(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056110
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】地盤改良機
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20230412BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165224
(22)【出願日】2021-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 愛斗
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AB05
2D040CB03
2D040DC06
(57)【要約】
【課題】組立性に優れ、安全に使用することが可能なスイベルジョイントの連れ回り防止装置を備えた地盤改良機を提供する。
【解決手段】回り止め装置31を構成するロッド32は、オーガ17の一側部に固着された短尺の大径パイプ34と、これと同軸に摺動可能に設けられた長尺の小径パイプ35と、大径パイプの下方に小径パイプの重心が位置した仮保持状態を作る仮保持部36と、大径パイプの上方に小径パイプの重心が位置した固定状態を作る固定部とを備え、仮保持部は、大径パイプに挿入されるリンク棒41と、該リンク棒の上端に固着され、大径パイプの上部開口端34bに当接してリンク棒の抜け止めをする当接部材42とを有し、リンク棒は、当接部材の当接状態で、大径パイプの下部開口端34aよりも下方に突出する突出部43を有し、該突出部と小径パイプの先端部39との重合部に設けられたピン孔に係止ピン40を挿脱可能にしている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体の上部に上部旋回体を旋回可能に設けたベースマシンと、前記上部旋回体の前部に立設したリーダと、該リーダに沿って昇降する回転駆動装置と、該回転駆動装置に装着されるスクリューシャフトと、該スクリューシャフトの上端に設けられて地盤改良剤の注入ホースが接続されるスイベルジョイントとを備え、前記回転駆動装置に、前記スクリューシャフトと平行にロッドを設け、該ロッドと前記スイベルジョイントとを連結部材で連結した地盤改良機において、
前記ロッドは、前記回転駆動装置の一側部に固着された短尺の大径パイプと、該大径パイプと同軸であって摺動可能に設けられた長尺の小径パイプと、前記大径パイプの下方に前記小径パイプの重心が位置した仮保持状態を作る仮保持部と、前記大径パイプの上方に前記小径パイプの重心が位置した固定状態を作る固定部とを備え、
前記仮保持部は、前記大径パイプに挿入されるリンク棒と、該リンク棒の上端に固着され、前記大径パイプの上部開口端に当接して前記リンク棒の下方への抜け止めをする当接部材とを有し、
前記リンク棒は、前記当接部材の当接状態で、前記大径パイプの下部開口端よりも下方に突出する突出部を有し、該突出部と前記小径パイプの先端部との重合部に設けられた係止ピン挿通孔に係止ピンを挿脱可能に形成してなることを特徴とする地盤改良機。
【請求項2】
前記固定部は、前記大径パイプと前記小径パイプとの重合部に設けられた固定ピン挿通孔に固定ピンを挿脱可能に形成してなることを特徴とする請求項1記載の地盤改良機。
【請求項3】
前記係止ピン挿通孔は、前記リンク棒の長手方向に延びて形成され、前記係止ピンが摺動して前記リンク棒を前記小径パイプの先端部に出没させる長孔であることを特徴とする請求項1又は2記載の地盤改良機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良機に関し、詳しくは、掘削した土砂と注入した地盤改良剤とを撹拌混合して地盤の改良を行う地盤改良機に関する。
【背景技術】
【0002】
建築や土木工事では、軟弱地盤を改良するために、掘削した掘削孔にセメントミルクなどの地盤改良剤を注入・撹拌し、地盤を硬化させる地盤改良機が使用されている。この種の地盤改良機は、中空掘削軸であるスクリューシャフトの上端にスイベルジョイントを介して地盤改良剤の注入ホース(グラウトホース)を接続するとともに、下端に掘削刃及び撹拌翼を有する掘削ヘッドを装着し、回転が付与されたスクリューシャフトをリーダに沿って下降させて地盤を掘削しながら、スクリューシャフト内を通って送られた地盤改良剤を掘削ヘッドから噴出させて土砂と地盤改良剤とを撹拌している。
【0003】
回転継手であるスイベルジョイントは、その取付構造上、カップリング(シャフト側)とボディ(ホース側)との間に組み込まれたシール部分の抵抗によってボディ側が連れ回りするおそれがある。こうしたスイベルジョイントの連れ回り防止手段として、地盤改良機には、回転駆動装置に立設した伸縮ロッドと、該伸縮ロッド及びスイベルジョイント間を連結する連結部材とが備わっている。連結部材は、スイベルジョイントのカップリングを回転可能に保持しながら、同時に接続状態の注入ホースも保持する形で構成され、これにより、スイベルジョイントは、そのボディ側が定位置に回転不能に保持され、回転するスクリューシャフトによって連れ回りが生じないようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
連れ回り防止手段を構成する伸縮ロッドは、複数のパイプを順に内嵌したテレスコピック構造を有している。こうした構造は、長いスクリューシャフトに対応させて伸縮量を確保しようとすれば、固定側のパイプから順にパイプ径が細くなり、全体のたわみ量が大きくなる。一方、パイプ同士の連結をなくして1本の長尺パイプとすれば、全体の剛性が高まり、たわみ量の問題は解消する。しかしながら、長尺パイプを用いた構成では、脱着作業に適う揚程のクレーンや、玉掛け用ロープを扱う高所足場が必要となり、作業効率や安全性の低下を招くという問題が生じてしまう。
【0006】
そこで本発明は、組立性に優れ、安全に使用することが可能なスイベルジョイントの連れ回り防止装置を備えた地盤改良機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の地盤改良機は、下部走行体の上部に上部旋回体を旋回可能に設けたベースマシンと、前記上部旋回体の前部に立設したリーダと、該リーダに沿って昇降する回転駆動装置と、該回転駆動装置に装着されるスクリューシャフトと、該スクリューシャフトの上端に設けられて地盤改良剤の注入ホースが接続されるスイベルジョイントとを備え、前記回転駆動装置に、前記スクリューシャフトと平行にロッドを設け、該ロッドと前記スイベルジョイントとを連結部材で連結した地盤改良機において、前記ロッドは、前記回転駆動装置の一側部に固着された短尺の大径パイプと、該大径パイプと同軸であって摺動可能に設けられた長尺の小径パイプと、前記大径パイプの下方に前記小径パイプの重心が位置した仮保持状態を作る仮保持部と、前記大径パイプの上方に前記小径パイプの重心が位置した固定状態を作る固定部とを備え、前記仮保持部は、前記大径パイプに挿入されるリンク棒と、該リンク棒の上端に固着され、前記大径パイプの上部開口端に当接して前記リンク棒の下方への抜け止めをする当接部材とを有し、前記リンク棒は、前記当接部材の当接状態で、前記大径パイプの下部開口端よりも下方に突出する突出部を有し、該突出部と前記小径パイプの先端部との重合部に設けられた係止ピン挿通孔に係止ピンを挿脱可能に形成してなることを特徴としている。
【0008】
また、前記固定部は、前記大径パイプと前記小径パイプとの重合部に設けられた固定ピン挿通孔に固定ピンを挿脱可能に形成してなることを特徴としている。さらに、前記係止ピン挿通孔は、前記リンク棒の長手方向に延びて形成され、前記係止ピンが摺動して前記リンク棒を前記小径パイプの先端部に出没させる長孔であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の地盤改良機によれば、連れ回り防止手段を構成するロッドが、回転駆動装置に固着した短尺の大径パイプとこれに同軸で摺動可能な長尺の小径パイプと、両パイプ同士の上下相対位置に応じて機能する仮保持部と固定部とを備えているので、仮保持部としてリンク棒と当接部材とからなる組立治具を用いるだけで、ロッドの脱着作業を回転駆動装置の下側から行え、クレーン作業や高所作業をなくすことができる。すなわち、大径パイプへの治具の配備や、小径パイプとの間の係止ピンの挿脱を地上にいながら行え、段取り後は、回転駆動装置を上昇させて小径パイプを起こし上げる簡単な動作で、両パイプ同士が同軸に揃った仮保持状態を作ることができる。しかも、仮保持状態から回転駆動装置を下降させると、小径パイプは自立して大径パイプに挿入され、安定状態で大径パイプの上方へと重心移動がなされることから、固定状態を安全かつ迅速に作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一形態例を示す地盤改良機であってのロッドの仮保持状態を示す側面図である。
【
図9】小径パイプを台座に載置した状態を示す図である。
【
図10】小径パイプの上端部を大径パイプに挿入した状態を示す図である。
【
図12】1本目のスクリューシャフトを連結した状態を示す図である。
【
図13】スクリューシャフトを掴み替えた状態を示す図である。
【
図14】2本目のスクリューシャフトを連結した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至
図14は、本発明の地盤改良機の一形態例を示している。地盤改良機11は、
図1及び
図2に示すように、クローラを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシン14と、上部旋回体13の前部に立設したリーダ15と、該リーダ15を後方から支持する起伏シリンダ16と、前記リーダ15に昇降可能に設けられた回転駆動装置であるオーガ17とを備えている。
【0012】
上部旋回体13の前部には、リーダ15を起伏可能に支持するリーダサポート18が設けられている。上部旋回体13の右側部には運転室19が、左側部にはエンジンや油圧ポンプなどの機器を収納する機器室20が設けられ、上部旋回体13の前後左右の4箇所に安定用のジャッキ21が設けられるとともに、上部旋回体13の後端部には地盤改良機11のバランスをとるためのカウンタウエイト22が搭載されている。
【0013】
リーダ15は、断面が角筒状に形成された複数のリーダ部材を互いに連結したもので、リーダサポート18に設けられた支軸に回動可能に取り付けられている。また、リーダ15の上端部には、吊りロープが巻掛けられるトップシーブ23が、下部前方には、回転駆動される施工部材の振れを防止する振止装置24がそれぞれ備わっており、リーダ15の前面中央には、ラックピニオン式昇降装置の構成部品としてラックギヤ25が、両側面前端部には左右一対のガイドパイプ26,26が、リーダ15の全長にわたってそれぞれ連続的に設けられている。
【0014】
オーガ17は、ギヤケース17aを貫通した施工部材を把持するチャック機構17bと、該施工部材に回転駆動力を付与するオーガ駆動用油圧モータ17cとを備えており、前記ガイドパイプ26,26に摺接する左右一対のガイドギブ17d,17dが後方に突出して設けられるとともに、ラックギヤ25に歯合する左右一対のピニオン(図示せず)をオーガ昇降用油圧モータ17eによって回転駆動することにより、リーダ15の前面に沿って昇降する。
【0015】
地盤改良機11を使用して地盤改良を行う際には、施工部材としてスクリューシャフトが使用される。スクリューシャフト27は、セメントミルクなどの地盤改良剤が中を通る継足し可能な中空管であり、
図13にも示すように、上端部のアッパーシャフト28を含む長さ方向の複数箇所に、チャック機構17bに係合するチャック溝27aを備えた角軸部27bが設けられ、下端には掘削刃及び撹拌翼を有する掘削ヘッド(図示せず)が装着される。また、
図4にも示すように、アッパーシャフト28の上端にはスイベルジョイント29が取り付けられ、該スイベルジョイント29に注入ホース(グラウトホース)30が接続されている。
【0016】
スイベルジョイント29は、アッパーシャフト28に連結するカップリング29aと、注入ホース30が接続されるボディ29bとが相対回転可能に組み立てられ、スクリューシャフト27が回転してもその回転力が注入ホース30に伝わらないようになっている。もっとも、カップリング29aとボディ29bとの間には、漏れ防止のシールが介在しているため、こうしたシール部分の抵抗によってボディ29b側が連れ回りしてしまうおそれがある。そこで、スイベルジョイント29の連れ回りを防止するための回り止め装置31が使用されている。
【0017】
回り止め装置31は、スクリューシャフト27と平行なロッド32をオーガ17に設けるとともに、ロッド32とスイベルジョイント29との間で連結部材33による連結がなされている。
【0018】
ロッド32は、
図3乃至
図8に示すように、オーガ17の一側部(ギヤケース17a側面)に固着された短尺の大径パイプ34と、該大径パイプ34と同軸に摺動可能に設けられた長尺の小径パイプ35と、大径パイプ34の下方に小径パイプ35の重心が位置した仮保持状態(
図1)を作るための仮保持部36と、大径パイプ34の上方に小径パイプ35の重心が位置した固定状態(
図11)を作るための固定部37とを備えている。仮保持部36及び固定部37は、ロッド32の組立作業の進度に合わせて適時選定して用いられる。
【0019】
図3及び
図4に示されるように、大径パイプ34は、オーガ17の全高に相当する長さよりも若干短く形成され、平面形状の取付部38を介してボルト止めした状態で、下部開口端34aの高さ位置がギヤケース17aの下面に揃えられている。小径パイプ35は、スクリューシャフト27の長尺仕様に対応して長く形成されており、例えば、大径パイプ34の8倍程の長さを有し、大径パイプ34内をガタ付き無く摺動することが可能である。小径パイプ35の先端部(上端部)は、補強を兼ねた連結構造として形成され、仮保持部36とピン結合がなされる二股部39が設けられている。この二股部39には、係止ピン40を挿脱可能な円形の係止ピン挿通孔39aが設けられている。
【0020】
仮保持部36は、ロッド32の組立治具として人手で扱える軽量なもので、大径パイプ34に挿入されるリンク棒41と、該リンク棒41の上端に固着され、大径パイプ34の上部開口端34bに当接してリンク棒41の下方への抜け止めをする当接部材42とを有している。当接部材42は、円形板であって、大径パイプ34の外径よりも僅かに大きく形成されている。
【0021】
リンク棒41は、矩形断面の角材から形成され、大径パイプ34よりもやや長く、長手方向の両端部にわたって延びた長孔状の係止ピン挿通孔41aを有している。リンク棒41の下端部は、大径パイプ34の上部開口端34bに当接部材42が当接した状態で、大径パイプ34の下部開口端34aよりも下方に突出する突出部43となり、この突出部43を二股部39に挿入してなる重合部に対して係止ピン40が挿脱可能になっている(
図5~
図7)。
【0022】
係止ピン40を介して小径パイプ35がリンク棒41に係止されると、リンク棒41には小径パイプ35の自重が作用する。ここで、詳細は後述するが、小径パイプ35の先端部(二股部39)を大径パイプ34に挿入するとき、リンク棒41への負荷が取り除かれ、これと同時に係止ピン40は長孔(係止ピン挿通孔41a)の上部へ向かって摺動する。これにより、リンク棒41は、小径パイプ35の外に突出した位置(
図8の想像線)から、二股部39に設けられた開口39bを通じて、小径パイプ35の中に格納した位置(
図8の実線)へと移動される。すなわち、リンク棒41は、両パイプ34,35の軸方向(上下方向)の相対移動に従うことで、小径パイプ35の先端部に出没可能になっている。
【0023】
固定部37は、大径パイプ34に対して小径パイプ35の上下位置を確定し、ロッド32を使用可能な状態にするもので、
図3及び
図11に示すように、大径パイプ34と小径パイプ35との重合部に固定ピン挿通孔34c,35aを設け、両孔位置を一致させた状態で、固定ピン44が挿脱可能になっている。固定ピン挿通孔34c,35aは、両パイプ34,35同士の下端を揃えた状態で一致するように設けられている。これにより、小径パイプ35の取付高さと、大径パイプ34に対する挿入量(ラップ量)とがそれぞれ確保される。
【0024】
連結部材33は、ロッド32及びスイベルジョイント29間に渡されたアーム本体33aを中心に構成され、大径パイプ34が挿通可能な内径を有するガイド筒33bと、スイベルジョイント29のカップリング29a側をベアリング機構を介して保持する保持筒33cと、注入ホース30を保持するホースガイド33dとを有しており、ガイド筒33b内にロッド32が軸方向に移動可能に挿通される。これにより、スイベルジョイント29は、注入ホース30を接続した状態で、ボディ29b側が定位置に回転不能に保持され、回転するスクリューシャフト27によって連れ回りすることはない。
【0025】
以下では、このように形成した地盤改良機11によって、リーダ15よりも長尺のスクリューシャフト27を使用して地盤改良を行う手順を説明する。まず、地盤改良機11は、現場移動の際にリーダ15の下端部にオーガ17が配置され、リーダ15の上部を倒した輸送姿勢でトレーラの荷台に載せられる。このとき、オーガ17にはアッパーシャフト28のみが装着されており、回り止め装置31は、スイベルジョイント29と大径パイプ34との間に連結部材33を渡した仮組立状態として保持されている。
【0026】
現場に搬入された地盤改良機11は、リーダ15を起立させてオーガ17の昇降動作を可能にした後、
図3に示すように、用意したリンク棒41を大径パイプ34に挿入するとともに、小径パイプ35の先端部(二股部39)を地面から持ち上げて、リンク棒41の下端部(突出部43)との間で係止ピン40によるピン結合を行う。こうして、リンク棒41にテンションが付与され、つまり、ロッド32の組立に必要な段取りが施され、仮保持部36の機能を発揮できる状態となる。オーガ17を上昇させると、小径パイプ35は、地面を滑りながら係止ピン40を中心に回動して起こし上げられ、最終的にはアッパーシャフト28に対して平行になって、大径パイプ34の下方に吊り下げた状態、すなわち、仮保持状態が作られる(
図1)。
【0027】
ここで、
図9乃至
図11を参照しながら、仮保持状態からの作業を説明する。まず、小径パイプ35の位置に合わせて台座45を設置する。次いで、
図9に示すように、オーガ17を下降させて小径パイプ35を台座45に載置する。この状態からオーガ17を徐々に下降させると、
図10に示すように、小径パイプ35の上端部が大径パイプ34に挿入される。このとき、リンク棒41は、小径パイプ35の自重が除かれた状態で、大径パイプ34の中に保持され、係止ピン40を長孔の下端から上端へ向かって移動させながら、小径パイプ35の中に格納されていく。そして、大径パイプ34の中に小径パイプ35の上端部が入りきったとき、長孔の上端に係止ピン40が当接する(
図8の実線)。こうして、リンク棒41は、小径パイプ35の先端部に没した後、その格納状態を維持しながら大径パイプ34と上下方向に離間する。
【0028】
一方、小径パイプ35は、その重心位置(長さ方向中間位置)を大径パイプ34の下方から上方に移動させることになるが、大径パイプ34との長さ方向の重なり量を得て起立状態が維持される。そして、
図11に示すように、両パイプ34,35同士の下端を揃えた後、重合部における互いのピン孔を一致させた状態で、固定ピン44によるピン結合を行う。このようにして回り止め装置31を組み立てると、固定部37が機能して、小径パイプ35を大径パイプ34の上方に最大限延ばした状態、すなわち、固定状態が作られる。
【0029】
ここで、
図12乃至
図14を参照しながら、スクリューシャフト27の組立作業を説明する。この作業では、地盤改良機11に装備されている吊りロープが使用され、足場確保のために、別途、高所作業車を準備する。なお、これらの運転操作は従来からの手順で行われる。まず、スイベルジョイント29に注入ホース30を接続し、オーガ17を上昇させた後、
図12に示すように、トップシーブ23から垂下した吊りロープで1本目のスクリューシャフト27をオーガ17の真下に吊り込み、アッパーシャフト28と連結する。
【0030】
所定操作でスクリューシャフト27との係合状態を解除した後、オーガ17をリーダ15の下部に下降させて、スクリューシャフト27の下部角軸部を把持する掴み替えを行う。このとき、オーガ17が下降するのに対し、スイベルジョイント29を保持した連結部材33の高さは変わらないため、連結部材33のガイド筒33bは、大径パイプ34の外周部から小径パイプ35の外周部に移動し、
図13に示すように、最終的には小径パイプ35の上端部まで移動する。そして、スクリューシャフト27の下部角軸部を把持した後、再びオーガ17を上昇させ、
図14に示すように、1本目のスクリューシャフト27の下端に2本目を連結し、その下端に掘削ヘッドを装着することで、スクリューシャフト27の組立作業が完了する。
【0031】
このようにしてスクリューシャフト27を組み立てた後、これを振止装置24で抱持した状態とし、オーガ17を作動させてスクリューシャフト27を回転駆動しながらリーダ15に沿って下降させるとともに、管路内を通って送られた地盤改良剤を掘削ヘッドの先端から掘削孔に噴射することにより、掘削刃で掘削した土砂と地盤改良剤とを撹拌翼で混合する。
【0032】
オーガ17をリーダ15の下部に下降させた後、中間角軸部の把持を解除したオーガ17を上昇させて上部角軸部を把持する掴み替えを行う。このとき、スクリューシャフト27をその位置に固定しておくために、振止装置24の固定手段によってスクリューシャフト27が把持される。スクリューシャフト27との係合状態を解除してオーガ17を上昇させると、オーガ17が上昇するのに対し、スイベルジョイント29を保持した連結部材33の高さは変わらないため、連結部材33のガイド筒33bは、小径パイプ35の下部に移動し、最終的には大径パイプ34まで移動する。
【0033】
オーガ17の移動によってスクリューシャフト27の把持位置を上部側に切り替えたら、スクリューシャフト27を回転駆動しながら下降させて、掘削ヘッドの掘削刃で掘削した土砂と地盤改良剤とを撹拌翼で混合する。そして、所定深度まで掘削ヘッドを下降させた後、逆の手順で掘削ヘッドを引き抜くことによって地盤改良作業が終了する。
【0034】
このように、本発明の地盤改良機11によれば、回り止め装置31を構成するロッド32が、回転駆動装置17に固着した短尺の大径パイプ34とこれに同軸で摺動可能な長尺の小径パイプ35と、両パイプ34,35同士の上下相対位置に応じて機能する仮保持部36と固定部37とを備えているので、仮保持部36としてリンク棒41と当接部材42とからなる組立治具を用いるだけで、ロッド32の脱着作業を回転駆動装置17の下側から行え、クレーン作業や高所作業をなくすことができる。すなわち、大径パイプ34への治具の配備や、小径パイプ35との間の係止ピン40の挿脱を地上にいながら行え、段取り後は、回転駆動装置17を上昇させて小径パイプ35を起こし上げる簡単な動作で、両パイプ34,35同士が同軸に揃った仮保持状態を作ることができる。しかも、仮保持状態から回転駆動装置17を下降させると、小径パイプ35は自立して大径パイプ34に挿入され、安定状態で大径パイプ34の上方へと重心移動がなされることから、固定状態を安全かつ迅速に作ることができる。
【0035】
また、固定部37が両パイプ34,35の重合部を用いたピン結合構造からなるので、簡便な構成で固定状態を作ることができ、組立性の向上に資するものである。さらに、リンク棒41に設けた係止ピン挿通孔41aが、係止ピン40を摺動させてリンク棒41を小径パイプ35の先端部(二股部39)に出没させる長孔であるため、固定状態において、小径パイプ35に対するリンク棒41の突出や横倒れを防止することができ、組立治具として実用的な仮保持部36の構成が達成される。
【0036】
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものではなく、ロッドは、スクリューシャフトの仕様に応じて小径パイプの長さを適宜変更することができ、より長尺なものとする場合には、輸送性や組立性などを損なわない限度で大径パイプの長さを延ばしてもよい。また、仮保持部や固定部は、小径パイプの重心移動を安定的に行える種々の構成が考えられ、地盤改良機が使用される多様な環境において、その適用の幅を広げることができる。
【符号の説明】
【0037】
11…地盤改良機、12…下部走行体、13…上部旋回体、14…ベースマシン、15…リーダ、16…起伏シリンダ、17…オーガ、17a…ギヤケース、17b…チャック機構、17c…オーガ駆動用油圧モータ、17d…ガイドギブ、17e…オーガ昇降用油圧モータ、18…リーダサポート、19…運転室、20…機器室、21…ジャッキ、22…カウンタウエイト、23…トップシーブ、24…振止装置、25…ラックギヤ、26…ガイドパイプ、27…スクリューシャフト、27a…チャック溝、27b…角軸部、28…アッパーシャフト、29…スイベルジョイント、29a…カップリング、29b…ボディ、30…注入ホース、31…回り止め装置、32…ロッド、33…連結部材、33a…アーム本体、33b…ガイド筒、33c…保持筒、33d…ホースガイド、34…大径パイプ、34a…下部開口端、34b…上部開口端、34c…固定ピン挿通孔、35…小径パイプ、35a…固定ピン挿通孔、36…仮保持部、37…固定部、38…取付部、39…二股部、39a…係止ピン挿通孔、39b…開口、40…係止ピン、41…リンク棒、41a…係止ピン挿通孔、42…当接部材、43…突出部、44…固定ピン、45…台座