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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056342
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】プローブ搬送装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/30 20060101AFI20230412BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
G01R33/30
G01N24/00 510C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165639
(22)【出願日】2021-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 政宣
(72)【発明者】
【氏名】岡田 雅之
(57)【要約】
【課題】静磁場発生器の中心軸に対してプローブの中心軸が一致した状態においてプローブを回転させ得るプローブ搬送装置を提供する。
【解決手段】プローブ14を載置したステージ40が可動部に対して連結される。固定部及び可動部に跨って回転機構56が設けられている。回転機構56は、接触機構50及び回転板54を有する。回転板54は凸状の側面54Aを有する。接触機構50は、側面54Aに接触する一対のローラー72,74を有する。回転機構56により、静磁場発生器の中心軸Cに対してプローブ14の中心軸C1を一致させつつプローブ14を回転させ得る。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NMR測定用のプローブを載せたステージと、
静磁場発生器の中心軸と前記プローブの中心軸を一致させつつ前記ステージを回転させる回転機構と、
を含むことを特徴とするプローブ搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載のプローブ搬送装置において、
前記回転機構は、
前記静磁場発生器の中心軸の周りにおいて一定曲率で湾曲した湾曲面と、
前記湾曲面に接触しながら前記湾曲面に沿って相対運動する接触部材と、
を含む、
ことを特徴とするプローブ搬送装置。
【請求項3】
請求項2記載のプローブ搬送装置において、
前記静磁場発生器に固定された固定部と、
前記ステージを備え、前記固定部に保持される可動部と、
を含み、
前記湾曲面は、前記固定部及び前記可動部の内の一方に設けられ、
前記接触部材は、前記固定部及び前記可動部の内の他方に設けられた、
ことを特徴とするプローブ搬送装置。
【請求項4】
請求項3記載のプローブ搬送装置において、
前記湾曲面は、前記可動部に設けられた凸面であり、
前記接触部材は、前記固定部に設けられ前記凸面に接触する複数のローラーであり、
前記可動部が前記静磁場発生器の中心軸の周りで回転する、
ことを特徴とするプローブ搬送装置。
【請求項5】
請求項4記載のプローブ搬送装置において、
前記可動部は前記凸面を有する回転板を有し、
前記回転板の下面には複数のキャスタが設けられた、
ことを特徴とするプローブ搬送装置。
【請求項6】
請求項3記載のプローブ搬送装置において、
前記固定部は、前記静磁場発生器の脚に取り付けられる取付部材を含む、
ことを特徴とするプローブ搬送装置。
【請求項7】
請求項1記載のプローブ搬送装置において、
前記静磁場発生器に取り付けられた本体と、
前記本体に対して前記ステージを着脱可能に連結させる連結機構と、
を含むことを特徴とするプローブ搬送装置。
【請求項8】
請求項7記載のプローブ搬送装置において、
前記本体は、前記ステージを垂直方向に搬送する垂直搬送機構を含み、
前記ステージの上昇後に前記回転機構による前記ステージを回転させ得る、
ことを特徴とするプローブ搬送装置。
【請求項9】
請求項1記載のプローブ搬送装置において、
前記プローブは冷却型プローブであり、
前記プローブは、
前記静磁場発生器の中に挿入される挿入部と、
前記静磁場発生器の外部に配置され、前記挿入部に連結された基部と、
前記基部から水平方向に突出した1又は複数の構造物と、
を含むことを特徴とするプローブ搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブ搬送装置に関し、特に、静磁場発生器へのプローブの取り付けを支援するプローブ搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
NMR測定システムは、試料中の観測核にNMR(核磁気共鳴:Nuclear Magnetic Resonance)を生じさせ、そのNMRを観測するシステムである。NMR測定システムは、分光計、静磁場発生器、及び、NMR測定用プローブ(以下、単にプローブという。)を有する。プローブは、検出回路を備えた挿入部、及び、挿入部に連結された基部を有する。
【0003】
プローブの一種として冷却型プローブが知られている。冷却型プローブ内に冷媒が流され、冷媒によって検出回路やプリアンプ等が冷却される。冷却型プローブにおいては、基部に対して冷媒供給用の配管、冷媒排出用の配管、プローブ内部を真空にするための接続口、等が設けられている。それらの部材は、通常、基部から水平方向へ突出している。
【0004】
静磁場発生器の本体の下側には、複数の脚や複数の構造物が設けられている。それらに対して挿入部が衝突しないようにプローブが静磁場発生器の下部空間に差し込まれ、続いて、プローブが上方へ持ち上げられ、これにより挿入部が静磁場発生器内に挿入される。その挿入後、基部が静磁場発生器に対して取り付けられる。
【0005】
プローブを取り付ける作業をすべて手作業で行うと、作業者に負担が生じる。特に、冷却型プローブはかなり重く、しかも基部から複数の部材が突出しているので、冷却型プローブを静磁場発生器に取り付ける際には、作業者にかなり大きな負担が生じる。プローブの取り付け作業を支援するためにプローブ搬送装置が提供されている。プローブ搬送装置は、プローブを水平方向及び垂直方向に搬送するものである。
【0006】
一般に、プローブの基部には、水平方向に突出した一対の突出片が設けられている。一対の突出片には、それぞれ、取付穴が形成されている。各取付穴は、大きな円形開口とそれに連なる細長開口とからなる。静磁場発生器の下面に対して基部を取り付ける際に、まず、一対の円形開口に対して、静磁場発生器に取り付けられている又は取り付けられる一対のボルトが差し込まれた上で、静磁場発生器の中心軸周りにおいてプローブが回転され、一対の細長開口の端部に一対のボルトが送り込まれる。その状態において各ボルトが締め付けられる。これにより基部が静磁場発生器に固定される。
【0007】
以上のように、プローブを固定する際にプローブを回転させる必要がある。また、プローブの取り付け過程において、基部から伸びる複数の部材が構造物に衝突しないようにするためプローブの回転が必要になることもある。それら以外の理由からプローブの回転が必要になることもある。このように、プローブの設置時には、様々な理由から、静磁場発生器の中心軸周りにおいてプローブを回転させることが必要となる。
【0008】
特許文献1~3には、プローブを静磁場発生器に対して取り付ける際に利用されるプローブ搬送装置が開示されている。しかし、特許文献1~3に開示されたプローブ搬送装置は、静磁場発生器の中心軸に対してプローブの中心軸を合わせる機能やそれらの中心軸を一致させた状態においてプローブを回転させる機能を有していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015-99037号公報
【特許文献2】特開平7-120543号公報
【特許文献3】特開2021-51012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、静磁場発生器に対してプローブを取り付ける作業を支援することにある。あるいは、本発明の目的は、静磁場発生器の中心軸に対してプローブの中心軸が一致した状態においてプローブを回転させ得るプローブ搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るプローブ搬送装置は、NMR測定用のプローブを載せたステージと、静磁場発生器の中心軸と前記プローブの中心軸を一致させつつ前記ステージを回転させる回転機構と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、静磁場発生器に対してプローブを取り付ける作業を支援できる。あるいは、本発明によれば、静磁場発生器の中心軸に対してプローブの中心軸が一致した状態においてプローブを回転させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係るプローブ搬送装置を模式的に示す側面図である。
図2】実施形態に係るプローブ搬送装置を模式的に示す上面図である。
図3】静磁場発生器に対するプローブの回転を示す図である。
図4】プローブ搬送装置の実施例を示す斜視図である。
図5図4に示した実施例の一部を示す拡大斜視図である。
図6】ドッキング前の状態を示す図である。
図7】送り込み前の状態を示す図である。
図8】送り込み後の状態を示す図である。
図9】ドッキング状態を示す図である。
図10】実施形態に係るプローブ搬送装置の使用方法を示すフローチャートである。
図11】プローブ搬送装置の変形例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
(1)実施形態の概要
実施形態に係るプローブ搬送装置は、ステージ及び回転機構を有する。ステージにはNMR測定用のプローブが載せられる。回転機構は、静磁場発生器の中心軸とプローブの中心軸を一致させつつステージを回転させるための機構である。
【0016】
上記構成によれば、プローブ搬送装置に回転機構が設けられているので、静磁場発生器の中心軸とプローブの中心軸を一致させつつステージを回転させることが可能となる。これにより、プローブ取付作業をより安全に且つより簡便に行える。
【0017】
実施形態においては、ステージの上昇前、上昇途中、及び、上昇後の少なくとも1つのタイミングにおいて回転機構を動作させ得る。ステージを回転させても、静磁場発生器の中心軸とプローブの中心軸を一致させた状態を維持できるので、ステージの回転後にステージの水平方向の位置決めを行う必要はなく、あるいは、静磁場発生器に挿入されている挿入部を保護できる。プローブ搬送装置が静磁場発生器、床面等に対して固定されてもよい。プローブ搬送装置は、プローブ取り外し時においても使用され得る。
【0018】
実施形態において、回転機構は、静磁場発生器の中心軸の周りにおいて一定曲率で湾曲した湾曲面と、湾曲面に接触しながら湾曲面に沿って相対運動する接触部材と、を含む。この構成によれば、スムーズな回転動作を得られる。湾曲面は円弧面であり、レール又は軌道手段として機能する。湾曲面を運動させる方式及び接触部材を運動させる方式を選択的に採用し得る。
【0019】
実施形態において、プローブ搬送装置は、静磁場発生器に固定された固定部と、ステージを備え、固定部に保持される可動部と、を含む。湾曲面は、固定部及び可動部の内の一方に設けられ、接触部材は、固定部及び可動部の内の他方に設けられる。プローブ搬送装置を静磁場発生器に固定すれば、静磁場発生器の中心軸とプローブの中心軸を容易に一致させることが可能となる。プローブ搬送装置に対し、固定部の位置や向きを調整する機構を付加してもよい。
【0020】
実施形態において、湾曲面は、可動部に設けられた凸面である。接触部材は、固定部に設けられ凸面に接触する複数のローラーである。可動部が静磁場発生器の中心軸の周りで回転する。凸面は円筒面である。複数のローラーとして、少なくとも2つのローラーが設けられる。複数のローラーを湾曲面に接触させれば、湾曲面の運動時において生じる摩擦抵抗を低減し得る。固定部に湾曲面としての凹面を設け、可動部に複数のローラーを設け、凹面に対して複数のローラーを接触させてもよい。円弧状の溝に沿ってスライダを運動させてもよい。湾曲したレールに沿ってスライダを運動させてもよい。このように、回転機構として多様な構成を採用し得る。いずれの構成を採用する場合においても、少なくとも1つの湾曲面が機能する。
【0021】
実施形態において、可動部は凸面を有する回転板を有する。回転板の下面には複数のキャスタが設けられている。複数のキャスタにより可動部を円滑に運動させ得る。
【0022】
実施形態において、固定部は、静磁場発生器の脚に取り付けられる取付部材を含む。この構成によれば、静磁場発生器とプローブ搬送装置の位置関係を容易に適正化できる。プローブの搬送の完了後、脚から取付部材を取り外してもよいし、脚に対して取付部材を取り付けたままにしておいてもよい。
【0023】
実施形態に係るプローブ搬送装置は、静磁場発生器に取り付けられた本体と、本体に対してステージを着脱可能に連結させる連結機構と、を含む。この構成によれば、ステージを任意の場所に設置した上で、そのステージに対してプローブをセットすることが可能となる。ステージの水平運動を容易化するためにステージの底面に低摩擦部材や複数のキャスタを設けてもよい。
【0024】
実施形態において、本体は、ステージを垂直方向に搬送する垂直搬送機構を含む。回転機構により、ステージの上昇後にステージを回転させ得る。実施形態において、プローブは冷却型プローブである。プローブは、静磁場発生器の中に挿入される挿入部と、静磁場発生器の外部に配置され、挿入部に連結された基部と、基部から水平方向に突出した1又は複数の構造物と、を含む。
【0025】
(2)実施形態の詳細
図1には、実施形態に係るプローブ搬送装置10が模式的に示されている。プローブ搬送装置10は、静磁場発生器12に対してNMR測定用のプローブ14を取り付ける際にその取付作業を支援するための装置である。プローブ搬送装置10は、静磁場発生器12からプローブ14を取り外す際にも用いられる。静磁場発生器12及びプローブ14は、NMR測定システムの一部を構成するものである。なお、図1において、x方向は第1水平方向であり、z方向は垂直方向である。x方向とz方向に直交するy方向が第2水平方向である。
【0026】
静磁場発生器12は、超電導マグネットを収容した本体13、及び、複数の脚24,26,28を有する。各脚24,26,28は支柱である。本体13は垂直貫通孔としてのボア13Aを有する。ボア13Aの中心軸が静磁場発生器12の中心軸Cである。
【0027】
静磁場発生器12にはシムユニット30が配置される。シムユニット30は、静磁場不均一性を改善するために静磁場に対して補正磁場を加える装置である。シムユニット30は、シムコイル30A及びフランジ30Bを有する。シムコイル30Aは、円筒状の形態を有し、それは複数のコイルにより構成される。フランジ30Bは、本体13の下側において水平方向に広がっている鍔状の部材である。シムユニット30は、垂直貫通孔としての空洞を有している。
【0028】
複数の脚24,26,28は、ベース板18上に固定されている。ベース板18は床20上に配置されている。ベース板18と床20とに跨って設けられている防振構造体についてはその図示が省略されている。脚24,26,28は、上方から見て、円周方向に沿って120度間隔で並んでいる。各脚24,26,28の水平断面は円形である。各脚24,26,28の水平断面を円形以外の形状、例えば矩形としてもよい。
【0029】
プローブ14は、棒状の挿入部32及び箱状の基部34を有する。挿入部32は、ボア13A内に挿入される。具体的には、挿入部32は、シムユニット30が有する空洞内に挿入される。挿入部32は、検出回路を有する。検出回路は、電磁波を照射し電磁波を検出する検出コイルを有する。基部34内にはプリアンプが設けられている。プリアンプが挿入部32内に設けられてもよい。プローブ14の内部は真空に維持されている。プローブ14の内部を冷媒が循環しており、冷媒によって検出コイルやプリアンプが冷却されている。
【0030】
基部34は、静磁場発生器12の下側に配置される。基部34には、水平方向に突出した複数の構造物が設けられている。それらには、サイドアーム36が含まれる。サイドアーム36には冷媒循環用の配管が含まれる。
【0031】
プローブ搬送装置10は、本体38及びステージ40を有する。本体38に対してステージ40が着脱可能に連結される。本体38は、固定部42及び可動部44により構成される。固定部42は脚24に取り付けられている。可動部44は固定部42に対して運動可能なものである。具体的には、可動部44に対してプローブ14を搭載したステージ40が連結された状態において、可動部44を回転させ得る。連結状態つまりドッキング状態において、静磁場発生器12の中心軸Cに対してプローブ14の中心軸C1が一致する。その一致状態を維持しつつ可動部44を回転させるために、回転機構56が設けられている。
【0032】
回転機構56は、固定部42及び可動部44に跨って設けられている。具体的には、回転機構56は、固定部42の一部をなす接触機構50と、可動部44の一部をなす回転板54と、を有する。回転機構56の具体的な構成については後に詳述する。
【0033】
固定部42は、脚24に着脱可能に取り付けられる取付部材46を有している。取付部材46は、固定部42の位置及び向きを調整するための調整機構を備えている。調整機構を操作することにより、静磁場発生器12の中心軸Cとプローブ14の中心軸C1とを一致させ得る。その上で、固定部42の位置及び向きがロックされる。可動部44は、回転板54の他、ドッキング用の構造物、昇降機構52、等を備えている。
【0034】
図2は、プローブ搬送装置の上面を模式的に示す図である。取付部材46は、第1取付部材46A及び第2取付部材46Bにより構成される。第1取付部材46A及び第2取付部材46Bにより、脚24がクランプされる。回転機構56は、上述のように、接触機構50及び回転板54により構成される。
【0035】
接触機構50は、水平板70及び一対のローラー72,74を有する。水平板70は第2取付部材46Bに固定されている。水平板70に対してローラー72が回転自在に設けられている。第2取付部材46Bにはアーム76が固定されており、アーム76の先端にローラー74が回転自在に設けられている。一対のローラー72,74は、回転板54の側面54Aに対して常に当接している。
【0036】
水平板70には円弧状のスリット78が形成されている。スリット78は、静磁場発生器の中心軸Cを曲率中心とした一定の曲率を有する。スリット78内をピンがスライド運動する。これにより、一対のローラー72,74と側面54Aとの間に所定の位置関係が生じている。ピンは可動部に固定された部材である。ピンの上部はノブ80である。ノブ80はハンドルとして機能する。ノブ80の操作により、可動部を回転運動させ得る。
【0037】
回転板54は、上方から見て、半円状又は三日月状の形態を有する。その側面54Aは、静磁場発生器の中心軸Cを曲率中心とした一定の曲率を有する凸面つまり円筒面である。必要な回転角度範囲が得られるように、側面54Aの長さが定められ、また、スリット78の長さが定められている。回転板54の下面側には複数のキャスタ55が設けられている。各キャスタ55は、例えば、ボールキャスタである。複数のキャスタ55により、回転板54の回転時に生じる摩擦抵抗が大幅に低減されている。
【0038】
図2においては、可動部に対してステージ40が連結された状態つまりドッキング状態が示されている。ステージ40上にプローブ14が載置されている。プローブ14は、挿入部32及び基部34を有する。挿入部32の中心軸がプローブ14の中心軸C1である。中心軸C1は、可動部の回転角度にかかわらず、静磁場発生器の中心軸Cに一致する。換言すれば、中心軸Cに中心軸C1を一致させた状態が維持されるように、回転機構56が可動部の回転を案内している。図2においては、中心軸Cを中心とする仮想円68が描かれている。側面54Aは円68に沿って形成された湾曲面つまり円弧面である。
【0039】
ステージ40は、基部34を収容しそれを安定的に保持する凹部を有する。基部34からサイドアーム36が伸長している。基部34には他の構造物も設けられているが、図2においては、それらの図示が省略されている。基部34の上部には、水平方向に突出した一対の突出片58,60が設けられている。各突出片58,60には、取付穴62,64が形成されている。図示の構成例では、各取付穴62,64は、大きな円形開口とそれに連なる細長開口とからなる。
【0040】
プローブを静磁場発生器に取り付ける際には、ベース板18に隣接して補助板84が設けられる。補助板84上にステージ40が配置され、そのステージ40上にプローブが載せられる。その後、符号86で示すように、静磁場発生器の下側空間にステージ40が送り込まれ、ドッキング状態が形成される。
【0041】
図3には、静磁場発生器12の本体の下面13Bが示されている。プローブ14は上昇端にある。図示されるように、例えば、シムコイルユニットのフランジに設けられた2つのボルト88,90が2つの取付穴62,64における2つの円形開口に差し込まれる。その後、プローブ14を下方から見て時計周り方向へ回転させると(符号14Aを参照)、2つのボルトが2つの取付穴における細長開口の奥端部へ移動する。その後、2つのボルトが締め付けられる。これにより、静磁場発生器12に対してプローブ14が固定される。プローブ14の回転に際しては上述した回転機構が機能する。
【0042】
次に、図4図9を用いて、プローブ搬送装置の実施例について説明する。
【0043】
図4において、プローブ搬送装置は、本体138及びステージ140を有する。本体138に対してステージ140が着脱可能に連結される。図4においては、連結前の状態が示されている。ステージ140にはプローブが搭載されていない。本体138は、固定部142及び可動部144により構成される。固定部142に対して可動部144が相対的に運動する。
【0044】
固定部142は、取付部材146及び接触機構150を有する。取付部材146は脚124をクランプするための複数の部材からなる。接触機構150は、取付部材146に固定されている。接触機構150は、円弧状のスリット178を有する水平板170を備える。スリット178は、静磁場発生器の中心軸を中心とした一定の曲率を有する。接触機構150は、2つのローラーを有している。但し、図4においては、それらの内で一方のローラー174が示されている。ローラー174はアーム200に保持されている。
【0045】
可動部144は、回転板154及びドッキングブロック182を有する。回転板154は、凸面としての側面154Aを有している。側面154Aは、静磁場発生器の中心軸を曲率中心とする一定の曲率を有している。側面154Aに対して2つのローラー174が常に接触している。回転板154の下面には複数のキャスタが設けられている。
【0046】
接触機構150及び回転板154により回転機構が構成される。接触機構150には、スリット178を有する水平板170が含まれる。スリット178内においてピンがスライド運動する。ピンは回転板154に対して間接的に固定されている。ピンの頭部にはノブ180Aが設けられている。ノブ180Aの操作により可動部に対して回転力が生じる。回転機構を駆動する駆動源を設けてもよい。回転機構により、静磁場発生器の中心軸に対してプローブの中心軸を一致させた状態を維持しつつ可動部を回転させることが可能となる。
【0047】
可動部には、昇降機構152及び連結機構202が含まれる。昇降機構152は垂直搬送機構であり、昇降機構152によりステージ140が上下方向に搬送される。連結機構202は、可動部に対してステージ140を着脱可能に連結するための機構である。ステージ140は、ステージ本体206及び垂直板208を有する。
【0048】
連結機構202は、可動部に設けられた第1連結機構202A及びステージ140に設けられた第2連結機構202Bにより構成される。なお、2つのつまみ204の操作により、回転板154の下側に設けられた2つの弾性部材の高さを調整し得る。各弾性部材がベース板の表面に当たっている状態では、回転板154の運動が制限される。
【0049】
図5は、プローブ搬送装置の一部を示す拡大図である。既に説明したように、連結機構は、第1連結機構202A及び第2連結機構202Bにより構成される。連結機構は、ドッキング機構とも言い得る。第1連結機構202Aには、ドッキングブロック182に設けられた2つのネジ220A及び2つのピン222Aが含まれる。各ネジ220A及び各ピン222Aは、ステージ側へ突出している。また、第1連結機構202Aには、2つの台座226の側面に形成された2つの孔224Aが含まれる。
【0050】
第2連結機構202Bには、垂直板208に形成された2つのネジ穴220B及び2つのピン穴222Bが含まれる。各ネジ穴220B及び各ピン穴222Bは、回転板154側を向いている。また、第2連結機構202Bには、2つのアーム228によって保持された2つのピン224Bが含まれる。2つのピン224Bは互いに向き合っており、各ピン224Bに対して互いに近付く方向へ弾性力が及んでいる。各ピン224Bの基端には、各ピン224Bを後退運動させる際に操作されるノブが固定されている。
【0051】
第1連結機構202Aと第2連結機構202Bを連結させる場合、2つのピン222Aが2つのピン穴222Bに入り込む。また、2つのピン224Bが2つの孔224Aに入り込む。その後、2つのネジ220Aを回転させることにより2つのネジ220Aと2つのネジ穴220Bの締結状態が形成される。その状態では可動部とステージとが一体化される。垂直板208には開口208Aが形成されている。開口208Aの上側に位置する棒状の部分がハンドルとして機能する。
【0052】
2つのネジ220Aと2つのネジ穴220Bとが主連結部を構成し、2つのピン224Bと2つの孔224Aとが副連結部を構成する。主連結部の他に、副連結部を設けておくことにより安全性を高められる。
【0053】
昇降機構152は、ハンドル、ギア230、2つのガイドポール232、送りネジ234、ロック機構236等を有する。ハンドルからの回転力がギア230を介して送りネジに伝達され、送りネジ234が回転する。これにより可動部が上方に引き上げられ、つまり、ステージが上方に引き上げられる。ロック機構236により可動部の高さが固定される。
【0054】
図6には、ステージ140上にプローブ114が載せられている状態が示されている。プローブ114は、その基部から水平方向に突出した複数の構造物を有する。それらには、サイドアーム136、配管212、接続口214、等が含まれる。
【0055】
図7には、静磁場発生器の下側空間へステージ140を送り込む前の状態が示されている。ベース板118に隣接して補助板184が設けられている。補助板184上にステージ140が配置された上で、ステージ140に対してプローブ114がセットされる。ベース板118は、複数の防振部材220により保持されている。
【0056】
図8には、静磁場発生器の下側空間へステージを送り込んだ後の状態、具体的にはドッキング状態が示されている。ステージ140が本体138に連結されている。ステージ送り込み過程では、基部から突出している複数の構造物が静磁場発生器に衝突しないように、ステージ140の移送経路や向きが調整される。
【0057】
図9は、ドッキング状態を示す上面図である。本体138に対してステージ140が連結された状態では、静磁場発生器の中心軸Cに対してプローブ114の中心軸C1が自然に一致する。そのような一致状態が形成されるように、固定部及び可動部が構成されている。一致状態を維持したまま、任意のタイミングで可動部を回転させ得る。
【0058】
図10には、実施形態に係るプローブ搬送装置の使用方法がフローチャートとして示されている。図10に示される各工程は作業者によって実施される。
【0059】
S10では、静磁場発生器における特定の脚に対して、プローブ搬送装置の本体が取り付けられる。S12では、補助板上にステージが設置され、続くS14では、ステージ上にプローブが設置される。S16では、静磁場発生器へのプローブの衝突を回避しながら、ステージが静磁場発生器の下側空間に送り込まれる。S18ではステージが本体に対して連結され、これによりドッキング状態が形成される。ドッキング状態の形成と同時に中心線の一致状態が形成される。
【0060】
S20では、プローブと共にステージが上方へ引き上げられる。ステージ上昇途中において、必要に応じて、衝突を避けるためにステージが回転される。S22では、基部が最上端に位置している状態において、ステージが回転され、2つの取付穴の中の所定の位置に2つのボルトが送られ、その状態で各ボルトを締め付けることにより、プローブが静磁場発生器へ固定される。S24では、ステージが下方に引き下げられる。その後、必要に応じて、本体からステージが取り外される。また、必要に応じて、脚から本体が取り外される。
【0061】
図11には、プローブ搬送装置の変形例が示されている。本体300は、固定部304及び可動部306により構成される。固定部304は取付部材309及びレール310を有する。取付部材309は脚308に固定されている。レール310は、上方から見て円弧状の形態を有し、そこには円弧状のスリット314が形成されている。
【0062】
可動部306に対して、プローブ303を載置したステージ302が連結される。可動部306にはブロック307が含まれ、ブロック307には2つのローラー320,322が設けられている。2つのローラー320,322は、レール310の内側の側面310Aに常に当接している。その側面310Aは凹面である。ブロック307に対してアーム316を介してピンが連結されており、そのピンがスリット314内をスライド運動する。ピンの運動がスリット314に拘束されており、これにより固定部304と可動部306の間に所定の位置関係が成立している。ピンの端部にはノブ318が設けられている。
【0063】
回転機構312は、レール310、2つのローラー320,322、スリット314及びピンによって構成される。レール310が軌道形成手段として機能しており、2つのローラー320,322が接触部材として機能している。回転機構312により、プローブ303の中心軸C1を静磁場発生器の中心軸Cに一致させつつ、プローブ303を回転させることが可能である。符号324は、ブロック307に搭載された昇降機構を示している。
【0064】
以上のように、回転機構として様々な機構を採用し得る。固定部に接触機構、可動部にレールを設けてもよいし、固定部にレール、可動部に接触機構を設けてもよい。円弧状のスリットとそのスリット内をスライド運動するスライダとにより回転機構を構成してもよい。湾曲したレールとそのレールをその両側から挟む一対のスライダとにより回転機構を構成してもよい。必要な回転角度範囲を考慮して、ガイド板の長さ、スリットの長さ等を調整すればよい。
【符号の説明】
【0065】
10 プローブ搬送装置、12 静磁場発生器、14 プローブ、30 シムユニット、32 挿入部、34 基部、38 本体、40 ステージ、42 固定部、44 可動部、50 接触機構、54 回転板、56 回転機構。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11