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特開2023-56278磁粉探傷試験用磁粉液及び磁粉探傷試験方法
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  • 特開-磁粉探傷試験用磁粉液及び磁粉探傷試験方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056278
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】磁粉探傷試験用磁粉液及び磁粉探傷試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/91 20060101AFI20230412BHJP
【FI】
G01N21/91 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165543
(22)【出願日】2021-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】390002808
【氏名又は名称】マークテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173406
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 真貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100067301
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 順一
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】一本 哲男
(72)【発明者】
【氏名】大柴 卓也
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB02
2G051GB01
2G051GC03
2G051GD01
2G051GD06
(57)【要約】
【課題】
磁粉の色と磁粉を分散させる分散液の色とが異なる色の組み合わせである磁粉液であり、画像処理によって、指示模様の色相に含まれる磁粉の色の成分と分散液の色の成分の比率を算出して、磁粉液の色相に含まれる各色の成分の比率と比べて、磁粉の色の成分の比率が増えている指示模様を欠陥指示模様として判別することにより、液だまりによるノイズを除去して、欠陥部を検出できる磁粉探傷試験用磁粉液及び磁粉探傷試験方法を提供する。
【解決手段】
磁粉の色と、磁粉を分散させる分散液の色(但し、着色していない水の色を除く)とが異なる色の組み合わせである磁粉探傷試験用磁粉液。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁粉の色と、磁粉を分散させる分散液の色(但し、着色していない水の色を除く)とが異なる色の組み合わせである磁粉探傷試験用磁粉液。
【請求項2】
前記色の組み合わせが、一方の色と、該一方の色と色相環において45°以上、315°以下の範囲にあるもう一方の色との2色の色の組み合わせである請求項1記載の磁粉探傷試験用磁粉液。
【請求項3】
前記色の組み合わせが、赤、緑、青の中から選択される2色の色の組み合わせである請求項1又は2記載の磁粉探傷試験用磁粉液。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか記載の磁粉探傷試験用磁粉液を使用する磁粉探傷試験方法。
【請求項5】
指示模様の色相に含まれる磁粉の色の成分と分散液の色の成分の各比率を算出して欠陥を検出する磁粉探傷試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁粉探傷試験用の磁粉液及び磁粉探傷試験方法に関する。詳しくは、該磁粉液は、磁粉の色と磁粉を分散させる分散液の色とが異なる色の組み合わせである磁粉液であり、欠陥部と液だまりとを判別し易い磁粉液及び磁粉探傷試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁粉探傷試験とは、検査対象に対して磁場をかけることで、割れなどの欠陥部に磁極を発生させ、磁極に着色した鉄粉(以下「磁粉」という)を付着させ、欠陥部に付着した磁粉を観察することで欠陥を検出する探傷試験方法である。
【0003】
しかし、実際の磁粉探傷試験においては磁極発生部以外にも磁粉が残る場合がある。
【0004】
このような磁粉の残る部分を「液だまり」という。「液だまり」があると欠陥指示部とそれ以外の部分のコントラストが下がるため、水に浸漬させる等でバッククリーニングする方法が取られる。
【0005】
しかしながらこの方法は設備コストの増加や検出力が低下するという問題がある。
【0006】
「液だまり」が残ったままで画像処理によって欠陥の検出を行う場合には、背景の明るさが上昇するため、欠陥か否かの閾値の設定が難しくなるという問題がある。
【0007】
また、液だまりは検査体全体に亘って均一ではないので、画像にぼかしフィルタなどを適用して検査画像全体に明るさ変化を求めた上で、場所によって明るさの補正を行なったり、場所によって閾値を変化させたりする必要があるため作業効率が悪いという問題がある。
【0008】
また局所的に付着した液は、前述のような補正で消すことが難しく、欠陥でない部分まで欠陥として検出する虞があり欠陥検出精度が低下するという問題がある。
【0009】
さらに液だまりに気泡が含まれていると、気泡部分を欠陥と誤検知してしまい、欠陥検出精度がさらに低下するという問題がある。
【0010】
そこで、欠陥部か液だまりかを簡便な方法で判定できる磁粉液の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000-11528
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1には、磁化された鋼片の表面に蛍光磁粉を付着させ、該鋼片に付着した蛍光磁粉が発する蛍光を撮像し、得られた撮像画像の微分画像を生成し、前記微分画像から欠陥候補領域を抽出すると共に、前記撮像画像を2値化した画像に現れた領域の大きさ及び形状に基づいて前記欠陥候補領域から欠陥を特定することでノイズ成分から欠陥を分離する方法が記載されている。
【0013】
しかし、特許文献1記載の方法は、欠陥部と、液だまりによるノイズとを分離できるが工程が多く手間がかかるという問題がある。
【0014】
本発明者らは、前記諸問題点を解決することを技術的課題とし、試行錯誤的な数多くの試作・実験を重ねた結果、磁粉の色と、磁粉を分散させる分散液の色とが異なる色の組み合わせである磁粉液であれば、画像処理によって、指示模様の色相に含まれる磁粉の色の成分と分散液の色の成分の比率を算出して、磁粉液の各色の成分の比率と比べて、磁粉の色の成分の比率が増えている指示模様を欠陥指示模様として判別することにより、液だまりによるノイズを除去して、欠陥を検出できるという刮目すべき知見を得て、前記技術的課題を達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、磁粉の色と、磁粉を分散させる分散液の色(但し、着色していない水の色を除く)とが異なる色の組み合わせである磁粉探傷試験用磁粉液である。
【0016】
また本発明は、前記色の組み合わせが、一方の色と、該一方の色と色相環において45°以上、315°以下の範囲にあるもう一方の色との2色の色の組み合わせである前記の磁粉探傷試験用磁粉液である。
【0017】
また本発明は、前記色の組み合わせが赤、緑、青の中から選択される2色の色の組み合わせである前記の磁粉探傷試験用磁粉液である。
【0018】
また本発明は、前記の磁粉探傷試験用磁粉液を使用する磁粉探傷試験方法である。
【0019】
また本発明は、指示模様の色相に含まれる磁粉の色の成分と分散液の色の成分の各比率を算出して欠陥を検出する磁粉探傷試験方法である。
【発明の効果】
【0020】
本明細書において「指示模様」とは、発色して模様を呈している部分を言い、欠陥指示模様のみではなく、液だまりやその他の原因によって発色して模様を呈している部分も含む語として使用する。
【0021】
本発明は、磁粉の色と、磁粉を分散させる分散液の色とが異なる色の組み合わせである磁粉液だから、画像処理によって指示模様の色相に含まれる磁粉の色の成分の比率と分散液の色の成分の比率とを算出し、磁粉液の色相に含まれる各色の成分に比べて磁粉の色の成分の比率が増えている指示模様を欠陥指示模様と判別するという簡便な方法で、液だまりによるノイズを除去して欠陥を検出することができる検出精度の高い磁粉液である。
【0022】
また、磁粉の色と分散液の色の2色の組み合わせが、一方の色と、該一方の色と色相環において、45°以上、315°以下の範囲にあるもう一方の色との2色の組み合わせや、赤、緑、青の中から選択される2色の色の組み合わせにすることで、画像処理によって色が分離し易くなるので、さらに高精度に欠陥指示模様か液だまりによるノイズかどうかを判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例と比較例のグレースケールの画像である。
図2】実施例の赤色成分と緑色成分をそれぞれ抽出した画像である。
図3】比較例の赤色成分と緑色成分をそれぞれ抽出した画像である。
図4】欠陥部、液だまり部、泡部を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、磁粉の色と磁粉を分散させる分散液の色とが異なる色の組み合わせである磁粉液である。
【0025】
本発明における「異なる色」とは、少なくとも磁粉探傷試験における欠陥検出時の観察条件下で異なる色を呈すればよい。
【0026】
また、本発明における色及び色相は、可視光下の色及び色相であってもよいし、紫外線のような不可視光によって誘起される蛍光による色及び色相であってもよい。
【0027】
また、本発明における色相環は特に限定されず、どのような色相環であってもよい。
【0028】
なお、本発明における「異なる色の組み合わせ」は、着色していない水の色との組み合わせは除くものである。
【0029】
磁粉液は、通常、磁粉が分散液に均一に分散するように管理するので、磁粉の色と分散液の色とが均一に分布した色相を呈する。
【0030】
磁極発生部では磁粉が磁極に引き寄せられるのに対して、分散液は磁極の影響を直接受けないから、欠陥に起因する磁極発生部では、通常の磁粉液と比べて磁粉が集中しているので、磁粉液の色相よりも磁粉の色が濃い状態になる。
【0031】
したがって、欠陥部では通常の磁粉液に比べて磁粉の色の成分の比率が増える。
【0032】
磁粉の色と分散液の色とが画像処理によって分離できる色の組み合わせであれば、磁粉探傷試験によって得られた指示模様の色相に含まれる磁粉の色の成分と分散液の色の成分の各比率によって、欠陥部にできた欠陥指示模様か液だまりによるノイズかの判定を行うことができ、従来よりも適切な閾値を設定することができる。
【0033】
磁粉の色と分散液の色は使用する色空間において互いに分離しやすい色であることが好ましい。
【0034】
分離し易い色とは、例えば、色相環において、類似色相配色ではない色の組み合わせである。
【0035】
類似色相配色ではない色の組み合わせは、一方の色ともう一方の色とが色素環において、45°以上、かつ、315°以下離れている色の組み合わせであることが好ましい。
【0036】
RGB画像を使用する場合は、磁粉の色と分散液の色を赤、緑、青から2色を選択すればよい。
【0037】
カラー画像から画像処理によって分離し易いからである。
【0038】
例えば、紫外線照射時に緑色の蛍光を発する磁粉であれば、紫外線照射時に赤色又は青色を発光する分散液に分散するとよい。
【0039】
本発明における磁粉液の磁粉と分散液との割合は分散液が磁粉と同程度の蛍光を発する濃度が好ましい。
【0040】
例えば、分散液1Lに対して磁粉0.3g~1.5g/Lと赤色蛍光体0.28g/L~1.0g/Lを分散させて作製することができる。
【0041】
本発明に係る磁粉液は分散剤を含有してもよい。
【0042】
本発明で使用する画像編集ソフトは公知の画像編集ソフトを使用すればよく、GIMPやフォトショップ(登録商標)を例示する。
【実施例0043】
本発明を実施例及び比較例を挙げてより詳しく説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
【0044】
紫外線照射下で赤く発光する蛍光顔料(SINLOIHI COLOR FZ-6037 Pink/シンロイヒ株式会社製)を水500mLに対して0.5gの比率で混ぜたものを、1g/Lの濃度で作製したものを分散液とした。
【0045】
蛍光磁粉LY-30(マークテック株式会社製)液と作製した分散液を1:1の比率で混ぜた磁粉液を実施例とした。
【0046】
蛍光磁粉LY-30(マークテック株式会社製)液と着色しない水で1g/Lの濃度とした磁粉液を比較例とした。
【0047】
蛍光磁粉LY-30は紫外線照射下で緑に発光する。
【0048】
検査体には、スリットを加工したギアを模した模擬欠陥部を有する試験片を使用した。
【0049】
検査体を軸通電法にて磁化し、連続法で検査液を適用して磁粉探傷試験を行なった。
【0050】
探傷試験後の検査体は、RGBに感度をもつカラーCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラにて画像を撮影した。
【0051】
(画像処理)
画像編集ソフトを使用して次の(1)~(4)の手順で画像処理を行った。
(1)得られた画像を開く
(2)選択ツールを使って対象領域を選択
(3)ヒストグラムダイアログを使って(2)で選択した領域から赤色成分の平均輝度(8bit画素値)を取得
(4)ヒストグラムダイアログを使って(2)で選択した領域から緑色成分の平均輝度(8bit画素値)を取得
【0052】
探傷試験後の検査体をカラー画像で撮影し、グレースケールとしたものを図1に示す。
【0053】
実施例の探傷試験後の検査体をカラー画像で撮影し、緑色成分と赤色成分を抽出したものを図2に示す。
【0054】
比較例の探傷試験後の検査体をカラー画像で撮影し、緑色成分と赤色成分を抽出したものを図3に示す。
【0055】
実施例及び比較例の各模擬欠陥部、液だまり部、及び、泡部(図4)の赤色成分、緑色成分の8bit画素値を表1及び表2に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
実施例の磁粉液であれば、磁極が発生する欠陥部は赤色成分と比べて緑色成分が高い値となり、磁極の発生していない液だまり部や泡部は赤色成分と緑色成分がほぼ同じ値となるので、欠陥指示模様と液だまりによるノイズと判別し、ノイズを除去できることが証明された。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、磁粉の色と磁粉を分散させる分散液の色とが異なる色の組み合わせである磁粉液だから、磁極の発生しない液だまりと比べて、磁極の発生する欠陥部は磁粉液の色相と比べて磁粉の色が濃くなるため、画像処理によって、指示模様の色相に含まれる磁粉の色の成分と分散液の色の成分の比率を算出して、磁粉液の各色の成分の比率と比べて、磁粉の色の成分の比率が増えている指示模様を欠陥指示模様として判別することにより、液だまりによるノイズを分離して、欠陥部を検出できるので、簡便な方法で、精度の高い磁粉探傷試験を行うことができる磁粉液及び磁粉探傷方法である。
よって、本発明の産業上の利用可能性は高い。
図1
図2
図3
図4