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特開2023-56145媒体取扱装置、媒体取扱プログラム及び媒体認識用基準情報作成システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056145
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】媒体取扱装置、媒体取扱プログラム及び媒体認識用基準情報作成システム
(51)【国際特許分類】
   G07D 7/00 20160101AFI20230412BHJP
【FI】
G07D7/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165294
(22)【出願日】2021-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】小堀 英樹
(72)【発明者】
【氏名】高田 敦
【テーマコード(参考)】
3E041
【Fターム(参考)】
3E041AA01
3E041AA02
3E041AA05
3E041CB08
3E041CB09
(57)【要約】
【課題】媒体を認識するための媒体認識用基準情報を迅速に作成でき、評価された媒体認識用基準情報を短期間で簡単に使用できるようにする。
【解決手段】本発明の媒体取扱装置は、1又は複数の媒体認識用基準情報を記憶する記憶手段と、媒体認識用基準情報を用いて、対象とする媒体の状態を認識する認識手段と、新規の媒体認識用基準情報と当該新規の媒体認識用基準情報に対応する証明情報とが記憶手段に保存されると、新規の媒体認識用基準情報の使用を有効又は無効に設定する設定手段とを備え、認識手段は、設定手段が有効とするときに、対応する新規の媒体認識用基準情報を用いて、媒体の状態を認識することを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の媒体認識用基準情報を記憶する記憶手段と、
前記媒体認識用基準情報を用いて、対象とする媒体の状態を認識する認識手段と、
新規の媒体認識用基準情報と当該新規の媒体認識用基準情報に対応する証明情報とが前記記憶手段に保存されると、前記新規の媒体認識用基準情報の使用を有効又は無効に設定する設定手段と
を備え、
前記認識手段は、前記設定手段が有効とするときに、対応する前記新規の媒体認識用基準情報を用いて、前記媒体の状態を認識する
ことを特徴とする媒体取扱装置。
【請求項2】
1又は複数の媒体認識用基準情報を記憶する記憶手段と、
前記媒体認識用基準情報を用いて、対象とする媒体の状態を認識する認識手段と、
新規の媒体認識用基準情報が前記記憶手段に保存されると、前記新規の媒体認識用基準情報の使用を有効又は無効に設定する設定手段と
を備え、
前記認識手段は、前記設定手段が有効とするときに、対応する前記新規の媒体認識用基準情報を用いて、前記媒体の状態を認識する
ことを特徴とする媒体取扱装置。
【請求項3】
前記設定手段が、前記新規の媒体認識用基準情報の使用を有効にするか否かを示す新規基準情報用フラグを設定するものであり、
前記認識手段が、前記新規基準情報用フラグが有効に設定されているとき、対応する前記新規の媒体認識用基準情報を用いた認識処理を行なう
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の媒体取扱装置。
【請求項4】
1又は複数の媒体認識用基準情報を記憶する記憶手段を備えるコンピュータを、
前記媒体認識用基準情報を用いて、対象とする媒体の状態を認識する認識手段と、
新規の媒体認識用基準情報と当該新規の媒体認識用基準情報に対応する証明情報とが前記記憶手段に保存されると、前記新規の媒体認識用基準情報の使用を有効又は無効に設定する設定手段と
して機能させ、
前記認識手段は、前記設定手段が有効とするときに、対応する前記新規の媒体認識用基準情報を用いて、前記媒体の状態を認識する
ことを特徴とする媒体取扱プログラム。
【請求項5】
1又は複数の媒体認識用基準情報を記憶する記憶手段を備えるコンピュータを、
前記媒体認識用基準情報を用いて、対象とする媒体の状態を認識する認識手段と、
新規の媒体認識用基準情報が前記記憶手段に保存されると、前記新規の媒体認識用基準情報の使用を有効又は無効に設定する設定手段と
して機能させ、
前記認識手段は、前記設定手段が有効とするときに、対応する前記新規の媒体認識用基準情報を用いて、前記媒体の状態を認識する
ことを特徴とする媒体取扱プログラム。
【請求項6】
第1の媒体取扱装置と基準情報生成装置とを有する第1のシステムと、
前記第1のシステムとは別に、第2の媒体取扱装置と証明装置とを有する第2のシステムとを備え、
前記第1のシステムの基準情報生成装置が、投入された媒体の特徴情報を検知して、前記媒体に対する媒体認識用基準情報を生成するものであり、
前記第2のシステムの前記第2の媒体取扱装置が、前記基準情報生成装置により生成された前記媒体認識用基準情報及び前記媒体の特徴情報とを用いて、前記媒体認識用基準情報の品質を評価するものであり、
前記第2のシステムの前記証明装置が、前記第2の媒体取扱装置により評価された前記媒体認識用基準情報に対応する証明情報を生成するものであり、
前記第1のシステムの前記第1の媒体取扱装置が、
1又は複数の媒体認識用基準情報を記憶する記憶手段と、
前記媒体認識用基準情報を用いて、対象とする媒体の状態を認識する認識手段と、
前記第2の媒体取扱装置により評価された新規の媒体認識用基準情報と当該新規の媒体認識用基準情報に対応する証明情報とが前記記憶手段に保存されると、前記新規の媒体認識用基準情報の使用を有効又は無効に設定する設定手段と
を備え、
前記認識手段は、前記設定手段が有効とするときに、対応する前記新規の媒体認識用基準情報を用いて、前記媒体の状態を認識する
ことを特徴とする媒体認識用基準情報作成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体取扱装置、媒体取扱プログラム及び媒体認識用基準情報作成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、紙幣処理装置の認識鑑別システムは、紙幣状態を鑑別するためのマスターテンプレート(以下、「媒体認識用基準情報」とも呼ぶ。)を用いて、判別対象とする紙幣の券種判別、汚損判別、破損判別等を行なう。
【0003】
一般に、各国の紙幣に対応したマスターテンプレートの作成は装置ベンダが行なっている。依頼を受けた装置ベンダは、マスターテンプレートを開発・改良をかさねて、評価を得たマスターテンプレートを現地代理店等のパートナー側に提供する。パートナーは、顧客に対して、マスターテンプレートを搭載した認識鑑別システムを用いてデモンストレーション等を行なう。
【0004】
また、特許文献1にはマスターテンプレートの更新を容易にする技術が開示されている。特許文献1の記載技術は、紙幣処理装置が、センサーで紙幣の特性情報を検知して、その特性情報をホストコンピュータに送信する。ホストコンピュータは、特性情報を用いてマスターテンプレートを格納する。そして、必要がある場合には、ホストコンピュータに格納されているマスターテンプレートを更新するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-76244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のように、マスターテンプレート自体の作成は、装置ベンダによって開発・評価を行なう必要があり長時間が掛かってしまうので、マスターテンプレートがパートナー側に提供されるまでに時間が掛かっている。
【0007】
例えば、パートナーが新しいデザインの紙幣を取り扱うことができ、認識鑑別システムの動作を顧客にデモンストレーションして販売促進活動を行いたい場合も、装置ベンダの開発・評価が終わるまで、パートナーはマスターテンプレートを手に入れることができず、認識鑑別システムを動作させることができなかった。
【0008】
そこで、本発明は、上述した課題に鑑み、媒体を認識するための媒体認識用基準情報を迅速に作成でき、評価された媒体認識用基準情報を短期間で簡単に使用することができる媒体取扱装置、媒体取扱プログラム及び媒体認識用基準情報作成システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するために、第1の本発明の媒体取扱装置は、1又は複数の媒体認識用基準情報を記憶する記憶手段と、媒体認識用基準情報を用いて、対象とする媒体の状態を認識する認識手段と、新規の媒体認識用基準情報と当該新規の媒体認識用基準情報に対応する証明情報とが記憶手段に保存されると、新規の媒体認識用基準情報の使用を有効又は無効に設定する設定手段とを備え、認識手段は、設定手段が有効とするときに、対応する新規の媒体認識用基準情報を用いて、媒体の状態を認識することを特徴とする。
【0010】
第2の本発明の媒体取扱装置は、1又は複数の媒体認識用基準情報を記憶する記憶手段と、媒体認識用基準情報を用いて、対象とする媒体の状態を認識する認識手段と、新規の媒体認識用基準情報が記憶手段に保存されると、新規の媒体認識用基準情報の使用を有効又は無効に設定する設定手段とを備え、認識手段は、設定手段が有効とするときに、対応する新規の媒体認識用基準情報を用いて、前記媒体の状態を認識することを特徴とする。
【0011】
第3の本発明の媒体取扱プログラムは、1又は複数の媒体認識用基準情報を記憶する記憶手段を備えるコンピュータを、媒体認識用基準情報を用いて、対象とする媒体の状態を認識する認識手段と、新規の媒体認識用基準情報と当該新規の媒体認識用基準情報に対応する証明情報とが記憶手段に保存されると、新規の媒体認識用基準情報の使用を有効又は無効に設定する設定手段として機能させ、認識手段は、設定手段が有効とするときに、対応する新規の媒体認識用基準情報を用いて、媒体の状態を認識することを特徴とする。
【0012】
第4の本発明の媒体取扱プログラムは、1又は複数の媒体認識用基準情報を記憶する記憶手段を備えるコンピュータを、媒体認識用基準情報を用いて、対象とする媒体の状態を認識する認識手段と、新規の媒体認識用基準情報が記憶手段に保存されると、新規の媒体認識用基準情報の使用を有効又は無効に設定する設定手段として機能させ、認識手段は、設定手段が有効とするときに、対応する新規の媒体認識用基準情報を用いて、媒体の状態を認識することを特徴とする。
【0013】
第5の本発明の媒体認識用基準情報作成システムは、第1の媒体取扱装置と基準情報生成装置とを有する第1のシステムと、第1のシステムとは別に、第2の媒体取扱装置と証明装置とを有する第2のシステムとを備え、第1のシステムの基準情報生成装置が、投入された媒体の特徴情報を検知して、媒体に対する媒体認識用基準情報を生成するものであり、第2のシステムの第2の媒体取扱装置が、基準情報生成装置により生成された媒体認識用基準情報及び媒体の特徴情報とを用いて、媒体認識用基準情報の品質を評価するものであり、第2のシステムの証明装置が、第2の媒体取扱装置により評価された媒体認識用基準情報に対応する証明情報を生成するものであり、第1のシステムの第1の媒体取扱装置が、1又は複数の媒体認識用基準情報を記憶する記憶手段と、媒体認識用基準情報を用いて、対象とする媒体の状態を認識する認識手段と、第2の媒体取扱装置により評価された新規の媒体認識用基準情報と当該新規の媒体認識用基準情報に対応する証明情報とが記憶手段に保存されると、新規の媒体認識用基準情報の使用を有効又は無効に設定する設定手段とを備え、認識手段は、設定手段が有効とするときに、対応する新規の媒体認識用基準情報を用いて、媒体の状態を認識することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、媒体を認識するための媒体認識用基準情報を迅速に作成でき、評価された媒体認識用基準情報を短期間で簡単に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係る鑑別処理システムの全体構成を示す全体構成図である。
図2】第1の実施形態の紙幣処理装置の内部構成を説明する内部構成図である。
図3】第1の実施形態に係る鑑別装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図4】第1の実施形態に係る鑑別処理システムの全体処理を説明する。
図5】第1の実施形態に係る紙幣処理装置における入金処理の動作を示すフローチャートである。
図6】第2の実施形態に係る鑑別処理システムの全体構成を示す全体構成図である。
図7】第2の実施形態に係る鑑別処理システムの全体処理を説明する。
図8】第2の実施形態に係る現金処理装置における入金処理の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(A)第1の実施形態
以下では、本発明に係る媒体取扱装置、媒体取扱プログラム及び媒体認識用基準情報作成システムの第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0017】
第1の実施形態は、本発明の媒体取扱装置を、金融機関等により利用される自動現金処理装置(ATM)等の紙幣処理装置に適用する場合を例示する。
【0018】
「媒体」は、金銭的な価値のある紙媒体であり、例えば、紙幣、商品券、有価証券等を含む概念である。
【0019】
(A-1)第1の実施形態の構成
(A-1-1)全体構成
図1は、実施形態に係る鑑別処理システムの全体構成を示す全体構成図である。
【0020】
図1において、実施形態に係る鑑別処理システム100は、大別して、パートナーとしての現地代理店側システム91と、紙幣処理装置10(10A,10B)の装置ベンダ側システム92とを有する。
【0021】
新たな紙幣の鑑別に用いられるマスターテンプレートを「マスターテンプレートT」と表記する。また鑑別装置12に当初から存在しているマスターテンプレート又は新規マスターテンプレートTのインストール前に存在しているマスターテンプレートを「マスターテンプレートTA」と表記する。
【0022】
この実施形態では、説明を容易にするため、装置ベンダは第1国で紙幣処理装置10を製造する。また、現地代理店は、第2国(第1国とは異なる国)で、装置ベンダの紙幣処理装置10を販売するものとする。なお、実施形態の鑑別処理システム100は、装置ベンダの所在国と代理店の販売国とが同じ国であってもよい。
【0023】
この実施形態は以下のような利用形態を例示する。第2国で、新しいデザインの新規紙幣(新紙幣)を取り扱うことが可能となった現地代理店側がマスターテンプレートTを作成する。第1国で、装置ベンダ側は、現地代理店が作成したマスターテンプレートTの品質(信頼性)を検証する。その結果、装置ベンダ側が品質を保証する場合、装置ベンダ側はマスターテンプレートTに対応する証明書PRを発行し、装置ベンダ側は紙幣処理装置10Aへのインストールを可能とする。現地代理店側は上記証明書PRを紙幣処理装置10Aにインストールして、紙幣処理装置10Aは、新規のマスターテンプレートTを用いた新紙幣の鑑別処理をデモンストレーションする。
【0024】
なお、利用形態は、この実施形態の例に限定されない。マスターテンプレートTの作成と新紙幣を取扱可能となってからテスト開始までの時期を従来よりも早めることができるのであれば、様々な利用形態に適用できる。
【0025】
さらに、マスターテンプレートTに関連付けられた証明書PRの存在が確認された場合、マスターテンプレートTを用いた高精度な鑑別処理を可能としてもよいし、鑑別速度や搬送速度等を高速化した鑑別処理を可能としてもよい。
【0026】
装置ベンダは、第2国の紙幣対応の紙幣処理装置10(10A,10B)を開発・製造・販売する供給メーカである。装置ベンダは、紙幣処理装置10に搭載する鑑別装置12のマスターテンプレートTを開発・改良し、更にマスターテンプレートTの品質を評価する。
【0027】
ここで、マスターテンプレートTは、鑑別装置12を通過する紙幣の状態を鑑別するための基準情報(例えば、基準値、基準画像、基準データ等)である。鑑別装置12で実施する鑑別種類は様々なものがある。ここでは、鑑別種類は、デモンストレーション等で紙幣処理装置10の動きを顧客に見せることができる鑑別種類を想定する。例えば、鑑別種類は、券種判別、汚損判別、破損判別等とし、マスターテンプレートTは、券種判別、汚損判別、破損判別等に用いられるものとする。勿論、汚損判別、破損判別は、損券判別の一種であり、他の損券判別の種類に対応可能なマスターテンプレートTを適用してもよい。なお、マスターテンプレートTは、例えば、デモンストレーションの用途等に応じて、当初は券種判別だけを目的としたテンプレートでもよく、その後、必要に応じて、汚損判別などの目的としたテンプレートを追加しても良い。
【0028】
例えば、券種判別のマスターテンプレートTは、カメラ画像において、紙幣種類ごとの特徴情報を含む画像(カメラ画像)とすることができる。券種判別のマスターテンプレートTは紙幣種類毎に必要となる。特徴情報は、例えば、紙幣に表される数字及び図柄、数字及び図柄の位置、大きさ、範囲等を含む情報とすることができる。また特殊加工がされている場合、特徴情報は、その特殊加工を確認する情報を含むようにしてもよい。
【0029】
例えば、汚損判別のマスターテンプレートTは、汚れている紙幣をリジェクトするため、カメラ画像における紙幣の汚れの程度に関する基準値である。例えば、汚損判別の基準値は、紙幣領域において、汚れと特定することができる領域の割合を示す値を用いる。これにより、紙幣領域における汚れの特定領域の割合が基準値以上であれば汚損と判定し、上記割合が基準値未満であれば汚損でないと判定できる。
【0030】
例えば、破損判別のマスターテンプレートTは、破損している紙幣をリジェクトするため、カメラ画像における、破れ、テープ貼付等の程度に関する基準値である。例えば、破損判別の基準値は、紙幣領域において、破損の長さ、破損の領域の割合を示す値を用いる。これにより、例えば、紙幣領域における破れの長さが基準値以上であれば破損と判定し、上記長さが基準値未満であれば破れでないと判定できる。
【0031】
なお、マスターテンプレートTは、上述した例に限定されず、例えば、真贋判別、スウェイ判別(傾いて搬送される紙幣を検知する)、重送判別等に用いられるものを含むようにしてもよい。
【0032】
[現地代理店側システム91]
現地代理店側システム91は、鑑別装置12を搭載した紙幣処理装置10Aと、テンプレート自動生成装置40とを備える。
【0033】
テンプレート自動生成装置40は、現地代理店におけるオペレータの操作により、第2国の紙幣の投入を受け付け、各紙幣の状態を検知して、各紙幣状態を示す情報を記憶部41に記憶する。そして、テンプレート自動生成装置40は、記憶している各紙幣状態を示す情報に基づいて、マスターテンプレートTを生成する。テンプレート自動生成装置40は、マスターテンプレートTの種類に応じて、金種別のマスターテンプレートTを金種毎に生成する。
【0034】
例えば、テンプレート自動生成装置40は、紙幣入出金部、鑑別部、搬送路等を備える専用デバイスであってもよいし、テンプレート自動生成プログラム(アプリケーションソフトウェアプログラム)であってもよい。テンプレート自動生成装置40がテンプレート自動生成プログラムである場合、例えば、既存の紙幣処理装置10又は鑑別装置12にソフトウェアをインストールして、既存のハードウェアを利用してマスターテンプレートTを作成できる。
【0035】
テンプレート自動生成装置40は、既存の種々の装置又は既存アプリケーションソフトウェアプログラムを広く適用してよい。例えば、テンプレート自動生成装置40は、大量の紙幣状態を示す情報を用いて、統計的な解析処理を行なうようにしてもよい。また例えば、テンプレート自動生成装置40は、多数の紙幣の投入を行ない、大量の紙幣状態を示す情報を機械学習していきマスターテンプレートTを生成するものでもよい。機械学習アルゴリズムは、特に限定されず、例えば、ニューラルネットワーク等を用いることができる。
【0036】
ここで、マスターテンプレートTは、新紙幣の偽造等を回避するため、高いセキュリティ環境で装置ベンダ側に送信される。また、マスターテンプレートTの作成に利用された紙幣状態を示す情報も、マスターテンプレートTの評価に利用できるようにするため、装置ベンダ側に送信される。高いセキュリティ環境であれば、様々な方法を適用できるが、例えば、セキュリティの高い通信プロトコルで暗号化処理等を施されて装置ベンダ側に送信される。なお、テンプレート自動生成装置40に通信インタフェースが搭載されている場合には、その通信インタフェースが、マスターテンプレートT及び紙幣状態を示す情報を装置ベンダ側に送信する。また例えば、通信機能を備えるパーソナルコンピュータ等の端末が装置ベンダ側に送信するようにしてもよい。
【0037】
紙幣処理装置10Aは、現地代理店側が顧客に対して販売しようとするものである。つまり、紙幣処理装置10Aは、装置ベンダ側が開発、製造したものである。紙幣処理装置10Aは、装置ベンダ側の紙幣処理装置10Bと基本的には同じものである。
【0038】
紙幣処理装置10Aは、装置ベンダ側から取得した証明書PRをインストール可能である。紙幣処理装置10Aは、証明書PRの存在を確認した場合、マスターテンプレートTを用いた有効な鑑別処理を行なうことができ、証明書PRの存在を確認しない場合、マスターテンプレートTを用いた有効な鑑別処理を行なうことができない。なお、証明書PRの有無に応じた紙幣処理装置10Aの処理の詳細な説明は、動作の項で詳細に行なう。
【0039】
[装置ベンダ側システム92]
装置ベンダ側システム92は、鑑別装置12を搭載した紙幣処理装置10Bと、情報処理端末20とを有する。
【0040】
紙幣処理装置10Bは、装置ベンダ側がマスターテンプレートTを開発、改良、評価するためのものである。紙幣処理装置10Bは、基本的には、現地代理店側の紙幣処理装置10Aと同じものである。紙幣処理装置10Bは、現地代理店側で生成されたマスターテンプレートTを鑑別装置12が利用可能となるようにインストールして、鑑別装置12が現地代理店側からの取得した紙幣状態を示す情報を用いて鑑別処理を行なう。鑑別結果は、装置ベンダ側により評価される。
【0041】
紙幣処理装置10Bは、装置ベンダ側の操作により、マスターテンプレートTの値を修正することができる。紙幣処理装置10Bは、修正後のマスターテンプレートTを用いて鑑別処理を繰り返し行なう。
【0042】
情報処理端末20は、例えばパーソナルコンピュータ等の情報処理装置である。情報処理端末20は、テンプレートデータベース21に、装置ベンダ側によって品質が評価されたマスターテンプレートTを記憶する。情報処理端末20は、マスターテンプレートTに対応する証明書PRを発行するものである。
【0043】
ここで、マスターテンプレートTに対応する証明書PRは、高いセキュリティ環境で、現地代理店側に送信される。例えば、情報処理端末20の通信インターフェースが、セキュリティの高い通信プロトコルで暗号化処理等を施して、マスターテンプレートTに対応する証明書PRを装置ベンダ側に送信する。
【0044】
(A-1-2)紙幣処理装置10の構成
図2は、実施形態の紙幣処理装置10の内部構成を説明する内部構成図である。
【0045】
図2において、紙幣処理装置10は、紙幣入出金部11、搬送部14上を通過する紙幣の状態を判別する鑑別装置12、紙幣を一時的に収納する一時保留部13、紙幣を各部に搬送する搬送部14、紙幣を収納する複数の紙幣収納庫15a~15dを有する。
【0046】
なお、紙幣処理装置10は、図示しない、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリなどの記憶部とを備える。CPUがROMに格納される処理プログラムを読み出して実行することにより、入金取引や出金取引等の各種取引処理等を行なう。また、紙幣処理装置10は、図示しない、表示部や操作部を備え、CPUは、例えば、動作状態を示す画面や、確認結果の画面、鑑別結果などを表示部に表示する。
【0047】
搬送部14は、紙幣処理装置10の各構成要素の間で紙幣を搬送する部分であり、紙幣搬送に必要な複数の搬送ローラを有する。例えば、搬送ローラは搬送部14の搬送路を挟んで互いに対向するように配置されており、回転することにより紙幣に駆動力を伝達する。搬送部14は、分岐点に切替ブレードが配置されており、その切替ブレードが紙幣の搬送先を切り替える構成になっている。また、搬送部14は、適宜、間隔を空けてセンサが配置されており、センサが紙幣の搬送状態を感知する。
【0048】
紙幣入出金部11は、投入された紙幣を受け付けたり、又顧客に対して出金する紙幣を集積したりする機構部である。紙幣入出金部11は、投入された紙幣を1枚ずつ分離して搬送部14に繰り出す分離手段(例えば、分離ローラ機構)111及び112を有する。
【0049】
一時保留部13は、搬送部14を介して一時的に紙幣を集積して、紙幣を保留する部分である。一時保留部13の構造は、様々な構造を適用できるが、例えば、紙幣をテープと共にドラムに巻き付けて収納するテープ方式を適用できる。
【0050】
紙幣収納庫15a~15dは、金種毎に紙幣を収納する媒体収納庫である。例えば、紙幣収納庫15a~15dは、例えば分離ローラなどの分離手段16及び17を備え、入金時に、入金された紙幣を収納し、その後出金時に、収納されている紙幣を出金する還流型リサイクル用カセットである。なお、紙幣収納庫15a~15dの個数は特に限定されず、紙幣収納庫15a~15dの用途も、運用に応じて適宜定めることができる。
【0051】
鑑別装置12は、搬送部14により搬送される紙幣の鑑別や計数処理や記番号識別処理等を行う。鑑別装置12は、例えば、光学センサや磁気センサ等のセンサ群を有しており、通過する紙幣状態を認識し、正損判定(汚損券、破損券、損壊券、外形異常券、折れ券等、又は正券の判定)、金種判定、計数処理等を行う。また、鑑別装置12は、紙幣の真偽判定(真券、偽造券等の判定)を行なうようにしてもよい。
【0052】
図3は、実施形態に係る鑑別装置12の制御系の構成を示すブロック図である。
【0053】
図3において、鑑別装置12は、制御部121、記憶部122、紙幣検知部123、センサ群124を有する。
【0054】
制御部121は、鑑別装置12の処理を司るものである。
【0055】
記憶部122は、事前に設けられたマスターテンプレートTA、新たなマスターテンプレートT、鑑別に関する処理プログラム、鑑別に必要なデータ、鑑別した結果などを記憶する。
【0056】
紙幣検知部123は、搬送部14上を搬送する紙幣を検知し、紙幣を検知したとき、紙幣を検知したことを制御部121に通知する。例えば、紙幣検知部123は、搬送部14を挟んで設置された送光器及び受光器を有する光学センサを適用する。受光器が、送光器からの可視光を受光したとき、紙幣を検知していない旨のON信号を制御部121に通知する。紙幣が搬送部14を通過し、受光器が送光器からの可視光を受光できなくなったとき、受光器は、紙幣を検知した旨を示すOFF信号を制御部121に通知する。なお、紙幣検知部123は、上述した例に限定されず、他の検知方法を適用できる。
【0057】
センサ群124は、通過する紙幣の状態を検知するためのセンサ群である。センサ群は、紙幣鑑別のために、1種類のセンサだけでなく、複数種類のセンサを備える。センサ群は、例えば、搬送路を挟んで上方及び下方に設置された送光器及び受信器等の光学センサ、磁気センサ、CCDカメラ等のカメラなどを有する。
【0058】
(A-2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態に係る鑑別処理システム100における処理を、図面を参照しながら説明する。
【0059】
図4は、第1の実施形態に係る鑑別処理システム100の全体処理を説明する。
【0060】
[S101:マスターテンプレートTの作成]
まず、現地代理店側システム91において、テンプレート自動生成装置40により、第2国の紙幣Pの鑑別に用いられるマスターテンプレートTが作成される。
【0061】
現地代理店側がマスターテンプレートTの追加を希望する紙幣(第2国の紙幣)Pがあるとする。現地代理店側は紙幣Pを手に入れて、現地代理店側は紙幣Pを取り扱い可能であるとする。
【0062】
現地代理店側システム91において、現地代理店側のオペレータにより、紙幣Pがテンプレート自動生成装置40に投入される。テンプレート自動生成装置40は、投入された紙幣Pの状態を検知し、紙幣状態を示す情報を記憶部41に記憶する。このとき、生成するマスターテンプレートTの精度を向上させるため、多数の紙幣Pがテンプレート自動生成装置40に投入され、大量の紙幣Pの紙幣状態を示す情報が記憶部41に保持される。
【0063】
テンプレート自動生成装置40は、記憶部41に記憶されている紙幣状態を示す情報を用いて、紙幣PのマスターテンプレートTを生成する。
【0064】
なお、テンプレートの生成方法は、既存の方法を広く適用できるので、ここでの詳細な説明は省略するが、一例をあげる。
【0065】
例えば、汚損判別のマスターテンプレートTを生成する場合、汚れの程度が異なる多数の紙幣Pの画像情報が記憶部41に記憶される。紙幣Pには、リジェクトすべき紙幣と、リジェクトされない紙幣とが事前に決められているものとする。テンプレート自動生成装置40は、紙幣Pの画像情報に基づいて汚れの領域を検知する。テンプレート自動生成装置40は、紙幣領域における汚れの領域の割合を示す汚れ領域割合値を紙幣毎に求め、更にリジェクトすべき紙幣か否かを示す情報(例えばフラグ)を、紙幣毎の汚れ領域割合値に対応付ける。そして、テンプレート自動生成装置40は、上述した大量の汚れ領域割合値を用いて統計的処理を行なう。例えば、テンプレート自動生成装置40は、リジェクト紙幣の汚れ領域割合値を正規化して得た値を求め、これをマスターテンプレートTの基準値とする。上述したマスターテンプレートTの生成方法は、限定されず、他の方法を適用できる。また、鑑別する種類に応じて、適切な方法を用いてもよい。
【0066】
テンプレート自動生成装置40により生成されたマスターテンプレートTは、高いセキュリティ処理が施されて装置ベンダ側システム92に送信される。
【0067】
ここで、マスターテンプレートTの品質を確認するため、紙幣処理装置10Aの鑑別装置12がマスターテンプレートTを利用可能となるように、マスターテンプレートTを紙幣処理装置10Aにインストールして、マスターテンプレートTの品質テストをしてもよい。つまり、リジェクト紙幣又は正常な紙幣と認識されている、多数の紙幣Pを紙幣処理装置10Aに投入して、マスターテンプレートTを用いて鑑別装置12が逐次鑑別し、鑑別結果が正当であるか否かを確認する。鑑別の結果、マスターテンプレートTの品質がある程度良好であるとするとき、マスターテンプレートTを装置ベンダ側に送信してもよい。
【0068】
[S102:マスターテンプレートTの評価]
装置ベンダ側システム92では、現地代理店側で生成されたマスターテンプレートTを評価するため、当該マスターテンプレートTが紙幣処理装置10Bにインストールされる。
【0069】
さらに、上述のマスターテンプレートTの生成に利用した紙幣状態を示す情報も、紙幣処理装置10Bに読み取り可能に記憶部122に記憶される。
【0070】
そして、紙幣処理装置10Bでは、紙幣状態を示す情報が、順次、鑑別装置12に投入され、鑑別装置12がマスターテンプレートTを用いて鑑別処理を行ない、その鑑別結果が記憶部122に記憶される。
【0071】
装置ベンダ側のオペレータは、マスターテンプレートTを用いた鑑別装置12の鑑別結果と、利用した紙幣状態を示す情報とを比較しながら、マスターテンプレートTの品質を評価する。
【0072】
品質が評価された場合、すなわちマスターテンプレートTが合格品である場合、そのマスターテンプレートTは、テンプレートデータベース21に保存される。
【0073】
他方、品質が評価されず、マスターテンプレートTが不合格品と判断された場合、マスターテンプレートTを改良するため、紙幣処理装置10Bにより、閾値とする基準値が修正される。そして、再度、紙幣状態を示す情報が鑑別装置12に投入されて、鑑別装置12が、修正されたマスターテンプレートTを用いて鑑別処理を行なう。
【0074】
このようなマスターテンプレートTの改良が行なわれて、品質が評価されると、改良後のマスターテンプレートTが、テンプレートデータベース21に保存される。
【0075】
他方、マスターテンプレートTの改良が行なわれても、品質を評価できない場合、マスターテンプレートTと、改良したものとは廃棄される。
【0076】
[S103:証明書PRの発行]
装置ベンダ側システム92では、情報処理端末20により、テンプレートデータベース21に保存されたマスターテンプレートTに対応する証明書PRが発行される。
【0077】
証明書PRは、マスターテンプレートTの品質を保証するための情報である。証明書PRは、マスターテンプレートTに対応するものである。例えば、証明書PRは、紙幣Pの国名、テンプレートの発行年別シリーズ番号、券種などで、マスターテンプレートTを特定するファイル情報とすることができる。また別の変形例として、例えば、証明書PRは、マスターテンプレートTを使用可能とするため、公開鍵方式等の暗号化方式で暗号化したものであってもよい。
【0078】
情報処理端末20は、マスターテンプレートTに対応する証明書PRを発行した後、証明書PRを含む情報を現地代理店側に送信する。
【0079】
マスターテンプレートTが改良されたものであるとき、改良後のマスターテンプレートTを証明書PRと一緒のファイルに含めて、現地代理店側に送信してもよい。また、証明書PRを含む情報の通知方法は特に限定されず、セキュリティが確保された方法であれば、様々な方法を広く適用できる。
【0080】
[S104:マスターテンプレートTを用いた取引処理]
紙幣処理装置10Aでは、証明書PRがインストールされ、取引処理を行なう際に、鑑別装置12の制御部121は証明書PRがあるか否かを確認して鑑別処理を行なう。
【0081】
そして、証明書PRがあることを確認した場合には、制御部121は新規のマスターテンプレートTがインストールされた装置として動作する。例えば、現地代理店又は顧客が認証費用を装置ベンダに支払うことで、現地代理店又は顧客は装置ベンダの保守サポートなどの保証をうけることができる。
【0082】
他方、証明書PRがないとを確認した場合には、制御部121は新規のマスターテンプレートTがインストールされていない状態の装置として動作する。例えば、デモンストレーション等の基本的な簡易動作は可能だが、装置ベンタからの保証はなく、不具合時のサポートも受けることはできない。
【0083】
以下では、図5を用いて、紙幣処理装置10Aにおいて入金取引を行なうときに証明書PRを確認して、マスターテンプレートTを用いた鑑別処理を行なう動作例を説明する。
【0084】
図5は、第1の実施形態に係る紙幣処理装置10Aにおける入金処理の動作を示すフローチャートである。
【0085】
なお、ここでは、入金処理を行なう場合に鑑別装置12がマスターテンプレートTを用いた鑑別処理を行なうときを例示するが、取引処理はこれに限らず、出金処理、振込処理等にも適用できる。
【0086】
上述したように、装置ベンダ側システム92では、新規のマスターテンプレートTの品質が評価されて合格となったとき、情報処理端末20が、当該マスターテンプレートTに対応する証明書PRを発行する。
【0087】
証明書PRのファイルは、紙幣処理装置10Aのハードディスク(この例では、記憶部122)に保存される。
【0088】
例えば、紙幣Pの流通前又は流通後なるべく早い段階に、現地代理店側が顧客に対して紙幣処理装置10Aのデモンストレーションを行なう場合、現地大点側が、紙幣処理に関するアプリケーション(以下、「装置アプリケーション」とも呼ぶ。)をダウンロードして紙幣処理装置10Aにインストールするときに、証明書PRのファイルも同時にインストールする。また例えば、紙幣処理装置10Aを販売するときには製品出荷時に証明書PRのファイルを紙幣処理装置10Aにインストールする。
【0089】
図5において、紙幣処理装置10Aの装置起動後、装置アプリケーションが装置のファームウェアにアクセスして(S201)、装置アプリケーションは記憶部(ハードディスク)122に証明書PRのファイルが存在する否かを確認する(S202)。
【0090】
証明書PRのファイルがある場合、装置アプリケーションは、品質が証明された新規マスターテンプレートの使用を有効にすることを示す新規テンプレート用フラグを設定し(S203)、その後処理はS204に移行する。
【0091】
例えば、新規テンプレート用フラグは1ビット又は数ビットの情報で表わすことができ、新規テンプレート用フラグを「1」とする場合、新規のマスターテンプレートTの使用を有効にすることを意味する。他方、新規テンプレート用フラグが「0」の場合、新規のマスターテンプレートTの使用は無効であることを意味する。
【0092】
証明書PRのファイルがない場合、処理はS204に移行する。
【0093】
S204において、装置アプリケーションはアイドル状態とし、装置アプリケーションは紙幣処理装置10Aのディスプレイ等の表示部に顧客待ち受け画面を表示する(S204)。
【0094】
S205において、入金取引が開始すると(S205)、装置アプリケーションは、新規テンプレート用フラグが設定されているか否かを判別する(S206)。
【0095】
新規テンプレート用フラグが設定されている場合、鑑別装置12は、新規のマスターテンプレートTと既存マスターテンプレートTAとを使用して鑑別処理を行なう(S207)。他方、新規テンプレート用フラグが設定されていない場合、鑑別装置12は、既存マスターテンプレートTAを使用して鑑別処理を行なう(S208)。
【0096】
そして、入金取引が完了すると(S209)、処理はS204に移行してアイドル状態に戻る。
【0097】
以下に、変形例を説明する。図5の例では、証明書PRのファイルは、ハードディスク(記憶部122)に保存する場合を例示するが、装置アプリケーションと同時にBRM基板上の不揮発性メモリに保存するようにしてもよい。
【0098】
また、既存マスターテンプレートTAに対応する証明書PRのファイルについては図示していないが、既存マスターテンプレートTAに対する証明書PRを保存してもよい。つまり、紙幣処理装置10Aは、マスターテンプレート毎に、証明書PRとテンプレート用フラグとを1対1で設定できるようにしてもよい。そして、証明書PRとフラグとが設定されているときには、対応するマスターテンプレートを使用することができる。
【0099】
さらに、新規テンプレート用フラグに代えて、マスターテンプレートを使用可能とする暗号鍵(公開鍵)とすることもできる。
【0100】
(A-3)第1の実施形態の効果
以上のように、第1の実施形態によれば、新たに取り扱いたい外国紙幣などを投入し、新規テンプレートを自動生成することで、短期間でデモ動作が実施可能となる。
【0101】
現地代理店は新規テンプレートを装置ベンダに送り、装置ベンダが評価合格の証明書ファイルを発行し、現地代理店はその証明書ファイルを紙幣処理装置にインストールする。これにより、現地代理店の紙幣処理装置は装置ベンダの保証付きの装置となる。このようにすることで、新たに取り扱いたい、外国紙幣のデモ動作を早期に実施し、顧客への販促活動が可能となる。装置ベンダ側も証明書ファイルの有無で保証対象を明確にすることができる。
【0102】
(B)第2の実施形態
次に、本発明に係る媒体取扱装置、媒体取扱プログラム及び媒体認識用基準情報作成システムの第2の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0103】
第2の実施形態は、例えば小売店舗での売上金及び入出金処理を行なう現金処理装置に、本発明を適用する場合を例示する。
【0104】
(B-1)第2の実施形態の構成
例えば、ある地域で限定的に使用可能な商品券(クーポン券)が発行されることがある。また、商品券が使用可能な期間は様々であるが、場合によっては使用期間が限定されているものもある。商品券は短期間のうちに発行・配布されることがあり、小売店等の店舗では迅速な対応が要求される。
【0105】
他方、小売店舗等に設置されている現金処理装置の装置ベンダ側が、地域限定、期間限定の商品券に対応可能な現金処理機を短期間で提供することはコスト的にも作業的にも負担である。
【0106】
そこで、新しい商品券が発行された場合でも、小売店舗側などで迅速に対応することができる現金処理装置が求められている。
【0107】
図6は、第2の実施形態に係る鑑別処理システムの全体構成を示す全体構成図である。
【0108】
図6において、鑑別処理システム100Aは、店舗93におけるシステムであり、鑑別処理システム100Aは、鑑別装置12を搭載した現金処理装置10Cと、テンプレート自動生成装置50とを備える。
【0109】
テンプレート自動生成装置50は、商品券Qの投入を受け付けて、商品券Qの特徴情報を検知して、商品券Qの特徴情報を記憶部51に記憶する。そして、テンプレート自動生成装置50は、商品券Qの特徴情報に基づいて、マスターテンプレートTを生成する。
【0110】
例えば、テンプレート自動生成装置50は、専用デバイスであってもよいし、テンプレート自動生成プログラム(アプリケーションソフトウェアプログラム)であってもよい。後者の場合、例えば、現金処理装置10C又は鑑別装置12にソフトウェアをインストールすることで、現金処理装置10C又は鑑別装置12のハードウェアを利用してマスターテンプレートTを作成できる。
【0111】
なお、マスターテンプレートTの生成方法は、第1の実施形態と同様に、様々な方法を広く適用できる。例えば、テンプレート自動生成装置50は、商品券Qの特徴情報に基づいて、商品券Qの券種、図柄、使用期限、使用地域等の特徴情報を取得する方法を適用できる。また例えば、テンプレート自動生成装置50は、商品券Qの特徴情報を機械学習してマスターテンプレートTを生成するものでもよい。機械学習アルゴリズムは、特に限定されず、例えば、ニューラルネットワーク等を用いることができる。
【0112】
現金処理装置10Cは、店舗に設置され、店舗の売上金、入出金等の処理を行なう現金処理機である。現金処理装置10Cは、新しい商品券Qに対応するマスターテンプレートTを保存し、マスターテンプレートTを用いた商品券Qの認識処理を行なう。現金処理装置10Cは、マスターテンプレートTが保存されると、新規テンプレート用フラグを設定する。
【0113】
そして、現金処理装置10Cは、新規テンプレート用フラグが設定されているときには、マスターテンプレートTを使用して商品券Qの認識処理が可能となる。また、現金処理装置10Cは、新規テンプレート用フラグが設定されていないときには、商品券QのマスターテンプレートTを使用できない。
【0114】
(B-2)第2の実施形態の動作
図7は、第2の実施形態に係る鑑別処理システム100Aの全体処理を説明する。
【0115】
[S301:マスターテンプレートTの作成]
店舗93において、テンプレート自動生成装置50により、商品券Qの認識に用いられるマスターテンプレートTが作成される。
【0116】
新しい商品券Qが発行され、店舗側は商品券Qを取り扱い可能とする。店舗側は、商品券Qをテンプレート自動生成装置50に投入する。
【0117】
テンプレート自動生成装置50は、投入された商品券Qの状態を検知し、商品券Qの特徴情報を記憶部51に記憶する。テンプレート自動生成装置50は、記憶部51に記憶されている商品券Qの特徴情報を用いて、商品券QのマスターテンプレートTを生成する。
【0118】
[S302:マスターテンプレートTの利用]
店舗において、商品券Qのマスターテンプレートが生成されると、そのマスターテンプレートTが、現金処理装置10Cにインストールされ、鑑別装置12は、マスターテンプレートTを用いた商品券の認識処理が可能となる。
【0119】
ここで、商品券Qは、紙幣等のように高度なセキュリティが不要なので、装置ベンダはマスターテンプレートTの品質を保証する必要がない。従って、装置ベンダは、第1の実施形態のように証明書PRのファイルを発行せず、店舗側は独自の責任の元に商品券Qを取り扱う。
【0120】
図8は、第2の実施形態に係る現金処理装置10Cにおける入金処理の動作を示すフローチャートである。
【0121】
なお、ここでは、入金処理を行なう場合にマスターテンプレートTを用いた処理を行なう場合を例示するが、取引処理はこれに限らず、売上金の計上処理、出金処理、精査処理等にも適用できる。
【0122】
現金処理装置10Cの装置起動後、装置アプリケーションが装置のファームウェアにアクセスして(S401)、装置アプリケーションは記憶部(ハードディスク)122に、商品券Qに対応する新規のマスターテンプレートTがインストールされたか否かを確認する(S402)。
【0123】
新規のマスターテンプレートTがある場合、装置アプリケーションは、新規マスターテンプレートTの使用を有効にすることを示す新規テンプレート用フラグを設定し(S403)、その後処理はS404に移行する。なお、新規マスターテンプレートTがない場合、処理はS204に移行する。
【0124】
例えば、新規テンプレート用フラグを「1」とする場合、新規のマスターテンプレートTの使用を有効にすることを意味する。他方、新規テンプレート用フラグが「0」の場合、新規のマスターテンプレートTの使用は無効であることを意味する。
【0125】
S404で装置アプリケーションはアイドル状態とし、装置アプリケーションは現金処理装置10Cのディスプレイ等の表示部に顧客待ち受け画面を表示する(S404)。
【0126】
このとき、例えば、現金処理装置10Cは、表示部に、マスターテンプレートTを選択できる画面を表示して、表示部上で、店員により、使用するマスターテンプレートTの選択をできるようにしてもよい。
【0127】
また例えば、現金処理装置10Cは、マスターテンプレートTの使用に関する設定情報を設定できるようにしてもよい。例えば、商品券Qの使用期限が設定されているときには、その使用期限をマスターテンプレートTの使用期限として設定できるようにしてもよい。現金処理装置10Cは、設定した使用期限が経過すると、上述のマスターテンプレートTを使用できないようにしてもよい。
【0128】
S405において、入金取引が開始すると(S405)、装置アプリケーションは、新規テンプレート用フラグが設定されているか否かを判別する(S406)。
【0129】
新規テンプレート用フラグが設定されている場合、現金処理装置10Cは、新規のマスターテンプレートTと既存マスターテンプレートTAとを使用して商品券Qの認識処理を行なう(S407)。他方、新規テンプレート用フラグが設定されていない場合、現金処理装置10Cは、既存マスターテンプレートTAを使用して処理を行なう(S408)。
【0130】
そして、入金取引が完了すると(S409)、処理はS404に移行してアイドル状態に戻る。
【0131】
(B-3)第2の実施形態の効果
以上のように、第2の実施形態によれば、店舗側が、独自に商品券のマスターテンプレートを作成でき、そのマスターテンプレートを現金処理装置に保存することで、商品券に対する処理が可能となる。つまり、短期間のうちに発行される商品券であっても、装置ベンダにマスタテンプレートの開発を任せることなく、店舗側が迅速に対応可能となる。
【0132】
(C)他の実施形態
上述した第1及び第2の実施形態においても種々の変形実施形態を言及したが、本発明は、以下の変形実施形態にも適用できる。
【0133】
(C-1)第1の実施形態の紙幣処理装置10は、例えば、金融機関向けの現金自動支払機や現金自動入出金機に適用する場合を例示したが、これに限らず、紙幣鑑別を行なう処理装置に広く適用でき、例えば、小売店舗の売上金を入出金する現金処理機等にも利用できる。
【0134】
(C-2)第1の実施形態において、証明書PRを確認できた場合と確認できなかった場合とで、紙幣処理装置10における鑑別動作に違いを与えてもよい。つまり、証明書PRを確認できた場合には、装置ベンダが提供する鑑別動作をさせることができるようにする。他方、証明書PRを確認できなかった場合、例えば、装置に電源投入後10回だけ鑑別動作を許可する、また例えば、紙幣を1枚ずつ鑑別する等のように、鑑別動作を制限するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0135】
100及び100A…鑑別処理システム、10、10A及び10B…紙幣処理装置、10C…現金処理装置、11…紙幣入出金部、12…鑑別装置、13…一時保留部、14…搬送部、15a~15d…紙幣収納庫、16…分離手段、20…情報処理端末、21…テンプレートデータベース、40及び50…テンプレート自動生成装置、41及び51…記憶部、121…制御部、122…記憶部、123…紙幣検知部、124…センサ群。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8