(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056073
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】レンズユニット
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20230412BHJP
【FI】
G02B7/02 A
G02B7/02 Z
G02B7/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165165
(22)【出願日】2021-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】中島 知昭
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AA03
2H044AA08
2H044AA10
2H044AA15
2H044AA16
2H044AB09
2H044AB11
2H044AB12
2H044AB13
2H044AB14
2H044AB23
2H044AB24
2H044AJ04
2H044AJ05
(57)【要約】
【課題】第1レンズの曇りを抑制することが可能なレンズユニットを提供すること。
【解決手段】レンズユニット1は、第1レンズ11、第2レンズ12および複数のレンズを保持するレンズ鏡筒20と、第1レンズ11と第2レンズ12との間に配置される環状の第1弾性部材31と、を有する。第2レンズ12は、外周面にゲート痕G1が残る部分である第2円環部124を備える。レンズ鏡筒20は、第1レンズ11を保持する第1筒部21と、第1筒部21より内側に配置されるとともに、第2レンズ12および複数のレンズを保持する第2筒部22と、を備える。第2筒部22は、第2レンズ12を保持する第1部分221を備える。第1部分221の内周面には、ゲート痕G1が内側に位置する凹部223が設けられる。第1弾性部材31は、第1レンズ11と第2レンズ12とが互いに当接しない程度に、第1レンズ11と第2レンズ12との間で圧縮される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸に沿った最も物体側に配置された第1レンズと、
前記第1レンズの像側に配置された樹脂製の第2レンズと、
前記第2レンズの像側に配置された複数のレンズと、
前記第1レンズ、前記第2レンズおよび前記複数のレンズを保持するレンズ鏡筒と、
前記第1レンズと前記第2レンズとの間に配置される環状の第1弾性部材と、
を有し、
前記第1レンズは、第1レンズ部と、前記第1レンズ部を囲む部分である第1円環部と、を備え、
前記第2レンズは、第2レンズ部と、前記第2レンズ部を囲み、外周面にゲート痕が残る部分である第2円環部と、を備え、
前記レンズ鏡筒は、前記第1レンズを保持する第1筒部と、前記第1筒部より径方向の内側で前記第2レンズおよび前記複数のレンズを保持する第2筒部と、を備え、
前記第2筒部は、前記第2レンズを保持する筒状の第1部分を備え、
前記第1部分の内周面には、前記ゲート痕が内側に位置するゲート痕収容凹部が開放端を物体側に向けて設けられ、
前記第1弾性部材は、前記第1レンズと前記第2レンズとが当接しない程度に前記第1円環部と前記第2円環部との間で圧縮されることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズユニットにおいて、
前記第1部分の内周面には周方向の複数箇所に凹部が設けられ、
前記複数箇所の凹部のうち、一部の凹部が前記ゲート痕収容凹部になっていることを特徴とするレンズユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレンズユニットにおいて、
前記第2レンズは、前記第2円環部で物体側に突出して前記第1弾性部材を径方向に位置決め可能な環状段部を備えるレンズユニット。
【請求項4】
請求項1から3のうち何れか一項に記載のレンズユニットにおいて、
前記複数のレンズのうち前記第2レンズに像側で隣り合う第3レンズは、第3レンズ部と、前記第3レンズ部を囲む部分である第3円環部と、を備え、
第3円環部の物体側を向く面は、前記光軸方向において、前記第2円環部の像側を向く面と当接するとともに、前記ゲート痕収容凹部の像側の底面より物体側に位置することを特徴とするレンズユニット。
【請求項5】
請求項4に記載のレンズユニットにおいて、
前記第2レンズと前記第3レンズとの間に配置された遮光シートを備えることを特徴とするレンズユニット。
【請求項6】
請求項1から5のうち何れか一項に記載のレンズユニットにおいて、
前記第1部分の内周面には、前記第2レンズを径方向に位置決めする第1リブが周方向の複数箇所に設けられていることを特徴とするレンズユニット。
【請求項7】
請求項1から6のうち何れか一項に記載のレンズユニットにおいて、
前記レンズ鏡筒は、前記第1筒部と前記第2筒部との間で前記第1円環部に対して像側から当接する当接面部を備え、
前記当接面部は、前記像側に凹んだ環状の溝部を備え、
前記溝部には、前記第1円環部および前記溝部の間で圧縮された環状の第2弾性部材が配置されていることを特徴とするレンズユニット。
【請求項8】
請求項1から7のうち何れか一項に記載のレンズユニットにおいて、
前記第2筒部は、前記複数のレンズを保持する第2部分を備え、
前記第2部分の内周面には、前記複数のレンズを径方向に位置決めする第2リブが周方向の複数箇所に設けられていることを特徴とするレンズユニット。
【請求項9】
請求項1から8のうち何れか一項に記載のレンズユニットにおいて、
前記レンズ鏡筒は、前記複数のレンズのうち最も像側に配置された像側レンズに像側から当接する位置決め段部を備え、
前記第1弾性部材は、前記光軸方向において、前記位置決め段部と重なることを特徴とするレンズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒に複数のレンズが保持されたレンズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や監視カメラ等に搭載される撮像装置では、複数のレンズがレンズホルダに収容されたレンズユニットが用いられる。このレンズユニットにおいて、最も物体側の第1レンズの物体側のレンズ面は、鏡筒から外部に露出する。
【0003】
このようなレンズユニットは、例えば特許文献1に記載されている。同文献では、第1レンズと、第1レンズの像側に配置された第2レンズを含む複数のレンズとは、樹脂製の鏡筒に収容されている。鏡筒は、第1レンズを収容する第1収容部と、第2レンズを含む複数のレンズを収容する第2収容部とを備える。第1レンズのフランジ部および第2レンズのフランジ部の間には、弾性部材が配置されている。第1レンズが第1収容部に熱カシメにより係止されるとともに、弾性部材が第1レンズのフランジ部および第2レンズのフランジ部の間において圧縮されるので、レンズユニットの内部の気密性は一定に保たれている。
【0004】
ここで、第2レンズは、プラスチック製であるので、第2レンズのフランジ部の外周面には、ゲート痕が形成される。一般的には、第2レンズを第2収容部に収容する際に、ゲート痕が第2収容部の内周面と干渉しないようにするため、ゲート痕は、フランジ部の外周面の一部をカットした平面部分に設けられている。この場合、フランジ部の外径形状は、平面視において、D形状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、第2レンズのフランジ部の外周面に平面部分を設けた場合、平面視において、平面部分が設けられたフランジ部の径方向の幅が小さい。このため、当該部分では、弾性部材との接触面積が小さくなるので、弾性部材が第2レンズのフランジ部に適切に密着できない。この結果、レンズユニットを長時間使用すると、弾性部材を通過した湿気が、レンズユニットの内部に侵入する恐れがある。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、第1レンズの曇りを抑制することが可能なレンズユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るレンズユニットは、光軸に沿った最も物体側に配置された第1レンズと、前記第1レンズの像側に配置された樹脂製の第2レンズと、前記第2レンズの像側に配置された複数のレンズと、前記第1レンズ、前記第2レンズおよび前記複数のレンズを保持するレンズ鏡筒と、前記第1レンズと前記第2レンズとの間に配置される環状の第1弾性部材と、を有し、前記第1レンズは、第1レンズ部と、前記第1レンズ部を囲む部分である第1円環部と、を備え、前記第2レンズは、第2レンズ部と、前記第2レンズ部を囲み、外周面にゲート痕が残る部分である第2円環部と、を備え、前記レンズ鏡筒は、前記第1レンズを保持する第1筒部と、前記第1筒部より径方向の
内側で前記第2レンズおよび前記複数のレンズを保持する第2筒部と、を備え、前記第2筒部は、前記第2レンズを保持する筒状の第1部分を備え、前記第1部分の内周面には、前記ゲート痕が内側に位置するゲート痕収容凹部が開放端を物体側に向けて設けられ、前記第1弾性部材は、前記第1レンズと前記第2レンズとが当接しない程度に前記第1円環部と前記第2円環部との間で圧縮されることを特徴とする。
【0009】
本発明では、第2レンズは、外周面にゲート痕が残る部分である第2円環部を備え、第1部分の内周面には、ゲート痕が内側に位置するゲート痕収容凹部が開放端を物体側に向けて設けられている。このため、ゲート痕は、ゲート痕収容凹部に収容されるので、ゲート痕を第2円環部の外周面に形成された平面部分に形成する必要がない。すなわち、第2円環部の外周面に平面部分を設ける必要がなく、第2円環部の外径形状は、円形のままである。よって、ゲート痕がレンズの外周面の平面部分に形成される場合と比較して、第1弾性部材が当接する接触面積を確保することができるので、第1弾性部材が第2レンズのフランジ部に適切に密着できる。この結果、第1レンズと第2レンズとの間の気密性を確保することができるので、第1レンズの曇りを抑制することができる。
【0010】
本発明では、第1弾性部材は、第1レンズと第2レンズとが互いに当接しない程度に、第1円環部と第2円環部との間で圧縮される。このため、第1レンズおよび第2レンズが互いに当接する場合と比較して、第1弾性部材の圧縮量を管理しやすい。この結果、レンズ鏡筒内部の気密性を高めることが容易であるので、第1レンズの像側のレンズ面が曇ることを抑制することができる。また、第1レンズと第2レンズとが互いに当接しないので、第1レンズを第1筒部に保持した際に、第1弾性部材が圧縮されることによって、第2レンズおよび複数のレンズに大きな力が直接加わりにくい。このため、第1レンズを第1筒部に保持した際に、第2レンズ以降のレンズが破損することを抑制することができる。
【0011】
本発明において、前記第1部分の内周面には周方向の複数箇所に凹部が設けられ、前記複数箇所の凹部のうち、一部の凹部が前記ゲート痕収容凹部になっていることが好ましい。このようにすれば、第2レンズを第1部分に保持させる際に、第2レンズの中心と光軸とがズレている場合には、第2レンズを第1部分に対して光軸L回りに等間隔で回転させることによって、第2レンズの中心と光軸とを合わせることができる。
【0012】
本発明において、前記第2レンズは、前記第2円環部で物体側に突出して前記第1弾性部材を径方向に位置決め可能な環状段部を備えることが好ましい。このようにすれば、第1弾性部材を径方向に位置決めすることが容易である。この結果、第1弾性部材の位置ズレによる第1レンズおよび第2レンズの間の気密不足を抑制することができる。
【0013】
本発明において、前記複数のレンズのうち前記第2レンズに像側で隣り合う第3レンズは、第3レンズ部と、前記第3レンズ部を囲む部分である第3円環部と、を備え、第3円環部の物体側を向く面は、前記光軸方向において、前記第2円環部の像側を向く面と当接するとともに、前記ゲート痕収容凹部の像側の底面より物体側に位置することが好ましい。このようにすれば、ゲート痕がゲート痕収容凹部の底面と接触することがないので、第3レンズは、第2レンズを確実に位置決めすることができる。
【0014】
本発明において、前記第2レンズと前記第3レンズとの間に配置された遮光シートを備える態様を採用することができる。
【0015】
本発明において、前記第1部分の内周面には、前記第2レンズを径方向に位置決めする第1リブが周方向の複数箇所に設けられていることが好ましい。このようにすれば、レンズ鏡筒の外形形状による歪みが発生しやすい場合であっても、各第1リブによって、第1部分の歪みに起因する第2レンズの芯ズレ発生を抑制することができる。
【0016】
本発明において、前記レンズ鏡筒は、前記第1筒部と前記第2筒部との間で前記第1円環部に対して像側から当接する当接面部を備え、前記当接面部は、前記像側に凹んだ環状の溝部を備え、前記溝部には、前記第1円環部および前記溝部の間で圧縮された環状の第2弾性部材が配置されていることが好ましい。このようにすれば、第1レンズと第2レンズとの間の気密性を、より確保しやすい。
【0017】
本発明において、前記第2筒部は、前記複数のレンズを保持する第2部分を備え、前記第2部分の内周面には、前記複数のレンズを径方向に位置決めする第2リブが周方向の複数箇所に設けられていることが好ましい。このようにすれば、レンズ鏡筒の外形形状による歪みが発生しやすい場合であっても、各第2リブによって、第2部分の歪みに起因する数のレンズの芯ズレ発生を抑制することができる。
【0018】
本発明において、前記レンズ鏡筒は、前記複数のレンズのうち最も像側に配置された像側レンズに像側から当接する位置決め段部を備え、前記第1弾性部材は、前記光軸方向において、前記位置決め段部と重なることが好ましい。このようにすれば、第1レンズによって第1弾性部材を圧縮した際の光軸方向の力が、位置決め段部に集中する。これにより、第1レンズを装着する作業の際、レンズ鏡筒が歪むことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明において、第2レンズは、外周面にゲート痕が残る部分である第2円環部を備え、第1部分の内周面には、ゲート痕が内側に位置するゲート痕収容凹部が開放端を物体側に向けて設けられている。このため、ゲート痕がレンズの外周面に形成された平面部分に形成される場合と比較して、第1弾性部材が当接する接触面積を確保することができる。この結果、第1レンズと第2レンズとの間の気密性を確保することができるので、第1レンズの像側のレンズ面が曇ることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明を適用したレンズユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明で参照する図においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材の数や縮尺を異ならしめてある。また、以下の説明では、光軸Lが延在している光軸L方向において、物体側にLaを付し、像側にLbを付して説明する。
【0022】
(レンズユニットの構成)
図1は、本発明を適用したレンズユニットの断面図である。
図2は、レンズユニットの分解斜視図である。本形態のレンズユニット1は、撮像装置等の光学装置に用いられる。レンズユニット1は、光軸L周りの全体にわたって略同様な構成を有している。
図1に示すレンズユニット1は、光軸L方向にレンズが複数枚配置された広角レンズ10と、広角レンズ10を内側に保持するレンズ鏡筒20とを有する。レンズ鏡筒20の像側Lbには、撮像素子が設けられる。撮像素子は、CMOSなどである。
【0023】
(広角レンズ)
図1および
図2に示すように、広角レンズ10は、例えば、5群6枚のレンズ構成を備えている。本形態では、広角レンズ10は、最も物体側Laに配置された第1レンズ11
と、第1レンズ11の像側Lbに配置された第2レンズ12と、第2レンズ12の像側Lbに配置された複数のレンズとを備える。より具体的には、広角レンズ10は、物体側Laから像側Lbに向かって、負のパワーを持つ第1レンズ11と、負のパワーを持つ第2レンズ12と、正のパワーを有する第3レンズ13と、正のパワーを有する第4レンズ14と、正のパワーを有する接合レンズ18(第5レンズ15および第6レンズ16)とを有している。複数のレンズは、第3レンズ13~接合レンズ18で構成される。
【0024】
第1レンズ11は、ガラスレンズまたはプラスチックレンズである。第1レンズ11は、メニスカスレンズである。第1レンズ11は、物体側Laの第1レンズ面111が物体側Laに向けて突出した凸曲面になっており、像側Lbの第2レンズ面112は、物体側Laに向けて凹んだ凹曲面になっている。第1レンズ11は、第1レンズ部113と、第1レンズ部113を囲む部分である第1円環部114とを備える。第1レンズ面111と第2レンズ面112は、第1レンズ部113を構成する。第1円環部114の像側Lbを向くフランジ面115は、第2レンズ面112の径方向外側に位置する。
【0025】
第2レンズ12は、プラスチックレンズである。第2レンズ12は、物体側Laの第1レンズ面121が物体側Laに向けて突出した凸曲面になっており、像側Lbの第2レンズ面122は、物体側Laに向けて凹んだ凹曲面になっている。第2レンズ12は、第2レンズ部123と、第2レンズ部123を囲み、外周面にゲート痕G1が残る部分である第2円環部124と、を備える。第1レンズ面121と第2レンズ面122は、第2レンズ部123を構成する。第2円環部124の外形形状は、光軸L方向において、円形である。ゲート痕G1は、第2レンズ12を樹脂成形した際に形成される。ゲート痕G1は、第2円環部124の外周面から径方向外側に僅かに突出する。
【0026】
第2円環部124の物体側Laを向くフランジ面125は、第1レンズ面121の径方向外側に位置する。第2円環部124の像側Lbを向くフランジ面126は、第2レンズ面122の径方向外側に位置する。また、第2円環部124は、物体側Laに突出する環状段部127を備える。環状段部127は、第1弾性部材31を径方向に位置決めする。
【0027】
第3レンズ13は、プラスチックレンズである。第3レンズ13は、物体側Laの第1レンズ面131が物体側Laに向けて突出した凸曲面になっており、像側Lbの第2レンズ面132は、物体側Laに向けて凹んだ凹曲面になっている。第3レンズ13は、第3レンズ部133と、第3レンズ部133を囲み、外周面の平面部分134aにゲート痕G2が残る部分である第3円環部134と、を備える。第1レンズ面131と第2レンズ面132は、第3レンズ部133を構成する。第3円環部134の外形形状は、光軸L方向において、D形状である。ゲート痕G2は、第2レンズ12を樹脂成形した際に形成される。ゲート痕G2は、平面部分134aから径方向外側に僅かに突出する。この際、ゲート痕G2は、第3円環部134の外形形状で形成される仮想円より内側に位置する。第3円環部134の物体側Laを向くフランジ面135は、第1レンズ面131の径方向外側に位置する。第3円環部134の像側Lbを向くフランジ面136は、第2レンズ面132の径方向外側に位置する。
【0028】
第4レンズ14はガラスレンズである。接合レンズ18は、負のパワーを有するプラスチックレンズである第5レンズ15と、正のパワーを有するプラスチックレンズである第6レンズ16との接合レンズである。第5レンズ15の外形形状は、光軸L方向において、D形状である。第5レンズ15の外周面の平面部分15aには、径方向外側に僅かに突出したゲート痕G3が残る。ゲート痕G3は、第5レンズ15の外形形状で形成される仮想円より内側に位置する。第6レンズ16の外形形状は、光軸L方向において、D形状である。第6レンズ16の外周面の平面部分16aには、径方向外側に僅かに突出したゲート痕G4が残る。ゲート痕G4は、第6レンズ16の外形形状で形成される仮想円より内
側に位置する。
【0029】
レンズユニット1は、第2レンズ12と第3レンズ13との間に円環状の遮光シート2を有し、第4レンズ14と第5レンズ15との間に円環状の絞り3を有している。
【0030】
第1レンズ11は、第2レンズ12、第3レンズ13、第4レンズ14、および接合レンズ18より外径が大きい。第2レンズ12、第3レンズ13、および接合レンズ18は外径が略等しく、接合レンズ18において、第5レンズ15は、第6レンズ16より外形が大きい。第4レンズ14は、第2レンズ12等より外径が小さい。
【0031】
(レンズ鏡筒)
図3は、レンズ鏡筒の断面図である。
図4は、レンズ鏡筒を物体側から見た平面図である。レンズ鏡筒20は、樹脂製である。レンズ鏡筒20の材料としては、対候性に優れた結晶性プラスチック(ポリエチレン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン)、吸湿が比較的低い非晶性プラスチック(ポリカーボネート等)などが用いられる。レンズ鏡筒20は、筒状である。
図1から
図4に示すように、レンズ鏡筒20は、第1レンズを保持する第1筒部21と、第2レンズ12および複数のレンズを保持する第2筒部22と、第1筒部21の像側Lbから延在する外径筒部23とを備える。外径筒部23と第2筒部22との間には、肉盗み用の環状の凹部29が形成されている。
【0032】
また、レンズ鏡筒20は、第1筒部21と第2筒部22とを繋げる当接面部24と、第2筒部22の内周面から径方向内側に張り出した位置決め段部25と、を備える。
【0033】
第1筒部21は、円筒形状であり、第1レンズ11の外周面を囲む。第1筒部21の物体側Laの端部には、第1レンズ11を固定するカシメ部211が設けられている。第1筒部21の内径寸法は、第1レンズ11の外径寸法より僅かに大きい。
【0034】
当接面部24は、物体側Laを向く環状の面部である。当接面部24は、第1円環部114のフランジ面115に像側Lbから当接する。当接面部24は、像側Lbに凹んだ環状の溝部241を備える。溝部241には、第2弾性部材32が配置される。
【0035】
第2筒部22は、円筒形状である。第2筒部22の内径は、像側Lbに向かって僅かに小さくなっている。第2筒部22は、第2レンズ12を保持する第1部分221と、複数のレンズを保持する第2部分222とを備える。第1部分221は、第2レンズ12のレンズの外周面を囲む。第1部分221の内周面には、凹部223が開放端を物体側Laに向けて設けられている。凹部223は、ゲート痕G1を収容するゲート痕収容凹部でもある。本形態では、凹部223は、周方向に等間隔で4箇所設けられている。
【0036】
第1部分221の内周面には、第1リブ224が周方向に複数設けられている。第1リブ224は、径方向内側に突出するとともに、光軸L方向に延在する。第1リブ224は、第2レンズ12が第1部分221に圧入された際に、第2レンズ12を径方向で位置決めする。本形態では、第1リブ224は、周方向に等間隔で4箇所設けられている。
【0037】
第2部分222は、複数のレンズの外周面を囲む。第2部分222の内周面には、第2リブ225が周方向に複数設けられている。第2リブ225は、径方向内側に突出するとともに、光軸L方向に延在する。第2リブ225は、複数のレンズが第2部分222に圧入された際に、複数のレンズを径方向で位置決めする。本形態では、第2リブ225は、周方向に等間隔で12箇所設けられている。また、第2リブ225は、光軸L方向において、第1リブ224と重ならない位置に配置されている。
【0038】
位置決め段部25は、最も像側に配置された接合レンズ18(像側レンズ)に像側Lbから当接する。位置決め段部25は、像側Lbの端部で径方向内側に張り出した張出部251を備える。
【0039】
(広角レンズの固定)
次に、広角レンズ10の固定について説明する。まず、接合レンズ18から第2レンズ12は、第2筒部22に圧入されている。接合レンズ18は、第5レンズ15のフランジ部150が位置決め段部25に物体側Laから当接することによって、光軸L方向に位置決めされる。第4レンズ14は、ホルダ4に保持されており、ホルダ4は、第5レンズのフランジ部150に物体側Laから当接する。第3レンズ13の第3円環部134は、ホルダ4に絞り3を介して物体側Laから当接する。第2レンズ12は、ゲート痕G1が凹部223の内側に位置するように、第1部分221に圧入される。第2レンズ12の第2円環部124は、第3レンズ13の第3円環部134に遮光シート2を介して物体側Laから当接している。この際、第3円環部134のフランジ面135は、第2円環部124のフランジ面126に遮光シート2を介して当接するとともに、凹部223の像側Lbの底面226より物体側Laに位置する。
【0040】
ここで、本形態では、凹部223は、周方向に等間隔で4箇所設けられている。このため、第2レンズ12を第1部分221に圧入する際に、第2レンズ12の中心と光軸Lとがズレている場合には、第2レンズ12を第1部分221に対して光軸L回りに90°ずつ回転させることによって、第2レンズ12の中心と光軸Lとを合わせることができる。第2レンズ12の中心と光軸Lとを合わせた後、第2レンズ12は、ゲート痕G1が凹部223の内側に位置するように、第1部分221に圧入される。
【0041】
第1レンズは、第1筒部21の内部に挿入される。第1レンズ11は、カシメ部211が物体側Laから被さることによって物体側Laへの移動が規制されている。その結果、第1レンズ11は、第1筒部21の内部に保持される。この際、第1円環部114のフランジ面115は、当接面部24に物体側Laから当接することによって、第1レンズ11は、光軸L方向に位置決めされる。
【0042】
第1レンズ11の第1円環部114と第2レンズ12の第2円環部124との間には、第1弾性部材31が設けられる。本形態では、第1弾性部材31は、Oリング310である。Oリング310は、環状段部127の外周側に配置される。Oリング310は、内周部分が環状段部127に当接することによって、径方向に位置決めされる。Oリング310は、光軸L方向からみたとき、位置決め段部25と重なる。Oリング310は、光軸L方向に弾性変形した状態で、第1レンズ11のフランジ面115と第2レンズ12のフランジ面125に密着している。この際、第1レンズ11および第2レンズ12は、互いに当接しない状態である。
【0043】
図1に示すように、Oリング310よりも外側において、第1レンズ11のフランジ面115と当接面部24との間には、第2弾性部材32が設けられる。第2弾性部材32は、Oリング320である。Oリング320は、溝部241に配置されている。Oリング320は、光軸L方向に弾性変形した状態で、第1レンズ11のフランジ面115と溝部241の底面とに密着している。
【0044】
ここで、第2レンズ12が第1部分221に嵌合したときの第1保持力をf1とし、第2レンズ12および複数のレンズのレンズ枚数をCとし、第1保持力と複数のレンズが第2部分222に嵌合したときの第2保持力との和である第3保持力をf2とし、Oリング310の弾性力をf3とし、第1筒部21が第1レンズ11を保持する第4保持力をf4とすると、次の条件式(1)を満たす。
f1×C < f2 < f3 < f4 (1)
【0045】
第1筒部21が第1レンズ11を保持する第4保持力f4が、Oリング310の弾性力f3より大きい場合には、レンズユニット1を長時間使用しても、Oリング310の弾性力f3によって、第1レンズ11が第1筒部21から外れることがない。この結果、レンズユニット1を長時間使用しても、Oリング310を通過した湿気が、レンズユニット1の内部に侵入することを抑制することができる。
【0046】
また、弾性力f3が、第2レンズ12が第1部分221に嵌合したときの第1保持力f1と複数のレンズが第2部分222に嵌合したときの第2保持力との和である第3保持力f2より大きい場合には、カシメによって第1レンズ11を第1筒部21に保持した際に、第3保持力f2によって、第2レンズ12等を介して接合レンズ18を位置決め段部25に押し付けることができる。この結果、接合レンズ18を位置決め段部25によって、確実に位置決めすることができる。
【0047】
さらに、第3保持力f2が第1保持力f1×レンズ枚数Cより大きい場合には、第1保持力f1が、複数のレンズが第2部分222に嵌合したときの第2保持力をレンズ枚数Cで除した平均保持力より小さくなる。したがって、カシメによって第1レンズ11を第1筒部21に保持した際に、第2レンズ12には大きな力が加わりにくいので、第2レンズ12が歪みにくい。この結果、Oリング310は、第1レンズ11および第2レンズ12の間で均等に密着することができるので、レンズユニット1を長時間使用しても、Oリング310を通過した湿気が、レンズユニット1の内部に侵入することを抑制することができる。
【0048】
本形態では、第2レンズ12が第1部分221に嵌合したときの第1保持力f1は、3Nである。第2レンズ12および複数のレンズは、第2レンズ12、第3レンズ13、第4レンズおよび接合レンズ18であり、レンズ枚数Cは、4枚である。第1保持力および複数のレンズが第2部分222に嵌合したときの第2保持力の和の第3保持力f2は、20Nである。Oリング310の弾性力f3は、30Nである。第1筒部21が第1レンズ11を保持する第4保持力f4は、250Nである。したがって、条件式(1)を満たす。
【0049】
(作用効果)
本形態では、第2レンズ12は、外周面にゲート痕G1が残る部分である第2円環部124を備え、第1部分221の内周面には、ゲート痕G1が内側に位置する凹部223が開放端を物体側Laに向けて設けられている。このため、ゲート痕G1は、凹部223に収容されるので、ゲート痕G1を第2円環部124の外周面に形成された平面部分に形成する必要がない。すなわち、第2円環部124の外周面に平面部分を設ける必要がなく、第2円環部124の外径形状は、円形のままである。よって、ゲート痕がレンズの外周面の平面部分に形成される場合と比較して、第1弾性部材31が当接する接触面積を確保することができる。この結果、第1レンズ11と第2レンズ12との間の気密性を確保することができるので、第1レンズ11の曇りを抑制することができる。
【0050】
本形態では、第1弾性部材31は、第1レンズ11および第2レンズ12が当接しない程度に、第1円環部114と第2円環部124との間で圧縮される。このため、第1レンズ11と第2レンズ12とが互いに当接する場合と比較して、第1弾性部材31の圧縮量を管理しやすい。この結果、レンズ鏡筒20内部の気密性を高めることが容易であるので、第1レンズ11の像側のレンズ面が曇ることを抑制することができる。また、第1レンズ11と第2レンズ12とが互いに当接しないので、第1レンズ11を第1筒部21に保持した際に、第1弾性部材31が圧縮されることによって、第2レンズ12および複数の
レンズに大きな力が直接加わりにくい。このため、第1レンズ11を第1筒部21に保持した際に、第2レンズ12以降のレンズが破損することを抑制することができる。
【0051】
本形態では、凹部223は、周方向に等間隔で4箇所設けられている。このため、第2レンズ12を第1部分221に圧入する際に、第2レンズ12の中心と光軸Lとがズレている場合には、第2レンズ12を第1部分221に対して光軸L回りに90°ずつ回転させることによって、第2レンズ12の中心と光軸Lとを合わせることができる。
【0052】
本形態において、第2円環部124は、物体側Laに突出して、第1弾性部材31を径方向に位置決め可能な環状段部127を備える。よって、第1弾性部材31を径方向に位置決めすることが容易である。この結果、第1弾性部材31の位置ズレによる第1レンズ11および第2レンズ12の間の気密不足を抑制することができる。
【0053】
本形態において、複数のレンズのうち第2レンズ12に像側で隣り合う第3レンズ13は、第3レンズ部133と、第3レンズ部133を囲む部分である第3円環部134と、を備える。第3円環部134の物体側を向くフランジ面135は、光軸L方向において、第2円環部124の像側Lbを向くフランジ面126と当接するとともに、凹部223の像側Lbの底面226より物体側Laに位置する。よって、ゲート痕G1が凹部223の底面226と接触することがないので、第3レンズ13は、第2レンズ12を確実に位置決めすることができる。
【0054】
本形態において、第1部分221の内周面には、第2円環部124を径方向に位置決めする複数の第1リブ224が周方向に設けられている。よって、レンズ鏡筒20の外形形状による歪みが発生しやすい場合であっても、各第1リブ224によって、第1部分221の歪みに起因する第2レンズ12の芯ズレ発生を抑制することができる。
【0055】
本形態において、レンズ鏡筒20は、第1筒部21と第2筒部22との間で第1円環部114に対して像側Lbから当接する当接面部24を備える。当接面部24は、像側Lbに凹んだ環状の溝部241を備える。溝部241には、第1円環部114および溝部241の間で圧縮された環状の第2弾性部材32が配置されている。よって、第1レンズ11と第2レンズ12との間の気密性を、より確保しやすい。
【0056】
本形態において、第2筒部22は、複数のレンズを保持する第2部分222を備える。第2部分222の内周面には、複数のレンズを径方向に位置決めする複数の第2リブ225が周方向に設けられている。よって、レンズ鏡筒20の外形形状による歪みが発生しやすい場合であっても、各第2リブ225によって、第2部分222の歪みに起因する複数のレンズの芯ズレ発生を抑制することができる。
【0057】
本形態において、レンズ鏡筒20は、複数のレンズのうち最も像側に配置された接合レンズ18に像側Lbから当接する位置決め段部25を備える。第1弾性部材31は、光軸L方向において、位置決め段部25と重なる。よって、第1レンズ11によって第1弾性部材31を圧縮した際の光軸L方向の力が、位置決め段部25に集中する。これにより、第1レンズ11を装着する作業の際、レンズ鏡筒20が歪むことを抑制することができる。
【符号の説明】
【0058】
1…レンズユニット、2…遮光シート、3…絞り、4…ホルダ、10…広角レンズ、11…第1レンズ、12…第2レンズ、13…第3レンズ、14…第4レンズ、15…第5レンズ、15a…平面部分、16…第6レンズ、16a…平面部分、18…接合レンズ、20…レンズ鏡筒、21…第1筒部、22…第2筒部、23…外径筒部、24…当接面部、
25…位置決め段部、29…凹部、31…第1弾性部材、32…第2弾性部材、111…第1レンズ面、112…第2レンズ面、113…第1レンズ部、114…第1円環部、115…フランジ面、121…第1レンズ面、122…第2レンズ面、123…第2レンズ部、124…第2円環部、125…フランジ面、126…フランジ面、127…環状段部、131…第1レンズ面、132…第2レンズ面、133…第3レンズ部、134…第3円環部、134a…平面部分、135…フランジ面、136…フランジ面、150…フランジ部、211…カシメ部、221…第1部分、222…第2部分、223…凹部、224…第1リブ、225…第2リブ、226…底面、241…溝部、251…張出部、310…リング、320…リング、G1~G4…ゲート痕、L…光軸、La…物体側、Lb…像側