(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056304
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】レーザーハンダ付け装置
(51)【国際特許分類】
B23K 1/005 20060101AFI20230412BHJP
【FI】
B23K1/005 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165584
(22)【出願日】2021-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】390014834
【氏名又は名称】株式会社ジャパンユニックス
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【弁理士】
【氏名又は名称】林 直生樹
(74)【代理人】
【識別番号】100177769
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100188743
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】山口 真哉
(72)【発明者】
【氏名】酒川 友一
(57)【要約】
【課題】はんだを照射中心に沿って供給することができるレーザーはんだ付け装置を提供する。
【解決手段】照射ヘッド1が、照射中心Oを取り囲むように配置された複数の光路3a,3b,3c,3dと、前記照射中心Oに配置されたはんだ供給ノズル4とを有し、前記複数の光路は、はんだ付けポイント2にレーザー光Lを照射するための照射用光路3aと、前記はんだ付けポイント2を撮像するための撮像用光路3bと、前記はんだ付けポイント2に照明光Lcを照射するための照明用光路3cと、前記はんだ付けポイント2の温度を測定するための測定用光路3dとを含み、前記照射用光路3aのレーザー光Lは、前記はんだ供給ノズル4から供給されるはんだ8に当たらない角度を保って前記はんだ付けポイント2に照射される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を照射するための照射ヘッドを有し、
前記照射ヘッドは、該照射ヘッドの中心である照射中心を取り囲むように配置された複数の光路と、前記照射中心又は該照射中心の近傍に配置されたはんだ供給ノズルとを有し、
前記複数の光路は、はんだ付けポイントにレーザー光を照射するための少なくとも1つの照射用光路と、前記はんだ付けポイントを撮像するための撮像用光路と、前記はんだ付けポイントに照明光を照射するための照明用光路と、前記はんだ付けポイントの温度を測定するための測定用光路とを含み、
前記照射用光路は、レーザー光の出力を制御可能な半導体レーザー素子と、該半導体レーザー素子に接続された光ファイバーと、該光ファイバーから出射されるレーザー光を平行光にする平行レンズと、該平行レンズから出射されたレーザー光を集光する集光レンズとを有し、
前記照射用光路のレーザー光は、前記照射中心に対し、前記はんだ供給ノズルからはんだ付けポイントに供給されるはんだに当たらない角度を保って前記はんだ付けポイントに照射される、
ことを特徴とするレーザーハンダ付け装置。
【請求項2】
前記照射用光路は複数あり、該複数の照射用光路のレーザー光は、前記照射中心に対し、前記はんだ供給ノズルから供給されるはんだに当たらない角度を保った状態で、前記はんだ付けポイントに前記照射中心を取り囲むように照射される、
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザーハンダ付け装置。
【請求項3】
前記はんだ付けポイントに不活性ガスを供給するための第1ガス流路を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザーハンダ付け装置。
【請求項4】
前記第1ガス流路は、前記集光レンズから出射されるレーザー光の周りを円錐状に取り囲み、先端に、不活性ガスを前記はんだ付けポイントを取り囲むように噴射するリング状の噴射口を有することを特徴とする請求項3に記載のレーザーハンダ付け装置。
【請求項5】
前記照射ヘッドの先端に、内筒及び外筒からなる全体として円錐状をなす二重構造の光路カバーが取り付けられ、該光路カバーは、前記複数の光路の周りを円錐状に取り囲み、前記内筒と外筒との間に前記第1ガス流路が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のレーザーハンダ付け装置。
【請求項6】
前記はんだ付けポイントに不活性ガスを供給するための第2ガス流路を有し、
前記第2ガス流路は、前記はんだ付けノズルを取り囲む二重円筒状をした流路筒の内筒と外筒との間に形成されていることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載のレーザーハンダ付け装置。
【請求項7】
前記はんだ付けポイントに不活性ガスを供給するためのガス流路と、はんだ付け時に発生するヒュームを吸引するための吸引流路とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザーハンダ付け装置。
【請求項8】
前記照射ヘッドの先端に、内筒及び外筒からなる全体として円錐状をなす二重構造の光路カバーが取り付けられ、該光路カバーは、前記複数の光路の周りを円錐状に取り囲み、前記内筒と外筒との間に前記吸引流路が形成されると共に、前記光路カバーの先端に、前記吸引流路に通じるリング状の吸引口が形成され、前記光路カバーの内部に前記ガス流路が形成されていることを特徴とする請求項7に記載のレーザーハンダ付け装置。
【請求項9】
前記ガス流路は、前記はんだ付けノズルを取り囲む二重円筒状をした流路筒の内筒と外筒との間に形成された内側流路と、前記光路カバーの内周と前記流路筒の外周との間に形成された外側流路とを有することを特徴とする請求項7又は8に記載のレーザーハンダ付け装置。
【請求項10】
前記撮像用光路は、CCDカメラと、該CCDカメラとはんだ付けポイントとの間に介在する平行レンズ及び集光レンズとを有し、該平行レンズ及び集光レンズを通してはんだ付けポイントの像を前記CCDカメラで撮像し、
前記照明用光路は、光源と、該光源とはんだ付けポイントとの間に介在する平行レンズ及び集光レンズとを有し、前記光源からの照明光を、前記平行レンズ及び集光レンズを通して前記はんだ付けポイントに照射し、
前記測定用光路は、放射温度計と、該放射温度計とはんだ付けポイントとの間に介在する平行レンズ及び集光レンズとを有し、前記はんだ付けポイントから放射される赤外光を前記集光レンズ及び平行レンズを通して前記放射温度計で受光することにより、前記はんだ付けポイントの温度を測定する、
ことを特徴とする請求項1から9の何れかに記載のレーザーハンダ付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光をはんだ付けポイントに照射してハンダ付けを行うレーザーハンダ付け装置に関するものであり、更に詳しくは、照射ヘッドの中心(照射中心)又はその近傍に配置したはんだ供給ノズルからはんだをはんだ付けポイントに供給してはんだ付けを行うレーザーハンダ付け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された従来のレーザーはんだ付け装置は、レーザー光を照射する照射ヘッドと、線状はんだを供給するはんだ供給ノズルとを有していて、該照射ヘッドからレーザー光を、該照射ヘッドの中心である照射中心に沿ってはんだ付けポイントに照射し、はんだ供給ノズルから該はんだ付けポイントに線状はんだを供給してはんだ付けを行うように構成されている。前記はんだ供給ノズルは、前記照射ヘッドの側面に取り付けられ、該はんだ供給ノズルから線状はんだが、前記照射ヘッドから出射されるレーザー光を横切る形ではんだ付けポイントに供給されるようになっている。
【0003】
ところが、前記はんだ付けポイントは、通常、基板に形成された環状のランドと、該ランドの内部に挿入された電子部品のリードとの接合部分であるが、全てのはんだ付けポイントが、常にはんだを供給し易い場所にあるとは限らず、電子部品の種類や形状あるいは大きさ等によっては、高低様々な場所や入り組んだ場所、あるいは基板に搭載された他の電子部品の陰等に配置されていることもある。このため、はんだ付け時に、はんだポイントの状況に合わせて、はんだの供給方向や供給角度等を調整したり設定したりする必要があり、その作業は非常に細かく面倒なものであった。
【0004】
このような問題は、はんだ供給ノズルを照射ヘッドの照射中心に配置することにより、はんだを前記照射中心からはんだ付けポイントに供給するようにすれば解消することができるが、従来の照射ヘッドは、その照射中心に光路を配置し、この光路に沿ってレーザー光を照射するように構成されているため、はんだ供給ノズルを照射中心に配置することができなかった。
【0005】
一方、特許文献2には、母材の表面改質加工や溶接加工等を行うレーザー加工装置が開示されている。このレーザー加工装置は、複数のレーザー光の光路を加工ヘッド部の軸線(照射中心)の周りに配置すると共に、溶融材料を供給するための供給ノズルを前記軸線上即ち照射中心に配置したもので、溶融材料を前記加工ヘッド部の照射中心に沿って供給することができるものである。
【0006】
しかし、このレーザー加工装置の構成をそのままはんだ付け装置に適用することはできない。その理由は、照射中心の周りに配置された複数のレーザー光の光路は、溶融材料に向けられていて、供給ノズルから供給された溶融材料を前記レーザー光により溶融させて母材に供給するものであるため、その構成をはんだ付け装置に適用し、線状はんだをレーザー光で溶融させるようにすると、溶融した線状はんだが球状になり、該線状はんだの先端に付着したままはんだ付けポイントに供給されない状態になり易く、仮に供給されたとしても、溶融したはんだが、加熱されていないはんだ付けポイントに供給されることになるため、供給された溶融はんだが低温のはんだ付けポイントに接触して急激に冷やされることにより、はんだ付けポイントに十分拡散しないまま固化し、不良はんだとなって正しいはんだ付けが行われないからである。
【0007】
また、前記特許文献1及び特許文献2に記載の装置においては、例えば、はんだ付けポイントや加工部位等を観察する必要がある場合、つまり、はんだ付けポイントを撮像したり、はんだ付けポイントの温度を測定したりする必要がある場合などには、観察のための光路系、即ち、撮像用の光路系や温度測定用の光路系等を加工ヘッド部に外付けしなければならず、加工ヘッドの構造の複雑化及び大型化が避けられなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015-56442号公報
【特許文献2】特許第6757877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の技術的課題は、はんだを照射ヘッドの中心(照射中心)からはんだ付けポイントに供給することができるようにすると共に、前記照射ヘッドに、レーザー光を照射するための照射用光路の他に、はんだ付けポイントを観察するための光路、即ち、撮像用光路や照明用光路あるいは温度測定用光路等をまとめて組み込むことにより、前記照射ヘッドの構造の簡略化と小型化とを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明のレーザーハンダ付け装置は、レーザー光を照射するための照射ヘッドを有し、前記照射ヘッドは、該照射ヘッドの中心即ち照射中心を取り囲むように配置された複数の光路と、前記照射中心又は該照射中心の近傍に配置されたはんだ供給ノズルとを有し、前記複数の光路は、はんだ付けポイントにレーザー光を照射するための少なくとも1つの照射用光路と、前記はんだ付けポイントを撮像するための撮像用光路と、前記はんだ付けポイントに照明光を照射するための照明用光路と、前記はんだ付けポイントの温度を測定するための測定用光路とを含み、前記照射用光路は、レーザー光の出力を制御可能な半導体レーザー素子と、該半導体レーザー素子に接続された光ファイバーと、該光ファイバーから出射されるレーザー光を平行光にする平行レンズと、該平行レンズから出射されたレーザー光を集光する集光レンズとを有し、前記照射用光路のレーザー光は、前記照射中心に対し、前記はんだ供給ノズルからはんだ付けポイントに供給されるはんだに当たらない角度を保って前記はんだ付けポイントに照射されることを特徴とするものである。
【0011】
本発明において、前記照射用光路は複数あり、該複数の照射用光路のレーザー光は、前記照射中心に対し、前記はんだ供給ノズルから供給されるはんだに当たらない角度を保った状態で、前記はんだ付けポイントに前記照射中心を取り囲むように照射されるものであっても良い。
【0012】
また、本発明において、レーザーハンダ付け装置は、前記はんだ付けポイントに不活性ガスを供給するための第1ガス流路を有することが好ましい。
この場合、前記第1ガス流路は、前記集光レンズから出射されるレーザー光の周りを円錐状に取り囲み、その先端に、不活性ガスを前記はんだ付けポイントを取り囲むように噴射するリング状の噴射口を有していることが望ましい。
また、前記照射ヘッドの先端に、内筒及び外筒からなる全体として円錐状をなす二重構造の光路カバーが取り付けられ、該光路カバーは、前記複数の光路の周りを円錐状に取り囲み、前記内筒と外筒との間に前記第1ガス流路が形成されていても良い。
【0013】
本発明において、前記照射ヘッドは、前記はんだ付けポイントに不活性ガスを供給するための第2ガス流路を有し、前記第2ガス流路は、前記はんだ付けノズルを取り囲む二重円筒状をした流路筒の内筒と外筒との間に形成されていることが好ましい。
【0014】
また、本発明において、前記照射ヘッドは、前記はんだ付けポイントに不活性ガスを供給するためのガス流路と、はんだ付け時に発生するヒュームを吸引するための吸引流路とを有していても良い。
この場合、前記照射ヘッドの先端に、内筒及び外筒からなる全体として円錐状をなす二重構造の光路カバーが取り付けられ、該光路カバーは、前記複数の光路の周りを円錐状に取り囲み、前記内筒と外筒との間に前記吸引流路が形成されると共に、前記光路カバーの先端に、前記吸引流路に通じるリング状の吸引口が形成され、前記光路カバーの内部に前記ガス流路が形成されていることが好ましい。
また、前記ガス流路は、前記はんだ付けノズルを取り囲む二重円筒状をした流路筒の内筒と外筒との間に形成された内側流路と、前記光路カバーの内周と前記流路筒の外周との間に形成された外側流路とを有することが好ましい。
【0015】
本発明において、前記撮像用光路は、CCDカメラと、該CCDカメラとはんだ付けポイントとの間に介在する平行レンズ及び集光レンズとを有し、該平行レンズ及び集光レンズを通してはんだ付けポイントの像を前記CCDカメラで撮像し、前記照明用光路は、光源と、該光源とはんだ付けポイントとの間に介在する平行レンズ及び集光レンズとを有し、前記光源からの照明光を、前記平行レンズ及び集光レンズを通して前記はんだ付けポイントに照射し、前記測定用光路は、放射温度計と、該放射温度計とはんだ付けポイントとの間に介在する平行レンズ及び集光レンズとを有し、前記はんだ付けポイントから放射される赤外光を前記集光レンズ及び平行レンズを通して前記放射温度計で受光することにより、前記はんだ付けポイントの温度を測定するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、はんだを、照射ヘッドの照射中心又はその近傍に配置したはんだ供給ノズルからはんだ付けポイントに供給することができるので、従来のはんだ付け装置のようにはんだポイントの状況に合わせてはんだの供給方向や供給角度等を調整したり再設定したりする必要がなく、はんだをはんだ付けポイントに確実且つ正確に供給することができる。また、照射用光路のレーザー光は、前記はんだ供給ノズルからはんだ付けポイントに供給されるはんだに当たらないので、前記はんだがはんだ付けポイントに供給される前にレーザー光で溶融されることがない。更に、前記照射ヘッドに、レーザー光を照射するための照射用光路と、はんだ付けポイントを観察するための各光路、即ち撮像用光路と、照明用光路及び温度測定用光路とをまとめて組み込んだので、照射ヘッドの構造の簡略化と小形化とを実現することができた。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係るレーザーはんだ付け装置の第1実施形態における照射ヘッドの斜視図である。
【
図6】レーザー光が照射されたはんだ付けポイントの平面図である。
【
図7】はんだ付け時のレーザー光と線状はんだとの位置関係を示す要部拡大断面図である。
【
図8】はんだ付け後のはんだ付けポイントの断面図である。
【
図11】
図2のXI-XI線に沿った断面図である。
【
図12】第2ガス流路の例を示す要部断面図である。
【
図13】本発明に係るレーザーはんだ付け装置の第2実施形態における照射ヘッドの斜視図である。
【
図15】はんだ付けポイントの異なる構造例を示す側面図である。
【
図16】レーザーはんだ付け装置の第3実施形態における照射ヘッドの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るレーザーはんだ付け装置を図面に基づいて詳細に説明する。
図1及び
図2に示すように、前記レーザーはんだ付け装置は、レーザー光をはんだ付けポイント2に照射するための照射ヘッド1を有している。この照射ヘッド1は、該照射ヘッド1の中心である照射中心Oの周りに等角度間隔で配置された複数の光路3a,3b,3c,3dと、前記照射中心Oに配置されるか、又は、該照射中心Oの近傍に配置されたはんだ供給ノズル4と、前記はんだ付けポイント2に不活性ガスを供給するための第1ガス流路5(
図5参照)とを有している。図示した例では、9つの光路3a,3b,3c,3dが照射中心Oの周りに40度間隔で配置されている。また、前記はんだ供給ノズル4は、線状はんだを供給するためのはんだ供給装置6に接続され、前記第1ガス流路5は、窒素ガスまたはアルゴンガス等の不活性ガスを供給するためのガス供給装置7に接続されている。そして、前記はんだ供給装置6は制御装置14に接続され、この制御装置14ではんだ供給装置6が制御されることにより、はんだの供給及び停止の他、はんだの送り速度や送り量等が制御される。同様に前記ガス供給装置7も制御装置14に接続され、この制御装置14で前記ガス供給装置7が制御されることにより、不活性ガスの供給及び停止の他、該不活性ガスの流量や流速等が調整される。
【0019】
前記はんだ付けポイント2は、
図3及び
図4に示すように、プリント基板10に形成された環状のランド11と、電子部品13から延出するリード12とからなっていて、該リード12が、前記ランド11のスルーホール11a内に、プリント基板10の下面側から上向きに挿入されている。前記ランド11は、銅製の本体に錫メッキを施すことにより形成され、前記リード12は、銅製の本体に金メッキを施すことにより形成されている。
【0020】
前記複数の光路3a,3b,3c,3dは、
図2に示すように、はんだ付けポイント2にレーザー光Lを照射するための複数(図示の例では6つ)の照射用光路3aと、はんだ付けポイント2を観察するための複数(図示の例では3つ)の観察用光路3b,3c,3dとを含んでいる。
【0021】
前記照射用光路3aは、
図5から明らかなように、制御装置14によりレーザー光の出力を制御可能な半導体レーザー素子15と、該半導体レーザー素子15に接続された光ファイバー16と、該光ファイバー16から先広がり状に出光されるレーザー光Lを平行光にする平行レンズ17aと、該平行レンズ17aで平行光にされたレーザー光Lを集光する集光レンズ18とを有している。なお、前記複数の照射用光路3aの半導体レーザー素子15には、レーザー光の波長が互いに異なるものを使用することができる。
【0022】
前記複数の照射用光路3aの平行レンズ17aは、前記照射ヘッド1の内部に、前記照射中心Oと直交する1つの平面S内において、該照射中心Oを取り囲む円周に沿って配設されている。一方、前記集光レンズ18は、中心孔18aを有するリング形をした1つのレンズであって、前記複数の照射用光路3aの複数の平行レンズ17aと対面する大径のレンズであり、この1つの集光レンズ18を、前記の複数の光路3a,3b,3c,3dが共有しており、この集光レンズ18の中心孔18aの内部を前記はんだ供給ノズル4が貫通している。そして、はんだ付け時に、
図6に示すように、前記複数の照射用光路3aのレーザー光Lが、前記はんだ付けポイント2に、前記照射中心Oを取り囲むと共に、
図5及び
図6に示すように、該照射中心Oに対し、前記はんだ供給ノズル4から供給される線状はんだ8に当たらない角度を保って照射される。
【0023】
図6に示した例では、レーザー光Lがランド11に照射されていて、リード12に直接照射されていないが、前記ランド11で反射されたレーザー光Lがリード12に間接的に照射されるため、該リード12も加熱される。しかし、前記平行レンズ17aの焦点を変えたり、前記集光レンズ18からはんだ付けポイント2までの距離を調整するなどしてレーザー光Lのスポット径を大きくすることにより、レーザー光Lを、前記ランド11とリード12の両方に跨るようにして直接照射することもできる。
【0024】
前記複数の照射用光路3aに接続された複数の半導体レーザー素子15は、前記制御装置14により、前記ランド11やリード12の形状等に応じてレーザー光Lの出力を個々に制御することができ、その制御により、はんだ付けポイント2に照射される複数のレーザー光Lの強度分布を任意に変更することができる。
【0025】
そして、前記レーザー光Lの照射ではんだ付けポイント2が所定の温度にまで加熱されると、はんだ供給装置6から送られる線状はんだ8が、前記はんだ供給ノズル4からはんだ付けポイント2に供給されてはんだ付けが行われる。このとき前記線状はんだ8は、
図7に示すようにランド11に向けて供給され、該ランド11に接触することにより溶融してはんだ付けポイント2全体に拡散する。しかし、前記線状はんだ8は、リード12の側面に接触するように供給することもできる。この場合、前記はんだ供給ノズル4を、照射中心Oの近傍に該照射中心Oに対して若干傾斜した状態に配置することにより、前記線状はんだ8を、前記リード12の側面下端部寄りの位置に向けて斜め下向きに供給することができる。
【0026】
また、このとき前記複数の照射用光路3aのレーザー光Lは、
図5及び
図7に示すように、前記照射中心Oに対し、はんだ供給ノズル4から供給される線状はんだ8に当たらない角度で前記ランド11に照射されるため、前記線状はんだ8は、はんだ付けポイント2に接触する前にレーザー光Lで溶融されることがない。このため、線状はんだ8の溶融した部分が球状になり、それが該線状はんだ8の先端に付着したままになることではんだの供給に支障を来すというようなことがない。
【0027】
また、前記はんだ付け時に、前記ガス供給装置7からの不活性ガスが、前記第1ガス流路5の先端の噴射口5aから、前記照射用光路3aのレーザー光Lの周りを取り囲むと共に、前記はんだ付けポイント2の周りを取り囲むように噴射される。
【0028】
前記第1ガス流路5は、
図5から明らかなように、前記照射ヘッド1の先端に取り付けられた円錐状の光路カバー20の内部に形成されている。該光路カバー20は、円錐状をした内筒20aと円錐状をした外筒20bとからなる二重構造をしていて、前記内筒20aと外筒20bとの間に前記第1ガス流路5が形成され、該光路カバー20の先端に、不活性ガスを前記はんだ付けポイント2の周りを取り囲むように噴射するためのリング状の前記噴射口5aが形成されており、該光路カバー20の基端部には、前記第1ガス流路5をガス供給装置7に接続するための接続部21が形成されている。従って、前記第1ガス流路5は、前記集光レンズ18から出射される複数のレーザー光Lの周りを円錐状に取り囲み、その先端に、不活性ガスを前記はんだ付けポイント2の周りを取り囲むように噴射するリング状の前記噴射口5aを有するものである。前記第1ガス流路5の流路幅(内筒20aと外筒20bとの間隔)は、前記光路カバー20の基端側から先端側に向けて次第に狭くなっている。
【0029】
そして、前記第1ガス流路5からの不活性ガスの噴射により、前記はんだ付けポイント2は不活性ガスの雰囲気に包まれる。このため、前記ランド11やリード12及びはんだ8の酸化が防止され、溶融したはんだの濡れ広がりが円滑に進行するだけでなく、大気が遮断されることにより該大気中の異物がはんだに付着するのが防止される。また、前記光路カバー20と、該光路カバー20から噴射される不活性ガスとが、前記はんだ付けポイント2を取り囲むことによって該はんだ付けポイント2が外部から遮断されるため、線状はんだ8の溶融時に発生するはんだボールの周囲への飛散が防止される。この結果、高品質のはんだ付けが行われることになる。
図8は、はんだ付け後のはんだ付けポイント2の状態を示している。前記不活性ガスは、その噴射によってはんだ付けポイントが冷却されないように、流路の適宜位置に設けたヒーターによって適度の温度にまで加熱、昇温させた状態で噴射することが望ましい。
このようにして1つのはんだ付けポイント2のはんだ付けが終了すると、制御装置14によって照射ヘッド1とプリント基板10とが相対的に変移させられることにより、全てのはんだ付けポイント2が次々にはんだ付けされる。
【0030】
ここで、前記3つの観察用光路3b,3c,3dのうち1つは、前記はんだ付けポイント2を撮像するための撮像用光路3b、他の1つは、前記はんだ付けポイント2に照明光を照射するための照明用光路3c、残りの1つは、前記はんだ付けポイント2の温度を測定するための測定用光路3dである。
【0031】
前記撮像用光路3bは、
図9に示すように、CCDカメラ23と、該CCDカメラ23に接続された導光ファイバー24と、該導光ファイバー24とはんだ付けポイント2との間に介在する平行レンズ17b及び集光レンズ18とを有し、該平行レンズ17b及び集光レンズ18を通してはんだ付けポイント2の像を前記CCDカメラ23で撮像する。CCDカメラ23で撮像されたはんだ付けポイント2の画像は、不図示のモニターに表示される。そして、前記CCDカメラによる画像は、例えばはんだ付けに先立って行われるティーチング作業時に、はんだ付けポイント2に対するレーザー光の照射位置やはんだの供給位置等を設定する場合などに利用される。
【0032】
また、前記照明用光路3cは、
図10に示すように、光源25と、該光源25とはんだ付けポイント2との間に介在する平行レンズ17c及び集光レンズ18とを有し、前記ティーチング作業時等に、前記光源25からの照明光Lcを、前記平行レンズ17c及び集光レンズ18を通して前記はんだ付けポイント2に照射する。
【0033】
さらに、前記測定用光路3dは、
図11に示すように、赤外線放射温度計26と、該放射温度計26とはんだ付けポイント2との間に介在する平行レンズ17d及び集光レンズ18とを有し、前記はんだ付けポイント2から放射される赤外光Ldを前記集光レンズ18及び平行レンズ17dを通して前記放射温度計26で受光することにより、前記はんだ付けポイント2の温度を測定し、測定した温度に基づいて、前記制御装置14により、前記半導体レーザー素子15の出力やレーザー光Lの照射時間等の制御や、はんだ付け工程全般にわたる制御が行われる。
【0034】
前記3つの観察用光路3b,3c,3dは、
図2に示すように、前記照射用光路3a2つ置きに1つの観察用光路3b又は3c又は3dが配置されている。換言すれば、照射用光路3aと照射用光路3aとの間に観察用光路3b,3c,3dを1つずつ配置することにより、該観察用光路3b,3c,3d同士が直接隣り合わないようにして、前記3つの観察用光路3b,3c,3dが、前記照射中心Oの周りに等角度(筋の例では120度)間隔で配置されている。これは、前記観察用光路3b,3c,3d同士が直接隣り合った場合に、その部分で隣接する照射用光路3a,3a間の間隔が大きく広がることにより、はんだ付けポイント2に対するレーザー光Lの照射むらが生じるのを防止するためである。しかし、前記3つの観察用光路3b,3c,3dは、それらを複数の光路のどの位置に配置するかは任意であり、必ずしも
図1及び
図2のような順番で配置する必要はない。
【0035】
前記3つの観察用光路3b,3c,3dの平行レンズ17b,17c,17dは、前記6つの照射用光路3aの平行レンズ17aと同じ平面S内において同じ円周上に位置しており、また該観察用光路3b,3c,3dの集光レンズ18は、前記照射用光路3aの集光レンズ18と共通である。しかし、前記集光レンズ18は、各光路3a,3b,3c,3d毎に独立するものであっても良い。その場合、独立する複数の集光レンズ18は、前記はんだ供給ノズル4を照射中心Oに沿って配置することができるように配置される必要がある。
【0036】
このように、前記照射用光路3aと前記観察用光路3b,3c,3dとを、前記照射ヘッド1に前述した態様で組み込むことにより、これらの観察用光路3b,3c,3dを前記照射ヘッド1に外付けした場合に比べ、前記照射ヘッド1即ちはんだ付け装置を、小形化かつ軽量化することが可能になる。
【0037】
また、前記照射ヘッド1には、前記第1ガス流路5の他に、第2ガス流路27を設けることができる。この2ガス流路27は、
図12に概略的に示すように、前記はんだ供給ノズル4を取り囲むように配設された流路筒28の内部に形成される。この流路筒28は、内筒28a及び外筒28bからなる二重円筒状をしていて、前記内筒28aと外筒28bとの間に前記第2ガス流路27が形成され、該流路筒28の先端(下端)に、不活性ガスを噴射するためのリング状の噴射口27aがはんだ供給ノズル4を取り囲むように形成されている。しかし、この第2ガス流路27は、前記第1ガス流路5があれば必ずしも必要ではない。
【0038】
前記第1実施形態においては、前記照射用光路3aが6つ設けられているが、該照射用光路3aの数は6つより多くても少なくても良く、1つであっても構わない。照射用光路3aが1つの場合には、
図13及び
図14に示す第2実施形態のように、照射ヘッド1に4つの光路、即ち、前記照射用光路3aと、撮像用光路3bと、照明用光路3cと、測定用光路3dとが、照射中心Oの周りに90度間隔で配置される。しかし、前記4つの光路3a,3b,3c,3dは、必ずしも正確に等間隔で配置されている必要はなく、相互間の角度が若干異なっていても良い。また、前記4つの光路3a,3b,3c,3dの位置関係も任意である。
【0039】
また、このように照射用光路3aが1つの場合には、はんだ付けポイント2として、1つのレーザー光Lではんだ付けポイント2全体を短時間で均等に加熱することができるように、
図3及び
図4に示すような環状のランド11とリード12とからなるものよりも、例えば
図15に示すように、プリント基板10に形成された平らな線状の端子30と、電子部品の平らな線状又はピン状の端子31とからなるものであることが好ましい。
【0040】
図16は、本発明の第3実施形態の要部を示すもので、この第3実施形態のはんだ付け装置の照射ヘッド1Aは、不活性ガスを噴射するためのガス流路34,35と、はんだが溶融した際に発生するヒュームを吸引するための吸引流路36とを有している。
【0041】
このため、前記照射ヘッド1Aの先端には、内筒32a及び外筒32bからなる全体として円錐状をした二重構造の光路カバー32が取り付けられ、該光路カバー32の前記内筒32aと外筒32bとの間に、前記吸引流路36が形成されると共に、前記光路カバー32の先端に、前記吸引流路36に通じるリング状の吸引口36aが形成されている。
【0042】
また、前記はんだ供給ノズル4の外周には、内筒33a及び外筒33bからなる二重円筒状をした流路筒33が取り付けられ、該流路筒33の前記内筒33aと外筒33bとの間に、不活性ガスを噴射するための内側ガス流路34が形成されると共に、前記流路筒33の外周と前記光路カバー32の内周との間に、不活性ガスを噴射するための外側ガス流路35が形成され、前記内側ガス流路34は前記ガス供給装置7に接続され、前記外側ガス流路35も、前記照射ヘッド1の内部に形成された連通路35aを通じて前記ガス供給装置7に接続されている。前記内側ガス流路34及び外側ガス流路35は、前記光路カバー32で覆われているため、該光路カバー32の内部に形成されているということができる。
【0043】
前記第3実施形態において、はんだ付け時に、前記内側ガス流路34及び外側ガス流路35を通じて前記ガス供給装置7からの不活性ガスが、
図16に矢印aで示すように、はんだ付けポイント2に向けて供給される。一方、前記はんだ付け時に発生するヒュームを含むエアは、
図16に矢印bで示すように、前記吸引口36aから吸引流路36内に吸引され、前記吸引装置37で濾過されることにより浄化されたあと、大気に排出される。
【0044】
前記ガス供給装置7及び吸引装置37は、前記制御装置14に接続されており、該制御装置14による前記ガス供給装置7及び吸引装置37の制御によって、前記内側ガス流路34及び外側ガス流路35からの不活性ガスの噴射量や噴射速度、及び、前記ヒュームを含むエアの前記吸引流路36への吸引量や吸引速度等が制御される。
なお、前記第3実施形態の前述した構成及び作用以外の構成及び作用は、前記第1実施形態又は第2実施形態の場合と実質的に同じである。
【0045】
なお、前記各実施形態において、前記はんだ供給ノズル4から供給されるはんだは線状はんだ8であるが、必ずしも線状はんだ8でなくても良く、一定の長さに切断されたはんだ片であっても、あるいは、はんだペーストであっても良い。この場合、前記はんだ片又ははんだペーストは、前記はんだ供給ノズル4から落下又は噴出するような状態で前記はんだ付けポイント2に供給される。
【符号の説明】
【0046】
1 照射ヘッド
2 はんだ付けポイント
3a 照射用光路
3b 撮像用光路
3c 照明用光路
3d 測定用光路
4 はんだ供給ノズル
5 第1ガス流路
15 半導体レーザー素子
16 光ファイバー
17a,17b,17c,17d 平行レンズ
18 集光レンズ
20,32 光路カバー
20a,32a 内筒
20b,32b 外筒
23 CCDカメラ
25 光源
26 放射温度計
27 第2ガス流路
27a 噴射口
28 流路筒
28a 内筒
28b 外筒
34 内側ガス流路
35 外側ガス流路
36 吸引流路
36a 吸引口
L レーザー光