(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056244
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置、電力変換装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20230412BHJP
【FI】
H02M3/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165484
(22)【出願日】2021-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 晴喜
(72)【発明者】
【氏名】千頭和 周平
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA18
5H730AA20
5H730AS04
5H730AS17
5H730BB14
5H730BB27
5H730BB83
5H730BB98
5H730CC04
5H730DD04
5H730FD11
5H730FD41
5H730FF09
5H730FG12
5H730XX04
5H730XX11
5H730XX26
5H730XX50
(57)【要約】
【課題】スイッチング電源装置の故障診断を効率的に行うことができる、スイッチング電源装置、電力変換装置及び制御方法を提供する。
【解決手段】本開示の一態様に係るスイッチング電源装置は、電力変換部と、制御部と、電流計と、故障検出部と、を備える。電力変換部は、一対のスイッチング素子が直列に接続された複数の直列回路を並列に接続したフルブリッジ方式である。制御部は、前記直列回路の各々に設けられた前記スイッチング素子のオン/オフ状態を切り替えることで、前記電力変換部を動作させる。電流計は、前記電力変換部に供給される電流値を測定する。故障検出部は、前記直列回路の駆動時に前記電流計で測定される前記電流値に基づいて、前記電力変換部が正常か否かを判定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のスイッチング素子が直列に接続された複数の直列回路を並列に接続したフルブリッジ方式の電力変換部と、
前記直列回路の各々に設けられた前記スイッチング素子のオン/オフ状態を切り替えることで、前記電力変換部を動作させる制御部と、
前記電力変換部に供給される電流値を測定する電流計と、
前記直列回路の駆動時に前記電流計で測定される前記電流値に基づいて、前記電力変換部が正常か否かを判定する故障検出部と、
を備える、スイッチング電源装置。
【請求項2】
前記電力変換部は、前記複数の直列回路として、第1の直列回路と第2の直列回路とが並列に接続されたフルブリッジ方式の回路構成を有し、
前記制御部は、同一の前記直列回路に設けられた前記一対のスイッチング素子のオン/オフ状態を相違させるとともに、前記第1の直列回路と前記第2の直列回路とで前記一対のスイッチング素子のオン/オフ状態が互い違いとなるよう、前記電力変換部を第1の動作状態と第2の動作状態とに切り替え、
前記故障検出部は、前記第1の動作状態と前記第2の動作状態との各々で測定される前記電流値に基づいて、前記電力変換部が正常か否かを判定する、
請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記電力変換部に印加される電圧値を測定する電圧計を更に備え、
前記故障検出部は、前記電流計で測定される前記電流値と、前記電圧計で測定される前記電圧値とに基づいて、前記電力変換部が正常か否かを判定する、
請求項1又は2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記故障検出部は、前記電力変換部の正常動作時に測定された前記電流計及び前記電圧計の測定と比較することで、前記電力変換部が正常か否かを判定する、
請求項3に記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記故障検出部は、前記電力変換部が故障していると検出した場合に、前記制御部に対して前記電力変換部が故障していることを出力する、
請求項1から4の何れか1項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
電源に並列接続された複数の前記電力変換部のうち、前記電源から供給される電力の供給先を何れか一つの前記電力変換部に切り替える切替回路を更に備え、
前記電流計は、前記電源と複数の前記電力変換部の各々とを接続する共通の電源ライン上に1つ設けられる、
請求項1から5の何れか1項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項7】
外部電源である交流電源から入力された電力の電圧を昇圧する力率改善回路と、
一対のスイッチング素子が直列に接続された複数の直列回路を並列に接続したフルブリッジ方式の電力変換部と、
前記直列回路の各々に設けられた前記スイッチング素子のオン/オフ状態を切り替えることで、前記電力変換部を動作させる制御部と、
前記電力変換部に供給される電流値を測定する電流計と、
前記直列回路の駆動時に前記電流計で測定される前記電流値に基づいて、前記電力変換部が正常か否かを判定する故障検出部と、
を備える、電力変換装置。
【請求項8】
一対のスイッチング素子が直列に接続された複数の直列回路を並列に接続したフルブリッジ方式の電力変換部と、
前記電力変換部に供給される電流値を測定する電流計と、
を備えるスイッチング電源装置で実行される制御方法であって、
前記直列回路の各々に設けられた前記スイッチング素子のオン/オフ状態を切り替えることで、前記電力変換部を動作させる制御ステップと、
前記直列回路の駆動時に前記電流計で測定される前記電流値に基づいて、前記電力変換部が正常か否かを判定する故障検出ステップと、
を含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スイッチング電源装置、電力変換装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交流電源から供給される交流電力を直流電力等に変換するスイッチング電源装置が知られている(例えば、特許文献1、2)。スイッチング電源装置は、例えば、車両に搭載され、充電用の電力をバッテリに供給する充電装置として使用される。かかるスイッチング電源装置は、フルブリッジ方式等の複数のスイッチング素子を有し、スイッチング素子のオン/オフすることで出力を安定させる直流安定化電源として機能する。
【0003】
また、従来、スイッチング電源装置の故障検出方法として、スイッチング素子の各々を個別にオンまたはオフ状態にすることで、オープン故障、ショート故障等の故障状態を検出する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-135206号公報
【特許文献2】特開2008-182872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の故障検出方法では、スイッチング素子毎に故障診断を行う必要があるため、非効率的であるという問題があった。
【0006】
本開示が解決しようとする課題は、スイッチング電源装置の故障診断を効率的に行うことができる、スイッチング電源装置、電力変換装置及び制御方法を提供することである。
【0007】
本開示の一態様に係るスイッチング電源装置は、電力変換部と、制御部と、電流計と、故障検出部と、を備える。電力変換部は、一対のスイッチング素子が直列に接続された複数の直列回路を並列に接続したフルブリッジ方式である。制御部は、前記直列回路の各々に設けられた前記スイッチング素子のオン/オフ状態を切り替えることで、前記電力変換部を動作させる。電流計は、前記電力変換部に供給される電流値を測定する。故障検出部は、前記直列回路の駆動時に前記電流計で測定される前記電流値に基づいて、前記電力変換部が正常か否かを判定する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、スイッチング素子の故障診断を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るスイッチング電源装置が単相交流電源と接続された場合の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態の電源回路が備える整流回路及び力率改善回の回路構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態の電源回路が備えるDC/DCコンバータの回路構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る電源回路の動作状態に対応する電流値及び電圧値の一例を示すテーブルである。
【
図5】
図5は、実施形態に係るスイッチング電源装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、変形例1に係る電源回路が備えるDC/DCコンバータの回路構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、変形例2に係るスイッチング電源装置が単相交流電源と接続された場合の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
まず、本実施形態に係るスイッチング電源装置100の構成の一例について説明する。
図1は、スイッチング電源装置100の構成例を示す図である。また、
図2は、スイッチング電源装置100が備える整流回路30及び力率改善回路40の回路構成の一例を示す図である。スイッチング電源装置100は、例えば、電気自動車やハイブリット自動車等の車両の充電装置に用いられる。
【0012】
(スイッチング電源装置100の構成)
スイッチング電源装置100は、交流電源から供給される交流電力を直流に変換して出力する装置である。
図1では一例として、スイッチング電源装置100が単相交流電源10に接続された場合を図示している。また、
図1では直流に変換した電力を、バッテリ60へ出力する例を図示している。なお、スイッチング電源装置100は、電力変換装置ともいう。
【0013】
バッテリ60は、例えば、車両のモータの駆動用バッテリである。バッテリ60は、強電バッテリであり、例えば、リチウムイオンバッテリ等が挙げられる。なお、バッテリ60は、例えば、携帯電話や電化製品など車両以外に用いられるバッテリであってもよい。
【0014】
スイッチング電源装置100は、電源回路1a及び制御部70を有する。本実施形態において、スイッチング電源装置100は、単相交流電源10に対応するために電源回路を1つ備える構成となっている。
【0015】
電源回路1aは、フィルタ回路20、整流回路30、力率改善回路40、及びDC/DCコンバータ50を有する。
【0016】
フィルタ回路20には、単相交流電源10からの交流電力が入力される。フィルタ回路20は、電源ラインへのノイズ侵入と外部交流電源へのノイズ流出を防止する。整流回路30は、フィルタ回路20から入力された交流電力を全波整流して直流電力変換し、力率改善回路40に出力する。整流回路30は、例えば、
図2に示すように、ダイオード31A、ダイオード31B、ダイオード31C及びダイオード31Dを有するダイオードブリッジ回路で実現される。
【0017】
力率改善回路40は、整流回路30から入力された電力の力率を改善するとともに、入力された電力の電圧を昇圧する機能を有する回路である。力率改善回路40は、例えば、
図2に示すように、コイル41A、コイル41B、スイッチング素子42A、スイッチング素子42B、ダイオード43A、ダイオード43B、コンデンサ44A及びコンデンサ44Bを有する。
【0018】
DC/DCコンバータ50は、力率改善回路40からの直流電力を所定の電圧に変換する回路である。例えば、DC/DCコンバータ50は、力率改善回路40からの直流電力を、バッテリ60を充電可能な電圧に変換して出力する。DC/DCコンバータ50の具体的な回路構成については後述する。
【0019】
制御部70は、スイッチング電源装置100の動作を統括的に制御する。例えば、制御部70は、スイッチング電源装置100が交流電源に接続されると、電源回路1aに対し充電開始指示を行う。また、制御部70は、一対のスイッチング素子が直列に接続された複数の直列回路の各々に設けられたスイッチング素子のオン/オフ状態を切り替えることで、後述する電力変換部51を動作させるように制御を行う。また、制御部70は、後述するリレー56Aをオープン、またはクローズ状態に切り替えることで、DC/DCコンバータ50と後述するトランス巻線52との接続/切断を制御する。
【0020】
さらに、制御部70は、電源回路1aに対し、交流電力を印加し、バッテリ60へ充電を開始させる。制御部70は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。
【0021】
(DC/DCコンバータ50の構成)
次に、本実施形態のDC/DCコンバータ50の構成の一例について説明する。
図3は、DC/DCコンバータ50の構成例を示す図である。
図3に示すように、DC/DCコンバータ50は、電力変換部51、トランス巻線52、負荷53、電流計54、電圧計55及びリレー56Aを有する。
【0022】
電力変換部51は、一対のスイッチング素子が直列に接続された複数の直列回路を並列に接続したフルブリッジ方式の回路構成である。具体的には、電力変換部51は、複数の直列回路として、第1の直列回路と第2の直列回路とが並列に接続されたフルブリッジ方式の回路構成を有する。例えば、電力変換部51は、第1のスイッチング素子51A、第2のスイッチング素子51B、第3のスイッチング素子51C及び第4のスイッチング素子51Dを有する。
【0023】
第1のスイッチング素子51A、第2のスイッチング素子51B、第3のスイッチング素子51C及び第4のスイッチング素子51Dは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やFET(Field Effect Transistor)等、電力線を導通、不通に切り替え可能な半導体素子である。
【0024】
第1のスイッチング素子51A及び第2のスイッチング素子51Bは直列に接続されている。第3のスイッチング素子51C及び第4のスイッチング素子51Dは、直列に接続されている。また、第3のスイッチング素子51C及び第4のスイッチング素子51Dは、第1のスイッチング素子51A及び第2のスイッチング素子51Bと並列に配置されている。第1のスイッチング素子51A、第2のスイッチング素子51B、第3のスイッチング素子51C及び第4のスイッチング素子51Dは、制御部70の制御信号が入力される。第1のスイッチング素子51A、第2のスイッチング素子51B、第3のスイッチング素子51C及び第4のスイッチング素子51Dは、当該制御信号により、選択的にオンオフ動作が行われる。
【0025】
制御部70は、同一の直列回路に設けられた一対のスイッチング素子のオン/オフ状態を相違させるとともに、第1の直列回路と第2の直列回路とで一対のスイッチング素子のオン/オフ状態が互い違いとなるよう、電力変換部51を第1の動作状態と第2の動作状態とに切り替えるように制御を行う。具体的には、制御部70は、第1の動作状態と第2の動作状態とを交互に繰り返し行う。
【0026】
第1の動作状態は、第1のスイッチング素子51A及び第4のスイッチング素子51Dがオン状態であり、第2のスイッチング素子51B及び第3のスイッチング素子51Cがオフ状態である動作状態である。
【0027】
第2の動作状態は、第1のスイッチング素子51A及び第4のスイッチング素子51Dがオフ状態であり、第2のスイッチング素子51B及び第3のスイッチング素子51Cがオン状態である動作状態である。
【0028】
上述した第1の動作状態と第2の動作状態とが交互に繰り返し行われることで、DC/DCコンバータ50は、力率改善回路40から供給された直流電力を、交流電力に変換してトランス巻線52に出力する。
【0029】
トランス巻線52は、図示しないトランスの一次側巻線であり、第1のスイッチング素子51Aと第3のスイッチング素子51Cとの接続線L1と、第2のスイッチング素子51Bと第4のスイッチング素子51Dとの接続線L2との間に接続される。トランス巻線52に供給された電力は、図示しないトランスの2次側巻線を介してバッテリ60等に出力される。
【0030】
負荷53は、接続線L1と、接続線L2との間に設けられる。負荷53は、既知の抵抗値を有し、電力変換部51が正常か否かを判定する際に用いられる。
【0031】
電流計54は、電力変換部51に供給される電流の電流値を測定するセンサ装置である。電流計54は、制御部70の制御の下、電力変換部51が第1の動作状態及び第2の動作状態における、電力変換部51の電流を測定する。電流計54で計測された電流値は、故障検出部71へ出力される。
【0032】
電圧計55は、電力変換部51に印加される電圧の電圧値を測定するセンサ装置である。具体的には、電圧計55は、第1のスイッチング素子51A、第2のスイッチング素子51B、第3のスイッチング素子51C及び第4のスイッチング素子51Dと並列に接続されている。電圧計55は、制御部70の制御の下、電力変換部51が第1の動作状態及び第2の動作状態における、電力変換部51の電圧を測定する。電圧計55で計測された電圧値は、故障検出部71へ出力される。
【0033】
リレー56Aは、接続線L1とトランス巻線52とを繋ぐ線上に設けられる。リレー56Aは、トランス巻線52と負荷53に供給される電流の流れを切り替える。
【0034】
故障検出部71は、制御部70の一機能として動作する。故障検出部71は、制御部70から充電開始指示を受け取ると、故障診断を行い、電力変換部51が正常か否かを判定する。具体的には、故障検出部71は、制御部70から充電開始指示を受け取ると、制御部70は、リレー56Aをクローズ状態からオープン状態に切り替える。つまり、制御部70は、電力変換部51に対してトランス巻線52と切断し、負荷53に電流が供給されるように切り替える。その後、故障検出部71は、電源回路1aに低電圧を印加する。また、故障検出部71は、電源回路1a駆動時に電流計54で測定される電流値に基づいて、電力変換部51が正常か否かを判定する。
【0035】
具体的には、故障検出部71は、第1の動作状態と第2の動作状態との各々で測定される電流値に基づいて、電力変換部51が正常か否かを判定する。また、故障検出部71は、電流計54で測定される電流値と、電圧計55で測定される電圧値とに基づいて、電力変換部51が正常か否かを判定する。故障検出部71は、電力変換部51の正常動作時に測定された電流計54及び電圧計55の測定と比較することで、電力変換部51が正常か否かを判定する。さらに、故障検出部71は、電力変換部51が故障していると検出した場合に、制御部70に対して電力変換部51が故障していることを出力する。
【0036】
ここで、故障検出部71が電力変換部51の故障を検出する動作について説明する。
図4は、故障検出部71が検出した電流値及び電圧値に対応する、電力変換部51の状態の指標の一例を示すテーブルである。
図4では、電力変換部51が正常な状態である場合と、第1のスイッチング素子51A、または第4のスイッチング素子51Dがオープン故障及びショート故障の場合における電流値及び電圧値の値を示す。また、電源回路1aに印加される低電圧は、例えば、10V[ボルト]の直流電圧とする。
【0037】
まず、電力変換部51が正常(故障していない)の場合、第1の動作状態及び第2の動作状態における電流値は、10/(R+2Ron)[A](アンペア)である。また、第1の動作状態及び第2の動作状態における電圧値は、10[V](ボルト)である。
【0038】
ここで、R[Ω]は負荷53の抵抗値を示し、Ronは第1のスイッチング素子51A、第2のスイッチング素子51B、第3のスイッチング素子51C及び第4のスイッチング素子51Dの抵抗値を示す。電力変換部51の抵抗値は、第1の動作状態において、第1のスイッチング素子51A及び第4のスイッチング素子51Dがオン状態であるため2Ron[Ω]となる。また、電力変換部51の抵抗値は、第2の動作状態において、第2のスイッチング素子51B及び第3のスイッチング素子51Cがオン状態であるため2Ron[Ω]となる。
【0039】
次に、第1のスイッチング素子51A、または第4のスイッチング素子51Dがオープン故障している場合、第1の動作状態における電流値は、0[A](アンペア)であり、第1の動作状態における電圧値は、10[V](ボルト)である。故障検出部71は、第1の動作状態において、10V[ボルト]の直流電圧の印加がされているにもかかわらず、電流計54の電流値が0[A](アンペア)と検出した場合、電力変換部51がオープン故障していると判定することができる。
【0040】
また、第1のスイッチング素子51A、または第4のスイッチング素子51Dがオープン故障している場合、第2の動作状態における電流値は、10/(R+2Ron)[A](アンペア)であり、第2の動作状態における電圧値は、10[V](ボルト)である。
【0041】
次に、第1のスイッチング素子51A、または第4のスイッチング素子51Dがショート故障している場合、第1の動作状態における電流値は、10/R[A](アンペア)であり、第1の動作状態における電圧値は、10[V](ボルト)である。故障検出部71は、第1の動作状態において、10V[ボルト]の直流電圧の印加がされているにもかかわらず、電流計54の電流値が10/R[A](アンペア)と検出した場合、電力変換部51がショート故障していると判定することができる。
【0042】
また、第1のスイッチング素子51A、または第4のスイッチング素子51Dがショート故障している場合、第2の動作状態における電流値は、10/Ron[A](アンペア)であり、第2の動作状態における電圧値は、0[V](ボルト)である。故障検出部71は、第2の動作状態において、10V[ボルト]の直流電圧の印加がされているにもかかわらず、電流計54の電流値が10/Ron[A](アンペア)と検出した場合、電力変換部51がショート故障していると判定することができる。また、故障検出部71は、第2の動作状態において、10V[ボルト]の直流電圧の印加がされているにもかかわらず、電圧計55の電圧値が0[V](ボルト)と検出した場合、電力変換部51がショート故障していると判定することができる。
【0043】
故障検出部71は、第1の動作状態、第2の動作状態における電流計54の電流値及び電圧計55の電圧値を検出することで、電力変換部51が正常か否かを判定することができる。また、故障検出部71は、制御部70が電力変換部51の動作状態を1回の切り替え動作で、電力変換部51が正常な否かを判定することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、第1のスイッチング素子51Aまたは第4のスイッチング素子51Dがオープン故障及びショート故障の場合における電流値及び電圧値の値を示したが、第2のスイッチング素子51Bまたは第3のスイッチング素子51Cがオープン故障及びショート故障の場合においても適用できる。
【0045】
具体的には、第2のスイッチング素子51Bまたは第3のスイッチング素子51Cがオープン故障の場合、第1の動作状態における電流値は、10/(R+2Ron)[A](アンペア)であり、第1の動作状態における電圧値は、10[V](ボルト)である。第2のスイッチング素子51Bまたは第3のスイッチング素子51Cがオープン故障の場合、第2の動作状態における電流値は、0[A](アンペア)であり、第2の動作状態における電圧値は、10[V](ボルト)である。
【0046】
第2のスイッチング素子51Bまたは第3のスイッチング素子51Cがショート故障の場合、第1の動作状態における電流値は、10/Ron[A](アンペア)であり、第1の動作状態における電圧値は、0[V](ボルト)である。第2のスイッチング素子51Bまたは第3のスイッチング素子51Cがショート故障の場合、第2の動作状態における電流値は、10/R[A](アンペア)であり、第2の動作状態における電圧値は、10[V](ボルト)である。
【0047】
なお、本実施形態では、電流計54及び電圧計55で計測される電流値と電圧値との両方を用いて電力変換部51が正常か否かを判定する構成としたが、これに限らず、電流計54で計測される電流値を用いて電力変換部51が正常か否かを判定しても良い。本実施形態において、故障検出部71は、ハードウェアで構成されることで実現する。あるいは、故障検出部71は、プロセッサがメモリに保持されたプログラムを実行することで、その機能が実現されても良い。
【0048】
次に、
図5を用いて、スイッチング電源装置100の動作の一例について説明する。
図5は、スイッチング電源装置100の動作例を示すフローチャートである。以下に説明する動作は、交流電源の接続時や、バッテリ60の充電に先駆けて開始(スタート)される。
【0049】
まず、制御部70は、電源回路1aに対し充電開始指示を行う(ステップS1001)。次に、制御部70は、電力変換部51に対してトランス巻線52と切断し、負荷53に電流が供給されるように、リレー56Aをクローズ状態からオープン状態に切り替える。その後、故障検出部71は、電源回路1aが有する電力変換部51に対し正常に動作しているか故障診断を実施する(ステップS1002)。
【0050】
続いて、故障検出部71は、電力変換部51の正常動作時における電流値及び電圧値が、電流計54及び電圧計55が計測した電流値及び電圧値と比較して、電力変換部51が正常か否かを判定する(ステップS1003)。故障検出部71は、電力変換部51が故障であると判定した場合(ステップS1003:No)、ステップS1004へ進む。
【0051】
続いて、故障検出部71は、制御部70に対し、電力変換部51が故障であるという故障検出結果を出力する(ステップS1004)。出力処理が行われると、本処理は終了する。
【0052】
一方、故障検出部71は、電力変換部51が正常である判定した場合(ステップS1003:Yes)、ステップS1005へ進む。なお、この場合、制御部70は、リレー56Aをオープン状態からクローズ状態に切り替え、電力変換部51とトランス巻線52とを接続することで、トランス巻線52に電流が供給されるように制御する。次いで、制御部70は、電源回路1aに対し、交流電力を印加する(ステップS1005)。電源回路1aは、バッテリ60へ充電を開始する(ステップS1006)。充電開始処理が行われると、本処理は終了する。
【0053】
以上のように、本実施形態に係るスイッチング電源装置100は、電源回路1aに供給される電流値を測定する電流計54から出力される電流値に応じて、フルブリッジ回路から成る電力変換部51が正常か否かを検出する。
【0054】
これにより、フルブリッジ回路の各々のスイッチング素子毎に故障診断を行う必要がないため、電力変換部51の故障診断を効率的に行うことができる。
【0055】
なお、上述した実施形態は、上述した各装置が有する構成又は機能の一部を変更することで、適宜に変形して実施することも可能である。そこで、以下では、上述した実施形態に係るいくつかの変形例を他の実施形態として説明する。なお、以下では、上述した実施形態と異なる点を主に説明することとし、既に説明した内容と共通する点については詳細な説明を省略する。また、以下で説明する変形例は、個別に実施されてもよいし、適宜組み合わせて実施されてもよい。
【0056】
(変形例1)
上述の実施形態では、電力変換部51が、二相形のフルブリッジ方式の回路構成を有する形態を説明したが、電力変換部51の回路構成はこれに限定されるものではない。そこで、変形例1では、電力変換部51が、三相形のフルブリッジ方式の回路構成を有する形態について説明する。
【0057】
図6は、変形例1に係るDC/DCコンバータ50の構成例を示す回路図である。
図6に示すように、電力変換部51は、三相形のフルブリッジ回路を構成する。電力変換部51は、第1のスイッチング素子51A、第2のスイッチング素子51B、第3のスイッチング素子51C、第4のスイッチング素子51D、第5のスイッチング素子51E、及び第6のスイッチング素子51Fを有する。
【0058】
第5のスイッチング素子51E及び第6のスイッチング素子51Fは直列に接続されている。また、第5のスイッチング素子51E及び第6のスイッチング素子51Fは、第1のスイッチング素子51A、第2のスイッチング素子51B、第3のスイッチング素子51C及び第4のスイッチング素子51Dと並列に配置されている。
【0059】
変形例1の場合、電力変換部51は、第1のスイッチング素子51A、第2のスイッチング素子51B、第3のスイッチング素子51C、第4のスイッチング素子51D、第5のスイッチング素子51E及び第6のスイッチング素子51Fは、制御部70の制御信号が入力される。第1のスイッチング素子51A、第2のスイッチング素子51B、第3のスイッチング素子51C、第4のスイッチング素子51D、第5のスイッチング素子51E及び第6のスイッチング素子51Fは、当該制御信号により、選択的にオンオフ動作が行われる。具体的には、第1の動作状態と第2の動作状態と第3の動作状態と第4の動作状態が交互に繰り返し行われる。
【0060】
第3の動作状態は、第1のスイッチング素子51A及び第6のスイッチング素子51Fがオン状態であり、第3のスイッチング素子51C及び第5のスイッチング素子51Eがオフ状態である動作状態である。なお、第3の動作状態は、第2のスイッチング素子51B及び第6のスイッチング素子51Fがオン状態であり、第4のスイッチング素子51D及び第5のスイッチング素子51Eがオフ状態である動作状態であっても良い。
【0061】
第4の動作状態は、第1のスイッチング素子51A及び第6のスイッチング素子51Fがオフ状態であり、第3のスイッチング素子51C及び第5のスイッチング素子51Eがオン状態である動作状態である。なお、第4の動作状態は、第2のスイッチング素子51B及び第6のスイッチング素子51Fがオフ状態であり、第4のスイッチング素子51D及び第5のスイッチング素子51Eがオン状態である動作状態であっても良い。
【0062】
トランス巻線52は、図示しないトランスの一次側巻線であり、第1のスイッチング素子51Aと第3のスイッチング素子51Cとの接続線L1と、第2のスイッチング素子51Bと第4のスイッチング素子51Dとの接続線L2と、第5のスイッチング素子51Eと第6のスイッチング素子51Fとの間に接続される。
【0063】
負荷53は、接続線L1と、接続線L2と、接続線L3の間に設けられる。負荷53は、既知の抵抗値を有し、電力変換部51が正常か否かを判定する際に用いられる。
【0064】
リレー56Bは、接続線L2と、トランス巻線52とを繋ぐ線上に設けられる。リレー56Bは、トランス巻線52と負荷53に供給される電流の流れを切り替える。
【0065】
故障検出部71は、第1の動作状態、第2の動作状態、第3の動作状態及び第4の動作状態における電流計54の電流値及び電圧計55の電圧値を検出することで、電力変換部51が正常か否かを判定する。また、故障検出部71は、制御部70が電力変換部51の動作状態を3回の切り替え動作で、電力変換部51が正常な否かを判定する。
【0066】
これにより、変形例における電力変換部51が三相形のフルブリッジ回路であっても、フルブリッジ回路の各々のスイッチング素子毎に故障診断を行う必要がないため、スイッチング素子の故障診断を効率的に行うことができる。
【0067】
(変形例2)
上述の実施形態では、スイッチング電源装置100が、1つの電源回路1aの回路構成を有する形態を説明したが、スイッチング電源装置100の回路構成はこれに限定されるものではない。そこで、変形例2では、スイッチング電源装置200が、2つの電源回路の回路構成を有する形態について説明する。
【0068】
図7は、変形例2に係るスイッチング電源装置200の構成例を示す回路図である。スイッチング電源装置200は、電源回路1a、電源回路1b、電流計54、電圧計55、制御部70及び切替回路80を有する。本実施形態において、スイッチング電源装置200は、単相交流電源10に対応するために電源回路を2つ備える構成となっている。
【0069】
電源回路1a、1bは、それぞれフィルタ回路20、整流回路30、力率改善回路40、DC/DCコンバータ50及び電圧計55を有する。また、電源回路1a、1bの各々は、それぞれ電源ラインL4、L5を介して交流電源に対して並列に接続される。
【0070】
電流計54は、単相交流電源10の後段に設けられる。電流計54は、交流電源と複数の電力変換部51の各々とを接続する共通の電源ライン上に1つ設けられる。電圧計55は、それぞれ力率改善回路40の後段に設けられる。
【0071】
切替回路80は、電源回路1b(第2の電源回路)を電源回路1a(第1の電源回路)と並列に第1の相(電源ラインL4)に接続する第1モードと、電源回路1b(第2の電源回路)を第2の相(電源ラインL5)に接続する第2モードと、を含む複数の接続モードの間で切り替えが可能である。
【0072】
言い換えると、切替回路80は、複数の電源回路1a、1bのうち、複数相交流電源の特定の相(例えば、電源ラインL4)に対応する特定の電源回路(電源回路1a)以外の他の電源回路(電源回路1b)の接続先を、当該他の電源回路(電源回路1b)に対応する相(電源ラインL5)または特定の相(電源ラインL4)に切り替えることができる。また、切替回路80は、交流電源に並列接続された複数の電力変換部51のうち、交流電源から供給される電力の供給先を何れか一つの電力変換部51に切り替える。
【0073】
切替回路80は、切替リレー81、コイル(図示しない)及び駆動回路(図示しない)を有する。駆動回路は、制御部70からの制御信号に応じて、切替リレー81のオン/オフを切り替える。この制御信号は、切替リレー81をオンにする旨、または切替リレー81をオフにする旨の何れかを示す信号である。切替リレー81をオンにした場合、単相交流電源10は、電源ラインL4に対応する電源回路1aに接続される。また、切替リレー81をオフにした場合、単相交流電源10は、電源ラインL5に対応する電源回路1bに接続される。
【0074】
変形例2に係るスイッチング電源装置200は、複数の電源回路1a、電源回路1bを備えていても、電流計54は1つのみ設けることで、故障検出部71は、電力変換部51が正常か否かを判定することができる。具体的には、切替リレー81がオンにすると、電源回路1aに接続されるので、故障検出部71は、電源回路1aが備える電力変換部51が正常か否かを判定する。また、切替リレー81がオフにすると、電源回路1bに接続されるので、故障検出部71は、電源回路1bが備える電力変換部51が正常か否かを判定する。
【0075】
これにより、スイッチング電源装置200は、複数の電源回路1a、電源回路1bを備えている場合でも、電流計54は1つ設けることで、故障検出部71は、電力変換部51が正常化否かを判定することができる。
【0076】
その他、上記実施形態は、何れも本開示を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0077】
1a、1b 電源回路
10 単相交流電源
20 フィルタ回路
30 整流回路
40 力率改善回路
50 DC/DCコンバータ
51 電力変換部
52 トランス巻線
53 負荷
54 電流計
55 電圧計
60 バッテリ
70 制御部
71 故障検出部
80 切替回路
100、200 スイッチング電源装置