(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056162
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】石膏板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 1/16 20060101AFI20230412BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
B28B1/16
B28B1/30 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165324
(22)【出願日】2021-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】501043359
【氏名又は名称】平田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 巧
【テーマコード(参考)】
4G052
【Fターム(参考)】
4G052AB04
4G052AB42
4G052DA01
4G052DB14
4G052DC06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】新しい石膏板の製造方法の提供。
【解決手段】容器状の第1型4に、第1底部41に重ねられる第1底用原紙61と、第1周壁部42に重ねられる第1周壁用原紙62とを含む第1原紙6が設置される第1設置工程と、容器状の第2型に、第2底部に重ねられる第2底用原紙と、第2周壁部に重ねられる第2周壁用原紙とを含む第2原紙が設置される第2設置工程と、第1型に、焼石膏スラリーSが流し込まれる第1供給工程と、第2型に、焼石膏スラリーが流し込まれる第2供給工程と、第1型と第2型とが型閉じされる型閉工程と、型閉じされた第1型と第2型とが、型開きされて、第1原紙及び第2原紙で覆われた原紙付き成形体が取り出される型開工程と、原紙付き成形体が乾燥されて石膏板が得られる乾燥工程とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の第1底部と、前記第1底部の周縁から立ち上がる第1周壁部と、前記第1周壁部の端面からなる枠状の第1合わせ部とを有する容器状の第1型に、前記第1底部に重ねられる第1底用原紙と、前記第1周壁部に重ねられる第1周壁用原紙とを含む第1原紙が設置される第1設置工程と、
板状の第2底部と、前記第2底部の周縁から立ち上がる第2周壁部と、前記第2周壁部の端面からなる枠状の第2合わせ部とを有する容器状の第2型に、前記第2底部に重ねられる第2底用原紙と、前記第2周壁部に重ねられる第2周壁用原紙とを含む第2原紙が設置される第2設置工程と、
前記第1原紙が設置された前記第1型に、焼石膏と水とを含む組成物が混練されてなる焼石膏スラリーが流し込まれる第1供給工程と、
前記第2原紙が設置された前記第2型に、前記焼石膏スラリーが流し込まれる第2供給工程と、
前記焼石膏スラリーの流動性が低下して固まることで前記第1型内に前記第1原紙で覆われた第1スラリー層が形成されると共に、前記焼石膏スラリーの流動性が低下して固まることで前記第2型内に前記第2原紙で覆われた第2スラリー層が形成された後、前記第1合わせ部と前記第2合わせ部とが密着するように前記第1型と前記第2型とが型閉じされる型閉工程と、
型閉じされた前記第1型と前記第2型とが、型開きされて、前記第1スラリー層と前記第2スラリー層とが互いに重なりつつ一体化すると共に、前記第1原紙及び前記第2原紙で覆われた原紙付き成形体が取り出される型開工程と、
前記原紙付き成形体が乾燥されて石膏板が得られる乾燥工程とを備える石膏板の製造方法。
【請求項2】
前記第1原紙のうち、少なくとも前記第1底用原紙が前記焼石膏スラリーと接触する側の表面と、前記第2原紙のうち、少なくとも前記第2底用原紙が前記焼石膏スラリーと接触する側の表面とに、それぞれ前記焼石膏スラリーとの接着性を高める接着改善層が形成されている請求項1に記載の石膏板の製造方法。
【請求項3】
前記接着改善層は、前記焼石膏スラリーよりも、石膏成分の密度が高い高密度スラリーからなる請求項2に記載の石膏板の製造方法。
【請求項4】
板状の第1底部と、前記第1底部の周縁から立ち上がる第1周壁部と、前記第1周壁部の端面からなる枠状の第1合わせ部とを有する容器状の第1型に、焼石膏と水とを含む組成物が混練されてなる焼石膏スラリーが流し込まれる第1供給工程と、
板状の第2底部と、前記第2底部の周縁から立ち上がる第2周壁部と、前記第2周壁部の端面からなる枠状の第2合わせ部とを有する容器状の第2型に、前記焼石膏スラリーが流し込まれる第2供給工程と、
前記焼石膏スラリーの流動性が低下して固まることで前記第1型内に第1スラリー層が形成されると共に、前記焼石膏スラリーの流動性が低下して固まることで前記第2型内に第2スラリー層が形成された後、前記第1合わせ部と前記第2合わせ部とが密着するように前記第1型と前記第2型とが型閉じされる型閉工程と、
型閉じされた前記第1型と前記第2型とが、型開きされて、前記第1スラリー層と前記第2スラリー層とが互いに重なりつつ一体化した成形体が取り出される型開工程と、
前記成形体が乾燥されて石膏板が得られる乾燥工程とを備える石膏板の製造方法。
【請求項5】
前記第1供給工程後の前記第1型内の前記焼石膏スラリー及び/又は前記第2供給工程後の前記第2型内の前記焼石膏スラリーに、固形部材を埋め込む埋込工程を備える請求項1~請求項4の何れか1項に記載の石膏板の製造方法。
【請求項6】
前記固形部材は、長手状の中空部材からなる請求項5に記載の石膏板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石膏板は、石膏を主成分とする板状の部材であり、防耐火性、遮音性、施工性等に優れている。そのため、この種の石膏板は、壁や天井等を構成する建築用資材として広く用いられている。
【0003】
石膏板としては、例えば、石膏を主成分とする板状の芯材と、その芯材の両面に重ねられる原紙とを有するもの(所謂、石膏ボード)が知られている。この石膏板は、例えば、特許文献1に示されるように、焼成した石膏(半水石膏)と水との混合物からなるスラリーを、ベルトコンベヤ上に流される下側の原紙と、その原紙と平行に流される上側の原紙との間に充填しつつ、それらの積層物を乾燥することで得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の石膏板の製造方法では、例えば、石膏板(芯材)の厚みを大きくすることや、芯材の内部の所定箇所に、補強等を目的とした部材を配置すること等が難しく、問題となっていた。このような事情等により、新しい石膏板の製造方法が望まれていた。
【0006】
本発明の目的は、新しい石膏板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1> 板状の第1底部と、前記第1底部の周縁から立ち上がる第1周壁部と、前記第1周壁部の端面からなる枠状の第1合わせ部とを有する容器状の第1型に、前記第1底部に重ねられる第1底用原紙と、前記第1周壁部に重ねられる第1周壁用原紙とを含む第1原紙が設置される第1設置工程と、板状の第2底部と、前記第2底部の周縁から立ち上がる第2周壁部と、前記第2周壁部の端面からなる枠状の第2合わせ部とを有する容器状の第2型に、前記第2底部に重ねられる第2底用原紙と、前記第2周壁部に重ねられる第2周壁用原紙とを含む第2原紙が設置される第2設置工程と、前記第1原紙が設置された前記第1型に、焼石膏と水とを含む組成物が混練されてなる焼石膏スラリーが流し込まれる第1供給工程と、前記第2原紙が設置された前記第2型に、前記焼石膏スラリーが流し込まれる第2供給工程と、前記焼石膏スラリーの流動性が低下して固まることで前記第1型内に前記第1原紙で覆われた第1スラリー層が形成されると共に、前記焼石膏スラリーの流動性が低下して固まることで前記第2型内に前記第2原紙で覆われた第2スラリー層が形成された後、前記第1合わせ部と前記第2合わせ部とが密着するように前記第1型と前記第2型とが型閉じされる型閉工程と、型閉じされた前記第1型と前記第2型とが、型開きされて、前記第1スラリー層と前記第2スラリー層とが互いに重なりつつ一体化すると共に、前記第1原紙及び前記第2原紙で覆われた原紙付き成形体が取り出される型開工程と、前記原紙付き成形体が乾燥されて石膏板が得られる乾燥工程とを備える石膏板の製造方法。
【0008】
<2> 前記第1原紙のうち、少なくとも前記第1底用原紙が前記焼石膏スラリーと接触する側の表面と、前記第2原紙のうち、少なくとも前記第2底用原紙が前記焼石膏スラリーと接触する側の表面とに、それぞれ前記焼石膏スラリーとの接着性を高める接着改善層が形成されている前記<1>に記載の石膏板の製造方法。
【0009】
<3> 前記接着改善層は、前記焼石膏スラリーよりも、石膏成分の密度が高い高密度スラリーからなる前記<2>に記載の石膏板の製造方法。
【0010】
<4> 板状の第1底部と、前記第1底部の周縁から立ち上がる第1周壁部と、前記第1周壁部の端面からなる枠状の第1合わせ部とを有する容器状の第1型に、焼石膏と水とを含む組成物が混練されてなる焼石膏スラリーが流し込まれる第1供給工程と、板状の第2底部と、前記第2底部の周縁から立ち上がる第2周壁部と、前記第2周壁部の端面からなる枠状の第2合わせ部とを有する容器状の第2型に、前記焼石膏スラリーが流し込まれる第2供給工程と、前記焼石膏スラリーの流動性が低下して固まることで前記第1型内に第1スラリー層が形成されると共に、前記焼石膏スラリーの流動性が低下して固まることで前記第2型内に第2スラリー層が形成された後、前記第1合わせ部と前記第2合わせ部とが密着するように前記第1型と前記第2型とが型閉じされる型閉工程と、型閉じされた前記第1型と前記第2型とが、型開きされて、前記第1スラリー層と前記第2スラリー層とが互いに重なりつつ一体化した成形体が取り出される型開工程と、前記成形体が乾燥されて石膏板が得られる乾燥工程とを備える石膏板の製造方法。
【0011】
<5> 前記第1供給工程後の前記第1型内の前記焼石膏スラリー及び/又は前記第2供給工程後の前記第2型内の前記焼石膏スラリーに、固形部材を埋め込む埋込工程を備える前記<1>~<4>の何れか1つに記載の石膏板の製造方法。
【0012】
<6> 前記固形部材は、長手状の中空部材からなる前記<5>に記載の石膏板の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、新しい石膏板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態1に係る石膏板の製造方法の各工程を示す説明図
【
図2】実施形態1の製造方法で製造される石膏板の構成を模式的に表した説明図
【
図5】第1供給工程により、第1型内に焼石膏スラリーが充填された状態を示す説明図
【
図7】型閉じされた第1型と第2型との内部において、一体化したスラリー層が形成された状態を示す説明図
【
図8】実施形態2に係る石膏板の製造方法の各工程を示す説明図
【
図9】実施形態2の製造方法で製造された石膏板の構成を模式的に表した説明図
【
図12】実施形態2の製造方法における型閉工程の内容を模式的に表した説明図
【
図13】型閉じされた第1型と第2型との内部において、パイプが埋め込まれた状態で一体化したスラリー層が形成された状態を示す説明図
【
図14】実施形態3に係る石膏板の製造方法の各工程を示す説明図
【
図15】実施形態3の製造方法で製造された石膏板の構成を模式的に表した説明図
【
図18】実施形態3の製造方法における型閉工程の内容を模式的に表した説明図
【
図19】型閉じされた第1型と第2型との内部において、パイプが埋め込まれた状態で一体化したスラリー層が形成された状態を示す説明図
【
図20】実施形態4の製造方法で製造された石膏板の構成を模式的に表した説明図
【
図21】第1設置工程の内容を模式的に表した説明図
【
図22】第1供給工程の内容を模式的に表した説明図
【
図23】第1供給工程により、第1型内に焼石膏スラリーが充填された状態を示す説明図
【
図24】実施形態4の製造方法における型閉工程の内容を模式的に表した説明図
【
図25】型閉じされた第1型と第2型との内部において、一体化したスラリー層が形成された状態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態1>
以下、本発明の実施形態1に係る石膏板の製造方法を、
図1~
図7を参照しつつ説明する。
図1は、実施形態1に係る石膏板の製造方法の各工程を示す説明図であり、
図2は、実施形態1の製造方法で製造される石膏板1の構成を模式的に表した説明図である。ここで、先ず、本実施形態の製造方法で製造される石膏板1について説明する。なお、
図2には、短手方向で切断された石膏板1の断面構成が模式的に示されている。
【0016】
本実施形態の石膏板1は、板状の芯材2と、その芯材2の表面を覆う原紙(石膏ボード用原紙)3とを備えている。原紙3は、後述するように第1原紙6と、第2原紙7とからなる。
【0017】
芯材2は、主として二水石膏(CaSO4・2H2O)からなる石膏(石膏成分)を含有する板状(ボード状)の部材である。芯材2は、焼石膏(CaSO4・1/2H2O)と水とを含む組成物が混練されてなる焼石膏スラリーを硬化させたものからなる。なお、芯材2の厚みや密度等の諸条件は、目的に応じて、適宜、設定される。焼石膏スラリーには、必要に応じて、酸化澱粉、減水剤、発泡剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、防カビ剤、耐水剤、無機繊維等の公知の各種添加剤が添加されてもよい。
【0018】
原紙3は、通常、当業界で使用される原紙と同様の素材(例えば、段ボール紙、厚紙)からなる。原紙3の素材の種類や厚み等の諸条件は、目的に応じて、適宜、設定される。原紙3は、芯材2の表面を覆うように、芯材2の表面に接着されている。なお、原紙3の形状等については後述する。
【0019】
このような石膏板1を製造する本実施形態の石膏板の製造方法は、
図1に示される各工程を備えている。また、本実施形態の石膏板の製造方法では、後述するように、1組の型(第1型4、第2型5)が用いられる。本実施形態の石膏板の製造方法は、
図1に示されるように、第1設置工程S11、第2設置工程S12、第1供給工程S13、第2供給工程S14、型閉工程S15、型開工程S16、及び乾燥工程S17を備えている。なお、
図3は、第1供給工程S13の内容を模式的に表した説明図である。
【0020】
第1設置工程S11は、所定の厚みを有する板状の第1底部41と、その第1底部41の周縁41aから立ち上がる所定の厚みを有する板状の第1周壁部42と、第1周壁部42の端面からなる枠状をなした第1合わせ部42aとを有する容器状の第1型4に、第1底部41に重ねられる第1底用原紙61と、第1周壁部42に重ねられる第1周壁用原紙62とを含む第1原紙6が設置される工程である。
【0021】
第1型4は、全体的には、上方に開口した浅底の容器状をなしており、金属又は合金からなる金属系材料、耐熱性等を備えた合成樹脂(エンジニアリングプラスチック等)等から構成される。本実施形態の場合、金属系材料からなる板材が所定形状に加工されたものからなる。このような第1型4は、第1底部41と、第1周壁部42と、第1合わせ部42aとを有する。
【0022】
第1底部41は、平面視で矩形状をなした板状をなしている。なお、第1型4の内表面を構成する第1底部41の面を、「表面41b」と表し、その反対側にある外側を向いた面を、「裏面41c」を表す。第1型4は、第1底部41の裏面41cが、床面Fと対向する形で、床面F上に配置されている。
【0023】
第1周壁部42は、第1底部41の周縁41aから立ち上がる板状をなしている。なお、第1周壁部42は、全体的には、第1底部41を取り囲む筒状(枠状)をなしている。本実施形態の場合、第1周壁部42は、平面視で矩形状をなしており、互いに平行に配される2組の壁(つまり、4つの壁)を備えている。なお、第1型4の内表面を構成する第1周壁部42の面を、「内表面42b」と表し、その反対側にある外側を向いた面を、「外表面42c」と表す。
【0024】
また、第1合わせ部42aは、平面視で、矩形型の枠状をなした第1周壁部42の上側の端面42aからなる。第1合わせ部42aの高さ位置(第1底部41の表面41bからの高さ位置)は、全体的に同じになるように設定される。
【0025】
第1設置工程S11では、このような第1型4の内表面を覆うように、第1原紙6が設置される。
図4は、平面状に広げられた状態の第1原紙6の説明図である。第1原紙6は、矩形状をなした第1底部41の表面41bを覆うように、表面41bに重ねられる第1底用原紙61と、第1周壁部52の内表面42bを覆うように、内表面42bに重ねられる第1周壁用原紙62とからなる。本実施形態の場合、第1周壁用原紙62は、4つの部分からなり、矩形状をなした第1底用原紙61の各辺に対応する箇所に、それぞれ接続されている。第1原紙6は、第1底用原紙61と第1周壁用原紙62との各境界部63で折り曲げられて、全体として、上方に開口した容器状の形で、第1型4内に設置される。本実施形態の場合、第1型4の内表面は、全面的に、第1原紙6によって覆われる。
【0026】
第2設置工程S12は、所定の厚みを有する板状の第2底部51と、その第2底部51の周縁51aから立ち上がる所定の厚みを有する板状の第2周壁部52と、第2周壁部52の端面からなる枠状をなした第2合わせ部52aとを有する容器状の第2型5に、第2底部51に重ねられる第2底用原紙71と、第2周壁部52に重ねられる第2周壁用原紙72とを含む第2原紙7が設置される工程である。
【0027】
第2型5は、上述した第1型4と、形状、大きさ等が同じである。また、第2原紙7も、上述した第1原紙6と、形状、大きさ等が同じである。つまり、第2設定工程S12は、第1設置工程S11において第1型4の内部に第1原紙6が設置されたのと同様、第2型5の内部に第2原紙7が設置される工程である。そのため、第2設定工程S12の詳細な説明は省略する。
【0028】
第1供給工程S13は、第1原紙6が設置された第1型4に、焼石膏と水とを含む組成物が混練されてなる焼石膏スラリーSが流し込まれる工程である。焼石膏スラリーSは、少なくとも所定量の焼石膏と水とを含む組成物が混練されたものからなり、公知の手法で調製される。なお、焼石膏は、水と混練されると水和反応により、二水石膏となる。このように調製された焼石膏スラリーSは、例えば、所定の容器8に入れられ、そして、その容器8から第1原紙6が設置された第1型4の内部に、焼石膏スラリーSが流し込まれる。第1原紙6が設置された第1型4は、水平な床面F上に載置されており、そのような状態の第1型4の内部に、焼石膏スラリーSが供給される。
【0029】
図5は、第1供給工程S13により、第1型4内に焼石膏スラリーSが充填された状態を示す説明図である。焼石膏スラリーSは、
図5に示されるように、第1周壁部42の端面(第1合わせ部42a)の高さ位置まで充填される。このような焼石膏スラリーSは、上方に開口した箱状の第1原紙6により覆われた状態で、第1型4内に収容される。
【0030】
第1供給工程S13の後、焼石膏スラリーSが充填された第1型4は、常温(例えば、20℃)環境下で放置される。第1型4内の焼石膏スラリーSは、後述する型閉工程S15において、第1型4内からこぼれ落ちないように、流動性が低下して第1型4内で形状が保持される程度に固まるまで放置される。
【0031】
第2供給工程S14は、第2原紙7が設置された第2型5に、焼石膏スラリーSが流し込まれる工程である。第2供給工程S14は、第1供給工程S13において第1原紙6が設置された第1型4に、焼石膏スラリーSが流し込まれたのと同様、第1原紙6が設置された第2型5に、焼石膏スラリーSが流し込まれる工程である。そのため、第2供給工程S14の詳細な説明は省略する。
【0032】
なお、第2供給工程S14の後、焼石膏スラリーSが充填された第2型5は、第1供給工程S13後の第1型4と同様、常温環境下で、流動性が低下して第1型4内で形状が保持される程度に固まるまで放置される。
【0033】
型閉工程S15は、焼石膏スラリーSの流動性が低下して固まることで第1型4内に第1原紙6で覆われた第1スラリー層S1が形成されると共に、焼石膏スラリーSの流動性が低下して固まることで第2型5内に第2原紙7で覆われた第2スラリー層S2が形成された後、第1合わせ部42aと第2合わせ部52aとが密着するように第1型4と第2型5とが型閉じされる工程である。
【0034】
上記のように、第1型4及び第2型5は、それぞれ焼石膏スラリーSが充填された後、放置されることで、第1型4内に、第1原紙6で覆われた第1スラリー層S1が形成されると共に、第2型5内に、第2原紙7で覆われた第2スラリー層S2が形成される。型閉工程S15では、第1型4内で形成された第1スラリー層S1と、第2型5内で形成された第2スラリー層S2とを重ね合わせるために、第1型4と第2型5とが型閉じされる。
【0035】
図6は、型閉工程S15の内容を模式的に表した説明図である。型閉工程S15は、例えば、
図6に示されるような型閉装置9を利用して行われる。型閉装置9は、第1スラリー層S1が形成された第1型4が載せられる第1載置台91と、第2スラリー層S2が形成された第2型5が載せられる第2載置台92と、第1載置台91と第2載置台92との間に介在され、第1載置台91及び第2載置台92をそれぞれ回動可能な状態で保持する本体部93とを備えている。本実施形態の型閉装置9の第1載置台91及び第2載置台92は、基本的には、本体部93を中心とした、左右対称の構造を備えている。
【0036】
第1載置台91は、平坦な第1載置面91aを備えており、その第1載置面91aに、第1底部41が対向する形で、第1型4が載せられる。第1型4は、第1載置台91の第1載置面91aに設けられた係止機構(不図示)を利用して、第1載置面91aの所定箇所で位置決め固定される。第1載置台91は、本体部93に対して、公知の回動機構94を介して固定されている。
【0037】
第2載置台92は、平坦な第2載置面92aを備えており、その第2載置面92aに、第2底部51が対向する形で、第2型5が載せられる。第2型5は、第2載置台92の第2載置面92aに設けられた係止機構(不図示)を利用して、第2載置面92aの所定箇所で位置決め固定される。第2載置台92は、本体部93に対して、公知の回動機構95を介して固定されている。
【0038】
このような型閉装置9の第1載置台91及び第2載置台92に、それぞれ、第1原紙6で覆われた第1スラリー層S1を収容する第1型4と、第2原紙7で覆われた第2スラリー層S2を収容する第2型5とが載せられた後、第1載置台91及び第2載置台92は、互いに近付くように回動して、第1型4の枠状の第1合わせ部42aと、第2型5の枠状の第2合わせ部52aとが、互いに隙間なく密着するように、第1載置台91と第2載置台92との間で、第1型4及び第2型5が互いに押し付けられる。
【0039】
このようにして、第1型4及び第2型5が型閉じされると、第1型4内の第1スラリー層S1の露出面S1aと、第2型5内の第2スラリー層S2の露出面S2aとが互いに密着する形で、第1スラリー層S1と第2スラリー層S2とが重ね合わせられる。
【0040】
なお、型閉じされ後の第1型4及び第2型5は、図示されない締結手段を利用して、互いに固定されてもよい。このような型閉工程S15の後、型閉じされた状態の第1型4及び第2型5は、適宜、型閉装置9から降ろされ、床面等に載せられた状態で放置される。第1型4及び第2型5は、内部で第1スラリー層S1及び第2スラリー層S2が、一体化するように硬化するまで放置される。第1スラリー層S1及び第2スラリー層S2は、最終的に一体化して、1つの層(スラリー層)S3となる。
図7は、型閉じされた第1型4と第2型5との内部において、一体化したスラリー層S3が形成された状態を示す説明図である。スラリー層S3は、第1型4及び第2型5の内部において、第1原紙6と第2原紙7とで覆われた状態となっている。このように第1原紙6と第2原紙7とで覆われたスラリー層S3を、原紙付き成形体10と称する。
【0041】
型開工程S16は、型閉じされた第1型4と第2型5とが、型開きされて、第1スラリー層S1と第2スラリー層S2とが互いに重なりつつ一体化すると共に、第1原紙6及び第2原紙7で覆われた原紙付き成形体10が取り出される工程である。上記のように、型閉工程S15の後、第1型4及び第2型5の内部で、原紙付き成形体10が形成されると、型開工程S16において、第1型4及び第2型5が、原紙付き成形体10から取り外されるように型開きされる。このように型開きされると、原紙付き成形体10が得られる。
【0042】
乾燥工程S17は、原紙付き成形体10が乾燥されて石膏板1が得られる工程である。この乾燥工程S17は、一般的な石膏板(石膏ボード)の乾燥工程と同様の設備で行うことができる。原紙付き成形体10は、例えば、60~200℃に設定された乾燥装置内に入れられ、所定時間、加熱することで行われる。
【0043】
以上のような各工程を経て、本実施形態の石膏板1が製造される。本実施形態の石膏板の製造方法は、1組の型(第1型4、第2型5)を用いて、石膏板1を製造するものである。そのため、第1型4及び第2型5の各高さ(深さ)を、適宜、設定することにより、石膏板1の厚みを、変更することができる。例えば、第1型4及び第2型5の各高さ(深さ)を、大きくすることで、石膏板1の厚み(芯材2の厚み)を大きくすることができる。
【0044】
<実施形態2>
次いで、本発明の実施形態2に係る石膏板の製造方法を、
図8~
図13を参照しつつ説明する。
図8は、実施形態2に係る石膏板の製造方法の各工程を示す説明図であり、
図9は、実施形態2の製造方法で製造された石膏板1Aの構成を模式的に表した説明図であり、
図10は、
図9のA-A線断面図である。ここで、先ず、本実施形態の製造方法で製造される石膏板1Aについて説明する。なお、
図9には、短手方向に切断された石膏板1Aの断面構成が模式的に示されている。
【0045】
本実施形態の石膏板1Aは、内部にパイプ(固形部材の一例、及び長手状の中空部材の一例)が配置されたものであり、その基本的な構成は、実施形態1の石膏板1と同じである。そのため、各図では、実施形態1と対応する部分について、実施形態1と同一の符号に更に符号「A」を追加した符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0046】
石膏板1Aは、
図9及び
図10に示されるように、所定の厚みを有する板状の芯材2Aと、その芯材2Aの内部に埋設される長手状のパイプ11と、芯材2Aの表面を覆う原紙(石膏ボード用原紙)3Aとを備えている。原紙3は、後述するように第1原紙6Aと、第2原紙7Aとからなる。第1原紙6Aは、第1底用原紙61Aと、第1周壁用原紙62Aとからなる。第2原紙7Aは、第2底用原紙71Aと、第2周壁用原紙72Aとからなる。パイプ11は、両端が閉塞された円筒状の部材である。パイプ11は、例えば、アルミ等の金属系材料や、耐熱性に優れる合成樹脂の成形品等かなる。パイプ11は、石膏板1Aの軽量化や、補強等の目的で、芯材2Aの内部に設置されることが好ましい。パイプ11は、芯材2Aの内部に複数本配置されてもよい。
【0047】
このような石膏板1Aは、例えば、
図8に示される各工程を経て製造される。本実施形態の石膏板の製造方法は、
図8に示されるように、第1設置工程S21、第2設置工程S22、第1供給工程S23、第2供給工程S24、埋込工程S28、型閉工程S25、型開工程S26、及び乾燥工程S27を備えている。本実施形態の石膏板の製造方法は、基本的には、実施形態1の製造方法の各工程に、埋込工程S28が追加されたものであり、埋込工程S28以外の各工程の内容は、実施形態1の対応する各工程の内容と同じである。そのため、埋込工程S28以外の各工程については、適宜、説明を省略する。
【0048】
また、本実施形態の製造方法で使用する型(1組の型)については、実施形態1と同様のものが使用される。そのため、本実施形態の製造方法で使用する型(1組の型)等についても、各図では、実施形態1と対応する部分について、実施形態1と同一の符号に更に符号「A」を追加した符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0049】
図8に示されるように、本実施形態の石膏板の製造方法は、実施形態1と同様、第1設置工程S21、第2設置工程S22、第1供給工程S23及び第2供給工程S24を備えている。本実施形態の石膏板の製造方法は、更に、第2供給工程S24の後に行われる埋込工程S28を備えている。
【0050】
埋込工程S28は、第1供給工程S23後の第1型4A内の焼石膏スラリーSA及び/又は第2供給工程S24後の第2型5A内の焼石膏スラリーSAに、固形部材であるパイプ11を埋め込む工程である。
図11は、埋込工程S28の内容を模式的に表した説明図である。本実施形態の場合、パイプ11は、第1供給工程S23後の第1型4A内の焼石膏スラリーSのみに、パイプ11が埋め込まれる。
【0051】
埋込工程S28は、第1型4A内の焼石膏スラリーSAが固まる前に行われる。
図11には、床面F上に載せられた第1型4Aが示されており、その第1型4Aの内部に、第1原紙6Aが設置された状態で、焼石膏スラリーSAが充填されている。そのような第1型4A内の焼石膏スラリーSAに対して、一部が焼石膏スラリーSAの表面(露出面)から露出しつつ、残りの部分が焼石膏スラリーSAの内部に埋まるように、パイプ11が配置される。なお、固形部材(パイプ11等)は、焼石膏スラリーSAの中に入れられても、焼石膏スラリーSAと同化せず、形状が維持される部材である。
【0052】
このような埋込工程S28の後、第1型4A内の焼石膏スラリーSAは、流動性が低下して第1型4A内で形状が保持される程度に固まるまで放置され、第2型5A内の焼石膏スラリーSAが固まり次第、型閉工程S25が行われる。
【0053】
図12は、実施形態2の製造方法における型閉工程S25の内容を模式的に表した説明図である。型閉工程S25の内容は、基本的には、実施形態1の型閉工程S15の内容と同じであり、実施形態1と同様の型閉装置9を利用して行われる。
【0054】
型閉工程S25は、焼石膏スラリーSAの流動性が低下して固まることで第1型4A内に第1原紙6Aで覆われた第1スラリー層SA1が形成されると共に、焼石膏スラリーSAの流動性が低下して固まることで第2型5A内に第2原紙7Aで覆われた第2スラリー層SA2が形成された後、第1周壁部42Aの端面からなる第1合わせ部42Aaと、第2周壁部52Aの端面からなる第2合わせ部52Aaとが密着するように第1型4Aと第2型5Aとが型閉じされる工程である。
【0055】
型閉工程S25において、第1型4A及び第2型5Aが型閉じされると、第1型4A内の第1スラリー層SA1の露出面SA1aと、第2型5A内の第2スラリー層SA2の露出面SA2aとが互いに密着する形で、第1スラリー層SA1と第2スラリー層SA2とが重ね合わせられる。すると、第1スラリー層SA1の露出面SA1aに配置されたパイプ11が、第1スラリー層SA1と第2スラリー層SA2との間で挟み込まれる、
【0056】
このような型閉工程S25の後、型閉じされた状態の第1型4A及び第2型5Aは、実施形態1と同様、適宜、型閉装置9から降ろされ、床面等に載せられた状態で放置される。そして、第1型4A及び第2型5Aは、内部で第1スラリー層SA1及び第2スラリー層SA2が、一体化するように硬化するまで放置される。第1スラリー層SA1及び第2スラリー層SA2は、最終的に一体化して、1つの層(スラリー層)SA3となる。
【0057】
図13は、型閉じされた第1型4Aと第2型5Aとの内部において、パイプ11が埋め込まれた状態で一体化したスラリー層SA3が形成された状態を示す説明図である。スラリー層SA3は、第1型4A及び第2型5Aの内部において、第1原紙6Aと第2原紙7Aとで覆われた状態となっている。このように第1原紙6Aと第2原紙7Aとで覆われたスラリー層SA3を、原紙付き成形体10Aと称する。
【0058】
本実施形態の石膏板の製造方法では、型閉工程S25の後、実施形態1と同様、型開工程S26が行われて、第1型4A及び第2型5Aから、原紙付き成形体10Aが取り出される。そして、取り出された原紙付き成形体10Aに対して、実施形態1と同様、乾燥工程S26が行われ、原紙付き成形体10Aが乾燥される。以上のような各工程を経ることで、石膏板1Aが得られる。このような本実施形態の石膏板の製造方法によれば、芯材2A中に、軽量化や補強等を目的として、固形部材(パイプ11)が設置された石膏板1Aを容易に製造することができる。
【0059】
<実施形態3>
次いで、本発明の実施形態3に係る石膏板の製造方法を、
図14~
図19を参照しつつ説明する。
図14は、実施形態3に係る石膏板の製造方法の各工程を示す説明図であり、
図15は、実施形態3の製造方法で製造された石膏板1Bの構成を模式的に表した説明図であり、
図16は、
図15のB-B線断面図である。ここで、先ず、本実施形態の製造方法で製造される石膏板1Bについて説明する。なお、
図15には、短手方向に切断された石膏板1Bの断面構成が模式的に示されている。
【0060】
本実施形態の石膏板1Bは、表面が原紙で覆われておらず、芯材2Bがむき出しの状態のものである。また、この石膏板1Bの芯材2Bの内部には、実施形態2と同様、パイプ11Bが配置されている。このような石膏板1Bのそれら以外の構成は、実施形態1の石膏板1と同じである。そのため、各図では、実施形態1と対応する部分について、実施形態1と同一の符号に更に符号「B」を追加した符号を付し、詳細な説明を省略する。なお、パイプ11Bについては、実施形態2のパイプ11と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0061】
石膏板1Bは、
図15及び
図16に示されるように、板状の芯材2Bと、その芯材2Bの内部に埋設されるパイプ11Bとを備えている。石膏板1Bは、芯材2Bの表面が原紙で覆われておらず、露出した状態となっている。
【0062】
このような石膏板1Bは、例えば、
図14に示される各工程を経て製造される。本実施形態の石膏板の製造方法は、
図14に示されるように、第1供給工程S33、第2供給工程S34、埋込工程S38、型閉工程S35、型開工程S36、及び乾燥工程S37を備えている。本実施形態の石膏板の製造方法において、第1供給工程S33、第2供給工程S34、型閉工程S35、型開工程S36、及び乾燥工程S37は、基本的に、実施形態1の対応する各工程と同じである。また、埋込工程S38については、基本的に、実施形態2の埋込工程S28と同じである。そのため、各工程の詳細は、適宜、省略する。
【0063】
また、本実施形態の製造方法で使用される型(1組の型)については、実施形態1と同様のものが使用される。そのため、本実施形態の製造方法で使用する型(1組の型)等についても、各図では、実施形態1と対応する部分について、実施形態1と同一の符号に更に符号「B」を追加した符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0064】
図14に示されるように、本実施形態の石膏板の製造方法では、実施形態1と同様、第1供給工程S33及び第2供給工程S34が行われる。
【0065】
なお、第1供給工程S33は、原紙が設置されていない第1型4Bに対して行われる工程である。具体的には、第1供給工程S33は、板状の第1底部41Bと、第1底部41Bの周縁41Baから立ち上がる第1周壁部42Bと、第1周壁部42Bの端面からなる枠状の第1合わせ部42Baとを有する容器状の第1型4Bに、焼石膏と水とを含む組成物が混練されてなる焼石膏スラリーSBが流し込まれる工程である。
【0066】
また、第2供給工程S34も、同様に、原紙が設置されていない第2型5Bに対して行われる工程である。具体的には、板状の第2底部51Bと、第2底部51Bの周縁51Baから立ち上がる第2周壁部52Bと、第2周壁部52Bの端面からなる枠状の第2合わせ部52Baとを有する容器状の第2型5Bに、焼石膏スラリーSBが流し込まれる工程である。
【0067】
本実施形態では、このような第2供給工程S34の後、埋込工程S38が行われる。
【0068】
埋込工程S38は、第1供給工程S33後の第1型4B内の焼石膏スラリーSB及び/又は第2供給工程S34後の第2型5B内の焼石膏スラリーSBに、固形部材であるパイプ11Bを埋め込む工程である。
図17は、埋込工程S38の内容を模式的に表した説明図である。本実施形態の場合、パイプ11Bは、第1供給工程S33後の第1型4B内の焼石膏スラリーSBのみに、パイプ11Bが埋め込まれる。
【0069】
埋込工程S38は、実施形態2と同様、第1型4B内の焼石膏スラリーSBが固まる前に行われる。
図17には、床面F上に載せられた第1型4Bが示されており、その第1型4Bの内部に、焼石膏スラリーSAが、第1底部41B及び第1周壁部42Bに対して直に接触する形で、充填されている。そのような第1型4B内の焼石膏スラリーSBに対して、一部が焼石膏スラリーSBの表面(露出面)から露出しつつ、残りの部分が焼石膏スラリーSBの内部に埋まるように、パイプ11Bが配置される。
【0070】
このような埋込工程S38の後、第1型4B内の焼石膏スラリーSBは、流動性が低下して第1型4B内で形状が保持される程度に固まるまで放置され、そして、第2型5B内の焼石膏スラリーSBが固まり次第、型閉工程S35が行われる。
【0071】
図18は、実施形態3の製造方法における型閉工程S35の内容を模式的に表した説明図である。型閉工程S35の内容は、基本的には、実施形態1の型閉工程S15の内容と同じであり、実施形態1と同様の型閉装置9を利用して行われる。
【0072】
型閉工程S35は、焼石膏スラリーSBの流動性が低下して固まることで第1型4B内に第1スラリー層SB1が形成されると共に、焼石膏スラリーSBの流動性が低下して固まることで第2型5B内に第2スラリー層SB2が形成された後、第1合わせ部42Baと第2合わせ部52Baとが互いに密着するように、第1型4Bと第2型5Bとが型閉じされる工程である。
【0073】
型閉工程S35において、第1型4B及び第2型5Bが型閉じされると、第1型4B内の第1スラリー層SB1の露出面SB1aと、第2型5B内の第2スラリー層SB2の露出面SB2aとが互いに密着する形で、第1スラリー層SB1と第2スラリー層SB2とが重ね合わせられる。すると、第1スラリー層SB1の露出面SB1aに配置されたパイプ11Bが、第1スラリー層SB1と第2スラリー層SB2との間で挟み込まれる、
【0074】
このような型閉工程S35の後、型閉じされた状態の第1型4B及び第2型5Bは、実施形態1と同様、適宜、型閉装置9から降ろされ、床面等に載せられた状態で放置される。そして、第1型4B及び第2型5Bは、内部で第1スラリー層SB1及び第2スラリー層SB2が、一体化するように硬化するまで放置される。第1スラリー層SB1及び第2スラリー層SB2は、最終的に一体化して、1つの層(スラリー層)SB3となる。
【0075】
図19は、型閉じされた第1型4Bと第2型5Bとの内部において、パイプ11Bが埋め込まれた状態で一体化したスラリー層SB3が形成された状態を示す説明図である。本実施形態において、第1型4B及び第2型5Bの内部において形成されるスラリー層SB3を、成形体10Bと称する。
【0076】
本実施形態の石膏板の製造方法では、型閉工程S35の後、実施形態1と同様、型開工程S36が行われて、第1型4B及び第2型5Bから、成形体10Bが取り出される。そして、取り出された成形体10Bに対して、実施形態1と同様、乾燥工程S36が行われ、成形体10Bが乾燥される。以上のような各工程を経ることで、石膏板1Bが得られる。このような本実施形態の石膏板の製造方法によれば、芯材2B中に、軽量化や補強等を目的として、固形部材(パイプ11B)が設置された石膏板1Bを容易に製造することができる。また、本実施形態によれば、表面が原紙で覆われていない芯材2Bのみからなる石膏板1Bを容易に製造することができる。
【0077】
<実施形態4>
次いで、本発明の実施形態4に係る石膏板の製造方法を、
図20~
図25を参照しつつ説明する。本実施形態の石膏板の製造方法は、芯材2Cと、原紙3C(第1原紙6C、第2原紙7C)との接着性が高められた石膏板1Cを製造するものである。本実施形態の石膏板の製造方法は、使用する原紙3Cに後述する接着改善層Xが設けられていること等が実施形態1と異なっている。
図20は、実施形態4の製造方法で製造された石膏板1Cの構成を模式的に表した説明図である。ここで、先ず、本実施形態の製造方法で製造される石膏板1Cについて説明する。
【0078】
本実施形態の石膏板1Cは、原紙3Cと芯材2Cとが、接着改善層Xを介して互いに接着されている。具体的には、第1原紙6Cの第1底用原紙61Cと芯材2C、及び第2原紙7Cの第2底用原紙71Cと芯材2Cが、それぞれ接着改善層Xを介して互いに接着されている。なお、第1原紙6Cは、第1底用原紙61Cと、第1周壁用原紙62Cとからなる。第2原紙7Cは、第2底用原紙71Cと、第2周壁用原紙72Cとからなる。
【0079】
接着改善層Xは、芯材2Cと同様、石膏を主成分とするものである。ただし、接着改造層Xは、芯材2Cよりも密度の高い石膏からなる。接着改善層Xは、第1底用原紙61Cの表面やの第2底用原紙71Cの表面を、それぞれ全面的に覆うように形成される。接着改善層Xの厚みは、例えば、0.1mm~5mm程度に設定される。
【0080】
なお、石膏板1Cの接着改善層X以外の構成は、基本的に、実施形態1の石膏板1と同じである。そのため、各図では、実施形態1と対応する部分について、実施形態1と同一の符号に更に符号「C」を追加した符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0081】
このような石膏板1Cは、実施形態1と同様、第1設置工程、第2設置工程、第1供給工程、第2供給工程、型閉工程、型開工程、及び乾燥工程を経て製造される。本実施形態の製造方法で使用される型(1組の型)については、実施形態1と同様のものが使用される。そのため、本実施形態の製造方法で使用する型(1組の型)等についても、各図では、実施形態1と対応する部分について、実施形態1と同一の符号に更に符号「C」を追加した符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0082】
図21は、第1設置工程の内容を模式的に表した説明図である。本実施形態の第1設置工程では、容器状の第1型4Cに、予め未硬化の接着改善層(焼石膏スラリーSCよりも、石膏成分の密度が高い高密度スラリーの層)Xが形成されている第1原紙6Cが設置される。未硬化の接着改善層Xは、第1原紙6Cのうち、少なくとも第1底用原紙61Cが焼石膏スラリーSCと接触する側の表面に、未硬化の状態で形成される。
【0083】
また、本実施形態の第2設置工程では、容器状の第2型5Cに、予め未硬化の接着改善層(焼石膏スラリーSCよりも、石膏成分の密度が高い高密度スラリーの層)Xが形成されている第2原紙7Cが設置される。未硬化の接着改善層Xは、第2原紙7Cのうち、少なくとも第2底用原紙71Cが焼石膏スラリーSCと接触する側の表面に、未硬化の状態で形成される。
【0084】
このような第1設置工程及び第2設置工程の後、実施形態1と同様、第1原紙6Cが設置された第1型4Cに、焼石膏と水とを含む組成物が混練されてなる焼石膏スラリーSCが流し込まれる第1供給工程と、第2原紙7Cが設置された第2型5Cに、前記焼石膏スラリーSCが流し込まれる第2供給工程とが行われる。
【0085】
図22は、第1供給工程の内容を模式的に表した説明図である。焼石膏スラリーSCは、例えば、所定の容器8Cに入れられ、そして、その容器8Cから第1原紙6Cが設置された第1型4Cの内部に、焼石膏スラリーSCが流し込まれる。接着改善層Xを含む第1原紙6Cが設置された第1型4Cは、水平な床面F上に載置されており、そのような状態の第1型4Cの内部に、焼石膏スラリーSCが供給される。
【0086】
図23は、第1供給工程により、第1型4C内に焼石膏スラリーSCが充填された状態を示す説明図である。焼石膏スラリーSCは、接着改善層Xが形成された第1底用原紙41Cを覆う形で、箱状に形成された第1原紙6Cの内部に供給される。焼石膏スラリーSCは、
図23に示されるように、第1周壁部42Cの端面(第1合わせ部42Ca)の高さ位置まで充填される。
【0087】
第1供給工程の後、焼石膏スラリーSCが充填された第1型4Cは、常温(例えば、20℃)環境下で放置される。第1型4C内の焼石膏スラリーSCは、後述する型閉工程において、第1型4C内からこぼれ落ちないように、流動性が低下して第1型4C内で形状が保持される程度に固まるまで放置される。
【0088】
なお、第2供給工程の後、焼石膏スラリーSCが充填された第2型5Cは、第1供給工程後の第1型4Cと同様、常温環境下で、流動性が低下して第1型4C内で形状が保持される程度に固まるまで放置される。
【0089】
その後、実施形態1と同様、型閉工程が行われる。
図24は、実施形態4の製造方法における型閉工程の内容を模式的に表した説明図である。本実施形態の型閉工程の内容は、基本的には、実施形態1の型閉工程S15の内容と同じであり、実施形態1と同様の型閉装置9を利用して行われる。
【0090】
型閉工程では、焼石膏スラリーSCの流動性が低下して固まることで第1型4C内に第1スラリー層SC1が形成されると共に、焼石膏スラリーSCの流動性が低下して固まることで第2型5C内に第2スラリー層SC2が形成された後、第1合わせ部42Caと第2合わせ部52Caとが互いに密着するように、第1型4Cと第2型5Cとが型閉じされる。第1型4C及び第2型5Cが型閉じされると、第1型4C内の第1スラリー層SC1の露出面SC1aと、第2型5C内の第2スラリー層SC2の露出面SC2aとが互いに密着する形で、第1スラリー層SC1と第2スラリー層SC2とが重ね合わせられる。
【0091】
このような型閉工程の後、型閉じされた状態の第1型4C及び第2型5Cは、実施形態1と同様、適宜、型閉装置9から降ろされ、床面等に載せられた状態で放置される。そして、第1型4C及び第2型5Cは、内部で第1スラリー層SC1及び第2スラリー層SC2が、一体化するように硬化するまで放置される。第1スラリー層SC1及び第2スラリー層SC2は、最終的に一体化して、1つの層(スラリー層)SC3となる。
【0092】
図25は、型閉じされた第1型4Cと第2型5Cとの内部において、一体化したスラリー層SC3が形成された状態を示す説明図である。スラリー層SC3は、第1型4C及び第2型5Cの内部において、第1原紙6Cと第2原紙7Cとで覆われた状態となっている。スラリー層SC3と、第1原紙6Cの第1底用原紙61Cとの間、及びスラリー層SC3と、第2原紙7Cの第2底用原紙71Cとの間に、それぞれ接着改善層Xが介在されている。このように第1原紙6Cと第2原紙7Cとで覆われたスラリー層SC3を、原紙付き成形体10Cと称する。
【0093】
本実施形態の石膏板の製造方法では、型閉工程の後、実施形態1と同様、型開工程が行われて、第1型4C及び第2型5Cから、原紙付き成形体10Cが取り出される。そして、取り出された原紙付き成形体10Cに対して、実施形態1と同様、乾燥工程が行われ、原紙付き成形体10Cが乾燥される。以上のような各工程を経ることで、石膏板1Cが得られる。このような本実施形態の石膏板の製造方法によれば、芯材2Cと、原紙3C(第1原紙6C、第2原紙7C)との接着性が向上した石膏板1Cを製造することができる。また、例えば、芯材2Cを形成するための焼石膏スラリーSCの密度を低く設定することで、芯材2Cの軽量化、ひいては石膏板1C全体の軽量化を図ることができる。
【0094】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0095】
(1)上記実施形態1等では、第1設定工程の後、第2設定工程を行う内容となっていたが、本発明はこれに限られず、例えば、他の実施形態においては、第1設定工程と、第2設定工程とを同時並行的に行ってもよい。
【0096】
(2)上記実施形態1等では、第1供給工程の後、第2供給工程を行う内容となっていたが、本発明はこれに限られず、例えば、他の実施形態においては、第1供給工程と、第2供給工程とを同時並行的に行ってもよい。
【符号の説明】
【0097】
1…石膏板、2…芯材、3…原紙、4…第1型、5…第2型、6…第1原紙、7…第2原紙、8…容器、9…型閉装置、10…原紙付き成形体、S…焼石膏スラリー、S1…第1スラリー層、S2…第2スラリー層、S3…一体化したスラリー層、11…パイプ(固形部材)