(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056053
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】尿量推定装置、尿量推定方法及び排尿タイミング推定方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20230412BHJP
【FI】
A61B5/00 N
A61B5/00 102A
A61B5/00 102C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020011233
(22)【出願日】2020-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】720000085
【氏名又は名称】高 恭子
(72)【発明者】
【氏名】高 恭子
【テーマコード(参考)】
4C117
【Fターム(参考)】
4C117XA03
4C117XB04
4C117XB11
4C117XC15
4C117XD29
4C117XE04
4C117XE20
4C117XE52
4C117XJ13
4C117XJ45
4C117XP12
4C117XQ20
(57)【要約】
【課題】UI(尿失禁)、LUTS(下部尿路通過障害)、OAB(過活動膀胱症候群)を持つ患者数は、増加傾向にある。既存のポータブル排尿検知機器は、尿の有無、大小を計測し、排尿時間を検知するもので、医療機器対象外であり、利用できる対象は、高齢者施設などの介護職員や個人に限られた。施設利用では、複雑な超音波信号の配置による価格帯上昇が普及を阻む原因と考える。また、頻繁な電源補給やインフラの構築が必須であった。
【解決手段】当該技術は、人体の誘電率と、膀胱を挟んで配置された2つの電極間の低周波電気信号の受信強度を演算回路で算出した静電容量の信号変換処理の変化を時間軸で計測することで、尿量の推移を推測する方法である。簡単に着用または、携帯することで、医療機関・施設のみならず、一般利用者またはアウトペーシャントが、在宅や外出先で広範囲かつ継続的な尿量推移と排尿タイミングのモニタリングが可能となる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膀胱を間に挟んで人体表面に貼りつける第一の電極及び第二の電極と、前記第一の電極と前記第二の電極との間の静電容量を測定する静電容量測定手段と、前記静電容量測定手段により測定された静電容量の値に基づいて尿量を推定する手段を備えた尿量推定装置。
【請求項2】
前記静電容量測定手段は静電容量の時間的変化を測定でき、静電容量の時間的変化を出力する出力手段を有することを特徴とする請求項1に記載の尿量推定装置。
【請求項3】
前記尿量推定装置は、測定される静電容量の時間的変化を記録する測定値記録手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載の尿量推定装置
【請求項4】
前記尿量推定装置は、排尿が必要となる静電容量の閾値を記憶する閾値記憶手段を有し、測定される静電容量が前記閾値に達したとき、排尿タイミングであることを知らせる通知手段を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの項に記載の尿量推定装置。
【請求項5】
前記静電容量測定手段は、発振器を有するとともに、前記発振器から前記第一の電極に印加された入力信号と、前記膀胱を通過して前記第二の電極で受信した出力信号とを比較するコンパレータを有し、前記コンパレータの出力に基づいて静電容量を測定することを特徴とする請求項1記載の尿量推定装置。
【請求項6】
膀胱を間に挟んで人体表面に貼りつける第一の電極及び第二の電極の間の静電容量を測定し、測定結果の静電容量の変化に基づいて、尿量を推定する尿量推定方法。
【請求項7】
膀胱を間に挟んで人体表面に貼りつける第一の電極及び第二の電極の間の静電容量を測定し、測定結果の静電容量が、予め設定した閾値に達した時、排尿タイミングと判断する、排尿タイミング推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの生体適合性のある電極を膀胱を挟むように一直線上の人体の皮膚表面上に配置し、一方の電極に向けて低周波電気信号を発振し、膀胱壁を通過し人体の反対側の電極で受信した信号の比較回路から取得された静電容量の変化を時間軸で計測することにより、膀胱内の尿量の蓄積容量を推測し、予め設定した閾値に達すると排尿タイミングを知らせる尿量推定技術とその方法である。従って、排尿後の残尿量(PVR)を予測し検出することも可能となる。
【背景技術】
【0002】
通常の場合、人は尿意を感じ、トイレで排尿するスキルを身につけている。しかし、脳卒中、神経系の損傷、年齢の進行、脊髄機能障害等の多様な疾患に関連した尿失禁を患う可能性がある。
【0003】
UI(尿失禁)、LUTS(下部尿路症状)およびOAB(過活動膀胱症候群)の患者数は、過去数十年に渡り増加傾向にあり、排尿障害を持った人は、正しい場所でトイレ機能を行いたいと考えている。
【0004】
UIに苦しんでいる人の数は2017年に約5億人と推定されており、UI、LUTS、OABの症例は2018年に約33億件報告されている。高齢化に伴い、件数は、更に増え続けていくと考えられる。
【0005】
多くの場合、そのような症状を伴う人は、外出することを恐れ、むしろ豊かな社会的生活を大幅に遮断し、自宅で引きこもるケースが多くなる。また、うつ病の発症を増加させ、認知症の進行など、他の種類の病気や症状の発症につながることも報告さている。尿失禁や過活動膀胱症候群の患者は、大量の失禁をしてしまうこともあり、尿漏れパットをしても公衆の場で、足に尿が流れる、また、尿パッドが大きいため、衣服を通して、目立ってしまうなどの理由で、外出を恐れ、仕事の幅も狭くなっていくのが現状だ。こういった患者に、外出を促し、健全な日常生活を取り戻させることは非常に重要であり、自分の排尿のタイミングを事前に知ることは、非常に利便性に優れている。
【0006】
尿は、腎臓によって毎分1から2 mlの割合で生成され、1時間あたり60から120 mlを膀胱に蓄積される。正常な膀胱は約500mlの尿を保持し、通常は約300から400 ml、つまり膀胱蓄積量の約3分の2で尿が排出される。即ち、切迫感や尿意を感じる。したがって、普通の人は、尿が300から400mlに達したときに尿意を感じる。健康な人のほとんどは膀胱から尿を完全に排出し、空にすることができ、切迫感を感じてもトイレに到達するまで尿を保持し続けることが可能である。
【0007】
本発明は、静電容量を時間軸で測ることにより、利用者の尿が、300から400 mlに達する過程を記録することで、個人別のパターンを検出する。そのパターンと実際の静電容量の推移をもとに、お知らせ機能を追加することも可能だ。また、排尿後に一定量の尿が膀胱に残っている場合、何かの障害があることが想定されるため、残尿量を検出することで、早期に疾患を発見することや、アウトペーシャント(脳卒中やパーキンソン、糖尿等)の管理にも使える。
【0008】
失禁の状態にある人は、外部括約筋、排尿筋、および骨盤底の収縮および弛緩を適切に制御するのが困難であり、これにより排尿を適切に保持/遅延または空にすることが出来ていないのである。
【0009】
多くの医療従事者は、残尿量がわかるポータブル膀胱センサーに期待を寄せていることが、ヒアリングにより判明している。
【0010】
膀胱は排尿筋と呼ばれる平滑筋に囲まれている。排尿筋は、縦方向と円形の繊維の層で構成されており、内壁に沿ってlineと呼ばれる折り目がある。これらの構造は膀胱に弾力性を与え、膀胱の拡張と弛緩を可能にする。膀胱が尿で満たされると、それは球形になり、膀胱が空になると、収縮する。特定の膀胱機能障害のある人は、切迫感を感じたり、膀胱が限界に達していることも確認できない。致命的な場合、1000ml以上の尿を保持し、筋肉障害、薬物療法、および他の病気によって引き起こされている疾患に気が付かない場合もある。進行すると、腎臓障害、膀胱の異常のみならず、様々な疾患を引き起こしたりする。また、別の疾患に起因する膀胱障害である可能性もある。
【0011】
尿路感染症または糖尿病などの他の病気でも、失禁を引き起こす可能性がある。抗利尿ホルモンが不足すると、夜間に大量の尿を生成する可能性があり、尿を保持することができず、漏れてしまう、更には、頻繁に頻尿を感じる傾向にある。
【0012】
膀胱に残留尿が継続的にある場合、特定の種類の膀胱機能障害や神経疾患か、内分泌異常が疑われることもある。
【0013】
OAB患者の中には、尿意切迫感や自発的な排尿ができない場合もある。神経学的な損傷や脊髄損傷がある人も膀胱機能障害や閉塞に苦しんでいる。
【0014】
脊髄損傷の患者は、緊急性はなく、膀胱が充満していることを認識している場合が多い。多発性硬化症、パーキンソン病、脳卒中の患者では、膀胱の疾患が異なる場合があり、場合によっては膀胱に500 ml以上が溜まり、1日3リットル以上排尿する。膀胱の機能不全は、予告なしに膀胱にかなりの量の尿閉があり、排尿の問題を引き起こしているため、尿路感染症と腎疾患を引き起こす。これらの状態の継続は致命的である。
【0015】
このような状態の人は、恥ずかしいという感情、または、専門の相談機関がないことから、医学的なアドバイスを求めたり、病院で、超音波診断を受けないため、正しいトレーニングや治療を受けるのを大幅に遅らせる可能性がある。早期発見と、尿機能障害のための筋肉トレーニングや薬物療法などの正しい治療計画を促すために、携帯型尿量推定・排尿タイミング装置を導入することが急務であると考える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開番号WO2005/099582号公報
【特許文献2】特許6338688号公報
【特許文献3】特開2019-72499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
特許文献1の排尿のコントロールは、自律神経系支配下にあり、個人の排尿パターンは、大変複雑である。膀胱は、尿が溜まると膨らみ、球状または、洋梨型になる。排尿されると、膀胱排尿筋が収縮し、膀胱は、縮む。尿が溜まると膀胱排尿筋は、拡張する。尿が蓄積されると膀胱は、頭部方向に伸びることに基づいて発振端子の方向が配置されている。個人の複雑な排尿パターンの分析に基づき、膀胱の拡張方向に沿って配列された、4つの超音波発振素子から発振した信号を膀胱壁で反射させて取得される超音波エコーの波形から尿量を推測する方法である。実際、膀胱に尿が溜まると横方面に伸びることも確認され、排尿後、急激に膀胱は、縮小するが、直ぐに尿が溜まっていなくても拡張していく構造である。リアルタイムでのデータの取得が困難であったことと、携帯・ウエラブルで対応できていないという課題があった。
【0018】
特許文献2は、特許文献1に示した特許のポータブルの超音波排尿検知である。腹部部分に貼り付けた電極から、超音波信号を、比較的動きのある小腸壁に発振し、発振素子が、跳ね返って腹部部分の電極の反対側に戻ってくる受診信号の有無または、大小を検出処理し、膀胱に溜まった尿量を推測し、検知する仕組みである。膀胱は、骨盤組織でその動きを阻止されることから、小腸壁で信号を反射させる。この技術では、膀胱に溜まった異常な尿量、排尿後の残尿量、尿が少ないのに切迫感があるなどの症状は、検知できなかった。現状排尿検知デバイスは、電力供給を頻繁に行わなければならない、または、超音波用の特殊ジェルを携帯する必要である。また、価格帯での課題があった。更に、医療従事者の、残尿量や尿量の変化を知ることにより、潜在疾患を早期に発見したいという要望には応えていない。
【0019】
特許文献3は、尿検知回路内に尿に晒されると反応し変化するよう設計された電気特性を利用し、失禁 を監視するシステムであるが、失禁した際のモニタリングと排出された尿量の監視しかできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0020】
膀胱を間に挟んで人体表面に貼りつける第一の電極及び第二の電極と、前記第一の電極と
前記第二の電極との間の静電容量を測定する静電容量測定手段と、前記静電容量測定手段
により測定された静電容量の値に基づいて尿量を推定する手段を備え、膀胱に蓄積された
尿量を推定することができる。
【0021】
前記静電容量測定手段は静電容量の時間的変化を測定でき、静電容量の時間的変化を出力する出力手段を有することを特徴とする尿量推定装置を考案した。
【0022】
前記尿量推定装置は、測定される静電容量の時間的変化を記録する測定値記録手段を有
することで、信号の処理・制御機能を備えた装置である。
【0023】
前記尿量推定装置は、排尿が必要となる静電容量の閾値を記憶する閾値記憶手段を有し、測定される静電容量が前記閾値に達したとき、排尿タイミングであることを知らせる通知手段を静電容量計測器内に設計し実装するものである。
【0024】
前記静電容量測定手段は、発振器を有するとともに、前記発振器から前記第一の電極に印
加された入力信号と、前記膀胱を通過して前記第二の電極で受信した出力信号とを比較す
るコンパレータを有し、前記コンパレータ及び演算・識別回路からの出力に基づいて静電
容量を測定し、その静電容量の変化と静電容量値から尿量を推測するものである。
【0025】
膀胱を間に挟んで人体表面に貼りつける第一の電極及び第二の電極の間の静電容量を測定し、測定結果の静電容量が、予め設定した閾値に達した際、排尿タイミングを判断し、排尿タイミングを推定する処理機能を実装し、排尿タイミングの信アラームを送信する機能を有する。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、尿の蓄積量が変化すると、それが膀胱の大きさを変えることと流動性のある誘電率を保有した膀胱に電気信号が通過すると信号が減衰することにより、膀胱を挟む一直線上の位置に2つの生体適合性のある電極を配置し、その電極間の静電容量の変化を時間軸で計測することで、膀胱にたまる尿量を推測し、排尿タイミングの予知をする。人体の其々の内臓を物質とみなし、それぞれ誘電率を保持していると考え、2つの電極の信号強度を比較回路で処理し、静電容量の変化を時間軸で検出することで、膀胱に溜まった尿量を推測し、予め設定した膀胱の許容尿量と静電容量から計算された閾値に到達する一定の時間前にお知らせ信号を送信することで、利用者の排尿タイミングを通知する。尿の有無または、大小でなく、尿量の継続的なモニタリングが可能となり、アウトペーシャントや失禁の恐れのある患者のモニタリングにも適応できる。
【0027】
この解決方法により、UI(尿失禁)、LUTS(下部尿路通過障害)、OAB(過活動膀胱症候群)の患者及び予備軍の人が自宅で、自身で早期かつ容易に症状を認識し、専門家と相談することにより、骨盤底筋体操等の比較的軽い特殊な運動で治癒することを目指す。また、高齢者や脳梗塞等のアウトペーシャントに対しても、おむつやカテーテル等で感染症を引き起こすことを極力避けることができ、患者の負担及び、治療費の大幅な激減となる。排尿タイミング通知機能によってトイレ機能介助が適切でタイムリーに行えることを目的とする。医療従事者が、必要としている、利用者本人が、初期段階で、異常に気付き、早期に受診してもらいたいという要望にも応えることが可能になる。将来的には、尿量を時間軸で推定できるため、残尿量の有無が確認でき、失禁等の医薬品の効果を検証することが期待できる。
【0028】
本発明の方法を使った尿量推定と排尿タイミング装置は、蓄積された尿量を推測することで、患者は、切迫感が無くてもトイレのタイミングを知ることが出来る。
【0029】
膀胱に蓄積された尿量が閾値に達する10分前、30分後、さらには60分前にアラームを設定する等の追加機能で、失禁することを未然に防ぐことができる。また健常者でも、静電容量の経時的な変化を監視することで、尿量数値が上がっても尿意を感じなかったなど、早期に尿路疾患を自己検出することも可能である。
【0030】
使いやすい消費者向けソリューションが利用可能になると、潜在的な尿路感染症または膀胱機能障害のある人は、早期に骨盤底体操のトレーニング、その他医療的措置を早期に行うことで、医療費を大幅に削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】電極間を流れる低周波信号が、膀胱を通過する概要図。
【
図2】第二電極(第一でも良い)の位置を示すものである。
【
図3】
図3は、比較回路図の計算方法を示している。
【
図4】
図4は、静電容量計測器の構造を示している。
【
図5】
図5は、静電容量と膀胱を通過した後の出力電圧との関係図である。
【
図6】
図6は、人体の誘電率と電極間の距離を示し、静電容量の計算方法を示している。
【
図7】
図7は、静電容量の計測から排尿タイミングを推測するまでの概要図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
ここでは、本発明を利用した尿量推定方法の背景にある試作原理についての考え方を説明する。
【0033】
上記、技術背景で説明した複雑な状況と患者数の劇的な増加により、シンプルな解決策を考案した。排尿後の尿貯留を調べ、排尿時刻を予測も可能な尿量を推測し、潜在的な異常を早期に検出するウェアラブルまたは持ち運びが容易な尿量推定・排尿タイミング通知装置である。
【0034】
図1に掲示した様に、生体適合性のある第一の電極100を人体表面上に取り付け、もう一方の電極200を膀胱を挟んで一直線上になるように人体の反対側に配置するよう取り付ける。
【0035】
図1に示した通り、静電容量計22の低周波電気信号発生器C1 から電気信号300が、第一の電極100に発振され、膀胱を通過して一直線上の反対側に取り付けた第二の電極200で受信する。
【0036】
低周波電気信号300の強度は、第一の電極では、V1とし第二の電極200で受信した信号をV2とする。
【0037】
この時、電気信号300が尿等の水分量の多い物質を通過すると信号強度が減衰することを利用する。
【0038】
低周波電気信号発生器C1から電気信号300を発振し、信号強度V1 と信号強度V2は、比較回路コンパレータC3に送信される。
【0039】
印加電圧は、低電圧の電気信号を使用し、電気が電極パットに直接印加されるので、微弱な電磁波が出て、電磁場が人体の周りに形成される。
【0040】
印加電圧は、人体に影響のない低電圧を使った。
【0041】
電極パットに直接印加したが、トランデューサ―に印加すると電気信号は、超音波となり、可聴領域が広く波長の大きな信号となる。電極パットをトランデューサーに置き換えることも可能だ。
【0042】
コンパレータC3で比較計算された信号の静電容量を計測し記録回路C5で記録する。
最新の計測された静電容量を静電容量計測器22上のディスプレイC6 で表示することもできる。
【0043】
静電容量計測器22に計算能力のあるコンパレータ比較回路を設計する。コンパレータは、送信信号と受診信号の強度を計算するものである。コンパレータの処理後に得られる静電容量(Cb)の変化を時間軸で追うことにより、膀胱に溜まった尿量を推測する。毎分1から2ml腎臓から尿が製造されるとすると、個人差はあるが、約2.5時間から4時間程で通常の尿意または、切迫感を感じ、排尿すると推定できる。切迫尿意を感じるであろう300mlから400mlに達した個人の静電容量を知ることで、その数値に達する数十分前にあたる個人別の閾値を設定することで、警告を発信させる装置に電気的に接続する。
【0044】
図2にあるように、第二の電極200の接触部分は、実験では、200のように設置した。200の位置は、多少左右になるべく骨盤組織を避けて200-1、200-2のように配置することも可能だが、必ず、第一の電極と一直線上になるように配置し、膀胱の中心を波長の長い信号が通過するようにする必要がある。
【0045】
図3は、電極100及び200、低周波信号発振器C1、コンパレータC3の体系図であり、V
1とV
2の比較回路を表す。
【0046】
図4は、静電気容量計測器22内の低周波発振器C1から第一の電極100へ低周波電気信号300が発振され、発振時の信号強度V
1と第二の電極200で受けた信号強度V
2の比較回路との相関を示している。
【0047】
低周波電気信号発振器C1からの出力信号300は、第一の電極100から人体に送信される。膀胱を挟むように、第二の電極200を一直線上の反対側に取り付ける。出力信号300から得た第一の電極の信号強度V1は、コンパレータの(+)入力に送られ(1)、膀胱を通過して第二の電極で受信信号強度V2をコンパレータの(-)入力に入力する(2)。尿量に応じて受信信号は、減衰し、膀胱に尿がたまり、水位が上昇すると、出力信号強度が低下する。尿の蓄積量に応じて電気強度が上昇すると、(1)-(2)が増加する。排尿後、膀胱に残尿が100ml以下または、全く空になると、(2)の受信信号が大きいため、(1)-(2)が減少する。第二電極200で受けて計測した(1)-(2)の静電容量の変化から膀胱内の尿量を推定する。
【0048】
図3、
図4のコンパレータを静電容量計測器22に設置せずに、単純に静電容量の変化を計測することも可能である。その場合は、受信信号V
2の増加・減少は、静電容量(Cb)に比例し、出力信号V
1 に反比例する。
【0049】
前記静電容量と受診信号強度の関係は、
図5の数式1で示している。
【0050】
図3及び
図4で、受信強度V
2 の増加または減少と静電容量Cbの増加または減少が反比例するのは、コンパレータで、信号強度を単純比較しているからである。尿量に応じて受信信号V
2は、減衰し、膀胱に尿がたまり、水位が上昇すると、出力信号強度V
2が低下する。尿の蓄積量に応じて信号強度V
2が下がると、(1)が増加する。排尿後、膀胱に残尿が100ml以下または、全く空になると、(2)の受信信号強度V
2が大きいため、(1)-(2)が減少するという原理に基づいている。排尿後も静電容量が一定容量の変化が見られない場合は、残留尿があることを想定できる。
【0051】
図5は、入力信号強度V
1と出力信号強度V
2の関係を示している。静電容量計測器22に電極ケーブル21を繋ぎ、静電容量計測器22に設置した信号発振器C1から低周波電気信号を体内に送信する。
【0052】
図5は、電気信号が人体内(皮膚、臓器、膀胱など)に伝達されている様子を示した理論図である。静電容量計測器22が使用される。低周波電気信号300が第一の電極100から第二の電極200に送信されると、電気信号300は膀胱壁に到達し、膀胱を通過して膀胱の後壁を通って第二の電極に到達する。膀胱を通過した低周波の受信信号強度は減衰し、理論的には、膀胱がいっぱいになると弱くなる。膀胱に尿がたまり尿量の水位が上がると、出力信号強度が低下する(V
2が低下する)。1静電容量Cbは、受信信号強度V
2と比例し、低くなる。従って数式1のように定義される。
数1
【0053】
Cb ∝V2/V1 ------- (1)
静電容量が減少すると、受信信号強度V2は、小さくなり、膀胱に尿が溜まったことが確認できる。静電容量が上昇すると、受信信号V2も減衰しておらず、膀胱が空または、尿が溜まっていないことを示す。静電容量計測器22のディスプレイ数値が上がることで、尿が蓄積されたことを検知し、排尿後は、静電容量が下がり、尿がすべて排出されたかどうかがわかる。今回の実験では、比較回路コンパレータで電極間信号強度を比較計算している。本技術は、静電容量の変化を計測することで膀胱内の尿量を推定する。
【0054】
図6に示す電磁気学では、電磁界には、さまざまな種類の物理物質に誘電率があることを示している。絶対誘電率は、イプシロンで表される。形成された電界の誘電率は、物質の電荷とその力の関係を示し、電気媒体定数とも呼ばれる。各物質には固有の誘電率があり、この値は、外部電界が形成されたときに物質内の分子がどのように応答するかによって決まる。このとき、人間の皮膚/内臓はεh(イプシロンヒューマン)(この時点では人間の体の異なる構造は無視している)と記述し、尿量(水分位)はεw(イプシロンウォーター)と記述する。本発明では、尿分子の内容は重視していない。つまり利用者の飲食の内容に応じる尿内の蛋白質、糖分等に要因する誘電率の変化は、無視している。
図6の電極100と電極200の直線上には、膀胱の絶対誘電率εwに対し、その他の人体の絶対誘電率は、2x εhが存在する。
図6で、膀胱を挟んで設置される電極100 と電極200の間の長さ「d」の誘電率は、下記のように説明できる。
数2
【0055】
ε=(2εh+ εw)------- (2)
【0056】
皮膚、内臓、骨盤組織は人体のイプシロン(εh、イプシロンヒューマン)を示し、膀胱部分は尿量(εw、イプシロンウォーター)を表す。膀胱を挟んで、εhは、膀胱の前と後ろに存在すると仮定し、εh +εw+εhの誘電率を保持した物質が、電極100と電極200を繋ぐ直線上dにあると仮定できる。誘電率εhおよびεwを有する誘電体が、電極面積Sおよび距離dを有する2つの平行電極間に満たされると想定される人体がある場合、人体の静電容量(Cb)は、次のように取得される。
数3
【0057】
Cb =ε0(εh+εw+εh)(S/d) -------(3)
【0058】
詳細には、人体の膀胱を挟んで直線で結ばれるd線上に人体誘電率εhが、膀胱誘電率εwを挟んで交互に存在すると仮定できる。数式2のε=(2εh+εw)である。電極の種類や電極パットの大きさによっても、数値や閾値の設定は、異なってくる。
【0059】
電極パットの面積をS、第一の電極100から第二の電極200まで、膀胱を挟んで直線上の距離をdとすると、静電容量の算出は、Cb =ε0(εh+εw+εh)(S / d)であるが、静電容量の解析には、人体の解剖上の特異性により複雑な要素が含まれる為、個人差に対応する必要がある。
【0060】
前出したように、膀胱に溜まった尿量を静電容量の変化で推測する際、静電容量の変化を例えば、4分毎に計測し記録した場合、尿は、毎計測時、約5mlから10ml溜まっていくと仮定でき、静電容量は、尿量の増加に応じ,各計測時に計測値が少しずつ増加していくと期待できるが、その計測値は、多少のバラつきがある。
【0061】
計測に関しては、例えば、4分毎に記録すると、3時間で凡そ45回ほど、計測データが取れるが、そのうちの1回または、2回程、尿量の増加に比例した数値が取れない場合があるが、それは、人体の周りの静電気、他の物質の誘電率、または磁場の状態の影響によるものである。指標値は、ソフトで、時空系列平均化の簡易処理をすることで、バラつきを調整し、継続的な増減の変化を計測し、記録することが出来る。
【0062】
本実験では、静電容量計測器22から、低周波電気信号300が、3から4秒に一回発振されるように設計した。20秒ほど、継続的に静電容量平均値の計測を続ければ、安定した上昇傾向の数値を得ることが期待できる。その際、衣類や指等が電極及び、電極パットに触れないように注意を払う必要がある。
【0063】
実験の仕様は、レンジでは、ナノファラッド と2つのレベルのマイクロファラッド・レンジでの計測を試みた。
【0064】
静電容量計測は、2から3秒に一回更新するため、15秒から20秒ほど、持続的に計測値を観察すると0.000の小数点以下2桁及び3桁の値までが、ぶれることがある。マイクロファラッドで、表示させる静電容量値のディスプレイが、0.000であらわされる。0.001桁の変動は、微量とみなした。自動極性表示は、3 1/2ディジットまで表示されるよう、設計した。
【0065】
静電容量を測る際、電極部や電極に繋がった生体適合パッド部分を指で触ったり、衣服で締め付けることにより、静電容量が大きく変動する。また、ユーザーが起立状態か座位状態で、計測しているかによっても、大幅に異なるため、起立状態で、計測することが望ましい。寝たきりや車椅子の利用者の場合は、座位または、寝た状態等、毎回同じ体位で計測すべきである。起立姿勢、座位、寝た姿勢と繰り返す利用者は、一度決めた同じ体勢での数値を計測し記録する。今回の実施形態用の実験での計測は、すべて、起立姿勢で行った。
【0066】
解剖学・解剖構造上で、個人差が生じ、内臓脂肪、脂肪、筋肉の付き方等の状態も、受信した信号と静電容量に大きく影響があると言える。従って、3日間から1週間ほどの膀胱ダイアリーを付けることにより、ユーザー個人特有のパターンをつかむことが出来る。膀胱が一杯になるときの静電容量、静電容量の基礎的な変化、切迫感があった際または、尿意があまりない場合の排尿前・排尿後の静電容量の基準値を計測することで、個人の排尿時の静電容量、排尿後の静電容量の基準値を知ることができる。
【0067】
膀胱ダイアリーは、英国のAssociation for Continence Advice(ACA)が提案しているものをもとに製作したもので、排尿量と静電容量の変化値も知ることが出来る。
【0068】
膀胱ダイアリーとは、通常、3日程計測し、個人特有のパターンを見極める際に利用する。起床時から就寝までの飲料水の量と内容、及び、排尿前、排尿後の静電容量の数値と、排尿された尿量と、排尿後から次の排尿まで、1時間から2時間毎に計測する。排尿する前の切迫感を緊急性の強さから1から3で記載する。高齢者等、夜間にも、尿が昼間と同じように生成され、夜間も排尿がある場合も同様に記録することで、個人パターンが出来上がる。緊急性があった際の排尿後も静電容量の変化が顕著でない場合は、残尿が考えられる。
【0069】
実験では、6日間ほど計測することで、凡その個々の標準値を得ることができた。例えば、継続的に計測すると、被験者3名が、切迫感を感じ、250から300mlほどの量の排尿前の静電容量値は、其々異なるが、個人別の平均推定値を得ることができた。排尿後の静電容量値から、被験者3名の個人特定の数値も取得できた。電極を付ける位置は、長時間付けているとズレが生じるため、計測毎に電極の位置を確認したが、特別な静電気を帯びないために、2つの電極は、一日中被験者の皮膚に貼り付けた。
【0070】
更に、切迫度が低い場合(切迫度2や3の場合、その際の尿量は、200ml以下である)に排尿した際には、排尿量も静電容量の変化も、切迫度が高いときに比べ、少なかった。排尿前及び排尿後の静電容量値の変化の幅と実際の排尿量は、ほぼ、比例した。
【0071】
図7は、排尿タイミングであることを通知する方式及び警報通知機能の体系図である。
【0072】
静電容量計測器22は、電気信号を発信するハードウェアと排尿タイミングを推測するCPU部分から構成される。CPU部分は、比較演算回路と識別回路で構成される。静電容量値が周囲環境によるデータのバラつきを処理するために時空系列平均化処理のソフトを組み込んでもよいが、時空系列処理の代わりに比較演算回路をCPUに組み込んだ。
【0073】
図7で、示すように、静電容量測定器22内に電気接続されているCPU部分に、演算回路と識別回路を設置する。コンパレータで計算される、(1)-(2)つまり、V
1-V
2 を信号発生端子C1からの初期の信号強度との対比であらわす演算回路51を設けた。演算回路の数式は、下記の様に示される。
数4
【0074】
So=(V1-V2)/V1 x100 ------- (4)
【0075】
静電容量計測器22内CPU部分に識別回路53を設置する。例えば、演算回路51の数式4で、切迫尿意が現れ、静電容量が最も高くなる数値より若干低い数値を閾値Soに設定するか、切迫尿意数値2のレベルと同等の数値に閾値Soを設定する。
【0076】
静電容量計測器22で計算された静電容量数値で、凡その尿量を推定する。閾値Soは、数式4にもとづいた演算回路で比較計算51された静電容量で、排尿タイミングを推定する処理回路を静電容量計測器22のCPU部分に配置する。
【0077】
排尿タイミングを検知する閾値と実際の電気信号強度を比較する目的は、個人差の解消と、装置の簡素化、軽量化である。ソフトで時空系列処理や個人別の特性や身体的特徴を加味した学習ができる係数を追加する処理を施すことでもよい。
【0078】
個人別の閾値をSoと設定し、識別回路53の数値が、閾値Soに満たない場合は、警報通知をオフに、識別回路の数値が、閾値Soより大きい場合は、警報通知をオンにすることで、信号アラームが出力54される仕組みを静電容量系内CPUに設定した。
【0079】
識別回路53の数値が閾値Soより小さい場合は、”No”つまりOFFとなり信号処理は、ここで終了し、その数値は、メモリに記録されたり、ディスプレイ上で表示されることなく、削除される。
【0080】
排尿タイミング部分は、組み込みAI(E-AI)等の微細に設計できる半導体を組み込むことで、継続して個人のパターンを分析することで最適化し、統計的な個人の特徴を加味した個人別係数を学習させることで、閾値Soの設定の精度をより高める処理をすることでもよい。
【0081】
解剖学上の個人の身体構造の違いや、姿勢などを係数化して、平均係数を乗算する機能追加することでも閾値Soの設定精度を上げることが可能だ。
【0082】
尿の蓄積量が変化すると、それが膀胱の大きさを変えることにより、膀胱を挟む位置に第一電極100と第二電極200を配置し、その電極間の静電容量の変化から、膀胱にたまる尿量を推測する際に、膀胱の伸縮を検知・センシングできる電極パットを設けることもできる。また、粘着性のある電極パットも長時間着用することや着脱の際のズレを防ぐ為、伝導性高分子を織り込んだ化学合成物質織物で生成された電極を下着のポケット部分に備えることで、全くズレが無くなるため、数値のブレが最小限に減らすことが出来る。
【0083】
膀胱内の排尿筋は、健全な状態であれば、拡張収縮する。膀胱に尿が蓄積されると上方向のみならず左右方向にも広がり、排尿されると、縮む。超音波でその様子を観察するとすぐに一瞬で縮み、短時間で膨らみ始める。膀胱の前側壁から後側壁の距離を係数に乗算することも前記に記した閾値Soの設定精度を上げることに効果がある。膀胱は、尿が溜まると頭部方向のみならず、横にも拡張することが、超音波診断装置を使用しての実験との併用で判明した。従って、超音波信号は、上下方向に発振するだけでは、膀胱全体の尿量が把握できない。当技術のように、低周波電気信号が、膀胱全体を通過する際に、水分量の多い物質にあたると、電気信号強度が減衰する特性が極めて有効である。
【0084】
閾値Soの設定は、排尿量が250から350mlで切迫数値が1の場合、排尿量が、150mlから250mlで切迫数値2場合の静電容量の数値と、排尿量等の数値を計算にいれて、切迫数値2の場合を閾値として設定することも出来る。ある一定の閾値に達する前に排尿タイミングのお知らせが行くようにタイミング発生信号出力端子と閾値Soをもとに排尿タイミングを計算する識別回路53を静電容量計測器22内のCPU上に設計する。
【0085】
このように設計することで、切迫感が1に達するまでに時間があるため、トイレ機能介助を計画的に行える。 識別回路53のONOFF機能により、排尿タイミング信号が発振・出力54される。
【0086】
排尿タイミングは、お知らせ機能として、バイブレーションや、ブザー、光などで、警報アラーム54として通知・出力する。
【産業上の利用可能性】
【0087】
小型で、ウエアラブルまたは、携帯可能な排尿予測装置に、利用者独自のアルゴリズムで、尿量を記録・推測し、お知らせ機能を持たせることで、利用者、介護者、家族等が、利用者の尿量や残尿量を推測し、排尿タイミングを認知することが出来る。
【0088】
更には、異常な量の残尿や夜間の頻尿、排尿前の尿量が、500mlを超える静電容量数値が目視できるなど、神経系その他の疾患が疑われるような数値を記録し、特定することが、可能となり、尿疾患、膀胱の機能低下など様々な疾患を早期に発見することが出来る。
【0089】
その他の応用としては、眼球の左右等に配置した電極から、静電容量信号をらえることで、硝子体の流動性を測定する。硝子体の最も一般的な問題は、硝子体のヒアルロン酸が液体を保持できないことに起因する硝子体の障害がある。 ラクナと呼ばれる空間を作り出しているゲル構造の崩壊を引き起こします。 眼球の水分量を検出する等への対策へと発展する等、他臓器、腹水や胸水等の特定に利用する可能性もある。
【符号の説明】
【0090】
100 第一の電極
200 第二の電極
22 静電容量計測器
300 低周波電気信号