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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005630
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/00 20160101AFI20230111BHJP
【FI】
H02P29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107666
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松原 満
(72)【発明者】
【氏名】高野 裕理
(72)【発明者】
【氏名】上井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】近藤 輝朋
(72)【発明者】
【氏名】梁田 哲男
(72)【発明者】
【氏名】戸張 和明
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501BB05
5H501BB11
5H501GG01
5H501GG03
5H501GG05
5H501HB08
5H501HB16
5H501JJ03
5H501JJ25
5H501JJ26
5H501LL07
5H501LL22
5H501LL35
(57)【要約】      (修正有)
【課題】制振制御特有の応答遅れを改善ずるモータ制御装置を提供する。
【解決手段】速度制御系内制振制御器15は、位置指令の推定値13を算出する位置指令推定器9と、位置指令の推定値13に基づき第1の速度指令14に含まれる機械端の振動を励起する周波数成分を抽出し、抽出した周波数成分を出力する並列型制振制御器10と、並列型制振制御器10に起因して発生する応答遅れを改善する位相調整器1と、位相調整器1の出力を速度の次元に変換する単位変換器12と、演算器とを有し、演算器は、第1の速度指令14から並列型制振制御器10の出力を減算して機械端の振動を励起する周波数成分を第1の速度指令14から除去し、第2の速度指令8として出力し、単位変換器12の出力と第2の速度指令8とに基づいて速度制御系内制振制御器15の出力としての第1の実速度指令18を出力し、第1の実速度指令18を速度制御器20の指令とするモータ制御装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータに接続された機械端を位置制御する位置制御系に含まれるモータ制御装置であって、
前記モータ制御装置は、
上位系制御装置から第1の速度指令を受取り、
前記上位系制御装置に対してモータ軸の位置応答を出力するよう前記位置制御系に組込まれ、
速度制御器と、
速度制御系内制振制御器とを有し、
前記速度制御系内制振制御器は、
前記第1の速度指令と前記モータ軸の位置応答とに基づいて位置指令の推定値を算出する位置指令推定器と、
前記位置指令の推定値に基づき前記第1の速度指令に含まれる前記機械端の振動を励起する周波数成分を抽出し、抽出した前記周波数成分を出力する並列型制振制御器と、
前記並列型制振制御器に起因して発生する応答遅れを改善する位相調整器と、
前記位相調整器の出力を速度の次元に変換する第1の単位変換器と、
演算器とを有し、
前記演算器は、
前記第1の速度指令から前記並列型制振制御器の出力を減算して前記機械端の振動を励起する前記周波数成分を前記第1の速度指令から除去し、第2の速度指令として出力し、
前記第1の単位変換器の出力と前記第2の速度指令とに基づいて前記速度制御系内制振制御器の出力としての第1の実速度指令を出力し、
前記第1の実速度指令を前記速度制御器の指令とするモータ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ制御装置において、
前記演算器は、
前記第1の速度指令から前記並列型制振制御器の出力を減算する第1の加減算器と、
前記第1の単位変換器の出力と前記第2の速度指令とを加算する第2の加減算器とを有するモータ制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のモータ制御装置において、
前記位置指令推定器は、
前記上位系制御装置に含まれる位置制御器の逆特性に一致する推定フィルタと第3の加減算器とを有し、
前記第1の速度指令を前記推定フィルタで処理した信号と、前記モータ軸の位置応答とを前記第3の加減算器で加算したものを前記位置指令の推定値として出力するモータ制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載のモータ制御装置において、
前記並列型制振制御器は、
前記位置指令の推定値から前記第1の速度指令に含まれる前記機械端の振動を励起する周波数成分を位相遅れなく抽出する振動励起成分抽出器と、
前記振動励起成分抽出器で抽出された振動励起成分信号の単位を速度の次元に変換する第2の単位変換器とを有し、
前記第2の単位変換器の出力を前記並列型制振制御器の出力とし、
前記演算器は、
前記振動励起成分抽出器の入力と出力の差分を演算し、
前記位相調整器は、
前記差分を入力し、位相の調整をして前記第1の単位変換器に出力するモータ制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載のモータ制御装置において、
前記演算器は、
前記第1の速度指令から前記並列型制振制御器の出力を減算する第1の加減算器と、
前記第1の単位変換器の出力と前記第2の速度指令とを加算する第2の加減算器と、
前記振動励起成分抽出器の入力から出力を減じる第4の加減算器とを有するモータ制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載のモータ制御装置において、
前記速度制御系内制振制御器は、
前記上位系制御装置に含まれる位置制御器のフィードバック制御にかかる応答遅れを改善するためのフィードフォワード制御器を有し、
前記演算器は、
前記位相調整器の入力と出力とを演算し、
当該演算の結果を前記フィードフォワード制御器は入力し、
前記フィードフォワード制御器の出力と前記第1の実速度指令とから第2の実速度指令を演算し、
前記第2の実速度指令を前記速度制御系内制振制御器の出力とするモータ制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載のモータ制御装置において、
前記演算器は、
前記位相調整器の入力と出力とを加算する第5の加減算器と、
前記フィードフォワード制御器の出力と前記前記第1の実速度指令とを加算する第6の加減算器とを有するモータ制御装置。
【請求項8】
請求項1に記載のモータ制御装置において、
前記位相調整器は、ハイパスフィルタであるモータ制御装置。
【請求項9】
請求項6に記載のモータ制御装置において、
前記フィードフォワード制御器は、
ハイパスフィルタであることを特徴とするモータ制御装置。
【請求項10】
請求項1に記載のモータ制御装置において、
前記位相調整器のフィルタパラメータは、前記機械端の振動特性に基づいて設定されるモータ制御装置。
【請求項11】
請求項6に記載のモータ制御装置において、
前記フィードフォワード制御器のフィルタパラメータは、前記機械端の振動特性に基づいて設定されるモータ制御装置。
【請求項12】
請求項1に記載のモータ制御装置において、
前記上位系制御装置は、
前記位置制御系に組み込まれ位置制御器を含み、前記位置指令を生成し、
前記位置制御器は、前記位置指令と前記モータ制御装置から受け取った前記モータ軸の位置応答とから、前記第1の速度指令を生成するモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セミクローズド構成のモータ制御系で制御対象機械を駆動する場合において、
機械の剛性が低い場合には、機械の共振・反共振特性が原因で機械の端部(以降機械端と記述する)が数Hz~100Hzの低周波数で振動し、所望の応答特性を実現できない場合がある。
【0003】
位置決め精度と位置決めに要する時間の短縮の両立が必要なFA分野の作業機械では、このような場合、一般的に制振制御が用いられる。制振制御は一般に制御指令の加工により成され、制御指令から機械端の振動を励起する周波数成分を除去する方法が知られている。
【0004】
特許文献1は、位置指令に対して2つの制振フィルタを切り替えて用いることで機械の共振・反共振特性が変化する場合であっても機械の端部を制振可能とするもので、制振フィルタの一例としてはノッチフィルタが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-168225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
モータ制御系が位置制御系である場合、位置指令を、ノッチフィルタ等を用いて加工することで制振制御を実現できるが、図2に示すように、機器のリプレースなどの産業上の都合により、位置指令を生成する上位系制御装置が位置制御器を内包し、マイナーループである速度制御系をサーボモータ制御装置が担うような装置構成となる場合がある。
【0007】
さらにメンテナンス性や各装置のスペックなどの都合により、位置制御器で制振制御を実現せず、マイナーループである速度制御系を担うサーボモータ制御装置内で制振制御を実現したい場合がある。
【0008】
特許文献1では、制振制御に寄与する制振フィルタ3、フィルタ切替え手段9、指令方向検出手段4は、図2における上位系制御装置で制振制御を実現する構成である。そのため、特許文献1では、速度制御系を担うサーボモータ制御装置内で制振制御を実現してはいない。
【0009】
さらに、機械端振動を励起する周波数成分を抽出するフィルタとしてラインエンハンサ(LE)を使う制振制御をする場合に、制振制御特有の応答遅れの発生が生じないことが課題となる。
【0010】
本発明は、セミクローズド構成のモータ制御系において、上位系制御装置が位置制御器を内包し、速度制御系を担うモータ制御装置内で制振制御を実現するモータ制御装置において、制振制御特有の応答遅れを改善ずるモータ制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、モータに接続された機械端を位置制御する位置制御系に含まれるモータ制御装置であって、
前記モータ制御装置は、
上位系制御装置から第1の速度指令を受取り、
前記上位系制御装置に対してモータ軸の位置応答を出力するよう前記位置制御系に組込まれ、
速度制御器と、
速度制御系内制振制御器とを有し、
前記速度制御系内制振制御器は、
前記第1の速度指令と前記モータ軸の位置応答とに基づいて位置指令の推定値を算出する位置指令推定器と、
前記位置指令の推定値に基づき前記第1の速度指令に含まれる前記機械端の振動を励起する周波数成分を抽出し、抽出した前記周波数成分を出力する並列型制振制御器と、
前記並列型制振制御器に起因して発生する応答遅れを改善する位相調整器と、
前記位相調整器の出力を速度の次元に変換する第1の単位変換器と、
演算器とを有し、
前記演算器は、
前記第1の速度指令から前記並列型制振制御器の出力を減算して前記機械端の振動を励起する前記周波数成分を前記第1の速度指令から除去し、第2の速度指令として出力し、
前記第1の単位変換器の出力と前記第2の速度指令とに基づいて前記速度制御系内制振制御器の出力としての第1の実速度指令を出力し、
前記第1の実速度指令を前記速度制御器の指令とするモータ制御装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、速度制御系を担うモータ制御装置内で制振制御を実現する際の、制振制御特有の応答遅れを改善でき、位置決め時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1の第1の基本構成を示す図。
図2】上位系制御装置とサーボモータ制御装置とからなる構成を示す図。
図3】実施例1の前提となる構成を説明する図。
図4】振動励起成分抽出器の周波数特性を示す図。
図5】位相調整器の周波数特性を示す図。
図6】機械端の周波数特性を示す図。
図7】実施例2の第1の基本構成を示す図。
図8】実施例2の前提となる構成を説明する図。
図9】FF制御器を伴う2自由度制御器の具体的構成を示す図。
図10】モデルマッチング2自由度制御器の具体的構成を示す図。
図11】ACサーボモータ制御系を示す図。
図12】速度制御系内制振制御器を有するACサーボモータ制御系を示す図。
図13図12の構成における制振制御の効果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、本実施例の前提となる構成としての図3の説明をする。図3は、位置指令を加工せず、サーボモータ制御装置301内で制振制御を実現する技術である。図3のサーボモータ制御装置301は、位置指令推定器9、並列型制振制御器10、速度制御器20、位置・速度算出器21、電流制御系207および加減算器304を有し、上位系制御装置201から得られる速度指令303を加工する点が特徴である。
【0015】
より具体的には、並列型制振制御器10は振動励起成分抽出器と単位変換器とから成り、位置指令推定器9から得た位置指令推定値13から、機械端204の振動を励起する周波数成分を振動励起成分抽出器で抽出し、単位変換器で速度の単位に変換し、速度指令303から振動励起成分を除去することで機械端の振動抑制を実現する。
【0016】
図3では、並列型制振制御器10内の振動励起成分抽出器には、位置指令推定器9から機械端振動を励起する周波数成分を位相遅れなく抽出できるフィルタとしてラインエンハンサ(LE)に相当する次式を採用している。
【0017】
【数1】
【0018】
但し、Wは抽出幅、Lは抽出パワーレベルを担うパラメータで、ωnは抽出する周波数[rad/s]である。またsはラプラス演算子である(以降、sはラプラス演算子を意味する)。
【0019】
W=1、L=0.1、ωn=2π×10とした際の式(1)の周波数特性を図4に示す。周波数ωnにおいて振幅がピークを迎え、位相遅れが0となる点が特徴である。
【0020】
図4の上段の縦軸はMagnitude(抽出する周波数の振幅)であり、横軸はFrequency(抽出する波形の周波数)である。図4の下段の縦軸はPhase(抽出する周波数の位相)であり、横軸はFrequency(抽出する波形の周波数)である。
【0021】
式(1)のLEを用いた制振制御においては、制振制御特有の応答遅れの発生が課題となる。具体的には、周波数ωn以下の帯域で位相遅れが生じ、機械端の振動を抑制できる一方で、十分な応答特性が得られず、位置決め時間を十分に短縮しきれない場合がある。
【0022】
以下、本発明を適用した実施例は、制振制御特有の応答遅れ改善する構成であり、図面を参照しながら説明する。なお各図において、共通な機能を有する構成要素には同一の番号を付与し、その説明を省略する。また、以降「フィードバック」は「FB」と、「フィードフォワード」は「FF」と略記する場合がある。
【実施例0023】
図1は、本実施例の速度制御系内制振制御器15の構成を示したもので、図3のサーボモータ制御装置301内の速度制御系内制振制御器302に対して、新たに位相調整器1、加減算器3および加減算器17、単位変換器12が追加された構成である。
【0024】
本実施例は、図3に示すようにモータ制御系が上位系制御装置201とサーボモータ制御装置301とで構成される場合を想定にしたものである。本実施例のサーボモータ制御装置301はモータに接続された機械端を位置制御する位置制御系に含まれる。
【0025】
上位系制御装置201は位置指令24を生成し、位置制御器22を含み、サーボモータ制御装置301からモータ軸の位置応答23を受け取り、位置指令24とモータ軸の位置応答23とに基づき位置制御器22で速度指令14を生成し、これをサーボモータ制御装置301に出力する。なお位置指令24は、上位系制御装置201の外部から別の上位装置等から与えられるものであってもよい。
【0026】
本実施例のサーボモータ制御装置301は、速度制御系を担う速度制御器20、電流制御系207、位置・速度算出器21、および速度制御系内制振制御器15を含み、上位系制御装置201から速度指令14を受け取り、モータに対して速度制御を行うとともに、モータに取り付けらえた位置・速度を把握可能なセンサ(例えばロータリーエンコーダ)からの計測信号に基づき位置・速度算出器21でモータ軸の位置を算出し、これをモータ軸の位置応答23とし、モータ軸の位置応答23を上位系制御装置201に出力する。
【0027】
サーボモータ制御装置301は、図示は省略したがCPU(Central Processing Unit)を有する。位置指令推定器9、並列型制振制御器10、加減算器304などの各処理部を含む速度制御系内制振制御器302、速度制御器20、位置・速度算出器21、電流制御系207などは、CPUがプログラムを読み出してプログラムを実行することで、各処理部の処理が実行される。ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで、各処理部の全部もしくは一部を構成することもできる。また上位系制御装置201はCPUを有し、位置制御器22に対応したプログラムをCPUが実行する。
【0028】
本実施例は、上位系制御装置201の位置制御器22が制振制御を含まず、サーボモータ制御装置301の内部で制振制御を実現し、かつ制振制御特有の応答遅れを改善することを課題とし、速度制御系内制振制御器15はそれを成すための本実施例の制振制御器である。
【0029】
速度指令14を加工することで制振制御を実現する。これには原理的には以下のステップの処理を行えればよい。
S1:位置指令の把握・推定
S2:把握・推定した位置指令から機械端振動を励起する周波数成分を抽出
S3:S2で抽出した周波数成分を含まない速度指令を生成し、速度制御器の速度指令とする
ステップS1は位置指令推定器9で実現される。
その実現手段の一例は、次式である。位置指令推定器9は、式(2)に従い、第1の速度指令14を推定フィルタで処理した信号と、モータ軸の位置応答23とを、第3の加減算器で加算したものを位置指令の推定値として出力する。
【0030】
【数2】
【0031】
但し、re、srおよびypは各々位置指令推定値13、速度指令14およびモータ軸の位置応答23であり、Fpは、位置制御器22の逆特性に一致する推定フィルタである。例えば位置制御器22がP制御器ならば、FpはP制御器の逆特性、すなわちPゲインの逆数となる。なお、以降議論の簡単化のために、位置指令推定器9で得られる位置指令推定値13は、位置指令24を誤差無く推定できるものとする。
【0032】
ステップS2は、振動励起成分抽出器11で実現される。振動励起成分抽出器11はフィルタとしてラインエンハンサ(LE)であり、ラインエンハンサはすでに述べた式(1)の機能を有する。
【0033】
ステップS3は、単位変換器12および加減算器16で実現され、振動励起成分抽出器11の出力の単位を単位変換器12で位置から速度に変換し、これを速度指令14から加減算器16で除去することで、機械端振動を励起する周波数成分を含まない速度指令8を実現できる。なお単位変換器12の一例は、上位系制御装置201に含まれる位置制御器22である。
【0034】
位置制御器22は、位置指令24や、位置指令24とモータ軸の位置応答23との偏差に基づき速度指令を生成する役割を担う。したがって速度制御系内制振制御器15においては、単位変換器12の役割を担うことが可能である。
【0035】
振動励起成分抽出器11の式(1)のLEは、図4に示すように、位置指令推定値13から機械端振動を励起する周波数成分を位相遅れなく抽出できる。しかしながら、LEは抽出する周波数ωn[rad/s]より低い帯域では位相を進ませる特徴がある(但し位相の最大進み量はπ/2[rad/s])。
【0036】
今、周波数ωの正弦波に対して、振幅がα(0<α≦1)で位相がβ(0<β<π/2)だけ進んだ正弦波を減ずる以下の処理を考える。
【0037】
【数3】
【0038】
これを式変形すると以下となる。
【0039】
【数4】
【0040】
【数5】
【0041】
α(0<α≦1)かつβ(0<β<π/2)においては、γは常に負になる。したがって、周波数ωの正弦波に対して、振幅がα(0<α≦1)で位相がβ(0<β<π/2)だけ進んだ正弦波を減じた結果得られる正弦波Sc(t)は、周波数ωの正弦波に対して必ず位相が遅れた周波数ωの正弦波となる。なお位相の遅れ量はαが大きい場合に増加する傾向となる。
【0042】
また周波数ωの正弦波に対して、振幅がα(0<α≦1)で位相がβ(0<β<π/2)だけ進んだ正弦波を加算する以下の処理を考える。
【0043】
【数6】
【0044】
これを式変形すると以下となる。
【0045】
【数7】
【0046】
【数8】
【0047】
式(8)のγは、α(0<α≦1)かつβ(0<β<π/2)においては、常に正になる。したがって、周波数ωの正弦波に対して、振幅がα(0<α≦1)で位相がβ(0<β<π/2)だけ進んだ正弦波を加算した結果得られる正弦波Sc(t)は、周波数ωの正弦波に対して必ず位相が進んだ周波数ωの正弦波となる。
【0048】
本実施例は、式(6)~式(8)の原理を利用して、制振制御特有の応答遅れを改善する。
【0049】
図1の並列型制振制御器10では式(1)を採用する。したがって、LEの特性上、周波数ωnより低い周波数成分(ωLとする)はLEによって進まされる。速度指令14の周波数ωLの周波数成分に対してLEによって位相が進まされた周波数ωLの周波数成分が加減算器16にて減じられるため、式(3)~式(5)の原理から加減算器16の出力8における、周波数ωLの周波数成分は必ず速度指令14の同周波数成分に対して遅れを有する。特にωLがωnに近いとき、LEの特性上、ゲインが高い(すなわちαが大きい)。
したがってωLがωnに近い場合の方が、位相遅れ量は顕著となる。
【0050】
これが、LEを用いた並列型制振制御における、制振制御特有の応答遅れの発生原因である。このような位相遅れ特性が速度指令14のωnより低い帯域の周波数成分を遅らせてしまうため、速度指令が全体的に遅れたものになる。
【0051】
本実施例は、このような速度指令14の位相が遅らされてしまう問題に対して、図1の位相調整器1、加減算器3、単位変換器12、および加減算器17を用いる。
【0052】
加減算器3の出力2は、振動励起成分抽出器11の性質から、機械端振動を励起する周波数が除去された位置指令(推定値)であり、但し、周波数ωnより低い周波数成分は、出力8と同様に、位置指令推定値5(位置指令推定値13)よりも位相が遅れたものとなっている。
【0053】
位相調整器は、振動励起成分抽出器11に起因して遅れた周波数成分を進ませて、単位変換器12で単位を位置から速度に変換した後に、加減算器17で出力8に加算する。この結果、式(6)~式(8)の原理に従えば、振動励起成分抽出器11に起因してωnより低い周波数成分に位相遅れを有した出力8の位相遅れを進ませることができ、結果として、制振制御特有の応答遅れを改善することができる。換言すると、本実施例は振動励起成分抽出器11に起因して生じた速度指令14の位相遅れを改善することで、速度指令の遅れを改善した速度指令18(以降、これを実速度指令18と記す)を生成することができるという、速度指令の加工を狙ったものである。実速度指令18は、速度制御器20の速度指令である、
なお、出力2には機械端の振動を励起する周波数成分を含まれないため、出力8に対して、単位変換器12の出力7を加減算器17で加算して得られた実速度指令18は、やはり機械端の振動を励起することのない、制振効果のある速度指令になっている点に注意する。
【0054】
位相調整器1の一例は、以下に示す1次のハイパスフィルタ(HPF)である。
【0055】
【数9】
【0056】
但し、ωhは遮断周波数[rad/s]、h(>1)は調整ゲインである。
【0057】
ωh=2π×10、h=2.5とした際の、HPFの周波数特性を図5に示す。
【0058】
図5の上段の縦軸はMagnitude(HPFにおける周波数の振幅)であり、横軸はFrequency(HPFにおける波形の周波数)である。図5の下段の縦軸はPhase(HPFにおける周波数の位相)であり、横軸はFrequency(HPFにおける波形の周波数)である。
【0059】
周波数ωhでπ/4[rad/s]位相が進み、周波数ωhより低い帯域では最大でπ/2[rad/s]の位相進む特性である。またゲインに関しては、高域で20×log10(h)だけゲイン増になる特性である。
【0060】
したがって、式(9)を用いることで、速度指令14の位相の遅れを改善できる。
【0061】
式(9)のパラメータωhおよびhには設計自由度がある。例えば、遮断周波数をLEの抽出する周波数ωnに一致させた場合(ωh=ωn)、ランプ指令に対する応答の立ち上がり遅れは理論上、hの増加に対して線形的に改善できる。
【0062】
また、機械端振動の応答特性は次の式(10)で表現されることが多い。
【0063】
【数10】
【0064】
但し、ωaは機械端振動の周波数[rad/s]、ζaは減衰係数である。
なお機械端の振動周波数をLEで抽出するにはωa=ωnとすればよい。
【0065】
HPFのパラメータ設計に関して、式(10)のARの周波数特性が既知であるならば、これを考慮したものとしてもよい。
【0066】
ARの周波数特性を図6に示す。なお、ωa=2π×10、ζa=0.1としている。
【0067】
図6の上段の縦軸はMagnitude(ARにおける周波数の振幅)であり、横軸はFrequency(ARにおける波形の周波数)である。図6の下段の縦軸はPhase(ARにおける周波数の位相)であり、横軸はFrequency(ARにおける波形の周波数)である。
【0068】
ARはωaより高域では位相が遅れ、ゲインも減衰する特性となる。したがって、HPFでは、ωhおよびhはARの関数としてωh(ωa、ζa)、およびh(ωa、ζa)とし、ωh(ωa、ζa)>ωaとして積極的に高域で位相を進ませ、h(ωa、ζa)>2として積極的に高域でのゲインを高めることで、制振制御特有の応答遅れに加えてARの特性に伴う応答遅れを改善する効果が期待できる。位相調整器のフィルタパラメータは、機械端の振動特性(振動の周波数及び振動の減衰係数)に基づいて設定される。
【0069】
このようなHPFの積極的な設計が可能な理由は、HPFの入力である出力2に機械端の振動を励起する周波数成分が含まれないためである。
【0070】
このように、本実施例によれば、上位系制御装置が位置制御器を内包し、速度制御系を担うモータサーボ制御装置内で制振制御を実現する手段を備えたモータ制御装置の提供において、並列型制振制御器10に起因して発生する制振制御特有の応答遅れを簡単な処理にて改善することができ、結果位置決め時間の短縮が可能である。
【実施例0071】
図7は、本実施例の速度制御系内制振制御器71の構成を示したもので、実施例1に対して、FF制御器72、加減算器73、および加減算器79が追加された点が差異である。実施例1と同じ内容は説明を省略する。
【0072】
本実施例の前提となる速度制御系内制振制御器81の構成を図8に示す。図8では、FF制御器85は上位系制御装置の位置制御器22がFF制御器を含まない場合に、応答特性改善を目的に設けられるものである。但し、FF制御器85は位置制御器22に含まれるFB制御器に起因したFBループの応答遅れを改善するものであり、制振制御特有の応答遅れを改善するために導入されるものではない。
【0073】
本実施例におけるFF制御器72は図8のFF制御器85と役割は同じであり、位置制御器22に含まれるFB制御器に起因したFBループの応答遅れを改善する目的で設けられるものである。
【0074】
セミクローズ構成の位置制御系の制御対象は一般には単純な積分器1/sであるため、位置制御系におけるFF制御器は、単純にはスカラのゲインと微分器sの積で構成すればよく、位置制御器において、図9のようにFF制御器を設ければよい。
【0075】
図9は、一般的なFF制御器を伴う2自由度制御器の具体的構成を示す図である。図9において、FF制御器の入力94は位置指令である。図8での位置・速度算出器21からの出力などの制御対象の応答96である。FB制御器92入力は位置指令94と制御対象の応答96の差分である。位置制御器の出力97は速度指令である。したがって、FF制御器93は入力を位置の単位とし、出力を速度の単位にできる性質がある。
【0076】
なお、図9のFB制御器92はP制御器とすることが多く、したがってFB制御器92は単純にスカラのゲイン(ωpと記載する)とすればよい。なお、図7の位置制御器22もこのとき、ゲインωpのP制御器である点に注意する。
【0077】
位置制御器でモデルマッチング2自由度制御100を構成する場合は、規範モデル101を伴って、図10のようにFF制御器103を設ければよい。この場合、FF制御器103及び規範モデル101は各々FFM、及びMとして、次式とすればよい。
【0078】
【数11】
【0079】
【数12】
【0080】
但し、ωfは、所望の応答特性を規定するパラメータであり、一般にはωp<ωfとして設計される。
【0081】
図7におけるFF制御器72は、図9のFF制御器93を採用することができる。さらには、FF制御器72は、図10のモデルマッチング2自由度制御100におけるFF制御器とすることもできる。但しその場合、FF制御器72は、図10のFF制御器103を直接用いるのではなく次式とする。これは、図10のブロック構成を図9の形に変形した際のFF制御器93である。
【0082】
【数13】
【0083】
式(13)によれば、図7におけるFF制御器72は、モデルマッチング2自由度制御を採用する場合は、ハイパスフィルタHPFと位置制御器22との積、であると解釈される。さらには、ハイパスフィルタHPFと単位変換器12との積とも解釈できる。
【0084】
ハイパスフィルタHPFは、式(9)と比較すると、遮断周波数はωf、hf=ωf/ωpは調整ゲインhに相当することがわかる。
フィードフォワード制御器のフィルタパラメータは、機械端の振動特性(振動の周波数及び振動の減衰係数)に基づいて設定される。
【0085】
したがって式(13)で構成するFF制御器72を採用する場合、図7の構成では、位相調整器1で制振制御特有の応答遅れを改善した速度指令78に対して、式(9)と同様の位相進み特性によって、FF制御器72で所定の位相特性が改善された速度指令76が得られることがわかる。この位相進み特性は、位置制御系のFF制御器の役割を担うものであるため、制振制御特有の応答遅れを改善するものではなく、位置制御器22に含まれるFB制御器に起因したFBループの応答遅れを改善する役割を担うものである。
【0086】
なお図7において、FF制御器の入力74が位相調整器1の入力2と出力6を加減算器73で加算したものになっているのは、FF制御器72の出力77が機械端振動を励起することを避けるため、かつ位相調整器1の位相調整結果を受けた速度指令78と同様の位相調整結果を受けた出力77を速度指令78に加減算器79を介して作用させたいためである。
【0087】
したがってFF制御器72を伴う本実施例によれば、上位系制御装置が位置制御器を内包し、速度制御系を担うモータサーボ制御装置内で制振制御を実現する手段を備えたモータ制御装置の提供において、並列型制振制御器10に起因して発生する制振制御特有の応答遅れを簡単な処理にて改善することができ、かつFB制御器に起因したFBループの応答遅れも併せて改善することが可能であり、結果位置決め時間の短縮が可能である。
【0088】
なお、ωfはFF制御における所望の応答特性を規定し、ωpは位置制御器22の制御ゲインであるから、式(13)に含まれるパラメータは一意に定まるもので、機械端振動の応答特性ARとは独立に設計されるものである。しかしながら、式(13)のhfを調整ゲインと見なして、hfのωpをあえて調整できるものとしてもよい。
【0089】
これにより、応答遅れを更に改善できる場合がある。位相調整器1とFF制御器72とは、改善する遅れ特性に明確な違いがあり、独立設計されることが前提であることは既に述べた通りだが、あえてhfのωpを調整要素とし、位相調整器1のパラメータωh(ωa、ζa)、およびh(ωa、ζa)とバランスするように適切な設計を行うことで、トータルとして機械端振動を抑制しながら、機械端の応答遅れを短縮可能となる場合がある。
【0090】
このような効果は、FF制御器72を位相調整器1のHPFと同様の役割と見なし、HPFを二つ用いて速度指令8の位相を調整した結果得られたものである、と解釈できる。
【実施例0091】
本実施例に係るモータ制御装置は、図11に示すような、上位系制御装置とサーボモータ制御装置で構成されるACサーボモータのカスケード位置FB制御系1100への適用を想定した場合である。
【0092】
図12は、実施例3のACサーボモータのカスケード位置FB制御系1200を示す図である。図1に示した速度制御系内制振制御器15を、図11に適用した場合が図12である。実施例1と同じ内容は説明を省略する。
【0093】
図12のACサーボモータのカスケード位置FB制御系は、加減算器1410、加減算器1411、加減算器1412、位置制御器1315、速度制御器132、電流制御器133、d-q座標系から3相座標系へ座標変換する第1の座標変換器134、3相座標系からd-q座標系へ座標変換する第2の座標変換器1310、3相電圧指令を入力してPWMパルスを出力するPWM出力器135、スイッチング素子を有するインバータ(電力変換器)136、電流検出器138、位置・速度算出器1311、速度制御系内制振制御器15、モータの回転数を計測するエンコーダ139、モータ137、およびモータに駆動される、制御対象である機械1313を備える。
【0094】
速度制御系内制振制御器15は、エンコーダ139の出力から位置・速度算出器1311で算出されたモータ軸の位置応答および位置制御器1315からの位置操作量を入力し、位置制御器1315にモータ軸位置応答を出力し、速度制御器132に速度指令を出力する。
【0095】
モータの電気回路部分を電流制御器133が制御し、この制御周期が速度制御器132より速い前提においては速度制御系において、電流制御系は近似的に1(速度制御器の操作量がモータの機械部分(ロータ)に直達される)にみなされる。したがって速度制御器132の制御対象は、モータの機械部分(ロータ)とモータのロータに結合された機械1313であり、これが図1における速度制御器20の制御対象に相当する。
【0096】
また速度制御器132の制御周期は、位置制御器1315の制御周期より早い速い前提においては、位置制御系において、速度制御系は近似的に1に見なされる。
【0097】
速度制御系内制振制御器15は、速度制御系内のその前段に位置し、上位系制御装置の出力である速度指令を加工し、速度制御器132への指令を生成するものである。
【0098】
機械1313の慣性数は1とし、機械1313とモータのロータが弾性結合されている場合は、制御対象は機械1313とモータのロータがバネ・ダンパで結合された2慣性系とみなすことができ、制御対象は1組の共振・反共振特性を含む周波数特性を有するものとなる。
【0099】
また、機械1313の慣性数が2で各慣性はバネ・ダンパで結合され、その一方がモータのロータに対して弾性結合されている場合は、制御対象は各慣性がバネ・ダンパで結合された3慣性系とみなすことができ、2組の共振・反共振特性を含む周波数特性を有するものとなる。
【0100】
機械1313は剛性が低く、数Hz~100Hz程度の低域で共振・反共振特性を有するものとする。
【0101】
まず速度制御系内制振制御器15を含まない状態の図11を考える。位置制御器の制御ゲインを高め、位置指令からモータ137のモータ軸位置応答までを高応答に制御し、機械1313の共振・反共振特性起因の振動を抑制する設定とすると、機械1313の剛性が低いため、機械1313の端部は振動的になる。
【0102】
他方、図12のように、速度制御系内制振制御器15を含む場合は実施例1で説明したように機械端の制振効果を発揮でき、かつ制振制御特有の応答遅れを改善できる。
【0103】
図13は、図12に示したACサーボモータ制御系の制振制御の効果を説明する図である。図12の構成は、図13に示すように、十分な制振効果と共に、応答遅れを改善できる。
【0104】
図13の上段および下段ともに、縦軸はMech.angle(機械端の位置応答)であり、横軸はTimes(時間)である。機械端の位置応答は、モータが回転することで、モータに接続された機械の端部である機械端が移動した位置を示し、モータの回転角(rad)に相当する。
【0105】
図13の下段の図を拡大したのが図13の上段の図である。図13の下段に示すように、「制振制御なし」1402、「制振制御 有、位相調整 無」1403に比べて、本実施例の実線で示した「制振制御 有、位相調整 有」では、「位置指令」1401に対する応答性能が高いことがわかる。
【0106】
したがって本実施例によればセミクローズド構成のACサーボモータ制御系において、上位系制御装置が位置制御器を内包し、速度制御系を担うモータサーボ制御装置内で制振制御を実現する手段を備え、かつ制振制御特有の応答遅れを簡単な処理にて改善すること手段を備えたモータ制御装置の提供が可能である。
【0107】
本実施例では、実施例1の速度制御系内制振制御器15を、ACサーボモータのカスケード位置FB制御系1100へ適用した場合を例に説明したが、実施例2の速度制御系内制振制御器71をACサーボモータのカスケード位置FB制御系1100へ適用してもよい。
【0108】
なお、ACサーボモータ制御以外にも、DCモータ制御においても速度・位置制御器によるカスケード制御構成となるので、本実施例によれば速度制御系内制振制御器15を速度制御器の前段に介在させることで、速度制御系内で機械端の制振を実現できる。
【符号の説明】
【0109】
1…位相調整器、9…位置指令推定器、10…並列型制振制御器、11…振動励起成分抽出器、14…速度指令、15…速度制御系内制振制御器、18…実速度指令、21…位置・速度算出器、23…モータ軸の位置応答、24…位置指令、72…FF制御器、136…インバータ、137…ACサーボモータ、138…電流検出器、139…エンコーダ、201…上位系制御装置、301…サーボモータ制御装置、1313…制御対象の機械
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13