(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056359
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】コンクリート構造物の含水率推定用劣化診断ツール及びコンクリート構造物の劣化診断方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20230412BHJP
C04B 24/38 20060101ALI20230412BHJP
G01N 33/38 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B24/38 Z
G01N33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165665
(22)【出願日】2021-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 竜彦
(72)【発明者】
【氏名】七澤 章
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 崇
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PB40
(57)【要約】
【課題】コンクリート構造物の部位ごとの含水率を推定することのできる劣化診断ツール及び劣化診断方法を提供すること。
【解決手段】モルタルパネルを用いるコンクリート構造物の劣化診断ツールであって、モルタルパネルの圧縮強度が5~20N/mm
2であり、空隙率が20~30%である、コンクリート構造物の含水率推定用劣化診断ツールである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モルタルパネルを用いるコンクリート構造物の劣化診断ツールであって、モルタルパネルの圧縮強度が5~20N/mm2であり、空隙率が20~30%である、コンクリート構造物の含水率推定用劣化診断ツール。
【請求項2】
前記モルタルパネルが、セメント、増粘剤、細骨材、及び水を含み、前記セメントに対する水の配合比(水/セメント)が0.7以上である請求項1に記載の劣化診断ツール。
【請求項3】
前記セメントに対する水の配合比(水/セメント)が0.7超~0.9である請求項1又は2に記載の劣化診断ツール。
【請求項4】
前記セメントに対する水の配合比(水/セメント)が0.8~0.9である請求項1~3のいずれか1項に記載の劣化診断ツール。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の劣化診断ツールを用いるコンクリート構造物の劣化診断方法であって、前記モルタルパネルをコンクリート構造物の表面に密着固定し、一定の時間経過後に該モルタルパネルを回収し、コンクリート構造物の含水率を推定するコンクリート構造物の劣化診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の含水率推定用劣化診断ツール及びコンクリート構造物の劣化診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の長寿命化が望まれている。道路や鉄道等の重要構造物は、供用が始まるとマストランの状態で活用し続ける。このため、これらのコンクリート構造物の長寿命化を図る上で、維持管理が極めて重要である。コンクリート構造物を維持管理していくためには、コンクリート構造物を調査・診断する必要がある。コンクリート構造物の劣化要因は多様であるが、塩害、中性化、アルカリシリカ反応が3大劣化要因とされている。
【0003】
従来、コンクリート構造物の調査方法としては、コンクリート構造物からコンクリートをコアリングして分析する手法が一般的である。しかしながら、この方法は構造物の鉄筋位置を探査した上で、鉄筋位置をはずして行う必要があり、準備作業に多くの工程を必要とすると共に、調査場所が限定されるものであった。また、コアリング作業によって構造物を破壊する課題があった。
【0004】
一方、最近では、モルタルのパネルをコンクリート構造物に張り付け、それを一定期間後に回収し、分析する方法が提案されている。この方法によれば、従来のコアリング法による調査方法の課題を解消できる。
【0005】
例えば特許文献1では、成分が既知のセメントと、ケイ石系細骨材及び/又はアルミナ質細骨材とを使用し、水/セメント比が30~70%、セメントと細骨材の比率が質量比で1対0.5~1対4の範囲にあり、厚さ3~20mmの範囲にあるモルタルのパネルであるコンクリート構造物の劣化診断ツールが提案されている。
【0006】
ところで、上述のように、中性化はコンクリート構造物の劣化要因の一つであるが、コンクリート構造物における鋼材腐食に関し、コンクリートの中性化が進んだとしても、鋼材腐食に必要な水と酸素の供給が乏しい場合には、鋼材腐食の進行が見られない、もしくは極めて遅いことが明らかとなってきている。したがって、コンクリート構造物の維持管理において、水掛かりが重視されるようになっている。
このような状況下、土木学会のコンクリート標準示方書の維持管理編には、中性化と水の浸透に伴う鋼材腐食によって性能低下が生じた構造物、あるいは性能低下が生じる可能性の高い構造物の維持管理は、中性化と水の浸透に伴う鋼材腐食の特徴を考慮して実施するもの、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
コンクリート構造物の劣化要因の一つである中性化に関しては、上述のように、中性化深さのみではなく、水の浸透の程度を把握する必要がある。水の浸透の程度は、水掛かりに際して、水掛かりの量、水の滞留時間等に左右され、コンクリート構造物の部位によって、水の浸透の程度が異なることが考えられる。しかしながら、これまでコンクリート構造物の部位に応じた水掛かりによる水の浸透の程度については把握されていず、そのための診断ツールが望まれていた。
そこで、本発明はコンクリート構造物の部位ごとの含水率を推定することのできる劣化診断ツール及び劣化診断方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために鋭意検討したところ、本発明者らは下記本発明に想到し、当該課題を解決できることを見出した。すなわち本発明は下記のとおりである。
【0010】
[1]モルタルパネルを用いるコンクリート構造物の劣化診断ツールであって、モルタルパネルの圧縮強度が5~20N/mm2であり、空隙率が20~30%である、コンクリート構造物の含水率推定用劣化診断ツール。
[2]前記モルタルパネルが、セメント、増粘剤、細骨材、及び水を含み、前記セメントに対する水の配合比(水/セメント)が0.7以上である上記[1]に記載の劣化診断ツール。
[3]前記セメントに対する水の配合比(水/セメント)が0.7超~0.9である上記[1]又は[2]に記載の劣化診断ツール。
[4]前記セメントに対する水の配合比(水/セメント)が0.8~0.9である請求項1~3のいずれかに記載の劣化診断ツール。
[5]上記[1]~[4]のいずれかに記載の劣化診断ツールを用いるコンクリート構造物の劣化診断方法であって、前記モルタルパネルをコンクリート構造物の表面に密着固定し、一定の時間経過後に該モルタルパネルを回収し、コンクリート構造物の含水率を推定するコンクリート構造物の劣化診断方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コンクリート構造物の部位ごとの含水率を推定することのできる劣化診断ツール及び劣化診断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】モルタルパネルの貼付位置を示す概要図である。
【
図2】モルタルパネルの貼付位置を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[コンクリート構造物の劣化診断ツール]
本発明の一実施形態(本実施形態)に係るコンクリート構造物の劣化診断ツールは、特定のモルタルパネルを用い、中性化深さを測定することで、コンクリート構造物の含水率を推定することを特徴とする。モルタルパネルは、コンクリート構造物の種々の部位に貼付され、当該部位ごとの中性化深さを測定することができる。そして、中性化深さが大きいほどコンクリート構造体の相対的な含水率が低いとの相関があることがわかってきており、本発明の方法を用いることで、コンクリート構造体の各部位ごとの含水率を推定することができる。
【0014】
<モルタルパネル>
本実施形態に係るモルタルパネルは、圧縮強度が5~20N/mm2であり、空隙率が20~30%である。
圧縮強度が5N/mm2未満であると、強度が低すぎて対象構造物の所定位置に設置した際に経時により割れなどが生じやすくなる。一方、圧縮強度が20N/mm2を超えると強度が高すぎて、中性化深さを評価するための割裂断面を容易に形成させづらくなる。以上の観点から、圧縮強度は6~18/mm2であることが好ましく、7.5~17N/mm2であることがさらに好ましい。なお、上記圧縮強度はモルタル打設後24時間後に蒸気養生した後の値であり、具体的には実施例の条件で測定された値である。
【0015】
また、本実施形態において、空隙率が20%未満であると、中性化深さを評価するための暴露期間が長くなり過ぎるという問題がある。一方、空隙率が30%を超えると中性化が進行しやすくなり十分な暴露期間を設定しづらくなる。以上の観点から、空隙率は、20.5~28.5%であることが好ましく、21~28%であることがより好ましい。空隙率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
さらに、本実施形態において、総細孔量が0.01~0.5ml/gの範囲であることが好ましく、0.05~0.3ml/gの範囲であることがより好ましく、0.1~0.2ml/gの範囲であることがさらに好ましい。総細孔量が上記下限値以上であると、中性化深さを評価するための暴露時間を短くすることができ、上記上限値以下であると暴露時間の設定が容易となる。
【0016】
本実施形態において、上記モルタルパネルの圧縮強度、空隙率を既述の範囲にするには、後述するモルタルパネル作製用のモルタル組成物を用い、その配合や形成条件を調整すればよい。
特に、圧縮強度は、水/セメント比(配合比)を0.7以上とすることで調整することが可能であり、空隙率は、例えば、増粘剤の種類及び含有量を制御することにより、調整することが可能である。
【0017】
モルタルパネルの厚さは3~20mmであることが好ましく、3~10mmであることがより好ましい。厚さが3~20mmであることで、ひび割れが生じにくくなり、自重による落下を防ぐことができる。
また、モルタルパネルの面積は特に限定されるものではないが、5~100cm2であることが好ましい。なお、当該面積は、面積が一番大きい面の面積である。面積が5~100cm2であることで、良好な分析精度が得られやすく、製造も容易となる。
モルタルパネルの形状は特に限定されるものではなく、正四角形、長方形、円形、楕円形、多角形等が挙げられる。
【0018】
<モルタル組成物>
本実施形態に係るモルタルパネル作製用のモルタル組成物は、セメント、増粘剤、細骨材、及び水を含むことが好ましい。当該モルタル組成物は、セメントに対する水の配合比(以下、「水/セメント」と記載する。)が0.7以上(質量比)であることが好ましい。水/セメントが0.7以上であると、上記モルタルパネルの圧縮強度及び空隙率が得やすくなり、また、中性化深さの数値がより明確になり、コンクリート構造物の含水率の推定が行いやすくなる。以上の観点から、水/セメントは0.7超~0.9であることがより好ましく、0.8~0.9であることがさらに好ましい。
【0019】
以下、本実施形態に係るモルタル組成物の構成材料について詳述する。
(セメント)
セメントは、その素性が明確であるものを使用することが好ましい。セメントの素性とは、普通セメント、高炉セメント等のように、銘柄が明らかになっているだけでなく、例えば、普通セメントであっても、成分が既知で、化学成分が明らかになっているものが好ましく、さらに、化合物組成が特定されていることがより好ましい。化学成分とは、セメント中のカルシウム、珪素、アルミニウム等の酸化物の含有量の割合で示されるもので、セメントの反応速度、水和熱等を推定するために必要な情報である。セメントの化学成分は、JIS R 5202「ポルトランドセメントの化学分析方法」に記載された方法により特定することが好ましい。
また、化合物組成とは、一般的にはセメント中の代表的な化合物である3CaO・SiO2、β-2CaO・SiO2、3CaO・Al2O3、4CaO・Al2O3・Fe2O3の割合で示されるもので、クリンカーの焼成条件や製造されたセメントの特性を考える上で必要な情報である。セメントの化合物組成は、リートベルト法により特定することが望ましい。
【0020】
(増粘剤)
当該モルタル組成物において、増粘剤はメチルセルロース系増粘剤であることが好ましい。増粘剤中のメチルセルロース系増粘剤の含有量については、特に制限はないが、50質量%以上含むことが好ましい。メチルセルロース系増粘剤により水/セメント比が高くても良好な表面状態を有するモルタルパネルが得られやすくなる。一方、メチルセルロース系増粘剤が50質量%以上であると、良好な表面状態が得られやすい。以上の観点からメチルセルロース系増粘剤は51質量%以上であることがより好ましく、54質量%以上であることがさらに好ましい。上限については、特に制限はないが、通常80質量%程度である。
メチルセルロース系増粘剤の粘度(20℃における2%水溶液)は、3,000~40,000mPa・sであることが好ましい。
メチルセルロース系増粘剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース等が挙げられ、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである信越化学社製SBQ-30000PE等が好ましいものとして挙げられる。
【0021】
モルタル組成物中の増粘剤の含有量としては、セメント100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、0.5~1.2質量部であることがより好ましい。0.5質量部以上であることで、所望の空隙率が得られやすくなり、またフレッシュ性状でブリーディングの無いモルタルを得ることができる。
【0022】
(細骨材)
細骨材はケイ石系及び/又はアルミナ質系であることが好ましい。ケイ石系及び/又はアルミナ質系の細骨材はセメント等とほとんど反応しないので、粉末X線回折で明確な同定がしやすい。
セメントと細骨材の質量比率(細骨材/セメント)は、0.5/1~4/1であることが好ましく、2/1~3/1であることがより好ましい。0.5/1~4/1であることで、均一な品質のモルタルパネルが得られやすくなる。
【0023】
<モルタルパネルの作製方法>
モルタルパネルは、上記モルタル組成物を用いて作製される。モルタル組成物は、上述のように、セメント、増粘剤、細骨材、水等を所定の配合で混合することで作製できる。
各材料の混合方法は特に限定されるものではなく,それぞれの材料を施工時に混合してもよいし、予めその一部を順次混合しても差し支えない。混合装置としては、既存の如何なる装置も使用可能であり、例えば、傾胴ミキサー,オムニミキサー,プロシェアミキサー,ヘンシェルミキサー,V型ミキサー及びナウターミキサー等が挙げられる。また、公知の減水剤や消泡剤等を添加してもよい。
次に、モルタル組成物を所定の大きさの型枠(鉄製やゴム製等)内に流し込み、硬化養生を行って板状のモルタルパネルを作製する。硬化養生は、湿潤養生や蒸気養生等が挙げられる。
【0024】
[コンクリート構造物の劣化診断方法]
本発明の一実施形態に係るコンクリート構造物の劣化診断方法は、上記モルタルパネルをコンクリート構造物の表面に密着固定し、一定の時間経過後に該モルタルパネルを回収し、コンクリート構造物の含水率を推定するものである。
板状のモルタルパネルは、測定対象の物質を受ける面の反対面、あるいは、当該反対面と側面をシールして、水分の外部への移動を抑える構造とすることが好ましい。このシール方法としては、両面接着タイプアルミテープでシールする方法、遮蔽塗料(例えば、エポキシ)を塗布して遮蔽層を形成する方法等が挙げられる。
シールした後、例えば、上記反対面側に接着剤を塗布するか両面テープを貼り付けるか等して、測定対象物(対象構造物)へ設置し、コンクリート構造物の表面に密着固定する。
回収は、例えば、3ヶ月~1年後に板状のモルタルパネルを剥がして、中性化深さを測定し、コンクリート構造物の含水率を推定する。
【0025】
本発明のモルタルパネルは、空隙率が20~30%であることから、中性化が進みやすいため、数ヶ月という短期間で中性化深さの評価が可能となる。また、圧縮強度が5~20N/mm2であるため、評価・分析に際して、割裂断面が得られやすく、作業性を向上させることができる。
【実施例0026】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、下記の実施例に限定されるものではない。
【0027】
(使用材料)
・セメント:デンカ(株)製の普通ポルトランドセメント
・細骨材:(一社)セメント協会 セメント強さ試験用標準砂
・増粘剤A(ヒドロキシプロピルメチルセルロース増粘剤):信越化学工業(株) SBQ-30000PE
・増粘剤B(メチルヒドロキシプロピルエチルセルロース増粘剤):信越化学工業(株) MH4000P2
・減水剤:第一工業製薬(株)製のセルフロー100P
・消泡剤:サンノプコ(株)製の14HP
・水:水道水
【0028】
下記表1に示す配合で、セメント、細骨材、増粘剤A若しくはB、減水剤、消泡剤を混合し、水/セメント比を下記表1に示すようにしてモルタルミキサーにて低速:62rpmで30秒練り混ぜた後、高速:125rpmで90秒間練り混ぜて、モルタルパネル作製用のモルタル組成物A、B及びCを作製した。
【0029】
【0030】
それぞれのモルタル組成物を、4×4×16cmの型枠に打設し、25℃、80%R.H.の恒温恒湿室内にて24時間静置し脱型を行った。脱型後、6時間かけて25℃から85℃まで温度を上げ、3時間保持し、自然冷却(1時間)で25℃に戻す蒸気養生を行ってモルタルパネルA、B及びCを作製した。これらのモルタルパネルA、B及びCについて、圧縮強度、空隙率、総細孔量等を下記のとおりにして測定した。結果を表2に示す。
【0031】
(圧縮強度)
JIS A 1108:コンクリートの圧縮強度試験方法に準拠して測定した。
【0032】
(空隙率、総細孔量)
水銀ポロシメーター(島津製作所社製、オートポアIV9520)を用いた水銀圧入法にて,空隙率,総細孔量を求めた。
約2gの試料をセル内に封入し、測定装置にセットした。そして、測定装置内で100μmHgまで真空排気処理後、測定した。
なお、測定は、最大水銀圧力44500psia、平衡時間5秒の条件で行った。水銀の表面張力:480dynes/cm、水銀の接触:140°、水銀密度:13.5462g/ml、測定粒径範囲:0.0020μm~100.0000μmとした。
【0033】
【0034】
実施例1、比較例1及び実施例2
モルタルパネルA(実施例1)、B(比較例1)及びC(実施例2)を
図1及び
図2に示すように、道路橋の各部位に貼付し、5ヶ月間暴露した後に回収した。
本発明の評価を行った道路橋は、日本海側の海岸線から約50~100mにある道路橋であり、
図1及び
図2における「海側」は該道路橋の海に面する側を意味し、「山側」はその反対側を意味する。また、
図1における「上部工P1-P2支間中央部」とは、2つの橋脚(P1及びP2)の間に位置する桁の中央部を意味している。
図2は、一方の橋脚P2におけるモルタルパネルの貼付位置を示す図である。ここで、P2-7は紙面手前側の部位であり、P2-8は紙面の裏側の部位である。
【0035】
回収した上記モルタルパネルA(実施例1)、B(比較例1)及びC(実施例2)の中性化深さを測定した。結果を表3に示す。なお、中性化深さの測定方法は、以下の通りである。
(中性化深さ)
モルタルパネルの割裂断面にフェノールフタレイン1%アルコール溶液を塗布して中性化深さを測定した。
【0036】
【0037】
表3より、本発明の実施例に相当するモルタルパネルAはモルタルパネルBと比較して、すべての部位において、高い数値を示し、各部位ごとの中性化深さの差異をより明確に認知できることがわかる。より具体的には、モルタルパネルBは空隙率が所望の範囲より低かったために、中性化深さがモルタルパネルAより低めになった。したがって、中性化深さがモルタルパネルAと同程度になるためには、より長い暴露時間が必要となり、迅速な評価には適さないといえる。
また、モルタルパネルBは圧縮強度が高すぎるために、中性化深さを評価するための割裂断面の形成が容易ではなく、割裂断面を得るための作業を複数回行う必要があり、また、得られた割裂断面の付着した小片を除去するのに時間を要した。
これに対して、モルタルパネルAは、中性化深さの測定が容易に行え、かつ暴露時間が短くても、コンクリート構造物の部位による中性化深さの相違が認定でき、効率的な劣化診断が可能となる。
したがって、本発明に係るモルタルパネルを用いることで、コンクリート構造体の含水率の推定を簡易に行うことができ、コンクリート構造体の中性化による劣化の診断に極めて有効であることがわかる。