(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005628
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】アセット管理システムおよびその方法、並びに3次元建物データの処理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20230111BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107664
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】豊田 善章
(72)【発明者】
【氏名】谷本 幸一
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】アセットを適切に評価するアセット管理の技術を提供する。
【解決手段】
少なくとも建物に関するアセットを含むアセットデータを管理するアセットデータ管理部404と、アセットについて、複数の異なる詳細度のアセットデータを生成することができるアセットデータ詳細度変換部407と、アセットデータ管理部により管理されるアセットデータを用いて、アセットの評価値を算出するアセット評価値算出部410と、アセットデータの詳細度を設定するアセット詳細度設定部413と、を有し、アセット評価値算出部は、アセット詳細度設定部により設定された詳細度のアセットデータを用いてアセットの評価値を算出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータがアセットの管理を行うアセット管理システムであって、
少なくとも建物に関するアセットを含むアセットデータを管理するアセットデータ管理部と、
前記アセットについて、複数の異なる詳細度のアセットデータを生成することができるアセットデータ生成部と、
前記アセットデータ管理部により管理されるアセットデータを用いて、前記アセットの評価値を算出するアセット評価値算出部と、
前記アセットデータの詳細度を設定するアセット詳細度設定部と、を有し、
前記アセット評価値算出部は、前記アセット詳細度設定部により設定された詳細度のアセットデータを用いて前記アセットの評価値を算出する
アセット管理システム。
【請求項2】
前記アセットデータ管理部は、3次元データの前記アセットデータを管理し、
前記アセットデータ生成部は、該3次元データの前記アセットデータを基に、複数の異なる詳細度のアセットデータを生成する、
請求項1のアセット管理システム。
【請求項3】
建設物やインフラ設備を含む前記アセットの種別、位置情報を含むアセットデータを保持するアセット管理データベースと、
前記アセットの規模や建設年数に関するデータを保持する属性管理データベースと、を有し、
前記アセット評価値算出部は、前記アセット管理データベースと、前記属性管理データベースを参照して、前記アセットの価値と、該アセットに影響を与えているアセットと、その影響度合いを算出する
請求項1のアセット管理システム。
【請求項4】
前記アセットデータ生成部は、
前記3次元の前記アセットデータから建物の内と外の境界を判定する処理と、
前記境界に対して、前記アセットのデータから建物の外に接する構成要素を抽出する処理と、
前記境界に対して、前記アセットデータから前記建物の内側に在る構成要素を抽出する処理と、
前記抽出された前記建物の内側に在る構成要素を、前記アセットデータから削除する処理と、を行う
請求項2のアセット管理システム。
【請求項5】
アセット評価情報を識別する評価IDと、アセット評価情報に対応するアセットを識別するアセットIDと、アセット評価値の評価指標を識別する指標IDと、アセットの評価値と、を保持するアセット評価情報データベースを有し、
前記アセット評価値算出部により算出された前記評価値を、前記アセット評価情報データベースに格納する
請求項1のアセット管理システム。
【請求項6】
前記アセット評価値算出部において価値の算出に使用される計算式を含む価値指標を管理する指標管理部と、
評価指標を識別する指標IDと、評価計算式を識別する評価式IDと、評価指標に対応するアセットの種別に関するデータを保持する評価指標管理データベースと、を有し、
前記指標管理部は、前記評価指標管理データベースを参照して前記計算式を選択し、
前記アセットデータ生成部は、前記計算式に応じて、前記詳細度に基づくアセットデータを生成する
請求項1のアセット管理システム。
【請求項7】
コンピュータがアセットの管理を行うアセット管理方法であって、
少なくとも建物に関するアセットを含むアセットデータを管理するアセットデータ管理ステップと、
前記アセットについて、複数の異なる詳細度のアセットデータを生成することができるアセットデータ生成ステップと、
前記アセットデータ管理ステップにより管理されるアセットデータを用いて、前記アセットの評価値を算出するアセット評価値算出ステップと、
前記アセットデータの詳細度を設定するアセット詳細度設定ステップと、を有し、
前記アセット評価値算出ステップは、前記アセット詳細度設定ステップにより設定された詳細度のアセットデータを用いて前記アセットの評価値を算出する、
アセット管理方法。
【請求項8】
前記アセットデータ管理ステップは、3次元データの前記アセットデータを管理し、
前記アセットデータ生成ステップは、該3次元データの前記アセットデータを基に、複数の異なる詳細度のアセットデータを作成する
請求項7のアセット管理方法。
【請求項9】
前記アセットデータ生成ステップは、
前記3次元の前記アセットデータから建物の内と外の境界を判定する処理と、
前記境界に対して、前記アセットのデータから建物の外に接する構成要素を抽出する処理と、
前記境界に対して、前記アセットデータから前記建物の内側に在る構成要素を抽出する処理と、
前記抽出された前記建物の内側に在る構成要素を、前記アセットデータから削除する処理と、を行う
請求項8のアセット管理方法。
【請求項10】
コンピュータが3次元建物データを処理する方法であって、
記憶部に格納された前記3次元建物データを読み出すステップと、
前記3次元建物データから建物の内と外の境界を判定するステップと、
前記境界に対して、前記3次元建物データから建物の外に接する構成要素を抽出するステップと、
前記境界に対して、前記3次元建物データから前記建物の内側に在る構成要素を抽出するステップと、
前記抽出された前記建物の内側に在る構成要素を、前記3次元建物データから削除するステップと、
を有する3次元建物データの処理方法。
【請求項11】
前記抽出された前記建物の外側に在る構成要素を、前記3次元建物データから削除するステップと、を有する
請求項10の3次元建物データの処理方法。
【請求項12】
前記構成要素は、前記境界の外側に接する、壁、ドア、窓である、
請求項10の3次元建物データの処理方法。
【請求項13】
前記外側に接する壁、ドア、窓のデータの抽出は、室外に接するか否かを判定する壁、ドア、窓のデータの外側に、他の壁、ドア、窓のデータが存在するか否かを評価し、
外側に他の壁、ドア、窓のデータが存在する場合、他の壁、ドア、窓のデータが存在する方向と直交する方向に他の壁、ドア、窓のデータが存在するか否かをさらに評価し、
該評価の結果、他の壁、ドア、窓のデータが存在しない場合、該壁、ドア、窓は外側に接していると判定する
請求項12の3次元建物データの処理方法。
【請求項14】
前記3次元建物データはCityGMLである、請求項10の3次元建物データの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセット管理システムおよびその管理方法、並びに3次元建物データの処理方法に係り、特に3次元建物データを用いた都市アセットの管理技術および3次元建物データの自動変換する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートシティに関して種々提案されている。例えば、地理情報システムを活用して、構造物、設備、人流・交通流、気象データ等の各種都市データを時空間上で統合解析して都市計画や各種施策に反映させるという提案がある。また、バーチャルシンガポールに代表されるように、都市空間を3次元モデル化して、都市のデジタルツイン化する提案も知られている。この場合、建物の3次元データはデータサイズが大きく計算負荷が大きいため、構造物内の必要な部分以外を簡略化する等、目的に応じて詳細度レベルを変えて取り扱うのが好ましい。
【0003】
特許文献1には、建物の見取り図から建物構造モデル(BIM(Building Information Model))を作成する方法が開示されている。建物の見取り図をコンピュータに取り込んで、見取り図からプリミティブラインセグメントを抽出し、テンプレートなども用いてプリミティブラインセグメントの中から壁、ドア、窓、階段などの構造物を抽出しBIMデータを作成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、見取り図から3次元建物データを作成する技術である。この技術は、細部に渡り3次元データを作成するための計算負荷が大きく、データの取得や準備に時間を要するという課題がある。さらに、家具や内装といった情報が含まれないため、室内の情報を細かく再現することが困難である。
【0006】
本発明者は、建物やインフラ設備、施設などのアセットの価値を評価して、効率的な保守や、投資の優先順位の策定を支援するシステム、とりわけ3次元建物データを使用したシステムを検討している。例えば、特許文献1に開示されたBIMなどの3次元建物データを、都市アセットの策定に用いることはアイデア上可能である。然しながら、BIMはデータ容量が大きく、計算負荷が大きいため、応答性の良いシステムを実現することが困難となる。また、計算負荷の低減のために簡略化した建物データを用いると、アセットの評価できる内容が限られてしまい、細かな解析が困難となるという課題がある。因みに、特許文献1には、BIMなどの3次元建物データを都市アセットの策定に適用する旨の開示は無い。
【0007】
そこで、本発明の目的は、アセットを適切に評価するアセット管理の技術を提供することにある。
本発明の目的は、3次元建物データに係る計算負荷を小さくして、アセットの評価を実現することにある。
本発明の目的は、より具体的には、都市アセット管理に使用される3次元建物データの詳細度レベルを自動生成する技術を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るアセット管理システムの好ましい例は、コンピュータがアセットの管理を行うアセット管理システムであって、
少なくとも建物に関するアセットを含むアセットデータを管理するアセットデータ管理部と、
前記アセットについて、複数の異なる詳細度のアセットデータを生成することができるアセットデータ生成部と、
前記アセットデータ管理部により管理されるアセットデータを用いて、前記アセットの評価値を算出するアセット評価値算出部と、
前記アセットデータの詳細度を設定するアセット詳細度設定部と、を有し、
前記アセット評価値算出部は、前記アセット詳細度設定部により設定された詳細度のアセットデータを用いて前記アセットの評価値を算出するアセット管理システム、である。
【0009】
本発明はまた、上記アセット管理システムで実行されるアセット管理方法として把握される。
【0010】
本発明に係る3次元建物データの処理方法の好ましい例は、
コンピュータが3次元建物データを処理する方法であって、
記憶部に格納された前記3次元建物データを読み出すステップと、
前記3次元建物データから建物の内と外の境界を判定するステップと、
前記境界に対して、前記3次元建物データから建物の外に接する構成要素を抽出するステップと、
前記境界に対して、前記3次元建物データから前記建物の内側に在る構成要素を抽出するステップと、
前記抽出された前記建物の内側に在る構成要素を、前記3次元建物データから削除するステップと、を有する3次元建物データの処理方法、である。
【0011】
本発明はまた、上記3次元建物データの処理方法が実行される3次元建物データの処理システム、およびコンピュータが実行するプログラムとしても把握される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アセットを適切に評価することが可能なアセット管理の技術を提供することができる。また、3次元建物データに係る計算負荷を小さくして、アセットの評価を実現できる。また、都市アセット管理に使用される3次元建物データの詳細度レベルを自動生成する技術を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】都市アセット管理システムの全体構成の一例を示す図。
【
図2】都市アセット管理システムの詳細な機能構成の一例を示す図。
【
図3】都市アセット管理システムのアセット評価処理シーケンスを示す図。
【
図4】アセット評価値算出処理部410の処理フローを示す図。
【
図5】3次元建物データの詳細度変換の処理フローを示す図。
【
図6】3次元建物データの詳細度変換結果の例を示す図。
【
図7】3次元建物データの構成要素の座標データの例を示す図。
【
図8】3次元建物データを構成する壁データを示す図。
【
図9】3次元建物データの構成要素が室外と接しているかを判定する処理フローを示す図。
【
図10】3次元建物データの詳細度レベルと、削除する構成要素の対応を示す図。
【
図11】3次元建物データを構成する壁データを示す図。
【
図14】アセット評価値管理DBの一例を示す図である。
【
図15】エリア評価値管理DBの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【0015】
以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、重複する説明は省略することがある。同一あるいは同様な機能を有する要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし、複数の要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0016】
本明細書等における「第1」、「第2」などの表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数、順序、もしくはその内容を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は文脈毎に用いられ、一つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【0017】
図面等において示す各構成の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。本明細書において単数形で表される構成要素は、特段文脈で明らかに示されない限り、複数形を含むものとする。
【実施例0018】
図1は、都市アセット管理システムの全体構成の一例を示す。
都市アセット管理システム301は、構造物やインフラ設備、施設などのアセットの管理及び各アセットの価値算出を行い、ユーザに情報提供する、コンピュータ等の情報処理装置により実現される情報処理システムである。都市アセット管理システム301は、データ収集・管理部308、アセット管理部309、アセット評価部310、ユーザ管理部311、アプリ管理部312、インタフェース部313、データベース(DB)305を有して構成される。
【0019】
データ収集・管理部308は、構造物やインフラ設備、施設などのアセットの管理者が保有する外部システム302や、構造物等に設置した各種のセンサ304から、ネットワーク314を介して、センサデータや、システムにより一次処理されたデータを収集し、データの属性(名称や送信元など)などのメタデータを付与してDB305に保存する。また、アプリ管理部312からの要求に応じて、1つのデータ、あるいは複数のデータを抽出してアプリ管理部312に送信する。
【0020】
アセット管理部309は、データ収集・管理部308で収集されたデータのうち、構造物やインフラ設備、施設などのアセットについて、時間や地理空間との関係性や他のデータとの関係性等の他、アセットの種別(駅、集合住宅など)や建設・設置年数、保有者等の属性情報を登録して、管理する。アセット管理部309で管理するアセットデータは、データ収集・管理部308を介さず、ユーザの端末306から直接入力されても良い。アセットデータはDB305に保存される(DBの詳細については後述)。
【0021】
アセット評価部310は、データ収集・管理部308で収集されたデータやアセット管理部309で保存されたアセットデータを用いて、各アセットの価値やそれに影響を与えているアセットとその度合いを算出する。アセット評価に関するデータはDB305に保存される(DBの詳細については後述)。
【0022】
ユーザ管理部311は、都市アセット管理システム301を利用する端末306を管理し、本システムを利用する際のアクセス認証を行う。
アプリ管理部312は、アセットの管理およびアセットの保守や新設等の投資判断に資する情報を生成するアプリケーションを保持する。
インタフェース部313は、端末306が使用する端末からの情報の入力の受け付けや、ユーザが使用する端末に対して都市アセット管理システム301の各部で処理した結果の出力を行う。
【0023】
図2は、都市アセット管理システムの詳細な機能構成の一例を示す。
データ収集・管理部308は、外部システム302や、センサ304からのデータを収集するデータ収集部401と、収集したデータをDB305に格納するデータ管理部402を有する。
【0024】
アセット管理部309は、構造物やインフラ設備、施設などのアセットの種別や地理空間との関係性等からなるアセットデータをDB305に格納するアセット管理部404と、アセットについて、規模や建設・設置年数、保有者等の属性情報をDB305に格納する属性管理部405と、アプリ管理部312からの要求に応じて、1つのアセットデータ、あるいは複数のアセットデータおよび関連する属性データをDB305から抽出してアプリ管理部312に送信するデータ提供部406と、アセットデータをDB305から抽出して、アセットデータの詳細度レベルを自動変換して、詳細度レベルの低いアセットデータを生成するアセット詳細度変換部407を有する。ここで、アセット詳細度変換部407により実行されるデータ変換は本発明の特徴の1つである。それについては実施例2において後述する。
【0025】
アセット評価部310は、アプリ管理部312からの要求に応じて、各アセットの価値やそれに影響を与えているアセットとその度合いを算出するアセット評価値算出部410と、エリア内のアセットの価値評価結果に基づき、エリアの価値を可視化するエリア評価値算出部411と、アセットの価値算出に用いる評価指標に基づき、その計算式とパラメータを設定する指標管理部412と、アセットの価値算出に最適なアセットデータの詳細度レベルを設定するアセット詳細度管理部413を有する。
【0026】
ユーザ管理部311は、都市アセット管理システム301を利用するユーザの端末306に関する情報(ユーザ名やパスワードなど)をDB305に格納し、本システムを利用する際のアクセス認証を行うユーザ認証部416と、ユーザに応じてデータの生成、提供可否を判定し、ユーザの利用ログをDB305に格納する利用管理部417を有する。
【0027】
アプリ管理部312は、アセットの管理や新設等の投資判断に資する情報を生成するアプリケーションを保持する。例えば、データ収集・管理部308で保存されたデータやアセット管理部309で保存されたアセットデータ、属性データをユーザに提示するアセット管理アプリ421と、各アセットの価値とそれに関係するアセットの情報を提示して、アセットの管理・活用の計画策定や見直しを支援するアセット評価アプリ422と、エリア内の各アセットの価値やそれに関係するアセットの情報を提示して効率的なアセット管理や投資の優先順位策定などを支援するエリア評価アプリ423を有する。
【0028】
データベース(DB)305は、本実施例に関係する、アセット管理DB1200、属性管理DB1300、アセット評価値管理DB1400、エリア評価値管理DB1500、評価指標管理DB1600を保管する。DB305はさらに、データ収集・管理部308が収集したデータや、ユーザ管理部311が使用するユーザ認証のためのデータやユーザの個人情報、その他の種々のデータを保管することができる。
【0029】
インタフェース部313は、例えば、都市アセット管理システム301が提供する機能から、利用する機能を選択するためのメニュー選択画面424と、ユーザからの情報表示要求などの入力を受け付けるための情報入力画面425と、各アプリが出力する情報を提示するための情報表示画面426を、ユーザの端末306へ提供する。
【0030】
[データベース構成]
次に、
図12乃至
図16を参照して、各DBの構成例について説明する。
【0031】
図12は、アセット管理DB1200の一例を示す。アセット管理DB1200は、アセットを識別するアセットIDと、アセットを表現するアセット名称と、アセットデータが更新された時刻を示す更新時刻と、アセットの所有者名と、アセットの位置を緯度及び経度で示す緯度経度情報(位置情報)と、アセットの種別と、アセットデータに対応する属性データを識別する属性ID827、から構成される。ここで、例えば、アセットID「00002」マンションBについて、複数の詳細度レベルの異なるアセットデータが用意された場合には、それぞれ別々のアセットID(例えば00002-1、00002-2・・の如き)が付与されて管理される。なお、アセットの詳細度レベルを示す項目欄を追加して、各アセットIDについてアセットデータの詳細度を分かり易く管理することもできる。
【0032】
図13は、属性管理DB1300の一例を示す。属性管理DB1300は属性種別ごとに形成される。
図13には、属性種別が、医療施設、集合住宅、道路インフラの例が示される。例えば、種別が「医療施設」の属性管理DBは、属性IDと、アセット名称と、アセットの規模を示す病床数、来院数及び延べ床面積と、アセットの老朽度を示す建築年と、付属データを識別する付属データID、から構成される。また、種別が「集合住宅」、「道路インフラ」は図示の通りである。
【0033】
図14は、アセット評価値管理DB1400の一例を示す。アセット評価管理DB1400は、アセット評価情報DB1401と、アセット間関係性DB1402から構成される。
【0034】
アセット評価情報DB1401は、アセット評価情報を識別する評価IDと、アセット評価情報に対応するアセットを識別するアセットIDと、アセット評価値を算出した時刻である評価時刻と、アセット評価値の評価指標を識別する指標IDと、アセットの評価値と、アセット評価値が施策に適用されたか否かおよび適用された場合の施策を識別する施策ID、から構成される。
【0035】
アセット間関係性DB1402は、評価IDと、評価IDの評価値に影響を与えた影響アセットを識別する関係アセットIDと、評価IDの評価値の評価指標を識別する指標IDと、影響アセットの影響度、から構成される。
【0036】
図15は、エリア評価値管理DB1500の一例を示す。
エリア評価値管理DB1500は、アセット評価情報を識別する評価IDと、エリア評価値に対応するエリアを識別するエリアIDと、エリア評価値を生成した時刻である評価時刻と、エリア評価情報のエリア評価値の評価指標を識別する指標IDと、エリア評価値と、エリア評価値が施策に適用されたか否かおよび適用された場合の施策ID、から構成される。なお、エリアは、例えば、エリアIDに対応する地図情報を基に、ある緯度経度から半径500m以内など緯度経度で指定した範囲、又は、特定の行政区域(〇〇県△△市XX区など)などで指定される。
【0037】
図16は、評価指標管理DB1600の一例を示す。
評価指標管理DB1600は、評価計算式を管理するテーブルであり、評価指標を識別する指標IDと、評価指標を表現する指標名称と、評価計算式を更新した更新時刻と、評価計算式を識別する評価式IDと、評価指標に対応するアセットの種別(評価指標を用いて評価値を算出するアセットの種別)である算出対象種別、から構成される。評価計算式はアセットデータの詳細度レベルを反映して用意することができる。
【0038】
ユーザによりアセット(アセットID)が選択されると、アセット評価値管理DB1400を基にアセットIDに関連する指標IDが選択される。そして、この評価指標管理DB1600を基に指標IDに関連する評価式IDが設定され、アセット評価値算出部410でその評価式を用いて、詳細度レベルに応じたアセット評価値が計算される。
【0039】
[ハードウェア構成]
ハードウェア構成(不図示)について言えば、都市アセット管理システム301を実現する情報処理装置は、1または複数のプログラムおよび種々のデータやデータベース(DB)等を格納するメモリ或いはハードディスク等の記憶部と、それらのプログラムを実行するプロセッサを有する。とりわけ、プロセッサが、上記アプリ管理部312の各機能部421-423に係るアプリケーションプログラムを実行して、これらの機能を実現する。また、上記以外に、プロセッサは、インタフェース部や外部システムとのデータのやり取り、DBに対するデータの書込みおよび読み出し等、を行うプログラムを実行する。
【0040】
なお、アプリ管理部312の各機能部308-311、さらにはそれらの詳細な機能部401-417は、1つのアプリケーションプログラムがプロセッサで実行されることで実現されてよい。或いは、上記機能部ごとに分割されたまたは幾つかの機能部を含む複数のアプリケーションプログラムが、1または複数の異なるプロセッサで実行されることで、実現されてもよい。
【0041】
[アセット評価の処理]
図3は、都市アセット管理システムのアセット評価の処理シーケンスの一例を示す。この処理により、各アセットの価値とそれに関係するアセットの情報が提示される。
ユーザが、端末306からインタフェース部313を介して、予め登録されたユーザID、パスワードによりログインすると、ユーザ管理部311のユーザ認証部416は、DB305に格納されたデータを用いてアクセス認証を行い、利用可能なユーザに対して利用するアプリを選択するためのメニュー選択画面424を表示する。
【0042】
ユーザが、メニュー選択画面424からアセット評価アプリ422を選択すると、アプリ管理部312のアセット評価アプリ422は、アセット管理部309のデータ提供部406より、1つのアセットデータあるいは複数のアセットデータおよび関連する属性データを受信して、インタフェース部313の情報表示画面426により、それらのデータを提示する。また、ユーザ管理部311の利用管理部317は、ユーザの利用ログをDB305に格納する。
【0043】
ユーザが、情報表示画面426上に表示されたアセットを示すシンボルを選択あるいは情報入力画面425を介して、評価対象となるアセット(対象アセット)を指定すると、アセット評価アプリ422は、アセット評価部310のアセット評価値算出部410を実行して、ユーザが選択・指定したアセットの評価値を取得し、インタフェース部313の情報表示画面426により、それらのデータをユーザに提示する。
【0044】
アセット評価値算出部410は、アセット管理DB1200および属性管理DB1300に格納されたアセットデータや属性データなどを用いて、各アセットの価値やそれに影響を与えているアセットとその影響度合いを算出する。その計算結果はアセット評価情報DB1401およびアセット間関係性DB1402に格納される。
【0045】
次に、
図4の処理フローを参照して、アセット評価値算出処理部410の処理について詳細に説明する。
ステップS4101では、ユーザが端末306より選択したアセットについて、算出する評価指標の種類を、アセットの種類との関連付けに基づき設定する。評価指標としては、対象アセット例えば集合住宅の各階の高さ情報、対象アセット周辺の他のアセットの高さ情報、アセット間の距離から計算される景観度や日照度、対象アセット付近のハザードマップ数値(浸水3mなど)と対象アセットの高さ情報から計算される防災度などがある。
【0046】
ステップS4102では、S4101で設定された1つ以上の評価指標について、評価指数管理DB1600を参照して、評価指標算出のための計算式および計算に用いるパラメータを、指標管理部412と連動して読み込む。
【0047】
ステップS4103では、S4102で設定された計算式およびパラメータの設定に基づき、アセットの価値算出に最適なアセットデータの詳細度レベルを、アセット詳細度管理部413と連動して設定する。
【0048】
ステップS4104では、対象アセットから一定以内の距離にあり、かつ各評価指標に影響を与えるアセットデータ(関連アセットデータ)を、S4103で設定されたアセットデータの詳細度レベルに基づき抽出する。すなわち、評価指標に応じて評価計算式により計算された、詳細度レベルのアセットデータが抽出される。例えば「景観度」の例について言えば、評価対象アセットは、各階の高さ情報、窓の位置などの情報が必要となるので、詳細度レベル4のアセットデータが必要となり、影響を与えるアセットは外観形状がわかれば良いため、詳細度レベル2のアセットデータを用いれば良いということになる。
【0049】
ステップS4105では、S4102で設定された1つ以上の評価指標に対する計算式、およびS4104で抽出されたアセットデータを用いて、対象アセットの評価指標の値を算出する。例えば、評価指標として「景観度」が設定された場合、その評価指標は、数1のような計算式で計算される。例えば、対象アセットの種別が「集合住宅」である場合、地上に設置された全てのアセットが景観に影響を与えるため、対象アセットから一定以内の距離にあって、地上に設置されている全てのアセットが抽出される。この時、景観に影響を与えるアセットの情報としては、外観形状がわかれば良く、内装、窓、ドアなどの情報は必要ないため、
図10に示すような、詳細度レベル2のアセットデータが選択される。次に、対象アセットについて、数1を適用して、S4104で抽出された各アセットごとに、景観への影響度を計算し、その総和を計算して、対象アセットの景観度を算出する。
【0050】
【0051】
ここで、「j」は対象アセットの階数であり、「a」は影響を与えるアセットの種別であり、「k」は窓面の垂直方向から±45°、半径ra km以内のアセット種別aの数であり、「w」は影響を与えるアセットの評価指標への影響度を表す係数(アセットの高さの差(Δh)と角度(θ)の関数)であり、「va」は評価指標Aへの距離の影響度を表す係数であり、「dk」は対象のアセットと影響を与えるアセットとの距離である。Cは対象アセットの評価指標Aに影響を与える数値として、ブランド価値などのアセット独自の値を設定するための定数項である。特に無い場合は0が設定される。
【0052】
ステップS4106では、対象アセットのアセットID、およびS4105で算出された評価指標値、評価指標値に影響を与えたアセットのアセットIDと影響度を、アセット評価情報DB1401,アセット間関係性DB1402、エリア評価上違法DB1500に格納する。
【0053】
ユーザが、メニュー選択画面424でエリア価値評価アプリを選択した場合、アセット評価部310は、ユーザが指定した範囲内にある対象アセットの評価指標をエリア評価情報DB1500から読み出して、例えば評価指標値の2次元マップを表示する。
【0054】
以上、本実施例によれば、評価指標を計算する際、最適なアセットの詳細度レベルが自動で設定されるため、システムの計算負荷を低減し、アセットの価値評価を迅速に行うことができる。多数のアセット管理者やユーザが、関係する都市の構造物などのアセットの評価を行うことで、アセットの管理・活用の計画策定や見直しを支援するシステムを提供することができる。また、エリア価値評価では、エリア内での評価指標の分布を可視化することにより、ユーザ側での効率的なアセット管理や投資の優先順位策定を支援することができる。
(a)に示す、建物データ101および102は最も詳細度が高い詳細度レベル4のデータであり、内壁103や、室内のドア104、家具・内装105、2階部分の床面106、階段107、手すり108なども含まれている。(b)に示す、建物データ111および112は2番目に詳細度が高い詳細度レベル3のデータであり、内壁103、室内のドア104、家具・内装105は削除されているが、室外の階段107、手すり108は残されている。床面は1階部分の床面113を除き削除されている。(c)に示す、建物データ121および122は、3番目に詳細度が高い詳細度レベル2のデータであり、ドアや窓、階段、手すりは全て削除し、外壁123、屋根124と、1階部分の床面113で構成されている。(d)に示す、建物データ131は詳細度レベル1のデータであり、壁データのみで建物の外観を概略表示してあり、最も詳細度レベルが低い。
次に、ステップS504で、壁、ドア、窓のデータの中から室外に接する壁/ドア/窓を抽出する。ここでは、ステップS503で作成したデータベースを用いて、壁/ドア/窓1枚1枚について、室外と接しているか否かを判定する。
次に、ステップS902で、y方向にymiddleを含む他の壁/ドア/窓データを全て抽出し、x方向の最大座標(xmax_1・・・xmax_n)を抽出する。そしてステップS903で、抽出したxmax_1・・・xmax_nについて、xmax_0との比較を行う。比較の結果、xmax_0が最も大きい場合は、その構成要素が室外と接していると判定する。上記の判定では、複雑な形状に対応させることができないため、判定する1枚の壁/ドア/窓データの外側に、他の壁/ドア/窓があった場合でも、それと直交する方向に他の壁/ドア/窓があるか否かを調べ、他の壁/ドア/窓が無い場合は室外と接していると判定する。この処理を、ステップS904以降で説明する。ステップS904で、判定する1枚の壁/ドア/窓データとその外側の壁/ドア/窓データのx方向の中間座標(xmiddle)を抽出する。
次に、ステップS905で、x方向にxmiddleを含む他の壁/ドア/窓データを全て抽出し、y方向の最大座標(ymax_1・・・ymax_n)とy方向の最小座標(ymin_1・・・ymin_n)を抽出する。ステップS906およびS907で、ymiddleのプラス方向およびマイナス方向の外側に他の壁/ドア/窓がない場合はその構成要素が室外と接していると判定する。この後、x軸のマイナス方向、y軸のプラス方向、y軸のマイナス方向についても同様に判定を行い、室外と接している壁/ドア/窓を抽出する。
最後に、ステップS507で、作成された詳細度レベルの3次元建物データのファイルをDB305に保存する。この処理を繰り返して、最も詳細度レベルの高い建物データを基に、詳細度レベルの低い複数種の建物データを順次自動で作成することができる。
実施例2によれば、既存のBIMデータを用いてCityGMLデータを作成するため、詳細度レベルの高い建物データを用いて、詳細度レベルに応じて不要な構成要素を削除する。その結果、元のCityGMLデータに対して、詳細度レベルが異なる複数種の3次元建物データを用意することができる。このように予め用意された詳細度の異なる複数種の3次元建物データのうちから、アセット詳細度設定部413により設定される最適な詳細度レベルのアセットデータが選択され得る。これにより、アセットの評価に際して、3次元建物データの計算時間を短縮し、データの準備を迅速に行うことができる。
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
また、影響を算出する周辺アセットについて、本実施例では、一定距離内のアセットを抽出して算出したが、他の条件で範囲を指定しても良いし、限定せず全てを対象として算出しても良い。
また、実施例1では、あるアセットについて詳細度の異なる複数のアセットデータをDB305に予め用意しておく、とした。一方、他の例によれば、アセット評価の処理の度に、必要な詳細度レベルの低いアセットデータを生成するようにしてもよい。更には、詳細度の低いレベルの複数のアセットデータ(例えば詳細度レベル4-2)を部分的に予め用意しておき、それより低い詳細度レベルのアセットデータはアセット評価の処理の都度、生成するようにしてもよい。
また、実施例1では、理解し易くするために、アセット管理部309およびアセット評価部310の名称を用いたが、これらを総じて、アセット処理部と称し、アセット処理部に関連する全ての機能部404-407,410-413を含めてもよい。
また、他の変形例として、アセット管理部309およびアセット評価部310、またはアセット処理部を規定しないで、各機能部404-407,410-413を個別に独立的に設けてもよい。この場合、コンピュータは、アプリ管理部312のアセット管理アプリ421,アセット評価アプリ422,エリア評価アプリ423は、各機能部404-407,410-413を処理する個別のアプリケーションを実行すればよい。
また、上記実施例で用いられる用語は一例であって、主旨や意味合いを有する限り、他の呼び方をしてもよい。例えば、アセット詳細度変換部407は、アセット詳細度生成部、又はアセット詳細度処理部、或いは単にアセット処理部又はアセットデータ生成部等、およびそれらに対応のステップと称してもよい。また、アセット詳細度設定部413は、アセット詳細度選択部、若しくはアセットレベル選択部又はアセットレベル指定部等、それらに対応のステップと称してもよい。