(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056001
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】TGF-B-受容体外部ドメイン融合分子及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230411BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230411BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230411BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20230411BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230411BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230411BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20230411BHJP
C07K 14/715 20060101ALI20230411BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230411BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20230411BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230411BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230411BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230411BHJP
A61P 19/04 20060101ALI20230411BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/85 Z
C12N5/10
C07K19/00
C07K16/18
C07K14/715
A61K38/16
A61K38/17
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P27/02
A61P35/00
A61P19/04
A61P43/00 105
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021751
(22)【出願日】2023-02-15
(62)【分割の表示】P 2019547490の分割
【原出願日】2018-03-01
(31)【優先権主張番号】62/465,969
(32)【優先日】2017-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/468,586
(32)【優先日】2017-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】595006223
【氏名又は名称】ナショナル リサーチ カウンシル オブ カナダ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】アン イー.ジー.レンフェリンク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン シー.ツバーグストラ
(72)【発明者】
【氏名】トライアン スレア
(72)【発明者】
【氏名】モーリーン ディー.オコナー-マコート
(57)【要約】
【課題】本発明は、一般に、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)リガンドを結合及び中和することが可能なポリペプチド、及びTGF-ベータの発現又は活性化に関連する障害(例えば、癌及び線維性疾患)を治療するためのこれらのポリペプチドの使用、及びそのような分子の作成方法に関する。
【解決手段】トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)リガンドを結合及び中和することが可能なポリペプチド、及びTGF-ベータの発現又は活性化に関連する障害(例えば、癌及び線維性疾患)を治療するためのこれらのポリペプチドの使用、及びそのような分子の作成方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)アイソタイプの効果を阻害するために有用なポリペプチドコンストラクトであって、前記コンストラクトが、以下:
配列番号1のアミノ酸配列を含む第2のTGF-β受容体外部ドメイン(TβR-ECD)にタンデムに連結される配列番号1のアミノ酸配列を含む第1のTGF-β受容体外部ドメイン(TβR-ECD)を含む第1の領域、及び
抗体重鎖の第2の定常ドメイン(CH2)及び/又は第3の定常ドメイン(CH3)を含む第2の領域
を含み;
ここで、前記第2の領域のN末端は、前記第1の領域のC末端に結合され; 及び
前記第2のTβR-ECDは、配列番号8のアミノ酸配列によってCH2ドメイン又はCH3ドメインに連結される、ポリペプチドコンストラクト。
【請求項2】
前記ポリペプチドコンストラクトが、単一のTβR-ECDを有する対応するコンストラクトよりも少なくとも20倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、又は600倍高い効力でTGF-β活性を阻害する、請求項1に記載のポリペプチドコンストラクト。
【請求項3】
前記ポリペプチドコンストラクトが、非Fc融合TβR-ECDダブレットよりも少なくとも100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍又は900倍高い効力でTGF-β活性を阻害する、請求項1に記載のポリペプチドコンストラクト。
【請求項4】
前記第2の領域が、抗体重鎖のFc領域を含む、請求項1に記載のポリペプチドコンストラクト。
【請求項5】
前記第1のTβR-ECD及び前記第2のTβR-ECDそれぞれが、TGF-βII型受容体外部ドメイン(TβRII-ECD)を含む、請求項1に記載のポリペプチドコンストラクト。
【請求項6】
前記第1のTβR-ECD及び前記第2のTβR-ECDが、同一のTGF-βアイソタイプに結合する、請求項1に記載のポリペプチドコンストラクト。
【請求項7】
前記第1のTβR-ECD及び前記第2のTβR-ECDが、TGF-β1及びTGF-β3の両方にそれぞれ結合する、請求項6に記載のポリペプチドコンストラクト。
【請求項8】
前記第1のTβR-ECDのC末端が前記第2のTβR-ECDのN末端に直接融合する、請求項1に記載のポリペプチドコンストラクト。
【請求項9】
前記第1のTβR-ECD及び/又は前記第2のTβR-ECDが、配列番号1のアミノ酸配列からなる、請求項1に記載のポリペプチドコンストラクト。
【請求項10】
前記第2の領域が、IgG抗体の重鎖の前記CH2及びCH3ドメインを含む、請求項1~9の何れか1項に記載のポリペプチドコンストラクト。
【請求項11】
前記IgG抗体が、IgG1又はIgG2抗体である、請求項10に記載のポリペプチドコンストラクト。
【請求項12】
前記第2の領域が、前記コンストラクトを他のコンストラクトと架橋するためのシステイン残基を含むヒンジ領域を含む、請求項1~11の何れか1項に記載のポリペプチドコンストラクト。
【請求項13】
前記第2の領域が、配列番号12、配列番号15、配列番号18、及び配列番号24からなる群から選択される、請求項1~12の何れか1項に記載のポリペプチドコンストラクト。
【請求項14】
配列番号10、配列番号14、配列番号17、配列番号20、及び配列番号23からなる群から選択される、請求項1に記載のポリペプチドコンストラクト。
【請求項15】
前記コンストラクトが、少なくとも1つのジスルフィド架橋によってそれぞれの抗体定常ドメイン間に連結された第1及び第2のポリペプチドコンストラクトを含む二量体ポリペプチドである、請求項1~14の何れか1項に記載のポリペプチドコンストラクト。
【請求項16】
前記二量体ポリペプチドが、
第1及び第2の領域を含む第1の単鎖ポリペプチド;及び
前記第1の単鎖ポリペプチドと同一のポリペプチドを含む第2の単鎖ポリペプチド
を含み、
ここで、前記第2の領域が、抗体重鎖の前記第2の定常ドメイン(CH2)及び第3の定常ドメイン(CH3)、並びに所定の抗体の重鎖可変領域を含み;
ここで、前記第1の領域が、2つのTβRII-ECDを含み;及び
ここで、前記第2の領域のN末端が、前記第1の領域のC末端に連結される、
請求項15に記載のポリペプチドコンストラクト。
【請求項17】
請求項1~16の何れか1項に記載のポリペプチドコンストラクトをコードする核酸分子。
【請求項18】
請求項17に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項19】
選択された発現宿主により分泌可能な形態で、請求項1~18の何れか1項に記載の何れかのポリペプチドコンストラクトをコードする核酸配列を含む核酸分子。
【請求項20】
前記核酸配列が、配列番号10、配列番号14、配列番号17、配列番号20、及び配列番号23からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする、請求項19に記載の核酸分子。
【請求項21】
前記核酸配列が、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32及び配列番号33からなる群から選択される、請求項20に記載の核酸分子。
【請求項22】
請求項1~16の何れか1項に記載のポリペプチドコンストラクト及び医薬的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項23】
請求項17に記載の核酸分子又は請求項18に記載のベクターを含むトランスジェニック細胞宿主。
【請求項24】
前記第1のポリペプチドコンストラクトと同一の第2のポリペプチドコンストラクトをコードする第2の核酸分子又は第2のベクターをさらに含む、請求項23に記載のトランスジェニック細胞宿主。
【請求項25】
二量体ポリペプチドを産生する方法であって、前記宿主を培養し、その宿主を増殖させることにより前処理された培地から請求項15又は請求項16に記載の二量体ポリペプチドコンストラクトを回収することを含む、方法。
【請求項26】
病状、疾患又は障害の治療のための、請求項1~16の何れか1項に記載のポリペプチドコンストラクト、及び医薬的に許容される希釈剤、賦形剤、又は担体を含む医薬組成物。
【請求項27】
前記病状、疾患又は障害が、癌、眼疾患、線維性疾患、又は結合組織の遺伝的障害を含む、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
配列番号14を含むポリペプチドコンストラクト。
【請求項29】
ホモ二量体としての、請求項28に記載のポリペプチドコンストラクト。
【請求項30】
請求項28に記載のポリペプチドコンストラクトを含む医薬組成物。
【請求項31】
癌の治療のための、請求項28に記載のポリペプチドコンストラクト、及び医薬的に許容される希釈剤、賦形剤、又は担体を含む医薬組成物。
【請求項32】
配列番号14からなるポリペプチドコンストラクト。
【請求項33】
ホモ二量体としての、請求項32に記載のポリペプチドコンストラクト。
【請求項34】
請求項32又は請求項33に記載のポリペプチドコンストラクト、及び医薬的に許容される希釈剤、賦形剤、又は担体を含む医薬組成物。
【請求項35】
癌の治療のための、請求項32又は請求項33に記載のポリペプチドコンストラクト、及び医薬的に許容される希釈剤、賦形剤、又は担体を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TGF-β受容体外部ドメイン融合分子及びその使用に関する。より具体的には、本発明は、TGF-βスーパーファミリー受容体外部ドメイン融合分子及びTGF-βリガンドの中和におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
TGF-βは、細胞の増殖、遊走及び分化を含むいくつかの生理学的プロセスを調節する30を超えるリガンドのスーパーファミリーの一部である。それらのレベル及び/又はシグナル伝達の摂動は、重大な病理学的な影響を引き起こす。例えば、TGF-β及びアクチビンリガンドは、癌を含む多くの疾患で重要な病原性の役割を果たす((Hawinkels & Ten Dijke, 2011; Massague et al, 2000; Rodgarkia-Dara et al, 2006)。特に、TGF-βは、腫瘍進行の重要な調節因子と考えられており、ほとんどの腫瘍タイプで過剰発現される。上皮腫瘍細胞に上皮間葉転換を誘導することにより、腫瘍形成を促進し、積極的な転移をもたらす(Thiery et al, 2009)。TGF-βはまた、腫瘍微小環境における免疫応答の強力な抑制因子として作用することにより、腫瘍形成を促進する(Li et al, 2006)。実際に、TGF-βは、腫瘍微小環境に存在する最も強力な免疫抑制因子の1つとして認識される。TGF-βは、樹状細胞、マクロファージ、NK細胞、好中球、B細胞及びT細胞等を含む多くの免疫細胞タイプの分化、増殖及び生存を妨げる。従って、自然免疫と適応免疫の両方を調節する(Santarpia et al, 2015; Yang et al, 2010)。腫瘍微小環境におけるTGF-βの重要性は、いくつかの腫瘍タイプ(黒色腫、肺、膵臓、結腸直腸、肝臓及び乳房を含む)で、TGF-βリガンドレベルの上昇が疾患の進行及び再発、転移、並びに死亡と相関していることを示す証拠によって強調される。従って、TGF-β阻害を含む抗腫瘍治療アプローチの考案に多大な努力が注がれてきた(Arteaga, 2006; Mourskaia et al, 2007; Wojtowicz-Praga, 2003)。これらのアプローチには、TGF-βリガンドに結合又は「トラップ」するTGF-β受容体外部ドメインに基づくポリペプチドの融合の使用が含まれる(WO01/83525; WO2005/028517; WO2008/113185; WO2008/157367; WO2010/003118; WO2010/099219; WO2012/071649; WO2012/142515; WO2013/000234; US5693607; US2005/0203022; US2007/0244042; US8318135; US8658135; US8815247; US2015/0225483; 及びUS2015/0056199参照)。
【0003】
TGF-β機能を阻害する治療薬を開発する1つのアプローチは、抗体又は可溶性デコイ受容体(受容体外部ドメイン(ECD)ベースのリガンドトラップとも称される)を使用してリガンドを結合及び隔離し、これによって、リガンドの細胞表面受容体へのアクセスを遮断することであった(Zwaagstra et al, 2012)。一般に、受容体ECDベースのトラップは、広範囲のリガンドを隔離することができ、タンパク質工学アプローチを使用して最適化され得る治療薬のクラス(class)である(Economides et al, 2003; Holash et al, 2002; Jin et al, 2009)。
【0004】
以前は、新規のタンパク質工学デザイン戦略は、アビディティ効果によりリガンドのTGF-βスーパーファミリーのメンバーを強力に中和することができる単鎖、二価TGF-βII型受容体外部ドメイン(TβRII-ECD)トラップを生成するために用いられた(Zwaagstra et al, 2012) [WO 2008/113185; WO 2010/031168])。この場合、二価性は、TβRII-ECDの構造化されたリガンド結合ドメインに隣接する天然変性領域(IDR)の領域を使用して2つのTβRII外部ドメインの共有結合を介して達成された。これら単鎖二価トラップの例、T22d35は、一価の非改変TβRII外部ドメインよりも~100倍高いTGF-β中和能を示したが、二価トラップは、TGF-β2アイソタイプを中和せず、循環半減期は、比較的短かった。
【0005】
強化された効力等の向上した特性を持つTβRII-ECDベースのトラップを提供することは有用であろう。
【0006】
出願全体を通して参照される全ての特許、特許出願、及び出版物は、以下に示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO/1995/04069
【特許文献2】WO/2004/076670
【特許文献3】WO 2008/113185
【特許文献4】WO 2010/031168
【特許文献5】US8815247
【特許文献6】US62777375
【特許文献7】US2015/0225483
【特許文献8】WO01/83525;
【特許文献9】WO2005/028517;
【特許文献10】WO2008/113185;
【特許文献11】WO2008/157367;
【特許文献12】WO2010/003118;
【特許文献13】WO2010/099219;
【特許文献14】WO2012/071649;
【特許文献15】WO2012/142515;
【特許文献16】WO2013/000234;
【特許文献17】US5693607;
【特許文献18】US2005/0203022;
【特許文献19】US2007/0244042;
【特許文献20】US8318135;
【特許文献21】US8658135;
【特許文献22】US8815247;
【特許文献23】US2015/0225483;
【特許文献24】US2015/0056199
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Arteaga CL (2006) Inhibition of TGFβeta signaling in cancer therapy. Curr Opin Genet Dev 16: 30-37
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【非特許文献3】Durocher Y, Perret S, Kamen A (2002) High-level and high-throughput recombinant protein production by transient transfection of suspension-growing human 293-EBNA1 cells. Nucleic Acids Res 30: E9
【非特許文献4】Economides AN, Carpenter LR, Rudge JS, Wong V, Koehler-Stec EM, Hartnett C, Pyles EA, Xu X, Daly TJ, Young MR, Fandl JP, Lee F, Carver S, McNay J, Bailey K, Ramakanth S, Hutabarat R, Huang TT, Radziejewski C, Yancopoulos GD, Stahl N (2003) Cytokine traps: multi-component, high-affinity blockers of cytokine action. Nat Med 9: 47-52
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【非特許文献23】Zwaagstra JC, Sulea T, Baardsnes J, Lenferink AE, Collins C, Cantin C, Paul-Roc B, Grothe S, Hossain S, Richer LP, L'Abbe D, Tom R, Cass B, Durocher Y, O'Connor-McCourt MD (2012) Engineering and therapeutic application of single-chain bivalent TGF-beta family traps. Mol Cancer Ther 11: 1477-1487
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1A/Bは、TGF-βII型受容体外部ドメイン(TβRII-ECD; T2mとも略記)及び2つのT2mドメインの単一鎖融合(T22d35とも略記)(
図1A)の略図であり;
図1Bは、対応するアミノ酸配列を提供し、ここで、天然リンカー配列(配列番号6、配列番号7、配列番号8)に下線が引かれ、TβRII構造化ドメインの配列(配列番号4)が太字で示される。
【
図2A-C】
図2A/B/Cは、融合タンパク質T2m-Fc(2B)及びT22d35-Fc(2C)を生成するためのIgG2 Fc領域(2A)の重鎖のN末端へのT2m及びT22d35モジュールの融合の概略図である;
図2Dは、T2m-Fc及びT22d35-Fc融合タンパク質のアミノ酸配列(配列番号9、配列番号10)を提供する。
図2Eは、T22d35-Fc融合体のFcとECD領域の間のリンカー領域の追加のバリアントのアライメント配列を提供する。
図2F及び2Gは、ヒトIgG1 Fc(
図2F; 配列番号14、配列番号17、配列番号20)及びヒトIgG2 Fc領域(
図2G; 配列番号23)を使用したT22d35-Fcリンカーバリアントのアミノ酸配列を提供する。天然のリンカー配列(配列番号6、配列番号7、配列番号8)には下線が引かれ、TβRII構造化ドメインの配列(配列番号4)は、太字で示され、ヒトIgG Fc配列バリアント(配列番号12、配列番号15、配列番号18、配列番号24)は、太字斜体で示される。
図2F及び2Gは、ヒトIgG1 Fc(
図2F; 配列番号14、配列番号17、配列番号20)及びヒトIgG2 Fc領域(
図2G; 配列番号23)を使用したT22d35-Fcリンカーバリアントのアミノ酸配列を提供する。
【
図2D】
図2A/B/Cは、融合タンパク質T2m-Fc(2B)及びT22d35-Fc(2C)を生成するためのIgG2 Fc領域(2A)の重鎖のN末端へのT2m及びT22d35モジュールの融合の概略図である;
図2Dは、T2m-Fc及びT22d35-Fc融合タンパク質のアミノ酸配列(配列番号9、配列番号10)を提供する。
図2Eは、T22d35-Fc融合体のFcとECD領域の間のリンカー領域の追加のバリアントのアライメント配列を提供する。
図2F及び2Gは、ヒトIgG1 Fc(
図2F; 配列番号14、配列番号17、配列番号20)及びヒトIgG2 Fc領域(
図2G; 配列番号23)を使用したT22d35-Fcリンカーバリアントのアミノ酸配列を提供する。天然のリンカー配列(配列番号6、配列番号7、配列番号8)には下線が引かれ、TβRII構造化ドメインの配列(配列番号4)は、太字で示され、ヒトIgG Fc配列バリアント(配列番号12、配列番号15、配列番号18、配列番号24)は、太字斜体で示される。
図2F及び2Gは、ヒトIgG1 Fc(
図2F; 配列番号14、配列番号17、配列番号20)及びヒトIgG2 Fc領域(
図2G; 配列番号23)を使用したT22d35-Fcリンカーバリアントのアミノ酸配列を提供する。
【
図2E】
図2A/B/Cは、融合タンパク質T2m-Fc(2B)及びT22d35-Fc(2C)を生成するためのIgG2 Fc領域(2A)の重鎖のN末端へのT2m及びT22d35モジュールの融合の概略図である;
図2Dは、T2m-Fc及びT22d35-Fc融合タンパク質のアミノ酸配列(配列番号9、配列番号10)を提供する。
図2Eは、T22d35-Fc融合体のFcとECD領域の間のリンカー領域の追加のバリアントのアライメント配列を提供する。
図2F及び2Gは、ヒトIgG1 Fc(
図2F; 配列番号14、配列番号17、配列番号20)及びヒトIgG2 Fc領域(
図2G; 配列番号23)を使用したT22d35-Fcリンカーバリアントのアミノ酸配列を提供する。天然のリンカー配列(配列番号6、配列番号7、配列番号8)には下線が引かれ、TβRII構造化ドメインの配列(配列番号4)は、太字で示され、ヒトIgG Fc配列バリアント(配列番号12、配列番号15、配列番号18、配列番号24)は、太字斜体で示される。
図2F及び2Gは、ヒトIgG1 Fc(
図2F; 配列番号14、配列番号17、配列番号20)及びヒトIgG2 Fc領域(
図2G; 配列番号23)を使用したT22d35-Fcリンカーバリアントのアミノ酸配列を提供する。
【
図2F】
図2A/B/Cは、融合タンパク質T2m-Fc(2B)及びT22d35-Fc(2C)を生成するためのIgG2 Fc領域(2A)の重鎖のN末端へのT2m及びT22d35モジュールの融合の概略図である;
図2Dは、T2m-Fc及びT22d35-Fc融合タンパク質のアミノ酸配列(配列番号9、配列番号10)を提供する。
図2Eは、T22d35-Fc融合体のFcとECD領域の間のリンカー領域の追加のバリアントのアライメント配列を提供する。
図2F及び2Gは、ヒトIgG1 Fc(
図2F; 配列番号14、配列番号17、配列番号20)及びヒトIgG2 Fc領域(
図2G; 配列番号23)を使用したT22d35-Fcリンカーバリアントのアミノ酸配列を提供する。天然のリンカー配列(配列番号6、配列番号7、配列番号8)には下線が引かれ、TβRII構造化ドメインの配列(配列番号4)は、太字で示され、ヒトIgG Fc配列バリアント(配列番号12、配列番号15、配列番号18、配列番号24)は、太字斜体で示される。
図2F及び2Gは、ヒトIgG1 Fc(
図2F; 配列番号14、配列番号17、配列番号20)及びヒトIgG2 Fc領域(
図2G; 配列番号23)を使用したT22d35-Fcリンカーバリアントのアミノ酸配列を提供する。
【
図2G】
図2A/B/Cは、融合タンパク質T2m-Fc(2B)及びT22d35-Fc(2C)を生成するためのIgG2 Fc領域(2A)の重鎖のN末端へのT2m及びT22d35モジュールの融合の概略図である;
図2Dは、T2m-Fc及びT22d35-Fc融合タンパク質のアミノ酸配列(配列番号9、配列番号10)を提供する。
図2Eは、T22d35-Fc融合体のFcとECD領域の間のリンカー領域の追加のバリアントのアライメント配列を提供する。
図2F及び2Gは、ヒトIgG1 Fc(
図2F; 配列番号14、配列番号17、配列番号20)及びヒトIgG2 Fc領域(
図2G; 配列番号23)を使用したT22d35-Fcリンカーバリアントのアミノ酸配列を提供する。天然のリンカー配列(配列番号6、配列番号7、配列番号8)には下線が引かれ、TβRII構造化ドメインの配列(配列番号4)は、太字で示され、ヒトIgG Fc配列バリアント(配列番号12、配列番号15、配列番号18、配列番号24)は、太字斜体で示される。
図2F及び2Gは、ヒトIgG1 Fc(
図2F; 配列番号14、配列番号17、配列番号20)及びヒトIgG2 Fc領域(
図2G; 配列番号23)を使用したT22d35-Fcリンカーバリアントのアミノ酸配列を提供する。
【
図3】
図3A/B/Cは、T2m-Fc融合タンパク質(3A)の分取SEC溶出プロファイルを示す; 画分(Fr.)6-11は、プールされ濃縮された。次いで、SEC精製物のタンパク質の完全性が、UPLC-SECプロファイル(3B)及び非還元(NR)及び還元(R)条件下(3C)でのSDS-PAGE評価によって評価された。
【
図4】
図4A/B/Cは、T22d35-Fc融合タンパク質(4A)の分取SEC溶出プロファイルを示す; Fr.7-10が、プールされ濃縮された。次いで、SEC精製物のタンパク質の完全性が、UPLC-SECプロファイル(4B)及び非還元(NR)及び還元(R)条件下(4C)でのSDS-PAGE評価によって評価された。
【
図5】
図5A/Bは、プロテインA精製T22d35-Fc、T22d35-Fc-IgG2-v2(CC)、T22d35-Fc-IgG1-v1(CC)、T22d35-Fc-IgG1-v2(SCC)、T22d35-Fc-IgG1-v3(GSL-CC)、hIgG1FcΔK(C)-T22d35、hIgG1FcΔK(CC)-T22d35及びhIgG2FcΔK(CC)-T22d35バリアントの非還元(A)及び還元(B)条件下のSDS-PAGE分析を提供する。
【
図6】
図6A/B/Cは、さまざまな融合タンパク質の完全なモノマー(A)、凝集体(B)、及びフラグメント(C)の割合を提供し、これは、IgG Fc部分のN末端にT22d35ダブレットを発現させることに利点があることを示唆する。表には、分析されたパラメーターの数値の違いがリストされる。
【
図7】
図7A/B/Cは、A549 IL-11放出アッセイにおける非Fc融合単一鎖T22d35トラップと比較したT2m-Fc及びT22d35-Fc融合タンパク質の機能的評価を提供する。TGF-β1(5A)、-β2(5B)、-β3(5C)の中和が評価され、TGF-βコントロールの%として計算された(3回の実験の平均+/-SD)。表には、Graphpad Prism(4-PLアルゴリズム((log (阻害剤) vs.レスポンス-可変スロープ(4つのパラメーター))で計算されたIC
50の計算値が記載される。
【
図8】
図8は、A549 IL-11放出アッセイにおけるC末端Fc融合T22d35トラップバリアントと比較した、T22d35-Fc、T22d35-Fc-IgG2-v2(CC)、T22d35-Fc-IgG1-v1(CC)、T22d35-Fc-IgG1-v2(SCC)、及びT22d35-Fc-IgG1-v3(GSL-CC)の機能的評価を提供する。TGF-β1の中和が評価され、TGF-β1コントロールの%として計算された(3回の実験の平均+/-SD)。
【
図9】
図9は、A549 IL-11放出アッセイにおけるT22d35-Fc-IgG-v1(CC)バリアントによる中和TGF-β1、-β2、及びβ3の機能的評価を提供する。TGF-β中和は、TGF-βコントロールの%として評価及び計算された(3回の実験の平均+/-SD)。表には、Graphpad Prism(4-PL アルゴリズム((log (阻害剤) vs.レスポンス-可変スロープ(4つのパラメーター)で計算されたIC
50の計算値が記載される。
【
図10】
図10は、同系MC-38マウス大腸癌モデルにおけるT22d35-Fc融合タンパク質の機能的in vivo評価である。(A)記載されるように腫瘍体積を計算し、コホート当たりの平均腫瘍値+/-SDとしてプロットされた。2元配置分散分析が、用いられ、T22d35-Fcの計算された平均腫瘍体積及びCTL IgG治療コホートの経時的な統計的有意差が時間経過とともに生じるか否かが分析された。加えて、CTL IgG(B)及びT22d35-Fc治療コホート(C)について、個々のマウスごとにMC-38腫瘍成長(計算体積)がプロットされた。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、TGFβを阻害する効力が強化されたポリペプチドコンストラクトを提供する。
【0011】
本発明のポリペプチドコンストラクトは、第1の領域及び第2の領域を含み、ここで前記第1の領域は、第1及び/又は第2のTGFβ受容体外部ドメイン(ECD)を含み; 前記第2の領域は、抗体重鎖の第2定常ドメイン(CH2)及び/又は第3の定常ドメイン(CH3)を含む。好ましい非限定的な実施形態において、前記第1の領域のC末端は、前記第2の領域のN末端に連結される。好ましい非限定的な実施形態において、前記ポリペプチドコンストラクトの前記第1の領域は、第1のTβRII-ECD(ECD1)及び/又は第2のTβRII-ECD(ECD2)を含み、ここで、ECD1及びECD2は、タンデムに連結される。
【0012】
そのC末端で抗体定常ドメインと連結された(TβRII-ECD)-(TβRII-ECD)ダブレット(doublet)を含む第1の領域が、そのC末端で抗体定常ドメインと連結された単一TβRII-ECD(すなわち、第2のECDが存在しない場合、ここでは、シングレット(singlet)とも称される)を有する対応するコンストラクトよりも少なくとも600倍高い効力でTGFβ活性を阻害する、ポリペプチドコンストラクトを提供した。
【0013】
提供されたポリペプチドコンストラクトは、第1のECDにタンデムに連結された第2のTGFβ受容体外部ドメインを含み、ここで、抗体定常ドメインに連結されたポリペプチドコンストラクト(すなわち、ECDダブレットコンストラクト)は、抗体定常ドメインが存在しない(すなわち、ECDダブレットコンストラクト、本明細書において非Fc融合ダブレットとも称される)対応するコンストラクトよりも少なくとも100、200、300、400、500、600、700、800、又は900倍高いTGFβ中和(阻害)を示す。
【0014】
TβRII-ECD及びそれらがTGF-β活性を阻害する効力に関連して、それらの構成を慎重に選択すると驚くほど強化された効能が得られることが見出されている。これは、特定のTβRII-ECDが、タンデムに連結され、及びそのC末端が、抗体定常ドメイン(Fc)のN末端に連結される場合に起こる。各ポリペプチドの定常ドメイン間のシステイン架橋を介して架橋された2つのそのようなポリペプチドを含む融合及び二量体形態の場合、2つの「アーム(arm)」のそれぞれに2つのTβRII-ECD(ECD「ダブレット(doublet)」)を有する結果として生じるいわゆる「Fc融合」は、2つの「アーム」のそれぞれに1つの外部ドメインを有する「Fc融合」と比較して、とりわけ、ヒト非小細胞肺癌(NSCLC)A549細胞によるTGF-β1及び-β3誘導性IL-11分泌の阻害によって示されるように、TGF-β1で600倍超、TGF-β3で20倍超の阻害活性を示し得る。Fc領域を欠くか、第2のECDを欠く(つまり、ECD「シングレット」)何れかの対応するものと比較して、効力の増強は明らかである。効力の増強は、Fc融合シングレットよりもFc融合ダブレットの方が少なくとも100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、又は600倍高い。効力の増強は、Fc融合ダブレットが、非Fc融合ダブレットよりも少なくとも100、200、300、400、500、600、700、800、900倍及び約1000倍高い。Fc領域を欠く(Fc融合ダブレットT22d35は、非Fc融合ダブレットよりもTGF-β1及びTGF-β3でそれぞれ972倍及び243倍優れている)か、第2のECDを欠く(ECD「シングレット」; Fc融合ダブレットT22d35-Fcは、非FcダブレットよりもTGF-β1及びTGF-β3でそれぞれ615倍及び24倍優れている)対応するものと比較して、効力の増強は明らかである。より具体的には、Fc-ダブレット(T22d35-Fc)は、非Fc融合ECDダブレットと比較して、TGF-β1で少なくとも970倍、TGF-β3で少なくとも240倍の効力の増強を示す。さらに、Fc-ダブレット(T22d35-Fc)は、Fc-シングレット(T2m-Fc)と比較して、TGF-β1で少なくとも600倍、TGF-β3で少なくとも20倍高い効力の増強を示す。
【0015】
一般的な側面では、タンデムに連結された少なくとも2つのTβRII-ECDを含むポリペプチドコンストラクト(すなわち、ECDダブレット)、及び少なくとも、抗体重鎖の第2の定常ドメイン(CH2)及び/又は第3の定常ドメイン(CH3)を含む抗体定常ドメインが提供され、ここで、外部ドメインのC末端は、抗体定常ドメインのN末端に連結される。この形態では、コンストラクトは、単一鎖ポリペプチドである。従って、抗体定常ドメインは、CH2ドメインのみを含み得、又はCH2ドメイン及びCH3ドメインを含み得る。
【0016】
実施形態において、ポリペプチドは、2つの単一鎖ポリペプチド及び鎖を共有結合する架橋手段を含む、二量体融合ポリペプチドとして提供される。
【0017】
他の実施形態において、2つの外部ドメインは、一般にそれらの結合標的及び/又はそれら標的種に関して同一である。
【0018】
好ましい実施形態において、第1の領域は、2つのTGFβ受容体外部ドメイン(TGFβR-ECD又は「TβR-ECD」)を含む。好ましい実施形態において、TβR-ECDは、TGF-β受容体II型外部ドメイン(TβRII-ECD)である。好ましい実施形態において、TβR-ECDは、配列番号1、及びそれと実質的に同一の配列を含む。
【0019】
第2の領域は、配列番号12、配列番号15、配列番号18、配列番号24からなる群から選択される配列、及びそれと実質的に同一の配列を含み得る。
【0020】
好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドコンストラクトの第2の領域は、CH1をさらに含み得る。実施形態において、コンストラクトは、単機能性である。
【0021】
本発明のポリペプチドコンストラクトは、ヒト起源の抗体重鎖を活用する。好ましい実施形態において、抗体重鎖は、ヒトIgG1(配列番号15)及びIgG2(配列番号24)からなる群から選択される。
【0022】
従って、他の態様において、本発明によるポリペプチドコンストラクトが提供され、コンストラクトは、二量体ポリペプチドであり; ここで、二量体ポリペプチドは、以下を含む:
(i)抗体重鎖の第2の定常ドメイン(CH2)及び第3の定常ドメイン(CH3)を含む第2の領域を含む第1の単一鎖ポリペプチド、及び2つのTGF-β受容体外部ドメイン(TβRII-ECD)を含む第1の領域、ここで、第1の領域のC末端が、第2の領域のN末端に連結される、及び
(ii)抗体重鎖の第2の定常ドメイン(CH2)及び第3の定常ドメイン(CH3)を含む第2の領域を含む第2の単一鎖ポリペプチド、及びタンデムに連結された2つのTGF-β受容体外部ドメイン(TβRII-ECD)を含む第1の領域、ここで、第1の領域のC末端は、第2の領域のN末端に連結され、第1の単一鎖ポリペプチドは、第2の単一鎖ポリペプチドと架橋される。
【0023】
本発明の何れかのポリペプチドコンストラクトをコードする核酸分子も提供される。本発明の核酸分子を含むベクターも提供される。
【0024】
本発明の1つ又は複数の独立に選択されたポリペプチドコンストラクト及び医薬的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を含む組成物も提供される。
【0025】
本発明の核酸分子又はベクターを含むトランスジェニック細胞宿主も提供される。トランスジェニック細胞宿主は、第2のポリペプチドコンストラクトが、第1のポリペプチドコンストラクトと同じ又は異なる場合、第2のポリペプチドコンストラクトをコードする第2の核酸分子又は第2のベクターをさらに含み得る。2つのポリペプチドコンストラクトが異なる場合(ヘテロ二量体)、必然的に第2の核酸分子又は第2のベクターが存在するが、コンストラクトが同一の場合(ホモ二量体)、必然的ではない。
【0026】
医学的病状、疾患又は障害の治療のための本発明によるポリペプチドコンストラクトの使用も提供され; ここで、医学的病状、疾患又は障害は、限定されないが、癌、眼疾患、線維性疾患、又は結合組織の遺伝的障害及び免疫障害を含む。
【0027】
本発明のペプチドコンストラクトは、ヒト起源の抗体重鎖からのCH2及びCH3又はCH2のみを含み得る。例えば、限定することを望まないが、抗体重鎖は、ヒトIgG1及びIgG2からなる群から選択され得る。実施形態において、コンストラクト中の定常ドメインは、それ自体がCH2、又はそれ自体がCH3、又はCH2-CH3である。適切には、抗体重鎖成分は、同一又は異なる単一鎖ポリペプチドコンストラクト間のジスルフィド結合を提供する。同様に、適切には、抗体重鎖は、宿主細胞により産生される二量体ポリペプチドのプロテインAベースの単離を提供する。
【0028】
実施形態において、受容体外部ドメイン領域は、タンデムに、すなわち直線的に連結された、独立して選択された2つの外部ドメインを含む。いくつかの実施形態において、外部ドメインは、それらの標的リガンドに関して配列が同一であるか、又は少なくとも同一である。
【0029】
本発明はまた、本明細書に記載のポリペプチドコンストラクトをコードする核酸分子を提供する。上記の核酸分子を含むベクターもまた、本発明に含まれる。本発明はまた、本明細書に記載の核酸分子又はベクターを含むトランスジェニック細胞宿主も含み; 当該細胞宿主は、第1のポリペプチドコンストラクトとは異なる第2のポリペプチドコンストラクトをコードする第2の核酸分子又は第2のベクターをさらに含み得る。本発明のポリペプチドを産生するために使用されるシステムは、特に、ジスルフィド架橋を介した二量体化が必要な場合の分泌システムであり得、従って、発現ポリヌクレオチドは、培養培地への分泌時に宿主によって切断される分泌シグナルをコードする。
【0030】
本明細書に記載の1つ又は複数の独立に選択されたポリペプチドコンストラクト及び医薬的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を含む組成物も本発明に含まれる。
【0031】
本発明のこれら及び他の特徴は、添付の図面を参照して、例として以下に説明される。
【0032】
本発明の追加の態様及び利点は、以下の説明を考慮することで明らかになるであろう。詳細な説明及び実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、本発明の範囲内の様々な変更及び修正が当業者に明らかになるため、例示としてのみ与えられる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
発明の詳細な説明
現在、全てのトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β1、β2及びβ3)アイソフォームに結合して中和するポリペプチドコンストラクトが提供されている。これらのポリペプチドは、TGF-β受容体外部ドメインを利用して、TGF-β1及びTGF-β3を含む様々なTGFβ種をトラップ又は隔離し、TGF-β2をある程度拡張する。本発明のポリペプチドコンストラクトが、TGF-β1及び-β3を中和する効力は、本明細書で実証されるように、関連するコンストラクトよりも驚くほどはるかに高い。この理由から、本コンストラクトは、癌、線維性疾患及び特定の免疫障害等の医学的適応症の治療のための医薬品として特に有用であると予想される。
【0034】
本ポリペプチドコンストラクトは、TβRII-ECD等の2つのTβR-ECDを含み、これらはタンデム(C末端からN末端)に連結され、抗体重鎖の少なくとも第2の定常ドメイン(CH2)及び/又は第3の定常ドメイン(CH3)を含む抗体定常ドメインをさらに含む。抗体定常ドメイン(Fc)は、そのN末端で外部ドメインのC末端に結び付けられる。外部ドメインをダブレットとして使用し、そのダブレットを抗体定常ドメインのN末端に結び付けると、抗体定常ドメインのN末端に結び付けられた単一ECDを有するコンストラクトと比較して、TGFβ1に対して615倍、TGFβ3に対して24倍増強された中和効力を有する「トラップ」を提供する。
【0035】
本明細書で使用する場合、用語TβRII-ECDは、TGF-βリガンドに結合するTGF-βII型受容体の細胞外領域を指す。本コンストラクトの好ましい実施形態において、TGFβRII-外部ドメインは、安定な三次元折り畳み構造を形成する配列を含むTGFβR種の外部ドメイン(すなわち、TβRII-ECD)である:
QLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIF (配列番号4)。
【0036】
フレキシブル天然フランキング配列を含む関連する形態において、以下に示すように、ECDには下線付きの構造を含めることができる:
IPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPD (配列番号1)。
【0037】
この配列は、TGF-β1及びTGF-β3と称されるTGF-βリガンドアイソタイプに結合する。TGF-β2の結合親和性は、低い。
【0038】
本発明のポリペプチドコンストラクトにおいて、2つのTβRII-ECDは、同じ配列を含み得る。2つの外部ドメインは、タンデムに連結されており、その結果、1つの外部ドメインのC末端が、他の外部ドメインのN末端に連結されている線形ポリペプチドが得られる。
【0039】
追加のアミノ酸残基が導入されないように、2つの外部ドメインは直接融合によって連結され得る。あるいは、追加のアミノ酸残基は、2つの受容体外部ドメインをタンデムに結び付けるリンカーを形成することができる。本発明のタンパク質コンストラクトにおいて、本発明のポリペプチドコンストラクトの第1及び第2の領域も連結される。「連結される(linked)」という用語は、2つの領域が共有結合していることを意味する。化学結合は、化学反応によって達成され得、又は単一ポリペプチド鎖の2つの領域の組換え発現産物であり得る。特定の非限定的な例において、第1の領域のC末端は、第2の領域のN末端に直接連結される、すなわち、2つの領域の間に追加の「リンカー(linker)」アミノ酸は、存在しない。リンカーが存在しない場合、つまり、2つの領域の直接的な融合の場合、完全な外部ドメインのC末端と抗体定常領域CH2-CH3のN末端の間の直接の連結となる。配列番号8の内因性障害リンカーを介して配列番号1にFcバリアント(配列番号12、配列番号15、配列番号18、配列番号24)を融合することで、これは、配列番号1を有するTβRII-ECDの一部であり(すなわち、追加の「リンカー」アミノ酸は加えられていない)、それは、配列番号1の最後の位置にあるアスパラギン酸を、グルタミン酸、スレオニン、バリン又は配列番号12、配列番号15、配列番号18、配列番号24で見出されるバリンのそれぞれに接続する。
【0040】
融合コンストラクトを産生する際の一般的な慣行は、GGGGS又は[G4S]n(nは、1、2、3、4又は5より多く、例えば10、25又は50)等のグリシン-セリンリンカー(GSL)を融合コンポーネント間に導入することである。上記の段落で教示されるように、本発明のポリペプチド融合体は、Fc領域及び受容体外部ドメイン領域に存在するものを除いて、何れかの追加のアミノ酸配列を使用せずに直接連結により産生され得る。従って、外来配列をリンカーとして利用することを控えることができ、望ましくない免疫原性に対する潜在力(potential)及び分子量の追加による利点を提供する。エントロピー因子はまた、グリシン及びグリシン-セリンリンカーの潜在的な妨げであり、これは、フレキシブルが高く、標的結合時に部分的に制限されるため、結合親和性に好ましくないエントロピーの損失を引き起こす。従って、本発明の実施形態において、TGFβRII-ECDのフレキシブル、天然変性(intrinsically disordered)N末端領域のみが、天然リンカーとして使用された。しかしながら、これらの天然変性リンカー(例えば、配列番号6、配列番号7、配列番号8)の特定のアミノ酸組成及び長さは、結果として生じる直接融合コンストラクトが、それら意図された二量体リガンドへの正しい結合に必要な形状及び好ましい分子相互作用を持つか否かの正確な予測を妨げた。他の実施形態において、融合ポリペプチドは、配列番号20のコンストラクトに例示されているようなフレキシブル人工GSLを含むことができ、ここで、配列番号21のGSリンカーが、配列番号1を有するTβRII-ECDの最後の位置でのアスパラギン酸(D)と配列番号15を有するFc領域バリアントの最初の位置でのスレオニン(T)の間に導入される。
【0041】
実施形態において、ポリペプチドコンストラクトの第1及び第2の領域は、配列番号8、13、16、19、25、及びそれらと実質的に同一の配列からなる群から選択される天然の天然変性ポリペプチドリンカーにより接続される。他の実施形態において、ポリペプチドコンストラクトの領域は、配列番号21及び配列番号22、及びそれらと実質的に同一の配列からなる群から選択されるフレキシブルリンカーによって接続される。
【0042】
この実施形態において、本ポリペプチドコンストラクトの1つの領域は、配列番号6の天然の天然変性ポリペプチドリンカーによってタンデムに連結された第1及び第2の受容体外部ドメインを含み、以下のアミノ酸配列を有するTβRII-ECDダブレットを含む:
PPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPD (配列番号5)。
【0043】
本コンストラクトはまた、少なくとも抗体重鎖の第2の定常ドメイン(CH2)及び/又は第3の定常ドメイン(CH3)を含む抗体定常ドメインを含む領域を含む。抗体の定常ドメインは、そのN末端で外部ドメインダブレットのC末端に結合しているため、コンストラクトの方向は、TβRII-ECD(連結)TβRII-ECD(連結)CH2-CH3の単一鎖となる。
【0044】
抗体定常ドメインは、2つの本ポリペプチドコンストラクト間の架橋を付与する。これは、発現されたポリペプチドコンストラクトが、それら発現宿主から分泌される際に達成される。従って、単一鎖ポリペプチドの産生は、2つのコンストラクトが、各コンストラクトに存在する各抗体定常ドメイン内の1つ以上のシステイン残基を含むジスルフィド結合を介して架橋される二量体形態のコンストラクトを提供する。
【0045】
コンストラクト中に存在する抗体定常ドメインは、IgG定常領域、特にIgG1又はIgG2の何れかの定常ドメインに由来することが好ましい。
【0046】
提供されるコンストラクトは、ポリペプチドコンストラクトの二量体が形成できる構造として作用する以外に、定常領域自体が特定の活性を有しないという意味で単機能性である。これらの最小定常領域は、対応するヒンジ領域を組み込み、必要に応じてシステイン残基組成を変更することにより、いくつかの利点を提供するために改変され得る。従って、2つのFcフラグメントの架橋に関与するシステイン残基の一部又は全部、又は完全長抗体の重鎖と軽鎖の間を架橋するために自然に使用されるシステイン残基は、置換又は削除され得る。システイン残基の数を最小限に抑えることの1つの利点は、凝集を促進する可能性のあるジスルフィド結合スクランブルの経口を減らすことである。例えば、これらのシステイン残基及びその改変物は、ポリペプチドコンストラクトの第1及び第2の領域の連結部の周りに位置する天然又は非天然のリンカー配列に見られ、以下に表される:
SEEYNTSNPDTHTCPPCPAPE (配列番号16)、SEEYNTSNPDVEPKSSDKTHTCPPCPAPE (配列番号19)、SEEYNTSNPDGGGSGGGSGGGTHTCPPCPAPE (配列番号22)ヒトIgG1ヒンジ配列のバリエーションを組み込む; 及びSEEYNTSNPDERKCCVECPPCPAPP (配列番号13) 及びSEEYNTSNPDVECPPCPAPP (配列番号25) ヒトIgG2ヒンジ配列のバリエーションを組み込む; 及びそれらと実質的に同一の配列。
【0047】
Fcホモ二量体の安定性は、分子間ジスルフィド結合の数に依存し得ることに注意する一方で、Fcホモ二量体化が起こるために、自然に発生するヒンジ間ジスルフィド結合の全てが形成される必要はない。
【0048】
本開示において、当該技術分野で「免疫グロブリン」(Ig)とも呼ばれる「抗体」とは、重及び軽ポリペプチド鎖対から構成されたタンパク質を指す。本明細書に要約されているが、抗体及び各ドメインの構造は、十分に確立されており、当業者によく知られている。抗体が正しく折り畳まれると、各鎖は、折り畳まれて、より線形のポリペプチド配列によって連結された多数の異なる球状ドメインンになる; 免疫グロブリン軽鎖は、可変(VL)及び定常(CL)ドメインに折り畳まれ、重鎖は、可変(VH)及び3つの定常(CH1、CH2、CH3)ドメインに折り畳まれる。ペアになると、重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(VH及びVL)と最初の定常ドメイン(CL及びCH1)の相互作用により、結合領域(Fv)を含むFab(フラグメント、抗原結合)が形成される; 2つの重鎖の相互作用により、CH2ドメイン及びCH3ドメインが対になり、Fc(フラグメント、結晶化能)が形成される。CH2及びCH3ドメインについて本明細書に記載される特徴は、Fcにも該当する。
【0049】
本発明及びその特定の実施形態において、有意に増強された効力を示すポリペプチドコンストラクトは、以下を含む:
T22d35-Fc:
IPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDISVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG (配列番号10)
T22d35-Fc-IgG2-v2(CC):
IPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDISVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG (配列番号23)
T22d35-Fc-IgG1-v1(CC):
IPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG (配列番号14)
T22d35-Fc-IgG1-v2(SCC):
IPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDVEPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG (配列番号17); 及び
T22d35-Fc-IgG1-v3(GSL-CC):
IPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDGGGSGGGSGGGTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG (配列番号20)。
【0050】
特定の実施形態において、ポリペプチドコンストラクトは、有意に増強された効力を示す本発明のポリペプチドを含む。例えば、有意に増強された効力を示すポリペプチドは、配列番号10、配列番号14、配列番号17、配列番号20又は配列番号23を含み得る。他の特定の実施形態において、ポリペプチドコンストラクトは、有意に増強された効力を示すポリペプチドを含むホモ二量体であり得る; 例えば、有意に増強された効力を示すポリペプチドコンストラクトが、配列番号14である場合、ポリペプチドコンストラクトは、各ポリペプチドコンストラクトが配列番号14を含む2つのポリペプチドコンストラクトを含むホモ二量体である。同様に、増強された効力を示すポリペプチドコンストラクトが配列番号10、14、17、20、又は23である場合、本発明のホモ二量体は同様に、ホモ二量体の各ポリペプチドが、配列番号10、14、17、20又は23である2つのポリペプチドコンストラクトを含む。
【0051】
前述のように、これらの単一鎖ポリペプチドコンストラクトは、生産宿主から分泌されると二量体化し、2つの単一鎖ポリペプチドの定常ドメインの間に形成されるジスルフィド結合により連結された2つの単一鎖ポリペプチドを含む二量体ポリペプチドコンストラクトが生じる。
【0052】
「著しく増強された効力」とは、TGF-βの生物学的活性の評価に関連するアッセイで測定した際、この二量体形態の本ポリペプチドコンストラクトの効果又は活性が、対応するコンストラクトよりも大きいことを意味する。この決定を行うための適切な手段が本明細書に例示される。例えば、A549細胞によるTGF-β誘導IL-11放出によって示されるように、N末端Fc融合T22d35ダブレットはTGF-βを中和し、N末端Fc融合T2mシングレットよりもはるかによく拡張する(
図7)。
【0053】
このタイプの融合コンストラクトは、TβRII受容体外部ドメインに基づく分子の他のいくつかのバージョンに比べて利点を有することが観察されており、これは、非Fc融合二価TGF-β受容体外部ドメインコンストラクト(T22d35ダブレット等)及び単一受容体外部ドメインがFc領域のN末端に融合したコンストラクトを含む。特に、現在提供されているFc融合コンストラクトは、Fc領域の存在により製造性が改善されている(例えば、産生がプロテインAクロマトグラフィーを使用して達成され得る)。Fc領域は、循環半減期の改善も可能にする。重要なことに、本コンストラクトは、シングレット融合(T2m-Fc)及び非Fc融合ダブレット外部ドメイン(T22d35)と比較して、実質的に高いTGF-β中和能を有する。提供されたN末端融合TGF-βECDダブレットFcコンストラクト(T22d35-Fc)は、TGF-βリガンド中和能の有意な改善に関して利点を示す(
図7に示すように、例えば、非Fc融合ダブレット比較してTGF-β1中和の970倍超の改善が示される)。さらに、99%を超えるモノマー含有量を示す生物物理学的分析で実証されているように、それらは改善された製造可能性を示す(すなわち、凝集体の最小存在及び精製されたN末端融合T22d35-Fcコンストラクトの断片の非存在)(
図6に示すように)。従って、本発明の利点は、TGF-β2のある程度の中和を含むTGF-βリガンド中和の予想外に高い効力であり、これは、T2m-Fc(Fcシングレット)又はT22d35(非Fc融合)コンストラクトでは観察されない。
【0054】
特定の実施形態において、本発明のポリペプチドコンストラクトの第2の領域は、配列番号12、15、18、24によって例示されるようなN末端配列のバリエーションを示す群から選択される。これらは、Fc領域の二量体化の程度を調節する手段としてヒンジ領域から保持されるシステイン残基の長さ及び数が異なり得、従って、有効性と製造性の両方に影響を与える。従って、実施形態において、ポリペプチドコンストラクトは、定常ドメインのバリエーションを含み、ここで、架橋に関与する少なくとも1つのシステイン残基が削除又は置換される。適切な置換は、セリン又はアラニンを含み、及び好ましくはセリンによる置換を含む。
【0055】
実質的に同一の配列は、培養培地への分泌時に適切な折り畳みをさらに提供する1つ以上の保存的アミノ酸突然変異を含み得る。参考配列に対する1つ以上の保存的アミノ酸突然変異が、参照配列と比較して生理学的、化学的、物理化学的又は機能的特性に実質的な変化のない突然変異ペプチドを生じ得ることは、当該技術分野で周知である; そのような場合、参照配列と突然変異配列は、「実質的に同一」のポリペプチドと見なされるだろう。保存的アミノ酸置換は、本明細書では、類似の化学的性質(例えば、サイズ、電荷、又は極性)を有する他のアミノ酸残基へのアミノ酸残基の置換として定義される。これらの保存的アミノ酸突然変異は、定常ドメインの全体構造を維持しながら、フレームワーク領域に対して作成され得る; 従って、Fcの機能は維持される。
【0056】
特定の非限定的な例において、本発明のポリペプチドコンストラクトの第1の領域は、TGF-β受容体II型、例えば以下:
IPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPD (配列番号1、本明細書ではT2mとも称される).
を含み得る。
【0057】
好ましい実施形態において、ポリペプチドコンストラクトは、TβRII-ECDが他のTβRII-ECDとタンデムに連結されているTβRII-ECD「ダブレット」を含み、これは、外部ドメインが、例えば以下:
IPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIF
-リンカー-
QLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPD
(配列番号5、本明細書ではT22d35とも称される)ここで、非限定的な一実施形態において、リンカーは、配列番号6に対応する; 及びそれと実質的に同一の配列、
等の同一又は異なるTGF-βスーパーファミリー受容体外部ドメインであり得る。「実質的に同一」は、上記定義の通りである。
【0058】
外部ドメインダブレットは、同一又は異なる外部ドメインを組み込むことができ、両方ともTGFβスーパーファミリー受容体ファミリーに属する。実施形態において、外部ドメインは、同一の標的に結合する。他の実施形態において、外部ドメインは、同じ受容体種のものである。他の実施形態において、外部ドメインは、同一であり、従って、ホモマーである。
【0059】
例えば、本発明のポリペプチドコンストラクトは、TGF-β1及びTGF-β3それぞれについてT22d35ダブレット単独よりも強力な、少なくとも900倍及び200倍からなる群から選択されるTGF-β中和効力を有し得る。例えば、IL-11放出アッセイにおいて、T22d35ダブレットコンストラクトは、非Fc融合T22d35ダブレット単独と比較して、TGF-β1の中和が約972倍、TGF-β3の中和が約243倍強力である。
【0060】
他の実施形態において、コンストラクトの効力は、抗体定常ドメインが、ダブレット以外の単一外部ドメインに結びつけられるコンストラクトより、TGF-β1及びTGF-β3それぞれの中和のために少なくとも600倍及び少なくとも20倍高い。本発明のポリペプチドコンストラクトは、抗体定常ドメインがダブレット以外の単一外部ドメインに結び付けられるコンストラクトの効力と比較した場合、TGF-β1及びTGF-β3それぞれに対して少なくとも615倍及び24倍良好な中和効力を有し得る。
【0061】
中和効力は、次のように要約できる: Fc融合ダブレット(ECD-ECD-Fc)の中和効力は、Fc融合ECDモノマー(ECD-Fc)よりも高い; すなわち、ECD-ECD-Fc、ECD-Fcは、非Fc融合ダブレット(ECD-ECD)よりも強力であり、非Fc融合ダブレットECDは、非Fc融合シングレットECDよりも強力であり; すなわち、ECD-ECD-Fc>>ECD-Fc>ECD-ECD>>ECD。製剤性に関して、Fcタンパク質の存在により、プロテインAの精製が可能になり、切断可能なタグを使用する必要がなくなる。加えて、Fc部分のN末端にシングレット又はダブレットECDを配置すると、Fc部分のヒンジ領域のシステイン残基の不適切なペアリングによる凝集の問題が防止される。従って、ECDシングレット又はダブレットのFc部分のN末端への融合により、C末端融合よりも製造性が向上する(N末端融合は、モノマー種の割合が高く、凝集体が少なく、断片が少ない)。加えて、N末端Fc融合T2mシングレットECDと比較して、N末端Fc融合ダブレットECDの全てのTGF-βアイソタイプのTGF-β中和能に予想外の有意な増加が観察される。
【0062】
加えて、本発明のポリペプチドコンストラクトが、TGF-βに結合するTβRII-ECDを含む場合、ポリペプチドコンストラクトは、TGF-βの3つのアイソタイプ全て(すなわち、TGF-β1、TGF-β2、及びTGF-β3)を様々な程度で中和し得る。
【0063】
本発明のポリペプチドコンストラクトは、細胞ベースアッセイで評価されるように、二価のコンパレータポリペプチド、すなわち、非Fc融合T22d35(ダブレットのみ)及びT2m-Fc(Fc融合シングレット)よりも有意に高い(20倍以上)TGF-β中和能を有する。本発明の一連のポリペプチドコンストラクト内で、Fc定常領域のN末端に融合したTβRII-ECDの2つ以上のコピーを含むものは、細胞ベースアッセイで評価されるように、1つのコピーのみを含むコンストラクトよりも高い効力を有する。
【0064】
本発明のポリペプチドコンストラクトは、単一のポリペプチド鎖として発現される。一旦発現されると、本発明のポリペプチドコンストラクトは、二量体を形成し、ここで、それぞれのポリペプチドコンストラクトのCH2及びCH3ドメインが相互作用し、発現産物が培養培地に分泌されるときに生じるような適切に組み立てられたFc領域を形成する。
【0065】
本発明のポリペプチドコンストラクトはまた、組換え抗体又はその断片の発現、検出又は精製を補助する追加の配列を含み得る。当業者に知られているそのような配列又はタグの何れかが用いられ得る。例えば、限定することを望まないが、抗体又はその断片は、標的又はシグナル配列(例えば、限定されないがompA)、検出/精製タグ(例えば、限定されないが、c-Myc、His5、His6、又はHis8G)、又はそれらの組み合わせを含み得る。他の実施例において、シグナルペプチドは、MDWTWRILFLVAAATGTHA(配列番号11)であり得る。さらなる実施例において、追加の配列は、[WO/1995/04069]又は[WO/2004/076670]に記載されているようなビオチン認識部位であり得る。同様に当業者に知られているように、リンカー配列は、追加の配列又はタグと組み合わせて使用され得、又は検出/精製タグとして機能し得る。適切には、定常領域は、プロテインA親和性アプローチを使用して単鎖ポリペプチドを抽出/単離することを可能にするプロテインA結合部位(典型的にCH2とCH3の間近くに存在する)を含む。
【0066】
本発明は、上記の分子をコードする核酸配列も包含する。遺伝子コードの縮重を考慮すると、多くのヌクレオチド配列は、当業者によって容易に理解されるように、所望のポリペプチドをコードする効果を有するだろう。核酸配列は、様々な微生物での発現のためにコドン最適化され得る。本発明は、上記の核酸を含むベクターも包含し得、ここで、ベクターは、典型的に、選択された細胞生産宿主においてその発現を促進するためのコンストラクトをコードするポリヌクレオチドに動作可能に連結されたプロモーター及びシグナル配列を含む。両方が二量体ポリペプチドコンストラクトの分泌をもたらすという条件で、ベクターは同一又は異なり得る。
【0067】
さらに、本発明は、本明細書に記載の核酸及び/又はベクターを含む、トランスジェニック細胞宿主とも称される細胞を包含する。宿主細胞は、第1のポリペプチドコンストラクトとは異なる第2のポリペプチドコンストラクトをコードする第2の核酸及び/又はベクターを含み得る。第1及び第2のポリペプチドコンストラクトの共発現は、ヘテロ二量体の形成をもたらし得る。
【0068】
本発明はまた、本明細書に記載の1つ又は複数のポリペプチドコンストラクトを含む組成物を包含する。組成物は、上記のような単一のポリペプチドコンストラクトを含んでもよく、又はポリペプチドコンストラクトの混合物であってもよい。組成物はまた、1つ又は複数のカーゴ分子に連結された1つ又は複数の本発明のポリペプチドコンストラクトを含み得る。例えば、何れかの方法で限定されることを望まないが、組成物は、本発明による抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を生成するために、細胞傷害性薬物に連結された本発明の1つ又は複数のポリペプチドコンストラクトを含み得る。
【0069】
組成物はまた、医薬的に許容される希釈剤、賦形剤、又は担体を含み得る。希釈剤、賦形剤、又は担体は、当該技術分野で周知の何れかの適切な希釈剤、賦形剤又は担体であり得、組成物の他の成分、組成物の送達方法と適合性がなければならず、組成物の受領者に有害なものではない必要がある。組成物は、何れかの適切な形態であり得る; 例えば、組成物は、懸濁液形態、粉末形態(例えば、凍結乾燥又はカプセル化に限定される)、カプセル又は錠剤形態で提供され得る。例えば、限定することを望まないが、組成物が、懸濁形態で提供される場合、担体は、水、生理食塩水、適切な緩衝液、又は溶解性及び/又は安定性を改善するための添加物を含み得る; 懸濁液を産生するための再構成は、抗体又はその断片の生存率を確保するために、適切なpH緩衝液で行われる。乾燥粉末は、安全性を改善するための添加剤、及び/又はバルク/容量を増加させるための担体も含み得る; 例えば、限定されることを望まないが、乾燥粉末組成物は、スクロール又はトレハロースを含み得る。特定の非限定的な例において、組成物は、対象の胃腸管に抗体又はその断片を送達するように製剤化され得る。従って、組成物は、カプセル化、徐放、又は抗体又はその断片の送達のための他の適切な技術を含み得る。本化合物を含む適切な組成物を調製することは、当業者の能力の範囲内であろう。
【0070】
本発明のコンストラクトは、TGF-βスーパーファミリーのリガンドの過剰発現又は過剰活性化に関連する疾患又は障害を治療するために使用され得る。疾患又は障害は、限定されないが、癌、眼疾患、線維性疾患、又は結合組織の遺伝的障害から選択され得る。
【0071】
癌治療の分野において、TGF-βが、免疫チェックポイント阻害剤(ICI’s)等の免疫療法によって誘発される抗腫瘍応答を阻害する重要な因子であることが最近実証された(Hahn & Akporiaye, 2006)。具体的には、ICI抗体に対する治療反応は、主に腫瘍に局在するT細胞の再活性化に起因する。ICI抗体に対する耐性は、腫瘍の微小環境にT細胞が不足する免疫抑制機構の存在に依存する。従って、耐性患者の反応を誘発するために、ICI抗体は、T細胞を活性化し、腫瘍への補充、すなわち、「非T細胞炎症」腫瘍表現型の逆転を誘導できる薬剤と組み合わせる必要があるこことが現在、認識される。ある文献は、非T細胞炎症腫瘍の微小環境を克服することが、免疫腫瘍学の最も重要な次のハードルであることを指摘した(Gajewski, 2015)。
【0072】
原理証明TGF-βトラップ、T22d35を使用して、TGF-βをブロックすると「非T細胞炎症」腫瘍表現型が効果的に逆転することが示された(Zwaagstra et al, 2012)。これにより、抗TGF-β分子は、ICI及び他の免疫療法薬との相乗効果の可能性がある組み合わせとして位置づけられる。これを支持して、2014年の研究(Holtzhausen et al., ASCO poster presentation)では、生理学的に関連するトランスジェニックメラノーマモデルで抗CTLA-4抗体を組み合わせた場合のTGF-βブロッカーの効果を調べた。この研究は、抗CTLA-4抗体単剤療法は、メラノーマの進行を抑制することができなかったが、TGF-βアンタゴニストとCTLA-4抗体の組み合わせは、原初性メラノーマ腫瘍の増殖並びにメラノーマ転移の両方を有意かつ、相乗的に抑制したことを実証した。これらの観察結果は、メラノーマ組織のエフェクターT細胞の有意な増加と相関する。
【0073】
本明細書において、T22d35-Fcである基本構造を有する本ポリペプチドが、同系マウスMC-38結腸癌モデルにおいて腫瘍の増殖を有意に低減することを示す。従って、これは、他の免疫療法剤との潜在的な相乗的組み合わせで使用されると抗TGF-β分子を位置付ける。
【0074】
本発明のコンストラクトは、限定されないが、腎臓、肺、肝臓、心臓、皮膚及び眼を含む体の何れかの器官に影響を及ぼすものを含む線維性疾患の治療に有用であり得る。これらの疾患は、限定されないが、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、糸球体腎炎、肝線維症、梗塞後心繊維症、再狭窄、全身性強皮症、眼科手術による繊維症、及び瘢痕を含む。
【0075】
結合組織の遺伝的障害も治療され得、これは限定されないが、マルファン症候群(MFS)及び骨形成不全症(OI)を含む。
【0076】
本発明は以下の実施例でさらに説明される。しかしながら、これらの実施例は例示のみを目的とするものであり、何れの方法でも本発明の範囲を限定するために使用されるべきではないことを理解されたい。
【実施例0077】
材料及び方法
産生及び精製
一過性CHO発現
様々なTβRII-ECD融合変異体(T2m-Fc及びT22d35-Fc等)は、それぞれ、重鎖Fc領域で構成され、それらのN末端にシグナル配列MDWTWRILFLVAAATGTHA(配列番号11)を含む。コンストラクトのDNAコード領域は、合成で調製され(Biobasic Inc.又はGenescript USA Inc.)、pTT5哺乳類発現プラスミドベクターのHindIII(5’末端)及びBamH1(3’末端)部位にクローニングされた(Durocher et al, 2002)。融合タンパク質は、IgG重鎖(それぞれ、T2m-HC及びT22d35-HC)コンストラクトに融合した重鎖T2m又はT22d35を使用したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の一過性トランスフェクションによって産生された。簡単に説明すると、T2m-HC又はT22d35-HCプラスミドDNAは、4mMグルタミン及び0.1%Kolliphor p-188(Sigma)を含むFreeStyle F17培地(Invitrogen)のCHO-3E7細胞の2.5L及び4.6L培養にそれぞれトランスフェクトし、37℃で維持された。トランスフェクション条件: DNA(80%プラスミドコンストラクト、15%AKTプラスミド、5%GFPプラスミド): PEIプロ(比率=1:2.5):PEI(ポリエチレンイミン)プロ(ポリプラス)(比率=1:2.5)。トランスフェクションの24時間後で、10%トリプトンN1フィード(TekniScience Inc.)及び0.5mMバルプロ酸(VPA、Sigma)を加え、温度を32℃にシフトして融合タンパク質の産生及び分泌を促進し、トランスフェクション後15日間維持した後、細胞が回収された。最終回収時の細胞生存率は、89.6%であった。
【0078】
安定プールCHO発現
様々なFc-融合TβRII-ECDタンパク質をコードする標的遺伝子を発現するベクターで細胞にトランスフェクトすることによってCHOBRI/rcTA細胞プールが生成された。トランスフェクションの翌日、細胞は、250rpmで5分間遠心分離され、選択培地(50μMのメチオニンスルホキシミンを加えたPowerCHO2培地)に0.5×106細胞/mLの密度で播種された。14~18日間、2~3日ごとに選択培地が交換され、0.5×106細胞/mLで接種された。細胞数及び生存率は、上記Cedex Innovatis自動細胞カウンターCedexアナライザーで測定された。細胞数及び生存率は、上記Cedex Innovatis製自動細胞カウンターCedexアナライザーで測定された。細胞の生存率が95%を超えると、125又は250mL三角フラスコに0.2×106細胞/mLでプールが接種された。流加培養では、CHOBRI/rcTA細胞プールが上記のように接種された。接種後3日目に、細胞密度が3.5~4.5×106細胞/mLに達した際に、2μg/mLのクメイト(cumate)を加えることにより、組換えタンパク質の発現が誘導された。MSX濃度は、125μMに調整され、F12.7フィード(Irvine Scientific)が加えられた後、温度が32℃にシフトされた。2~3日ごとに、培養物に5%(v:v)F12.7が供給され、組換えタンパク質(pA-HPLC)及びグルコース(VITROS 350、Orthoclinical Diagnostics、USA)の濃度測定のためにサンプルが回収された。17mMの最小濃度を維持するために、グルコースが加えられた。
【0079】
精製
CHO細胞から回収した上清は、濾過され(0.2μm)、プロテインA MabSelect Sureカラム(GEヘルスケア)にロードされた。2カラム容量のPBSでカラムが洗浄され、3カラム容量の0.1Mクエン酸ナトリウムpH3.6でタンパク質が溶出された。収量を最大にするために、フロースルーが、プロテインAカラムにリロードされ、上記のように溶出された。溶出画分は、1M Trisで中和され、融合タンパク質を含む画分がプールされ、その後、製剤バッファー(Ca2+を含まない、Mg2+を含まないDPBS)で平衡化されたHi-load Superdex S200 26/80サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)カラム(GEヘルスケア)にロードされた。タンパク質は、1カラム容量の製剤バッファーを使用して溶出され、連続する画分に収集され、280nmのUV吸光度で検出された。次いで、融合タンパク質を含むメインピークSEC画分がプールされ、濃縮された。プールされた画分のProt-A及びSEC精製融合タンパク質の完全性は、還元及び非還元条件下(SYPRO Ruby染色)でUPLC-SEC及びSDS-PAGE(4~15%ポリアクリルアミド)によってさらに分析された。UPLC-SECの場合、DPBS(Hyclone、マイナスCa2+、マイナスMg2+)中の2~10μgのタンパク質が、Waters BEH200 SECカラムに注入され、Waters Acquity UPLC H-Class Bio-Systemを使用して、室温で8.5分間、0.4mL/分の流量で分離された。280nmでタンパク質のピークが検出された(Acquity PDA検出器)。
【0080】
細胞系統
ヒトA549非小細胞肺癌細胞を、ATCC(Cat# CCL-185、Cedarlane、Burlington、ON)から購入した。細胞は、5%ウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(MEM)で培養された。MC-38マウス大腸腺癌細胞を、Kerafast(Cat# ENH204、Boston、MA)から購入し、2mM L-グルタミン及び10%ウシ胎児血清を加えたダルベッコ改変MEMで培養した。両方の細胞株は、5%CO2を加えた加湿雰囲気で37℃に維持された。
【0081】
TGF-β誘導性A549細胞IL-11放出アッセイ
ヒトA549肺癌細胞は、96ウェルプレートに播種された(5×103細胞/ウェル)。翌日、TGF-βトラップ融合タンパク質の一連の希釈液の非存在下又は存在下で、完全培地中の10pM TGF-βが、RTで30分インキュベートされた後、細胞に加えられた。21時間のインキュベーションの後、条件培地が採取され、2μg/mLビオチン化マウス抗ヒトIL-11抗体(MAB618、R&D Systems、Minneapolis、MN)でコーティングされたMSDストレプトアビジンゴールドプレートに加えられた。18時間後(4℃)、プレートは、0.02Tween20を含むPBSで洗浄され、2μg/mL SULFOタグ付きヤギ抗ヒトIL-11抗体(AF-218-NA、R&D Systems Minneapolis、MN)が加えられ、プレートが室温で1時間インキュベートされた。最終洗浄の後、プレートは、MESO QuickPlex SQ120マシン(Meso Scale Diagnostics、Gaithersburg、MD)で読み取られた。IL-11読み出しは、TGF-βのみで処理したコントロール細胞と比較したIL-11放出パーセントとして表された。Graphpad Prism(4-PLアルゴリズム((log(阻害剤)VS.レスポンス-可変スロープ(4つのパラメーター))が使用され、IC50が計算された(必要に応じて自動外れ値オプションが使用された)。
【0082】
同系マウス結腸癌MC-38皮下マウスモデルのインビトロ評価
雌のC57BL/6-Eliteマウス(5~7週齢)をCharles River Laboratories(Wilmington、MA)から購入した。13匹のC57BL/6マウスに0日目に3×105のMC-38細胞を右側腹部に皮下注射した。腫瘍が、50~100mm3の容量に達した際(5日目)、動物は、2つのコホートに分けられ、治療が開始された:
・コホート1(動物7匹): アイソタイプコントロール(CTL IgG; BioxCell InVivo MAb Rat IgG2b、抗-KLH; クローン LTF-2、Cat# BE0090); 100μLリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中200μg、腹腔内(i.p.)、5、7、9及び11日目。
・コホート2(動物6匹): T22d35-Fc、100μL PBS中5mg/kg、i.p.、5、9、12及び16日目。
腫瘍は、治療を開始してから最大15日間、デジタルキャリパーを使用して週に2回測定された。腫瘍体積は、前述の改変楕円式(Tvol=π/6×(長さ×幅×幅))を使用してこれらの測定値から計算された(Tomayko et al., 1986)。
【0083】
結果及び考察
融合コンストラクト設計
目的のTGF-βトラップを生成するために、TβRII-ECDシングレット(T2mと名付けた)を別のそのようなシングレットに融合し、それにより、ヒト(h)IgG2 Fc領域とヒトIgG1 Fc領域の重鎖のN末端に結び付けられた外部ドメインダブレット(T22d35と名付けた)を形成する。
図1は、T2m及びT22d35の模式図(
図1A)及びアミノ酸配列(
図1B)を示す。これらのモジュールは、T2m-Fc(
図2B)及びT22d35-Fcバリアント(
図2C)融合を生成するために、いくつかのリンカーバリエーション(
図2E)を使用してIgG Fc領域の重鎖のN末端に融合された(
図2A)。これらの融合体の配列は、
図2Dに示される。また、Fcドメインのヒンジ領域のシステイン残基の数、異なるIgGアイソタイプ(ヒトIgG1対IgG2)、及びT22d35とFcドメインのN末端のリンカーとして様々な長さと性質を探索するT22d35-Fcのバリアントを設計した(
図2E、2F及び2G)。これらのバリエーションは、T22d35-Fc設計の機能性及び製造性の特性を調査し、最終的に最適化することを目的とする。
【0084】
発現及び精製
一過性CHO材料の精製
それぞれの融合タンパク質コンストラクトは、CHO-3E7細胞で一時的に発現され(表1参照)、その後、プロテインAアフィニティーカラムを使用して条件培地が回収され、及び精製され、続いて分取サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を行った。T2m-Fc(
図3A)及びT22d35-Fc(
図4A)のSEC溶出プロファイルは、これらの融合タンパク質が、比較的純粋で凝集体が無いことを示した。画分6~11(T2m-Fc)及び7~10(T22d35-Fc)がプールされ、5.6mg/ml(T2m-Fc)及び6.03mg/ml(T22d35-Fc)に濃縮された。T2m-Fc及びT22d35-Fcの最終収量は、それぞれ267mg及び168であった。最終産物(SECプールされた画分で示される)は、UPLC-SECで純度>99%であることが示された(
図3B及び4B)。SDS-PAGE評価(
図3C及び4C、Sypro RUBY染色)は、還元条件下で~60kDa及び~90kDaのT2m-Fc及びT22d35-Fcのバンドを示しているが、約90kDa及び150kDaのバンドは検出可能であり、非還元条件下で、それぞれ完全に構築された高純度のT2m-Fc及びT22d35-Fc融合タンパク質を示す。産生及び精製の詳細の概要は、表1に記載される。合わせて、これらの結果は、T2m-Fc及びT22d35-Fc融合タンパク質の良好な製造可能性を示す。
【0085】
【0086】
安定CHOプール材料の精製
N末端及びC末端のFc融合T22d35バリアントは、その発現レベル及び生物学的特性のいくつかを比較するために、CHOBRI/rcTA細胞で安定して発現された。各バリアントのコード領域を哺乳動物細胞発現プラスミドに連結し、トランスフェクション後、各バリアントを安定して発現する細胞の富化プールが選択された。バリアント間の主な違いは、T22d35ダブレットをFcドメインから分離するリンカー領域を含むアミノ酸配列に見出され得る(N末端融合の場合)が、C末端Fc融合の場合、各バリアント間の違いは、タンパク質の先端のアミノ末端にある(表2)。
【0087】
【0088】
融合タンパク質は、プロテインAアフィニティーにより、及び溶出バッファーとして100mMクエン酸(pH3.6)を使用して精製された。溶出した融合タンパク質のサンプルは、1M HEPESで中和され、次いでZebaスピンカラムを使用してDPBSへのバッファー交換が行われ(表3)、精製した融合タンパク質のいくつかの完全性が、SDS-PAGEによって評価された。各バリアントの精製は、同様に行われた。特性の多くは、バリアント間で非常に類似していたが、不適切な折り畳みを示す凝集の可能性により、いくつかの違いが明らかになった。タンパク質の凝集は、立体構造の安定性の低下を示している可能性があり、その結果、活性、効力、又は潜在力が低下する可能性がある。サイズ排除クロマトグラフィー-高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)を使用して、N及びC末端のFc融合バリアントの純度を決定した。この方法により、完全なモノマー種の割合並びに凝集体及び/又は分解産物等の不純物の存在が正確に測定できる。
図6に示すように、N末端Fc融合体として発現されるT22d35バリアントとC末端融合体として発現されるT22d35バリアントの間に顕著な違いが観察され得る。特に、完全なモノマーの割合(
図6A)は、5つ全てのN末端融合変異体(配列番号10、配列番号14、配列番号17、配列番号20、配列番号23)で約99%であったが、3つのC末端融合体(配列番号26、配列番号27、配列番号28)では、著しく低かった。完全なモノマーの割合のこの有意な減少は、全てのC末端Fc融合体で観察された高分子量凝集体の増加の蓄積(
図6B)、並びに3つのうちの2つのC末端Fc融合体の低分子量断片の増加の蓄積に起因する。加えて、個々の500mLの産物の力価及びN末端Fc融合T22d35産物及びC末端Fc融合T22d35産物の平均力価の評価は、C末端融合体と比較して、N末端Fc融合T22d35バリアントをより高い収率で産生できることを示す(表4)。まとめると、これらの結果は、免疫グロブリンのFc部分等の部分のN末端でT22d35ダブレットを発現させることに、有意かつ、予想外の利点があることを示す。これらのデータをまとめると、N末端Fc融合T22d35タンパク質の製造性が向上していることがわかる。
【0089】
【0090】
【0091】
機能的なインビトロ評価
図7A/B/Cに示すように、A549細胞IL-11放出アッセイを使用して、T2m-Fc及びT22d35-Fc融合タンパク質のTGF-β中和能を非Fc融合T22d35単一鎖ダブレットトラップと比較した。このデータは、全てのTGF-βアイソタイプについて、T22d35-Fcの効力が、T2m-Fc及び非Fc融合T22d35単一鎖トラップの効力よりも優れていることを示し、TGF-β1及びTGF-β3の計算されたIC
50は、それぞれ、0.003348及び0.003908nMである(表5)。これらの値は、T22d35よりも少なくとも970倍、少なくとも240倍優れた効力(TGF-β1及びTGF-β3のIC
50は、それぞれ、3.253及び0.9491nM)、及びT2m-Fcよりも615倍及び24倍高い(TGF-β1及びTGF-β3のIC
50は、それぞれ、2.059及び0.0943nM)。加えて、T22d35-Fcは、TGF-β1及び-β3よりもはるかに少ない範囲であるが、TGF-β2を中和する。対照的に、T2m-Fc又はT22d35単一鎖トラップの何れについても、TGF-β2の中和は観察されない。T22d35-Fcトラップの中和効力は、TGF-1βと-β3で類似するが、T2m-Fcバリアントは、TGF-β1と比較してTGF-β3に対して~22倍高い中和効力(それぞれ、2.059nM及び0.0943nM)を示したことに注意すべきである。追加のN末端Fc融合T22d35融合体の評価[T22d35-Fc-IgG2-v2(CC)、T22d35-Fc-IgG1-v1(CC)、T22d35-Fc-IgG1-v2(SCC)、及びT22d35-Fc-IgG1-v3(GSL-CC)](
図8、表6)は、これら融合体の全てが、匹敵するTGF-β1中和効力を示すことを表し、これは、T22d35-Fcの効力に非常に類似する。T22d35-Fc-IgG1-v1(CC)バリアントの追加評価(
図9)は、T22d35-Fcバリアントと一致して、TGF-β1及び-β3の中和効力が非常に類似する(IC
50=それぞれ、0.003327nM及び0.003251nM)ことを確認したが、この効力は、TGF-β2の方がはるかに低い(IC
50=17.33nM)。
【0092】
【0093】
【0094】
機能性インビボ評価
T22d35-Fc融合タンパク質(配列番号10)は、同系MC-38マウス結腸癌モデルを使用してインビボで評価された(
図9)。T22d35-Fc融合体で処置した動物の腫瘍の増殖を、コントロールIgG(CTL IgG)で処置した動物の腫瘍の増殖と比較した。
図9に示すように、治療後11日目までの腫瘍増殖の有意な差は観察されなかったが、CTL IgG(2元配置分散分析)と比較した場合、15日目にT22d35-Fcで処置した動物の腫瘍体積で腫瘍増殖の有意な減少が確認され得る。このデータは、T22d35-Fcの投与により、CTL IgGで処理した群と比較して、MC-38の増殖の抑制が有意に引き起こされていることを示し、これは、インビボでのTGF-β1の遮断は、この結腸直腸癌の同系モデルにおける腫瘍の増殖を抑止できることを示唆する。
【0095】
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【表7-5】
【表7-6】
【表7-7】
【表7-8】
【表7-9】
前記ポリペプチドコンストラクトが、単一のTβR-ECDを有する対応するコンストラクトよりも少なくとも20倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、又は600倍高い効力でTGF-β活性を阻害する、請求項1に記載のポリペプチドコンストラクト。
前記ポリペプチドコンストラクトが、非Fc融合TβR-ECDダブレットよりも少なくとも100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍又は900倍高い効力でTGF-β活性を阻害する、請求項1に記載のポリペプチドコンストラクト。
前記第2の領域が、前記ポリペプチドコンストラクトを他のコンストラクトと架橋するためのシステイン残基を含むヒンジ領域を含む、請求項1~5の何れか1項に記載のポリペプチドコンストラクト。
前記第2の領域が、配列番号12、配列番号15、配列番号18、および配列番号24からなる群から選択されるアミノ酸配列、または1つ以上の保存的アミノ酸突然変異を含むそれらと実質的に同一の配列を有する、請求項1~5の何れか1項に記載のポリペプチドコンストラクト。
配列番号14、配列番号17、及び配列番号20からなる群から選択されるアミノ酸配列、または1つ以上の保存的アミノ酸突然変異を含むそれらと実質的に同一の配列を含む、請求項1に記載のポリペプチドコンストラクト。
少なくとも1つのジスルフィド架橋によってそれぞれの抗体定常ドメイン間に連結された第1の単鎖ポリペプチド及び第2の単鎖ポリペプチドを含む、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)アイソタイプの効果を阻害するために有用なホモ二量体ポリペプチドコンストラクトであって、
ここで、前記第1の単鎖ポリペプチド及び前記第2の単鎖ポリペプチがそれぞれ第1の領域及び第2の領域を含み;
ここで、前記第1の領域の各々は、第1のTβRII-ECD及び第2のTβRII-ECDを含み;
ここで、前記第2の領域の各々は、抗体重鎖の前記第2の定常ドメイン(CH2)及び第3の定常ドメイン(CH3)、並びに所定の抗体の重鎖可変領域を含み;
ここで、前記第1の単鎖ポリペプチドの第1の領域のC末端が、前記第1の単鎖ポリペプチドの第2の領域のN末端に連結され;
ここで、前記第2の単鎖ポリペプチドの第1の領域のC末端が、前記第2の単鎖ポリペプチドの第2の領域のN末端に連結され;そして
ここで、前記第1の単鎖ポリペプチド及び前記第2の単鎖ポリペプチドのそれぞれが、配列番号14、配列番号17、及び配列番号20からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、ホモ二量体ポリペプチドコンストラクト。
請求項1~5、10又は11の何れか1項に記載のポリペプチドコンストラクトの有効量及び医薬的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を含む、TGF-β活性を阻害するための組成物。
請求項1~5、10又は11の何れか1項に記載のポリペプチドコンストラクトを産生するための、請求項12に記載の核酸分子又は請求項13に記載の発現ベクターを含むトランスジェニック細胞宿主。
請求項11に記載のホモ二量体ポリペプチドコンストラクトを、宿主を培養し、その宿主を増殖させることにより前処理された培地から回収することを含む、ホモ二量体ポリペプチドを産生するための方法であって、前記宿主は前記ホモ二量体ポリペプチドコンストラクトをコードする核酸分子を含むトランスジェニック細胞宿主である、方法。