(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056092
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】雲形雲層計測装置及び雲形雲層計測方法
(51)【国際特許分類】
G01W 1/00 20060101AFI20230412BHJP
G01N 21/3504 20140101ALI20230412BHJP
【FI】
G01W1/00 E
G01N21/3504
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165196
(22)【出願日】2021-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三木 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】蛯原 佳大
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB02
2G059EE01
2G059EE02
2G059FF01
2G059HH01
2G059HH02
2G059KK04
2G059MM01
(57)【要約】
【課題】雲形と雲高に関する情報を総合的に提供すること。
【解決手段】画像内における雲の位置及び雲形を示す雲形マップと画像内における雲の位置及び相対雲高を示す相対雲高マップとを比較し、該比較の結果に基づいて前記雲形マップと前記相対雲高マップの位置関係を同定する画像内位置同定部と、前記位置関係を用いて前記雲形マップに示された雲形を前記相対雲高により分離し、雲形と相対雲高とを対応付けた雲形・雲層情報を出力する雲層推定部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像内における雲の位置及び雲形を示す雲形マップと画像内における雲の位置及び相対雲高を示す相対雲高マップとを比較し、該比較の結果に基づいて前記雲形マップと前記相対雲高マップの位置関係を同定する画像内位置同定部と、
前記位置関係を用いて前記雲形マップに示された雲形を前記相対雲高により分離し、雲形と相対雲高とを対応付けた雲形・雲層情報を出力する雲層推定部と、
を備えたことを特徴とする雲形雲層計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の雲形雲層計測装置であって、
予め作成した雲形認識モデルにより可視光画像内の雲の雲形を推定して前記雲形マップを出力する雲形推定部と、
赤外線カメラにより撮像された赤外線画像の出力から雲底の温度を計測し相対的な雲高を算出して前記相対雲高マップを出力する雲底温度算出部と、
をさらに備えたことを特徴とする雲形雲層計測装置。
【請求項3】
請求項1に記載の雲形雲層計測装置であって、
前記画像内位置同定部は、前記雲形マップにおける雲の境界線と前記相対雲高マップにおける雲の境界線とを比較して前記位置関係を同定することを特徴とする雲形雲層計測装置。
【請求項4】
請求項1に記載の雲形雲層計測装置であって、
前記画像内位置同定部は、前記相対雲高マップに示された異なる雲高の雲を結合して、前記雲形マップと比較することを特徴とする雲形雲層計測装置。
【請求項5】
請求項1に記載の雲形雲層計測装置であって、
前記画像内位置同定部は、前記雲形マップに示された雲形のうち、所定の種別の雲形を除外して、前記相対雲高マップと比較することを特徴とする雲形雲層計測装置。
【請求項6】
請求項1に記載の雲形雲層計測装置であって、
前記画像内位置同定部は、前記雲形マップと前記相対雲高マップに共通して含まれる物体を基準物体として用いて前記位置関係を同定することを特徴とする雲形雲層計測装置。
【請求項7】
請求項1に記載の雲形雲層計測装置であって、
前記画像内位置同定部は、前記雲形マップにおける雲に外接する矩形と、前記相対雲高マップにおける雲に外接する矩形とを比較して前記位置関係を同定することを特徴とする雲形雲層計測装置。
【請求項8】
請求項1に記載の雲形雲層計測装置であって、
前記画像内位置同定部は、前記雲形マップと前記相対雲高マップに共通して含まれる物体による位置関係の同定、前記雲が占める領域に基づく位置関係の同定、前記相対雲高の異なる雲を結合して行う位置関係の同定、所定の種別の雲形を除外して行う位置関係の同定の順に優先的に位置関係の同定方法を選択することを特徴とする雲形雲層計測装置。
【請求項9】
装置が、
画像内における雲の位置及び雲形を示す雲形マップと画像内における雲の位置及び相対雲高を示す相対雲高マップとを比較し、該比較の結果に基づいて前記雲形マップと前記相対雲高マップの位置関係を同定する画像内位置同定ステップと、
前記位置関係を用いて前記雲形マップに示された雲形を前記相対雲高により分離し、雲形と相対雲高とを対応付けた雲形・雲層情報を出力する雲層推定ステップと、
を含むことを特徴とする雲形雲層計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雲形雲層計測装置及び雲形雲層計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、航空気象観測では、どのような雲がどの高度に存在するかが重要な観測項目である。具体的には、同じ高度帯に存在する雲のまとまりについて、その雲形と雲底高度をまとめた情報を雲層情報として提供することが行われている。このような情報は、従来は観測員の目視観測により記録されるものであり、自動化することで人件費を削減することができるほか、多くの経験を要する観測員の習熟支援に貢献できる。
【0003】
このため、可視光画像に対する画像認識によって雲形を推定するモデルが作成されている。
また、雲高を計測するため、特開2004-170350号公報(特許文献1)に記載の技術がある。この公報には、「任意の地点から所定の視野角を有する受光手段によって、観測対象からの光を受け、所定の演算手段によって観測対象の温度情報を算出することを特徴とする。特に、受光手段が赤外線放射温度計であって、8~13μmを主たる透過帯とする光学フィルタを有する場合には、空気中のH2OやCO2の影響を大幅に低減し精度の高い観測が可能となる。また、こうした温度情報に基づいて雲底の高度を演算し、霜降り予測や降雨予測に応用することも可能である。」という記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、可視光画像に対する画像認識により雲形マップを作成しても、雲高の情報を得ることができない。例えば雲層が2層形成されており、いずれも同じ雲形の場合、雲形マップはすべての領域が同一となる。一方で、赤外線カメラからは雲の相対的な雲高が取得できるものの、雲のテクスチャなどの画像特徴量が失われるため雲形の認識が困難である。
そこで、本発明では、雲形と雲高に関する情報を総合的に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、代表的な本発明の雲形雲層計測装置の一つは、画像内における雲の位置及び雲形を示す雲形マップと画像内における雲の位置及び相対雲高を示す相対雲高マップとを比較し、該比較の結果に基づいて前記雲形マップと前記相対雲高マップの位置関係を同定する画像内位置同定部と、前記位置関係を用いて前記雲形マップに示された雲形を前記相対雲高により分離し、雲形と相対雲高とを対応付けた雲形・雲層情報を出力する雲層推定部と、を備えたことを特徴とする。
また、代表的な本発明の雲形雲層計測方法の一つは、装置が、画像内における雲の位置及び雲形を示す雲形マップと画像内における雲の位置及び相対雲高を示す相対雲高マップとを比較し、該比較の結果に基づいて前記雲形マップと前記相対雲高マップの位置関係を同定する画像内位置同定ステップと、前記位置関係を用いて前記雲形マップに示された雲形を前記相対雲高により分離し、雲形と相対雲高とを対応付けた雲形・雲層情報を出力する雲層推定ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、雲形と雲高に関する情報を総合的に提供できる。上記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】優先順位に沿った位置関係の同定処理を示すフローチャート
【
図5】雲高のマージの処理手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
【実施例0010】
図1は、実施例に係る雲形雲層計測装置の機能構成図である。
図1に示した雲形雲層計測装置10は、可視光カメラ11と赤外線カメラ12とを備える。また、雲形雲層計測装置10は、可視光画像受付部21、赤外線画像受付部22、雲形推定部23、雲底温度算出部24、画像内位置同定部25及び雲層推定部26の機能部を有する。
【0011】
可視光カメラ11と赤外線カメラ12は、空の画像を撮像する撮像装置であり、撮像範囲の少なくとも一部が重複する。
可視光画像受付部21は、可視光カメラ11が撮像した可視光画像を取得し、雲形推定部23に出力する。
赤外線画像受付部22は、赤外線カメラ12が撮像した赤外線画像を取得し、雲底温度算出部24に出力する。
【0012】
雲形推定部23は、例えば機械学習により予め作成した雲形認識モデル31を用い、可視光画像内における雲の雲形を推定し、雲の位置及び雲形を示す雲形マップ32を生成する。ここで、雲形とは、雲をその形状により分類したものである。例えば、十種雲形と呼ばれる分類では、雲の形状は「巻雲、巻積雲、巻層雲、高積雲、高層雲、乱層雲、層積雲、層雲、積雲、積乱雲」のいずれかの雲形に分類される。
【0013】
雲底温度算出部24は、赤外線画像内における雲の位置及び相対雲高を示す相対雲高マップ33を生成する。雲底温度は、雲の高度に対応することが知られている。大気の状態等に影響を受けるため、雲底温度から絶対的な高度を求めることは困難であるが、複数の雲層が存在する場合に雲層間の相対高度は特定可能である。
そこで、雲底温度算出部24は、赤外線画像から雲底の温度を計測して、赤外線画像内の雲の相対的な雲高を算出し、相対雲高マップ33を出力する。
【0014】
画像内位置同定部25は、雲形マップ32と相対雲高マップ33とを比較し、該比較の結果に基づいて雲形マップ32と相対雲高マップ33の位置関係を同定する。
例えば、山の稜線や建造物等が、雲形マップ32と相対雲高マップ33に共通して含まれるならば、これらの物体を基準物体として用い、雲形マップ32と相対雲高マップ33の位置関係を同定することができる。
しかしながら、空を撮像した画像を処理対象とする関係上、雲形マップ32と相対雲高マップ33に基準物体の像が含まれることは必ずしも期待できない。
画像内位置同定部25は、基準物体に依存することなく、雲形マップ32と相対雲高マップ33の位置関係を同定することができる。
【0015】
具体的には、画像内位置同定部25は、雲が占める領域に基づく位置関係の同定を行う。一例として、画像内位置同定部25は、雲形マップ32における雲の境界線と相対雲高マップ33における雲の境界線とを比較して、雲の境界線の一致度が閾値を超えるよう位置合わせを行う。
【0016】
ここで、例えば異なる雲高に同一の雲形が存在する場合、相対雲高マップ33の境界は雲高の境界に沿って生成されるが、雲形マップ32の境界線は雲形に沿って生成される。このため、相対雲高マップ33には境界線が存在するが、雲形マップ32には対応する境界線が存在しない状態が発生する可能性があり、このような状態では境界線の比較が適正に行えない。
そこで、画像内位置同定部25は、相対雲高マップ33に示された異なる雲高を結合するマージ処理を行って、マージにより得られた雲の境界線を雲形マップ32の境界線と比較する。
雲形と雲高については、「一つの雲高には一つの雲形しか出現しない」、「同一の雲形は複数の雲高に出現しうる」という前提を置くことができる。画像内位置同定部25は、これらの前提を制約条件として、雲高の組合せパターンを求め、それぞれのパターンの境界線を雲形マップ32の境界線と比較することで、一致度が閾値を超える組合せを探索する。
【0017】
また、雲形によっては赤外放射の強度が不足し、赤外線画像に写らない場合がある。このような場合には、雲形マップ32には境界線が存在するが、相対雲高マップ33には対応する境界線が存在しない状態が発生する可能性があり、このような状態では境界線の比較が適正に行えない。
そこで、画像内位置同定部25は、雲形マップ32に示された雲形のうち、所定の種別の雲形を除外して、相対雲高マップ33と比較する。
【0018】
雲層推定部26は、画像内位置同定部25によってされた前記位置関係を用いて雲形マップ32に示された雲形を相対雲高により分離し、雲形と相対雲高とを対応付けた雲形・雲層情報34を出力する。
すなわち、雲形雲層計測装置10の出力である雲形・雲層情報34には、何層の雲層が存在するか、各層の雲形、各層の高さの相対関係が示されることになる。
【0019】
図2は、実施例に係る雲形雲層計測装置のハードウェア構成図である。
図2に示したように、雲形雲層計測装置10は、既に説明した可視光カメラ11及び赤外線カメラ12に加え、表示部13、入力部14、CPU(Central Processing Unit)15、主記憶装置16及び補助記憶装置17を備える。
【0020】
表示部13は、例えば液晶ディスプレイであり、雲形雲層計測装置10の操作者に対する各種情報の表示出力に用いられる。雲形・雲層情報34の出力についても、表示部13による表示により出力可能である。
入力部14は、例えばキーボードなどであり、操作者からの操作入力を受け付ける。
【0021】
CPU15は、各種のプログラムやデータを主記憶装置16に展開し、プログラムを順次実行することで、各種機能を実現することができる。
主記憶装置16は、例えばRAM(Random Access Memory)である。
具体的には、CPU15は、雲形雲層計測プログラムを主記憶装置16に展開して実行することで、可視光画像受付部21、赤外線画像受付部22、雲形推定部23、雲底温度算出部24、画像内位置同定部25及び雲層推定部26の機能を実現する。
【0022】
補助記憶装置17は、例えばハードディスクドライブなどであり、各種データを記憶する。
具体的には、補助記憶装置17は、雲形認識モデル31、雲形マップ32、相対雲高マップ33及び雲形・雲層情報34などを記憶する。
【0023】
図3は、雲の境界線に基づく位置同定の説明図である。同図では、同じ空を撮像して作成した雲形マップ32と相対雲高マップ33を示している。
雲形マップ32には、雲形T1、雲形T2、雲形T3が含まれている。一方、相対雲高マップ33には、雲高H1、雲高H2、雲高H3が示されている。
【0024】
雲高H2と雲高H3の雲は、同一の雲形T2である。そのため、相対雲高マップにおける雲高H2と雲高H3の境界線は、雲形マップには存在しない。
そこで、雲形雲層計測装置10は、雲高の組合せパターンを探索し、雲高をマージすることで相対雲高マップ33aを生成する。組合せパターンの探索については後述することとし、
図3では、雲高H2と雲高H3をマージした相対雲高マップ33aを示す。
【0025】
雲形マップ32の雲形T3は、例えばガス状の層雲であり、赤外放射の強度不足により、相対雲高マップ33には含まれていない。相対雲高マップ33に写ることが期待できない雲は、雲形により判別可能である。
そこで、雲形雲層計測装置10は、予め所定の種別の雲形を除外対象として設定しておき、雲形マップ32から除外対象の種別の雲形を除外して、相対雲高マップ33aを生成する。
図3では、雲形T3を除外した雲形マップ32aを示す。
【0026】
雲形雲層計測装置10は、雲高のマージを行った相対雲高マップ33aにおける雲の境界線と、所定の雲形を除外した雲形マップ32aにおける雲の境界線とを比較し、一致度が閾値を超えるよう位置合わせを行う。
【0027】
雲形雲層計測装置10は、基準物体に基づく位置関係の同定、雲の境界線に基づく位置関係の同定、雲高のマージ、所定の種別の雲形の除外を適宜組み合わせて用いることができる。これらの位置関係の同定方法は、いずれを優先して使用するかについて順位を設定してもよい。
【0028】
図4は、優先順位に沿った位置関係の同定処理を示すフローチャートである。まず、雲形雲層計測装置10の画像内位置同定部25は、建造物や山の稜線を基準物体として位置同定する(ステップS101)。基準物体による位置同定が行えたならば、そのまま処理を終了することができる。
【0029】
基準物体による位置同定が行えなければ、画像内位置同定部25は、雲形マップ32と相対雲高マップ33から境界線を抽出して比較し、位置同定を行う(ステップS102)。雲高のマージや所定雲形の除外を行うことなく、境界線による位置同定が行えた場合、すなわち、境界線の一致度が閾値を超えた場合、そのまま処理を終了することができる。
【0030】
ステップS102で境界線の一致度が閾値を超えなければ、画像内位置同定部25は、雲高をマージして境界線を比較し、位置同定を行う(ステップS103)。その結果、境界線の一致度が閾値を超えた場合、そのまま処理を終了することができる。
【0031】
雲高のマージを行っても境界線の一致度が閾値を超えなければ、画像内位置同定部25は、所定の種別の雲高を除外して境界線を比較し、位置同定を行う(ステップS104)。
【0032】
図4では、雲形雲層計測装置10は、基準物体による位置同定を優先している。これは、基準物体が存在するならば、高い精度で確実に位置同定が可能だからである。
基準物体による位置同定ができない場合に、雲形雲層計測装置10は、境界線による位置同定を採用する。そして、一致度が閾値を超えなければ、雲高マージ、雲形除外の順に採用する。雲形除外の優先度を下げるのは、所定の種別の雲形であっても赤外線画像に写っている場合があり、雲形の除外が一致度の低下を招く可能性があるためである。
なお、
図4に示した優先順位はあくまで一例であり、位置関係の同定方法をどのように選択するかは任意に定めることができる。
【0033】
図5は、雲高のマージの処理手順を示すフローチャートである。画像内位置同定部25は、まず、雲形マップ32、相対雲高マップ33を取得する(ステップS201)。次に、画像内位置同定部25は、両マップから境界線を抽出する(ステップS202)。
【0034】
画像内位置同定部25は、抽出した境界線の一致度を計算し(ステップS203)、一致度が閾値を超えるか否かを判定する(ステップS204)。
【0035】
ステップS204で一致度が閾値を超えなければ(ステップS204;No)、画像内位置同定部25は、相対雲高マップ33の雲高の組み合わせを選択し、マージする(ステップS205)。その後、ステップS202に戻ることで、雲高をマージした相対雲高マップ33aと雲形マップ32から境界線を抽出する。
【0036】
一致度が閾値を超えず、ステップS205に移行する度に、画像内位置同定部25は、異なる組合せを選択する。
そして、一致度が閾値を超えたならば(ステップS205;Yes)、画像内位置同定部25は、両マップの重ね合わせ位置を決定し(ステップS206)、処理を終了する。
【0037】
雲層推定部26は、画像内位置同定部25が決定した重ね合わせ位置で雲形マップ32と相対雲高マップ33とを重ね合わせ、雲形マップ32に示された雲形を相対雲高により分離し、雲形と相対雲高とを対応付けた雲形・雲層情報34を出力する。
重ね合わせに用いる相対雲高マップ33は、雲高マージを行う前の相対雲高マップ33である。また、雲形を分離する雲形マップ32は、所定の種別の雲形を除外する前の雲形マップ32である。したがって、雲高を対応付けられていない雲層が、雲形・雲層情報34に含まれる場合がある。
一例として、
図3の雲形マップ32及び相対雲高マップ33から得られる雲形・雲層情報34は、次の通りである。
第1層:雲形T1,相対高度H1
第2層:雲形T2,相対高度H2
第3層:雲形T2,相対高度H3
第4層:雲形T3,相対高度不明
(相対高度は、H1<H2<H3)
【0038】
これまでの説明では、雲形マップ32と相対雲高マップ33における雲の境界線を比較することで、雲が占める領域に基づく位置関係の同定を行う場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。他の例として、雲形マップ32における雲に外接する矩形と、相対雲高マップ33における雲に外接する矩形とを比較することでも、雲が占める領域に基づく位置関係の同定が可能である。
【0039】
図6は、雲の外接矩形に基づく位置同定の説明図である。まず、雲形雲層計測装置10は、
図3と同様に、雲形除去と雲高マージを行い、雲形マップ32aと相対雲高マップ33aを生成する。
【0040】
その後、雲形雲層計測装置10は、雲形マップ32aにおける雲に外接する矩形と、相対雲高マップ33aにおける雲に外接する矩形とをそれぞれ検出し、矩形領域として設定する。
図6では、矩形領域を設定した雲形マップ32bと、矩形領域を設定した相対雲高マップ33bを示している。
雲形マップ32bには、矩形領域A1~A3が設定され、相対雲高マップ33bには、矩形領域B1~B3が設定されている。
【0041】
雲形雲層計測装置10は、矩形領域A1~A3と矩形領域B1~B3を比較し、一致度が閾値を超えるよう位置合わせを行う。
このように矩形領域を比較することで、境界線を比較するよりも処理負荷を軽減することができる。なお、矩形領域を用いる場合には、雲高マージにおける組合せの探索も矩形領域の比較により行えばよい。
【0042】
次に、相対雲高マップ33の作成について説明する。
雲底温度算出部24は、同一温度帯の領域をグルーピングすることで同一雲高の領域を決定する。
赤外線カメラ12の温度分解能が高く、同一の雲層内であっても温度が一定でない場合、温度のヒストグラムを作成して出現したピークの数からグルーピングする際のグループ数を決定する。その後に一般的なクラスタリングを実施してもいい。クラスタリングはグループ数を自動決定する手法でも良い。あるいは、各雲層で最頻の温度からの差異の許容値を手動で決定しても良い。
【0043】
図7は、温度ヒストグラムからの雲層推定の説明図である。
図7では、ピクセル数を温度ごとに集計して温度ヒストグラムを作成している。
図7の温度ヒストグラムは、3つのピークを有しており、3つのピークに対応する3つの雲層L1~L3が存在すると推定可能である。
【0044】
上述してきたように、開示の雲形雲層計測装置10は、画像内における雲の位置及び雲形を示す雲形マップ32と画像内における雲の位置及び相対雲高を示す相対雲高マップ33とを比較し、該比較の結果に基づいて前記雲形マップ32と前記相対雲高マップ33の位置関係を同定する画像内位置同定部25と、前記位置関係を用いて前記雲形マップ32に示された雲形を前記相対雲高により分離し、雲形と相対雲高とを対応付けた雲形・雲層情報34を出力する雲層推定部26と、を備えたことを特徴とする。
かかる構成及び動作により、雲形雲層計測装置10は、雲形と雲高に関する情報を総合的に提供できる。
【0045】
また、開示の雲形雲層計測装置10は、予め作成した雲形認識モデル31により可視光画像内の雲の雲形を推定して前記雲形マップ32を出力する雲形推定部23と、赤外線カメラ12により撮像された赤外線画像の出力から雲底の温度を計測し相対的な雲高を算出して前記相対雲高マップ33を出力する雲底温度算出部24と、をさらに備える。
このため、雲形認識モデル31から求められる雲形と、正外線画像から得られる雲梯の温度を利用し、雲形と相対雲高を対応付けて出力できる。
【0046】
また、開示の雲形雲層計測装置10では、前記画像内位置同定部25は、前記雲形マップ32における雲の境界線と前記相対雲高マップ33における雲の境界線とを比較して前記位置関係を同定する。
このため、基準となる物体の有無に依存することなく、雲形マップ32と相対雲高マップ33の位置関係を同定することができる。
【0047】
また、開示の雲形雲層計測装置10では、前記画像内位置同定部25は、前記相対雲高マップ33に示された異なる雲高の雲を結合して、前記雲形マップと比較する。
このため、雲高の情報を持たない雲形マップ32との比較を実現することができる。
【0048】
また、開示の雲形雲層計測装置10は、前記画像内位置同定部25は、前記雲形マップ32に示された雲形のうち、所定の種別の雲形を除外して、前記相対雲高マップ33と比較する。
このため、赤外線画像に写らない雲形が含まれる場合にも、雲形マップ32と相対雲高マップ33との比較を行うことができる。
【0049】
また、開示の雲形雲層計測装置10では、前記画像内位置同定部25は、前記雲形マップ32と前記相対雲高マップ33に共通して含まれる物体を基準物体として用いて前記位置関係を同定する。
このため、基準となる物体が存在する場合には、簡易且つ高精度に位置合わせを行うことができる。
【0050】
また、開示の雲形雲層計測装置10では、前記画像内位置同定部25は、前記雲形マップ32における雲に外接する矩形と、前記相対雲高マップ33における雲に外接する矩形とを比較して前記位置関係を同定する。
このため、処理負荷を抑制しつつ、基準となる物体の有無に依存することなく、雲形マップ32と相対雲高マップ33の位置関係を同定することができる。
【0051】
また、開示の雲形雲層計測装置10では、前記画像内位置同定部25は、前記雲形マップ32と前記相対雲高マップ33に共通して含まれる物体による位置関係の同定、前記雲が占める領域に基づく位置関係の同定、前記相対雲高の異なる雲を結合して行う位置関係の同定、所定の種別の雲形を除外して行う位置関係の同定の順に優先的に位置関係の同定方法を選択する。
このように優先順位を設けることで、状況に応じて適応的な同定方法の選択が可能である。
【0052】
なお、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、かかる構成の削除に限らず、構成の置き換えや追加も可能である。
10:雲形雲層計測装置、11:可視光カメラ、12:赤外線カメラ、13:表示部、14:入力部、15:CPU、16:主記憶装置、17:補助記憶装置、21:可視光画像受付部、22:赤外線画像受付部、23:雲形推定部、24:雲底温度算出部、25:画像内位置同定部、26:雲層推定部、31:雲形認識モデル、32:雲形マップ、32a:雲形マップ、32b:雲形マップ、33:相対雲高マップ、33:雲形マップ、33a:相対雲高マップ、33a:雲形マップ、33b:相対雲高マップ、34:雲形・雲層情報