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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023055960
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】防災システム及び火災検知器
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
G08B17/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019698
(22)【出願日】2023-02-13
(62)【分割の表示】P 2021099901の分割
【原出願日】2017-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】杉山 泰周
(57)【要約】      (修正有)
【課題】感度試験や汚れ試験で判断できない火災検知器の異常を監視して動作不良を起こす前に知らせる火災検知器及び火災検知器を設けた防災システムを提供する。
【解決手段】検知エリアの火災を検出する火災検知器を設けたトンネル防災システムにおいて、検知エリアの火災からの光エネルギーを受光センサとなるセンサ部64、68で検出する火災検知器12を設けて火災を監視する。異常判定部として機能する火災検知器12の劣化試験部86は、火災検知器12のセンサ部64、68による光エネルギーの検出感度が所定レベルに低下する検出感度異常を判定する試験である感度試験や汚れ試験時に取得した検出感度異常を判定するための情報とは異なる劣化異常を判定するための情報に基づいて劣化異常を判定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知エリアの火災からの光エネルギーを受光センサで検出する火災検知器を設けた防災システムであって、
少なくとも前記火災検知器の故障状態である故障異常に至る以前の劣化状態と認められる劣化異常を判定する異常判定部を備え、
前記異常判定部は、前記火災検知器の前記受光センサによる前記光エネルギーの検出感度が所定レベルに低下する検出感度異常を判定する試験時に取得した前記検出感度異常を判定するための情報とは異なる前記劣化異常を判定するための情報に基づいて、前記劣化異常を判定することを特徴とする防災システム。
【請求項2】
請求項1記載の防災システムであって、
前記異常判定部は、前記劣化異常の判定対象とする前記火災検知器の機能構成部の各々について前記劣化異常を判定することにより、当該劣化異常が発生した機能構成部を特定可能としたことを特徴とする防災システム。
【請求項3】
検知エリアの火災からの光エネルギーを受光センサで検出する火災検知器であって、
少なくとも前記火災検知器の故障状態である故障異常に至る以前の劣化状態と認められる劣化異常を判定する異常判定部を備え、
前記異常判定部は、前記火災検知器の前記受光センサによる前記光エネルギーの検出感度が所定レベルに低下する検出感度異常を判定する試験時に取得した前記検出感度異常を判定するための情報とは異なる前記劣化異常を判定するための情報に基づいて、前記劣化異常を判定することを特徴とする火災検知器。
【請求項4】
請求項3記載の火災検知器であって、
前記異常判定部は、前記劣化異常の判定対象とする前記火災検知器の機能構成部の各々について前記劣化異常を判定することにより、当該劣化異常が発生した機能構成部を特定可能としたことを特徴とする火災検知器。







【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知エリアの火災を検出する火災検知器を設けた防災システム及びその火災検知器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車専用道路等のトンネルには、トンネル内で発生する火災事故から人身及び車両等を守るため、火災を監視する火災検知器が設置され、防災受信盤から引き出された信号線に接続されている。
【0003】
火災検知器は左右の両方向に検出エリアを持ち、トンネルの長手方向に沿って、隣接して配置される火災検知器との検出エリアが相互補完的に重なるように、例えば、25m間隔、或いは50m間隔で連続的に配置されている。
【0004】
また、火災検知器は透光性窓を介してトンネル内で発生する火災炎からの放射線、たとえば赤外線を監視しており、炎の監視機能を維持するために、受光素子の感度を監視するための感度試験や透光性窓の汚れを監視するための汚れ試験を行っている。
【0005】
受光素子の感度試験は、防災受信盤から定期的に送信される試験信号を受信した場合に、疑似的な炎からの光に相当する試験光を試験用光源から受光素子に入射して受光感度を検出し、受光感度が所定の閾値感度に低下するまでは、検出感度の逆数となる補正値で受光値を補正し、検出感度が所定の感度閾値に低下して補正が不可能となった場合には、受光素子の故障信号を防災受信盤に送信してセンサ故障警報を出力させている。また、感度閾値に対しそれより高い予告感度閾値を設定し、検出感度が予告感度閾値を下回った場合には感度異常の予告警報を出力させている。
【0006】
透光性窓の汚れ試験は、防災受信盤から定期的に送信される試験信号を受信した場合に、火災検知器の外側に設けられた試験光源から試験光を透光性窓に入射し、受光素子で受光して減光率を求め、減光率が所定の汚れ閾値を超えた場合に汚れ異常信号を防災受信盤に送信して汚れ警報を出力させている。また、汚れ閾値に対しそれより低い予告汚れ閾値を設定し、減光率が汚れ予告閾値を超えた場合に汚れ異常の予告警報を出力させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6-325271号公報
【特許文献2】特開2002-246962号公報
【特許文献3】特開平11-128381号公報
【特許文献4】特開2014-026446号公報
【特許文献5】特開2000-315285号公報
【特許文献6】特開2007-249520号公報
【特許文献7】特許第5302086号公報
【特許文献8】特開2013-246552号公報
【特許文献9】特開2000-035818号公報
【発明の概要】
【0008】
しかしながら、このような従来の火災検知器の試験にあっては、落雷等による受光素子及びその信号処理回路の故障や透光性窓の汚れ以外の障害を検知することができず、運用期間が長くなった場合、感度試験によるセンサ故障や汚れ試験による汚れ異常が検出されることなく正常に運用されていると思われる状態で、突然、火災検知器が動作不良を起こす事態が度々発生しており、トンネル防災システムの信頼性を確保できないおそれがある。
【0009】
本発明は、感度試験や汚れ試験で判断できない火災検知器の異常を監視して動作不良を起こす前に報知可能とする防災システム及びその火災検知器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(防災システム及び火災検知器)
本発明は、検知エリアの火災からの光エネルギーを受光センサで検出する火災検知器を設けた防災システム及びその火災検知器であって、
少なくとも火災検知器の故障状態である故障異常に至る以前の劣化状態と認められる劣化異常を判定する異常判定部を備え、
異常判定部は、火災検知器の受光センサによる光エネルギーの検出感度が所定レベルに低下する検出感度異常を判定する試験時に取得した検出感度異常を判定するための情報とは異なる劣化異常を判定するための情報に基づいて、劣化異常を判定することを特徴とする。
【0011】
(劣化異常が発生した機能構成部の特定)
また、異常判定部は、劣化異常の判定対象とする火災検知器の機能構成部の各々について劣化異常を判定することにより、当該劣化異常が発生した機能構成部を特定可能とする。
【発明の効果】
【0012】
(防災システム及び火災検知器の効果)
本発明は、検知エリアの火災からの光エネルギーを受光センサで検出する火災検知器を設けた防災システム及びその火災検知器であって、少なくとも火災検知器の故障状態である故障異常に至る以前の劣化状態と認められる劣化異常を判定する異常判定部を備え、異常判定部は、火災検知器の受光センサによる光エネルギーの検出感度が所定レベルに低下する検出感度異常を判定する試験時に取得した検出感度異常を判定するための情報とは異なる劣化異常を判定するための情報に基づいて、劣化異常を判定するようにしたため、劣化異常のために専用の試験する必要はなく、感度試験や汚れ試験等の検出感度異常に関する試験に合わせて劣化異常を判定することでき、試験時間を短縮させることができる。
【0013】
(劣化異常が発生した機能構成部の特定の効果)
また、異常判定部は、劣化異常の判定対象とする火災検知器の複数の機能構成部の各々について劣化異常を判定することにより、当該劣化異常が発生した機能構成部を特定可能としたため、動作不良を起こす前に、劣化異常を起こしている火災検知器を予備の火災検知器に交換する等の対応が可能となり、システムの経年劣化が進んでも、火災監視の信頼性を継続的に維持可能とし、劣化異常した箇所を特定することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】トンネル防災システムの概要を示した説明図
図2】防災受信盤の機能構成の概略を示したブロック図
図3】火災検知器の外観を示した説明図
図4】火災検知器の機能構成の概略を示したブロック図
図5】防災受信盤の制御動作を示したフローチャート
図6】火災検知器の制御動作を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
[トンネル防災システムの概要]
図1はトンネル防災システム概要を示した説明図である。図1に示すように、自動車専用道路のトンネルとして、上り線トンネル1aと下り線トンネル1bが構築されている。
【0016】
上り線トンネル1aと下り線トンネル1bの内部には、トンネル長手方向の壁面に沿って例えば25メートル又は50メートル間隔で火災検知器12が設置されている。火災検知器12は2組の火災検知部を備えることでトンネル長手方向上り側および下り側の両方向に検知エリアを持ち、トンネルの長手方向に沿って、隣接して配置される火災検知器との検知エリアが相互補完的に重なるように連続的に配置し、検知エリア内で起きた火災による炎からの放射線、例えば赤外線を観測して火災を検知する。
【0017】
また、上り線トンネル1aと下り線トンネル1bには、非常用施設として、火災通報のために手動通報装置や非常電話が設けられ、火災の消火や延焼防止のために消火栓装置が設けられ、更にトンネル躯体やダクト内を火災から防護するために水噴霧ヘッドから消火用水を散水させる水噴霧などが設置されるが、図示を省略されている。
【0018】
防災受信盤10からは上り線トンネル1aと下り線トンネル1bに対し電源回線を含む伝送路14a,14bを引き出して火災検知器12を接続しており、火災検知器12には回線単位に固有のアドレスを設定されている。
【0019】
また、防災受信盤10に対しては、消火ポンプ設備16、ダクト用の冷却ポンプ設備18、IG子局設備20、換気設備22、警報表示板設備24、ラジオ再放送設備26、テレビ監視設備28及び照明設備30等を設けており、IG子局設備20をデータ伝送回線で接続する点を除き、それ以外の設備はP型信号回線により防災受信盤10に個別に接続されている。ここで、IG子局設備20は、防災受信盤10と外部に設けた上位設備である遠方監視制御設備32とをネットワークを経由して結ぶ通信設備である。
【0020】
換気設備22は、トンネル内の天井側に設置されているジェットファンの運転による高い吹き出し風速によってトンネル内の空気にエネルギーを与えて、トンネル長手方向に換気の流れを起こす設備である。
【0021】
警報表示板設備24は、トンネル内の利用者に対して、トンネル内の異常を、電光表示板に表示して知らせる設備である。ラジオ再放送設備26は、トンネル内で運転者等が道路管理者からの情報を受信できるようにするための設備である。テレビ監視設備28は、火災の規模や位置を確認したり、水噴霧設備の作動、避難誘導を行う場合のトンネル内の状況を把握するための設備である。照明設備30はトンネル内の照明機器を駆動して管理する設備である。
【0022】
[防災受信盤]
図2は防災受信盤の機能構成の概略を示したブロック図である。図2に示すように、防災受信盤10は盤制御部34を備え、盤制御部34は例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。
【0023】
盤制御部34に対しては伝送部36a,36bを設け、伝送部36a,36bから引き出した伝送路14a,14bに上り線トンネル1aと下り線トンネル1bに設置した火災検知器12をそれぞれ複数台接続されている。
【0024】
また、盤制御部34に対しスピーカ、警報表示灯等を備えた警報部38、液晶ディスプレイ、プリンタ等を備えた表示部40、各種スイッチ等を備えた操作部42、外部監視設備と通信するIG子局設備20を接続するモデム44を設け、更に、図1に示した消火ポンプ設備16、冷却ポンプ設備18、換気設備22、警報表示板設備24、ラジオ再放送設備26、テレビ監視設備28及び照明設備30が接続されたIO部46を設けている。
【0025】
盤制御部34は、伝送部36a,36bに指示して火災検知器12のアドレスを順次指定したポーリングコマンドを含む呼出信号を繰り返し送信しており、火災検知器12は自己アドレスに一致する呼出信号を受信すると、火災検知や試験結果等の自己の状態情報を含む応答信号を返信する。
【0026】
また、防災受信盤10の盤制御部34は、火災検知器12からの応答信号の受信により火災を検知した場合は警報部38により火災警報を出力させると共にIO部46を介し他設備の連動制御を指示する制御を行う。
【0027】
また、盤制御部34は、システムの立上げ時あるいは運用中の所定の周期毎に、火災検知器12のアドレスを順次指定した試験指示コマンドを設定した試験信号を送信し、火災検知器12に感度試験、汚れ試験及び劣化試験を行わせ、それぞれの試験結果を応答させる制御を行う。また、操作部42により特定の火災検知器12のアドレスを指定した試験操作により、個別の火災検知器に対し試験信号を送信して試験を行わせることもできる。
【0028】
また、盤制御部34は火災検知器12の感度試験により得られた感度異常予告の応答信号を受信した場合、火災検知器のアドレスを特定した感度異常の予告警報を表示部40の警報音、ディスプレイ表示、印刷により報知させる制御を行う。
【0029】
また、盤制御部34は火災検知器12の感度試験により得られたセンサ故障の応答信号を受信した場合、火災検知器のアドレスを特定したセンサ故障警報を表示部40の警報音、ディスプレイ表示、印刷により報知させる制御を行う。
【0030】
また、盤制御部34は火災検知器12の汚れ試験により得られた汚れ異常予告信号を受信した場合、火災検知器のアドレスを特定した汚れ異常の予告警報を表示部40の警報音、ディスプレイ表示、印刷により報知させる制御を行う。
【0031】
また、盤制御部34は火災検知器12の汚れ試験により得られた汚れ異常の応答信号を受信した場合、火災検知器のアドレスを特定した汚れ警報を表示部40の警報音、ディスプレイ表示、印刷により報知させる制御を行う。
【0032】
また、盤制御部34は火災検知器12の劣化試験により得られた劣化異常予告の応答信号を受信した場合、火災検知器のアドレスを特定した劣化異常の予告警報を表示部40の警報音、ディスプレイ表示、印刷により報知させる制御を行う。
【0033】
また、盤制御部34は火災検知器12の劣化試験により得られた劣化異常の応答信号を受信した場合、火災検知器のアドレスを特定した劣化異常警報を表示部40の警報音、ディスプレイ表示、印刷により報知させる制御を行う。
【0034】
また、盤制御部34は、火災検知器12の感度試験、汚れ試験及び劣化試験により得られた予告、故障、又は異常の応答信号を受信した場合、モデム44から図1に示したIG子局設備20を介して遠方監視制御設備32に送信し、予告警報、故障警報又は異常警報を報知させる制御を行う。
【0035】
更に、盤制御部34は、表示部40のディスプレイを利用した操作部42の操作に基づき、火災検知器12に設定されている感度異常、汚れ異常、劣化異常を判断するための閾値や、感度異常、汚れ異常、劣化異常の予告を判断する予告閾値を変更させる制御を行う。この閾値及び予告閾値を変更させる制御は、火災検知器12の閾値又は予告閾値を一斉に変更させることもできるし、アドレスを指定して特定の火災検知器12の閾値又は予告閾値を変更させることもできる。
【0036】
以下の説明では、伝送路14a,14b及び伝送部36a,36bについて、区別する必要がない場合は伝送路14及び伝送部36という場合がある。
【0037】
[火災検知器]
(火災検知器の外観)
図3は火災検知器の外観を示した説明図、図4は火災検知器の機能構成の概略を示したブロック図である。
【0038】
図3に示すように、火災検知器12は、筐体49の上部に設けられたセンサ収納部51に左右に分けて2組の透光性窓50R,50Lが設けられ、透光性窓50R,50L内の各々に、センサ部が配置されている。また、透光性窓50R,50Lの近傍の、センサ部を見通せる位置に、透光性窓50R,50Lの汚れ試験に使用される外部試験光源を収納した2組の試験光源用透光窓52R,52Lが設けられている。
【0039】
以下の説明では、透光性窓50Rを右眼透光性窓50Rといい、透光性窓50Lを左眼透光性窓50Lという場合がある。
【0040】
(火災検知器の概略構成)
図4に示すように、火災検知器12には、検知器制御部54、伝送部56、電源部58、左右2組の火災検知部60R,60L、試験発光駆動部72、感度試験に用いられる内部試験光源74R,75Rと内部試験光源74L,75L、汚れ試験に用いられる外部試験光源76R,76Lが設けられている。以下の説明では、火災検知部60Rを右眼火災検知部60Rといい、火災検知部60Lを左眼火災検知部60Lという場合がある。
【0041】
検知器制御部54は、例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。
【0042】
伝送部56は伝送路14のシリアル伝送線Sとシリアル伝送コモン線SCにより図2に示した防災受信盤10の伝送部36に接続され、各種信号をシリアル伝送により送受信する。
【0043】
電源部58は伝送路14に含まれる電源線Bと電源コモン線BCにより図2に示した防災受信盤10から電源供給を受け、例えば検知器制御部54、伝送部56、左右2組の火災検知部60R,60L、試験発光駆動部72となる回路ブロックに分けて、所定の電源電圧Vcc1~Vcc5が供給されている。
【0044】
ここで、電源電圧Vcc1は伝送部56に供給され、電源電圧Vcc2は検知器制御部54に供給され、電源電圧Vcc3は火災検知部60Rに供給され、電源電圧Vcc4は火災検知部60Lに供給され、電源電圧Vcc5は試験発光駆動部72に供給されている。
【0045】
電源部58から各回路ブロックに対する電源ラインには、電圧電流検出部78が個別に設けられ、各回路ブロックに対する電源電圧と消費電流を検出して検知器制御部54に出力されている。電圧電流検出部78は、電圧の検出は電源ラインの電圧を直接取出し、電流の検出は電流検出用の低抵抗を電源ラインに挿入接続して、その両端の電圧を電流検出電圧として取り出している。
【0046】
試験発光駆動部72には、感度試験に使用する内部試験光源74R,75R,74L,75Lが接続されまた、汚れ試験に使用する外部試験光源76R,76Lが接続され、それぞれ発光素子としてLEDを設けている。
【0047】
(火災検知部)
火災検知部60R,60Lは、センサ部64,68と増幅処理部66,70を備える。例えば右眼火災検知部60Rを例にとると、センサ部64,68の前面には検知器カバーに設けた右眼透光性窓50Rが配置されており、右眼透光性窓50Rを介して外部の検知エリアからの光エネルギーがセンサ部64,68に入射されている。
【0048】
右眼火災検知部60Rは、例えば2波長式の炎検知により火災を監視している。センサ部64は、右眼透光性窓50Rを介して入射した光エネルギーの中から、炎に特有なCO2の共鳴放射帯である4.4~4.5μmの放射線を光学波長バンドパスフィルタにより選択透過(通過)させて、受光センサにより該放射線のエネルギーを検知して光電変換したうえで、増幅処理部66により増幅等所定の加工を施してエネルギー量に対応する受光信号にして検知器制御部54へ出力する。
【0049】
センサ部68は、左眼透光性窓50Lを介して入射した光エネルギーの中から、5~6μmの放射エネルギーを光学波長バンドパスフィルタにより選択透過(通過)させて、受光センサにより該放射線のエネルギーを検知して光電変換したうえで、増幅処理部70により増幅等所定の加工を施してエネルギー量に対応する受光信号にして検知器制御部54へ出力する。
【0050】
増幅処理部66,70には、プリアンプ、炎のゆらぎ周波数帯域を通過させるフィルタ及びパワーアンプ等が設けられている。
【0051】
(火災判断)
検知器制御部54には、プログラムの実行により実現される機能として、火災判断部80の機能が設けられている。火災判断部80は、例えば、右眼火災検知部60Rの増幅処理部66,70から出力された受光値(受光信号レベル)の相対比をとり、所定の閾値と比較することにより炎の有無を判定し、炎有りの判定により火災を検知した場合には、伝送部56に指示して、自己アドレスに一致する呼出信号に対する応答信号に火災検知情報を設定して防災受信盤10へ送信させる制御を行う。
【0052】
(感度試験)
検知器制御部54には、プログラムの実行により実現される機能として、感度試験部82の機能が設けられている。感度試験部82は、伝送部56を介して防災受信盤10から自身のアドレスを指定した試験信号を受信した場合に動作し、試験発光駆動部72に指示して、内部試験光源74R,75R,74L,75Lを順番に発光駆動して火災検知部60R,60Lの感度試験を行わせる。
【0053】
例えば右眼火災検知部60Rにおけるセンサ部64と増幅処理部66の回路系統の感度試験を例にとると、試験発光駆動部72は内部試験光源74R,75Rを発光駆動することにより、火災炎に相当する炎疑似光をセンサ部64に入射させる。内部試験光源74Rからの炎疑似光は、センサ部64で受光する炎に固有な4.4~4.5μm及びセンサ部68で受光する5~6μmの放射エネルギーを含み、且つ、炎に固有な8~12Hzのゆらぎ周波数をもつ光とされている。
【0054】
感度試験部82は、センサ部64と増幅処理部66の回路ブロック、センサ部68と増幅処理部70の回路ブロック毎に感度試験を行う。
【0055】
例えば、センサ部64と増幅処理部66の回路ブロックの感度試験は、工場出荷時に初期設定された基準受光値がメモリに記憶されており、システム立上げ時の感度試験で得られる検出受光値は基準受光値に一致しており、検出受光値を基準受光値で割った検出感度は1となっている。運用期間が経過していくと、検出受光値は徐々に低下し、検出感度は0.9,0.8,0.7・・・というように低下していく。
【0056】
このように検出感度が1以下に低下した場合、感度試験部82は感度試験により検出感度を求めると共に、検出感度の逆数となる補正値を求めてメモリに記憶させ、その後の運用状態で検出される受光値に補正値を乗算して感度補正を行い、火災判断部80は感度補正された受光値により火災を判断する。
【0057】
また、感度試験部82には、感度補正が不可能となる限界に対応した感度閾値、例えば感度閾値0.5が予め設定されており、感度試験で求められた検出感度が感度閾値以下又は感度閾値を下回った場合にセンサ部64の感度異常による故障と判断し、伝送部56に指示して、自己アドレスに一致する呼出信号に対する応答信号にセンサ故障情報を設定して防災受信盤10へ送信させる制御を行う。なお、センサ故障の判断を確実なものとするため、感度試験部82は複数回連続して感度異常による故障と判断した場合に、センサ故障を設定した応答信号を送信させても良い。
【0058】
また、感度試験部82には、感度閾値より大きい所定の感度異常の予告閾値、例えば予告閾値0.6が予め設定されており、感度試験で求められた検出感度が感度異常の予告閾値以下又は感度異常の予告閾値を下回った場合にセンサ部64の感度異常による故障が近いと判断し、伝送部56に指示して、自己アドレスに一致する呼出信号に対する応答信号に感度異常の予告情報を設定して防災受信盤10へ送信させる制御を行う。
【0059】
左眼火災検知部60Lにおけるセンサ部68と増幅処理部70の回路系統の感度試験についても、試験発光駆動部72により内部試験光源74L,75Lを発光駆動することにより、同様にして感度試験が行われる。
【0060】
(汚れ試験)
検知器制御部54には、プログラムの実行により実現される機能として、汚れ試験部84の機能が設けられている。汚れ試験部84は、伝送部56を介して防災受信盤10から自身のアドレスを指定した試験信号を受信した場合に動作し、試験発光駆動部72に指示して、外部試験光源76R,76Lを順番に発光駆動して透光性窓50R,50Lの汚れ試験を行わせる。
【0061】
例えば透光性窓50Rの汚れ試験を例にとると、試験発光駆動部72は外部試験光源76Rを発光駆動することにより、火災炎に相当する炎疑似光を、透光性窓50Rを介してセンサ部64に入射させる。外部試験光源76Rからの炎疑似光は、センサ部64で受光する炎に固有な4.4~4.5μm及びセンサ部68で受光する5~6μmの放射エネルギーを含み、且つ、炎に固有な8~12Hzのゆらぎ周波数をもつ光とされている。
【0062】
透光性窓50Rは工場出荷時に汚れはなく、その際に汚れ試験で得られた受光値が基準受光値としてメモリに記憶されており、減光率の演算に利用される。
【0063】
システム立上げ時の汚れ試験で得られる検出受光値は基準受光値に一致しており、基準受光値から検出受光値を減算した値を基準受光値で割った減光率は0となっている。運用期間が経過していくと、透光性窓50Rに汚れが付着し、減光率は、0.1,0.2,0.3・・・というように徐々に増加していく。
【0064】
このように減光率が増加した場合、汚れ試験部84は汚れ試験により減光率を求めると共に、(1-減光率)の逆数となる補正値を求めてメモリに記憶させ、その後の運用状態で検出される受光値(感度試験の補正値により補正された受光値)を補正値により除算して汚れ補正を行い、火災判断部80は汚れ補正された受光値により火災を判断する。なお、運用状態で検出される受光値は、前述した感度試験で得られた補正値および汚れ試験で得られた補正値で補正されることになる。
【0065】
また、汚れ試験部84には、汚れ補正が不可能となる限界に対応した減光率となる汚れ閾値、例えば汚れ閾値0.5が予め設定されており、汚れ試験で求められた減光率が汚れ閾値以上又は汚れ閾値を上回った場合に透光性窓50Rの汚れ補正が不可能となる汚れ異常と判断し、伝送部56に指示して、自己アドレスに一致する呼出信号に対する応答信号に汚れ異常情報を設定して防災受信盤10へ送信させる制御を行う。
【0066】
また、感度試験部82には、汚れ閾値より小さい所定の汚れ予告閾値、例えば汚れ予告閾値0.4が予め設定されており、汚れ試験で求められた減光率が汚れ予告閾値以上又は汚れ予告閾値を上回った場合に汚れ異常が近いと判断し、伝送部56に指示して、自己アドレスに一致する呼出信号に対する応答信号に汚れ異常の予告情報を設定して防災受信盤10へ送信させる制御を行う。
【0067】
(劣化試験)
検知器制御部54には、プログラムの実行により実現される機能として、劣化試験部86の機能が設けられている。
【0068】
劣化試験部86は、伝送部56を介して防災受信盤10から自身のアドレスを指定した試験信号を受信して感度試験部82と汚れ試験部84が順次動作して感度試験と汚れ試験を行った場合、各回路ブロックへの電源ラインに設けられた電圧電流検出部78により検出されている試験中の電源電圧Vcc1~Vcc5と消費電流(電源電流)Icc1~Icc5の検出信号をA/D変換ポートから周期的に読み込んでメモリに記憶し、続いて、メモリに記憶された複数の電源電圧と消費電流の平均値を各回路ブロックの内部電圧及び消費電流として求め、測定された内部電圧又は消費電流の変化から劣化異常を判断し、伝送部56に指示して、自己アドレスに一致する呼出信号に対する応答信号に劣化故障情報を設定して防災受信盤10へ送信させる制御を行う。
【0069】
本実施形態にあっては、火災検知器12の各回路ブロックの劣化に伴い内部電圧および消費電流が低下することを想定されている。このため、検知器制御部54のメモリには、工場出荷時前の試験等により測定された各回路ブロックの内部電圧及び消費電流が基準値として記憶されており、且つ、これらの基準値からどの程度減少したら劣化異常と判断するかを決める所定の電圧閾値と電流閾値が予め記憶され、更に、劣化異常と判断する前の予告のための所定の予告電圧閾値と予告電流閾値も予め記憶されている。
【0070】
劣化試験部86は、劣化異常を判定する異常判定部としての機能を備え、各回路ブロックについて測定した内部電圧が所定の電圧閾値以下又は電圧閾値を下回った場合、又は、測定した消費電流が所定の電流閾値以下又は電流閾値を下回った場合に、劣化異常と判断し、伝送部56に指示して、自己アドレスに一致する呼出信号に対する応答信号に劣化故障情報を設定して防災受信盤10へ送信させる制御を行う。なお、劣化異常の判断を確実なものとするため、劣化試験部86は複数回連続して劣化異常と判断した場合に、劣化故障情報を設定した応答信号を送信させるようにしても良い。
【0071】
また、劣化試験部86は、感度試験及び汚れ試験を通じて測定された回路ブロックの内部電圧が予告電圧閾値以下又は予告電圧閾値を下回った場合、又は、測定した消費電流が予告電流閾値以下又は予告電流閾値を下回った場合に、その回路ブロックの劣化異常が近いと判断し、伝送部56に指示して、自己アドレスに一致する呼出信号に対する応答信号に劣化異常の予告情報を設定して防災受信盤10へ送信させる制御を行う。
【0072】
なお、劣化試験部86による劣化試験は、内部電圧又は消費電流のみを測定して劣化の度合を前述したと同様に判断するようにしても良い。
【0073】
[防災監視システムの動作]
(防災受信盤の動作)
図5は防災受信盤の制御動作を示したフローチャートであり、図2の防災受信盤10に設けられた盤制御部34による制御動作となる。
【0074】
図5に示すように、防災受信盤10の電源を投入してシステムが立ち上げられると、盤制御部34は、ステップS1で所定の初期化処理を行った後にステップS2に進み、火災監視処理を行う。
【0075】
ステップS2の火災監視処理として、盤制御部34は、伝送部36a,36bに指示してアドレスを順次指定した呼出信号を伝送路14a,14bに送信させ、アドレスが一致した火災検知器12から送信された応答信号を受信して処理する。ここで、盤制御部34が応答信号の受信により火災を検知した場合は、警報部38により火災警報を出力させると共にIO部46を介し他設備の連動制御を指示し、また、モデム44を介して図1に示した遠方監視制御設備32に火災検知信号を送信して火災警報を出力させる制御を行う。
【0076】
続いて、盤制御部34は、ステップS3で例えば1日1回となる所定の試験タイミングへの到達を判別するとステップS4に進み、初期設定された最初の火災検知器12のアドレスを指定した試験指示コマンドを設定した試験信号を送信し、火災検知器12に感度試験、汚れ試験及び劣化試験を行わせる。
【0077】
続いて、ステップS5に進み、盤制御部34は試験を指示した火災検知器12からの試験結果が設定された応答信号の受信を判別するとステップS6に進み、試験結果の報知と記憶を行う。
【0078】
ステップS6の試験結果として、盤制御部34は、応答信号から感度異常の予告情報が得られた場合、警報部38及び表示部40に指示して、感度異常の予告警報の出力と表示、更にはプリンタ印字を行わせ、また、モデム44から図1に示したIG子局設備20を介して遠方監視制御設備32に感度異常の予告信号を送信して感度異常の予告警報を出力させる。
【0079】
また、盤制御部34は、感度異常予告警報を行った後に、応答信号からセンサ故障情報が得られた場合は、警報部38及び表示部40に指示して、センサ故障警報の出力と表示、更にはプリンタ印字を行わせ、また、モデム44から図1に示したIG子局設備20を介して遠方監視制御設備32にセンサ故障信号を送信してセンサ故障警報を出力させる。
【0080】
一方、盤制御部34は、ステップS6の試験結果として、応答信号から汚れ異常の予告情報が得られた場合は、警報部38及び表示部40に指示して、汚れ異常の予告警報の出力と表示、更にはプリンタ印字を行わせ、また、モデム44から図1に示したIG子局設備20を介して遠方監視制御設備32に汚れ異常の予告信号を送信して汚れ異常の予告警報を出力させる。
【0081】
また、盤制御部34は、応答信号から汚れ異常情報が得られた場合は、警報部38及び表示部40に指示して、汚れ警報の出力と表示、更にはプリンタ印字を行わせ、また、モデム44から図1に示したIG子局設備20を介して遠方監視制御設備32に汚れ異常信号を送信して汚れ異常警報を出力させ、透光性窓の清掃作業が行われる。
【0082】
更に、盤制御部34は、ステップS6の試験結果として、応答信号から劣化異常の予告情報が得られた場合は、警報部38及び表示部40に指示して、劣化異常の予告警報の出力と表示、更にはプリンタ印字を行わせ、また、モデム44から図1に示したIG子局設備20を介して遠方監視制御設備32に劣化異常の予告信号を送信して劣化異常の予告警報を出力させる。
【0083】
また、盤制御部34は、応答信号から劣化異常情報が得られた場合は、警報部38及び表示部40に指示して、劣化警報の出力と表示、更にはプリンタ印字を行わせ、また、モデム44から図1に示したIG子局設備20を介して遠方監視制御設備32に劣化異常信号を送信して劣化異常警報を出力させ、予備の火災検知器への交換作業等の対処が行われる。
【0084】
続いて、ステップS7に進み、火災検知器12の全アドレスについての試験終了を判別するまで、ステップS4~S7の処理を繰り返す。
【0085】
(火災検知器の動作)
図6は火災検知器の制御動作を示したフローチャートであり、図4の火災検知器12に設けられた検知器制御部54による制御動作となる。
【0086】
図6に示すように、防災受信盤10からの電源供給を受けて火災検知器12が立ち上げられると、検知器制御部54は、ステップS11で所定の初期化処理を行った後にステップS12に進み、火災判断処理を行う。
【0087】
ステップS12の火災判断処理として、検知器制御部54は、火災検知部60R,60Lの増幅処理部66,70から出力された受光値を読み込み、感度試験で得られた補正値及び汚れ試験で得られた補正値による受光値を補正した後に、両者の比率を求め、所定の閾値を超えた場合に火災と判断し、伝送部56に指示し、自身のアドレスを指定した呼出信号の受信に対する応答信号に火災検知情報を設定して防災受信盤10に送信させる。
【0088】
続いて、検知器制御部54は、ステップS13で自身のアドレスを指定した試験信号の受信を判別すると、ステップS14~S16で感度試験処理、汚れ試験処理及び劣化試験処理を行い、試験処理毎に試験結果を応答信号により防災受信盤10に送信する。
【0089】
即ち、ステップS14の感度試験処理にあっては、検知器制御部54は試験発光駆動部72に指示して内部試験光源74R,75R,74L,75Lを発光駆動させ、炎試験光をセンサ部64,68に入射することで、増幅処理部66,70から出力される検出受光値を読み込み、基準受光値に基づき検出感度を求めると共に感度補正値を求めてメモリに記憶し、また、検出感度が感度異常の予告閾値以下の場合は伝送部56に指示して感度異常の予告情報を設定した応答信号を防災受信盤10に送信させ、更に、検出感度が感度異常閾値以下の場合は伝送部56に指示してセンサ故障情報が設定された応答信号を防災受信盤10に送信する。
【0090】
また、ステップS15の汚れ試験処理にあっては、検知器制御部54は試験発光駆動部72に指示して外部試験光源76R,76Lを発光駆動させ、炎試験光を透光性窓50R,50Lを介してセンサ部64,68に入射させ、例えば増幅処理部66から出力される受光値を読み込み、基準受光値に基づき減光率を求めると共に汚れ補正値を求めてメモリに記憶し、また、減光率が汚れ異常の予告閾値以上の場合は伝送部56に指示して汚れ異常の予告情報が設定された応答信号を防災受信盤10に送信させ、更に、減光率が汚れ異常閾値以下の場合は伝送部56に指示して汚れ異常情報が設定された応答信号を防災受信盤10に送信する。
【0091】
更に、ステップS16の劣化試験処理にあっては、ステップS14の感度試験及びステップS15の汚れ試験における各回路ブロックに対する内部電圧と消費電流を電圧電流検出部78の検出信号に基づいて求め、内部電圧が予告電圧閾値以下の場合または消費電流が予告電流閾値以下の場合、伝送部56に指示して劣化異常の予告情報が設定された応答信号を防災受信盤10に送信させ、更に、内部電圧が電圧閾値以下の場合または消費電流が電流閾値以下の場合、伝送部56に指示して劣化異常情報が設定された応答信号を防災受信盤10に送信する。
【0092】
[防災受信盤で劣化異常を判断する実施形態]
トンネル防災システムの他の実施形態として、図4に示した火災検知器12の検知器制御部54に設けられた劣化試験部86は、感度試験及び汚れ試験における内部電圧及び消費電流を測定し、測定した内部電圧及び消費電流の測定値を設定した応答信号を防災受信盤10に送信し、図2に示した防災受信盤10の盤制御部34に劣化異常を判定する異常判定部の機能を設け、防災受信盤10の盤制御部34により火災検知器12から受信した試験時の内部電圧と消費電流の測定値から検知器回路部の劣化を判断する。このため盤制御部34のメモリには、劣化異常を判断する所定の電圧閾値及び電流閾値、及びそれより大きい所定の予告電圧閾値及び予告電流閾値が予め設定されている。
【0093】
盤制御部34による検知器回路部の劣化判断は、火災検知器12の劣化試験部86の場合と同様であり、盤制御部34は、火災検知器12の各回路ブロックについて測定された内部電圧が予告電圧閾値以下又は予告電圧閾値を下回った場合、又は、測定された消費電流が予告電流閾値以下又は予告電流閾値を下回った場合に、その回路ブロックの劣化故障が近いと判断し、火災検知器12のアドレスを特定した劣化異常の予告警報を表示部40の警報音、ディスプレイ表示、印刷により報知させ、モデム44から図1に示したIG子局設備20を介して遠方監視制御設備32に送信し、劣化異常予告を報知させる制御を行う。
【0094】
また、盤制御部34は、火災検知器12の各回路ブロックについて測定された内部電圧が所定の電圧閾値以下又は電圧閾値を下回った場合、又は、測定した消費電流が所定の電流閾値以下又は電流閾値を下回った場合に劣化異常と判断し、火災検知器のアドレスを特定した劣化異常警報を表示部40の警報音、ディスプレイ表示、印刷により報知させ、モデム44から図1に示したIG子局設備20を介して遠方監視制御設備32に送信し、劣化異常を報知させる制御を行う。
【0095】
また、盤制御部34は、メモリに火災検知器12から受信した内部電圧及び消費電流の測定値を時系列的なログ情報として記憶しており、例えば、所定のログ出力操作に基づき、火災検知器12のアドレス順に時系列的な内部電圧と消費電流の測定値をディスプレイ上に一覧表示するか、プリンタで印刷出力させることで、火災検知器12の劣化の進行具合をアドレス順に判断可能となる。この場合、時間的な並びは、日単位、週単位、月単位、更には指定された日数単位とすることで、劣化による内部電圧や消費電流の変化を強調させることができる。
【0096】
また、ログ情報の出力形式として、内部電圧と消費電流の数値表示以外に、時間軸を横軸、電圧電流を縦軸としたグラフ表示としても良い。
【0097】
更に、盤制御部34は、表示部40のディスプレイを利用した操作部42の操作に基づき、劣化異常を判断する閾値と、劣化異常の予告を判断する予告閾値を変更させる制御を行う。この閾値及び予告閾値を変更させる制御は、全ての火災検知器12の閾値と予告閾値を一斉に変更させることもできるし、アドレスを指定して特定の火災検知器12の閾値と予告閾値を変更させることもできる。
【0098】
[本発明の変形例]
(火災検知器)
上記の実施形態は2波長方式の火災検知器を例にとっているが、他の方式でも良く、例えば、前述した2波長に加え、CO2の共鳴放射帯である4.4~4.5μm帯に対し短波長側の、例えば、3.8μm付近の波長帯域における放射線エネルギーを2波長式と同様の手法で検知し、これらの3波長帯域における各受光信号の相対比によって炎の有無を判定する3波長式の炎検知器としても良い。
【0099】
(汚れ試験)
上記の実施形態は、火災検知部60R,60Lに設けたセンサ部64と増幅処理部66により外部試験光源76R,76Lからの試験光により得られた受光値を使用して減光率を求めているが、汚れ試験専用のセンサ部と増幅処理部を設けて外部試験光源76R,76Lからの試験光による受光値から減光率を求めるようにしても良い。
【0100】
(劣化試験)
上記の実施形態は、火災検知器12の回路ブロックの劣化により内部電圧と消費電流が減少することを想定して劣化の度合を判断されているが、回路ブロックによっては、絶縁低下等による漏洩電流等により消費電流が増加することが想定されることから、例えば、消費電流については、所定の基準消費電流より高い電流閾値を設定し、この電流閾値以上又は電流閾値を超えた場合に劣化異常と判断して劣化異常警報を出力するようにしても良い。
【0101】
(火災検知器の内部電圧と消費電流の測定)
上記の実施形態では、火災検知器12の電源部58から各回路ブロックに供給される電源電圧と電源電流を、内部電圧及び消費電流として測定して劣化度合を判断されているが、電源部58から全ての回路部に供給される電源電圧と電源電流を、内部電圧及び消費電流として測定して劣化度合を判断しても良い。これにより電圧電流検出部78が1つで済み、回路構成と測定処理を簡単することができる。
【0102】
また、回路部の劣化判断に使用する内部電圧と消費電流の測定を、感度試験と汚れ試験の試験時に測定しているが、それ以外の適宜の火災感知器の試験時に測定しても良い。更に、内部電圧と消費電流を火災検知器の試験時に測定する以外に、試験を行っていない定常監視状態での内部電圧と消費電流を測定して回路部の劣化度合を判断するようにしても良い。
【0103】
(異常リストの表示)
また、防災受信盤10により異常を報知させるため、異常のリストと汚れ警報のリストを同一のリスト上に表示しても良い。
【0104】
(劣化異常となった火災検知器の取扱い)
また、劣化異常となった火災検知器について、火災検知結果を防災受信盤側で採用しないようにしても良い。これにより、正常な検知結果のみで火災を監視することが可能となり、非火災報を低減させることができる。また、上記において、検知範囲の重なる隣接感知器に異常がない場合のみ当該劣化異常火災検知器の火災検知結果を採用しないように制御することが、最低限の監視を行う上で好適である。
【0105】
(火災検知器の表示灯)
また、火災検知器に表示灯を設け、異常時には発光表示させるようにしても良い。これにより、異常の対応を行う作業員がどの火災検知器に対して対処すればよいか現場にて一見で分かるようになる。また、当該異常の発光表示について、防災受信盤側から発光許可信号が出力されたときのみ、発光するようにしても良い。これにより、通常使用時においては異常の発光表示をしないため、運転者等が注意をひかれることはない。また、点検時においてのみ発光表示を行うことで、点検時においては一見で把握できるようになり、注意を引く程度の発光量で発光することも可能となる。
【0106】
(火災検知器のログ)
また、火災検知器は消費電流・内部電圧・劣化検出状態をログとして自身のメモリに記憶するようにしても良い。火災検知器はアドレス設定器等の外部機器に接続され、メモリに記憶したログデータの読み出しが行われる。
【0107】
(その他)
また本発明は、その目的と利点を損なわない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0108】
1a:上り線トンネル
1b:下り線トンネル
10:防災受信盤
12:火災検知器
14,14a,14b:伝送路
16:消火ポンプ設備
18:冷却ポンプ設備
20:IG子局設備
22:換気設備
24:警報表示板設備
26:ラジオ再放送設備
28:テレビ監視設備
30:照明設備
32:遠方監視制御設備
34:盤制御部
36,36a,36b,56:伝送部
46:IO部
50R,50L:透光性窓
51:センサ収納部
52R,52L:試験光源用透光窓
54:検知器制御部
58:電源部
60R,60L:火災検知部
64,68:センサ部
66,70:増幅処理部
72:試験発光駆動部
74R,74L,75R,75L:内部試験光源
76R,76L:外部試験光源
78:電圧電流検出部
80:火災判断部
82:感度試験部
84:汚れ試験部
86:劣化試験部





















図1
図2
図3
図4
図5
図6