(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056068
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】濃度センサの校正方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/02 20060101AFI20230412BHJP
【FI】
G01N27/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165151
(22)【出願日】2021-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】善積 順一
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA05
2G060AB21
2G060AE17
2G060AF06
2G060AF10
2G060FA01
2G060HC01
2G060HC10
2G060KA06
(57)【要約】
【課題】濃度センサの校正方法に関し検出精度を高めることを目的とする。
【解決手段】共振器と信号処理部とを備えた濃度センサにおいて、校正ジグを第1のアルコール濃度に応じた第1のインピーダンスに設定してバラクタダイオードのカソードに接続する第1のステップ、信号処理部における第1のインピーダンスが接続された状態で第1の共振特性を得る第2のステップ、校正ジグを第2のアルコール濃度に応じた第2のインピーダンスに設定してバラクタダイオードのカソードに接続する第3のステップ、信号処理部における第2のインピーダンスが接続された状態で第2の共振特性を得る第4のステップ、第1の共振特性と第2の共振数特性とから第1のアルコール濃度と第2のアルコール濃度の間の係数を演算する第5のステップ、係数を記憶部に記憶させる第6のステップを含む濃度センサの校正方法は。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃度センサは、石油系燃料とアルコールの混合燃料に含まれる前記アルコールの濃度を検出するために共振器と、前記共振器に接続された信号処理部と、を備え、
前記共振器は、
一端が発振器に接続されたインダクタと、
一端が前記インダクタの他端に接続されて他端が接地されるように構成された第1のコンデンサと、
カソードの側が前記インダクタと前記コンデンサとの間に接続されて、アノードの側が接地されるように構成されたバラクタダイオードと、を有し、
前記第1のコンデンサは、前記アルコールの濃度を測定する際に前記混合燃料に浸漬されるように構成されており、
前記信号処理部は、演算部と記憶部を有しており、
前記記憶部は、係数が格納されており、
前記演算部は、前記記憶部に格納された係数を参照することで構成される演算式を有しており、
校正ジグは、インピーダンス素子を有しており、
前記濃度センサの校正方法は、
前記校正ジグのインピーダンスを第1のアルコール濃度に応じた第1のインピーダンスに設定して、前記バラクタダイオードのカソードに接続する第1のステップと、
前記信号処理部において、前記第1のインピーダンスが接続された状態で前記共振器から出力される検査信号から第1の共振特性を得る第2のステップと、
前記校正ジグのインピーダンスを第2のアルコール濃度に応じた第2のインピーダンスに設定して、前記バラクタダイオードのカソードに接続する第3のステップと、
前記信号処理部において、前記第2のインピーダンスが接続された状態で前記共振器から出力される検査信号から第2の共振特性を得る第4のステップと、
前記第1の共振特性と前記第2の共振特性とから前記第1のアルコール濃度と前記第2のアルコール濃度の間の前記演算式における係数を算出する第5のステップと、
前記係数を前記第1のアルコール濃度と前記第2のアルコール濃度の間の係数として前記記憶部に記憶させる第6のステップと、を含む、
濃度センサの校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、濃度センサの校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、センサの検出信号を濃度信号に変換するための検量線を搭載したガス濃度センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の検量線は、濃度センサによる実測値とガス濃度との相関関係を事前に確認することで得られる条件式である。このため、個々の濃度センサを構成する例えばコンデンサやインダクタといった構成部品の組み立て誤差に基づく特性バラツキが考慮されておらず、濃度センサの検出精度を高めることが困難であった。
【0005】
そこで、本開示はこのような問題を解決し、濃度センサの検出精度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様における濃度センサの校正方法は、共振器と信号処理部とを備えた濃度センサにおいて、共振器は、インダクタと第1のコンデンサとバラクタダイオードを有し、信号処理部は、演算部と記憶部を有しており、校正ジグを第1のアルコール濃度に応じた第1のインピーダンスに設定してバラクタダイオードのカソードに接続する第1のステップと、信号処理部において、第1のインピーダンスが接続された状態で第1の共振特性を得る第2のステップと、校正ジグを第2のアルコール濃度に応じた第2のインピーダンスに設定してバラクタダイオードのカソードに接続する第3のステップと、信号処理部において、第2のインピーダンスが接続された状態で第2の共振特性を得る第4のステップと、第1の共振特性と第2の共振特性とから第1のアルコール濃度と第2のアルコール濃度の間の係数を演算する第5のステップと、係数を記憶部に記憶させる第6のステップを含む。
【発明の効果】
【0007】
この校正方法により、濃度センサの検出精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る濃度センサ100に校正ジグと取り付けた状態を示す模式図である。
【
図2】
図2は、濃度センサの制御信号とエタノール濃度との関連性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、本開示の実施の形態に係る濃度センサの校正方法について、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される形状、構成要素、構成要素の配置及び接続形態などは、一例であり、本開示を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0010】
各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。各図において、実質的に同一の構造については同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化している。
【0011】
図1は、混合燃料に含まれるアルコールの濃度を検出する濃度センサ100の校正方法を示す模式図である。濃度センサ100は、発振器10と共振器20と信号処理部30を備えている。濃度センサ100には校正ジグ40が取り付けられている。なお、共振器20の中に記されたハッチングは混合燃料1を示している。
【0012】
発振器10は、検査信号Vd0を出力する。検査信号Vd0は、所定の周波数を有する所定の電圧の信号であえる。検査信号Vd0は、例えば周波数が100MHzで振幅が±5Vの信号である。
【0013】
共振器20は、インダクタ21とコンデンサ22とバラクタダイオード23から構成される。コンデンサ22とバラクタダイオード23は並列に接続されて複合コンデンサ24を構成している。バラクタダイオード23のカソード側とコンデンサ22の間に配置されたコンデンサ25は、制御信号Vtに対するDCカット用の容量である。共振器20は、例えば、互いに直列に接続されたインダクタ21と複合コンデンサ24よりなる直列共振型の共振回路である。なお、複合コンデンサ24の一端は接地しているが、一端を開放端としてもよい。また、共振器20は、互いに並列に接続されたインダクタ21と複合コンデンサ24よりなる並列共振型の共振回路としてもよい。
【0014】
共振器20を構成するコンデンサ22は、一対の電極22A、22Bにより構成される。濃度検出にあたっては、一対の電極22A、22Bが混合燃料1の中に配置される。コンデンサ22は、電極22A、22Bと、混合燃料1の電極22A、22B間の部分1Aで構成されている。したがって、コンデンサ22の静電容量は混合燃料1の比誘電率に比例する。つまり、共振器20の共振周波数は混合燃料1の比誘電率に比例する。混合燃料1は、石油系燃料とアルコールを混合した燃料である。実施の形態では混合燃料1は、石油系燃料であるガソリンと、アルコールであるエタノールを混合した燃料である。なお、混合燃料1の石油系燃料は軽油等のガソリン以外の燃料であってもよく、アルコールはメタノール等のエタノール以外のアルコールであってもよく、実施の形態における濃度センサ100によりガソリンとエタノール同様に混合燃料1中のアルコールの濃度を検出することができる。検査信号Vd0が共振器20を介して検査信号Vd1として出力される。詳細には検査信号Vd0は共振器20の入力端201に入力され、検査信号Vd1として共振器20の出力端202から出力される。共振器20を構成するバラクタダイオード23は、信号処理部30から出力される制御信号Vtにより容量が制御される。制御信号Vtは、共振器20の入力端203に入力される。
【0015】
信号処理部30は、制御電圧Vtを出力する。制御信号Vtは、共振器20のインピーダンスが最大となるように制御される。つまり、制御信号Vtは、共振器20から出力される検査信号Vd1が最大となるように制御される。言い換えれば、制御信号Vtは、共振器20の共振特性に応じて制御される。
【0016】
信号処理部30には検査信号Vd1が入力される。なお、信号処理部30に入力される検査信号Vd1は直流信号であることが好ましい。この場合、共振器20の出力端202と信号処理部30との間に検波回路60を配置することで直流信号に変換することが出来る。検波回路60は、例えばショットキーダイオードで構成することが出来る。信号処理部30は、検査信号Vd1の値が最大となる制御信号Vtの電圧を抽出する。信号処理部30は、抽出した制御信号Vtの電圧に基づいて混合燃料1におけるエタノールの濃度を出力信号Voutとして出力ポート70に出力する。
【0017】
図2に制御信号Vtとエタノール濃度の関連性を示す。
図2において縦軸は制御信号Vtの電圧を示し、横軸は混合燃料1におけるエタノール濃度を示す。曲線Aは、濃度センサ100における制御信号Vtとエタノール濃度の関係を示している。なお、曲線Aは、共振器20を構成するインダクタ21、コンデンサ22、バラクタダイオード23等の構成部品の理論値に基づいたエタノール濃度と制御信号Vtの関連性を示している。つまり、濃度センサ100において制御信号Vtを抽出することでエタノール濃度を導出することが出来る。
【0018】
信号処理部30には、演算部301と記憶部302を備えている。演算部301には、
図2に示す曲線Aを近似した演算式301Aがプログラミングされている。記憶部302には、演算式301Aにおける係数302Aが格納されている。演算部301は、記憶部302に格納された係数302Aを参照することで演算式301Aによる演算処理を実行するように構成されている。このように演算式301Aの係数302Aを記憶部302に格納する構成としたことで、記憶部302の交換や記憶部302に格納された係数302Aを書き換えることにより演算式301Aを更新することが出来る。
【0019】
この演算式301Aの更新は濃度センサ100の検出精度を向上させることが出来る。すなわち、濃度センサ100は、上述したように共振器20の共振周波数に基づいて行われる。そして、共振器20を構成するインダクタ21やコンデンサ22及びバラクタダイオード23等の個別の構成部品は、量産において個々の特性バラツキを含む。このため、濃度センサ100の量産過程において、個々の共振器20において共振特性のバラツキが生じる。この共振特性のバラツキは、濃度センサ100の検出精度の劣化要因となる。よって、量産過程で生じた共振特性のバラツキに応じて演算式301Aを個別に校正することで、量産における濃度センサ100の特性劣化を抑制することが出来る。
【0020】
次に、濃度センサ100の校正方法について説明する。濃度センサ100の校正にあたっては、
図1に示される校正ジグ40を用いる。校正ジグ40は既知のインピーダンスに設定可能なインピーダンス素子で構成される。インピーダンス素子は、抵抗401とコンデンサ402の並列接続により構成することが出来る。校正ジグ40の一端はバラクタダイオード23と信号処理部30との間に接続される。校正ジグ40の他端は接地してもよい。なお、濃度センサ100には、校正ジグ40が着脱可能なコネクタ50が設けられている。校正ジグ40は、バラクタダイオード23と信号処理部30との間にコネクタ50を介して着脱可能に接続することが出来る。
【0021】
校正ジグ40は、抵抗401とコンデンサ402からなるインピーダンス素子であり、インピーダン値は、コンデンサ402と抵抗401の値を変更することにより適宜設定することが出来る。共振器20は、校正ジグ40が接続されることで、共振器20の見かけ上のインピーダンスが変化する。バラクタダイオード23は、共振器20のインピーダンス変化を抑制するように容量が変化するように制御される。つまり。バラクタダイオード23に印加される制御信号Vtは、校正ジグ40のインピーダンスに応じて変動する。校正ジグ40のインピーダンスは、共振器20を構成するコンデンサ22を混合燃料1に浸漬した状況におけるインピーダンスを再現する値に設定される。
【0022】
すなわち、共振器20を構成するインダクタ21やコンデンサ22やバラクタダイオード23に特性バラツキがなければ、校正ジグ40により設定されたエタノール濃度に対応する制御検出信号Vtの値は、
図2に示す曲線Aにより導出された値に一致する。一方、共振器20を構成するインダクタ21やコンデンサ22やバラクタダイオード23が上述した特性バラツキを包含した状態では、理論値により算出されたエタノール濃度に対応する制御検出信号Vtの値は、
図2に示す曲線Aから外れる。つまり、濃度センサ100の演算式301Aは、量産過程においては構成部品の特性バラツキを考慮した式に更新することで濃度センサ100の検出精度を高めることが出来る。
【0023】
次に、濃度センサ100に組み込まれた演算式301Aの更新について説明する。なお、演算式301Aは、エタノール濃度が0%から100%の間を等分割し、等分割した各区間における演算式を1次の近似式として求める例にて説明する。なお、1次の演算式は、制御信号をVt、濃度をC、係数をa、bとし、Vt=a・C+bで表される。係数a、bの更新は、第1のエタノール濃度c1(図中における25.0%)と第2のエタノール濃度c2(図中における37.5%)の一区間における線形補完を例に挙げて説明する。
【0024】
先ず第1のステップとして、濃度センサ100のコネクタ50に校正ジグ40を取り付ける。この時の校正ジグ40のインピーダンスは、校正ジグ40を取り付けた状態における共振器20として第1のエタノール濃度c1となるインピーダンスに設定されている。
【0025】
次に、第2のステップとして、発振器10から検査信号Vd0を出力する。信号処理部30は、検査信号Vd1が最大となる制御信号Vtの電圧Vt1を抽出する。
【0026】
次に、第3のステップとして、校正ジグ40のインピーダンスを、校正ジグ40を取り付けた状態における共振器20として第2のエタノール濃度c2となるインピーダンスに設定する。
【0027】
次に第4のステップとして、発振器10から検査信号Vd0を出力する。信号処理部30は、検査信号Vd1が最大となる制御信号Vtの電圧値Vt2を抽出する。
【0028】
次に第5のステップとして、制御回路が、第1のエタノール濃度から第2のエタノール濃度の区間におけるエタノール濃度と制御電圧の関連性を算出する。
【0029】
次に第6のステップとして、エタノール濃度c1からc2の区間におけるエタノール濃度Cと制御電圧Vtの関係を求める。この区間におけるエタノール濃度Cと制御電圧Vtの関係は、Vt=((Vt2-Vt1)/(c2-c1))・C+Vt1で表される。よって、第1のエタノール濃度から第2のエタノール濃度の区間における演算式の係数aを(Vt2-Vt1)/(c2-c1)、係数bをVt1として、記憶部内のデータを書き換える。
【0030】
同様の演算を他の濃度区間で行うことでエタノール濃度が0%から100%の各区間における演算式を更新することが出来る。
【0031】
なお、上述した濃度センサ100においては、エタノール濃度と制御信号Vtとの関連性を示す演算式301Aを1次の近似式として説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、所定の濃度区間において3点以上の濃度に対応するVtを抽出し、それに基づく高次の近似式を演算式301Aとして係数302Aの更新を行ってもよい。
【0032】
以上のように濃度センサ100を製造後に演算式301Aを更新することで、量産時における個々の濃度センサ100における構成部材の特性バラツキの影響を抑制することが出来る。つまり濃度センサ100の量産時における特性劣化を抑制することが出来る。また、濃度センサ100における演算式301Aを自在に更新することが出来るので、濃度を測定する対象に応じて適宜演算式を更新することが出来る。つまり、1つの濃度センサにおいて異なる測定対象に対応することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本開示の濃度センサにおける濃度検出方法は、特に自動車などの内燃機関用の混合燃料の濃度測定用途において有効となる。
【符号の説明】
【0034】
1 混合燃料
10 発振器
20 共振器
21 インダクタ
22 コンデンサ
23 バラクタダイオード
30 信号処理部
301 演算部
301A 演算式
302 記憶部
302A 係数
40 校正ジグ
100 濃度センサ