IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社 東亜産業の特許一覧

<>
  • 特開-喫煙具用カートリッジ 図1
  • 特開-喫煙具用カートリッジ 図2
  • 特開-喫煙具用カートリッジ 図3
  • 特開-喫煙具用カートリッジ 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056061
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】喫煙具用カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   A24D 1/20 20200101AFI20230412BHJP
   A24D 3/17 20200101ALI20230412BHJP
   A24F 40/42 20200101ALI20230412BHJP
   A24F 40/465 20200101ALI20230412BHJP
【FI】
A24D1/20
A24D3/17
A24F40/42
A24F40/465
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141904
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】514293008
【氏名又は名称】株式会社東亜産業
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 龍志
【テーマコード(参考)】
4B045
4B162
【Fターム(参考)】
4B045AA21
4B045AA50
4B045AB16
4B045BA02
4B045BA05
4B045BA08
4B045BC07
4B045BC08
4B045BC17
4B162AA03
4B162AA05
4B162AA22
4B162AB01
4B162AB12
4B162AB17
4B162AB23
4B162AB28
4B162AC08
4B162AC13
4B162AC22
4B162AD06
(57)【要約】
【課題】簡単な構成にして、サセプタ部材を設けた喫煙具用カートリッジを提供する。
【解決手段】
誘導加熱式の喫煙具に装着して使用される喫煙具用カートリッジであって、加熱されることによりエアロゾルを発生する充填物集積体と、前記充填物集積体の内部に配置されて外部から誘導加熱されるサセプタ部材と、を有し、前記サセプタ部材は、磁性を有し線状に形成された線状材料を束ねてなる。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導加熱式の喫煙具に装着して使用される喫煙具用カートリッジであって、
加熱されることによりエアロゾルを発生する充填物集積体と、
前記充填物集積体の内部に配置されて外部から誘導加熱されるサセプタ部材と、を有し、
前記サセプタ部材は、磁性を有し線状に形成された線状材料を束ねてなる
ことを特徴とする喫煙具用カートリッジ。
【請求項2】
前記サセプタ部材は、螺旋状に束ねてなる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の喫煙具用カートリッジ。
【請求項3】
前記サセプタ部材は、棒状に形成されてなる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の喫煙具用カートリッジ。
【請求項4】
前記喫煙具用カートリッジの下流端に配設され、フィルタを有するマウスピースと、
前記喫煙具用カートリッジの上流端に配設され、フィルタを有するシール部材と、を有し、
前記シール部材は、前記マウスピースとは異なる色のフィルタを含んでなる、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の喫煙具用カートリッジ。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱式の喫煙具に装着して使用される喫煙具用カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、火炎を用いることなく、タバコの成分を含むタバコカートリッジを加熱して、気化したタバコ成分を吸引する方式のタバコ製品が広く知られている。また、嗜好の多様化から、タバコ成分を含まない植物の芳香や味わいを、タバコ同様に火炎を用いずに楽しむためのカートリッジ製品を使用した喫煙具も知られ始めている。
【0003】
このような喫煙具においては、充填物が集積された充填物集積体を加熱することで、エアロゾルを発生させる。充填物集積体の加熱方法として、充填物集積体の内部に磁性体からなるサセプタ部材を設け、喫煙具からサセプタ部材を誘導加熱することで、充填物を加熱することが知られている。このように充填物集積体中にサセプタ部材を設けた喫煙具用カートリッジとして、例えば特許文献1に挙げるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2017-519493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のサセプタ部材は、複数種類の金属を複数層に形成してなるため、当該サセプタ部材の製造が難しい。ゆえに、このようなサセプタ材料を喫煙具用カートリッジに設けることは、喫煙具用カートリッジの製造単価を高めることとなり、好ましいことではない。
【0006】
本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、簡単な構成にして、サセプタ部材を設けた喫煙具用カートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る喫煙具用カートリッジは、誘導加熱式の喫煙具に装着して使用される喫煙具用カートリッジであって、加熱されることによりエアロゾルを発生する充填物集積体と、前記充填物集積体の内部に配置されて外部から誘導加熱されるサセプタ部材と、を有し、前記サセプタ部材は、磁性を有し線状に形成された線状材料を束ねてなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る喫煙具用カートリッジによれば、簡単な構成にして、サセプタ部材を設けた喫煙具用カートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態における充填物集積体を有する喫煙具用カートリッジの断面図である。
図2】喫煙具用カートリッジの使用形態を表す断面図である。
図3】サセプタ部材の斜視図である。
図4図1中のI-I断面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。本発明は、以下の
実施形態に限定されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、
重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際
の比率とは異なる場合がある。
【0011】
(喫煙具用カートリッジの全体構成)
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。図1には、本実施形態における充填物集積体10を有する喫煙具用カートリッジ1の断面図を示している。この図に示すように、喫煙具用カートリッジ1は、充填物20が多数充填された略円筒状の充填物集積体10と、充填物集積体10からの気流を通すことのできる支持部材12と、一端に吸口14aを有するマウスピース14と、他端に導入口18aを有するシール部材18とが、長手方向に沿って配列され、シート状の包装部材16で巻かれることで一体化されて形成されている。包装部材16は、紙等で形成することができる。
【0012】
本実施形態において喫煙具用カートリッジ1は、径が4.0mm~7.5mm、より好ましくは5.0mm~7.0mm、長さが40mm~80mmに形成される。喫煙具用カートリッジ1の外径を6.5~7.5mmの範囲に設定すれば、喫煙具2に設けられた喫煙具用カートリッジ1を差し込む挿入部51よりも小さな径となり、喫煙具用カートリッジ1を喫煙具2に挿入するのが容易となる。喫煙具用カートリッジ1の長さを40~80mmの範囲に設定すれば、喫煙具2に設けられた喫煙具用カートリッジ1を受け入れる挿入部51の長さよりも長くなるので、喫煙具用カートリッジ1を喫煙具2に差し込んでも吸口14aを喫煙具2から露出させることができ、喫煙者が喫煙するのに必要な長さを確保可能となる。
【0013】
(支持部材の構成)
支持部材12は、充填物集積体10の支持部材12側への移動を抑制するとともに、充填物集積体10で発生したエアロゾルを含む気流をマウスピース14側に流通させる。支持部材12は、例えば円筒状かつ中実状に設けられ、その軸方向が中心軸に沿うように充填物集積体10とマウスピース14との間に配置される。支持部材12は、例えば、外径が4.0mm~7.5mm、中心軸に沿った長さが50mm以下に形成される。なお、支持部材12は、適宜機能および構成に応じて上記とは異なる寸法を有していてもよい。
【0014】
支持部材12は、樹脂材で形成される。支持部材12を形成する樹脂材としては、例えば、ポリプロピレン、ポリ乳酸、シリコーンのようなものが挙げられる。ただし、支持部材12はこれ以外の樹脂材、あるいは冷却効果が増す木材、金属(アルミ等)のような樹脂材以外の材料で形成されていてもよい。なお、支持部材12は必ずしも必要ではなく、充填物集積体10がマウスピース14側に容易に動くことのない構成(充填物集積体10が包装部材16に固定されている等)であれば、支持部材12を設けなくてもよい。
【0015】
(マウスピースの構成)
マウスピース14は、円筒状に形成され、例えば直径が4.0mm~7.5mm、中心軸に沿った長さが50mm以上に形成される。マウスピース14は、例えば紙等を用いて形成される。また、マウスピース14は、例えば紙からなるシート状の部材を巻いて円筒状に設けられてもよいし、微粒子を取り除くセルロースアセテートフィルタ等を含んでいてもよい。マウスピース14は、充填物集積体10で生成された水蒸気やエアロゾル中の微粒子の一部を濾過する機能を有する白色のフィルタである。なお、後述するように充填物20が非タバコ植物を原料としているため、マウスピース14は必ずしも必要ではない。
【0016】
(充填物集積体の構成)
充填物集積体10は、長尺状の充填物20が長さ方向に沿って束状とされ、シート状の包装部材25で巻かれることで略円筒状となるように形成されている。充填物20は、タバコ植物または非タバコ植物から形成される。充填物20は、長尺状に限られず、粒状、ダスト状、ペースト状、多孔質状など他の形態であってもよい。充填物集積体10は、10~25mmの長さを有する。なお、喫煙具用カートリッジ1は、喫煙具2の形状に合わせて、上記とは異なる寸法を有していてもよい。
【0017】
充填物集積体10の外径は、支持部材12やマウスピース14の外径と等しく、また、中心軸に沿って概ね一定の値となっている。この外径の大きさは、例えば4.0mm~7.5mmの範囲が好ましく、さらに好ましくは5.0mm~7.0mmの範囲である。
【0018】
充填物集積体10の内部には、サセプタ部材30が設けられる。サセプタ部材30は、外部からの磁場によって誘導加熱されることができる。このため、サセプタ部材30は、磁性体を含む金属材料で形成される。磁性体は、強磁性体、常磁性体、反磁性体に大別される。磁性体のうち強磁性体は、外部磁界を加えると外部磁界と同じ方向の磁性を強く帯び、外部磁界ゼロにしても強い磁気が残る材料であり、例えば、強磁性体の材料である鉄、フェライト鉄、フェライト粉末、フェライト粒子、フェライト系ステンレス、強磁性鋼、ステンレス鋼、ニッケル、あるいはコバルト等が挙げられる。強磁性体の比透磁率は、1よりも極めて大きく、例えば、鉄であれば5000程度であり、ニッケルであれば600程度であり、コバルトであれば250程度であり、フェライト系ステンレスであれば1000~1800程度である。
【0019】
磁性体のうち常磁性体は、外部磁界を加えると外部磁界と同じ方向の磁気を弱く帯び、外部磁界をゼロにすると磁気を帯びなくなる材料であり、例えば、アルミニウム、白金およびマンガン等が挙げられる。常磁性体の比透磁率は1よりもわずかに大きく、例えば、アルミニウムであれば1.000021程度であり、白金であれば1.000265程度であり、マンガンであれば1.000830程度である。
【0020】
また、磁性体のうち反磁性体は、外部磁界を加えると外部磁界と反対方向の磁気を帯び、外部磁界をゼロにすると磁気を帯びなくなる材料であり、例えば銅、グラファイト、ビスマスおよびクロム等が挙げられる。反磁性体の比透磁率は、1よりもわずかに小さく、例えば、銅であれば0.999990程度であり、グラファイトであれば0.99980程度であり、ビスマスであれば0.999834程度である。
【0021】
強磁性体は、交流磁界が発生すると、誘導電流が流れてジュール熱が発生するだけでなく、分子同士の摩擦や振動によって熱(ヒステリシス損失)が発生するため、常磁性体や反磁性体に比べて容易に誘導加熱でき、充填物集積体10を十分に加熱できる。
【0022】
また、強磁性体は、キュリー温度が高く、例えば、ニッケルであれば358℃程度である。そのため、喫煙具用カートリッジ1を例えば200℃の高温で加熱する際にも、加熱温度がキュリー温度に達することはなく、強磁性体として性質を維持でき、充填物集積体10を安定して加熱できる。
【0023】
サセプタ部材30には、強磁性体の材料である、上述した鉄、フェライト鉄、フェライト粉末,フェライト粒子、フェライト系ステンレス、強磁性鋼、ステンレス鋼、ニッケル、コバルト、またはこれらを組み合わせた金属材料を採用してもよい。例えば、フェライト系ステンレスとニッケルを組み合わせたもの等が挙げられ、より好ましくは、鉄、クロム、アルミを組合せた合金(鉄クロムアルミ合金)である。
【0024】
ここで、鉄及びクロムの温度と磁性の関係性について説明すると、鉄は、強磁性体から常磁性体に変わる温度であるキュリー温度が約770℃、クロムは、強反磁性体から常磁性体に変わる温度であるネール温度が約308℃である。
【0025】
また、サセプタ部材30は、強磁性体を主成分として含む金属材料によって構成されてもよく、例えば磁性体を、60%以上、好ましくは80%以上含む合金である強磁性合金を採用してもよい。例えば、ニッケル合金あるいはニッケル鉄合金等が挙げられる。この場合でも、強磁性体が誘導加熱されることで、充填物集積体10を十分に加熱できる。なお、強磁性体の代わりに、常磁性体および反磁性体を含む金属材料を用いてもよい。この場合でも誘導加熱自体は可能である。ただし、加熱時間の短縮化や消費電力の低減の観点から強磁性体を含む金属材料を用いる方が好ましい。
【0026】
サセプタ部材30には、強磁性体、常磁性体または反磁性体の材料を組み合わせてもよい。例えば、強磁性体の材料であるニッケルで形成された第一のサセプタ部材と強磁性体の材料である鉄で形成された第二のサセプタ部材とを物理的に密着したもの、または第一のサセプタ部材と常磁性体の材料であるアルミニウムで形成された第三のサセプタ部材とを物理的に密着したもの、第一のサセプタ部材の外表面を第三のサセプタ部材で被覆する等が挙げられる。サセプタ部材30の配置については、後述する。
【0027】
サセプタ部材30は、充填物集積体10の全長に対して占める割合が100%である。すなわち、サセプタ部材30は、充填物集積体10の全長に渡る長さを有している。サセプタ部材30は、充填物集積体10の全長に渡っていなくてもよく、充填物集積体10の全長に対して占める割合が25%以上100%以下の長さであればよい。これにより、サセプタ部材30によって充填物20の温度を確実に上昇させることができる。
【0028】
(シール部材の構成)
シール部材18は、円筒状に形成され、例えば直径が4.0mm~7.5mm、中心軸に沿った長さが50mm以下に形成される。シール部材18は、マウスピース14と同様に、例えば紙からなるシート状の部材を巻いて円筒状に設けられてもよい。シール部材18は、導入部18a、すなわち上流側から充填物集積体10に向かって空気を通過させる機能を有する。また、シール部材18は、充填物集積体10で生成された水蒸気やエアロゾルのうち、充填物集積体10に留まって液化した残留液を吸収することができる。このシール部材18は、マウスピース14とは異なる色(例えば黒)にすることで、喫煙具用カートリッジ1の上流側と下流側を簡単に判断可能にすることができる。
【0029】
(喫煙具用カートリッジの使用態様)
図2には、喫煙具用カートリッジ1の使用形態を表す断面図を示している。喫煙具用カートリッジ1は、シール部材18側を喫煙具2に装着されて使用される。喫煙具2は、喫煙具用カートリッジ1を挿入させる挿入部51を有している。喫煙具2には、挿入部51に沿うように誘導加熱部52が設けられている。誘導加熱部52は、誘導コイルを含んでおり、挿入部51に挿入された充填物集積体10に含まれるサセプタ部材30と誘導結合して、サセプタ部材30を加熱することができる。サセプタ部材30が加熱されることで周囲の充填物20が加熱され、エアロゾルを発生させることができる。この状態で、喫煙者がマウスピース14から吸うことにより、エアロゾルを含む気流を吸引することができる。
【0030】
さらに、喫煙具2は、サセプタ部材30の温度を検出することができる。具体例としては、誘導加熱部52は、サセプタ部材30に供給した磁力によってサセプタ部材30を加熱する一方、定期的(例えば1msに一回)に、誘導加熱部52へ供給されるDC電源のDC電源電圧およびDC電源から引き出されるDC電流から決定されるサセプタ部材30の見かけのオーム抵抗を検出することで、当該検出時のサセプタ部材30の抵抗値を検出することができる。すなわち、サセプタ部材30が鉄クロムアルミ合金からなる場合、クロムの磁性が308℃で反磁性から常磁性に変化し、鉄の磁性が770℃で強磁性から常磁性に変化するため、喫煙具2は、サセプタ部材30の見かけのオーム抵抗に基づいて、サセプタ部材30の温度を、308℃未満か、308℃以上770℃未満か、あるいは770℃以上かを検出することができる。
【0031】
(充填物の構成)
充填物20は、乾燥・粉砕された非タバコ植物に、エアロゾルを発生させるエアロゾルフォーマや、微結晶セルロース、風味を追加する添加剤、保存料、粘着剤または増粘剤等を混合し、シート状に成形した上で、所定の幅及び長さを有するように切断されることで形成される。なお、充填物20は長尺状に限定されず、多様な形状を有してもよい。例えば、ペースト状に形成されてもよいし、顆粒状に形成されてもよい。
【0032】
充填物20を長尺状で構成した場合、中心軸に直交する断面は略長方形状であり、その断面の長辺と短辺の比は、例えば、1:1~30:1の範囲であることが好ましい。長辺の長さは、0.1mm~7.5mmの範囲が好ましく、さらに好ましくは、0.1mm~3.0mmの範囲である。短辺の長さは、0.1mm~1.0mmの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.1mm~0.5mmの範囲である。また、充填物20の長さは充填物集積体10の長さと略同一であるのが好ましい。充填物20の長さは10mm~25mmの範囲が好ましく、さらに好ましくは10mm~20mmの範囲である。このような充填物20の寸法の一例を挙げると、長辺が1.5mm、短辺が0.3mm、長さが12mmである。
【0033】
次に、充填物20として用いられる原料の具体例について説明する。充填物20は、以下に示す原料のうち任意の1つまたは複数の組み合わせで構成される。
【0034】
充填物20は、タバコ植物または非タバコ植物を原料とする。タバコ植物としては、タバコ葉、タバコ茎、膨張タバコ、均質化タバコ等が挙げられる。非タバコ植物としては、タバコ植物以外の植物が挙げられる。非タバコ植物の好ましい部位としては、葉、果肉、種子、根(鱗根、塊根等)、茎、塊茎、皮(茎皮、樹皮等)、花(花弁、雄蕊、雌蕊等)、幹、枝等が挙げられる。
【0035】
なお、本明細書でいう「植物」とは動物に対する一群を意味し、草および木等のように、根があって場所が固定されて生きているような生物以外に、微細藻類および海藻等のような藻類、キノコ等の菌類等をも含む。
【0036】
充填物20は、例えば、乾燥・粉砕された非タバコ植物に、エアロゾルを発生させるエアロゾルフォーマ、微結晶セルロース、風味を追加する添加剤、保存料、結着剤または増粘剤等を適宜混合し、粉砕若しくは分級して粉状または粒状にしたり、ペースト状に成形される。また、エアロゾル形成基材23は、シート状に成形した上で、所定の幅および長さを有するように切断して短冊状または棒状とされる。
【0037】
例えば、非タバコ植物の部位が葉である場合は、好ましくは茶類を使用できる。茶類は茶になる植物が異なるだけでなく、同じ植物であっても加工法によって異なるお茶になる。具体的には、たとえば、日本茶、紅茶、明日葉茶、甘茶、アマチャヅル茶、アロエ茶、イチョウ葉茶、ウーロン茶、ウコン茶、ウラジロガシ茶、エゾウコギ茶、オオバコ茶、カキオドシ茶、柿の葉茶、カミツレ茶、カモミールティ、河原決明茶、カリン茶、菊花茶、ギムネマ茶、グァバ茶、クコ茶、柔の葉茶、黒豆茶、ゲンノショウコ茶、玄米茶、ゴボウ茶、コンフリー茶、毘布茶、桜茶、サフラン茶、シイタケ茶、シソ茶、ジャスミン茶、しょうが茶、スギナ茶、セキショウ茶、センブリ茶、ソバ茶、タラノキ茶、タンポポ茶、甜茶、ドクダミ茶、杜仲茶、ナタマメ茶、ニワトコ茶、ネズミモチ茶、ハトムギ茶、ハブ茶、ビワの葉茶、プーアル茶、紅花茶、松葉茶、マテ茶、麦茶、メグスリノキ茶、ヨモギ茶、ユーカリ茶、羅漢果茶、ルイボスティ、ゴーヤ茶などが挙げられる。これらお茶については飲用後の茶殻を使用しても良い。茶殻などを使用すれば高価なお茶などを再利用して有効活用できる。
【0038】
さらに、上記に例示した非タバコ植物の抽出物、所謂エキスや加工品も使用することができる。抽出物の形態としては、液体、水あめ状、粉末、顆粒、溶液等が挙げられる。
【0039】
充填物20の原料としてのエアロゾルフォーマは、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、トリエチレングリコール、乳酸、ジアセチン(グリセリンジアセタート)、トリアセチン(グリセリントリアセタート)、トリエチレングリコールジアセタート、クエン酸トリエチル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸メチル、ドデカンジオン酸ジメチル、テトラデカンサンジオン酸ジメチルなどが挙げられる。なかでも、グリセリン、プロピレングリコールが好ましい。
【0040】
充填物20の原料としての微結晶セルロースとは、例えば、繊維性植物のパルプから得られたα-セルロースを酸で部分的に解重合したものとして得られるものであり、セルロースから可溶性部分を取り除き、適宜、不溶性部分を結晶化したものである。
【0041】
微結晶セルロースは、粉体のままでも良いし、水などの溶媒に分散させて懸燭液でも良い。この場合、溶媒ヘの分散は、高速攪拌機や高圧ホモジナイザーなどが使用できる。
【0042】
さらに、必要に応じ充填物20の原料として風味を追加する風味添加剤も好ましく用いられる。風味添加剤としては、はっか、ココア、コーヒー、紅茶のエキス、茶抽出物のカテキンの粉末等が挙げられる。保存料としては食品に使用されるものが好ましく、例えば、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
【0043】
充填物20に、メントールおよび非水溶性架橋ポリマー(好ましくはポリビニルポリピロリドン)を含有させても良い。メントールに非水溶性架橋ポリマーを組み合わせることで、メントールの昇華を効果的に抑制でき、メントールの風味を長期間保つことができる。ここで、メントールとは、天然物から得られたものに限られず、合成物でも良い。また、はっか、ミント、ハッカ油、その他のメントールを含むものを使用しても良い。
【0044】
風味添加剤は、例えば、マウスピース14の壁部に含浸させることによってマウスピース14に設けられている。風味添加剤がマウスピース14に設けられている態様は、このような態様に限られず、例えば、当該風味添加剤が封入されているカプセルをマウスピース14の壁部に埋設することによって、マウスピース14に風味添加剤が設けられているようにしても良い。または、マウスピース14と充填物集積体20との間に風味添加剤が封入されたカプセルが配置されるようにしても良い。風味添加剤がカプセルに封入されている場合、喫煙者は、カプセルを指で押圧することにより、カプセルを破壊することができ、所望のタイミングで風味添加剤の芳香成分を揮発させることが可能となる。
【0045】
さらに、風味添加剤は、例えば、マイクロカプセルに封入されている場合、封入されているマイクロカプセルを充填物集積体10に設けても良い。勿論、当該マイクロカプセルを支持部材12に設けても良い。
【0046】
充填物20の原料としての結着剤または増粘剤としては、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴムおよびローカストビーンガムなどのゴム、例えばヒドロキシプロピルセルレロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースおよびエチルセルロースなどのセルロース結合剤、例えばデンプン、アルギン酸などの有機酸、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラナギン、寒天およびペクチンなどの有機酸の共役塩基塩などの多糖類、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0047】
(充填物の製造工程)
充填物20の製造工程は、主原料となるタバコ植物または非タバコ植物を乾燥・粉砕し、秤量等を行う乾燥・粉砕工程と、その他の原料の前処理、秤量等を行う準備工程と、原料を混合して組成物とする混合工程と、組成物を成形する充填物成形工程と、を有する。
【0048】
乾燥・粉砕工程では、主原料となるタバコ植物または非タバコ植物の使用部位(例えば、葉、種子、乾燥果実、茎、樹皮、根など)を組成物とするため、所定の粉砕物に加工する。その際、後に添加するエアロゾルフォーマ、水その他の成分を吸収あるいは担持するのに都合の良い水分量に調整することが好ましい。乾燥において、温度は60℃以上80℃以下が好ましい。この範囲とすることで、必要とする香味成分の散逸を避けながら、所望の水分量に到達させやすい。さらに、乾燥・粉砕工程には、粉砕物を篩分けする篩工程を設けることもでき、所望の粒度に調整して混合工程に投入することができる。
【0049】
準備工程においては、充填物20を作製するにあたり必要な原料を準備することができる。前述の微結晶セルロースは、準備工程において秤量され、混合工程に投入される。
【0050】
混合工程においては、通常の混合機を使用することができる。例えば、混合槽中の原料を撹拌羽根にて、剪断力を加えつつ混合するような形態が好ましく用いられる。
【0051】
充填物成形工程では、各種原料が混合された組成物を薄いシート状に成形してから、切断することで、短冊状または棒状の充填物20が成形される。本実施形態では、薄いシートにするため、複数本のロールミルを用意する。複数本のロールミルを用いると、狭いロール間に押し込まれることによる圧縮と、ロール速度差による剪断により、混練、分散などを行いながら、ドクターブレードにより所望の厚さのシートとすることが可能であり、好ましい。また、プレスローラあるいはプレス機を用いて作製することもできる。
【0052】
また、粉状または粒状の充填物20とするには、上記組成物について、適宜粉砕若しくは分級を行うことが好ましい。粉状または粒状の充填物20における平均粒子径は、例えば0.1~3.0mmであることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましい。当該平均粒子径は、例えばJIS K 0069:1992に記載された篩分け法によって求められる。つまり、この平均粒子径は、複数の篩による試験結果について、目開きの大きいほうからの質量の積算を行い、その質量50%に相当する径をいう。また、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を平均粒子径としても良い。
【0053】
充填物成形工程では、組成物を加圧によりオリフィスを通過させて成形するなど、他の手段を用いても良い。また、充填物成形工程では、必要に応じて、非タバコ植物、エアロゾルフォーマ、結着剤または増粘剤等、風味添加剤、保存料をさらに添加しても良いし、水などを添加しても良い。
【0054】
充填物成形工程で得られるシートの厚さは、0.1mm~1.0mmの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.1mm~0.5mmの範囲である。得られたシートは、カッター、回転刃方式のロータリーカッター等により、所定の幅に切断される。
【0055】
ここで、充填物20の表面に粘着性を付与する場合は、粘着性を付与できる手段であれば特に限定されないが、既述の結着剤を少なくとも一部に付着させれば良い。粘着性を付与することで、短冊状または棒状の充填物20と粉状、粒状またはペースト状の充填物20と組み合わせる場合に、短冊状または棒状の充填物20の表面に粉状、粒状またはペースト状の充填物20を安定して保持することができる。
【0056】
(サセプタ部材の形状と配置)
図3にはサセプタ部材30の斜視図を、図4には図1中のI-I断面の断面図を、それぞれ示している。図3に示すように、サセプタ部材30は、全体として細長い棒状に形成されている。具体的には、サセプタ部材30は、複数本の鉄クロムアルミ合金の金属線31を螺旋状にして束ねて1本の棒状に形成されている。好ましくは、サセプタ部材30は、直径0.5mmの金属線31を3本束ねてなる。
【0057】
サセプタ部材30は、充填物集積体10の全長に対して占める割合が25%以上100%以下の長さとすることができる。なお、本実施形態では、金属線31のすべてを鉄クロムアルミ合金として説明したが、サセプタ部材は、複数の金属線のうちの一部を強磁性体、一部を常磁性体、残りを反磁性体、といったように、複数種類の磁性体を組み合わせるようにしてもよく、金属線31の本数は2本や3本以上であってもよい。また、複数本の金属線31を接着剤や溶接材によって溶接するようにしてもよく、複数本の金属線31が互いに熱的にまたは電気的に接続できればよい。
【0058】
図4に示すように、充填物集積体10の内部にサセプタ部材30は1本、設けられる。サセプタ部材30は、充填物集積体10の径方向で視て中央に配置される。これにより、充填物集積体10は、充填物20全体が、充填物集積体10の径方向中央から均一に、むらなく加熱されるようにして、効率よくエアロゾルを発生させることができる。
【0059】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例および修正例に想到し得るものであり、それら変更例および修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、処理の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0060】
以上説明したように、本発明に係る喫煙器具では、誘導加熱式の喫煙具2に装着して使用される喫煙具用カートリッジ1であって、加熱されることによりエアロゾルを発生する充填物集積体10と、充填物集積体10の内部に配置されて外部から誘導加熱されるサセプタ部材30と、を有し、サセプタ部材30は、磁性を有し線状に形成された金属線31を束ねてなる。
【0061】
従って、磁性を有し線状に形成された金属線31を束ねたサセプタ部材30を喫煙具用カートリッジ1に用いたことで、金属線31の本数や種類、径等を、充填物20の種類や風香味に合わせて調整することができるので、簡単な構成にして、サセプタ部材30の細かい温度設定を行うことができる。
【0062】
そして、サセプタ部材30は、螺旋状に束ねて形成したので、例えば円柱状のサセプタと比較して表面積を大きくし、喫煙具2による誘導加熱磁場を的確に供給することができる。
そして、サセプタ部材30は、棒状に形成されてなるので、より簡単な構成にすることができる。
【0063】
そして、喫煙具用カートリッジ1の下流端に配設され、フィルタを有するマウスピース14と、喫煙具用カートリッジ1の上流端に配設され、フィルタを有するシール部材18と、を有し、シール部材18は、マウスピース14とは異なる色のフィルタを含んでなるので、喫煙具用カートリッジ1の上流側と下流側をユーザによって簡単に認識させることができる。
【0064】
本発明の各実施形態において、喫煙具用カートリッジ1には、支持部材12が設けられる例を示したが、本発明は、これに限定されない。喫煙具用カートリッジ1の充填物集積体10は、例えば、支持部材12がなくてもマウスピース14側に移動するのを抑制するように、喫煙具用カートリッジ1の内周面と充填物集積体10との間で固定されていれば、支持部材12を有しなくてもよい。
【0065】
また、本実施形態では、サセプタ部材30を充填物集積体10の径方向で視て中央に配置したが、充填物集積体10の径方向中央より外側に配置してもよく、複数のサセプタ部材30を充填物集積体10の内部に配置してもよい。また、本実施形態では、全体として棒状のサセプタ部材30を用いて説明したが、螺旋状に巻回させた形状や、筒形状にして、充填物集積体10の径方向外側にサセプタ部材が位置するようにしてもよい。このように、充填物集積体10の径方向中央より外側にサセプタ部材30を配置して用い、複数のサセプタ部材30を用い、または螺旋状に巻回させたサセプタ部材30を用いる際は、充填物集積体10の径方向中央より外側にサセプタ部材30を位置させることで、喫煙具用カートリッジ1は、通電して発熱するブレードやピンを充填物集積体10の径方向中央に別途差し込むことが可能な構成とすることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 喫煙具用カートリッジ
2 喫煙具
10 充填物集積体
12 支持部材
14 マウスピース
14a 吸口
16 包装部材
18 シール部材
18a 導入部
20 充填物
25 包装部材
30 サセプタ部材
31 金属線
51 挿入部
52 誘導加熱部
図1
図2
図3
図4