191、201、211、221、231、241、251、261、271、281、291、301、311、321、331、341、351、361、371、381、391、401、411、421、431、441、451、461、471、481、491、501、511、521、531、541、551、561、571、581、591、601、611、621、631、641、651、661、671、681、691、701、711、721、731、741、751、761、771、781、791、及び833~841のいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号1又は11と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号6、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、126、136、146、156、166、176、186、196、206、216、226、236、246、256、266、276、286、296、306、316、326、336、346、356、366、376、386、396、406、416、426、436、446、456、466、476、486、496、506、516、526、536、546、556、566、576、586、596、606、616、626、636、646、656、666、676、686、696、706、716、726、736、746、756、766、776、786、及び796のいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号6又は16と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる。
【0041】
本開示は、PAR2に結合する抗PAR2抗体及びその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、中和及び/又は遮断抗PAR2抗体又は抗原結合断片である。本明細書で使用する場合、「中和」若しくは「遮断」抗体又は抗原結合断片は、PAR2との結合が:(i)PAR2とプロテアーゼ(例えば、トリプシン、トリプターゼ及び/又はマトリプターゼ)の間の相互作用を妨げ;(ii)プロテアーゼによるPAR2の切断を阻害し;(iii)PAR2シグナル伝達若しくはPAR2活性化を阻害し;且つ/又は(iv)PAR2の少なくとも1つの生物学的機能の阻害をもたらす抗体又は抗原結合断片を指すことが意図される。いくつかの実施形態では、本開示の抗体又は抗原結合断片はPAR2の活性化を阻害する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、不活性型の切断されていないPAR2から活性型の切断されたPAR2への変換を阻害する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、テザーリガンドの露出を阻害する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、そのテザーリガンドによるPAR2受容体の活性化を阻害する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、テザーリガンドのPAR2の第2の膜貫通ドメインへの結合を阻害する。抗PAR2中和又は遮断抗体によりもたらされる阻害は、それが適切なアッセイを用いて検出可能である限り、完全である必要はない。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、阻害されていない活性型PAR2と比較して、PAR2の活性を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%阻害する。代表的な抗PAR2抗体又は抗原結合断片の活性を検出するためのアッセイのいくつかの例は、例証の節において記載される。当業者は、さらなる抗PAR2抗体活性アッセイを理解している。
【0042】
特定の実施形態では、本明細書で開示される抗体又は抗原結合断片のいずれかは、PAR2とプロテアーゼの間の相互作用を妨げる。いくつかの実施形態では、プロテアーゼはトリプシンである。いくつかの実施形態では、プロテアーゼは好中球エラスターゼである。いくつかの実施形態では、プロテアーゼは好中性プロテイナーゼ3である。いくつかの実施形態では、プロテアーゼはマスト細胞トリプターゼである。いくつかの実施形態では、プロテアーゼは組織因子/因子VIIa/因子Xaである。いくつかの実施形態では、プロテアーゼはカリクレイン関連ペプチダーゼである。いくつかの実施形態では、プロテアーゼは膜結合型セリンプロテイナーゼ-1/マトリプターゼ1である。いくつかの実施形態では、プロテアーゼは寄生体システインプロテイナーゼである。いくつかの実施形態では、抗PAR2抗体又は抗原結合断片は、例証の節で記載されるものなどの結合アッセイによって測定されるとおり、約15nM未満のIC50値を有して、インビトロでのPAR2とプロテアーゼ(例えば、トリプシン)の間の相互作用を遮断する。ある種の実施形態では、本開示の抗体又は抗原結合断片は、約200nM、150nM、100nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、1nM、500pM、400pM、200pM、100pM、50pM、5pM、1pM又は0.1pM未満のIC50値を有して、pH7.4で、インビトロでのPAR2とプロテアーゼ(例えば、トリプシン)の間の相互作用を遮断する。ある種の実施形態では、本開示の抗体又は抗原結合断片は、約300nM、500nM、750nM、1000nM、1100nM、又は1200nMより大きいIC50値を有して、pH6.0で、インビトロでのPAR2とプロテアーゼ(例えば、トリプシン)の間の相互作用を遮断する。ある種の実施形態では、抗PAR2抗体又はその断片のIC50は、本明細書で提供される例証の節において記載されるエピトープ競合アッセイなどのエピトープ競合アッセイにおいて測定される。いくつかの実施形態では、抗PAR2抗体又はその断片のIC50は、細胞力価アッセイにおいて測定される。いくつかの実施形態では、細胞力価アッセイは、ヒト細胞(例えば、A549細胞)、ラット細胞(例えば、KNRK細胞)、カニクイザル細胞(例えば、CYNOM-K1細胞)、又はマウス細胞(例えば、LL/2細胞)を利用する。いくつかの実施形態では、細胞力価アッセイは、カルシウム流入アッセイを利用する(例えば、本明細書で提供される例証の節において記載されるカルシウム流入アッセイ)。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、1nM、500pM、400pM、200pM、100pM、50pM、10pM、5pM、1pM又は0.1pM未満のIC50を有して、カルシウム流入アッセイにおけるカルシウム流入を阻害する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、トリプシンによるPAR2の異常な活性化を妨げる。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、炎症誘導性疼痛を阻害/低減する。
【0043】
特定の実施形態では、本明細書で開示される抗体又は抗原結合断片のいずれかは、PAR2とプロテアーゼ(例えば、トリプシン)の間の相互作用を妨げる。いくつかの実施形態では、抗体は、プロテアーゼ(例えば、トリプシン)が、PAR2と結合し、PAR2を切断し、且つ/又はPAR2を活性化することを妨げる。本開示は、生理的な細胞外pH(すなわち、pH7.4)で高親和性を有してPAR2分子に結合する抗PAR2抗体及びその抗原結合断片を提供する。いくつかの実施形態では、抗体及び抗体の抗原結合断片は、約5nM、1nM、900pM、800pM、700pM、650pM、600pM、500pM、200pM、100pM又は50pM未満のKを有してpH7.4(例えば、25℃又は37℃で)でPAR2に結合する。いくつかの実施形態では、抗体及び抗体の抗原結合断片は、約1nM、5nM、10nM、15nM、20nM、25nM、30nM、40nM、50nM、60nM、80nM、又は100nMより大きいKを有して弱酸性pH(pH6.0など)(例えば、25℃又は37℃で)でPAR2に結合する。いくつかの実施形態では、弱酸性pHは、エンドソーム区画のpHである。いくつかの実施形態では、Kは、表面プラズモン共鳴(SPR)又は水晶振動子マイクロバランス(QCM)を用いるなどの、現在の標準的な方法に従って測定することができる。
【0044】
本開示はまた、pH7.4における25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴などのアッセイを用いて測定されるとおり、約1.5分、1.75分、2分、2.5分、3分、5分、10分、20分、又は30分を超える解離半減期(t1/2)を有してPAR2に特異的に結合する抗PAR2抗体及びその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、抗PAR2抗体及びその抗原結合断片は、弱酸性pH(例えば、pH6)における25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴などのアッセイを用いて測定されるとおり、約1分、45秒、30秒、20秒、15秒、13秒、7秒、5秒、又は3秒未満の解離半減期(t1/2)を有してPAR2に結合する。いくつかの実施形態では、弱酸性pHは、エンドソーム区画のpHである。いくつかの実施形態では、Kは、表面プラズモン共鳴(SPR)又は水晶振動子マイクロバランス(QCM)を用いるなどの、現在の標準的な方法に従って測定することができる。
【0045】
本開示の抗体又は抗原結合断片は、前述の生物学的特徴、又はその任意の組み合わせの1つ以上を有し得る。本開示の抗体の他の生物学的特徴は、本明細書で提供される例証の節を含む本開示の確認から当業者に明らかであろう。
【0046】
ポリペプチドに適用する場合、用語「実質的な類似性」又は「実質的に類似の」は、2つのペプチド配列が、既定のギャップ重みを用いるGAP又はBESTFITプログラムなどにより最適にアラインメントされる場合に、少なくとも95%の配列同一性、より一層好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換により異なる。いくつかの実施形態では、本明細書で開示される抗体又は抗原結合断片のいずれかは、参照配列(例えば、配列番号2、7、12又は17のアミノ酸配列のいずれか)と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の保存的アミノ酸置換を含む。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷又は疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換される置換である。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能特性を実質的に変えない。2つ以上のアミノ酸配列が、保存的置換によって互いに異なる場合、パーセント配列同一性又は類似度を調整して、置換の保存的性質を上方に補正してもよい。この調整を行うための手段は当業者によく知られている。例えば、Pearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307-331を参照されたい。類似の化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸の群の例としては、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン;(2)脂肪族ヒドロキシル側鎖:セリン及びトレオニン;(3)アミド含有側鎖:アスパラギン及びグルタミン;(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン;(5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、及びヒスチジン;(6)酸性側鎖:アスパラギン酸及びグルタミン酸、並びに(7)硫黄含有側鎖はシステイン及びメチオニンであることが挙げられる。好ましい保存的アミノ酸置換の群は:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、及びアスパラギン-グルタミンである。
【0047】
あるいは、保存的置換は、Gonnet et al.(1992)Science 256:1443-1445において開示されるPAM250対数尤度マトリクスにおいて正値を有する任意の変化である。「適度に保存的な」置換は、PAM250対数尤度マトリクスにおいて非負値を有する任意の変化である。
【0048】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)を異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのいくつかはさらに、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA及びIgAに分類される。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元配置はよく知られており、一般に、例えば、Abbas et al.Cellular and Mol.Immunology,4th ed.(W.B.Saunders,Co.,2000)において記載されている。抗体は、1つ以上の他のタンパク質又はペプチドとの抗体の共有結合性又は非共有結合性の会合により形成される、より大きな融合分子の一部であり得る。
【0049】
抗原結合断片の非限定的な例としては:(i)Fab断片;(ii)Fab’断片;(iii)F(ab’)2断片;(iv)Fd断片;(v)Fv断片;(vi)単鎖Fv(scFv)分子;(vii)dAb断片;及び(viii)抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小の認識単位(例えば、CDR3ペプチドなどの単離された相補性決定領域(CDR))、又は限定的なFR3-CDR3-FR4ペプチドが挙げられる。改変された他の分子、例えば、ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ラクダ科動物(cameliid)抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、アドネクチン、小モジュラー免疫医薬(small modular immunopharmaceuticals)(SMIP)、及びサメ可変IgNARドメインもまた、本明細書で使用される語句「抗原結合断片」に包含される。
【0050】
抗体の抗原結合断片は通常、少なくとも1つの可変ドメイン(例えば、VH又はVLの少なくとも1つ)を含むことになる。可変ドメインは、いずれのサイズ又はアミノ酸組成であってもよく、一般に、1つ以上のフレームワーク配列と隣接するか又はインフレームである少なくとも1つのCDRを含むことになる。VLドメインと会合したVHドメインを有する抗原結合断片では、VH及びVLドメインは、互いに対して任意の好適な配置で位置し得る。例えば、可変領域は、二量体であり得るし、且つVH-VH、VH-VL又はVL-VL二量体を含有し得る。あるいは、抗体の抗原結合断片は、単量体のVH又はVLドメインを含有してもよい。
【0051】
ある種の実施形態では、抗体の抗原結合断片は、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合で連結した少なくとも1つの可変ドメインを含有し得る。本開示の抗体の抗原結合断片内で見出され得る可変及び定常ドメインの非限定的な例示的配置としては:(i)VH-CH1;(ii)VH-CH2;(iii)VH-CH3;(iv)VH-CH1-CH2;(V)VH-CH1-CH2-CH3;(vi)VH-CH2-CH3;(vii)VH-CL;(viii)VL-CH1;(ix)VL-CH2;(x)VL-CH3;(xi)VL-CH1-CH2;(xii)VL-CH1-CH2-CH3;(xiii)VL-CH2-CH3;及び(xiv)VL-CLが挙げられる。上記の例示的配置のいずれかを含む可変及び定常ドメインの任意の配置において、可変及び定常ドメインは、互いに直接連結してもよいし、全体若しくは部分的なヒンジ又はリンカー領域によって連結してもよい。ヒンジ領域は、単一のポリペプチド分子における隣接した可変及び/又は定常ドメイン間の可動性又は半可動性の連結をもたらす少なくとも2個(例えば、5個、10個、15個、20個、40個、60個又はそれ以上)のアミノ酸からなり得る。いくつかの実施形態では、ヒンジ領域は、グリシン-セリンリンカーを含む。
【0052】
さらに、本開示の抗体の抗原結合断片は、互いに及び/又は1つ以上の単量体のVH若しくはVLドメインと非共有結合的に会合した(例えば、ジスルフィド結合によって)上に列記した可変及び定常ドメイン配置のいずれかのホモ二量体又はヘテロ二量体(又は他の多量体)を含み得る。
【0053】
全長抗体分子と同様に、抗原結合断片は、単一特異性又は多重特異性(例えば、二重特異性)であり得る。抗体の多重特異性抗原結合断片は通常、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含むことになり、ここで、各可変ドメインは、別々の抗原又は同じ抗原の異なるエピトープに特異的に結合することが可能である。本明細書で開示される例示的な二重特異性抗体フォーマットを含む任意の多重特異性抗体フォーマットは、当技術分野で利用可能な通例の技術を用いて、本開示の抗体の抗原結合断片との関係の中で使用するために適合され得る。
【0054】
本開示のある種の実施形態では、本開示の抗PAR2抗体はヒト抗体である。本明細書で使用する場合、用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変及び定常領域を有する抗体を含むことを意図する。本開示のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム若しくは部位特異的な変異誘発又はインビボでの体細胞変異により導入される変異)を、例えば、CDR、またいくつかの実施形態ではCDR3に含み得る。しかし、本明細書で使用する場合、用語「ヒト抗体」は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植された抗体を含むように意図されていない。
【0055】
本開示の抗体は、いくつかの実施形態において、組換えヒト抗体であり得る。本明細書で使用する場合、用語「組換えヒト抗体」は、組換え手段によって作製、発現、生成又は単離される全てのヒト抗体、例えば、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現される抗体(さらに後述する)、組換え体から単離された抗体、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリー(さらに後述する)、ヒト免疫グロブリン遺伝子が遺伝子導入されている動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylor et al.(1992)Nucl.Acids Res.20:6287-6295を参照されたい)、又はヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段によって作製、発現、生成若しくは単離された抗体を含むことを意図している。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変及び定常領域を有する。しかしながら、ある種の実施形態では、そのような組換えヒト抗体は、インビトロ変異誘発(又はヒトIg配列が遺伝子導入された動物が使用される場合、インビボ体細胞変異誘発)にかけられ、したがって、組換え抗体のVH領域及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列VH配列及びVL配列に由来し、それらと関係するが、インビボにおいてヒト抗体生殖細胞系列レパートリー内に天然に存在しない場合がある配列である。
【0056】
ヒト抗体は、ヒンジ異質性に関連する2つの形態で存在し得る。一方の形態では、免疫グロブリン分子は、二量体が鎖間重鎖ジスルフィド結合によって維持される、約150~160kDaの安定した四鎖構築物を含む。第2の形態では、二量体は鎖間ジスルフィド結合によって連結されておらず、約75~80kDaの分子が、共有結合で結合された軽鎖と重鎖で形成され、構成される(半抗体)。これらの形態は、親和性精製後でさえ分離することが極めて困難であった。
【0057】
種々のインタクトなIgGアイソタイプにおける第2の形態の出現頻度は、限定されるものではないが、抗体のヒンジ領域アイソタイプに関連する構造的相違に起因する。ヒトIgGヒンジのヒンジ領域における単一アミノ酸置換は、第2の形態の出現を、ヒトIgGヒンジを使用して通常観察されるレベルに有意に低減させることができる(Angal et al.(1993)Molecular Immunology 30:105)。本開示は、例えば、生産の際、所望の抗体形態の収率を向上させるために望ましい場合がある、ヒンジ、CH2又はCH3領域に1つ以上の変異を有する抗体を意図する。
【0058】
本開示の抗体は、単離された抗体又は単離された抗原結合断片であり得る。本明細書で使用する場合、「単離された抗体」又は「単離された抗原結合断片」は、その天然の環境の少なくとも1つの成分から同定並びに分離及び/又は回収された抗体又は抗原結合断片を意味する。例えば、生物体の少なくとも1つの成分から、又は抗体が自然に存在するか若しくは自然に産生される組織若しくは細胞から分離されたか又は取り出された抗体又は抗原結合断片は、本開示の目的のための「単離された抗体」又は「単離された抗原結合断片」である。単離された抗体はまた、組換え細胞内の生体内原位置の抗体を含む。単離された抗体又は抗原結合断片は、少なくとも1回の精製工程又は単離工程にかけられた抗体又は抗原結合断片である。ある種の実施形態によれば、単離された抗体又は抗原結合断片は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まない場合がある。
【0059】
本明細書で開示される抗PAR2抗体又は抗原結合断片は、抗体が由来する対応する生殖細胞系列配列と比較して、重鎖並びに軽鎖可変ドメインのフレームワーク及び/又はCDR領域において1つ以上のアミノ酸置換、挿入及び/又は欠失を含む場合がある。本開示は、本明細書で開示されるアミノ酸配列のいずれかに由来する抗体、及びその抗原結合断片を含み、ここで、1つ以上のフレームワーク及び/又はCDR領域内の1つ以上のアミノ酸は、抗体又は抗原結合断片が由来する生殖細胞系列配列の対応する残基に、又は別のヒト生殖細胞系列配列の対応する残基に、又は対応する生殖細胞系列残基の保存的アミノ酸置換に変異される(このような配列の変化は、本明細書では一括して「生殖細胞系列変異」と呼ばれる)。当業者は、本明細書で開示される重鎖及び軽鎖可変領域配列で出発して、1つ以上の個々の生殖細胞系列変異又はそれらの組合せを含む多数の抗体及び抗原結合断片を容易に生成することができる。ある種の実施形態では、VH及び/又はVLドメイン内のフレームワーク及び/又はCDR残基の全てが、抗体が由来する元の生殖細胞系列配列中で見出される残基に復帰変異される。他の実施形態では、特定の残基のみ、例えば、FR1の最初の8アミノ酸中若しくはFR4の最後の8アミノ酸中で見出される変異残基のみ、又はCDR1、CDR2若しくはCDR3内で見出される変異残基のみが、元の生殖細胞系列配列に復帰変異される。他の実施形態では、フレームワーク及び/又はCDR残基の1つ以上が、異なる生殖細胞系列配列(すなわち、抗体が本来由来した生殖細胞系列配列とは異なる生殖細胞系列配列)の対応する残基に変異される。いくつかの実施形態では、VHフレームワーク領域1は、配列番号803の配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHフレームワーク領域2は、配列番号804の配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHフレームワーク領域3は、配列番号805の配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHフレームワーク領域4は、配列番号806の配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLフレームワーク領域1は、配列番号807の配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLフレームワーク領域2は、配列番号808の配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLフレームワーク領域3は、配列番号809の配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLフレームワーク領域4は、配列番号810の配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHフレームワークは、配列番号803~806のいずれか1つの参照配列と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の保存的置換を含む。いくつかの実施形態では、VLフレームワークは、配列番号807~810のいずれか1つの参照配列と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の保存的置換を含む。
【0060】
さらに、本開示の抗体は、フレームワーク及び/又はCDR領域内の2つ以上の生殖細胞系列変異の任意の組み合わせを含有する場合があり、例えば、特定の個々の残基は特定の生殖細胞系列配列の対応する残基に変異されるが、元の生殖細胞系列配列とは異なる特定の他の残基は維持されるか、又は異なる生殖細胞系列配列の対応する残基に変異される。1つ以上の生殖細胞系列変異を含有する抗体及び抗原結合断片は、ひとたび得てしまえば、1つ以上の所望の特性、例えば、結合特異性の向上、結合親和性の増大、アンタゴニスト又はアゴニストとしての生物学的特性の向上又は増強(場合によって)、免疫原性の低減などについて容易に試験することができる。この一般的手法で得られる抗体及び抗原結合断片は、本開示内に包含される。
【0061】
本開示はまた、1つ以上の保存的置換を有する本明細書で開示されるVH、VL、及び/又はCDRのアミノ酸配列のいずれかの変異体を含む抗PAR2抗体を含む。例えば、本開示は、例えば、本明細書で開示されるVH、VL、及び/又はCDRのアミノ酸配列のいずれかに対して、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個の保存的アミノ酸置換を有するVH、VL、及び/又はCDRアミノ酸配列を有する抗PAR2抗体を含む。
【0062】
用語「エピトープ」は、パラトープとして知られる抗体分子の可変領域における特異的な抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。1つの抗原は、2つ以上のエピトープを有し得る。したがって、異なる抗体は、抗原の異なる領域に結合し得、且つ異なる生物学的作用を有し得る。エピトープは、立体構造的又は線状のいずれかであり得る。立体構造的なエピトープは、線状ポリペプチド鎖の異なるセグメントから空間的に並置されたアミノ酸によってもたらされる。線状エピトープは、ポリペプチド鎖中の隣接したアミノ酸残基によってもたらされるものである。一定の状況では、エピトープは、抗原上の糖部分、ホスホリル基、又はスルホニル基を含み得る。
【0063】
本開示の抗体又は抗原結合断片のいずれかの任意の部分を、エピトープタグ、PEG部分などで同様に修飾してもよいことに留意すべきである。さらに、抗体又は抗原結合断片は、2つのエピトープタグなどの2つ以上のエピトープタグを含んでもよいし、0個のエピトープタグを含んでもよい。
【0064】
核酸又はその断片を指す場合、用語「実質的な同一性」又は「実質的に同一の」は、別の核酸(又はその相補鎖)と適切なヌクレオチド挿入又は欠失とともに最適にアラインメントされる場合、以下に説明するとおり、FASTA、BLAST又はGapなどの配列同一性の任意のよく知られるアルゴリズムによって測定した際に、ヌクレオチド塩基の少なくとも約95%、及びより好ましくは約96%、97%、98%又は99%においてヌクレオチド配列の同一性があることを示す。参照の核酸分子と実質的な同一性を有する核酸分子は、ある事例では、参照の核酸分子によってコードされるポリペプチドと同じ又は実質的に類似のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードし得る。
【0065】
配列同一性とも称されるポリペプチドについての配列類似性は通常、配列解析ソフトウェアを用いて測定される。タンパク質解析ソフトウェアは、様々な置換、欠失及び保存的アミノ酸置換を含む他の改変に割り当てられた類似性の尺度を使用して、類似の配列を対応させる。例えば、GCGソフトウェアは、GAP及びBestfitなどのプログラムを含み、それらを既定のパラメータで使用して、異なる生物種由来の相同ポリペプチドなどの密接に関連するポリペプチドの間、又は野生型タンパク質とそのムテインとの間の配列相同性又は配列同一性を決定することができる。例えば、GCG バージョン6.1を参照されたい。ポリペプチド配列はまた、GCG バージョン6.1のプログラムであるFASTAを使用して、既定の又は推奨されるパラメータを使用して比較することもできる。FASTA(例えば、FASTA2及びFASTA3)は、アラインメント及び問い合わせ配列と探索配列との間で最も重複する領域のパーセント配列同一性を提供する(Pearson(2000)上掲)。本開示の配列を種々の生物由来の多数の配列を含むデータベースと比較する場合の別の好ましいアルゴリズムは、既定のパラメータを使用するコンピュータプログラムBLAST、特にBLASTP又はTBLASTNである。例えば、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410及びAltschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-402を参照されたい。いくつかの実施形態では、配列は、EMBOSS Needleペアワイズ配列アラインメントを使用して比較される。
【0066】
いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗原結合断片はscFvである。いくつかの実施形態では、抗原結合断片はFab’である。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は抗体である。いくつかの実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。
【0067】
モノクローナル抗体の開発を機に、抗体は有用になり、且つ医薬品として関心が持たれるようになった。モノクローナル抗体は、培養液中の継代細胞株によって抗体分子を産生する任意の方法を使用して産生される。モノクローナル抗体を作製するための好適な方法の例としては、Kohlerらのハイブリドーマ法(1975,Nature 256:495-497)及びヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor,1984,J.Immunol.133:3001;及びBrodeur et al.,1987,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,(Marcel Dekker,Inc.,New York),pp.51-63)が挙げられる。多くの場合、ハイブリドーマを使用して、マウス又は齧歯類起源の初期の抗体を作製する。次に、この初期の抗体を、組換え技術などを使用して改変して、齧歯類の変異体、キメラ抗体、及びヒト化抗体などを作製してもよい。初期の抗体を作製するための他の方法が存在し、このような方法は当技術分野において知られている。しかしながら、次に、初期の抗体又はさらに初期の抗体の変異体を作製するために使用される方法と無関係に、非ヒト起源の任意の所与の抗体を、そのヒトらしさを増大させるように改変することができる。
【0068】
本開示の抗体又は抗原結合断片は、コンビナトリアルライブラリーを使用して、所望の活性を有する抗体についてスクリーニングすることによって作製され得る。例えば、ファージディスプレイライブラリーを作製し、所望の結合特性を有する抗体についてこのようなライブラリーをスクリーニングするための様々な方法が、当技術分野において知られている。このような方法は、一般に、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)に記載されている。例えば、目的の抗体を作製する1つの方法は、Lee et al.,J.Mol.Biol.(2004),340(5):1073-93において記載されるファージ抗体ライブラリーの使用によるものである。
【0069】
原則として、合成抗体クローンは、ファージコートタンパク質に融合された抗体可変領域(Fv)の様々な断片を提示するファージを含有するファージライブラリーをスクリーニングすることによって選択される。このようなファージライブラリーは、所望の抗原に対する親和性クロマトグラフィーによりパンニングされる。所望の抗原に結合することができるFv断片を発現するクローンは、抗原に吸着されるため、ライブラリーの非結合クローンから分離される。次に、結合クローンは、抗原から溶出され、追加の抗原吸着/溶出サイクルによってさらに濃縮され得る。本開示の抗体のいずれかは、目的のファージクローンについて選択するための好適な抗原スクリーニング手順を設計し、続いてKabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda MD(1991),vols.1-3に記載される、目的とするファージクローンからのFv配列及び好適な定常領域(Fc)配列を使用して完全長抗体クローンを構築することによって得ることができる。診断、治療、又は研究の目的かどうかにかかわらず、ヒト対象及びヒト細胞での使用にさらに好適になるように非ヒト抗体のヒトらしさを増大させることが有利であり得る。抗体を、治療薬として使用するために改変してもよい。このような抗体(抗体断片を含む)の例としては、キメラ抗体、ヒト化抗体、及び完全ヒト抗体が挙げられる。キメラ抗体、ヒト化抗体、及びヒト抗体の作製のための多数の方法が、当技術分野に存在する。本開示の文脈では、VHドメイン又はVLドメインのうちの少なくとも1つがヒト化されている場合、抗体はヒト化されていると見なされる。さらに、親非ヒト(例えば、マウス)抗体と比較して、FR領域の少なくとも1つの少なくとも一部のアミノ酸配列が、その部分のアミノ酸配列がヒト抗体又はヒトコンセンサス配列のものに相当するように改変されている場合、VHドメイン又はVLドメインはヒト化されている。ある種の実施形態では、VHドメインの少なくとも1つ、2つ、3つ、若しくは4つのFR領域及び/又はVLドメインの少なくとも1つ、2つ、3つ、若しくは4つのFR領域は、それらの配列がヒト配列とより密接に関連するように(全体又は一部が)改変されている。ある種の実施形態における前述のいずれかのために、ヒト若しくは非ヒトの軽鎖定常領域及び/又は重鎖定常領域(例えば、CL並びにCH1、ヒンジ、CH2、及び/又はCH3のドメインのうちの1つ以上を含む)の文脈において、ヒト化抗体断片が提供され得る。ある種の実施形態では、存在する場合、本開示のヒト化抗体又は抗原結合断片を、ヒトの軽鎖定常ドメイン及び/又は重鎖定常ドメインの文脈の中で提供する。本明細書で開示されるヒト化軽鎖可変ドメイン及び/又は重鎖可変ドメインのいずれかを組み合わせる抗体並びに抗体結合断片は、本開示の抗体及び抗原結合断片の典型である。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片はヒト化されている。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片はキメラである。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片はヒトのものである。
【0070】
本開示のある種の実施形態によれば、FcRn受容体への抗体の結合を、例えば、中性pHと比較して酸性pHで、増強するか又は減少させる1つ以上の変異を含むFcドメインを含む抗PAR2抗体が提供される。例えば、本開示は、FcドメインのCH2又はCH3領域における変異を含む抗PAR2抗体を含み、ここで、その変異は、酸性環境において(例えば、pH範囲が約5.5~約6.0にあるエンドソームにおいて)FcRnへのFcドメインの親和性を増大させる。このような変異は、動物に投与される場合に抗体の血清半減期の増大をもたらす場合がある。このようなFc改変の非限定的な例としては、例えば、250位(例えば、E若しくはQ);250位及び428位(例えば、L若しくはF);252位(例えば、L/Y/F/W若しくはT)、254位(例えば、S若しくはT)、及び256位(例えば、S/R/Q/E/D若しくはT)での改変;又は428位及び/若しくは433位(例えば、H/L/R/S/P/Q若しくはK)及び/若しくは434位(例えば、H/F又はY)での改変;又は250位及び/若しくは428位での改変;又は307位若しくは308位(例えば、308F、V308F)、及び434位での改変が挙げられる。一実施形態では、改変は、428L(例えば、M428L)及び434S(例えば、N434S)の改変;428L、259I(例えば、V259I)、及び308F(例えば、V308F)の改変;433K(例えば、H433K)及び434位(例えば、434Y)の改変;252位、254位及び256位(例えば、252Y、254T、及び256E)の改変;250Q及び428Lの改変(例えば、T250Q及びM428L);並びに307位及び/又は308位の改変(例えば、308F又は308P)を含む。さらに別の実施形態では、改変は、265A(例えば、D265A)及び/又は297A(例えば、D297A)の改変を含む。前述のFcドメイン変異の可能な全ての組み合わせ、及び本明細書で開示される抗体可変ドメイン内の他の変異は、本開示の範囲内であると考えられる。いくつかの実施形態では、抗体は、三重変異L234F/L235E/P331S(「TM」)を含む。TMは、ヒトC1q、CD64、CD32A及びCD16へのヒトIgG1分子の結合活性の顕著な低減をもたらす。例えば、Oganesyan et al.,Acta Crystallogr D Biol Crystallogr.64:700-704(2008)を参照されたい。増大した半減期を有する抗体はまた、FcとFcRn受容体との間の相互作用に関与すると同定されたアミノ酸残基を改変することによって作製され得る。例えば、三重変異M252Y/S254T/T256E(「YTE」)のヒト免疫グロブリンG(IgG)分子のCH2ドメインへの導入は、ヒト新生児型Fc受容体(FcRn)へのそれらの結合の増大をもたらす。内容が全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,083,784号明細書を参照されたい。いくつかの実施形態では、抗体はYTE改変を含む。
【0071】
本開示のある種の実施形態によれば、PAR2への抗体の結合を、例えば、中性pHと比較して酸性pHで、増強するか又は減少させるVH及び/又はVLドメイン中の1つ以上の変異を含む抗PAR2抗体が提供される。例えば、本開示は、VHドメインのCDR2(配列番号4)若しくはCDR3(配列番号5)領域及び/又はVLドメインのCDR3(配列番号10)中に変異を含む抗PAR2抗体を含み、ここで、その変異は、1つ以上のアミノ酸をヒスチジンで置き換え、且つ酸性環境において(例えば、pH範囲が約5.5~約6.0にあるエンドソームにおいて)PAR2へのVH及び/又はVLドメインの親和性を低減する。このような変異は、動物に投与される場合に抗体の血清半減期の増大をもたらす場合がある。このようなVHの改変の非限定的な例としては、例えば、CDR2(配列番号4)のアミノ酸位置4、5、7、8、10、11、12、14、15、16、及び17並びにCDR3(配列番号5)のアミノ酸位置1、2、4、5、及び7での改変が挙げられる。このようなVLの改変の非限定的な例としては、例えば、CDR3(配列番号10)の位置1、2、4、5、6、7、8、9、12、及び14での改変が挙げられる。さらに別の実施形態では、VHは、CDR2(配列番号4)の位置5、8、12、16、及び17並びにCDR3(配列番号5)の位置2及び3での改変を含む。前述のVH及びVLドメイン変異の可能な全ての組み合わせ、及び本明細書で開示されるFcドメイン内の他の変異は、本開示の範囲内であると考えられる。
【0072】
いくつかの実施形態では、本開示は、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体又はその抗原結合断片を提供し、ここで、VHは:i)配列番号3のアミノ酸配列を有するVH-CDR1;ii)配列番号4のアミノ酸配列を有するが、ヒスチジンが、配列番号4の1~17位(例えば、4位、5位、及び7~17位)に相当するアミノ酸位置のいずれか1つ以上で任意選択的に存在するVH-CDR2;及びiii)配列番号5のアミノ酸配列を有するが、ヒスチジンが、配列番号5の1~8位に相当するアミノ酸位置のいずれか1つ以上で任意選択的に存在するVH-CDR3を含み;且つVLは:i)配列番号8のアミノ酸配列を有するVL-CDR1;ii)配列番号9のアミノ酸配列を有するVL-CDR2;及びiii)配列番号10のアミノ酸配列を有するが、ヒスチジンが、配列番号10の1~14位に相当するアミノ酸位置のいずれか1つ以上で任意選択的に存在するVL-CDR3を含む。いくつかの実施形態では、VHは:i)配列番号3のアミノ酸配列を有するVH-CDR1、ii)配列番号4のアミノ酸配列を有するVH-CDR2、iii)配列番号5のアミノ酸配列を有するVH-CDR3を含み、且つVLは:i)配列番号8のアミノ酸配列を有するVL-CDR1、ii)配列番号9のアミノ酸配列を有するVL-CDR2、iii)配列番号10のアミノ酸配列を有するVL-CDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原断片は、配列番号4の7位、8位、12位、15位、16位、又は17位のいずれか1つ以上に相当するアミノ酸位置でヒスチジンを有する。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原断片は、配列番号5の2位又は3位のいずれか1つ以上に相当するアミノ酸位置でヒスチジンを有する。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原断片は、配列番号10の1位、5位、6位、又は14位のいずれか1つ以上に相当するアミノ酸位置でヒスチジンを有する。いくつかの実施形態では、ヒスチジンは、配列番号4の5位、8位、12位、16位、及び17位に相当するアミノ酸位置に存在し;且つヒスチジンは、配列番号5の2位及び3位に相当するアミノ酸位置に存在する。いくつかの実施形態では、VH-CDR2は、配列番号4、14、24、34、44、54、64、74、84、94、104、114、124、134、144、154、164、174、184、194、204、214、224、234、244、254、264、274、284、294、304、314、324、334、344、354、364、374、384、394、404、414、424、434、444、454、464、474、484、494、504、514、524、534、544、554、564、574、584、594、604、614、624、634、644、654、664、674、684、694、704、714、724、734、744、754、764、774、784、794、及び811~818からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VH-CDR3は、配列番号5、15、25、35、45、55、65、75、85、95、105、115、125、135、145、155、165、175、185、195、205、215、225、235、245、255、265、275、285、295、305、315、325、335、345、355、365、375、385、395、405、415、425、435、445、455、465、475、485、495、505、515、525、535、545、555、565、575、585、595、605、615、625、635、645、655、665、675、685、695、705、715、725、735、745、755、765、775、785、795、及び819~820からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VL-CDR3は、配列番号10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790及び800からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VH-CDR2は、配列番号14に相当するアミノ酸配列を含み;ここで、VH-CDR3は、配列番号15に相当するアミノ酸配列を含み、且つVL-CDR3は、配列番号20に相当するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VH-CDR2は、配列番号811に相当するアミノ酸配列を含み;VH-CDR3は、配列番号819に相当するアミノ酸配列を含み、且つVL-CDR3は、配列番号10又は20に相当するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VH-CDR2は、配列番号814に相当するアミノ酸配列を含み;VH-CDR3は、配列番号820に相当するアミノ酸配列を含み、且つVL-CDR3は、配列番号10又は20に相当するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VH-CDR2は、配列番号816に相当するアミノ酸配列を含み;VH-CDR3は、配列番号15に相当するアミノ酸配列を含み、且つVL-CDR3は、配列番号10又は20に相当するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VH-CDR2は、配列番号818に相当するアミノ酸配列を含み;VH-CDR3は、配列番号15に相当するアミノ酸配列を含み、且つVL-CDR3は、配列番号10又は20に相当するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号803~806とそれぞれ少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるフレームワーク領域を含む。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号807~810とそれぞれ少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるフレームワーク領域を含む。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号2、12、22、32、42、52、62、72、82、92、102、112、122、132、142、152、162、172、182、192、202、212、222、232、242、252、262、272、282、292、302、312、322、332、342、352、362、372、382、392、402、412、422、432、442、452、462、472、482、492、502、512、522、532、542、552、562、572、582、592、602、612、622、632、642、652、662、672、682、692、702、712、722、732、742、752、762、772、782、及び792からなる群から選択される配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号7、17、27、37、47、57、67、77、87、97、107、117、127、137、147、157、167、177、187、197、207、217、227、237、247、257、267、277、287、297、307、317、327、337、347、357、367、377、387、397、407、417、427、437、447、457、467、477、487、497、507、517、527、537、547、557、567、577、587、597、607、617、627、637、647、657、667、677、687、697、707、717、727、737、747、757、767、777、787、及び797からなる群から選択される配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号12に相当するアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号17に相当するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号821に相当するアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号7又は17に相当するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号824に相当するアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号7又は17に相当するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号827に相当するアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号7又は17に相当するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号831に相当するアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号7又は17に相当するアミノ酸配列を含む。
【0073】
本開示はまた、キメラ重鎖定常(CH)領域を含む抗PAR2抗体を含み、ここで、キメラCH領域は、2つ以上の免疫グロブリンアイソタイプのCH領域に由来するセグメントを含む。例えば、本開示の抗体は、ヒトIgG、ヒトIgG又はヒトIgG分子に由来するCH3ドメインの一部又は全てと組み合わせた、ヒトIgG、ヒトIgG又はヒトIgG分子に由来するCH2ドメインの一部又は全てを含むキメラCH領域を含み得る。ある種の実施形態によれば、本開示の抗体は、キメラヒンジ領域を有するキメラCH領域を含む。例えば、キメラヒンジは、ヒトIgG、ヒトIgG又はヒトIgGヒンジ領域に由来する「下部ヒンジ」配列(EUナンバリングに従う228位~236位のアミノ酸残基)と組み合わせた、ヒトIgG、ヒトIgG又はヒトIgGヒンジ領域に由来する「上部ヒンジ」アミノ酸配列(EUナンバリングに従う216位~227位のアミノ酸残基)を含み得る。
【0074】
ある種の実施形態によれば、キメラヒンジ領域は、ヒトIgG又はヒトIgGの上部ヒンジに由来するアミノ酸残基及びヒトIgGの下部ヒンジに由来するアミノ酸残基を含む。本明細書に記載されるキメラCH領域を含む抗体は、ある種の実施形態において、抗体の治療上の特性又は薬物動態特性に悪影響を及ぼすことなく、改変されたFcエフェクター機能を示し得る。(例えば、米国特許出願公開第2015-0203591A1号明細書を参照されたい)。
【0075】
本開示は、PAR2の1つ以上のアミノ酸と相互作用する抗PAR2抗体又は抗原結合断片を含む。抗体が結合し得るエピトープは、PAR2の3個以上(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個又はそれ以上)のアミノ酸の単一の連続した配列からなり得る。あるいは、エピトープは、PAR2の複数の非連続的なアミノ酸(又はアミノ酸配列)からなり得る。
【0076】
当業者に知られる様々な技術を使用して、抗体がポリペプチド又はタンパク質内の「1つ以上のアミノ酸と相互作用」するかどうかを決定することができる。代表的な技術としては、例えば、Antibodies,Harlow and Lane(Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harb.,NY)に記載されるものなどの通例のクロスブロッキングアッセイ、アラニンスキャニング変異解析、ペプチドブロット解析(Reineke,2004,Methods Mol Biol 248:443-463)、及びペプチド切断解析が挙げられる。加えて、エピトープ切除、エピトープ抽出及び抗原の化学修飾などの方法を採用することができる(Tomer,2000,Protein Science 9:487-496)。抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を同定するために使用することができる別の方法は、質量分析により検出される水素/重水素交換である。一般論として、水素/重水素交換法は、目的のタンパク質を重水素標識した後、重水素標識タンパク質に抗体を結合させることを含む。次に、タンパク質/抗体複合体を水に移して、抗体によって保護された(重水素標識されたままの)残基を除く全ての残基で水素-重水素交換を発生させる。抗体の解離後、標的タンパク質をプロテアーゼ切断及び質量分析にかけ、それによって、抗体が相互作用する特異的なアミノ酸に相当する重水素標識残基を明らかにする。例えば、Ehring(1999)Analytical Biochemistry 267 (2):252-259;Engen and Smith(2001)Anal.Chem.73:256A-265Aを参照されたい。
【0077】
本開示はさらに、本明細書に記載される抗体又は抗原結合断片(例えば、配列番号12及び17のアミノ酸配列を含む抗体又は抗原結合断片)のいずれかと同じエピトープに結合する抗PAR2抗体又はその抗原結合断片を含む。同様に、本開示はまた、本明細書に記載される抗体又は抗原結合断片(例えば、配列番号12及び17のアミノ酸配列を含む抗体又は抗原結合断片)のいずれかとPAR2への結合に関して競合する抗PAR2抗体又は抗原結合断片を含む。当業者は、抗体が、参照抗PAR2抗体と同じエピトープに結合するか、又はそれと結合に関して競合するかを、当技術分野で知られ、且つ本明細書に例示される通例の方法を使用することによって容易に決定することができる。例えば、試験抗体が本開示の参照抗PAR2抗体と同じエピトープに結合するかを決定するために、参照抗体をPAR2タンパク質に結合させる。次に、試験抗体のPAR2分子に結合する能力を評価する。参照抗PAR2抗体との結合が飽和した後に試験抗体がPAR2に結合することができる場合、試験抗体は参照抗PAR2抗体とは異なるエピトープに結合すると結論することができる。他方では、参照抗PAR2抗体との結合が飽和した後に試験抗体がPAR2分子に結合することができない場合、試験抗体は、本開示の参照抗PAR2抗体により結合されるエピトープと同じエピトープに結合し得る。次に、さらなる通例の実験(例えば、ペプチド変異及び結合解析)を実施して、観察された試験抗体の結合の欠如が、実際に参照抗体と同じエピトープに結合することによるものなのか、又は立体配置による遮断(又は別の現象)が観察された結合の欠如に関与するのかを確認することができる。この種の実験は、当技術分野で利用可能なELISA、RIA、Biacore、フローサイトメトリー、又は任意の他の定量的若しくは定性的抗体結合アッセイを用いて実施することができる。本開示のある種の実施形態によれば、例えば、1、5、10、20、又は100倍過剰な一方の抗体が、競合結合アッセイにおいて測定される際に他方の結合を少なくとも50%であるが好ましくは75%、90%あるいは99%阻害する場合、2つの抗体は同じ(又は重複した)エピトープに結合する。(例えば、Junghans et al.,Cancer Res.1990:50:1495-1502を参照されたい)。
【0078】
あるいは、本質的に、一方の抗体の結合を低減又は排除する抗原における全てのアミノ酸変異が他方の結合を低減又は排除する場合、2つの抗体は同じエピトープに結合すると見なされる。一方の抗体の結合を低減又は排除するアミノ酸変異のサブセットのみが他方の結合を低減又は排除する場合、2つの抗体は「重複するエピトープ」を有すると見なされる。
【0079】
抗体が参照抗PAR2抗体と結合に関して競合するか(又は結合に関して交差競合するか)を決定するために、上述の結合方法を2つの方針で実施する:第1の方針において、飽和条件下で参照抗体をPAR2タンパク質に結合させた後、PAR2分子への試験抗体の結合を評価する。第2の方針において、飽和条件下で試験抗体をPAR2分子に結合させた後、PAR2分子への参照抗体の結合を評価する。両者の方針において、第1の(飽和している)抗体のみがPAR2分子に結合することができる場合、試験抗体及び参照抗体は、PAR2への結合に関して競合すると結論される。当業者に理解されるとおり、参照抗体と結合に関して競合する抗体は、必ずしも参照抗体と同じエピトープに結合するというわけではないが、重複しているか又は隣接するエピトープに結合することによって参照抗体の結合を立体的に遮断する場合がある。
【0080】
完全ヒトモノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体を作製するための方法は、当技術分野で知られている。任意のそのような既知の方法を本開示の文脈において使用して、ヒトPAR2に特異的に結合するヒト抗体を作製することができる。
【0081】
VELOCIMMUNE(商標)技術、例えば、又は完全ヒトモノクローナル抗体を作製するための任意の他の既知の方法を使用して、ヒト可変領域及びマウス定常領域を有するPAR2に対して高親和性のキメラ抗体を最初に単離する。下の実験の節のとおり、抗体を特徴付けし、親和性、選択性、エピトープなどを含む所望の特徴について選択する。必要であれば、マウス定常領域を、所望のヒト定常領域、例えば、野生型又は改変IgG又はIgGと置き換えて、完全ヒト抗PAR2抗体を作製する。選択された定常領域は、特定の用途に従って変化し得るが、高親和性抗原結合及び標的特異性の特徴は可変領域に備わっている。特定の場合には、完全ヒト抗PAR2抗体は、抗原陽性B細胞から直接的に単離される。
【0082】
本開示の抗PAR2抗体及び抗体断片は、記載された抗体のものから変化し得るが、PAR2(例えば、配列番号801)、又はいくつかの実施形態においてより具体的には、PAR2のテザーリガンド(例えば、配列番号802)に結合する能力を保持するアミノ酸配列を有するタンパク質を包含する。このような変異体抗体又は抗体断片は、親配列と比較した場合にアミノ酸の1つ以上の付加、欠失、又は置換を含むが、記載された抗体のものと本質的に等価な生物活性を示す。同様に、本開示の抗PAR2抗体をコードするDNA配列は、記載された配列と比較した場合にヌクレオチドの1つ以上の付加、欠失、又は置換を含むが、本開示の抗PAR2抗体又は抗体断片と本質的に生物学的に同等な抗PAR2抗体又は抗体断片をコードする配列を包含する。このような変異体のアミノ酸及びDNA配列の例は、上述されている。
【0083】
2つの抗体又は抗原結合断片は、例えば、それらが、同様の実験条件、単回投与又は複数回投与のいずれかにおいて同じモル用量で投与されるときに、その吸収の速度及び程度が有意差を示さない薬学的等価物であるか又は薬学的な代替物である場合、生物学的に同等であると考えられる。一部の抗体又は抗原結合断片は、それらが、それらの吸収の程度は等価であるが、それらの吸収の速度は等価ではない場合にも等価物又は薬学的代替物であると考えられ、それでも、そのような吸収の速度の差は意図的なものであり、標識に反映され、例えば、長期の使用において有効な体内薬物濃度の達成のために必須ではなく、また、試験される特定の薬品に関して医学的に重要でないと考えられることが理由で、生物学的に同等であると考えられ得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、2つの抗体又は抗原結合断片は、それらの安全性、純度、及び力価に臨床的に意味のある差がない場合、生物学的に同等である。
【0085】
いくつかの実施形態では、2つの抗体又は抗原結合断片は、患者に対して、参照物と当該生物学的製品の切り換えを伴わない継続療法と比較して、免疫原性の臨床的に有意な変化又は有効性の減弱を含めた有害作用のリスクの上昇が予測されることなくそのような切り替えを1回以上行うことができる場合、生物学的に同等である。
【0086】
いくつかの実施形態では、2つの抗体又は抗原結合断片は、それらの両方が使用する条件について共通の作用機構によって、そのような作用機構が知られる限りにおいて、作用する場合、生物学的に同等である。
【0087】
生物学的同等性は、インビボ及びインビトロにおける方法によって実証され得る。生物学的同等性の測定としては、例えば、(a)血液、血漿、血清、又は他の生体液において、抗体又はその代謝産物の濃度を時間の関数として測定する、ヒト又は他の哺乳動物におけるインビボ試験;(b)ヒトのインビボでの生物学的利用能データと相関し、その合理的な予測であるインビトロ試験;(c)抗体(又はその標的)の適切な急性の薬理学的効果を時間の関数として測定する、ヒト又は他の哺乳動物におけるインビボ試験;及び(d)抗体の安全性、有効性、又は生物学的利用能若しくは生物学的同等性を確立する、十分に管理された臨床試験が挙げられる。
【0088】
本開示の抗PAR2抗体の生物学的に同等な変異体は、例えば、残基若しくは配列の種々の置換を行うこと、又は生物活性に必要ではない末端若しくは内部の残基若しくは配列を欠失させることによって構築され得る。例えば、生物活性に必須ではないシステイン残基を欠失させるか又は他のアミノ酸と置き換えて、復元の際に不必要な又は適正でない分子内ジスルフィド架橋が形成されるのを予防することができる。他の状況では、生物学的に同等な抗体又は抗原結合断片は、抗体又は抗原結合断片のグリコシル化特性を改変するアミノ酸の変化、例えば、グリコシル化を排除又は除去する変異を含む抗PAR2抗体変異体を含み得る。
【0089】
ある種の実施形態によれば、本開示は、ヒトPAR2に結合するが他の種に由来するPAR2に結合しない抗PAR2抗体又は抗原結合断片を提供する。本開示はまた、ヒトPAR2に結合し、且つ1種以上の非ヒト種に由来するPAR2に結合する抗PAR2抗体を含む。例えば、本開示の抗PAR2抗体は、ヒトPAR2に結合してもよく、且つ場合によって、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、スナネズミ、ブタ、ネコ、イヌ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、雌ウシ、ウマ、ラクダ、カニクイザル、マーモセット、アカゲザル又はチンパンジーのPAR2のうち1つ以上に結合しても、結合しなくてもよい。ある種の実施形態によれば、抗体又は抗原結合断片は、ヒトA549細胞、ラットKNRK細胞、カニクイザルCYNOM-K1細胞又はマウスLL/2細胞におけるPAR2に結合する。
【0090】
本開示は、細胞毒、化学療法薬、免疫抑制剤又は放射性同位体などの治療用成分とコンジュゲートした抗PAR2モノクローナル抗体(「免疫複合体」)を包含する。免疫複合体を形成するための好適な細胞傷害性薬剤及び化学療法薬剤の例は当技術分野で知られている(例えば、国際公開第05/103081号パンフレットを参照されたい)。
【0091】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、単一特異性、二重特異性、又は多重特異性であり得る。多重特異性抗体は、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的であり得るか、又は2つ以上の標的ポリペプチドに特異的な抗原結合ドメインを含有し得る。例えば、Tutt et al.,1991,J.Immunol.147:60-69;Kufer ei a/.,2004,Trends Biotechnol.22:238-244を参照されたい。本開示の抗PAR2抗体又は抗原結合断片は、別の機能性分子、例えば、別のペプチド又はタンパク質と結合又は共発現され得る。例えば、抗体又はその抗原結合断片は、第2の結合特異性を有する二重特異性抗体又は多重特異性抗体を生成するための別の抗体又は抗原結合断片などの、1つ以上の他の分子実体に機能的に結合され得る(例えば、化学結合、遺伝子融合、非共有結合的な会合又はその他の様式により)。例えば、本開示は二重特異性抗体を含み、ここで免疫グロブリンの一方のアームは、ヒトPAR2又はその断片に特異的であり、且つ免疫グロブリンの他方のアームは第2の治療標的に特異的であるか、又は治療用成分にコンジュゲートされる。
【0092】
本開示の文脈において使用することができる例示的な二重特異性抗体又は抗原結合断片フォーマットは、第1の免疫グロブリン(Ig)CH3ドメイン及び第2のIg CH3ドメインの使用を含み、ここで、第1及び第2のIg CH3ドメインは、少なくとも1つのアミノ酸により互いに異なり、少なくとも1つのアミノ酸の相違が、アミノ酸の相違のない二重特異性抗体と比較して、プロテインAに対する二重特異性抗体の結合を低減する。一実施形態では、第1のIg CH3ドメインはプロテインAに結合し、且つ第2のIg CH3ドメインは、H95R改変(IMGTエクソンナンバリングによる;EUナンバリングによるH435R)などのプロテインA結合を低減又は消失させる変異を含有する。第2のCH3はさらに、Y96F改変(IMGTによる;EUによるY436F)を含む。第2のCH3内に見出され得るさらなる改変としては:IgG1抗体の場合D16E、L18M、N44S、K52N、V57M、及びV82I(IMGTによる;EUによるD356E、L358M、N384S、K392N、V397M、及びV422I);IgG2抗体の場合N44S、K52N、及びV82I(IMGT;EUによるN384S、K392N、及びV422I);並びにIgG4抗体の場合Q15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、及びV82I(IMGTによる;EUによるQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、及びV422I)が挙げられる。上記の二重特異性抗体フォーマットの変形形態は、本開示の範囲内であると考えられる。
【0093】
本開示の文脈において使用することができる他の例示的な二重特異性フォーマットとしては、限定されるものではないが、例えば、scFv系又はダイアボディ二重特異性フォーマット、IgG-Fv融合物、二重の可変ドメイン(DVD)-Ig、クアドローマ、ノブ・イントゥ・ホール、共通の軽鎖(例えば、ノブ・イントゥ・ホールなどを伴う共通の軽鎖)、CrossMab、CrossFab、(SEED)body、ロイシンジッパー、Duobody、IgG1/IgG2、二重作用性Fab(DAF)-IgG、及びMab<2>二重特異性フォーマット(例えば、前述のフォーマットの確認のために、Klein et al.2012,mAbs 4:6,1-11、及びそこで引用される参考文献を参照されたい)。二重特異性抗体又は抗原結合断片はまた、ペプチド/核酸コンジュゲーションを用いて構築することができ、例えば、直交する化学反応性を有する非天然アミノ酸を使用して、後に既定の組成、結合価、及び形状を有する多量体複合体へと自己組織化する部位特異的抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートを生成する。(例えば、Kazane et al.,J.Am.C em.Soc.[Epub:Dec.4,2012]を参照されたい)。
【0094】
C.核酸及び発現系
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書で開示される抗原結合断片の抗体のいずれかを発現することが可能な核酸を提供する。核酸は、単鎖又は二重鎖のDNA又はRNA分子であり得る。さらなる実施形態では、抗体又は抗原結合断片の核酸配列は、単離された核酸配列、組換え核酸配列、及び/又は異種ヌクレオチド配列と融合された核酸配列、又はDNAライブラリー中の核酸配列であり得る。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号1、11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131、141、151、161、171、181、191、201、211、221、231、241、251、261、271、281、291、301、311、321、331、341、351、361、371、381、391、401、411、421、431、441、451、461、471、481、491、501、511、521、531、541、551、561、571、581、591、601、611、621、631、641、651、661、671、681、691、701、711、721、731、741、751、761、771、781、及び/又は791のいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号6、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、126、136、146、156、166、176、186、196、206、216、226、236、246、256、266、276、286、296、306、316、326、336、346、356、366、376、386、396、406、416、426、436、446、456、466、476、486、496、506、516、526、536、546、556、566、576、586、596、606、616、626、636、646、656、666、676、686、696、706、716、726、736、746、756、766、776、786、及び/又は796のいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態では、核酸は、配列番号1、6、11及び/又は16と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0095】
ある種の実施形態では、抗体又は抗原結合断片をコードする核酸はまた、上記の抗体又は抗原結合断片のいずれかをコードするポリヌクレオチドのヌクレオチド配列、又はその相補配列に高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号2、12、22、32、42、52、62、72、82、92、102、112、122、132、142、152、162、172、182、192、202、212、222、232、242、252、262、272、282、292、302、312、322、332、342、352、362、372、382、392、402、412、422、432、442、452、462、472、482、492、502、512、522、532、542、552、562、572、582、592、602、612、622、632、642、652、662、672、682、692、702、712、722、732、742、752、762、772、782、及び792のいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドに、高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号7、17、27、37、47、57、67、77、87、97、107、117、127、137、147、157、167、177、187、197、207、217、227、237、247、257、267、277、287、297、307、317、327、337、347、357、367、377、387、397、407、417、427、437、447、457、467、477、487、497、507、517、527、537、547、557、567、577、587、597、607、617、627、637、647、657、667、677、687、697、707、717、727、737、747、757、767、777、787、及び797のいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドに、高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。当業者は、DNAハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシーの条件が変更され得ることを容易に理解するであろう。例えば、約45℃の6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)でハイブリダイゼーションを実施した後に、50℃における2.0×SSCでの洗浄を実施し得る。例えば、洗浄工程の塩濃度は、50℃における約2.0×SSCの低ストリンジェンシーから50℃における約0.2×SSCの高ストリンジェンシーまで選択され得る。加えて、洗浄工程の温度は、室温(約22℃)での低ストリンジェンシー条件から約65℃での高ストリンジェンシー条件まで上昇され得る。温度及び塩の両方が変更されても、他の可変要素が変えられる一方で温度又は塩濃度が一定に保たれてもよい。一実施形態では、本開示は、室温における6×SSCの後の室温における2×SSCでの洗浄の低ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする核酸を提供する。
【0096】
遺伝暗号の縮重のために抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸とは異なっている単離された核酸も本開示の範囲内である。例えば、いくつかのアミノ酸が2つ以上のトリプレットによって示される。同じアミノ酸を指定するコドン、すなわちシノニム(例えば、CAU及びCACは、ヒスチジンのシノニムである)は、タンパク質のアミノ酸配列に影響を及ぼさない「サイレント」変異をもたらし得る。しかしながら、対象タンパク質のアミノ酸配列の変化につながるDNA配列多型が哺乳動物細胞間に存在すると予想される。特定のタンパク質をコードする核酸の1つ以上のヌクレオチド(ヌクレオチドの最大約3~5%)のこれらの変異が、天然の対立遺伝子変異のため所与の種の個体間に存在し得ることを、当業者は理解するであろう。任意の及び全てのこのようなヌクレオチド変異体及び結果として生じるアミノ酸多型が本開示の範囲内である。
【0097】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書で開示される核酸のいずれかを含むベクターを提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書で開示されるベクターのいずれかを含む宿主細胞を提供する。
【0098】
本開示の抗体が全長抗体又は抗原結合断片である場合と無関係に、本開示の抗体及び抗原結合断片を、細胞株中で組換え発現させることができる。これらの実施形態では、特定の抗体又は抗原結合断片をコードする配列を、哺乳動物宿主細胞又は酵母宿主細胞などの好適な宿主細胞の形質転換のために使用することができる。これらの実施形態によれば、例えば、ウイルス(又はウイルスベクター内)へのポリヌクレオチドのパッケージング及びウイルス(又はベクター)を使用するか又は当技術分野で知られるトランスフェクション手順による宿主細胞への形質導入を含む、宿主細胞にポリヌクレオチドを導入するための任意の既知の方法を使用して、形質転換を行うことができる。一般に、使用される形質転換手順は、形質転換される宿主に依存し得る。哺乳動物細胞に異種ポリヌクレオチドを導入するための方法は当技術分野でよく知られており、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソームへのポリヌクレオチドのカプセル化、及び核内へのDNAの直接微量注入が含まれるが、これらに限定されない。
【0099】
本開示のある種の実施形態によれば、重鎖定常領域(全て又は一部)、本開示の重鎖可変領域、軽鎖定常領域、又は本開示の軽鎖可変領域のアミノ酸配列をコードする核酸分子は、標準的なライゲーション技術を使用して適切な発現ベクターに挿入される。好ましい実施形態では、重鎖定常領域又は軽鎖定常領域が適切な可変領域のC末端に付加され、発現ベクターに結合される。ベクターは通常、使用される特定の宿主細胞中で機能的である(すなわち、遺伝子の増幅及び/又は遺伝子発現が起こり得るように宿主細胞機構にベクターが適合する)ように選択される。発現ベクターの概説については、Goeddel(ed.),1990,Meth.Enzymol.Vol.185,Academic Press.N.Y.を参照されたい。抗体発現の文脈において、重鎖及び軽鎖の両方は同じベクターから(例えば、同じベクター上に存在する同じ又は異なるプロモーターから)発現されてもよいし、重鎖及び軽鎖は異なるベクターから発現されてもよい。ある種の実施形態では、重鎖及び軽鎖は、同じ宿主細胞にトランスフェクトされ、共発現される異なるベクターから発現される。重鎖及び軽鎖が同じ宿主細胞中の同じ又は異なるベクターから発現される場合と無関係に、その際鎖は、抗体(又は抗体断片、発現されている重鎖及び軽鎖部分に依存する)を形成するように会合することができる。
【0100】
通常、宿主細胞のいずれかにおいて使用される発現ベクターは、プラスミドの維持並びに外来性ヌクレオチド配列のクローニング及び発現のための配列を含有することになる。このような配列は、ある種の実施形態において、一括して「隣接配列」と呼ばれ、通常、以下のヌクレオチド配列のうち1つ以上を含むことになる:プロモーター、1つ以上のエンハンサー配列、複製起点、転写終結配列、ドナースプライス部位及びアクセプタースプライス部位を含む完全なイントロン配列、ポリペプチド分泌のためのリーダー配列をコードする配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、発現されるポリペプチドをコードする核酸を挿入するためのポリリンカー領域、及び選択マーカー配列。これらのベクター部分はよく知られており、タンパク質の発現のために選択及び使用することができる一般的に利用可能なベクターが多数存在する。所望の宿主細胞及び適用に基づいてベクターを容易に選択することができる。
【0101】
複製起点は通常、市販の原核生物発現ベクターの一部であり、その起点は、宿主細胞中のベクターの増幅に役立つ。選択されるベクターが複製起点部位を含有しない場合、既知の配列に基づいて化学合成され、ベクターに結合され得る。例えば、プラスミドpBR322(New England Biolabs,Beverly,Mass)に由来する複製起点は、ほとんどのグラム陰性菌に好適であり、種々のウイルスの起点(例えば、SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、水疱性口内炎(vesicular stomatitus)ウイルス(VSV)、又はHPV若しくはBPVなどのパピローマウイルス)は、哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般に、複製起点成分は、哺乳動物発現ベクターに必要ではない(例えば、SV40の起点は、それがウイルス初期プロモーターも含有しているという理由でのみ利用されることが多い)。
【0102】
本開示の発現ベクター及びクローニングベクターは通常、宿主生物によって認識され、重鎖及び/又は軽鎖をコードする分子に作動可能に連結されたプロモーターを含有することになる。プロモーターは、構造遺伝子(一般に、約100~1000bp以内)の開始コドンの上流(すなわち、5’側)に位置し、構造遺伝子の転写を制御する非転写配列である。プロモーターは通常、2つのクラス:誘導性プロモーター及び構成的プロモーターのうちの1つに分類される。誘導性プロモーターは、栄養素の有無又は温度変化などの培養条件のいくらかの変化に応答してそれらの制御下でDNAからの転写レベルの上昇を惹起する。他方では、構成的プロモーターは、連続的な遺伝子産物の産生を惹起する;すなわち、遺伝子発現をほとんど又は全く制御しない。種々の潜在的な宿主細胞によって認識される多数のプロモーターがよく知られている。好適なプロモーターは、本開示の抗体又は抗原結合断片を含む重鎖又は軽鎖をコードするDNAに作動可能に連結される。ある種の実施形態では、同じプロモーターが、重鎖及び軽鎖の両方のために使用される。他の実施形態では、異なるプロモーター(同じ又は異なるベクター上に存在する)がそれぞれのために使用される。
【0103】
酵母宿主との使用に好適なプロモーターも当技術分野でよく知られている。酵母エンハンサーを、酵母プロモーターとともに使用することが有利である。哺乳動物宿主細胞との使用に好適なプロモーターがよく知られており、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2など)、ウシパピローマウイルス、トリ肉種ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、及び最も好ましくはサルウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られるものが挙げられるが、これらに限定されない。他の好適な哺乳動物プロモーターとしては、異種哺乳動物プロモーター、例えば、熱ショックプロモーター及びアクチンプロモーターが挙げられる。
【0104】
関心が持たれ得るさらなるプロモーターとしては:SV40初期プロモーター領域(Bernoist and Chambon,1981,Nature 290:304-10);CMVプロモーター;ラウス肉腫ウイルスの長い3’末端反復配列中に含有されるプロモーター(Yamamoto et al.,1980,Cell 22:787-97);ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al.,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1444-45);メタロチオニン遺伝子の制御配列(Brinster et al.,1982,Nature 296:39-42);β-ラクタマーゼプロモーターなどの原核生物発現ベクター(Villa-Kamaroff et al.,1978,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:3727-31);又はtacプロモーター(DeBoer et al.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:21-25)が挙げられるが、これらに限定されない。組織特異性を示し、且つトランスジェニック動物で利用されている以下の動物転写調節領域も興味深い:膵腺房細胞で活性なエラスターゼI遺伝子調節領域(Swift et al.,1984,Cell 38:639-46;Ornitz et al.,1986,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.50:399-409(1986);MacDonald,1987,Hepatology 7:425-515);膵β細胞で活性なインスリン遺伝子調節領域(Hanahan,1985,Nature 315:115-22);リンパ球系細胞で活性な免疫グロブリン遺伝子調節領域(Grosschedl et al.,1984,Cell 38:647-58;Adames et al.,1985,Nature 318:533-38;Alexander et al.,1987,Mol.Cell.Biol.7:1436-44);精巣細胞、乳房細胞、リンパ球系細胞及びマスト細胞で活性なマウス乳癌ウイルス調節領域(Leder et al.,1986,Cell 45:485-95);肝臓で活性なアルブミン遺伝子調節領域(Pinkert et al.,1987,Genes and Devel.1:268-76);肝臓で活性なα-フェトタンパク質遺伝子調節領域(Krumlauf et al.,1985,Mol.Cell.Biol.5:1639-48;Hammer et al.,1987,Science 235:53-58);肝臓で活性なα1-抗トリプシン遺伝子調節領域(Kelsey et al.,1987,Genes and Devel.1:161-71);骨髄系細胞で活性なβ-グロビン遺伝子調節領域(Mogram et al.,1985,Nature 315:338-40;Kollias et al.,1986,Cell 46:89-94);脳内の乏突起膠細胞で活性なミエリン塩基性タンパク質遺伝子調節領域(Readhead et al.,1987,Cell 48:703-12);骨格筋で活性なミオシン軽鎖-2遺伝子調節領域(Sani,1985,Nature 314:283-86);及び視床下部で活性な性腺刺激放出ホルモン遺伝子調節領域(Mason et al.,1986,Science 234:1372-78)。
【0105】
ベクターはまた、軽鎖又は重鎖をコードするDNAの転写を増加させるためのエンハンサー配列を含んでもよい。
【0106】
本開示の発現ベクターは、市販のベクターなどの出発ベクターから構築され得る。このようなベクターは、所望の隣接配列の全てを含有しても、含有しなくてもよい。本明細書中に記載される隣接配列の1つ以上がベクター中に事前に存在しない場合、それらを個別に入手し、ベクターに結合してもよい。隣接配列の各々を得るために使用される方法は、当業者によく知られている。
【0107】
ベクターを構築し、本開示の抗体又は抗原結合断片を含む軽鎖若しくは重鎖又は軽鎖及び重鎖をコードする核酸分子をベクターの適切な部位に挿入した後、完全なベクターが増幅及び/又はポリペプチド発現に好適な宿主細胞に挿入され得る。選択された宿主細胞への発現ベクターの形質転換は、トランスフェクション、感染、リン酸カルシウム共沈、エレクトロポレーション、微量注入、リポフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、又は他の既知の技術を含む、よく知られる方法によって行われ得る。選択される方法は、部分的には、使用される宿主細胞の種類に応じることになる。これらの方法及び他の好適な方法は、当業者によく知られている。
【0108】
宿主細胞は、適切な条件下で培養した場合、本開示の抗体又は抗原結合断片を合成し、続いてそれを培養液から回収することができるか(宿主細胞がそれを培地中に分泌する場合)、又はそれを産生する宿主細胞から直接回収することができる(それが分泌されない場合)。適切な宿主細胞の選択は、所望の発現レベル、活性のために望ましいか又は必要なポリペプチド修飾(グリコシル化又はリン酸化など)、及び生物学的に活性な分子への折りたたみの容易さなどの種々の要因に依存することになる。
【0109】
発現のための宿主細胞として利用可能な哺乳動物細胞株は当技術分野でよく知られており、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、HepG2)、及び多数の他の細胞株が含まれるが、これらに限定されないアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(A.T.C.C.)から利用可能な多数の不死化細胞株を含むが、これらに限定されない。別の実施形態では、自身の抗体を作製しないが、異種抗体(例えば、マウス骨髄腫細胞株NS0及びSP2/0)を作製及び分泌する能力を有するB細胞系列由来の細胞株を選択してもよい。他の実施形態では、酵母細胞株(例えば、ピキア(Pichia))などの哺乳動物細胞以外の細胞が使用される。
【0110】
ある種の実施形態では、細胞株は、本開示の抗体又は抗原結合断片を安定に発現する。他の実施形態では、細胞は、本開示の抗体又は抗原結合断片を一過性に発現する。
【0111】
D.治療用製剤及び投与
本開示は、本開示の抗PAR2抗体又はその抗原結合性断片を含む医薬組成物を提供する。本開示の医薬組成物は、好適な担体、賦形剤、及び移行、送達、耐性の向上をもたらす他の薬剤などを用いて製剤化される。多数の適切な製剤を全ての薬剤師に知られる処方集において見出すことができる:Remingtons Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、PA。これらの製剤としては、例えば、散剤、ペースト剤、軟膏剤、ゼリー、ワックス、油、脂質、脂質(カチオン性又はアニオン性)を含有する小胞(LIPOFECTIN(商標)、Life Technologies、Carlsbad、CAなど)、無水吸収ペースト剤、水中油型エマルジョン及び油中水型エマルジョン、エマルジョンカーボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、及びカーボワックスを含有する半固体混合物が挙げられる。Powellらの”Compendium of excipients for parenteral formulations”PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238-31 1も参照されたい。
【0112】
患者に投与される抗体の用量は、患者の年齢及び体格、標的疾患、病態、投与経路などに応じて変動し得る。好ましい用量は通常、体重又は体表面積に応じて算出される。病態の重症度に応じて、治療の頻度及び持続時間を調整することができる。抗PAR2抗体又は抗原結合断片を投与するための有効な投与量及びスケジュールは経験的に決定することができる。例えば、患者の進行を周期的な評価によってモニタリングし、それに応じて用量を調整することができる。さらに、投与量の種間スケーリングを、当技術分野でよく知られる方法を用いて実施することができる(例えば、Mordenti et al.,1991,Pharmaceut.Res.8:1351)。
【0113】
種々の送達系、例えば、リポソーム中の封入、微小粒子、マイクロカプセル、変異体ウイルスを発現することができる組換え細胞、受容体媒介性エンドサイトーシスが知られており、本開示の医薬組成物を投与するために使用することができる(例えば、Wu et al.,1987,J.Biol.Chem.262:4429-4432を参照されたい)。導入の方法としては、皮内、髄腔内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口経路が挙げられるが、これらに限定されない。組成物は、任意の好都合な経路によって、例えば、点滴又はボーラス注射によって、上皮又は粘膜皮膚の内層(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜など)を通じた吸収によって投与されてもよく、且つ他の生物学的に活性な薬剤と合わせて投与されてもよい。投与は全身的又は局所的であってもよい。
【0114】
いくつかの実施形態では、抗体及びその抗原結合断片は、中枢神経系と関連付けられた、及び特に脳と関連付けられた病態及び障害の治療の際に有用性を有する。抗体又は抗原結合断片などの高分子を対象の脳に投与する場合に様々な要因、すなわち、抗体又は抗原結合断片が血液脳関門(BBB)を通過する能力を考慮しなければならないが、当業者は、このような高分子を脳に投与する方法を認識している。例えば、いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、抗体又は抗原結合断片がBBBを越えて内部移行する可能性を増大させるために、ヘキサメチレンジアミン又はテトラメチレンジアミンなどの1つ以上のカチオン性ポリアミンにより共有結合的に修飾される。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、二重特異性抗体又は抗原結合断片であり、抗体又は断片はPAR2を標的化し、且つBBBを越える輸送を促進する受容体(例えば、トランスフェリン受容体、インスリン受容体及びTMEM30A)もまた標的化する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、BBBを越える輸送を促進する受容体(例えば、トランスフェリン受容体、インスリン受容体及びTMEM30A)を標的化する薬剤にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、BBBは、抗体又は断片の投与の前又は投与中に一時的に破綻させられる。いくつかの実施形態では、BBBは、超音波、放射線、生化学的処理(例えば、NS-1619などのKCa受容体アゴニストによる)、又は濃縮された高浸透圧性溶液の動脈内注入によって一時的に破綻させられる。
【0115】
本開示の医薬組成物は、標準的な針及び注射器により皮下又は静脈内に送達され得る。加えて、皮下送達に関しては、ペン型送達デバイスが本開示の医薬組成物の送達に容易に適用される。そのようなペン型送達デバイスは、再使用可能又は使い捨てであり得る。再使用可能なペン型送達デバイスには、一般に、医薬組成物を含有する交換可能なカートリッジが利用される。カートリッジ内の医薬組成物の全てが投与され、カートリッジが空になったら、空のカートリッジを即座に廃棄し、医薬組成物を含有する新しいカートリッジと交換することができる。続いて、ペン型送達デバイスを再使用することができる。使い捨てペン型送達デバイスでは、交換可能なカートリッジはない。むしろ、使い捨てペン型送達デバイスにはデバイス内のレザバー中に保持された医薬組成物が予め充填されている。医薬組成物がなくなりレザバーが空になったら、デバイス全体を廃棄する。
【0116】
多数の再使用可能なペン型及び自己注射器送達デバイスが本開示の医薬組成物の皮下送達に適用される。例としては、ほんの数例を挙げると、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.、Woodstock、UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems、Bergdorf、Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.、Indianapolis、IN)、NOVOPEN(商標)I、II及びIII(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、並びにOPTICLIK(商標)(sanofi-aventis、Frankfurt、Germany)が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の医薬組成物の皮下送達に適用される使い捨てペン型送達デバイスの例としては、ほんの数例を挙げると、SOLOSTAR(商標)ペン(sanofi-aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、及びKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)自己注射器(Amgen、Thousand Oaks、CA)、PENLET(商標)(Haselmeier、Stuttgart、Germany)、EPIPEN(Dey,L.P.)、及びHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs、Abbott Park IL)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
一定の状況では、医薬組成物を制御放出系で送達することができる。一実施形態では、ポンプを使用してもよい(Langer,上掲;Sefton,1987,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201を参照されたい)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる;Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),1974,CRC Pres.,Boca Raton,Floridaを参照されたい。さらに別の実施形態では、制御放出系を組成物の標的の近傍に置くことができ、したがって、全身用量のほんの一部のみが必要になる(例えば、Goodson,1984,in Medical Applications of Controlled Release,上掲,vol.2,pp.115-138を参照されたい)。他の制御放出系は、Langer,1990,Science 249:1527-1533による概説において考察されている。
【0118】
注射用製剤としては、静脈内、皮下、髄腔内、皮内及び筋肉内注射、点滴注入などのための剤形を挙げてもよい。これらの注射用製剤は、公知の方法によって調製され得る。例えば、注射用製剤は、例えば、注射剤に従来使用されている滅菌水性媒体又は油性媒体に上記の本明細書で開示される抗体若しくは抗原結合断片又はその塩のいずれかを溶解するか、懸濁させるか又は乳化させることによって調製され得る。注射剤のための水性媒体としては、例えば、生理食塩水、グルコース及び他の補助剤を含有する等張溶液などがあり、これらは、適切な可溶化剤、例えばアルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(硬化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50モル)付加体)]などと併用されることもある。油性媒体としては、例えば、ゴマ油、ダイズ油などが使用され、これらは、可溶化剤、例えば安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用されることもある。このようにして調製された注射剤は、適切なアンプルに充填されることが好ましい。
【0119】
上記の経口又は非経口使用のための医薬組成物は、活性成分の用量に適合させるのに適した単位用量の剤形に調製することが有利である。そのような単位用量の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが挙げられる。含有される上述の抗体の量は、一般に、単位用量の剤形当たり約5~約500mgであり;特に、上述の抗体又は抗原結合断片は、注射剤の形態では約5~約100mgで、及び他の剤形では約10~約250mgで含有されることが好ましい。
【0120】
E.抗体の治療的使用
本明細書に記載される方法のいずれかについて、本開示は、本開示の抗体又は抗原結合断片のいずれかの使用を企図する。
【0121】
いくつかの実施形態では、本開示は、望ましくない且つ/又は異常なPAR2活性が関与する対象における障害を治療する方法であって、本明細書に記載される抗体又は抗原結合断片のいずれかを投与することを含む方法を提供する。本明細書で使用する場合、「障害」、「病態」及び「疾患」は互換的に使用され、本明細書で開示される障害、病態又は疾患のいずれかを指す。いくつかの実施形態では、望ましくない且つ/又は異常なPAR2活性が関与する疾患/障害/病態は、異常な又は望ましくない炎症と関連付けられた疾患/障害/病態である。異常な又は望ましくないPAR2活性が関与する疾患/障害/病態の例としては、急性又は慢性疼痛、急性又は慢性掻痒、急性又は慢性炎症(例えば、関節、肺、脳、胃腸管、歯周組織、皮膚、及び血管系の急性又は慢性炎症)、自己免疫障害、歯周炎、変形性関節症、関節リウマチ、炎症性腸疾患、関節炎、乾癬、肥満症、糖尿病、心血管疾患、膵炎、癌(例えば、乳癌、肺癌、大腸癌、胃癌又は前立腺癌)、喘息、線維症、胃潰瘍、線維症又は線維性障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、収縮皮膚炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、糸球体腎炎、及び髄膜炎が挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示は、代謝症候群、又は内臓脂肪沈着、高血圧、グルコースとインスリンの恒常性の異常、インスリン抵抗性、内皮損傷、心血管肥大、炎症、血管炎症、アテローム硬化症、心室収縮不全、線維症及び脂肪肝疾患などの1つ以上の代謝症候群と関連付けられた病態を有する対象を治療する方法を提供する。特定の実施形態では、本開示は、疼痛、例えば本明細書で開示される疾患/障害/病態のいずれかと関連付けられた疼痛(例えば、骨関節炎疼痛)を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0122】
いくつかの実施形態では、本開示は、プロテアーゼ(例えば、トリプシン)とPAR2との相互作用を妨げる方法であって、本明細書で記載される抗体又は抗原結合断片のいずれかを細胞に投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、PAR2のテザーリガンドの細胞上での露出を阻害する方法であって、本明細書で記載される抗体又は抗原結合断片のいずれかを細胞に投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、PAR2のテザーリガンドとPAR2タンパク質の第2の膜貫通ループとの相互作用を阻害する方法であって、本明細書で記載される抗体又は抗原結合断片のいずれかを細胞に投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、細胞上のPAR2受容体の活性化を阻害する方法であって、本明細書で記載される抗体又は抗原結合断片のいずれかを細胞に投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は神経(例えば、感覚神経)である。いくつかの実施形態では、細胞はインビトロにある。他の実施形態では、細胞は対象中にある。いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書で開示される障害のいずれかに罹患している。
【0123】
本明細書に記載される方法のいずれかについて、本開示は、1つの方法の任意の1つ又は複数の工程と別の方法からの任意の1つ又は複数の工程の組み合わせを企図する。これらの方法は、有効量の特定の疾患又は病態に適切な本開示の化合物を、それを必要とする個体に投与することを含む。特定の実施形態では、これらの方法は、本明細書で開示される抗体又は抗原結合断片のいずれかを、それを必要とする対象の細胞に送達することを含む。
【0124】
用語「治療」、「治療する」、「緩和」などは、本明細書中で、一般に所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを意味するために使用され、これらはまた、治療されている病態の1つ以上の症状の重症度を改善、緩和、及び/又は低減することを指すために使用され得る。効果は、疾患、病態、又はその症状の発生又は再発の完全な又は部分的な遅延の観点からは予防的であり得、且つ/又は疾患若しくは病態及び/又は疾患若しくは病態に寄与する有害作用の部分的又は完全な治癒の観点からは治療的であり得る。「治療」は、本明細書で使用する場合、哺乳動物、特に、ヒトの疾患又は病態の任意の治療を包含し、(a)疾患又は病態にかかりやすいかもしれないが依然として罹患していると診断されていない対象において疾患又は病態の発症を予防すること;(b)疾患又は病態を抑制すること(例えば、その発症の抑止);又は(c)疾患又は病態を軽減すること(例えば、疾患又は病態の退行をもたらすこと、1つ以上の症状の改善をもたらすこと)のいずれか1つ以上を含む。例えば、疼痛(例えば、骨関節炎疼痛)の「治療」は、治療される対象における疼痛症状の低減、抑止、緩和又は除去を含む。当該疾患について当該方法により治療される対象の集団は、望ましくない病態又は疾患に罹患している対象、及び病態又は疾患の発症のリスクのある対象を含む。
【0125】
本明細書に記載される方法のいずれかについて、本開示は、本願を通して記載される抗体又は抗原結合断片のいずれかの使用を企図する。加えて、本明細書に記載される方法のいずれかについて、本開示は、1つの方法の任意の1つ又は複数の工程と別の方法からの任意の1つ又は複数の工程の組み合わせを企図する。
【0126】
ある種の実施形態では、本発明は、本明細書で開示される疾患/病態/障害、例えば、急性又は慢性疼痛(例えば、骨関節炎疼痛)のいずれかと関連付けられた病態を治療する方法を提供する。これらの方法は、治療有効量の上記の抗体又は抗原結合断片のいずれかを個体に投与することを含む。これらの方法は特に、動物、より具体的にはヒトの治療的及び予防的治療を目指している。本開示は、前述の態様及び実施形態のいずれかの全ての組み合わせ、並びに発明を実施するための形態及び実施例に記載される実施形態のいずれかとの組み合わせを企図する。
【0127】
用語「治療有効用量」は、投与の目的となる所望の効果をもたらす用量を意味する。正確な用量は、治療の目的に依存することになり、既知の技術を使用して当業者によって確認可能である(例えば、Lloyd(1999)The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compoundingを参照されたい)。
【0128】
ある種の実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片のいずれかは、単独で又は本明細書で開示される疾患/病態/障害、例えば、急性若しくは慢性疼痛(例えば、骨関節炎疼痛)のいずれかを治療するための1つ以上の追加の化合物若しくは療法と組み合わせて投与され得る。例えば、本明細書で開示される抗体又は抗原結合断片のいずれかは、1つ以上の治療用化合物とともに同時投与され得る。同時投与が示される場合、併用療法は、同時又は交互投与を包含し得る。加えて、併用は、急性又は慢性投与を包含し得る。任意選択により、抗体/抗原結合断片及び追加の化合物は、本明細書で開示される疾患/病態/障害、例えば、急性又は慢性疼痛(例えば、骨関節炎疼痛)のいずれかを治療するために相加的又は相乗的な様式で作用する。併用療法において使用される追加の化合物としては、小分子、ポリペプチド、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、及びsiRNA分子が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、追加の化合物は、抗炎症剤、鎮痛剤、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、コルチコステロイド、ヒアルロン酸、アセトアミノフェン、コデイン、ローセット、ロータブ、バイコジン、ヒドロコドン、モルヒネ、オキシコンチン、ロキシコドン、パーコセット、アスピリン、セレコキシブ、プレガバリン、関節固定、関節置換、アバタセプト、アダリムマブ、アナキンラ、セルトリズマブ、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、トシリズマブ及びトファシチニブのいずれか1つ以上である。併用療法の性質に依存して、本開示の抗体又は抗原結合開示の投与は、他の療法が投与されている間及び/又はその後、継続され得る。抗体又は抗原結合断片の投与は、単回投与又は複数回投与でなされ得る。いくつかの例では、抗体又は抗原結合断片の投与は、他の療法の少なくとも数日前に開始されるが、その他の例では、投与は、他の療法の投与の直前又は投与時のいずれかに開始される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示される追加の化合物のいずれかは、本明細書で開示される抗体又は抗原結合断片のいずれかにコンジュゲートされる。
【0129】
併用療法の別の例では、本開示の抗体又は抗原結合断片のいずれかは、1つ以上の追加の治療モダリティと組み合わせた治療レジメンの一部として使用することができる。一例として、このような他の治療モダリティは、食事療法、作業療法、理学療法、精神療法、マッサージ、刺鍼術、指圧、移動補助具、介助動物などを含むが、これらに限定されない。
【0130】
本明細書で開示される抗体又は抗原結合断片は他の療法と組み合わせて使用することができるが、ある種の実施形態では、抗体又は抗原結合断片が、療法の唯一の形態として提供されることに留意されたい。単独で投与されるか又は他の薬物若しくは治療レジメンと組み合わせて投与されるかに関係なく、抗体又は抗原結合断片の用量、頻度、投与経路、及び投与のタイミングは、患者の病態及び必要性に基づいて医師により決定される。
【0131】
本開示のある種の実施形態によれば、抗PAR2抗体又はその抗原結合断片(又は抗PAR2抗体と本明細書に記載される追加の療法のいずれかとの組み合わせを含む医薬組成物)の複数の用量が、既定の時間経過にわたって対象に投与され得る。本開示のこの態様による方法は、本開示の抗PAR2抗体又は抗原結合断片の複数の用量を対象に逐次的に投与することを含む。本明細書で使用する場合、「逐次的に投与する」は、抗PAR2抗体又は抗原結合断片の各用量が、異なる時点で、例えば、所定の間隔(例えば、数時間、数日、数週又は数ヶ月)によって隔てられた異なる日に対象に投与されることを意味する。本開示は、抗PAR2抗体又は抗原結合断片の単一の初回用量に続いて、抗PAR2抗体又は抗原結合断片の1用量以上の第2の用量、任意選択によりその後、抗PAR2抗体又は抗原結合断片の1用量以上の第3の用量を患者に逐次的に投与することを含む方法を含む。
【0132】
用語「初回用量」、「第2の用量」、及び「第3の用量」は、本開示の抗PAR2抗体又は抗原結合断片の投与の時系列を指す。したがって、「初回用量」は、治療レジメンの開始時に投与される用量(「ベースライン用量」とも呼ばれる)であり;「第2の用量」は、初回用量後に投与される用量であり;「第3の用量」は、第2の用量後に投与される用量である。初回、第2、及び第3の用量は全て、同量の抗PAR2抗体又は抗原結合断片を含有することもあるが、一般に、投与の頻度に関して互いに異なり得る。しかしながら、ある種の実施態様では、初回、第2、及び/又は第3の用量に含有される抗PAR2抗体又は抗原結合断片の量は、治療経過中、互いに変化する(例えば、適宜、上方調整又は下方調整される)。ある種の実施態様では、2以上の(例えば、2、3、4、又は5)用量が、治療レジメンの開始時に「ローディング用量」として、その後、より低い頻度で投与される後続の用量(例えば、「維持用量」)として投与される。
【0133】
F.抗体又は抗原結合断片の診断上の/他の使用
本開示の抗PAR2抗体はまた、試料において、例えば、診断目的で、PAR2又はPAR2発現細胞を検出し且つ/又は測定するために使用され得る。例えば、抗PAR2抗体、又はその抗原結合断片は、PAR2の異常な発現(例えば、過剰発現、過小発現、発現の欠如など)により特徴付けられる病態又は疾患を診断するために使用され得る。PAR2に関する例示的な診断アッセイは、例えば、患者から得た試料を本開示の抗PAR2抗体と接触させることを含んでもよく、ここで、抗PAR2抗体は、検出可能な標識又はレポーター分子で標識される。
【0134】
あるいは、標識されていない抗PAR2抗体を、診断への適用においてそれ自体が検出可能に標識された二次抗体と組み合わせて使用することができる。検出可能な標識又はレポーター分子は、H、14C、32P、35S、又は125Iなどの放射性同位体;フルオレセインイソチオシアネート、若しくはローダミンなどの蛍光若しくは化学発光部分;又はアルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、若しくはルシフェラーゼなどの酵素であってもよい。試料中のPAR2を検出又は測定するために使用することができる特定の例示的なアッセイとしては、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び蛍光活性化細胞選別(FACS)が挙げられる。
【0135】
本開示の組成物には多数の用途がある。例えば、本開示の抗体及び抗原結合断片は、インビトロ及び/又はインビボでの細胞及び組織中の優先的な細胞及び組織分布の研究に有用である。同様に、単独の又は異種薬剤にコンジュゲートされた抗体及び抗原結合断片は、エクスビボ又はインビボでの診断上の適用などのためのイメージング剤として有用である。例えば、放射性部分にコンジュゲートされた抗体又は抗原結合断片は、エクスビボ又はインビボ画像化研究に有用である。同様に、本開示の抗体又は抗原結合断片のいずれかが同様に有用である。
【0136】
インビトロで使用する場合、本開示の抗体及び抗原結合断片は、送達されている抗体又は抗原結合断片の結合パートナーの同定(例えば、抗体又は抗原結合断片に結合するタンパク質又はペプチドの同定)、並びに局在化及び輸送の評価に好適である。同様に、インビボで使用する場合、抗体又は抗原結合断片は、送達されている抗体又は抗原結合断片の結合パートナーの同定(例えば、抗体又は抗原結合断片に結合するタンパク質又はペプチドの同定)、局在化及び輸送の評価、生体内分布及び半減期の評価、並びに免疫原性の評価に有用である。
【0137】
G.動物/細胞モデル
抗体又はその断片のいずれかを試験するのに有用であろう多数の動物モデルが当業者に知られている。例えば、Kuyinu et al.,2016,J Orthop Surg Res,11(19):10.1186/s13018-016-0346-5を参照されたい。いくつかの実施形態では、動物モデルは、モノヨード酢酸ナトリウム(MIA)又はカラゲニンなどの化学物質により動物を処理することにより産生された疼痛モデルである。いくつかの実施形態では、化学物質は、動物において疼痛が誘導されることになる部位に注射される。いくつかの実施形態では、動物モデルは、前十字靭帯切除、半月板切除、又は内側半月板切除などの損傷が手術後に(例えば、切開性)誘導される動物である。いくつかの実施形態では、動物モデルは、下部食道過敏、結腸炎症、胃潰瘍形成、膀胱炎症、膵臓炎症及び子宮炎症などの炎症性病態と関連付けられたものである。例えば、National Research Council Committee on Recognition and Alleviation of Pain in Laboratory Animals,”Models of Pain”,2009において言及される動物モデルを参照されたい。
【0138】
H.キット
ある種の実施形態では、本発明はまた、本開示の少なくとも1つの抗体又は抗原結合断片で充填された1つ以上の容器を含む医薬品パッケージ又はキットを提供する。このような容器には、任意選択により、医薬品又は生物学的製品の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって規定された形態の通知であって、(a)ヒトへの投与のための製造、使用又は販売に関する当該機関による承認、(b)使用のための説明書、又はその両方を反映する通知が付随し得る。
【実施例0139】
以下の実施例は、本開示の方法及び組成物を作製し且つ使用する方法に関する完全な開示と説明を当業者に提供するように提出されるが、本発明者らが自らの発明と考えるものの範囲を限定することを意図するものではない。使用される数(例えば量、温度など)に関しては、正確さを確保するように努めたが、ある程度の実験誤差と偏差は考慮されるべきである。別段の指示がない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏であり、そして圧力は大気圧又は大気圧近傍である。
【0140】
実施例1:PAR2に対するpH感受性結合を有する抗体の生成
組換えヒト、ラット及びカニクイザルPAR2並びにPAR1タンパク質の生成
細胞外残基1~75を含むヒト、ラット及びカニクイザル(Macaca fascicularis)PAR2(プロテイナーゼ活性化受容体2)コンストラクトを、N末端AviTag(商標)(Avidity LLC)及びC末端Flag及びポリヒスチジンタグとともに設計し、ベクターpDEST12.2 OriP FH(Life Technologies)にクローン化した。細胞外残基1~102を含むヒトPAR1(プロテイナーゼ活性化受容体1)コンストラクトを、C末端Flag及びポリヒスチジンタグとともに設計し、ベクターpDEST12.2 OriP FH(Life Technologies)にクローン化した。このコンストラクトをHEK293細胞で発現させ、標準的な親和性及びサイズ排除クロマトグラフィー精製を用いて培地から精製した。ビオチン化タンパク質を生成するために、AviTag(商標)を製造者の指示書に従って酵素的にビオチン化した。
【0141】
コンビナトリアルヒスチジンスキャニングライブラリーの構築
スプリットプールオリゴヌクレオチドを設計して、Par0067のVHCDR2、VHCDR3又はVLCDR3のいずれかの各位置でヒスチジン又は野生型アミノ酸を導入した。その後、VHCDR2、VHCDR3又はVLCDR3のいずれかにおいて0%~100%のヒスチジン残基が存在する3つのPar0067 scFvファージディスプレイライブラリーを構築した。
【0142】
pH感受性Par0067変異体scFvの選択
pH7.4でPAR2に結合するが、pH6.0で結合の低減を有するPar0067変異体を単離するために、コンビナトリアルヒスチジンスキャニングライブラリーを親和性に基づくファージディスプレイ選択にかけた。これを実現するために、ビオチン化組換えヒトPAR2の濃度の減少を用いて4ラウンドの選択を各ライブラリーで実施した(Hawkins,RE et al.,1992 Aug 5;226(3):889-96)。各ラウンドにおいて、ファージを、ストレプトアビジンでコーティングした常磁性ビーズ(dynabeads(登録商標))で1時間プレインキュベートして、ストレプトアビジン結合体を除去した。引き続いて、ストレプトアビジンビーズをDYNAL(登録商標)磁石で除去して捨て、残留するファージをpH7.4でビオチン化組換えヒトPAR2に加えた。選択を2時間続けた後、ストレプトアビジンでコーティングした常磁性ビーズを加えて、ビオチン化組換えヒトPAR2が結合したファージを捕捉した。ビーズをPBS Tween(PBST)で5回洗浄した後、低pH緩衝液(pH5.5~pH6.0)において特異的なscFvを溶出した。次に、選択されたscFv-ファージ粒子を以前に記載されたとおりに(Osbourn JK.et al.Immunotechnology,2(3):181-96,1996)レスキューし、濃度を低減したビオチン化PAR2(4ラウンドの間1nM~0.05nM)の存在下で選択工程を繰り返した。
【0143】
scFvのIgG1-TMへの再フォーマット
抗体を、scFvから完全免疫グロブリンG1三重変異体(IgG1-TM、L234F、L235E及びP331Sの変異を組み込んでいるIgG1 Fc配列)抗体フォーマットに、下の変更を伴って基本的にはPersicら(1997,Gene,187,9-18)によって記載されたとおりに変換した。CHO一過性細胞との使用を容易にし、且つエピソーム複製を可能にするため、発現ベクターにOriP断片を含めた。ヒト重鎖定常ドメイン及び調節エレメントを含有するベクターに可変重鎖(VH)ドメインをクローン化して、哺乳動物細胞において完全IgG1重鎖を発現させた。同様に、ヒト軽鎖(ラムダ)定常ドメイン及び調節エレメントの発現用ベクターに可変軽鎖(VL)ドメインをクローン化して、哺乳動物細胞において完全IgG軽鎖を発現させた。IgGを得るために、これらの重鎖及び軽鎖IgG発現ベクターをCHO一過性哺乳動物細胞にトランスフェクトした(Daramola et al.Biotechnol Prog 30(1):132-41(2014))。IgGを発現させて、培地中に分泌させた。回収物を濾過した後に精製し、続いてプロテインAクロマトグラフィーを用いてIgGを精製した。培養上清を適切なサイズのCeramic Protein A(BioSepra)のカラムにロードし、50mMトリス-HCl pH8.0、250mM NaClで洗浄した。0.1Mクエン酸ナトリウム(pH3.0)を使用して結合したIgGをカラムから溶出させて、トリス-HCl(pH9.0)の添加により中和した。溶出した材料をNap10カラム(Amersham、#17-0854-02)を使用してPBSに緩衝液交換し、IgGのアミノ酸配列に基づく吸光係数を用いてIgG濃度を分光光度的に決定した(Mach et al.,Anal.Biochem.200(1):74-80(1992))。SEC-HPLCを使用し、且つSDS-PAGEにより、精製されたIgGを凝集及び分解純度に関して分析した。
【0144】
pH感受性Par0067変異体scFv及びIgGのスクリーニング
潜在的なpH依存的結合を有する抗体をスクリーニングし、且つ特性を明らかにするために、生化学的エピトープ競合アッセイフォーマットを使用した。ホモジニアス時間分解蛍光法(HTRF(商標))の技術を使用したアッセイを設計して、ヒトPAR2の細胞外ドメイン(ECD)に対する親Par0067 IgG抗体の結合の相互作用を阻害する試験抗体(scFv又はIgG)の能力を評価した。重要なことに、アッセイは、2つの異なるpH値(pH7.4及びpH6.0)で実行された。
【0145】
最初に、pH7.4とpH6.0での並行したアッセイ(上記のとおり)を使用して、単一点の384ウェルハイスループットスクリーニング(HTS)において粗製の未精製scFv(細菌抽出物)をスクリーニングした。この単一点の並行したHTSフォーマットにより、多く(数千個)の試験scFvのスクリーニングが可能になり、且つpH7.4と比較してpH6.0においてヒトPAR2に対する親Par0067 IgG結合の相互作用の阻害を低減した抗体を、さらなる特徴付けに進めた。その後、同じエピトープ競合アッセイ手法を、複数点での用量反応IC50フォーマットにおいて実行して、精製scFv及び精製IgGの両方を試験した(後者の場合、セクションCにおいて記載のとおり、アッセイ設計の軽微な変更を必要とした)。さらに、アッセイをpH7.4とpH6.0で実行したが、これらの実験において、発明者らは試験抗体に最も関心を持ち、そこでは、用量反応阻害曲線は、pH7.4で観察された対応する用量反応阻害曲線に対してpH6.0で右方向への大幅なシフトを示した(すなわち、IC50値を著しく増大させた)。
【0146】
以下のプロトコルは、粗製の未精製scFvの単一点の試験並びにその後の精製scFv及びIgGの試験の両方のための方法を含む。
【0147】
セクションA:一般的なアッセイ条件:
アッセイ緩衝液:
アッセイ緩衝液を使用する日に新たに作製した。pH7.4での実験のために、DPBS(Gibco 14190-086)にKF(0.4M)(VWR、103444T)及びBSA(0.1% w/v)(PAA、K05-013)を加えた後、pHを再確認し、必要に応じてpH7.4に細かく調整した。pH6.0での実験のために、上で概要を述べたpH7.4のアッセイ緩衝液と他の全ての緩衝液成分を同一に保ちながら、pH6.0のアッセイ緩衝液を、200mM MES(Sigma、M-5287)(DPBSとは対照的に)の塩基緩衝液を用いて作製した。KF(0.4M)及びBSA(0.1% w/v)の添加の後、200mM MES系の緩衝液をHCLでpH6.0に調整した。
【0148】
アッセイプレート:黒色浅型ウェル384プレート(丸底、非結合型)(Corning、4514)を使用してアッセイを実施した。
【0149】
アッセイ体積:20μL
【0150】
インキュベーション及びプレートの読み取り:アッセイプレートを室温で2時間インキュベートした後、Envisionプレートリーダーの標準的なHTRF(商標)読み取りプロトコルを用いて読み取った。
【0151】
セクションB:scFvの試験:(未精製の細菌ライセート及び精製scFv)
【0152】
【表1】
【0153】
Par0067 IgGの調製/添加:
標識されていない精製Par0067 IgG(内製)を、セクションAに前述された2つのアッセイ緩衝液(pH7.4及びpH6.0)の各々において4.44nM(1.11nM 最終[アッセイ])の濃度にした。5μl/ウェルの適切なpHの4.44nM Par0067 IgG溶液を、該当するアッセイプレート(pH7.4及びpH6.0)の全てのウェルに加えた。
【0154】
試験scFvの調製/添加:
a)pH7.4及びpH6.0の両方での粗製の未精製細菌ライセートscFv試料の並行した単一点HTSのために、必要に応じてpH7.4又はpH6.0いずれかのアッセイ緩衝液を用いて、試料をまず、それらの適切な濃度の40%まで事前に希釈した。その後、5μlの40%の事前に希釈された試料を、10.0%の最終アッセイ試料濃度(20μl最終アッセイ体積中)を得るために、適切なアッセイ(pH7.4又はpH6.0)に移した。親Par0067 scFvは対照として全てのHTS実験に含まれ、特異的pH依存的抗体も、それらが利用可能(基準のために)であったため同様であった。
b)精製scFv抗体の複数点での用量反応IC50試験のために、試料を、適切な未希釈の試料(すなわち、事前の希釈工程が実施されなかった)の最大最終アッセイの1/4から試験した。次に、複製の11点の1:3段階希釈を、2つのアッセイ緩衝液(pH7.4及び6.0)の各々における384ウェルポリプロピレンGreinerプレート上で調製した。各段階希釈の1ウェル当たり5μlを、該当するpHのscFv希釈プレートから対応するアッセイプレート(pH7.4及びpH6.0)に移した。5μlの適切なpHのアッセイ緩衝液を、全体及び非特異的ウェルに加えた。親Par0067精製scFvは対照として全ての複数点での用量反応IC50実験に含まれ、特異的pH依存的精製scFvも、それらが利用可能(基準のために)であったため同様であった。データは表1において示される。
【0155】
ビオチン化ヒトPAR2 ECDの調製/添加:
内製のビオチン化ヒトPAR2 ECDを、2つのアッセイ緩衝液(pH7.4及びpH6.0)の各々に希釈して、4.0nM(1nM最終アッセイ濃度)の標準溶液を得た。次に、5μl/ウェルの適切な4.0nMのビオチン化ヒトPAR2 ECD標準溶液を、陰性結合対照ウェルを除く対応するアッセイプレート(pH7.4及びpH6.0)の全てのウェルに加えた。5μl/ウェルの適切なpHのアッセイ緩衝液を、陰性結合ウェルに加えた。
【0156】
HTRF検出試薬の調製/添加:
ユーロピウムクリプテート標識ストレプトアビジン(CisBio、610SAKLB)及びXL665標識抗ヒトFc(CisBio、61HFCXLB)を、各pHのアッセイ緩衝液(pH7.4及びpH6.0)にそれぞれ希釈して、6.0nM(ユーロピウムクリプテート標識ストレプトアビジン)及び40nM(XL665標識抗ヒトFc)の濃度の組み合わされた標準溶液を得た。4倍希釈してアッセイに入れる場合、これは、1.5nM(ユーロピウムクリプテート標識ストレプトアビジン)及び10nM(XL665標識抗ヒトFc)の最終アッセイ濃度をもたらした。次に、5μl/ウェルの該当するpHの組み合わされたHTRF(商標)検出試薬標準溶液を、対応するアッセイプレート(pH7.4及びpH6.0)の全てのウェルに加えた。
【0157】
セクションC:精製IgGの試験:
【0158】
【表2】
【0159】
Par0067 IgG Dylight650標識:
Par0067 IgGのDylight650標識を、Dylight650標識キット(Thermo Scientific カタログ番号84536)を使用して実施した。内製の精製Par0067 IgGの標識を、製造業者の推奨する標識手順に従って実施した。最終Dylight650標識Par0067 IgG濃度は、2.7モル色素/モルIgGのIgG色素組み込み比率に対する平均Dylight650により0.56mg/mlと決定された。
【0160】
Dylight650標識Par0067 IgGの調製/添加:
Dylight650標識Par0067 IgG(0.56mg/ml、3,733nM)を、材料セクションに前述された2つのアッセイ緩衝液(pH7.4及びpH6.0)の各々において4.44nM(1.11nM 最終[アッセイ])の濃度にした。5μl/ウェルの適切なpHの4.44nM Dylight650Par0067 IgG溶液を、該当するアッセイプレート(pH7.4及びpH6.0)の全てのウェルに加えた。
【0161】
試験IgGの段階希釈/添加:
親Par0067 IgG(全てのアッセイにおいて基準/対照として使用される)を事前に希釈して、2つの異なるpHのアッセイ緩衝液の各々において2000nMストックを得た(500nMの最大最終アッセイIgG濃度を得るため)。全ての試験、又は他の基準/対照IgGを、適切な未希釈の試料(すなわち、事前の希釈工程が実施されなかった)の最大最終アッセイ濃度の1/4から試験した。次に、複製の11点の1:3段階希釈を、2つのアッセイ緩衝液(pH7.4及び6.0)の各々における384ウェルポリプロピレンGreinerプレート上で調製した。1ウェル当たり5μlを、該当するpHのIgG希釈プレートから対応するアッセイプレート(pH7.4及びpH6.0)に移した。5μlの適切なpHのアッセイ緩衝液を、全体及び非特異的ウェルに加えた。
【0162】
ビオチン化ヒトPAR2 ECDの調製/添加:
内製のビオチン化ヒトPAR2 ECDを、2つのアッセイ緩衝液(pH7.4及びpH6.0)の各々に希釈して、4.0nM(1nM最終アッセイ濃度)の標準溶液を得た。次に、5μl/ウェルの適切な4.0nMのビオチン化ヒトPAR2 ECD標準溶液を、陰性結合対照ウェルを除く対応するアッセイプレート(pH7.4及びpH6.0)の全てのウェルに加えた。5μl/ウェルの適切なpHのアッセイ緩衝液を、陰性結合ウェルに加えた。
【0163】
HTRF検出試薬の調製/添加:
ユーロピウムクリプテート標識ストレプトアビジン(CisBio、610SAKLB)を、各pHのアッセイ緩衝液(pH7.4及びpH6.0)に希釈して、6.0nMの濃度の標準溶液を得た。4倍希釈してアッセイに入れる場合、これは、1.5nMの最終アッセイユーロピウムクリプテート標識ストレプトアビジン濃度をもたらした。次に、5μl/ウェルの該当するpHのユーロピウムクリプテート標識ストレプトアビジン標準溶液を、対応するアッセイプレート(pH7.4及びpH6.0)の全てのウェルに加えた。
【0164】
セクションD:データ分析
まず、665nm及び620nmカウントを、665nm/620nmの比率値に変換した。次に、デルタF(%)を、下式に従って計算した。
デルタF(%)=((試料比率-陰性比率)/陰性比率)×100
【0165】
陰性比率値を、Par0067 IgGの非存在下で該当する陰性結合対照ウェルから計算した。
次に、%特異的結合を、下式に従って計算した。
%特異的結合={(試料%デルタF-陰性結合%デルタF)/(全体結合%デルタF-陰性結合%デルタF)}×100
【0166】
単一点HTSのために、pH7.4に対するpH6.0での阻害の低減(より高い%特異的結合)を有するscFvの分布を可視化するため、pH7.4に対するpH6.0での%特異的結合を、それぞれx及びy軸にプロットした。
【0167】
複数点での用量反応曲線のために、%特異的結合の値を試験精製抗体濃度(scFv又はIgG)に対してプロットした。IC50値を、Graphpad Prismソフトウェアを用いてシグモイド用量反応阻害可変勾配曲線フィット(4パラメータのロジスティック方程式)により決定した。
【0168】
【表3】
【0169】
【表4】
【0170】
複数のヒスチジンの単一scFvへの組換え
Par0067エピトープ競合結合アッセイにおいてpH依存的結合を実証したscFvに由来するヒスチジン残基が、部位特異的変異誘発を用いて組み換えられた(Reikofski J and Tao BY,1992,Biotechnol Adv,10(4):535-547)。その結果として生じる2つの異なるCDR中にヒスチジンを含有したscFvを、完全免疫グロブリンG1三重変異体(IgG1-TM)(表2)として競合結合アッセイにおいて再試験して、親抗体であるPar0067と比較してpH依存的結合がさらに向上した変異体を同定した。
【0171】
参照Par0067抗体のCDR配列と比較したヒスチジン改変クローンの各々についての配列アラインメントが図1A~1B及び2A~2Bにおいて提供される。
【0172】
【表5】
【0173】
BIACORE(商標)によって決定されたヒト、ラット及びカニクイザルPAR2に対する抗PAR2 Fabの親和性
抗PAR2抗体の抗原結合断片(Fab)を発現させ(Spooner J.et al.(2015)Biotechnol Bioeng.112:1472-7)、様々な種(ヒト、ラット及びカニクイザル)の組換えPAR2についての親和性をBiacoreによって決定した。
【0174】
Biacore親和性分析
抗PAR2 Fabの親和性を様々なpH(pH7.4、pH6.0及びpH5.6)において25℃でBiacore T100を用いて測定した。N末端Aviタグ及びC末端Flag-Hisタグを有する組換えヒト、ラット及びカニクイザルPAR2を用いて実験を実施した。
【0175】
標準的なアミンカップリング技術を用いて、10mM酢酸ナトリウム pH4.5中において4μg/mlの濃度でストレプトアビジンをC1チップ表面に共有結合的に固定化した。約30~100RUの最終ストレプトアビジン表面に達した。組換えビオチン化PAR2種(内製)を、飽和状態(Rmax)でFab結合が可能となるようにHBS-EP+緩衝液中4μg/mlでストレプトアビジンチップ表面上に滴定した。この低レベルの分析物の結合により、最小限の物質移動効果を確保した。
【0176】
抗PAR2 Fabを、HBS-EP+pH7.4の緩衝液若しくはMES-BS-EP+pH6.0の緩衝液中、又はMES-BS-EP+pH5.6の緩衝液中において段階希釈し(0.39nM~25nM)、3分の会合と最長30分の解離を伴って50μl/分でチップ上に流した。同じ条件下で複数回の緩衝液のみの注入を行って、最終的なセンサーグラムセットのダブルリファレンスの差し引きを可能にし、BiaEvalソフトウェア(バージョン2.0.1)を用いて分析した。チップ表面は4M MgClの適用により完全に再生された。
【0177】
選択されたクローンについてのBiaCore親和性結果は、表3~13において以下に提供される。
【0178】
【表6】
【0179】
【表7】
【0180】
【表8】
【0181】
【表9】
【0182】
【表10】
【0183】
【表11】
【0184】
【表12】
【0185】
【表13】
【0186】
【表14】
【0187】
【表15】
【0188】
【表16】
【0189】
実施例2:細胞ベースのPAR2及びPAR1活性アッセイ
内在性PAR2を発現するヒトA549細胞、ラットKNRK、マウスLL/2若しくはカニクイザルCYNOM-K1細胞、又はヒトPAR2を過剰発現するヒト1321N1-hPAR2-cl8細胞を、PDLでコーティングされた組織培養プレート(Greiner Bio-One)上で1ウェル当たり5,000個(ヒト、カニクイザル)又は7,000個(マウス、ラット)の細胞で播種した。細胞をFluo-Screen Quest(商標)Fluo-8洗浄なしのカルシウム色素(AAT Bioquest,Inc)とともにロードした。細胞を、アッセイ緩衝液(HBSS、0.1% BSA、20mM HEPES)中で希釈されたIgG又はFabで室温にて1時間前処理した。マウス及びカニクイザルのアッセイのために、細胞をそれぞれ0.5nM又は10nMのトロンビンで前処理して、PAR1活性を脱感作した。11nM(ヒト)、400nM(マウス)又は80nM(ラット、カニクイザル)トリプシン(Polymun)に対するPAR2のカルシウム応答を、蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPR)Tetra(Molecular Devices)上で測定した。ヒトPAR1に対する機能活性を決定するために、A549ヒト細胞株におけるトロンビンに駆動されるカルシウム応答を、同様にFLIPR tetra上で決定し、これらのアッセイでは、陽性対照として、中和抗PAR1 IgG WEDE15(Beckman Coulter)及びATAP2(Life Technologies)を使用した。種々のプロテアーゼに対する機能活性を決定するために、ヒトPAR2を過剰発現する1321N1-hPAR2-cl8細胞をPaB670129で前処理した後、0.5nMトリプシン、500nMトリプターゼ又は1nMマトリプターゼでカルシウム放出を刺激した。蛍光量を、プロテアーゼの添加の前、添加中、及び添加の後に測定し、ウェル当たりのピークRFUを計算した。%応答(プロテアーゼ単独に対する)を抗体濃度に対して計算し、GraphPad Prismソフトウェアを使用してIC50を決定した。
【0190】
これらのアッセイにおけるヒト、カニクイザル、ラット、及びマウス細胞からの結果は、図3(それぞれA、B、C及びD)、図3Eの計算されたPAR2 IC50及び図6(PAR1の特異性データ)において提供される。IC50の計算値は、PaB670129が、内在性PAR2を発現するヒト、マウス、ラット及びカニクイザル細胞におけるトリプシン誘導性PAR2カルシウム応答を強力に阻害することを実証している(図3E)。さらに、ヒトA549細胞において、トロンビン誘導性のPAR1活性化は、PaB670129によっては阻害されないが、ボラパクサール及び抗PAR1モノクローナル抗体により効率的に遮断され得る(図6)。これらのデータは、PaB670129がPAR2の強力且つ特異的なアンタゴニストであることを実証している。PAR2発現細胞に対するPaB670129の単独での適用は、細胞の基底のカルシウムレベルに影響を及ぼさないが、これは、PaB670129がPAR2においてあらゆるアゴニスト活性を欠くことを実証している(図4A)。さらに、PaB670129は、トリプシン、トリプターゼ及びマトリプターゼを含む種々のプロテアーゼに対するPAR2誘発性の応答を強力にアンタゴナイズする(図4B)。
【0191】
一次DRGグリア-神経のPAR2カルシウムアッセイ
スプラーグドーリーラットの子の脊髄後根神経節(DRG)の解離した培養物を調製し、ラミニン及びPDLでコーティングされた組織培養プレート(Greiner Bio-One)上で増殖させた。アッセイにおける使用の前に、プレートを37℃で24~72時間インキュベートした。2μMのFura-2カルシウム色素(Life Technologies)とともに細胞をロードした。20nMのPAR2抗体を含有するイメージング緩衝液(HBSS、20mM HEPES、0.1mMスルフィンピラゾン、10μM PAR1アンタゴニスト ボラパクサール)中で細胞をインキュベートした。次に、アゴニストであるトロンビン(Sigma)及びマトリプターゼ(R&D Systems)PAR2活性化ペプチドLIGRLO(配列番号832)、(Peptides International)及び高濃度の細胞外カリウム(50mM)の適用に応答した細胞内カルシウムを、340及び380nmで励起するキセノンアークランプを備えたOlympus IX81顕微鏡上でのFura-2のレシオメトリックイメージングにより定量化した。視野当たりのグリアに対する神経細胞の数を計算した(高濃度カリウムに対する応答を示すものとして定義される神経細胞)。次に、視野当たりのマトリプターゼ感受性神経細胞及びグリアの総数を計算した。カルシウムアッセイからの結果は図5A~Fに提供され、PaB670129抗体が、DRGの神経細胞(図5A~C)及び非神経細胞(図5D~F)においてマトリプターゼに対する感受性を効率的に低減したことを示す。
【0192】
実施例3:炎症性関節痛のラットモデルにおける抗PAR2抗体の効果
スプラーグドーリーラットの同側膝におけるモノヨード酢酸ナトリウム(MIA)の関節内投与は、最初は炎症反応を付随する激しく且つ長期間の痛覚過敏及び異痛症の発症を引き起こす。この動物モデルにおけるこれらの徴候の発症は、臨床的に関連のあるものと考えられ;変形性関節症(OA)又は関節リウマチなどの潜在的な病態と関連付けられる慢性の炎症性疼痛を呈している患者によって示される症状を反映している(Bove et al.,2003;Fernihough et al.,2004;Kalbhen 1987)。(評価項目として体重負荷を用いて)MIA誘導性痛覚過敏は経時的に、Cox-2感受性であり;且つ標準薬のセレコキシブによって顕著に低減される初期の主として炎症性の要素を有する2相性のパターンに続くことが以前に実証されている。この初期の炎症期は、プレガバリン(PGB)感受性であり、且つセレコキシブ非感受性であるさらに慢性的な疼痛表現型に移行し、これは潜在的なより神経因性の要素を示唆している。
【0193】
体重負荷:未処置のラットは、2本の後ろ足の間に均等に体重を分配する。しかしながら、注射された(左)後ろ膝に炎症があり且つ/又は痛みを感じる場合、体重は、冒された肢により少ない体重がかかるように再分配される(損傷された肢における体重負荷が低減する)。各後肢を通じた体重負荷を、小動物用鎮痛評価装置(Incapacitance tester)(Linton Instruments、UK)を使用して測定する。
【0194】
スプラーグドーリーラットを、別々のセンサーに後ろ足を載せて小動物用鎮痛評価装置中に置き、両後肢によって及ぼされた平均の力を4秒間にわたって記録した。
【0195】
手順:分娩後、ラットは試験開始前に7日の最小限の馴化期間を経た。未処置のラットを自由に食物と水を利用できる状態でホームケージにおいて処置室に馴化させた。体重負荷室への馴化を数日間にわたって実施した。ベースラインの体重負荷の記録を最終日に行った。
【0196】
0日目に最終のベースラインの記録後、滅菌条件中において3:1で混合されたイソフルランと酸素を使用して動物を麻酔した。左膝領域を剪毛し、ヒビスクラブ希釈溶液で浄化した。
【0197】
左後肢の膝関節へのMIA(Sigma、I2512)溶液、80mg/mlの25μl、(2mg)の注射により変形性関節症(OA)を誘導した。シャム動物を生理食塩水で注射した。動物を温かい環境で回復させた後、ホームケージに戻した。
【0198】
動物は、MIAの後に炎症反応を発症し、患部を守り、且つなめる場合がある。したがって、苦痛又は激痛の予期しない徴候についてラットを注意深く監視し、その結果、そのような徴候を示す動物を即座に選別することができた。
【0199】
最初の週は毎日、その後は数日毎に動物を計量した。MIAの注射後3、7、10及び14日目に慢性疼痛の発症に関して体重負荷を評価した。18日目に体重負荷測定を行い、動物を分類し、ラテン方格法におけるMIA窓に従って治療群を無作為化した。
【0200】
抗体投与レジメン:18日目に、動物を、Par0067(PAR2+ve)10mg/kg又はアイソタイプ対照(PAR2-ve)10mg/kg 静注で処理し、さらに体重負荷測定を、抗体投与後4時間並びに1、2、6、8、10及び14日目に行った。
【0201】
プレガバリン及びセレコキシブ投与レジメン:動物に、MIA注射後24、25、26、27及び28日目に毎日PGB(30mg/kg 経口;2ml/kg)又はセレコキシブ(50mg/kg 経口;2ml/kg)を投与した。体重負荷評価を24、26及び28日目に投与後1時間行い、薬物治療の休止後の32日目にさらに記録を取った。
【0202】
投与後1、2、6、10及び14日目に、体重負荷評価後、抗体及びアイソタイプ対照治療群(n=5/群)から、pk分析のために400μlの血液を、尾静脈を通して採取した。
【0203】
試験の評価:体重負荷(g)記録を左右の後ろ足の両方で行い、差を計算した。データを、%比率 同側/対側((体重負荷 左/体重負荷 右)×100)(平均±s.e.m.)として表した。
【0204】
計算:同側の測定値/対側の測定値 ×100。未処置の体重負荷の差-投与前の体重負荷の差をMIA窓として定義した。
【0205】
統計分析:InVivoStat(invivostat.co.uk)を用いた反復測定ANOVAに続く計画比較検定、(p<0.05を有意とみなした)。各時点で治療群を溶媒対照群と比較することによってデータを分析した。
【0206】
損傷した後ろ足と未損傷の後ろ足との間の体重負荷の変化によって検出されるとおり、2mgのMIAの膝関節への注射により、明らかに3日目から顕著な炎症及び過敏性応答が引き起こされた。このMIA誘導性過敏性応答は18日目に至るまで(溶媒処理対照動物に関してはそれ以降も)全ての群でなお明白であり、その時点で最初の試験薬剤を投与した。生理食塩水の注射は体重負荷に影響を及ぼさなかった。
【0207】
図7Aにおいて実証されるとおり、24日目から28日目までのプレガバリン(30mg/kg)の毎日の投与後、過感受性の有意且つ顕著な回復が見られ、微弱に残留した効果は治療の先の休止後の32日目においても依然として明らかであった。反対に、24日目から28日目までのセレコキシブ(50mg/kg)の毎日の投与は、良くても過感受性の弱い回復を示すのみであった。この薬理学的プロファイルは、MIA応答のこの期間に観察された過感受性が、本質的に、炎症性というよりも主に神経因性であることを示唆する。
【0208】
図7Aにおいてさらに実証されるとおり、過感受性の有意な回復は、投与後4時間から28日目まで(投与後10日)Par0067により見られた。同じ期間においてアイソタイプ対照では効果は見られなかった。図7Bは、異なる濃度のPar0067による治療の効果を示す。
【0209】
実施例4:雌C57BL/6マウスにおける部分的神経結紮に誘導される機械的痛覚過敏の回復に対するPAR2抗体、PaB670129の効果
導入
Seltzer(1990)により記載されるとおりの坐骨神経の部分結紮(PNL)は、神経因性疼痛の前臨床モデルとして機能すると報告されるいくつかの神経結紮モデルの1つである。これにより、Randall及びSelitto(1957)によって記載される鎮痛作用測定装置(analgysemeter)を使用して測定することができる重度の機械的痛覚過敏がもたらされる。本実施例は、この神経損傷/神経因性疼痛モデルにおける痛覚過敏に対する抗PAR2抗体PaB670129の投与の効果を記載する。
【0210】
手順
60頭の雌C57BL/6マウスは、試験開始の少なくとも5日前に同定の目的でトランスポンダーの挿入を受けた。機械的痛覚過敏を鎮痛作用測定装置(Randall及びSelitto 1957)(Ugo Basile)を使用して決定した。離脱応答が観察されるまで、各後ろ足の背面に順番に力を増加させながら加えた。この時点で力の適用を停止し、体重をグラムで記録した。データは、同側の足及び対側の足についてグラムでの離脱閾値として表した。ベースラインの記録が確立した後、マウスを、坐骨神経を部分的に結紮させる手術を受けるか又はシャム手術対照として機能する、ほぼ等しい同側/対側比率を有する2群に分けた。手術を受けるマウスをイソフルランで麻酔した。この後、左坐骨神経の約1cmを、大腿中央の位置で切開による鈍的切開によって露出させた。次に、縫合糸(8/0 Virgin Silk:Ethicon)を背側の神経の3番に通して、きつく結んだ。次に、接着剤を使用して切開を閉じて、試験開始前の少なくとも6日間、マウスを回復させた。シャム手術マウスは同じプロトコルを受けたが、神経の露出後、マウスを縫合し、回復させた。
【0211】
マウスを、手術後の7日目及び10日目に痛覚過敏の発症について試験した。80%を超える同側/対側比率を示すあらゆるマウスをノンレスポンダーとして分類し、試験から除外した。10日目の試験後、マウスを最終的な治療群:
A.群1:シャム手術+アイソタイプ対照 10mg/kg 皮下注射(N=10)
B.群2:神経結紮+アイソタイプ対照 10mg/kg 皮下注射(N=9)
C.群3:神経結紮+エタネルセプト 0.3mg/kg 皮下注射(N=9)
D.群4:神経結紮+PaB670129 3mg/kg 皮下注射(N=9)
E.群5:神経結紮+PaB670129 10mg/kg 皮下注射(N=9)
F.群6:神経結紮+PaB670129 50mg/kg 皮下注射(N=9)
を示す群にさらに細分化した。
【0212】
マウスに、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈された対照又は試験分子を13日目に投与し、投与から4時間後、及び投与後1、2、4及び7日目に、機械的痛覚過敏における変化について再試験した。
【0213】
データ分析
同側及び対側の記録を、各試験時刻に各動物に対して取得した。同側及び対側の後肢による体重負荷は比率として表され、群のデータを、二元配置ANOVAを用いて分析し(PRISM)、必要に応じて、ペアワイズ比較がテューキー法を用いてなされた。
【0214】
結果
坐骨神経の部分結紮が機械的痛覚過敏をもたらし、それは、シャム手術を受けた対照と比較した場合、7日目及び10日目の同側/対側比率の有意な低下として顕在化した。アイソタイプ対照による治療の後、手術を受けたマウスは、機械的痛覚過敏のレベルにおいて投与前レベルから全く変化を示さず、これは効果の欠如を示している。内部標準薬のエタネルセプト(0.3mg/kg 皮下注射)の投与により、以前の研究で見られた結果に一致して、投与後4時間から7日目において痛覚過敏の有意な回復がもたらされた。PaB670129は、用量依存的に同側/対側比率の回復をもたらし、10mg/kg及び50mg/kgの両方でピークの効果が見られた。最小用量の3mg/kgは、投与後1、2及び7日目では有意であったが、より低い効果を示した(図8を参照のこと)。
【0215】
坐骨神経の部分結紮は、以前に報告された結果と一致して、長期間の機械的痛覚過敏を誘導した。理論に束縛されるものではないが、これは、神経因性疼痛において観察される疼痛の前臨床の相関現象として役立つと考えられる。PaB670129の投与は、この痛覚過敏の有意且つ用量依存的な回復を示し、神経因性疼痛の治療におけるPAR2抗体の有望な用途を示している。
【0216】
参考文献:
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【0217】
配列表:
【0218】
【表17】
【0219】
【表18】
【0220】
【表19】
【0221】
【表20】
【0222】
【表21】
【0223】
【表22】
【0224】
【表23】
【0225】
【表24】
【0226】
【表25】
【0227】
【表26】
【0228】
【表27】
【0229】
【表28】
【0230】
【表29】
【0231】
【表30】
【0232】
【表31】
【0233】
【表32】
【0234】
【表33】
【0235】
【表34】
【0236】
配列番号801-ヒトPAR2プレプロタンパク質(Genbankアクセッション番号NP_005233.3)
【化1】
配列番号802-ヒトPAR2のテザーリガンド
SLIGKVDGTSHVTGKGVTVETVFSVDEFSASVLTGKLTT
配列番号803-例示的なVHフレームワーク領域1
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFS
配列番号804-例示的なVHフレームワーク領域2
WVRQAPGKGLEWVS
配列番号805-例示的なVHフレームワーク領域3
RFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAR
配列番号806-例示的なVHフレームワーク領域4
WGQGTLVTVSS
配列番号807-例示的なVLフレームワーク領域1
SIELTQPPSVSVSPGQTASITC
配列番号808-例示的なVLフレームワーク領域2
WYQQKPGQSPVLVIY
配列番号809-例示的なVLフレームワーク領域3
GIPERFSGSNSGNTATLTISGTQAMDEADYYC
配列番号810-例示的なVLフレームワーク領域4
FGGGTKLTVL
配列番号811-例示的なVH CDR2
TISYSGSHISYHDSVHH
配列番号812-例示的なVH CDR2
TISYHGSLISYHDSVHH
配列番号813-例示的なVH CDR2
TISYHGSHISYADSVHH
配列番号814-例示的なVH CDR2
TISYHGSHISYHDSVKH
配列番号815-例示的なVH CDR2
TISYHGSHISYHDSVHG
配列番号816-例示的なVH CDR2
TISYHGSLISYADSVKG
配列番号817-例示的なVH CDR2
TISYSGSHISYADSVKG
配列番号818-例示的なVH CDR2
TISYHGSHISYADSVKG
配列番号819-例示的なVH CDR3
IHNDPMDV
配列番号820-例示的なVH CDR3
INHDPMDV
配列番号821-例示的なVH
【化2】
配列番号822-例示的なVH
【化3】
配列番号823-例示的なVH
【化4】
配列番号824-例示的なVH
【化5】
配列番号825-例示的なVH
【化6】
配列番号826-例示的なVH
【化7】
配列番号827-例示的なVH
【化8】
配列番号828-例示的なVH
【化9】
配列番号829-例示的なVH
【化10】
配列番号830-例示的なVH
【化11】
配列番号831-例示的なVH
【化12】
【0237】
参照による援用
本明細書で言及される全ての出版物及び特許は、個々の出版物又は特許の各々が具体的に且つ個々に参照により援用されていると示されているがごとく、それら全体が参照により本明細書に援用される。
【0238】
本開示の特定の実施形態を論じたが、上記明細書は説明的なものであり、限定的なものではない。本明細書及び下記請求項の確認により当業者には本開示の多くの変形形態が明らかになるであろう。本開示の全範囲は、本請求項をそれらの全範囲の均等物とともに、及び本明細書をそのような変形形態ともに参照することにより決定されるべきである。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3(1)】
図3(2)】
図4
図5(1)】
図5(2)】
図6
図7A
図7B
図8
【配列表】
2023055895000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-03-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、PAR2に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、前記VHが:
i)配列番号3のアミノ酸配列を有するVH-CDR1;
ii)配列番号4のアミノ酸配列を有するが、ヒスチジンが、配列番号4の1~17位に相当するアミノ酸位置のいずれか1つ以上で存在するVH-CDR2;及び
iii)配列番号5のアミノ酸配列を有するが、ヒスチジンが、配列番号5の1~8位に相当するアミノ酸位置のいずれか1つ以上で存在するVH-CDR3を含み;
且つ前記VLが:
i)配列番号8のアミノ酸配列を有するVL-CDR1;
ii)配列番号9のアミノ酸配列を有するVL-CDR2;及び
iii)配列番号10のアミノ酸配列を有するが、ヒスチジンが、配列番号10の1~14位に相当するアミノ酸位置のいずれか1つ以上で存在してもよいVL-CDR3を含み、
前記抗体又は抗原結合断片が、PAR2結合アッセイにおいて、pH7.4で配列番号3~5及び8~10の前記CDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、100nM未満のIC 50 を有し、
前記抗体又は抗原結合断片が、PAR2結合アッセイにおいて、pH6.0で配列番号3~5及び8~10の前記CDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、500nMより大きいIC 50 を有する、
抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
ヒスチジンが、配列番号4の5位、7位、8位、12位、15位、16位、及び17位、並びに配列番号5の2位及び3位に相当するアミノ酸位置のいずれか1つ以上に存在する、請求項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
前記VH-CDR2が、配列番号14に相当するアミノ酸配列を含み;前記VH-CDR3が、配列番号15に相当するアミノ酸配列を含み、且つ前記VL-CDR3が、配列番号20に相当するアミノ酸配列を含む、請求項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
前記VH-CDR2が、配列番号818に相当するアミノ酸配列を含み;前記VH-CDR3が、配列番号15に相当するアミノ酸配列を含み、且つ前記VL-CDR3が、配列番号10又は20に相当するアミノ酸配列を含む、請求項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
前記VHが、配列番号831に相当するアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが、配列番号7又は17に相当するアミノ酸配列を含む、請求項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
前記VHが、配列番号12と少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、95%、97%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが、配列番号17と少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、95%、97%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
前記VHが、配列番号12に相当するアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが、配列番号17に相当するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
前記抗体又は抗原結合断片がモノクローナル抗体である、又は前記抗体又は抗原結合断片がIgG抗体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項9】
前記抗体又は抗原結合断片がヒト化されている、又はヒトのものである、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項10】
前記抗体又は抗原結合断片が、
a.トリプシン、トリプターゼ及び/又はマトリプターゼのPAR2との相互作用を妨げる
b.トリプシン、トリプターゼ及び/又はマトリプターゼによるPAR2の切断を妨げる;
c.PAR2の細胞外ドメインの切断を妨げる;
d.テザーリガンドの露出を阻害する;及び/又は
e.前記テザーリガンドのPAR2の第2の膜貫通ループとの相互作用を妨げる、
請求項1~のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項11】
前記抗体又は抗原結合断片が、約5nM、1nM、900pM、800pM、700pM、650pM、600pM、500pM、200pM、100pM又は50pM未満のKを有してpH7.4でPAR2に結合する、又は前記抗体又は抗原結合断片が、約700pM未満のK を有してpH7.4でPAR2に結合する、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項12】
前記抗体又は抗原結合断片が、約1nM、5nM、10nM、15nM、20nM、25nM、30nM、40nM、50nM、60nM、80nM、又は100nMより大きいKを有してpH6.0でPAR2に結合する、又は前記抗体又は抗原結合断片が、約30nMより大きいK を有してpH6.0でPAR2に結合する、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項13】
前記抗体又は抗原結合断片が、PAR2結合アッセイにおいて、配列番号3~5及び8~10の前記CDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、pH6.0よりpH7.4で20倍を超えて低いIC50を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項14】
前記抗体又は抗原結合断片が、ヒトA549細胞におけるカルシウム流入アッセイにおいて3.0×10-10M未満又は1.5×10 -10 M未満のIC50を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片を発現することが可能な核酸。
【請求項16】
請求項15に記載の核酸を含むベクター。
【請求項17】
請求項16に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項18】
薬学的に許容される担体及び請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片を含む組成物。
【請求項19】
痛を治療するための請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記疼痛が、侵害受容性疼痛、神経因性疼痛、及び混合型疼痛からなる群から選択される、請求項19に記載の組成物
【請求項21】
前記疼痛が変形性関節症疼痛である、請求項19又は20に記載の組成物
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とする対象において疼痛を治療するための方法であって、治療有効量の本明細書で開示される抗体又は抗原結合断片のいずれかを対象に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、必要とする対象において疼痛を治療するための方法であって、治療有効量の本明細書で開示される組成物のいずれかを対象に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、疼痛は、侵害受容性疼痛、神経因性疼痛、及び混合型疼痛からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、疼痛は、頭痛、慢性頭痛、片頭痛、癌、ウイルス感染、関節リウマチ、変形性関節症、クローン病、肝疾患、多発性硬化症、脊髄損傷、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性ニューロパシー、腰痛、炎症性心疾患、腎疾患、胃炎、歯肉炎、歯周疾患、喘息、慢性閉塞性肺疾患、自己免疫疾患、過敏性腸症候群、線維筋痛症、下肢痛、レストレスレッグス症候群、糖尿病性ニューロパシー、アレルギー病態、外科的処置、急性若しくは慢性の身体的傷害、骨折若しくは圧挫、脊髄損傷、炎症性疾患、非炎症性の神経因性疼痛病態若しくは機能傷害性疼痛病態、又はこれらの組み合わせと関連する。いくつかの実施形態では、疼痛は変形性関節症疼痛である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書で開示される抗体又は抗原結合断片のいずれかを作製する方法であって、培養細胞において本明細書で開示される核酸のいずれかを発現する工程、抗体又は抗原結合断片を精製する工程を含む方法を提供する。
いくつかの実施形態では、本開示は、下記のものを提供する:
[項1]
重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体又はその抗原結合断片であって、前記VHが:
i)配列番号3のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号3の配列中に任意選択的に存在するVH-CDR1;
ii)配列番号4のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号4の配列中に任意選択的に存在するVH-CDR2;及び
iii)配列番号5のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号5の配列中に任意選択的に存在するVH-CDR3を含み;
且つ前記VLが:
i)配列番号8のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号8の配列中に任意選択的に存在するVL-CDR1;
ii)配列番号9のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号9の配列中に任意選択的に存在するVL-CDR2;及び
iii)配列番号10のアミノ酸配列を有するが、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸置換、欠失又は挿入が配列番号10の配列中に任意選択的に存在するVL-CDR3を含み;
前記アミノ酸置換、欠失又は挿入が、PAR2結合アッセイにおいて7.4のpHで試験する場合、配列番号2のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号7のアミノ酸配列を有するVLを有する抗体又は抗原結合断片と比較して、ヒトPAR2に対する前記抗体又はその抗原結合断片の結合親和性を1000、800、700、500、400、300、200、100、50又は10倍以下低減する、抗体又はその抗原結合断片。
[項2]
前記アミノ酸置換、欠失又は挿入が相同置換を含む、上記項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項3]
重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体又はその抗原結合断片であって、前記VHが:
i)配列番号3のアミノ酸配列を有するVH-CDR1;
ii)配列番号4のアミノ酸配列を有するが、ヒスチジンが、配列番号4の1~17位に相当するアミノ酸位置のいずれか1つ以上で任意選択的に存在するVH-CDR2;及び
iii)配列番号5のアミノ酸配列を有するが、ヒスチジンが、配列番号5の1~8位に相当するアミノ酸位置のいずれか1つ以上で任意選択的に存在するVH-CDR3を含み;
且つ前記VLが:
i)配列番号8のアミノ酸配列を有するVL-CDR1;
ii)配列番号9のアミノ酸配列を有するVL-CDR2;及び
iii)配列番号10のアミノ酸配列を有するが、ヒスチジンが、配列番号10の1~14位に相当するアミノ酸位置のいずれか1つ以上で任意選択的に存在するVL-CDR3を含む、抗体又はその抗原結合断片。
[項4]
前記VHが:
i)配列番号3のアミノ酸配列を有するVH-CDR1、
ii)配列番号4のアミノ酸配列を有するVH-CDR2、
iii)配列番号5のアミノ酸配列を有するVH-CDR3を含み、
且つ前記VLが:
i)配列番号8のアミノ酸配列を有するVL-CDR1、
ii)配列番号9のアミノ酸配列を有するVL-CDR2、
iii)配列番号10のアミノ酸配列を有するVL-CDR3を含む、
上記項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項5]
前記VHが:
i)配列番号13のアミノ酸配列を有するVH-CDR1、
ii)配列番号14のアミノ酸配列を有するVH-CDR2、
iii)配列番号15のアミノ酸配列を有するVH-CDR3を含み、
且つ前記VLが:
i)配列番号18のアミノ酸配列を有するVL-CDR1、
ii)配列番号19のアミノ酸配列を有するVL-CDR2、
iii)配列番号20のアミノ酸配列を有するVL-CDR3を含む、
上記項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項6]
ヒスチジンが、配列番号4の5位、8位、12位、16位、及び17位に相当するアミノ酸位置に存在し;且つヒスチジンが、配列番号5の2位及び3位に相当するアミノ酸位置に存在する、上記項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項7]
ヒスチジンが、配列番号4の5位に相当するアミノ酸位置に存在する、上記項3又は5~6のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項8]
ヒスチジンが、配列番号4の7位に相当するアミノ酸位置に存在する、上記項3又は5~7のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項9]
ヒスチジンが、配列番号4の8位に相当するアミノ酸位置に存在する、上記項3又は5~7のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項10]
ヒスチジンが、配列番号4の12位に相当するアミノ酸位置に存在する、上記項1又は5~7のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項11]
ヒスチジンが、配列番号4の15位に相当するアミノ酸位置に存在する、上記項3又は5~10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項12]
ヒスチジンが、配列番号4の16位に相当するアミノ酸位置に存在する、上記項3又は5~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項13]
ヒスチジンが、配列番号4の17位に相当するアミノ酸位置に存在する、上記項1又は5~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項14]
ヒスチジンが、配列番号4の5位及び8位に相当するアミノ酸位置に存在する、上記項3又は5~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項15]
ヒスチジンが、配列番号4の5位、8位、12位、及び16位に相当するアミノ酸位置に存在する、上記項3又は5~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項16]
ヒスチジンが、配列番号4の5位、8位、12位、16及び17位に相当するアミノ酸位置に存在する、上記項3又は5~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項17]
ヒスチジンが、配列番号5の2位に相当するアミノ酸位置に存在する、上記項3又は5~16のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項18]
ヒスチジンが、配列番号5の3位に相当するアミノ酸位置に存在する、上記項3又は5~17のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項19]
ヒスチジンが、配列番号5の2位及び3位に相当するアミノ酸位置に存在する、上記項3又は5~18のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項20]
ヒスチジンが、配列番号10の1位に相当するアミノ酸位置に存在する、上記項3又は5~19のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項21]
ヒスチジンが、配列番号10の5位に相当するアミノ酸位置に存在する、上記項3又は5~20のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項22]
ヒスチジンが、配列番号10の6位に相当するアミノ酸位置に存在する、上記項3又は5~21のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項23]
ヒスチジンが、配列番号10の14位に相当するアミノ酸位置に存在する、上記項3又は5~22のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項24]
前記VH-CDR2が、配列番号4、14、24、34、44、54、64、74、84、94、104、114、124、134、144、154、164、174、184、194、204、214、224、234、244、254、264、274、284、294、304、314、324、334、344、354、364、374、384、394、404、414、424、434、444、454、464、474、484、494、504、514、524、534、544、554、564、574、584、594、604、614、624、634、644、654、664、674、684、694、704、714、724、734、744、754、764、774、784、794、及び811~818からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、上記項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項25]
前記VH-CDR3が、配列番号5、15、25、35、45、55、65、75、85、95、105、115、125、135、145、155、165、175、185、195、205、215、225、235、245、255、265、275、285、295、305、315、325、335、345、355、365、375、385、395、405、415、425、435、445、455、465、475、485、495、505、515、525、535、545、555、565、575、585、595、605、615、625、635、645、655、665、675、685、695、705、715、725、735、745、755、765、775、785、795、及び819~820からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、上記項3又は24に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項26]
前記VL-CDR3が、配列番号10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790及び800からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、上記項3、24又は25のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項27]
前記VH-CDR2が、配列番号14に相当するアミノ酸配列を含み;前記VH-CDR3が、配列番号15に相当するアミノ酸配列を含み、且つ前記VL-CDR3が、配列番号20に相当するアミノ酸配列を含む、上記項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項28]
前記VH-CDR2が、配列番号811に相当するアミノ酸配列を含み;前記VH-CDR3が、配列番号819に相当するアミノ酸配列を含み、且つ前記VL-CDR3が、配列番号10又は20に相当するアミノ酸配列を含む、上記項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項29]
前記VH-CDR2が、配列番号814に相当するアミノ酸配列を含み;前記VH-CDR3が、配列番号820に相当するアミノ酸配列を含み、且つ前記VL-CDR3が、配列番号10又は20に相当するアミノ酸配列を含む、上記項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項30]
前記VH-CDR2が、配列番号816に相当するアミノ酸配列を含み;前記VH-CDR3が、配列番号15に相当するアミノ酸配列を含み、且つ前記VL-CDR3が、配列番号10又は20に相当するアミノ酸配列を含む、上記項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項31]
前記VH-CDR2が、配列番号818に相当するアミノ酸配列を含み;前記VH-CDR3が、配列番号15に相当するアミノ酸配列を含み、且つ前記VL-CDR3が、配列番号10又は20に相当するアミノ酸配列を含む、上記項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項32]
前記VHが、配列番号803~806の各々と少なくとも90%同一であるフレームワーク領域を含む、上記項1~31のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項33]
前記VHが、配列番号803~806の各々と少なくとも95%同一であるフレームワーク領域を含む、上記項1~31のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項34]
前記VHが、配列番号803~806に相当するフレームワーク領域を含む、上記項1~31のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項35]
前記VLが、配列番号807~810の各々と少なくとも90%同一であるフレームワーク領域を含む、上記項1~34のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項36]
前記VLが、配列番号807~810の各々と少なくとも95%同一であるフレームワーク領域を含む、上記項1~34のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項37]
前記VLが、配列番号807~810に相当するフレームワーク領域を含む、上記項1~34のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項38]
前記VHが、配列番号2、12、22、32、42、52、62、72、82、92、102、112、122、132、142、152、162、172、182、192、202、212、222、232、242、252、262、272、282、292、302、312、322、332、342、352、362、372、382、392、402、412、422、432、442、452、462、472、482、492、502、512、522、532、542、552、562、572、582、592、602、612、622、632、642、652、662、672、682、692、702、712、722、732、742、752、762、772、782、792及び821~831からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、95%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む、上記項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項39]
前記VLが、配列番号7、17、27、37、47、57、67、77、87、97、107、117、127、137、147、157、167、177、187、197、207、217、227、237、247、257、267、277、287、297、307、317、327、337、347、357、367、377、387、397、407、417、427、437、447、457、467、477、487、497、507、517、527、537、547、557、567、577、587、597、607、617、627、637、647、657、667、677、687、697、707、717、727、737、747、757、767、777、787、及び797からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、95%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む、上記項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項40]
前記VHが、配列番号821に相当するアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが、配列番号7又は17に相当するアミノ酸配列を含む、上記項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項41]
前記VHが、配列番号824に相当するアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが、配列番号7又は17に相当するアミノ酸配列を含む、上記項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項42]
前記VHが、配列番号827に相当するアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが、配列番号7又は17に相当するアミノ酸配列を含む、上記項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項43]
前記VHが、配列番号831に相当するアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが、配列番号7又は17に相当するアミノ酸配列を含む、上記項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項44]
前記VHが、配列番号12と少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、95%、97%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが、配列番号17と少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、95%、97%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む、上記項3~39のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項45]
前記抗体又は抗原結合断片が抗原結合断片である、上記項1~44のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項46]
前記抗原結合断片がscFvである、上記項45に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項47]
前記抗原結合断片がFab’である、上記項45に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項48]
前記抗体又は抗原結合断片が抗体である、上記項1~44のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項49]
前記抗体がモノクローナル抗体である、上記項48に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項50]
前記抗体がIgG抗体である、上記項48又は49に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項51]
前記抗体又は抗原結合断片がヒト化されている、上記項1~50のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項52]
前記抗体又は抗原結合断片がヒトのものである、上記項1~50のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項53]
前記VHが、配列番号1、11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131、141、151、161、171、181、191、201、211、221、231、241、251、261、271、281、291、301、311、321、331、341、351、361、371、381、391、401、411、421、431、441、451、461、471、481、491、501、511、521、531、541、551、561、571、581、591、601、611、621、631、641、651、661、671、681、691、701、711、721、731、741、751、761、771、781、791、及び833~841のいずれか1つと少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、上記項1~52のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項54]
前記VHが、配列番号1、11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131、141、151、161、171、181、191、201、211、221、231、241、251、261、271、281、291、301、311、321、331、341、351、361、371、381、391、401、411、421、431、441、451、461、471、481、491、501、511、521、531、541、551、561、571、581、591、601、611、621、631、641、651、661、671、681、691、701、711、721、731、741、751、761、771、781、791、及び833~841のいずれか1つと少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、上記項53に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項55]
前記VHが、配列番号1、11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131、141、151、161、171、181、191、201、211、221、231、241、251、261、271、281、291、301、311、321、331、341、351、361、371、381、391、401、411、421、431、441、451、461、471、481、491、501、511、521、531、541、551、561、571、581、591、601、611、621、631、641、651、661、671、681、691、701、711、721、731、741、751、761、771、781、791、及び833~841のいずれか1つの前記ヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、上記項53に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項56]
前記VLが、配列番号6、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、126、136、146、156、166、176、186、196、206、216、226、236、246、256、266、276、286、296、306、316、326、336、346、356、366、376、386、396、406、416、426、436、446、456、466、476、486、496、506、516、526、536、546、556、566、576、586、596、606、616、626、636、646、656、666、676、686、696、706、716、726、736、746、756、766、776、786、及び796のいずれか1つと少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、上記項1~55のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項57]
前記VLが、配列番号6、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、126、136、146、156、166、176、186、196、206、216、226、236、246、256、266、276、286、296、306、316、326、336、346、356、366、376、386、396、406、416、426、436、446、456、466、476、486、496、506、516、526、536、546、556、566、576、586、596、606、616、626、636、646、656、666、676、686、696、706、716、726、736、746、756、766、776、786、及び796のいずれか1つと少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、上記項56に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項58]
前記VLが、配列番号6、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、126、136、146、156、166、176、186、196、206、216、226、236、246、256、266、276、286、296、306、316、326、336、346、356、366、376、386、396、406、416、426、436、446、456、466、476、486、496、506、516、526、536、546、556、566、576、586、596、606、616、626、636、646、656、666、676、686、696、706、716、726、736、746、756、766、776、786、及び796のいずれか1つの前記ヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、上記項56に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項59]
前記VHが、配列番号11と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、上記項1~58のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項60]
前記VHが、配列番号11と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、上記項59に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項61]
前記VHが、配列番号11の前記ヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、上記項59に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項62]
前記VLが、配列番号16と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、上記項1~61のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項63]
前記VLが、配列番号16と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、上記項62に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項64]
前記VLが、配列番号16の前記ヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、上記項62に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項65]
前記抗体又は抗原結合断片がPAR2に結合する、上記項1~64のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項66]
前記抗体又は抗原結合断片が、トリプシン、トリプターゼ及び/又はマトリプターゼのPAR2との相互作用を妨げる、上記項1~65のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項67]
前記抗体又は抗原結合断片が、トリプシン、トリプターゼ及び/又はマトリプターゼによるPAR2の切断を妨げる、上記項1~66のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項68]
前記抗体又は抗原結合断片が、PAR2の細胞外ドメインの切断を妨げる、上記項1~67のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項59]
前記抗体又は抗原結合断片が、テザーリガンドの露出を阻害する、上記項1~68のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項70]
前記抗体又は抗原結合断片が、前記テザーリガンドのPAR2の第2の膜貫通ループとの相互作用を妨げる、上記項1~69のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項71]
前記抗体又は抗原結合断片が、pH6.0よりpH7.4でより高い親和性を有してPAR2に結合する、上記項1~70のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項72]
前記抗体又は抗原結合断片が、約5nM、1nM、900pM、800pM、700pM、650pM、600pM、500pM、200pM、100pM又は50pM未満のK を有してpH7.4でPAR2に結合する、上記項1~70のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項73]
前記抗体又は抗原結合断片が、約700pM未満のK を有してpH7.4でPAR2に結合する、上記項72に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項74]
前記抗体又は抗原結合断片が、約1nM、5nM、10nM、15nM、20nM、25nM、30nM、40nM、50nM、60nM、80nM、又は100nMより大きいK を有してpH6.0でPAR2に結合する、上記項1~70のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項75]
前記抗体又は抗原結合断片が、約30nMより大きいK を有してpH6.0でPAR2に結合する、上記項1~70のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項76]
前記抗体又は抗原結合断片が、PAR2結合アッセイにおいて、pH7.4で配列番号3~5及び8~10の前記CDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、100nM未満のIC 50 を有する、上記項1~75のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項77]
前記抗体又は抗原結合断片が、PAR2結合アッセイにおいて、pH7.4で配列番号3~5及び8~10の前記CDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、50nM未満のIC 50 を有する、上記項1~76のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項78]
前記抗体又は抗原結合断片が、PAR2結合アッセイにおいて、pH7.4で配列番号3~5及び8~10の前記CDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、40nM未満のIC 50 を有する、上記項1~77のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項79]
前記抗体又は抗原結合断片が、PAR2結合アッセイにおいて、pH6.0で配列番号3~5及び8~10の前記CDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、500nMより大きいIC 50 を有する、上記項1~78のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項80]
前記抗体又は抗原結合断片が、PAR2結合アッセイにおいて、pH6.0で配列番号3~5及び8~10の前記CDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、1000nMより大きいIC 50 を有する、上記項1~79のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項81]
前記抗体又は抗原結合断片が、PAR2結合アッセイにおいて、pH6.0で配列番号3~5及び8~10の前記CDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、1100nMより大きいIC 50 を有する、上記項1~80のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項82]
前記抗体又は抗原結合断片が、PAR2結合アッセイにおいて、配列番号3~5及び8~10の前記CDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、pH6.0よりpH7.4で20倍を超えて低いIC 50 を有する、上記項1~81のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項83]
前記抗体又は抗原結合断片が、PAR2結合アッセイにおいて、配列番号3~5及び8~10の前記CDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、pH6.0よりpH7.4で25倍を超えて低いIC 50 を有する、上記項1~82のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項84]
前記抗体又は抗原結合断片が、PAR2結合アッセイにおいて、配列番号3~5及び8~10の前記CDRを有する抗体又は抗原結合断片と競合する場合、pH6.0よりpH7.4で30倍を超えて低いIC 50 を有する、上記項1~83のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項85]
前記抗体又は抗原結合断片が、ヒトA549細胞におけるカルシウム流入アッセイにおいて3.0×10 -10 M未満のIC 50 を有する、上記項1~84のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項86]
前記抗体又は抗原結合断片が、ヒトA549細胞におけるカルシウム流入アッセイにおいて1.5×10 -10 M未満のIC 50 を有する、上記項1~85のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項87]
前記抗体又は抗原結合断片が、ラットKNRK細胞におけるカルシウム流入アッセイにおいて7.0×10 -10 M未満のIC 50 を有する、上記項1~86のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項88]
前記抗体又は抗原結合断片が、ラットKNRK細胞におけるカルシウム流入アッセイにおいて5.5×10 -10 M未満のIC 50 を有する、上記項1~87のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項89]
前記抗体又は抗原結合断片が、カニクイザルCYNOM-K1細胞におけるカルシウム流入アッセイにおいて7.0×10 -11 M未満のIC 50 を有する、上記項1~88のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項90]
前記抗体又は抗原結合断片が、カニクイザルCYNOM-K1細胞におけるカルシウム流入アッセイにおいて5.0×10 -11 M未満のIC 50 を有する、上記項1~89のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項91]
前記抗体又は抗原結合断片が、マウスLL/2細胞におけるカルシウム流入アッセイにおいて6.0×10 -11 M未満のIC 50 を有する、上記項1~90のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項92]
前記抗体又は抗原結合断片が、マウスLL/2細胞におけるカルシウム流入アッセイにおいて4.0×10 -11 M未満のIC 50 を有する、上記項1~91のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項93]
前記抗体又は抗原結合断片が、ヒスチジン改変を欠く抗体又は抗原結合断片より遅く、治療された患者の血清からなくなる、上記項92のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
[項94]
任意選択的に存在する前記ヒスチジン又はヒスチジン(複数)が、PAR2結合アッセイにおいて7.4のpHで試験する場合、配列番号2のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号7のアミノ酸配列を有するVLを有する抗体又は抗原結合断片と比較して、ヒトPAR2に対する前記抗体又はその抗原結合断片の結合親和性を1000、800、700、500、400、300、200、100、50又は10倍以下低減する、上記項3又は5~93のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項95]
上記項1~94のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片を発現することが可能な核酸。
[項96]
配列番号1、11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131、141、151、161、171、181、191、201、211、221、231、241、251、261、271、281、291、301、311、321、331、341、351、361、371、381、391、401、411、421、431、441、451、461、471、481、491、501、511、521、531、541、551、561、571、581、591、601、611、621、631、641、651、661、671、681、691、701、711、721、731、741、751、761、771、781、791、及び833~841のいずれか1つと少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸。
[項97]
前記核酸が、配列番号1、11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131、141、151、161、171、181、191、201、211、221、231、241、251、261、271、281、291、301、311、321、331、341、351、361、371、381、391、401、411、421、431、441、451、461、471、481、491、501、511、521、531、541、551、561、571、581、591、601、611、621、631、641、651、661、671、681、691、701、711、721、731、741、751、761、771、781、791、及び833~841のいずれか1つと少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む、上記項96に記載の核酸。
[項98]
前記核酸が、配列番号1、11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131、141、151、161、171、181、191、201、211、221、231、241、251、261、271、281、291、301、311、321、331、341、351、361、371、381、391、401、411、421、431、441、451、461、471、481、491、501、511、521、531、541、551、561、571、581、591、601、611、621、631、641、651、661、671、681、691、701、711、721、731、741、751、761、771、781、791、及び833~841のいずれか1つの前記ヌクレオチド配列を含む、上記項96に記載の核酸。
[項99]
配列番号6、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、126、136、146、156、166、176、186、196、206、216、226、236、246、256、266、276、286、296、306、316、326、336、346、356、366、376、386、396、406、416、426、436、446、456、466、476、486、496、506、516、526、536、546、556、566、576、586、596、606、616、626、636、646、656、666、676、686、696、706、716、726、736、746、756、766、776、786、及び796のいずれか1つと少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸。
[項100]
前記核酸が、配列番号6、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、126、136、146、156、166、176、186、196、206、216、226、236、246、256、266、276、286、296、306、316、326、336、346、356、366、376、386、396、406、416、426、436、446、456、466、476、486、496、506、516、526、536、546、556、566、576、586、596、606、616、626、636、646、656、666、676、686、696、706、716、726、736、746、756、766、776、786、及び796のいずれか1つと少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む、上記項99に記載の核酸。
[項101]
前記核酸が、配列番号6、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、126、136、146、156、166、176、186、196、206、216、226、236、246、256、266、276、286、296、306、316、326、336、346、356、366、376、386、396、406、416、426、436、446、456、466、476、486、496、506、516、526、536、546、556、566、576、586、596、606、616、626、636、646、656、666、676、686、696、706、716、726、736、746、756、766、776、786、及び796のいずれか1つの前記ヌクレオチド配列を含む、上記項99に記載の核酸。
[項102]
配列番号11と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸。
[項103]
前記核酸が、配列番号11と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む、上記項102に記載の核酸。
[項104]
前記核酸が、配列番号11の前記ヌクレオチド配列を含む、上記項102に記載の核酸。
[項105]
配列番号16と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸。
[項106]
前記核酸が、配列番号16と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む、上記項105に記載の核酸。
[項107]
前記核酸が、配列番号16の前記ヌクレオチド配列を含む、上記項105に記載の核酸。
[項108]
上記項95~107のいずれか一項に記載の核酸を含むベクター。
[項109]
a)上記項96~98又は102~104のいずれか一項に記載の核酸;及びb)上記項99~101及び105~107のいずれか一項に記載の核酸を含む、ベクターのセット。
[項110]
上記項108又は109に記載のベクターのうちの1つ以上を含む宿主細胞。
[項111]
薬学的に許容される担体及び上記項1~94のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片を含む組成物。
[項112]
上記項1~94のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含む凍結乾燥組成物。
[項113]
上記項1~94のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含む、再構成された凍結乾燥組成物。
[項114]
前記組成物が、舐剤、噴霧剤、経口投与、遅延放出又は持続放出、経粘膜投与、シロップ剤、粘膜付着性、バッカル製剤、粘膜付着性錠剤、局所投与、非経口投与、注射、皮下投与、経口溶液、直腸投与、バッカル投与又は経皮投与による投与のために製剤化される、上記項111~113のいずれか一項に記載の組成物。
[項115]
上記項1~94のいずれか一項に記載の抗体若しくは抗原結合断片又は上記項111~114のいずれか一項に記載の組成物を含むキット。
[項116]
必要とする対象において疼痛を治療するための方法であって、治療有効量の上記項1~94のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片を前記対象に投与することを含む方法。
[項117]
必要とする対象において疼痛を治療するための方法であって、治療有効量の上記項111~114のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与することを含む方法。
[項118]
前記疼痛が、侵害受容性疼痛、神経因性疼痛、及び混合型疼痛からなる群から選択される、上記項116又は117に記載の方法。
[項119]
前記疼痛が、頭痛、慢性頭痛、片頭痛、癌、ウイルス感染、関節リウマチ、変形性関節症、クローン病、肝疾患、多発性硬化症、脊髄損傷、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性ニューロパシー、腰痛、炎症性心疾患、腎疾患、胃炎、歯肉炎、歯周疾患、喘息、慢性閉塞性肺疾患、自己免疫疾患、過敏性腸症候群、線維筋痛症、下肢痛、レストレスレッグス症候群、糖尿病性ニューロパシー、アレルギー病態、外科的処置、急性若しくは慢性の身体的傷害、骨折若しくは圧挫、脊髄損傷、炎症性疾患、非炎症性の神経因性疼痛病態若しくは機能傷害性疼痛病態、又はこれらの組み合わせと関連する、上記項116又は117のいずれか一項に記載の方法。
[項120]
前記疼痛が変形性関節症疼痛である、上記項119に記載の方法。
[項121]
前記対象がヒトである、上記項116~120のいずれか一項に記載の方法。
[項122]
培養細胞中で上記項95~106のいずれか一項に記載の核酸を発現させる工程と、前記抗体又は抗原結合断片を精製する工程とを含む、上記項1~94のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片を作製する方法。
【外国語明細書】