(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056119
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】保護機能付き基体、電子デバイス及び電子回路基板
(51)【国際特許分類】
H01C 7/12 20060101AFI20230412BHJP
H01C 1/142 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
H01C7/12
H01C1/142
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165245
(22)【出願日】2021-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160543
【弁理士】
【氏名又は名称】河野上 正晴
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】五味 洋二
(72)【発明者】
【氏名】藤原 秀樹
【テーマコード(参考)】
5E028
5E034
【Fターム(参考)】
5E028BA04
5E028BB11
5E028CA02
5E028JC03
5E028JC11
5E028JC12
5E034CA08
5E034CB05
5E034CC02
5E034CC14
5E034DA07
5E034DB01
5E034DC04
5E034DD03
(57)【要約】
【課題】高電圧パルスに対する良好な保護及び電子機器を実装する回路基板のさらなる小型化または高密度実装を可能とする。
【解決手段】第1の主面及び第2の主面を有する板状のセラミック基体と、前記セラミック基体に含まれるバリスタ層と、前記バリスタ層に含まれる誘電体及び前記誘電体を挟んで一部が対向する複数の内部電極と、前記第1の主面上の一対の外部電極と、前記外部電極と前記内部電極とを電気的に接続する接続電極とを備え、前記接続電極は、前記セラミック基体の厚み方向に延在し、且つ、前記第2の主面に到達しておらず、前記内部電極間の間隔bが、前記外部電極間の間隔aよりも狭い保護機能付き基体。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面及び第2の主面を有する板状のセラミック基体と、
前記セラミック基体に含まれるバリスタ層と、
前記バリスタ層に含まれる誘電体及び前記誘電体を挟んで一部が対向する複数の内部電極と、
前記第1の主面上の一対の外部電極と、
前記外部電極と前記内部電極とを電気的に接続する接続電極と
を備え、
前記接続電極は、前記セラミック基体の厚み方向に延在し、且つ、前記第2の主面に到達しておらず、
前記内部電極間の間隔bが、前記外部電極間の間隔aよりも狭い
保護機能付き基体。
【請求項2】
前記内部電極は、前記セラミック基体の端面に露出した露出部を有し、
前記接続電極は、前記セラミック基体の端面に配置されている
請求項1に記載の保護機能付き基体。
【請求項3】
前記接続電極は、前記外部電極と前記内部電極とを前記セラミック基体の内部で接続するビアである、請求項1に記載の保護機能付き基体。
【請求項4】
前記バリスタ層は、前記セラミック基体の厚みに対して前記第1の主面から1/3以内の領域に位置する、請求項1~3のいずれか一項に記載の保護機能付き基体。
【請求項5】
前記外部電極はスパッタ膜である、請求項1~4のいずれか一項に記載の保護機能付き基体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の保護機能付き基体、及び
前記外部電極上の電子機器
を含む電子デバイス。
【請求項7】
回路基板、及び
前記回路基板上の請求項1~5のいずれか一項に記載の保護機能付き基体、
を含む電子回路基板。
【請求項8】
前記外部電極上の電子機器を含む、請求項7に記載の電子回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器を静電気放電(ESD:Electro-Static Discharge)やサージの高電圧パルスから保護する保護機能付き基体、電子デバイス及び電子回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LEDや半導体等の電子機器は、自動車や産業機器等、用途が多様化しており、ESDやサージから上記電子機器を保護することが強く求められるようになっている。電子機器を、ESDやサージから保護する電子部品としてバリスタ(バリアブルレジスタ、電圧非直線抵抗素子)がある。バリスタは各種電子機器の回路を高電圧パルスから保護する目的で使用されている。
【0003】
特許文献1には、発光ダイオード(LED:light emitting diode)チップ上にESD保護回路を形成することを必要とせず、またはLEDパッケージの内部または外部に分離したESD保護回路を設けることを必要とせずに、LEDチップのためのESD保護回路を設けることを目的として、金属酸化物バリスタをセラミック基体と一体に形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高電圧パルスに対する電子機器の保護機能を確保しつつ、電子機器を実装する回路基板のさらなる小型化または高密度実装の要求が一層高まっている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、LED、半導体等の保護対象である電子機器を実装する基体自体に従来よりも良好なバリスタ機能を持たせ、電子機器を実装する回路基板の小型化または高密度化を実現するとともに、高電圧パルスに対する保護性能を確保する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)第1の主面及び第2の主面を有する板状のセラミック基体と、
前記セラミック基体に含まれるバリスタ層と、
前記バリスタ層に含まれる誘電体及び前記誘電体を挟んで一部が対向する複数の内部電極と、
前記第1の主面上の一対の外部電極と、
前記外部電極と前記内部電極とを電気的に接続する接続電極と
を備え、
前記接続電極は、前記セラミック基体の厚み方向に延在し、且つ、前記第2の主面に到達しておらず、
前記内部電極間の間隔bが、前記外部電極間の間隔aよりも狭い
保護機能付き基体。
(2)前記内部電極は、前記セラミック基体の端面に露出した露出部を有し、
前記接続電極は、前記セラミック基体の端面に配置されている
上記(1)に記載の保護機能付き基体。
(3)前記接続電極は、前記外部電極と前記内部電極とを前記セラミック基体の内部で接続するビアである、上記(1)に記載の保護機能付き基体。
(4)前記バリスタ層は、前記セラミック基体の厚みに対して前記第1の主面から1/3以内の領域に位置する、上記(1)~(3)のいずれかに記載の保護機能付き基体。
(5)前記外部電極はスパッタ膜である、上記(1)~(4)のいずれかに記載の保護機能付き基体。
(6)上記(1)~(5)のいずれかに記載の保護機能付き基体、及び
前記外部電極上の電子機器
を含む電子デバイス。
(7)回路基板、及び
前記回路基板上の上記(1)~(5)のいずれかに記載の保護機能付き基体、
を含む電子回路基板。
(8)前記外部電極上の電子機器を含む、上記(7)に記載の電子回路基板。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高電圧パルスに対する良好な保護及び電子機器のさらなる小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の保護機能付き基体を模式的に表した外観斜視図である。
【
図2】
図2は、本開示の保護機能付き基体の断面模式図である。
【
図3】
図3は、本開示の保護機能付き基体の製造プロセスの一例の模式図である。
【
図4】
図4は、本開示の保護機能付き基体の断面模式図である。
【
図5】
図5は、本開示の保護機能付き基体を模式的に表した外観斜視図である。
【
図6】
図6は、本開示の保護機能付き基体を模式的に表した外観斜視図である。
【
図7】
図7は、本開示の保護機能付き基体を模式的に表した外観斜視図である。
【
図8】
図8は、本開示の保護機能付き基体の断面模式図である。
【
図9】
図9は、保護機能付き基体及び保護機能付き基体の外部電極上に配置された電子機器を含む電子デバイスの断面模式図である。
【
図10】
図10は、回路基板上に接着剤を介して配置された保護機能付き基体を含む電子回路基板の断面模式図である。
【
図11】
図11は、回路基板上に接着剤を介して配置された保護機能付き基体の外部電極上の電子機器を含む電子回路基板の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、第1の主面及び第2の主面を有する板状のセラミック基体と、前記セラミック基体に含まれるバリスタ層と、前記バリスタ層に含まれる誘電体及び前記誘電体を挟んで一部が対向する複数の内部電極と、前記第1の主面上の一対の外部電極と、前記外部電極と前記内部電極とを電気的に接続する接続電極とを備え、前記接続電極は、前記セラミック基体の厚み方向に延在し、且つ、前記第2の主面に到達しておらず、前記内部電極間の間隔bが、前記外部電極間の間隔aよりも狭い保護機能付き基体を対象とする。以下、図面を参照しながら、本保護機能付き基体の実施形態の例を説明する。
【0011】
(実施形態1)
図1に、本実施形態の保護機能付き基体を模式的に表した外観斜視図を示す。
図2に、
図1の保護機能付き基体の断面模式図を示す。本実施形態の保護機能付き基体においては、内部電極は、セラミック基体の端面に露出した露出部を有し、第1の主面上の外部電極と内部電極とがセラミック基体の端面の接続電極で接続されている。
【0012】
図1及び2に示す保護機能付き基体100は、第1の主面11及び第2の主面12を有する板状のセラミック基体10と第1の主面11上の一対の外部電極42とを備える。セラミック基体10は、セラミック基板13及びバリスタ層30を含む。バリスタ層30は、誘電体31及び誘電体31を挟んで一部が対向する複数の内部電極32を含む。外部電極42と内部電極32とは接続電極41を介して電気的に接続されている。接続電極41は、セラミック基体10の端面に厚み方向に延在し、且つ、第2の主面12に到達していない。内部電極32間の間隔bは、外部電極42間の間隔aよりも狭い。
【0013】
セラミック基体10は板状であり、第1の主面11及び第2の主面12を有する。セラミック基体10は、セラミック基板13とセラミック基板13に隣接して配置されたバリスタ層30とを含む。セラミック基板13は、保護機能付き基体の強度を確保できる材料であれば特に限定されないが、好ましくは、バリスタ層30の誘電体と同じ材料で構成され得る。セラミック基板13が、バリスタ層30の誘電体と同じ材料で構成されることにより、バリスタ層30とセラミック基板13の線膨張係数、ポアソン比、ヤング率等の物性をほぼ同じにすることができるので、バリスタ層30とセラミック基板13の接合面における応力発生や割れを抑制することができる。
【0014】
バリスタ層30は、誘電体31及び内部電極32を含む。バリスタ層30は、第2の主面に最も近い内部電極32から第1の主面側に向かって内部電極32と誘電体31とを含む層である。内部電極32は、誘電体31を間に挟んで一部がセラミック基体10の厚み方向で対向している。内部電極が誘電体を間に挟んで一部がセラミック基体の厚み方向で対向することにより、誘電体の特性に基づくバリスタ特性を得ることができる。
【0015】
誘電体31の厚みは、回路保護電圧や、誘電体の材料や誘電体の焼結温度に基づく誘電体層中の粒界の数等にもよるが、好ましくは20~140μm、より好ましくは40~120μm、さらに好ましくは60~100μmである。誘電体31が上記好ましい厚みを有することにより、セラミック基体10の厚みcの1/3以内の範囲で内部電極及び誘電体で構成されるバリスタ層の厚みを確保しつつ、所望の数の内部電極層を配置することができ、例えば24Vのバリスタ電圧を安定して得ることができる。内部電極32の厚みは、好ましくは0.5~5.0μmである。内部電極32が上記好ましい厚みを有することにより、優れた耐電流耐性を有しデラミネーション等の構造異常のない製品を得ることができる。
【0016】
内部電極32は、2層以上、好ましくは3層以上、より好ましくは4層以上、さらに好ましくは5層以上、さらにより好ましくは6層以上である。内部電極32が上記層数を有することにより、内部電極間の誘電体層がより大きなエネルギーを吸収することができ、また、電圧パルスの印加を繰り返すことによるバリスタ電圧の変化を小さくすることができる。内部電極32の層数の上限は特に限定されないが、内部電極間の誘電体層の厚みが薄くなりすぎないように8層または6層程度でもよい。
【0017】
誘電体31は、従来、バリスタに用いられている材料で構成され得、例えば、酸化亜鉛、SiC等が挙げられる。内部電極32は、従来バリスタに用いられている材料であることができ、Ag、Pd、Pt、Ag/Pd、またはそれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0018】
本実施形態においては、第1の主面上の外部電極42と内部電極32とは、セラミック基体10の端面で厚み方向に延在する接続電極41を介して電気的に接続されている。接続電極41は、セラミック基体10の端面に配置されるが、セラミック基体10の第2の主面12には到達していない。
図2に示すセラミック基体10の第1の主面11から第2の主面12に向かう接続電極41の長さeは、第2の主面に最も近い内部電極32と接続できる長さであればよく、好ましくは第2の主面12に最も近い内部電極32の露出部を完全に覆う長さである。接続電極41の長さeは、セラミック基体10の厚みcに対して、より好ましくは1/2以下、さらに好ましくは1/3以下、さらにより好ましくは1/4以下の長さを有する。本保護機能付き基体は第2の主面に電極を有さず、且つ接続電極41が上記構成を有するので、本開示の保護機能付き基体の第2の主面側の端面の幅方向(回路基板の表面に平行方向)の寸法を小さくすることができ、また、回路基板上の隣接する電子機器や基体に電圧パルスが短絡することを抑制することができるので、電子機器及び保護機能付き基体を実装する回路基板の高密度実装または回路基板の面積を小さくすることができる。
【0019】
また、本開示の保護機能付き基体は第2の主面に外部電極を有しないので、回路基板は電極パッドが不要である。本開示の保護機能付き基体によれば、第1の主面側にバリスタ層、及び第1の主面の外部電極上に保護対象である電子機器が配置され、第1の主面の近傍に発熱する部材を集約させることができるので、保護機能付き基体を実装する回路基板の高密度化の設計を容易に行うことができる。セラミック基体10の厚みcは、好ましくは0.1~1.0mm、より好ましくは0.2~0.8mm、さらに好ましくは0.3~0.6mmである。
【0020】
外部電極42の厚みは、好ましくは0.1~3.0μmである。端面の接続電極41の厚みは、好ましくは0.1~3.0μmである。外部電極42が上記好ましい厚みを有することにより、保護すべき電子機器をより安定して配置及び電気的に接続することができる。接続電極41が上記好ましい厚みを有することにより、内部電極32及び外部電極42とより安定して電気的に接続することができる。
【0021】
外部電極42は、従来、バリスタの外部電極に用いられている材料で構成されてもよいが、好ましくはスパッタ膜またはめっき膜、より好ましくはスパッタ膜である。スパッタ膜はスパッタリングにより形成することができる。めっき膜はめっきにより形成することができる。これにより、表面の平滑性(コプラナリティ)に優れた外部電極が得られ、電子機器を外部電極上に精度良く実装することができる。接続電極41も、従来、バリスタの外部電極に用いられている材料で構成されてもよいが、好ましくはスパッタ膜またはめっき膜、より好ましくはスパッタ膜である。接続電極41は、好ましくは、外部電極42をスパッタで形成する際に、セラミック基体10の端部に回り込むようにして、同時に形成される。このように回り込むようにして接続電極41をスパッタで形成する場合、第2の主面側のマスクは不要であり、低コストで容易に接続電極41を形成することができる。
【0022】
外部電極42及び接続電極41は、好ましくは、同じ材料で構成される。外部電極42の構成は、電子機器の実装、回路基板とのワイヤボンディング等の条件に適した構成であることができる。外部電極は、好ましくは、下地層としてNi系被膜、Ni系被膜に隣接するPd系被膜、及びPd系被膜に隣接するAu系被膜の3層構造を有する。主にNi系被膜が耐熱性をもたらし、Pd系被膜が拡散防止効果層として機能し、Au系被膜がワイヤボンディングとの良好な親和性をもたらすことができる。これによりワイヤボンディングを良好に行うことができ、且つ電極の拡散が抑えられ良好な耐熱性を有することができる。Ni系被膜、Pd系被膜、及びAu系被膜はそれぞれ、好ましくは0.03~2μm、より好ましくは0.05~1μmの厚みを有する。これにより上記3層構造の効果をより安定して得ることができる。接続電極41も、好ましくは、外部電極42と同じ構成を有する。
【0023】
内部電極32間の間隔b(誘電体31の厚み)は、外部電極42間の間隔aよりも狭い。間隔bは、好ましくは間隔a×0.9以下、より好ましくは間隔a×0.8以下、さらに好ましくは間隔a×0.7以下、さらにより好ましくは間隔a×0.6以下、さらにより好ましくは間隔a×0.5以下である。間隔aと間隔bとが上記関係にあることにより、外部電極42間の第1の主面11上を高電圧パルスが流れることを抑制することができ、良好なバリスタ特性を安定して得ることができる。外部電極42間の間隔aは、好ましくは50~150μm、より好ましくは70~130μm、さらに好ましくは90~110μmである。
【0024】
好ましくは、バリスタ層30は、セラミック基体10の厚みcに対して第1の主面から1/3以内の領域に位置する。この場合、バリスタ層30は外部電極42寄りに位置し、セラミック基板13の厚みは、セラミック基体10の厚みcに対して2/3以上である。バリスタ層30がセラミック基体10の厚みcに対して第1の主面から1/3以内の領域に存在することで、バリスタの保護機能を発揮しつつ、接続電極を外部電極42側にのみ配置することができる。この場合、第1の主面から1/3以内の領域にバリスタ層30が位置する限り、別の層が第1の主面から1/3以内の領域に存在してもよく、例えばバリスタ層30と外部電極42との間に、内部電極を含まない誘電体層や、絶縁体層等の他の層が存在してもよい。バリスタ層30は、セラミック基体10の厚みcに対して第1の主面からより好ましくは1/4以内に位置する。
【0025】
図2に例示するように、より好ましくは、バリスタ層30は外部電極42に隣接し、この場合、バリスタ層30の厚みdは、セラミック基体10の厚みcの好ましくは1/3以内、より好ましくは1/4以内である。
【0026】
図3に、本実施形態の保護機能付き基体の製造プロセスの一例の模式図を示す。工程Aでセラミック基板13を準備し、工程Bでセラミック基板13上に内部電極32を配置し、工程Cでセラミック基板13及び内部電極32上に誘電体31を配置する。誘電体及び内部電極の配置方法は、従来、バリスタの製造で用いられている任意の方法であることができ、好ましくは、内部電極パターンをスクリーン印刷で形成した誘電体のグリーンシートを、積層、圧着、及び焼成する方法である。セラミック基板13についても、誘電体の配置方法と同様に、グリーンシートを積層、圧着、及び焼成して得ることができる。セラミック基板のグリーンシートとバリスタ層の内部電極を備えたグリーンシートとを積層して得られた積層体を圧着し次いで焼成してもよく、1枚または2枚以上のセラミック基板のグリーンシートを積層及び圧着を繰り返し、次いでバリスタ層の内部電極を備えたグリーンシートを積層及び圧着を繰り返して得られた積層体を焼成してもよい。例えば、工程Bにおいては、内部電極を形成したセラミック基板のグリーンシートを内部電極のないセラミック基板のグリーンシート上に積層しすることができる。工程Cにおいては、工程Bで得られた積層体の誘電体シート上に内部電極を印刷プロセスで配置してもよい。工程Bで得られた積層体上に、工程Cをとばして、工程Dで、内部電極を印刷した誘電体シートを積層してもよい。
【0027】
工程Dでは、誘電体31上に、誘電体31を挟むように且つ最初に配置した1層目の内部電極32と一部が対抗するように2層目の内部電極32を配置し、工程Eで一層目の誘電体31及び2層目の内部電極32上に誘電体31を配置して、焼成前のセラミック基体10を得る。工程B~Eを繰り返して内部電極層と誘電体層をさらに形成してもよい。
【0028】
工程Fで、焼成前のセラミック基体10を脱バインダ及び焼成し、次いで端面に内部電極が露出するように短冊状にセラミック基体10を切断する。
図3の工程Fにおけるバリスタ層30は、1層目の内部電極32から2層目の誘電体31までで構成される。切断方法は、従来、バリスタの製造に用いられている任意の方法であることができ、好ましくはダイシングである。
【0029】
工程Gで、セラミック基体10の第1の主面に金属膜40及び端面に接続電極41を形成する。金属膜40及び接続電極41の形成方法は、塗布、めっき、スパッタリング等が挙げられるが、好ましくはスパッタリングである。スパッタリングにより、セラミック基体10の端面における内部電極32の露出部まで回り込み且つ第2の主面に到達しないようにスパッタ膜を形成することができる。
【0030】
工程Hで、金属膜40を分離して外部電極42を形成することができる。金属膜40の分離方法は、レーザー、サンドブラスト等のトリミング方法であることができる。外部電極42の形成後に、短冊状のセラミック基体10を個片に分割して、保護機能付き基体100を得ることができる。個片への分割は、ダイシング等の方法で行うことができる。
【0031】
(実施形態2)
図4に、本開示の保護機能付き基体の別の実施形態の断面模式図を示す。
図5に、
図4の保護機能付き基体の断面模式図を示す。
図6に、
図5の保護機能付き基体とは接続電極(ビア)の位置が異なる保護機能付き基体の断面模式図を示す。本実施形態の保護機能付き基体においては、外部電極と内部電極とが、セラミック基体の内部の接続電極(ビア)で接続されている。
【0032】
図4~6に示す保護機能付き基体200は、第1の主面11及び第2の主面12を有する板状のセラミック基体10と、第1の主面11上の一対の外部電極42とを備える。セラミック基体10は、セラミック基板13及びバリスタ層30を含む。バリスタ層30は、誘電体31及び誘電体31を挟んで一部が対向する複数の内部電極32を含む。外部電極42と内部電極32とは、セラミック基体10の内部の接続電極44を介して電気的に接続されている。接続電極44は、セラミック基体10の内部に厚み方向に延在し、且つ、第2の主面12に到達しないビアである。実施形態1と同様に、内部電極32間の間隔は、外部電極42間の間隔よりも狭い。
【0033】
本実施形態においては、外部電極42と内部電極32とは接続電極44を介して電気的に接続されており、接続電極44は、外部電極42と内部電極と32をセラミック基体10の内部で接続し且つ第2の主面12に到達しないビアである。ビアはセラミック基体10の厚み方法に延在する。ビアの直径は、好ましくは50~300μmである。ビアが前記好ましい直径を有することにより、内部電極と外部電極とをより安定して電気的に接続することができる。ビアの形成方法は、従来行われている方法であることができ、例えばグリーンシートに孔を形成し、スクリーン印刷で電極ペーストを孔の内部の少なくとも一部を充填することにより、ビアを形成することができる。
【0034】
本実施形態においては、セラミック基体10の端面の接続電極は不要であるため、保護機能付き基体の端面の幅方向(回路基板の表面に平行方向)の寸法をより小さくすることができ、また、回路基板上の隣接する電子機器や基体に電圧パルスが短絡することをより抑制することができるので、電子機器及び保護機能付き基体を実装する回路基板のさらなる高密度実装または回路基板の面積をより小さくすることができる。
【0035】
接続電極44の長さは、実施形態1の接続電極41と同様に、第2の主面12に最も近い内部電極32と接続できる長さであればよく、セラミック基体10の厚みcに対して、好ましくは1/2以下、より好ましくは1/3以下、さらに好ましくは1/4以下の長さを有する。ビアである接続電極44の位置は、内部電極32と外部電極42とを接続可能であれば、特に制限されない。例えば、
図5に示すように外部電極42の中央位置に互いに並ぶ位置関係にあってもよく、
図6に示すように、外部電極42の両端側にずれた位置関係にあってもよい。
【0036】
セラミック基体、内部電極、及び外部電極の上記以外の構成及び作製方法は、実施形態1と共通である。
【0037】
(実施形態3)
図7に、本開示の保護機能付き基体の別の実施形態の外観斜視図を示す。
図8に、
図7の破線A-Aを通りセラミック基体10の厚み方向に平行な面における断面模式図を示す。
【0038】
図7及び
図8に示す保護機能付き基体300は、第1の主面11及び第2の主面12を有する板状のセラミック基体10と第1の主面11上の一対の外部電極42とを備える。セラミック基体10は、セラミック基板13及びバリスタ層30を含む。バリスタ層30は、誘電体31及び誘電体31を挟んで一部が対向する複数の内部電極32を含む。外部電極42と内部電極32とは接続電極46を介して電気的に接続されている。接続電極46は、セラミック基体10の端面に厚み方向に延在し、且つ、第2の主面12に到達しないビアである。実施形態1及び2と同様に、内部電極32間の間隔は、外部電極42間の間隔よりも狭い。
【0039】
図7に示すように、接続電極46はセラミック基体10の端面に配置されているが、長手方向に分割したビア形状を有する。接続電極46は、
図7に示すようにビアの表面に沿って形成されていてもよく、ビアの内部を充填するように形成されていてもよい。ビア形状の接続電極46の形成は、例えばグリーンシートに孔を形成し、スクリーン印刷で電極ペーストを孔の内部の少なくとも一部を充填し、長手方向に沿ってビアの内部の接続電極がセラミック基体10の端部に露出するように切断することにより行うことができる。
【0040】
接続電極46の長さは、実施形態1の接続電極41と同様に、第2の主面12に最も近い内部電極32と接続できる長さであればよく、好ましくは第2の主面に最も近い内部電極32の露出部を完全に覆う長さである。接続電極46の長さは、セラミック基体10の厚みcに対して、好ましくは1/2以下、より好ましくは1/3以下、さらに好ましくは1/4以下の長さを有する。本実施形態においては、接続電極46はセラミック基体10の端面に露出しているが、セラミック基体10の内側にビアとして形成されているため、保護機能付き基体の端面の幅方向(回路基板の表面に平行方向)の寸法をより小さくすることができ、また、回路基板上の隣接する電子機器や基体に電圧パルスが短絡することをより抑制することができるので、電子機器及び保護機能付き基体を実装する回路基板のさらなる高密度実装または回路基板の面積をより小さくすることができる。
【0041】
セラミック基体、内部電極、及び外部電極の上記以外の構成及び作製方法は、実施形態1及び2と共通である。
【0042】
本開示はまた、上記の保護機能付き基体及び外部電極上の電子機器を含む電子デバイスを対象とする。
図9に、実施形態1の保護機能付き基体の外部電極42上に配置された電子機器50を含む電子デバイス400の断面模式図を示す。電子機器50は、ESDやサージを含む高電圧パルスから保護すべきLED、半導体等であることができる。電子機器50の外部電極52と第1の主面上の外部電極42とが電気的に接続されている。外部電極42にAu系ペースト、Au/Sn系ペースト等の電極ペーストをディスペンサー等で塗布した上に、電子機器50の外部電極52を載せて、リフロー等の炉に投入して、外部電極52と外部電極42とを接合してもよい。
【0043】
本開示はまた、回路基板、及び回路基板上の上記保護機能付き基体を含む電子回路基板を対象とする。
図10に、回路基板70上に接着剤72を介して配置された実施形態1の保護機能付き基体を含む電子回路基板500の断面模式図を示す。回路基板70及び接着剤72は、従来、電子機器の実装に用いられているものであることができる。保護機能付き基体は、好ましくは、ワイヤボンディングにより、回路基板70に電気的に接続される。
図10においては、外部電極42と回路基板70の電極71とがワイヤ60を介して、回路基板70に電気的に接続されている。電極71は、回路基板70の設計に応じた位置であることができる。保護機能付き基体と回路基板70との電気的接続は、接続電極41と回路基板70の電極71とがワイヤ60を介して接続されてもよい。ワイヤ60は、従来用いられているワイヤであることができ、例えばAu等である。
【0044】
電子回路基板の保護機能付き基体の外部電極上に、保護すべき電子機器を配置することができる。
図11に、回路基板70上に接着剤72を介して配置された実施形態1の保護機能付き基体の外部電極42上の電子機器50を含む電子回路基板600の断面模式図を示す。
【符号の説明】
【0045】
100 保護機能付き基体
200 保護機能付き基体
300 保護機能付き基体
400 保護機能付き基体上の電子機器を含む電子デバイス
500 保護機能付き基体を含む電子回路基板
600 保護機能付き基体の外部電極上の電子機器を含む電子回路基板
10 セラミック基体
11 第1の主面
12 第2の主面
13 セラミック基板
30 バリスタ層
31 誘電体
32 内部電極
40 金属膜
41 接続電極
42 第1の主面上の一対の外部電極
44 接続電極
46 接続電極
50 電子機器
52 電子機器の外部電極
60 ワイヤ
70 回路基板
71 回路基板の電極
72 接着剤