(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056140
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】足指運動を促す履物の中敷
(51)【国際特許分類】
A43B 13/14 20060101AFI20230412BHJP
【FI】
A43B13/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165286
(22)【出願日】2021-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000167820
【氏名又は名称】広島化成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】近藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】横山 将大
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050EA05
(57)【要約】
【課題】日常生活の中で、脚のむくみ抑制につながる効果を得る、タオルギャザー運動と同様の効果を得る運動を、少ない負担で継続的に促すことができる、履物の中敷を提供することを目的とする。
【解決手段】母指の基節骨対応部分と末節骨対応部分にあたる範囲と、第二指乃至第五指のいずれか一つまたは複数の指の基節骨対応部分と中節骨対応部分と末節骨対応部分にあたる範囲に、中敷の内縁部から外縁部へ下っていく方向で、中敷の爪先側先端から踵側先端を結ぶ直線に対し55°から90°の角度に伸びる、直線状、波線状、またはジグザグ線状である高さ0.5~4.0mmの突起を複数具備する中敷とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母指の基節骨対応部分と末節骨対応部分にあたる範囲に、中敷の内縁部から外縁部へ下っていく方向で、中敷の爪先側先端から踵側先端を結ぶ直線に対し55°から90°の角度に伸びる直線状、波線状、またはジグザグ線状である突起を複数具備してなることを特徴とする履物の中敷。
【請求項2】
第二指乃至第五指のいずれか一つまたは複数の指の基節骨対応部分と中節骨対応部分と末節骨対応部分にあたる範囲に、中敷の内縁部から外縁部へ下っていく方向で、中敷の爪先側先端から踵側先端を結ぶ直線に対し55°から90°の角度に伸びる直線状、波線状、またはジグザグ線状である突起を複数具備してなることを特徴とする請求項1に記載の履物の中敷。
【請求項3】
前記突起は、中敷平面部から頂点の高さが0.5~4.0mmである請求項1又は請求項2に記載の履物の中敷。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物の中敷に関する。より詳細には、体内、主として、脚の血流の循環を活性化し、脚のむくみ抑制効果を奏効する足指運動を促す中敷に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、発明の構成要素の位置を正確に確定することが必要である。従って、必要に応じて、下記専門書を参照した。
「ヴォルフ 人体解剖学アトラス(新装版) 2001年4月20日 新装版第1刷発行 編者 H.F.Frick, B.Kummer, R.V.Putz 監訳者 内野 滋雄、田中 重徳、猪口清一郎、河西達夫、小林茂夫 発行人 西村正徳 発行所 西村書店」
脚は、心臓から遠い位置にあり、また、心臓に対して重力のかかる方向に位置している。従って、(又は、そのために)脚から心臓に至る血流は悪くなる。また脚のむくみは、たとえば、長時間同じ体勢をとることにより、体内の水分や血液の循環が悪化し停滞することを原因として発生する。そのため脚のむくみは、日常生活を送るうえで、避けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-002962号広報
【特許文献2】特開2017-086975号広報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】山田健二、須藤明治、“足把持トレーニング動作における足関節周囲筋の筋活動” 理学療法科学、一般社団法人理学療法科学学会、2018年、33巻6号、p.905-909
【0005】
脚のむくみを抑制する従来技術として、足の裏に集中する反射区(いわゆるツボ)に刺激を与えて、各内臓器官や血流を活性化させる、反射療法が知られている。例えば、特許文献1に示されるように、靴・サンダル・スリッパ等に使用して、湧泉のツボ効果で足のむくみを取る中敷が提案されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1は、立位姿勢で体重が足の裏にかかることを想定している。そのため、現代の労働環境における、就業時間の大半を座った状態でパソコン等の操作に費やす職種等では、反射区刺激用の突起を備えた履物の効果を、充分に発揮することができないという問題があった。
【0007】
ここでタオルギャザー運動について説明する。タオルギャザー運動とは足指運動のひとつである。運動者の足の下にタオルを敷き、足の指を握り開きしてタオルを手繰り寄せる動きを示す。非特許文献1において、母指外転筋、短指屈筋といった足指を握り込むために必要な筋肉の増強に効果があることが認められている。足関節周囲筋の筋活動を賦活できることから、タオルギャザー運動は、足把持に有効なトレーニングの一つである可能性が示唆されている。
【0008】
例えば特許文献2では、日常生活の中で、このタオルギャザー運動と同様の効果を得るための発明が出願されている。段落0012にて、「タオルギャザー(足底筋強化トレーニング)と同じ効果を期待することができ、日常に履くだけで土踏まずをつくり出す。これにより、幼児・児童の偏平足改善予防、老化による足底筋低下を防ぎ、腰痛予防の効果を期待できる。」として、タオルギャザー運動と同じ効果を得られる、足底矯正を目的とした中敷構造が示されている。
【0009】
しかしながら、特許文献2に示される構造は、発明を実施するための形態として突起2を2.0~2.5cm程度の高さとし、段落0025にて「5本指で靴底をつかみ、踏ん張る形を実現している」としている。この状態を保つことは、日常生活において足底に強い違和感を覚えて、長時間の使用に適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明では、履物の中敷の構造に関し、前記従来の課題を解決するもので、日常生活の中で、脚のむくみ抑制につながる効果を得る、タオルギャザー運動と同様の効果を得る運動を、少ない負担で継続的に促すことができる、履物の中敷を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
すなわち、請求項1においては、母指の基節骨対応部分と末節骨対応部分にあたる範囲に、中敷の内縁部から外縁部へ下っていく方向で、中敷の爪先側先端から踵側先端を結ぶ直線に対し55°から90°の角度に伸びる直線状、波線状、またはジグザグ線状である突起を複数具備してなることを特徴とする履物の中敷である。
【0013】
すなわち、請求項2においては、第二指乃至第五指のいずれか一つまたは複数の指の基節骨対応部分と中節骨対応部分と末節骨対応部分にあたる範囲に、中敷の内縁部から外縁部へ下っていく方向で、中敷の爪先側先端から踵側先端を結ぶ直線に対し55°から90°の角度に伸びる直線状、波線状、またはジグザグ線状である突起を複数具備してなることを特徴とする請求項1に記載の履物の中敷である。
【0014】
すなわち、請求項3においては、前記突起は、中敷平面部から頂点の高さが0.5~4.0mmである請求項1又は請求項2に記載の履物の中敷である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の中敷の構造によれば、いわゆるタオルギャザー運動と表現される足指運動を促し、血流が活性化することによって脚のむくみの抑制効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施例に係る中敷の平面図である。
【
図4】(a)(b)は、本発明の他の実施例の爪先部分である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、発明を実施するための形態を説明する。
【0018】
図1は、本実施例における中敷10を示している。中敷10は足底が接する平面部11と、母指の基節骨と末節骨、第二指の基節骨と中節骨と末節骨、第三指基節骨と中節骨と末節骨に対応する位置にある複数の突起20を含む。直線30は中敷10の爪先側先端から踵側先端を結ぶ直線である。角度31は突起20と直線30により成る角度である。
突起20は、
図1のように中敷10の内縁部から外縁部へ下っていく方向に伸びる直線状凸構造体である。突起20は、母指が向く方向と直角に交差してタオルギャザー運動の際に足指のかかりとなるよう設定しており、直線30に対し角度31を成す。角度31は55°~90°、好ましくは65°~80°、さらに好ましくは70°~75°とする。突起20は本実施例では平面部11と同じ素材としているが、必要に応じて平面部11とは異なる素材を選択してもよい。
【0019】
図2は、中敷10の断面である。この断面は平面部11と突起20を含んでいる
図1のA-A矢視断面である。
【0020】
図3は
図2の突起20を拡大した状態を示している。高さ40は平面部11の面を基準とした突起20の頂点までの高さである。
【0021】
本実施例では母指が突起20と接して刺激をうけることで、反射的に突起20を引き寄せるタオルギャザー運動が誘発される。このとき突起20は、タオルギャザー運動の足掛かりとして、母指に抵抗を与える役割を持つ。この足指運動は血液の循環を促し、使用者の脚のむくみを抑制する効果を発揮する。
【0022】
この時突起高さ21は、足指運動に対して足掛かりとなると同時に、履物内部の空間において、タオルギャザー運動の足指を曲げる動作を阻害しない高さ、また接触時に違和感を覚えない高さである0.5~4.0mmにて設けられ、好ましくは1.5~3.0mm、さらに好ましくは2.0~2.5mmとする。
【0023】
本実施例では、突起20を母指の基節骨と末節骨、第二指の基節骨と中節骨と末節骨、第三指基節骨と中節骨と末節骨に対応する位置に配置している。これは、母指を曲げると他の指も連動して曲がる性質から、母指と母指に近い第二指と第三指に対応した位置に突起20を配置したものである。また本発明には、事故等の理由によって特定の足指を動かすことが困難な使用者でも、タオルギャザー運動効果により、足のむくみを抑制できるようにするために、第二指乃至第五指のいずれか一つまたは複数の指の基節骨と中節骨と末節骨に対応する、必要な位置に突起20を配置した中敷も含まれる。
【0024】
図4(a)(b)は、本発明の他の実施例の爪先部分である。
図4(a)は波線状突起21を含む。突起21は中敷10の内縁部から外縁部へ下っていく方向に伸びる波線状凸構造体である。直線32は突起21が伸びる方向を示す直線である。角度33は直線30と直線32が成す角度である。
図4(b)はジグザグ線状突起22を含む。突起22は中敷10の内縁部から外縁部へ下っていく方向に伸びるジグザグ線状凸構造体である。直線34は突起22が伸びる方向を示す直線である。角度35は直線30と直線34が成す角度である。
角度33と角度35はともに55°~90°、好ましくは65°~80°、さらに好ましくは70°~75°とする。
【0025】
以上、本発明の実施例について説明を行ったが、本発明は以上の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ると理解されるべきである。例えば履物の中敷平面部11に、反射区刺激用の突起が存在してもよい。また平面部11は、中敷が足底の形状(いわゆる土踏まず等の凹凸)に適合するために一般的に備えられる凹凸が存在してもよい。
【符号の説明】
【0026】
10 中敷
11 足底が接する平面部
20 直線状の突起
21 波線状の突起
22 ジグザグ線状の突起
30 中敷の爪先側先端から踵側先端を結ぶ直線
31 突起20と直線30が成す角度
32 突起21がのびる方向を示す直線
33 直線30と直線32が成す角度
34 突起22がのびる方向を示す直線
35 直線30と直線34が成す角度
40 突起の高さ