(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056104
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】エルボ配管回転溶接固定治具
(51)【国際特許分類】
B23K 37/047 20060101AFI20230412BHJP
B23K 9/028 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
B23K37/047 502
B23K9/028 M
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165215
(22)【出願日】2021-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000146814
【氏名又は名称】株式会社新来島どっく
(74)【代理人】
【識別番号】100090044
【弁理士】
【氏名又は名称】大滝 均
(72)【発明者】
【氏名】眞部 隼人
【テーマコード(参考)】
4E081
【Fターム(参考)】
4E081BA21
4E081BA27
4E081EA13
4E081EA32
4E081EA44
4E081EA47
4E081FA06
(57)【要約】
【課題】
パイプ回転加工機器に容易に取り付け可能で、回転溶接時に溶接姿勢が上向きとならずに溶接するパイプ端部の回転溶接による作業が容易となり、溶接品質の向上に寄与するエルボ配管回転溶接固定治具を提供する。
【解決手段】
被処理90度エルボの90度コーナーが載置されるエルボ受けと、エルボ受けの背後に溶接固定配置され、エルボ受けに載置された被処理90度エルボを挟み込むUボルト用開口を有するフラットバーと、フラットバーの背後に溶接固定配置される被処理90度エルボの両端開口の中心軸とそれぞれ同軸上に直交して配置される2本のセット用パイプと、被処理90度エルボを上から挟み込むUボルト及びUボルト用開口を挿通したUボルト両端を締め付ける締付ナットと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプの回転加工用機器であるポジショナー又はパイプローラーの回転固定部に容易に取りつけられる固定治具であって、
被処理90度エルボの90度コーナーが載置されるエルボ受けと、
エルボ受けの背後に溶接固定配置され、エルボ受けに載置された被処理90度エルボを挟み込むUボルト用開口を有するフラットバーと、
フラットバーの背後に溶接固定配置される被処理90度エルボの両端開口の中心軸とそれぞれ同軸上に直交して配置される2本のセット用パイプと、
被処理90度エルボを上から挟み込むUボルト及びUボルト用開口を挿通したUボルト両端を締め付ける締付ナットと、
を有することを特徴とするエルボ配管回転溶接固定治具。
【請求項2】
エルボ受けは、エルボの90度中心を基準に60度の角度で両端を切り落とし、切り落としたエルボの内側を切欠きして外側部分のみ残した形状であることを特徴とする請求項1に記載のエルボ配管回転溶接固定治具。
【請求項3】
エルボ受け上にエルボ受けの内径を外径とする90度中心を基準に60度の角度で両端を切り落とし、切り落としたエルボの内側を切欠きして外側部分のみ残した形状のパッキング材と、
を有することを特徴とする請求項2に記載のエルボ配管回転溶接固定治具。
【請求項4】
下に配置するパッキング材の内径を外径とするパッキング材を複数重ねたパッキング材と、
を有することを特徴とする請求項3に記載のエルボ配管回転溶接固定治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、90度エルボの端部に直管端部を容易に回転溶接を可能とするエルボ配管回転溶接固定治具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の90度エルボの両端に管を溶接する場合に使用される回転装置に関しては、例えば、特開平1-273672号公報に開示のものが知られている。特開平1-273672号公報の開示は、発明名称「90°エルボの溶接用回転装置」に係り、「エルボを1回取付けるだけで両端の溶接をすることができ、さらにロ径の異なるエルボについても端面が偏心回転をしない回転装置を得ることを目的とする」発明解決課題において(同公報2頁右上欄18行~同左下欄1行参照)、「回転軸と、この回転軸の先端に、芯線に対し45度に傾斜して設けられた傾斜台と、この傾斜台を貫通する中心軸を有し、傾斜台上を回動しうる回動台と、前記中心軸先端部に形成されたおねじに螺合し、回動台を傾斜台に締付けることのできるめねじ体と、前記傾斜台の周縁部に設けられためねじと螺合し、先端が回動台を押圧し固定する止めおねじと、90°エルボを前記回動台上に締付け固定することのできるチエンと、前記回動台上に設けられ、90°エルボを当接させ、回動台を回動させることにより、90°エルボの各端面円の中心と回転軸の芯線とを合わせることができるように支える受部材とからなる」構成とすることにより(同公報特許請求の範囲第1項参照)、「・・90°エルボを回動台上に取付け、一の端面円部分を溶接した後、回動台を回動させることにより、エルボの取外し、取付けを行うことなく、他の端面円の溶接を行うことができ、作業を効率化することができ・・、しかもこのとき端面円が偏心回転をしないので、作業は容易であり、仕上り品質も良好となる。」等の効果を奏するものである(同公報3頁右下欄8行~同14行参照)。
【0003】
図5は、特開平1-273672号公報に第1図として示される同公報開示発明の一実施例の正面図であり、
図5において、符号130は、90°エルボの溶接用回転装置、131は、回転軸、132は、傾斜台、133は、回動台、134は、中心軸、135は、おねじ、136は、ハンドル、137は、めねじ体、138は、めねじ、139は、止めおねじ、140は、当部、141は、チエン、143は、おねじ、145は、ナット、146は、受部材、148は、90°エルボ、153、154は、パイプ(直管)、155、157は、端面円、156は、溶接棒である(なお、符号は、先行技術であることを明らかにするために、本願出願人において、3桁に変更して説明した。)。
【0004】
しかしながら、
図5に示す90°エルボの溶接用回転装置130は、パイプ153、154をエルボ148に一端のパイプ153への回転溶接が完了すると、他端のパイプ154への回転溶接にそのまま使用することはできず、他端のパイプ154への回転溶接を実施するためには、結局、他端へのパイプ154を回転軸131の中心として回転溶接が可能とするように、装置中心軸134について180度回転させて再取付けを行わなければならない等の余分な作業が必要となっていた。また、チェン141及び受け部材146がエルボ148の受け材となっているので、エルボ148を傷つける恐れがあり、さらには、しっかり固定されず回転時にセット治具から滑る恐れがある等の問題点がある。
【0005】
そこで,本願出願人会社では、被処理パイプ(管)を適切な角度に維持したまま被処理管を回動させることのできるポジショナーと称する機器を使用し、ポジショナーのテーブルに直接パイプ(直管)の一端を固定することにより、管一品の製作におけるエルボの両端にパイプ(直管)を溶接するようにしていた。
【0006】
図6は、ポジショナーを使用して管一品の製作におけるエルボの両端にパイプ(直管)を溶接する概略を示す図であり、
図6において、160は、ポジショナー、161は、テーブル、162は、テーブル161に固定されるパイプ(直管)、163は、エルボ、164は、エルボ163の他端に溶接されるパイプ(直管)、165は、溶接棒である。
【0007】
しかしながら、
図6に示すポジショナー160を使用するエルボ両端へのパイプ(直管)への回転溶接は、直接パイプ162をテーブル161にセット(固定)する、あるいは仮パイプ(図示外)をエルボ163に取付け、当該仮パイプ(図示外)をテーブル161にセット(固定)した後に回転溶接をしなければならないという欠点があった。
【0008】
すなわち、ポジショナー160に直接パイプ162をセットすると、ポジショナー160と反対側のパイプ164の距離が狭いためエルボ163の端部の溶接が困難となる。また、仮パイプ(図示外)を使用する場合には、仮パイプを溶接後に外す必要があり、かつ、取り外し部に別途の補修作業が発生する等の問題があった。
【0009】
また、
図7は、ポジショナーの代わりに、パイプローラーと称する機器を使用して管一品の製作におけるエルボの両端にパイプ(直管)を溶接する概略を示す図であり、
図7において、符号170は、パイプローラー、171は、パイプ回転固定部、172は、パイプ回転固定部171に固定される溶接対象パイプ(直管)、173は、エルボ、174は、エルボ173の他端に溶接される溶接対象パイプ(直管)である。
【0010】
図7に示すパイプローラー170を使用するエルボ両端へのパイプ(直管)の回転溶接は、直接パイプ172をパイプ回転固定部171にセット(固定)する、あるいは仮パイプ(図示外)をエルボ173に取付け、当該仮パイプ(図示外)をパイプ回転固定部171にセット(固定)して回転溶接をしなければならないという欠点や取り外し部への別途の補修作業等の同様の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、上記の欠点ないしは問題点を解決するために、本願発明者は、パイプ回転加工機器のポジショナーやパイプローラーを使用するエルボ管一回転溶接において、ポジショナーのテーブルやパイプローラーのパイプ回転固定部に容易に取り付け可能で、回転溶接時に溶接姿勢が上向きとならずに、溶接するパイプ端部の回転溶接による作業が容易となり、溶接品質の向上に寄与するエルボ配管回転溶接固定治具を案出するに至り、当該エルボ配管回転溶接固定治具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願請求項1に係る発明は、パイプの回転加工用機器であるポジショナー又はパイプローラーの回転固定部に容易に取りつけられる固定治具であって、被処理90度エルボの90度コーナーが載置されるエルボ受けと、エルボ受けの背後に溶接固定配置され、エルボ受けに載置された被処理90度エルボを挟み込むUボルト用開口を有するフラットバーと、フラットバーの背後に溶接固定配置される被処理90度エルボの両端開口の中心軸とそれぞれ同軸上に直交して配置される2本のセット用パイプと、被処理90度エルボを上から挟み込むUボルト及びUボルト用開口を挿通したUボルト両端を締め付ける締付ナットと、を有することを特徴とする。
また、本願請求項2に係る発明は、前記請求項1に記載のエルボ配管回転溶接固定治具において、エルボ受けは、エルボの90度中心を基準に60度の角度で両端を切り落とし、切り落としたエルボの内側を切欠きして外側部分のみ残した形状であることを特徴とする。
さらに、本願請求項3に係る発明は、前記請求項2に記載のエルボ配管回転溶接固定治具において、エルボ受け上にエルボ受けの内径を外径とする90度中心を基準に60度の角度で両端を切り落とし、切り落としたエルボの内側を切欠きして外側部分のみ残した形状のパッキング材と、を有することを特徴とする。
そして、本願請求項4に係る発明は、前記請求項3に記載のエルボ配管回転溶接固定治具において、下に配置するパッキング材の内径を外径とするパッキング材を複数重ねたパッキング材と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
ポジショナーにエルボ配管回転溶接固定治具を使用することにより、次のような効果がある。
(1)パイプの円周上を溶接するには下向き姿勢が有利であり、ポジショナー又はパイプローラーにセットすることでパイプを回転しながら同一方向での溶接が可能となる。
(2)また、固定治具を使用することで、ポジショナー又はパイプローラーによるパイプの変形や異種金属によるもらい錆、パイプとエルボの歪みが軽減される効果がある。
(3)さらに、固定治具によるエルボ本体への損傷や溶接時のスパッター等ゴミ噛みによる影響の心配も無い。
(4)エルボ角度も70°以上に対応することができ、対応する治具を使用することにより、回転軸を持つ装置であれば幅広く使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明に係るエルボ配管回転溶接固定治具の実施例1を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本実施例1に係るエルボ配管回転溶接固定治具1をポジショナーにセットする概略を示す分解図である。
【
図3】
図3は、本実施例1に係るエルボ配管回転溶接固定治具1を使用して、被処理エルボ163の他端に他方のパイプ164を回転溶接する概略を示す図である。
【
図4】
図4は、ポジショナー160に代えて、パイプローラー170に本実施例1に係るエルボ配管回転溶接固定治具1を固定して管一品の製作におけるエルボ端にパイプ(直管)を溶接する概略を示す図である。
【
図5】
図5は、特開平1-273672号公報に第1図として示される同公報開示発明の一実施例の正面図である。
【
図6】
図6は、ポジショナーを使用して管一品の製作におけるエルボの両端にパイプ(直管)を溶接する概略を示す図である。
【
図7】
図7は、ポジショナーの代わりに、パイプローラーと称する機器を使用して管一品の製作におけるエルボの両端にパイプ(直管)を溶接する概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るエルボ配管回転溶接固定治具を実施するための一実施例を図面に基づき詳細に説明する。
【実施例0017】
図1は、本発明に係るエルボ配管回転溶接固定治具の実施例1を示す概略図である。
図1において、符号1は、本発明の実施例1に係るエルボ配管回転溶接固定治具、2は、一方のセット用パイプ、3は、他方のセット用パイプ、4は、エルボ受け、5は、フラットバー、6a、6bは、ブラケット(ただし,ブラケット6bは図示外)、7は、Uボルト、8a、8bは、Uボルト7への締付ナットである。
【0018】
図1に示すように、本実施例1に係るエルボ配管回転溶接固定治具1は、エルボ(
図1では図示外)の90度コーナー部が載置固定するためのエルボ受け4を有し、当該エルボ受け4は、縦方向中心軸は、両セット用パイプ2、3のそれぞれの中心軸と平行にエルボ受け4の下にフラットバー5に両ブラケット6a、6bを介して90度に固定される。
【0019】
さらに、ポジショナー等のパイプ回転加工機器の回転固定部に固定されるセット用パイプ2,3が、直交してエルボ受け4の背後でフラットバー5に接合され、これらのセット用パイプ2、3の中心軸は、エルボ(
図1では図示外)の両端の中心軸上となるように形成される。
【0020】
なお、本実施例1に係るエルボ配管回転溶接固定治具1においては、エルボ(図示外)の固定に便宜なように、エルボ受け4については、同径又は若干大きな口径の90度エルボの90度中心を基準に60度の角度で両端を切り落とし、切り落としたエルボ163の内側を切欠きして外側部分のみ残した形状のものである。60度の角度で両端を切り落としとすることでその上に載置する90度エルボが、エルボ受け4にしっかりと固定されることとなる。また、Uボルト7は、載置する90度エルボの外径に合致するUボルト径を有するものを使用する。
【0021】
すなわち、上記のように形成される本実施例1に係るエルボ配管回転溶接固定治具1は、パイプの回転加工用機器であるポジショナー又はパイプローラーの回転固定部に固定されて使用される固定治具を前提とし、
図1に示すように、被処理90度エルボの90度コーナーが載置されるエルボ受けと、エルボ受けの背後に溶接固定配置され、エルボ受けに載置された被処理90度エルボを挟み込むUボルト用開口を有するフラットバーと、フラットバーの背後に溶接固定配置される被処理90度エルボの両端開口の中心軸とそれぞれ同軸上に直交して配置される2本のセット用パイプと、被処理90度エルボを上から挟み込むUボルト及びUボルト用開口を挿通したUボルト両端を締め付ける締付ナットと、を有するようにしたものである。
【0022】
次に、本実施例1に係るエルボ配管回転溶接固定治具1をパイプの回転加工機器であるポジショナーに取りつけて、被処理エルボの両端にパイプを溶接する概略を図面に基づいて説明する。
【0023】
図2は、本実施例1に係るエルボ配管回転溶接固定治具1をポジショナーにセットする概略を示す分解図であり、
図2において、符号163の90度エルボを始め、その余の符号は、
図1及び
図6に示す同じ部材を同じ符号で示している。
【0024】
図2に示すように、90度エルボ163をエルボ受け4の上に載置し、その上からUボルト7を差し込み、フラットバー5の裏から締付ナット8で固定した本実施例1に係るエルボ配管回転溶接固定治具1のセット用パイプ2をポジショナー160のテーブル161に固定する。このようにポジショナー160のテーブル161に固定された本実施例1に係るエルボ配管回転溶接固定治具1をテーブル161で回転させながら、エルボ163の一端とパイプ162を溶接する。
【0025】
エルボ163の一端とパイプ162の回転溶接が終了したら、次に、ポジショナー160のテーブルからセット用パイプ2を取り外し、もう一方のセット用パイプ3をテーブルに取付固定し、エルボ163の他端と他方のパイプ164との間の回転溶接を行う。
【0026】
図3は、本実施例1に係るエルボ配管回転溶接固定治具1を使用して、被処理エルボ163の他端に他方のパイプ164を回転溶接する概略を示す図であり、
図2と異なる点は、ポジショナー160のテーブル161に他方のセット用パイプ3が固定されている点だけであり、ポジショナー160のテーブル161に他方のセット用パイプ3を固定して、テーブル161を回転させながら、エルボ163の他端と他方のパイプ164を回転溶接を行うこととするのである。
【0027】
図3において、符号165は、
図6に示した溶接棒であり、その余の符号は、
図1,
図2及び
図6に示す同じ部材を同じ符号で示している。
【0028】
図4は、ポジショナー160に代えて、パイプローラー170に本実施例1に係るエルボ配管回転溶接固定治具1を固定して管一品の製作におけるエルボ端にパイプ(直管)を溶接する概略を示す図であり、パイプ172のエルボ173との回転溶接が終了し、パイプローラー170に本実施例1に係るエルボ配管回転溶接固定治具1のセット用パイプ3をパイプ回転固定部171に付け替えて固定し、エルボ173の他端に他方のパイプ174を回転溶接する概略を示している。なお、
図4においても、符号は、
図1,
図7に示す同じ部材は同じ符号で示している。
【0029】
図2ないし
図4に示すように、90度エルボ163、173の両端にパイプ162、172及びパイプ164,174の溶接を行う際、エルボ163、173に本実施例1に係るエルボ配管回転溶接固定治具1を載置、固定し、ポジショナー160又はパイプローラー170に対して本実施例1に係るエルボ配管回転溶接固定治具1のセット用パイプ2をセットする。しかる後、ポジショナー160のテーブル161又はパイプローラー170のパイプ回転固定部171を回転させながらエルボ163,173にパイプ162、172を回転溶接を行い、エルボ163,173とパイプ162、172の溶接が終了したら、本実施例1に係るエルボ配管回転溶接固定治具1の他方のセット用パイプ3をポジショナー160又はパイプローラー170にセットし、今度は、エルボ163、173の他端とパイプ164,174との間を回転しつつ溶接(回転溶接)する。
【0030】
このような作業とすることにより、エルボの両端とパイプとの溶接接合は、常に作業者から見て下向きに溶接することが可能となり、溶接姿勢が悪いため作業効率が悪く時間がかかり、また、溶接品質において欠陥が出やすい状況を避けることができる。
【0031】
すなわち、本実施例1に係るエルボ配管回転溶接固定治具1を使用することにより、次のような効果を奏することとなる。
【0032】
(1)パイプの円周上を溶接するには下向き姿勢が有利であり、ポジショナー又はパイプローラーにセットすることでパイプを回転しながら同一方向での溶接が可能となる。(2)また、固定治具を使用することで、ポジショナー又はパイプローラーによるパイプの変形や異種金属によるもらい錆、パイプとエルボの歪みが軽減される効果がある。(3)さらに、固定治具によるエルボ本体への損傷や溶接時のスパッター等ゴミ噛みによる影響の心配も無い。(4)エルボ角度も70°以上に対応することができ、対応する治具を使用することにより、回転軸を持つ装置であれば幅広く使用が可能である。
しかしながら、このような使用する90度エルボと同径又は若干大きな口径の90度エルボの90度中心を基準に60度の角度で両端を切り落とし、切り落としたエルボ163の内側を切欠きして外側部分のみを残した形状のエルボ受け4では、エルボの外径が異なる多種の外径のエルボの場合には、使用することができず、それぞれの径に対応するエルボ受け4を有するエルボ配管回転溶接固定治具1を数多く準備しておかなければならず不便極まりない。
そこで、使用する90度エルボについて、最も大きな外径を有するエルボの90度中心を基準に60度の角度で両端を切り落とし、切り落としたエルボの内側を切欠きして外側部分のみ残した形状のエルボ受けとすると共に、当該エルボ受けの内径を外径とし、同様に、90度中心を基準に60度の角度で両端を切り落とし、切り落としたエルボの内側を切欠きして外側部分のみ残した形状の、いわば、パッキング材を各外径のエルボ用に順次準備することにより、外径の異なるエルボの固定に対応できることとなる。すなわち、本実施例1に係るエルボ配管回転溶接固定治具1のエルボ受け4の内径が254.2mmとすると、253.2mmの外径を有し、エルボ受け4の内側にしっかりと介在できるパッキン材を準備することにより,パッキン材を介在したエルボ受け4の上に、被処理エルボを載置し、その上からUボルト7で締め付け固定することにより、径の異なるエルボのパイプの回転溶接を容易に行うことができることとなる。なお、必要であるならば、Uボルトと被処理エルボとの間に同じパッキン材を介在するようにしても良い。
また、さらに小さい径の被処理エルボを回転溶接する場合には、さらに小さい外径で同じ形状のパッキン材を二枚、三枚と重ねて使用することにより、より小さい外径の被処理エルボを容易に回転溶接できることとなる。