(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056242
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】冷媒管、熱交換器、冷媒管加工方法
(51)【国際特許分類】
F28F 1/00 20060101AFI20230412BHJP
F28D 7/10 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
F28F1/00 D
F28D7/10 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165480
(22)【出願日】2021-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】502345393
【氏名又は名称】株式会社ワイ・ジェー・エス.
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】橋本 公成
(72)【発明者】
【氏名】水田 聖之
(72)【発明者】
【氏名】亀山 修司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 靖彦
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA01
3L103BB43
3L103CC02
3L103CC28
3L103DD05
3L103DD38
(57)【要約】
【課題】外管と内管の間に漏洩検知部が形成された冷媒管、および、この冷媒管を採用した熱交換器を簡便にかつ低コストで提供する。
【解決手段】管軸中心に向かって窪んだ螺旋状の外管凹部4が形成された外管2と、外管2の内径よりも小さい外径を有し、外管凹部4の形成位置と対応するように管軸中心に向かって窪んだ螺旋状の内管凹部5が形成された、外管2の内部に同軸に挿入され内部に冷媒が流れる内管3と、を有し、外管凹部4の内面と内管凹部5の外面が接触して接触部6を構成しているとともに、管軸方向に隣り合うその接触部6の間に、外管2と内管3が径方向に離間した螺旋溝状の漏洩検知部7が形成されている構成とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管軸中心に向かって窪んだ螺旋状の外管凹部(4)が形成された外管(2)と、
前記外管(2)の内径よりも小さい外径を有し、前記外管凹部(4)の形成位置と対応するように管軸中心に向かって窪んだ螺旋状の内管凹部(5)が形成された、前記外管(2)の内部に同軸に挿入され内部に冷媒が流れる内管(3)と、
を有し、前記外管凹部(4)の内面と前記内管凹部(5)の外面が接触して接触部(6)を構成しているとともに、管軸方向に隣り合うその接触部(6)の間に、前記外管(2)と前記内管(3)が径方向に離間した螺旋溝状の漏洩検知部(7)が形成されている冷媒管。
【請求項2】
前記外管凹部(4)のピッチPと、前記外管凹部(4)の管軸方向の幅Wの間に、0.1<W/P<1の関係が成立している請求項1に記載の冷媒管。
【請求項3】
前記外管(2)および前記内管(3)がいずれも金属材料からなり、前記外管(2)の素材の弾性率が、前記内管(3)の素材の弾性率よりも小さい請求項1または2に記載の冷媒管。
【請求項4】
内部に水が流れる水管(8)と、
前記水管(8)の内部に挿入される請求項1から3のいずれか1項に記載の冷媒管(1)と、
を有し、前記水管(8)が上下複数段に積層されており、積層された前記水管(8)同士が水管接続部材(11)によって接続され、積層された前記水管(8)内の前記冷媒管(1)の前記内管(3)同士が内管接続部材(12)によって接続されている熱交換器。
【請求項5】
前記水管(8)の表面に、管軸中心に向かって一方向から前記表面を変形させた変形部(16)を形成した請求項4に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記冷媒管(1)が前記水管(8)内に複数本設けられており、そのうちの少なくとも1本の前記冷媒管(1)の表面に、管軸方向に隣り合う前記外管凹部(4)の間の山部の外径よりも大径の大径部(17)を有する請求項4または5に記載の熱交換器。
【請求項7】
外管(2)の内部に、前記外管(2)の内径よりも小さい外径を有する内管(3)を同軸に挿入する挿入工程と、
前記外管(2)の外面に押圧部材(18)を押し込んで、前記外管(2)に管軸中心に向かって窪んだ螺旋状の外管凹部(4)、および、前記内管(3)に管軸中心に向かって窪んだ、前記外管凹部(4)の形成位置と対応する螺旋状の内管凹部(5)を同時に形成して、前記外管凹部(4)の内面と前記内管凹部(5)の外面が接触する接触部(6)を構成し、管軸方向に隣り合うその接触部(6)の間に、前記外管(2)と前記内管(3)が径方向に離間した螺旋溝状の漏洩検知部(7)を形成する押圧工程と、
を有する冷媒管加工方法。
【請求項8】
前記外管(2)の内径をDi、前記内管(3)の外径をdo、および、前記押圧部材(18)の前記外管(2)表面から管軸中心方向への押し込み量をTとしたときに、Di-do<Tの関係を満たす請求項7に記載の冷媒管加工方法。
【請求項9】
前記外管(2)および前記内管(3)がいずれも金属材料からなり、前記外管(2)の素材の弾性率が、前記内管(3)の素材の弾性率よりも小さい請求項7または8に記載の冷媒管加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷媒管、この冷媒管を採用した熱交換器、および、冷媒管の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプ式の給湯器などにおいては、フロン(ハイドロフルオロカーボンなど)や二酸化炭素などの冷媒と水との間で熱交換を行う方式が採用される。この方式においては、水管の内部に冷媒管を通し、冷媒管に冷媒を、水管と冷媒管との間の隙間に水をそれぞれ通すように構成されている。
【0003】
例えば下記特許文献1に示すように、冷媒管は、2重管とされることがある。内側の管(特許文献1では冷媒管10)は、外側の管(特許文献1では漏洩検知管11)にちょうど嵌まり込むように挿通されている。外側の管(漏洩検知管11)の内面には多数の漏洩検知溝12が形成されている。漏洩検知溝12は、外部に設けられた漏洩検知センサに接続されており、内側の管(冷媒管10)から漏洩した冷媒、および、水管(特許文献1では外管7)から漏洩した水は、互いに混入することなく漏洩検知管12を介して外部に漏出し、漏洩検知センサで検知されるようになっている(特許文献1の段落0022、
図2などを参照)。
【0004】
また、例えば下記特許文献2に示すように、冷媒管(特許文献2では漏洩検知管10C)を、内管13とこの内管13がちょうど嵌まり込むように挿通される外管12で構成し、内管13と外管12に螺旋状の凹凸部13B、12Bをそれぞれ形成して、両凹凸部13B、12Bが互いに嵌合する構成とすることもできる。この構成においても、外管12の内面に管軸方向に螺旋状の条溝15が形成されており、この条溝15が漏洩路17となって、漏洩した水または冷媒を検知できるようになっている(特許文献2の段落0053、
図2(a)などを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4414196号公報
【特許文献2】特開2009-229032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および2に係る構成においては、冷媒管を構成する内側の管と外側の管との間に漏洩検知のための溝を形成するために、外側の間の内面に溝加工などの表面加工を行う必要がある。このため、この表面加工のための加工コストがかさむ問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、外管と内管の間に漏洩検知部が形成された冷媒管、および、この冷媒管を採用した熱交換器を簡便にかつ低コストで提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明においては、
管軸中心に向かって窪んだ螺旋状の外管凹部が形成された外管と、
前記外管の内径よりも小さい外径を有し、前記外管凹部の形成位置と対応するように管軸中心に向かって窪んだ螺旋状の内管凹部が形成された、前記外管の内部に同軸に挿入され内部に冷媒が流れる内管と、
を有し、前記外管凹部の内面と前記内管凹部の外面が接触して接触部を構成しているとともに、管軸方向に隣り合うその接触部の間に、前記外管と前記内管が径方向に離間した螺旋溝状の漏洩検知部が形成されている冷媒管を構成した。
【0009】
このようにすると、外管の内径と内管の外径のそれぞれの大きさの差に起因して、両管の間には必然的に隙間が生じる。そして、接触部によって螺旋溝状とされたその隙間が、漏洩検知部として機能する。このため、外管の内面に漏洩検知部を形成するための表面加工が不要となり、漏洩検知部が形成された冷媒管を簡便にかつ低コストで提供することが可能となる。
【0010】
上記の冷媒管においては、
前記外管凹部のピッチPと、前記外管凹部の管軸方向の幅Wの間に、0.1<W/P<1の関係が成立しているのが好ましい。
【0011】
このようにすると、冷媒管を流れる冷媒と、水管を流れる水との間の熱交換を効率的に行うことができるとともに、漏洩検知部の機能を確実に発揮させることができる。W/Pの値が0.1以下のときは、冷媒管を構成する外管と内管の接触部の面積が小さく、外管と内管との間の熱伝達が不十分となって効率が低下するため好ましくない。また、W/Pの値が1のときは、漏洩検知部の断面積を確保することができなくなるため好ましくない。
【0012】
上記の各冷媒管においては、
前記外管および前記内管がいずれも金属材料からなり、前記外管の素材の弾性率が、前記内管の素材の弾性率よりも小さいのが好ましい。
【0013】
このようにすると、外管凹部の加工に起因する復元力(径方向外向きに変形する力)よりも、内管凹部の加工に起因する復元力(径方向外向きに変形する力)の方が大きくなるため、外管と内管の接触部における当接力が高まり、両管間における熱伝達の効率を向上することができる。
【0014】
また、上記の課題を解決するため、本発明においては、
内部に水が流れる水管と、
前記水管の内部に挿入される上記の冷媒管と、
を有し、前記水管が上下複数段に積層されており、積層された前記水管同士が水管接続部材によって接続され、積層された前記水管内の前記冷媒管の前記内管同士が内管接続部材によって接続されている熱交換器を構成した。
【0015】
このようにすると、効率よく熱交換を行うことができるとともに、冷媒または水の漏洩が生じたときはその漏洩を速やかに検知することができる熱交換器を簡便にかつ低コストで提供することができる。
【0016】
上記の熱交換器においては、
前記水管の表面に、管軸中心に向かって一方向から前記表面を変形させた変形部を形成するのが好ましい。
【0017】
このようにすると、水管内の流動方向が蛇行するとともに層流状態から乱流状態に変化させることができ、冷媒管を流れる冷媒と水との間の熱交換の効率を一層向上することができる。
【0018】
上記の各熱交換器においては、
前記冷媒管が前記水管内に複数本設けられており、そのうちの少なくとも1本の前記冷媒管の表面に、管軸方向に隣り合う前記外管凹部の間の山部の外径よりも大径の大径部を有するのが好ましい。
【0019】
このようにすると、隣り合う冷媒管の間に隙間を生じ、その隙間に水が流れるようにすることができる。このため、冷媒管と水との接触面積が増大し、冷媒管を流れる冷媒と水との間の熱交換の効率を一層向上することができる。
【0020】
また、上記の課題を解決するため、本発明においては、
外管の内部に、前記外管の内径よりも小さい外径を有する内管を同軸に挿入する挿入工程と、
前記外管の外面に押圧部材を押し込んで、前記外管に管軸中心に向かって窪んだ螺旋状の外管凹部、および、前記内管に管軸中心に向かって窪んだ、前記外管凹部の形成位置と対応する螺旋状の内管凹部を同時に形成して、前記外管凹部の内面と前記内管凹部の外面が接触する接触部を構成し、管軸方向に隣り合うその接触部の間に、前記外管と前記内管が径方向に離間した螺旋溝状の漏洩検知部を形成する押圧工程と、
を有する冷媒管加工方法を構成した。
【0021】
このようにすると、外管凹部、内管凹部、および、漏洩検知部を押圧部材の押し込みによって一度に形成することができるため、冷媒管の加工をスムーズに行うことができる。
【0022】
上記の冷媒管加工方法においては、
前記外管の内径をDi、前記内管の外径をdo、および、前記押圧部材の前記外管表面から管軸中心方向への押し込み量をTとしたときに、Di-do<Tの関係を満たすのが好ましい。
【0023】
このようにすると、外管の内径よりも小さい外径の内管が、この外管内で偏心して隙間が生じた場合でも、押圧部材の押し込みによって、内管に確実に内管凹部を形成することができる。
【0024】
上記の各冷媒管加工方法においては、
前記外管および前記内管がいずれも金属材料からなり、前記外管の素材の弾性率が、前記内管の素材の弾性率よりも小さいのが好ましい。
【0025】
このようにすると、外管凹部の加工に起因する復元力(径方向外向きに変形する力)よりも、内管凹部の加工に起因する復元力(径方向外向きに変形する力)の方が大きくなるため、外管と内管の接触部における当接力が高まり、両管間における熱伝達の効率を向上することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の上記構成によると、外管と内管の間に漏洩検知部が形成された冷媒管、および、この冷媒管を採用した熱交換器を簡便にかつ低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係る冷媒管の一実施形態の要部を示す断面図
【
図3】本発明に係る熱交換器の第一実施形態を示す斜視図
【
図5】冷媒管の接続パターンを示す模式図であって、(a)は2本の冷媒管を1本に集約するパターン、(b)は2本の冷媒管を集約しないパターン
【
図6】水管の一部分を偏平状に変形させた状態を示す模式図
【
図7】(a)は水管に変形部を形成した状態を示す模式図、(b)は(a)中のb-b線に沿う断面図、(c)は(a)中のc-c線に沿う断面図
【
図8】水管の下部にのみ変形部を形成した状態を示す模式図
【
図9】冷媒管と水管の両方にコルゲート管を採用した構成を示す模式図
【
図10】大径部を有する冷媒管を並べて配置した状態を示す模式図
【
図11】本発明に係る熱交換器の第二実施形態を示す斜視図
【
図13】本発明に係る冷媒管加工方法の一実施形態を示す断面図であって、(a)は加工前、(b)は加工中
【
図14】外管および内管の保持手段を示す断面図であって、(a)は2個の保持ロールで保持した状態、(b)は保持台で保持した状態
【
図15】(a)は押圧部材による外管の押圧部を示す拡大断面図、(b)は押圧部材の第一変形例、(c)は押圧部材の第二変形例
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る冷媒管1を図面に基づいて説明する。
図1、
図2に示すように、この冷媒管1は、外管2と内管3から構成される2重管である。
【0029】
外管2は、管軸中心に向かって窪んだ螺旋状の外管凹部4が形成された銅管である。内管3は、外管2の内径Diよりも小さい外径doを有する銅管である。この内管3には、外管凹部4の形成位置と対応するように(すなわち、軸方向位置と周方向位置がいずれも一致するように)、管軸中心に向かって窪んだ螺旋状の内管凹部5が形成されている。内管3は外管2の内部に同軸に挿入されており、この内管3の内部には冷媒cが流れるように構成される。内管3に内管凹部5を形成することで、この内管3を流れる冷媒cは乱流となる。外管凹部4および内管凹部5は、コルゲート加工によって形成されている。
【0030】
外管凹部4の内面と内管凹部5の外面は、互いに接触して接触部6を構成している。外管凹部4と内管凹部5の窪みの方向は、いずれも管軸中心に向かう方向で共通しているので、接触部6は線接触状態ではなく、管軸方向に若干の幅をもった螺旋状の面接触状態となっている。
【0031】
管軸方向に隣り合う接触部6の間には、外管2と内管3が径方向に離間した螺旋溝状の漏洩検知部7が形成されている。漏洩検知部7の管軸方向の端部は、冷媒管1の外部に開口している。内管3から漏洩した冷媒c、または、後述する水管8から漏洩した水wは、漏洩検知部7を通ってその開口端部から排出される。この開口端部に漏洩検知器(図示せず)を設けることによって、冷媒cまたは水wの漏洩が検知される。
【0032】
外管凹部4のピッチPと、外管凹部4の管軸方向の幅Wとの間には、0.1<W/P<1の関係が成立している。W/Pの値が0.1に近付くほど、接触部6の管軸方向幅が狭くなり、漏洩検知部7の管軸方向幅が広くなる。このため、漏洩検知部7内に漏洩した冷媒cまたは水wの流動性は高まる一方で、接触部6における外管2と内管3との間の熱伝達効率は低下する。また、W/Pの値が1に近付くほど、接触部6の管軸方向幅が広くなり、漏洩検知部7の管軸方向幅が狭くなる。このため、接触部6における外管2と内管3との間の熱伝達効率は高まる一方で、漏洩検知部7内に漏洩した冷媒cまたは水wの流動性は低下する。
【0033】
この実施形態においては、外管凹部4および内管凹部5を一条ねじ形状としたが、多条ねじ形状とすることもできる。例えば、一条ねじ形状とした場合は1本の漏洩検知部7が、二条ねじ形状とした場合は2本の漏洩検知部7が形成される。多条ねじ形状とする場合も、外管凹部4のピッチPと、外管凹部4の管軸方向の幅Wとの間には、上記と同じ関係が成立する。
【0034】
上記の冷媒管1によると、外管2の内径Diと内管3の外径doのそれぞれの大きさの差に起因して、両管2、3の間には必然的に隙間が生じる。そして、接触部6によって螺旋溝状とされたその隙間が、漏洩検知部7として機能する。このため、外管2の内面に漏洩検知部7を形成するための溝加工など表面加工が不要となり、漏洩検知部7を有する冷媒管1を簡便にかつ低コストで提供することが可能となる。また、冷媒管1を流れる冷媒cと、水管8を流れる水wとの間の熱交換を効率的に行うことができるとともに、漏洩検知部7の機能を確実に発揮させることができる。
【0035】
上記の実施形態においては、外管2と内管3をいずれも銅管としたが、例えば、外管2を銅管とし、内管3を銅よりも弾性率が大きい素材であるステンレス管とすることもできる。このようにすると、外管凹部4の加工に起因する復元力(径方向外向きに変形する力)よりも、内管凹部5の加工に起因する復元力(径方向外向きに変形する力)の方が大きくなるため、外管2と内管3の接触部6における当接力が高まり、両管2、3間における熱伝達の効率を向上することができる。
【0036】
本発明に係る熱交換器10の第一実施形態を図面に基づいて説明する。
図3、
図4に示すように、この熱交換器10は、内部に水wが流れる水管8と、水管8の内部に挿入される上記の冷媒管1と、を有している。
【0037】
水管8は、外側から内側に向かって略矩形状に複数回(この実施形態では約2回半)巻回されている。同様に巻回された水管8は上下に積層され(以下、必要に応じてそれぞれの水管8を上段水管8a、下段水管8bと称する。)、上段水管8aと下段水管8bは、その内側端部において水管接続部材11によって接続されている。なお、水管8の積層数は上下2層に限定されず、3層以上とすることもできる。
【0038】
各水管8a、8bの内部に挿入される冷媒管1も、水管8と同様に略矩形状に複数回巻回されている。第一実施形態においては、上段水管8aおよび下段水管8bに、それぞれ2本の冷媒管1が挿入されている。各水管8a、8b内の2本の冷媒管1は、その内部で上下に並ぶように配置されている。上段水管8aに挿入された冷媒管1(以下、必要に応じて上段冷媒管1aと称する。)の内管3と、下段水管8bに挿入された冷媒管1(以下、必要に応じて下段冷媒管1bと称する。)の内管3は、内管接続部材12によって接続されている。なお、水管8に挿入される冷媒管1の本数は2本に限定されず、適宜増減することができる。
【0039】
図3に示すように、冷媒cは、上段冷媒管1aの外側端部から導入される。そして、この上段冷媒管1a、内管接続部材12、および、下段冷媒管1bを経由して、この下段冷媒管1bの外側端部から排出される。一方で、水wは、下段水管8bの外側端部から導入される。そして、この下段水管8b、水管接続部材11、および、上段水管8aを経由して、この上段水管8aの外側端部から排出される。すなわち、冷媒cと水wは流れの方向が対向している。
【0040】
上記の熱交換器10によると、冷媒cと水wの間で効率よく熱交換を行うことができるとともに、冷媒cまたは水wの漏洩が生じたときはその漏洩を速やかに検知することができる。しかも、上記のように低コストで提供される冷媒管1を採用しているので、この熱交換器10も低コスト化することができる。
【0041】
上記の熱交換器10においては、各水管8内の2本の冷媒管1を、その内部で上下に並ぶように配置したので、この水管8の水平屈曲部分で、冷媒管1をスムーズに屈曲させることができる。なお、この水平屈曲部分のみ2本の冷媒管1を上下に並ぶように配置し、それ以外の部分は、2本の冷媒管1を左右に並ぶように配置することもできる。
【0042】
内管接続部材12による上下段の冷媒管1(内管3)の接続パターンは適宜選択することができる。例えば、
図5(a)の接続パターンにおいては、2本の冷媒管1を1本に集約した後に再び2本に分岐して接続している。一方で、
図5(b)の接続パターンにおいては、2本の冷媒管1を1本に集約することなく、上段水管8aの上側の冷媒管1aを下段水管8bの下側の冷媒管1bに接続するとともに、上段水管8aの下側の冷媒管1aを下段水管8bの上側の冷媒管1bに接続している。
【0043】
図5(a)の接続パターンを採用すると、上側と下側の2本の冷媒管1を流れる冷媒cに温度差が生じたとしても、両冷媒管1の集約に伴ってその温度差が解消する。このため、再分岐された冷媒管を流れる冷媒cと水wとの間の熱交換を効率よく行うことができる。また、
図5(b)の接続パターンを採用すると、上側と下側の冷媒管1を流れる冷媒cに温度差が生じたとしても、上段水管8aと下段水管8bとの間でその温度の高低関係が反転するため、上側と下側の冷媒管1を流れる冷媒cと水wとの間の熱交換が均一化される。
【0044】
なお、
図5(a)(b)においては、水管8が上下2段に設けられており、各水管8に2本の冷媒管1が挿入されている構成を例示して説明したが、水管8が上下3段以上に設けられている場合や、各水管8に3本以上の冷媒管1が挿入されている場合にも同様に配管することが可能である。
【0045】
上記の熱交換器10においては、
図6に示すように、冷媒管1が挿入された水管8の一部を管軸中心に向かう両方向から偏平形成治具14で挟み込んで、この水管8の一部に偏平部15を形成した構成とすることもできる。このように偏平部15を形成すると、この一部において水管8内の水流が乱流となりやすく、冷媒管1を流れる冷媒cと水wとの間の熱交換の効率を向上することができる。また、冷媒管1の位置が水管8の中央寄りに位置決めされるため、熱交換の効率をさらに向上することができる。
【0046】
上記の熱交換器10においては、
図7(a)~(c)に示すように、水管8の表面に、管軸中心に向かって一方向からこの表面を変形させた変形部16を形成した構成とすることもできる。このように変形部16を形成すると、
図7(a)中に矢印で示したように、水管8内の水wの流動方向を蛇行させるとともに層流状態から乱流状態に変化させることができるため、冷媒管1を流れる冷媒cと水wとの間の熱交換の効率を向上することができる。
【0047】
あるいは、
図8に示すように、水管8の下部にのみ変形部16を複数個連続して形成することもできる。このようにすると、冷媒管1を上下に並ぶように配置した際に、下側の冷媒管1と水管8との間に隙間を確保することができるため、熱交換の効率をさらに向上することができる。
【0048】
また、
図9に示すように、冷媒管1と水管8の両方にコルゲート管を採用した構成とすることもできる。このようにすると、冷媒管1内の冷媒流および水管8内の水流を乱流としやすくなり、冷媒管1を流れる冷媒cと水wとの間の熱交換の効率を向上することができる。なお、冷媒管1の表裏面の一方(外管2の外側または内管3の内側の一方)のみに溝(凹凸部)を形成することによっても、熱交換の効率の向上を期待できる。また、水管8をコルゲート管とすることにより、
図8に示す変形部16を別途形成することなく、下側の冷媒管1と水管8との間に隙間を確保することができる。
【0049】
上記の熱交換器10においては、
図10に示すように、冷媒管1が水管8内に複数(この実施形態では2本)設けられた構成において、そのうちの少なくとも1本(この実施形態では2本)の冷媒管1の表面に、管軸方向に隣り合う外管凹部4の間の山部の外径よりも大径の大径部17を有する構成とすることもできる。このように大径部17を形成すると、隣り合う冷媒管1の間に隙間を生じ、その隙間にも水wが流れるようにすることができるため、冷媒管1と水wとの間の接触面積が増大し、冷媒管1を流れる冷媒cと水wとの間の熱交換の効率を一層向上することができる。
【0050】
なお、この実施形態では、2本の冷媒管1の大径部17の位置が管軸方向に揃った構成について例示したが、2本の冷媒管1の大径部17の位置がずれた構成や、複数の冷媒管1のうち一部の冷媒管1のみが大径部17を有する構成とすることもできる。この実施形態における大径部17は、冷媒管1に対しコルゲート加工を行わなかった未加工部分である。この未加工部分は、コルゲート加工によって形成された隣り合う外管凹部4の間の山部の外径よりも大径となっている。この大径部17は、冷媒管1に対しコルゲート加工を行った部分に、この冷媒管1とは別部材のリング部材などを設けることによって形成してもよい。
【0051】
本発明に係る熱交換器10の第二実施形態を
図11、
図12に示す。この熱交換器10は、第一実施形態に係る熱交換器10と基本的な構成は共通するが、下段水管8bに挿入された冷媒管1が1本である点においてのみ相違している。このように、下段水管8bの冷媒管1を1本とすることにより冷媒管1の配管が簡素化され、コスト削減を図ることができる。
【0052】
本発明に係る冷媒管加工方法の一実施形態を図面に基づいて説明する。この冷媒管加工方法は、
図13(a)に示す挿入工程と、
図13(b)に示す押圧工程とを有している。
【0053】
挿入工程は、外管2の内部に、外管2の内径よりも小さい外径を有する内管3を同軸に挿入する工程である。外管2の内面と内管3の外面は、いずれも溝などの凹凸部が形成されていない平滑面となっている。
【0054】
押圧工程は、外管2の外面に押圧部材18を押し込んで、外管2に外管凹部4を、内管3に外管凹部4の形成位置と対応する内管凹部5を同時に形成する工程である。外管凹部4および内管凹部5は、管軸中心に向かって形成される螺旋状の窪みである。この工程において、外管2および内管3は、例えば、
図14(a)に示す保持ロール19や、
図14(b)に示す保持台20などの保持具に保持される。このとき、外管2内に挿入された内管3はその自重で下向きに偏心し、外管2の内面と内管3の上部外面との間には隙間が生じた状態となる。
【0055】
上記のように、外管2および内管3が保持された状態で、外管2の表面側に押圧部材18を配置する。そして、この押圧部材18を外管2の表面に押し込みながら外管2周りに公転(
図13(b)中の矢印Rを参照)させるとともに、外管2および内管3を管軸方向に一定速度で移動(同図中の矢印mを参照)させる。押圧部材18は、外管2との当接力によって回転軸x周りに成り行き自転(同図中の矢印rを参照)する。このとき、外管2の内径Di、内管の外径do、押圧部材18の押し込み量Tの関係がDi-do<Tの関係を満たすようにその押し込み量Tを決定する。
【0056】
なお、上記のように外管2および内管3を管軸方向に一定速度で移動させる代わりに、押圧部材18を外管2周りに公転させるとともに、管軸方向に一定速度で移動(外管2および内管3は管軸方向に静止)させてもよい。このとき、押圧部材18は、回転軸x周りに成り行き自転する。
【0057】
また、押圧部材18を外管2周りに公転させる代わりに、外管2および内管3を管軸周りに回転させつつ管軸方向に一定速度で移動(押圧部材18は管軸方向に静止)させてもよい。このとき、押圧部材18は、外管2周りに公転はしないが、回転軸x周りに成り行き自転する。
【0058】
さらに、押圧部材18を外管2周りに公転させる代わりに、外管2および内管3を管軸周りに回転させつつ押圧部材18を管軸方向に一定速度で移動(外管2および内管3は管軸方向に静止)させてもよい。このとき、押圧部材18は、外管2周りに公転はしないが、回転軸x周りに成り行き自転する。
【0059】
押圧部材18の押し込みによって形成された外管凹部4の内面と内管凹部5の内面は互いに接触して接触部6を構成する。そして、管軸方向に隣り合うその接触部6の間に、外管2と内管3が径方向に離間した螺旋溝状の漏洩検知部7が形成される。
【0060】
表1に示すスペックの外管2および内管3を用い、同表中に示す加工条件で冷媒管1の加工試験を実施した。この加工試験においては、外管2および内管3のいずれも銅管を採用した。下記スペックの外管2および内管3、および、下記加工条件は、外管2の内径Di、内管3の外径do、押圧部材18の押し込み量Tの関係、Di-do<Tを満たしている。また、この加工試験においては、
図15(a)に示すように先端曲率半径Rの押圧部材18を使用した。
【0061】
【0062】
この加工試験で加工した冷媒管1を用いて熱交換の効率を評価したところ、押圧部材18の先端曲率半径Rが異なるいずれの条件においても、良好な熱交換効率を達成可能であることが確認できた。この良好な熱交換効率のためには、押圧部材18の先端曲率半径Rは、0.1mm以上4.0mm以下の範囲内、あるいは0.3mm以上3.0mm以下の範囲内、さらには0.5mm以上2.0mm以下の範囲内とするのが好ましい。
【0063】
この加工試験では、先端に曲率半径Rを有する押圧部材18を使用したが、例えば、
図15(b)に示す先端に平坦部が形成された押圧部材18や、
図15(c)に示す先端の曲率半径が比較的小さい(先端が尖った)押圧部材18も採用できる場合がある。
図15(b)の押圧部材18を用いると、その先端平坦部の形状に対応して外管凹部4および内管凹部5にも平坦部が形成されるため、外管凹部4の内面と内管凹部5の外面が接触することで形成される接触部6の接触面積を拡大することができ、外管2と内管3の間の熱伝達効率を向上することができる。また、
図15(c)の押圧部材18を用いると、加工時の抵抗を小さくすることができるため、外管凹部4および内管凹部5をスムーズに形成することができる。
【0064】
この加工試験によって加工した冷媒管1は、
図2に示す外管凹部4のピッチPと、外管凹部4の管軸方向の幅W(
図2参照)との間に0.1<W/P<1の関係が成立している。このため冷媒cと水wの間で効率よく熱交換を行うことができるとともに、冷媒cまたは水wの漏洩が生じたときはその漏洩を速やかに検知することができる。上記のように規定する代わりに、外管凹部4のピッチPと、押圧部材18の先端曲率半径Rまたは押圧部材18の管軸方向幅Thとの間に、P≧2R、または、P≧Thの関係が成立するように加工条件を設定することができる可能性もある。
【0065】
上記の冷媒管加工方法においては、外管2の内径Di、内管3の外径do、押圧部材18の押し込み量Tの関係がDi-do<Tの関係を満たすようにしたので、外管2の内面と自重で下向きに偏心した内管3の上部外面との間に隙間が生じていても、押圧部材18の一度の押し込みによって、外管凹部4、内管凹部5、および、漏洩検知部7を同時に形成することができる。このため、冷媒管1の加工をスムーズにかつ低コストで行うことができる。
【0066】
上記の冷媒管加工方法においては、外管2と内管3をいずれも銅管としたが、例えば、外管2を銅管とし、内管3を銅よりも弾性率が大きい素材であるステンレス管とすることもできる。このようにすると、外管凹部4が元の形状に戻ろうとする復元力(径方向外向きに変形する力)よりも、内管凹部5が元の形状に戻ろうとする復元力(径方向外向きに変形する力)の方が大きくなるため、外管2と内管3の接触部6における当接力が高まり、両管2、3間における熱伝達の効率を向上することができる。
【0067】
上記の冷媒加工方法において用いられる内管3は、外径doが3mm以上10mm以下の範囲内のものが用いられることが多いが、この範囲外のものに対しても適用することは可能である。
【0068】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味およびすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0069】
1 冷媒管
1a 上段冷媒管
1b 下段冷媒管
2 外管
3 内管
4 外管凹部
5 内管凹部
6 接触部
7 漏洩検知部
8 水管
8a 上段水管
8b 下段水管
10 熱交換器
11 水管接続部材
12 内管接続部材
14 偏平形成治具
15 偏平部
16 変形部
17 大径部
18 押圧部材
19 保持ロール
20 保持台
P 外管凹部のピッチ
W 外管凹部の管軸方向の幅
Di 外管の内径
do 内管の外径
T 押し込み量