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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056281
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】校正システム及び校正方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 25/00 20060101AFI20230412BHJP
   G01L 5/1627 20200101ALI20230412BHJP
【FI】
G01L25/00 B
G01L5/1627
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165548
(22)【出願日】2021-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】田名網 克周
(72)【発明者】
【氏名】大澤 敦司
(72)【発明者】
【氏名】小林 岳久見
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AB09
2F051DA03
2F051DB03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】より簡易に正確な校正を行える校正システム及び校正方法を提供する。
【解決手段】ステージと、加重治具と、パラレルリンク機構と、制御装置とを備える校正システムが提供される。被加重体は、被加重体に付与される負荷の6軸方向の成分のうちの少なくとも1軸方向の成分を含む負荷値に基づく値を出力する力覚センサと、負荷に応じて負荷値を出力するように校正されたマスターセンサとを有する。加重治具は、ステージとの間に被加重体を挟持し、被加重体が固定される。パラレルリンク機構は、6つのロッドから構成される。パラレルリンク機構は、6つのロッドのそれぞれに対応する出力部を有する。加重治具には、6つのロッドが並列に連結される。制御装置は、それぞれの出力部の出力を制御し、加重治具をステージに対して相対的に変位させて、力覚センサから出力される値とマスターセンサから出力される負荷値とに基づいて、力覚センサを校正する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加重体が固定されるステージと、
前記ステージとの間に前記被加重体を挟持し、前記被加重体が固定される加重治具と、
6つのロッドから構成されるパラレルリンク機構であって、前記6つのロッドそれぞれに対応する出力部を有し、前記6つのロッドが前記加重治具に並列に連結される、パラレルリンク機構と、
それぞれの前記出力部の出力を制御し、前記加重治具を前記ステージに対して相対的に変位させる制御装置と、
を備え、
前記被加重体は、
前記被加重体に付与される負荷の6軸方向の成分のうちの少なくとも1軸方向の成分を含む負荷値に基づく値を出力する力覚センサと、
前記負荷に応じて前記負荷値を出力するように校正されたマスターセンサと、
を有し、
前記制御装置は、前記力覚センサから出力される値と前記マスターセンサから出力される前記負荷値とに基づいて、前記力覚センサを校正する、
校正システム。
【請求項2】
被加重体をステージに固定する工程と、
前記被加重体を前記ステージと加重治具との間に挟持させ、挟持させた前記被加重体を前記加重治具に固定する工程と、
前記加重治具に連結されたパラレルリンク機構を構成する6つのロッドそれぞれの出力部の出力を制御し、前記加重治具を前記ステージに対して相対的に変位させる工程と、
前記被加重体に含まれる力覚センサが、前記被加重体に付与される負荷の6軸方向の成分のうちの少なくとも1軸方向の成分を含む負荷値に基づく値を出力する工程と、
前記被加重体に含まれる校正されたマスターセンサが、前記負荷に応じて前記負荷値を出力する工程と、
前記力覚センサから出力される値と前記マスターセンサから出力される前記負荷値とに基づいて、前記力覚センサを校正する工程と、
を含む、
校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、校正システム及び校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、被加重体に対して6軸方向の加重を加える校正装置を開示する。この校正装置は、被加重体が載置されるステージと、ステージを介して被加重体の位置及び姿勢を制御する駆動部と、被加重体に加重を加える加重部とを備える。加重部は、被加重体の上部に取り付けられる治具と、治具から水平方向に引き出されるワイヤと、ワイヤを水平方向から鉛直方向に変換する滑車と、ワイヤの先端に取り付けられる錘とを含む。加重部が被加重体に加える加重は、被加重体の位置及び姿勢の変化に応じて6軸方向に変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-112414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1開示の校正装置は、錘に加わる重力を、ワイヤ及び滑車によって被加重体に加える6軸方向の負荷に変換する。このため、被加重体に加える負荷の大きさに応じて、錘の数又は種類などの装置構成を変更する必要がある。さらに、特許文献1開示の装置では、ワイヤと滑車との間に摺動抵抗が発生し、被加重体に加わる負荷に誤差が生じるおそれがある。本開示は、より簡易に正確な校正を行える校正システム及び校正方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面によれば、ステージと、加重治具と、パラレルリンク機構と、制御装置とを備える校正システムが提供される。ステージには、被加重体が固定される。被加重体は、被加重体に付与される負荷の6軸方向の成分のうちの少なくとも1軸方向の成分を含む負荷値に基づく値を出力する力覚センサと、負荷に応じて負荷値を出力するように校正されたマスターセンサとを有する。加重治具は、ステージとの間に被加重体を挟持し、被加重体が固定される。パラレルリンク機構は、6つのロッドから構成される。パラレルリンク機構は、6つのロッドのそれぞれに対応する出力部を有する。加重治具には、6つのロッドが並列に連結される。制御装置は、それぞれの出力部の出力を制御し、加重治具をステージに対して相対的に変位させて、力覚センサから出力される値とマスターセンサから出力される負荷値とに基づいて、力覚センサを校正する。
【0006】
この校正システムでは、被加重体がステージ及び加重治具に固定され、挟持される。加重治具には、パラレルリンク機構を構成する6つのロッドが並列に連結される。6つのロッドは、それぞれのロッドに対応するそれぞれの出力部によって駆動される。それぞれの出力部は、制御装置に出力を制御され、加重治具をステージに対して相対的に変位させる。これにより、6軸方向の負荷が被加重体に付与され得る。そして、被加重体に付与される負荷の6軸方向の成分のうちの少なくとも1軸方向の成分を含む負荷値に基づく値が力覚センサから出力され、負荷に応じた負荷値が校正されたマスターセンサから出力される。制御装置は、力覚センサから出力される値とマスターセンサから出力される負荷値とに基づいて、力覚センサを校正する。このように、この校正システムは、被加重体に加える負荷の大きさに応じて錘の数又は種類などの装置構成を変更する必要がないため、より簡易に校正を行える。また、この校正システムは、ワイヤと滑車との間に発生する摺動抵抗を考慮する必要がないため、より正確に校正を行える。
【0007】
本発明の他側面によれば、校正方法が提供される。校正方法は、被加重体をステージに固定する工程と、被加重体をステージと加重治具との間に挟持させ、挟持させた被加重体を加重治具に固定する工程と、加重治具に連結されたパラレルリンク機構を構成する6つのロッドそれぞれに対応する出力部の出力を制御し、加重治具をステージに対して相対的に変位させる工程と、被加重体に含まれる力覚センサが、被加重体に付与される負荷の6軸方向の成分のうちの少なくとも1軸方向の成分を含む負荷値に基づく値を出力する工程と、被加重体に含まれる校正されたマスターセンサが、負荷に応じて負荷値を出力する工程と、力覚センサから出力される値とマスターセンサから出力される負荷値とに基づいて、力覚センサを校正する工程とを含む。
【0008】
この校正方法によれば、上述した校正システムと同様に、より簡易に正確な校正を行える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、より簡易に正確な校正を行える校正システム及び校正方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る校正システムの構成図である。
図2】一実施形態に係る校正システムを説明するためのブロック図である。
図3】校正システムを使用する校正方法の一例を示すフローチャートである。
図4】変形例1の校正システムを説明するための側面図である。
図5】変形例2の校正システムを説明するための側面図である。
図6】変形例3の校正システムを説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。「上」「下」「左」「右」の語は、図示する状態に基づくものであり、便宜的なものである。
【0012】
[校正システム]
図1は、一実施形態に係る校正システムの構成図である。図1に示されるように、校正システム1は、力覚センサ21及びマスターセンサ22を有する被加重体2に負荷を加えて力覚センサ21の校正を行う装置である。被加重体2には、校正システム1によって負荷が加えられる。力覚センサ21は、付与された負荷値に応じた値を出力するセンサである。マスターセンサ22は、負荷に応じた負荷値を出力するように校正された力覚センサである。力覚センサ21及びマスターセンサ22の詳細は後述される。以下では、負荷値を出力するセンサとして機能するように力覚センサ21を校正する試験を説明する。
【0013】
校正システム1は、ベース4と、ステージ10と、加重治具20と、パラレルリンク機構30と、制御装置40とを備える。制御装置40は、測定部41と、制御部42とを有する。
【0014】
ステージ10は、ベース4に設けられる台座である。ステージ10は一例として金属で形成される。ステージ10は、ベース4と一体に形成されてもよい。ステージ10には、被加重体2が固定される。図1に示される例においては、被加重体2は、マスターセンサ22側がステージ10の上面に向かい合うように固定される。
【0015】
被加重体2及びステージ10は、例えばねじ留めによって固定される。より具体的な一例として、ステージ10の上面には雌ねじが設けられ、マスターセンサ22に設けられた貫通穴にボルトが挿入されて、ステージ10にマスターセンサ22がねじ留めされる。力覚センサ21は、マスターセンサ22と治具などを介して連結される。力覚センサ21は、マスターセンサ22と直接連結されてもよい。力覚センサ21とマスターセンサ22が連結されたことにより、マスターセンサ22には、力覚センサ21に付与された負荷と等しい負荷が付与される。なお、ステージ10とマスターセンサ22との固定方法はねじ留めに限定されない。ステージ10とベース4とが一体に形成される場合、ステージ10は、ベース4と同一であってもよい。すなわち、ベース4に、被加重体2が固定されてもよい。
【0016】
加重治具20は、ステージ10との間に被加重体2を挟持する。加重治具20は、上面及び下面を有する板状の部材である。加重治具20は一例として金属で形成される。被加重体2は、加重治具20の下面に固定され、且つステージ10の上面と加重治具20の下面との間に挟持される。より具体的な一例として、力覚センサ21の上面には雌ねじが設けられ、加重治具に設けられた貫通穴にボルトが挿入されて、力覚センサ21は、加重治具20にねじ留めされる。なお、加重治具20と力覚センサ21との固定方法はねじ留めに限定されない。
【0017】
パラレルリンク機構30は、6つのボールねじ機構31及びボールねじ機構31にそれぞれ接続されるロッド35から構成される。ボールねじ機構31は、一例として、モータなどの出力部32に接続されるボールねじ及びリニアガイド等から構成される。6つのボールねじ機構31は、ステージ10を囲むように円環状に配置される。6つのボールねじ機構31それぞれの末端は、ベース4に固定される。これにより、ステージ10とパラレルリンク機構30との相対的な位置関係が固定される。6つのボールねじ機構31は、等間隔に配置された2つのボールねじ機構31を1つの組とした、3組のボールねじ機構31として配置される。3組のボールねじ機構31は、ステージ10を中心とする120度の点対称になるように配置される。
【0018】
パラレルリンク機構は「伸縮型(Telescopic)」、「回転型(Rotary)」、「直動型(Linear)」の3種類に大別されるが、本実施形態のパラレルリンク機構30では、一例として、直動型のパラレルリンク機構が、6つのボールねじ機構31及びロッド35によって構成される。
【0019】
一例として、直動型のパラレルリンク機構は、6つのロッド35のそれぞれに対応する、ボールねじ機構31、出力部32、第1軸受33及び第2軸受34を有する。出力部32は、ボールねじ機構31において第1軸受33をZ方向に沿って直線移動させる。第1軸受33及び第2軸受34は、X回転方向、Y回転方向及びZ回転方向の3自由度で2つの部材を連結する連結部材である。第1軸受33は、ボールねじ機構31に固定される。第2軸受34は、加重治具20の上面に固定される。ロッド35は、第1軸受33と第2軸受34とを連結する構造部材である。換言すれば、ロッド35の末端に第1軸受33が連結され、ロッド35の先端に第2軸受34が連結される。6つのロッド35は、それぞれの第2軸受34を介して、加重治具20の上面に並列に連結される。並列に連結とは、ロッド35それぞれが加重治具20の所定箇所に連結されていることを意味する。また、6つのロッド35は、第1軸受33を介してそれぞれのボールねじ機構31に連結される。
【0020】
他の例である伸縮型のパラレルリンク機構の場合であっても、6つのロッドのそれぞれに対応する出力部を有する。各出力部は、各ロッドに組み込まれ、ロッド自体を伸長又は収縮させて、各ロッドが連結される加重治具に負荷を加える。そして、回転型のパラレルリンク機構の場合であっても、6つのロッドのそれぞれに対応する出力部を有する。各出力部は各ロッドの端部に設けられる。各出力部は、各ロッドを旋回させて、各ロッドが連結される加重治具に負荷を加える。このように、パラレルリンク機構においては、6つのロッドのそれぞれを独立して動作させる構成を有していればよく、出力部はロッドに外付けされてもよいし、ロッドに組み込まれてもよい。
【0021】
パラレルリンク機構30は、ステージ10及び加重治具20の間に挟持された被加重体2に、6軸方向における少なくとも1軸方向の負荷を加える。6軸方向とは、互いに直交する3つの軸方向、及び、当該3つの軸のそれぞれの軸を回転軸とする3つの回転方向である。以下の説明では、3つの軸方向をそれぞれX方向、Y方向及びZ方向という。本実施形態においては、X方向は第1水平方向であり、Y方向は第1水平方向に垂直な第2水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。また、X方向、Y方向及びZ方向に対応する軸回りの3つの回転方向を、それぞれX回転方向、Y回転方向及びZ回転方向という。これらの6軸方向の成分を含む負荷値をFとすると、以下の数式(1)で負荷値Fを表すことができる。
F=[Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mz]…(1)
【0022】
ここで、FxはX方向成分の負荷、FyはY方向成分の負荷、FzはZ方向成分の負荷、MxはX回転方向成分の負荷、MyはY回転方向成分の負荷、MzはZ回転方向成分の負荷である。負荷値Fは、6軸方向の成分を全て含む必要はなく、少なくとも1軸方向以上の成分を含めばよい。
【0023】
制御装置40は、一例として、モータコントローラの機能を有するPLC(ProgrammableLogic Controller)として構成される。制御装置40は、CPU(CentralProcessing Unit)などのプロセッサと、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などのメモリと、タッチパネル、マウス、キーボード、ディスプレイなどの入出力装置と、ネットワークカードなどの通信装置とを含むコンピュータシステムを含んでいてもよい。図1に示されるように、制御装置40は、測定部41及び制御部42と一体に構成されており、メモリに記憶されているコンピュータプログラムに基づくプロセッサの制御のもとで各ハードウェアを動作させることにより、測定部41及び制御部42の機能を実現する。制御装置40は、力覚センサ21、マスターセンサ22及び他のセンサなどが接続されるインタフェースを含んでいてもよい。
【0024】
測定部41は、電流量などに基づいて負荷値を測定する。図2は、一実施形態に係る校正システム1を説明するためのブロック図である。図2に示されるように、測定部41は、制御部42と通信可能に接続される。測定部41は、制御部42が制御するそれぞれの出力部32の制御値(消費電流など)を取得する。測定部41は、出力部32の制御値から被加重体2に付与される負荷値を測定する。
【0025】
制御部42は、加重治具20をステージ10に対して相対的に変位させるように、それぞれの出力部32の出力を制御する。具体的には、出力部32がモータである場合、制御部42は、出力部32に印加する電流などを制御する。制御部42は、マスターセンサ22が出力した負荷値に基づいて、出力部32の出力を制御してもよい。また、制御部42は、測定部41が測定した負荷値に基づいて、出力部32の出力を制御してもよい。
【0026】
本実施形態では、制御装置40は、マスターセンサ22が出力した負荷値に基づいて校正の異常を判定する機能と、マスターセンサ22が出力した負荷値に基づいて力覚センサ21を校正する機能とを有する。具体的には、制御装置40は、マスターセンサ22が出力した負荷値と、測定部41が測定した負荷値とを比較して、校正の異常を判定する。また、制御装置40は、マスターセンサ22から出力される負荷値に基づいて、力覚センサ21を校正する。
【0027】
[マスターセンサ及び力覚センサ]
本実施形態では、ひずみゲージ式の力覚センサ21が使用される。ひずみゲージ式の力覚センサ21は、力覚センサ21に加えられた力の大きさを力覚センサ21の構造部材に設けられたひずみゲージによって測定する。具体的には、力覚センサ21に付与された負荷は、力覚センサ21の構造部材に発生した弾性変形量を、ひずみゲージの抵抗変化によって換算することで、測定される。力覚センサ21に付与された負荷値は、値として出力される。換言すれば、力覚センサ21に付与された負荷の負荷値が値に変換される。値は、例えば、電圧などの電気信号である。
【0028】
本実施形態では、マスターセンサ22として、校正されたひずみゲージ式の力覚センサが使用される。マスターセンサ22は、力覚センサ21と同一のセンサでなくてもよい。マスターセンサ22は、校正された負荷値を出力すればよい。例えば、力覚センサ21及びマスターセンサ22は、圧電素子式又は静電容量式の力覚センサであってもよい。力覚センサ21及びマスターセンサ22は、付与される負荷の6軸方向の成分のうちの少なくとも1軸方向の成分を出力する力覚センサであれば良い。マスターセンサ22に付与された負荷は、6軸方向の成分を含む負荷値として出力される。なお、マスターセンサ22は、負荷値に変換される前の、値を出力してもよい。この場合、マスターセンサ22の値は、制御装置40において負荷値に変換される。
【0029】
本実施形態では、被加重体2は、力覚センサ21及びマスターセンサ22を含んでおり、力覚センサ21にはマスターセンサ22が固定される。よって、マスターセンサ22には力覚センサ21に付与される負荷と同一の負荷が付与される。マスターセンサ22の負荷値と力覚センサ21の値とは、同一の負荷に基づく。
【0030】
[校正システムを使用する校正方法]
図3は、校正システム1を使用する校正方法を示すフローチャートである。図3に示されるフローチャートは、一例として、作業者等によって開始される。最初に、被加重体2をステージ10に固定する工程(ステップS10)が実施される。
【0031】
本実施形態では、被加重体2が有するマスターセンサ22がステージ10の上面に向かい合うように固定される。力覚センサ21は、マスターセンサ22と治具などを介して連結されている。
【0032】
次に、被加重体2を加重治具20に固定する工程(ステップS11)が実施される。一例として、力覚センサ21が加重治具20の下面に向かい合うように固定される。被加重体2は、ステージ10の上面と加重治具20の下面との間に挟持される。
【0033】
次に、6つのロッド35に対応するそれぞれの出力部32の出力を制御し、加重治具20をステージ10に対して相対的に変位させる工程(ステップS12)が実施される。ステップS13では、マスターセンサ22に基づいて、出力部32の出力を制御してもよい。具体的には、マスターセンサ22が出力する負荷値が目標値に近づくように、制御装置40は出力部32の出力を制御する。被加重体2は、ステージ10の上面に固定され、更に加重治具20の下面に固定されている。これにより、ステージ10と加重治具20との間の相対的な変位に応じて、被加重体2に負荷値が付与される。換言すれば、それぞれの出力部32の出力が、被加重体2に弾性変形を発生させる。加重治具20は、ステージ10に対して、被加重体2の弾性変形の量に応じて変位する。本実施形態では、ベース4、ステージ10、加重治具20及びパラレルリンク機構30は、被加重体2の剛性に比べて大きな剛性を有している。従って、加重治具20のステージ10に対する相対的な変位量は、被加重体2の弾性変形量に近似する。
【0034】
次に、被加重体2に含まれる力覚センサ21が、被加重体2に付与された負荷の6軸方向の成分のうちの少なくとも1軸方向の成分を含む負荷値に基づく値を出力する工程(ステップS13)と、被加重体2に含まれる校正されたマスターセンサ22が、被加重体2に付与された負荷に応じて負荷値を出力する工程(ステップS14)とが実施される。ステップS13とステップS14とは順番が前後してもよい。
【0035】
最後に、力覚センサ21を校正する工程(ステップS15)が実施される。力覚センサ21の校正とは、力覚センサ21の出力する値V(以下の説明ではVという)と、マスターセンサ22の負荷値F(以下の説明ではFという)とに基づいて、力覚センサ21のキャリブレーション行列C(以下の説明ではCという)を算出することである。具体的には、マスターセンサ22が出力する負荷値が上述した目標値に含まれる所定の範囲に達したときにおける、力覚センサ21の出力する値Vと、当該マスターセンサ22の負荷値Fとに基づいて、キャリブレーション行列Cは算出される。Cの詳細については後述する。ステップS15において取得されるVは、以下の数式(2)で示される。また、ステップS15において取得されるFは、以下の数式(3)で示される。
=[VS1,VS2,VS3,VS4,VS5,VS6]…(2)
=[FM1,FM2,FM3,FM4,FM5,FM6]…(3)
【0036】
及びFは、同一の負荷に基づく出力である。よって、Vに所定の行列を乗じることで、VとFとの関係を等式で示すことができる。すなわち、以下の数式(4)で示されるように、FはCとVの積として示される。換言すると、CはVをFに変換するキャリブレーション行列である。Cは、力覚センサ21の個体ごとに定められる。
=C×V…(4)
【0037】
制御装置40は、Cを算出する。Cは、以下の数式(5)で示されるように、FにVの逆行列V -1を乗じることで算出される。具体的には、制御装置40のインタフェースに、力覚センサ21及びマスターセンサ22が接続される。制御装置40は、取得したVからV -1を算出する。制御装置40は、取得したFにV -1を乗じてCを算出する。
×V -1=C…(5)
【0038】
以上の数式(2)、数式(3)、数式(4)及び数式(5)に基づいて、制御装置40は、Cを算出する。C(力覚センサ21のキャリブレーション行列)は、例えば、力覚センサ21の内部メモリに書き込まれる。また、力覚センサ21に内部メモリがない場合には、Cは、力覚センサ21の外部に設けられる外部メモリに書き込まれてもよい。V(力覚センサ21の出力する値)は、内部メモリ又は外部メモリに記憶されたCに基づいて変換されて出力される。以上で図3に示すフローチャートが終了する。
【0039】
制御装置40は、マスターセンサ22が測定した負荷値に基づいて校正の異常を判定する。具体的には、校正の異常を判定する動作として、測定部41が測定した負荷値を取得する工程(ステップS20)と、マスターセンサ22から出力された負荷値と、測定部41が測定した負荷値とに基づいて、校正の異常を判定する工程(ステップS21)と、校正を中止する工程(ステップS22)とが実施される。
【0040】
校正の異常を判定する動作は、例えば、被加重体2を加重治具20に固定する工程(ステップS11)で開始される。校正の異常を判定する動作は、図3に示されるフローチャートと同時並行で実行され、校正の異常を判定する動作が優先して実行される。
【0041】
最初に、被加重体2に付与される負荷を取得する工程(ステップS20)が実施される。制御装置40は、力覚センサ21及びマスターセンサ22に付与される負荷の負荷値を測定する。本実施形態では、測定部41が、制御部42が制御するそれぞれの出力部32の制御値(消費電流など)に基づいて負荷値を測定する。
【0042】
例えば、測定部41は、それぞれの出力部32の制御値と負荷値とが対応付けられた対応テーブルを予め記憶する。対応テーブルは、正常な校正の実行時に作成される。測定部41は、対応テーブルを参照し、それぞれの出力部32の現在の制御値に基づいて負荷値を測定する。また、測定部41は、それぞれの出力部32の出力値を負荷値に変換する力変換行列に基づいて負荷値を測定してもよい。力変換行列は、出力部32の制御値とマスターセンサ22の負荷値とに基づいて算出される。
【0043】
次に、マスターセンサ22から出力された負荷値と、測定部41が測定した負荷値とに基づいて、校正の異常を判定する工程(ステップS21)が実施される。制御装置40は、マスターセンサ22が出力した負荷値(以下の説明では第1負荷値という)と、測定部41が測定した負荷値(以下の説明では第2負荷値という)とを比較する。比較によって、第1負荷値及び第2負荷値の関係が所定の関係から外れていると判定された場合には、制御装置40は、校正を異常と判定する。所定の関係とは、例えば、第1負荷値を基準とする所定の数値範囲に、第2負荷値が含まれる関係をいう。第1負荷値を基準とする所定の数値範囲に第2負荷値が含まれない場合、第1負荷値及び第2負荷値は、所定の関係から外れていると判定される。
【0044】
制御装置40が校正を異常と判定していない場合には(ステップS21:NO)、校正の異常を判定する動作は終了する。この場合、校正の異常を判定する動作は再開され、ステップS20から繰り返し実行される。制御装置40が校正を異常と判定した場合には(ステップS21:YES)、校正を中止する工程(ステップS22)を実施する。ステップS22では、一例として、出力部32への出力を停止して、校正が異常である旨を作業者等へ通知する。以降のタイミングにおいては図3のフローチャートの動作は無効となる。以上によって、校正の異常を判定する動作は終了する。
【0045】
[実施形態のまとめ]
【0046】
この校正システム1及び校正方法では、被加重体2がステージ10及び加重治具20に固定され、挟持される。加重治具20には、パラレルリンク機構30を構成する6つのロッド35が並列に連結される。6つのロッド35は、それぞれのロッド35に対応するそれぞれの出力部32によって駆動される。それぞれの出力部32は、制御装置40に出力を制御され、加重治具20をステージ10に対して相対的に変位させる。これにより、6軸方向の負荷が被加重体2に付与され得る。そして、被加重体2に付与される負荷の6軸方向の成分のうちの少なくとも1軸方向の成分を含む負荷値に基づく値が力覚センサ21から出力され、負荷に応じた負荷値が校正されたマスターセンサ22から出力される。制御装置40は、力覚センサ21から出力される値とマスターセンサ22から出力される負荷値とに基づいて、力覚センサ21を校正する。このように、この校正システム1は、被加重体2に加える負荷の大きさに応じて錘の数又は種類などの装置構成を変更する必要がないため、より簡易に校正を行える。また、この校正システム1は、ワイヤと滑車との間に発生する摺動抵抗を考慮する必要がないため、より正確に校正を行える。
【0047】
制御装置は、マスターセンサ22から出力された負荷値に基づいて校正の異常を判定してもよい。この校正システム1及び校正方法によれば、マスターセンサ22から出力された負荷値に基づいて校正の異常を判定できる。
【0048】
この校正システム1は、錘を使用する校正装置と比べて小型化できる。出力部32を交換することで、錘を使用する校正装置と比べて容易に負荷の範囲を変更できる。マスターセンサ22を交換することで、錘を使用する校正システムと比べて容易に校正の範囲を変更できる。校正時の姿勢に制限が無いため、装置設計が容易になる。校正時に姿勢が変化しないため、重心位置の変動による誤差が抑制される。
【0049】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上記実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。以下では、上記実施形態との相違点を中心に説明し、共通する説明は省略する。
【0050】
[変形例1]
図4は、変形例1の校正システムを説明するための側面図である。上記実施形態においては、被加重体2は、マスターセンサ22側がステージ10の上面に向かい合うように固定されていたが、変形例1では、図4に示されるように、力覚センサ21側がステージ10の上面に向かい合うように固定される。マスターセンサ22は、加重治具20に固定される。このように、被加重体2における、力覚センサ21とマスターセンサ22との重ね順は限定されず、どちらの重ね順であっても同一の作用効果を奏する。
【0051】
[変形例2]
図5は、変形例2の校正システムを説明するための側面図である。上記実施形態では、マスターセンサ22から出力された負荷値と、測定部41が測定した負荷値とに基づいて、校正の異常を判定していたが、マスターセンサ22と、他の測定手段に基づいていてもよい。変形例2では、他の測定手段の一例として、図5に示されるように、それぞれのロッド35にひずみゲージ5が設けられる。ひずみゲージ5はロッド35のひずみを出力する。制御装置40は、マスターセンサ22から出力された負荷値と、ひずみゲージ5の出力に基づいて校正の異常を判定する。
【0052】
他の測定手段は、それぞれのロッド35に設けられるロードセルであってもよい。このように、校正システム1は、校正システム1は、マスターセンサ22と、他の測定手段(ひずみゲージ及びロードセルなど)とに基づいて、校正の異常を判定してもよい。
【0053】
[変形例3]
図6は、変形例3の校正システムを説明するための側面図である。上記実施形態では、ベース4は1つの板状部材であったが、ベース4は、複数の部材によって構成されていてもよい。変形例3では、図6に示されるように、ベース4Aにステージ10が固定され、ベース4Bに6つのボールねじ機構31が固定される。ベース4Bにステージ10が固定されてもよい。ベース4Aとベース4Bは、相対する位置関係が固定された対向する2つの板状部材である。一例として、ベース4Aとベース4Bは、支持柱(不図示)によって連結され、相対的な位置関係が固定される。また、本実施形態では、同一平面上にステージ10と、パラレルリンク機構30のボールねじ機構31とが固定されているが、これらは同一平面上に固定されなくてもよい。このように、変形例4では、ステージ10及び6つのボールねじ機構31の姿勢の自由度が向上する。
【符号の説明】
【0054】
1…校正システム、2…被加重体、21…力覚センサ、22…マスターセンサ、4,4A,4B…ベース、10…ステージ、20…加重治具、30…パラレルリンク機構、31…ボールねじ機構、32…出力部、35…ロッド、40…制御装置、41…測定部、42…制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6