(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056087
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】触知用スナップファスナー及びこれを備えた被服
(51)【国際特許分類】
A44B 17/00 20060101AFI20230412BHJP
【FI】
A44B17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165188
(22)【出願日】2021-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】397004836
【氏名又は名称】武田精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】武田 一寿
【テーマコード(参考)】
3B100
【Fターム(参考)】
3B100CB01
3B100CB03
3B100CD01
3B100CD03
(57)【要約】
【課題】明かりが十分にとれない場合や視覚に障害がある場合でもファスナーの掛け違い防止を図ることのできる触知用スナップファスナー及びこれを備えた被服を提供すること。
【解決手段】各々の一面側に臨む嵌合部3(3A、3B)どうしが相互に着脱自在であり、各々の他面側に臨むヘッド9表面に触知用凹凸8を設けた雌雄のファスナー体1,2を具備する。前記雌雄のファスナー体1,2の前記触知用凹凸8の態様が相互に同一である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々の一面側に臨む嵌合部どうしが相互に着脱自在であり、各々の他面側に臨むヘッド表面に触知用凹凸を設けた雌雄のファスナー体を具備する触知用スナップファスナー。
【請求項2】
前記雌雄のファスナー体の前記触知用凹凸の態様が相互に同一である請求項1に記載の触知用スナップファスナー。
【請求項3】
前記触知用凹凸を、凸部、凹部、粗面部のいずれか一種または二種以上の組み合わせによって構成してある請求項1又は2に記載の触知用スナップファスナー。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の触知用スナップファスナーを備えた被服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、被服の生地等に取り付けられる触知用スナップファスナー及びこれを備えた被服に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスナップファスナーとして、
図5(A)及び(B)に示すように、相互に連結及び分離自在な雌雄のファスナー体1,2を具備するものがある。雌雄のファスナー体1,2は、各々の一面側に臨む嵌合部3(雌型嵌合部3A、雄型嵌合部3B)どうしが相互に着脱自在に構成されている。
【0003】
雄型のファスナー体2は、
図5(C)に示すように、リベット部材4と嵌合用部材5との間に布地等のシート状部材(可撓性基材)6を配置し、
図5(D)に示すように、リベット部材4の突起4aをシート状部材6に突き刺すと共に嵌合用部材5の貫通孔5aに挿通させ、その突起4aの先端部を打込み具に装備されたカシメパンチ7で打撃して拡径変形させることにより(
図5(E)参照)、リベット部材4と嵌合用部材5とをシート状部材6を挟んだ状態にカシメ止めして得られる。なお、雌型のファスナー体1も同様に得られるのであり、その説明は省略する。
【0004】
リベット部材4及び嵌合用部材5は、例えばポリアセタール、ナイロン、ポリエステル(不飽和アルキドとビニール系モノマーの混合物)、ポリアミド樹脂等の合成樹脂によって成形することができ、耐熱性に富む合成樹脂で成形するのが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3061595号公報
【特許文献2】登録実用新案第3075802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、こうしたスナップファスナーを例えば衣服の打ち合わせに複数設けてその開閉が可能となるように構成した場合、その着用時にファスナーの掛け違いが生じ得る。そこで、各ファスナー体の配色を工夫して、掛け違いが生じにくくなるようにすることも考えられるが(特許文献1、2)、明かりが十分にとれない場合や視覚に障害がある場合には、掛け違い防止を図れないことがある。
【0007】
本発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、明かりが十分にとれない場合や視覚に障害がある場合でもファスナーの掛け違い防止を図ることのできる触知用スナップファスナー及びこれを備えた被服を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る触知用スナップファスナーは、各々の一面側に臨む嵌合部どうしが相互に着脱自在であり、各々の他面側に臨むヘッド表面に触知用凹凸を設けた雌雄のファスナー体を具備する(請求項1)。
【0009】
上記触知用スナップファスナーにおいて、前記雌雄のファスナー体の前記触知用凹凸の態様が相互に同一であってもよい(請求項2)。
【0010】
上記触知用スナップファスナーにおいて、前記触知用凹凸を、凸部、凹部、粗面部のいずれか一種または二種以上の組み合わせによって構成してあってもよい(請求項3)。
【0011】
一方、上記目的を達成するために、本発明に係る被服は、請求項1~3の何れか一項に記載の触知用スナップファスナーを備えた(請求項4)。
【発明の効果】
【0012】
本願発明では、明かりが十分にとれない場合や視覚に障害がある場合でもファスナーの掛け違い防止を図ることのできる触知用スナップファスナー及びこれを備えた被服が得られる。
【0013】
すなわち、本願の各請求項に係る発明の触知用スナップファスナーでは、雌雄のファスナー体の各々の他面側に臨むヘッド表面に設けた触知用凹凸を指の腹等で触って確認することにより、これから閉じようとする雌雄のファスナー体が対応するか否かを判断できるようにすれば、ファスナーの掛け違い防止を図ることができる。そして、こうした判断は、視覚によらないものであるので、明かりが十分にとれない場合や視覚に障害がある場合でも行うことが可能である。
【0014】
請求項2に係る発明の触知用スナップファスナーでは、雌雄のファスナー体の触知用凹凸の態様が同一であるか否かにより、これから閉じようとする雌雄のファスナー体が対応するか否かを判断できるようになるので、その使用性の向上を図ることができる。
【0015】
請求項3に係る発明の触知用スナップファスナーでは、触知用凹凸を凸部、凹部、粗面部のいずれか一種または二種以上の組み合わせによって構成するので、雌雄のファスナー体の対応の是非を判断し易い手触り等を触知用凹凸に付与するのが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(A)は本発明の一実施の形態に係る触知用スナップファスナーのリベット部材の正面図、(B)は(A)のA-A線断面図、(C)は前記触知用スナップファスナーの雌雄のファスナー体の連結状態を示す説明図である。
【
図2】前記触知用スナップファスナーを取り付ける衣服の説明図である。
【
図3】(A)~(D)はそれぞれ、前記触知用スナップファスナーの変形例を示す正面図である。
【
図4】(A)及び(B)はそれぞれ、前記触知用スナップファスナーの他の変形例を示す縦断面図である。
【
図5】(A)及び(B)は従来のスナップファスナーの分離状態及び連結状態を示す説明図、(C)~(E)はその製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について以下に説明する。
【0018】
図1(C)に示す触知用スナップファスナーは、各々の一面側に臨む嵌合部3(雌型嵌合部3A、雄型嵌合部3B)どうしが相互に着脱自在であり、各々の他面側に臨むヘッド9(ベース4b)表面に触知用凹凸8を設けた雌雄のファスナー体1,2を具備する(
図1(A)、(B)も参照)。
【0019】
すなわち、雌雄のファスナー体1,2は、
図5(A)~(E)に示す雌雄のファスナー体1,2と、触知用凹凸8を有している点でのみ異なり、
図5(A)~(E)に示す雌雄のファスナー体1,2と同様に得ることができる。そして、
図1(A)及び(B)に示すリベット部材4は、
図5(C)に示すリベット部材4と、触知用凹凸8を有している点でのみ異なる。
【0020】
本例のヘッド9は、突起4aとでリベット部材4を構成する略円盤状を呈するベース4bによって構成してあり、その表面は全体として球面の一部となるような曲面状を呈する。
【0021】
触知用凹凸8は、
図1(A)に示すように、ベース4b(ヘッド9)の表面に8個(複数個の一例)設けられていて、各触知用凹凸8はベース4bの表面の中心から等距離の位置にあり、かつ、その中心まわりに等間隔に並んでいる。なお、触知用凹凸8の数は8個に限らず、例えば2~10個の範囲で適宜に設定すればよい。また、複数の触知用凹凸8の配置も上記のものに限らず、行列状、放射状、渦巻き状等、適宜に変更可能である。
【0022】
また、各触知用凹凸8は、
図1(B)及び(C)に示すように、点状の凸部(突起ないし出っ張り)として構成してある。ここで、ベース4bの直径(外径)Dは例えば7~20mmとすることができるが、斯かるベース4bの直径Dの大きさにかかわらず、点状の凸部として構成する触知用凹凸8については、その高さhを0.1~2mm、その直径(外径)を0.5~2mmの範囲とすることが、触知用とする(手指で触って確認できるようにする)上で好ましい。
【0023】
点状の凸部として構成してある触知用凹凸8の上端(先端)の周縁は、角張らせずに丸みをつけておく(Rをつけておく)のが、手指で触れたときに不快感を感じ難くする等の点で好適である。
【0024】
そして、本例では、雌雄のファスナー体1,2の各々の表面側に設ける触知用凹凸8の態様(形状、配置、個数等)を相互に同一としてある。
【0025】
上記のように構成した触知用スナップファスナーは、例えば
図2に示すベビー用カバーオール(被服の一例)の打ち合わせに複数のスナップファスナーS1~S14を取り付ける場合、その一部のスナップファスナーに用いるのが好適であり、他部は触知用凹凸8を持たない通常のスナップファスナー(平滑スナップファスナー。例えば
図5(A)及び(B)に示す従来のスナップファスナーと同様のもの)とすることが考えられる。
【0026】
具体的には、
図2の例の場合、複数のスナップファスナーS1~S14のうち、手探りで位置を特定し易い箇所にある特定のスナップファスナーS(例えばスナップファスナーS1、S6、S10及びS14の四つ、あるいはS1、S6の二つ、あるいはS1、S10、S14の三つなど)は触知用スナップファスナーとし、これら以外は通常のスナップファスナーとしてもよいし、逆に、上記特定のスナップファスナーSを通常のスナップファスナーとしこれら以外を触知用スナップファスナーとしてもよい。また、一つの触知用スナップファスナーと、複数(例えば二つ)の通常のスナップファスナーを一組として、これらが繰り返し並ぶようにしてもよいし、逆に、一つの通常のスナップファスナーと、複数(例えば二つ)の触知用スナップファスナーを一組として、これらが繰り返し並ぶようにしてもよい。
【0027】
上記のように構成した本例の触知用スナップファスナーでは、雌雄のファスナー体1、2の各々の他面側に臨むヘッド9(ベース4b)表面に設けた触知用凹凸8を指の腹等で触って確認することにより、これから閉じようとする雌雄のファスナー体1,2が対応するか否か(ともに触知用スナップファスナーであるか否か)を判断できるので、ファスナーの掛け違い防止を図ることができる。そして、こうした判断は、視覚によらないものであるので、明かりが十分にとれない場合や視覚に障害がある場合でも行うことが可能である。
【0028】
ここで、雌雄のファスナー体1,2の触知用凹凸8の態様は異なっていてもよいが、本例では同一としてあり、これにより、これから閉じようとする雌雄のファスナー体が対応するか否かをより容易に判断できるので、その使用性の向上を図ることができる。
【0029】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0030】
図1(A)の例では、複数の触知用凹凸8をそれぞれ点状の凸部に構成してあるが、これに限らず、例えば
図3(A)に示すように環状等の他の形状の凸部(突起、突条、出っ張り等)に構成してもよい。また、触知用凹凸8を環状の凸部とする場合、複数の触知用凹凸8の大きさを異ならせて同心円状に設ける、といったことも考えられる。
【0031】
図3(B)の例では、計四つの触知用凹凸8をそれぞれ楕円状の凸部にし、ヘッド9表面においてその中央から周縁に向かう放射状に配置してある。もちろんこの場合、触知用凹凸8は三つ以下あるいは五つ以上としてもよい。
【0032】
図3(C)の例では、一つのみ配する触知用凹凸8を、ヘッド9表面の中央を通る直線(帯)状の凸部にしてある。もちろんこの場合、触知用凹凸8を二つ以上としてもよい。
【0033】
図3(D)の例では、計二つの触知用凹凸8を、ヘッド9表面の中央から周縁に向かって延びる扇形状の凸部にしてある。もちろんこの場合、触知用凹凸8を一つあるいは三つ以上としてもよい。
【0034】
触知用凹凸8の態様は、その製造上、ヘッド9表面において線対称ないし点対称となるようにしてあるのが好ましい場合があるので、
図1(A)、
図3(A)~(D)の例もこの点を考慮しているが、製造上等で問題が無ければ、ヘッド9表面において線対称ないし点対称となっていなくてもよい。
【0035】
従って、例えばヘッド9表面に複数の触知用凹凸8を設ける場合に、その形状を統一しないことも考えられる。また、触知用凹凸8を例えば何らかの文字を象ったものとして構成することも可能である。
【0036】
また、触知用凹凸8の態様にバリエーションを持たせ、その触感が明確に異なる複数種の触知用スナップファスナーを構成する場合には、例えば
図2に示す衣服の全てのスナップファスナーS1~S14を触知用スナップファスナーとすることも可能である。
【0037】
また、触知用凹凸8は、ヘッド9表面を例えば指の腹でなでるように触れた際にその表面に形成されている凹凸(ここでいう凹凸は、ヘッド9表面の全体が上記のように曲面状になっていることを含まない)を明確に触知できるように構成してあればよいのであって、凸部とするものに限らず、凹部あるいは粗面部としてもよく、凸部、凹部、粗面部のうちの二種以上の組み合わせによって構成してもよい。いずれの場合も、雌雄のファスナー体1、2の対応の是非を判断し易い手触り等を触知用凹凸8ないしヘッド9表面に付与するのは容易である。
【0038】
触知用凹凸8を粗面部とする場合、ヘッド9表面の全体(全面)にわたって触知用凹凸8を設けることも可能である。
【0039】
図1(A)~(C)の例では、リベット部材4のベース4bがヘッド9を構成するようにし、その表面に触知用凹凸8を設けているが、これに限らず、例えば
図4(A)に示すように、リベット部材4のベース4b表面を覆う金属製の巻き部材10を設け、この巻き部材10とベース4bとがヘッド9を構成するようにし、この巻き部材10の表面(つまりはヘッド9の表面)に触知用凹凸8を設けるようにしてもよい(なお、
図4(A)では触知用凹凸8の図示は省略している)。
【0040】
またこの場合、
図4(B)に示すように、巻き部材10に開口10aを設け、この開口10aが触知用凹凸8となるように構成してもよいし、ベース4bにおいて開口10aから露出する部分や巻き部材10において開口10a以外の部分に触知用凹凸8を設けるようにしてもよい。なお、開口10aが触知用凹凸8となるように構成するには、巻き部材10の厚みをある程度大きくし、開口10aの縁を明確に触知できるようにしておく必要がある。
【0041】
本発明の触知用スナップファスナーを取り付ける被服は、
図2に示すベビー用カバーオールに限らず、例えば一般にスナップファスナーが取り付けられることのあるシャツ、パジャマ等であってもよい。
【0042】
なお、上記変形例どうしを適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0043】
1 雌型のファスナー体
2 雄型のファスナー体
3 嵌合部
3A 雌型嵌合部
3B 雄型嵌合部
4 リベット部材
4a 突起
4b ベース
5 嵌合用部材
6 シート状部材
7 カシメパンチ
8 触知用凹凸
9 ヘッド
10 巻き部材
10a 開口
D ヘッドの直径
h 触知用凹凸の高さ
S スナップファスナー(S1~S14)