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  • 特開-流体荷役装置の緊急離脱機構 図1
  • 特開-流体荷役装置の緊急離脱機構 図2
  • 特開-流体荷役装置の緊急離脱機構 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005594
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】流体荷役装置の緊急離脱機構
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/36 20060101AFI20230111BHJP
   F16L 43/02 20060101ALI20230111BHJP
   F16K 1/44 20060101ALI20230111BHJP
   F16K 31/122 20060101ALI20230111BHJP
   B67D 9/00 20100101ALI20230111BHJP
   F16L 23/02 20060101ALN20230111BHJP
【FI】
F16L37/36
F16L43/02
F16K1/44 C
F16K31/122
B67D9/00 Z
F16L23/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107608
(22)【出願日】2021-06-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 掲載年月日 令和3年2月9日 掲載アドレス https://www.nedo.go.jp/content/100927614.pdf
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508173901
【氏名又は名称】TBグローバルテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135220
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 祥二
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 智教
(72)【発明者】
【氏名】猪股 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】河合 務
(72)【発明者】
【氏名】吉原 由真
【テーマコード(参考)】
3E083
3H052
3H056
3J106
【Fターム(参考)】
3E083BB20
3H052AA01
3H052BA02
3H052CA12
3H052CB11
3H052CC03
3H052CD03
3H052EA01
3H052EA04
3H056AA03
3H056BB01
3H056BB22
3H056CA02
3H056CD02
3H056GG04
3H056GG08
3J106BC12
3J106CA07
3J106CA16
3J106GA02
3J106GA05
3J106GA14
3J106GA23
(57)【要約】
【課題】配管が大口径化しても流路を閉じることができる流体荷役装置の緊急離脱機構を提供する。
【解決手段】緊急離脱機構は、流体を輸送する流体荷役装置に適用されるものであって、流体を輸送する流路が形成され、開口端同士を突き合わせて配置される真空二重構造の一対の配管部と、一対の配管部を連結し、且つ取り外し可能な連結部材と、一対の配管部の各々に対応して設けられ、流路を遮断する一対の遮断弁とを備え、一対の配管部の各々は、流路に形成される弁座を有し、遮断弁は、対応する配管部の弁座に着座して流路を閉じる弁体と、弁体を流路に沿って動かして弁座に着座させる直動駆動装置とを有している。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を輸送する流体荷役装置の緊急離脱機構であって、
流体を輸送する流路が形成され、開口端同士を突き合わせて配置される真空二重構造の一対の配管部と、
前記一対の配管部を連結し、且つ取り外し可能な連結部材と、
前記一対の配管部の各々に対応して設けられ、前記流路を遮断する一対の遮断弁とを備え、
前記一対の配管部の各々は、前記流路に形成される弁座を有し、
前記遮断弁は、対応する前記配管部の前記弁座に着座して前記流路を閉じる弁体と、前記弁体を前記流路に沿って動かして前記弁座に着座させる直動駆動装置とを有している、流体荷役装置の緊急離脱機構。
【請求項2】
前記弁体は、前記弁座に着座した状態で互いに離れて位置している、請求項1に記載の流体荷役装置の緊急離脱機構。
【請求項3】
前記配管部は、中間部分に形成されるエルボ部分を有し、前記エルボ部分よって曲っており、
前記直動駆動装置は、前記弁体に連結され且つ所定方向に延在する弁軸と、前記弁軸を介して前記弁体を所定方向に動かす駆動部とを有し、
前記駆動部は、前記エルボ部分に設けられ、
前記弁軸は、所定方向に摺動可能に前記エルボ部分を貫通している、請求項1又は2に記載の流体荷役装置の緊急離脱機構。
【請求項4】
前記駆動部は、油圧シリンダを含んで構成され、前記配管部の外側に設けられている、請求項3に記載の流体荷役装置の緊急離脱機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を輸送する流体荷役装置の緊急離脱機構に関する。
【背景技術】
【0002】
陸上施設から船のタンクに液化ガス等の流体を輸送する流体荷役装置が実用に供されている。流体荷役装置は、緊急時に可動配管からジョイントを切り離すべく緊急離脱機構を備えている。緊急離脱機構の一例として、例えば特許文献1のような緊急離脱機構が知られている。特許文献1の緊急離脱機構では、弁体がばね部材によって付勢されている。そして、付勢される弁体は、切り離される際に弁座に着座して配管の流路を閉じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-128120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流体荷役装置では、より多くの流量の流体を輸送することが求められている。それ故、流体を輸送する配管の大口径化が望まれている。他方、特許文献1の緊急離脱機構では、配管の口径が大きくなると、流路を閉じるべく十分な付勢力をばね部材から得ることができない可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、配管が大口径化しても流路を閉じることができる流体荷役装置の緊急離脱機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の流体荷役装置の緊急離脱機構は、流体を輸送する流体荷役装置の緊急離脱機構であって、流体を輸送する流路が形成され、開口端同士を突き合わせて配置される真空二重構造の一対の配管部と、前記一対の配管部を連結し、且つ取り外し可能な連結部材と、前記一対の配管部の各々に対応して設けられ、前記流路を遮断する一対の遮断弁とを備え、前記一対の配管部の各々は、前記流路に形成される弁座を有し、前記遮断弁は、対応する前記配管部の前記弁座に着座して前記流路を閉じる弁体と、前記弁体を前記流路に沿って動かして前記弁座に着座させる直動駆動装置とを有しているものである。
【0007】
本発明に従えば、直動駆動装置を用いることによって大きな駆動力で弁体を動かすことができる。これにより、配管部が大口径化した場合でも流体に抗して弁体を動かして配管部の流路を閉じることができる。即ち、配管が大口径化しても弁体を閉じることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、配管が大口径化しても流路を閉じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る流体荷役装置の緊急離脱機構を示す断面図である。
図2図1の緊急離脱機構に関して流路を閉じた状態を示す断面図である。
図3図2の緊急離脱機構に関して一対の配管部の各々を互いに切り離した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態の流体荷役装置1の緊急離脱機構2について前述する図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明する流体荷役装置1は、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0011】
<流体荷役装置>
図1に示す流体荷役装置1は、タンクを備える船(例えば、タンカー)と陸上施設(例えば、陸側タンク)との間で流体を輸送する装置である。本実施形態では、輸送される流体は、液化水素である。但し、輸送される流体は、液化水素に限定されず、液化ヘリウムやLNG等であってもよい。また、流体は、液体に限定されず、水素ガス等の気体であってもよい。そして、流体荷役装置1は、可動配管(図示せず)と、緊急離脱機構2と、ジョイント(図示せず)を有している。可動配管は、陸上施設に接続されており、その中に流体を流すことができる。ジョイントは、緊急離脱機構2を介して可動配管の先端部に設けられている。ジョイントは、タンカーに接続することができる。そして、ジョイントは、タンカーに接続することによって可動配管を介して陸上施設とタンカーとの間における流体の輸送を可能にする。また、可動配管は、例えば支柱及びアームを有している。支柱は、陸上施設に設けられている。アームは、先端部に緊急離脱機構2を介してジョイントが設けられている。そして、アームは、支柱を中心に旋回したり、また上下に傾倒したりすることができる。これにより、ジョイントを様々な位置に移動させることができる。
【0012】
<緊急離脱機構>
緊急離脱機構2は、可動配管からジョイントを切り離すことを可能にする。更に詳細に説明すると、緊急離脱機構2は、一対の配管部11,12と、連結部材13と、一対の遮断弁14,15とを備えている。
【0013】
[配管]
一対の配管部11,12の各々は、可動配管のアーム及びジョイントに夫々接続されている。より詳細に説明すると、一方の配管部11は、可動配管のアームに接続され、また他方の配管部12は、ジョイントに接続されている。また、一対の配管部11,12は、その中に流体を輸送する流路11a,12aが夫々形成されている。流路11a,12aは、一対の配管部11,12の一端にて開口する開口端11b,12bを有している。そして、一対の配管部11,12は、各々の開口端11b,12b同士を突き合わせるように配置される。これにより、一対の配管部11,12は、流路11a,12aを繋ぐように互いに接続される。また、一対の配管部11,12は、各々の開口端11b,12bで互いに引き離すことができる。
【0014】
また、一対の配管部11,12は、L字状のエルボ管継手であって、エルボ部分11c,12c及びフランジ部11d,12dを夫々有している。より詳細に説明すると、一対の配管部11,12では、その開口端11b,12b側の部分、即ち一端側部分が軸線L1に沿って延在するように直線状に形成されている。そして、エルボ部分11c,12cは、配管部11,12の中間部分に形成されている。本実施形態において、エルボ部分11c,12cは、前述する一端側部分に繋がるように形成されている。そして、配管部11,12は、エルボ部分11c,12cによって所定の角度で曲がっている。なお、所定の角度は、本実施形態において90度であるが、45度や180度であってもよく、その角度は限定されない。
【0015】
フランジ部11d,12dは、配管部11,12の開口端11b,12b側の部分において径方向外方に突出するように形成されている。本実施形態において、フランジ部11d,12dは、配管部11,12の外周面において周方向全周にわたって形成されている。そして、一対の配管部11,12は、フランジ部11d,12dを互いに突き合わすように配置されている。更に、一対の配管部11,12は、本実施形態において突き合わせた状態で以下のように配置される。即ち一対の配管部11,12は、一方の配管部11のエルボ部分11cよりアーム側の部分と他方の配管部12のエルボ部分12cよりジョイント側の部分とが、軸線L1が延びる軸線方向の交差方向(本実施流体では、直交方向)に平行になるように配置される。
【0016】
また、一対の配管部11,12は、真空二重構造の配管部材である。より詳細に説明すると、一対の配管部11,12は、内筒部分21a,22aと外筒部分21b,22bとを有している。内筒部分21a,22aでは、流路11a,12aである内孔が内筒部分21a,22aの軸線に沿って形成されている。外筒部分21b,22bは、径方向に互いに空けて内筒部分21a,22aに被せられている。そして、内筒部分21a,22aと外筒部分21b,22bとの間は、両端部が塞がれている。これにより、内筒部分21a,22aと外筒部分21b,22bとの間に真空層21c,22cが形成されている。そして、真空層21c、22cによって配管部11,12内の流路11a,12aへの入熱が抑制される。即ち、流路11a,12aを流れる流体の温度を保つことができ、例えば流体の輸送時において液体の温度を極低温にて保つことができる。
【0017】
更に、一対の配管部11,12の各々は、弁座11e,12eを有している。弁座11e,12eは、流路11a,12aに夫々形成されている。更に詳細に説明すると、弁座11e,12eは、流路11a,12aにおいて開口端11b,12b側に形成されている。なお、弁座11e,12eは、本実施形態において開口端11b,12bに繋がるように形成されているが、開口端11b,12bから配管部11,12の軸線方向内側に離して形成されていてもよい。また、弁座11e,12eは、内筒部分21a,22aを周方向全周にわたって半径方向内方に突き出させて形成されている。そして、弁座11e,12eは、開口端11b,12bに向かって先細り(例えば、テーパ状又は階段状)に形成されている。本実施形態において、弁座11e,12eは、テーパ状に形成されている。
【0018】
[連結部材]
連結部材13は、一対の配管部11,12を連結する部材である。更に詳細に説明すると、連結部材13は、突き合わされるフランジ部11d,12dを連結する。また、連結部材13は、一対の配管部11,12から取り外すことができる。そして、一対の配管部11,12は、連結部材13が取り外されることによって互いに引き離すことができる。本実施形態において、連結部材13は、クランパーである。即ち、連結部材13は、フランジ部11d,12dを挟持することによって一対の配管部11,12を連結する。また、クランパーである連結部材13は、開くことによってフランジ部11d,12dに対する挟持を解除し、一対の配管部11,12から取り外すことができる。なお、連結部材13は、クランパーに限定されず、ボルト等の締結部材であってもよい。即ち、一対の配管部11,12を連結し、また取り外すことができればよい。
【0019】
[遮断弁]
一対の遮断弁14,15は、対応する配管部11,12に夫々設けられている。そして、一対の遮断弁14,15の各々は、対応する配管部11,12の流路11a,12aを遮断する。更に詳細に説明すると、一対の遮断弁14,15の各々は、弁体23,24と、直動駆動装置25,26とを夫々有している。
【0020】
[弁体]
弁体23,24は、対応する配管部11,12の弁座11e,12eに着座する。そして、弁体23,24は、弁座11e,12eに着座することによって流路11a,12aを閉じる。また、弁体23,24は、流路11a,12aに配置されている。そして、弁体23,24は、流路11a,12aに沿って閉位置から開位置に移動する。閉位置は、弁体23,24が弁座11e,12eに着座する位置であり、開位置は、弁体23,24が弁座11e,12eから離れた位置である。
【0021】
弁体23,24は、本実施形態において一対の配管部11,12の一端側部分(即ち、直線状の部分)に配置されている。一対の配管部11,12の一端側部分では、流路11a,12aが軸線方向に延在している。そして、弁体23,24が、流路11a,12aに沿うように軸線L1に沿って移動可能に構成されている。なお、弁体23,24は、必ずしも軸線L1に沿って移動可能に構成されている必要はない。例えば、弁体23,24は、軸線L1に対して所定の角度(例えば、30度以下)傾いた方向に沿って移動してもよい。このような場合もまた弁体23,24が流路11a,12aに沿って移動することと同義である。
【0022】
更に詳細に説明すると、弁体23,24は、弁座11e,12eと同様に先端側に向かって先細り(例えば、円錐台状又は段状)に形成されている。本実施形態において、弁体23,24は、弁座11e,12eと同様にテーパ状に形成されている。そして、弁体23,24は、弁座11e,12eに着座する。そうすると、流路11a,12aが閉じられる。また、弁体23,24の外径は、流路11a,12aより小径に形成されている。それ故、弁体23,24が開位置に位置する状態において、一方の配管部11の流路11aと他方の配管部12の流路12aとの間で流体が流れる。
【0023】
また、弁体23,24は、図2に示すように弁座11e,12eに着座した状態で、軸線方向において互いに離れている。更に詳細に説明すると、弁体23,24は、開口端11b,12bから配管部11,12の内側に離れている。本実施形態では、弁体23,24の各々は、その開口端11b,12b側の端面が開口端11b,12bから配管部11,12の内側に所定距離A1,A2離れている。これにより、弁体23,24は、一対の配管部11,12が連結されている状態において互いに当たることがない。それ故、弁体23,24は、一対の配管部11,12が連結されている状態において弁座11e,12eに着座することができる。即ち、弁体23,24は、一対の配管部11,12が引き離される前に流路11a,12aを閉じることができる。他方、弁体23,24が配管部11,12の内側に位置することによって、弁体23,24が着座した状態でそれらの間に密閉空間31が形成される。そこで、所定距離A1,A2は、密閉空間31の容積が所定容積以下となるように設定される。本実施形態において、所定容積は、50リットル以下であり、好ましくは20リットル以下である。但し、所定容積は、前述する容積に限定されない。
【0024】
[直動駆動装置]
直動駆動装置25,26は、対応する弁体23,24を流路11a,12aに沿って動かして弁座11e,12eに着座させる。より詳細に説明すると、直動駆動装置25,26は、弁体23,24を流路11a,12aに沿って閉位置及び開位置との間で直線的に移動させる。更に詳細に説明すると、直動駆動装置25,26の各々は、弁軸27,28と、駆動部29,30とを夫々有している。
【0025】
[弁軸]
弁軸27,28は、弁体23,24に連結されている。そして、弁軸27,28は、所定方向に延在している。より詳細に説明すると、弁軸27,28は、所定方向に延在する長尺の棒状部材である。そして、弁軸27,28の所定方向一端部に弁体23,24が一体的に設けられている。また、弁軸27,28は、軸線が互いに一致するように弁体23,24に設けられている。そして、弁軸27,28は、本実施形態において配管部11,12の一端側部分が延在する軸線L1に沿って配置されている。即ち、所定方向は、本実施形態において軸線方向と一致している。なお、所定方向は、必ずしも軸線方向と一致する必要はない。
【0026】
また、弁軸27,28は、軸線方向に摺動可能に対応する配管部11,12を貫通している。より詳細に説明すると、弁軸27,28は、対応する配管部11,12のエルボ部分11c,12cを貫通している。そして、弁軸27,28は、軸線方向に摺動可能に配管部11,12のエルボ部分11c,12cに設けられている。更に詳細に説明すると、弁軸27,28は、弁体23,24から軸線L1に沿って開口端11b,12bの反対側に延在している。それ故、弁軸27,28は、エルボ部分11c,12cにおいて曲率半径が大きい外側の部分であって軸線L1の延直線上を貫通している。そして、弁軸27,28は、エルボ部分11c,12cを軸線方向に摺動することによって弁体23,24を開位置と閉位置との間で移動させる。なお、弁軸27,28は、本実施形態においてシールを達成した状態でエルボ部分11c,12cを摺動可能に貫通している。
【0027】
[駆動部]
駆動部29,30は、弁軸27,28を介して対応する弁体23,24を軸線方向に動かす。より詳細に説明すると、駆動部29,30は、弁軸27,28を介して対応する弁体23,24を開位置及び閉位置との間で移動させる。更に詳細に説明すると、駆動部29,30は、対応する弁軸27,28の所定方向他端部(本実施形態において、軸線方向他端部)に連結されている。そして、駆動部29,30は、弁軸27,28を軸線方向に直動運動させる。即ち、駆動部29,30は、弁軸27,28を軸線方向に沿って往復運動させる。駆動部29,30は、本実施形態において油圧シリンダを含んで構成されている。そして、油圧シリンダを含む駆動部29,30は、図示しない油圧回路に接続されている。油圧回路は、図示しない制御装置によって制御されており、制御装置からの制御信号に応じて駆動部29,30に対して作動油を給排する。そして、駆動部29,30は、油圧回路による作動油の給排によって弁軸27,28を軸線方向に移動させる。これにより、弁体23,24が開位置と閉位置との間で移動する。
【0028】
なお、駆動部29,30は、必ずしも油圧シリンダに限定されず、例えば電動モータと直動機構(ボールねじ機構又はラックアンドピニオン機構等)を含んで構成されてもよく、弁軸27,28を直線的に駆動できるものであればよい。そして、駆動部29,30が電動モータで構成される場合、駆動部29,30は制御装置からの駆動信号に応じて弁軸27,28を軸線方向一方及び他方に移動させる。
【0029】
また、駆動部29,30は、対応する配管部11,12のエルボ部分11c,12cに設けられている。即ち、駆動部29,30は、配管部11,12の外側に設けられている。より詳細に説明すると、エルボ部分11c,12cの外周面には、取付部11f,12fが形成されている。そして、駆動部29,30は、取付部11f,12fを介してエルボ部分11c,12cに取り付けられている。本実施形態において、弁軸27,28は、エルボ部分11c,12cを貫通し、弁軸27,28の軸線方向他端部が取付部11f,12fまで達している。そして、駆動部29,30は、取付部11f,12fにおいて弁軸27,28の他端部と繋がっている。
【0030】
<緊急離脱機構による切り離しについて>
緊急離脱機構2では、陸上施設と船とが設定される距離以上離れる可能性があるような緊急時以外において、弁体23,24が弁座11e,12eから離れている(図1参照)。これにより、陸上施設とタンカーとの間で流体荷役装置1を介して流体の輸送を行うことができる。
【0031】
他方、緊急離脱機構2では、緊急時において一方の配管部11から他方の配管部12が切り離され、それによって陸上施設からタンカーが切り離される。より詳細に説明すると、緊急離脱機構2では、緊急時になると、例えば制御装置から油圧回路に制御信号が出力される。そうすると、駆動部29,30に対して作動油が給排される。これにより、駆動部29,30が弁軸27,28を介して弁体23,24を閉位置へと移動させる。そうすると、流路11a,12aが閉じられる(図2参照)。そして、連結部材13がフランジ部11d,12dから外されることによって、一方の配管部11から他方の配管部12を切り離すことができる(図3参照)。即ち、2つの流路11a,12aを閉じた状態で一方の配管部11から他方の配管部12を切り離すことができる。これにより、緊急時において、漏れ出る流体の流量を抑えつつ陸上施設からタンカーを切り離すことができる。
【0032】
本実施形態の緊急離脱機構2では、直動駆動装置25,26を用いることによって大きな駆動力で弁体23,24を動かすことができる。これにより、配管部11,12が大口径化した場合でも流体に抗して弁体23,24を動かして配管部11,12の流路11a,12aを閉じることができる。即ち、配管が大口径化して弁体23,24を閉じることができる。
【0033】
また、緊急離脱機構2では、弁体23,24が互いに離れた状態で弁座11e,12eに着座することができるので、開口端11b,12b同士を突き合せている状態においても流路11a,12aを閉じることができる。それ故、一対の配管部11,12から連結部材13を取り外す前に流路11a,12aを閉じることができる。これにより、一対の配管部11,12を互いに引き離す際に流路11a,12aから漏れ出る流体の流量を抑制することができる。より具体的に説明すると、流路11a,12aから漏れ出る流体の流量を密閉空間31の容積分に抑えることができる。なお、密閉空間31の容積分もまた所定距離A1,A2によって設定されることができるので、不所望な流量の流体が漏れ出ることを抑制できる。
【0034】
更に、緊急離脱機構2では、弁軸27,28がエルボ部分11c,12cを貫通し、且つ駆動部29,30がエルボ部分11c,12cに設けられている。それ故、より短い弁軸27,28によって配管部11,12から突き出させることができるので、弁軸27,28の長さを抑えることができる。これにより、弁軸27,28の重量を低減することができるので、駆動部29,30の小型化を図ることができる。また、弁軸27,28の長さを抑えることによって、弁軸27,28の軸ずれを抑えることができる。
【0035】
また、緊急離脱機構2では、駆動部29,30に油圧シリンダが用いられるので、緊急離脱機構2をより安全に使用することができる。更に、駆動部29,30が外気に晒されるので、液化水素等の極低温の流体を輸送する場合、駆動部29,30を動かすべく作動油の温度が低下することを抑えることができる。これにより、作動油の粘度を確保することができる。
【0036】
<その他の実施形態>
本実施形態の緊急離脱機構2では、配管部11,12がL字状に形成されているが、例えばストレート形状であってもよく、その形状は問わない。また、ストレート形状の場合、弁軸27,28は、配管部の軸線に対して交差する交差方向(軸線に対する傾きが30度以下)に延在し、弁体23,24を交差方向に移動させる。この際、弁座もまた配管部の軸線に対して交差方向に傾けて形成される。
【0037】
また、緊急離脱機構2では、弁体23,24の両方が着座している状態で開口端11b,12bより配管部11,12の軸線方向内側に離れているが、以下のように構成されてもよい。即ち、2つの弁体23,24のうち一方だけが開口端11b,12bから配管部11,12の軸線方向内側に離れていてもよく、2つの弁体23,24は、着座した状態で互いに離れていればどのように配置されてもよい。また、緊急離脱機構2では、緊急時において、必ずしも制御装置から油圧回路に信号が出力される必要はない。例えば、緊急離脱機構2は、手動で油圧回路を作動させることによって弁体23,24が動くように構成されてもよい。また、本実施形態において、流体荷役装置1は、陸上施設と船との間で流体を輸送しているが輸送する対象は陸上施設とタンカーとの間に限定されない。例えば、流体荷役装置1は、船同士の間や陸上施設と車両との間で流体を輸送してもよく、流体を輸送する対象は問わない。また、船は、タンカーに限定されず、流体を燃料として航行する燃料船であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 流体荷役装置
2 緊急離脱機構
11,12 配管部
11a,12a 流路
11b,12b 開口端
11c,11c エルボ部分
11e,11e 弁座
13 連結部材
14,15 遮断弁
23,24 弁体
25,26 直動駆動装置
27,28 弁軸
29,30 駆動部
図1
図2
図3