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特開2023-56184環境価値デジタルアートの生成システム、生成方法及び生成プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056184
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】環境価値デジタルアートの生成システム、生成方法及び生成プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20230412BHJP
   G16Y 10/35 20200101ALI20230412BHJP
【FI】
G06Q50/06
G16Y10/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165365
(22)【出願日】2021-10-07
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FLASH
(71)【出願人】
【識別番号】312002347
【氏名又は名称】株式会社エナリス
(74)【代理人】
【識別番号】100117514
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敦朗
(72)【発明者】
【氏名】小林 輝夫
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】環境に対する貢献度を唯一無二で希少性のある財産として所持可能とし、より嗜好性の高い付加価値を提供して、環境への貢献に対するモチベーションを喚起する。
【解決手段】電力の消費単位ごとに発電又は消費した電力量を測定し、その測定結果と、測定された電力の発電方式に関する情報とを含む実績データを生成するスマートメーター41と、実績データに基づいて消費単位に関する環境に対する貢献度の評価である環境価値情報を生成する価値評価部26aと、暗号鍵をパラメータの一部とする所定のアルゴリズムにしたがって当該暗号鍵に基づく環境価値デジタルアートを生成するデジタルアート生成部27と、当該環境価値情報に固有の暗号鍵を用いて、環境価値情報の少なくとも一部を暗号化して記憶するデータ保管処理部27bとを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力の消費単位ごとに発電又は消費した電力量を測定し、その測定結果と、測定された電力の発電方式に関する情報とを含む実績データを生成する実績データ生成部と、
前記実績データに基づいて、前記消費単位に関する環境に対する貢献度の評価である環境価値情報を生成する環境価値情報生成部と、
当該環境価値情報に固有の暗号鍵を用いて、前記環境価値情報の少なくとも一部を暗号化して記憶する記憶手段と
前記暗号鍵をパラメータの一部とする所定のアルゴリズムにしたがって、当該暗号鍵に基づく環境価値デジタルアートを生成するデジタルアート生成部と、
前記環境価値デジタルアート若しくはその所有権に関する情報の少なくとも一部を暗号化して記憶するデータ保管手段と
を備えることを特徴とする環境価値アートの生成システム。
【請求項2】
前記記憶手段は、保証システムと連携して、前記環境価値情報の少なくとも一部を暗号化して記憶させる保証システム連携部を含み、
前記保証システムは、前記環境価値情報の少なくとも一部を暗号化して記憶する複数のノードを備え、
前記ノードは、前記環境価値情報の少なくとも一部を所定のタイミングで集約してブロック化し、このブロックを既存のブロックに連結してブロックチェーンを形成し、該ブロックチェーンを複数の前記ノードで共有して分散台帳として記憶し、
前記暗号鍵は、前記既存のブロックから得られるハッシュ値である
ことを特徴とする請求項1に記載の環境価値デジタルアートの生成システム。
【請求項3】
前記デジタルアート生成部は、
デジタルアートのモチーフとなる教師データを取得する教師データ取得部と、
前記教師データに関する特徴量の分布を抽出して学習し、学習した特徴量の分布と対象となる対象データから特徴量の分布とを比較することにより、対象データが教師データであるかそれ以外のデータであるかを識別する識別ニューラルネットワークと、
前記暗号鍵を基礎ベクトルとして新たなデジタルアートである新生データを生成する生成ニューラルネットワークと、
前記新生データを前記識別ニューラルネットワークに識別させ、その識別結果に応じて、教師データであると誤認された新生データに関する情報を前記識別ニューラルネットワーク及び前記生成ニューラルネットワークに逆伝播させ、前記識別ニューラルネットワークが学習した特徴量の分布を更新させるとともに、前記生成ニューラルネットワークにおける基礎ベクトルを更新する敵対的学習部と
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の環境価値デジタルアートの生成システム。
【請求項4】
前記環境価値情報に基づいて通信ネットワーク上を検索し、当該環境価値情報に関連するデジタルアートを教師データとして収集するデータ収集部をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の環境価値デジタルアートの生成システム。
【請求項5】
ユーザー操作に応じて、前記学習に供される教師データを選択する教師データ選択部をさらに備え、
前記生成ニューラルネットワークは、教師データ選択部で選択された教師データに基づいて前記学習を行う
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の環境価値デジタルアートの生成システム。
【請求項6】
コンピューターを、
電力の消費単位ごとに発電又は消費した電力量を測定し、その測定結果と、測定された電力の発電方式に関する情報とを含む実績データを生成する実績データ生成部と、
前記実績データに基づいて、前記消費単位に関する環境に対する貢献度の評価である環境価値情報を生成する環境価値情報生成部と、
当該環境価値情報に固有の暗号鍵を用いて、前記環境価値情報の少なくとも一部を暗号化して記憶する記憶手段と
前記暗号鍵をパラメータの一部とする所定のアルゴリズムにしたがって、当該暗号鍵に基づく環境価値デジタルアートを生成するデジタルアート生成部と、
前記環境価値デジタルアート若しくはその所有権に関する情報の少なくとも一部を暗号化して記憶するデータ保管手段
として機能させることを特徴とする環境価値アートの生成プログラム。
【請求項7】
前記記憶手段は、保証システムと連携して、前記環境価値情報の少なくとも一部を暗号化して記憶させる保証システム連携部を含み、
前記保証システムは、前記環境価値情報の少なくとも一部を暗号化して記憶する複数のノードを備え、
前記ノードは、前記環境価値情報の少なくとも一部を所定のタイミングで集約してブロック化し、このブロックを既存のブロックに連結してブロックチェーンを形成し、該ブロックチェーンを複数の前記ノードで共有して分散台帳として記憶し、
前記暗号鍵は、前記既存のブロックから得られるハッシュ値である
ことを特徴とする請求項6に記載の環境価値デジタルアートの生成プログラム。
【請求項8】
前記デジタルアート生成部は、
デジタルアートのモチーフとなる教師データを取得する教師データ取得部と、
前記教師データに関する特徴量の分布を抽出して学習し、学習した特徴量の分布と対象となる対象データから特徴量の分布とを比較することにより、対象データが教師データであるかそれ以外のデータであるかを識別する識別ニューラルネットワークと、
前記暗号鍵を基礎ベクトルとして新たなデジタルアートである新生データを生成する生成ニューラルネットワークと、
前記新生データを前記識別ニューラルネットワークに識別させ、その識別結果に応じて、教師データであると誤認された新生データに関する情報を前記識別ニューラルネットワーク及び前記生成ニューラルネットワークに逆伝播させ、前記識別ニューラルネットワークが学習した特徴量の分布を更新させるとともに、前記生成ニューラルネットワークにおける基礎ベクトルを更新する敵対的学習部と
を備えることを特徴とする請求項6又は7に記載の環境価値デジタルアートの生成プログラム。
【請求項9】
実績データ生成部が、電力の消費単位ごとに発電又は消費した電力量を測定し、その測定結果と、測定された電力の発電方式に関する情報とを含む実績データを生成する実績データ生成ステップと、
環境価値情報生成部が、前記実績データに基づいて、前記消費単位に関する環境に対する貢献度の評価である環境価値情報を生成する環境価値情報生成ステップと、
当該環境価値情報に固有の暗号鍵を用いて、前記環境価値情報の少なくとも一部を暗号化して記憶手段が記憶する記憶ステップと
デジタルアート生成部が、前記暗号鍵をパラメータの一部とする所定のアルゴリズムにしたがって、当該暗号鍵に基づく環境価値デジタルアートを生成するデジタルアート生成ステップと、
前記環境価値デジタルアート若しくはその所有権に関する情報の少なくとも一部を暗号化してデータ保管手段が記憶するデータ保管ステップと
を含むことを特徴とする環境価値アートの生成方法。
【請求項10】
前記記憶ステップにおいて、
前記記憶手段は、保証システムと連携して、前記環境価値情報の少なくとも一部を暗号化して記憶させ、
前記保証システムは、複数のノードに、前記環境価値情報の少なくとも一部を暗号化して記憶させ、
前記ノードは、前記環境価値情報の少なくとも一部を所定のタイミングで集約してブロック化し、このブロックを既存のブロックに連結してブロックチェーンを形成し、該ブロックチェーンを複数の前記ノードで共有して分散台帳として記憶し、
前記暗号鍵は、前記既存のブロックから得られるハッシュ値である
ことを特徴とする請求項9に記載の環境価値デジタルアートの生成方法。
【請求項11】
前記デジタルアート生成ステップには、
教師データ取得部が、デジタルアートのモチーフとなる教師データを取得する教師データ取得ステップと、
識別ニューラルネットワークが、前記教師データに関する特徴量の分布を抽出して学習し、学習した特徴量の分布と対象となる対象データから特徴量の分布とを比較することにより、対象データが教師データであるかそれ以外のデータであるかを識別する識別ステップと、
生成ニューラルネットワークが、前記暗号鍵を基礎ベクトルとして新たなデジタルアートである新生データを生成する生成ステップと、
敵対的学習部が、前記新生データを前記識別ニューラルネットワークに識別させ、その識別結果に応じて、教師データであると誤認された新生データに関する情報を前記識別ニューラルネットワーク及び前記生成ニューラルネットワークに逆伝播させ、前記識別ニューラルネットワークが学習した特徴量の分布を更新させるとともに、前記生成ニューラルネットワークにおける基礎ベクトルを更新する敵対的学習ステップと
を含むことを特徴とする請求項9又は10に記載の環境価値デジタルアートの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電する給電側と電力を消費する需要家側との間で電力の売買を実行する取引所システムにおいて、環境に対する貢献度についてより嗜好性の高い付加価値を提供する環境価値デジタルアートの生成システム、生成方法及び生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光や太陽熱、水力、風力、バイオマス、地熱などのエネルギーは、一度利用しても比較的短期間に再生が可能であり、資源が枯渇しない環境に好適なエネルギーとして、導入・普及の促進が望まれている。また、近年では、太陽光発電や風力発電などの再利用可能エネルギーを含む電力を、需要家が望む発電種別に応じて、発電所と需要家との間でマッチングを行うことが可能な電力取引システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1のシステムでは、需要家において電力を必要とする所定時間帯に、複数の発電所における供給可能条件とを照合して、対応する組合せをマッチングすることで、需要家が望む発電種別による電力を紐付けることができる。
【0003】
ところで、同じ電力であっても、発電種別や環境によってその発電コストや環境に対する負担が異なる一方で、蓄電による時間差やスマートグリッド等の複雑な送電経路、電力の売買取引など、電力取引市場では電力の価値は多様化しそれが混在することから、上記特許文献1に開示されたシステムでは、電力トークンなどを介して電力そのものにその発電の由来に関する情報を持たせて、その電力の価値を適正に評価して課金や売買を行える仕組みも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-107200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した特許文献1に開示された電力取引システムでは、電力トークンにより、供給された電力の環境に対する貢献度、所謂環境価値を電力トークンという形で評価することができるが、その評価結果は、例えばCOの排出量などに換算するなど、あくまで数値として示される形態となっている。
【0006】
しかしながら、環境への貢献度を単に数値で示されても一般的なユーザーにはその価値がイメージしづらいという問題があり、従来でも、CO排出量に基づく金額に換算する方法も執られているが、単に金額を提示するのみでは無味乾燥に過ぎるため、環境への貢献に対するモチベーションが減退される惧れがある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、かかる従来技術の課題に鑑み、電力を発電する給電側と電力を消費する需要家側との間で電力の売買を実行する取引所システムにおいて、環境に対する貢献度を、単なる数値ではなく、唯一無二で希少性のある財産として所持可能とし、より嗜好性の高い付加価値を提供して、環境への貢献に対するモチベーションを喚起できる環境価値デジタルアートの生成システム、生成方法及び生成プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る環境価値アートの生成システムは、
電力の消費単位ごとに発電又は消費した電力量を測定し、その測定結果と、測定された電力の発電方式に関する情報とを含む実績データを生成する実績データ生成部と、
実績データに基づいて、消費単位に関する環境に対する貢献度の評価である環境価値情報を生成する環境価値情報生成部と、
当該環境価値情報に固有の暗号鍵を用いて、環境価値情報の少なくとも一部を暗号化して記憶する記憶手段と
暗号鍵をパラメータの一部とする所定のアルゴリズムにしたがって、当該暗号鍵に基づく環境価値デジタルアートを生成するデジタルアート生成部と、
環境価値デジタルアート若しくはその所有権に関する情報の少なくとも一部を暗号化して記憶するデータ保管手段と
を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る環境価値アートの生成方法は、
(1)実績データ生成部が、電力の消費単位ごとに発電又は消費した電力量を測定し、その測定結果と、測定された電力の発電方式に関する情報とを含む実績データを生成する実績データ生成ステップと、
(2)環境価値情報生成部が、前記実績データに基づいて、前記消費単位に関する環境に対する貢献度の評価である環境価値情報を生成する環境価値情報生成ステップと、
(3)当該環境価値情報に固有の暗号鍵を用いて、前記環境価値情報の少なくとも一部を暗号化して記憶手段が記憶する記憶ステップと
(4)デジタルアート生成部が、前記暗号鍵をパラメータの一部とする所定のアルゴリズムにしたがって、当該暗号鍵に基づく環境価値デジタルアートを生成するデジタルアート生成ステップと、
(5)前記環境価値デジタルアート若しくはその所有権に関する情報の少なくとも一部を暗号化してデータ保管手段が記憶するデータ保管ステップと
を含むことを特徴とする。
【0010】
上記発明において、
前記データ保管手段は、保証システムと連携して、前記環境価値情報、及び環境価値デジタルアート若しくはその所有権に関する情報の少なくとも一部を暗号化して記憶させる連携部をさらに備え、
前記保証システムは、前記環境価値情報、環境価値アート及びこれらの所有権に関する情報の少なくとも一部を暗号化して記憶する複数のノードを備え、
前記ノードは、前記環境価値情報の少なくとも一部を所定のタイミングで集約してブロック化し、このブロックを既存のブロックに連結してブロックチェーンを形成し、該ブロックチェーンを複数の前記ノードで共有して分散台帳として記憶し、
前記暗号鍵は、前記既存のブロックから得られるハッシュ値である
ことが好ましい。
【0011】
また、上記発明において、
前記デジタルアート生成部は、
デジタルアートのモチーフとなる教師データを取得する教師データ取得部と、
前記教師データに関する特徴量の分布を抽出して学習し、学習した特徴量の分布と対象となる対象データから特徴量の分布とを比較することにより、対象データが教師データであるかそれ以外のデータであるかを識別する識別ニューラルネットワークと、
前記暗号鍵を基礎ベクトルとして新たなデジタルアートである新生データを生成する生成ニューラルネットワークと、
前記新生データを前記識別ニューラルネットワークに識別させ、その識別結果に応じて、教師データであると誤認された新生データに関する情報を前記識別ニューラルネットワーク及び前記生成ニューラルネットワークに逆伝播させ、前記識別ニューラルネットワークが学習した特徴量の分布を更新させるとともに、前記生成ニューラルネットワークにおける基礎ベクトルを更新する敵対的学習部と
を備えることが好ましい。
【0012】
さらに、上記発明では、前記環境価値情報に基づいて通信ネットワーク上を検索し、当該環境価値情報に関連するデジタルアートを教師データとして収集するデータ収集部をさらに備えることが好ましい。
【0013】
また、上記発明では、ユーザー操作に応じて、前記学習に供される教師データを選択する教師データ選択部をさらに備え、前記生成ニューラルネットワークは、教師データ選択部で選択された教師データに基づいて前記学習を行うことが好ましい。
【0014】
なお、上述した本発明に係るシステムや方法は、所定の言語で記述された本発明のプログラムをコンピューター上で実行することにより実現することができる。すなわち、本発明のプログラムを、携帯端末装置やスマートフォン、ウェアラブル端末、モバイルPCその他の情報処理端末、パーソナルコンピューターやサーバーコンピューター等の汎用コンピューターのICチップ、メモリ装置にインストールし、CPU上で実行することにより、上述した各機能を有するシステムを構築して、本発明に係る方法を実施することができる。
【0015】
また、本発明のプログラムは、例えば、通信回線を通じて配布することが可能であり、またコンピューターで読み取り可能な記録媒体に記録することにより、スタンドアローンの計算機上で動作するパッケージアプリケーションとして譲渡することができる。具体的にこの記録媒体としては、フレキシブルディスクやカセットテープ等の磁気記録媒体、若しくはCD-ROMやDVD-ROM等の光ディスクの他、RAMカードなど、種々の記録媒体に記録することができる。そして、このプログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体によれば、汎用のコンピューターや専用コンピューターを用いて、上述したシステム及び方法を簡便に実施することが可能となるとともに、プログラムの保存、運搬及びインストールを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電力の給電側と電力を消費する需要家側との間で電力の売買を実行する取引所において、環境に対する貢献度を環境価値情報として評価するとともに、その環境価値情報を暗号化して記憶する際に用いられる、当該環境価値情報に固有の暗号鍵に基づいて環境価値デジタルアートを生成する。生成されたこの環境価値デジタルアートは、環境に対する貢献度を単なる数値ではなく、唯一無二のアートであり、希少性のある財産として所持可能とし、電力取引における環境価値に対してより嗜好性の高い付加価値を提供することができ、その結果、環境への貢献に対するモチベーションを喚起することができる。
【0017】
また、例えば、環境価値デジタルアートの所有権に関する情報の保管手段として、所謂NFT(Non-Fungible Token)の仕組みを用いる場合には、NFTが環境価値デジタルアート等の資産に関する鑑定書や所有証明書としての役割を果たすことによって、環境価値デジタルアートの生成後には改ざんを検証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る電力取引システムにおける取引形態を示す概念図である。
図2】実施形態に係る電力取引システムの全体構成を示す概念図である。
図3】実施形態に係る電力制御端末の内部構成を示すブロック図である。
図4】実施形態に係る仲介サーバーの内部構成を示すブロック図である。
図5】実施形態に係るアルゴリズム実行部の内部構成を示すブロック図である。
図6】実施形態に係る保証システムの内部構成を示すブロック図である。
図7】実施形態に係るデジタルアートの生成処理の概要を示す説明図である。
図8】実施形態に係る電力取引システムのトークン発行時における手順を示すフロー図である。
図9】実施形態に係る電力取引システムの売電及び電力消費時における手順を示すフロー図である。
図10】実施形態に係る電力取引システムのトークン移転時における手順を示すフロー図である。
図11】実施形態に係る電力取引システムにおける公開鍵と秘密鍵との関係を例示する説明図である。
図12】実施形態に係る電力取引システムのブロックチェーンに関する説明図である。
図13】実施形態に係る電力取引システムのブロックチェーンに関する説明図である。
図14】実施形態に係る電力取引システムのブロックチェーンに関する説明図である。
図15】実施形態に係る電力取引システムのブロックチェーンに関する説明図である。
図16】実施形態に係る電力取引システムの各トークン及びデータの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る環境価値デジタルアートの生成方法、生成システム、生成プログラムの実施形態を詳細に説明する。本実施形態では、電力取引システムにより提供される電力取引サービスにおいて、本発明に係る環境価値デジタルアートの生成方法等を利用する場合を例示する。なお、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0020】
ここで、デジタルアートとは、絵画やイラストなどの画像でもよく、アニメーションやコンピューターグラフィックスなどの動画でもよく、また、デジタルミュージックや、小説や詩などのテキストデータなど電子化可能な創作物全般が含まれる。
【0021】
(電力取引システムの全体構成)
本実施形態では、電力取引システムにより提供される電力取引サービスに、本発明に係る環境価値デジタルアートの生成システムが組み込まれ、電力取引上で評価される環境価値を環境価値デジタルアートという形で具現化するとともに、その所有権を管理する。図1は、本実施形態に係る電力取引サービスにおける取引形態を示す概念図であり、図2は、本実施形態に係る電力取引システムの全体構成を示す概念図である。
【0022】
本実施形態では、通信ネットワーク3上に構築された電力取引システム1を通じて、トークンを利用した電力売買取引の仲介業務を行うサービスが提供される。具体的には、図1に示すように、本サービスでは、各施設(発電所、需要家、アグリゲーター等)がそれぞれ備える電力制御端末を通じて、トークン取引プラットフォームにアクセスして電力の売買取引を行う。この電力の売買取引に際しては、電力の価値情報である電力取引トークンと併せて、DR(Demand Respons:電力需要)制御や環境価値に関する価値情報である環境価値トークンを発行して、これらのトークンを売手と買手との間で取り交わして電力やその付加価値の売買取引を成立させる。
【0023】
これらのトークンは、先ず、発電された電力の電力量と発電方式によって電力取引トークンが発行され、売却可能な電力が、その電力と等価の電力取引トークンとしてトークン取引プラットフォームの電力取引トークンプールに蓄積され、これらのトークンプールを通じて売買される。最終的にこの電力取引トークンは、電力を使用(消費)できる権利として需要家等が購入し、その購入した需要家等は、電力取引トークンと等価の電力を使用することができ、実際に電力を消費することによって、その消費された電力と等価の電力取引トークンが消却される。この電力取引トークンは、トークン取引プラットフォームにおける売買取引の需給バランスによって価額が変動される。電力取引トークンには、図16に示すように、発電された際に、電力量、発電方式、発電場所、発電時期等の由来情報が紐付けられ、さらに、付加情報として、当該電力取引トークンから派生した環境価値トークン等の関連トークン情報、売買等による移転履歴を含む取引履歴なども関連付けられて保持されている。蓄積された各トークンは、それぞれ独立した仮想通貨として売買取引が可能である。
【0024】
環境価値トークンは、例えば、自家消費の電力量やCO削減量など、環境に対する貢献度に応じて算定されて、発行されるトークンである。この環境価値トークンは、移転することが可能であり、図16に示すような、その移転が実行された日時、及び移転元(所有者ID)並びに移転先(新規の所有者ID)、移転の際の価額(対価量)、その他の取引履歴を記録した移転履歴が発行される。この環境価値トークンの移転履歴には、環境価値トークンの価額、発行元が記録され、譲渡取引による移転先が譲渡の度に取引履歴として追記されるようになっている。そして、消却された環境価値トークンに係る移転履歴は、トークン取引プラットフォームを介して、保証システムであるブロックチェーンに改ざん不能に記録される。
【0025】
なお、この環境価値トークンの評価方法の一つとして、発電した電力の方式と、消費又は蓄電した消費した電力に係る発電又は蓄電の種別に基づいて、環境に対する貢献度の高い発電種別による電力を、環境に対する貢献度の高い蓄電種別で蓄電した場合に、その価値を増大させることが挙げられる。例えば、太陽光発電などの再利用可能エネルギーにより発電された電力を、EVトラックなどの電気自動車用のバッテリーに蓄電し、消費したときには、再利用可能エネルギーによる環境貢献と、電気自動車の利用による環境貢献との相乗効果を奏することから、その評価として環境価値トークンを付与したり、その価額を高めたり等の処理を行うことができる。これらの環境に対する貢献度(CO削減量や自家消費量)は、由来情報、その他関連情報としてトークン内に保持されるとともに、仲介サーバー2のトークン管理データベース21a、及びブロックチェーンインターフェースの各ノードに保持される。
【0026】
さらに、環境価値トークンは、実績データを解析することによって、例えば、一定の期間にわたって電力を制御させてもらった実績値を算定し、その対価量が定められる。また、一定の期間にわたってピーク時の電力消費を回避(ピークカット)した実績値を算定し、そのピークカットが回避された月の当初に設定された最大電力を下回るときには、電力料金を支払いすぎたこととなることから、払いすぎた電力料金を経済的効果分として、環境価値トークンの対価量を定めるようにしてもよい。これに関する情報は、トークン内に保持されるとともに、仲介サーバー2のトークン管理データベース21a、及びブロックチェーンインターフェースの各ノードに保持される。
【0027】
図1に示した例では、発電所や電力プロシューマ、発電設備を備えた需要家、或いはこれらの需要家をとりまとめるアグリゲーターは電力を提供し、発電量に応じた電力取引トークンを取得する。このとき、その電力の発電方式や発電時期(季節や時間帯)による環境に対する貢献度や、DR制御による経済効果に応じて環境価値トークンも取得される。そして、取得した各種トークンは精算することにより換金することができるとともに、各トークンプールにプールすることで他者への売却を行いその対価を受け取ることができる。なお、アグリゲーターは、需要家の電力需要を束ねて集約して効果的にエネルギーマネジメントサービスを提供する事業者であり、電力会社と需要者の間で、電力の需要と供給のバランスをコントロールするいわゆるDR制御を実施する。
【0028】
一方、発電所や電力プロシューマ、発電設備を備えた需要家から供給された電力は、需
要先である需要家に供給される。この電力取引は電力取引トークンとして記録される。
他方、各トークンプールに蓄積された各トークンは、独立した仮想通貨としてブロッ
クチェーンインターフェースサービスを通じて、アグリゲーターやPPS、需要家、企業、
その他の取引市場との間で取引することができる。この場合も、各種トークンは精算する
ことができるとともに、他者へ価値移転を行いその対価を受け取ることができる。
【0029】
図2は、本実施の形態に係る電力取引システム1のネットワーク構成を示した図である。同図に示すように、電力取引システム1は、トークン取引プラットフォームを提供する仲介サーバー2、各施設(発電所、PPS、需要家、電力プロシューマ等)に設けられた電力制御端末40が通信ネットワーク3で相互に接続されて構成されている。また、通信ネットワーク3上には、電力取引の保証を行うブロックチェーンインターフェースサービスを提供する保証システム6が設けられている。
【0030】
電力制御端末40は、例えば、CPUを備えた情報処理端末で構成されており、発電所や各需要家、PPS、電力プロシューマ、アグリゲーター等の各施設の設備を統括的に制御する装置である。この電力制御端末40が制御する対象設備としては、需要家や電力プロシューマ等の施設内に配備されたユーザーシステム4に含まれるスマートメーター41、蓄電池42、PV(Photovoltaics:太陽光発電)43など、発電や蓄電、電力消費を管理する装置が含まれる。なお、この電力制御端末40が制御対象とする各種装置は、必要に応じて省略することができる。例えば、需要家ではその電力消費がスマートメーター41により測定されるが、需要家によっては発電設備及び蓄電設備を有するものもあれば、発電設備又は蓄電設備のいずれかの設備を有するもの、或いは発電・蓄電設備のいずれも備えずスマートメーター41だけが設けられ電力消費のみを行うものもある。また、電力プロシューマも電力消費をする立場にあるが、太陽光発電や蓄電池を備え、電力を供給する側にも位置することができる。
【0031】
仲介サーバー2は、売電側や買電側が電力制御端末40を介して電力を取引するのを仲介するコンテンツサーバー装置である。この仲介サーバー2は、トークン取引プラットフォームとして仲介ウェブサイトをオンライン上に提供しており、当該仲介ウェブサイトを通じて売電側、買電側、その他の市場や企業に対して、各種のトークン取引仲介サービスを提供している。
【0032】
そして、この仲介サーバー2に電力制御端末40からアクセスすることで、各施設や設備における発電・蓄電・電力消費に応じて各種トークンの取引サービスを利用することができる。このトークン取引サービスでは、売手Uaによるトークンの発行及び売却と、電力を消費する側となる買手Ubによるトークンの購入及び消却を管理する。詳述すると、電力制御端末40は、仲介サーバー2と連携して、各設備における発電・蓄電・電力消費に基づいて発電データ・蓄電データ及び消費データを生成し、当該電力に関する情報を記載した各種トークンを発行・売買及び消却を実行する。この各種トークンに記述された各情報と、当該トークンの発行・売買及び消却の履歴は、保証システム6によるブロックチェーンインターフェースサービスを通じ、分散台帳システムに改ざん不能な状態で保管される。
【0033】
また、トークン取引プラットフォームにおいて取引可能なトークンは、トークン取引プラットフォームにおける売買取引の需給バランスによって定められた価額によって、相互に等価交換可能であり、また各種トークンは、精算することによって、実際の通貨の他、仮想通貨やポイント、その他の交換価値を有する価値情報に換金することができる。
【0034】
通信ネットワーク3は、通信プロトコルTCP/IPを用いたIP網であって、種々の通信回線(電話回線やISDN回線、ADSL回線、光回線などの公衆回線、専用回線、WCDMA(登録商標)及びCDMA2000などの第3世代(3G)の通信方式、LTEなどの第4世代(4G)の通信方式、及び第5世代(5G)以降の通信方式等の他、Wifi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの無線通信ネットワーク)を相互に接続して構築される分散型の通信ネットワークである。このIP網には、10BASE-Tや100BASE-TX等によるイントラネット(企業内ネットワーク)や家庭内ネットワークなどのLANなども含まれる。
【0035】
(各装置の構成)
次いで、各装置の構成について説明する。なお、説明中で用いられる「モジュール」とは、装置や機器等のハードウェア、或いはその機能を持ったソフトウェア、又はこれらの組合せなどによって構成され、所定の動作を達成するための機能単位を示す。
【0036】
(1)ユーザーシステム4
ユーザーシステム4は、図2に示すように、各需要家や電力プロシューマが有する電力設備全般であり、電力を消費する単位でもあり発電や蓄電の設備を備える場合がある。発電の設備としては、例えば太陽光発電や風力発電等が挙げられる。このユーザーシステム4には、電力売買部としての電力制御端末40と、実績データ生成部としてのスマートメーター41とが含まれる。
【0037】
各ユーザーシステム4に設置される電力制御端末40は、通信機能やCPUを備えた情報処理端末であり、OS或いはファームウェア、各種アプリケーションソフトをインストールすることにより様々な機能が実装可能であり、本実施形態では、アプリケーションをインストールして実行することによって、電力売買部として機能される。このエージェント用の情報処理端末としては、パーソナルコンピューターの他、例えば、スマートフォンや、機能を特化させた専用装置により実現することができ、タブレットPCやモバイルコンピューター、携帯電話機が含まれる。
【0038】
具体的に電力制御端末40は、図3に示すように、CPU402と、メモリ403と、入力インターフェース404と、ストレージ装置401と、出力インターフェース405と、通信インターフェース406とを備えている。なお、本実施形態では、これらの各デバイスは、CPUバス400を介して接続されており、相互にデータの受渡しが可能となっている。なお、電力制御端末40の電力売買部としての機能としては、例えば、図16に示すような、電力提供期間と電力量(数量)と対価量(売出価格又は買取価格)とを含む売出データD21又は買付データD22を当該電力使用期間開始前の所定の期間(例えば24時間など)である売買可能期間中に生成するなどが挙げられる。
【0039】
メモリ403及びストレージ装置401は、データを記録媒体に蓄積するとともに、これら蓄積されたデータを各デバイスの要求に応じて読み出す装置であり、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)、メモリカード等により構成することができる。
【0040】
入力インターフェース404は、ユーザーシステム内に設置された各設備から制御信号を受信するモジュールであり、受信された制御信号はCPU402に伝えられ、OSや各アプリケーションによって処理される。他方、出力インターフェース405は、ユーザーシステム内に設置された各設備へ制御信号を出力するモジュールである。かかるユーザーシステム内に設置される各設備は、その需要家やプロシューマなどの形態によって異なり、例えば、需要家では、電力消費についてはスマートメーター41により測定され、発電・蓄電については、太陽光発電及び蓄電設備の両方を有するものもあれば、太陽光発電又は蓄電池のいずれかの設備を有するもの、発電・蓄電設備のいずれも備えないものもある。また、プロシューマでは、電力消費をスマートメーター41により計測し、太陽光発電(PV)42や蓄電池42に対する制御信号が入出力される。
【0041】
ここで、スマートメーター41は、需要単位であるユーザーシステム内における発電・蓄電・電力消費を統括的に管理する実績データ生成部であり、需要家での電力消費を計測する他、ユーザーシステム内の他の設備、例えば蓄電池や太陽光発電による蓄電や発電も制御・管理し、需要家において各電力使用期間中に発電、蓄電又は消費した電力量を測定して、図16に示すような実績データD3を生成し、定期的にPPSや、電力会社、仲介サーバー2に送出する。この実績データD3の送信は、インターネットや電話回線、専用回線等を通じて、直接PPSや、電力会社、仲介サーバー2に送出する。
【0042】
通信インターフェース406は、他の通信機器とデータの送受信を行うモジュールであり、通信方式としては、例えば、電話回線やISDN回線、ADSL回線、光回線などの公衆回線、専用回線、WCDMA(登録商標)及びCDMA2000などの第3世代(3G)の通信方式、LTEなどの第4世代(4G)の通信方式、及び第5世代(5G)以降の通信方式等の他、Wifi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの無線通信ネットワークが含まれる。
【0043】
CPU402は、各部を制御する際に必要な種々の演算処理を行う装置であり、各種プログラムを実行することにより、CPU11上に仮想的に各種モジュールを構築する。このCPU402上では、OS(Operating System)が起動・実行されており、このOSによって各電力制御端末40の基本的な機能が管理・制御されている。また、このOS上では種々のアプリケーションが実行可能になっており、CPU402でOSプログラムが実行されることによって、種々の機能モジュールがCPU上に仮想的に構築される。
【0044】
本実施形態では、CPU402上でブラウザソフトを実行することによって、このブラウザソフトを通じて、システム上の情報を閲覧したり、情報を入力したりする。詳述すると、このブラウザソフトは、Webページを閲覧するためのモジュールであり、通信ネットワーク3を通じて仲介サーバー2からHTML(HyperText Markup Language)ファイルや画像ファイル、音楽ファイルなどをダウンロードし、レイアウトを解析して表示・再生する。このブラウザソフトにより、フォームを使用してユーザーがデータをWebサーバーに送信したり、JavaScript(登録商標)やFlash、及びJava(登録商標)などで記述されたアプリケーションソフトを動作させたりすることも可能であり、このブラウザソフトを通じて、各ユーザーは、仲介サーバー2が提供するトークン取引仲介サービスを利用することができる。
【0045】
本実施形態では、CPU402上でブラウザソフトを実行し、ブラウザソフトを通じて仲介サーバー2が提供するトークン取引プラットフォームにアクセスすることによって、CPU402上に電力売買部402aが構成される。この電力売買部402aは、電力取引トークンの売出データ又は買付データを生成するモジュールである。また、ブラウザソフトは、保証システム6の取引履歴提供部64aにアクセスすることにより、取引に係るトークンに関する情報(約定データ、売出データ、買付データ等)を閲覧することができ、これにより、例えば、売電された電力の発電方法とその電力の取引履歴とを閲覧することができる。
【0046】
(2)仲介サーバー2
仲介サーバー2は、電力取引サービスの提供業者が管理運用するサーバー装置であり、電力取引サービスを提供するとともに、本実施形態では、環境価値デジタルアートの生成サービスを提供する。電力取引については、電力の売買取引を希望するユーザーが、通信ネットワーク3を通じてこの仲介サーバー2にアクセスし、この仲介サーバー2が提供するトークン取引プラットフォームを介して、電力に関する取引を実行できる。具体的に仲介サーバー2は、図4に示すように、ユーザー管理部22と、通信インターフェース23と、トークン管理部24、電力取引実行部25と、実績データ管理部26と、デジタルアート生成部27とを備えている。また、仲介サーバー2は、データベース群を有しており、このデータベース群としては、トークン管理データベース21aと、ユーザーデータベース21bと、実績管理データベース21cと、電力取引管理データベース21dと、素材データベース21eとが含まれる。
【0047】
通信インターフェース23は、通信ネットワーク3を通じて、他の通信機器とデータの送受信を行うモジュールであり、本実施形態では、本サービスを提供するために各電力制御端末40及びスマートメーター41、及び保証システム6に接続されている。
【0048】
ユーザー管理部22は、ユーザーの管理を行うモジュールであり、認証部22a及び会員登録部22bを備えている。認証部22aは、電力取引に係るアクセス者の正当性を検証するコンピューター或いはその機能を持ったソフトウェアであり、ユーザーを特定するユーザーIDに基づいて認証処理を実行する。本実施形態では、通信ネットワーク3を通じてアクセス者の端末装置からユーザーID及びパスワードを取得し、ユーザーデータベース21bを照合することによって、アクセス者にその権利があるか否かや、そのアクセス者が本人であるか否かなどを確認する。この認証部22aによる認証処理の前提としてユーザーは、会員登録部22bを通じて会員登録を行っておく必要があり、この会員登録によりユーザーIDやパスワード等の認証情報がユーザーデータベース21bに保持される。
【0049】
電力取引実行部25は、通信ネットワーク3を通じて電力取引の仲介を行うモジュールであり、本実施形態では、約定データ生成部25a及び保証システム連携部25bを備えている。
【0050】
約定データ生成部25aは、売出データD21及び買付データD22に基づいて成立した取引の約定データD1を生成する。詳述すると、電力取引実行部25は、買手Ubにおける需要条件及び売手Uaにおける供給可能条件である売出データD21及び買付データD22を照合して、対応する組合せをマッチングすることで取引を成立させ、成立した取引の需要条件や供給可能条件である供給元や発電方式、供給可能時期、電力価格などの情報を記述した約定データD1を生成する。
【0051】
保証システム連携部25bは、ネットワーク上の保証システム6に対して、電力取引に関する与信や、セキュリティ管理、取引記録の保管など、電力取引に必要な処理を保証システム6に依頼し、協働して処理を進めるモジュールである。電力取引実行部25は、この保証システム連携部25bを通じて保証システム6と連携をとることによって、各種トークンの授受を管理し、トークンの取得者に関する公開アドレスを追加して、各トークンで証明される各種権利の所有者を変更することにより、各所有権を移転する。
【0052】
ブロックチェーンインターフェースサービス(保証システム)6は、環境価値情報、環境価値アート及びこれらの所有権に関する情報の少なくとも一部を暗号化して記憶する複数のノードを備える。これらのノードは、環境価値情報、環境価値アート及び所有権に関する情報の少なくとも一部を所定のタイミングで集約してブロック化し、このブロックを既存のブロックに連結してブロックチェーンを形成し、ブロックチェーンを複数のノードで共有して分散台帳として記憶する。本実施形態において環境価値デジタルアートを生成するための暗号鍵は、既存のブロックから得られるハッシュ値である。この暗号鍵としてのハッシュ値はハッシュ値取得部27cにより取得され、アルゴリズム実行部28に入力され、環境価値デジタルアートの生成に供される。
【0053】
トークン管理部24は、各種トークンの生成(発行)、移転、消却を実行し、管理するモジュールであり、電力取引実行部25の保証システム連携部25bと連携して各種トークンの発行、移転又は消却を実行すべく、各種トークン内のデータの更新を行う。具体的にトークン管理部24は、トークン発行部24aと、トークン消却部24bと、トークン移転部24cとを備えている。
【0054】
トークン発行部24aは、ユーザーの要求に応じてユーザーに対して各種コイントークンを発行するモジュールである。例えば、実績データに基づいて、発電設備により売電可能な電力を有するユーザーに対して電力取引トークンを発行したり、また、実績データを解析することによって、発電された電力の電力取引トークンから派生させる形で、各電力の発電方式や蓄電方式の環境に対する貢献度に応じた価値情報である環境価値トークンを生成し、また、電力需要の制御(DR制御)を実施することによる経済効果に応じた価値情報としても環境価値トークンを生成する。
【0055】
本実施形態においてトークン発行部24aは、実績データに含まれる発電方式によるCO削減量、又は自家消費量に基づいて環境価値トークンを発行する。例えば、トークン発行部24aは、実績データに含まれる発電方式が太陽光発電や風力発電などの再利用可能エネルギーによるものである場合には、その発電方式による発電量と、その発電方式によって削減されるCOの量との対応関係を一覧としたCO削減テーブルデータを保持しており、実績データに含まれる発電量に基づいてCO削減テーブルデータを参照して、環境価値トークンの価額や数量を決定し、決定された価額又は数量の環境価値トークンを発行する。発行された環境価値トークンは、実績データに含まれる発電者の所有としてトークンプールに蓄積される。
【0056】
また、例えば、トークン発行部24aは、実績データに含まれる発電方式が太陽光発電や風力発電などの再利用可能エネルギーによるものである場合であって、その電力を自家消費しているときには、その自家消費によって削減されるCO量や、送配電による損失エネルギーとの対応関係を一覧とした自家消費テーブルデータを保持しており、実績データに含まれる自家消費量に基づいて自家消費テーブルデータを参照して、環境価値トークンの価額や数量を決定し、決定された価額又は数量の環境価値トークンを発行する。発行された環境価値トークンは、実績データに含まれる自家消費したユーザーの所有としてトークンプールに蓄積される。
【0057】
トークン消却部24bは、実績データD3に基づいて電力取引トークンを消却したり、移転要求に係る環境価値トークンを消却するモジュールである。ここで、トークンの消却とはその価額を0としたり、秘密鍵を消去或いは不明にして所有者の書換を不能としたアカウントに収納するなど、通貨としての交換価値を消失させる処理を指す。なお、このトークン消却部24bには、各種トークンの時価に応じて換金する機能を設けてもよい。この機能は、各種トークンの時価に関する情報をネットワーク上から取得し、精算することによって、実際の通貨の他、仮想通貨やポイント、その他の交換価値を有する価値情報に換金する。また、トークン消却部24bは、各ユーザーが各電力使用期間中に発電又は使用した電力量と当該電力量に係る対価量との確定値を含む確定データを生成又は取得し、その確定データに基づいて各ユーザーが支払い又は受け取る対価を精算する機能を設けてもよい。
【0058】
トークン移転部24cは、各トークンの所有権を書き換えることにより、トークンの譲受を制御するモジュールであり、本実施形態では、この書換にはブロックチェーンインターフェースサービスを用いる。このトークンの移転は、その移転を指示する移転要求に基づいて実行される。この移転要求は、例えば電力取引実行部25などにおいてトークンの売買が成立した際に電力取引実行部25から入力されたり、各ユーザーによる操作によって電力制御端末40から直接入力されるデータであり、移転の対象となるトークンの種別や、移転元及び移転先に関するアカウント情報、その数量が含まれる。
【0059】
特に、トークン移転部24cは、入力された移転要求が、電力取引トークン又は環境価値トークンの移転を要求するものである場合、移転要求の対象が電力取引トークンであるときには要求に係る電力取引トークンを移転し、移転要求の対象が環境価値トークンであるときには要求に係る環境価値トークンをトークン消却部24bに消却させ、消却した環境価値トークンに係る移転要求に含まれる移転に関する情報を移転履歴として生成する機能を有している。この消却された環境価値トークンに係る移転履歴は、トークン取引プラットフォームを介して、保証システムであるブロックチェーンに改ざん不能に記録される。
【0060】
トークン管理データベース21aは、発行されたり消却されたりしたトークンに関する情報を蓄積する記憶装置であり、各トークンの所有者と、その種別、及び価額若しくは数量とを紐付けて蓄積する。各種トークンは、その種別に応じて、電力取引トークンプール、環境価値トークンプールとして分類されて蓄積される。また、各トークンに関する取引履歴等の関連情報も、各トークンに紐付けられて記録される。例えば、環境価値トークンを移転する際に発行される移転履歴も、移転されて価額が0とされた変換元の環境価値トークンと紐付けられて記録されている。
【0061】
ユーザーデータベース21bは、各需要家のユーザーや、アグリゲーター等の業者に関する情報を蓄積する記憶装置である。なお、本実施形態において、ユーザー本人を特定する個人情報はユーザーデータベース21bには蓄積されておらず、各入居者・各ユーザーを識別する公開アカウント情報のみが格納されている。電力取引に必要な信用情報は、各入居者に属している公開アカウントに関する与信を保証システム6に対して要求し、それに対する応答内容で評価される。
【0062】
実績管理データベース21cは、発電所や需要家、アグリゲーター等の電力の授受に関係する者による実績データを収集し蓄積して管理する記憶装置である。各スマートメーターから受信した各実績データは、この実績管理データベースに蓄積され、トークン発行や消却、価値評価の用に供される。電力取引管理データベース21dは、トークンの取引実績を記録する記憶装置である。
【0063】
これら各データベース21a~dに蓄積されたデータの少なくとも一部は、保証システム連携部25bを通じて保証システム6に記録される。保証システム6は、各データベース21a~dに蓄積されたデータの少なくとも一部を、ノードにおいて、所定のタイミングで集約してブロック化し、ブロックを用いてブロックチェーンを形成し、このブロックチェーンを複数のノードで共有させて分散台帳として記憶させる。
【0064】
実績データ管理部26は、各ユーザーシステムから実績データを収集し、解析することによって、発行すべきトークンの種別や数量を算定するモジュールであり、この実績データ管理部26による解析結果は、トークン管理部24に入力され、トークンの発行や消却の用に供される。具体的に、実績データ管理部26は、価値評価部26aを備えている。
【0065】
価値評価部26aは、実績データに基づいて、消費単位に関する環境に対する貢献度の評価である環境価値情報を生成する環境価値情報生成部としての役割を果たし、実績データに含まれる、各ユーザーが各電力使用期間中に発電又は消費した電力量の測定値や、発電方法及び発電したユーザーを示す発電データ、若しくは蓄電量及びその蓄電期間に関する蓄電データを解析する。トークン管理部24では、この価値評価部26aによる解析結果に基づいて、電力取引トークンを発行又は消却したり、電力取引トークンを発行する。また、トークン発行部24aは、価値評価部26aによる発電データ又は蓄電データを含む実績データの解析結果に基づいて、環境価値情報である環境価値トークンや、余剰電力を生成した対価としての電力需要制御トークンを発行する。
【0066】
さらに、実績データには、消費した電力に係る発電又は蓄電の種別が含まれており、価値評価部26aは、実績データを解析して、環境に対する貢献度の高い発電種別による電力を、環境に対する貢献度の高い蓄電種別で蓄電した状態を抽出し、その電力量や時間帯を算出し、価値を評価する。トークン発行部24aは、この価値評価部26aによる実績データの解析結果に基づいて、環境に対する貢献度の高い発電種別による電力を、環境に対する貢献度の高い蓄電種別で蓄電した場合に、環境価値トークンの価値を増大させる。
【0067】
デジタルアート生成部27は、暗号鍵をパラメータの一部とする所定のアルゴリズムにしたがって、当該暗号鍵に基づく環境価値デジタルアートを生成するモジュールであり、本実施形態では、データ収集部27aと、アルゴリズム実行部28と、データ保管処理部27bと、ハッシュ値取得部27cと、素材データベース21eを備えている。
【0068】
データ保管処理部27bは、環境価値情報とともに環境価値デジタルアートの所有権に関する情報の少なくとも一部を暗号化して記憶するデータ保管手段である。本実施形態において、データ保管処理部27bは、保証システムであるブロックチェーンインターフェースサービス6と連携して、環境価値情報及び環境価値デジタルアートの所有権に関する情報の少なくとも一部を暗号化して記憶させる。
【0069】
これについて詳述すると、環境価値デジタルアートの所有権に関する情報の保管にあたり本実施形態では、所謂NFT(Non-Fungible Token)の仕組みを用いている。このNFTとは、非代替性トークンとも呼ばれ、代替が不可能なブロックチェーン上で発行された、所有権や送信権が付加された唯一無二のデータ(トークン)を意味し、デジタル上での環境価値デジタルアート等の資産に関する鑑定書や所有証明書としての役割を果たすことができる。具体的にデータ保管処理部27bは、アルゴリズム実行部28で完成された環境価値デジタルアートを特定するための唯一無二のメタ情報を当該環境価値デジタルアートに付与し、そのメタ情報を保証システム6によるブロックチェーンインターフェースサービスを通じ、分散台帳システムに改ざん不能な状態で保管する。このメタ情報としては、例えば、環境価値デジタルアートのデータ内の所定領域に記述したユニークな乱数としたり、原本となる環境価値デジタルアートのデータが閲覧可能なURLや、環境価値デジタルアートのデータから抽出されたハッシュ値としたりすることができ、これを例えば専用のトークンであるNFTへ書き込み、それ以後には改ざんを検証する手段として用いる。この所有権或いは送信権を記録したNFTは通常の仮想通貨と同様に売買又は送受することができる。
【0070】
また、デジタルアート生成部27は、本実施形態では、アルゴリズム実行部28を備えている。このアルゴリズム実行部28は、図5に示すように、教師データ取得部28aと、教師データ選択部28bと、敵対的学習部28cと、生成ニューラルネットワーク28dと、識別ニューラルネットワーク28eと、アート出力部28fとを備えている。
【0071】
生成ニューラルネットワーク28dは、暗号鍵を基礎ベクトルとして新たな環境価値デジタルアートである新生データを生成するモジュールである。
【0072】
識別ニューラルネットワーク28eは、教師データに関する特徴量の分布を抽出して学習し、学習した特徴量の分布と対象となる対象データから特徴量の分布とを比較することにより、対象データが教師データであるかそれ以外のデータであるかを識別するモジュールである。
【0073】
敵対的学習部28cは、新生データを識別ニューラルネットワーク28eに識別させ、その識別結果に応じて、教師データであると誤認された新生データに関する情報を識別ニューラルネットワーク28e及び生成ニューラルネットワーク28dに逆伝播させ、識別ニューラルネットワーク28eが学習した特徴量の分布を更新させるとともに、生成ニューラルネットワーク28dにおける基礎ベクトルを更新するモジュールである。
【0074】
アート出力部28fは、上述した敵対的学習を所定回数繰り返させて最終的に生成された新生データを、完成された環境価値アートD6を出力するモジュールである。このアート出力部28fから出力された環境価値デジタルアートはデータ保管処理部27bに入力され、その所有権に関する情報がNFT等の方式によりブロックチェーンに記録される。
【0075】
教師データ取得部28aは、環境価値デジタルアートのモチーフとなる教師データを取得するモジュールである。具体的には、教師データ選択部28bにおけるユーザーの選択操作に応じて、データ収集部27aが収集して素材データベース21eに蓄積された教師データの中から任意の教師データが選択されて所得され、取得された教師データが敵対的学習部28cに受け渡される。
【0076】
教師データ選択部28bは、ユーザー操作に応じて、上述した敵対的学習に供される教師データを選択するモジュールであり、選択された教師データは、敵対的学習部28cを通じて識別ニューラルネットワーク28e及び生成ニューラルネットワーク28に入力され、識別ニューラルネットワーク28e及び生成ニューラルネットワーク28dは、この教師データ選択部28bで選択された教師データに基づいて図7に示すような敵対的学習を行う。
【0077】
前記データ収集部27aは、環境価値情報に基づいて通信ネットワーク3上を検索し、当該環境価値情報に関連する環境価値デジタルアートを教師データとして収集するモジュールである。例えば、インターネット上に分散配置されている画像や動画、音楽、テキスト、ゲームアイテムなど、種々のデジタルアートのサンプルや、当該環境価値情報に関連する発電所の所在地の風景写真、所縁のある特産物、太陽光発電や風力発電などの発電方式をイメージさせる画像や動画、音楽、文章の他、需要家に属する人物のポートレート写真など、デジタルアートのモチーフとなり得るコンテンツ全般がデータ収集部27aによって収集される。
【0078】
(3)保証システム6
上述したように本実施形態では、各種トークンを介して電力取引を行う売電側と買電側の電力制御端末40間に配置され、電力取引及びトークン取引の保証を行う保証システム6が設けられている。具体的に、保証システム6は、図6に示すように、通信インターフェース63と、認証部62と、トークン取引実行部64と、トークン取引履歴データベース61aと、鍵情報データベース61bと、アカウントデータベース61cとを備えている。
【0079】
通信インターフェース63は、通信ネットワーク3を通じて、他の通信機器とデータの送受信を行うモジュールであり、本実施形態では、各仲介サーバー2や各電力制御端末40に接続されている。認証部62は、アクセス者の正当性を検証するコンピューター或いはその機能を持ったソフトウェアであり、各ユーザーを特定するユーザーIDに基づいて認証処理を実行する。本実施形態では、通信ネットワーク3を通じてアクセス者の電力制御端末40から、ユーザー固有の公開アドレスや公開鍵、ユーザーID及びパスワード等を取得し、鍵情報データベース61bを照合することによって、アクセス者にその権利があるか否かや、そのアクセス者が本人であるか否かなどを確認する。
【0080】
トークン取引実行部64は、電力を販売する権利又は消費する権利を仮想コインとしてトークン化する電力取引トークン、各電力の発電方式や蓄電方式に由来する付加価値であって電力取引トークンから派生される環境価値トークンを取り扱うモジュールである。これら各種トークンは、各その正当な所有者の公開アカウントに紐付けられ、公開アカウントの関係を提示することでそのトークンの正当な権利者であることを証明することができ、また、正当な権利者でなければ、当該トークンについて譲渡等の移転手続を実行することができないようになっている。本実施形態において、トークン取引実行部64は、保証システム連携機能と、公開アドレス管理部64bと、正当性検証部64cと、データ更新部64dとを備える。
【0081】
保証システム連携機能は、電力取引に関する与信や、セキュリティ管理、取引記録、サービス履歴の保管など、トークン取引に関する処理を他のサービス機関の装置、例えば上記仲介サーバー2から依頼され、これらの各装置と協働して処理を進めるモジュールである。また、本実施形態では、保証システム連携機能は、各種トークンの取引値等の情報を仲介サーバー2側に提供する。
【0082】
公開アドレス管理部64bは、公開鍵暗号方式における公開鍵から生成されて特定のユーザーを識別するための公開アドレス、及び前記公開鍵とペアとなって公開鍵を特定可能な秘密鍵であって、公開アドレスを介した電力取引の電子署名に利用される秘密鍵を発行するアドレス発行部として機能し、これらの発行された公開アドレス及びそれに関する鍵情報については、鍵情報データベース61bに蓄積される。
【0083】
正当性検証部64cは、トークン取引或いは電力取引に係る各種トークンが、正当な取引を経て現在の所有者に属していることや、改ざんされていないことを検証するモジュールであり、公開アカウントに紐付けられた現所有者の公開鍵により、そのトークンの正当性を確認することができるとともに、そのトークンに係る全ての取引をトークン取引履歴データベース61aに蓄積しており、公開鍵に基づいてトークン取引履歴データベース61aを照合して、その正当性を確認できるようになっている。
【0084】
データ更新部64dは、各種トークンに係る電力情報を取得し、新しいトークン所有者に関する公開アドレスを追加して、分散台帳で証明されるトークン所有者を変更することにより、トークンの所有権を移転するモジュールである。このデータ更新部64dによるデータの更新は、高度なセキュリティにより保護されており、二重譲渡や取引履歴の改ざんが強固に防御されるようになっている。
【0085】
(環境価値デジタルアートの生成処理)
以上説明した電力取引システムを動作させることによって、本発明の環境価値デジタルアートの生成処理を実施することができる。図7に本実施形態に係る環境価値デジタルアートの生成処理の概要を示す。本実施形態では、デジタルアート生成部27において、ハッシュ値D50を暗号鍵とし、このハッシュ値D50をパラメータの一部とする所定のアルゴリズムにしたがって、当該暗号鍵に基づく環境価値デジタルアートを生成する。この暗号鍵としてのハッシュ値D50は、図13図15で説明するブロックチェーンにおける既存のブロックから得られるハッシュ値D50を用いる。
【0086】
デジタルアート生成処理について詳述すると、先ず、教師データ取得部28aが環境価値デジタルアートのモチーフとなる教師データを取得する教師データ取得ステップを行う。この教師データは、例えばデータ収集部27aが収集し素材データベース21eに蓄積されており、教師データ選択部28bによる選択操作に基づいて、教師データ取得部28aが関連する教師データD51を素材データベース21eから読み出して、識別ニューラルネットワーク28eに入力する。この教師データD51としては、例えば、インターネット上に分散配置されている画像や動画、音楽、テキスト、ゲームアイテムなど、種々のデジタルアートのサンプルや、当該環境価値情報に関連する発電所の所在地の風景写真、所縁のある特産物、太陽光発電や風力発電などの発電方式をイメージさせる画像や動画、音楽、文章の他、需要家に属する人物のポートレート写真など、デジタルアートのモチーフとなり得るコンテンツ全般が含まれている。
【0087】
この教師データD51の入力を受けて、この識別ニューラルネットワーク28eは、入力された教師データD51に関する特徴量の分布を抽出して学習し、この学習によって構築されたニューラルネットワークを記憶保持する。これと併せて、生成ニューラルネットワーク28dは、暗号鍵であるハッシュ値D50を基礎ベクトルとして新たな環境価値デジタルアートである新生データD52を生成する生成ステップを実行する。新生データD52の生成は、ハッシュ値D50を基礎ベクトルとして、この基礎ベクトルから多数の乱数ベクトルを派生させ、大量の新生データD52を識別ニューラルネットワーク28eに送出する。
【0088】
次いで、識別ニューラルネットワーク28eにおいて、上記のように教師データD51を用いて学習した特徴量の分布と、識別対象となる対象データ、すなわち生成ニューラルネットワーク28dが生成した新生データD52から特徴量の分布とを比較することにより、対象データが教師データであるかそれ以外のデータ(ここでは新生データD52)であるかを識別する識別ステップを実行する。
【0089】
この識別ステップの結果として、教師データD51であると識別されたデータ群を出力する。この出力されたデータ群は、敵対的学習部28cにより、その識別結果に応じて、真に教師データD51である出力群Out1と、教師データであると誤認された新生データD52の出力群Out2とに選り分けられる。そして、敵対的学習部28cは、教師データであると誤認された出力群Out2内の新生データD52に関する情報を識別ニューラルネットワーク28e及び生成ニューラルネットワーク28dに逆伝播させ、識別ニューラルネットワーク28eが学習した特徴量の分布を更新させるとともに、生成ニューラルネットワーク28dにおける基礎ベクトルを更新する敵対的学習ステップを実行する。
【0090】
この敵対的学習ステップにおいて、上記誤認された新生データD52に関する情報の逆伝播を受けた生成ニューラルネットワーク28dでは、誤認された新生データのD52の基となった乱数ベクトルと、ハッシュ値D50とを掛け合わせて、新たな乱数ベクトルを大量に派生させる。一方、上記誤認された新生データD52に関する情報の逆伝播を受けた識別ニューラルネットワーク28eでは、逆伝播された新生データD52の特徴量の分布を抽出して、ニューラルネットワークを更新する。
【0091】
その後、派生された乱数ベクトルを新たなパラメータとして、新たな環境価値デジタルアートである新生データD52を生成する生成ステップを実行し、識別ニューラルネットワーク28eによる識別ステップと、敵対的学習部28cによる選り分け及び逆伝播を行う敵対的学習ステップとを所定回数繰り返した後、アート出力部28fが最終的な出力群Out2に含まれる新生データD52を、完成された環境価値アートD6として出力する。
【0092】
(電力取引システムの動作)
以上説明した電力取引システムを動作させることによって、本実施形態に係る電力取引サービスを提供することができる。図8は電力取引サービスにおいてトークンを発行する際のシステム動作を示すシーケンス図であり、図9は電力取引サービスにおいて買電及び電力消費する際のシステム動作を示すシーケンス図である。なお、以下で説明する処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り変更されてもよい。また、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換及び追加が可能である。
【0093】
図8に示すように、先ず、売電する場合には、売電側のユーザーシステムにおいて、各ユーザーシステムの設備に応じて、必要な発電量、蓄電量、消費電力の計測を行う(S101)。この計測に基づいて、発電データ・蓄電データ・消費電力データが生成され(S102)、これらのデータは、スマートメーター41で集計され、仲介サーバー2に実績データとして報告される(S103)。各ユーザーシステムから収集された実績データは、仲介サーバー2においてユーザーシステムごとに集計される(S201)。
【0094】
次いで、売電側のユーザーシステムから、仲介サーバーに対してトークン発行依頼が送信される(S104)。このトークン発行依頼を受信した仲介サーバー2側では(S202)、受信したトークン発行依頼に含まれている発電データ・蓄電データ・消費電力データを解析するとともに(S203)、市場における各種発電方式に関わる電力の買取価格や販売価格等の市場情報を収集する(S204)。
【0095】
そして、電力取引トークンを生成するとともに、必要に応じて環境価値情報である環境価値トークンを発行する(S205及びS206)。具体的には、トークン発行部24aが、実績データに含まれる発電方式によるCO削減量、又は自家消費量に基づいて環境価値トークンを発行する。例えば、ステップS206においてトークン発行部24aは、実績データに含まれる発電方式が太陽光発電や風力発電などの再利用可能エネルギーによるものである場合には、実績データに含まれる発電量に基づいてCO削減テーブルデータを参照して、環境価値トークンの価額や数量を決定し、決定された価額又は数量の環境価値トークンを環境価値情報として発行する。発行された環境価値トークンは、実績データに含まれる発電者の所有としてトークンプールに蓄積される。
【0096】
例えば、ステップS206においてトークン発行部24aは、実績データに含まれる発電方式が太陽光発電や風力発電などの再利用可能エネルギーによるものである場合であって、その電力を自家消費しているときには、実績データに含まれる自家消費量に基づいて自家消費テーブルデータを参照して、環境価値トークンの価額や数量を決定し、決定された価額又は数量の環境価値トークンを発行する。発行された環境価値トークンは、実績データに含まれる自家消費したユーザーの所有としてトークンプールに蓄積される。
【0097】
このようにして発行された各種トークンは、保証システム連携部25bを通じてブロックチェーンに記録される。この記録にあたっては既存のブロックからハッシュ値を抽出して、それに基づいて新規のブロック内に、記録に係るトークンに関する情報を書き込み、既存のブロックに新規のブロックを連結する。ここで記録に係るトークンが環境価値トークンである場合には、ブロック連結の際に抽出されたハッシュ値が、環境価値デジタルアートの生成に用いられる。
【0098】
なお、この際、トークン発行依頼を送信したユーザーが所有権としてプールされるとともにブロックチェーンに記録されて、当該ユーザーのアカウントに収容すべく処理がなされ保証システム6に記録される(S207)。その後、仲介サーバー2から当該ユーザーシステムに対してトークン発行完了が通知され、ユーザーシステム側でトークン発行完了処理が実行される(S105)。
【0099】
なお、ここでは、この発行されたトークンを売却すべくトークン売出依頼が当該ユーザーシステムから仲介サーバー2に対して送信され(S106)、このトークン売出依頼を受信した仲介サーバー2は(S208)、売却に係るトークンを取引対象としてプールする。
【0100】
次いで、電力を購入して消費する場合について説明する。図9に示すように、先ず、買電する場合には、買電側のユーザーシステムから、トークン購入依頼を仲介サーバー2に向けて送信する(S401)。このトークン購入依頼には、買付データが含まれており、この買付データには、購入を希望する所定キロワット数分の電力取引トークンが指定されている。このトークン購入依頼を受信した仲介サーバー2では(S301)、購入要求で指定された条件に合ったトークンがあるかどうか、電力取引管理データベース21dを検索する。条件に合致したトークンが見つかった場合には、そのトークンに所有権の移転処理を実行する(S402)。
【0101】
このステップS402では、トークン移転部24cが、各トークンの所有権を書き換えることにより、トークンの譲受を制御する。このトークンの移転は、その移転を指示する移転要求に基づいて実行される。この移転要求は、例えば電力取引実行部25においてトークンの売買が成立した際に電力取引実行部25から入力されたり、各ユーザーによる操作によって電力制御端末40から直接入力されるデータであり、移転の対象となるトークンの種別や、移転元及び移転先に関するアカウント情報、その数量が含まれる。
【0102】
特に、トークン移転部24cは、入力された移転要求が、電力取引トークン又は環境価値トークンの移転を要求するものである場合、移転要求の対象が電力取引トークンであるときには要求に係る電力取引トークンを移転し、移転要求の対象が環境価値トークンであるときには要求に係る環境価値トークンをトークン消却部24bに消却させ、消却した環境価値トークンに係る移転要求に含まれる移転に関する情報を移転履歴として生成する。
【0103】
そして、トークンの移転処理が完了した後は、保証システムにてトークン移転に関するアカウント処理を実行する(S303)。このとき、消却された環境価値トークンに係る移転履歴も、トークン取引プラットフォームを介して、保証システムであるブロックチェーンに改ざん不能に記録される。一方、買電側のユーザーシステムでは、トークンの移転に応じて電力制御も変動され(S403)、買電側のユーザーが所有する電力取引トークンが増大し、所有している電力取引トークン分の電力を紐付けることができる。
【0104】
買電側のユーザーシステムでは、スマートメーターによる集計・及び仲介サーバー2への報告が逐次実行されており(S405)、仲介サーバー2では、各ユーザーシステムからの報告を電力情報として集計し(S304)、集計した情報の中から各ユーザーシステムが消費している消費電力に関する情報を抽出する(S305)。そして、仲介サーバー2は、各ユーザーシステムで消費された電力に関する消費電力データを生成する(S306)。
【0105】
次いで、生成された消費電力データに基づいて、電力取引トークンを消却する(S307)。この電力取引トークンの消却に応じて、保証システムでは、該当するトークンの消却に関するアカウント処理を実行する(S308)。保証システム6は該当するトークンを消却するか、当該トークンの価額を0にするかなど、トークンの価値を消却する処理を実行してノードに記録させる。その後、仲介サーバー2から当該ユーザーシステムに対してトークン消却完了が通知され、ユーザーシステム側でトークン発行完了処理が実行される(S406)。このトークンが消却された後は、当該ユーザーが所有する残余のトークンが減少されたため、単位期間で使用できる電力の上限が低減されることとなる。
【0106】
(トークン移転取引時の動作)
ここで、上記ステップS402におけるトークン移転処理について詳述する。図10は、本実施形態にかかる電力取引システムの移転時における処理手順を例示するフロー図であり、図11は、本実施形態に係る公開鍵と秘密鍵との関係を例示する。
【0107】
本実施形態では、トークン移転処理及びトークン移転に関するアカウント処理を、本実施形態に係る分散台帳システムの仕組みを利用している。ここでは、トークン取引プラットフォームを通じて、売手Uaが新規の買手Ubに対し、電力取引トークンを販売する場合を例に説明する。この電力売買取引には、図10に示すように、公開アドレス及び秘密鍵の発行ステップS501と、関連するサービス履歴情報の登録処理ステップS502と、権利移転処理の実行ステップS503とが含まれる。
【0108】
先ず、ステップS501において、仲介サーバー2では、公開アドレス管理部64bがアドレス発行部として機能し、この公開アドレス管理部64bがトークン取引プラットフォームに固有の公開アドレスPA3と、このプール用公開アドレスPA3に対応する秘密鍵SK3とのペアを発行している。具体的には、図11に例示されるように、仲介サーバー2は、乱数発生器等を用いて、トークン取引プラットフォームに固有の公開アドレスに対応付けられた秘密鍵SK3を公開鍵暗号方式で生成する。乱数発生器は、例えば、プログラムとして公開アドレス管理部64bに内蔵させていてもよい。この秘密鍵SK3は、上述のとおり、ペアとなるプール用公開アドレスPA3を電力移転元とする取引(ここでは、トークン取引プラットフォームから買手Ubへの販売)の電子署名に利用される。
【0109】
次に、仲介サーバー2は、例えば、楕円曲線DSA(Elliptic Curve Digital Signature Algorithm, ESDSA)等の電子署名のアルゴリズムに基づいて、秘密鍵SK3から公開鍵PK3を生成する。生成される公開鍵PK3と秘密鍵SK3とは公開鍵暗号方式における鍵ペアとなり、この公開鍵暗号方式の性質上、秘密鍵SK3から公開鍵PK3を生成することは可能であるものの、公開鍵PK3から秘密鍵SK3を生成することは計算量の観点から不可能に構成される。すなわち、公開鍵PK3から秘密鍵SK3を特定することはできないが、秘密鍵SK3から公開鍵PK3を特定することはできる。なお、利用する電子署名のアルゴリズムの種類は楕円曲線DSAに限定される訳ではなく、実施の形態に応じて適宜選択されてもよい。
【0110】
続いて、仲介サーバー2は、SHA-256、RIPEMD-160等の一方向ハッシュ関数を公開鍵PK3に適用することで、公開鍵PK3からプール用公開アドレスPA3を生成する。例えば、仲介サーバー2は、SHA-256を公開鍵PK3に2回適用することによって、プール用公開アドレスPA3を生成することができる。すなわち、このプール用公開アドレスPA3は、上述したトランザクションの署名に利用される公開鍵のハッシュ値であり、トークンの移転先及び移転元を識別するために利用される。なお、プール用公開アドレスPA3の生成には一方向ハッシュ関数を利用するため、図11に示されるように、公開鍵PK3からプール用公開アドレスPA3を生成することは可能であるものの、プール用公開アドレスPA3から公開鍵PK3を生成することは不可能に構成される。
【0111】
次のステップS502では、売電元である売手Uaが電力トークン取引プラットフォームに提供されたサービスの履歴など、各トークンに関連付けられる取引履歴データを、ステップS501で生成されたプール用公開アドレスPA3に紐付けてノードへの記録を行う。具体的には、図12に例示されるように、仲介サーバー2で取得された実績データなどがプール用公開アドレスPA3に紐付けられて公開される。この実績データは、プール用公開アドレスPA3に関する公開鍵PK3を入手したものであれば、自由に閲覧ができるようになっている。この結果、その電力が由来する発電方法や発電箇所等の履歴や取引履歴に不正があったり、改ざんされたり等の不正行為に対する検証が誰でも行えるようになる。
【0112】
その後、ステップS503では、仲介サーバー2は、所定の電力移転条件に従って、ステップS501で生成したプール用公開アドレスPA3に対する権利移転の取引を行う。そして、当該移転が完了すると、仲介サーバー2は、本動作例に係る処理を終了する。ここで、本実施形態に係る各種トークンのやり取りには、電力制御端末40等上で実行されるアプリケーションが用いられる。そのため、図10では、仲介サーバー2の公開アドレス管理部64bにも、トークン取引の仕組みを実行するアプリケーションがインストールされており、このアプリケーションによって、プラットフォームが管理するプール用公開アドレスが制御されている。
【0113】
電力トークンが、売手Uaに属している間は、トークンは、売手Uaの電力制御端末40において、売手Ua固有の公開アドレスPAaはペアとなる秘密鍵SKaと対応付けられており、トークン取引プラットフォームにおいて、移転手続が取られる際に、売手Uaは、電力制御端末40を用いて、公開アドレスPAa(移転元)から、ステップS501で電力取引業者が生成したプール用公開アドレスPA3(移転先)にトークンを一時的に移転させてプールすることができる。
【0114】
これに対して、新たに電力の購入を希望する買手Ubは、図10に例示されるように、自身の電力制御端末40を用いて、電力取引トークンが紐付けられている公開鍵PK3を入手し、当該買手Ubは、トークン取引プラットフォームのプール用公開アドレスPA3に紐付けられた電力に関する発電データや取引経過情報や、関連する電力別履歴を閲覧することができる。
【0115】
具体的には、買手Ubの電力制御端末40にもアプリケーションがインストールされており、このアプリケーションによって、買手Ubの保有する公開アドレスPAbが管理されている。公開アドレスPAbには自己の秘密鍵SKbが対応付けられており、これによって、自己の公開アドレスPAbからトークンを、さらに他人に移転することができる。つまり、各秘密鍵SKbによって、買手Ubは、公開アドレスPAbに格納されたトークンやその取引履歴を自在に利用することができる。ここでは、買手Ubが、電力制御端末40においてアプリケーションを利用して、電力取引固有のプール用公開アドレスPA3から公開アドレスPAbに移転されたトークンを受け取る。
【0116】
(保証システムの動作)
ここで、上述した保証システムで採用している分散台帳システムの仕組みについて詳述する。本実施形態において保証システム6は、ブロックチェーンインターフェースサービスを提供しており、このサービスでは、各ユーザーシステム4或いは仲介サーバー2が生成したデータの少なくとも一部又は全部を記憶する複数のノードを備え、これらのノードは、記憶したデータを所定のタイミングで集約してブロック化し、該ブロックを用いてブロックチェーンを形成し、該ブロックチェーンを複数の前記ノードで共有して分散台帳として記憶する。
【0117】
具体的には、図12に示すように、本実施形態に係る電力取引システム1は、各種トークン発行・移転・消却にあたり、保証システム6を通じて、公開鍵暗号方式に基づく公開鍵PKaと秘密鍵SKaとの鍵ペアを発行するとともに、発行したトークンに対応する公開鍵PKaから公開アドレスPAaを生成する。この公開アドレスPAaは、電力取引契約における譲受人(買手Ub)及び譲渡人(売手Ua)を示すアドレスとして活用される一方、秘密鍵SKaは、公開アドレスPAaを移転元とする取引の電子署名に利用される。
【0118】
本実施形態に係る電力取引はP2P(Peer-to-Peer)ネットワーク30上の2つのノード間で行われ(ここでは、売手Ua及び買手Ub間)、その取引情報はP2Pネットワーク30内の各ノード90a~90fにブロードキャストされて共有される。これにより、P2Pネットワーク30上において、分散台帳システムによる取引履歴データベース(いわゆるブロックチェーン)が形成され、各種トークン及び電力取引の取引履歴が保存される。
【0119】
本実施形態では、この分散台帳システムによる取引履歴データベースは、仲介サーバー2を通じて、各種トークンの発行や所有者の書き換えを行う際に、電力取引契約の実行、承認及び管理を実施する。電力取引の仲介人(各電力制御端末40)は、売手Uaと買手Ubの間で取引の仲介をするために、トークン取引プラットフォーム(仲介サーバー2)に固有のプール用公開アドレスPA3を生成して、取引対象となっているトークンが、トークン取引プラットフォームのトークンプールに一時的に預けられているとして、トークンの移転の中継を行う。
【0120】
そして、取引の当事者(売手Ua及び買手Ub)は、電力取引システム100を利用して、現在の売手Uaから、トークン取引プラットフォーム固有のプール用公開アドレスPA3へトークンを移転させることで一旦受領し、さらに公開アドレスPA3を介して、新たな買手Ubに対して移転させることで、売手Uaと買手Ubとの間における電力トークン取引プラットフォームの売買契約を成立させる。
【0121】
これにより、譲受人である買手Ubは、トークンを自分の公開アドレスPAbで受領することができ、この公開アドレスPA3に紐付けられたサービス履歴の閲覧や、サービスの利用が可能になる。なお、この公開アドレスの発行は、仲介サーバー2が行ってもよく、各取引ユーザー端末上のソフトウェアや、独立したサービス管理機関や金融機関のサーバーで行うこともできる。ここで、図12図15を用いて、この電子暗号通貨の取引の詳細な仕組みについて具体的に説明する。図12は、トークンの発行・移転・消却に関するトランザクション(取引)の定義を例示し、図13図15は、トークン取引履歴(ブロックチェーン)の一部を例示する。
【0122】
各トークンの発行・移転・消却に関する取引履歴が、図13に例示される一連の電子署名の連鎖として定義される。この各トークンの所有者は、次の所有者にその取引履歴を移転する場合に、直前の取引のハッシュ値と、次の所有者に係る公開鍵のハッシュ値とを自身の秘密鍵で電子署名したものをトークンの取引履歴に追加する。なお、これらのハッシュ値の計算には、例えば、SHA-256、RIPEMD-160等の一方向ハッシュ関数が用いられる。このとき、最新のハッシュ値を電子署名する際、そのハッシュ値は、環境価値デジタルアートを生成するための基礎ベクトルに用いるべく、ハッシュ値D50としてハッシュ値取得部27cにより取得される。
【0123】
図13では、取引の具体例として、各種トークンが、所有者Zから所有者Aに移転され、所有者Aから所有者Bに移転され、さらに所有者Bから所有者Cに移転される場面が例示されている。この場合、所有者Aから所有者Bにトークンを移転するときには、所有者Aは、所有者Zから所有者Aへの移転取引のハッシュ値と次の所有者である所有者Bの公開鍵のハッシュ値とを所有者Aの秘密鍵で電子署名したものをトークンに追加する。
【0124】
所有者Bを含むこの取引以降のトークンの所有者は、所有者Aの公開鍵でこの電子署名を復号した値を所有者Zから所有者Aへの移転取引のハッシュ値及び所有者Bの公開鍵のハッシュ値と照合することで、この取引が改ざんされているか否かを判定することができる。同様に、所有者Bから所有者Cにトークンを移転するときには、所有者Bは、所有者Aから所有者Bへの移転取引のハッシュ値と次の所有者である所有者Cの公開鍵のハッシュ値とを所有者Bの秘密鍵で電子署名したものをトークンに追加する。これにより、所有者Bから所有者Cへの移転取引が改ざんされているか否かを判定することが可能になる。
【0125】
各種トークンは、このような一連の電子署名の連鎖として定義することができる。ここで、公開鍵のハッシュ値は公開アドレスである。すなわち、この公開アドレスに保管されるトークン等を移転できるのは、この公開アドレスを移転元とする電力取引の電子署名を行える者、すなわち、この公開アドレスに対応する秘密鍵を有する者に限られる。そのため、秘密鍵は、一般的には、所有者以外に漏えいしないように秘匿される。なお、トークンやそれに関する取引履歴等のデータは、現在の所有者に紐付けられた公開アドレスに保管される。また、この電子署名だけでは、このトークンの過去における所有者のうちの誰かが当該トークンを多重使用(多重譲渡)していることを検証することはできないことから、本実施形態に係るトークン取引の仕組みでは、図14及び図15で例示されるブロックチェーンという仕組みを用いて、この多重使用を防止している。
【0126】
図14及び図15に例示されるように、トークン等に記録される各ブロックは、複数のトランザクションとNonceと直前のブロックのハッシュ値とを格納している。Nonceは、暗号通信で用いられる使い捨てのランダムな値であり、ノード(マイナー)60a~60fのうち、この値を最初に発見したノード(マイナー)が、承認者として、Nonceを発見したブロックをブロックチェーンの末尾に追加することでブロックチェーンの更新を行う。これにより、ブロックチェーンには一貫した取引履歴が記録されることになり、このブロックチェーンをP2Pネットワーク30に参加するノード90a~90f全体で共有することで、一貫した取引履歴をP2Pネットワーク30全体で共有することができる。すなわち、このブロックチェーンが、上述した保証システム6におけるトークン取引履歴データベース61a及び鍵情報データベース61bの一部又は全部を担うこととなる。本実施形態において、公開鍵暗号方式に基づく電力取引では、このような仕組みによって各種トークンの取引が行われる。
【0127】
(作用・効果)
以上説明した本実施形態によれば、電力を発電する給電側と電力を消費する需要家側との間で電力の売買を実行する取引所において、環境に対する貢献度を環境価値情報として評価するとともに、その環境価値情報を暗号化して記憶する際に用いられる、当該環境価値情報に固有の暗号鍵に基づいて環境価値デジタルアートを生成する。生成されたこの環境価値デジタルアートは、環境に対する貢献度を単なる数値ではなく、唯一無二のアートであり、希少性のある財産として所持可能とし、電力取引における環境価値に対してより嗜好性の高い付加価値を提供することができ、その結果、環境への貢献に対するモチベーションを喚起することができる。
【0128】
特に、本実施形態では、環境価値デジタルアートの所有権に関する情報の保管を所謂NFT(Non-Fungible Token)の仕組みを用いることから、NFTが環境価値デジタルアート等の資産に関する鑑定書や所有証明書としての役割を果たすことによって、環境価値デジタルアートの生成後には改ざんを検証することができる。
【0129】
なお、本実施形態では、電力の発電時期や場所、発電方式に基づいて各種トークンを発行し、そのトークンを用いて、電力の売買取引や、対価の精算を行うことができる。これにより、環境価値取引、調整力取引など多様化する電力取引において、各取引単位で付加価値をトークンとして蓄積し配分することができる。さらに、ブロックチェーンインターフェースサービスも実装していることから、既存インターフェースからの参入も容易に行うことができる。結果として、本発明によれば、多様化した電力価値が混在する電力取引市場において、電力の価値を適正に評価しつつ自由に供給元と需要先を紐付けて課金や売買を行うことができる。
【0130】
特に、保証システムとして、分散データベースの仕組みを採用したため、強固な単一のシステム管理・運用のための設備を事業者ごとに設ける必要がなく、業者間での情報を授受する際、情報を連携するためのデータベースの共通化や、プライバシー保護、データの改ざんに対する高度なセキュリティ対策が分散データベースの仕組みで担保されることから、その設備費や運用コストを抑えることができる。
【符号の説明】
【0131】
D1…約定データ
D21…売出データ
D22…買付データ
D3…実績データ
D50…ハッシュ値
D51…教師データ
D52…新生データ
D6…環境価値アート
PAa…公開アドレス
PAb…公開アドレス
PKa…公開鍵
SKa…秘密鍵
SKb…秘密鍵
Ua…売手
Ub…買手
1…電力取引システム
2…仲介サーバー
3…通信ネットワーク
4…ユーザーシステム
6…保証システム
11…CPU
20…ユーザーシステム
21a…トークン管理データベース
21b…ユーザーデータベース
21c…実績管理データベース
21d…電力取引管理データベース
22…認証部
23…通信インターフェース
24…トークン管理部
24a…トークン発行部
24b…トークン消却部
24c…トークン移転部
25…電力取引実行部
25a…約定データ生成部
25b…保証システム連携部
26…実績データ管理部
26a…価値評価部
21a…トークン管理データベース
21b…ユーザーデータベース
21c…実績管理データベース
21d…電力取引管理データベース
21e…素材データベース
22…ユーザー管理部
22a…認証部
22b…会員登録部
23…通信インターフェース
24…トークン管理部
24a…トークン発行部
24b…トークン消却部
24c…トークン移転部
25…電力取引実行部
25a…約定データ生成部
25b…保証システム連携部
26…実績データ管理部
26a…価値評価部
27…デジタルアート生成部
27a…データ収集部
27b…データ保管処理部
27c…ハッシュ値取得部
28…アルゴリズム実行部
28a…教師データ取得部
28b…教師データ選択部
28c…敵対的学習部
28d…生成ニューラルネットワーク
28e…識別ニューラルネットワーク
28f…アート出力部
30…P2Pネットワーク
40…電力制御端末
41…スマートメーター
42…蓄電池
61a…トークン取引履歴データベース
61b…鍵情報データベース
61c…アカウントデータベース
62…認証部
63…通信インターフェース
64…トークン取引実行部
64a…取引履歴提供部
64b…公開アドレス管理部
64c…正当性検証部
64d…データ更新部
90a~90f…ノード
100…電力取引システム
400…CPUバス
401…ストレージ装置
402…CPU
402a…電力売買部
403…メモリ
404…入力インターフェース
405…出力インターフェース
406…通信インターフェース
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
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図16