(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056041
(43)【公開日】2023-04-18
(54)【発明の名称】養液
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20230411BHJP
A01G 24/10 20180101ALI20230411BHJP
A01G 24/42 20180101ALI20230411BHJP
【FI】
A01G31/00 601Z
A01G24/10
A01G24/42
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023893
(22)【出願日】2023-02-19
(62)【分割の表示】P 2019529814の分割
【原出願日】2018-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2017137472
(32)【優先日】2017-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】516271068
【氏名又は名称】株式会社プラントライフシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100124017
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 晃秀
(72)【発明者】
【氏名】原 正憲
(57)【要約】
【課題】植物栽培用の培地に供給される養液であって、収量が高めることができ、かつ、植物の糖度を高めることができる養液を提供する。
【解決手段】養液は、植物栽培用の培地に適用されるものである。養液は、水と、硝酸態窒素およびアンモニア態窒素の少なくとも一つと、リン酸と、酸化カリウムと、酸化カルシウムとを含む。硝酸態窒素およびアンモニア態窒素の総和を100重量部としたときに、リン酸の含有量は、48~70重量部であり、酸化カリウムの含有量は、160~180重量部であり、酸化カルシウムの含有量は、30~85重量部である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物栽培用の培地に適用される養液であって、
水と、
硝酸態窒素およびアンモニア態窒素の少なくとも一つと、
リン酸と、
酸化カリウムと、
酸化カルシウムとを含み、
硝酸態窒素およびアンモニア態窒素の総和を100重量部としたときに、
リン酸の含有量は、48~70重量部であり、
酸化カリウムの含有量は、160~180重量部であり、
酸化カルシウムの含有量は、30~85重量部である、養液。
【請求項2】
請求項1において、
前記リン酸の含有量に対する前記酸化カルシウムの含有量の比(酸化カルシウムの含有量/リン酸の含有量)は、1.2~1.6である養液。
【請求項3】
請求項1において、
前記養液における前記硝酸態窒素およびアンモニア態窒素の総和の濃度が80~550mg/Lである養液。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記アンモニア態窒素の含有量に対する前記硝酸態窒素の比(硝酸態窒素の含有量/アンモニア態窒素の含有量)は、5~10である養液。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかにおいて、
前記酸化カルシウムの含有量に対する前記酸化カリウムの含有量の比(酸化カリウムの含有量/酸化カルシウムの含有量)は、2.0~2.6である養液。
【請求項6】
請求項1~3のいずれかにおいて、
硫黄酸化物が含まれていない養液。
【請求項7】
請求項1~3のいずれかにおいて、
前記培地は、無機質培地である養液。
【請求項8】
請求項6において、
前記培地は、アルカリ性培地である養液。
【請求項9】
請求項7において、
前記培地は、サンゴ砂礫を含む養液。
【請求項10】
請求項1~3、8、9のいずかにおいて、
前記養液は、MgO、MnO、B2O3、Fe、Cu、ZnおよびMoからなる群から選ばれた少なくとも1種を含む養液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培用の培地に供給される養液に関する。
【背景技術】
【0002】
培地に栽培植物を植え付け、培養液を給液して栽培する技術が提案されている。(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、植物栽培用の培地に供給される養液であって、収量が高めることができ、かつ、植物の糖度を高めることができる養液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明者は、養液が、硝酸態窒素およびアンモニア態窒素の総和重量との関係で、リン酸、酸化カリウム、酸化カルシウムを所定量含有することで、この養液により栽培される植物の収量の向上と植物の糖度が向上することを見出し、本発明に至った。
【0006】
本発明の養液は、
植物栽培用の培地に適用される養液であって、
水と、
硝酸態窒素およびアンモニア態窒素の少なくとも一つと、
リン酸と、
酸化カリウムと、
酸化カルシウムとを含み、
硝酸態窒素およびアンモニア態窒素の総和を100重量部としたときに、
リン酸の含有量は、48~70重量部であり、
酸化カリウムの含有量は、160~180重量部であり、
酸化カルシウムの含有量は、30~85重量部である。
【0007】
本発明において、前記リン酸の含有量に対する前記酸化カルシウムの含有量の比(酸化カルシウムの含有量/リン酸の含有量)は、1.2~1.6であることができる。
【0008】
本発明において、前記養液における前記硝酸態窒素およびアンモニア態窒素の総和の濃度が80~550mg/Lであることができる。
【0009】
本発明において、前記アンモニア態窒素の含有量に対する前記硝酸態窒素の比(硝酸態窒素の含有量/アンモニア態窒素の含有量)は、5~10であることができる。
【0010】
本発明において、前記酸化カルシウムの含有量に対する前記酸化カリウムの含有量の比(酸化カリウムの含有量/酸化カルシウムの含有量)は、2.0~2.6であることができる。
【0011】
本発明において、硫黄酸化物(硫酸イオンを含む)が含まれていないことが好ましい。
【0012】
本発明において、前記培地は、無機質培地であることができる。
【0013】
本発明において、前記培地は、アルカリ性培地であることができる。
【0014】
本発明において、前記培地は、サンゴ砂礫を含むことができる。
【0015】
本発明において、前記養液は、MgO、MnO、B2O3、Fe、Cu、ZnおよびMoからなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことができる。
【0016】
本明細書において、「A~B」としたときに、「A以上、B以下の範囲内」であることを示す。
【発明の効果】
【0017】
本発明の養液を培地での植物栽培に適用することで、収量が高めることができ、かつ、植物の糖度を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
1.養液
実施の形態に係る養液は、植物栽培用の培地に適用されるものである。培地は、たとえば無機質培地とすることができ、かつ、固形培地または非固形培地(たとえば液状)であることができる。培地はアルカリ性培地であることが好適である。培地は、多孔質素材であることにより、灌水の間隔を長くすることができる。
【0020】
無機質培地には、サンゴ砂礫や貝殻(たとえば牡蠣殻、ホタテ貝殻)を含むことができ、サンゴ砂礫からなる培地が好適である。サンゴ砂礫からなる培地にすることにより、抗菌作用による根系の病害減少、その抗菌作用により培養液の殺菌設備が不要か又は簡素化が可能であり、さらには、入れ替えや廃棄を極力抑えることができる。サンゴ砂礫の粒径は、たとえば、1~20mm、好ましくは1~10mm、より好ましくは5mm前後とすることができる。
【0021】
養液は、水と、硝酸態窒素およびアンモニア態窒素の少なくとも一つと、リン酸と、酸化カリウムと、酸化カルシウムとを含む。硝酸態窒素の具体例としては、たとえば、硝酸イオンを挙げることができる。アンモニア態窒素の具体例としては、たとえば、アンモニウムイオンを挙げることができる。
【0022】
リン酸の含有量は、硝酸態窒素およびアンモニア態窒素の総和を100重量部としたときに、48~70重量部である。
【0023】
酸化カリウムの含有量は、硝酸態窒素およびアンモニア態窒素の総和を100重量部としたときに、160~180重量部である。
【0024】
酸化カルシウムの含有量は、硝酸態窒素およびアンモニア態窒素の総和を100重量部としたときに、30~85重量部、好ましくは50~85重量部、さらに好ましくは60~85重量部である。
【0025】
リン酸の含有量に対する酸化カルシウムの含有量の比(酸化カルシウムの含有量/リン酸の含有量)は、1.2~1.6であることが好ましい。
【0026】
養液における硝酸態窒素およびアンモニア態窒素の総和の濃度は、たとえば80~550mg/L、好ましくは200~440mg/L、さらに好ましくは250~380ml/Lである。
【0027】
アンモニア態窒素の含有量に対する硝酸態窒素の比(硝酸態窒素の含有量/アンモニア態窒素の含有量)は、5~10であることが好ましく、さらに好ましくは7~10である。アンモニア態窒素の含有量に対する硝酸態窒素の比がこの範囲にあると、特に培地がアルカリ培地の場合、植物が他の養液の微量成分をより適度に吸収することができる。
【0028】
酸化カルシウムの含有量に対する酸化カリウムの含有量の比(酸化カリウムの含有量/酸化カルシウムの含有量)は、2.0~2.6であることが好ましい。
【0029】
養液は、硫黄酸化物、特に硫酸イオンが含まれていないことが好ましい。養液は、MgO、MnO、B2O3、Fe、Cu、ZnおよびMoからなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことができる。
【0030】
2.作用効果
実施の形態に係る養液は、硝酸態窒素およびアンモニア態窒素の総和重量との関係で、リン酸、酸化カリウム、酸化カルシウムを所定重量を含有する。これにより、この養液により栽培される植物の収量の向上と植物の糖度が向上する。
【0031】
適用し得る植物の例としては、トマトやナス、苺、二十日大根、小松菜、ほうれん草、ブロッコリーなどの野菜の他、果物でも適用可能である。
【実施例0032】
サンゴ砂礫で構成された培地にトマトを植え、表1の養液(実施例の養液)により栽培を行った。LED人工照明にて栽培を行った。
【表1】
【0033】
実施例の養液で植物を栽培したもののみが、各果房において、平均値にて糖度7.5(Brix%糖度)以上のトマトを収獲することができ、収量も格段に増えたことが確認された。各果房の糖度、収穫数、収量の平均値を表2に示す。
【表2】
[栽培比較試験]
実施例に係る養液と、比較例に係る養液とを用いて栽培比較試験を行った。比較例に係る養液の組成を表3に示す。
【表3】
【0034】
この栽培比較試験は、第3花房の収穫が終わるまでの栽培試験とした。EC濃度変化は、実施例の養液を用いた栽培区、および、比較例の養液を用いた栽培区ともに、表4のように変化させた。
【表4】
【0035】
試験株数としては、実施例の養液を用いた栽培区および比較例の養液を用いた栽培区ともに、10株とした。また、試験作物については、実施例の養液を用いた栽培区および比較例の養液を用いた栽培区ともに、ミニトマトとした。
【0036】
栽培比較試験により、次の結果が確認された。実施例の養液を用いた栽培区では,試験栽培終了まで生理障害の発生は認められず安定して栽培収穫が出来た。
【0037】
一方、比較例の養液を用いた栽培区では、10株全てにおいて,鉄欠乏,マンガン欠乏の発生が確認された。また鉄欠乏の進行症状による、新葉の白化により生長が止まったものが3株あった。また、比較例の養液を用いた栽培区の収穫量も、実施例の養液を用いた栽培区の収穫量の1/3に落ち込んだ。
【0038】
本実施の形態は、本発明の範囲内において種々の変形が可能である。