(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056017
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】肥満治療用アンカーレス胃内デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
A61B17/00
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022542
(22)【出願日】2023-02-16
(62)【分割の表示】P 2021176616の分割
【原出願日】2017-04-26
(31)【優先権主張番号】15/496,625
(32)【優先日】2017-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/328,326
(32)【優先日】2016-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】517100989
【氏名又は名称】サイナーズ メディカル,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】ビレンダール ケー.シャルマ
(72)【発明者】
【氏名】ラフバー バスード
(57)【要約】
【課題】圧縮可能浮動性構造及びその構造に取り付けられたスリーブを含有する、胃内デバイスを提供する。
【解決手段】スリーブは胃腸管のいかなる部分にも物理的に取り付けられていないため、デバイスはアンカーレスであると考えられる。デバイスは、圧縮された展開前配置構成と拡張された展開後配置構成との間で構成可能である。浮動性デバイスは、ニチノールといった形状記憶材料で構成してもよい。いくつかの実施形態において、浮動性構造は、空間占有性且つ非多孔性である。スリーブは縫合及び/又は接着で、浮動性構造に取り付けることができる。いくつかの実施形態において、ステントをスリーブの近位端に挿入してもよい。第2の浮動性構造は、上部構造及び下部構造が存在するように、浮動性構造と接続されていてもよい。いくつかの実施形態において、胃腸デバイスは、患者にプレバイオティクス及び/又はプロバイオティクス治療を送達するために使用される。
【選択図】
図34
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の円板と第二の円板とを有する二重円板形状構造を形成するワイヤメッシュ構造を備える圧縮可能アンカー構造と;
前記アンカー構造から遠位に延びる細長いスリーブであって、上部近位部分、中部移行部分及び下部遠位部分を有する細長いスリーブと
を備える、胃内デバイスであって、
前記アンカー構造は、前記スリーブの近位端に重量を加え、展開後に前記スリーブを所定の位置に維持するように、前記スリーブの前記上部近位部分の近位端から放射状且つ外側に延びる、胃内デバイス。
【請求項2】
前記ワイヤメッシュ構造は複数のループを含み、前記ループが、前記上部近位部分の周囲の周りに相互接続する、請求項1に記載の胃内デバイス。
【請求項3】
前記上部近位部分及び前記下部遠位部分の各々が、それらの長さに沿ってほぼ一定の直径を有し、
前記下部遠位部分の長さが、前記上部近位部分の長さよりも長く、且つ、
前記上部近位部分の直径が、前記下部遠位部分の直径よりも大きい、請求項2に記載の胃内デバイス。
【請求項4】
前記スリーブが、前記中部移行部分及び前記下部遠位部分の長さに沿った複数の水平支持要素をさらに備える、請求項1に記載の胃内デバイス。
【請求項5】
前記スリーブが、細長い金属ワイヤの形態の複数の垂直支持要素をさらに備える、請求項1に記載の胃内デバイス。
【請求項6】
前記アンカー構造が、形状記憶材料を備える、請求項1に記載の胃内デバイス。
【請求項7】
前記アンカー構造が、圧縮形態と拡張形態との間で構成可能である、請求項1に記載の胃内デバイス。
【請求項8】
前記スリーブが膜を備える、請求項1に記載の胃内デバイス。
【請求項9】
前記第一の円板が上側円板であり、前記第二の円板が下側円板である、請求項1~8のいずれか一項に記載の胃内デバイス。
【請求項10】
前記下側円板は前記上側円板よりも大きな直径を有する、請求項9のいずれか一項に記載の胃内デバイス。
【請求項11】
前記上側円板は前記下側円板よりも大きな直径を有する、請求項9のいずれか一項に記載の胃内デバイス。
【請求項12】
前記第一の円板及び前記第二の円板は、それぞれ、展開後に逆傘状形状を有する湾曲層である、請求項1~8のいずれか一項に記載の胃内デバイス。
【請求項13】
前記第一の円板が上側円板であり、前記第二の円板が下側円板であり、前記ワイヤメッシュ構造はボビン形状であり、前記上側円板と前記下側円板との間に、前記上側円板及び前記下側円板よりも小さい直径を有する中央部(2618C)を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の胃内デバイス。
【請求項14】
前記第一の円板が上側円板であり、前記第二の円板が、展開後に前記上側円板よりも大きな直径を有する逆傘状形状を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の胃内デバイス。
【請求項15】
前記第一の円板及び前記第二の円板は異なる直径を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の胃内デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、概して、肥満の治療に有用である医療機器に関する。より詳細には、本明細書は、胃容積を減少させ、胃の内容排出を遅くし、及び/又は小腸の部分をバイパスすることによって、患者の体重減少をもたらす、動的重量の胃内及び胃腸デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
肥満は、米国を含む先進国では一般的な状態であり、且つ増加している公衆衛生問題である。2009年時点で、アメリカの成人の2/3超であるおよそ1億2,700万人が、過体重又は肥満であった。アメリカの成人の1/3超が肥満である。データによると、毎年30万人のアメリカ人が肥満関連の合併症で早期に死亡している。米国では、多くの子供たちもまた過体重又は肥満のいずれかである。このため、全体的な肥満米国人の人口は、今後増加するものと予想される。米国では、肥満による直接的及び間接的な医療費支出及び生産性の低下で、年間1,000億ドル超のコストがかかると推定されている。この傾向はその他の先進国の多くでもまた見られる。
【0003】
成人では、肥満度指数(BMI)を用いて、過体重又は肥満を判定する。個人のBMIは、体重(ポンド)に703を掛け、その合計を身長(インチ)の2乗で割ることで算出される。個人のBMIは、kg/m2で表される。成人のBMIが25~30kg/m2である場合、過体重とみなされる。肥満はBMI値30~40kg/m2と定義される。30kg/m2を超えるBMIは、有意な併存症と関連する。病的肥満は、体重が理想体重より100ポンド(約45.36kg)超か、又はBMIが40kg/m2を超えるかのいずれかであると定義される。米国人口のおよそ5%が病的肥満の基準の少なくとも1つを満たしている。病的肥満は、例えば以下:糖尿病;高血圧;心発作;脳卒中;脂質代謝異常;睡眠時無呼吸;ピックウィック症候群;喘息;腰痛及び椎間板症;臀部、膝、足首、及び足の加重付加性変形性関節症;血栓性静脈炎及び肺塞栓症;間擦疹性の皮膚炎;腹圧性尿失禁;胃食道逆流症(GERD);胆石;並びに、肝臓の硬化症及びがん腫を含む、多くの疾患及び障害に関連する。女性では、不妊症、子宮がん、及び乳がんが、病的肥満とさらに関連している。まとめると、病的肥満に関連する疾患は、平均寿命を達成する確率を著しく低下させる。後発症により罹患者の年間死亡率は10倍以上上昇する。
【0004】
肥満に対する現在の治療法として、食事制限、運動、行動療法、薬物療法、外科手術(開腹及び腹腔鏡)、並びに内視鏡デバイスが挙げられる。肥満に対する新しい薬物療法は、臨床試験にて現在評価されている。しかしながら、有効性の高い薬物治療はまだ開発されていない。さらに、現在の薬剤治療の短期及び長に渡る副作用は、しばしば消費者、製薬会社及び/又はその保険会社に関係する。概して、食事制限又は薬物療法プログラムは一貫して期待に反し、病的肥満者の大多数において、有意且つ持続的な体重減少をもたらすことはなかった。
【0005】
現在、病的肥満の治療に用いられるほとんどの手術は、小さな出口(例:0.75~1.2cm)を通じて排出する小さな(例:15~35ml)上部胃嚢の作成を含み、体の満腹感のメカニズムを働かせる、胃を制限する処置を含む。米国で実施される病的肥満の治療に用いられる手術の約15%は、胃制限処置と吸収不全処置との併用を含む。典型的な吸収不全の処置では、小腸の流れを二次膵臓導管と食物導管とに分ける。腹部外科手技に関連する可能性のある長期的な副作用には、ヘルニア及び小腸閉塞が挙げられる。加えて、肥満処置に特有の長期的問題には、幽門狭窄症、辺端部潰瘍形成、たんぱく栄養不良、及びビタミン欠乏症も挙げられる。
【0006】
肥満を治療するためのその他の外科的戦略として、内視鏡手術が挙げられ、その多くはまだ開発中である。内視鏡手術、並びに胃嚢及び胃空腸吻合を作製するデバイスは、腹腔鏡下手術を再現するために使用される。内視鏡的に留置した胃内バルーンは、胃容積を制限し、より少ない食事での満腹感をもたらす。例えば、現在、米国特許第7,172,613号として発行され、Districlass Medical SAに譲渡されている、米国特許出願第10/221,562号は、「内視鏡経路によって患者の胃に挿入される胃内デバイス」について記載している。デバイスは、特定の呼び容積を有するバルーン又はエンベロープを含む。バルーンは、バルーンの支持ベースを胃の内壁に対して形成する円板からなる接続要素に密閉して接続される。デバイスはまた、バルーンを充填デバイスに接続するための可撓性チューブ又はカテーテル、及びチューブ又はカテーテルと一体化された捕捉要素を含む。接続要素は、医師がバルーンをセット及び/又は除去し、患者の体内又は皮下のいずれかに充填デバイスを固定し、バルーン又はエンベロープを所定の呼び容積にすることを可能にする。
【0007】
シリコーン胃内バルーン(IGB)は、特に理想体重の40%以上の体重であり、集学的チームによってケアされているにもかかわらず、肥満治療において満足のいく結果が得られなかった人々のために、体重減少を達成するための一時的な支援として開発された。この治療は、手術の罹病率及び死亡リスクが高い病的肥満患者にもまた適応される。IGBの留置及び除去は内視鏡手術であり、バルーンは胃の内部で浮動するように設計されている。IGB法は胃の容積を減少させ、満腹感を早く到来させる。しかしながら、IGBの使用は、より大きな体重減少の説得力ある証拠は示さなかった。例えば、胃潰瘍及び糜爛といった軽微な合併症の相対リスクは有意に上昇した。全ての膨張式IGBデバイスは、経時的なバルーンの劣化問題に悩まされる。この悪化は、有効性の喪失を伴う収縮、及びバルーン移動に続発する小腸閉塞といった合併症をもたらし得る。時間の経過と共に効力が失われるため、IGBデバイスは短期間(6ヶ月未満)でのみ推奨される。その上、バルーンの急速な膨張は、いずれも外科的緊急事態である食道又は胃の穿孔リスクを引き起こす。IGB治療を受けている患者の死亡例が報告されている。
【0008】
内視鏡手術はまた、胃の容積を占有し、人工的な満腹感を作り出すために、メッシュ構造を胃内に展開するようにも用いられる。例えば、Wilson-Cook Medical,Inc.に譲渡された米国特許出願第11/657,231号は、「概して第1の構成と第2の構成との間で動作可能な断片消化抵抗性メッシュ材料を備える、胃内デバイス」について記載している。第1の構成は、哺乳動物の胃管腔への消化抵抗性メッシュ材料の導入を可能にするほど充分に小さい。第2の構成は、消化抵抗性メッシュ材料の哺乳動物の幽門通過を防止し、それによってメッシュ部材が人工的な胃石として作用することを可能にするほど充分に大きい。
【0009】
内視鏡的に留置したバルーン構造は効果的であり得るが、関連するリスク及び合併症がないわけではない。メッシュ構造は利用可能な胃容積を占有するのに有効であるが、胃内容排出には対応していない。このようなデバイスからの移動及び小腸閉塞は依然として重大な問題である。したがって、比較的安全でありながら、胃容積の減少、胃内容排出の遅延、並びに幽門及び小腸の一部を通過する食物のバイパスの提供によって得られる利益を組み合わせた、肥満を治療する胃内デバイスが必要とされている。デバイスはまた、デバイス全体が胃から移動することを防止するための構成要素も含むべきである。このデバイスは副作用を制限し、比較的容易に非侵襲的な方法で展開及び除去可能であるべきである。加えて、このデバイスは、吸収不良性転換術によって得られた利益を含めることによって、肥満をさらに治療する選択肢を持つべきである。この随意の利点を加えることで、このデバイスは肥満だけでなく、II型糖尿病の治療にも役立つであろう。
【0010】
典型的な金属構造は、特に胃の酸性度が高いという点では、過酷な環境に耐えることができない。金属ワイヤのような酸感受性構成要素を備える胃内デバイスは、酸性胃内容物によるこれら構成要素の分解を防ぐために、典型的には耐酸性材料(すなわち、シリコーン)で被覆又はコーティングされる。これらのコーティングされた胃内デバイスを作製するための従来の製造プロセスは、まずデバイスの金属ワイヤをコーティングし、次いで、ワイヤをデバイスの所望の端部形状に形成する。胃内デバイスの形状及び構造がより複雑になるにつれて、これらの従来のプロセスは、所望の最終生成物を適切に生成することができない。ニチノールのような形状記憶金属は、400℃を超える温度でヒートセットされ、金属を耐酸性材料でコーティングし、次いで最終的な形状にヒートセットすると、高温に曝されている間にコーティングが破壊される。したがって、胃内デバイスのワイヤを最初に所望の端部形状に形成し、次いで耐食性材料でコーティングする製造方法が必要である。このような方法は、ワイヤメッシュのワイヤ間の空間又は開口部の、コーティング及び被覆、又は閉塞を防止するように注意する。このような方法はまた、圧縮された第1の展開前形状から拡張された展開後形状に変換されるのに、充分な柔軟性を有する完成されたデバイスを生成し得る。
【0011】
肥満治療のための特定の外科的選択肢には、腹腔鏡下スリーブ胃切除(LSG)手術、及び腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス(RGB)手術もまた含まれる。胃切除術は、胃の部分的又は完全な外科的切除を意味する。LSGは、制限的治療である外科的減量手技であり、主曲線に続く大部分の外科的切除によって、胃を元の大きさのおよそ25%まで縮小する。次に、開いた端部を一緒に取り付けて(しばしば、外科用ステープルによる)、バナナ形状のスリーブ又はチューブを形成する。手技によって胃のサイズは永久的に縮小される。この手技は腹腔鏡下で実施され、可逆的ではない。手術後、胃は内容物を急速に小腸へ排出し空にするが、嘔吐(他の制限的な手技の特徴)はほとんど又は全くない。
【0012】
LSGは、ラタジェットの神経の反対側からHis角まで、幽門洞から大彎における胃の長手方向切除を行う。この手技の第1段階は、胃結腸間膜及び胃脾間膜が胃に近接した部位で行われる、胃の大彎部の血管供給の分割である。大彎は横隔膜の左脚まで完全に開放されて、胃のグレリン分泌細胞を有する胃底を切除する。この手技の第2段階は、胃を「スリーブ」してその形を細い管に縮小する、長手方向胃切除である。幽門及び幽門洞の一部は保存され、低曲率の「制限的な」胃スリーブとなる。
【0013】
スリーブ胃切除術(胃スリーブとも呼ばれる)は通常、肥満度指数40以上であり、胃バイパス又は十二指腸スイッチ処置を実施するリスクが大きすぎる可能性がある、極度な肥満患者に対して実施される。以下の2段階の手技が実施される。最初の手技は、スリーブ胃切除術である。2つ目の手技は、胃バイパス又は十二指腸スイッチへの変換である。通常、患者は最初のスリーブ胃切除術後に過剰体重を大量に減量するが、減量が止まった場合、第2段階を実施する。
【0014】
肥満ではあるが極度の肥満ではない患者には、スリーブ胃切除術単独が最小限のリスクによる好適な手術である。スリーブ胃切除術は現在、肥満患者に対する単一手術として許容できる減量手術の選択肢である。大部分の外科医は、外径が32~60フレンチ(約10.67mm~20mm)(最適なブギーサイズは、32~36フレンチ(約10.67mm~12mm)である)のブジー(先細円筒形計器)を手技に用いることが好ましい。手術後の理想的なおおよその胃残存容積は、15mlである。
【0015】
LSG後に観察される体重減少に関与するメカニズムの1つは、胃容積の劇的な減少である。制限の概念は、垂直帯胃形成術(VBG)、及び腹腔鏡下胃緊縛術(LAGB)における肥満手術において広く使用されている。LAGB術又はVBGにおける小さな胃小嚢の拡張は、少量の食物の摂取後に患者が経験する、早期満腹感、満腹感の増強、及び空腹感の減少を説明することを意図している。
【0016】
LSGによって誘導されるホルモン修飾はLAGBのような純粋な制限的処置後に見られるものとは異なっている。グレリンは主に胃底で産生されるペプチドホルモンであり、飢餓を調節する機構に関与すると考えられている。胃底部切除に伴うグレリンの有意な減少が存在する。
【0017】
LSGを好ましい選択肢としているのは、手術が、非常に肥満な患者の場合であっても、概して腹腔鏡下で完了できる単純な手技であるという事実にある。いかなる消化管吻合をも必要とせず、腸間膜の欠損も生じないため、内ヘルニアのリスクはない。また、胃緊縛術の場合のように異物は使用されず、消化管全体が内視鏡検査にアクセス可能であり、ダンピング症候群とは関連しない。また、消化性潰瘍のリスクは低く、栄養素、ビタミン、ミネラル、薬剤の吸収は、変化しない。
【0018】
LSGの初期の報告は、顕著な体重減少、及び主要肥満関連共存症の有意な減少により安全且つ有効であることを示した。長期的にLSGが唯一の肥満治療法として機能し得るかどうかという問題は、まだ答えられていない。この理由のため、LSGは、非常に高いBMI(非常な肥満=BMI>50、若しくは超非常な肥満=BMI>60)、及び/又は肥満と関連するかどうかに関わらない関連疾患のために、十二指腸スイッチ(BPD-DS)又はRGBを伴う胆膵路転換が危険すぎると思われる患者における、段階的アプローチの第一段階として提案される。
【0019】
腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス(RGB)は、消化管の一部を経路変更して遠位胃及び近位小腸をバイパスする、小さな(20~30ml)胃小嚢、及びルーリム(通常、75~105cm)の形成を含む。RGBに続いて、多面的な内分泌反応が、血糖コントロールの改善、食欲低下、及び体重の長期変化に寄与する可能性がある。また、RGBは肥満関連の共存症及び生活の質にもまた、非常に良い影響を有する。その他の利点には、持続的な体重減少に対する長期有効性の確立、併存疾患の減少、長期的な栄養学的後遺症のリスクの最小化、及び胃食道逆流症(GERD)の効果的な緩和がある。RGBにはリスクがないわけではない。一般的な死因には、肺塞栓症及び吻合部漏出がある。非致死的な周術期合併症には、吻合部漏出、静脈血栓塞栓症、創傷感染、小腸閉塞、及び出血がある。術後の消化管合併症には、悪心及び嘔吐、微量栄養素欠乏症、並びに体重回復の可能性がある。
【0020】
これらの肥満治療後の失敗はよくみられ、患者は体重を回復し始めるか、又は体重減少の進行が治療レベル以下で止まる。したがって、1回又は複数回の肥満手術が失敗した後に救済療法を行う必要がある。必要とされているのは、肥満手術後に使用されるデバイスであり、このデバイスの減量効果を高めるために、胃容積減少、胆膵路転換、及び/又は腸バイパスの利点を組み合わせる。また、手術で制限された胃の容積をさらに減らして、消費できるカロリー量を減らすデバイスもまた必要である。このデバイスはまた、近位小腸又は腸のルーリムをバイパスして、腸吸収、胆膵路転換、又はその両方を生じさせる。このデバイスはさらに、胃内容排出を遅らせ、満腹感に関連する胃ホルモンを放出し、満腹感に関連する胃神経を刺激するように作用することができる。このデバイスは、電気刺激、磁気刺激、又は薬剤などの他の治療剤と組み合わせることができる。
【0021】
このデバイスは、減量のための一次治療処置として、又は決定的な減量手術のためのブリッジとして使用することができる。このデバイスはまた、限定されるものではないが、メタボリックシンドローム、糖尿病、脂質異常症、及び心血管疾患を含む他の状態の治療にも使用することができる。
【発明の概要】
【0022】
本明細書では、展開前構成及び展開後構成を有し、該展開後構成において患者の胃内に位置決めされ且つ浮動するように適合されている、圧縮可能な構成要素;並びに、近位端、遠位端、及び内腔を有するスリーブを備える、肥満を治療するための胃内デバイスが開示されている。該スリーブは、その近位端が該圧縮可能な構成要素の遠位端に取り付けられ、該スリーブの該遠位端が該患者の十二指腸中央内に位置するように、該患者の幽門を通して延び、さらに、該スリーブは、該食物が該患者の該幽門及び近位十二指腸をバイパスするように、該患者の該胃から該十二指腸中央内に食物を輸送するように構成されている。該圧縮可能な構成要素は、該胃内の空間を占有し、該スリーブに位置決め支持体を提供するように構成され、該スリーブは、該胃内において、患者の空腸内に遠位方向又は該胃内の近位方向に5cm超移動せず、さらに、該圧縮可能な構成要素は、食物の封鎖又は胃内容排出の遅延特性を含まない。
【0023】
胃内デバイスは、カテーテルによって送達されるように構成することができる。
【0024】
随意に、圧縮可能な構成要素は、形状記憶金属から構成される。形状記憶金属はニチノールであってもよい。随意に、胃内デバイスは、該形状記憶金属の上に配置され、該形状記憶金属の胃酸への暴露を低減するように構成された非多孔性バルーンをさらに含む。バルーンは、空気、水、及び生理食塩水で膨張させることができる。胃内デバイスは、少なくとも1年の機能寿命を有するように構成することができ、機能寿命は、胃酸への曝露の結果として該形状記憶金属が分解し始める前の時間として定義される。バルーンは、該圧縮可能な構成要素に縫合することができる。
【0025】
随意に、胃内デバイスは、該圧縮可能な構成要素と該スリーブとの間に配置され、該幽門に配置されるように構成されたステントをさらに含む。
【0026】
圧縮可能な構成要素は、バルーン、二重バルーン、ボール、パラシュート、逆パラシュート、円板、二重円板、馬蹄、花、涙滴、二重涙滴、シリンダー、逆角錐、漏斗、ボビン、ハス、ワイングラス、又はオレンジピールのいずれか1つを含む形状を有してもよい。
【0027】
スリーブは、円筒又は漏斗のいずれか1つを含む形状を有することができる。
【0028】
随意に、圧縮可能な構成要素及びスリーブは、患者の解剖学的形態に物理的にいかなる点においても取り付けられない。
【0029】
随意に、圧縮可能な構成要素及びスリーブは、患者の解剖学的形態に対して非外傷性であるように構成される。
【0030】
圧縮可能な構成要素は、該患者に膨満感又は満腹感を誘発するように該胃に圧力を加えるように構成することができる。
【0031】
随意に、胃内デバイスは、さらなる胃空間を占有し、該胃にさらなる圧力を提供するように構成された該圧縮可能な構成要素の近位端に取り付けられた第2の圧縮可能な構成要素をさらに含む。
【0032】
随意に、圧縮可能な構成要素は、スリーブの位置決めを補助するように構成されたその遠位端にカラーをさらに含む。
【0033】
本明細書はまた、送達を容易にするために圧縮された展開前構成と拡張された展開後構成との間で構成可能な3次元多孔質構造を含む肥満を治療するための胃腸デバイスを開示する。多孔質構造体は、その近位端に第1の開口部と、その遠位端に大きな第2の開口部とを含む。多孔質構造はまた、その遠位端に結合されたスリーブを含む。随意に、デバイスは、回収を容易にするため、ワイヤメッシュ構造の近位端に縫合、並びに多孔質構造とスリーブとの接合部に配置された移動防止構成要素をさらに含む。多孔質構造体は、移動防止構成要素が患者の幽門の近位に位置するように患者の胃内に配置され、デバイス全体が幽門に入って幽門を通って移動するのを防止する。スリーブは幽門を通って十二指腸に入り、十二指腸又は空腸で終わる。食物は、多孔質構造の近位端の第1の開口部からデバイスに入り、多孔質構造及びスリーブを通過し、スリーブの遠位端から出る。このデバイスは、胃内に比較的不動の容積を占める構造と、幽門及び小腸の近位部分を通過する食物のためのバイパスを提供することによって、肥満を治療する。随意に、デバイスはさらに、消化管を通る食物の通過を遅らせるように作用する。このデバイスを装着した患者はより早く満腹感を経験し、満腹感が持続する。随意に、デバイスはアンカーレス且つ非外傷性である。随意に、胃内デバイスは、患者にプレバイオティクス及び/又はプロバイオティクス治療を送達するために使用される。
【0034】
本発明の上述及び他の実施形態は、以下に提供される図面及び詳細な説明において、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明のこれら及び他の特徴及び利点は、添付の図面に関連して考慮される場合、以下の詳細な説明を参照することによって、よりよく理解され評価されるであろう。
【
図2A】
図2Aは、本明細書の一実施形態による、その遠位端に取り付けられた近位に傾斜した移動防止円板又はカラーを有する展開後の構成における、ワイヤメッシュ構造の図である。
【
図2B】
図2Bは、本明細書の一実施形態による、その遠位端に形成された近位に湾曲した移動防止カラーを有する展開後の構成における、ワイヤメッシュ構造の図である。
【
図3A】
図3Aは、本明細書の一実施形態による、胃内デバイスのワイヤメッシュ構造の非外傷性移動防止カラーの拡大図である。
【
図3B】
図3Bは、本明細書の別の実施形態による、胃内デバイスのワイヤメッシュ構造の非外傷性移動防止カラーの拡大図である。
【
図3C】
図3Cは、本明細書の別の実施形態による、胃内デバイスのワイヤメッシュ構造の非外傷性移動防止カラーの拡大図である。
【
図3D】
図3Dは、本明細書の別の実施形態による、胃内デバイスのワイヤメッシュ構造の非外傷性移動防止カラーの拡大図である。
【
図4A】
図4Aは、本明細書の一実施形態による展開後の構成における胃内デバイスのスリーブ構成要素の一部分の図であり、スリーブの本体に沿って螺旋状になっている単一のワイヤ支持体を示す。
【
図4B】
図4Bは、本明細書の一実施形態による展開後の構成における胃内デバイスのスリーブ構成要素の一部分の図であり、スリーブの本体に沿って螺旋状になっている複数のワイヤ支持体を示す。
【
図4C】
図4Cは、本明細書の一実施形態による展開後の構成における胃内デバイスの、漏斗形スリーブ構成要素の図であり、スリーブ上の螺旋ワイヤループ支持体を示す。
【
図5】
図5は、本明細書の一実施形態による展開後の構成におけるスリーブ構成要素が取り付けられた、ワイヤメッシュ構造の図であり、スリーブの近位端に向かってワイヤメッシュ支持体の平滑断端を示す。
【
図6】
図6は、本明細書の一実施形態による、展開後の構成における漏斗形スリーブを有する胃内デバイスの図である。
【
図7】
図7は、本明細書の一実施形態による、展開後の構成における円筒形スリーブを有する胃内デバイスの図である。
【
図8A】
図8Aは、本明細書の一実施形態による、胃内デバイスのワイヤメッシュ構造の移動防止カラーに取り付けられた、漏斗形スリーブの拡大図である。
【
図8B】
図8Bは、本明細書中の別の実施形態による、胃内デバイスのワイヤメッシュ構造の移動防止カラーに取り付けられ、端部がほつれた近位スリーブ端部を有する、漏斗形スリーブの拡大図である。
【
図8C】
図8Cは、本明細書の一実施形態による、ワイヤメッシュ構造及び取り付けられたスリーブを備える、胃内デバイスの図である。
【
図8D】
図8Dは、周囲の解剖学的形態に関連したデバイスの寸法を示すためにスリーブを真っ直ぐにした、
図16Cの胃内デバイスの図である。
【
図8E】
図8Eは、本明細書の一実施形態による、該ワイヤメッシュ構造上の回収牽引糸を示す、胃内デバイスのワイヤメッシュ構造及びスリーブの図である。
【
図8F】
図8Fは、本明細書の一実施形態による、該ワイヤメッシュ構造上の単一の回収牽引糸を示す、胃内デバイスのワイヤメッシュ構造及びスリーブの図である。
【
図9A】
図9Aは、スリーブの遠位端の断面図であり、遠位端が体組織に対して非外傷性であるように構成するように設計された構成要素の一実施形態を示す。
【
図9B】
図9Bは、スリーブの遠位端の断面図であり、遠位端が体組織に対して非外傷性であるように構成するように設計された構成要素の別の実施形態を示す。
【
図9C】
図9Cは、スリーブの遠位端の断面図であり、遠位端が体組織に対して非外傷性であるように構成するように設計された構成要素の別の実施形態を示す。
【
図10】
図10は、本明細書の一実施形態による、位置決めテールが取り付けられたスリーブの遠位端の図である。
【
図11A】
図11Aは、本明細書の一実施形態による、ボールに接合された複数のフリンジを備えるスリーブの遠位端の図である。
【
図11B】
図11Bは、本明細書の一実施形態による、縫合糸ループ又はそこから延びるビーズが取り付けられた少なくとも1つの縫合糸を有するスリーブの、遠位端の図である。
【
図12A】
図12Aは、本明細書の一実施形態による、患者の胃腸管に配置された楕円形のワイヤメッシュ構造を有する、胃内デバイスの図である。
【
図12B】
図12Bは、本明細書の別の実施形態による、患者の胃腸管に配置された楕円形のワイヤメッシュ構造を有する、胃内デバイスの図である。
【
図13A】
図13Aは、本明細書の一実施形態による胃内デバイスのための、第1の例示的送達デバイスの図である。
【
図13B】
図13Bは、本明細書の一実施形態による、
図13Aの送達デバイスを使用して胃内デバイスを送達することに関与する工程を示すフローチャートである。
【
図14A】
図14Aは、本明細書の一実施形態による、送達デバイスに装填される胃内デバイスのワイヤメッシュ構造の図である。
【
図14C】
図14Cは、移動防止カラーのみが装填されたままになるように送達デバイスに装填された
図14Aのワイヤメッシュ構造の図である。
【
図15A】
図15Aは、本明細書の一実施形態による、胃内デバイスを除去するための回収デバイスの図である。
【
図15B】
図15Bは、本明細書の一実施形態による、
図15Aの回収デバイスを使用して患者から胃内デバイスを除去することに関与するステップを示す、フローチャートである。
【
図16A】
図16Aは、一実施形態による、カプセルのサイズに圧縮され、展開前のバルーンで覆われた、ワイヤメッシュデバイスを示す。
【
図16B】
図16Bは、本明細書の一実施形態による、デバイスの展開後の構成を示す。
【
図17】
図17は、本明細書の一実施形態による、スリーブが取り付けられた胃内における圧縮可能な浮動性構造を備える、アンカーレスデバイスの一実施形態を示す。
【
図18A】
図18Aは、展開前のスリーブを有する浮動性構造の別の実施形態を示す。
【
図18B】
図18Bは、本明細書の別の実施形態による、展開後のスリーブを備えた自由な浮動性構造を示す。
【
図19】
図19は、本明細書の一実施形態による、スリーブが取り付けられた圧縮可能な浮動性構造を備える、アンカーレスデバイスの別の実施形態を示す。
【
図20A】
図20Aは、一実施形態による、展開前の浮動性構造の別の実施形態を示す。
【
図21A】
図21Aは、本明細書の一実施形態による、楕円形のワイヤメッシュ構造を有する胃内デバイスの図である。
【
図21B】
図21Bは、本明細書の別の実施形態による、楕円形のワイヤメッシュ構造を有する胃内デバイスの図である。
【
図22】
図22は、本明細書の一実施形態による、スリーブが取り付けられた浮動性構造を備えるアンカーレスデバイスの別の実施形態を示す。
【
図23】
図23は、本明細書の一実施形態による、スリーブが取り付けられた浮動性構造を備えるアンカーレスデバイスの別の実施形態を示す。
【
図24】
図24は、本明細書の一実施形態による、カラー及びスリーブが取り付けられた浮動性構造を備えるアンカーレスデバイスの別の実施形態を示す。
【
図25A】
図25Aは、浮動性構造が花の形をしている、浮動性構造の別の実施形態を示す。
【
図25B】
図25Bは、浮動性構造が花の形をしている、浮動性構造の別の実施形 態を示す。
【
図25C】
図25Cは、浮動性構造が花の形をしている、浮動性構造の別の実施形態を示す。
【
図26】
図26は、本明細書の一実施形態による、スリーブが取り付けられた浮動性構造を備えるアンカーレスデバイスの、さらに別の実施形態を示す。
【
図27】
図27は、浮動性構造がハスの形をしている、浮動性構造の別の実施形態を示す。
【
図28】
図28は、本明細書の一実施形態による、スリーブが取り付けられた浮動性構造を備えるアンカーレスデバイスの、さらに別の実施形態を示す。
【
図29】
図29は、浮動性構造がワイングラスの形をしている、浮動性構造の別の実施形態を示す。
【
図30】
図30は、本明細書の一実施形態による、スリーブが取り付けられた浮動性構造を備えるアンカーレスデバイスの別の実施形態を示す。
【
図31】
図31は、本明細書の一実施形態による、浮動性構造がマイクロフォンの形状をしている、浮動性構造のさらに別の実施形態を示す。
【
図32】
図32は、本明細書の一実施形態による、胃内デバイスのスリーブ構成要素に対するステント支持体の図を提供する。
【
図33】
図33は、本明細書の一実施形態による、胃内デバイスのスリーブ構成要素に対するステント支持体の別の図を提供する。
【
図34】
図34は、本明細書の一実施形態による、スリーブが取り付けられた浮動性構造を備えるアンカーレスデバイスの別の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
一実施形態において、本明細書は、体重減少を誘導するために肥満患者で使用される、動的重量の胃内デバイスを目的とする。種々の実施形態において、胃内デバイスは、展開前の形状及び展開後の形状を有する多孔質の3次元構造を含む。一実施形態において、多孔質の3次元構造は、膨張しないワイヤメッシュ構造、又は展開前の圧縮された円筒形から、展開後の球形、卵形、インゲン豆形、若しくはあらゆる事前に定義された容積の形状に変化する、形状記憶金属又は形状記憶ポリマーで作られた螺旋構造である。別の実施形態において、胃内デバイスは、プラスチック材料、又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)若しくはポリエステルなどのポリマー、又は生体吸収性材料で作られる。デバイスは、室温での展開前形状から体温での展開後形状より生じる最小限の機械的力及び/又は温度変化によって、展開前から展開後形状に変化を繰り返す。
【0037】
別の実施形態において、デバイスは、幽門を通過して十二指腸に入るスリーブが取り付けられた、胃内の圧縮可能な浮動性構造を備える。この実施形態のデバイスは、物理的に胃腸管のいずれの部分にも取り付けられておらず、胃腸組織を損傷しないので、アンカーレス且つ非外傷性である。
【0038】
一実施形態において、デバイスは、カテーテルを介して胃に内視鏡的に送達される。このデバイスは、内視鏡を通して、内視鏡の上に、又は内視鏡若しくは透視ガイド/補助を用いてガイドワイヤの上に、配置することができる。
【0039】
このデバイスは、挿入を容易にするために、展開前に圧縮された形状、及び胃管腔に存在する展開後に拡張された形状を有する。デバイスの展開後の容積は、展開前の容積よりも大幅に大きくなる。一実施形態において、展開後デバイスは、少なくとも100mlの容積を有する。展開後デバイスは胃内でかなりの容積を占め、それによって摂取食物の貯蔵に利用可能な胃容積を減少させる。そのため、食物摂取量が制限され、満腹感が生まれ、食欲が減退する。一実施形態において、デバイスはまた、間欠的に、胃蠕動を伴って、胃から小腸への食物の通過を遅くするか又は遮断し、それによって胃内容排出を遅くするように設計される。種々の実施形態において、デバイスはまた、膵臓の分泌物を経て摂取食物をバイパスすること、又は摂取食物を経て膵臓の分泌物をバイパスすることのいずれかによって、膵胆路転換を形成するように機能する。
【0040】
一実施形態において、デバイスは、形状記憶金属を備え、一旦展開されると自己拡張して、展開前の形状から展開後の形状に変化する。別の実施形態において、デバイスは、その展開前の形状で冷却され、次いで、人体温度にさらされると自己拡張して展開後の形状を達成する温度感受性金属を備える。別の実施形態において、拡張ツールを使用して、最小の機械的力を加えて、デバイス形状をその展開前の形状から展開後の形状に変更する。別の実施形態において、プラスチック、ポリマー、炭素繊維、又は生体吸収性材料を用いて胃内デバイスを構築する。
【0041】
一実施形態において、ワイヤ構造は、胃内での適切な位置決めを補助するために、異なるように加重された材料を含む。一実施形態において、より軽い加重材料は、上部開口部に近接してワイヤ構造の上部に配置され、より重い加重材料は、下部開口部に近接して構造の下部に配置される。この差次的加重は、デバイスが胃内に適切に配置され、より遅い胃内容排出の意図された効果を発揮することを保証する。さらに、差次的加重は、ワイヤメッシュ構造を胃壁に物理的に係留(anchoring)する必要なしに、適切な胃位置を提供する。差次的加重特性はまた、デバイスに入り、重力によって促進されるデバイスの底部に向かって選択的に蓄積される摂取食物材料によっても提供され得る。また、異なる量の材料を上半分と下半分に使用することによって、差次的加重を提供することもできる。ワイヤメッシュ構造は、重力によって促進されるその正確な頂部から底部への配置を維持しながら、胃内を自由に移動することができる。
【0042】
一実施形態において、デバイスは、展開後の形状において、メッシュ構造のワイヤ間にメッシュ開口部を含むワイヤメッシュ構造を含む。一実施形態において、メッシュ開口部は直径1mmより大きい。一実施形態において、ワイヤメッシュ構造のワイヤは、耐食性材料で被覆される。耐食性材料は、一旦展開されると、ワイヤメッシュ構造のワイヤの、酸性胃内容物からの曝露及びその後の劣化を防止する。耐食性材料は、ワイヤメッシュのワイヤを完全にカバーするが、メッシュ開口部をカバーしない。一実施形態において、耐食性材料はパリレンを含む。パリレンは、耐久性があり、ニッケルイオン浸出を緩和し、より低い特性(一度塗布すると薄くなる)を有するという点でコーティングとして有益である。種々の実施形態において、耐食性材料は、シリコーン、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、医療用グレードのエポキシ、セラミック、さらなる金属、又はあらゆる他の適切な可撓性耐食性材料を含む。一実施形態において、コーティング金属はタンタルである。タンタルは、耐食性及び放射線不透過性を提供する。コーティングがセラミックである一実施形態において、セラミックコーティングは、数オングストローム(0.1nm)の厚さを有する。種々の実施形態において、上記耐食性材料のいずれか1つ又は組み合わせを使用して、ワイヤメッシュ構造の金属をカバーする。
【0043】
一実施形態において、メッシュ開口部は、メッシュの食物の出入りの流れを調節するように異なって構成される。一実施形態において、デバイスの下半分上の少なくとも1つの開口部は、デバイスの上半分上のいかなる開口部よりも大きく、食物材料のさらなるサイズの縮小を必要とすることなく、メッシュに入った食物が出ることを可能にする。
【0044】
別の実施形態において、胃内デバイスは、その遠位端の一部に結合された移動防止構成要素又はカラーをさらに含む。胃内デバイスのワイヤメッシュと同様の移動防止構成要素は、送達のための第1の圧縮された構成と、一旦展開された第2の拡張された構成との間で構成可能である。移動防止構成要素は、胃内デバイスが幽門を通過するのを防止する物理的なストッパーとして機能する。種々の実施形態において、移動防止構成要素は、弛緩した幽門の直径よりも大きい直径を有する。一実施形態において、移動防止構成要素は、胃内デバイスのワイヤメッシュ構造の延長部を含む。別の実施形態において、移動防止構成要素は、胃内デバイスの遠位端の一部に取り付けられた別個のワイヤメッシュ片である。種々の実施形態において、移動防止構成要素は、バンパー、ハーフバンパー、円板、ソーサー、又は幽門を通過するデバイスの移動を防止するあらゆる他の形状に近似する形状を有する。
【0045】
他の実施形態において、スリーブを胃内デバイスに取り付けることができ、ここでスリーブは、胃から、空になる十二指腸へ、又は十二指腸を通って空腸へ延びる。一実施形態において、スリーブは、隔離された糜粥をワイヤメッシュ構造から直接十二指腸又は空腸の中央部に輸送するように機能する。別の実施形態において、スリーブは胃内デバイスに連結されているが、デバイスから直接食物を受け取らない。この実施形態において、スリーブの近位端はデバイスから遠位であり、胃又は十二指腸のいずれかから直接食物を受け取る。スリーブに入った食物は遠位端から出て、小腸の一部をバイパスして十二指腸又は空腸に入る。
【0046】
したがって、スリーブは胃腸(GI)管の一部をバイパスして、腸内の特定の物質の吸収を制限するように作用する。スリーブによってもたらされる利益は、ルーワイ胃バイパス手術によってもたらされる利益、すなわち体重減少及びII型糖尿病の改善によってもたらされるものと同様である。
【0047】
移入後、本明細書の胃腸デバイス、特にカラーは、患者の解剖学的形態に実際に物理的に取り付けられることなく、患者の解剖学的形態と常に物理的に接触している。これは小腸の蠕動作用によってスリーブが引っ張られることによって達成される。スリーブが引き下げられると、ワイヤメッシュ構造のカラーが幽門の近位の胃に接触する。スリーブは常に幽門に物理的に接触している。しかし、この幽門との常時接触は食物の通過を妨げない。ワイヤメッシュ構造の開口部及びスリーブの内腔は、食物をいかなる点でも閉塞することなく、食物を腸内に通過させる。本明細書の胃内デバイスは、いかなる点も完全に閉塞することなく、胃の胃内容排出領域に物理的に係合する。本明細書の胃内デバイスは、可変排出口ドレインとして機能し、食物の通過に対するストッパーとして作用しない。
【0048】
本明細書の胃腸デバイスは、腸内に通過する食物の量を最小限にするのではなく、捕捉され、スリーブを通って腸内に通過する食物の量を最大にするように設計される。このデバイスは幽門と胃に常時接触することで、食物が胃の周囲や外側を通過しないように設計されている。種々の実施形態において、患者の胃から排出される食物の少なくとも10%が、デバイスの周囲ではなくデバイスを通過する。一実施形態において、患者の胃から排出される食物の少なくとも50%が、デバイスの周囲ではなくデバイスを通過する。種々の実施形態において、デバイスに入ってスリーブを通過するこの食物は、患者の十二指腸に接触することはなく、それによってデバイスが真の幽門バイパスとして機能することができる。
【0049】
一実施形態において、デバイスはスリーブが取り付けられた膨張性バルーンであり、バルーンはスリーブの内腔と流体連結せず、バルーンは単にスリーブを胃腸壁に係留又は固定する必要なしに、スリーブを所定の位置に保持するように作用する。バルーンは液体で膨らませたり萎ませたりすることができ、人の胃の中に収まるように設計されている。スリーブはバルーンに柔軟に取り付けられ、近位開口部及び遠位開口部を有し、近位開口部は患者の膨大部の近位に位置するように設計され、遠位開口部は患者の膨大部の遠位に位置するように設計される。部分的に消化された食物は近位開口部に入り、遠位開口部から出て膨大部領域をバイパスする。スリーブは胃腸壁のどの部分にも係留又は固定されていない。
【0050】
ワイヤメッシュ構造
種々の実施形態において、胃内デバイスは、展開前の形状及び展開後の形状を有する多孔質の3次元構造を含む。一実施形態において、デバイスは、展開後の構成において、内部容積を画定し、近位端及び遠位端を有する3次元ワイヤメッシュ構造を含む。
【0051】
種々の実施形態において、ワイヤメッシュ構造は、ワイヤメッシュ構造のワイヤ内に曲げ又は曲線を含む自由端、又は「節」を含み、これらの曲げ又は曲線は支持されず、ワイヤメッシュの他の部分に接続されない。いくつかの実施形態において、ワイヤメッシュ構造は、2つの複数の節を含む。第1の複数は構造体の近位端に配置され、第2の複数は構造体の遠位端に配置される。ワイヤメッシュ構造が展開前構成に圧縮されると、構造の近位端及び遠位端のそれぞれにおける第1及び第2の複数の節は、一緒に集められるか、又は「束にされる」。これは、該端部間の圧縮構造の断面積と比較して、構造の近位端及び遠位端に、大きな断面積(又は直径)を生成する。その断面積が大きくなるにつれて、圧縮ワイヤメッシュ構造は、狭い送達デバイス又はカテーテルを通して展開することがますます困難になる。この送達問題は、少なくとも2つの異なる方法で対処できる。種々の実施形態において、各複数の節における節の数が減少される。各複数の節の数を減らすことは、構造を圧縮しやすくし、構造の端部における断面積を小さくする。これにより、圧縮された構造体によって送達カテーテルに加えられる力が低減されることで、圧縮された構造体がカテーテルを通過しやすくなる。種々の実施形態において、第1及び第2の複数の節の一方又は両方からの節の一部が、構造の該端部から移動され、構造の本体に沿って配置され、さらなる複数の節を作成する。この節の「交互配置」は、随意の所与の点における圧縮構造の断面積を減少させ、圧縮構造によって加えられる力を送達カテーテルに分配し、再びカテーテルを通る送達構造の通過を容易にする。種々の実施形態において、各複数の節の数は減少され、節は、圧縮された構造によって加えられる力を減少させ、送達カテーテルに分配するために、構造全体にわたって複数の節に交互に配置される。該力を減少させ、分配することにより、送達が容易になり、より小さな直径を有する送達カテーテルの使用が可能になる。また、力を小さく分散させることで、より大きなメッシュ構造を作成し、より小さなサイズに圧縮することができる。
【0052】
種々の実施形態において、各複数の節は、10~100個の個々の節を含む。一実施形態において、各複数の節は44個の節を含む。別の実施形態において、各複数の節は36個の節を含む。種々の実施形態において、ワイヤメッシュ構造は、その長さに沿って異なる位置に緯度方向に分布する2~60個の複数の節を含む。一実施形態において、節は、構造内の全節数の少なくとも10%が近位端及び遠位端に位置するように交互配置される。種々の実施形態において、節の総数の75%以下が、いずれか1つの複数の節に配置される。種々の実施形態において、節は、構造の長さに沿って少なくとも3つの異なる横方向の複数の中に分散される。
【0053】
ワイヤメッシュ構造の圧縮率もまたメッシュの柔軟性に依存する。柔軟性は、順に、他の変数の中で、ワイヤ厚さ、ワイヤ交差の角度、及びワイヤの数に依存する。配線の交差角度については、構造物の配線が互いにより平行に配置されるにつれて、構造物はより柔軟になる。種々の実施形態において、展開前構成では、ワイヤメッシュ構造は、5~50cmの全長を有し、各ワイヤは、0.1~1mmの範囲の厚さを有する。一実施形態において、各ワイヤは0.44mmの厚さを有する。ワイヤメッシュ構造のワイヤは、構造が圧縮される際にどのように動作するかを決定する、曲げ歪みを有する。種々の実施形態において、ワイヤは、一実施形態ではニチノールのような形状記憶金属からなる。形状記憶金属は、それを超えると金属がその前の形状を正確に回復する能力を失う、特定の曲げ歪み率を有する。歪み率(%)は、次の式で定義できる。
【0054】
歪み%=2t/R×100
【0055】
式中、tはワイヤ厚さ、Rは曲げの半径である。一実施形態において、歪み率が8%に達すると、永久的な変化が形状記憶金属に導入され、元の形状には完全に戻らない。この要素は、ワイヤメッシュ構造が配布のために展開前の形状に圧縮される際に重要になる。種々の実施形態において、ワイヤメッシュ構造は、移動防止構成要素として機能するワイヤメッシュの遠位端に、カラー又は円形延長部を含む。このカラーは、圧縮された構造が送達デバイス又はカテーテルに適合するように、圧縮中に遠位に折り返さなければならない。圧縮中にカラーが折り畳まれると、ワイヤメッシュ構造の「バンプ」が導入される。8%未満の歪み率は、圧縮ワイヤメッシュ構造においてより小さなバンプを生成するため、送達カテーテルを介して圧縮構造を容易に通過させることができる。したがって、種々の実施形態において、ワイヤメッシュ構造は、カラーにおける歪み率が20%以下、好ましくは8%未満となるように、カラーにおけるワイヤ厚さ及び曲げ半径とを有するよう構成される。種々の実施形態において、カラーの半径は、ワイヤ厚さの10倍未満である。種々の実施形態において、歪み率は0.1~20%の範囲である。種々の実施形態において、ワイヤメッシュのワイヤは0.1~1.0mmの厚さを有し、カラーは0.013~20cmの曲げ半径を有する。一実施形態において、ワイヤメッシュのワイヤは、0.4mmの厚さを有する。種々の実施形態において、ワイヤ厚さ及び曲げ半径は、以下の記載を満たすように構成される。
【0056】
2t<R<2000t
【0057】
式中、tはワイヤ厚さ、Rは曲げの半径である。
【0058】
種々の実施形態において、ワイヤメッシュ構造の一つ又は複数のワイヤの端部は、送達及び回収中、並びに展開中に、体組織に対する外傷性損傷の可能性を最小にするような方法で終端される。いくつかの実施形態において、ワイヤメッシュ構造は、3次元構造に折り畳まれた単一のワイヤを含む。他の実施形態において、ワイヤメッシュ構造は、3次元構造に結合され、折り畳まれた複数のワイヤを含む。種々の実施形態において、ワイヤの自由端は、チタンチューブ又はニチノール(若しくは他の形状記憶金属)チューブを、該自由端の上に圧着することによって接合される。他の実施形態において、ワイヤの自由端は、自由端同士をスポット溶接することによって接合される。一実施形態において、ワイヤの交点は溶接されない。別の実施形態において、ワイヤの交点が溶接される。
【0059】
一実施形態において、ワイヤメッシュ構造は、送達のためカプセルに圧縮される、シリコーンバルーンに包まれる。送達後、ワイヤメッシュ構造はエンベロープと共に拡張する。バルーンエンベロープは、ワイヤメッシュの酸への曝露を遅くし、メッシュのニチノール材料を腐食させ、それによってデバイス寿命を延長する。
【0060】
スリーブ
種々の実施形態において、本明細書の胃内デバイスは、ワイヤメッシュ構造に結合された可撓性スリーブ構成要素をさらに含む。複数の実施形態において、上述のワイヤメッシュ構造のいずれかが、以下に説明するスリーブ構成要素のいずれかと結合される。スリーブ構成要素は、近位端及び遠位端に内腔を有する細長い管状体を含む。
【0061】
一実施形態において、スリーブは、その全長に沿って一定の直径を有する。他の実施形態において、スリーブは、その近位端に近接した漏斗形状を含み、スリーブの直径は、スリーブ本体の近位端の第1の開口部で最大であり、次いで、遠位に延びるにつれて徐々に減少し、その長さの中点に近接した位置で最小直径に達する。その後、直径はその長さの残りの部分に沿って遠位方向に一定のままである。
【0062】
種々の実施形態において、ワイヤメッシュ構造は、その遠位端にカラーを含み、スリーブの近位端は、上記に列挙された手段の1つによって該カラーの底面に取り付けられる。種々の実施形態において、デバイスがその展開前構成に圧縮される場合、スリーブ本体は、カラーを折り曲げるのを補助するために引っ張られる。上記のように、スリーブの近位端がカラーの底面に取り付けられている場合、折り畳まれた際にカラーは完全には真っ直ぐにならず、その結果、デバイスが展開前構成にある際にカラーに大きな膨らみが生じる。膨らみは、ワイヤメッシュ構造の厚さからなる大きな直径を有し、スリーブの厚さの2倍である。したがって、好ましい実施形態において、スリーブの近位端は、複数の緩い縫合によってカラーの自由端部、すなわち節に取り付けられる。スリーブは、傘の布を傘の各骨の端に取り付ける方法と同様の様式で、各節に縫合される。傘を閉じると生地が崩れて圧縮できるようになる。本明細書の胃内デバイスは同様に機能する。種々の実施形態において、ワイヤメッシュ構造が送達デバイスに装填するために圧縮されると、スリーブの遠位端が引っ張られる。スリーブをワイヤメッシュの節に取り付ける緩い縫合は、スリーブがワイヤメッシュに対して移動することを可能にし、カラーが遠位に引っ張られ、より直線的な形状に伸長される。このような取り付けは、展開前の設定のカラーに大きなふくらみを作成することを回避する。圧縮中にスリーブ本体が引っ張られると、カラーはより完全に折り返され、結果として生じる膨らみは、ワイヤメッシュ構造の厚さのみを含むより小さな直径を有する。種々の実施形態において、胃内デバイスが展開前構成にある場合、カラーとスリーブとの間には少なくとも最低0のオーバーラップがある。展開時には、ワイヤメッシュ構造の形状記憶特性により、開いた際に布を広げる傘のように、カラーが拡張する際にスリーブを自身の上に引っ張る。
【0063】
種々の実施形態において、ワイヤメッシュ構造(又はカラー)の遠位端における各節は、縫合を介してスリーブの近位端に取り付けられる。これはスリーブへのワイヤメッシュ構造の取り付け時に、膨張をもたらすことがある。したがって、他の実施形態において、より少ない節がスリーブに縫合される。例えば、一実施形態において、1つおきの節をスリーブに縫合して、縫合の結び目の数を減らし、膨らみを減少させる。各縫合結び目に接着剤及び複数のループを含むことはまた、ワイヤメッシュ構造のスリーブへの取り付け点において膨らみをもたらすことができる。したがって、種々の実施形態において、接着剤は使用されず、各縫合結び目は1つのループに限定される。スリーブを節に縫合することは、節を含むワイヤの長さに沿って縫合の結び目を摺動させ、結果としてワイヤメッシュ構造に対するスリーブの意図しない動きをもたらす。摺動を防止するために、種々の実施形態において、各縫合結び目は、各節の近位のワイヤの第1の接合部に配置される。実際には、各縫合は2本のワイヤ上に配置され、一方又は他方に沿ってスライドすることはできない。過剰な膨らみを排除するために、種々の実施形態において、スリーブに縫合される第1のワイヤ接合部の数は、第1のワイヤ接合部の数よりも少ない。例えば、一実施形態において、1つおきの第1のワイヤ接合部がスリーブに縫合される。
【0064】
種々の実施形態において、ワイヤメッシュ及び/又はスリーブ内のワイヤの鋭利な端部は、スリーブを腸内に移動させるため、又はスリーブをワイヤメッシュ構造に接続するための引上げ点として作用するように、それ自体に圧着及びループ状にされるか、又は外側にループ状にされる。
【0065】
スリーブの遠位端は、スリーブが十二指腸の一部を通って延びる細長い形状に残るように加重されるよう、設計することができる。一実施形態において、スリーブは、その遠位端に取り付けられた小さな重量を含む。別の実施形態において、スリーブ本体の遠位端における第2の開口部が、スリーブ本体の遠位端においてスリーブ本体に沿って配置されており、スリーブ本体の遠位端は、さらに盲嚢を含む。盲嚢は、食物や液体の一部を断続的に中に閉じ込める働きをする。捕捉された食物又は流体は、スリーブ本体の遠位端を計量するように作用し、それによって、スリーブ構成要素を細長い状態に維持する。一実施形態において、スリーブの遠位端は、遠位端を下方に位置させ、折り畳まないようにするのを補助するために、少なくとも第2の層で補強される。
【0066】
一実施形態において、スリーブは、ワイヤメッシュ構造について上述した構成と同様に、複数の節を有するワイヤメッシュ構成を含む。
【0067】
別の実施形態において、スリーブ構成要素は、小腸の収縮によって柔軟で圧縮可能な膜を含む。一実施形態において、スリーブは、胃腸の力からの座屈に抵抗して機能を維持するための最小限の構造強度をスリーブに与える、最小限の構造を含む。一実施形態において、構造の最小限は、スリーブに線形強度を与えるために、スリーブの長さの少なくとも10%に沿って延びる、単一構造を含む。種々の実施形態において、単一構造は、直線ワイヤ、ワイヤ螺旋、又はワイヤメッシュである。一実施形態において、膜状スリーブ構成要素は、スリーブ本体の長さに沿った複数の水平及び/又は垂直支持要素を含む。一実施形態において、水平要素は、スリーブ本体の長さに沿って離間したワイヤリングを含む。種々の実施形態において、リングは、2~24インチ(約5.08~60.96cm)の間隔で配置される。一実施形態において、リングは6インチ(約15.24cm)間隔で配置される。一実施形態において、垂直支持要素は、細長い金属ワイヤを含む。種々の実施形態において、ワイヤの長さは2~60インチ(約5.08~152.40cm)である。一実施形態において、金属ワイヤの長さは6インチ(約15.24cm)である。別の実施形態において、膜状スリーブ構成要素は、その長さに沿って延びる螺旋状金属ワイヤを含む。螺旋状金属ワイヤは、スリーブ構成要素を支持し、その細長い形状を維持する。種々の実施形態において、螺旋状金属ワイヤは、ニチノールなどの形状記憶金属からなる。螺旋状金属ワイヤは、支持を提供するのに充分きつい螺旋を有する必要があるが、スリーブが送達のために圧縮される際に、ねじれることでその完全な形状を回復することができなくなるほど、螺旋がきつくてはならない。種々の実施形態において、スリーブの螺旋状金属ワイヤは、0.1~1.0mmの厚さを有する。一実施形態において、スリーブの螺旋状金属ワイヤは、0.2mmの厚さを有する。カラー曲げ半径に関して上述したように、スリーブの螺旋状金属ワイヤの曲げ半径は、0.1~20%の範囲、好ましくは8%未満の歪み率を生成するようにすべきである。種々の実施形態において、螺旋状金属ワイヤの歪み率(%)は、以下の式によって定義することができる。
【0068】
【0069】
式中、dはワイヤの直径、Rfは最終曲げ半径、Riは初期曲げ半径である。したがって、種々の実施形態において、螺旋状金属ワイヤは、5~150mmの範囲のピッチを有する。一実施形態において、螺旋状金属ワイヤは、60mmのピッチを有する。種々の実施形態において、スリーブは、永久的なねじれを防止しながらより大きな支持を提供するために、複数の螺旋状金属ワイヤを含む。一実施形態において、スリーブは3本の螺旋状金属ワイヤを含み、各個別ワイヤは60mmのピッチを有し、ワイヤは2本の別々のワイヤ間のピッチが20mmになるように間隔をあけて配置される。別の実施形態において、スリーブは、スリーブに構造的支持を提供するために、6本の螺旋状又は螺旋状ワイヤを含む。種々の実施形態において、スリーブ構成要素の膜は、ワイヤメッシュ構造の下部に近位方向に延び、該下部の全部又は一部を覆う。
【0070】
スリーブは可撓性且つ圧縮可能であり、送達中に送達デバイスの遠位端上における圧縮された構成で拘束される。一実施形態において、スリーブは、その長さを短くして送達を容易にするために、それ自体に畳み込まれる。さらに、デバイスが展開前構成にある場合、スリーブはそれ自体の上に折り畳まれてその長さを短くし、送達デバイス又はカテーテルの配置を補助することができる。種々の実施形態において、スリーブは、それ自体の上で2~10回折り畳まれ、次いで、送達のために送達デバイス又はカテーテルに沿って折り畳まれるか、又はラップされる。一実施形態において、スリーブは、ガイドワイヤ、送達デバイス、又はカテーテル上で同軸に供給される。別の実施形態において、スリーブは、側部に沿って、又は送達デバイス若しくはカテーテルの周りに折り畳まれる。これは、スリーブがガイドワイヤ及び/又は送達デバイス/カテーテルの上に、同軸的に供給された際に遭遇することがある、ガイドワイヤ及び/又は送達デバイス/カテーテルが後退する際、スリーブがガイドワイヤ及び/又は送達デバイス/カテーテルに付着するのを防ぐのに役立つ。
【0071】
他の実施形態において、本実施形態のいくつかの胃内デバイスは、上記の長さよりも短い長さを有するスリーブを含む。種々の実施形態において、短いスリーブの全長は100~120mmである。種々の実施形態において、短いスリーブは漏斗形又は円錐形を有する。いくつかの実施形態において、短いスリーブは、ワイヤメッシュ構造に形成されたワイヤ又は複数の節を有するブレードを含み、ワイヤメッシュ構造について上述した構成と同様である。一実施形態において、ブレードは、単一のワイヤを使用して作成される。一実施形態において、ワイヤは形状記憶金属から構成される。一実施形態において、形状記憶金属はニチノールである。他の実施形態において、ブレードは、複数のワイヤを機械的に編組することによって作成される。いくつかの実施形態において、節間のピッチ又は距離は均一である。他の実施形態において、ピッチは可変である。ブレードの端は非外傷性になっている。一実施形態において、端部は平滑断端化される。別の実施形態において、端部は、軟質ポリマー先端部でキャップされる。いくつかの実施形態において、短いスリーブの一部は、カバーで被覆される。いくつかの実施形態において、被覆された部分は、浮動節を含む。一実施形態において、被覆はシリコーンである。種々の実施形態において、スリーブの近位端の直径は、ワイヤメッシュ構造の遠位端における移動防止カラーの外径にほぼ等しい。そのような実施形態において、スリーブの近位端は、移動防止カラーに嵌合して取り付けられる。他の実施形態において、スリーブの近位端の直径は、移動防止カラーの外径よりも小さく、該カラーを該ワイヤメッシュ構造に接続するカラーのネックの直径とほぼ等しい。これらの実施形態において、スリーブの近位端は、該カラーの該ネックに取り付けられる。
【0072】
一実施形態において、節の数はブレード全体に渡って均一である。一実施形態において、節の数は24個であり、他の実施形態において、節の数は、ブレード全体に渡って可変である。例えば、種々の実施形態において、短いスリーブブレードは近位端に24個の節を含み、遠位端に18個又は12個の節を含む。これらの実施形態において、2つの端部(例:6個又は12個の節)間の節の数で差異のある節は、浮動節であり、短いスリーブの本体に沿って配置される。
【0073】
一旦、短いスリーブを有する胃内デバイスが展開されると、短いスリーブは、断続的に係合し、幽門に係留されることなく患者の幽門を遮断する。これは食物が幽門を通過するのを防ぎ、食物が胃から十二指腸へ短いスリーブを通過するようにし、胃流出を調節する。種々の実施形態において、短いスリーブの遠位端における開口部は、直径1~30mmであり、直径のサイズは胃流出の速度を決定する。一実施形態において、幽門が係合している場合、開口部は0mmとすることができ、それによって流出を完全に防止することができる。したがって、食物は幽門が係合していない場合、又は部分的にしか係合していない際にのみ胃から十二指腸に入ることができる。
【0074】
種々の実施形態において、スリーブは、従来技術のスリーブと比較して高い摩擦係数を有する。種々の実施形態において、スリーブは、0.01~0.3の範囲の摩擦係数を有する。一実施形態において、スリーブは、0.1以下の摩擦係数を有する。展開中に、平滑スリーブが送達カテーテルの内側に固着したり、又はそれ自体に固着したりして、スリーブを解放するために力が加えられる際にスリーブが破壊されることがある、比較的平滑なスリーブに遭遇した。したがって、より粗い外面を有するスリーブは、送達デバイス又はカテーテルに供給し、次いで配備することがより容易であり得る。種々の実施形態において、スリーブはマットな外面を含む。他の実施形態において、粒子状物質又は比較的粗い物質、例えばコーンスターチ又は生体適合性粉末が、スリーブを送達デバイスに装填して展開する前に、スリーブの外面に適用される。
【0075】
種々の実施形態において、スリーブは、放射線画像を用いてスリーブの適切な位置決めを確実にするために、1つ以上の放射線不透過性マーカーを含む。種々の実施形態において、放射線不透過性マーカーは、スリーブ本体の外面に沿った複数の個々のマーキングを含む。他の実施形態において、放射線不透過性マーカーは、スリーブ本体の外面に沿って延びる単一のラインを含む。螺旋状の単線は、スリーブのねじれを示す。さらに他の実施形態において、放射線不透過性マーカーは、複数の個々のマーキングと、スリーブ本体の外面に沿って延びる単一のラインとを含む。他の実施形態において、スリーブの支持要素のワイヤ厚さが放射線写真の可視化を可能にするほど充分大きいので、放射線不透過マーキングは必要でない。
【0076】
別の実施形態において、可撓性部材又はスリーブは、微生物の付着及び成長のために最適化された表面を有する。一実施形態において、デバイスは、浮動性メッシュ構造のような剛性部材、及び浮動性スリーブ構造のような可撓性部材を含み、両部材の表面は、微生物の付着及び成長を促進するように設計されている。微生物は、体重減少、血糖コントロール、又は過敏性腸症候群、クロストリジウム・ディフィシレ又はプレバイオティクス若しくはプロバイオティクス治療に反応するその他の状態の治療における、補助を含む所望の治療効果を生じる。
【0077】
回収機構
種々の実施形態において、ワイヤメッシュ構造、又は結合スリーブ構成要素を有するワイヤメッシュ構造は、ワイヤメッシュ構造の近位端の少なくとも1つの開口部に近接して配置された少なくとも1つの回収機構を有する、1つ以上の回収機構を含む。一実施形態において、回収機構は、80ポンド(約36.29kg)の回収縫合糸を備える。
【0078】
移動防止構成要素
種々の実施形態において、結合されたスリーブ構成要素を有するワイヤメッシュ構造又はワイヤメッシュ構造は、1つ以上の移動防止構成要素又はカラーを含む。一実施形態において、移動防止構成要素は、金属からなる。一実施形態において、金属はニチノールなどの形状記憶金属である。移動防止構成要素は、好ましくは、ワイヤメッシュ構造(スリーブを含むデバイスの実施形態では、ワイヤメッシュ構造とスリーブ構成要素との接合部における)の遠位端に配置され、デバイスが配置されると、幽門の近位に静止するようになる。移動防止構成要素は、ワイヤメッシュ構造又はデバイス全体が幽門を通過するのを防止するように機能する。
【0079】
種々の実施形態において、ワイヤメッシュ構造、回収機構、及び/又は移動防止構成要素を含むデバイスの種々の構成要素が、デバイスの機能性を高めるために治療薬でコーティングされる。
【0080】
種々の実施形態において、ワイヤメッシュ構造、フック、及び/又は移動防止構成要素は、送達及び回収を容易にするための、放射線画像可視化用の放射線不透過性マーカーを含む。種々の実施形態において、ワイヤメッシュ構造、フック及び/又は移動防止構成要素は、送達及び回収を容易にするための、超音波可視化用の超音波マーカーを含む。
【0081】
送達デバイス
本明細書はまた、患者の胃腸管に胃内デバイスを展開するために使用される送達デバイスの、種々の実施形態を開示する。胃内デバイスは、送達デバイス上に事前負荷され、次いで、胃内デバイスのワイヤメッシュを胃内に送達し、胃内デバイスのスリーブを近位小腸内に送達するために使用される。
【0082】
一実施形態において、送達デバイスは、同軸プランジャー及びカテーテル、並びに複数のハンドルを有する、細長い管状体を含む。ハンドルは、胃内デバイスのスリーブ及びワイヤメッシュ構造を複数の段階で展開するように操作される。一実施形態において、管状体は、送達デバイスの種々の構成要素の動きを制御して胃内デバイスの展開を実行するトリガーを含む。
【0083】
種々の実施形態において、胃内デバイスは、標準的なオーバーチューブ、内視鏡、及び把持器を使用して回収することができる。
【0084】
本発明は、複数の実施形態を目的とする。以下の開示は、当業者が本発明を実施できるように提供される。本明細書中で使用される用語は、いかなる特定の実施形態の一般的な否認として解釈されるべきではなく、又は、本明細書中で使用される用語の意味を超えて請求項を限定するために使用されるべきではない。本明細書にて定義される一般的な原理は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、他の実施形態及び用途に適用することができる。また、使用される用語及び句は、好ましい実施形態を説明するためのものであり、これらを限定するものではない。したがって、本発明は、開示された原理及び特徴と一致する多数の代替物、修正物、及び均等物を包含する、最も広い範囲が与えられるべきである。明確にする目的として、本発明を不必要に不明瞭にしないよう、本発明に関連する技術分野において周知である技術材料に関する詳細は、詳細に説明されていない。
【0085】
図1は上部胃腸管系の図である。嚥下後、食物は速やかに食道111を通過して胃112に入り、そこで一定時間消化され、胃液とすり混ぜて等浸透圧まで希釈される。胃112は摂取食物量に応じて弛緩する。胃112が食物で満たされると、胃壁の伸張受容器によって膨満感又は満腹感が生じ、患者は食事をやめる。等浸透圧性の食物として知られる糜粥は、その後幽門113を通過して十二指腸114内へ入る。糜粥が十二指腸114内に入ると、膵臓115から酵素に富む膵臓分泌、及び肝臓116から胆汁酸塩に富む胆汁分泌が放出される。胆汁分泌は総胆管117を通過し、そこで膵管118から到達する膵臓分泌と合流し、2つの管が合流してファーター膨大部119を形成する。ファーター膨大部119は、十二指腸114に分泌物が沈着するための入り口として働く。空腸120では、膵分泌物及び胆汁分泌と糜粥とが混合されて、たんぱく質、脂肪、及び炭水化物が消化され、そして血流に吸収される。
【0086】
図2Aは、本明細書の一実施形態による、遠位端から延びているか又は遠位端に取り付けられている、近位に傾斜した移動防止円板又はカラー204を有する、展開後構成における胃内デバイスのワイヤメッシュ構造201の図である。ワイヤメッシュ構造201は、内部容積を有する3次元多孔質構造を備える。ワイヤメッシュ構造201は、卵形状であり、回収機構203を含む。一実施形態において、回収機構は、シルク縫合糸ループである。一実施形態において、回収機構は80ポンド(約36.29kg)の回収縫合糸である。移動防止カラー204は、ワイヤメッシュ構造201の遠位端がワイヤメッシュ構造201の近位端に向かうように折り畳まれた、ワイヤメッシュ構造201の遠位部分を備えるという点で、近位側に傾斜している。他の実施形態において、カラー204は、ワイヤメッシュ構造201の遠位端の周りに、円周方向に配置されたあらゆる湾曲性/非外傷性構造を備える。カラー204は、ワイヤメッシュ構造201が幽門に入って通過することを防止するために役立つ。一実施形態において、ワイヤメッシュ構造201は、球状、主に球形又は卵形の近位端、及び拡張された遠位端を含む。一実施形態において、構造体の遠位半分は、構造201からの食物の排出を妨げ、遠位開口部を介して食物を導く、膜で覆われている。一実施形態において、構造201は、近位端に随意の逆流防止弁を有し、遠位端に別の随意の弁を有する。遠位端の弁は、構造201の内側から構造201の外側への、糜粥又は部分的に消化された食物の流れを制御するように作用する。
【0087】
図2Bは、本明細書の一実施形態による、遠位端に形成された近位湾曲移動防止カラー214を有する、展開後構成におけるワイヤメッシュ構造210の図である。ワイヤメッシュ構造210は、近位端及び遠位端を有する卵形状である。ワイヤメッシュ構造210は、その本体内に交互配置節216、218を含み、送達及び除去のための圧縮を容易にする。ワイヤメッシュ構造210はまた、その近位端に一組の交互配置節217を含む。近位端の交互配置節217は、把持するための位置を提供することで、回収の容易性を高める。移動防止カラー214は、遠位端において、ワイヤメッシュ構造210のワイヤの延長部から形成される。移動防止カラー214は、ワイヤメッシュ構造210の本体に向かって近位側に屈曲し、その端部215は体組織に非外傷性であるよう丸みを帯びた様式で形成される。種々の実施形態において、ワイヤメッシュ構造210は、鋭利な端部を有さず、剥離の発生を防止し、そして胃の収縮及び幽門通過よる有意な又は永久的な変形を防止するのに充分高い半径方向力を有するが、ワイヤメッシュ構造210が剛性すぎず、ワイヤメッシュ構造210を通過する食物の移動を容易にする程度には充分な胃の収縮によって充分に影響され得るような、低い半径方向の力を有する。いくつかの実施形態において、ワイヤメッシュ構造は、完全に圧縮されることなく200mmHg(26.66KPa)までの収縮力に耐えることができる。
【0088】
図3Aは、本明細書の一実施形態による、胃内デバイス300のワイヤメッシュ構造310の、非外傷性移動防止カラー314の拡大図である。移動防止カラー314は、トロイド状電球形であり、ワイヤメッシュ構造310に向かって近位に延びる、丸みを帯びた端部315を備える。丸みを帯びた端部315は、体組織に対して非外傷性であるように設計されている。上述したように、いくつかの実施形態において、端部315は圧縮された場合にワイヤの集積を防止するため、種々の節に分割されており、侵食をもたらす可能性がある。カラー312の長軸は、丸みを帯びた端部315がワイヤメッシュ構造310に向かう方向に位置決めされるように、メッシュ311の長軸と比較して、90°よりも大きい角度313で湾曲している。
【0089】
図3Bは、本明細書の別の実施形態による、胃内デバイス320のワイヤメッシュ構造321の、非外傷性移動防止カラー324の拡大図である。移動防止カラー324は、トロイド状電球形であり、ワイヤメッシュ構造321に向かって近位に延びる丸みを帯びた端部325を備える。丸みを帯びた端部325は、体組織に対して非外傷性であるように設計されている。いくつかの実施形態において、端部325は、圧縮された場合にワイヤの集積を防止するため、種々の節327l、327sに分割され、侵食をもたらす可能性がある。節は、長い節327l及び短い節327sを含み、長い節327lは、短い節327sよりも近位方向で、ワイヤメッシュ構造321の頂部に向かってさらに後方に延びる。いくつかの実施形態において、カラー324は、9個の長い節327l及び9個の短い節327sを含む。長い節327lの自由端は、スリーブ構成要素の近位端を縫合するためのフープ328を含む。フープ328は、長い節327lの自由端から外側に向かって延びている。一実施形態において、フープ328aは、長い節327lの自由端をフープ形状に巻きつけることによって形成される。別の実施形態において、フープ328bは、長い節327lの自由端に縫合される、別個のワイヤフープを供える。いくつかの実施形態において、スリーブが取り付けられると、スリーブ取り付け部の摺動を防止するために、巻き付け又は分離したワイヤフープの接合部にさらなる縫合糸結び目が配置される。
【0090】
いくつかの実施形態において、スリーブ構成要素は、ワイヤメッシュ構造の遠位端又は胃内デバイスのカラーに取り付けられる。種々の実施形態において、本明細書のスリーブ構成要素は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)若しくはポリエチレン、又はキャストPTFE(例:テフロン)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)若しくはパーフルオロアルコキシ(PFA)コーティングを有するPTFE、PFA、押し出しFEP及び押し出しPFA、又は押し出しPTFE、又はフルオロポリマー若しくはシリコーンで作られる。一実施形態において、シリコーンスリーブは、手作業による注入及び編組によって製造される。別の実施形態において、シリコーンスリーブは機械編組によって製造される。種々の実施形態において、スリーブ構成要素は、6インチ~6フィート(約15.24~182.88cm)、又はそれ以上の範囲の長さである。一実施形態において、スリーブ構成要素の長さは24インチ(約60.96cm)である。別の実施形態において、スリーブ構成要素の長さは30インチ(約76.20cm)である。種々の実施形態において、スリーブ構成要素は、1~10cmの範囲の直径を有する。一実施形態において、スリーブ構成要素は、3cmの直径を有する。
【0091】
図4Aは、スリーブ400の本体に沿って螺旋を描く単一のワイヤ支持体401を示す、本明細書の一実施形態による、展開後構成における胃内デバイスのスリーブ構成要素400の一部分の図である。金属ワイヤは、支持を提供するのに充分きつい螺旋を有する必要があるが、スリーブが送達のために圧縮される際に、ねじれることでその完全な形状を回復することができなくなるほど、螺旋がきつくてはならない。
図4Aを参照すると、螺旋状金属ワイヤ401は、長さlで示される、60mmに等しいピッチを有する。ワイヤ厚さが0.1~1mmである場合、このピッチは螺旋状金属ワイヤに、20%以下、好ましくは8%未満の歪み率を与える。
【0092】
図4Bは、スリーブ405の本体に沿って螺旋を描く複数のワイヤ支持体406、407、408を示す、本明細書の一実施形態による展開後構成における、胃内デバイスのスリーブ構成要素405の一部分の図である。スリーブは、永久的なよじれを防止しながらより強い支持を提供するための、複数の螺旋状金属ワイヤを含む。
図4Bを参照すると、各々別個のワイヤ406、407、408は、長さl
1で表される60mmに等しいピッチを有する。ワイヤ406、407、408は、長さl
2で示される2つの別個のワイヤ間のピッチが、20mmに等しくなるように間隔をあけられている。
【0093】
図4Cは、スリーブ410上の螺旋ワイヤループ支持体411、413を示す、本明細書の一実施形態による、展開後構成における胃内デバイスの漏斗形スリーブ構成要素410の図である。
図4Cに示す一実施形態において、スリーブ410はワイヤループ支持体411、413の2組を含む。ワイヤループ支持体411、413の各セットは、スリーブ410上に合計4本のワイヤを有する2本の個別のワイヤからなるループを含み、各ワイヤループ支持体411、413は、平滑化された端部415で仕上げられ、体組織に非外傷性である。ワイヤループ支持体411、413は、螺旋形状にねじられ、スリーブ410の長さに沿ってループする。一実施形態において、各ループ411、413間のピッチ又は距離(各ループ411、413の各ワイヤ間)は、長さlによって定義され、およそ15mmである。
【0094】
一実施形態において、漏斗形スリーブの開口部は、胃内デバイスのいくつかの実施形態のワイヤメッシュ構造の遠位端に位置するカラーの節への取り付けによく適している。
【0095】
図5は、スリーブ544の近位端に向かうワイヤメッシュ支持体の平滑断端552を示す、本明細書の一実施形態による、展開後構成におけるスリーブ構成要素544が取り付けられたワイヤメッシュ構造530の図である。スリーブ544は、ワイヤメッシュ構造530の遠位端において近位側に湾曲した、非外傷性移動防止カラー542に接続され、4つの層を有する近位部分545、及び3つの層を有する中心部分555を含む。
【0096】
図6は、本明細書の一実施形態による、展開後構成における漏斗形スリーブ610を有する胃内デバイス600の図である。胃内デバイス600は、近位端及び遠位端を有し、該遠位端に形成された移動防止カラー620を有するワイヤメッシュ構造605を含む。スリーブ610は近位端及び遠位端を含み、その近位端を介して移動防止カラー620に取り付けられる。
【0097】
ワイヤメッシュ構造605は、それ自体の周りに折り畳まれた少なくとも1つの金属ワイヤを含み、構造に沿って複数の自由な湾曲した端部又は節を有する、交差した織り目を形成する。拡張した展開後構成では、ワイヤメッシュ構造605は卵形である。送達及び除去を容易にするための最適な拡張及び圧縮を容易にするために、ワイヤメッシュ構造605は、その長さに沿って複数の交互配置節606、607、608、609を含む。交互配置節606の第1の組は、ワイヤメッシュ構造605の近位端に位置し、第1の開口部601を囲む。一実施形態において、交互配置節606の第1の組の各節は、ワイヤメッシュ構造605の内部と反対の方向に伸びるように上方に曲げられている。交互配置接606の第1の組の節は、胃内デバイス600の除去の間、回収デバイスのための把持点として使用される。ワイヤメッシュ構造605は、第1の組606から遠位であって、ワイヤメッシュ構造605の中点から近位の第2の組の交互配置節607を含む。第3の組の交互配置節608は、ワイヤメッシュ構造605の前記中点から遠位であり、且つ遠位端から近位に配置される。第4組の交互配置節609は、ワイヤメッシュ構造605の遠位端に配置され、移動防止構成要素620の自由端を含む。交互配置節606、607、608、609の各セットにおける節を構成する全ての曲線は、体組織に対して非外傷的な曲げを有するように設計される。節は、展開前構成に圧縮される際に、ワイヤの屈曲点の集積及びワイヤメッシュ構造の膨らみを防止するため、交互配置される。ワイヤメッシュ構造の長さに沿って節を広げることにより、圧縮されたデバイスの全体的な直径を小さくすることができる。
【0098】
スリーブ610は、スリーブ610本体に沿って転移点615で結合する近位部分611及び遠位部分616を含む。スリーブ610の近位部分611及び遠位部分616の両方は漏斗形であり、それぞれは、部分611、616が遠位方向に延びるにつれて減少する直径を有する。一実施形態において、近位部分611の直径は、近位部分611の近位端における移動防止カラー620の直径と実質的に同じである。近位部分611の直径は、スリーブ610がその遠位部分616に移行するまで、近位部分611が遠位に延びるにつれて減少し、この点で近位部分611と遠位部分616の直径は等しい。次いで、遠位部分616の直径は、該遠位部分616が遠位方向に延びるにつれて減少する。スリーブ610の遠位部分616は、胃内デバイス600の遠位端の第2の開口部619で終わる。一実施形態において、近位部分611は、遠位部分616の長さより短い長さを有する。種々の実施形態において、漏斗形スリーブ610は、少なくとも1つのワイヤ支持体を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのワイヤ支持体は、近位部分611及び遠位部分616の両方において同じ一つ又は複数のワイヤを含む。他の実施形態において、近位部分611及び遠位部分616は、別々のワイヤ支持体を含み、ワイヤは、近位部分611の遠位端及び遠位部分616の近位端で一緒に結合される。一実施形態において、別々のワイヤは、一緒にスポット溶接される。ワイヤは、それ自体の上で折り重ねられ、スリーブ610内に交差する織り目を形成する。近位部611と遠位部616の両方において、ワイヤの交差部分は、部分611、616が遠位方向に延び、漏斗形状が狭くなり、各部分611、616の遠位端において織り目がより密になるにつれて互いに接近する。スリーブ610は、近位端及び遠位端において、ワイヤメッシュ構造605の節と同様の曲線又は自由端を含む。自由端は、体組織に対して非外傷性であるように設計されている。スリーブ610の近位端の自由端は、1つ又は複数の縫合糸622を介して、ワイヤメッシュ構造605の第4組の交互配置節609の節に取り付けられ、スリーブ610の遠位端の自由端は、第2の開口部619を囲む。種々の実施形態において、スリーブ610は、5~120cmの範囲の全長を有する短いスリーブである。一実施形態において、スリーブ610は、全長60cmの短いスリーブである。一実施形態において、スリーブ610は、その遠位端に柔らかい非外傷性チップ630を含む。先端630はワイヤを含まず、スリーブ先端から腸粘膜への損傷を防止するために含まれる。
【0099】
スリーブ610がワイヤメッシュ構造605に取り付けられると、スリーブ610の近位部分611の近位端がスライドされ、スリーブ610の近位部分611がワイヤメッシュ構造の遠位端の開口部を覆うように、移動防止構成要素620の少なくとも一部を覆う。この位置決めは、ワイヤメッシュ構造605の内部とスリーブ610の内部との間の流体連結を可能にし、第1の開口部601から、ワイヤメッシュ構造605の内部に入り、スリーブ610の内部を通り、第2の開口部619から出る食物の経路を確立する。
【0100】
図7は、本明細書の一実施形態による、展開後構成における円筒形スリーブ710を有する胃内デバイス700の図である。胃内デバイス700は、近位端及び遠位端を有し、該遠位端に形成された移動防止カラー720を有するワイヤメッシュ構造705を含む。スリーブ710は、近位端と遠位端とを含み、その近位端を介して移動防止カラー720に取り付けられる。一実施形態において、スリーブ710は、その遠位端に柔らかい非外傷性チップ730を含む。先端730はワイヤを含まず、スリーブ先端から腸粘膜への損傷を防止するために含まれる。
【0101】
ワイヤメッシュ構造705は、
図6を参照して説明した構造605と同様であり、十字線状の織り目を有する卵形状、複数の交互配置節706、707、708、709、及びその近位端に第1の開口部701を含む。交互配置節706、707、708、709の各セットにおける節を構成する全ての曲線は、体組織に対して非外傷的な曲げを有するように設計される。
【0102】
スリーブ710は、スリーブ710本体に沿って転移点715で結合する近位部分711及び遠位部分716を含む。スリーブ710の近位部分711は漏斗形であり、部分711が遠位方向に延びるにつれて減少する直径を含む。一実施形態において、近位部分711の直径は、近位部分711の近位端における移動防止カラー720の直径と実質的に同じである。近位部分711の直径は、スリーブ710がその遠位部分716に移行するまで、近位部分711が遠位に延びるにつれて減少し、この点で近位部分711と遠位部分716の直径は等しい。次いで、遠位部分716の直径は、該遠位部分716が遠位方向に延びるのと同じサイズで続き、遠位部分716を実質的に円筒形にする。スリーブ710の遠位部分716は、胃内デバイス700の遠位端の第2の開口部719で終わる。一実施形態において、近位部分711は、遠位部分716の長さより短い長さを有する。
【0103】
種々の実施形態において、スリーブ710の漏斗形状の近位部分711は、少なくとも1つのワイヤ支持体を含む。ワイヤは、それ自身の上に折り畳まれてスリーブ710内に十字状の織り目を形成し、ワイヤの交差部分は、部分711が遠位方向に延び、漏斗形が狭くなるにつれて互いに接近し、近位部分711の遠位端で織り目がよりきつくなる。種々の実施形態において、遠位部分716は、その円筒形の長さに沿って延びる少なくとも1つの螺旋ワイヤ支持体を含む。螺旋状ワイヤ支持体は、結果として生じる螺旋状織構造が、スリーブ710の遠位部分716の長さに沿って同じパターンを有するように、一定のピッチを有する。一部の実施形態において、遠位部分716の螺旋状ワイヤ支持体は、近位部分711の少なくとも1つのワイヤ支持体の延長である。他の実施形態において、近位部分711及び遠位部分716は、別々のワイヤ支持体を含み、ワイヤは、近位部分711の遠位端及び遠位部分716の近位端で一緒に結合される。一実施形態において、別々のワイヤは、一緒にスポット溶接される。スリーブ710は、その近位端及び遠位端において、ワイヤメッシュ構造705の節と同様の曲線又は自由端を含む。自由端は、体組織に対して非外傷性であるように設計されている。スリーブ710の近位端の自由端は、1つ又は複数の縫合糸722を介して、ワイヤメッシュ構造705の第4組の交互配置節709の節に取り付けられ、スリーブ710の遠位端の自由端は、第2の開口部719を囲む。種々の実施形態において、スリーブ710は、5~120cmの範囲の全長を有する短いスリーブである。一実施形態において、スリーブ710は、全長60cmの短いスリーブである。漏斗形円錐形部分は、全スリーブ長の1%から全スリーブ長の100%まで変化できる。
【0104】
スリーブ710がワイヤメッシュ構造705に取り付けられる場合、スリーブ710の近位部分711の近位端は、スリーブ710の近位部分711がワイヤメッシュ構造の遠位端の開口部を覆うように、移動防止構成要素720上をスライドする。この位置決めは、ワイヤメッシュ構造705の内部とスリーブ710の内部との間の流体連結を可能にし、第1の開口部701から、ワイヤメッシュ構造705の内部に入り、スリーブ710の内部を通り、第2の開口部719から出る食物の経路を確立する。
【0105】
図8Aは、本明細書の一実施形態による、胃内デバイス800のワイヤメッシュ構造805の移動防止カラー804に取り付けられた、漏斗形スリーブ802の拡大図である。スリーブ802は、複数の縫合糸808を介して移動防止カラー804に取り付けられる。
【0106】
図8Bは、本明細書の別の実施形態による、胃内デバイス810のワイヤメッシュ構造815の移動防止カラー814に取り付けられた、漏斗形スリーブ812の拡大図である。複数の縫合糸818を介して移動防止カラー814に取り付けられたスリーブ812は、その近位端に複数のほつれた端部811を含み、これらの端部の体組織に対する外傷性を低減する。
【0107】
図8Cは、本明細書の一実施形態による、ワイヤメッシュ構造825及び取り付けられたスリーブ822を含む、胃内デバイス820の図である。ワイヤメッシュ構造825はアンカーレスであり、非外傷性ワイヤ端部を含む。一実施形態において、ワイヤメッシュ構造825は、ニチノールからなる。ワイヤメッシュ構造825は、スリーブ822が取り付けられた移動防止カラー824を含む。いくつかの実施形態において、ワイヤメッシュ構造825は、
図8Eを参照して示されるように、その近位端に近接して配置された回収牽引糸を含む。スリーブ822は、小腸、特に十二指腸中央部の近位部分に延びるように設計された、アンカーレス、不透過性、フルオロポリマーのライナーを含む。種々の実施形態において、スリーブ822は、ポリマー層内に埋め込まれたニチノールステント構造を含み、スリーブ822は非外傷性であり、ニチノールの部分は小腸に接触しない。一実施形態において、スリーブ822は、適切な送達及び配置を補助するための放射線不透過性マーカーを含む。
【0108】
ワイヤメッシュ構造825は、アンカーレスであり、胃内の空間を占有する。ワイヤメッシュ構造825は、胃内で自由に浮動し、胃の内壁と接触する際に胃の一部に穏やかで非外傷性の伸張力を断続的に加える。伸張力は患者の満腹感を誘発する。移動防止カラー824は、取り付けられたスリーブ822を受け入れるように適切に成形されており、胃内容物は、ワイヤメッシュ構造825の近位端にある第1の開口部821、又はワイヤメッシュ構造825のワイヤ間の開口部829を通ってワイヤメッシュ構造825に入り、取り付けられたスリーブ822内に導かれる。その後、胃内容物はスリーブ822を通過し、スリーブ822の長さに応じて、スリーブ822の遠位端の第2の開口部823を空にし、十二指腸又は空腸のいずれかに入る。スリーブ822は、ワイヤメッシュ構造825の移動防止カラー824に予め取り付けられている。スリーブ822に埋め込まれたニチノールステント構造は、スリーブ822を支持し、それが腸筋組織の作用によってねじれたり、又はよじれたりするのを防止する。さらに、ニチノールステント構造は、小腸壁に穏やかな放射状の伸長力を与え、患者の満腹感を誘発し、スリーブ822の周りの糜粥の通過を防止する。
【0109】
図8Dは、
図8Cの胃内デバイス820を示す図であり、スリーブ822は、周囲の解剖学的形態に対してデバイス820の寸法を示すように直線化されている。スリーブ822は、ワイヤメッシュ構造825の移動防止カラーに取り付けられた近位部分、漏斗状部分、又は円錐状部分822p、及び該近位部分822pから遠位に延びる遠位円筒状部分822dを含む。ワイヤメッシュ構造825及びスリーブ822の近位部分822pは、患者の胃内に存在するように構成され、約8インチ(約20.32cm)の最大外径及び長さl
1を共に有する。一部の実施形態において、長さl
1は約10インチ(約25.40cm)である。いくつかの実施形態において、完全に展開されたワイヤメッシュ構造825の体積は、約1リットルである。スリーブ822の近位部分822p及びスリーブ820の遠位部分822dは、患者の幽門に着座するように構成された接合点822jで出会う。スリーブ820の遠位部分822dは、患者の小腸、特に十二指腸に存在するように構成され、約1.0インチ(約2.54cm)の最大外径及び長さl
2を有する。いくつかの実施形態において、長さl
2は、約10~25インチ(約25.40~63.50cm)である。いくつかの実施形態において、遠位部分822dの長さl
2は、スリーブ822の遠位端が十二指腸に位置決めされ、胃内容物が胃からデバイス820を通って直接十二指腸に入り、幽門をバイパスするようにする。他の実施形態において、長さl
2は、スリーブ822の遠位端が空腸内に位置決めされ、胃内容物が胃からデバイス820を通って空腸内に直接通過し、幽門及び十二指腸をバイパスするようにする。他の実施形態において、ワイヤメッシュ構造は、最大直径18インチ(約45.72cm)、最大長さ24インチ(約60.96cm)、最大容積2.5リットルを有する。
【0110】
図8Eは、本明細書の一実施形態による、該ワイヤメッシュ構造835上の回収牽引糸837、838を示す、胃内デバイス830のワイヤメッシュ構造835及びスリーブ832の図である。スリーブ832は、ワイヤメッシュ構造835の遠位端において、移動防止カラー834に取り付けられる。いくつかの実施形態において、移動防止カラー834は、
図4Cを参照して分かるように、節の遠位端の節のワイヤにループを含み、スリーブ832は、これらのループで移動防止カラー834に縫合される。図示された実施形態において、一対の回収牽引糸837、838は、ワイヤメッシュ構造835の近位端に近接して配置される。第1の牽引糸837は、ワイヤメッシュ構造835の近位端に配置され、第2の牽引糸838は、第1の牽引糸837に対して遠位であるが、ワイヤメッシュ構造835の近位端に近接して配置され、回収牽引糸837、838は、ワイヤメッシュ構造835のワイヤ間の開口部を通過する。回収中、回収牽引糸837、838の自由端は、把持器を用いて引っ張られ、ワイヤメッシュ構造835をより小さい外径に制限し、内視鏡を通して患者から除去することができる。一実施形態において、2つの牽引糸837、838は、一方の牽引糸を収縮させると他方の牽引糸を同時に収縮させるように相互接続されている。
【0111】
図8Fは、本明細書の一実施形態による、該ワイヤメッシュ構造845上の単一の回収牽引糸848を示す、胃内デバイス840のワイヤメッシュ構造845及びスリーブ842の図である。スリーブ842は、ワイヤメッシュ構造845の遠位端において、移動防止カラー844に取り付けられる。いくつかの実施形態において、移動防止カラー844は、節の遠位端の節のワイヤにループを含み、スリーブ842は、これらのループで移動防止カラー844に縫合される。図示された実施形態において、単一の回収牽引糸848は、その近位端に近接してワイヤメッシュ構造845上に配置される。回収牽引糸848は、ワイヤメッシュ構造845のワイヤ間の開口部を通過する。回収中、回収牽引糸848の自由端は、把持器を使用して引っ張られ、ワイヤメッシュ構造845をより小さい外径に制限し、内視鏡を通して患者から除去することができる。図示の実施形態において、単一の牽引糸848は、ワイヤメッシュ構造845上の2つの複数の節847、849、ワイヤメッシュ構造845の近位端における第1の複数の節847、及び牽引糸848のレベルにおける第2の複数の節849を拘束するのに充分である。他の実施形態において、単一の牽引糸は、ワイヤメッシュ構造上の1つ又は2超の複数の節を拘束するために充分である。
【0112】
スリーブが金属ワイヤ支持体を含むいくつかの実施形態において、ワイヤ又はワイヤの端部は、体組織に対して非外傷性であるように設計される。種々の実施形態において、ワイヤの端部は、平滑化され、ワイヤ上で折り曲げられ、又は他のワイヤの端部に溶接される。他の実施形態において、スリーブの遠位端は、遠位端を体組織に対して非外傷性にするように設計された構成要素を含む。
図9Aは、スリーブ905の遠位端の断面図であり、該遠位端が体組織に対して非外傷性であるように構成されるよう設計された構成要素910の一実施形態を示す。構成要素910は、近位端911、遠位端919、及び内腔916を有する円筒形である。構成要素910は両端911、919で開いている。構成要素910の内腔916は、スリーブ905の内腔906と流体連結しており、食物がデバイス、スリーブ905、及び構成要素910のワイヤメッシュを通過できるようにしている。遠位端919は、体組織に対して非外傷性である平滑な形状に丸められている。構成要素910の外面は、円形部材又はOリング914を受容するように構成された溝913を含んでいる。構成要素910をスリーブ905に取り付けるために、スリーブ905の遠位端を構成要素911の近位端910上に同軸的にスライドさせ、スリーブ905の一部をこの溝913上に配置する。次に、Oリング914をスリーブ905上に被せて溝913内に配置し、スリーブ905と構成要素910との強固な接続を提供する。次いで、遠位スリーブ端部907を、スリーブ905本体に向けて後方に近位方向に折り畳む。一実施形態において、構成要素910は、構成要素910の外面から外向きに、次いで近位方向に延びる円形フランジ912を含む。フランジ912は、折り畳まれた遠位スリーブ端部907内に存在する鋭利な端部をカバーし、さらに体組織を外傷から保護するのに役立つ。種々の実施形態において、構成要素910は、5~500mmの範囲の長さ、3~30mmの範囲の外径、及び0.5~50mmの範囲の内径を有する。
【0113】
図9Bは、スリーブ905の遠位端の断面図であり、該遠位端が体組織に対して非外傷性であるように構成されるよう設計された、構成要素920の別の実施形態を示す。構成要素920は、近位端921、遠位端929、及び内腔926を有する円筒形である。構成要素920は両端921、929で開いている。構成要素920の内腔926は、スリーブ905の内腔906と流体連結しており、食物がデバイス、スリーブ905、及び構成要素920のワイヤメッシュを通過できるようにしている。遠位端929は、体組織に対して非外傷性である平滑な形状に丸められている。構成要素920の外面は、円形部材又はOリング924を受容するように構成された溝923を含む。構成要素920をスリーブ905に取り付けるために、スリーブ905の遠位端を構成要素920の近位端921上に同軸方向にスライドさせ、スリーブ905の一部をこの溝923上に配置する。Oリング924をスリーブ905の上に被せて溝923内に配置する。次いで、遠位スリーブ端部をスリーブ905本体に向けて後方に近位方向に折り畳む。次いで、熱収縮チューブ925を、この遠位スリーブ端部及びOリング924の上に配置する。熱収縮チューブ925に熱を加えて、チューブ925を収縮させ、スリーブ905を構成要素920に確実に接続する。遠位スリーブ端部内のいかなる鋭い端も、熱収縮チューブ925の下に収容され、体組織にさらされない。
【0114】
図9Cは、スリーブ905の遠位端の断面図であり、該遠位端が体組織に対して非外傷性であるように構成されるよう設計された、構成要素930の別の実施形態を示す。構成要素930は、近位端931、遠位端939、及び内腔936を有する円筒形である。構成要素930は両端931、939で開いている。構成要素930の内腔936は、スリーブ905の内腔906と流体連結して、食物がデバイス、スリーブ905、及び構成要素930のワイヤメッシュを通過できるようにしている。遠位端939は、体組織に対して非外傷性である平滑な形状に丸められている。構成要素930の外面は、円形部材又はOリング934を受容するように構成された溝933を含む。構成要素930をスリーブ905に取り付けるには、まずスリーブ905を裏返しにする。次に、スリーブ905の遠位端を構成要素930の遠位端939に同軸方向にスライドさせて、スリーブ905の一部を溝933の上に配置する。Oリング934がスリーブ905の上に位置して溝933の中に入る。次いで、スリーブ905は、構成要素930のOリング934及び近位端931の上に、近位方向に折り返され、スリーブ905と構成要素930との強固な接続を提供する。スリーブ905を構成要素930に接続するこのプロセスは、遠位スリーブ端部907がスリーブ内腔906内に位置決めされることを確実にする。遠位スリーブ端部907内のいかなる鋭い端も、スリーブ内腔906内に収容され、体組織にさらされない。
【0115】
図10は、本明細書の一実施形態による、位置決めテール1010が取り付けられたスリーブ1005の遠位端の図である。位置決めテール1010は、5~500mmの長さを有する短いスリーブ1005の遠位端に取り付けられる。位置決めテール1010は、スリーブ1005の遠位端から患者の十二指腸に延びる材料のリボンを含み、患者の幽門に対してスリーブ1005の適切なインプラント配向を維持するのを助けるために使用される。種々の実施形態において、位置決めテール1010は、5~500mmの範囲の長さlを有する。一実施形態において、位置決めテール1010は、25mmの長さlを有する。一実施形態において、位置決めテール1010の遠位端は、該遠位端を計量するためのビーズ1015を含む。別の実施形態において、位置決めテールの遠位端は、ホーステールと同様の複数の別個の自由端を含む。他の実施形態において、位置決めテールの遠位端は、適切なスリーブの向きを確実にするためにテールを引っ張ることができるよう、該遠位端に付加的な重量又はタギングを提供するように設計されたあらゆる機構又は構成要素を含む。一実施形態において、位置決めテールの遠位端は、いかなる追加の構成要素も含まない。
【0116】
図11Aは、本明細書の一実施形態による、ボール1113に接合された複数のフリンジ1112を含む、スリーブ1110の遠位端の図である。種々の実施形態において、スリーブ1110の遠位端は、2つ以上のフリンジ1112を含む。一実施形態において、スリーブ1110の遠位端は、4つのフリンジ1112を含む。各フリンジ1112は、隣接するフリンジ1112から分離されたスリーブ材料の一部を含む。フリンジ1112は、胃内デバイスを通過する食物がスリーブ1110から出ることを可能にする、空間1111によって互いに分離される。種々の実施形態において、各フリンジ1112は、5~500mmの範囲の長さ、及び1~15mmの範囲の幅を有する。いくつかの実施形態において、各フリンジ1112の幅は、フリンジ1112が遠位方向に延びるにつれて減少する。フリンジ1112は、スリーブ1110の最遠位端においてボール1113に接続されている。種々の実施形態において、ボール1113は、2~30mmの範囲の直径を有する。種々の実施形態において、ボール1113は、各フリンジ1107に接着又は結合されており、ボール1113は、フリンジ1112を一緒に結合し、スリーブ1110の遠位端を重量測定して、適切なデバイス配向を補助する役割を果たす。ボール1113は球形であるため、鋭いエッジはなく、体組織に対して非外傷性である。別の実施形態において、フリンジ1112の最も遠位の端部は、結び目に結合されてボール1113を形成し、さらなるボール構成要素は必要とされない。いくつかの実施形態において、フリンジ1112及びボール1113はパラシュート形状である。一実施形態において、ボールの周囲は、送達デバイスの外側カテーテルの内側に着座するように設計される。
【0117】
図11Bは、本明細書の一実施形態による、そこから延びる縫合糸ループ又はビーズ1123が取り付けられた少なくとも1つの縫合糸1122を有する、スリーブ1120の遠位端の図である。一実施形態において、スリーブ1120は6つの縫合糸1122を含む。種々の実施形態において、縫合糸1122は、5~500mmの範囲の長さを有する。一実施形態において、縫合糸1122は、UHMWPEから構成される。各縫合糸1122の近位端は、スリーブ1120の遠位端に取り付けられ、各縫合糸1122の遠位端は、取り付けられた縫合糸ループ又はビーズ1123を含む。縫合糸ループ又はビーズ1123は、スリーブ1120の遠位端に重量を加え、スリーブ1120を適切なインプラント配向に引っ張るように設計される。縫合糸ループ又はビーズ1123はそれぞれ球形であるため、鋭利な端部を有さず、体組織に対して非外傷性である。
【0118】
図12Aは、本明細書の一実施形態による、患者の胃腸管に配置された卵形のワイヤメッシュ構造1231を有する、胃内デバイス1230の図である。図示された実施形態において、デバイス1230は、移動防止カラー1234及び取り付けられたスリーブ1232を有する、ワイヤメッシュ構造1231を含む。デバイス1230は、ワイヤメッシュ構造1231が胃1260内に位置し、幽門1261のすぐ近位に位置する移動防止カラー1234及び幽門1261を通って十二指腸1270内に伸びるスリーブ1232が配置される。スリーブ1232の遠位端は十二指腸1270内に位置する。移動防止カラーは、デバイス1230全体が幽門1261を通って十二指腸1270内に移動するのを防止する。デバイス1230は、胃1260の容積を占め、幽門1261を完全に通過せず、幽門1261及び十二指腸1270の一部を通過する食物のバイパスを提供する。種々の実施形態において、スリーブ1232は、5~120cmの範囲の長さを有する短いスリーブである。一実施形態において、スリーブ1232は、全長60cmの短いスリーブである。いくつかの実施形態において、短いスリーブ1232は、ワイヤメッシュ構造1231を重量測定し、ワイヤメッシュ構造1231を幽門1261に向かって正しい方向に向けるように機能する。さらに、一実施形態において、短いスリーブ1232を有するデバイス1230は、展開後に患者の胃1260内を自由に移動することができる。短いスリーブ1232は、非静力学的に幽門1261を前後に通過することができる。デバイス1230が移動して、短いスリーブ1232が幽門1261及び十二指腸1270内に位置せず、むしろデバイス1230の残りと共に胃1260内に位置する状況の間、短いスリーブはまた、幽門1261内への食物の流れを妨げ、調節するように機能する。これは、食物がワイヤメッシュ構造1231の近位端でデバイス1230に入り、ワイヤメッシュ構造1231及びスリーブ1232を通って移動し、漏斗形スリーブ1232を通過する際にその進行が遅くなるのに伴って起こる。適切な機能を発揮している間はいつでも、このデバイスは胃腸管壁に固定的又は永久的に係留される。展開後、その機能時間の大部分において、デバイスの少なくとも一部又はデバイス全体が、胃又は小腸に対して自由に移動する。その内腔を含んだ結果として、デバイスは、その適切な機能を発揮している間はいつでも、臨床的に意味のある期間、小腸への胃内容物の通過を完全に又は永久に遮断する。スリーブの形状に基づいて、種々の実施形態において、デバイスは胃内容排出を増加、減少させることができ、又は影響を及ぼさないことができる。
【0119】
図12Bは、本明細書の別の実施形態による、患者の胃腸管に配置された卵形のワイヤメッシュ構造1241を有する胃内デバイス1240の図である。ワイヤメッシュ構造1241は、患者の胃1260内に位置決めされ、スリーブ1242が取り付けられた移動防止カラー1244を含む。スリーブ1242は幽門1261のすぐ近位の胃内に位置する近位の漏斗状部分1242pを含む。またスリーブ1242は幽門1261と十二指腸1270を通過し、空腸1272で終わる遠位の円筒状部分1242dを含み、胃内デバイス1240を通過し、幽門1261と十二指腸1270を効果的にバイパスする胃内容物を放出する。別の実施形態において、スリーブは、より短い長さを有し、胃内デバイスを通過する胃内容物が、幽門及び十二指腸の近位部分のみをバイパスするように、十二指腸で終わる。適切な機能を発揮している間はいつでも、デバイスは胃腸管壁に固定されていたり、又は永久に係留されていたりすることはない。展開後、その機能時間の大部分において、デバイスの少なくとも一部又はデバイス全体が胃又は小腸に対して自由に移動する。その内腔の結果として、デバイスは、その正常な機能の間はいつでも、臨床的に意味のある期間、小腸への胃内容物の通過を完全に又は永久に遮断する。スリーブの形状に基づいて、種々の実施形態において、デバイスは胃内容排出を増加、減少させることができ、又は影響を及ぼさないことができる。
【0120】
図13Aは、本明細書の一実施形態による、胃内デバイス1300のための第1の例示的送達デバイス1350の図である。圧縮ワイヤメッシュ構造1301及びスリーブ1302を含む胃内デバイス1300は、送達デバイス又はカテーテル1350の遠位端の周りに同軸上に配置される。縫合糸又は糸1340を胃内デバイス1300の周りに巻きつけ、胃内デバイス1300をその圧縮された構成に維持する。カテーテル1350はさらに、胃内デバイス1300を圧迫するために使用される縫合糸又は糸1340がカテーテル1350の近位端から出る、糸ポート1358を含む。医師は縫合糸又は糸1340の自由端1359を引っ張り、胃内デバイス1300を解放する。一実施形態において、カテーテル1350はまた、デバイス1350を定位置にロックするロック機構1355を含む。
【0121】
図13Bは、本明細書の一実施形態による、
図13Aの送達デバイスを使用して胃内デバイスを送達することに関与する工程を示す、フローチャートである。ステップ1310では、圧迫された胃内デバイスが、送達デバイス又はカテーテルの遠位端の上に同軸上に配置される。次にカテーテルを患者に内視鏡的に挿入し、その遠位端をステップ1312で十二指腸に進める。次いで、ステップ1314において、カテーテルの遠位端は、胃内デバイスのワイヤメッシュ構造が幽門のすぐ近位の胃内にあり、デバイスのスリーブが幽門を通って十二指腸に入るように位置決めされる。ステップ1316で、医師は糸の自由端を引っ張り、胃内デバイスの周りから圧縮糸を取り除き、胃内デバイスを自動的に拡張させる。そして、ステップ1318で、カテーテルを胃内デバイスから同軸方向にずらし、患者から取り出す。
【0122】
種々の実施形態において、送達デバイスは、非外傷性遠位端を含む。
【0123】
図14Aは、本明細書の一実施形態による、送達デバイス上に装填される胃内デバイス1400の、ワイヤメッシュ構造1401の図である。
図14Aを参照すると、内部カテーテル1431の一部及び送達デバイスのパイロット構成要素1437が示されている。送達デバイスは、内部カテーテル1401からパイロット構成要素1437への移行時に、近位球形構成要素1435を含む。ワイヤメッシュ構造1401は、その移動防止カラー1404に取り付けられたスリーブ1402を含む。胃内デバイス1400を送達デバイスに装填する場合、パイロット構成要素1437は、近位球形構成要素1435がワイヤメッシュ構造1401のちょうど遠位に位置し、内部カテーテル1431がワイヤメッシュ構造1401の内部容積内に位置するように、ワイヤメッシュ構造1401のワイヤ間のオフセンター開口部を通過する。
【0124】
図14Bは、
図14Aのワイヤメッシュ構造1401をさらに送達デバイスに装填した図である。ワイヤメッシュ構造1401の近位端は圧縮されており、現在、送達デバイスの外側カテーテル1432の遠位端内に収容されている。ワイヤメッシュ構造1401が内部カテーテル1431に沿って近位に前進しているので、近位の球形構成要素はもはや見えない。
図14Bを参照すると、内側カテーテルは、ワイヤメッシュ構造1401の中心からオフセットされた開口部を通ってワイヤメッシュ構造1401から出るように示され、スリーブは、
図14Cを参照して説明されるように、内側カテーテルの周りに同軸的に巻かれる。別の実施形態において、内部カテーテル(及び付属のパイロット構成要素)は、ワイヤメッシュ構造内に続き、スリーブの近位漏斗形状部分の側面の開口部を通って出る。別の実施形態において、内部カテーテルは、ワイヤメッシュ構造内に続き、スリーブの遠位円筒形部分の側面の開口部を通って出る。さらに別の実施形態において、内部カテーテルは、ワイヤメッシュ構造内に続き、スリーブ全体を通過し、スリーブの遠位端の開口部を通って出る。
【0125】
図14Cは、移動防止カラー1404のみが装填されたままであるように、
図14Aのワイヤメッシュ構造1401を送達デバイスに装填した図である。
図14Dは、送達デバイスに完全に装填された
図14Aのワイヤメッシュ構造の図である。
図14Dを参照すると、ワイヤメッシュ構造は、外側カテーテル1432の遠位端内に完全に含まれているので、もはや見ることができない。スリーブ1402は、内側カテーテル1431の周りに同軸的にラップされている。
【0126】
図14Eは、
図14Aの胃内デバイスのスリーブ1402を部分的に送達デバイスに装填した図である。スリーブ1402の一部は、内側カテーテル1431の周りに同軸に巻かれており、外側カテーテル1432の遠位端から伸びているのが見える。
図14Fは、
図14Aの胃内デバイスが送達デバイスに完全に装填された状態を示す図である。近位球形構成要素1435は、外側カテーテル1432の遠位端に配置されている。一実施形態において、スリーブの遠位端から延びる複数の縫合糸1405は、近位球形構成要素1435の周りに結ばれ、胃内デバイスを送達の準備ができるまで所定の位置に維持する。送達前に、縫合糸1405は、胃内デバイスが展開され得るようにほどかれる。
【0127】
図15Aは、本明細書の別の実施形態による、胃内デバイスを除去するための回収デバイス1500の図である。回収デバイス1500は、近位端、遠位端、及び内に内腔を有する細長い本体を備える、可撓性外管1502を含む。第1のハンドル1512が近位端に取り付けられ、開口部1522が外管1502の遠位端に配置される。近位端及び遠位端を有する細長い本体を含む可撓性内側部材1504は、外管1502の内腔内に配置される。一実施形態において、内側部材1504は、可撓性金属ワイヤを含む。第2のハンドル1514が近位端に取り付けられ、回収機構1524が内側部材1504の遠位端から形成される。一実施形態において、回収機構1524はフックを含む。一実施形態において、フックはロック可能である。
【0128】
図15Bは、本明細書の一実施形態による、
図15Aの回収デバイスを使用して患者から胃内デバイスを除去するステップを示す、フローチャートである。ステップ1532で、医師は、患者に挿入された内視鏡の作動チャネルに回収デバイスの外管を挿入する。この時点で、内側部材の遠位端における回収機構は外管の遠位端内に含まれる。ステップ1534において、医師は第1のハンドルを確実に保持して、回収デバイスを患者の胃腸管内に位置決めする。次いで、ステップ1536で、医師は第2のハンドルを押して、回収機構を、開口部を通じて外管の遠位端を越えて延長する。医師は第2のハンドルを操作して、ステップ1538で回収機構を用いて、胃内デバイスの近位端をつかむ。一実施形態において、胃内デバイスの近位端は、回収機構での把握を容易にするために、
図16Bを参照して節1615として示されるような、一組の交互配置節を含む。一旦胃内デバイスが回収機構によって固定されると、医師は、ステップ1540において、第2のハンドルを引き、回収機構及び取り付けられた胃内デバイスの少なくとも一部を外管の遠位端に引っ張る。胃内デバイスは、該外管に容易に嵌合可能な大きさになるような圧縮可能形状記憶金属からなる。随意に、ステップ1542において、医師は、回収機構及び取り付けられた胃内デバイスが外管の遠位端から滑り落ちるのを防止するために、回収デバイス上のロック機構を作動させる。そして、ステップ1544において、医師は回収デバイス及び取り付けられた胃内デバイスを患者から取り外す。
【0129】
一実施形態において、胃内デバイスのワイヤメッシュ構造は、拡張可能なバルーンで覆われる。バルーンはメッシュ構造上にエンベロープ層を形成し、構造を胃酸から保護する。一実施形態において、バルーンはシリコーンからなり、送達のためにカプセルのサイズに圧縮することができる。ワイヤメッシュがバルーンの形状に適合している場合、ワイヤメッシュは送達後に拡張する。
【0130】
図16Aは、展開前にカプセルのサイズに圧縮された、バルーンで覆われたワイヤメッシュデバイスを示す。種々の実施形態において、カプセル1601のサイズは、8mm×13mmの範囲である。いくつかの実施形態において、バルーンで覆われたワイヤメッシュは、圧縮された構成で、デバイスをユーザの胃腸管に送達するためにユーザによって飲み込まれる。一旦胃内容物にさらされると、バルーンは、バルーン内で拡張するワイヤメッシュと共に拡張する。他の実施形態において、バルーンで覆われたワイヤメッシュは、圧縮された構成で、送達デバイス又はカテーテルを介して患者の胃腸管に送達される。送達デバイスから解放されると、バルーンで覆われたワイヤメッシュは、ワイヤメッシュの形状記憶特性を介して、展開後構成に拡張する。
【0131】
図16Bは、ワイヤメッシュデバイスの周りのバルーン1610が拡張するデバイスの、展開後の構成を示す。一実施形態において、デバイスは、バルーンをワイヤメッシュに保持するための1つ以上の縫合糸を含む。前述したように、ワイヤメッシュ自体は展開時に拡張される。したがって、一実施形態において、バルーンはメッシュを球形の構成で包み、メッシュデバイスを酸への露出から保護する。メッシュのワイヤ上のシリコーンコーティングと比較して、本発明の構成は、ワイヤメッシュの酸への露出を実質的に遅くし、それによってメッシュのニチノール材料の急速な腐食を防止し、デバイス寿命を延長する。いくつかの実施形態において、バルーン被覆は、少なくとも1年~2年の機能寿命をデバイスに提供し、この場合、メッシュのワイヤの胃酸による腐食は少なくとも1年後まで発生しない。
【0132】
いくつかの実施形態において、バルーンエンベロープ及びワイヤメッシュは、展開後、400~450mlの範囲の容積を有するように拡張する。いくつかの実施形態において、バルーンは、バルーンの拡張を補助し、ワイヤメッシュの拡張を可能にするために、空気、生理食塩水、水、又はあらゆる他の適切な媒体で膨張される。
【0133】
いくつかの実施形態において、本明細書の胃内デバイスは、他の実施形態で説明したワイヤメッシュ構造の代わりに圧縮可能浮動性構造を含む、アンカーレスデバイスである。浮動性構造は、前述の実施形態と同様の方法でスリーブに取り付けられ、スリーブは幽門を通って十二指腸に入る。種々の実施形態において、胃内の浮動構成要素がスリーブを適所に保持し、スリーブを効果的にアンカーレスにする。すなわち、スリーブは胃腸管のどの部分にも物理的に取り付けられていない。一実施形態において、浮動性構成要素及びスリーブを含む胃内デバイスは、非外傷性であり、胃腸組織を損傷しない。
【0134】
当該技術分野で知られているように、スリーブは一般に、幽門の下に係留されているか、又はステントされている。しかしながら、本明細書では、浮動性構成要素はその近位端でスリーブに取り付けられ、幽門の上の領域に留まることによって、スリーブを所定の位置に維持するように設計される。したがって、この構成要素は幽門の近位の胃内に留まり、スリーブは幽門を通って十二指腸の中央部まで伸びている。胃内容物は幽門に近位のスリーブに入り、スリーブを通って移動し、幽門、ファーター膨大部、及び近位十二指腸をバイパスして、十二指腸中央部でスリーブから出る。なお本実施形態において、食物の隔離及び胃内容物の排出遅延を含むワイヤメッシュ構造の機能は使用しない。
【0135】
図8A~
図8Fを参照して先に説明したように、ワイヤメッシュ胃内デバイスの実施形態は、カラーを伴う、又は伴わない、アンカーレスボール又は傘構造を含む。ボール又は傘メッシュ構造は、デバイスのスリーブとは異なる構造を有し、それによって異なるレベルの圧縮を可能にすることに留意されたい。これにより、ボールや傘の構造物が幽門を通過するのを防ぐことができる。このように、ボール又は傘は、スリーブが胃の中へ奥に戻りすぎることを防止する。以下に説明する圧縮可能浮動性構造はまた、異なるレベルの圧縮を可能にするスリーブと異なる構造を有する。種々の実施形態において、ワイヤメッシュ構造(食物の隔離機能を有する)、又は圧縮可能浮動性構造(食物の隔離機能を有しない)は、スリーブが胃内に約5cmしか移動できないように胃の容積を占める。
【0136】
図17~
図34は、幽門を通過して十二指腸に入るスリーブが取り付けられた胃内の圧縮可能浮動性構造(例:アンカー構造)を含む、アンカーレスデバイスの種々の実施形態を示す。種々の形状の浮動性構造は、胃内に浮動し、腸内でスリーブを適所に保つためのアンカー構造である。種々の実施形態において、スリーブは、構造に対して遠位の縫合又は紐によって取り付けられる。一実施形態において、浮動性構造の全ての構成に対して、スリーブと共に構造をカテーテルによって送達することができ、展開後、構造は胃内にあり、スリーブは十二指腸内にある。一実施形態において、種々の形態の浮動性構造はニチノールからなる。種々の実施形態において、浮動性構造は、空間を占有する非多孔性であり、食物の隔離機能を実行しない。種々の実施形態において、食物は、浮動性構造を通過しないが、スリーブの近位端の第1の開口部及びスリーブの遠位端の第2の開口部を介して取り付けられたスリーブを通過し、これは十二指腸の中央部に開口する。いくつかの実施形態において、食物は、浮動性構造の近位端に入り、構造体を通過してスリーブ内に入ることができる。しかしながら、これは食物の隔離又は胃内容排出には影響しない。種々の実施形態において、浮動性構造は、ニチノールのような形状記憶材料から構成され、胃収縮によって部分的に圧縮され得るが、元の形状に戻ることができる。
【0137】
図17を参照すると、スリーブ1715の近位端は、そこから延びる複数のアタッチメント1717を有し、そして、本明細書中の一実施形態に従って、胃内デバイス1700を形成するためパラシュート様の浮動性構造1718に結合される。いくつかの実施形態において、浮動性構造は、メッシュ構造体及び/又は膜で覆われる。種々の実施形態において、アタッチメント1717は、縫合糸、紐、又は金属ワイヤを含む。種々の実施形態において、スリーブ1715は、2つ以上の対のアタッチメント1717を含み、一実施形態において、スリーブ1715は、6つの対のアタッチメント1717を含む。種々の実施形態において、アタッチメント1717は、5~500mmの範囲の長さを有する。一実施形態において、アタッチメント1717は、ナイロンから構成される。各アタッチメント1723の遠位端1717はスリーブ1715の近位端に取り付けられ、各アタッチメント1717の近位端1722は浮動性構造1718に取り付けられる。種々の実施形態において、浮動性構造1717は各アタッチメント1718に接着される。少なくとも一実施形態において、浮動性構造1718は、中心要素1720から半径方向及び遠位方向に延びる複数の花弁形状要素1721を含む。種々の実施形態において、浮動性構造1718は、3~30mmの範囲の直径を有する。浮動性構造1718は、スリーブ1715の近位端に重量を加え、スリーブ1715を展開のために適切な向きに引っ張るように設計されている。デバイス1700は、スリーブ1715が胃腸管のどの部分にも物理的に取り付けられていないので、アンカーレスである。その形状のために、浮動性構造1718は鋭いエッジを持たず、体組織に対して非外傷性である。食物は、アタッチメント1717間の空間1716を通ってスリーブ1715内に入り、スリーブ1715の遠位端を通って出る。
【0138】
一実施形態において、パラシュート構造は反転される。通常のパラシュート設計は、より大きな粒子が幽門を通過するのを阻止し得ることに留意されたい。構造を反転させると、より大きな食物粒子が通過する。別の実施形態において、より大きな粒子が通過することを可能にするために、孔が通常のパラシュート構造の頂部に加えられる。
【0139】
図18Aは、胃内デバイス1800のスリーブ1815を有する、浮動性構造1818の別の実施形態を示す。
図18Aを参照すると、スリーブ1815の近位端1816は、本明細書の一実施形態による二重円板形状の浮動性構造1818に接合される。一実施形態において、スリーブ1815は、紐によって二重円板形状構造1818に取り付けられる(図示せず)。他の実施形態において、二重円板形状構造1818は、スリーブ1815に接着される。
【0140】
図18Bは、本明細書の別の実施形態による胃内デバイス1820のスリーブ1835を有する、二重円板形状構造1825を示す。一実施形態において、二重円板形状構造1825は、上側円板1822と下側円板1824とを備えており、一実施形態において、上側円板1822は、展開後、下側円板1824よりも大きい直径を有する。種々の実施形態において、上側円板1822は3~30mmの範囲の直径を有し、下側円板1824は1~20mmの範囲の直径を有する。別の実施形態(図示せず)では、下側円板は上側円板よりも大きな直径を有する。二重円板形状構造1825は、スリーブ1835の近位端1836に重量を加え、展開後にスリーブを所定の位置に維持するように設計される。その形状のために、浮動性構造1825は鋭いエッジを持たず、体組織に対して非外傷性である。
【0141】
図19は、胃内デバイス1918のスリーブ1915を有する浮動性構造1900の、別の実施形態を示す。
図19を参照すると、スリーブ1916の近位端1915は、本明細書の一実施形態による馬蹄形の浮動性構造1918に結合される。一実施形態において、スリーブ1915は、紐(図示せず)によって馬蹄形構造1918に取り付けられる。他の実施形態において、馬蹄形構造1918は、スリーブ1915に接着される。種々の実施形態において、馬蹄は、その最も広い部分で3~30mmの範囲の幅を有する。馬蹄形1918は、スリーブ1915の近位端1916に重量を加え、展開後にスリーブ1915を所定の位置に維持するように設計される。この器具は、スリーブが胃腸管のどの部分にも物理的に取り付けられていないため、アンカーレスである。その形状のために、浮動性構造1918は鋭いエッジを持たず、体組織に対して非外傷性である。食物は、馬蹄形構造の間隙1920を通ってスリーブ1916の近位端に入り、スリーブの遠位端1935を通って出る。
【0142】
図20A及び
図20Bは、胃内デバイス2018の浮動性構造2035及びスリーブ2000の、別の実施形態の上面図及び側面図をそれぞれ示している。環状メッシュ形状の浮動性構造2018は、スリーブ2016の近位端2015に取り付けられている。一実施形態において、スリーブ2015は縫合によって浮動性構造2018に取り付けられている(図示せず)。他の実施形態において、浮動性構造2018は、スリーブ2015に接着される。一実施形態において、環状メッシュ形構造2018は、展開後に逆傘状形状を形成するために開口する、第1及び第2の湾曲層2020及び2030を含む。種々の実施形態において、構造の頂部湾曲層2020はより小さく、3~30mmの範囲の直径を有し、一方、底部湾曲層2030はより大きい。浮動性構造2018は、スリーブ2015の近位端2016に重量を加え、展開後にスリーブを所定の位置に維持するように設計される。デバイス2000は、スリーブ2035が胃腸管のどの部分にも物理的に取り付けられていないので、アンカーレスである。その形状のために、浮動性構造2018は鋭いエッジを持たず、体組織に対して非外傷性である。食物は、メッシュ構造を通ってスリーブに入り、スリーブの遠位端2035を通って出る。
【0143】
図21Aは、胃内デバイス2100のスリーブ2115を有する浮動性構造2118の、別の実施形態を示している。
図21Aを参照すると、スリーブ2115の近位端は、二重涙滴又は水滴の形をした浮動性構造2118に結合されている。本明細書の一実施形態によれば、構造2118は、直立構造における上部涙滴部分2118A、及び反転又は上限反転構造における下部涙滴部分2118Bを備える。2つの涙滴部分は、上部涙滴2118Aの遠位端と底部涙滴2118Bの近位端との接合点2118Cで接合されており、一実施形態において、スリーブ2115は、縫合(図示せず)によって二重涙滴構造2118に取り付けられている。他の実施形態において、二重涙滴構造2118は、スリーブ2115に接着される。種々の実施形態において、二重涙滴構造2118は、その最も広い点において3~30mmの範囲の直径を有する。一実施形態において、二重涙滴形状の浮動性構造2118の全体が胃内に配置され、スリーブが幽門を通って十二指腸中央部に延びる。別の実施形態において、二重涙滴構造2118の接合点2218Cは、上部涙滴部分2118Aが胃に存在し、下部涙滴部分2118Bが近位十二指腸に存在するように、患者の幽門に配置されるように構成される。二重涙滴構造2118は、スリーブ2115の近位端2144に重量を加え、展開後にスリーブ2115を所定の位置に維持するように設計される。デバイス2100は、スリーブ2115が胃腸管のどの部分にも物理的に取り付けられていないので、アンカーレスである。その形状のために、浮動性構造2118は鋭いエッジを持たず、体組織に対して非外傷性である。食物は、二重涙滴構造2118を通って入り、スリーブの遠位端2135を通って出る。別の実施形態において、食物はスリーブ2115の近位端の穴(図示せず)から入り、遠位端2135から出る。
【0144】
図21Bは、胃内デバイス2120のスリーブ2125を有する浮動性構造2128の、別の実施形態を示す。
図21Bを参照すると、スリーブ2125の近位端は、上部2128A、中央部2128B及び下部2128Cを含む浮動性構造2128に結合される。一実施形態において、上部2128Aは傘形であるが、下部2118Cは逆傘形である。中間部分2128Bは、一実施形態では円筒形であり、3~30mmの範囲の直径を有する。一実施形態において、スリーブ2125は、縫合糸(図示せず)によって浮動性構造2128に取り付けられる。他の実施形態において、浮動性構造2128はスリーブ2125に接着される。浮動性構造2128は、スリーブ2125の近位端に重量を加え、展開後にスリーブ2125を所定の位置に保つように設計されている。デバイス2100は、スリーブ2120が胃腸管のどの部分にも物理的に取り付けられていないので、アンカーレスである。その形状のために、浮動性構造2128は鋭いエッジを持たず、体組織に対して非外傷性である。食物は、浮動性構造2128を通って入り、スリーブの遠位端2145を通って出る。別の実施形態において、食物はスリーブ2125の近位端の穴(図示せず)から入り、遠位端2145から出る。
【0145】
図22は、胃内デバイス2200のスリーブ2215を有する浮動性構造2218の、別の実施形態を示す。
図22を参照すると、スリーブ2215の近位端は、本明細書の一実施形態に従って、球形の浮動性構造2218に結合される。一実施形態において、スリーブ2215は、縫合糸(図示せず)によってバルブ形構造2218に取り付けられる。他の実施形態において、バルブ形構造2218は、スリーブ2215に接着される。種々の実施形態において、バルブは、その最も広い部分で3~30mmの範囲の直径を有する。バルブ2218は、スリーブ2215の近位端に重量を加え、展開後にスリーブ2215を所定の位置に維持するように設計される。デバイス2200は、スリーブ2215が胃腸管のどの部分にも物理的に取り付けられていないので、アンカーレスである。その形状のために、浮動性構造2218は鋭いエッジを持たず、体組織に対して非外傷性である。食物は、バルブ形構造2218の頂部の開口部から入り、スリーブの遠位端2235から出る。
【0146】
図23は、胃内デバイス2300のスリーブ2315を有する浮動性構造2318の、別の実施形態を示している。
図23を参照すると、スリーブ2315の近位端は、内側部分2318A及び外側部分2318Bを含む浮動性構造2318に結合されている。一実施形態において、内側部分2318Aは逆円錐形であるが、外側部分2318Bは、逆角錐形状に配置された構造要素2318Cを備える。一実施形態において、外側部分2318Bの構造要素2318Cは、ワイヤ、縫合糸、又は紐を含む。一実施形態において、浮動性構造2318の内側及び外側部分は、接合構成要素2318Dによってスリーブ2315に取り付けられ、浮動性構造2318は、スリーブ2315の近位端に重量を加え、展開後にスリーブ2315を所定の位置に保つように設計される。デバイス2300は、スリーブ2315が胃腸管のどの部分にも物理的に取り付けられていないので、アンカーレスである。その形状のために、浮動性構造2318は鋭いエッジを持たず、体組織に対して非外傷性である。食物は、浮動性構造を通ってスリーブ内に入り、スリーブ2315の遠位端2335を通って出る。
【0147】
図24は、胃内デバイス2418のスリーブ2415を有する浮動性構造2400の、さらに別の実施形態を示す。
図24を参照すると、スリーブ2415の近位端は、ボール又はバルーン形状の浮動性構造2418に結合される。本明細書の一実施形態によれば、バルーン形構造2418は、デバイス2400を位置決めするのに役立つカラー2418Aをその遠位端に含む。一実施形態において、展開後、カラー2418Aは、幽門に対して遠位の十二指腸球内に配置され、バルーン形状の浮動部分2418は、幽門に対して近位の胃内に配置される。一実施形態において、スリーブ2415は、縫合糸(図示せず)によってバルーン状構造2418に取り付けられる。他の実施形態において、バルーン状構造体2418は、スリーブ2415に接着される。種々の実施形態において、バルーンは、その最も広い部分で3~30mmの範囲の幅を有する。バルーン状構造2418は、スリーブ2415の近位端に重量を加え、展開後にスリーブ2415を所定の位置に維持するように設計される。デバイス2400は、スリーブ2415が胃腸管のどの部分にも物理的に取り付けられていないので、アンカーレスである。その形状のために、浮動性構造2418は鋭いエッジを持たず、体組織に対して非外傷性である。食物はスリーブ2415の近位端の穴(図示せず)から入り、遠位端2435から出る。
【0148】
図25A~25Cは、胃内デバイス2500A、2500B、2500Cのスリーブ2515A、2515B、2515Cを備えた浮動性構造2518A、2518B、2518Cの、他のいくつかの実施形態を示し、浮動性構造2518A、2518B、2518Cは花の形状である。
図25Aを参照すると、スリーブ2515Aの近位端は、2つの正方形状の層2516A及び2517Aを含む浮動性構造2518Aに結合される。一実施形態において、第1の正方形層2516Aは、第2の正方形層2517Aの頂部に斜めに配置され、2つの層は、一実施形態において、両方の層の頂部に配置された十字線2519Aによって適所に維持される。
図25Bに示される別の実施形態において、十字線2519Bは、浮動性構造2518Bの2つの正方形の層2516B及び2517Bの間に配置される。
【0149】
図25Cを参照すると、スリーブ2515Cの近位端に接合された、花状浮動性構造2518Cの第3の実施形態が示されている。
図25A、25B、及び25Cに記載された実施形態の花状浮動性構造2518A、2518B、2518Cの各々は、スリーブ2515A、2515B、2515Cの近位端に重量を加え、展開後にスリーブ2515A、2515B、2515Cを所定の位置に保つように設計される。一実施形態において、スリーブ2515A、2515B、2515Cは、縫合糸(図示せず)によって、花状構造2518A、2518B、2518Cに取り付けられる。他の実施形態において、花状構造2518A、2518B、2518Cは、スリーブ2515A、2515B、2515Cに接着される。デバイス2500A、2500B、2500Cは、スリーブ2515A、2515B、2515Cが胃腸管のいかなる部分にも物理的に取り付けられないので、アンカーレスである。その形状のために、浮動性構造2518A、2518B、2518Cは、鋭いエッジを有さず、体組織に対して非外傷性である。食物は、浮動性構造2518A、2518B、2518Cを通ってスリーブ2515A、2515B、2515Cに入り、スリーブ2515A、2515B、2515Cの遠位端を通って出る。別の実施形態において、食物は、スリーブ2515A、2515B、2515Cの近位端の穴(図示せず)から入る。
【0150】
図26は、胃内デバイス2618のスリーブ2615を有する浮動性構造2600の、別の実施形態を示している。
図26を参照すると、スリーブ2634の近位端2615は、ボビン形状の浮動性構造2618に結合されている。本明細書の一実施形態による、構造2618は、上部円板部分2618A、下部円板部分2618B、及び中央部2618Cを含む。一実施形態において、上側円板部分2618A及び下側円板部分2618Bは、等しい直径を有する。一実施形態において、中央部分2618Cの直径は、上部及び下部の直径よりも小さい。一実施形態において、スリーブ2615は、縫合糸(図示せず)によってボビン形構造2618に取り付けられる。他の実施形態において、ボビン形構造2618は、スリーブ2615に接着される。ボビン形構造2618は、スリーブ2615の近位端2634に重量を加え、展開後にスリーブ2615を所定の位置に維持するように設計される。デバイス2600は、スリーブ2615が胃腸管のどの部分にも物理的に取り付けられていないので、アンカーレスである。その形状のために、浮動性構造2618は鋭いエッジを持たず、体組織に対して非外傷性である。食物は、ボビン形構造2618を通って入り、スリーブ2615の遠位端2635を通って出る。別の実施形態において、食物は、スリーブ2615の近位端の穴(図示せず)を通って入り、遠位端2635を通って出る。
【0151】
図27は、胃内デバイス2718のスリーブ2715を有する浮動性構造2700の、別の実施形態を示す。
図27を参照すると、スリーブ2734の近位端2715は、ハスの形をした浮動性構造2718に結合されている。本明細書の一実施形態による構造2718は、ハスのような構成で配置された構造要素2718Aを含む。種々の実施形態において、構造要素2718Aは、ワイヤ、縫合糸、又は紐を含む。一実施形態において、ハス形構造2718は、スリーブ2715の近位端2734に取り付けられた接合部2718Bによって一緒に保持され、一実施形態において、スリーブ2715の近位端2734は、接合部2718Bに挿入される。ハス形構造2718は、展開後にスリーブ2715が胃の中に流されないように設計されている。デバイス2700は、スリーブ2715が胃腸管のどの部分にも物理的に取り付けられていないので、アンカーレスである。その形状のために、浮動性構造2718は鋭いエッジを持たず、体組織に対して非外傷性である。食物は、ハスの形構造2718の間隙2718Cを通ってスリーブ2715に入り、スリーブ2715の遠位端2735を通って出る。
【0152】
図28は、胃内デバイス2818のスリーブ2815を有する浮動性構造2800の、別の実施形態を示す。
図28を参照すると、スリーブ2834の近位端2815は、本明細書の一実施形態による、上部円板形層2820及び下部逆傘形層2830を含む浮動性構造2818に接合される。一実施形態において、スリーブ2815は、縫合糸(図示せず)によって浮動性構造2818に取り付けられる。他の実施形態において、浮動性構造2818はスリーブ2815に接着される。
【0153】
種々の実施形態において、浮動性構造2818の上層2820はより小さく、3~30mmの範囲の直径を有し、一方下層2830はより大きい。一実施形態において、両層の直径は等しい。浮動性構造2818は、スリーブ2815の近位端に重量を加え、展開後にスリーブを所定の位置に維持するように設計される。デバイス2800は、スリーブ2815が胃腸管のどの部分にも物理的に取り付けられていないので、アンカーレスである。その形状のために、浮動性構造2818は鋭いエッジを持たず、体組織に対して非外傷性である。食物は、浮動性構造2818を通ってスリーブ2815に入り、スリーブ2815の遠位端2835を通って出る。別の実施形態において、食物は、スリーブ2815の近位端2834の穴(図示せず)を通って入り、遠位端2835を通って出る。
【0154】
図29は、胃内デバイス2900のスリーブ2915を有する浮動性構造2918の、別の実施形態を示す。
図29を参照すると、スリーブ2915の近位端は、本明細書の一実施形態に従って、ワイングラス形状の浮動性構造2918に結合される。一実施形態において、スリーブ2915の近位端はスリーブ2900の本体よりも広く、近位端の直径はワイングラス形構造のベース2920の直径と一致する。一実施形態において、基部は、3~30mmの範囲の直径を有する。一実施形態において、スリーブ2915は、縫合糸(図示せず)によってワイングラス形構造2918に取り付けられる。他の実施形態において、ワイングラス形構造2918は、スリーブ2915に接着されている。一実施形態において、ワイングラス構造2918は、連結部分2921と支持構造2922とを含む。一実施形態において、接続部分2921は、非多孔質膜を含み、支持構造2922は、ワイヤ、縫合糸、又は紐を含む。ワイングラス構造2918は、スリーブ2915の近位端に重量を加え、展開後にスリーブを所定の位置に維持するように設計される。デバイス2900は、スリーブ2915が胃腸管のどの部分にも物理的に取り付けられていないので、アンカーレスである。その形状のために、浮動性構造2918は鋭いエッジを持たず、体組織に対して非外傷性である。食物はワイングラス状構造体2918の上部(図示せず)の開口部から入り、スリーブ2915の遠位端2935から出る。
【0155】
図30は、胃内デバイス3018のスリーブ3015を有する浮動性構造3000の、別の実施形態を示す。
図30を参照すると、スリーブ3034の近位端3015は、二重バルーン形状の浮動性構造3018に結合される。本明細書の一実施形態によれば、構造体3018は、直立構造の上部バルーン部分3018A、及び反転又は上下反転構造の下部バルーン部分3018Bを含む。2つのバルーン部分3018A、3018Bは、上部バルーン3018Aの遠位端と下部バルーン3018Bの近位端との接合点3018Cで接合される。一実施形態において、二重バルーン形構造3018は、それから延びるワイヤ3018Dを有し、これは、構造をスリーブ3015の近位端に取り付けるが、スリーブは、一実施形態では円錐形状である。他の実施形態において、二重バルーン形構造3018は、スリーブ3015に接着される。種々の実施形態において、二重バルーンは、その最も広い点で3~30mmの範囲の直径を有する。二重バルーン形構造3018は、スリーブ3015の近位端に重量を加え、展開後にスリーブ3015を所定の位置に維持するように設計される。デバイス3000は、スリーブ3015が胃腸管のどの部分にも物理的に取り付けられていないので、アンカーレスである。その形状のために、浮動性構造3018は鋭いエッジを持たず、体組織に対して非外傷性である。食物は二重バルーン構造3018の開口部3030から入り、スリーブ3015の遠位端3035から出る。別の実施形態において、食物はスリーブ3015の近位端の穴(図示せず)から入り、遠位端3035から出る。
【0156】
図31は、胃内デバイス3118のスリーブ3115を有する浮動性構造3100の、別の実施形態を示している。
図31を参照すると、浮動性構造3118は、花のような形状であり、外側に延びる花状部分3119を含み、スリーブ3515は漏斗状であり、上部近位部分3115A、中央移行部分3115B、及び下部遠位部分3115Cを含む。一実施形態において、下部遠位部分3115Cは、その長さに沿って一定の直径を有する長い部分であり、一方、上部近位部分3115Aは、その長さに沿って一定の大きな直径を有し、より短い。一実施形態において、中間移行部分3115Bは、遠位に延びるにつれて減少する直径を有し、移行部分3115Bの近位端における直径は、近位部分3115Aの直径と等しく、移行部分3115Bの遠位端における直径は、遠位部分3115Cの直径と等しい。食物は、スリーブ3115の近位部分3115Aの近位端の開口部から入り、スリーブ3115の遠位端3135から出る。
【0157】
いくつかの実施形態において、スリーブを所定の位置に維持するために、ステントがスリーブの近位端に挿入される。
図32及び33は、本明細書の一実施形態による、胃内デバイスのスリーブ構成要素のためのステント支持体の図を提供する。
図32を参照すると、胃内デバイス3200は、浮動性構成要素3201及びスリーブ構成要素3202を含む。一実施形態において、浮動性構成要素は、幽門3203の近位の胃内に留まり、スリーブは、幽門3203を通って十二指腸の中央部に延びる。ステント支持体3280は、移動を防止するためにスリーブ内に挿入され、非外傷性アンカーとして作用する。種々の実施形態において、ステント支持体3280は、幽門3203の片側又は両側のスリーブに挿入されてもよい。ステント構成要素3280は、スリーブ3202に構造的完全性を提供し、その結果、スリーブが腸収縮の結果として崩壊しない一方で、スリーブ構成要素3202が胃腸管の曲線に適合するのに充分に柔軟であることを可能にする。一実施形態において、幽門下のステント構成要素の長さは約2~3インチ(約5.08~7.62cm)である。
【0158】
図33を参照すると、図示の実施形態において、スリーブ3302内のステント支持体3380は、ワイヤの「Z」形状セグメントから形成された複数のリング3383を含む。別の実施形態(図示せず)では、ステント支持体は、螺旋のワイヤが「Z」形状に構成される連続螺旋ワイヤ支持体を含む。再び
図33を参照すると、リング3383Aの一部は幽門の上の領域に配置され、リング3383Bの残りの部分は幽門3304の下の領域に配置される。一実施形態において、リングセグメント3383A及び3383Bはワイヤセグメント3384によって接続される。一部の実施形態において、各リング3383は1~2cmの長さである。いくつかの実施形態において、各接続ワイヤ3384は、1~2インチ(約2.54~5.08cm)の範囲の長さを有する。一実施形態において、ステント支持体3380の近位端は、漏斗形のリングセグメント3386を含む。種々の実施形態において、漏斗形のリングセグメント3386は、それが取り付けられるワイヤメッシュ構造の遠位端における移動防止型の浮動構成要素の直径と一致するサイズの直径を有する。一実施形態において、漏斗形セグメント3386の直径は2~3インチ(約5.08~7.62cm)の範囲である。
【0159】
図34は、胃内デバイス3400のスリーブ3415を有する浮動性構造3418の、別の実施形態を示す。
図34を参照すると、スリーブ3415の近位端は、本明細書の一実施形態による、オレンジのピール形状の浮動性構造3418に結合される。一実施形態において、オレンジピール形構造3418は、オレンジから除去された皮の形状に近似した、螺旋形状のリボン3416を含む。一実施形態において、構造3418は、ニチノールのような形状記憶材料から構成され、胃収縮によって部分的に圧縮することができるが、元の形状に戻すことができる。一実施形態において、オレンジピール構造3418は、その最も広い部分で3~30mmの範囲の直径を有する。一実施形態において、スリーブ3415は、縫合糸(図示せず)によってオレンジのピール形状の構造3418に取り付けられる。他の実施形態において、オレンジピール構造3418は、スリーブ3415に接着される。
【0160】
オレンジピール構造3418は、スリーブ3415の近位端に重量を加え、展開後にスリーブ3415を所定の位置に維持するように設計される。デバイス3400は、スリーブ3415が胃腸管のどの部分にも物理的に取り付けられていないので、アンカーレスである。その形状のために、浮動性構造3418は鋭いエッジを持たず、体組織に対して非外傷性である。食物は、オレンジピール形構造3418のリボン内の空間3419を通ってスリーブ3415の近位端の開口部を通って入り、スリーブ3415の遠位端3435を通って出る。
【0161】
本明細書のいくつかの実施形態において、胃内デバイスのスリーブは、幽門部及び幽門部近傍ではなく、食道のちょうど遠位部から始まり、十二指腸を通って延びる。
【0162】
図2A、2B、3A、及び3Bの先の実施形態に示されるように、胃内デバイスは、メッシュ構造及びカラーを含む。一実施形態において、メッシュ構造が除去され、単にカラー構成要素がスリーブに取り付けられ、スリーブが移動しないように作用する。これは、デバイスのサイズ及び重量を減少させ、さらに、非外傷性アンカー機構を提供する。
【0163】
また、前述の実施形態のメッシュデバイスは、満腹感を与えるために使用される。この特徴は、本実施形態において、食道付近の胃の上端部に圧力を加えることにより、満腹感を加えることにより提供される。一実施形態(図示せず)では、パラシュート、バルーン、カラーなどのさらなる浮動性構造が、同様の浮動性構造の近位端に加えられる。このように、上部構造と下部構造とがあり、2つの構造は互いに接続されている。さらに、下部構造の遠位端にスリーブが取り付けられ、デバイス全体が可撓性である。一実施形態において、デバイス全体が胃の形状に適合する。下端は幽門部を圧迫して胃を伸展させ、上端は食道/噴門部を圧迫して胃を伸展させ、いずれも膨満感を与える。
【0164】
先行技術は幽門の遠位に非外傷性胃腸管アンカーを含むが、本明細書の実施形態は、それらが組織を貫通せず、アンカー構造を幽門の上に維持する点で異なることに留意されたい。さらに、アンカー構造は浮動性であり、デバイスを所定の位置に維持しながら、胃腸管のどの部分にも取り付けられていない。したがって、本発明のデバイスは本質的にアンカーレスである。
【0165】
別の実施形態において、デバイスは、展開後数ヶ月で分解し、デバイスを所定の位置に残す、生分解性の非外傷性アンカー構成要素を含む。いくつかの実施形態において、アンカー構成要素は、6か月後に分解する。一実施形態において、胃内デバイスは、スリーブが取り付けられたステントを含む。デバイスは展開後も胃腸管に留まり、数ヵ月後にスリーブを抜去してステントを所定の位置に残す。一実施形態において、縫合糸がステントをスリーブに接続する。除去のために、医師が縫合糸を引っ張り、スリーブを取り外して通過させる。いくつかの実施形態において、スリーブは分離及び移植後から3~6ヵ月経過している。
【0166】
一実施形態において、本明細書は、展開前形状及び展開後形状を有し、展開後形状において剛性部材を構成するアンカーレス胃腸管デバイス、及び柔軟性部材を含み、柔軟性部材は、展開後形状において剛性部材より長くて薄く、微生物の付着及び成長のために最適化された表面を有する。一実施形態において、剛性部材は浮動性メッシュ構造であり、柔軟な構造は、微生物の付着及び成長を促進するように設計された表面を有する、浮動性スリーブ構造である。したがって、一実施形態において、本明細書の胃腸管デバイスは、患者の小腸へのプレバイオティクス又はプロバイオティクス治療の送達のために使用され、それによって所望の治療効果をもたらす。一実施形態において、所望の治療効果は、体重減少、血糖コントロール、又はプレバイオティクス若しくはプロバイオティクス治療に応答する過敏性腸症候群、クロストリジウム・ディフィシレ、又はあらゆる他の状態の治療を含む。
【0167】
プロバイオティクスの利点は当業者に周知であり、以下を含む:潜在的に病原性のある胃腸微生物の減少;胃腸の不快感の軽減;免疫システムの強化;皮膚機能の改善;腸の規則性の改善;スギ花粉アレルゲンに対する耐性の強化;体内病原体の減少;膨満及び腹部膨満の減少;DNAの保護;酸化的損傷からのたんぱく質と脂質の保護;並びに、抗生物質治療を受けている患者の個々の腸内微生物叢の維持。プロバイオティクスは投与時に生存していなければならない。しかし、経口投与されたプロバイオティクスの大部分は、患者の小腸に定着する傾向がなく、プロバイオティクス治療の中止から数週間以内に治療効果も停止する。従って、プロバイオティクスの連続投与が持続的治療効果のために必要である。
【0168】
従来技術は、患者の胃腸管系に内視鏡的に移植されたデバイスによって投与されるプロバイオティクスの例を含む。しかし、胃腸管系に係留された器具を用いて生菌を投与すると、これらの細菌が患者の血流に入るリスクが増大し、重篤な感染症を引き起こす。例えば、アンカースリーブデバイスによって投与されるプロバイオティクスの使用のために、肝臓膿瘍が最近報告されている。糖尿病患者では感染リスクが数倍に高まる。したがって、アンカースリーブでプロバイオティクスを使用することは推奨されない。
【0169】
上述した従来技術の問題は克服され、プロバイオティクスの使用は、患者の腸にプロバイオティクスを送達するために上述したようなアンカーレスデバイスを使用することによって、本明細書の一実施形態における患者の利益のために利用される。種々の実施形態において、展開前形状及び展開後形状を有する上述のアンカーレス胃内デバイスのいずれかが使用される。アンカーレスデバイスは、浮動性スリーブ構造のような可撓性部材に取り付けられた、浮動性構造のメッシュ構造のような剛性部材を含む。一実施形態において、可撓性部材は、微生物の付着及び成長のために最適化された表面を有する。一実施形態において、可撓性部材は、スリーブの代わりに、微生物の付着及び成長のために最適化された断片を含む。
【0170】
一実施形態において、スリーブ構造は、ラクトバチルス又はビフィズス菌などのプロバイオティクスで含浸される。別の実施形態において、スリーブ構造は、微生物の付着を可能にするように最適化された表面積を有する。別の実施形態において、スリーブ構造は、微生物の増殖を可能にするように最適化された表面を有する。一実施形態において、スリーブ構造は波形表面を含む。別の実施形態において、スリーブ構造はハニカム表面を有する。別の実施形態において、スリーブは織物繊維構造を有する。
【0171】
別の実施形態において、スリーブ構造は、ビフィオバクテリアム・ロンガム又はラクトバチルス・ロイテリのようなプロバイオティクス種とのバイオフィルムの形成を可能にするように最適化された表面を有する。バイオフィルムは、細胞が表面で互いに付着する微生物のグループである。これらの接着細胞は、細胞外高分子物質(EPS)の自己生産マトリックス内にしばしば埋め込まれている。バイオフィルム細胞外高分子物質はスライムとも呼ばれ、一般に、細胞外DNA、たんぱく質、及び多糖類から構成される高分子凝集体である。当該技術分野で知られているように、生物膜は、生きている、又は生きていない表面上に形成され得る。
【0172】
一実施形態において、スリーブ構造は、バイオフィルム形成を改善するために表面積又は長さが増加している。
【0173】
一実施形態において、本明細書のアンカーレス胃内デバイスは、患者の腸にプレバイオティクスを送達するために使用される。プレバイオティクスは選択的に発酵された成分であり、宿主の福祉及び健康に利益を与える胃腸管微生物叢の、組成及び/又は活性の両方において、特定の変化を可能にする。食事制限中では、プレバイオティクスは、典型的には胃腸管の上部を通して未消化を通過し、それらの基質として作用することによって大腸に定着する有利な細菌の成長及び/又は活性を刺激する、非消化性繊維化合物である。プレバイオティクスの定義は特定の細菌群を強調しない。しかし、一般にプレバイオティクスは、ビフィズス菌や乳酸菌の数や活性を増加させると考えられている。ビフィズス菌と乳酸菌(LAB)の重要性は、これらの細菌群が宿主に対して、特に消化(ミネラル吸収の促進を含む)の改善、及び免疫系の有効性と内在性の強さに関して、いくつかの有益な効果を有する可能性があることである。
【0174】
したがって、一実施形態において、アンカーレス胃内デバイスのスリーブ構成要素にプレバイオティクスを含浸させる。一実施形態において、スリーブは微孔性構造を有し、スリーブの内側から特定の栄養素(プレバイオティクス)をスリーブの外側の細菌(プロバイオティクス)に移すことができる。
【0175】
別の実施形態において、本明細書のアンカーレス胃内デバイスを使用して、プロバイオティクスとプレバイオティクスとの相乗的な組み合わせを患者の腸に送達する。
【0176】
一実施形態において、プレバイオティクス、プロバイオティクス、又はこれらの組み合わせを担持するスリーブ構造は、患者の微生物叢の構成を一時的に変更するために一定の期間使用される。別の実施形態において、プレバイオティクス、プロバイオティクス、又はこれらの組み合わせを担持するスリーブ構造は、患者の微生物叢の構成を永久的に変更するために一定の期間使用される。
【0177】
本開示は、本発明のいくつかの好ましい実施形態の教示を提供することを意図しており、本明細書に開示される特定の構造に限定されないことを理解されたい。開示された実施形態の他の変形例は、当業者によって理解されるであろうが、本出願によってカバーされ、そして特許請求の範囲によってさらに定義されるように、本発明の範囲内にある。以下、本発明の実施形態の例を以下の項目[1]~[20]に列記する。
[1]
近位端及び遠位端を有する螺旋形構造を有する、非多孔性圧縮可能アンカー構造と;
アンカー構造の遠位端に結合され、且つアンカー構造から遠位に延びる、細長いスリーブとを備える、胃内デバイス。
[2]
前記アンカー構造が、前記スリーブへ位置決め支持体を提供するように構成される、項目1に記載の胃内デバイス。
[3]
前記アンカー構造が、形状記憶材料を備える、項目1に記載の胃内デバイス。
[4]
前記アンカー構造が、最も広い部位で直径3~30mmである、項目1に記載の胃内デバイス。
[5]
前記スリーブが、縫合、接着、又はこれらの組み合わせによって前記アンカー構造に取り付けられる、項目1に記載の胃内デバイス。
[6]
前記圧縮可能アンカー構造の前記近位端に取り付けられた第2のアンカー構造をさらに備える、項目1に記載の胃内デバイス。
[7]
複数のループを備えるアンカー構造と;
前記アンカー構造から遠位に延びる細長いスリーブであって、上部近位部分、中部移行部分及び下部遠位部分を有する細長いスリーブと
を備える、胃内デバイスであって、
前記ループは、前記スリーブの前記上部近位部分の近位端から放射状且つ外側に延びる、胃内デバイス。
[8]
前記ループが、前記上部近位部分の周囲の周りに相互接続する、項目7に記載の胃内デバイス。
[9]
前記上部近位部分及び前記下部遠位部分の各々が、それらの長さに沿ってほぼ一定の直径を有し、
前記下部遠位部分の長さが、前記上部近位部分の長さよりも長く、且つ、
前記上部近位部分の直径が、前記下部遠位部分の直径よりも大きい、項目7に記載の胃内デバイス。
[10]
前記中部移行部分の直径が、その近位端からその遠位端にかけて減少し、且つ前記上部近位部分及び前記下部遠位部分と相互接続する、項目7に記載の胃内デバイス。
[11]
前記スリーブが、前記中部移行部分及び前記下部遠位部分の長さに沿った複数の水平支持要素をさらに備える、項目7に記載の胃内デバイス。
[12]
前記スリーブが、細長い金属ワイヤの形態の複数の垂直支持要素をさらに備える、項目7に記載の胃内デバイス。
[13]
前記アンカー構造が、形状記憶材料を備える、項目7に記載の胃内デバイス。
[14]
前記スリーブが膜を備える、項目7に記載の胃内デバイス。
[15]
前記アンカー構造が、圧縮形態と拡張形態との間で構成可能である、項目7に記載の胃内デバイス。
[16]
近位端及び遠位端を有する細長いスリーブと;
前記スリーブの前記近位端から近位に延びる複数の取り付け要素と;
前記取り付け要素へ結合されたアンカー構造であって、中心要素から放射状且つ遠位に延びる複数の花弁形状要素を有する、アンカー構造と
を備える、胃内デバイスであって、
各取り付け要素の遠位端は、前記スリーブの前記近位端に固定され、且つ、
各取り付け要素の近位端は、前記アンカー構造に取り付けられる。
[17]
前記アンカー要素上に被覆をさらに備える、項目16に記載の胃内デバイス。
[18]
前記アンカー要素が、直径3~30mmである、項目16に記載の胃内デバイス。
[19]
前記アンカー構造が、圧縮形態と拡張形態との間で構成可能である、項目16に記載の胃内デバイス。
[20]
前記アンカー構造が、形状記憶材料を備える、項目16に記載の胃内デバイス。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の形状を有する上部と、前記上部に対して反転構造の前記所定の形状を有する下部とを有する構造を形成するワイヤメッシュ構造を備える圧縮可能アンカー構造と;
前記圧縮可能アンカー構造の前記下部に取り付けられ、前記アンカー構造から遠位に延びる細長いスリーブと
を備える、胃内デバイス。
【請求項2】
前記所定の形状は、涙滴形状又は水滴形状である、請求項1に記載の胃内デバイス。
【請求項3】
前記上部及び前記下部は、前記上部の遠位端と前記下部の近位端との接合点で接合されている、請求項2に記載の胃内デバイス。
【請求項4】
前記上部が患者の胃に存在し、前記下部が前記患者の近位十二指腸に存在するように、前記接合点が前記患者の幽門に配置されるように構成される、請求項3に記載の胃内デバイス。
【請求項5】
前記所定の形状は、傘形状である、請求項1に記載の胃内デバイス。
【請求項6】
前記圧縮可能アンカー構造は、前記上部及び前記下部の間に中央部を更に備える、請求項5に記載の胃内デバイス。
【請求項7】
前記中央部の形状は、実質的に円筒形である、請求項6に記載の胃内デバイス。
【請求項8】
前記スリーブは、前記圧縮可能アンカー構造の前記下部に縫合糸を介して取り付けられている、請求項1~7のいずれか一項に記載の胃内デバイス。
【請求項9】
前記スリーブは、前記圧縮可能アンカー構造の前記下部に接着されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の胃内デバイス。
【請求項10】
前記圧縮可能アンカー構造の直径は、前記圧縮可能アンカー構造の最も広い部分で3~30mmの範囲である、請求項1~9のいずれか一項に記載の胃内デバイス。
【請求項11】
前記圧縮可能アンカー構造の全体が、患者の胃内に配置され、前記スリーブが、前記患者の幽門を通って十二指腸中央部に延びる、請求項1~10のいずれか一項に記載の胃内デバイス。
【請求項12】
前記圧縮可能アンカー構造は、前記スリーブの近位端に重量を加え、展開後に前記スリーブをその位置に維持するよう設計される、請求項11に記載の胃内デバイス。
【請求項13】
食物が前記スリーブの近位端の穴を通って入り、前記スリーブの遠位端を通って出るよう構成される、請求項12に記載の胃内デバイス。
【請求項14】
食物が前記圧縮可能アンカー構造を通って入り、前記スリーブの遠位端を通って出るよう構成される、請求項1~12のいずれか一項に記載の胃内デバイス。
【請求項15】
前記圧縮可能アンカー構造は、体組織に対して非外傷性である、請求項1~14のいずれか一項に記載の胃内デバイス。