(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056198
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】粉粒体の使用履歴表示システム
(51)【国際特許分類】
B65D 83/06 20060101AFI20230412BHJP
B65D 25/04 20060101ALN20230412BHJP
B65D 25/56 20060101ALN20230412BHJP
【FI】
B65D83/06 L
B65D25/04 Z
B65D25/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165386
(22)【出願日】2021-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(72)【発明者】
【氏名】延壽 和魂
【テーマコード(参考)】
3E062
【Fターム(参考)】
3E062AA09
3E062AB08
3E062BA07
3E062BB09
3E062MA20
(57)【要約】
【課題】
粉ミルク等の粉粒体の使用履歴を容易に確認できるシステムを提供する。
【解決手段】
粉粒体排出具1と電子機器50とからなる粉粒体の使用履歴表示システムであって、粉粒体排出具1は、粉粒体容器19と、粉粒体容器19に着脱自在に連結されて粉粒体容器19内から定量の粉粒体を排出するとともに、当該定量の粉粒体が排出されたことを検出することに基づいて粉粒体排出情報を取得する粉粒体排出部10と、粉粒体排出情報を電子機器50へ向けてワイヤレス送信する送信手段とを備え、電子機器50は、粉粒体排出情報に基づく粉粒体の使用履歴情報を表示する表示部50aを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体排出具と、
前記粉粒体排出具とペアリングされる電子機器と、
からなる粉粒体の使用履歴表示システムであって、
前記粉粒体排出具は、
内部に粉粒体貯留室を有する筒状の粉粒体容器と、
前記粉粒体容器に着脱自在に連結され、前記粉粒体容器内から定量の粉粒体を排出するとともに、当該定量の粉粒体が排出されたことを検出することに基づいて粉粒体排出情報を取得する粉粒体排出部と、
前記粉粒体排出情報を前記電子機器へ向けてワイヤレス送信する送信手段と、
を備え、
前記電子機器は、前記粉粒体排出具から通知された粉粒体排出情報に基づく粉粒体の使用履歴情報を表示する表示部を備えることを特徴とする粉粒体の使用履歴表示システム。
【請求項2】
前記粉粒体排出部は、
円筒状に形成され、鉛直方向に沿った円筒状の中心軸周りに互いに仕切られた複数の定量計量室を有するローターと、
前記粉粒体容器の下方に連結されるとともに、前記ローターの上面を覆い、いずれかの定量計量室が鉛直方向で重なる前記ローターの相対回転位置で、当該定量計量室に連通する投入口が穿設され、前記投入口が前記粉粒体貯留室に連通する投入側プレートと、
前記ローターの下面を覆い、いずれかの定量計量室が鉛直方向で重なる前記ローターの相対回転位置で、当該定量計量室に連通する排出口が穿設された排出側プレートと、
前記投入口と前記排出口が鉛直方向で重ならない状態で、前記投入側プレートと前記排出側プレートを中心軸周りで相対位置決めして連結し、前記投入側プレートと前記排出側プレートの間で前記ローターを前記中心軸周りに回転自在に案内する連結軸とを備え、
前記ローターの前記中心軸周りの回転により、粉粒体貯留室から前記投入口を通して定量計量室に充填された定量の粉粒体を、前記排出口を通して下方へ排出するものであって、
前記連結軸内に鉛直方向に移動自在に収容される第1マグネットと、前記連結軸の近傍の前記投入側プレート又は前記排出側プレートに配置される磁気センサーで構成され、前記磁気センサーで検出される磁力が、前記ローターの鉛直方向の移動操作で変化することから、前記ローターの鉛直方向の移動操作を検出することで、いずれかの定量計量室に充填された粉粒体が排出されたことを検出する排出操作センサーと、
前記ローターの前記定量計量室間を仕切る仕切部に、複数の前記定量計量室毎に対応して配設される第2マグネットと、前記磁気センサーで構成され、 前記磁気センサーで検出される磁力が、前記ローターの鉛直方向の移動操作の周期より長い周期で変化することから、前記ローターの前記中心軸周りの回転操作を検出する回転操作センサーと、を備え、
前記排出操作センサーが検出した前記ローターの鉛直方向の移動操作情報と、前記回転操作センサーが検出した前記ローターの前記中心軸周りの回転操作情報とを、前記粉粒体排出情報として前記送信手段によってワイヤレス送信することを特徴とする請求項1に記載の粉粒体の使用履歴表示システム。
【請求項3】
前記粉粒体排出部は、
円筒状に形成され、鉛直方向に沿った円筒状の中心軸周りに互いに仕切られた複数の定量計量室を有するローターと、
前記粉粒体容器の下方に連結されるとともに、前記ローターの上面を覆い、いずれかの定量計量室が鉛直方向で重なる前記ローターの相対回転位置で、当該定量計量室に連通する投入口が穿設され、前記投入口が前記粉粒体貯留室に連通する投入側プレートと、
前記ローターの下面を覆い、いずれかの定量計量室が鉛直方向で重なる前記ローターの相対回転位置で、当該定量計量室に連通する排出口が穿設された排出側プレートと、
前記投入口と前記排出口が鉛直方向で重ならない状態で、前記投入側プレートと前記排出側プレートを中心軸周りで相対位置決めして連結し、前記投入側プレートと前記排出側プレートの間で前記ローターを前記中心軸周りに回転自在に案内する連結軸とを備え、
前記ローターの前記中心軸周りの回転により、前記粉粒体容器から前記投入口を通して定量計量室に充填された定量の粉粒体を、前記排出口を通して下方へ排出するものであって、
前記投入側プレート若しくは前記排出側プレートと中心軸周りで相対位置決めされ、前記投入側プレート若しくは前記排出側プレートと前記ローターの間で鉛直方向に移動自在に配設されるラチェット板と、
前記投入側プレート若しくは前記排出側プレートと前記ラチェット板の間に配置され、前記ラチェット板を前記ローターの方向に付勢する付勢手段と、
前記ラチェット板と前記ローターの当接面に形成される一組のラチェット爪は、排出口がいずれかの定量計量室と鉛直方向で重なるローターの相対回転位置で、一方のラチェット爪が他方のラチェット爪を乗り越えるランニングフェースラチェット機構と、
前記ランニングフェースラチェット機構の一方のラチェット爪が他方のラチェット爪を乗り越える際の前記ラチェット板の移動を検出する節度センサーを備え、
前記節度センサーが前記ラチェット板の移動を検出することで、いずれかの定量計量室に充填された粉粒体が排出されたことを検出し、
前記節度センサーが検出した前記ラチェット板の移動情報と、前記ラチェット板の鉛直方向の移動の検出回数とを、前記粉粒体排出情報として前記送信手段によってワイヤレス送信することを特徴とする請求項1に記載の粉粒体の使用履歴表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉ミルク、インスタントコーヒー、粉末状の医薬などの粉粒体の使用履歴表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
粉ミルク、インスタントコーヒー、粉末状の医薬などの粉粒体を、定量分だけ使用する場合には、計量カップ、スプーンなどを用いて定量分を取り出しているが、手間と時間がかかるため、一定容量の定量計量室が設けられたローターを、粉粒体を貯留する粉粒体容器に対して回転操作するだけで、一定量の粉粒体を排出する粉粒体排出具が知られている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
以下、この特許文献1に記載の粉粒体排出具100を、
図15を用いて説明する。粉粒体排出具100は、同図に示すように、上下に貫通する定量計量室110が形成され、円筒の内壁面に雌ねじ101aが形成されたローター101と、ローター101の上面を覆い、投入口111が形成された投入側プレート102と、円筒の外側面に雄ねじ103aが形成され、雄ねじ103aをローター101の雌ねじ101aに螺合してローター101の上方に連結される粉粒体容器103と、ローター101の下面を覆い、排出口112が穿設された排出側プレート104と、排出側プレート104の下方を覆う蓋105と、投入側プレート102の中心から下方に向けて一体に突設され、投入口111と排出口112がローター101の中心軸Cに沿った鉛直方向で重ならない状態で、排出側プレート104を回転方向に相対位置決めして連結する連結軸106とから構成されている。
【0004】
連結軸106は、投入側プレート102と排出側プレート104の間でローター101を中心軸C周りに回転自在に案内し、これにより、一体に連結される粉粒体容器103とローター101に対して、投入側プレート102と排出側プレート104とが一体でローター101の中心軸C周りに相対的に回転する。ローター101の外側面には、中心軸C周りに所定角度離れた位置に、供給位置決め突起と排出位置決め突起114が突設され、排出側プレート104の外周面には、ローター101に対して排出側プレート104が相対回転する際に、これらの供給位置決め突起と排出位置決め突起114に当接して回転が規制される操作摘み115が突設されている。
【0005】
すなわち、この粉粒体排出具100は、粉粒体容器103若しくはローター101を手に持って、操作摘み115を回転操作して、投入側プレート102と排出側プレート104を中心軸C周りに回転させるもので、操作摘み115が供給位置決め突起に当接して回転が規制される回転位置では、投入側プレート102の投入口111がローター101の定量計量室110に連通し、操作摘み115が排出位置決め突起114に当接して回転が規制される回転位置では、ローター101の定量計量室110が排出側プレート104の排出口112に連通する。
【0006】
従って、定量計量室110に充填される容量の一定量の粉粒体を排出する際には、粉粒体容器103側を上方とした姿勢で粉粒体排出具100の粉粒体容器103若しくはローター101を手に持って、操作摘み115が供給位置決め突起に当接する回転位置まで排出側プレート104を回転操作する。これにより、粉粒体容器103に充填された粉粒体は、投入口111を通して定量計量室110内に落下し、その後、操作摘み115を逆方向に回転操作すると、定量計量室110の上面に沿って投入側プレート102が摺動し、一定量の粉粒体が定量計量室110に充填される。
【0007】
このようにして、上述の操作摘み115の回転操作を繰り返すことにより、定量計量室110の容量の整数倍の量の粉粒体を排出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3487647号公報
【特許文献2】実開昭62-17550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1、特許文献2に記載の従来の粉粒体排出具によれば、簡単な操作で一定量の粉粒体を排出して得られるので、粉ミルクを溶かして授乳する場合や、粉末の薬を飲む場合に、適量が得られる。しかしながら、粉粒体排出具を用いて定量の粉粒体を排出する操作を記録する手段がないので、授乳回数や薬を飲む回数が決められている場合に、粉粒体排出具を用いて排出した回数が分からず、過剰に授乳してしまったり、粉末の薬を飲んでしまったりする懸念があった。
【0010】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、上述のような状況において、粉粒体の使用履歴を容易に確認できるシステムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、請求項1に記載の粉粒体の使用履歴表示システムは、粉粒体排出具と、前記粉粒体排出具とペアリングされる電子機器と、からなる粉粒体の使用履歴表示システムであって、前記粉粒体排出具は、内部に粉粒体貯留室を有する筒状の粉粒体容器と、前記粉粒体容器に着脱自在に連結され、前記粉粒体容器内から定量の粉粒体を排出するとともに、当該定量の粉粒体が排出されたことを検出することに基づいて粉粒体排出情報を取得する粉粒体排出部と、前記粉粒体排出情報を前記電子機器へ向けてワイヤレス送信する送信手段とを備え、前記電子機器は、前記粉粒体排出具から通知された粉粒体排出情報に基づく粉粒体の使用履歴情報を表示する表示部を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の粉粒体の使用履歴表示システムは、前記粉粒体排出部において、円筒状に形成され、鉛直方向に沿った円筒状の中心軸周りに互いに仕切られた複数の定量計量室を有するローターと、前記粉粒体容器の下方に連結されるとともに、前記ローターの上面を覆い、いずれかの定量計量室が鉛直方向で重なる前記ローターの相対回転位置で、当該定量計量室に連通する投入口が穿設され、前記投入口が前記粉粒体貯留室に連通する投入側プレートと、前記ローターの下面を覆い、いずれかの定量計量室が鉛直方向で重なる前記ローターの相対回転位置で、当該定量計量室に連通する排出口が穿設された排出側プレートと、前記投入口と前記排出口が鉛直方向で重ならない状態で、前記投入側プレートと前記排出側プレートを中心軸周りで相対位置決めして連結し、前記投入側プレートと前記排出側プレートの間で前記ローターを前記中心軸周りに回転自在に案内する連結軸とを備え、前記ローターの前記中心軸周りの回転により、粉粒体貯留室から前記投入口を通して定量計量室に充填された定量の粉粒体を、前記排出口を通して下方へ排出するものであって、前記連結軸内に鉛直方向に移動自在に収容される第1マグネットと、前記連結軸の近傍の前記投入側プレート又は前記排出側プレートに配置される磁気センサーで構成され、前記磁気センサーで検出される磁力が、前記ローターの鉛直方向の移動操作で変化することから、前記ローターの鉛直方向の移動操作を検出することで、いずれかの定量計量室に充填された粉粒体が排出されたことを検出する排出操作センサーと、前記ローターの前記定量計量室間を仕切る仕切部に、複数の前記定量計量室毎に対応して配設される第2マグネットと、前記磁気センサーで構成され、 前記磁気センサーで検出される磁力が、前記ローターの鉛直方向の移動操作の周期より長い周期で変化することから、前記ローターの前記中心軸周りの回転操作を検出する回転操作センサーと、を備え、前記排出操作センサーが検出した前記ローターの鉛直方向の移動操作情報と、前記回転操作センサーが検出した前記ローターの前記中心軸周りの回転操作情報とを、前記粉粒体排出情報として前記送信手段によってワイヤレス送信することを特徴とする。
【0013】
定量計量室と投入口が連通するローターの相対回転位置で、粉粒体貯留室に充填された粉粒体が投入口を通して定量計量室に落下し、ローターを相対回転することにより定量計量室の上面は投入側プレートに覆われ、定量計量室内に定量計量室の容量に相当する一定量の粉粒体が充填される。
【0014】
定量計量室が排出口に連通するローターの相対回転位置で、定量計量室に充填された粉粒体は排出口から落下して排出される。この状態で、粉粒体排出具の操作者は、定量計量室に充填された全ての粉粒体を排出しようと、ローターを含む粉粒体排出具を鉛直方向に振る習性があるので、排出操作センサーがローターの鉛直方向の移動を検出することで、定量計量室に充填された粉粒体が排出されたことを検出する。
【0015】
定量計量室が排出口の一部のみに重なった相対回転位置で粉粒体が排出される場合や、定量計量室と排出口が連通した後にローターを逆回転させた場合であっても、排出操作センサーが粉粒体の排出を検出した際には、粉粒体排出具を鉛直方向に振る操作が加えられているので、定量計量室に充填された粉粒体は残らず排出され、一定量の粉粒体が排出される。
【0016】
操作者がローターを含む粉粒体排出具を鉛直方向に振ると、投入側プレートと排出側プレートを連結する連結軸には、ローターとともに鉛直方向の加速度が加わり、連結軸内に鉛直方向に移動自在に収容される第1マグネットは、ローターを含む粉粒体排出具を鉛直方向に振る操作で鉛直方向に移動する。その結果、投入側プレート又は排出側プレートに配置される磁気センサーと第1マグネット間の距離はローターの鉛直方向の移動操作で変化し、磁気センサーで検出される磁力が変化することから、ローターの鉛直方向の移動操作を検出できる。
【0017】
ローターが中心軸周りに回転し、いずれかの定量計量室が排出口に連通し、粉粒体が排出口から排出される毎に、その定量計量室毎に対応して仕切部に配設される第2マグネットが磁気センサーの近傍を通過し、磁気センサーで検出される磁力が変化する。その結果、磁気センサーで検出される磁力の変化から、定量計量室毎のローターの中心軸周りの回転操作を検出できる。第1マグネットによる磁力は、粉粒体排出具を上下に振るローターの鉛直方向の移動操作の周期で変化し、第2マグネットによる磁力は、ローターが中心軸周りに回転し、定量計量室毎に対応する仕切部が通過する間の周期で変化し、前者の周期より十分に長い周期で変化するので、磁気センサーは、第1マグネットによる磁場の変化と識別して検出する第2マグネットによる磁場の変化から、ローターの中心軸周りの回転操作を検出する。
【0018】
排出操作センサーが検出したローターの鉛直方向の移動操作情報と回転操作センサーが検出したローターの中心軸周りの回転操作情報とは、送信手段によって電子機器へ粉粒体排出情報としてワイヤレス送信される。ワイヤレス送信される移動操作情報と回転操作情報は、1又は複数の定量計量室から一定量毎に排出された粉粒体の総量を示し、排出した粉粒体の総量を使用履歴情報として電子機器で確認できる。
【0019】
請求項3に記載の粉粒体の使用履歴表示システムは、前記粉粒体排出部において、円筒状に形成され、鉛直方向に沿った円筒状の中心軸周りに互いに仕切られた複数の定量計量室を有するローターと、前記粉粒体容器の下方に連結されるとともに、前記ローターの上面を覆い、いずれかの定量計量室が鉛直方向で重なる前記ローターの相対回転位置で、当該定量計量室に連通する投入口が穿設され、前記投入口が前記粉粒体貯留室に連通する投入側プレートと、前記ローターの下面を覆い、いずれかの定量計量室が鉛直方向で重なる前記ローターの相対回転位置で、当該定量計量室に連通する排出口が穿設された排出側プレートと、前記投入口と前記排出口が鉛直方向で重ならない状態で、前記投入側プレートと前記排出側プレートを中心軸周りで相対位置決めして連結し、前記投入側プレートと前記排出側プレートの間で前記ローターを前記中心軸周りに回転自在に案内する連結軸とを備え、前記ローターの前記中心軸周りの回転により、前記粉粒体容器から前記投入口を通して定量計量室に充填された定量の粉粒体を、前記排出口を通して下方へ排出するものであって、前記投入側プレート若しくは前記排出側プレートと中心軸周りで相対位置決めされ、前記投入側プレート若しくは前記排出側プレートと前記ローターの間で鉛直方向に移動自在に配設されるラチェット板と、前記投入側プレート若しくは前記排出側プレートと前記ラチェット板の間に配置され、前記ラチェット板を前記ローターの方向に付勢する付勢手段と、前記ラチェット板と前記ローターの当接面に形成される一組のラチェット爪は、排出口がいずれかの定量計量室と鉛直方向で重なるローターの相対回転位置で、一方のラチェット爪が他方のラチェット爪を乗り越えるランニングフェースラチェット機構と、前記ランニングフェースラチェット機構の一方のラチェット爪が他方のラチェット爪を乗り越える際の前記ラチェット板の移動を検出する節度センサーを備え、前記節度センサーが前記ラチェット板の移動を検出することで、いずれかの定量計量室に充填された粉粒体が排出されたことを検出し、前記節度センサーが検出した前記ラチェット板の移動情報と、前記ラチェット板の鉛直方向の移動の検出回数とを、前記粉粒体排出情報として前記送信手段によってワイヤレス送信することを特徴とする。
【0020】
定量計量室と投入口が連通するローターの相対回転位置で、粉粒体貯留室に充填された粉粒体が投入口を通して定量計量室に落下し、ローターを相対回転することにより定量計量室の上面は投入側プレートに覆われ、定量計量室内に定量計量室の容量に相当する一定量の粉粒体が充填される。
【0021】
定量計量室が排出口に連通するローターの相対回転位置で、定量計量室に充填された粉粒体は排出口から落下して排出される。この際に、ランニングフェースラチェット機構の一方のラチェット爪が他方のラチェット爪を乗り越え、付勢手段で付勢されるラチェット板は、投入側プレート若しくは排出側プレートの方向に移動するので、節度センサーがラチェット板の移動を検出することで、定量計量室に充填された粉粒体が排出されたことを検出する。
【0022】
ランニングフェースラチェット機構によりローターは一方向にのみに回転するので、定量計量室と排出口が完全に重なって全ての粉粒体が排出される前に、ローターか逆回転して排出口が閉ざされることがない。排出口がいずれかの定量計量室と鉛直方向で重なるローターの相対回転位置で、ランニングラチェット機構の一方のラチェット爪が他方のラチェット爪を乗り越え、付勢手段で付勢されるラチェット板が、投入側プレート若しくは排出側プレートに衝突し、その衝突による衝撃で定量計量室に充填された全ての粉粒体が排出されるので、定量計量室に充填された一定量の全ての粉粒体が排出される。
【0023】
節度センサーが検出したラチェット板の移動情報と、ラチェット板の鉛直方向の移動の検出回数とが、前記粉粒体排出情報として前記送信手段によって、使用履歴情報としてワイヤレス送信される。ワイヤレス送信される移動情報と検出回数は、1又は複数の定量計量室から一定量毎に排出された粉粒体の総量を示し、排出した粉粒体の総量を使用履歴情報として電子機器で確認できる。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明によれば、定量の粉粒体が排出されたことを検出することに基づく粉粒体排出情報を前記電子機器へ向けてワイヤレス送信し、電子機器の表示部上に粉粒体排出情報に基づく粉粒体の使用履歴の表示を行うので、使用者が粉粒体の使用履歴を容易に確認することができる。
【0025】
請求項2の発明によれば、連結軸内に収容される第1マグネットと、磁気センサーとからなる簡単な構成で排出操作センサーを構成して、ローターの鉛直方向の移動操作情報を検出するとともに、ローターの定量計量室間を仕切る仕切部に複数の定量計量室毎に対応して配設される第2マグネットと、排出操作センサーと兼用する磁気センサーとからなる簡単な構成で回転操作センサーを構成して、ローターの中心軸周りの回転操作情報を検出することで、これらの移動操作情報と回転操作情報とを粉粒体排出情報として電子機器へワイヤレス送信することができる。この粉粒体排出情報に基づく粉粒体の使用履歴を電子機器の表示部上に表示するので、使用者が粉粒体の使用履歴を容易に確認することができる。
【0026】
請求項3の発明によれば、節度センサーが検出したラチェット板の移動情報と、ラチェット板の鉛直方向の移動の検出回数とを、前記粉粒体排出情報として前記送信手段によってワイヤレス送信することができる。この粉粒体排出情報に基づく粉粒体の使用履歴を電子機器の表示部上に表示するので、使用者が粉粒体の使用履歴を容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】本願発明に係る粉粒体排出具の第1実施の形態を示す正面図である。
【
図5】ローター3の上方に配置される投入側プレート4とカバー2の斜視図である。
【
図6】投入側プレート4を除いたローター3の斜視図である。
【
図7】排出側プレート5に一体に形成された連結軸6の斜視図である。
【
図8】粉粒体の排出検出・送信回路20を示すブロック図である。
【
図9】本願発明に係る粉粒体排出具の第2実施の形態を示す斜視図である。
【
図12】ランニングフェースラチェット機構31を示す部分破断要部斜視図である。
【
図13】投入側プレート34とラチェット板33とその間に配置される圧縮スプリング32の斜視図である。
【
図14】投入側プレート34を除いて示すローター35の斜視図である。
【
図15】従来の粉粒体排出具100を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態について、
図1を用いて説明する。本願発明に係る粉粒体の使用履歴表示システムは、粉粒体排出具1と、粉粒体排出具1とペアリングされる電子機器50とからなる。
【0029】
粉粒体排出具1は、略円筒形状の粉粒体排出部10と、有底の円筒形をなす粉粒体容器19とを備える。粉粒体排出部10は、粉粒体容器19内から定量の粉粒体を排出する機構と、定量の粉粒体が排出されたことを検出するための機構とを備える。また、これらの機構によって検出された定量の粉粒体の排出に基づいて粉粒体排出情報を取得するとともに、この粉粒体排出情報を電子機器50へ向けてワイヤレス送信する送信手段を備える。なお、粉粒体排出具1および粉粒体排出部10の構成の詳細については後述する。
【0030】
粒体排出部10と粉粒体容器19との間は、例えば、後述するように相互を螺合させることにより着脱自在に連結されており、複数の粉粒体容器19を付け替えて使用することができる。また、粉粒体容器19の内部の洗浄が必要な場合には、粒体排出部10を取り外して容易に洗浄することができる。粒体排出部10と粉粒体容器19との間の連結に係る機構は螺合に限定されず、例えば、粉粒体が漏れ出ないように構成された嵌め合せ機構などを適宜応用することで、粉粒体容器19として、粉ミルクのメーカーが市販している粉ミルク缶などの容器を直接取り付けて使用することもできる。このようにすることで、粉ミルクがなくなった場合には、粉ミルクが満充填された新品の粉ミルク缶へ容易に交換でき、使用者が粉ミルク缶などの市販の容器から粉粒体容器19へ粉粒体を移し替える手間と時間を削減できる点で好適である。
【0031】
電子機器50は、例えば、
図1に示すような表示部50aを備えたスマートフォンであって、後述するように、例えばBluetooth(登録商標)方式によって、粉粒体排出具1とペアリングされるとともに、相互間での情報通信を行うことができる。なお、電子機器50として、例示したスマートフォン以外にも、パーソナルコンピュータやタブレットなど、粉粒体排出具1とペアリングすることが可能で、表示部を有する電子機器を好適に応用することができる。
【0032】
表示部50aには、粉粒体排出具1から通知された粉粒体排出情報に基づく粉粒体の使用履歴情報を表示される。より具体的には、粉粒体排出情報に基づく粉粒体の使用総量、および、粉粒体を使用した日時が表示部50aに表示されるため、使用者は表示部50aの表示によって、粉粒体の使用履歴を容易に確認することができる。なお、使用履歴の表示において、例えば、後述するように、粉粒体として粉ミルクを排出する用途で用いる場合には、電子母子手帳のアプリケーションソフトなどとの連携により、スマートフォンにミルクの授乳記録を含めた育児日記を作成することもできる。
【0033】
次に、本発明に係る粉粒体排出具1の第1実施の形態について、
図2乃至
図8を用いて説明する。本実施の形態に係る粉粒体排出具1は、定量のお湯で溶いて授乳用ミルクとするために、定量の粉粒体である粉ミルクを排出するミルカーであり、使用せずに待機させている状態では、
図2、
図4に示す排出姿勢から上下の向きをひっくり返した倒置姿勢としておくものであるが、以下の粉粒体排出具1の各部の説明は、
図2、
図4に図示する排出姿勢の向きを上下方向として説明する。
【0034】
本実施の形態に係る粉粒体排出具1の定量排出部10は、
図6に示すように、円筒形でその中心軸Cから放射状に60度間隔の仕切り壁11が形成されることにより、一定量の粉ミルクを充填する6つの扇形の定量計量室12が形成されたローター3と、ローター3の上面を覆う投入側プレート4と、ローター3の下面を覆う排出側プレート5とからなる。ローター3の各仕切り壁11の上端には、投入側プレート4及び排出側プレート5に対するローター3の相対回転を検出する回転検出用マグネット18が固定されている。
【0035】
投入側プレート4は、
図3に示すように、円板状のプレートで、周囲の円環枠を残して中心軸C周りの180度の角度の半円形の投入口7が穿設されている。中心軸Cを挟み、投入口7と反対側の投入側プレート4の上面は、カバー2で覆われた部品収容室4aとなっていて、部品収容室4a内に収容される回路基板26に、
図8に示す粉粒体の排出検出・送信回路20の各機能を実行する為のMPU(マイコンという)21と、マイコン21に接続する磁気センサー22、記憶部23、アンテナを含む送信手段としてのRF通信部24などの各電子部品と、これらの駆動電源となるバッテリー25が実装されている。
【0036】
排出側プレート5は、ローター3とほぼ同じ輪郭の円板状に形成され、ローター3のいずれかの定量計量室12と同形若しくはやや小さい扇形の排出口8が、中心軸C周りの60度の角度内に穿設されている。
【0037】
連結軸6は、合成樹脂などの半磁性体で雄ねじ状に形成され、ネジ頭部6aを下端とした連結軸6を、下方から排出側プレート5、ローター3、投入側プレート4の順に中心軸Cに沿って挿通し、その上部にナット9を螺合させて、ネジ頭部6aとナット9の間で、投入側プレート4と排出側プレート5の間にローター3を回転自在に挟んだ状態で、投入側プレート4と排出側プレート5を締め付け、投入側プレート4と排出側プレート5の相互が相対回転しないように一体に連結する。
【0038】
連結軸6を介して投入側プレート4と排出側プレート5との相対回転が規制された状態で、中心軸C周りで、投入側プレート4の投入口7の反対側に排出側プレート5の排出口8が配設され、投入口7と排出口8は鉛直方向に沿った投影方向で重ならないようになっている。また、投入側プレート4の部品収容室4aと排出側プレート5の排出口8は、鉛直方向で重なる位置にあり、部品収容室4aに収容された磁気センサー22は、排出口8の上方に位置している。
【0039】
雄ネジ状の連結軸6は、ネジ頭部6aを残して円筒状に形成され、その中空の円筒内に
図4に示すように、鉛直方向検出用マグネット13が鉛直方向に移動自在に収容されている。中空の円筒の上端の開口は、ナット9で施蓋されているので、鉛直方向検出用マグネット13は、投入側プレート4の近傍とその下方の間で移動自在に収容される。
【0040】
円板状の投入側プレート4の外周面には、円筒状の粉粒体容器19の下方の開口縁の内壁に刻設された雌ネジと螺合する雄ネジが刻設され、粉粒体容器19と、粉粒体容器19下端の開口を覆う投入側プレート4が着脱自在に連結される。粉粒体容器19は、粉粒体排出具1を使用する前に、開口を上向きとした倒立姿勢で、上方から内部の粉粒体貯留室19aに十分な分量の粉ミルクを貯留しておき、その上方に投入側プレート4をネジ止めして、粉粒体容器19の開口を覆っておく。倒立姿勢で、粉粒体貯留室19aへの粉粒粉ミルクの投入を容易にするために、粉粒体容器19の上端面は平坦面となり、粉粒体容器19が自立して起立するようになっている。その後、粉粒体排出具1を用いて一定量の粉ミルクを排出させる際には、倒立姿勢から
図1に示す向きに上下を倒置させる(以下、この向きを排出姿勢という)。
【0041】
また、円板状の排出側プレート5の下方にも、粉ミルクの排出口を絞って排出する漏斗14がネジ止めして取り付けられている。漏斗14は、粉粒体排出具1を上下に振って、排出口8から散乱して排出される粉ミルクを狭い絞り口14aにまとめて排出する。
【0042】
キャップ15は、漏斗14の下方に着脱自在に取り付けられ、漏斗14の絞り口14aから粉粒体を排出しない粉粒体排出具1が倒立姿勢である間に、絞り口14aを覆い、絞り口14aから水分やゴミがローター3の定量計量室12に侵入することを防止する。
【0043】
部品収容室4a内の回路基板26に実装された磁気センサー22は、磁気センサー22の配設位置での上述した鉛直方向検出用マグネット13と回転検出用マグネット18による磁場の強さを数値化した磁力として検出する。本実施の形態では、磁気センサー22は、投入側プレート4の上面に配置されているので、鉛直方向検出用マグネット13は、粉粒体排出具1が倒立姿勢である間に最も接近し、
図4に示す排出姿勢で最も遠ざかる。従って、磁気センサー22が検出する鉛直方向検出用マグネット13による磁力は、粉粒体排出具1が倒立姿勢で高く、排出姿勢で低い磁力が検出される。更に、粉粒体排出具1を上下に振る操作では、その上下に振る操作周期とほぼ一致する周期で鉛直方向検出用マグネット13が鉛直方向に往復移動するので、磁気センサー22が検出する鉛直方向検出用マグネット13による磁力は、粉粒体排出具1を上下に振る操作周期とほぼ一致する周期で変化する。
【0044】
また、磁気センサー22は、ローター3が相対回転することにより、各仕切り壁11が通過する上方の投入側プレート4に配設されているので、仕切り壁11に取り付けられた回転検出用マグネット18は、ローター3の相対回転により、いずれかの仕切り壁11が磁気センサー22の下方を通過する際に最も接近し、仕切り壁11の間の定量計量室12が通過する際に遠ざかる。上述の通り、磁気センサー22は、排出口8の上方に位置しているので、磁気センサー22が検出する回転検出用マグネット18による磁力は、排出口8の上方にいずれかの仕切り壁11が位置する回転位置で最も高く(以下、このとき検出される磁力を第1回転磁力という)、仕切り壁11間の定量計量室12が排出口8に一致して連通する回転位置で低い磁力(以下、この時検出される磁力を第2回転磁力という)が検出される。
【0045】
ローター3を回転させる回転操作では、中心軸C周りに60度間隔で配置される仕切り壁11若しくはその間の定量計量室12が磁気センサー22の下方を通過するので、磁気センサー22が検出する回転検出用マグネット18による磁力は、ローター3を60度回転させる回転周期とほぼ同一の周期で変化する。
【0046】
マイコン21は、磁気センサー22が検出した磁力と磁力の変化から、粉粒体排出具1の姿勢を判定する。この姿勢を判定するために、粉粒体排出具1を倒立姿勢と排出姿勢とした際に、それぞれ磁気センサー22から検出される磁力を第1磁場強度と第2磁場強度とし、第1磁場強度と第2磁場強度と間の任意の磁力を磁力閾値に設定しておく。マイコン21は、磁気センサー22から検出される磁力が、所定の期間継続して設定した磁力閾値を越える場合に、粉粒体排出具1は、倒立姿勢と判定し、所定の期間継続して設定した磁力閾値未満である場合に、粉粒体排出具1は、排出姿勢と判定する。
【0047】
マイコン21は、バッテリー25からマイコン21と磁気センサー22のみに駆動電源を供給し、磁気センサー22が検出する磁力のみを監視するスリープモードと、バッテリー25から粉粒体の排出検出・送信回路20を構成する全ての回路部品に駆動電源を供給し、全ての粉粒体の排出検出・送信回路20の動作を制御するランモードで動作し、所定の経過時間、粉粒体排出具1を倒立姿勢と判定した場合には、待機状態であるとして、ランモードで動作している場合には、スリープモードに移行する。また、粉粒体排出具1を倒置姿勢と判定している間に磁気センサー22から検出される磁力が磁力閾値を越える場合や、粉粒体排出具1を排出姿勢と判定した場合には、使用状態であるとして、スリープモードで動作している場合には、ランモードに移行する。これにより、待機状態で、バッテリー25の不必要の電力消費を防止できる。
【0048】
また、マイコン21は、磁気センサー22が検出した磁力と磁力の変化から、粉粒体排出具1の鉛直方向の移動操作と、ローター3の中心軸C周りの回転操作を検出する。両者の判別は、磁気センサー22が検出する磁力に、鉛直方向検出用マグネット13と回転検出用マグネット18による磁力が重ねられているが、鉛直方向検出用マグネット13と回転検出用マグネット18がそれぞれ発生する磁場の強さは異なり、また、粉粒体排出具1を上下に振る操作で、鉛直方向検出用マグネット13による磁力が変化する周期と、ローター3を回転させる回転操作で、回転検出用マグネット18による磁力が変化する周期が異なるので、磁気センサー22が検出した磁力の変化量と、変化する周期とから、判別できる。
【0049】
粉粒体排出具1の鉛直方向の移動操作の検出は、磁気センサー22から検出される磁力が、粉粒体排出具1を上下に振る操作周期とほぼ一致する周期で第1磁場強度と第2磁場強度間の差分の変化量で変化する場合に、マイコン21は、粉粒体排出具1を上下に振る鉛直方向の移動操作であると判定し、検出した鉛直方向の移動操作情報を検出時刻とともに、粉粒体排出情報を構成する情報として記憶部23に記憶する。
【0050】
また、ローター3の中心軸C周りの回転操作の検出は、磁気センサー22から検出される磁力が、ローター3を中心軸C周りに60度回転操作する操作周期に、第1回転磁力と第2回転磁力間の差分の変化量で変化する場合に、マイコン21は、ローター3の中心軸C周りの相対回転操作であると判定し、第2回転磁力を検出した際に定量計量室12が排出口8に一致して、粉ミルクが排出されたものとして、検出した回転操作情報を検出時刻とともに、粉粒体排出情報を構成する情報として記憶部23に記憶する。
【0051】
RF通信部24は、本願発明における送信手段として機能するものであって、低消費電力で動作するBluetooth方式のRF通信モジュールと回路基板26の一面に導電パターンを印刷配線して形成されたプリントアンテナ24aとからなり、マイコン21を介して記憶部23に記憶された移動操作情報と回転操作情報とこれらの検出時刻とを、粉粒体排出情報としてRF送信する。RF通信部24からこれらの粉粒体排出情報を送信する送信先は、ペアリング工程で特定されるスマートフォンなどの電子機器50であり、ペアリング工程は、ここでは、粉粒体排出具1を倒置姿勢とした状態で、粉粒体排出具1を鉛直方向に1度振る動作で実行されるものとする。
【0052】
以下、このように構成された粉粒体排出具1の動作を説明する。初めに、倒置姿勢とした粉粒体排出具1の粉粒体容器19からネジ止めされている定量排出部10から上方を外し、開口する粉粒体容器19の上方から粉粒体貯留室19aに定量排出する粉ミルクを投入しておく。あるいは、予め粉ミルクが満充填された状態の粉粒体容器19を用意してもよい。
【0053】
続いて、ペアリング工程を実行するため、定量排出部10の投入側プレート4を粉粒体容器19にネジ止めして一体とした粉粒体排出具1を一度上下に振る。この鉛直方向の移動操作によって、連結軸6内に鉛直方向に移動自在に収容された鉛直方向検出用マグネット13は、一度鉛直方向に移動操作する周期で、連結軸6内を鉛直方向に往復する。これにより、粉粒体排出具1を磁気センサー22から検出される磁力が磁力閾値を越え、マイコン21は、スリープモードから粉粒体の排出検出・送信回路20の全ての動作を制御するランモードに移行するとともに、ペアリング工程を求める操作が実行されたものとして、ペアリング行程を実行する。
【0054】
Bluetooth方式では、送信側の粉粒体排出具1と受信側となる一又は複数の電子機器50にそれぞれ固有のマスターIDとスレーブIDを割り当てられる。ペアリング工程では、粉粒体排出具1のRF通信部24をペアリングモードとし、マスターIDが割り当てられた粉粒体排出具1がペアリングモードとなったことを周囲に向けて発信する。スレーブIDを割り当てられた電子機器50がこれを受信すると、同様にペアリングモードとなって、自身に割り当てられたスレーブIDを粉粒体排出具1のRF通信部24へ返信し、粉粒体排出具1が受信したスレーブIDが自身のマスターIDに関連づけて割り当てられたスレーブIDに一致すると、両者の間のみのRF通信が確立される。このペアリング工程によって、粉粒体排出具1から粉粒体排出情報として送信される移動操作情報や回転操作情報などの送信情報が、粉粒体排出具1を使用する使用者の電子機器50にのみによって受信され、他の不特定の電子機器では受信されない。
【0055】
ペアリング工程を実行した後、粉粒体排出具1を倒置姿勢から上下を反転させて排出姿勢とすると、粉粒体容器19の粉粒体貯留室19aに貯留されている粉ミルクが、投入側プレート4の投入口7を介してその下方に連通するローター3の定量計量室12に重力で落下し充填される。投入側プレート4若しくは投入側プレート4に一体にネジ止めされている粉粒体容器19を持って、ローター3を相対回転(以下、単に回転という)させると、投入側プレート4の投入口7の縁の部分が、定量計量室12の上縁で粉ミルクを擦り切り、定量計量室12の容積に相当する定量の粉ミルクが定量計量室12に充填される。
【0056】
ここで、漏斗14を覆うキャップ15を外し、粉ミルクが充填された定量計量室12が排出側プレート5の排出口8に連通する回転位置まで、更にローター3を回転させると、排出口8を通して漏斗14の絞り口14aから粉ミルクが排出される。この際に、粉粒体排出具1を鉛直方向に数回振ることにより、定量計量室12に充填されていた粉ミルクは、残らず排出され、定量計量室12の容積に相当する定量の粉ミルクが排出される。
【0057】
粉粒体排出具1を鉛直方向に数回振ることにより、連結軸6内に鉛直方向に移動自在に収容された鉛直方向検出用マグネット13は、粉粒体排出具1を鉛直方向に移動操作する周期で、連結軸6内を鉛直方向に往復し、磁気センサー22から検出される磁力が、この周期とほぼ一致する周期で第1磁場強度と第2磁場強度間の差分の変化量で変化する。この検出した磁力の変化から、マイコン21は、粉ミルクの排出操作に伴う粉粒体排出具1を上下に数回振る移動操作であると判定し、検出した移動操作情報をその検出時刻と関連付けて、粉粒体排出情報を構成する情報として記憶部23に記憶する。
【0058】
記憶部23に記憶された移動操作情報と検出時刻は、定量排出操作が終了した所定時間後(例えば、マイコン21が排出姿勢から倒置姿勢と判定し、ランモードからスリープモードに移行する直前)に、RF通信部24から電子機器50に粉粒体排出情報を構成する情報として送信され、電子機器50では、一定量の粉ミルクを排出した排出操作をその時刻とともに記録する。
【0059】
本実施の形態に係る粉粒体排出具1では、一度、粉粒体排出具1を排出姿勢とした間に、更にローター3を回転操作して複数の定量計量室12に充填された粉ミルクを排出し、定量計量室12の容積の複数倍の容積に相当する量の粉ミルクを排出することもできる。いずれかの定量計量室(以下、第1定量計量室という)12を排出口8に連通させて粉ミルクを排出させた後、ローター3を更に同方向に60度回転操作すると、その回転方向と逆方向で隣り合う定量計量室(第2定量計量室)12が排出口8に連通し、第2定量計量室12に充填された粉ミルクが同様に排出口8を通して漏斗14の絞り口14aから排出される。
【0060】
このローター3を回転操作する間に磁気センサー22から検出される磁力は、第1定量計量室12と第2定量計量室12がそれぞれ排出口8に一致する回転位置で低い第2回転磁力であり、その間の第1定量計量室12と第2定量計量室12を仕切る仕切り壁11が排出口8の上方に位置する回転位置で相対的に高い第1回転磁力となる。マイコン21は、磁気センサー22から検出される磁力が、ローター3を中心軸C周りに60度回転操作する操作周期にほぼ一致する周期で第1回転磁力と第2回転磁力間の差分の変化量で変化し、検出した磁力が第2回転磁力に低下した際に追加して同量の粉ミルクを排出されたものと判定し、検出した回転操作情報を検出時刻とともに、粉粒体排出情報を構成する情報として記憶部23に記憶する。同様に、ローター3を60度毎に回転操作し、更に粉ミルクを排出する回転操作を検出できるので、複数の定量計量室12から粉ミルクを排出する排出回数を表すローター3の回転操作情報を、検出時刻とともに粉粒体排出情報を構成する情報として記憶部23に記憶できる。
【0061】
記憶部23に記憶された回転操作情報と検出時刻は、上述した移動操作情報とその検出時刻とともに、定量排出操作が終了した所定時間後に、RF通信部24から電子機器50に粉粒体排出情報を構成する情報として送信され、電子機器50では、これらの送信された情報と検出時刻とから、定量計量室12の複数倍の容量の粉ミルクを排出した排出操作を、その時刻とともに粉粒体排出情報を構成する情報として記録するとともに、上述した移動操作情報と合わせて、表示部50a上に使用履歴情報として表示する。
【0062】
粉粒体排出具1を用いて定量の粉ミルクを排出した使用者は、電子機器50の表示部50aの表示によって、粉ミルクから作ったミルクで授乳した回数や授乳量をその時刻とともに使用履歴情報として確認できる。
【0063】
本実施の形態では、鉛直方向検出用マグネット13の鉛直方向の移動による磁気センサーで検出される磁力の変化からローター3の鉛直方向の移動操作を検出しているが、ローター3に取り付ける加速度センサーで検出することもできる。
【0064】
上述の第1実施の形態に係る粉粒体排出具1では、粉粒体を排出する際に、粉粒体排出具1を上下に振る操作を利用して、定量の粉粒体が排出されることを検出したが、必ずしも粉粒体排出具1を鉛直方向に振らない場合であっても、定量の粉粒体が排出されたことを検出できる。以下、粉粒体排出具を鉛直方向に移動操作することなく、粉粒体の排出を検出する本願発明に係る粉粒体排出具30の第2実施の形態を、
図9乃至
図14の各図を用いて説明する。粉粒体排出具30の第2実施の形態の説明においても、
図9、
図11に図示する姿勢を排出姿勢と、上下を逆転させた姿勢を倒置姿勢と、排出姿勢での上下方向を上下方向として説明する。また、第1実施の形態に係る粉粒体排出具1と同一若しくは同様に作用する構成については、同一の番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0065】
本実施の形態に係る粉粒体排出具30は、
図10に示すように、2重の円筒形で内側円筒35aと外側円筒35bの間に中心軸Cから放射状に72度間隔の仕切り壁11が形成されることにより、一定量の粉ミルクを充填する5つの扇形の定量計量室12が形成されたローター35と、ローター35の上面を覆う投入側プレート34と、ローター35の下面を覆う排出側プレート36とからなる定量排出部40を備えている。
【0066】
投入側プレート34は、
図11、
図13に示すように、円板状のプレートで、その下面の中心軸C周りに内側案内筒部34bと外側案内筒部34cが垂設され、内側案内筒部34bと外側案内筒部34cとの間で、その下方に配置されるローター35の内側円筒35aと外側円筒35bを遊嵌し、ローター35を中心軸C周りに回転自在に案内している。内側案内筒部34bの内側には、中心軸Cに沿った角筒状の投入側連結軸34dが垂設されている。
【0067】
投入側プレート34の内側案内筒部34bと外側案内筒部34cとの間には、扇形の定量計量室12の2倍の中心軸C周りの144度の角度の半円形の投入口7が穿設されている。中心軸Cを挟み、投入口7と反対側の投入側プレート34の上面は、カバー2で覆われる枡形の部品収容室34aとなっていて、部品収容室34a内に収容される回路基板26に、粉粒体の排出検出・送信回路20の各機能を実行するマイコン21、磁気センサー22、記憶部23、及びアンテナを含むRF通信部24などの各電子部品と、これらの駆動電源となるバッテリー25が実装されている。
【0068】
排出側プレート36は、ローター35とほぼ同じ輪郭の円板状に形成され、ローター35のいずれかの定量計量室12と同形若しくはやや小さい扇形の排出口8が、中心軸C周りの72度の角度内に穿設されている。また、排出側プレート36の中心には、中心軸Cに沿って角筒状の排出側連結軸36aが立設され、排出側連結軸36aの上部が上述した投入側連結軸34dの下部に内側から嵌合して鉛直方向に沿った角筒部6bが形成され、投入側連結軸34dと排出側連結軸36aとをネジ止めして鉛直方向に一体に連結する雄ねじ6cとで、投入側プレート34と排出側プレート36を中心軸C周りで相対位置決めして連結し、投入側プレート34と排出側プレート36の間でローター35を中心軸C周りに回転自在に案内する連結軸6が構成される。
【0069】
連結軸6を介して投入側プレート34と排出側プレート36との相対回転が規制された状態で、中心軸C周りで、投入側プレート34の投入口7の反対側に排出側プレート36の排出口8が配設され、投入口7と排出口8は鉛直方向に沿った投影方向で重ならないようになっている。
【0070】
ローター35の内側円筒35aの下方は、その中心に角筒部6bを回転自在に挿通させる挿通孔が穿設されたリング状の底板35cで覆われ、底板35cの上面には、中心軸C周りに72度のピッチで、上方からみて反時計回りの方向に上方に傾斜する5本の固定側ラチェット爪35dが形成されている。
【0071】
ローター35の内側円筒35aで囲われた底板35cと、その上方の開口を覆う投入側プレート34の間に、円板状のラチェット板33が鉛直方向に移動自在に配設されている。ラチェット板33の中心には、角筒部6bが挿通させる角枠部33aが立設され、角枠部33aに角筒状の角筒部6bが遊挿することによって、ラチェット板34は、鉛直方向に移動自在に案内され、投入側プレート34と排出側プレート36に対して中心軸C周りの回転が規制される。
【0072】
固定側ラチェット爪35dと鉛直方向で対向するラチェット板33の底面には、中心軸C周りに72度のピッチで、固定側ラチェット爪35dと同方向に傾斜する5本の可動側ラチェット爪33bが形成されている。ラチェット板33の上面と投入側プレート34との間には、ラチェット板33に形成された可動側ラチェット爪33bをその下方のローター35に形成された固定側ラチェット爪35dの方向に付勢する圧縮スプリング32が配設され、相互に摺動する可動側ラチェット爪33bと固定側ラチェット爪35dとによって、ローター35を投入側プレート34及び排出側プレート36に対して一方向にのみ回転させるランニングフェースラチェット機構31が構成される。ここでは、上方からみてローター35は、中心軸C周りに時計回りにのみ相対回転する。また、可動側ラチェット爪33bと固定側ラチェット爪35dは、排出側プレート36に対して時計回りに相対回転するローター35のいずれかの定量計量室12が鉛直方向で排出側プレート36の排出口8に一致し、排出口8に連通する回転位置で、一方のラチェット爪が相手側のラチェット爪を乗り越える位置に形成される。
【0073】
ラチェット板33の角枠部33aの上端には、ラチェット板33の鉛直方向の移動を検出するための鉛直方向検出用マグネット13が取り付けられている。
【0074】
第1実施の形態と同様に、投入側プレート34の外側案内筒部34cの外側面には、粉粒体容器19の下方の開口縁の内壁に刻設された雌ネジと螺合する雄ネジが刻設され、粉粒体容器19が投入側プレート34の上方に着脱自在に連結される。また、円板状の排出側プレート36の下方にも、粉ミルクの排出口を絞って排出する漏斗14がネジ止めして着脱自在に連結されている。これらのネジ結合する結合面には、弾性材料からなるシールリング37が配置され、ネジ結合部から粉粒体が漏れ出ないようにしている。
【0075】
部品収容室34a内の回路基板26に実装された磁気センサー22は、磁気センサー22の配設位置での鉛直方向検出用マグネット13による磁場の強さを数値化した磁力として検出する。磁気センサー22は、磁気センサー22を収容する投入側プレート34とローター35との間で鉛直方向に移動するラチェット板33の上方に配置されているので、鉛直方向検出用マグネット13は、一方のラチェット爪33b、35bが他方のラチェット爪35b、33bを乗り越える直前に磁気センサー22に最も接近し、乗り越えた直後に、圧縮スプリング32によりラチェット板33が下方に移動するので、最も遠ざかる。従って、マイコン21は、磁気センサー22か検出する鉛直方向検出用マグネット13による磁力の変化から、ラチェット板33の鉛直方向の移動を検出する。
【0076】
固定側ラチェット爪35dと可動側ラチェット爪33bとは、中心軸C周りに72度のピッチで形成されているので、ローター35を投入側プレート34及び排出側プレート3に対して72度相対回転させる毎に、ラチェット板33は上下に移動し、磁気センサー22が検出する鉛直方向検出用マグネット13による磁力は、ローター35を72度回転操作する周期で変化する。一方、ローター3に形成される定量計量室12は、中心軸C周りの72度間隔で形成され、ローター35を72度相対回転操作する毎にいずれかの定量計量室12が排出口8に連通し、排出口8から粉ミルクが排出されるので、マイコン21が磁力の変化から検出するラチェット板33の鉛直方向の往復移動は、定量計量室12に充填された粉ミルクが排出されたことを表す。
【0077】
マイコン21は、磁気センサー22が検出した磁力が周期的な変化することから、ラチェット板33の鉛直方向の往復移動回数を検出する。ラチェット板33の往復移動回数は、ローター35の相対回転操作によって排出口8に連通した定量計量室12の数を表し、往復移動回数は、定量計量室12から排出される粉ミルクの総量を表す。
【0078】
特に、本実施の形態では、いずれかの定量計量室12が鉛直方向で排出側プレート36の排出口8に一致して連通するローター35の回転位置で、一方のラチェット爪33b、35bが他方のラチェット爪35b、33bを乗り越えるので、マイコン21は磁気センサー22が検出する磁力の低下から、ラチェット板33の下方への移動を検出する。ラチェット板33の下方への移動は、定量計量室12に充填された粉ミルクが排出されたことを表し、ラチェット板33が下方へ移動する回数は、その数の定量計量室12から排出される粉ミルクの総量を表す。
【0079】
マイコン21は、上述のラチェット板33の移動情報と、ラチェット板33の移動を検出した検出回数を検出時刻とともに、粉粒体排出情報を構成する情報として記憶部23に記憶し、RF通信部24は、所定時間経過後に、マイコン21を介して記憶部23に記憶されたラチェット板33の移動情報と検出回数を、これらを検出した検出時刻とともに、粉粒体排出情報としてRF送信する。
【0080】
以下、このように構成された粉粒体排出具30の動作を説明する。初めに、図示しない操作スイッチを用いて、RF通信部24をペアリングモードとし、Bluetooth方式でRF通信部24からRF送信する電子機器50を特定しておく。続いて、倒置姿勢とした粉粒体排出具30の粉粒体容器19の上方から粉粒体貯留室19aに定量排出する粉ミルクを投入し、粉粒体容器19に投入側プレート34を連結してその開口を覆った後、粉粒体排出具30を倒置姿勢から上下を反転させて排出姿勢とする。
【0081】
粉粒体排出具30を排出姿勢とすると、上方の粉粒体容器19の粉粒体貯留室19aに貯留されている粉ミルクが、投入側プレート34の投入口7を介してその下方に連通するローター35の定量計量室12に重力で落下し充填される。続いて、投入側プレート34若しくは投入側プレート34に一体にネジ止めされている粉粒体容器19を持って、ローター35を回転させる。この回転操作では、粉粒体容器19と一体に回転するラチェット板33の可動側ラチェット爪33bとローター35の固定側ラチェット爪35dが噛み合うことによって、ローター35は、粉粒体容器19に対して、上方からみて時計回りにのみ相対回転(以下、単に回転という)する。従って、粉ミルクが充填された定量計量室12の一部が排出側プレート36の排出口8に連通した後、ローター35が逆回転し、定量の粉ミルクが排出されないということがない。
【0082】
ローター35を回転操作することにより、投入側プレート34の投入口7の縁の部分が、定量計量室12の上縁で粉ミルクを擦り切り、定量計量室12の容積に相当する定量の粉ミルクが定量計量室12に充填される。
【0083】
ローター35の回転操作においては、ローター35の固定側ラチェット爪35dの傾斜面がラチェット板33の可動側ラチェット爪33bの傾斜面に摺動して、圧縮スプリング32に抗してラチェット板33を上方へ押し上げるので、ローター35を回転操作に圧縮スプリング32による負荷が加わる。更に、ローター35を回転操作し、固定側ラチェット爪35dが可動側ラチェット爪33bを乗り越えると、ラチェット板33は、圧縮スプリング32により下方に付勢されて一気に下降し、同時にローター35の回転操作から圧縮スプリング32による負荷が除かれるので、操作者に節度感が伝わる。また、一気に下降するラチェット板33は、ローター35の底板35に衝突して停止し、ローター35が振動する。
【0084】
本実施の形態では、いずれかの定量計量室12が排出口8に一致して連通するローター35の回転位置で、固定側ラチェット爪35dが可動側ラチェット爪33bを乗り越えるので、粉ミルクが充填された定量計量室12が排出側プレート36の排出口8に連通する回転位置で、排出口8を通して漏斗14の絞り口134aから粉ミルクが排出される。この際に、ローター35は、ラチェット板33が衝突することにより振動するので、粉粒体排出具1を振ることなく、定量計量室12に充填されていた粉ミルクは、残らず排出され、定量計量室12の容積に相当する定量の粉ミルクが排出される。
【0085】
また、ローター35を回転操作する操作者は、圧縮スプリング32による負荷が除かれることによる節度感と、ラチェット板33がローター35の底板35に衝突することによる衝突音から、粉ミルクが充填された定量計量室12が排出側プレート36の排出口8に完全に一致する回転位置でローター35の回転を停止させることができる。
【0086】
マイコン21は磁気センサー22が検出する磁力の低下から、ラチェット板33の下方への移動を検出し、定量計量室12に充填されていた粉ミルクが排出されたことを表すこのラチェット板33の下方への移動情報とその検出時刻を、粉粒体排出情報を構成する情報として記憶部23に記憶する。
【0087】
定量計量室12の容積の複数倍の容積に相当する量の粉ミルクを排出する場合には、更にローター35を72度回転操作し、回転方向と逆方向で隣り合う粉ミルクが充填された定量計量室12を排出口8に連通させて粉ミルクを排出し、同様の回転操作を所望容量の粉ミルクが排出されるまで繰り返す。この回転操作においては、各定量計量室12が排出側プレート36の排出口8に連通する毎に、固定側ラチェット爪35dが可動側ラチェット爪33bを乗り越え、同一の作用を繰り返すので、その説明は省略する。
【0088】
また、粉ミルクが充填された各定量計量室12から排出口8を通して粉ミルクが排出される毎に、マイコン21は磁気センサー22が検出する磁力の低下から、ラチェット板33の下方への移動を検出するので、ラチェット板33の下方への総移動回数と、その検出時刻を、粉粒体排出情報を構成する情報として記憶部23に記憶する。ラチェット板33の下方への総移動回数は、ローター35の回転操作によって排出口8に連通した定量計量室12の数を表し、総移動回数から排出された粉ミルクの総量を検出することができる。投入口7から粉ミルクが充填された定量計量室12が排出口8に連投するまでにローター35は144度回転し、ラチェット板33は2回下降するので、実際の粉ミルクの総排出量は、検出されるラチェット板33の総移動回数から2回減じた回数から得られる。
【0089】
記憶部23に記憶されたラチェット板の下方への移動情報、総移動回数とその各検出時刻は、定量排出操作が終了した所定時間後に、RF通信部24から電子機器50に粉粒体排出情報として送信され、電子機器50では、これらの送信された情報と検出時刻とから、定量計量室12の複数倍の容量の粉ミルクを排出した排出操作をその時刻とともに記録するとともに、表示部50a上に使用履歴情報として表示する。従って、粉粒体排出具30を用いて所望量の粉ミルクを排出した使用者は、電子機器50の表示部50aに表示される使用履歴情報から、粉ミルクから作ったミルクで授乳した回数や授乳量をその時刻とともに使用履歴情報として確認できる。
【0090】
本実施の形態によれば、ラチェット板33に取り付けられる鉛直方向検出用マグネット13の移動により磁気センサー22で検出される磁力の変化からラチェット板33の鉛直方向の移動を検出しているが、ラチェット板33に加速度センサーを取り付けて、ラチェット板33の鉛直方向の移動を検出してもよい。
【0091】
また、定量計量室12が排出口8に一致するローター3の回転位置では、ラチェット板33がローター35に衝突してローター35が振動するので、加速度センサーをローター35やローター35の下方に配置される排出側プレート36に取り付けて、加速度センサーが検出するローター35や排出側プレート36の振動からラチェット板の鉛直方向の移動を検出してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、粉ミルクなどの粉粒体の使用履歴表示システムにおいて好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 粉粒体排出具
3 ローター
4 投入側プレート
5 排出側プレート
6 連結軸
7 投入口
8 排出口
10 定量排出部
11 仕切り壁
12 定量計量室
13 鉛直方向検出用マグネット
18 回転検出用マグネット
19 粉粒体容器
19a 粉粒体貯留室
20 粉粒体の排出検出・送信回路
30 粉粒体排出具(第2実施の形態)
31 ランニングフェースラチェット機構
32 圧縮スプリング(付勢手段)
33 ラチェット板
34 投入側プレート
35 ローター
35d 固定側ラチェット爪
36 排出側プレート
40 定量排出部
50 電子機器
50a 表示部
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